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事件 令和 3年 (ワ) 11507号 損害賠償等請求事件
5原告ジュピター有限会社
同訴訟代理人弁護士 千且和也
同補佐人弁理士 佐藤雄哉 小山田圭佑
被告興和株式会社 10 同訴訟代理人弁護士 堺有光子 佐々木奏 小島義博 小野寺良文
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2022/10/28
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 15 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和3年5月14日から支20 払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、発明の名称を「コンプレッションサポーター」とする発明に係る特許 (特許第5133797号。以下「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を 「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、被告に対し、被告が製造販25 売する別紙被告製品目録記載の各製品(同目録記載の番号に合わせて「被告製品 1」ないし「被告製品20」といい、被告製品1ないし20を併せて「被告各製 1 品」という。)は本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件 発明」という。)の技術的範囲に属するものであり、被告による被告各製品の製 造販売が本件発明の実施に当たると主張して、主位的には不法行為に基づく損害 賠償請求として、予備的には不当利得に基づく利得金返還請求として、100万 5 円(特許法102条3項による損害金16億5750万円及び弁護士費用1億6 575万円の合計額の一部金又は不当利得金16億5750万円の一部金)及び これに対する訴状送達の日の翌日である令和3年5月14日から支払済みまで 平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損 害金の支払を求める事案である。
10 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に より認められる事実をいう。) ? 当事者 ア 原告は、整骨院の経営や健康器具等の販売等を行う株式会社である。
イ 被告は、医薬品、化粧品及び食品等の製造販売を行う株式会社である。
15 ? 本件特許権及び本件発明等 ア 本件特許権 原告は、以下の本件特許権を有している。(甲1。以下、本件特許の願書 に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。) 発明の名称 コンプレッションサポーター20 登録番号 特許第5133797号 出願日 平成20年7月3日 登録日 平成24年11月16日 イ 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明)の記載は、以下のとお25 りである。(甲2) 「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体を具備し、上記本体よ 2 りも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上記低伸縮領域と本体の伸縮性 の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートするサポーターであって、低 伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋 の機能を補助するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面 5 に設けた正面吊り領域を具備し、また、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するため に、上記ほぼU字型の正面吊り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方 向に、本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し、上記低伸縮領域は、樹脂 より成る低伸縮性材料を本体に固着した構成を有しているコンプレッショ ンサポーター。」10 ウ 本件発明の構成要件 本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである。
A 伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体を具備し、上記本体よ りも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上記低伸縮領域と本体の伸縮 性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートするサポーターであっ15 て、
B 低伸縮領域として、
@ 膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補 助するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設け た正面吊り領域を具備し、
20 A また、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼU字型の正面吊 り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、本体両側面に設け た側面圧迫領域を具備し、
C 上記低伸縮領域は、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した構成を 有している25 D コンプレッションサポーター。
? 被告の行為 3 被告は、被告各製品を販売している。
? 被告製品17の内容等 ア 被告製品17は、以下の画像に写ったコンプレッションサポーターであり、
幅約12cm、長さ約26cmの円筒状に形成されている。
5101520 イ 被告製品17は、着用者の膝蓋骨に対応する部分を包囲する略U字型形状 に編成され、着用者の膝蓋骨を支持する支持部(2)を有し、支持部(2) とその他の部分の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートす るサポーターである。支持部(2)は、膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、大腿四頭25 筋の機能を補助し、大腿骨の周囲筋腱を圧迫する。また、支持部(2)はナ イロン繊維により成る(上記は、当事者間に争いのない限度での構成であり、
4 その余の構成等については、構成要件の充足性との関係で争いがある。)。
ウ 別紙原告主張の被告製品17の構成は、被告製品17の構成についての原 告の主張に基づき、被告製品17の各部分を特定したものである(以下、同 別紙の橙色で示された部分(1)を「被告製品部分1」、同別紙の実線で囲 5 むU字型形状の領域(2)を「被告製品部分2」、同別紙の被告製品部分2 のうち点線で囲む領域(3)を「被告製品部分3」、同別紙の被告製品部分 2のうち点線で囲む領域(4)を「被告製品部分4」という。)。
エ 被告は、被告製品17について、「サポーターを織り上げ、又は、編み上 げるに当たり、部分によって折り方や編み方を変化させることにより、伸縮10 性等の異なる部位を配置した構造」(以下「一体編成・織成構造」という。) を採用したものであるのに対し、本件発明について、「膝を筒状に覆うサポ ーター本体の表面の一部に、本体とは別の低伸縮性材料を熱溶着、接着、縫 着等によって固着し、伸縮性等の異なる部位を配置した構造」(以下「別材 料固着構造」という。)を採用したものであると主張している。
15 ? 先行文献 本件特許の出願日である平成20年7月3日より前に、以下の公刊物が存在 した。
ア 発明の名称を「膝関節用サポータ」とする欧州特許公開公報第60021 8号(1994年6月8日公開。乙3。以下、乙3に記載された発明を「乙20 3発明」という。) イ 発明の名称を「膝サポータ」とする西ドイツ特許公開公報第341623 1号(1985年11月7日公開。乙4。以下、乙4に記載された発明を「乙 4発明」という。) ウ 発明の名称を「伸縮性膝サポータ」とするスイス特許特許公報第657025 44号(1986年8月15日公開。乙5。以下、乙5に記載された発明を 「乙5発明」という。) 5 2 争点 ? 被告各製品の構成要件充足性(争点1) なお、原告は、被告各製品の構成が基本的に全て同じであるなどとして、被 告製品17の構成に基づく構成要件充足性の主張をし、被告は、被告製品17 5 の限度で構成要件充足性の主張をした。
構成要件Aの「本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を 本体に設け」の充足性(争点1-1) イ 構成要件Biの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するため に・・・本体正面に設けた正面吊り領域を具備し」の充足性(争点1-2)10 ウ 構成要件BAの「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために・・・本体両側面 に設けた側面圧迫領域を具備し」の充足性(争点1-3) エ 構成要件Cの「樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した構成」の充足 性(争点1-4) オ 均等侵害の成否(争点1-5)15 ? 本件特許の無効理由の有無(争点2) ア 乙3発明に基づく新規性の欠如(争点2-1) イ 乙4発明に基づく新規性の欠如(争点2-2) ウ 乙5発明に基づく新規性の欠如(争点2-3) エ サポート要件違反(争点2-4)20 ? 損害額等(争点3)
争点に関する当事者の主張
1 争点1-1(構成要件Aの「本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低伸 縮領域を本体に設け」の充足性)について (原告の主張)25 ? 被告が被告製品17に関連して有する特許(特許第5165123号。以下 「被告特許」という。甲12。)によれば、被告製品17は、「丸編で編み立 6 てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の膝関節を補助す るサポーター」である。
そして、被告製品部分1は、「表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リ ブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる伸縮性のある編地」 5 であるので、「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態」である構成要件A の「本体」に該当する。
また、被告製品17は、 「本体」 その (ひざ頭部)が伸びやすいため(甲6)、
被告製品部分2は、被告製品部分1(「本体」)よりも伸縮性が低く、構成要 件Aの「低伸縮領域」に該当し、これが「本体」に設けられている。
10 ? 被告の主張について ア 「本体」について 被告は、本件明細書等の段落【0009】の記載等からすれば、「本体」 とは、少なくとも、脚部に着用した際に、膝部を筒状に覆うものを意味す ると主張する。
15 しかしながら、構成要件Aは、「本体」について「伸縮性素材より成り 膝部に着用し得る形態」と規定するのみであり、被告が主張するように「膝 部を筒状に覆う」ことについては何ら規定していない。
また、「本体」が脚部に着用した際に脚部において筒状の形態をとるも のであったとしても、同段落には、「筒状の形態」が好ましいと記載され20 ているのみであり、「脚部を筒状に覆う」などとは一切記載されていない し、【発明を実施するための最良の形態】においては、「筒状の形態」の 一実施形態として「膝部を筒状に覆う」ものが記載されているにすぎない。
そして、被告製品17は、被告製品部分1の上位部分と下位部分とが着 用者の膝上部分と膝下部分の周囲を圧迫することで、着用者の膝部に着用25 されるため、被告製品部分1は、
「膝部に着用し得る形態」を有している。
被告は、「本体」は「膝関節の必要部分或いは患部を加圧するもの」で 7 なければならないと主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲には、「本体」が膝関節等を 加圧するなどとは一切記載されていない。
なお、原告は、上記 のとおり、被告製品部分1の上位部分と下位部分 5 とが着用者の膝上部分と膝下部分の周囲を圧迫することで、被告製品部分 1が着用者の「膝部に着用され得る」として、膝部に対する着用の可否を 論じているのであり、構成要件充足性との関係において、膝関節等に対す る被告製品部分1の圧迫を問題としているわけではない。
そもそも、本件発明は、コンプレッションサポーターの発明であり、脚10 部に着用したときに「本体」が「膝部に着用し得る形態」を有していれば よいのであるから、乙6に基づく被告の主張のように、「本体」と「低伸 縮領域」とを切り離し、もはやコンプレッションサポーターとしての体を なしていない状態での圧迫の可否を論ずることに意味はない。
イ 「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」について15 被告は、「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」とは、
「本体」の表面の一部に「低伸縮領域」を設けることを意味すると主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲には、「本体」の表面の一部に 「低伸縮領域」を設ける限定は何らされていない。
また、「本体」と同一平面に沿って「低伸縮領域」が設けられた場合であ20 っても、「ほぼU字型の正面吊り領域・ ・により適切に膝蓋靱帯を圧迫し、
・ かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定し」、「大腿骨・・・及び周 囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用して、痛みを軽減し得る」 (本 件明細書等の段落【0020】)という本件発明の作用効果を奏することが できるのであるから、「低伸縮領域」が「本体」の表面の一部に設けられた25 ものに限定する理由はない。
? したがって、被告製品17は、構成要件Aを充足する。
8 (被告の主張) ? 「本体」について ア 「本体」の意義について 本件発明は、膝を筒状に覆うサポーター本体の表面の一部に、本体とは 5 別の低伸縮性材料を熱溶着、接着、縫着等によって固着し、伸縮性等の異 なる部位を配置した別材料固着構造を採用したものであり、本件発明の構 成要件Aは「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体」に、「上 記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域」を「設け」、もって「上記低伸縮 領域と本体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートする」10 というものである。
そして、本件明細書等にも、「なお本体構造としては筒状の形態のもの であれば、膝部を挿入可能であるので好都合である。しかしながら、筒状 であることは絶対必要な条件ではなく、例えば脚部に巻き付ける形式で着 用するものも使用時には筒状の形態を取り、同様の目的と効果を達成する15 ものである。」(段落【0009】)、「本発明においては、上記の構成を 有する本体20の要所に本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、
上記低伸縮領域と本体20の要所に本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を 本体に設け、上記低伸縮領域と本体20の伸縮性の相違により膝関節部及 び周囲筋腱をサポートする。」(段落【0023】)、「低伸縮性材料3420 は、例えば上記正面吊り領域22の形状にあらかじめ形成され、それを本 体20の表面に固着手段37を用いて固着する。」(段落【0032】) などの記載がある。
以上のような特許請求の範囲の文言及び本件明細書等の記載からすれ ば、「本体」とは、少なくとも膝部に着用した際に膝部を筒状に覆うもの25 を意味すると解すべきである。
また、本件明細書等の段落【0008】に、「本発明に係るコンプレッ 9 ションサポーターは、膝部に着用するために伸縮性素材より成る本体を具 備している。・・・本発明は、本体の上記の伸縮性による圧迫力で膝関節 の必要部分或いは患部を加圧するものであり」と記載されていることから すれば、「本体」は「膝関節の必要部分或いは患部を加圧するもの」でな 5 ければならない。
イ 被告製品17について 原告が被告製品17における「本体」であると主張する被告製品部分1 は、膝部に着用した際に膝部を筒状に覆うものではないし、「膝部に着用 し得る形態」でもない。
10 また、被告製品部分1は、着用時に膝部の形状に合わせて伸長するにし ても、「膝上部分」のわずか0.6〜0.7cm程度の幅の紐状部分と「膝 下部分」のわずか0.7〜0.9cm程度の幅の紐状部分により、膝部分 を「圧迫」するとはいえない(乙6)。
ウ 原告の主張について15 これに対して、原告は、本件明細書等の段落【0009】には「筒状」 に限定する記載はないとして、「本体」につき「筒状に覆う」ことは必須 ではないと主張する。
しかしながら、同段落の記載を普通に読めば、「本体」とは、少なくと も「膝部に着用した際」には、「脚部」において「筒状の形態をとる」、
20 すなわち「脚部に着用した際に膝部を筒状に覆うもの」を指すものと解す べきである。
a 原告は、膝関節等に対する「本体」の圧迫の可否は問題とはならない と主張する。
しかしながら、原告の主張は、本件明細書等の段落【0008】の記25 載に反するものである。
b 原告は、被告製品部分1の上位部分と下位部分とが着用者の膝上部分 10 とひざ下部分の周囲を圧迫すると主張する。
しかしながら、膝関節部分を全く圧迫することなくその上部と下部を 圧迫することは無意味であり、膝関節部分を加圧するというコンプレッ ションサポーターの本質にも反する。また、膝上部分のわずか0.6〜 5 0.7cm程度の幅の紐状部分と膝下部分のわずか0.7〜0.9cm 程度の幅の紐状部分が膝を「圧迫する」というのは常識的にあり得ない。
c 原告は、被告製品部分1について、「本体」と「低伸縮領域」とを切 り離し、コンプレッションサポーターとしての体をなしていない状態で 圧迫の可否を論ずることに意味はないと主張する。
10 しかしながら、前記aと同様に、原告の主張は、本件明細書等の段落 【0008】の記載に反するものである。
エ したがって、被告製品部分1は、「本体」に当たらない。
? 「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」について ア 「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」の意義について15 上記?ア のとおりの特許請求の範囲の文言及び本件明細書等の記載か らすれば、「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」とは、
「本体」の表面の一部に「低伸縮領域」を設けることを意味すると解すべき である。
イ 被告製品17について20 被告製品部分1の表面に「低伸縮領域」は「設け」られていない。
ウ 原告の主張について これに対して、原告は、「設ける」とは、本体と同一平面に沿って低伸 縮領域が設けられた場合を含むものと主張する。
しかしながら、「低伸縮領域」を本体の同一平面に沿って設けることな25 どは、本件明細書等に一切記載も示唆もされていないから、上記解釈は取 り得ない。むしろ、本件明細書等には、「『本体』の表面の一部に『低伸 11 縮領域』を設ける」ことのみが開示されている(段落【0023】、【0 032】)以上、そのように解すべきである。
また、原告は、上記解釈の根拠として、「本体」と同一平面に沿って「低 伸縮領域」が設けられた場合も、本件発明の作用効果を奏することができ 5 ることを挙げている。
この点につき、「本体」と同一平面に沿って「低伸縮領域」が設けられ た場合というのは、すなわち、「別材料固着構造」の場合ではなく、「一 体編成・織成構造」の場合である。そして、原告は、本件特許の出願時に は、本件明細書等に「サポーター本体に織り込まれているゴムのパワー(ゴ10 ムの収縮力、即ち筋肉に対する圧迫強度)を変え、或いは織り方を変える ことで患部に対する圧迫力、押圧力変化させる方式」である「従来の筒状 の伸縮性サポーター」、すなわち、「一体編成・織成構造」では、「膝関 節の任意の箇所に必要な押圧力を加えることができない」(【段落000 2】)と記載しているのであるから、原告の主張は矛盾している。
15 加えて、そもそも構造の異なる製品について、本件発明と同様の効果を 奏することができるという理由だけで、発明の技術的範囲に含まれるよう なことはないから、原告の主張は失当である。さらに、「本体」と同一平 面に沿って「低伸縮領域」が設けられた場合でも本件発明の作用効果を奏 することができるという点について、何らの立証もされていない。
20 エ したがって、被告製品17は、「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域 を本体に設け」るものではない。
? 以上によれば、被告製品17は、構成要件Aを充足しない。
2 争点1-2(構成要件B@の「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助す るために・・・本体正面に設けた正面吊り領域を具備し」の充足性)について25 (原告の主張) ? 被告製品部分3は、「膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型」に形成されてお 12 り、本体の正面側に設置されている。
また、被告特許の明細書(甲12)によれば、被告製品部分2は、「着用者 の膝蓋骨を下腿側から大腿側に向かって支持」するとともに、「着用者の膝蓋 骨を鉛直上方へ確実に持ち上げることができる」とされている。そして、膝蓋 5 靱帯は、膝蓋骨の直下に位置するので、「着用者の膝蓋骨を下腿側から大腿側 に向かって支持」するとともに、「着用者の膝蓋骨を鉛直上方へ確実に持ち上 げる」際に、被告製品部分3が「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ膝蓋骨を吊り上げ」 ることは明らかである。
さらに、大腿四頭筋は、膝蓋骨のすぐ上方に位置するので、膝蓋骨を持ち上10 げた際に、被告製品部分3が大腿四頭筋の機能を補助することは明らかである。
? 被告の主張について ア これに対して、被告は、被告製品部分3が、膝蓋骨を持ち上げることはあ っても、吊り上げることはないと主張する。
しかしながら、吊るとは、「つること。ひっかけること。つるすこと」を、
15 吊り上げるとは、「つって上にあげる」こと、すなわち、ひっかけて上に上 げることを、持ち上げるとは、「持って高く上げる」ことをいう。
そして、被告製品17のU字型の低伸縮領域が伸縮性素材で構成されてい るため、膝に着用された際に、低伸縮領域を伸ばすと、伸縮性素材の弾性力 によって、U字型の底面部分がU字型の底面部分や側面部分に引っ張られ、
20 膝蓋骨に上方の応力を与えることになる。このように、低伸縮領域である被 告製品部分3が膝蓋骨をひっかけて、上に上げる状態であるから、被告製品 部分3は、膝蓋骨を持ち上げている。
そもそも、「吊り上げ」た状態と、「持ち上げ」た状態は、互いに他を排 除する状態ではなく、ある部位を吊り上げた状態の場合、その部位を持ち上25 げているといえる場合も多々あり、吊り上げると同時に持ち上げるという状 態が両立しているともいえる。本件明細書等においても、例えば、段落【0 13 010】では「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押圧ないし圧迫してサポー トする」と記載し、段落【0011】では「ほぼU字型の正面吊り領域によ って膝蓋骨の左右両側をおさえ、かつ膝蓋骨を持ち上げ気味にサポートし」 と記載しているように、両者を同義語として使用している。
5 イ また、被告は、「吊り上げる」といえるためには、上部から「吊る」こと により上方に「上げる」ことが必要であるから、被告製品部分3が膝蓋骨を 下方から上方に持ち上げることがあるとしても、「膝蓋骨を吊り上げ」たと はいえないと主張する。
しかしながら、被告製品部分2は、被告製品部分1の上位部分(以下「上10 アンカー」という。)に連結されているところ、上アンカーは、着用者の大 腿に固定されて被告製品部分2のアンカーとして機能する。このことは、
「上 下のアンカーが、適度な締め付けでサポーターのズレ上がり、ズレ下がりを 防ぎ、U字型テーピング機能を安定させます」との被告製品17の製品説明 (甲6)や、「第1のアンカー部2(上アンカーに相当)は・・・着用者の15 大腿に膝関節サポーター10を固定し・・・支持部4のアンカーとしても機 能する」との被告特許の明細書(甲12)からも明らかである。また、被告 製品17は、着用者の脚を伸ばした状態でたるみがないように着用されるも のである。
そうすると、被告製品17は、被告製品部分2が伸びた状態で、上アンカ20 ーが着用者の大腿に固定されることにより、被告製品部分2の底面部分が被 告製品部分2の底面部分や側面部分に引っ張られて膝蓋骨に上方の応力を 与え、膝蓋骨を下方から上方に持ち上げるものである。
? したがって、被告製品17は、構成要件B@を充足する。
(被告の主張)25 ? 被告製品部分3は、「膝蓋骨を吊り上げ」ていない。
まず、被告製品17の製品説明(甲6)において、「U字型テーピング構造」 14 部分につき、「U字型のテーピング編みが、ひざのお皿を『持ち上げる』よう にサポート(する)」と記載されている。また、被告特許の明細書(甲12) にも、被告製品部分3が「着用者の膝蓋骨を鉛直上方へ・・・持ち上げる」と は記載されているが、膝蓋骨を「吊り上げ」ることは一切記載も示唆もされて 5 いない。なお、そもそも被告製品17は、被告特許の明細書(甲12)の記載 における実施形態とはその構造が異なるから、被告特許の明細書の記載は、被 告製品17が構成要件B@を充足することの根拠とはならない。
そうすると、被告製品部分3は、膝蓋骨を吊り上げていないから、被告製品 17は、「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、・・・本10 体正面に設けた正面吊り領域を具備し」ていない。
? 原告の主張について ア これに対して、原告は、膝部にU字型の低伸縮領域があれば、伸縮性素材 の弾性力によって膝蓋骨を吊り上げると主張する。
しかしながら、「吊り上げる」といえるためには、上部から「吊る」こと15 により上方に「上げる」ことが必要であるから、被告製品部分3が膝蓋骨を 下方から上方に持ち上げることがあるとしても、「膝蓋骨を吊り上げ」たと はいえない。
イ 原告は、吊り上げた状態と持ち上げた状態とが両立する旨主張する。
しかしながら、同一部材がある客体を下から持ち上げ、かつ、上からも吊20 り上げるという状態を観念することはできない。
ウ 原告は、被告製品部分1の上位部分(上アンカー)は、着用者の大腿に固 定されて被告製品部分2のアンカーとして機能し、被告製品部分3が上アン カーを支点として膝蓋骨を吊り上げているなどと主張する。
しかしながら、被告製品17の「上アンカー」は被告製品部分2と直接連25 結しておらず、被告製品部分3が上アンカーを支点として膝蓋骨を吊り上げ ることはない。すなわち、被告製品17の製品説明(甲6)には、「編み方 15 を強くすることで、サポーターをズレにくくする構造」である「アンカー構 造」として、
「上下のアンカーが適度な締め付けでサポーターのズレ上がり、
ズレ下がりを防ぎ、U字型テーピング機能を安定させます。」とあるにとど まり、「正面吊り領域」 「膝蓋骨を吊り上げ」 が るという記載は存在しない。
5 ? したがって、被告製品17は、構成要件B@を充足しない。
3 争点1-3(構成要件BAの「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために・・・本 体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し」の充足性)について (原告の主張) ? 被告製品部分4は、ほぼU字状の被告製品部分3の左右両端から上方へ連続10 して伸びており、「本体」の側面に設けられている。
他方で、構成要件BAの「側面圧迫領域」が「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫す る」とは、大腿骨と、その周囲の筋腱、例えば大腿四頭筋の両側面部分等を圧 迫することであるところ、被告特許の明細書(甲12)によれば、被告製品部 分2は、「膝関節サポーター10の着用者の大腿及び膝の外側面を支持するこ15 とで、支持部4による内側面に掛かる押圧力とのバランスを取り、着用者の安 定した起立状態を維持する」ため、被告製品部分4が「大腿骨及び周囲筋腱を 圧迫する」ことは明らかである。
? 被告の主張について ア これに対して、被告は、被告製品部分4が大腿骨を圧迫しないと主張する。
20 しかしながら、被告製品17は、その幅が約12cmであるのに対して、
ひざ頭周囲34〜37cm用であり、被告製品17を着用した際に、伸縮性 素材の弾性力により、着用者の膝の周囲を圧迫するため、被告製品部分4が 大腿骨並びに膝の周囲にある筋肉及び腱を圧迫することは明らかである。
また、被告製品17の製品説明(甲6)において、「U字型のテーピング25 編みが、ひざの・・・左右のブレを抑え」ると記載されているところ、膝の 左右のブレを抑制するためには、膝の左右のブレに対抗する力が被告製品部 16 分4から着用者の膝に加わる必要があるから、被告製品部分4は、膝の周囲 に対して押圧力を与えており、膝の周囲を圧迫しているといえる。このこと は、被告特許の明細書(甲12)における「支持部4は・・・内側側副靱帯 を支持することにより・・・膝の左右の振れを抑制することができる。・・・ 5 支持部4は・・・膝の左右の振れを抑制する副木のような役割を果たすこと ができる」との記載(段落【0032】)のほか、「・・・支持部4は、膝 関節サポーター10の着用者の膝に対して内側面から外側面に向けて強い 押圧力を与えることで、膝関節サポーター10の外側面側から膝に外力を受 けた場合に、外力を緩和する内側面から外側面に向けての反発力を生じさせ10 る・・・」との記載(段落【0034】)や、「支持部4は、膝関節サポー ター10の着用者の大腿及び膝の外側面を支持することで、支持部4による 内側面に掛かる押圧力とのバランスを取り、着用者の安定した起立状態を維 持する・・・」との記載(段落【0035】)にも裏付けられている。
そして、大腿骨の膝周辺には、大きな筋肉がなく、大腿骨と皮膚が極めて15 近接した状態となっているため、被告製品部分4は「大腿骨及び周囲筋腱を 圧迫する」といえる。また、大腿骨が大腿四頭筋に覆われている部分におい ても、被告製品部分4は「大腿骨を圧迫」する。すなわち、大腿四頭筋は、
膝関節伸展時に収縮して大腿骨を少なからず圧迫するところ、被告製品部分 4は、膝及びその周囲に押圧力を与えて圧迫するものであるから、大腿四頭20 筋を圧迫して大腿四頭筋の収縮を補助している。そうすると、被告製品部分 4は、大腿四頭筋を介して大腿骨を圧迫しており、「大腿骨を圧迫する」と いえる。
イ また、被告は、被告製品17が「関節裂隙部に作用」することはないと主 張する。
25 しかしながら、本件明細書等の段落【0002】の「関節裂隙部に作用」 するとは、関節裂隙部をより良い状態に保つという意味である。そして、上 17 記アのとおり、被告製品17は、「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫」しており、
これにより、関節裂隙部をより良い状態に保っている。
? したがって、被告製品17は、構成要件BAを充足する。
(被告の主張) 5 ? 被告製品部分4は、「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫」しない。
すなわち、被告製品17の製品説明(甲6)において、被告製品部分4が大 腿骨を圧迫するという記載はないし、被告特許の明細書(甲12)には、「大 腿骨」に係る言及は一切なく、「大腿骨を圧迫する」旨の記載も示唆も存在し ない。なお、そもそも被告製品17は、被告特許の明細書の記載における実施10 形態とはその構造が異なるから、被告特許の明細書の記載は、被告製品17が 構成要件BAを充足することの根拠とはならない。
? 原告の主張について ア これに対して、原告は、被告製品17の非着用時と着用時の周囲長を比較 することによって、被告製品17は、着用した際に伸縮性素材の弾性力によ15 り着用者の膝の周囲を圧迫するので、被告製品部分4が大腿骨並びに膝の周 囲にある筋肉及び腱を圧迫することは明らかであるなどと主張する。
しかしながら、膝部の形状に合わせて被告製品17が伸長するからという 理由で、被告製品部分4が「膝の周囲」、「大腿骨」及び「膝の周囲にある 筋肉及び腱」までをも圧迫するとの主張には、根拠がない。
20 イ そもそも、本件明細書等によれば、本件発明は、サポーターを織り上げ、
又は編み上げるに当たり、部分によって折り方や編み方を変化させることに より、伸縮性等の異なる部位を配置した一体編成・織成構造では、「膝関節 の任意の箇所に必要な押圧力を加えることができない」ということを課題と し(段落【0002】)、「本発明の・・・課題は、大腿骨・・・を圧迫す25 ることにより関節裂隙部に作用(する)」、「コンプレッションサポーター を提供すること」であるとして(段落【0005】)、その課題を解決する 18 ための手段として「大腿骨・・・を圧迫する」という手段を講じ(段落【0 006】)、本件発明の効果として「大腿骨・・・を圧迫することにより関 節連隙部に作用して、痛みを軽減し得るコンプレッションサポーターを提供 することができる」(段落【0020】)とするものである。このような本 5 件明細書等の記載からすれば、本件発明が挙げる従来のサポーターの課題と は、具体的には、「『関節裂隙部に作用』するように『大腿骨を圧迫する』 ことができない」ことであるといえる。
これに対して、被告製品17は、本件発明が挙げる「従来のサポーター」 と同様に、「一体編成・織成構造」の中で工夫をすることで、膝部の左右の10 ぶれを抑え、皮膚直下にある膝蓋腱への負担を減少する効果を有するもので あるが、この効果を超えて、膝部において大腿四頭筋腱より更に靱帯内部に ある大腿骨にまで加圧することはできず、「関節裂隙部に作用」することも ない。
なお、原告は、「関節裂隙部に作用」するとは、関節裂隙部をより良い状15 態に保つという意味であるなどと主張するが、上記主張は根拠を欠く上に、
被告製品17が上記のような効果を有することの立証もされていない。
ウ また、原告は、大腿骨の膝周辺には大きな筋肉がないとか、大腿四頭筋は、
膝関節伸展時に収縮して大腿骨を少なからず圧迫するから、被告製品部分4 は、大腿四頭筋を介して大腿骨を圧迫するなど縷々主張する。
20 しかしながら、これらの主張には何らの根拠がない。
? したがって、被告製品17は、構成要件BAを充足しない。
4 争点1-4(構成要件Cの「樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した構成」 の充足性)について (原告の主張)25 ? 「固着」とは、「かたくしっかりとつくこと。一定の場所に留まって移らな いこと」をいうところ、被告製品17は、被告製品部分2が低伸縮性のナイロ 19 ン繊維(樹脂)より成り、これが「本体」に対して固くしっかりと付いている から、「固着」しているといえる。
? 被告の主張について ア 「本体」について 5 被告は、被告製品部分1が「本体」に該当しないと主張するが、被告製品 部分1が「本体」に該当することは、前記1(原告の主張)欄記載のとおり である。
イ 「固着」について 被告は、「固着」とは、「本体」の表面の一部に、「本体」とは別の「樹10 脂より成る低伸縮性材料」を「固着」したことをいうと主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲には、「樹脂より成る『低伸縮 性材料』を『本体』に固着した」と記載されているのみであり、「本体」の 表面の一部に「低伸縮性材料」を「固着」するなどとは一切規定されていな い。
15 また、本件明細書等の段落【0032】には、「固着」の態様として「熱 溶着性樹脂を用いる場合には直接本体20に低伸縮性材料34を熱溶着す る手段も選択し得る」とも記載されており、「低伸縮性材料」を「本体」に 直接熱溶着した場合、「本体」の繊維に低伸縮性材料が染み込み、繊維と「低 伸縮性材料」が一体となるから、本件明細書等には、固着の態様として、被20 告が主張する「一体編成・織成構造」と同様の記載もされている。
そして、「本体」と同一平面に沿って「低伸縮領域」が設けられた場合で あっても、「ほぼU字型の正面吊り領域・・・により適切に膝蓋靱帯を圧迫 し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定し」、「大腿骨・・・及 び周囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用して、痛みを軽減し得る」25 (本件明細書等の段落【0020】)という本件発明の作用効果を奏するこ とができる。
20 したがって、「低伸縮性材料」の「固着」につき、「本体」の表面の一部 に設けられたものに限定する理由はない。
ウ 「樹脂より成る」について 被告は、被告製品部分2を構成する合成繊維(ナイロン繊維) 「樹脂」 は、
5 に含まれないと主張する。
しかしながら、「合成樹脂」は「合成高分子化合物の総称」であり、「合 成繊維」は「合成高分子化合物を、種々の方法で紡いで繊維としたもの。ナ イロン・テトロン・ビニロンなど」である(甲17)。また、本件明細書等 にも、低伸縮性材料の例として「ナイロン」が記載されている(段落【0010 12】)。
したがって、構成要件Cにおける「樹脂」には「合成繊維」が含まれると 解すべきである。
? 以上によれば、被告製品17は、構成要件Cを充足する。
(被告の主張)15 ? 「本体」について 被告製品部分1が「本体」に該当しないことは、前記1(被告の主張)欄記 載のとおりである。
? 「固着」について ア 「固着」の意義について20 本件発明は、別材料固着構造を採用したものであり、本件明細書等の記載 (段落【0009】、【0012】、【0031】、【0032】、【図4】 等)からしても、「上記低伸縮領域は、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に 固着した構造を有している」とは、「本体」の表面の一部に、「本体」とは 別の「樹脂より成る低伸縮性材料」を「固着」したものをいうと解すべきで25 ある。
イ 被告製品17について 21 被告製品17は、一体編成・織成構造を特徴とするものであり、「本体」 の表面の一部に「低伸縮性材料」を「固着」するものではない。
ウ 原告の主張について 原告は、「本体」と同一平面に沿って「低伸縮領域」が設けられた場合で 5 も、本件発明の作用効果を奏することができると主張する。
しかしながら、そもそも構造の異なる製品について、本件発明と同様の効 果を奏するという理由で、発明の技術的範囲に含まれることはなく、原告の 主張は失当である。さらに、「本体」と同一平面に沿って「低伸縮領域」が 設けられた場合でも本件発明の作用効果を奏することができるという点に10 ついて、何らの立証もされていない。
? 「樹脂より成る」について ア 「樹脂より成る」の意義について 構成要件Cにおいて、「低伸縮性材料」は「樹脂より成る」ものであると されるが、「樹脂」の一種である「合成樹脂」には、一般的に「合成繊維、
15 合成ゴム」は含まれない(乙1、2、7)。
また、本件明細書等においても、「低伸縮性材料としては、例えばナイロ ン、ポリエステル、ウレタンなどの樹脂材料を使用することができ、特には ウレタン系の樹脂材料が適している。」(段落【0012】)との記載があ る一方で、
「本体20は綿糸及び合成繊維糸を周方向に伸縮性を持つように20 編織したもので、低伸縮性材料34はウレタン系樹脂材料のフィルムより 成る多層構造を有し、固着手段37には上記ウレタンフィルムより成る多 層構造の内の一部を用いて本体20に固着させている。」(段落【003 2】)との記載があり、「本体」に用いる「合成繊維」と「低伸縮性材料」 に用いる「樹脂材料」とが明確に書き分けられている。
25 そうすると、構成要件Cの「樹脂」に「合成繊維」は含まれないと解すべ きである。
22 イ 被告製品17について 被告製品17は、低伸縮領域を含め、合成繊維で編み立てられたものであ り、「樹脂より成る」ものではない。
ウ 原告の主張について 5 これに対して、原告は、「ナイロン」は「合成繊維」に含まれるところ、
「低伸縮性材料」として「ナイロン、ポリエステル、ウレタンなどの樹脂材 料を使用することができ」る(本件明細書等の段落【0012】)とされて いることから、「低伸縮性材料」には「合成繊維」が含まれる旨主張する。
しかしながら、同段落において樹脂材料の一例として記載されている「ナ10 イロン」は、ナイロン繊維でなく、樹脂であるプラスチックを指しており、
両者は別物であって、化学大辞典6(乙9)においても、「ナイロン繊維」 は、「ナイロン樹脂」と区別されている。また、樹脂材料の一例として記載 されている「ポリエステル」についても、化学大辞典8(乙10)において 「ポリエステル系合成繊維」と「ポリエステル樹脂」は明確に区別されてお15 り、両者は別物である。そうすると、同段落における「例えばナイロン、ポ リエステル、ウレタンなどの樹脂材料を使用することができ」との記載にお ける「ナイロン」及び「ポリエステル」は、「合成繊維」である「ナイロン 繊維」及び「ポリエステル系合成繊維」ではなく、「合成樹脂」である「プ ラスチック」及び「ポリエステル樹脂」を意味する。
20 したがって、上記明細書の記載は、原告の主張の根拠とはならない。
? 以上によれば、被告製品17は、構成要件Cを充足しない。
5 争点1-5(均等侵害の成否)について (原告の主張) 仮に、本件発明を被告が主張する「別材料固着構造」のものに限定解釈し、その25 結果として、「一体編成・織成構造」であるとされる被告製品17が本件発明の技 術的範囲に文言上属さないとしても、被告製品17は、本件発明と均等である。
23 ? 第1要件 本件発明の課題は、「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節 を良好に固定するコンプレッションサポーターを提供すること」であるところ、
当該課題は、低伸縮領域であるほぼU字型の「正面吊り領域」が「膝蓋靱帯を 5 圧迫」するとともに、「膝蓋骨を吊り上」げて「大腿四頭筋の機能を補助」す ることで解決されるものである(本件明細書等の段落【0010】、【001 1】)。そうすると、本件発明の本質的部分は、「低伸縮領域として、膝蓋靱 帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、
膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域」を備10 えるという構成であると評価できる。
また、本件発明の上記課題は、被告の主張する「別材料固着構造」ではなく ても解決可能であるため、被告の主張する「別材料固着構造」は、本件発明の 本質的部分ではない。
したがって、仮に、本件発明が「別材料固着構造」のものに限定解釈される15 としても、
「別材料固着構造」であることは、本件発明の本質的部分ではない。
? 第2要件 本件発明の構成要件Bにおける「正面吊り領域」と、被告製品部分3は、目 的及び作用効果を共通にするから、置換可能性がある。
? 第3要件20 被告の主張によれば、「別材料固着構造」及び「一体編成・織成構造」は、
サポーターの構造として、本件発明の出願前より周知の構造であったことにな るから、「別材料固着構造」のサポーターを「一体編成・織成構造」のサポー ターに置き換えることは、被告製品17の製造の時点において、当業者が容易 に想到することができたものであり、置換容易性がある。
25 (被告の主張) ? 原告は、被告製品17が「一体編成・織成構造」を採用したものであるのに 24 対して、本件発明は「別材料固着構造」を採用したものである点で「相違」が あるとして、均等侵害を主張する。
? しかしながら、均等侵害が成立するためには、特許請求の範囲に記載された 構成中のいかなる部分が対象製品と「異なる部分」であるかを特定した上で、
5 当該部分が均等侵害に係る5要件を充たす必要がある。それにもかかわらず、
原告は、特許請求の範囲の記載ではなく、被告製品17と本件発明の基本構造 の相違について縷々論じており、主張自体失当である。
? また、本件明細書等では、「一体編成・織成構造」の製品が意識的に除外さ れているのであるから(段落【0002】等)、第5要件を充たさない。
10 6 争点2-1(乙3発明に基づく新規性の欠如)について (被告の主張) 構成要件充足性における原告の主張を前提とした場合、乙3発明は、以下のとお り、本件発明の構成要件を全て備えているから、本件発明は、新規性を欠く。
? 構成要件Aについて15 ア 乙3発明の要旨 「高伸縮性のウェーブ編地より成り膝部に着用し得る形態の管状本体を 具備し、上記管状本体よりも伸縮性の低いパッドを管状本体に設け、上記パ ッドと管状本体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートす るサポーター」20 イ 要旨認定の理由 乙3には、乙3発明は、「伸縮性サポータ素材から成る管状の膝関節用サ ポータであって、・・・前記サポータ(10a)は、高伸縮性のウェーブ編 地(40)から成り・・・管状本体(20)から構成されており、前記サポ ータ(10a)を装着した際に・・・」とある。そして、原告は、「本体」25 は「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態」であればよく、その他の限 定はないと主張する。上記原告の主張によれば、乙3発明は、「高伸縮性の 25 ウェーブ編地より成り膝部に着用し得る形態の管状本体を具備し」といえる。
また、乙3には、「パッド50は、軟質又は軟質弾性材料、好ましくは粘 弾性シリコーンゴム又は圧力によって変形可能な弾性のある圧縮可能なシ リコーンゴムから成り」とあるところ、「パッド」を構成する軟質弾性素材 5 (例えば、シリコーンゴム)は、管状本体を構成する「高伸縮性のウェーブ 編地」よりも伸縮性が低いと考えられるから、パッドは「上記管状本体より も伸縮性の低い」ものといえる。
そして、以下の図にあるように、高伸縮性のウェーブ編地(40)にパッ ド(50)が設けられているから、乙3発明は、「上記管状本体よりも伸縮10 性の低いパッドを管状本体に設け」ている。
15 【図】20 さらに、乙3には、「本発明は、・・・これによって以下のことが達成さ れる。・・・膝関節及び膝蓋骨の負担軽減。」とあるから、乙3発明は、「上 記パッドと管状本体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポー トするサポーター」といえる。
25 ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
26 ? 構成要件Bについて ア 乙3発明の要旨 「パッドとして @ 膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助 5 するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、管状本体正面に設け た正面吊り領域を具備し、
A また、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼU字型の正面吊 り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、管状本体両側面に設 けた側面圧迫領域を具備し、」10 イ 要旨認定の理由 @について パッド(50)はU字型である。そして、原告は、膝部分にU字型の低 伸縮領域があれば、伸縮性素材の弾性力によって本件発明の構成要件B@ 及びAを充足すると主張する。上記原告の主張によれば、「パッド」は、
15 「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助 するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型・・・」といえる。そし て、パッド(50)は、管状本体正面に設けられているから、「管状本体 正面に設けた正面吊り領域を具備し」ている。
Aについて20 パッド(50)は、左右両端から上方へ連続して伸びる方向に設けられ ているから、「上記ほぼU字型の正面吊り領域の左右両端から上方へ連続 して伸びる方向に、管状本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し」てい る。そして、パッド(50)はU字型であるところ、前記 記載の原告の 主張によれば、パッド(50)は、「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」と25 いえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点 27 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Cについて ア 乙3発明の要旨 「上記パッドは、シリコーンゴム等より成る軟質弾性材料を管状本体に固 5 着した構成を有している」 イ 要旨認定の理由 「パッド50は、軟質又は軟質弾性材料、好ましくは粘弾性シリコーンゴ ム又は圧力によって変形可能な弾性のある圧縮可能なシリコーンゴムから 成」るところ、
「上記パッドは、シリコーンゴム等により成る軟質弾性材料」10 であるといえる。そして、これがサポータに固着しているから、
「パッドは、
シリコーンゴム等より成る弾性材料を管状本体に固着した構成を有してい る」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
15 ? 構成要件Dについて ア 乙3発明の要旨 「コンプレッションサポータ」 イ 要旨認定の理由 乙3発明の膝関節用サポータによって、「関節の軟部組織への間欠的な加20 圧、及びマッサージの実行」などを実現するのであるから、当該膝サポータ は「コンプレッションサポータ」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 原告の主張について25 ア 原告は、乙3発明の膝部のU字型部分は、本体よりも高伸縮であるから、
乙3発明には構成要件AないしCに相当する構成がないと主張する。
28 しかしながら、乙3発明では、「パッド50」は、例えば「硬度が40シ ョア硬度Aのシリコーンゴム」とされ、すなわち文具の消しゴム以上の硬度 であるとされるのに対し、「管状本体20」は「高伸縮性のウェーブ編地」 であるから、U字型部分の伸縮性が本体よりも低いことは自明である。
5 イ 原告は、乙3発明の「パッド50」は、膝蓋骨上の領域、すなわち、膝蓋 骨に載るように、又は膝蓋骨よりも大腿側に位置するように着用者の脚に着 用されるものであるから、乙3発明は、構成要件Bの「膝蓋骨の下部を取り 囲むほぼU字型」という構成を備えていないと主張する。
しかしながら、乙3の図のとおり、「膝蓋骨上の領域」というのは、膝蓋10 骨をU字型で囲むように上方に配置することを意味することは自明である。
加えて、乙3には、「(パッドは)下部においては、パッドのプロファイル が、脛骨の頭部、及び膝蓋靱帯の走りに適合している」と記載されていると ころ、脛骨及び膝蓋靱帯は膝蓋骨の下部にあることから、乙3発明のU字型 部分が膝蓋骨の下部を取り囲む構成となっていることは自明である。
15 ウ 原告は、乙3発明について、本件発明のように「膝蓋骨を吊り上げ、大腿 四頭筋の機能を補助する」こと、すなわち「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味 に押圧ないし圧迫してサポートすること」を目的とするものではないと主張 する。
しかしながら、原告は、構成要件Bについて、被告製品17において「正20 面吊り領域」が「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ」ること、「側 面圧迫領域」が「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」ことについて具体的に主 張・立証することなく、膝部にU字型の低伸縮領域があれば、伸縮性素材の 弾性力によって上記の各構成が実現されると主張している。そのため、被告 は、構成要件充足論における原告の上記解釈が仮に認められるのであれば、
25 乙3発明の膝部にU字型の低伸縮領域がある以上、伸縮性素材の弾性力によ って上記の各構成が実現されることになるから新規性がないと主張するも 29 のである。これに対し、原告は、無効論においては、乙3発明が少なくとも 構成要件Bの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助する」との構成 を備えていないと主張するのであり、構成要件充足論の主張と完全に矛盾し ている。
5 したがって、原告の無効論における主張を前提とすれば、被告製品17は、
本件発明の技術的範囲に属することはないし、他方で、原告が構成要件充足 論で主張するように、膝部にU字型の低伸縮領域があるだけで本件発明の技 術的範囲に属するというのであれば、本件発明と乙3発明との相違が認めら れないことになるから、本件発明は新規性を欠くことになる。
10 (原告の主張) 乙3発明は、以下のとおり、本件発明の構成を備えておらず、本件発明は、乙3 発明とは同一ではないので、新規性が認められる。
? 構成要件AないしCについて 被告は、乙3発明の「パッド」を構成する軟質弾性素材は、管状本体を構成15 する「高伸縮性のウェーブ編地」よりも伸縮性が低いと考えられるため、乙3 発明の「パッド」が本件発明の「低伸縮領域」に相当すると主張する。
しかしながら、乙3には、「パッド50は、軟質又は軟質弾性素材、好まし くは、粘着性シリコーンゴム又は圧力によって変形可能な弾性のある圧縮可能 なシリコーンゴムから成り」と記載されているのみであり、「パッド50」が20 「管状本体20」よりも伸縮性が低いことは一切記載も示唆もされていない。
そもそも、乙3発明は、「膝蓋骨とその下にある軟骨への望ましくない圧力 の回避」 「膝蓋骨への接触圧の低下」 及び を目的とするものである。すなわち、
乙3発明は、転倒時等において、衝撃から関節及び関節軟骨を守る膝蓋骨の作 用を補助することや、膝蓋骨の負荷軽減を目的とするものであり、乙3発明の25 「パッド50」 軟質材料又は軟質弾性素材で構成されているのであるから、
は、
乙3発明の「パッド50」は、伸縮性が高いと考えられる。そうすると、乙3 30 発明の「パッド50」は、「管状本体20」よりも低伸縮というよりは、むし ろ「管状本体20」よりも高伸縮であると考えるのが自然である。
したがって、乙3発明の「パッド」は、本件発明の「低伸縮領域」に相当し ないから、乙3発明は、「低伸縮領域」を前提とした構成である構成要件Aな 5 いしCを備えていない。
? 構成要件Bについて ア 被告は、乙3発明の「パッド50」がU字型に構成されているため、「パ ッド」は、膝靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を 補助するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型との構成を備えている10 と主張する。
しかしながら、乙3の特許請求の範囲には、「前記サポータ(10a)を 装着した際に、膝蓋骨上の領域に位置し、上方に向けて開いており、大腿四 頭筋腱を自由にする、軟質材料又は軟質性材料から成るパッド50・・・」 と記載されており、「パッド50」は、膝蓋骨上の領域、すなわち、膝蓋骨15 に載るように、又は膝蓋骨よりも大腿側に位置するように着用者の膝に着用 されるものであるから、乙3発明は、構成要件B@の「膝蓋骨の下部を取り 囲むほぼU字型」という構成を備えていない。
イ 仮に、「パッド50」が膝蓋骨の下部に位置するものであったとしても、
乙3発明により奏される効果は、「膝関節及び膝蓋骨の負荷軽減」及び「関20 節の軟部組織への間欠的な加圧、及びマッサージの実行」以外に、「膝蓋骨 とその下にある軟骨への望ましくない圧力の回避」、「膝蓋骨への接触圧の 低下」等がある。乙3のこれらの記載からすると、乙3発明は、「関節の軟 部組織への間欠的な加圧、及びマッサージの実行」をするとともに、「膝蓋 骨等に対する外部からの圧力を減少」することで、「膝関節及び膝蓋骨の負25 荷軽減」を可能とすることを目的とすると考えられる。
そのため、乙3発明は、本件発明のように「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭 31 筋の機能を補助する」こと、すなわち、「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に 押圧ないし圧迫してサポートすること」 (本件明細書等の段落【0010】) を目的とするものではない。
このことは、乙3においては、「膝蓋骨を正しい位置に引っ張る大腿四頭 5 筋腱の機能を妨げない」と記載されているのみで、「膝蓋骨を吊り上げ、大 腿四頭筋の機能を補助する」旨の記載がないことからも明らかである。
したがって、乙3発明は、構成要件B@の「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭 筋の機能を補助する」との構成を備えていない。
7 争点2-2(乙4発明に基づく新規性の欠如)について10 (被告の主張) 構成要件充足性における原告の主張を前提とした場合、乙4発明は、以下のとお り、本件発明の構成要件を全て備えているから、本件発明は、新規性を欠く。
? 構成要件Aについて ア 乙4発明の要旨15 「伸縮性材料から成り膝部に着用し得る形態のサポータ部分を具備し、上 記サポータ部分よりも伸縮性の低いパッドをサポータ部分に設け、上記パッ ドとサポータ部分の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポート するサポータ」 イ 要旨認定の理由20 乙4発明は、「伸縮性材料からなり、着脱容易な膝サポータ」である。そ して、原告は、「本体」は「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態」で あればよく、その他の限定はないと主張する。上記原告の主張によれば、乙 4発明は、「伸縮性材料から成り膝部に着用し得る形態のサポータ部分を具 備し」ている。
25 また、乙4には、「本発明は、快適な装着感の下に、膝関節の同時のガイ ドによって膝関節の最適な負担軽減を可能にし、・・・」とあることから、
32 サポータ部分は快適な装着感を有しており、他方、「特にパッドは、膝サポ ータに組み込まれた弾性のU字要素であり、そのU字要素は、膝蓋骨用開口 部を横及び下から囲んでいる。」、「パッドを形成する膨らみの主要体積が 下部膝蓋靱帯の上に位置していることが好ましく、これによって最適な圧力 5 をかけることができる。」とあり、パッドにより圧力をかけるとされている ことからすると、パッドは、上記サポータ部分よりも伸縮性が低いことが必 要であるといえる。
そして、以下の図において、パッド(4)はサポータ(1)に設けられて いるから、乙4発明は、「上記サポータ部分よりも伸縮性の低いパッドをサ10 ポータ部分に設け」ている。
1520 【図】 さらに、「パッドは、大腿骨膝蓋骨間滑り軸受の負荷を軽減する押圧力が 膝蓋靱帯に生じるように形成されていることを特徴とする」から、乙4発明25 は、「上記パッドとサポータ部分の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋 腱をサポートするサポータ」といえる。
33 ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Bについて ア 乙4発明の要旨 5 「パッドとして、
@ 膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助 するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、サポータ部分正面に 設けた正面吊り領域を具備し、
A また、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼU字型の正面吊10 り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、サポータ部分両側面 に設けた側面圧迫領域を具備し、」 イ 要旨認定の理由 @について パッド(4)は、U字型である。そして、原告は、膝部分にU字型の低15 伸縮領域があれば、伸縮性素材の弾性力によって本件発明の構成要件B@ 及びAを充足すると主張する。上記原告の主張によれば、「パッド」は、
「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助 するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型」といえる。
そして、パッド(4)は、サポータ部分の正面に設けられているから、
20 「サポータ部分正面に設けた正面吊り領域を具備し」ている。
Aについて パッド(4)には、左右両端から上方へ連続して伸びる方向に設けられ ている部分があるから、「上記ほぼU字型の正面吊り領域の左右両端から 上方へ連続して伸びる方向に、サポータ部分両側面に設けた側面圧迫領域25 を具備し」ている。そして、上記 記載の原告の主張によれば、パッドは、
「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」といえる。
34 ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Cについて ア 乙4発明の要旨 5 「上記パッドは、シリコーン等より成る弾性材料をサポータに固着した構 成を有している」 イ 要旨認定の理由 パッドたる「U字要素は通常、上記したように、弾性材料から形成されて いる。弾性材料は、当業者に知られており、その際、シリコーン材料、ゴム10 等は、単に例として挙げられるに過ぎない。」ところ、「上記パッドは、シ リコーン等より成る弾性材料」であるといえる。
そして、これがサポータに固着しているから、「パッドは、シリコーンゴ ム等より成る弾性材料をサポータに固着した構造を有している」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点15 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Dについて ア 乙4発明の要旨 「コンプレッションサポータ」 イ 要旨認定の理由20 乙4発明の膝サポータによって、「下部膝蓋靱帯にかかる圧力によって、
膝蓋骨の負荷軽減、及び、膝蓋骨滑り軸受内における押圧力の軽減が達成さ れる。」のであるから、当該サポータは、「コンプレッションサポータ」と いえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点25 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 原告の主張について 35 ア 原告は、乙4発明の膝部のU字型部分は、本体よりも高伸縮であるから、
乙4発明には構成要件AないしCに相当する構成がないと主張する。
しかしながら、乙4発明には、例えば、「パッドがU字形状で上向きに開 いていることによって、下部膝蓋靱帯への圧力が高まり、それによって膝蓋 5 骨の負荷軽減が達成される」旨の開示があり、U字型部分が下部膝蓋骨を圧 迫する、すなわち、低伸縮性であることは明示されている。
イ 原告は、乙4発明は、本件発明のように「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋 の機能を補助する」こと、すなわち「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押圧 ないし圧迫してサポートすること」を目的とするものではないと主張する。
10 しかしながら、原告は、構成要件Bについて、被告製品17において「正 面吊り領域」が「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ」ること、「側 面圧迫領域」が「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」ことについて具体的に主 張立証することなく、膝部にU字型の低伸縮領域があれば、伸縮性素材の弾 性力によって上記の各構成が実現されると主張している。そのため、被告は、
15 構成要件充足論における原告の上記解釈が仮に認められるのであれば、乙4 発明の膝部にU字型の低伸縮領域がある以上、伸縮性素材の弾性力によって 上記の各構成が実現されることになるから新規性がないと主張するもので ある。これに対し、原告は、無効論においては、乙4発明が少なくとも構成 要件Bの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助する」との構成を備20 えていないと主張するのであり、構成要件充足論の主張と完全に矛盾してい る。
したがって、原告の無効論における主張を前提とすれば、被告製品17は、
本件発明の技術的範囲に属することはないし、他方で、原告が構成要件充足 論で主張するように、膝部にU字型の低伸縮領域があるだけで本件発明の技25 術的範囲に属するというのであれば、本件発明と乙4発明との相違が認めら れないことになるから、本件発明は新規性を欠くことになる。
36 (原告の主張) 乙4発明は、以下のとおり、本件発明の構成を備えておらず、本件発明は、乙4 発明とは同一ではないので、新規性が認められる。
? 構成要件AないしCについて 5 被告は、乙4には、「パッドを形成する膨らみの主要体積が下部膝蓋靱帯の 上に位置していることが好ましく、これによって最適な圧力をかけることがで きる」とあるから、パッドは、上記サポータ部分よりも伸縮性が低いことが必 要であるため、乙4発明の「パッド」が本件発明の「低伸縮領域」に相当する と主張する。
10 しかしながら、乙4には、「U字要素(パッド)は・・・弾性材料から形成 されている。弾性材料は・・・シリコーン材料、ゴム等」であると記載されて いるのみであり、乙4発明の「パッド」が「サポータ部分」よりも伸縮性が低 いことは一切記載も示唆もされていない。
そもそも、乙4発明は、「手術後で膝関節に炎症がある場合」や「スポーツ15 による怪我・・・の後」等に適用される従来のサポータにおいて、「膝関節の 最適な負荷軽減」を可能にすることを目的とするものであるため、乙4発明の 「パッド」は、柔らかい材料で形成されることが前提であると考えられる。こ のことからすれば、乙4発明の「パッド」は、「サポータ部分」よりも低伸縮 というよりは、むしろ「サポータ部分」よりも高伸縮であると考えるのが自然20 である。
したがって、乙4発明の「パッド」は、本件発明の「低伸縮領域」に相当し ないから、乙4発明は、「低伸縮領域」を前提とした構成である構成要件Aな いしCを備えていない。
? 構成要件Bについて25 被告は、乙4発明の「パッド」がU字型に構成されているため、「パッド」 は、膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助す 37 るために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型との構成を備えていると主張す る。
しかしながら、乙4には、「パッドは・・・押圧力が膝蓋靱帯に生じるよう に形成されている」と記載され、「パッドを形成する膨らみの主要体積が下部 5 膝蓋靱帯の上に位置していることが好ましく、これによって最適な圧力をかけ ることができる」と記載されている。乙4のこれらの記載からすると、乙4発 明は、
「パッド」により「下部膝蓋靱帯を膝の前面から膝裏に向けて押圧する」 ことで、「膝蓋骨の負荷軽減」等を達成することを目的とするものである。
そうすると、乙4発明は、本件発明のように「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭10 筋の機能を補助する」こと、すなわち、「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押 圧ないし圧迫してサポートすること」(本件明細書等の段落【0010】)を 目的とするものではない。
したがって、乙4発明は、構成要件Bの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の 機能を補助する」との構成を備えていない。
15 8 争点2-3(乙5発明に基づく新規性の欠如)について (被告の主張) 構成要件充足性における原告の主張を前提とした場合、乙5発明は、以下のとお り、本件発明の構成要件を全て備えているから、本件発明は、新規性を欠く。
? 構成要件Aについて20 ア 乙5発明の要旨 「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の管状の基体を具備し、上記 管状の基体よりも伸縮性の低い安定化帯部を管状の基体に設け、上記安定化 帯部と管状の基体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポート するサポータ」25 イ 要旨認定の理由 乙5には、乙5発明について、「図1〜図3に示された膝サポータは、管 38 状の基体1を有し、その基体は、伸縮性の繊維材料から成り、編み、メリヤ ス編み又は織り、又はその他の手段から製造可能であり、縦方向(図3の矢 印L)と横方向(矢印Q)の両方に弾性の伸張性を有する。」との記載があ る。そして、原告は、「本体」は「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形 5 態」であればよく、その他の限定はないと主張する。上記原告の主張によれ ば、乙5発明は、「伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の基体を具備 し」ている。
10 15 20 【図1】 【図2】 39 5 10 【図3】 また、乙5には、「股関節をさらに安定させるために、特に望ましくない15 横方向の動きに関して、安定化帯部4又は5が、膝サポータの各側面に固定 されている。・・・これによって、2つの帯部4及び5は、図2により正面 視において、ほぼV字型を形成しており、それら2つの帯部の交点は、膝関 節の下の中央の領域にある。」と記載されているほか、乙5発明のサポータ の「V字型の安定化部材4は、必要に応じてシリコーンゴムによって補強す20 ることができ、関節包-靱帯構造の傷につながる膝の望ましくない振り子運 動を制限する。」(ここで、「安定化部材」は「安定化帯部」と同じ部材を 指す。)と記載されているから、安定化帯部は、管状の基体よりも伸縮性が 低いといえ、「上記管状の基体よりも伸縮性の低い安定化帯部を管状の基体 に設け」といえる。
25 そして、「望ましい加温効果に加えて、説明されている配置によって、膝 包靱帯器官の受動的構造の優れた外部安定化がもたらされる。その際、大腿 40 部における加温及び加圧効果は、筋肉の能動的安定化を改善する。」との記 載から、乙5発明は、「上記安定化帯部と管状の基体の伸縮性の相違により 膝関節部及び周囲筋腱をサポートするサポーターであって」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点 5 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Bについて ア 乙5発明の要旨 「安定化帯部として、
@ 膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助10 するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼV字型に、管状の基体正面に設 けた正面吊り領域を具備し、
A また、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼV字型の正面吊 り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、管状の基体両側面に 設けた側面圧迫領域を具備し、」15 イ 要旨認定の理由 @について 安定化帯部(4・5)は、ほぼV字型である。そして、原告は、膝部分 にU字型の低伸縮領域があれば、伸縮性素材の弾性力によって本件発明の 構成要件B@及びAを充足すると主張する。上記原告の主張によれば、
「安20 定化帯部」は、「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭 筋の機能を補助するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型・・・」 といえる。そして、安定化帯部(4・5)は、管状の基体正面に設けられ ているから、「管状の基体正面に設けた正面吊り領域を具備し」ている。
Aについて25 乙5の「膝関節をさらに安定させるために、特に望ましくない横方向の 動きに関して、安定化帯部4又は5が、膝サポータの各側面に固定されて 41 いる。・・・これによって、2つの帯部4及び5は、図2による正面視に おいて、ほぼV字型を形成しており、それら2つの帯部の交点は、膝関節 の下の中央の領域にある。」との記載から、「上記ほぼV字型の正面吊り 領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、管状の基体両側面に設 5 けた側面圧迫領域を具備し」ている。そして、安定化帯部(4・5)はほ ぼV字型であるところ、前記 記載の原告の主張によれば、
「安定化帯部」 は「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点 以上によれば、相違点はなく一致する。
10 ? 構成要件Cについて ア 乙5発明の要旨 「上記安定化帯部はシリコーンゴムより成る低伸縮性材料を管状の基体に 固着した構造を有している」 イ 要旨認定の理由15 乙5の「V字型の安定化部材4は、必要に応じてシリコーンゴムによって 補強することができ、関節包―靱帯構造の傷につながる膝の望ましくない 振り子運動を制限する。自然で生理的な動きは、上記サポータによって妨げ られない。」との記載から、「上記安定化帯部はシリコーンゴムにより成る 低伸縮性材料」であるといえる。
20 そして、「説明した実施形態例は、本発明の範囲内において当業者が様々 に変更することができる。例えば、安定化ゾーン4を、縫い付け、溶接、又 は、接着することが可能であり、 との記載から、
」 上記安定化帯部は、 ・ 「・ ・ 管状の基体に固着した構成を有している」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点25 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 構成要件Dについて 42 ア 乙5発明の要旨 「コンプレッションサポーター」 イ 要旨認定の理由 「・・・伸縮性膝サポータを提案することである。それによって、垂直方 5 向に横切る水平面内における、膝の『回転』運動が実質的に防止されるか、
少なくとも大幅に低減される。その結果、負傷した膝又は保護されるべき膝 が、安全にサポート及びガイドされる。」との記載から、乙5発明のサポー ターは「コンプレッションサポーター」といえる。
ウ 本件発明との一致点・相違点10 以上によれば、相違点はなく一致する。
? 原告の主張について ア 原告は、乙5発明の膝部のV字型部分は、本体よりも高伸縮であるから、
乙5発明には構成要件AないしCに相当する構成がないと主張する。
しかしながら、乙5には、例えば、「V字型の安定化部材4は、必要に応15 じてシリコーンゴムによって補強することができ、関節包-靱帯構造の傷に つながる膝の望ましくない振り子運動を制限する」旨の記載があり、V字型 部分が固い(すなわち低伸縮である)ことが明示されている。
イ 原告は、乙5発明は、本件発明のように「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋 の機能を補助する」こと、すなわち「膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押圧20 ないし圧迫してサポートすること」を目的とするものではないと主張する。
しかしながら、原告は、構成要件Bについて、被告製品17において「正 面吊り領域」が「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ」ること、「側 面圧迫領域」が「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」ことについて具体的に主 張・立証することなく、膝部にU字型の低伸縮領域があれば、伸縮性素材の25 弾性力によって上記の各構成が実現されると主張している。そのため、被告 は、構成要件充足論における原告の上記解釈が仮に認められるのであれば、
43 乙5発明の膝部にV字型の低伸縮領域がある以上、伸縮性素材の弾性力によ って上記の各構成が実現されることになるから新規性がないと主張するも のである。これに対し、原告は、無効論においては、乙5発明が少なくとも 構成要件Bの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助する」との構成 5 を備えていないと主張するのであり、構成要件充足論の主張と完全に矛盾し ている。
したがって、原告の無効論における主張を前提とすれば、被告製品17は、
本件発明の技術的範囲に属することはないし、他方で、原告が構成要件充足 論で主張するように、膝部にU字型の低伸縮領域があるだけで本件発明の技10 術的範囲に属するというのであれば、本件発明と乙5発明との相違が認めら れないことになるから、本件発明は新規性を欠くことになる。
(原告の主張) 乙5発明は、以下のとおり、本件発明の構成を備えておらず、本件発明は、乙5 発明とは同一ではないので、新規性が認められる。
15 ? 構成要件AないしCについて 被告は、乙5には、乙5発明の「V字型の安定化部材4」は、「必要に応じ てシリコーンゴムによって補強することができ、関節包-靱帯構造の傷につな がる膝の望ましくない振り子運動を制限する」と記載されているから、安定化 帯部は、管状の基体よりも伸縮性が低いといえるため、本件発明の「低伸縮領20 域」に相当すると主張する。
しかしながら、乙5には、「V字型の安定化部材4は、必要に応じてシリコ ーンゴムによって補強することができ」と記載されているのみであり、「安定 化部材(安定化帯部)」が「管状の基体1」よりも伸縮性が低いことは一切記 載も示唆もされていない。
25 したがって、乙5発明の「安定化帯部」は、本件発明の「低伸縮領域」に相 当しないから、乙5発明は、「低伸縮領域」を前提とした構成である構成要件 44 AないしCを備えていない。
? 構成要件Bについて 被告は、乙5発明の「安定化帯部(4・5)」がV字型に構成されているた め、「安定化帯部」は、膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四 5 頭筋の機能を補助するために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型との構成を 備えていると主張する。
しかしながら、乙5には、「本発明の課題は・・・膝の『回転安定化』を達 成する、上記のタイプの伸縮性膝サポータを提案することである」と記載され、
それにより、「垂直方向に横切る水平面内における、膝の『回転』運動が実質10 的に防止されるか、少なくとも大幅に低減される。その結果、負傷した膝又は 保護されるべき膝が、安全にサポート及びガイドされる」と記載されている。
また、乙5には、「膝関節をさらに安定させるために、特に望ましくない横方 向の動きに関して、安定化帯部4又は5が、膝サポータの各側面に固定されて いる」と記載されている。乙5のこれらの記載からすると、乙5発明は、「安15 定化帯部」が膝の両側面を加圧することにより、「横方向における膝の回転運 動(膝の左右のブレ)を防止又は大幅に低減」することで、「膝をサポート及 びガイド」することを目的とするものである。
そうすると、乙5発明は、本件発明のように「膝蓋靱帯を圧迫」すること、
及び「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助する」こと、すなわち、「膝20 蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押圧ないし圧迫してサポートすること」(本件 明細書等の段落【0010】)を目的とするものではない。
したがって、乙5発明は、構成要件Bの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の 機能を補助する」との構成を備えていない。
9 争点2-4(サポート要件違反)について25 (被告の主張) ? 本件明細書等は、まず一体編成・織成構造を採用した従来技術の問題点につ 45 いて指摘し(段落【0002】)、その解決方法として、別材料固着構造を採 用した手段が示され(段落【0006】)、【発明の詳細な説明】に係るその 後の記載においても、専ら別材料固着構造に関する説明のみが記載されており、
一体編成・織成構造のサポーターについては全く記載されていない。
5 したがって、本件発明が「一体編成・織成構造」のサポーターを含むもので あるとの原告の主張を前提とすれば、本件発明はサポート要件に違反する。
? 原告の主張について ア 原告は、本件発明の構成を備えていれば、「別材料固着構造」、「一体編 成・織成構造」等のいずれの構造であっても、本件発明の作用効果を奏する10 ことができるから、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識できる 範囲を超えるものではなく、サポート要件を満たすなどと主張する。
しかしながら、サポート要件は、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な 説明に記載されているか否かを問題とするのであるから、作用効果を抽象的 に論じても意味はない。
15 イ 原告は、本件特許の特許請求の範囲には、サポーターの構造の種別につい ては一切記載されておらず、「別材料固着構造」であるか否かは発明を特定 するための事項ではないと主張する。
しかしながら、本件発明が、本件特許の特許請求の「別材料固着構造」を 前提としていることは、上記のとおりであり、原告の主張は、飽くまで「別20 材料固着構造」との用語が用いられていないという形式論に着目したものに すぎない。そもそも、被告が問題としているのは、本件発明が「別材料固着 構造」のみならず、「一体編成・織成構造」を含むとすれば、「一体編成・ 織成構造」に関して発明の詳細な説明に記載されるべき「一体編成・織成構 造」に関する課題解決手段の記載がなく、サポート要件違反となるというも25 のであるから、原告の主張は失当である。
(原告の主張) 46 ? 特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲の 記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明 が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当 業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、ま 5 た、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の 課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべ きものである。また、当該対比・検討において、発明の詳細な説明に記載され た特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲減縮を求めること にならないようにする必要があることに加え、発明を特定するための事項では10 ない技術的事項に着目し、サポート要件を問うことは適切ではない。
? 本件明細書等によれば、本件発明の課題は、「膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝 蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定するコンプレッションサポーターを提供 すること」及び「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用 して、さらに、痛みを抑制可能なコンプレッションサポーターを提供すること」15 であるところ(段落【0005】)、これらの課題は、本件発明の構成を備え ていることにより解決されるものである(段落【0006】)。換言すると、
本件発明の構成を備えていれば、被告の主張する「別材料固着構造」、「一体 編成 織成構造」 ・ 等のいずれの構造であっても、
「ほぼU字型の正面吊り領域 ・ ・・ により適切に膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固20 定し」、「大腿骨・・・及び周囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用 して、痛みを軽減し得る」(段落【0020】)という本件発明の作用効果を 奏することができるから、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識で きる範囲を超えるものではなく、サポート要件を満たす。
? そもそも、本件特許の特許請求の範囲には、サポーターの構造の種別につい25 ては一切規定されておらず、「別材料固着構造」であるか否かは発明を特定す るための事項ではないから、このような技術的事項に着目してサポート要件を 47 問うことは適切ではないし、被告が主張する「別材料固着構造」が本件発明の いずれかの構成要件に含まれると解すべき理由もない。
上記のとおり、サポート要件は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明 の記載とを対比して判断すべきところ、本件特許の特許請求の範囲には、被告 5 が主張する「別材料固着構造」が記載されていないのであるから、被告の主張 はサポート要件違反の主張の前提を欠くものであり、失当である。
? したがって、本件発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載したもの であるから、特許法36条6項1号に違反しない。
10 争点3(損害額等)について10 (原告の主張) ? 不法行為について ア 被告は、本件特許権が成立した平成24年11月16日頃から被告各製品 を販売しているところ、膝用サポーターの利用者は、1000万人を超えて おり、その約半数の500万人は、被告各製品を利用していると思われる。
15 そして、膝用サポーターは、少なくとも1年に1回買い換える必要があり、
被告各製品は、約1300円で販売されている。
そうすると、実施料率を3%とした場合、原告の損害(特許法102条3 項による8年6か月分の実施料相当額)は、16億5750万円(=130 0円×500万人×8.5年×3%)となる。
20 イ また、原告は、被告による本件特許権の侵害により、前記アの1割に相当 する弁護士費用相当額(1億6575万円)の損害を被った。
ウ したがって、原告は、被告の不法行為により、18億2325万円の損害 を被った。
? 不当利得について25 被告は、本件発明の実施につき、少なくとも16億5750万円(上記?ア 参照)の支払を免れることによる利益を受け、原告は同額の損失を受けた。
48 ? 小括 そこで、原告は、被告に対し、主位的には不法行為に基づく損害賠償請求と して18億2325万円の一部である100万円の支払を、予備的には不当利 得に基づく利得金返還請求として16億5750万円の一部である100万 5 円の支払を求める。
(被告の主張) 争う。
当裁判所の判断
1 本件発明の内容10 ? 本件明細書等には、次のとおりの記載があることが認められる。(甲2) ア 技術分野 「本発明は、伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体を具備し、
上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上記低伸縮領域と本 体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートするコンプレッ15 ションサポーターに関するものである。」(段落【0001】) イ 背景技術 「膝部に着用する従来の筒状の伸縮性サポーターは、サポーター本体に織 り込まれているゴムのパワー(ゴムの収縮力、即ち筋肉に対する圧迫強度) を変え、或いは織り方を変えることで患部に対する圧迫力、押圧力変化させ20 る方式を取っている。しかしそれでは、膝関節の任意の箇所に必要な押圧力 を加えることができないという問題があった。」(段落【0002】) 「例えば特開2001-70329号に示された膝関節サポーターは、オ スグッド・シュラッター病に代表される膝蓋骨周囲の痛みに対し、膝蓋腱を 圧迫することにより減弱させるために逆U字型のパッドを備えている。しか25 し、膝蓋骨はこれを吊り上げることにより大腿四頭筋の機能を補助するが、
逆U字型では上記機能補助にはならない。特開2007-9362号は屈伸 49 を繰り返してもずれにくい膝用サポーターを開示しており、前面上部部材の 縦方向の伸長率A1、横方向の伸長率B1についてA1>B1、後面部部材 の縦方向の伸長率A2、横方向の伸長率B2についてA2 膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域を具 備し、また、大腿骨12及び周囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼU字型の 正面吊り領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、本体両側面に設25 けた側面圧迫領域を具備し、上記低伸縮領域は、樹脂より成る低伸縮性材料 を本体に固着した構成を有するものとするという手段を講じたものである。」 50 (段落【0006】) 「ここで膝関節の構造について説明しておく。図5に示すように、前十字 靱帯11と後十字靱帯11′とから成る膝十字靭帯が上位の大腿骨12と下 位の脛骨13の間に位置し、膝関節の前後にはそれぞれ半月板14、14′が 5 位置し、脛骨13から大腿骨12へ至る膝蓋靭帯15及び大腿四頭筋腱16 が伸び、それらに繋がっている膝蓋骨17が正面に位置している。背面にお いて、18は腓腹筋、18′は足底筋、18″は膝窩筋を示す。膝十字靭帯は 関節を安定させる機能を持ち、膝蓋骨17はいわゆる膝のお皿である。19、
19′は関節軟骨であり、大腿骨12と脛骨13の骨端部にある。 (段落 」 【010 007】)1520 【図5】 「このような構造を有する膝関節に適用するために、本発明に係るコンプ レッションサポーターは、膝部に着用するために伸縮性素材より成る本体を25 具備している。本発明において使用する伸縮性素材は、伸縮性により着用部 位を適切な力で締め付けるという機能を有しており、さらに要所を加圧する 51 こと或いは減圧することができる。本発明は、本体の上記の伸縮性による圧 迫力で膝関節の必要部分或いは患部を加圧するものであり、その加圧の効果 をより有効ならしめるために、本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に 設けるものである。本発明の説明においては、局所的な加圧を「押圧」と呼 5 び、より広い範囲の加圧を「圧迫」と呼ぶことがある。 (段落 」 【0008】) 「なお本体構造としては筒状の形態のものであれば、脚部を挿入可能であ るので好都合である。しかしながら、筒状であることは絶対必要な条件では なく、例えば脚部に巻き付ける形式で着用するものも使用時には筒状の形態 を取り、同様の目的と効果を達成するものである。」(段落【0009】)10 「本発明においては、低伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫するために、膝 蓋骨17の下部を取り囲むほぼU字型(或いはほぼV字型)に、本体正面に 設けた正面吊り領域を具備している。低伸縮領域である正面吊り領域を、ほ ぼU字型に形成することにより、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋を補助する ものである。ここで大腿四頭筋の補助とは、それを構成する大腿直筋、外側15 広筋、内側広筋及び中間広筋の停止部である膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味 に押圧ないし圧迫してサポートすること、或いは屈曲伸展時における膝蓋骨 の動きを補助することを意味する。」(段落【0010】) 「ほぼU字型の正面吊り領域によって膝蓋骨の左右両側を押さえ、かつ膝 蓋骨を持ち上げ気味にサポートし、膝をしっかりと固定して、痛みなどの症20 状を緩和することができる。上記の正面吊り領域は、そのほぼU字型の正面 中央部において不連続部分を有していても良い。不連続的な構造変化により、
膝蓋骨の吊り上げ作用を調整することができる。」(段落【0011】) 「本発明において、上記低伸縮領域は低伸縮性材料を本体に固着一体化す ることによって構成されている。低伸縮性材料としては、例えばナイロン、
25 ポリエステル、ウレタンなどの樹脂材料を使用することができ、特にはウレ タン系の樹脂材料が適している。低伸縮性材料を本体に固着一体化する方法 52 としては、例えば接着、貼着或いは印刷・ ・等の方法を取ることができる。
・ また、低伸縮性材料の固着方法として、あらかじめ樹脂を用いて低伸縮領域 の形状に作りそれを本体に転写するような方法も取り得る。本発明において 「伸縮性が低い」或いは「低伸縮性」とは、本体の伸縮性と同程度の伸縮性 5 を上限とし、伸びないものを下限とし、その間の範囲における伸縮性を言う ものとする。」(段落【0012】) 「U字型の部分は適切な幅に形成することによって、大腿骨の下端部及び 周囲筋腱をより良く圧迫することを期待できる。また、正面吊り領域をほぼ U字型に設けて膝蓋骨の下を圧迫し、左右両横を押さえ、膝ストレスをサポ10 ートすることができ、それによって、オスグッド・シュラッター病並びに膝 蓋靭帯の炎症の予防及び膝関節の保護に効果があるとの知見が、経験的に得 られている。」(段落【0013】) 「上記は最小限度の要件であり、これらに加えて大腿骨12及び周囲筋腱 を圧迫するために、上記ほぼU字型の正面吊り領域の左右両端から上方へ連15 続して伸びる方向に、本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備することがで きる。この側面圧迫領域は内側側副靭帯及び外側側副靭帯を圧迫し、歩行及 び運動における膝関節機能向上の効果がある。側面圧迫領域は正面吊り領域 のU字型に連なって上部後方へ緩やかに湾曲する形状とし、それによって機 能とデザインの融合を図っている。」(段落【0014】)20 「上記の正面吊り領域を安定させるために、正面吊り領域の下部にほぼ並 行するように配置した正面補助領域を具備することは望ましい構成である。
正面補助領域は本体の正面において、脛骨骨端の膨大部下位に配置されるこ とを予定しており、膝関節を圧迫するときの安定性を向上し、位置ずれを防 止するために効果的である。さらにこの部分は東洋医学における三里のツボ25 のある部位であり、これを押圧することにより疲労を軽減することができ、
また西洋医学においては下腿前面の筋である前脛骨筋の起始部に当たり、押 53 圧により筋疲労を軽減する効果がある。なお正面補助領域も、正面吊り領域 と同じように正面中央部において不連続部分を有していて良い。 (段落 」 【0 015】) 「上記正面吊り領域と共に膝蓋靭帯を圧迫するために、ひざ裏側における 5 周方向に、本体背面に設けた背面圧迫領域を具備することも、また望ましい 構成である。上記背面圧迫領域と正面吊り領域は、大腿骨と脛骨との間の関 節裂隙部に位置して当該部分をリング状に圧迫し、かつサポート力を強化す る。また、膝関節の屈曲伸展運動時に、くの字状に曲がる膝関節の動きを妨 げないように横に細長い形状を有しており、屈曲時にも関節裂隙部にとどま10 り易く位置ずれし難い。背面圧迫領域と正面吊り領域が、それぞれの端部に おいて連続していない場合、間隔が開くほど膝関節の屈伸動作における抵抗 と、関節裂隙部に対するリング状の圧迫力は小さくなる。」(段落【001 6】) 「正面吊り領域を安定させるために、正面吊り領域とほぼ並行するように15 配置した正面補助領域を有するとともに、背面圧迫領域とほぼ並行するよう に配置した背面補助領域を具備することができる。正面補助領域と背面補助 領域は、サポーターの着用位置を安定させ、位置ずれを防止する効果がある。
背面補助領域は、また、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、膝窩筋及び後脛骨筋か ら成る下腿後面の筋を圧迫し得るが、特に腓腹筋に対する強いサポート力を20 期待することができ、具体的には腓腹筋18の起始部内方即ち起始部の少し 下の隆起し始めた部分を押圧することにより、肉離れの防止効果及び筋肉痛 の軽減効果を期待することができる。このため、背面補助領域は、腓腹筋の 起始部近傍を囲むように湾曲した形状に形成することが望ましく、それを後 面にて下部へ緩やかに湾曲する形状とすることによって、機能とデザインの25 融合を図るものとする。」(段落【0017】) 「正面吊り領域と背面圧迫領域は、夫々の端部にて繋がった構造に形成し 54 ても良い。その場合でも繋がった部分における伸縮性は正面吊り領域、背面 圧迫領域の各領域部分よりも明瞭に高い(伸縮し易い)ことが必要である。
正面吊り領域と背面圧迫領域が両端部にて繋がった構成を取る場合には関 節裂隙部に対するサポート力が強くなり、両端部が繋がらずに離れるほど関 5 節裂隙部に対するサポート力は弱くなる。」(段落【0018】) 「さらに、膝関節の動きを安定させるために、左右の側面圧迫領域から、
内側へ伸びる突出部を具備することができる。突出部により内外側面(左右 側面)の側副靭帯を固定し、関節の可動性を安定させることになる。そして 正面吊り領域から側面圧迫領域の上部に及ぶU字の全体を安定的にサポー10 トするため、正面吊り領域の膝蓋骨の吊り上げを補助することも期待できる。
この突出部は下方ほど膝蓋骨に近付いて大腿四頭筋の起始部付近を圧迫し、
上方ほど大腿四頭筋の中間部に近付くことになるが、上方の位置でもまた下 方の位置でも大腿四頭筋に対するサポート力を強化し、運動機能を向上し、
筋肉痛を軽減し、また、大腿四頭筋の肉離れによる損傷を予防することが期15 待される。なお突出部についてはその本数を増すこと、幅広くすること、或 いは内側へ伸びて繋がることなどにより圧迫力は強くすることができる。」 (段落【0019】) オ 発明の効果 「本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、ほぼU字20 型の正面吊り領域と、背面吊り領域により適切に膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、
膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定し得るコンプレッションサポーター を提供することができる。また、本発明によれば、上記に加え大腿骨、脛骨 及び周囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用して、痛みを軽減し得 るコンプレッションサポーターを提供することができる。」(段落【00225 0】) カ 発明を実施するための最良の形態 55 「以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、
本発明に係るコンプレッションサポーター10の一例に関するもので、図1 Aは正面側を、図1Bは背面側を示している。図において、20は本体を示 しており、伸縮性素材より成り膝部に着用し得るように、下部が上部よりも 5 細く形成されたテーパー円筒状の形態を有している。 (段落 」 【0021】)1015 【図1】 「上記の本体20は、綿、毛、アクリル、ポリエステル、ナイロンなどを 素材とする非伸縮性繊維及びゴムなどの伸縮素材又はその他の伸縮性繊維20 などを使用して、上記のテーパー円筒状の形態に編織したものである。例示 したサポーター10の場合、円筒の軸方向には伸びにくく、円周方向には伸 び易い編織構造を持っており、着用中、この伸縮性により膝関節及びその周 囲腱筋を加圧するものである。本体20の編織構造は全体として均等なもの でも良いが、図示の例の場合は上下方向の緊張及び通気性保持を目的とした25 緊張部分21を後面のほぼ中央部に設けている。従って、膝部に着用しない 自然な状態においてもややくの字状に湾曲し、図5に示した膝関節に適合し 56 た形状となり、着用状態における負担の軽減に寄与する。」(段落【002 2】) 「本発明においては、上記の構成を有する本体20の要所に本体よりも伸 縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上記低伸縮領域と本体20の伸縮性の 5 相違により膝関節部及び周囲筋腱をサポートする。そのために必要な第1の 要素として、膝蓋靭帯15を圧迫するために本体正面に設けた正面吊り領域 22を具備する。正面吊り領域22は、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部 を有するほぼU字型(或いはほぼV字型)に設けられており、膝蓋骨17の 下部を取り囲む湾曲部を有することにより、前述のように膝蓋骨17を吊り10 上げ、大腿四頭筋に好適な作用を及ぼすものである。この低伸縮領域と本体 20には、中央部に不連続部分d1を設けることができる。不連続部分d1 は、この部分に低伸縮領域を設けないことにより、膝蓋骨17の吊り上げ作 用の強弱を調整することができる。」(段落【0023】) 「本発明に係るサポーター10では、正面吊り領域22の左右両端から上15 方へ連続して伸びる方向に、本体両側面に設けた左右の側面圧迫領域23、
24を具備する。左右の側面圧迫領域23、24は、正面吊り領域22にそ れぞれの端部にて接続しており、Uの字の縦線に相当する部分になる。従っ て正面吊り領域22と左右の側面圧迫領域23、24で囲まれた囲繞部分2 5には膝蓋骨17が収まり、そのために囲繞部分25は、膝蓋骨17の形態20 に適合した形状に形成する。」(段落【0024】) 「左右の側面圧迫領域23、24は、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するため に設けられており、特に機能とデザインの融合を図るように、正面の左右両 側から側面の左右後ろ上方及び下方へ向かって伸びるように、緩やかな弧を 描いている。この弧状曲線は、膝の屈曲進展運動を考慮し、特に膝の屈曲す25 る方向へ湾曲させたもので、内側側副靭帯、外側側副靭帯を圧迫し、歩行及 び運動における膝関節機能の向上を意図している。また、左右の側面圧迫領 57 域23、24は下方にも伸びており、後述するように下位の低伸縮領域とも 関係を持っている。」(段落【0025】) 「26は正面補助領域を示しており、正面吊り領域22に対する安定性を 向上させるために、正面吊り領域22の下部に、間隔をおいてほぼ並行する 5 ように配置したものである。正面補助領域26は本体20の正面において、
脛骨骨端の膨大部下位に配置され、膝関節を圧迫するときの安定性を向上し、
位置ずれを防止する。この領域は、東洋医学における三里のツボのある部位 に当たり、押圧により筋疲労を軽減する目的もある。なお正面補助領域26 についても、正面吊り領域22と同じように正面中央部において不連続部分10 d2を設けることができる。」(段落【0026】) 「27は本体背面に具備している横に細長い背面圧迫領域を示す。背面圧 迫領域27は、上記正面吊り領域22と共に膝蓋靭帯15を圧迫するために、
ひざ裏側において周方向に設けられており、正面吊り領域22とともに、大 腿骨と脛骨との間の関節裂隙部に位置して当該部分をリング状に圧迫し、膝15 蓋骨17の下位においてサポーターとしてのサポート力を強化する。正面吊 り領域22と背面圧迫領域27は、それぞれの端部にて繋がった構成を具備 することもできる。この符号jで示す繋がり部分を設けることにより、関節 裂隙部に対するサポート力を強化することができる。 (段落 」 【0027】) 「28は背面補助領域を示しており、当該領域28は正面吊り領域22を20 安定させるために、背面圧迫領域27の下位に位置するように配置されてい る。背面補助領域28は、腓腹筋の上部の起始部内方を囲むようにほぼ逆U 字型又は逆V字型に湾曲した形状に形成されており、腓腹筋の上部を直に加 圧することができる。この背面補助領域28も、特に機能とデザインの融合 を図るように、背面の中央部から左右両側の下方へ向かって伸びるように、
25 緩やかな弧を描いている。」(段落【0028】) 「既に一部触れたように、左右の側面圧迫領域23、24は下方にも正面 58 補助領域26及び背面補助領域28を越えて伸びている。図示の例において、
左右の側面圧迫領域23、24の下端はほぼ逆U字型又は逆V字型に湾曲し た背面圧迫領域28の下端よりも下位にまで達し、下端部29、30近くに おいて後方へ緩く湾曲して終わっている。そして、この左右の側面圧迫領域 5 23、24は正面補助領域26の両端部とも繋がっており、このため左右の 側面圧迫領域23、24と正面補助領域26から成る四角い枠で囲まれた低 伸縮性領域31が形成されているので、この部分では伸縮性が最も低くな る。」(段落【0029】) 「左右の側面圧迫領域23、24は、それぞれ内側へ伸びる突出部32、
10 33を具備することができる。この左右の突出部32、33は膝関節の動き を安定させるために、左右の側面圧迫領域23、24の上端部付近から内方 に突出して接近する。左右の突出部32、33は先端部にて繋がっていても 良く、その場合、上部においても枠で囲まれた低伸縮領域が形成されること になる。」(段落【0030】)15 「正面吊り領域22を始めとして上記のように説明した各低伸縮領域は、
樹脂より成る低伸縮性材料34を本体20に固着した構成を有している。よ り詳細に図示した図4を参照して説明すると、図4において、35、36は 縦糸と横糸などから成る編織構造を示しており、37は固着手段を示してい る。樹脂より成る低伸縮性材料34は、本体20に固着すると固着手段3720 が上記編織構造35、36の組織内に入り込んで密着状態になり、一体化す ることにより、本体本来の伸縮性を制限して、低伸縮性を備えた領域に変え ることになる。」(段落【0031】) 59 5 【図4】10 「低伸縮性材料34は、例えば上記正面吊り領域22の形状にあらかじめ 形成され、それを本体20の表面に固着手段37を用いて固着する。図4A に示す例では、低伸縮性材料34の下面に固着手段37があらかじめ固着さ れている。そして、図示の例の場合、本体20は綿糸及び合成繊維糸を周方15 向に伸縮性を持つように編織したもので、低伸縮性材料34はウレタン系樹 脂材料のフィルムより成る多層構造を有し、固着手段37には上記ウレタン フィルムより成る多層構造の内の一部を用いて本体20に固着させている。
しかしこれは一例であり、固着手段37として接着剤を本体20の表面に塗 布すること、また、シート状の接着剤を用いることは普通に行われる。さら20 に、本体20の材質と低伸縮性材料34の材質に親和性があり、かつ熱溶着 性樹脂を用いる場合には直接本体20に低伸縮性材料34を熱溶着する手 段も選択し得る周知の事項である。このように本発明においては何れの固着 手段を採用しても良い。」(段落【0032】) 「このように構成されている本発明のコンプレッションサポーター1025 は、テーパー円筒状の本体20の上部から足先を差し込むとともに、正面吊 り領域22と左右の側面圧迫領域23、24で囲まれた囲繞部分25が膝蓋 60 骨17の位置と一致するように配置を調整して使用する(図2及び図3参 照)。膝関節は伸縮性素材より成る本体20によってサポートされ、本体正 面にほぼU字型に設けた正面吊り領域22によって膝蓋骨17の下部を取 り囲まれて固定され、また、他の低伸縮領域23、24、25、26、27、
5 28は正面吊り領域22による加圧を助け、共同して膝関節の固定ないしは 膝関節に関係する筋腱に作用する。」(段落【0033】)10 【図2】 【図3】15 ? 本件特許の特許請求の範囲の記載及び上記?の本件明細書等の記載内容に よれば、本件発明は、伸縮性素材から成り膝部に着用し得る形態の本体と、本 体よりも伸縮性の低い低伸縮領域との伸縮性の相違により膝関節部及び周囲20 筋腱をサポートするコンプレッションサポーターに関するものであり、従来技 術では、サポーター本体に織り込まれているゴムの収縮力や織り方を変えるこ とで患部に対する圧迫、押圧の強度を変化させていたが、それでは、膝関節の 任意の箇所に必要な押圧を加えることができないという技術的課題があった ことから、本件発明は、伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体に、
25 本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を設け、低伸縮領域として、@本体の正面 に、膝蓋靱帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助す 61 るために、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型の領域と、A上記ほぼU字型の 領域の左右両端から上方へ連続して伸びる方向に、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫 する領域を具備し、低伸縮領域について樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固 着するという構成を採用することにより、膝蓋靱帯を圧迫し、膝蓋骨を保持し 5 て、膝関節を良好に固定するとともに、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫することに より、関節裂隙部に作用して、痛みを抑制することを可能にするものであるこ とが認められる。
2 被告製品各製品の構成要件充足性(争点1)について ? 争点1-1(構成要件Aの「本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低10 伸縮領域を本体に設け」の充足性)について ア 「本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」 の意義について 「本体」について 本件特許の特許請求の範囲には、「伸縮性素材より成り膝部に着用し得15 る形態の本体を具備し、上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に 設け、上記低伸縮領域と本体の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱 をサポートするサポーター」(構成要件A)と記載されている。上記記載 によれば、「本体」は、伸縮性素材から成り、膝部に着用し得る形態をい うにとどまり、その形態を限定するものではない。そして、本件明細書等20 には、「なお本体構造としては筒状の形態のものであれば、脚部を挿入可 能であるので好都合である。しかしながら、筒状であることは絶対必要な 条件ではなく、例えば脚部に巻き付ける形式で着用するものも使用時には 筒状の形態を取り、同様の目的と効果を達成するものである。 (段落 」 【0 009】)と記載されている。上記記載によれば、絶対必要な条件ではな25 い旨指摘しているとおり、上記記載に係る形態は、一例を示すものにすぎ ず、「本体」につき当該形態に限定したものと解することはできない。
62 そうすると、上記の構成要件A及び本件明細書等の各記載内容によれば、
構成要件Aの「本体」は、伸縮性素材から成り、膝部に着用し得る形態で あることを必要とするにとどまり、これを超えて、膝部に着用した際に膝 部を筒状に覆う形態に限定するものと解するのは相当ではない。
5 これに対して、被告は、本件明細書等の段落【0009】の記載によれ ば、「本体」とは、少なくとも「膝部に着用した際に膝部を筒状に覆うも の」を意味する旨主張するものの、上記において説示したところに照らせ ば、その記載内容を正解するものとはいえず、採用することはできない。
また、被告は、本件明細書等の段落【0008】に「本発明に係るコン10 プレッションサポーターは、膝部に着用するために伸縮性素材より成る本 体を具備している。・・・本発明は、本体の上記の伸縮性による圧迫力で 膝関節の必要部分或いは患部を加圧するものであり」と記載されているこ とからすれば、構成要件Aの「本体」は「膝関節の必要部分或いは患部を 加圧するもの」でなければならないと主張する。しかしながら、本件明細15 書等の段落【0008】の上記記載は、本体及び低伸縮領域が共に存在す る状態を前提として、本体の伸縮性による圧迫力で膝関節の必要部分又は 患部を加圧することを指摘するものであって、低伸縮領域を本体から切り 離した状態においてまで、膝関節の必要部分又は患部を加圧することまで をいうものと解することはできない。したがって、被告の主張は、採用す20 ることができない。
「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」について 本件特許の特許請求の範囲には、上記 のとおり記載されており、この 記載によれば、「低伸縮領域」を「本体」に設ける方法や位置につき限定 するものと解することはできない。そして、本件明細書等には、「本発明25 においては、上記の構成を有する本体20の要所に本体よりも伸縮性の低 い低伸縮領域を本体に設け、・・・」(段落【0023】)、「低伸縮性 63 材料34は、例えば上記正面吊り領域22の形状にあらかじめ形成され、
それを本体20の表面に固着手段37を用いて固着する。図4Aに示す例 では、低伸縮性材料34の下面に固着手段37があらかじめ固着されてい る。そして、図示の例の場合、本体20は綿糸及び合成繊維糸を周方向に 5 伸縮性を持つように編織したもので、低伸縮性材料34はウレタン系樹脂 材料のフィルムより成る多層構造を有し、固着手段37には上記ウレタン フィルムより成る多層構造の内の一部を用いて本体20に固着させてい る。しかしこれは一例であり、固着手段37として接着剤を本体20の表 面に塗布すること、また、シート状の接着剤を用いることは普通に行われ10 る。さらに、本体20の材質と低伸縮性材料34の材質に親和性があり、
かつ熱溶着性樹脂を用いる場合には直接本体20に低伸縮性材料34を 熱溶着する手段も選択し得る周知の事項である。このように本発明におい ては何れの固着手段を採用しても良い。」(段落【0032】)と記載さ れている。上記記載によれば、「低伸縮領域」を「本体」に設ける方法や15 位置が具体的に例示されているものの、文字どおり、飽くまで一例にすぎ ず、これに限定する趣旨のものとはいえない。
そうすると、上記の構成要件A及び本件明細書等の各記載内容によれば、
構成要件Aの「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」と は、「低伸縮領域」を「本体」に設けることを必要とするにとどまり、こ20 れを超えて、「本体」の表面の一部に「低伸縮領域」を設けるものに限定 すると解することはできない。
これに対して、被告は、本件明細書等の記載(段落【0023】、【0 032】)によれば、「低伸縮領域」は「本体」の表面の一部に設けられ ることが必要であると主張する。しかしながら、本件明細書等の段落【025 023】の上記記載は、「本体に設け」というにとどまり、「本体」の表 面の一部に「低伸縮領域」を設けることに限定するものと解することはで 64 きず、また、本件明細書等の段落【0032】が記載するところも、飽く まで例示にすぎないことは、上記において説示したとおりである。したが って、被告の主張は、採用することができない。
イ 被告製品17の構成要件充足性について 5 「本体」について 前提事実、証拠(甲5、6、13)及び弁論の全趣旨によれば、被告製 品部分1は、伸縮性素材から成り、かつ、膝部に着用し得る形態であるこ とが認められることからすると、被告製品17は、「本体」を具備するも のと認められる。
10 「上記本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」について 前提事実、証拠(甲5、6、13)及び弁論の全趣旨によれば、被告製 品部分2は、被告製品部分1よりも伸縮性が低く、被告製品部分1に連結 していることが認められることからすると、被告製品17は「本体よりも 伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け」ているものと認められる。
15 小括 したがって、被告製品17は、構成要件Aを充足するものと認められる。
? 争点1-2(構成要件Biの「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助す るために・・・本体正面に設けた正面吊り領域を具備し」の充足性)について ア 「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために・・・本体正面20 に設けた正面吊り領域を具備し」の意義について 本件特許の特許請求の範囲には、「低伸縮領域として、 膝蓋靭帯を圧迫 し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、膝蓋骨 の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域を具備し、」 (構成要件B@)と記載されている。また、本件明細書等には、「本発明に25 おいては、低伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫するために、膝蓋骨17の下 部を取り囲むほぼU字型(或いはほぼV字型)に、本体正面に設けた正面吊 65 り領域を具備している。低伸縮領域である正面吊り領域を、ほぼU字型に形 成することにより、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋を補助するものである。
ここで大腿四頭筋の補助とは、それを構成する大腿直筋、外側広筋、内側広 筋及び中間広筋の停止部である膝蓋骨の下端部を吊り上げ気味に押圧ない 5 し圧迫してサポートすること、或いは屈曲伸展時における膝蓋骨の動きを補 助することを意味する。」(段落【0010】)、「ほぼU字型の正面吊り 領域によって膝蓋骨の左右両側を押さえ、かつ膝蓋骨を持ち上げ気味にサポ ートし、膝をしっかりと固定して、痛みなどの症状を緩和することができ る。・・・」(段落【0011】)、「本発明においては、上記の構成を有10 する本体20の要所に本体よりも伸縮性の低い低伸縮領域を本体に設け、上 記低伸縮領域と本体20の伸縮性の相違により膝関節部及び周囲筋腱をサ ポートする。そのために必要な第1の要素として、膝蓋靭帯15を圧迫する ために本体正面に設けた正面吊り領域22を具備する。正面吊り領域22は、
膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有するほぼU字型(或いはほぼV字型)15 に設けられており、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有することにより、
前述のように膝蓋骨17を吊り上げ、大腿四頭筋に好適な作用を及ぼすもの である。・・・」(段落【0023】)と記載されている。
そうすると、上記の構成要件B@及び本件明細書等の各記載内容によれば、
「膝蓋骨を吊り上げ」るとは、膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型の領域の20 内側中空部にある膝蓋骨を、その下部から上方向に力を加えて、鉛直方向上 方に上げることを意味するものと解するのが相当である。
これに対して、被告は、「吊り上げる」といえるためには、少なくとも上 部から「吊る」ことにより上方に「上げる」ことが必要であるなどと主張す る。しかしながら、上記明細書の記載によれば、「吊り上げ気味に」などと25 記載される一方、「持ち上げ気味に」などとも併せて記載されており、その 他の記載内容及び本件発明の構成に照らしても、上記のとおり解するのが相 66 当である。したがって、被告の主張は、採用することができない。
イ 被告製品17の構成要件充足性について 前提事実、証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品部分3は、
膝蓋骨をその下部から上方向に力を加えて、鉛直方向上方に上げるものであ 5 ることが認められる。そうすると、被告製品部分3は「膝蓋骨を吊り上げ」 るものと認められる。
これに対して、被告は、被告製品17につき、膝蓋骨を持ち上げるもので あり、「吊り上げ」ることとは両立しないなどと主張するが、上記において 説示した構成要件の解釈を踏まえると、被告の主張は、採用することができ10 ない。
したがって、被告製品17は、構成要件B@を充足するものと認められる。
? 争点1-3(構成要件BAの「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために・・・ 本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し」の充足性)について ア 「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫するために・・・本体両側面に設けた側面圧15 迫領域を具備し」の意義について 本件特許の特許請求の範囲には、「低伸縮領域として」、「大腿骨及び周 囲筋腱を圧迫するために、上記ほぼU字型の正面吊り領域の左右両端から上 方へ連続して伸びる方向に、本体両側面に設けた側面圧迫領域を具備し」 (構 成要件BA)と記載されている。上記記載によれば、「側面圧迫領域」は「大20 腿骨及び周囲筋腱」自体を圧迫するものであると解される。
そして、本件明細書等には、「膝部に着用する従来の筒状の伸縮性サポー ターは、サポーター本体に織り込まれているゴムのパワー(ゴムの収縮力、
即ち筋肉に対する圧迫強度)を変え、或いは織り方を変えることで患部に対 する圧迫力、押圧力変化させる方式を取っている。しかしそれでは、膝関節25 の任意の箇所に必要な押圧力を加えることができないという問題があった。」 (段落【0002】)、「・・・また、本発明によれば、上記に加え大腿骨、
67 脛骨及び周囲筋腱を圧迫することにより関節裂隙部に作用して、痛みを軽減 し得るコンプレッションサポーターを提供することができる。」(段落【0 020】)と記載されている。上記各記載によれば、本件発明は、膝関節の 任意の箇所に必要な押圧力を加えることができない従来のサポーターの課 5 題を解決するために、大腿骨、脛骨及び周囲筋腱を圧迫するサポーターを提 供するものであることが認められる。
そうすると、上記の構成要件BA及び本件明細書等の各記載内容によれば、
構成要件BAの「側面圧迫領域」は、大腿骨自体及び周囲筋腱自体を圧迫す るものと解するのが相当である。
10 イ 被告製品17の構成要件充足性について これを被告製品17についてみると、前提事実及び証拠(甲6)によれ ば、被告製品部分2は、被告製品部分2と接触する部分や大腿骨の周囲筋 腱を圧迫することまでは一応認められるものの、これを超えて、本件全証 拠によっても、被告製品部分2が大腿骨自体までをも圧迫することまで認15 めることはできない。
したがって、被告製品17は、構成要件BAを充足するものとはいえな い。
a これに対して、原告は、被告特許の明細書(甲12)によれば、被告 製品部分2は、「膝関節サポーター10の着用者の大腿及び膝の外側面20 を支持することで、支持部4による内側面に掛かる押圧力とのバランス を取り、着用者の安定した起立状態を維持する」のであるから、被告製 品部分4は、「大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する」ことが明らかであると 主張する。
しかしながら、被告特許の明細書の上記記載によっても、上記にいう25 支持部4が「大腿骨」を圧迫するとまでは記載されていないのであるか ら、上記記載は、原告の主張を裏付けるものとはいえず、その他に、原 68 告は被告製品部分4が「大腿骨」自体を圧迫することを認めるに足りる 的確な証拠を提出していない以上、原告の主張は、上記判断を左右する ものとはいえない。
b 原告は、@被告製品17は、その幅が約12cmであるのに対して、
5 ひざ頭周囲34〜37cm用であり、被告製品17を着用した際に、伸 縮性素材の弾性力により、着用者の膝の周囲を圧迫するため、被告製品 部分4は、大腿骨並びに膝の周囲にある筋肉及び腱を圧迫する、A大腿 骨の膝周辺には、大きな筋肉がなく、大腿骨と皮膚が極めて近接した状 態となっているため、被告製品部分4は、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫す10 る、B大腿四頭筋は、膝関節伸展時に収縮して大腿骨を少なからず圧迫 するところ、被告製品部分4は、膝及びその周囲に押圧力を与えて圧迫 するものであり、大腿四頭筋を圧迫して大腿四頭筋の収縮を補助してい るから、被告製品部分4は、大腿四頭筋を介して大腿骨を圧迫している ため、大腿骨を圧迫するなど縷々主張する。
15 しかしながら、原告が主張する上記事情を踏まえても、被告製品部分 4が大腿骨自体を圧迫すると認めるに足りる証拠は見当たらない。
のみならず、被告製品17は、「織り方を変えることで患部に対する 圧迫力、押圧力変化させる方式」を採用しているところ、本件発明にお いては、被告製品17が採用するような上記構造では、「膝関節の任意20 の箇所に必要な押圧力を加えることができないという問題があった。」 (本件明細書等の段落【0002】)という課題を解決するために、大 腿骨、脛骨及び周囲筋腱を圧迫する構成を採用するものである。そうす ると、被告製品17は、本件明細書等の記載によれば、いわば従来技術 にとどまる構成を有するものにすぎず、原告において被告製品17が25 「大腿骨」自体を圧迫することを具体的に立証しない限り、被告製品1 7が構成要件BAを充足するものと認めることはできない。
69 小括 したがって、被告製品17は、構成要件BAを充足するものと認めるこ とはできない。
? 争点1-4(構成要件Cの「樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した構 5 成」の充足性)について ア 「樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した構成」の意義について 「本体」について 「本体」の意義は、前記?ア 説示のとおりである。
「固着」について10 本件特許の特許請求の範囲には、「上記低伸縮領域は、樹脂より成る低 伸縮性材料を本体に固着した構成を有している」(構成要件C)と記載さ れている。上記記載によれば、低伸縮性材料を本体に「固着」させる方法 を格別限定するものではない。
そして、証拠(甲11)によれば、「固着」という用語について、一般15 的に「かたくしっかりとつくこと」という意味を有することが認められる。
また、本件明細書等には、「本発明において、上記低伸縮領域は低伸縮 性材料を本体に固着一体化することによって構成されている。・・・低伸 縮性材料を本体に固着一体化する方法としては、例えば接着、貼着或いは 印刷等の方法を取ることができる。また、低伸縮性材料の固着方法として、
20 あらかじめ樹脂を用いて低伸縮領域の形状に作りそれを本体に転写する ような方法も取り得る。・・・」(段落【0012】)、「正面吊り領域 22を始めとして上記のように説明した各低伸縮領域は、樹脂より成る低 伸縮性材料34を本体20に固着した構成を有している。より詳細に図示 した図4を参照して説明すると、図4において、35、36は縦糸と横糸25 などから成る編織構造を示しており、37は固着手段を示している。樹脂 より成る低伸縮性材料34は、本体20に固着すると固着手段37が上記 70 編織構造35、36の組織内に入り込んで密着状態になり、一体化するこ とにより、本体本来の伸縮性を制限して、低伸縮性を備えた領域に変える ことになる。」(段落【0031】)、「低伸縮性材料34は、例えば上 記正面吊り領域22の形状にあらかじめ形成され、それを本体20の表面 5 に固着手段37を用いて固着する。図4Aに示す例では、低伸縮性材料3 4の下面に固着手段37があらかじめ固着されている。そして、図示の例 の場合、本体20は綿糸及び合成繊維糸を周方向に伸縮性を持つように編 織したもので、低伸縮性材料34はウレタン系樹脂材料のフィルムより成 る多層構造を有し、固着手段37には上記ウレタンフィルムより成る多層10 構造の内の一部を用いて本体20に固着させている。しかしこれは一例で あり、固着手段37として接着剤を本体20の表面に塗布すること、また、
シート状の接着剤を用いることは普通に行われる。さらに、本体20の材 質と低伸縮性材料34の材質に親和性があり、かつ熱溶着性樹脂を用いる 場合には直接本体20に低伸縮性材料34を熱溶着する手段も選択し得15 る周知の事項である。このように本発明においては何れの固着手段を採用 しても良い。」(段落【0032】)と記載されている。そうすると、本 件明細書等の上記記載においても、低伸縮性材料を本体に「固着」させる 方法が例示されているものの、何らかの限定をしているものと解すること はできない。
20 上記の構成要件C及び本件明細書等の各記載内容に加えて、「固着」と いう用語の一般的な意味内容を踏まえると、本件発明における「固着」の 方法について、固くしっかりと付くこと以上に、何らかの限定がされてい るものと解することはできない。
これに対して、被告は、本件明細書等の段落【0002】において、従25 来技術の問題点として「一体編成・織成構造」に言及されているほか、本 件明細書等の記載(段落【0009】、【0012】、【0031】、【0 71 032】、【図4】等)によれば、「固着」とは、本体の表面の一部に本 体とは別の「樹脂より成る低伸縮性材料」を「固着」したものをいうと解 すべきであると主張する。しかしながら、上記において説示したとおり、
本件特許の特許請求の範囲の文言、本件明細書等の記載内容及び当該用語 5 の一般的な意味内容によれば、「固着」を被告主張に係る構成にまで限定 する記載を認めることはできない。そうすると、「固着」を限定しなけれ ば従来技術の課題を解決できなくなりサポート要件違反となるのは格別 (後記3参照)、構成要件にいう「固着」という文言の意味内容を限定す るものとまではいえない。
10 したがって、被告の主張は、採用することができない。
「樹脂より成る」について 本件特許の特許請求の範囲には、上記 のとおり記載されている。そし て、証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば、樹脂の一種である「合成 樹脂」 「合成高分子化合物」とほぼ同義で用いられることがあり、
は、 「合15 成繊維」とは合成高分子化合物を紡いで繊維としたものをいうことが認め られる。そうすると、「合成樹脂」は、常に繊維状のもの(合成繊維)を 除く意味で用いられるものではなく、むしろ、合成繊維は、その材料が合 成樹脂であるから、「樹脂より成る」ということができる。
これに対して、被告は、証拠(乙1、2、7)によれば、「合成樹脂」20 に「合成繊維」が含まれないと主張する。しかしながら、上記において説 示したとおり、「合成樹脂」が、常に「合成繊維」を除く意味で用いられ るものとは認められず、被告の主張は、採用することができない。
また、被告は、本件明細書等において、本体に用いる合成繊維(段落【0 032】)と低伸縮性材料に用いる樹脂材料(段落【0012】)が明確25 に書き分けられていることからすれば、「合成繊維」は構成要件Cの「樹 脂」に含まれないと主張する。しかしながら、上記の記載をもって「樹脂」 72 に「合成繊維」が含まれないとまで解することはできず、被告の主張は、
採用することができない。
さらに、被告は、証拠(乙9、10)において、「ナイロン繊維」と「ナ イロン樹脂」、「ポリエステル系合成繊維」と「ポリエステル樹脂」とが 5 区別されていること等を指摘する。しかしながら、上記と同様に、上記の 記載をもって本件発明の「樹脂」に「合成繊維」が含まれないとまで解す ることはできず、被告の主張は、採用することができない。
イ 被告製品17の構成要件充足性について 「本体」について10 被告製品部分1が「本体」に該当することは、前記?イ 説示のとおり である。
「固着」について 前提事実、証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、低伸縮性材料が、
本体である被告製品部分1に固くしっかりと付いていると認められるか15 ら、「固着」しているものと認められる。
「樹脂より成る」について 前提事実及び弁論の全趣旨によれば、被告製品部分2は、合成繊維であ るナイロン繊維から成ると認められるから、被告製品17は、「樹脂より 成る低伸縮性材料」を具備していると認められる。
20 小括 したがって、被告製品17は、構成要件Cを充足するものと認められる。
? 小括 したがって、被告製品17は、構成要件BAを充足しないから、本件発明の 技術的範囲に属するものではなく、原告が唯一その構成を具体的に主張する被25 告製品17ですら非充足となることその他本件審理の経過に照らし、この理は、
その他被告各製品についても同様に当てはまると解するのが相当である。
73 なお、原告は、本件発明を「別材料固着構造」のものに限定解釈し、「一体 編成・織成構造」である被告製品17が本件発明の技術的範囲に文言上属さな いとしても、本件発明と被告製品17が均等であるなどとして均等侵害を主張 するものの、原告がいかなる構成要件との関係で均等侵害を主張するかについ 5 て、必ずしも明らかではない。この点につき、原告が、構成要件C(争点1- 4)の非充足を前提として均等侵害を主張するものであるとすれば、上記のと おり、いわゆる「一体編成・織成構造」を含むとして構成要件Cの充足性を認 めているため、原告の上記主張は、前提を欠く。仮に、原告が、構成要件BA の「側面圧迫領域」の非充足を前提として均等侵害を主張するものとしても、
10 上記「側面圧迫領域」が本件発明の課題解決手段であることは、上記において 説示したとおりであり、本質的部分が相違する以上、均等侵害をいう原告の主 張は、採用することができない。
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由 がない。
15 なお、本件事案の内容及び審理経過に鑑み、争点2(本件特許の無効理由の 有無)のうち、争点2-4(サポート要件違反)についても、以下判断する。
3 争点2-4(サポート要件違反)について ? 特許法36条6項1号は、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする 発明が発明の詳細な説明に記載したものでなければならない旨規定しており、
20 いわゆるサポート要件を定めている。
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範 囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された 発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載によ り当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否25 か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該 発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判 74 断するのが相当である。
? これを本件発明についてみると、本件特許の特許請求の範囲の記載は、前提 事実?イのとおりであり、本件発明の意義は、前記1?のとおり、従来技術で は、サポーター本体に織り込まれているゴムの収縮力や織り方を変えることで 5 患部に対する圧迫、押圧の強度を変化させていたものの、それでは、膝関節の 任意の箇所に必要な押圧を加えることができないという技術的課題を解決す るために、伸縮性素材より成り膝部に着用し得る形態の本体に、本体よりも伸 縮性の低い低伸縮領域を設け、低伸縮領域として、@本体の正面に、膝蓋靱帯 を圧迫し、かつ、膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、膝10 蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型の領域と、A上記ほぼU字型の領域の左右両 端から上方へ連続して伸びる方向に、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫する領域を具 備し、低伸縮領域について樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着するという 構成を採用することにより、膝蓋靱帯を圧迫し、膝蓋骨を保持して、膝関節を 良好に固定するとともに、大腿骨及び周囲筋腱を圧迫することにより、関節裂15 隙部に作用して、痛みを抑制することを可能にするという効果を実現し、もっ て上記技術的課題を解決するものであることが認められる。
? 他方、本件発明において、「低伸縮性材料を本体に固着」(構成要件C)す る方法が、いわゆる別材料固着構造(膝を筒状に覆うサポーター本体の表面の 一部に、本体とは別の低伸縮性材料を熱溶着、接着、縫着等によって固着し、
20 伸縮性等の異なる部位を配置した構造)以外に、被告製品17が採用する一体 編成・織成構造(サポーターを織り上げ、又は、編み上げるに当たり、部分に よって折り方や編み方を変化させることにより、伸縮性等の異なる部位を配置 した構造(本件明細書等の段落【0002】記載の「サポーター本体に織り込 まれているゴムのパワー(ゴムの収縮力、即ち筋肉に対する圧迫強度)を変え、
25 或いは織り方を変えることで患部に対する圧迫力、押圧力変化させる方式」を 含む。))をも含むと解されることは、前記2?ア において説示したとおり 75 である。
しかしながら、本件明細書等によれば、当業者が一体編成・織成構造のサポ ーターによって本件発明の課題を解決できるとする記載は一切なく、かえって、
本件明細書の段落【0002】によれば、一体編成・織成構造のサポーターに 5 よっては、膝関節の任意の箇所に必要な押圧を加えることができず、本件発明 の課題を解決することができない旨明記されていることが認められる。
そうすると、本件明細書等の記載内容を踏まえると、一体編成・織成構造の サポーターが、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし 本件発明の課題を解決できると認識できるものと認めることはできない。
10 これに対して、原告は、本件発明の課題は本件発明の構成を備えることで解 決することができるから、本件発明は、サポート要件に違反しない旨主張する。
しかしながら、本件明細書等によれば、本件発明は、一体編成・織成構造の サポーターが必要な押圧を欠くという課題を解決するものであるから、当該サ ポーターが本件発明の課題を解決し得ないことは、本件明細書等の記載自体か15 らも自明であって、原告の主張は、採用することができない。
? したがって、本件発明は、特許法36条6項1号に違反し、特許無効審判に より無効とされるべきものであるから、原告は、本件特許権を行使することが できない。
4 結論20 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとお り判決する。
追加
2576 裁判長裁判官中島基至5裁判官古賀千尋10裁判官國井陽平77 (別紙)被告製品目録51バンテリンコーワサポーターひざ専用小さめS(左右共用・1枚入り):49724220300872バンテリンコーワサポーターひざ専用ふつうM(左右共用・1枚入り):49724220300943バンテリンコーワサポーターひざ専用大きめL(左右共用・1枚入り):4910724220301004バンテリンコーワサポーターひざ専用ゆったり大きめLL(左右共用・1枚入り):49724220304145バンテリンコーワサポーターひざ専用シルバーグレー小さめS(左右共用・1枚入り):4987067306701156バンテリンコーワサポーターひざ専用シルバーグレーふつうM(左右共用・1枚入り):49870673068007バンテリンコーワサポーターひざ専用シルバーグレー大きめL(左右共用・1枚入り):49870673069098バンテリンコーワサポーターひざ専用シルバーグレーゆったり大きめLL20(左右共用・1枚入り):49870673070059バンテリンコーワサポーターひざ専用ライトピンク小さめS(左右共用・1枚入り):498706730830910バンテリンコーワサポーターひざ専用ライトピンクふつうM(左右共用・1枚入り):49870673084082511バンテリンコーワサポーターひざ専用ライトピンク大きめL(左右共用・1枚入り):498706730850778 12バンテリンコーワサポーターひざ専用ライトピンクゆったり大きめLL(左右共用・1枚入り):498706730860613バンテリンコーワ保温サポーターひざ専用小さめS(左右共用・1枚入り):4987067463701514バンテリンコーワ保温サポーターひざ専用ふつうM(左右共用・1枚入り):498706746380015バンテリンコーワ保温サポーターひざ専用大きめL(左右共用・1枚入り):498706746390916バンテリンコーワ保温サポーターひざ専用ゆったり大きめLL(左右共用・110枚入り):498706732380717バンテリンコーワサポーター高通気タイプひざ専用ライトブルーふつう(左右共用・1枚入り):498706747760918バンテリンコーワサポーター高通気タイプひざ専用ライトブルー大きめ(左右共用・1枚入り):49870674782001519バンテリンコーワサポーター高通気タイプひざ専用ライトピンクふつう(男女兼用・1枚入り):498706747740120バンテリンコーワサポーター高通気タイプひざ専用ライトピンク大きめ(男女兼用・1枚入り):498706747750079 (別紙)原告主張の被告製品17の構成580