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事件 令和 2年 (ワ) 3474号 損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2021/10/19
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令 和 3 年10月19 日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官

令 和 2年 (ワ)第34 74号 損害賠償 請求事件

口 頭 弁 論終結の日 令和3年8月31 日

判 決

5


原告 コイズミ照明株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士 飯島歩

同 藤田知美

10 同 三品明生

同 上田亮祐

同訴訟代理人弁理士 川上桂子



被告 大光電機株式会社

15 同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士 中務尚子

同 山越勇輝

同訴訟代理人弁理士 清水義仁

主 文

20 1 被告は,原告に対し,73万5094円及びこれに対する

令和2年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金

員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用は,これを100分し,その1を被告の負担とし,

25 その余は原告の負担とする。

4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。





事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は,原告に対し,6776万円及びこれに対する令和2年5月13日から支

払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5 第2 事案の概要

1 本件は,発明の名称を「照明器具」とする特許(特許第3762733号。

以下「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。また,

本件特許に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件発明」という。)の特

許権者である原告が,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,各製品を順に「被告

10 製品1」などという。また,これらを併せて「各被告製品」という。)は本件発明

技術的範囲に属し,その製造,販売,販売の申出,販売のための展示,輸入及び

輸出は本件特許権を侵害するとして,これらを販売等する被告に対し,本件特許権

侵害不法行為に基づく損害賠償として6776万円及びこれに対する訴状送達の

日の翌日(令和2年5月13日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金

15 の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠を掲げていない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨に

より容易に認められる事実である。)

(1) 当事者

ア 原告は,各種照明器具の製造,加工,販売等を業とする株式会社である。

20 イ 被告は,電機照明器具の製造,販売等を業とする株式会社である。

(2) 本件特許権

原告は,以下の特許権(本件特許権)を有する(以下,本件特許の願書に添付さ

れた明細書及び図面を「本件明細書」という。)。本件明細書の記載は,別紙「特

許公報」(甲2)のとおりである。

25 特許番号 特許第3762733号

発明の名称 照明器具





出願日 平成14年10月3日

登録日 平成18年1月20日

特許請求の範囲 別紙「特許公報」の特許請求の範囲請求項1記載のとおり

(3) 構成要件の分説

5 本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。

A 天井面に設けられた引掛型配線器具に掛 着可能な引掛栓刃を上面に有し,

下面中央には下向きに突出する略円筒状の軸部が形成された接続器と,

B 前記接続器の軸部に取着されて側方にアームを張り出し,前記軸部を中心

として天井面と略平行な面内で回動しうるように支持されたセンサ保持具と,

10 C 前記センサ保持具のアームの先端近傍に,検知部を略下向きにして取り付け

られたセンサと,

D 前記センサ保持具の下側に結合された略円筒状のランプソケットと,

E 前記センサ保持具の下側に装着されて前記引掛型配線器具,接続器及びセン

サ保持具を被覆する本体カバーと,

15 F 前記本体カバーの下側に装着されるセードと,

G 前記ランプソケットの外周面に取着されてセード及び本体カバーを支持する

とともに本体カバーを天井面に密着させるホルダナットと,

H 前記ランプソケットに螺着されるランプと,

I を備えた照明器具。

20 (4) 被告の行為等

ア 各被告製品の販売

被告は,以下の期間,各被告製品を販売していた(乙8の1,2,甲9)。

被告製品1 平成23年6月20日〜平成25年11月29日

被告製品2のうち型番 DCL-37765 平成24年5月28日〜平成30年12月2

25 5日

被告製品2のうち型番 DCL-37765TWH 平成28年2月23日〜平成29年7





月19日

被告製品3 平成22年9月1日〜平成24年12月12日

被告製品4 平成22年9月1日〜平成24年12月12日

被告製品5 平成22年9月1日〜平成27年3月2日

5 被告製品6 平成24年9月24日〜平成29年1月5日

被告製品7 平成28年9月29日〜平成30年11月29日

イ 各被告製品の構成

各被告製品の構造は,別紙被告製品説明書のとおりであり,本件発明の構成要件

と対比した構成は,以下のとおりである(各被告製品が同一の構成を有することに

10 ついて被告において明らかに争わない。)。

a 天井面 C に設けられた引掛シーリング R に装着可能な引掛栓刃 11 を上面に有

し,下面中央には下向きに突出する略円筒状の軸部 14 が形成された引掛シーリン

グプラグ 10 を備え,

b 軸部 14 には,円板状ベース板 211 の周縁部 212 から上方に向かって直角に屈

15 曲し,天井面 C 近傍の高さ 213 位置で外方に屈曲しているアーム 22 と一体に形成

され,軸部 14 を中心として天井面 C と略平行な面内で回動しうる保持具 20 が取り

付けられており,

c 保持具 20 のアーム 22 の先端近傍には,検知部 32 を略下向きにした人感セン

サ 30 が取り付けられ,

20 d 保持具 20 の下側には略円筒状のソケット 40 が設けられており,

e 保持具 20 の下側に設けられたソケット 40 に取り付けられるホルダナット 70

により下方から上向きの押圧を加えられ,引掛シーリング R,引掛シーリングプラ

グ 10 及び保持具 20 を被覆する本体カバー50 を有し,

f 本体カバー50 の下側にはセード 60 が装着され,

25 g 本体カバー50 は天井面 C に密着して設置され,ホルダナット 70 はソケット

40 の外周面に取り付けられてセード 60 を支持し,本体カバー50 に下方から上向き





の押圧を加え,

h ソケット 40 にはランプ 80 が螺着される,

i 照明器具。

ウ 各被告製品の構成 a,c,d,f,h 及び i は,本件発明の構成要件のうち,A,

5 C,D,F,H 及び I を充足する。

3 争点

(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)

(2) 特開平 10-334722 号公報に基づく進歩性欠如の有無(争点2)

(3) 原告の損害額(争点3)

10 (4) 消滅時効の成否(争点4)

4 当事者の主張

(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について

(原告の主張)

ア 各被告製品は,いずれも本件発明の構成要件 A〜I を充足する。

15 したがって,各被告製品は,いずれも本件発明の技術的範囲に属する。

イ 「側方」(構成要件 B)の意義等

(ア) 意義

本件発明の構成要件 B 及び本件明細書には,アームを張り出す方向について「側

方」以外に何ら限定を加えるものではなく,本件明細書に記載された実施形態にお

20 いて「この例では水平面に対する仰角α=約 45 度」(【0025】)とあるように,

アームが任意の態様で屈曲する可能性があることが示唆されている。

本件発明の技術的思想に照らせば,アームは,人感センサを側方に張り出した位

置に取り付けることが可能になるものであればその作用効果を奏するものであって,

このような作用効果が維持される限りにおいて,アームの形状を限定する理由はな

25 い。

そのため,構成要件 B の「側方にアームを張り出し」とは,センサ保持具の任意





の位置に,センサを保持するためのアームを,接続器に対して水平方向において外

側に向かうように設けることを意味するにとどまり,アームの屈曲等その形態につ

いて何らかの限定を加えるものではない。

(イ) 各被告製品について

5 各被告製品のアーム 22 は,垂直方向の屈曲が設けられてはいるものの,その後

水平方向に屈曲し,接続器に対して外側へ向かうように張り出しているから,「側

方にアームを張り出」すものといえ,構成要件 B を充足する。

(ウ) 被告の主張について

被告は,センサの位置を回動させるための保持構造を小さくするという課題を理

10 由にセンサ保持具が接続器の軸部に取着されている部位から水平方向において外側

にアームを張り出した構造に限定するが,本件発明においてセンサの位置を回動さ

せるための保持構造を小さくすることができるのは,本件明細書に記載されている

とおり,接続器の下面中央に突出形成された軸部にセンサ保持具が取着されるから

(【0014】)であり,アームの形状によって課題が解決できるものではない。

15 ウ 本体カバー50 がホルダナット 70 により支持され,天井面に密着させられて

いること(構成要件 E,G)

(ア) 構成要件 E 及び G によれば,引掛型配線器具,接続器及びセンサ保持具を

被覆する本体カバーは,ランプソケットに取着されるホルダナットにより支持され,

ホルダナットにより天井面に密着させられるものと解される。

20 各被告製品の本体カバー50 は,ソケット 40 に取着されるホルダナット 70 により

下方から上向きの押圧を受けることで支持されており,かつ,ホルダナット 70 に

より天井面 C に密着させられているから,各被告製品は,構成要件 E 及び G を充

足する。

(イ) 被告は,本体カバー50 は,保持具 20 の上部に設けられた当接片 215 と押圧

25 バネ 214 とによって保持具 20 の上部で内側から支持されていると主張するが,構

成要件 E においては,本体カバーの装着方法について限定はなく,単にセンサ保持





具の下側に本体カバーが装着されるという位置関係を定めているに過ぎない。

また,当接片 215 と押圧バネ 214 は,本体カバー50 を仮止めするものでしかな

く,本体カバー50 を仮止めした時点では,重力の作用により本体カバー50 と天井

面 C の間に隙間が生じ,天井面 C に密着せず,ホルダナット 70 により,本体カバ

5 ー50 が固定され,天井面 C に密着させられるものである。

仮に当接片 215 と押圧バネ 214 が本体カバー50 を支持し,天井面 C に密着させて

いるとしても,ホルダナット 70 により下方から上向きの押圧が生じている以上,

ホルダナット 70 が本体カバー50 を下方から支持し,天井面 C に密着させる作用を

有することは明らかであるから,各被告製品は構成要件 E 及び G を充足する。

10 (被告の主張)

ア 各被告製品は,いずれも,本件発明の構成要件 B,E 及び G を充足しない。

イ 「側方」(構成要件 B)の意義等

(ア) 意義

本件発明の構成要件 B の文言の表現によれば,「接続器の軸部に取着されて側方

15 にアームを張り出」すとは,接続器の軸部に取着されている部位からそのまま側方

にアームを張り出す構造を意味するものと解される。

また,本件明細書の記載(【0011】,【0025】)によれば,本件発明のセンサ保

持具は,接続器の軸部に取着されている部位からそのまま側方にアームを張り出す

という極めて単純な構造となっており,これにより,センサの位置を回動させるた

20 めの保持構造を小さくするという課題が解決されている。

(イ) 各被告製品について

各被告製品では,保持具 20 は円板状ベース板 211 を備えており,この中心で接

続器の軸部に回転可能に取り付けられている。そして人感センサが取り付けられる

アーム 22 は,円板状ベース板 211 の周縁部 212 から上方に向かって直角に屈曲し,

25 天井面 C 近傍の高さ 213 位置で外方に屈曲しているから,各被告製品のアーム 22

は,接続器の軸部 14 に取着されている部位からそのまま側方に張り出す構造とな





っていない。

したがって,各被告製品は,本件発明の構成要件 B を充足しない。

ウ 本体カバー50 が保持具 20 の下方から支持されておらず,ホルダナット 70 に

よって天井面 C に密着されるものではないこと(構成要件 E 及び G)

5 (ア) 本件明細書の記載(【0036】,【0038】)によれば,本件発明の本体カバ

ーは引掛型配線器具,接続器及びセンサ保持具を被覆するものであるが,この役割

に加えて「本体カバーがセンサ保持具の下側に装着される」と特許請求の範囲に記

されている意義は,この本体カバーがホルダナットによって支持されているように,

下方から支持されることを規定していると解される。また,構成要件 G の文言によ

10 れば,本体カバーは,ホルダナットが下方からランプソケットに螺着されることに

よって支持されており,かつ,天井面に密着されているものと解される。

各被告製品においては,本体カバー50 は保持具 20 の上部に設けられた当接片 215

と押圧バネ 214 によって内側から支持され,これによって天井面 C に密着している

から,各被告製品は,本件発明の構成要件 E 及び G を充足しない。

15 (イ) 原告は,押圧バネ 214 と当接片 215 により本体カバー50 が一応支持されて

いるものの仮止めされた状態になっているにとどまり,重力の作用により本体カバ

ー50 と天井面 C の間に隙間が生じると主張するが,本体カバー50 の取り外しを何

度も繰り返すことで隙間が生じる可能性があるとしても,通常の使用方法による限

り,本体カバー50 は保持具 20 によってのみ支持され,天井面 C に密着する。

20 また,各被告製品の本体カバー50 においては,「バネで仮止めされます。」と

の記載があるが,これは本体カバー50 の装着後にセード 60 も取り付ける必要があ

るため,本体カバー50 を装着しただけでは各被告製品のすべての取付が完了して

いないことを意味しているに過ぎない。

(2) 特開平 10-334722 号に基づく進歩性欠如の有無(争点2)について

25 (被告の主張)

ア 特開平 10-334722 号公報記載の技術





特開平 10-334722 号公報(乙1。以下「乙1文献」という。」には,以下の構成

を備えた発明(以下「乙1発明」という。)が記載されている。

A1 天井に取り付けられた引掛シーリング本体のローゼット 100 に掛着可能な引

掛栓刃 4-1,4-2 を上面に有し,下面の外周寄り部分には支点 6-1 が形成された第1

5 のケース 1 の上半部 1-1 と,

B1 前記第1のケース 1 の上半部 1-1 の支点 6-1 に取着されて側方に張り出し,

前記支点 6-1 を中心として天井面と略平行な面内で回動しうるように支持されたア

ーム 2 と,

C1 前記アーム 2 の先端近傍の第2のケース 3 内に設けられ,室内床面方向を監

10 視するセンサと,

D1 第1のケース 1 の下半部 1-2 の下側に設けられた引掛コンセント 5 と,

E1 前記第1のケース 1 の上半部 1-1 の下側に装着されて内部の空間の給電制御

要素を被覆する第1のケース 1 の下半部 1-2 と,

F1 前記第1のケース 1 の下半部 1-2 の下側に吊り下げられる照明器具 110 のシ

15 ェード 113 と,

G1 前記引掛コンセント 5 に取着されてシェード 113 を含む照明器具 110 を支持

する引掛栓刃本体 111 と,

H1 前記引掛栓刃本体 111 に装着される照明器具 110 と,

I1 を備えた照明器具。

20 イ 本件発明と乙1発明との対比

本件発明と乙1発明とを対比すると,乙1発明における「支点 6-1」は本件発明

における「軸部」に相当し,同様に,「第1のケース 1」は「接続器」に,「アー

ム 2」は「センサ保持具」に,「センサ」は「センサ」に,「第1のケース 1 の下

半部 1-2」は「本体カバー」に,「シェード 113」は「セード」に,「引っ掛け栓

25 刃本体 111」は「ホルダナット」に,「照明器具 110」は「ランプ」に相当してお

り,本件発明と乙1発明とは,引掛型配線器具に取り付けられ,天井面と略平行な





面内で回動しうるアームの先端近傍にセンサを備えた照明器具である点で共通して

いる。

一方,本件発明と乙1発明とは,@本件発明が引掛型配線器具に取り付けられる

接続器の下側にランプソケットを設け,引掛型配線器具及び接続器を被覆する本体

5 カバーとセードを下方から装着してホルダナットで支持する構造を有しているのに

対し,乙1発明は係る構造を有していない点と,A本件発明では「軸部」が接続器

の下面中央に設けられるのに対し,乙1発明では「支点 6-1」が「第1のケース 1

の上半部 1-1」の外周寄り部分に形成される点で相違する。

容易想到性

10 (ア) 相違点@に関し,引掛型配線器具に取り付けられる照明器具において,接

続器の下側にランプソケットを設け,引掛型配線器具及び接続器を被覆する本体カ

バーとセードを下方から装着してホルダナットで支持する構造(以下「周知技術1」

という。)は,本件特許の出願日以前から照明器具メーカー各社が多数採用してい

た周知構造である。具体的には,被告の「クイックミニ」(乙2),松下電工株式

15 会社の「カチット取付方式カチットユニ」及び「カチット取付方式カチットユニ S」

(乙3),オーデリック株式会社の「クイックル取り付け器具」(乙4),東芝ラ

イテック株式会社の「ワンタッチミニ方式」(乙5)と称されるものであり,特開

平 8-36911 号公報(乙6)及び特開平 8-36912 号公報(乙7)に従来技術として記

載されているものである。

20 そして,乙1発明及び周知技術1は,いずれも引掛型配線器具に取り付けられる

照明器具に関するものであるから,乙1発明に周知技術1を適用して相違点@に係

発明特定事項とすることは,当事者が容易に想到し得たことである。

(イ) 相違点Aに関し,センサを保持するアームの回転軸の位置は,照明器具の

中央に設けても外周寄り部分に設けてもセンサを照明器具の側方で回動する機能に

25 変わりはなく,当業者が適宜定め得る単なる設計事項に過ぎない。

したがって,相違点Aに係る本件発明の構成については,乙1発明に基づいて当





業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 以上より,本件特許は,乙1発明に基づき,出願前に当業者が容易に発明

することができたものであるから,特許法29条2項に違反してされたものである。

したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから

5 (同法123条1項2号),原告は,被告に対し,本件特許権を行使することはで

きない(同法104条の3第1項)。

(原告の主張)

ア 乙1発明と本件発明の相違点について

本件発明と乙1発明を対比すると,乙1発明には,「接続器の下面中央に下向き

10 に突出する略円筒状の軸部」が存在しない。また,そのような軸部が存在しない以

上,乙1発明の第1のケースの上半部 1-1 は「接続器」に相当しない。

本件発明において本体カバーは「引掛型配線器具,接続器及びセンサ保持具を被

覆する」ものであるところ,乙1発明にはこれらを被覆するカバーが存在せず,第

1のケースの下半部 1-2 は内部の給電制御要素を被覆するのみであるから,「本体

15 カバー」に相当しない。

本件発明におけるホルダナットは,「セード及び本体カバーを支持するとともに

本体カバーを天井面に密着させる」ものであるところ,乙1発明には本体カバーが

存在しないため,ホルダナットも存在せず,引っ掛け栓刃本体 111 は第1のケース

の下半部 1-2 を天井面 C に密着させておらず,「ホルダナット」に相当しない。

20 イ 容易想到性

(ア) 乙1発明の第1のケースの下半部 1-2 が本件発明の本体カバーに相当すると

すれば,周知技術1を適用しても,ホルダナットは乙1発明において第1のケース

の下半部 1-2 を支持することはなく,これを天井面 C に密着させることもない。そ

のため,相違点@につき,乙1発明に周知技術1を適用してもなお,本件発明と乙

25 1発明の相違点は解消されず,当業者がそのような無意味な組み合わせに想到する

こともない。





第1のケースの下半部 1-2 とは別に新たに天井面 C に密着する本体カバーを乙1

発明に設けるのであれば,もはや周知技術の適用といえず,被告が周知技術1とす

る構成を開示する発明を副引用発明として,乙1発明に副引用発明を適用する動機

があることを論証すべきである。

5 (イ) 本件明細書には,「この発明によれば,センサを保持するセンサ保持具が,

接続器の下面中央に突出形成された軸部に取着されるので,両者の回動を保持する

ための機械的な連結構造がきわめてコンパクトになる。」(【0014】)と記載され

ており,接続器の下面中央に略円筒状の軸部を突出形成し,そこにセンサ保持具を

取着することは,本件発明の課題解決手段の中核をなす構成である。また,本件発

10 明の軸部は回動の中心となると同時に,接続器とセンサ保持具の取着部位としての

役割も有しており,仮に乙1発明の支点 6-1 が第1のケースの上半部 1-1 の中心に

位置するように設計したとしても,本件発明のように「センサ保持具」が「接続器

の軸部に取着され」る構成に至ることはできない。

ウ 以上より,被告の無効主張には理由がない。

15 (3) 原告の損害額(争点3)について

(原告の主張)

ア 限界利益

被告は,遅くとも平成22年11月頃から令和2年3月まで,本件発明に抵触

る被告製品を製造販売してきたところ,その利益の額は,年間で600万円を下ら

20 ないから,被告の限界利益の額は,600万円×112か月/12か月=5600

万円を下らない。

被告は,各被告製品の販売による利益の額は,●(省略)●であるとしているが,

平成26年1月7日以前に,仕入先に対して有償で部品等を支給して利益を得てい

た可能性がある。

25 イ 消費税額の算入

消費税法基本通達5−2−5によれば,特許権侵害に基づく損害賠償金は「資産





の譲渡」(消費税法4条)の対価に該当するものとして消費税の課税対象となるか

ら,限界利益の額に対応する消費税相当額10%(560万円)も,原告が賠償を

受けるべき金額として,特許法102条2項の利益に含まれる。

よって,被告の行為によって原告が受けた損害の額は,特許法102条2項に基

5 づき6160万円を下らないものと推定される。

ウ 推定覆滅事由の不存在

(ア) 競合品

乙11の1〜6のカタログに記載されている製品(以下「乙11製品」という。)

は,いずれも引掛シーリングに接続可能な照明器具ではなく,設置に際して電気設

10 備工事が必要な照明器具であるから,引掛シーリングに接続可能な照明器具を購入

しようとしている需要者がこれらを購入することはなく,被告製品の競合品たり得

ない。

また,被告製品と同様にランプソケット,本体カバー,ランプ及びセードが存在

し,またはこれらの要素が相当程度共通していて初めて被告製品の競合品となり得

15 るものであり,これらが存在せず,被告製品とデザインが大きく異なる LED 型シ

ーリングライトについては,被告製品の競合品にはならない。特に,照明器具を購

入する顧客の中には,ランプが故障した場合に備え,量販店等で替えのランプを購

入して手軽に交換できる製品を希望する者も存在し,そのような顧客の需要は,ラ

ンプ交換ができない LED 内蔵型照明器具によっては満たすことができない。

20 加えて,本件発明の作用効果は,回動を保持するための機械的な連結構造がコン

パクトになること(【0014】),引掛型配線器具の掛着面を視認しやすく,作業が

容易になると共に作業の安全性も向上すること(【0016】),美観に優れた取付状

態が得られること(【0017】)であり,被告製品の競合品というためには,これら

の作用効果を奏する製品であることを要するというべきである。

25 乙21の1〜4のカタログは,平成16年〜平成20年のものであって,平成2

2年9月1日から販売が開始された被告製品の競合品に関する証拠にはならないし,





同カタログに掲載されている型番 IG20042C の製品は,平成21年9月1日には生

産を終了しており,競合品に当たらない。

また,乙22の1〜7の型番 OL 013 397 の製品は,引掛シーリングに対して照明

装置がひと回り以上大きくなっており,引掛シーリングの厚みに相当する隙間が生

5 じているから,本件発明の実施品の競合品とはいえない。

乙23の1,2の型番 TGS-6119 の製品及び TZGS-6099 の製品にはセンサが回動

するかどうかの記載がなく,競合品にはならない。

乙11の1,乙20,乙23の3,乙24〜28のカタログに掲載されている製

品は,いずれも本件発明の実施品及び各被告製品とは大きく器具形態が異なるもの

10 であり,競合品に当たらない。

(イ) 市場占有率

原告のシェア率が3.7%に過ぎないというのは,各メーカーの照明器具全般の

売上高の合計に占めるメーカーごとの売上高の割合であり,純粋な照明機器のほか,

照明機器に使用するためのスイッチ等の周辺機器の売上高も含まれている。

15 本件発明の実施品は,主としてトイレ灯として用いられる物であり,住宅用照明

のうち,直付け型の居室外用に当たるが,この区分における原告のシェア率は,被

告製品が販売されていた平成27年当時,●(省略)●%であった。

(ウ) 購入動機

原告は,本件発明の作用効果を本件発明の実施品に係る自身のホームページ上に

20 記載していないが,他の原告製品と製品情報の表示を合わせるため,必要な情報を

選択して記載しているのであって,店頭で商品を見比べながら選択するのが通常で

あるこの種の製品の需要者の購入動機とは関連性がない。

原告が量販店や量販店を訪れた顧客等に向けて作成・配布しているカタログには,

本件発明の実施品が掲載され,引掛シーリングに簡易に取り付け可能であることや

25 センサの回動が可能であることが明記されている。

被告のカタログには,本件発明の作用効果が記載されていないが,商品写真や施





工写真を見れば,本体カバーが天井面に密着し美観に優れた取付状態が得られてい

ることや回動可能なセンサ保持具が本体カバーの中に収まっており製品全体がコン

パクトになっていることが一見して看取することができる。

(被告の主張)

5 ア 限界利益

各被告製品の売上額は,合計●(省略)●であり,被告は,各被告製品を仕入れ

ているため,限界利益は,各被告製品の売上金額から仕入金額を控除した金額とな

り,合計●(省略)●である。

原告は,被告が各被告製品の仕入先に対して部品の有償支給を行って利益を得て

10 いる可能性があると主張するが,被告は,部品を仕入値と同額で支給しており,仕

入の過程において利益を得ていることはない。

イ 推定覆滅事由の存在

本件においては,以下のとおり,特許法102条2項の推定覆滅事由が存在し,

原告の損害額の推定は相当な程度において覆滅されるべきである。

15 (ア) 競合品の存在

センサ付シーリングライトは,照明器具にあって,ごく一般的な量販品であり,

多数の照明器具メーカーから製造販売されていた。

松下電工株式会社(後にパナソニック株式会社,平成8年4月から)がセンサ付

シーリングライトの分野における先駆者であり,オーデリック株式会社(平成14

20 年3月ころから),東芝ライテック株式会社(同月ころから),山田照明株式会社

(平成17年6月ころから)も,センサ付シーリングライトを販売していた。また,

瀧住電機工業株式会社,アグレッド株式会社,三菱電機照明株式会社,株式会社ホ

タルクス,株式会社 YAMAGIWA,日立グローバルライフソリューションズ株式会

社もセンサ付シーリングライトを販売している。

25 被告製品の需要者には,総合住宅メーカーが多数含まれているから,設置に際し

て業者による施工を必要とする製品であっても,被告製品の競合品である。仮に,





引掛シーリングに接続する照明器具のみを競合品とするとしても,パナソニック株

式会社(平成28年4月から),東芝ライテック株式会社(平成16年4月から),

オーデリック株式会社(平成22年5月から),瀧住電機工業株式会社(平成20

年6月から),アイリスオーヤマ株式会社(平成29年10月から),株式会社オ

5 ーム電機(平成29年10月から),朝日電器株式会社(平成20年11月から),

リュウド株式会社(平成28年2月から),株式会社ドウシシャ(平成28年7月

から)の各製品がセンサ付引掛シーリングライトであり,ランプソケット,本体カ

バー,ランプ及びセードが存在し,本件発明の実施品と大きさもほとんど同じであ

って,被告製品の競合品である。

10 また,本件発明においてセンサを回動させることが前提とされているが,LED 型

シーリングライトにおいては,光源が小型となり,ランプソケット,ランプ及びセ

ードの部分が存在せず,製品全体がコンパクトになったため,センサの検知範囲に

死角が生じず,センサを回動させる必要がない。そのため,LED 型シーリングライ

トは,本件発明に係る構造を有さず,センサ保持具を回動させる機構を有すること

15 なくコンパクト化を実現できるという意味で,本件発明を上回る作用効果を奏する

競合品である。なお,ランプ交換を可能とすることは本件発明の作用効果とは関係

がないから,競合品であるかを判断するために考慮すべきではない。

(イ) 市場占有率

令和元年の照明器具(従来光源+LED)市場におけるシェアは,業界大手のパナ

20 ソニック株式会社が 26.4%,東芝ライテック株式会社が 7.5%を占め,被告は 4.8%,

原告は 3.7%である。

したがって,各被告製品が市場に存在しなかったと仮定した場合に,原告製品が

代替して販売し得た金額の算定においては,被告を除く照明器具市場全体における

原告のシェア率に限定されるべきであり,当該原告のシェア率を超える部分は,他

25 社製品が代替して販売されるものというべきである。

そうすると,被告を除く照明器具市場全体における原告のシェア率は,





30,100,000,000 円/(814,815,000,000 円-39,000,000,000 円)×100=3.9%

であることから,特許法102条2項により推定された原告の損害額のうち,96.1

%については推定が覆滅されるべきである。

また,被告が各被告製品を販売していた平成22年から平成30年までの住宅用

5 照明市場及び LED シーリングライト市場における原告のシェア率からすると,住

宅用照明であってシーリングライトである市場における原告のシェア率は,およそ

10%であったと考えられる。

(ウ) 顧客誘引力

本件発明の作用効果の一つは,センサを保持するセンサ保持具が,接続器の下面

10 中央に突出された軸部に取着されるので,両者の回動を保持するための機械的な連

結構造がきわめてコンパクトになることであるが,センサ付シーリングライトのう

ちごく一部に関するものであり,センサ付シーリングライト自体は従来技術により

製造可能である。

本件発明の作用効果のうち,センサの回動を保持するための機械的な連結構造が

15 コンパクトになる点,接続器の引掛型配線器具への掛着作業の容易性・安全性の向

上の点については,LED 型シーリングライトであれば,本件発明を上回る作用効果

を奏する。本体カバーを天井面に密着されることができ美観に優れた取付状態が得

られる点については,従来技術で既に奏することが可能であって,本件発明の顧客

誘引力は極めて乏しい。

20 また,原告は,本件発明の実施品について,本件発明の作用効果を強調して販売

しておらず,かえってカタログでは回動しないセンサ付シーリングライトを販売し

ており,本件発明の技術的意義が需要者の購入動機になっていない。また,原告は,

本件発明の実施品について,ホームページで作用効果に触れておらず,カタログに

おいても,小さい文字で2行記載されているにすぎず,その内容も,作用効果を謳

25 って顧客を吸引するものではなく,感知しにくい場合にはセンサや本体を回動させ

て調整するように注意を促すものである。





被告製品においても,カタログで本件発明の作用効果について何ら強調されてお

らず,本件発明の技術的意義は,購入動機となっていない。

したがって,需要者は,価格,デザイン,ブランド等を総合的に考慮して購入す

るかどうかを決定するのであり,被告製品の販売数量に対応する需要全てが本件発

5 明の実施品に係る原告製品に向かうとは考えられず,特許法102条2項損害額

の推定は覆滅されるべきである。

(エ) 覆滅率

以上によれば,特許法102条2項損害額の推定は,およそ96%は覆滅され

るべきである。

10 (4) 消滅時効の成否(争点4)

(被告の主張)

ア 各被告製品のうち,被告製品3及び4は平成24年12月12日に,被告製

品1は平成25年11月29日に,被告製品5は平成27年3月2日に,被告製品

6は平成29年1月5日に,被告製品2は平成30年11月29日に,被告製品7

15 は同年12月25日に製造販売を終えており,製造販売終了から既に相当な期間が

経過している。

イ 原告と被告は,照明器具の製造販売を業とする競合メーカーであり,両社と

も,自社の製品を1年ごとに改訂される自社の総合カタログに掲載しているし,主

たる販売ルートの一つとして大手家電量販店において製品を販売している。

20 平成22年10月28日,同月29日,同年11月5日において,それぞれ異な

る3店舗の家電量販店で,被告製品3及び4が本件発明の実施品である原告製品と

同じコーナーに真横の並びで展示,販売されており,原告及び被告のそれぞれの 営

業担当者が現地で展示,販売を担当した事実があり,原告が被告において各被告製

品を販売している事実を認識していたことは明らかである。

25 加えて,本件のシーリングライトは簡易な装置発明の実施品であって,その特徴

は容易に理解できるものであるから,原告は,家電量販店において展示,販売され





ている各被告製品を現認することで,各被告製品が本件特許権を侵害することを認

識していたといえる。

原告は,原告の営業担当者が原告が権利を有する特許発明の内容を全て把握して

いるわけでも,他社製品の構造等を全て確認しているわけでもないと主張するが,

5 民法724条の損害および加害者を知った時とは,被害者において加害者に対する

賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害及び加害

者を知った時を意味するから,仮に本件特許権の全容を把握していない原告の営業

担当者が存在したとしても,原告の営業担当者が各家電量販店において展示・販売

されている各被告製品を現認しており,本件のシーリングライトの特徴は容易に理

10 解できるものであるから,原告は,被告に対する賠償請求をすることが事実上可能

な状況の下に,それが可能な程度に被告製品による本件特許権侵害を認識したとい

える。

以上によれば,遅くとも平成22年11月5日には,原告は,各被告製品による

本件特許権の侵害を認識したので,既に本件訴訟の提起前に3年の消滅時効期間が

15 経過している。

ウ 原告は,平成22年ころ,本件特許権に基づき,他の照明器具製造メーカー

に対し,各被告製品と同様の機構を備えた同社の製品が,本件特許権を侵害すると

指摘したことがあり,被告を含む競合他社のシーリングライトについて本件特許権

侵害の有無を分析する機会を有していた。

20 したがって,遅くとも平成22年12月末までには,原告は,各被告製品による

本件特許権の侵害を現実に認識したので,既に本件訴訟の提起前に3年の消滅時効

期間が経過している。

エ 被告は,原告に対し,令和3年3月1日付け被告準備書面(3)の送付によ

り,原告が本件訴訟を提起した令和2年4月9日から3年前である平成29年4月

25 10日以前に発生した原告の被告に対する損害賠償請求権について消滅時効援用

する意思表示をする。





なお,平成29年4月10日以降の各被告製品の利益額は,83万5336円で

ある。

(原告の主張)

ア 原告は,平成30年2月頃,被告が製造販売している製品の一部が本件特許

5 権を侵害している事実を認識し,その際,他に被告が販売している同類の製品を遡

って調査した結果,複数の被告製品が本件特許権を侵害している事実を知った。

仮に,原告が早い時期に被告による侵害行為を認識していたのであれば,当然,

今回と同様の対応をしたものであり,躊躇する理由はない。本件のように,侵害

為開始後,特許権者から侵害警告がないまま一定期間経過し,後日侵害警告があっ

10 たという状況であれば,企業の常識的な行動態様に照らし,侵害警告がされた時ま

侵害行為を認識していないかったことを合理的に推認することが可能である。

イ 本件発明の構成要件のうち,構成要件 A,B,C,D については,いずれも内

部構造に関するものであり,これらの構成要件該当性について,展示・販売されて

いる被告製品の外観から判断することは困難である。

15 また,家電量販店の照明器具コーナーに出向く原告の営業担当者は,原告が権利

を有する特許発明の内容を全て把握しているわけでも,他社製品の構造等を全て確

認しているわけでもない。原告の営業担当者は,顧客対応やチラシ等の製作が主た

る業務であって,自社の商品開発等の参考にするため他社製品の価格情報や自社製

品に対する顧客要望情報を社内他部門へ共有することもあるが,無数に存在する他

20 社製品について,その構造を確認・分析することまで業務に含まれていない。

ウ 原告が平成22年頃に本店所在地が大阪市である照明器具製造販売メーカー

に対し,本件特許権に基づく警告を行った事実については,原告内部で確認が取れ

ておらず,そのような事実はない。仮にそのような事実があったとしても,原告が

被告による本件特許権侵害の事実を認識していたこととは関連性がない。

25 第3 当裁判所の判断

1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について





(1) 前記(第2の2(4)ウ)のとおり,各被告製品は,本件発明の構成要件 A,

C,D,F,H 及び I を充足する。

(2) 構成要件 B の充足性について

ア 本件明細書の記載等

5 本件明細書には,以下の記載がある(図面は別紙「特許公報」参照)。

(ア) 技術分野

「本発明は,センサを備えた天井取付タイプの照明器具に関し,特にセンサの検

知範囲を可変とした照明器具に関する。」(【0001】)

(イ) 従来技術

10 「従来より,人感センサや明るさセンサを用いて光源を自動的に点灯・消灯する

ように構成された照明器具が知られている。…この種のセンサ付き照明器具には,

設置される空間の形態や人の出入方向などに応じて,センサの検知範囲を調整可能

にしたものもある(例えば,特許文献1参照。)。」(【0002】。なお,「特許文

献1」は,特開 2001-126527 号公報を指す。)

15 (ウ) 発明が解決しようとする課題

「前記従来の照明器具 9 は,引掛型配線器具 R に掛着される接続器 91 の外周縁

部に鍔状片 914 を形成して,この鍔状片 914 を,器具本体 94 の取付筒 944 の上端

縁と,取付板 96 の嵌合孔 961 の周部との間に挟み込んで保持している。そのため,

接続器 91 と器具本体 94 とを回動自在に保持する部分の構造が,引掛型配線器具 R

20 の大きさに比べてひと回り以上大きくならざるを得ず,その結果,器具全体が大型

化することを避けられない。」(【0008】)

「また,接続器 91 と器具本体 94 とが取付板 96 を介して予め一体に結合され,

これら全体を一緒に持ち上げて引掛型配線器具 R に取り付けることになるので,取

り付けに際して作業者が引掛型接続器 91 具(ママ)の掛着面を視認しにくく,接続

25 器 91 の引掛栓刃 913 を掛着するのに苦労する。さらに,器具本体 94,接続器 91 及

び取付板 96 が一体化された状態では上面がほぼ平坦になるので,これをそのまま





引掛型配線器具 R に掛着すると,天井面 C と照明器具 9 との間に,引掛型配線器具

R の突出寸法(高さ)に相当する隙間が形成される。…それだけの隙間が天井面 C

と照明器具 9 との間に形成されると,照明器具 9 の取付状態が見苦しくなってしま

う。」(【0009】)

5 「本発明は,これらの問題点を解消するためになされたもので,センサの位置を

回動させるための保持構造が小さく,引掛型配線器具への掛着が容易で,天井面と

の間にも隙間を生じないように取り付けることのできる照明器具を提供することを

解決課題とする。」(【0011】)

(エ) 課題を解決するための手段

10 「前記課題を解決するため,本発明の照明器具の構成は,天井面に設けられた引

掛型配線器具に掛着可能な引掛栓刃を上面に有し,下面中央には下向きに突出する

略円筒状の軸部が形成された接続器と,前記接続器の軸部に取着されて側方にアー

ムを張り出し,前記軸部を中心として天井面と平行な面内で回動しうるように支持

されたセンサ保持具と,前記センサ保持具のアームの先端近傍に,検知部を略下向

15 きにして取り付けられたセンサと,前記センサ保持具の下側に結合された略円筒状

のランプソケットと,前記センサ保持具の下側に装着されて前記引掛型配線器具,

接続器及びセンサ保持具を被覆する本体カバーと,前記本体カバーの下側に装着さ

れるセードと,前記ランプソケットの外周面に取着されてセード及び本体カバーを

支持するとともに本体カバーを天井面に密着させるホルダナットと,前記ランプソ

20 ケットに螺着されるランプと,を備えることを特徴とする。」(【0013】)

「この発明によれば,センサを保持するセンサ保持具が,接続器の下面中央に突

出形成された軸部に取着されるので,両者の回動を保持するための機械的な連結構

造がきわめてコンパクトになる。」(【0014】)

「この発明によれば,予め一体に結合された接続器,センサ保持具,センサ及び

25 ランプソケットを一緒にして引掛型配線器具に掛着した後,これらとは別体に形成

された本体カバー及びセードを後付けすることができる。したがって,接続器を引





掛型配線器具に掛着する作業に際して引掛型配線器具の掛着面を視認しやすく,作

業が容易になるとともに,作業の安全性も向上する」(【0016】)

「また,本体カバーを後付け可能とすることで,本体カバーの形状を,接続器や

センサ保持具とともに引掛型配線器具まで被覆しうるものとすることができる。し

5 たがって,本体カバーを天井面に密着させることが可能になり,これによって美観

に優れた取付状態が得られる。」(【0017】)

(オ) 発明の実施の形態

「接続器 10 は,角形引掛シーリングと同程度の大きさの箱状部品で,引掛型配

線器具 R の引掛コンセントに掛着可能な一対の引掛栓刃 11 と,掛着後の脱落を防

10 止するロック爪 12 を上面に有し,一方の側面にはロック爪 12 を引き下げる解除レ

バー13 を備えている。また,接続器 10 の下面中央には,下向きに突出する略円筒

状の軸部 14 が形成され,この軸部 14 の外周面には雄ネジが形成されている」(【0

024】)

「センサ保持具 20 は金属製薄板からなる部品で,上板 21 の下側に,一対の連結

15 脚 24 を有する下板 25 をネジ固定して形成されている。上板 21 は,側方に張り出

したアーム 22 を有し,このアーム 22 の先端近傍は斜め上向き(この例では水平面

に対する仰角α=約45度)に折曲されて,この折曲部分にセンサ 30 が取り付け

られている。上板 21 の基部の中心には雌ネジを有する軸孔 23 が形成され,この軸

孔 23 が接続器 10 の軸部 14 に螺合している。これにより,センサ保持具 20 は,接

20 続器 10 の軸部 14 を中心として天井面 C と略平行な面内で回動しうるように支持さ

れる。」(【0025】)

「ランプソケット 40 は,上面がセンサ保持具 20 の下板 25 に固着されている。

ランプソケット 40 の下端面には,ランプ 80 の口金を螺着しうるランプ取付部 41

が開口している。また,ランプソケット 40 の外周面には,ホルダナット 70 を螺着

25 しうる雄ネジ 42 が形成されている。」(【0029】)

「センサ 30 は,センサ保持具 20 におけるアーム 22 の折曲部分に固着された回





路収納部 31 と,回路収納部 31 に対して回動自在に取着された検知部 32 とを備え

ている。」(【0030】)

「本体カバー50 は,底面視略円形の主部 51 と,主部 51 の側方に迫り出した底面

視略矩形の迫出部 52 とを備え,主部 51 が引掛型配線器具 R,接続器 10,及びセン

5 サ保持具 20 の中心側部分を被覆するとともに,迫出部 52 がセンサ保持具 20 のア

ーム 22 を被覆するように形成されている。」(【0033】)

「主部 51 の取付孔 54 は,…その縁部2箇所が内側に張り出している。…取付孔

54 の縁部の一部がセンサ保持具 20 の下板 25 から張り出した引掛爪 27 上に掛止さ

れて,本体カバー50 が仮止めされるようになっている。」(【0034】)

10 「セード 60 は,上端面及び下端面が開口した略回転体形状の部品で,上端部に

は,本体カバー50 のセード受部 53 内に係合しうる段部 61 が設けられ,この段部 6

1 には内側に張り出す平坦な張出縁部 62 が形成されて,その内側にランプソケット

40 が挿通される。」(【0035】)

「ホルダナット 70 は,ランプソケット 40 の外周面に形成された雄ネジに螺着し

15 うる雌ネジ部 71 と,雌ネジ部 71 の上端面から外側に張り出すフランジ 72 とを備

えている。そして,図 2 に示すように,本体カバー50 のセード受部 53 にセード 60

の段部 61 を係合させた状態で,下方からランプソケット 40 にホルダナット 70 を

螺着すると,フランジ 72 がセード 60 の張出縁部 62 を上向きに押圧し,本体カバ

ー50 及びセード 60 を下方から支持して,本体カバー50 の上端面を天井面 C に密着

20 させる。」(【0036】)

「このように,本発明の構成によれば,予め一体に結合した接続器 10,センサ

保持具 20,センサ 30 及びランプソケット 40 を一緒にして引掛型配線器具 R に掛

着した後,本体カバー50 及びセード 60 を後付けすることができる。したがって,

接続器 10 を引掛型配線器具 R に掛着する作業に際して引掛型配線器具 R の掛着面

25 を視認しやすく,作業が容易になる。」(【0037】)

「また,後付け可能な本体カバー50 は,接続器 10 やセンサ保持具 20 とともに引





掛型配線器具 R をも被覆しうる形状に形成することができる。そして,この本体カ

バー50 が,ランプソケット 40 に取着されるホルダナット 70 の支持によって天井面

C に密着するので,天井面 C と照明器具 1 との間には見苦しい隙間が形成されず,

美観に優れた取付状態が得られる。」(【0038】)

5 イ 「側方」(構成要件 B)の意義

(ア) 本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば, 本件発明の「センサ保持

具」は,天井面に設けられた引掛型配線器具に掛着可能な接続器の下面中央に下向

きに突出する略円筒状の軸部(構成要件 A)に取着され,「側方」にアームを張り

出し,軸部を中心として天井面と略平行な面内で回動しうるように支持され(構成

10 要件 B),アーム先端近傍にセンサが取り付けられ(構成要件 C),下側に略円筒

状のランプソケットが結合された(構成要件 D)ものである。

これらの文言によれば,「センサ保持具」は,軸部を中心に天井面と略平行な面

内で回動可能な状態で取着され,下側にはランプソケットが結合され,先端近傍に

センサが取り付けられたアームを有している構成であるから,「側方にアームを張

15 り出し」(構成要件 B)とは,軸部を中心として外側方向に張り出し部を設けるこ

とを意味するものと理解される。

また,本件特許の請求項1を引用してなる請求項5には,センサ保持具のアーム

が斜め上向きに折曲される構成が記載されている。

そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,「側方」とは,セ

20 ンサ保持具が取着されている軸部を中心として外側方向であり,天井面に対して 垂

直方向については何ら限定がなく,アームの屈曲(折曲)について限定を加えるも

のでもないと解される。

(イ) 本件明細書の記載によれば,従来のセンサの検知範囲を可変とする照明器

具には,接続器とセンサを保持する器具本体とを回動自在にする部分の構造が引掛

25 型配線器具の大きさに比べてひと回り以上大きいという課題がある(【0008】)。

本件発明は,この問題点を解消するために,センサの位置を回動させるための保持





構造を小さくすることをその課題の一つとするものである(【0011】)。

そして,本件発明によれば,センサ保持具が,接続器の下面中央に突出形成され

た軸部に取着されるので,両者の回動を保持するための機械的な連結構造がコンパ

クトになる効果がある(【0014】)のであり,アームの天井面に対して垂直方向の

5 位置や屈曲(折曲)の有無が関係するものではない。

また,本件発明の実施形態として,センサ保持具が上板,下板及び連結脚からな

り,アームが上板から張り出し,斜め上向きに折曲された構成が記載されており

(【0025】),アームが任意の方向に折曲可能であることが示唆されている。

そうすると,「側方」を軸部の中心から外側方向と解し,アームの垂直方向の位

10 置や屈曲(折曲)について限定を加えるものではないと解することは,本件明細書

の記載とも整合する。

ウ 各被告製品について

前記(第2の2(4)イ)のとおり,各被告製品は,軸部 14 に,円板状ベース板 21

1 の周縁部 212 から上方に向かって直角に屈曲し,天井面 C 近傍の高さ 213 位置で

15 外方に屈曲しているアーム 22 と一体に形成され,軸部 14 を中心として天井面 C と

略平行な面内で回動しうる保持具 20 が取り付けられているという構成(構成 b)を

有する。

前記「センサ保持具」及び「側方」の解釈によれば,「軸部 14」は本件発明の

軸部に,「アーム 22」は本件発明のアームに相当し,周縁部 212 から直角に屈曲

20 し,高さ 213 位置で外側に屈曲していることにより本件発明の側方に張り出してい

ることになり,「円板状ベース板 211」,「アーム 22」と一体に形成される「保持

具 20」は本件発明のセンサ保持具に相当するから,各被告製品は,本件発明の構

成要件 B を充足する。

エ 被告の主張について

25 被告は,本件発明の構成要件 B の文言の表現や本件明細書の記載によれば,本件

発明のセンサ保持具は,接続器の軸部に取着されている部位からそのまま側方にア





ームを張り出すという極めて単純な構造であり,これによりセンサの位置を回動さ

せるための保持構造を小さくするという課題が解決されているなどと主張する。

しかし,本件特許に係る特許請求の範囲及び本件明細書の各記載を見ても,本件

発明の構成がセンサ保持具の軸部に取着されている部位からそのまま側方にアーム

5 を張 り 出す も のに 限 定さ れ ると 解 すべ き 記載 は ない 。 むし ろ , 前 記 イ (イ)の と お

り,被告の主張に係る解釈は,本件明細書の記載と整合しない。

したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。

(3) 構成要件 E 及び G の充足性について

構成要件 E 及び G の解釈について

10 (ア) 本 件 発 明に 係 る 特許 請 求 の 範 囲の 記 載に よ れ ば , 本件 発 明の 「 本 体 カ バ

ー」は,センサ保持具の下側に結合されたランプソケット(構成要件 D)の外周面

に取着される「ホルダナット」により,下側に装着されるセードと共にセンサ保持

具の下側に装着され,支持され,天井面に密着する(構成要件 E〜G)ものであ

る。

15 これらの文言によれば,「セード及び本体カバーを支持するとともに本体カバー

を天井面に密着させる」(構成要件 G)とは,ホルダナットがセードに上向きの押

圧を加え,セードを介して本体カバーに上向きの押圧を加えることで本体カバー を

天井面に密着状態で固定することを意味するものと解される。

また,本件特許の請求項1を引用してなる請求項3には,センサ保持具の下部

20 に,本体カバーの取付孔の縁部に掛止しうる引掛爪が形成される構成が記載されて

いる。

そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,本体カバーは,ホ

ルダナットにより上向きの押圧を加えられて天井面に密着状態で固定されれば足

り,他に付加的にセンサ保持具への係止手段を有する構成を排除するものではない

25 と理解される。

(イ) 本件明細書の記載によれば,従来の照明器具には, 接続器と器具本体が一





体に結合され,取り付けに際して作業者が掛着面を視認しにくく,天井面と照明器

具との間に引掛型配線器具の突出寸法に相当する隙間が形成されるという課題があ

る(【0009】)。本件発明は,この課題を解決するために,一体に結合された接続

器,センサ保持具,センサ及びランプソケットを引掛型配線器具に掛着した後,別

5 体に形成された本体カバーを後付け可能とすることで,接続器を引掛型配線器具に

掛着する作業に際して掛着面を視認しやすくなり,かつ,本体カバーが,接続器,

センサ保持具及び引掛型配線器具を被覆し,天井面に密着させることが可能になる

というものである(【0016】,【0017】)。

また,本件発明の実施の形態として,予め一体に結合した接続器 10,センサ保

10 持具 20,センサ 30 及びランプソケット 40 を引掛型配線器具 R に掛着した後,本

体カバー50 をセンサ保持具 20 に仮止めした上で,セード 60 を係合し,ホルダナッ

ト 70 をランプソケット 40 に螺着して上向きの押圧を加えて本体カバー50 を天井面

C に密着させる構成が記載されている(【0034】,【0036】,【0037】)。

そうすると,本件明細書においても,本体カバーを取り付けるに際して,センサ

15 保持具に係止した上でホルダナットを取着して上向きの押圧を加える構成は排除さ

れていないと理解されるものであり,本体カバーは,ホルダナットにより上向きの

押圧を加えられて天井面に密着状態で固定されれば足り,他に付加的にセンサ保持

具への係止手段を有する構成を排除するものではないと解することは,本件明細書

の記載とも整合する。

20 イ 各被告製品について

前記(第2の2(4)イ)のとおり,各被告製品は,保持具 20 の下側に設けられた

ソケット 40 に取り付けられるホルダナット 70 により下方から上向きの押圧を加え

られ,引掛シーリング R,引掛シーリングプラグ 10 及び保持具 20 を被覆する本体

カバー50 を有し(構成 e),本体カバー50 は天井面 C に密着して設置され,ホルダ

25 ナット 70 はソケット 40 の外周面に取り付けられてセード 60 を支持し,本体カバ

ー50 に下方から上向きの押圧を加える(構成 g)構成を有している。





前記イの解釈によれば,「本体カバー50」は本件発明のセンサ保持具の下側に装

着されて引掛型配線器具,接続器及びセンサ保持具を被覆する本体カバーに相当

し,「ホルダナット 70」は本件発明のランプソケットの外周面に取着されてセー

ド及び本体カバーを支持するとともに本体カバーを天井面に密着させるホルダナッ

5 トに相当するから,各被告製品は,本件発明の構成要件 E 及び G を充足する。

ウ 被告の主張について

被告は,各被告製品においては保持具 20 の当接片 215 及び押圧バネ 214 のみに

よって本体カバー50 が支持され,天井面 C に密着すると主張する。

しかしながら,各被告製品の本体カバー50 に「バネで仮止めされます。」との

10 記載があるにもかかわらず,ホルダナット 70 を取着することなく本体カバー50 の

固定が完了すると解することは困難である。そして,保持具 20 の当接片 215 及び

押圧バネ 214 が本体カバー50 の当接部及び係止突起 511 と当接し,支持力を有する

としても,後にソケット 40 に取着されるホルダナット 70 により本体カバー50 が上

向きの押圧を加えられるのであるから,本体カバー50 がホルダナット 70 により支

15 持され,天井面 C に密着させられる構成を有することに変わりはない。

したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。

(4) 小括

以上より,各被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する。

2 乙1文献に基づく進歩性欠如の有無(争点2)について

20 (1) 乙1文献には,以下の記載がある。

ア 発明の属する技術分野

「本発明は,室内の天井から吊り下げられた照明器具を自動的に点滅する機器に

係り,とくに人の存否を検知して自動的に照明器具を点滅する自動点滅器に関す

る。」(【0001】)

25 イ 従来の技術

「従来から,人を検知するセンサを用いて照明器具などを自動的にオン,オフす





る自動点滅器は広く利用されている。…センサは,ケースから突出したアームに取

り付けられているものもある。」(【0002】)

ウ 発明が解決しようとする課題

「…人の出入りを検知するために最適なドアなどに向けてセンサを設置すること

5 ができない。引掛シーリングは,点対称構造のため,180 反転させて取付角度を変

えることはできるが,ドアの方向に合わせて角度を自由に選択することはできな

い。…アーム付きのものでは,センサの角度だけを変えることで検知エリアを選択

することもできるが,多くの場合は下に吊り下げられた照明器具が邪魔になり最適

な向きを選択することはできない。」(【0003】)

10 「本発明は上述の点を考慮してなされたもので,人を検知するためのセンサを任

意の位置,向きに設定することができる天井灯用自動点滅器を提供することを目的

とする。」(【0004】)

エ 発明の実施の形態

「…1 は第1のケースであり,ローゼット 100 により天井に取り付けられ,引掛

15 栓刃本体 111 および電源コード 112 により第1のケースの下方に吊り下げられて,

シェード 113 内に収容された照明器具 110 に給電する。そして,第1のケース 1 内

には,照明器具への給電を制御するための給電制御装置(図示せず)が組み込まれ

ている。」(【0006】)

「また第1のケース 1 には,横方向に伸び出したアーム 2 の先端に設けられた第

20 2のケース 3 内にセンサ(図示せず)が設けられており,室内床面方向を監視して

人がいるか否かの検知を行っている。アーム 2 は,所定範囲内で伸縮可能であり,

しかも第1のケースに対して揺動しうるように支持されている。」(【0007】)

「…第1のケース 1 は,互いに組み合わされて固定される上半部 1-1 と下半部 1-

2 とからなり,内部に空間を形成し,この空間に給電制御要素を収容する。そし

25 て,上半部 1-1 の上面には,…引掛栓刃 4-1,4-2 が突出して設けられており,この

引掛栓刃 4-1,4-2 によって,天井に設けられた引掛シーリング本体のローゼットに





係合固定され,かつ電源に接続される。」(【0008】)

「…下半部 1-2 には,その下面に引掛シーリング型コンセント 5-1,5-2 が設けら

れており,この引掛シーリング型コンセント 5-1,5-2 に照明器具(図示せず)の引

掛栓刃が係合しうるようになっている。」(【0009】)

5 「…アーム 2 は,第1のケース 1 の外周寄り部分に設けられた支点 6-1 を中心に

して,天井面および床面と平行な面内における 180 度内の範囲で揺動することがで

きる。…第1のケース 1 の取付状態を 180 度反転させれば,アーム 2 の位置は 360

度の回転範囲内から選択することができる。アーム 2 を,このような運動が可能な

状態で支持するために,設置空間 7 が形成されている。」(【0010】)

10 (2) 本件発明と乙1発明との対比

乙1発明が前記第2の4(2)ア記載の構成を有することに争いはないところ,乙

1文献の上記各記載によれば,本件発明と乙1発明とは,少なくとも,以下の点で

相違する。

すなわち,第1に,本件発明では,引掛型配線器具に装着される接続器の下面中

15 央に下向きに突出する略円筒状の軸部が形成され(構成要件 A),軸部に取着され

て側方にアームを張り出したセンサ保持具が取り付けられ(構成要件 B),センサ

保持具の下側に略円筒状のランプソケットが結合される(構成要件 D)のに対し,

乙1発明では,第1のケース 1 の上半部 1-1 の下面外周寄り部分に支点 6-1 が形成

され(【0008】,【0010】,構成 A1),支点 6-1 にアーム 2 が取り付けられ(【0

20 010】,構成 B1),第1のケース 1 の下半部 1-2 の下側に引掛コンセント 5 が設け

られる(【0009】,構成 D1)こととされている。

第2に,本件発明では,センサがセンサ保持具のアームの先端近傍に取り付けら

れ(構成要件 C),本体カバーがセンサ保持具の下側に装着されて引掛型配線器

具,接続器及びセンサ保持具を被覆する(構成要件 E)のに対し,乙1発明では,

25 センサがアーム 2 の先端近傍の第2のケース 3 内に設けられ(【0007】,構成 C

1),第1のケース 1 の下半部 1-2 が上半部 1-1 の下側に装着されて給電制御要素を





被覆するのみとされている(【0008】,構成 E1)。

第3に,本件発明では,本体カバーの下側にセードが装着され(構成要件 F),

ランプソケットの外周面に取着されるホルダナットによりセード及び本体カバーが

支持されて本体カバーが天井面に密着し(構成要件 G),ランプソケットにランプ

5 が螺着される(構成要件 H)のに対し,乙1発明では,第1のケース 1 の下半部 1-

2 の下側に設けられた引掛コンセント 5 に引掛栓刃本体 111,電源コード 112 を介

してシェード 113 を含む照明器具 110 が取り付けられ(【0006】,【0009】,構成

F1,H1),引掛栓刃本体 111 は照明器具 110 を支持し,第1のケース 1 の下半部 1

-2 は天井面に密着しない(【0006】,【0008】,構成 G1)構成である。

10 (3) 進歩性の欠如について

ア 第1の相違点に関し,被告は,センサを保持するアームの回転軸の位置は,

当業者が適宜定め得る単なる設計事項に過ぎないと主張する。

しかしながら,乙1発明においては,給電制御要素を被覆する第1のカバー1 の

下半部 1-2 の下側に引掛コンセント 5 が設けられ,照明器具 110 の引掛栓刃本体 11

15 1 を取り付ける構造になっているから,外周寄り部分に形成された支点 6-1 をその

まま中央に移動させることが容易とはいえないし,支点 6-1 に替えて接続器の下面

中央に下向きに突出する軸部を設け,センサ保持具にランプソケットを結合させる

構成とすることも単なる設計事項とはいえない。

また,乙1発明は,自動点滅器の「下に吊り下げられた照明器具が邪魔にな」る

20 ことを課題とするものであり(【0003】),そのために先端近傍にセンサを設けた

アーム 2 を第1のカバー1 の外周寄りに張り出して取り付けているのであるから,

乙1発明において,本件発明の構成要件 A の構成を採用する動機付けはない。

イ 第2,第3の相違点に関し,被告は,引掛型配線器具に取り付けられる照明

器具において,接続器の下側にランプソケットを設け,引掛型配線器具及び接続器

25 を被覆する本体カバーとセードを下方から装着してホルダナットで支持する構造

周知技術1)が本件特許の出願日以前から周知の構造であったので, 本件発明





は,当業者が乙1発明に周知技術1を適用して容易に想到することができたと主張

する。

しかしながら,乙1発明は,給電制御装置を被覆する第1のカバー1 の下側に引

掛コンセント 5 を設けて,引掛栓刃本体 111,電源コード 112,シェード 113 を備

5 えた独立した照明器具 110 を取り付けるものであるから,そもそも周知技術1を組

み合わせる動機がない。

その点を措くとしても,被告の主張する周知技術1においては,本体カバーが引

掛型配線器具及び接続器のみならずセンサ保持具をも被覆してホルダナットで支持

され天井面に密着させられる構成の開示も示唆もない。また,被告が周知技術1の

10 根拠とする文献等(乙2〜7)においても, いずれもセンサを有する構成ではな

く,本体カバーがセンサ保持具を被覆してホルダナットで支持され天井面に密着さ

せられる構成の開示も示唆もない。そして,乙1発明においては,照明器具 110 が

取り付けられる第1のケース 1 とは独立して,センサがアーム 2 の先端近傍の第2

のケース 3 内に設けられる構成となっているから,乙1発明に周知技術1を組み合

15 わせても,当業者が本件発明の構成を容易に想到することができたとはいえない。

(4) 小括

以上によれば,本件発明は,特許出願前に当業者が乙1文献や周知技術1に基づ

いて容易に発明をすることができたものとはいえないから,特許法29条2項に違

反して特許されたものとはいえない。したがって,本件特許権は,特許無効審判に

20 より無効にされるべきものとは認められない。この点に関する被告の主張は採用で

きない。

3 原告の損害額(争点3)について

(1) 各被告製品の販売による被告の利益の額

証拠(乙9)によれば,各被告製品の販売による売上金額より仕入金額を控除し

25 た被告の限界利益の額は,後記検討する消滅時効の問題を考えなければ,別紙「被

告製品一覧表1」の「限界利益」欄合計の●(省略)●と認められる。





原告は,被告が仕入先に対して部品の有償支給をして利益を得ている可能性があ

ると主張するが,証拠(乙19)によれば,被告は,平成26年1月7日以降,仕

入先に部品を販売することによって利益を上げていないものと認められ,同日以前

には部品の販売によって利益を得ていたことを窺わせる事情もないから,前記限界

5 利益の認定を左右するものではない。

(2) 推定覆滅について

ア 本件発明1〜3の効果

本件発明の効果は,センサ保持具の回動を保持するための機械的な連結構造がコ

ンパクトになること(【0014】),接続器を引掛型配線器具に掛着する作業に際し

10 て引掛型配線器具の掛着面を視認しやすく,作業が容易になると共に,作業の安全

性も向上すること(【0016】),本体カバーを天井面に密着させることが可能にな

り,美観に優れた取付状態が得られること(【0017】)である。

要するに,本件発明の作用効果は,@センサの回動構造のコンパクト化,A引掛

型配線器具の掛着面の視認性の向上,B本体カバーの天井面への密着にあるといえ

15 る。

イ 本件発明の貢献の程度等について

本件発明は,センサを用いてランプを自動的に点灯・消灯する天井取付タイプの

照明器具に係る発明であるから,主として屋内のトイレ灯などとして使用されるこ

とが想定される。そして,本件発明の実施品である照明器具の需要者は,新築建物

20 に照明器具を設置する総合住宅メーカー等の業者と既存の照明器具を交換しようと

する個人が想定されるところ,前記の効果@〜Bは,いずれも選択の動機となり得

る事情といえる。

もっとも,本件発明の効果@については,センサを回動させることが前提となっ

ているところ,屋内のトイレ灯等を想定すると,一度センサの検知範囲を確認して

25 照明器具を設置してしまえば,後にセンサを回動させて検知範囲を変更する必要が

生じることはそれほどないものと考えられるから,センサが取付後も回動可能であ





ることの顧客誘引力は低いものと解される。

また,本件発明の効果A及びBは,接続器等を引掛型配線器具に掛着した後,別

体に形成された本体カバー及びセードを後付けすることによる効果であるため,本

件発明によるのでなければ実現し得ない効果ではなく,例えば,周知技術1によっ

5 ても実現することができる。そうすると,効果A及びBについては,本件発明の実

施による貢献の程度の評価に当たっては,必ずしも重視できるものではない。

さらに,被告は,そのカタログ(乙14)において,被告製品1の特徴として,

人感センサ付,クイック点灯,引掛シーリング取付式,本体可動式,点灯照度調節

機能付,点灯保持時間調節機能付などを挙げているものの,掛着面の視認性や本体

10 カバーが後付けであることについては触れていない。

以上によれば,本件発明は,センサの回動構造がコンパクトであるという効果

(効果@)によりこれを実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧

客誘引力を有するといえるものの,その程度は限られているというべきである。ま

た,効果A及びBに関しては,本件発明は,本体カバーが後付けであり,外観上の

15 体裁が同程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえな

い。

ウ 競合品について

(ア) 効果@について

本件発明の効果@は,センサが回動可能であることを前提として,構造をコンパ

20 クトにするものであるが,センサを回動可能としたのは照明器具本体(本体カバ

ー,セード等)により検知範囲が制約されることに対処したものであるから,本体

がコンパクトであることによってセンサの検知範囲に制約がなく,センサを回動さ

せる必要がない製品も,本件発明の効果@と同様の効果を奏しているものといえ,

被告製品の競合品に該当するといえる。

25 証拠(乙11の1〜6,乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙

23の1〜3,乙24の1,2,乙25〜28)によれば,原告及び被告以外のセ





ンサ付シーリングライト製品のうち,乙11の1の型番 LBC56975,乙11の4の

型番 OL 013 180,OL 013 120,乙11の5の型番 IG20026C,乙11の6の型番 L

E-3837 については,センサ保持具が大きく,本体がコンパクトではないが,その余

のセンサ付シーリングライト製品は,いずれも被告製品と同等以下のコンパクトな

5 形状を有しているものと認められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効

果@と同様の効果を奏するものといえる。

(イ) 効果Aについて

本件発明の効果Aは,引掛型配線器具に掛着する照明器具であることを前提とす

るが,照明器具が一般的な引掛型配線器具に掛着する形式であるか,電気設備工事

10 を要するものであるかは,照明器具を交換しようとする個人の需要者にとっては大

きな違いである。また,総合住宅メーカー等の事業者においても,引掛型配線器具

を設置するか否かや施工の際の視認性は相応に商品選択に影響があると考えられ

る。そうすると,各被告製品の競合品といえる前提として,引掛型配線器具に掛着

する照明器具であることが必要である。

15 証拠(乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙23の1〜3,乙

24の1,2,乙25〜28)によれば,乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙2

2の1〜7,乙23の1〜3,乙24の1,2,乙25〜28の被告指摘に係る製

品は,いずれも引掛型配線器具に掛着する照明器具であり,被告製品と同等程度に

は掛着面が視認しやすく,効果Aと同様の効果を奏するものといえる。

20 (ウ) 効果Bについて

証拠(乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙23の1〜3,乙

24の1,2,乙25〜28)によれば,原告及び被告以外のセンサ付引掛シーリ

ングライト製品のうち,乙21の1〜5の型番 IG20042C(以下「乙21製品」と

いう。),乙23の1の型番 TGS-6119(以下「乙23の1製品」という。),乙

25 23の2の型番 TZGS-6099(以下「乙23の2製品」という。),乙24の1の型

番 SCL9NMS-HL(以下「乙24製品」という。),乙28の型番 TN-CLLS-L(以





下「乙28製品」という。また,以上を併せて,「乙21製品等」という。)は,

いずれも,本体カバーが天井面に密着した外観を有しており,効果Bを奏するもの

といえる。

(エ) その他

5 原告は,ランプ交換ができない LED 内蔵型照明器具は,ランプ交換を望む顧客

の需要を満たすことができないので,競合品に当たらないと主張する。

しかしながら,そのような需要者が存在するのか明らかではなく,そもそも,ラ

ンプ交換が可能であるか否かは本件発明の作用効果とは無関係である。

したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

10 (オ) 以上より,乙21製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有

する製品として,原告製品及び各被告製品と市場において競合するものとみるのが

相当である。

また,証拠(乙21の1,乙22の1,乙23の1,2,乙24の1,乙28)

によれば,乙21製品等の販売開始時期は,乙21製品が平成16年4月,乙23

15 の1製品が平成20年6月,乙23の2製品が平成22年2月,乙24製品が平成

29年10月,乙28製品が平成28年7月であることが認められる。原告は,乙

21製品について,平成16年〜平成20年のカタログに掲載された製品であり,

平成21年9月1日に生産を終了したと主張するが,一般的にカタログに掲載され

た製品は特段回収等がされない限り数年程度は流通していると考えられ,被告製品

20 の競合品に当たらないとはいえない。

もっとも,原告製品,各被告製品及び乙21製品等のセンサ付引掛シーリングラ

イトの市場におけるシェアは明らかではなく,原告において,平成27年当時の住

宅用照明のうち直付け型の居室外用の照明器具市場における原告のシェアが●(省

略)●%であったことを自認するにとどまる。被告は,照明器具市場全体の売上の

25 シェアや住宅用照明市場におけるシェア,LED シーリングライト市場におけるシェ

アを主張するが,原告製品,被告製品及び乙21製品等のセンサ付引掛シーリング





ライトは,そのごく一部であって,他の多数の照明器具が含まれるシェアから被告

製品の競合品のシェアを推認することは困難である。

これらの事情を総合的に考慮すると,センサ付引掛シーリングライトの市場にお

いて原告製品及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許

5 法102条2項に基づく損害額の推定に係る覆滅事由としてこれを考慮すべきでは

あるものの,その程度は限定的と考えるのが相当である。

エ 推定覆滅の程度

以上の事情を総合的に考慮すれば,本件においては,2割の限度で損害額の推定

が覆滅されるにとどまるとすべきである。

10 (3) 原告の損害額

以上より,時効を考慮しない原告の損害額は,前記●(省略)●から2割を控除

した●(省略)●と認められ,弁護士及び弁理士費用としてその1割を加算した額

が損害と認められる。

4 消滅時効の成否(争点4)について

15 (1) 原告の権利行使可能性

ア 証拠(乙10の1〜3)によれば,平成22年10月21日から同年11月

5日にかけて,大手家電量販店チェーンの3店舗において,原告製品と被告製品3

及び4が隣り合った状態で陳列され販売されたことが認められる。

一般に店舗において商品の陳列場所等は商品の売上に影響を及ぼす重要な要素で

20 あって,原告においても,営業担当者等を通じて,当然に自社製品や競合他社製品

が家電量販店においてどのように陳列・販売されているかを逐次把握していたもの

と考えられるから,遅くとも平成22年11月5日には,原告において,被告製品

3及び4の存在を知ったものと認められる。

そして,原告製品と各被告製品は同種の用途の競合品であって,大手家電量販店

25 チェーンにおいては概ね統一的な商品陳列を行っているものと考えられることから

すれば,各被告製品は,家電量販店において基本的に原告製品と隣接して陳列され





ていたと考えられ,被告製品3及び4以外の各被告製品についても,その販売開始

から間もなく,原告は,各被告製品の存在を知ったものと認められる。

イ 本件発明は,前記のとおり,効果@〜Bを奏するものであり,これらの効果

は外観上明らかであって,各被告製品の外観から,各被告製品が本件特許権の侵害

5 品であることの疑いを持つことは十分に可能である。

原告は,本件発明の構成要件 A〜D は,内部構造に係るものであるから,被告製

品の外観からは判明しないと主張するが,被告製品の外観からして本体カバーに被

覆された接続器やセンサ保持具が存在することは明らかであり,センサ保持具が天

井面と略平行な面内で回動可能に構成されていることは推測することができる。そ

10 して,証拠(乙10の1〜3)によれば,家電量販店の陳列棚において,天井を模

した造作があり,引掛型配線器具が設けられ,各被告製品を現実に組み立て,取り

付けることができるようになっていたものと認められ,原告において,各被告製品

の取付状態を確認することもできたものと考えられる。

また,証拠(甲5の1〜3,甲7,乙14)及び弁論の全趣旨によれば, 被告

15 は,各被告製品を毎年発行する被告のカタログに掲載すると共に,各被告製品の 仕

様や構造を記載した「施工・取扱説明書」をインターネット上等で公開していたこ

とが認められ,カタログには引掛シーリングに取り付けるタイプであること,人感

センサがあり,本体可動式であること等が記載され,施工・取扱説明書には,購入

者又は工事店が各被告製品を取り付けることができるよう,各部を分解した構造図

20 とセンサの可動範囲等が記載されているのであるから,被告はこれらの情報を秘匿

せず,一般に公開していたのであって,原告は,各被告製品の存在を知り,その外

観から本件特許権侵害の疑いを持った時点で,各被告製品の構造等を容易に検討す

ることができたといえる。

ウ 原告は,遅くとも平成22年11月5日までに被告製品3及び4の発売を知

25 り,その余の各被告製品についても,発売後まもなくその事実を知ったものと認め

られ,各被告製品の構造等を知ることもできたのであるから,製品が競合する関係





にある原告としては,その時点で,損害賠償請求をすることが可能な程度に,損害

及び加害者を知ったと認めるのが相当である。

(2) 原告の主張について

ア 原告は,原告の営業担当者は他社製品の構造等を確認しておらず,平成30

5 年2月頃になって初めて,被告が製造販売している製品の一部が本件特許権を侵害

している事実を認識したと主張する。

しかしながら,証拠(乙9)によれば,平成30年2月には,各被告製品の大半

の製造販売が終了しており,販売されていたのは被告製品2のうち型番 DCL-37765

と被告製品7のみであり,被告製品2については同月から同年12月25日の販売

10 終了までの約11か月間に●(省略)●個が販売されたにとどまり,被告製品7に

ついても同年2月から同年11月29日の販売終了までの約10か月間に ●(省

略)●個が販売されたが,各被告製品の総販売数●(省略)●の約2%,被告製品

7の総販売数●(省略)●の約26%にとどまることが認められる。

原告の主張によれば,原告は,各被告製品が被告のカタログに掲載され,家電量

15 販店で原告製品に隣接して販売されていたにもかかわらず,平成22年9月から7

年5か月もの長期にわたって各被告製品の存在に気付かず,各被告製品がほとんど

販売を終了し,市場への影響も原告に与える損害もわずかとなった平成30年2月

頃になって,突然,各被告製品の存在に気付いたということになるが,同月以前に

は各被告製品に気付かなかったことがやむを得ないとするような事情や,同月に至

20 って初めて気付いたことが合理的と思えるような事情の変化については,特に主張

も立証もしていない。

侵害品の販売等が権利者の目に触れぬところで行われていたり,侵害品の構

成や構造が権利者には容易には知り得ぬものであったりするような特段の事情があ

る場合には,権利者が特許権侵害が行われていることに気付くのに一定の時間を要

25 したことに合理的理由があるといえるが,本件では,原告にそのような特段の事情

や合理的理由が認められないことは,前記検討のとおりである。





原告が主張するところによれば,各被告製品の構造等に着目し,検討の結果,本

件特許権を侵害するとの明確な判断をしない限り,民法724条時効期間は進行

しないこととなるが,本件のように侵害品となるものの販売等がオープンになされ

ていた場合に,権利者がこれを検討の俎上に上げない限り時効期間が進行しないも

5 のとした場合,一方では注意深い権利者よりも,競業者の行為等に注意を怠った者

を有利に扱うことにもなりかねないし,時効期間の進行という公平が求められる事

項について,権利者の恣意的な取扱いを許すこととなり,妥当ではないというべき

である。

(3) 以上によれば,被告製品3及び4については 平成22年11月5日に,そ

10 の余の各被告製品については遅くとも発売開始日の3か月後に,原告において本件

特許権侵害行為に基づく損害賠償請求権の行使が可能になったと解するのが相当で

ある。

そして,被告が消滅時効援用の意思表示をしたことは,当裁判所に顕著な事実

であり,各被告製品の販売行為に係る損害賠償請求権は,販売行為ごとに時効によ

15 って消滅するものと解されるから,前記3(3)の原告の損害のうち,本件訴えの提

起日である令和2年4月9日までに発生(販売行為)から3年を経過した部分につ

いては,時効によって消滅したものと認められる。

そうすると,証拠(乙9)によれば,平成29年4月10日以降の各被告製品の

販売に係る被告の限界利益額は,別紙「被告製品一覧表2」の「限界利益」欄の合

20 計●(省略)●円と認められ,特許法102条2項の損害の推定について2割の覆

滅を認めた損害額は●(省略)●円となり,弁護士費用及び弁理士費用としてその

1割である●(省略)●円を加えた73万5094円の限度で,原告の請求は理由

がある。

そして,原告は,各被告製品の販売行為日よりも後であることが明らかな本件訴

25 状送達の日の翌日(令和2年5月13日)を遅延損害金の起算日として請求してい

るから,原告主張の起算日には理由がある。





5 結論

よって,原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,主文の

とおり判決する。



5 大阪地方裁判所第21民事部




裁判長裁判官

10


谷 有 恒




15 裁判官



杉 浦 一 輝




20


裁判官



峯 健 一 郎



25





(別紙特許公報,別紙被告製品一覧表1,2は省略)

(別紙)

被告 製品目録



5 型 番

1 DCL-37552L

2 DCL-37765,DCL-37765TWH

3 DX-K1526DE7

4 DX-K1526LE7

10 5 DX-85950

6 DXL-81037

7 DXL-81286C






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