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関連審決 不服2019-55
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事件 令和 2年 (行ケ) 10134号 審決取消請求事件

原告 ビデリインコーポレイテッド
同訴訟代理人弁護士 宮嶋学 田泰彦 柏延之 砂山麗
同訴訟代理人弁理士 中村行孝 関根毅 吉田昌司
被告特許庁長官
同 指定代理人千葉輝久 五十嵐努 川崎優 梶尾誠哉 山田啓之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2021/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が不服2019−55号事件について令和2年6月30日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
事案の概要
本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,進歩性についての認定判断の誤りの有無である。
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「インターネットを介したデジタル・アート配信および鑑賞の制御ならびに画像形成のためのシステムおよび方法」とする発明について,国際出願日を平成26年3月14日とする特許出願(特願2016-503116[パリ条約による優先権主張 平成25年12月17日,平成26年3月14日及び平成25年3月15日,いずれも米国]。以下「本願」といい,本願の際に添付された明細書を「本願明細書」という。)をし(甲6),平成28年1月12日,平成29年3月14日及び平成30年5月2日に,それぞれ手続補正をしたが,同年8月28日付けで拒絶査定を受けた。そこで,原告は,平成31年1月4日,同拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2019-55号。以下「本件審判請求」という。)をし,その後,令和2年3月12日付けで手続補正をした(甲7)。
(2) 特許庁は,令和2年6月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年7月17日に原告に送達された。
2 本願に係る発明 令和2年3月12日付けの手続補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1〜14に係る発明(以下,併せて「本願発明」といい,各請求項に係る発明をそれぞれ請求項の番号に応じて「本願発明1」などという。)は,次のとおりである(甲7。ただし,本願発明8の各構成の冒頭の符号(A)〜(K)[枝番を含む。]は,本件審決において説明のために付されたもので,以下「構成A」などという。。
) 【請求項1】 処理コントローラと,メモリと,表示画面とを備えたディスプレイ装置に,表示用のデジタル・コンテンツを記憶するためのシステムであって, 1つまたは複数のディスプレイ装置の表示画面上に表示されるように構成された,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムと, 通信コントローラ,インターフェース・サーバおよびサービス管理システムを含むコンテンツ・サービス・クラウドを有するサービス・クラウドと を備え,前記サービス・クラウドは, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを記憶して管理するように構成された保護記憶システムと, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを表示するように構成された前記1つまたは複数のディスプレイ装置と通信するように構成された,通信コントローラと, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記1つまたは複数のディスプレイ装置に供給することを制御するように構成された供給エンジンと, 前記供給エンジンにより供給を受けた,前記1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータを,収集するように構成されたサービス管理システムと, 前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの選択のために,インターネットを介して,メモリ,プロセッサおよびユーザ入力装置を具備したコンピュータ上で稼働するアプリケーションのインターフェースとなるように構成されたサーバと, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの導入を制御するように構成されたデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンと, 認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの外部の創作地点から,前記インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと転送するように構成された外部コンテンツ・ゲートウェイと, コンテンツを,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へ,前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から提供するように構成されたライブ・データ・フィード・ゲートウェイと,を備え, 前記ユーザ入力装置による前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記選択に応答して,前記通信コントローラは,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記インターネットを介して,前記ディスプレイ装置の前記表示画面へ送信するように構成され, 前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンは,前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを解析し修正するように構成され, 前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンは,低容量取込および大容量取込を含む取込作業フローを備える,システム。
【請求項2】 前記アプリケーションを通してアクセス可能なソーシャル・ネットワーク機能を可能とするように構成されたソーシャル・ネットワーク・エンジンと, 前記サービス・クラウドのユーザに関する情報を管理するように構成された顧客関係管理エンジンと, ユーザが,前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するために,前記供給エンジンにより管理された前記1つまたは複数のデジタル・コンテンツ・アイテムを,販売,購入,または貸与することができるように構成された商取引エンジンと,のうちの1つまたは複数を,さらに備えた,請求項1に記載のシステム。
【請求項3】 前記デジタル・コンテンツは,静止画,動画,対話画像,およびアプリ画像のうちの1つまたは複数を備えた,請求項1に記載のシステム。
【請求項4】 前記供給エンジンによる前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテム の前記供給は, 前記1つまたは複数のディスプレイ装置が,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを記憶および/または鑑賞するための権利を,取得済であることを保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムが,その創作者により設定された鑑賞ルールに従って表示されることを保証すること, デジタル・フレームまたはデジタル・マットを,表示のための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムに追加すること,ならびに, 前記サービス・クラウドへのデジタル・コンテンツの権限なきアクセスを防止することのうちの1つまたは複数を含む,請求項1に記載のシステム。
【請求項5】 前記ソーシャル・ネットワーク・エンジンは,ピクチャおよびビデオを,前記保護記憶システム内のユーザのプライベート・ライブラリ内に,アップロードするように構成されたソーシャル配信システムを備えた,請求項2に記載のシステム。
【請求項6】 前記アップロードされたピクチャおよびビデオを,それらが前記保護記憶システム内に記憶される前に保護するように構成された前記ソーシャル配信システムと通信するサード・パーティ・キー管理システムを,さらに備えた,請求項5に記載のシステム。
【請求項7】 前記商取引エンジンは,デジタル所有権を実行することを含み,この実行は, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの所有権の適切な移転を保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの創作者により設定された認証された配信規則を,実行することを保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの転売のための商取引条 件を,実行すること,ならびに, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの正当性および唯一性を保護するとともに,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムへの権限なきアクセスを防止することの1つまたは複数によりなされる,請求項2に記載のシステム。
【請求項8】 (A)処理コントローラと,メモリと,表示画面とを備えたディスプレイ装置に,表示用のデジタル・コンテンツを記憶するための方法であって, (B)1つまたは複数のディスプレイ装置の表示画面上に表示されるように構成された,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを用意することと, (C)通信コントローラ,インターフェース・サーバおよびサービス管理システムを含むコンテンツ・サービス・クラウドを有するサービス・クラウドであって,サーバ,メモリ,およびプロセッサを備えたサービス・クラウドを用意することと, (D)前記サービス・クラウドの保護記憶システムにより,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを記憶および管理することと, (E1)前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを表示するように構成された前記1つまたは複数のディスプレイ装置の前記処理コントローラと,前記サービス・クラウドの通信コントローラにより,通信することと, (F1)前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記サービス・クラウドの前記保護記憶システムへの導入を,前記サービス・クラウドのデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより制御することと, (G)前記1つまたは複数のディスプレイ装置上の前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの供給を,前記サービス・クラウドの供給エンジンにより制御することと, (H)前記供給エンジンにより供給を受けた,前記1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータを,前記サービス・クラウド のサービス管理システムにより収集することと, (I)前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの選択のために,前記サービス・クラウドのサーバにより,メモリ,プロセッサおよびユーザ入力装置を備えたコンピュータ上で稼働するアプリケーションのインターフェースとなることと, (J)認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送することと, (K)コンテンツを,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へ,前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から,前記サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイにより提供することと, (E2)前記ユーザ入力装置による前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記選択に応答して,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ製品を,前記インターネットを介して,前記ディスプレイ装置の前記表示画面へと,前記通信コントローラにより送信することと, (F2)前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析することとを含み, (F3)前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンは,低容量取込および大容量取込を含む取込作業フローを備える, (A)方法。
【請求項9】 前記サービス・クラウドのソーシャル・ネットワーク・エンジンにより,前記アプリケーションを通してアクセス可能なソーシャル・ネットワーク機能を可能とすること, 前記サービス・クラウドの顧客関係管理エンジンにより,前記サービス・クラウドのユーザに関する情報を,取得すること,ならびに, 前記ユーザによる販売,購入,または貸与のため,前記1つまたは複数のディスプレイ装置上での表示のために,前記供給エンジンにより管理された前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの商取引エンジンにより提供することのうちの1つまたは複数を,さらに含む,請求項8に記載の方法。
【請求項10】 前記デジタル・コンテンツは,静止画,動画,対話画像,およびアプリ画像のうちの1つまたは複数を備えた,請求項8に記載の方法。
【請求項11】 前記供給エンジンによる前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記供給は, 前記1つまたは複数のディスプレイ装置が,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを記憶および/または鑑賞するための権利を,取得済であることを保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムが,その創作者により設定された鑑賞ルールに従って表示されることを保証すること, デジタル・フレームまたはデジタル・マットを,表示のための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムに追加すること,ならびに, 前記サービス・クラウドへのデジタル・コンテンツの権限なきアクセスを防止することのうちの1つまたは複数を含む,請求項8に記載の方法。
【請求項12】 ピクチャおよびビデオを,前記保護記憶システム内のユーザのプライベート・ライブラリへと,前記ソーシャル・ネットワーク・エンジンのソーシャル配信システムによりアップロードすることを,さらに含む,請求項9に記載の方法。
【請求項13】 前記アップロードされたピクチャおよびビデオを,前記保護記憶システムにより記憶する前に,前記ソーシャル配信システムと通信するサード・パーティ・キー管理システムにより保護することをさらに含む,請求項12に記載の方法。
【請求項14】 前記商取引エンジンにより,デジタル所有権を実行することを,さらに含み,前記実行は, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの所有権の適切な移転を保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの創作者により設定された認証された配信規則を,実行することを保証すること, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの転売のための商取引条件を,実行すること,ならびに, 前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの正当性および唯一性を保護するとともに,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムへの権限なきアクセスを防止することの1つまたは複数によりなされる,請求項9に記載の方法。
3 本件審決の理由の要旨 (1) 引用文献に記載された発明及び技術についての本件審決の認定(各発明又は技術の構成の冒頭の符号(a)〜(m)[枝番を含む。]は,本件審決において説明のために付されたもので,以下「構成a」などという。) ア 甲1(thePlatform「mpx Overview White Paper」平成24年2月[URL:http://以下省略 ])に記載された発明(以下「引用発明」という。)の認定 「(a)mpxを通じて,(b)取込,(c)自動発行及び配信,(d)柔軟な配信及び記録,(e)収益化等の複合的なタスクを実行可能な方法であって, (b)取込サービスは,以下の2つの方法を提供し, (b1)フィードリーダは,ユーザのフィードを監視し,コンテンツの追加又は変更をアカウントに自動的にアップロードし, (b2)mpxアップローダは,アプリケーションとして動作し,任意の数及びサイズのファイルを選択してバックグラウンドでアップロードし, (c)自動発行及び配信サービスは,ファイル選択,トランスコーディング及びアセットタイプの適用といった発行プロセス全体を自動化してユーザに提供し, (d1)柔軟な配信及び記録サービスは,ユーザのコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を管理するためのクリーンで効率的なインターフェースを提供し, (d2)mpxは,以下の3つのタイプの配信をサポートし,CDNが提供するサービスに応じて,サーバベースで配信タイプを組み合わせることができ, (d21)ストリーミングサーバ又はサーバを使用して即時再生のためにファイルをプレイヤにストリーミングするタイプ, (d22)格納及びオフライン再生のためにファイルをクライアントにダウンロードするタイプ, (d23)オリジンサーバからファイルを引き出し,CDNのエッジ・キャッシュに移動させるタイプ, (d3)AkamaiTechnologies,Inc.等とのCDN統合はユーザに配信選択肢の柔軟性を提供し, (e1)収益化は,広告ベース,サブスクリプションベース及びペイパービュー方式をサポートする,広告及び収益化技術プロバイダーとの統合を提供し, (e2)収益化は,ユーザに,サブスクリプション,ペイパービュー,VOD,レンタル,バンドルを含む種々のコンテンツ購入方法を提供し, (f1)プレイヤサービスは,ホストサービスを通じて,OTTデバイスのために構築されたプレイヤを提供し, (f2)プレイヤサービスは,全画面再生,共有,自動スタート再生及びパートナープラグインのサポートを含む, (g)そのビデオ管理システムをアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)として運営される, (a)方法。」 イ 引用文献に記載された技術の認定 (ア) 甲2(特開2011-253432号公報)に記載された技術(以下「甲2技術」という。)の認定 「(h)クライアントに対してファイルを配信する方法において, (h1)複数のクライアント211におけるファイルの受信品質の指標,および複数のクライアント211の受信性能の指標を含む品質情報を取得し, (h2)取得された品質情報の示す受信品質および受信性能に基づいて,複数のクライアント211を複数のグループに分け,グループごとにファイルの配信を制御し, (h3)サーバおよびクライアント間の回線状態,クライアントの動作状態,ならびに各クライアントの固定的なスペック値に応じて,より効率的なファイル配信を実現する技術。」 (イ) 甲3(特開2008-234206号公報)に記載された技術(以下「甲3技術」という。)の認定 「(i)ピアツーピア(P2P,Peer to Peer)システムに係る情報送信システムにおいて, (i1)ピア1A〜1Iは,パーソナルコンピュータ,PDA,携帯電話などのネットワーク接続可能なハードウェアであって, (i2)P2PネットワークNT2は,ピア1の持つデータを管理する情報管理サーバ5が接続され, (i3)情報管理サーバ5は,メタデータ管理部503と,メタデータ部504とを有し, (j)ピア1が行うデータ/メタデータ生成処理の手順,データの検索及び取得処理の手順は, (j1)ピア1Aにおいて,メタデータ生成部111は,配信対象のデータを新たに生成した場合,当該データのメタデータを新たに生成し,新たに生成したメタデータを情報管理サーバ5に送信し, (j2)ピア1Bは,ユーザの所望するデータ,もしくは,あらかじめ指定されていたデータの検索を要求する検索リクエストを情報管理サーバ5に送信し, (j3)情報管理サーバ5は,当該検索リクエストを受信すると,メタデータ部504に記憶されているメタデータを用いて該当のデータを検索し,当該メタデータを検索結果に含めて当該ピア1Bに対して送信し, (j4)ピア1Bは,情報管理サーバ5から送信された検索結果を受信すると,当該検索結果から所望のデータを選択し,選択したデータがピア1Aに保持されているものとすると,ピア1Bは,当該1Aに対して該当のデータの送信を要求し,そして,ピア1Bは,当該要求に従ってピア1Aから送信されたデータを取得する,技術。」 (ウ) 甲4(国際公開第2011/056388号)に記載された技術(以下「甲4技術」という。)の認定「(k)オンラインサービスコンピューティング装置108からの広告及びコンテンツアイテムを受信し且つ該広告及び該コンテンツアイテムにアクセスするためにユーザによってアクセスされる,ユーザ装置310において (k1)サービスインタフェース364は,インターネットブラウザとして実施され,サービスインタフェース364は,コンテンツアイテムを受信し,且つ,例えば図3Bを参照して以下に詳細に説明するようなグラフィカルユーザインタフェース画像を表示し, (k2)図3Bのコンテンツアイテムは,多数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテムを供給するオンラインソーシャルネットワー キングサービスから受信されたものであり, ユーザコンテンツアイテムは,ナビゲーション領域380,ニュースフィード表示領域382及び広告領域384を備え, ナビゲーション領域380は,ユーザがオンラインサービスにより提供される別のサービスに移動できるようにし, 種々のタブ(例えば“ニュースフィード”,“アプリケーション”,“写真”,“リンク”,“ビデオ”,“もっと見る”)がクリックされると,ブラウザは,クリックされたタブに応じたコンテンツアイテムを要求する要求をオンラインサービスコンピューティング装置108に送信して,且つ,受信されたコンテンツアイテムを処理することによりスクリーン上に画像を表示し, (k3)ニュースフィード表示領域382は,オンラインサービスコンピューティング装置108経由でコンテンツを共有しているユーザ又は「友達」により供給されたニュースフィードを表示し, (k4)図3Bに示すコンテンツアイテムは例示に過ぎず, 他の種々のレイアウトの他の種々のコンテンツアイテムが,インターネットブラウザ320を用いてスクリーン320に表示され得, 例えば,インターネットブラウザによりアクセスされるコンテンツアイテムは,検索語に対する検索結果,オンラインニュース記事及びオンラインショッピングに関する情報を含む,技術。」 (エ) 甲5(特開2006-303899号公報)に記載された技術(以下「甲5技術」という。)の認定 「(m)画像データに画像処理を施す画像処理システムの画像処理装置100_1´において, (m1)画像処理装置100_1´は,画像解析部12,濃度取得部13,濃度補正値統合部14,画像処理部15を備え, (m2)画像処理装置100_1´は,画像データが表わす画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正するオートセットアップ機能が搭載されており, (m3)画像解析部12は,与えられた入力画像データが表わす入力画像中に,あらかじめ定められた複数の被写体種類のそれぞれが,どの程度の割合(確からしさ)で含まれているかを表す確信度を,被写体種類ごとに算出し, (m4)濃度取得部13は,入力画像の濃度補正のための値(濃度補正値)を,入力画像データに基づいて算出し, (m5)濃度補正値統合部14は,被写体種類ごとの濃度補正値を,被写体種類ごとの確信度,入力される被写体種類ごとの重要度に基づいて統合し, (m6)画像処理部15は,統合された濃度補正値に基づいて,入力画像データの濃度を補正する,技術。」 (2) 本願発明8と引用発明の一致点及び相違点 本願発明8の構成A〜Kを引用発明の構成a〜gと対比して,@引用発明の構成b1の「コンテンツ」及び構成f1の「OTTデバイス」は,それぞれ本願発明8の「デジタル・コンテンツ・アイテム」及び「ディスプレイ装置」に相当すること,A引用発明の構成aの「mpx」は,構成gにあるとおり,ASPとして運営されるものであるところ,一般にASPによって運営されるシステムは,ネットワーク経由でユーザにソフトウェアを利用させる形態を指すことから,そのように運営される構成aの「mpx」は,構成Cの「サービス・クラウド」に相当する(なお,本願発明8について, 「サービス・クラウド」が,SaaSモデルであり,ASPモデルと厳密に区別されることは記載されていない。 ことなどを踏まえると, ) 本願発明8と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
(一致点) (A)処理コントローラと,メモリと,表示画面とを備えたディスプレイ装置に, 表示用のデジタル・コンテンツを記憶するための方法であって, (B)1つまたは複数のディスプレイ装置の表示画面上に表示されるように構成された,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを用意することと, (C)通信コントローラ,インターフェース・サーバおよびサービス管理システムを含むコンテンツ・サービス・クラウドを有するサービス・クラウドであって,サーバ,メモリ,およびプロセッサを備えたサービス・クラウドを用意することと, (D)前記サービス・クラウドの保護記憶システムにより,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを記憶および管理することと, (E1)前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを表示するように構成された前記1つまたは複数のディスプレイ装置の前記処理コントローラと,前記サービス・クラウドの通信コントローラにより,通信することと, (F1)前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記サービス・クラウドの前記保護記憶システムへの導入を,前記サービス・クラウドのデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより制御することと, (G)前記1つまたは複数のディスプレイ装置上の前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの供給を,前記サービス・クラウドの供給エンジンにより制御することと, (I)前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの選択のために,前記サービス・クラウドのサーバにより, メモリ,プロセッサおよびユーザ入力装置を備えたコンピュータ上で稼働するアプリケーションのインターフェースとなることと, (E2)前記ユーザ入力装置による前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの前記選択に応答して,前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ製品を,前記インターネットを介して,前記ディスプレイ装置の前記表示画面へと,前記通信コントローラにより送信することと, (F3)前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンは,低容量取込および大容量取込を含む取込作業フローを備える, (A)方法。
(相違点1) 本願発明8は「前記供給エンジンにより供給を受けた,前記1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータを,前記サービス・クラウドのサービス管理システムにより収集する」構成(構成H)を有するのに対して,引用発明はそのような構成を有しない点。
(相違点2) 本願発明8は「認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成(構成J)を有するのに対して,引用発明はそのような構成を有しない点。
(相違点3) 本願発明8は「コンテンツを,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へ,前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から,前記サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイにより提供する」構成(構成K)を有するのに対して,引用発明はそのような構成を有しない点。
(相違点4) 本願発明8は「前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成(構成F2)を有するのに対して,引用発明はメディア(コンテンツ)をアップロードしても,解析及び修正を行わない点。
(3) 判断 ア 相違点1について クライアントに対してファイルを配信する方法において配信の効率化を図ることは一般的課題であるから,引用発明に甲2技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,引用発明に甲2技術を適用した発明は,OTTデバイスの「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構成を備える方法ということができ,当該「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構成は,構成Hの「1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構成に相当する。
したがって,引用発明に甲2技術を適用することにより, 「前記供給エンジンにより供給を受けた,前記1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータを,前記サービス・クラウドのサービス管理システムにより収集する」構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について 引用発明と甲3技術は,送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法である点において共通するから,引用発明に甲3技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,引用発明に甲3技術を適用した発明は,OTTデバイス(ピア1A)から他のOTTデバイス(ピア1B)に対して, 「ピア1Bは,ピア1Aに該当のデータの送信を要求する」構成を備える方法ということができ,当該構成は,構成Jの「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成に相当する。
したがって,引用発明に甲3技術を適用することにより, 「認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの外部の創作地点から,インタ ーネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ ゲートウェイにより転送する」 ・ 構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について 甲4技術の構成kの「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,構成k1〜k3にあるとおり, 「コンテンツを共有しているユーザ又は『友達』により供給されたニュースフィード」を「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」から「ユーザ装置310」に経由して送信するものと認められる。
したがって,構成kの「ユーザ装置310」,構成k2の「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」及び構成kの「オンラインサービスコンピューティング装置108」 それぞれ, は, 構成Kの「前記1つまたは複数のディスプレイ装置」,「前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源」及び「ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当する。
そして,引用発明の構成f1の「プレイヤ」と甲4技術は,コンテンツを再生するプレイヤとして共通の技術であるから,引用発明に甲4技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
引用発明に甲4技術を適用した発明は,OTTデバイスで実行されるプレイヤに,「オンラインソーシャルネットワーキングサービスから受信されたコンテンツアイテムを表示する」ための構成を備える方法ということができ,当該構成は構成Kの「前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から,ライブ・データ・フィード・ゲートウェイにより提供する」構成に相当する。
したがって,引用発明に甲4技術を適用することにより, 「コンテンツを,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へ,前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から,前記サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイにより提供する」構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について 引用発明と甲5技術は,サーバにコンテンツを取り込む方法として共通の技術であるから,引用発明に甲5技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,引用発明に甲5技術を適用した発明は,OTTデバイスに表示するための「画像データが表す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正する」構成を備える方法ということができ,当該構成は構成F2の「前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成に相当する。
したがって,引用発明に甲5技術を適用することにより, 「前記1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための前記少なくとも1つのデジタル コンテンツ ・ ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
オ 本願発明8の効果について 本願発明8の構成は,上記ア〜エにおいて検討したとおり,当業者が容易に想到できたものであるところ,本願発明8が奏する効果は,その容易想到し得た構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり,同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。
カ まとめ よって,本願発明8は,甲1〜5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 結論 以上より,本願は,その余の請求項について言及するまでもなく,拒絶をすべきものである。
原告主張の取消事由
本件審決には,次のとおり,本願発明と引用発明との相違点の認定及び相違点に係る容易想到性の判断に誤りがあり,取消しを免れない。
1 相違点の認定の誤り (1) 「mpx」がサービス・クラウドに相当しないこと ア 引用発明のmpxプラットフォームは,アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)であるところ,次のように,ASPとクラウドベースのシステムは,互いに全く異なるシステムであり,異なるコンセプトのものである。
(ア) 甲1の14頁2行目〜9行目の記載から明らかなように,ASPモデルの場合,ユーザは,mpxプラットフォームのようなソフトウェアをサーバ等のコンピュータにインストールする必要がある。そのため,@ユーザは,自身のハードウェアとソフトウェアの両方のメンテナンスを行わなければならず,このため,高額なメンテナンス費用が発生すること,Aユーザは,認証されたコンピュータからしかソフトウェアにアクセスすることができないことといった問題がある。
これに対し,本願発明のようなクラウドベースのシステムの場合,ユーザのコンピュータやサーバにソフトウェアをインストールする必要はなく,ソフトウェアは完全にクラウドに存在する。そのため,ユーザにおいては,@貴重な記憶容量及び計算資源を節約することができること,Aウェブブラウザからソフトウェアにアクセスすることができ,任意のコンピュータからソフトウェアにアクセスすることができること,Bメンテナンス費用を削減することができることという利点を享受することができる。
(イ) また,ASPモデルのソフトウェアは通常,ユーザの好みに基づきカスタマイズされているため,各ユーザが同じブランドのソフトウェアを有していても,あるユーザのソフトウェアと他のユーザのソフトウェアとは異なる可能性があるのに対し,クラウドベースのシステムでは,ソフトウェアがユーザごとにカスタマイズされることがないので,上記のようなことは起こらない。
(ウ) さらに,ASPモデルのソフトウェアは,サーバやデータベースなど をユーザ毎に提供するシングルテナントのアプリケーションである。そのため,アップデート等のメンテナンスをするときは,ソフトウェアがインストールされた各サーバにそれぞれメンテナンスを行わなければならず,メンテナンスを行うには長い時間を要する。各ユーザのカスタマイズを考慮する必要があることから,実際のメンテナンス期間は更に長くなる。
これに対し,クラウドベースのシステムにおけるソフトウェアでは,上記のような問題は生じない。クラウドベースのシステムは,複数のユーザでサーバやデータベースなどを共有するマルチテナント構造を用いるため,ソフトウェアを一度アップデートするだけでよい。
イ サービス・クラウドとASPの相違について,より具体的には,次のとおりである。
(ア) 米国商務省の機関である国立標準技術研究所(NIST)が2011年(平成23年)9月に発行した「The NIST Definition of Cloud Computing」(甲9)によると,クラウドコンピューティング(クラウドモデル)は, 「最小限の管理作業またはサービスプロバイダの操作で,迅速にプロビジョニングおよびリリースされる構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク,サーバ,ストレージ,アプリケーションおよびサービス等)の共有プールへの,ユビキタスで便利なオンデマンドネットワークアクセスを可能にするモデル」と定義される。
そして,米国連邦巡回区控訴裁判所判決(In Re JobDiva,INC. 843 F.3d 936 (Fed.Cir. 2016)。甲10)では,SaaSはクラウドコンピューティングとしても知られていると判断されており,クラウドコンピューティングとSaaSは交換可能な用語であるとされている。
上記のようなサービス・クラウド又はSaaSは,次の特徴を有する。
a ソフトウェアがユーザのコンピュータにローカルにインストールされないこと(甲10の938頁左欄29行目〜33行目,同35行目〜39行目,甲11[「What Is Software as a Service (SaaS)?」 https://以下省略 ]の1頁28行目〜31行目) b クラウドプロバイダがハードウェアやソフトウェアを管理すること(甲9の2頁14行目〜20行目,甲10の938頁左欄41行目〜末行目,甲11の1頁2行目〜6行目,甲14 「Saas VS ASP - Understanding the Difference」 [https://以下省略]の1頁40行目〜41行目) c インターネットを使用した複数のデバイスを介したアクセス(甲9の2頁31行目〜37行目,甲10の938頁右欄3行目〜7行目) d カスタマイズされないこと(甲9の2頁31行目〜37行目,甲11の1頁28行目〜31行目) e サービスの大量かつ迅速なディストリビューション(甲9の2頁21行目〜24行目,甲14の2頁6行目〜11行目) (イ) 他方,ニューヨーク州公認会計士協会が2003年(平成15年)1月に出版した「The CPA Journal」に掲載された論文「The application serviceprovider option」(甲13)によると,ASPは,ASPインダストリ・コンソーシアム(IDC)により, 「インターネットまたはプライベートネットワークを介してリモートデータセンターから複数のユーザにアプリケーションとコンピュータサービスを配信および管理するビジネス」であると定義されており(甲13の64頁左欄5行目〜11行目),IBM社が2001年(平成13年)4月に発行した「Application Service Provider Business Model」(甲12)においても同じ定義が用いられている(甲12の5頁20行目〜22行目)。
そして,ASPにおいては,CD-ROMやフロッピーディスクなどによってソフトウェアが物理的に配布されるそれまでの手法とは異なり,ユーザのデバイスにインストールされる完全なソフトウェアアプリケーションがASPからインターネット経由で配信される(甲14の1頁10行目〜15行目)。
上記のようなASPは,次の特徴を有する。
a ユーザのコンピュータにソフトウェアがインストールされること (甲1の14頁1行目〜9行目,甲14の1頁29行目〜33行目) b ユーザがハードウェアやソフトウェアの一部を管理すること(甲13の64頁右欄23行目〜30行目) c 単一のデバイスからのアクセス(甲14の1頁34行目〜39行目) d カスタマイズされること(甲12の5頁23行目〜26行目,6頁2行目〜4行目,甲14の1頁10行目〜15行目) e 一度に一つずつサービスをディストリビューションすること(甲14の2頁6行目〜11行目) (ウ) 被告の主張に対する反論 a 特定非営利活動法人ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム(平成23年当時の名称。平成11年の設立当時の名称は「任意団体ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン」であり,現在の名称は「一般社団法人ASP・SaaS・AI・IoTクラウド産業協会」 甲15。
。 以下,名称の変更にかかわらず,「ASPIC」という。)のウェブサイトに係る乙2(「ASP・SaaS・クラウドコンピューティングとは ASP,SaaSの基本」[https://以下省略])及び乙3(「ASP・SaaS・クラウドコンピューティングとは ASP,SaaSの体系図」[https://以下省略])におけるASPの定義並びにクラウドコンピューティング,ASP及びSaaSの関係に関する見解は妥当ではない。ASPICは,ASPの団体として設立され,SaaSやクラウドといった新技術が登場する度に,新技術を吸収すべく名称変更を行ってきた団体であり,ASPがSaaSやクラウドといった新技術を包含するように,本来のASPよりも不当に広くASPを定義しているものと解され,客観的・中立的な定義をしていない。クラウドコンピューティングがASP・SaaSの集合体のことであるという乙2の定義は,他方で,ASPICが,「クラウドサービス利用者の保護とコンプライアンス確保のためのガイド」 (甲16)において,コンピューティングリソースを「所有する」もの(これがASPを表すことは,当業者に明白である。)から「利用する」もの(これがク ラウドコンピューティングを表すことは,当業者に明白である。 への時代の変化と )してクラウドサービスを位置づけ,ASPとクラウドコンピューティングを対比していることと相容れないもので,ASPICの見解は首尾一貫していない。
また,ユーザが自身のネットワーク内のサーバにソフトウェア(RMP)をインストールすることを前提とする引用発明のmpxプラットフォームに,ASPICによるASPの定義を適用すると,当該ソフトウェアはユーザがインターネットを介してアクセスするリモートサーバにインストールされることとなり,互いに矛盾することとなる。
さらに,本願発明が米国においてされ,甲1が米国で作成されたものであることに鑑みると,本願発明及び引用発明における技術用語の意義については,米国等西洋の標準機関,企業,裁判所等で作成された文献(甲9〜14)に基づいて解釈されるべきである。
b 本願発明8においては,サービス・クラウドが果たす多くの特有の役割が明確に規定されている。そして,本願発明におけるサービス・クラウドについては,本願明細書の段落【0054】【0055】【0071】〜【0188】 , ,並びに【図1】【図7】【図12A】〜【図20】及び【図22】等において,詳 , ,細かつ包括的に記載されている。例えば,段落【0104】【0118】【012 , ,6】及び【図15】には,サービス・クラウド(VSC101のV保護コンテンツ・サービス[VCSC]1218)がデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジン(VIE)1209を備え,このVIE1209が2種類の取込処理に対応しており,低容量の取込用のウェブ・ユーザ・インターフェース駆動導入ツール1500B及び大容量の取込用のXMLベースAPI1500Aを提供することが記載されている。また, 【図1】には,家庭等の環境100からインターネット102を介して離れた場所にあるサービス・クラウド101内に「アプリケーション」が存在することが示されている。
したがって,本願発明のサービス・クラウドについて,インターネットを介して, クライアントである一つ又は複数のディスプレイ装置などにデジタル・コンテンツを表示するサービスを提供する装置一般とすることは妥当でない。
c SaaSの特徴と本願明細書の記載との対応関係からも,本願発明のサービス・クラウドがSaaSに相当し,両者が概念的に同じものであることは,明らかである。すなわち,本願明細書においては,前記(ア)aの点が段落【0014】【0103】及び【図1】に,同bの点が段落【0103】に, ,同cの点が段落【0071】及び【0072】に,同eの点が段落【0101】に記載されている。
(2) 看過された相違点 本件審決は,ASPによって運営されるシステムがネットワーク経由でユーザにソフトウェアを利用させる形態を指すことを理由として,引用発明の「mpx」が本願発明の「サービス・クラウド」に相当すると認定したが,上記(1)のとおり,当該認定は,技術的観点から妥当といえない。
本件審決は,引用発明の開示内容を不当に一般化し, 「本願発明はサービス・クラウドを用いるのに対して,引用発明はサービス・クラウドではなく,アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)を用いるものである点」という相違点を看過したものであって,違法である。
2 相違点に係る容易想到性の判断の誤り (1) 相違点1に係る容易想到性の判断の誤り ア 甲2の段落【0142】の「品質情報」は,同段落で明確に述べられているように,受信品質や受信性能に関する情報,すなわち,インターネット等のネットワークを介して転送されたファイルをクライアント211がどれだけ良く受信できるかを示すものである。このことは,甲2の段落【0117】に「品質データ管理部34は,各クライアント211の受信性能および受信品質を示す品質情報31を常に最新の情報に更新し(フローF78) 次のコンテンツファイル配信時の受 ,信性能および受信品質の情報として利用する。 とあるように, 」 品質情報がコンテン ツファイル配信に利用されることからも明らかである。
そして,甲2には,クライアント211がどのような装置であるのか記載されておらず,ディスプレイ装置であることは記載されていない。
イ これに対し,本願発明の「ディスプレイ装置の動作状態および性能レベル」について,「動作状態」は,ディスプレイ装置の状態に関する情報を含み,「性能レベル」は,例えば,ディスプレイ装置がデジタル・コンテンツを表示したり,当該デジタル・コンテンツと関連する音声を提供したりする際に,ディスプレイ装置がどれだけ良く動作しているかに関する情報である。
そして,本願明細書(甲6)の段落【0100】に記載されているように,本願発明では,サービス・クラウドのサービス管理システムが,ディスプレイ装置の動作状態及び性能レベルを反映したデータを収集することで,アラート,レポート及びダッシュボードを生成し,それにより,常に最高のサービス性能を維持することができ,サービスの劣化等を予期することもできるようになる。
ウ 以上によると,受信品質や受信性能に関する甲2技術に係る「品質情報」は,本願発明のように,コンテンツを表示するディスプレイ装置の動作状態及び性能レベルに関する情報についてのものではないから,甲2技術の「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構成は,本願発明の「1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構成(構成H)に相当するものではない。
したがって,甲2に接した当業者において,相違点1に係る構成に想到することは容易でない。
エ 被告は,甲2の段落【0077】及び【0078】を参照し, 「クライアントの固定的なスペック値」はクライアントが備えるCPUやメモリ等の性能レベルのことで,甲2技術で取得される「品質情報」はクライアントがどれだけ良く動作しているかに関する情報も含むものである旨を主張するが,CPU使用率や記憶部の使用率は,クライアントの動作状態や性能レベルの指標ではな い。CPU使用率は,単にCPUが別のアプリケーションによってどれだけ使用されているかを示すもので,コンピュータの動作状態を決定するものではなく,記憶部の使用率は,ハードディスク内にどれだけのディスクスペースが追加コンテンツを記憶するために残っているかを示すための指標にすぎず,コンピュータがどれだけ良好に動作しているかに影響するものではない。また,被告は,甲2の段落【0002】から,甲2に記載されたクライアントは,映画コンテンツや書籍等を表示するものと認められることを指摘するが,同段落の記載は,背景技術に関するものにすぎないし,また,クライアント211がディスプレイ装置であることを自動的に示唆するものでもない。
(2) 相違点2に係る容易想到性の判断の誤り ア(ア) 甲3技術においては,甲3の段落【0055】に記載されているように,ピア1Aは,ピア1Bに対し,データを直接,送信する。また,上記段落の記載から明らかなように,甲3では,外部のコンテンツを転送するための,サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイに相当するものは開示されておらず,サービス・クラウドについて何ら言及されていない。
(イ) これに対し,本願発明では, 「認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記サービス・クラウドの外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」ことが明確に規定されており,ディスプレイ装置がサービス・クラウドを介して外部のコンテンツを取得する。
(ウ) 以上によると,甲3技術に係る「ピア1Bは,ピア1Aに該当のデータの送信を要求する」構成は,本願発明の「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成(構成J)に相当するものではない。
イ 本件審決は,相違点2に関し,引用発明と甲3技術が,送信クライアン ト,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法である点において共通すると認定判断している。
しかし,甲1の8頁9行目〜10行目に示されているように,引用発明のmpxプラットフォームは,ユーザに自身のコンテンツを公開することを可能とする一方で,コンテンツを非公開とすることも可能とする。
これに対し,甲3の段落【0048】の記載によると,甲3技術では,ユーザではなくピア1A(メッセージ制御部114)が,公開フラグに基づいて,ピア1Bにデータを送信するかどうか判断するように構成されているところ,引用発明のmpxプラットフォームのユーザがコンテンツを非公開とすると決定した場合でも,この決定がピア1Aに反映されない可能性がある。その結果,ユーザがコンテンツを非公開とするかどうかにかかわらず,ピア1Aがピア1Bにコンテンツを送信するおそれがあるが,それは,ユーザの意思に反することである。
したがって,引用発明は,甲3技術と相容れず,引用発明に甲3技術を組み合わせることは容易ではない。
ウ 以上のとおり,甲3技術は,ピア1Aとピア1B間の一対一の通信(ピアトゥーピア通信)に関するもので,本願発明のように,ゲートウェイにより外部コンテンツを1つ又は複数のディスプレイ装置に転送する技術ではなく,また,引用発明に係る技術と相容れない部分を有することから,甲3に接した当業者において,相違点2に係る構成に想到することは容易でない。
エ(ア) 被告は,本願発明8における,デジタル・コンテンツ・アイテムを「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」とは, 「外部コンテンツ・ゲートウェイ」を経由するか否かにかかわらず, 「外部コンテンツ・ゲートウェイ」の機能により転送するものと解するべき旨を主張するが,上記「転送する」とは,転送されるコンテンツがV外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210を実際に通過することを意味する。このことは,本願明細書の段落【0130】に,VCG1210が「外部カタログにアクセスして,メディア・コンテンツ・アイテムを処理する」 と記載されていることにより,明確にされている。
また,甲3技術の情報管理サーバ5は,本願発明8のデジタル・コンテンツ・アイテムに相当するデータは受信せず,メタデータのみを受信する(構成j1)。そして,情報管理サーバ5の役割は,ピア1Aに対してピア1Bへデータを送信させることではなく,ピア1Bから検索要求を受信し,この検索要求に対応するメタデータをピア1Bに送信することであり(構成j2〜j4) ピア1Aからデータを取得 ,するか否かを最終的に決定するのは,情報管理サーバ5ではなく,ピア1Bである。
したがって,被告の上記主張は,甲3技術の構成j1〜j4の認定とも相容れない。
(イ) 被告は,甲1のコンテンツを非公開とする機能は,mpxプラットフォームに必須の機能ではないと主張するが,ユーザ(公開者)においては,間違いをした場合,記憶スペースを使い果たした場合,著作権を侵害する題材を有するコンテンツをアップロードした場合に,コンテンツを非公開にすることができなければならないから,コンテンツを非公開にすることは,mpxプラットフォームにとって本質的な特徴である。
(3) 相違点3に係る容易想到性の判断の誤り ア 甲4は, 「オンラインサービスにおいて,ユーザに広告を選択及び提示することに関する」(甲4の段落【0001】)が,甲4にはサービス・クラウドについての言及はない。
したがって,甲4の「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」は,サービス・クラウドの外部にあるものとはいえず,本願発明の「前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源」に相当するものではない。
イ また,甲4の「オンラインサービスコンピューティング装置108」についても,サービス・クラウド上の装置であるとはいえず,本願発明の「前記サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当するものではない。
ウ 以上のとおり,甲4技術に係る構成は,本願発明の構成とは異なるもの であり,甲4に接した当業者において,相違点4に係る構成に想到することは容易でない。
エ 被告は,甲4の「オンラインサービスコンピューティング装置108」が本願発明の「サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当する旨主張するが,仮に,被告の上記主張を前提としても,ASPを前提とした引用発明に,甲4に記載の事項(サービス・クラウドとしてのオンラインサービスコンピューティング装置108)を適用することは阻害され,相違点3に係る構成に当業者が想到することは容易でない。
(4) 相違点4に係る容易想到性の判断の誤り ア 甲5技術が解決しようとする課題は, 「画像データが表わす画像を,好みが反映された,見た目に好ましい色合いの画像に容易に補正すること」 (甲5の段落【0005】)であるところ,補正方法の詳細についての甲5の段落【0048】,【0061】及び【0071】の記載によると,甲5技術における画像の解析は,ユーザの好みを反映させた画像処理を実行するためのパラメータを容易に設定するために,画像の被写体種類(シーン)を決めるために行われるものである。
イ これに対し,本願発明における解析は,ユーザが視聴するための,映画やテレビ番組等のコンテンツをディスプレイ装置に送信するために行われるものである。映画やテレビ番組等のコンテンツの画像は,既にプロにより調整され,映画監督やテレビディレクターの想定に従ったものとなっているから,映画やテレビ番組等のコンテンツに対してユーザが俳優等の出演者の顔の明るさを調整することは,逆効果となりかねない。実際,ユーザは映画やテレビ番組を視聴したいだけであり,それらの画像の特定の部分(顔等)を調整したいという要求はない。
ウ 以上によると,甲5技術に係る「画像データが表す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正する」構成は,本願発明の「前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成(構 成F2)に相当するものではない。
したがって,甲5技術に係る画像解析は,本願発明における配信用のコンテンツの解析とは全く趣旨の異なるものであり,甲5に接した当業者において,相違点4に係る構成に想到することは容易でない。
エ(ア) 被告は,本願明細書の段落【0119】の記載を参照し,ビジュアルコンテンツについて,トリミングや拡大縮小,色彩の向上等の調整を行うためのものを含むと解される本願発明の「解析」は,色彩の調整を行うための甲5技術の「解析」と異なるものではない旨主張するが,本願発明の「解析」を,上記段落の記載によって狭く解釈すべきではなく,また,仮に,そのように狭く解釈したとしても,本願発明の「解析」が,ビジュアル及び音響コンテンツの両方に対して行われ得る(上記段落)のに対し,甲5では,画像のビジュアル(画像の色)を調整することのみが開示されていることからして,甲5は,本願発明の「解析」に係る特徴を開示するものではない。
(イ) また,引用発明と甲5技術とを組み合わせる動機付けはなく,当業者が相違点4に係る構成に想到することは容易でない。すなわち,甲5の画像処理装置100_1´は,シーンごとに画像の特定の部分を調整するために(甲5の段落【0003】,オペレータの好みに従って事前に手動で入力される「目標濃度」を )用い,オートセットアップ機能を介して(同【0061】【0071】,画像を調 , )整するが,そのような特徴は,特定の装置の技術的仕様に画像をより良好に適合させるために画像の調整を行う,本願発明の「解析」とは対照的である。前記イのとおり,甲5の「解析」を本願発明に組み込むことは,無意味であり,逆効果である。
したがって,引用発明と甲5技術と組み合わせることについては,動機付けがなく,むしろ阻害されるものである。
被告の主張
本件審決に,原告の主張するような相違点の認定及び相違点に係る容易想到性の判断の誤りはない。
1 相違点の認定に誤りがないこと (1) 原告は,サービス・クラウドとSaaSとが概念として等価であることを前提に,ASPとSaaSとを比較して,ソフトウェアの保存・管理などの点から両者が異なるものであることを主張するが,SaaSは,サービス・クラウドの下位概念であって,サービス・クラウドではない。したがって,原告の主張は,ASPがサービス・クラウドに相当するか否かとは無関係である。
(2) また,SaaSは,本願の特許請求の範囲にも本願明細書(甲6)にも一切言及がなく,原告の主張は,本願の特許請求の範囲の記載にも本願明細書の記載にも基づかないものであって,失当である。
(3) さらに,次のとおり,引用発明においてASPとして運営される「mpx」も,本願発明のサービス・クラウドの概念に含まれるから,原告が主張するようにSaaSが本願発明のサービス・クラウドであるということができるとしても,ASPもSaaSも本願発明のサービス・クラウドの概念に含まれるものであり,引用発明のASPと本願発明のサービス クラウドが異なるものであるとはいえない。
・ ア 甲1の「mpx」は, ASPとして運営されるものであるところ,原告の主張によると,ASPは, 「インターネットまたはプライベートネットワークを介してリモートデータセンターから複数のユーザにアプリケーションとコンピュータサービスを配信および管理するビジネス」と定義される。また,乙2及び3によると,ASPは, 「特定及び不特定ユーザが必要とするシステム機能を,ネットワークを通じて提供するサービス。あるいは,そうしたサービスを提供するビジネスモデル」と定義される。なお,乙2には,ASPとSaaSは同義語とみなしているとの記載があり,両者は概念として何ら異なるものではない。
イ これに対し,本願明細書の段落【0014】の記載によると,本願発明のサービス・クラウドについては,インターネットを介して,クライアントである一つ又は複数のディスプレイ装置などにデジタル・コンテンツを表示するサービスを提供する装置一般を指すものであればよく,当該サービスを実現するためのソフ トウェアの保存や管理について,より限定された意味を持つものではない。本願明細書のほかの箇所に,サービス・クラウドについてそれ以上に限定して解釈すべき記載も,ASPを排除するものであるといえるような事項の記載もない。
ウ 以上によると,引用発明のASPも,本願発明のサービス・クラウドも,インターネットを介してクライアント(ユーザ)にアプリケーションサービスを提供するものであるということができ,それらは何ら異なるものではない。
したがって,引用発明のASPとして運営される「mpx」が本願発明のサービス・クラウドに相当するとの本件審決の認定に誤りはない。
2 相違点に係る容易想到性の判断に誤りがないこと (1) 相違点1に係る容易想到性の判断の誤りについて 甲2技術は,その構成h,h1及びh3に照らし,ファイルの配信先である「クライアントの動作状態」及び「クライアントの固定的なスペック値」を含む品質情報を取得する技術であるということができる。
そして, 「品質情報」である「クライアントの動作状態」及び「クライアントの固定的なスペック値」のうち,後者は,クライアントが備えるCPUやメモリ等の性能レベルのことであるから,甲2技術で取得される「品質情報」は,ネットワークを介して転送されたファイルをクライアントがどれだけ良く受信できるかを示す情報だけでなく,クライアントがどれだけ良く動作しているかに関する情報も含むものである(甲2には, 「品質情報」について,段落【0077】に「CPU使用率」,段落【0078】に「記憶部の使用率」の例が記載されている。 。
) また,甲2の段落【0002】には, 【背景技術】として「映画コンテンツおよび書籍等のデジタル化により,大容量ファイルの効率的なファイル分配の運用が想定される。」と記載されており,甲2に記載されたクライアントは,映画コンテンツや書籍等を表示するものであると認められるから,甲2のクライアントは,ディスプレイ装置の存在を前提としたものであるということができる。
(2) 相違点2に係る容易想到性の判断の誤りについて ア(ア) 本願発明は, 「デジタル・コンテンツ・アイテム」を「前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」ものであるところ, 「外部コンテンツ ゲートウェイにより転送する」 ・ との意味は必ずしも明らかではない。
そこで,本願明細書の実施形態の記載を参酌すると,本願明細書の段落【0130】には,本願発明の「外部コンテンツ・ゲートウェイ」の一実施形態である「V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)」について「V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210により,認証されたデジタル・メディア・コンテンツをVSC101外部の創作地点(origination point)からディスプレイ装置へ,疑似リアルタイム(near real-time)転送することが可能となる。外部のデジタル・メディア・コンテンツ・カタログで広告が適切に配列されていると,ユーザは,サービス・クラウド内に取り込まれていないものの疑似リアルタイムでディスプレイ装置へプッシュされるメディア・コンテンツ・アイテムを閲覧および購入することもできる。VCG1210は,外部カタログにアクセスして,メディア・コンテンツ・アイテムを処理するように,事前設定されていることが好ましい。 と記載されてい 」る。
上記記載によると,V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210は,Vサービス・クラウド101に備えられ,VSC(Vサービス・クラウド)101外部の創作地点からディスプレイ装置へ疑似リアルタイム転送することを可能にする装置,すなわち,外部の創作地点からディスプレイ装置コンテンツを転送する機能を有する装置であることが理解できるところ,転送されるコンテンツについては,V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210を経由することに限定されているとはいえない。
したがって,本願発明の「デジタル・コンテンツ・アイテム」を「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」とは, 「デジタル・コンテンツ・アイテム」 「外 が部コンテンツ・ゲートウェイ」を経由するか否かにかかわらず, 「外部コンテンツ・ゲートウェイ」の機能により転送するものであると解すべきである。
(イ) 一方,甲3技術は,その構成i,j1〜4に照らし,配信対象のデータがピア1Aから,ネットワークを介して,ピア1Bへと,情報管理サーバ5の機能により送信(転送)される技術であるということができる。
(ウ) そうすると,甲3技術の「ピア1A」及び「情報管理サーバ5」は,本願発明の「外部の創作地点」及び「外部コンテンツ・ゲートウェイ」に相当し,甲3技術の「ピア1B」と本願発明の「ディスプレイ装置」は,「データの配信先」であるといえるから,本願発明と甲3技術は, 「外部の創作地点から,インターネットを介して,データの配信先へと,外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」点で共通するものである。
そして,引用発明において,本願発明の「サービス・クラウド」に相当する「mpx」により配信するデータの配信先は,本願発明の「ディスプレイ装置」に相当する「OTTデバイス」であるから,引用発明に甲3技術を適用すると, 「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成,すなわち相違点2に係る構成に相当するものとなる。
イ 原告は,引用発明のmpxプラットフォームは甲3技術と相容れず,これらを組み合わせることは容易ではない旨主張する。
しかし,mpxプラットフォームがコンテンツを非公開とすることが甲1に記載されていることは,単に,mpxプラットフォームがそのような非公開とする機能を備えているということにすぎず,同機能は,mpxプラットフォームに必須の機能ではない。そして,本件審決は,コンテンツを非公開とする機能を備えるものとして引用発明を認定したものではない。
(3) 相違点3に係る容易想到性の判断の誤りについて ア 甲4技術は,その内容に照らし,次の@及びAの技術を含むものと理解できる。
@ オンラインサービスコンピューティング装置108からコンテンツアイテム が送信され,ユーザ装置310がインターネットブラウザによりコンテンツアイテムを受信して表示する技術(構成k,k1) A コンテンツアイテムは,多数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテムを供給するオンラインソーシャルネットワーキングサービスから受信されたもの(構成k2)であり,オンラインサービスコンピューティング装置108経由でコンテンツを共有しているユーザ又は「友達」により供給されたニュースフィード(構成k3)である技術 イ 上記@の技術について,「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,ユーザ装置310にインターネット上からコンテンツアイテムを送信するサービスを提供する装置であり,「サービス・クラウド」といえるものである。
また,上記Aの技術について,「コンテンツアイテム」は,「オンラインサービスコンピューティング装置108」の外部にある「1つまたは複数の外部供給源」から受信したコンテンツアイテムである。
その上で, 「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,それらのコンテンツアイテムを外部供給源(「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」 から受信してユーザ装置310に送信するから, ) データを一方から他方へ転送する制御機能を有する「ゲートウェイ」に相当する。そして,データは「多数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテム」や「コンテンツを共有しているユーザ又は『友達』により供給されたニュースフィード」を含むから,上記ゲートウェイは「サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」といえる。
ウ 以上より,甲4技術の「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」は,本願発明の「前記サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源」に相当し,甲4技術の「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,本願発明の「前記サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当するといえる。
(4) 相違点4に係る容易想到性の判断の誤りについて ア 原告の主張は,本願発明の「解析」は, 「ユーザが視聴するための映画やテレビ番組等のコンテンツをディスプレイ装置に送信するために行われるもの」であって,甲5に記載された「解析」とは異なることを前提とする。
しかし,本願発明は, 「デジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」と特定しているだけであって,その意味は必ずしも明らかではない。
そこで,本願明細書の実施形態の記載を参酌すると,本願明細書の段落【0119】には,コンテンツの「解析」について, 「図15に見られる本発明の取込作業フローは,ディスプレイ装置上で鑑賞されるコンテンツの外観(音響およびビデオ)値を最大化するために,ユニークなアルゴリズムを用いることが好ましい。それは,ビジュアルおよび/または音響コンテンツを解析して,クリティカルな鑑賞要素および最適の視線を特定し,調整(トリミング,拡大縮小,または色彩の向上および並進/回転を含む画像の変更)を行って,鑑賞体験を最高のものにする。」と記載されているのみであって,他に記載は見当たらない。
そうすると,本願発明における「解析」の技術的意義を把握するためには,上記記載を参酌するほかないから,本願発明の「解析」とは,ビジュアルコンテンツについて,トリミングや拡大縮小,色彩の向上等の調整を行うためのものを含むと解すべきである。
イ 一方,甲5技術の構成m2に照らすと,甲5技術の「解析」は,色彩の調整を行うためのものであるということができる。
ウ 以上より,本願発明の「解析」と甲5技術の「解析」は,何ら異なるものではない。
当裁判所の判断
1 本願発明について (1) 本願明細書(甲6)の記載 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0002】 本発明は,一般に,デジタル・アート,装飾,ポスター,ビジュアル・ライフスタイル,ソーシャル・メディア,ネット配信動画(over-the-top),MSO,および他の種類のデジタル・コンテンツを,家庭,オフィス,ホテル,ギャラリー,またはあらゆる他の公共の場所もしくは私的な場所で使用するために,薄型でスマートなディスプレイ装置上に表示するためのシステムおよび方法に関する。
また,本発明は,このようなデジタル・コンテンツの配信,鑑賞および制御のためのシステムおよび方法を含む,このようなデジタル・コンテンツの表示を管理するためのシステムおよび方法を提供する。また,本発明は,一式の革新的技術および処理を通じて,コンテンツを保存,配信および保護するためのシステムおよび方法を含む。
【背景技術】 【0003】 芸術および写真が,家庭および公共の場所の壁を飾るのに用いられる。芸術は,多くの様式および色彩で現れ,色彩,形状および/またはデザインを,ガラス,キャンバス,木材,金属,フィルムおよび/または紙のような媒体上に,描写,線描,配置および/または印刷することにより,作成される傾向にある。デジタル表示とは異なり,画像が媒体上に一旦描かれ,印刷されまたは作成されると,その画像は固定されてしまう。このように,家庭または公共の場所の壁に一旦設置されると,画像は,再描画,再印刷,物理的に修正,または何らかの方法で移動されない限り,変更不能となってしまう。新しい芸術作品を同じ場所に展示するためには,現行の作品が取り外されて,新しい作品がその場所に設置される必要がある。これは,芸術が,大きくておそらくは重いフレームの中に掲げられている場合には,困難なことであり,移動,再配置,または交換も,同様に非現実的である。このように,i Pod(登録商標)上の楽曲を変更したり,テレビの番組を変更したりできるように,壁上のピクチャ,ポスター,絵画および写真を変更する手段は,現在のところ存在しない。
【0004】 そのうえ,芸術,写真,装飾,ポスター,アプリケーション,ソーシャル・メディア,ビジュアル・ライフスタイル・メディア,ネット配信動画コンテンツ,MSOコンテンツ,およびあらゆる他の種類のコンテンツを,インターネット・クラウド・エコシステムにより駆動される優美な薄型フレーム・ディスプレイ上にて,ユーザが操作しこれらと対話することを可能にし,ユーザが体験のあらゆる要素を自ら調節可能であるテレビ,コンピュータもしくはモバイル装置,または表示用システムは存在しない。
【0005】 テレビジョン,コンピュータ・モニタ,および他のデジタル・ディスプレイ装置は,デジタル画像を提示するように適合されており,デジタル画像は芸術作品の画像,写真および他の画像を含み得る。しかしながら,このような装置は,重く,扱い難く,厚く,設置が難しく,使用が困難で,それらの向きおよびデジタル・コンテンツとの対話に関して柔軟ではない。そのうえ,これらは一般に,固定された向きを有し,音響機能または能力を含み,美しいフレームがなく,コントロールおよびボタンを含み,電源を含み,オンボード・プロセッサを有し,デジタル・アートまたは他のビジュアルおよび/もしくは音響コンテンツを,優美で,目立たず,かつ洗練された形で提示可能な薄型ディスプレイとしてそれらが機能することを妨げる,多くの追加の特徴を含む。さらに,テレビジョン,コンピュータ・モニタ,および他のデジタル・ディスプレイ装置は,高電圧電源に,直接接続する必要があるため,使用および設置するには困難で,高価であり,柔軟ではなくなってしまう。
発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 出願人の知る範囲では,壁上のピクチャ,ポスター,絵画,および写真を,iPod上の楽曲を変更するように変更する統合手段はなく,このような統合プラットフォーム上で加入可能なデジタル・アート画像の大規模データベースは,現在存在しない。また,出願人の知る範囲では,芸術,写真,装飾,ポスター,アプリケーション,ソーシャル・メディア,ビジュアル・ライフスタイル・メディア,ネット配信動画コンテンツ,MSOコンテンツ,および他のあらゆる種類のコンテンツを,インターネット・クラウド・エコシステムにより駆動される優美な薄型フレーム・ディスプレイ上にて,容易に操作および対話する機能をユーザに提供し,ユーザが体験のあらゆる要素を自ら調節することができる従来技術のシステムもない。したがって,デジタル・コンテンツを,容易,便利かつ優雅に消費するとともに表示する,包括的なデジタル・コンテンツ・システムおよび体験が必要とされている。また,芸術,写真,装飾,アプリケーション,ソーシャル・メディア,ポスター,ビジュアル・ライフスタイル,ネット配信画像,MSO,およびあらゆる他の種類のコンテンツの表示のための遠隔ディスプレイ装置上のデジタル画像の表示と,ユーザが対話するとともにこの表示を制御することができる,芸術におけるユーザ・インターフェースも,現在のところ存在しない。
【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は,処理コントローラと,メモリと,表示画面とを備えたディスプレイ装置に,デジタル・コンテンツを格納するためのシステムおよび方法を備えている。
システムおよび方法は,1つまたは複数のディスプレイ装置の表示画面上に表示されるように構成された,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムと,サービス・クラウドとを備えており,このサービス・クラウドは,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを格納して管理するように構成された保護記憶システムと,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを表示するように構 成された1つまたは複数のディスプレイ装置と通信するように構成された,通信コントローラと,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,1つまたは複数のディスプレイ装置に供給することを制御するように構成された供給エンジンと,供給エンジンにより供給を受けた,1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータを,収集するように構成されたサービス管理システムと,1つまたは複数のディスプレイ装置上に表示するための少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの選択のために,インターネットを介して,メモリおよびプロセッサを具備したコンピュータ上で稼働するアプリケーションのインターフェースとなるように構成されたサーバと,少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムの導入を制御するように構成されたデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンと,認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,サービス・クラウドの外部の創作地点から,インターネットを介して,1つまたは複数のディスプレイ装置へと転送するように構成された外部コンテンツ ゲートウェイと, ・ネット配信動画コンテンツを,1つまたは複数のディスプレイ装置へ,サービス・クラウドの外部の1つまたは複数の外部供給源から提供するように構成されたライブ・データ・フィード・ゲートウェイと,を備えている。
【0008】 本発明の好適な実施形態では,方法およびシステムは,デジタル・アート,装飾,ポスター,ビジュアル・ライフスタイル,ソーシャル・メディア,ネット配信動画,MSO,および他の種類のコンテンツを,薄型で優雅なフレームが付いたディスプレイに配信するために,設けられている。先駆的な装置と,豊かなデジタル・コンテンツと,自然で直感的なユーザ体験と,新しい社会的やり取りと,革新的な購入の選択肢とのエコシステムを創出することにより,本発明は,芸術,ポスター,絵画,写真,ビデオ,およびアプリの体験および楽しさを,根本的に変革し,デジタル・コンテンツがどのように楽しまれるかについて新たに示すように適合される。
【0009】 好適な実施形態では,本発明は,芸術品などのためのディスプレイ装置を含み,これは,薄型でスマートな設計の軽量デジタル・ディスプレイと,本発明のディスプレイ装置上に表示されるデジタル・コンテンツを管理可能とするプログラムであるアプリケーション(「APP」)と,これらのディスプレイ装置上に表示可能なデジタル・コンテンツへのアクセスを提供する,関連付けられたインターネット・サービス・クラウドとを含む。
【発明を実施するための形態】 【0014】 図1は,本発明のシステムの概要を示しており,このシステムは,デジタル表示のためにコンテンツを記憶し,表示機能を管理し,インターネット102を介してサービス・クラウド(「VSC」)101を通じてクライアント・アプリケーション108を動作させるクライアント・コントロール107と対話するように構成された,ディスプレイ装置105または106を含む。クライアント・アプリケーション(「アプリ」)108により,ユーザは,ユーザが表示するコンテンツまたはユーザが本発明のディスプレイ装置105または106で実行するアプリケーションを,管理することができるようになり,アプリケーションは,コンテンツを購入して所有すること,ユーザ作成コンテンツをアップロードすること,または,様々な階層でのサービス加入を通じて,デジタル画像のレンタル・ライブラリにアクセスすることを含み,これにより,ユーザは,デジタル・ポスター,芸術,スポーツ,エンターテイメント,雰囲気,旅行,および他の表示用コンテンツを取得することができるようになる。図1にてわかるように,本発明のシステムは,家庭環境内で設定されるように構成されているが,他の公共または商用会場における本発明の使用も想定されている。サービス・クラウド101は,クライアント・コントロール107で,インターネット102を通じて通信する。クライアント・コントロール107は,ディスプレイ装置105および106上に表示されたデジタル・コンテンツを管理し,他のアカウント管理機能を実行するためのアプリ108を,そこにイン ストールしてある。
【0016】 本発明により開示された装置は,インターネットと接続された家庭,オフィス,車両,または公共の場のようなあらゆる環境に理想的に設置可能であり,クライアント・アプリケーション108およびサービス・クラウド101を通じて管理されるオンライン・アカウントとリンクしている。ユーザは,デジタル・アート,装飾,ポスター,ビジュアル・ライフスタイル,ソーシャル・メディア,ネット配信動画(MSOが関与しないビデオ・コンテンツの配信,すなわち,Netflix(登録商標),Hulu(登録商標)など),複数システム事業者(「MSO」(multiple system operator),および他の種類のコンテンツを購 )入するかまたは定期購入する能力,ならびに,ディスプレイ装置105上に表示されたメディア・コンテンツと対話するか,またはコンテンツを外的刺激に反応するようにする外部アプリを定期購入するように特別に設計されたアプリを有する。本発明のディスプレイ装置105およびアプリ108は,デジタル・アート,装飾,ポスター,ビジュアル・ライフスタイル,ソーシャル・メディア,ネット配信動画,MSO,および他の種類のコンテンツを含む多数のカテゴリのデジタル・コンテンツの制御および表示のために設計されているが,記述を簡単にするために,デジタル・コンテンツは,以下, 「デジタル・ビジュアル・コンテンツ」と総称される。このことが,本発明に適応可能および適用可能なコンテンツの範囲を制限することは,決してあり得ない。
【0091】 インターネット・クラウド・インフラ 図12Aは,コンテンツおよびサービスをiC-DPCディスプレイ・プロセッサ510(ディスプレイ装置105およびプレーヤ2100に組み込まれる) クラ ,イアント・コントロール107,モバイル・アプリ108,およびサービス動作管理アプリケーション1224にもたらすための完全に仮想化された環境をもたらす Vサービス・クラウド101の機能コンポーネントを示すブロック図である。これらのコンテンツおよびサービスは,Vサービス・クラウド101内で完全にホスティングされ,動作されるネイティブ・サービス・クラウドを通じて,主として管理されて配信される。他のサービスは,Vサービス・クラウド101のリソースにより管理され,Vサービス・クラウド101の外部の他のサービス・クラウドから配信され,これらの外部サービス・クラウドは,プライベート1216またはパブリック1217であり得る。外部サービス・クラウド1216および1217に由来するコンテンツおよびサービスは,Vライブ・データ・ゲートウェイ1211およびその仮想環境抽象レイヤ(VEAL:Virtual EnvironmentAbstraction Layer)1223を用いて,コンテンツおよびコントロールを,iC-DCディスプレイ・プロセッサ510,クライアント・コントロール107のユーザ・インターフェース・エクステンション1221,およびシステム動作管理アプリケーション1222へのエクステンションにて稼働するアプリ画像1220と通信させる。
【0093】 Vライブ・データ・ゲートウェイ(VDG) Vライブ・データ・ゲートウェイ(VDG)1211は,仮想環境抽象レイヤ(VEAL)1223を提供することにより,外部サービス・クラウド1216および1217が,それらのサービスを,ディスプレイ装置105,およびVサービス・クラウド101環境内のクライアント・コントロール107上で稼働しているアプリ108へ配信することができるようにしている。VEAL1223は3段階モデルに従い,このモデルでは,最上段が外部サービス・クラウド1216に取り付けられた標準化および構造化された層であり,外部サービス・クラウド1216を第2段と安全に通信可能としており,この第2段は,ディスプレイ・プロセッサ510上にインストールされた対応するアプリ1220に対して取り付けられたVEALインターフェースであり,クライアント・コントロール107の対応するエクス テンション1221を通じて制御される第3段との対話を直接制御するサービス・クラウド101内の対応する仮想環境1223からなる。第2段の仮想環境1223と通信する最上段,すなわち,外部標準化レイヤは,コンテンツ,セキュリティ,アクセス制御,および管理という4つの要素内に構成され,各要素は,各外部クラウド・サービス1216または1217に特有である。外部サービス・クラウド1216または1217からのデータを,ディスプレイ・プロセッサ510およびクライアント・コントロール107へ,およびそこからルーティングする安全プロキシとしてはたらくことに加えて,外部サービス仮想環境1223は,コンテンツからのコントロールを分割し,各々を様々な装置間でルーティング可能とする。ユーザ・コントロールと同装置(たとえば,テレビ)上のコンテンツ鑑賞とを組み合わせる従来のクラウド・サービス(たとえば,ビデオ・オンデマンド・サービス)とは異なり,外部サービスの仮想環境1223により,コントロールが,クライアント・コントロール107へおよびそこからルーティングされ,コンテンツが,同時にディスプレイ装置105へルーティングされるようになる。また,外部サービスの仮想環境1223は,あらゆるマルウェアがディスプレイ装置105に到達するのを防止する深いデータ・フィルタリング,および,外部サービス・クラウド1216または1217およびサービス・クラウド101の双方が,活動履歴ならびに他の利用および取引計測を把握可能とする他の管理機能を実行する。
【0094】 データが単に外部ソースからディスプレイ装置105のディスプレイ・プロセッサ510へと送られる同様の状況では,VDG1211は,外部サービス・クラウド1216または1217からデータを安全にルーティングしてアプリ画像1220を作成するデータ・コンセントレータとしてはたらく。VDG1211は,コンセントレータを用いて,ライブRSS,XMLまたはURLデータ・フィードを受信して,それらを,登録されたディスプレイ装置105上で稼働するアプリ画像1220に利用可能とする。さらに詳述することになるVSDK1604により,開 発者は,新しいコンセントレータを作成可能となり,かつ/またはそれらのアプリを,接続されたライブ・データ・フィードに登録可能となる。また,VDG1211は,ライブ・データ・フィードが有害なデータを担持していないことを確認するために,セキュリティ・フィルタ機構を組み込んでいる。
【0103】 図12Bは,インターネット・コンテンツ・サービス・クラウド1218の機能コンポーネントを示すブロック図であり,このクラウドは, 「Vコンテンツ・サービス・クラウド」 (VCSC)1218と総称される一連のクラウド・アプリケーションをホスティングしており,VCSCは,ディスプレイ装置上のデジタル・メディア・コンテンツの鑑賞体験を容易にするとともに支援するように動作し,他の機能との間でモバイル・クライアント・アプリケーションを用いて,リンクされたディスプレイ装置105のサービス動作1200を制御する。VCSC1218は,好ましくは99.999%のサービス稼働率ならびに100%のデータ整合性および復元を保証する商用クラウド・サービス・プロバイダ,ならびに好ましくは99.999%のコンテンツ配信を保証する商用コンテンツ配信ネットワーク(CDN)によりホスティングされた,プライベート・クラウドであってもよい。サービス・クラウド101,VCSC1218,およびCDNは,アカウント・セキュリティ,ネットワーク・セキュリティ(アクセス・ポイントおよび伝送の保護) フォールト・ ,トレラント設計,事業継続性管理,変更管理制御(change management control) ならびに物理および環境セキュリティを伴う, , 実証されて監査された,保護インフラ・フレームワークを提供することが好ましい。
【0104】 VCSC1218は,保護データおよびメディア記憶システム(VSSS)1201と,供給エンジン(VPE)1203と,ソーシャル・ネットワーク・エンジン(VSNE)1206と,顧客関係管理エンジン(VCRME)1207と,先進取引エンジン(VCE)1208と,デジタル・メディア・コンテンツ取込エン ジン(VIE)1209と,外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210と,を備えていることが好ましい。また,VCSC1218は,Vサービス・クラウド101からのリソースを用いて,エコシステムの他の要素と通信し,これらの要素は,安全な一次インターネット接続1215を通してディスプレイ装置105との全ての通信を制御する通信コントローラ(ViCC)1202,二次インターネット接続1214を通してアプリ108とのインターフェースになる(ユーザ)インターフェース・サーバ(VIS)1205,および動作制御および監視機能をもたらすサービス管理システム(VSMS)1204などである。
【0105】 VCSC1218は,強力なセキュリティ・フレームワーク上に構築されて,アプリ108から到来する全てのユーザの要求,およびディスプレイ装置105との全ての通信を,肯定的に特定し,認証し,保護する。VCSC1218内に記憶されたデジタル・メディア・コンテンツの全てのインスタンスおよび表現の全ての要素が,完全に暗号化されて,各認証ユーザについてアクセス権限を明確に定めた厳格で粒度の細かいアクセス制御機構により,権限なきアクセスから保護されることが好ましい。VCSC1218の好適な性能およびスケーラブル特性は,その内部保護信号伝送ファブリック(internal secure signaling fabric)が,高度に拡張可能なXMPPプロトコルを用いて,全てのクラウド・システム,アプリ108,およびディスプレイ装置105に実装されたソフトウエアの間で信号伝送することにより,得られるものである。この信号伝送ファブリックを用いて,全てのコントロール,コマンド,およびレポート通信が,発信元から相手先へと迅速にルーティングされる。各通信インスタンスは,受信者が,ソースを肯定的に認証して,データの整合性を承認することを可能にする,認証および整合性機構により保護されている。したがって,高度に保護されたプライベート・クラウド・インフラの使用に加えて,このプライベート・クラウドの境界内または境界を越えてなされる全ての通信が,保護されていることが好ましい。
【0118】 Vデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジン(VIE) ・・・Vデジタル・メディア・コンテンツ取込エンジン(VIE)1209は,全ての種類のデジタル・メディア・コンテンツ(静止画,動画,対話画像,アプリ画像)をV保護記憶システム(VSSS)1201のライブラリ1602へ導入および適応することを制御するように構成された自動化作業フロー エンジンである。
・導入するコンテンツの種類および量に応じて,VIE1209は,2つの主要な機構を提供し,それらは,低容量の取込用のウェブ・ユーザ・インターフェース駆動導入ツール1500B,および大容量の取込用のXMLベースAPI1500Aである。また,VIE1209は,取込担当者が,創作,キュレーション,商用および技術メタデータ,ならびに検索エンジンにより特に使用されるメタデータを,完成させることができるようにするユーザ・インターフェースを,提供することもできる。最後に,VIE1209は,一式のビジュアル編集ツールにアクセスを提供して,デジタル・メディア・コンテンツ・アイテムが本発明のディスプレイ装置の実施形態上に表示される方法を修正することができる。これらのツールを用いて,権限のあるユーザは,コントラスト,デフォルトの輝度,彩度,および白黒レベルを,これらの変更を,リアルタイムで装置上にて注視しつつ,対話的に調整することができる。取り込まれたコンテンツから抽出されるか,または取込処理中に作成された全てのデータは,VSSS1201内に記憶可能であることが好ましい。この処理中,いくつもの承認ゲートが作成されて,様々な権限が,芸術的情報,キュレーション情報,技術情報,および商業情報を承認することが可能となる。
【0119】 ・・・本発明の取込作業フローは,ディスプレイ装置上で鑑賞されるコンテンツの外観(音響およびビデオ)値を最大化するために,ユニークなアルゴリズムを用いることが好ましい。それは,ビジュアルおよび/または音響コンテンツを解析して,クリティカルな鑑賞要素および最適の視線を特定し,調整(トリミング,拡大 縮小,または色彩の向上および並進/回転を含む画像の変更)を行って,鑑賞体験を最高のものにする。各修正は,取消可能であることが好ましく,最近の修正の一連のリストが,入手可能で,メディア・コンテンツに対してリンクされて,サービス・クラウド101上に保存されることが好ましい。
【0130】 V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG) V外部コンテンツ・ゲートウェイ(VCG)1210により,認証されたデジタル・メディア・コンテンツを,VSC101外部の創作地点(origination point)からディスプレイ装置へ,擬似リアルタイム(near real-time)転送することが可能となる。外部のデジタル・メディア・コンテンツ・カタログで広告が適切に配列されていると,ユーザは,サービス・クラウド内に取り込まれていないものの擬似リアルタイムでディスプレイ装置へプッシュされるメディア・コンテンツ・アイテムを閲覧および購入することもできる。VCG1210は,外部カタログにアクセスして,メディア・コンテンツ・アイテムを処理するように,事前設定されていることが好ましい。サービス・クラウドにより管理された他のデジタル・メディア・コンテンツとは異なり,外部のメディア・コンテンツ・アイテムは,ユーザ・ライブラリ内に記憶されて,デジタル権利管理システムにより完全に保護されている。
【図1】 【図12A】 【図12B】 (2) 本願発明の概要 前記第2の2の本願の特許請求の範囲の請求項(特に請求項1及び8)の記載及び上記(1)の本願明細書の記載によると,本願発明の概要について,次のようにいうことができる。
ア 本願発明は,画像や映像のデジタル・コンテンツを,薄型のディスプレイ装置に表示するためのシステム及び方法に関するものである(本願明細書の段落【0002】。
) イ 従来,芸術作品については,画像がガラス,キャンバス等の媒体上に固定され,容易に変更できないといった問題があった(同【0003】。また,画像 )や映像のコンテンツについては,ユーザがディスプレイ上で体験のあらゆる要素を自ら調節することはできず(同【0004】,デジタル・コンテンツについても, )ディスプレイ装置が重く,扱い難い,設置が難しい,使用が困難である,固定した向きを有するといった問題があった(同【0005】。
) 上記に関し,従来,壁上の絵画等を変更する統合手段や,統合プラットフォーム上で加入可能なデジタル・アート画像の大規模データベースは存在せず,ユーザにおいて,画像や映像のコンテンツを,ディスプレイ上で容易に操作し,体験のあらゆる要素を自ら調節することができるシステムもなく,それに係るユーザ・インターフェースも存在しなかった(同【0006】。
) ウ 本願発明は,ディスプレイ装置に,表示用のデジタル・コンテンツを記憶するためのシステム又は方法であって,@処理コントローラ,メモリ及び表示画面を備えたディスプレイ装置と,A通信コントローラ,インターフェース・サーバ及びサービス管理システムを含むコンテンツ・サービス・クラウドを有するサービス・クラウドを,構成要素として含むものであり,サービス・クラウドは,次の機能等を備えている(請求項1及び8,本願明細書の段落【0007】。
) (ア) 保護記憶システム ディスプレイ装置上に表示されるように構成されたデジタル・コンテンツ・アイテムの記憶及び管理に係るものである。
(イ) 通信コントローラ ディスプレイ装置との通信に係るもので,ユーザ入力装置によるデジタル・コンテンツ・アイテムの選択に応答して,デジタル・コンテンツ製品を,インターネットを介して,ディスプレイ装置の表示画面へと送信するものである。
(ウ) 供給エンジン デジタル・コンテンツ・アイテムの供給の制御に係るものである。
(エ) サービス管理システム 供給エンジンから供給を受けた,ディスプレイ装置の動作状態及び性能レベルを反映した,データの収集に係るものである。
(オ) デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジン デジタル・コンテンツ・アイテムの導入の制御に係るもので,低容量取込及び大容量取込を含む取込作業フローを備え,デジタル・コンテンツ・アイテムの解析に も係るものである (カ) サーバ デジタル・コンテンツ・アイテムの選択のための,メモリ,プロセッサ及びユーザ入力装置を備えたコンピュータ上で稼働するアプリケーションのインターフェースに係るものである。
(キ) 外部コンテンツ・ゲートウェイ 認証されたデジタル・コンテンツ・アイテムを,サービス・クラウドの外部の創作地点から,インターネットを介して,ディスプレイ装置へと転送することに係るものである。
(ク) ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ サービス・クラウドの外部の供給源から,コンテンツをディスプレイ装置へと提供することに係るものである。
2 引用発明について (1) 甲1の記載(括弧内の頁数は,英語原文における頁数を示す。訳文は,基本的に乙1によるが,一部訳文の統一等のために変更している部分がある。) ア 「mpxはブロードバンドビデオ管理の進化の次の段階です。効率的なユーザーインターフェースモデルと最も成熟した柔軟なオンラインビデオ管理技術の融合です。(1頁) 」 イ 「より効率的なコンテンツ管理,パーソナライズされたワークフロー,自動パブリッシング,エンタープライズクラスのパフォーマンスを備え,サービス指向アーキテクチャの上に構築されているmpxは,PC,携帯電話,テレビに公開するための最も完全なビデオ管理システムです。 (2頁7行目〜9行目) 」 ウ 「mpxを通じて,ビデオ管理の以下の全ての複合的なタスクを実行することができます。
■ 取込み ■ 効率的なワークフロー ■ 自動パブリッシング及び配信 ■ 簡単な編集 ■ カスタム・フィード ■ 柔軟な配信及び格納 ■ 収益化 ■ 顧客獲得 ■ コンテンツのセキュリティ ■ ローカル及びホスティングファイル処理 ■ ユーザフレンドリーなレポート ■ トランスコーディング」(2頁14行目〜26行目) エ 「取込みサービスは,コンテンツのアップロードについて,以下の2つの自動化された方法を提供しています。
■ ウォッチフォルダは,システム上のFTPロケーションで,取込みサービスが常に変更を監視しています。ウォッチフォルダは, “プッシュ型”の取込み方法です:メディアをドロップインすると,自動的にthePlatformのmpxビデオ管理システムにアップロードされます。
■ フィードリーダは,ユーザのフィードを監視し,コンテンツの追加又は変更をアカウントに自動的にアップロードします。フィードリーダは“プル型”の取込方法です。アップロードされるコンテンツは,フィードが読まれたときにシステムに取り込まれます。(3頁1行目〜11行目) 」 オ 「より簡単なアップロード 各アップロードの完了を待つことなくファイルをmpxにアップロードするために,mpxコンソールは,mpxアップローダと呼ばれる小さなアプリケーションを使用します。このアドビ・エアー・ベースのクライアントは,ローカルドライブ上のファイル・キューを介して動作し,FTP又はWebDAVを介してアップロードサーバにファイルを送信します。
mpxアップローダは,ウェブブラウザにおいてではなく,アプリケーションとして動作するので,mpxの使用を継続する前に,アップロードの完了を待つことがありません。mpxアップローダは,操作を続けながらにして,任意の数及びサイズのファイルを選択してバックグラウンドでアップロードします。(6頁18行 」目〜28行目) カ 「自動及びカスタマイズされたパブリッシング及び配信 ほぼ全てのデバイス,販路及びフィードは,オンラインビデオについて,ビデオフォーマット,イメージ,配信設定といった独自の要求仕様を有しています。mpxのパブリッシングワークフローは,ファイル選択,トランスコーディング及びアセットタイプの適用からファイルの適切な位置への移動といったパブリッシングプロセス全体を自動化してユーザに提供します。(7頁1行目〜4行目) 」 キ 「公開取りやめ コンテンツを公開した後,公開しなければよかったと思ったことはありませんか?これはmpxを使えば簡単に修正できます。公開操作を逆にして,必要に応じて再度メディアに発行することができます。ユーザインターフェースに公開取りやめ操作の状態が明記されています。(8頁8行目〜10行目) 」 ク 「簡素化されたトランスコーディング トランスコーディングは,あるコーデックから別のコーデックへの直接的なデジタルからデジタルへの変換であり,オンラインメディアパブリッシングプロセスの重要な部分ですが,その作業はご存じのとおり複雑になることがあります。より簡単にするために,目的の形式を選択して,ホスト型と非ホスト型の両方のトランスコーディングサービスをmpxで直接制御できるようにしています。ファイル変換は裏で自動的に行われます。
・・・ 当社のサーバーは,MPEG-1,MPEG-2,MPEG-4,H.263,H.264,3G2,RealVideo,QuickTime,AVI,3GPP,Windows Mediaなど,さまざまなソースファイル形式からト ランスコードすることができます。出力メディアファイルには,MPEG-1,MPEG-2,MPEG-4,H.263,H.264,3G2,RealVideo,QuickTime,AVI,3GPP,Windows Media,Flashなどがあります。・・・ ファイアウォールの後ろでローカルに独自のトランスコーディングサービスをホストする場合,当社のリモートメディアプロセッサ(RMP)を使用して,トランスコードアプリケーションと連携したり,ファイル操作,DRM暗号化,ファイル転送などの重いタスクを実行したりすることができます。 (9頁32行目〜10頁 」5行目) ケ 「柔軟な配信及び格納 mpxは,ユーザのコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を管理するためのクリーンで効率的なインターフェースを提供し,当社のビデオ管理ソリューションとシームレスに統合することで,メンテナンスの必要性及びサポートコストの削減を実現します。(10頁6行目〜8行目) 」 コ 「mpxは3つのタイプの配信をサポートしており,CDNが提供するサービスに応じて,サーバベースで配信タイプを組み合わせることができます。
■ ストリーミングサーバ又はサムネイル及びプログレッシブダウンロードを提供するサーバを使用して即時再生のためにファイルをプレイヤへストリーミングすること。
■ 格納及びオフライン再生のためにファイルをクライアントにダウンロードすること。
■ オリジンサーバからファイルを引き出し,CDNのエッジキャッシュにファイルを移動すること。
これらのタイプの配信に加えて,アドビフラッシュメディアストリーミングサーバー,アダプティブストリーミング,プログレッシブダウンロード,帯域幅スロットリング,ロードバランシング,デジタルメディアシステムセキュリティも提供しています。
テーラーメイドのソリューションを提供するという当社の目標を維持しつつ,CDN統合に関し拡大するネットワークは,ユーザに最適な配信選択肢の柔軟性を提供します。現在の統合先は以下のものを含みます。
■ AkamaiTechnologies,Inc. ■ Highwinds ■ Amazon Web Services ■ Internap ■ CDNetworks ■ Limelight Networks ■ Cisco Systems ■ StreamGuys ■ EdgeCast Networks ■ Velocix」(10頁14行目〜11頁9行目) サ 「カスタマイズされたプレイヤ thePlatformのプレイヤサービスでは,PC,Mac,携帯電話及びOTTデバイスのために構築された独自のプレイヤを短時間でローンチすることができます。全てホストサービスを通じています。(11頁10行目〜12行目) 」 シ 「主なメリットは以下のとおりです。
・・・ ■ プレイヤは,thePlatformによってホストされます。
プレイヤサービスは,スタンド・アローンのプレイヤ開発キットで提供される全ての標準的な特徴を提供し,コードを介したビルドやホスティングを要しません。
全てのプレイヤについての標準的な特徴には,全画面再生,共有,組み込みコード,自動スタート再生及びパートナープラグインのサポートが含まれています。(11 」頁15行目〜23行目) ス 「収益化 オンラインで広告を管理するには,多くの考慮事項があります。・・・ ブロードバンドビデオコンテンツを収益化するには,5つの鍵となるパスがあります。
・・・ 2.広告ポリシーと統合 ビデオの広告ポリシーは,広告を再生する時間,方法,対象及び広告ソースを定義します。thePlatformは,広告ベース,サブスクリプションベース及びペイパービュー方式をサポートする15社以上の広告及び収益化技術プロバイダーとの統合を提供しています。
・・・ 4.販売 新規のビジネスモデルを迅速に適用するためには,コンテンツの販売方法に柔軟性を持たせる必要があります。thePlatformのシステムには,ユーザが,サブスクリプション,ペイパービュー,VOD,レンタル及びバンドルを含む種々の購入方法でコンテンツを購入できるようにするための広範なサポートが含まれています。また,消費者がコンテンツを購入するためのウェブ及びモバイル店舗の開発もお手伝いします。(11頁38行目〜12頁24行目) 」 セ 「ローカルストレージのセキュリティ Fast and Secure Protocol(FASP)コンテンツの一部(または全部)を,特定のファイル処理とセキュリティ要件を満たす場所に保存して作業することを希望するお客様のために,リモートメディアプロセッサ(RMP)を開発しました。RMPは,ファイアウォールの後ろにあるサーバー上のMicrosoft Windowsサービスとして動作し,ネットワーク上のファイルを効率的かつ安全に管理することができます。・・・」(13頁12行目〜17行目) ソ 「ローカル及びホスト型ファイル処理 thePlatformは,アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)としてビデオ管理システムを運営していますが,様々な運用仕様を持つお客様にサービスを提供しています。当社のRPMソフトウェアは,ハイブリッド環境でビデオパブリッシング業務を実行したい場合に最適です。というのは,ローカルに収容されたテクノロジーとストレージをオンラインでホスティングされたサービスと組み合わせる ことで,効率性を最大限に高め,柔軟性を維持しているからです。
ネットワーク上のサーバにRMPをインストールして,mpxの指示に従ってファイル転送,エンコード,暗号化を管理します。ネットワーク内でRMPを実行することで,インターネット上のソースファイルや中間ファイルの長時間の転送を回避することができます。RMPのハイブリッドソリューションを使用すると,最大ビットレートや最高ビットレートの中間ファイルを処理し,エンコードし,適切な場所に移動する必要がある場合でも,ワークフロー全体をスピードアップすることができます。
メディアをリリースしたときにのみ,ファイルはインターネットを経由してコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)に送られます。そして,RMPはmpxから指示を得ているので,新しいユーザーインターフェースを学ぶ必要はありません。(14頁1行目〜11行目) 」 (2) 上記(1)によると,甲1には,前記第2の3(1)アのように本件審決が認定したものと同様に,次の引用発明が記載されていると認められる(翻訳の修正に伴い,本件審決が認定した引用発明と異なる部分に,便宜上,下線を付する。 。
)「(a)mpxを通じて, (b)取込み, (c)自動パブリッシング及び配信, (d)柔軟な配信及び格納,(e)収益化等の複合的なタスクを実行可能な方法であって, (b)取込みサービスは,以下の2つの方法を提供し, (b1)フィードリーダは,ユーザのフィードを監視し,コンテンツの追加又は変更をアカウントに自動的にアップロードし, (b2)mpxアップローダは,アプリケーションとして動作し,任意の数及びサイズのファイルを選択してバックグラウンドでアップロードし, (c)自動パブリッシング及び配信サービスは,ファイル選択,トランスコーディング及びアセットタイプの適用といったパブリッシングプロセス全体を自動化してユーザに提供し, (d1)柔軟な配信及び格納サービスは,ユーザのコンテンツ配信ネットワーク (CDN)を管理するためのクリーンで効率的なインターフェースを提供し, (d2)mpxは,以下の3つのタイプの配信をサポートし,CDNが提供するサービスに応じて,サーバベースで配信タイプを組み合わせることができ, (d21)ストリーミングサーバ又はサーバを使用して即時再生のためにファイルをプレイヤにストリーミングするタイプ, (d22)格納及びオフライン再生のためにファイルをクライアントにダウンロードするタイプ, (d23)オリジンサーバからファイルを引き出し,CDNのエッジキャッシュに移動させるタイプ, (d3)AkamaiTechnologies,Inc.等とのCDN統合はユーザに配信選択肢の柔軟性を提供し, (e1)収益化は,広告ベース,サブスクリプションベース及びペイパービュー方式をサポートする,広告及び収益化技術プロバイダーとの統合を提供し, (e2)収益化は,ユーザに,サブスクリプション,ペイパービュー,VOD,レンタル,バンドルを含む種々のコンテンツ購入方法を提供し, (f1)プレイヤサービスは,ホストサービスを通じて,OTTデバイスのために構築されたプレイヤを提供し, (f2)プレイヤサービスは,全画面再生,共有,自動スタート再生及びパートナープラグインのサポートを含む, (g)そのビデオ管理システムをアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)として運営される, (a)方法。」 (3) その上で,本願発明8と引用発明を対比すると,それらの間には,本件審決が認定した前記第2の3(2)の一致点及び相違点1〜4が存在すると認められる。
(4) 原告が主張する相違点の看過について ア 原告は,引用発明のmpxプラットフォームの「ASP」と,本願発明 8の「サービス・クラウド」とは技術的に全く異なるものである旨を主張し,その根拠として,クラウドコンピューティングとSaaSは交換可能な用語であるところ, 「サービス・クラウド」又はSaaSと「ASP」とは,ユーザのコンピュータにローカルにソフトウェアをインストールすることの要否,ユーザによるカスタマイズの有無,サーバやデータベースなどがユーザ毎に提供される(シングルテナント構造である)か複数のユーザで共有される(マルチテナント構造である)か,ハードウェアやソフトウェアの管理の主体などで大きく異なっていると主張して,証拠(甲9〜14)を提出する。
イ 上記に関し,原告が提出する証拠のうち,甲10には,SaaSがクラウドコンピューティングとしても知られているという旨の記載があるが,技術的に,SaaSとクラウドコンピューティングが同義であるとまで明記されているものではない。
また,甲9において,SaaSは,クラウドコンピューティングの「Service Models」の一つとして挙げられているにとどまり(甲9の6枚目30行目〜7枚目10行目),甲11及び14には,SaaSがASPの進化したものである旨の記載はあるが,SaaSがクラウドコンピューティングと同義であるとか,ASPはクラウドコンピューティングに含まれないとの記載はない。
これに対して,ASPICのウェブサイト(乙2,3)には,同法人の「ASP」の定義では, 「『ASP』 『SaaS』 と は同義語とみなしている」ことや, 「現在(2009年12月時点) 『クラウド』または『クラウドコンピューティング』という用語が,官民を問わず広く使用されつつある」ところ, 「米国のカリフォルニア大学バークレー校『電子工学およびコンピューターサイエンス学部』が2009年2月に発表した論文の中で行った定義によると, 『クラウドは,データセンターのハードウェアおよびソフトウェアのことである』『クラウドコンピューティングは,Saa ,Sおよびユーティリティ・コンピューティングの集合体のことである』とされて」おり,同法人の「クラウドコンピューティング」の定義では, 「クラウドコンピュー ティングとは,ASP・SaaSの集合体のことである」とされていることなどが記載され, 「ASP」と「SaaS」は,クラウドコンピューティングを構成するものとして一体的に取り扱われている。
また,甲12において,ASPは, 「インターネット又はプライベートネットワークを介してリモートデータセンターから複数のユーザにアプリケーションとコンピュータサービスを配信及び管理する」ものと記載されており(7枚目の20行目〜22行目),甲13において,ASPは, 「ASPインダストリ・コンソーシアム(IDC)により, 『インターネット又はプライベートネットワークを介してリモートデータセンターから複数のユーザにアプリケーションとコンピュータサービスを配信及び管理するビジネス』と定義されている」と記載されている(64頁左欄5行目〜11行目)。
ウ 以上によると,クラウドコンピューティングとSaaSが同義であって,それはASPと技術的に明確に異なるものであるという原告の上記アの主張を採用することはできず,クラウドコンピューティングにSaaSとASPが含まれると解することができる。
エ 本願の特許請求の範囲にも,本願明細書(甲6)にも,本願発明8にいう「サービス・クラウド」が,ASPを排除するものとしてのSaaSである旨を明確に示す記載は見当たらない。
この点について,原告は,本願明細書の段落【0054】【0055】【007 , ,1】〜【0188】並びに【図1】【図7】【図12A】〜【図20】及び【図2 , ,2】等の記載について主張するが,これらは,本願発明の実施例についての記載であり,これらの記載から本願発明8にいう「サービス・クラウド」が原告が上記アで主張するようなものと認めることはできない。
オ そうすると, 「一般にASPによって運営されるシステムは,ネットワーク経由でユーザにソフトウェアを利用させる形態を指す」として,そのように運営される引用発明の構成aの「mpx」が本願発明8の構成Cの「サービス・クラウ ド」に相当するとの本件審決における認定が,誤りであるということはできない。
なお,上記の「ネットワーク経由でユーザにソフトウェアを利用させる形態」について,原告の主張するように,ソフトウェアのインストールの有無等の点で,技術的に更に細かな形態に分類することが可能であるとしても,そのことは,上記認定判断を左右するものではない。
カ 原告のその他の主張について 原告は,ASPICの名称変更の経緯を指摘して,ASPICによる定義が客観的・中立的なものではないと主張するが,単なる名称変更の経緯から,そのようにいうことができないことは明らかである。また,ASPICは, 「クラウドサービス利用者の保護とコンプライアンス確保のためのガイド」 (甲16)において,コンピューティングリソースを「所有する」ものから「利用する」ものへの時代の変化としてクラウドサービスを位置づけているが,甲16には,コンピューティングリソースを「所有する」ものがASPであるとの記載はなく,ASPとクラウドコンピューティングを対比しているとはいえないから,甲16の記載は,乙2及び3の記載と矛盾するものではない。さらに,原告は,引用発明のmpxプラットフォームにASPICによるASPの定義を適用すると矛盾が生じると主張するが,既に判示したとおり, 「一般にASPによって運営されるシステムは,ネットワーク経由でユーザにソフトウェアを利用させる形態を指す」のであるから,引用発明の「mpx」はこの定義に合致するものであり,矛盾することはない。
なお,原告は,本願発明が米国においてされたこと等から,技術用語の意義については,米国等西洋の標準機関,企業,裁判所等で作成された文献に基づいて解釈されるべきであるとも主張するが,既に判示したとおり,米国の裁判例,文献等を考慮して本願発明を解釈しても,上記オのとおり判断することができるものである。
3 甲2〜5に記載されている技術について (1) 甲2技術 ア 甲2の記載事項 甲2は,発明の名称を「ファイル配信装置,ファイル配信方法およびファイル配信プログラム」とする発明に係る公開特許公報であり,甲2には,次の事項が記載されている。
発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,ファイル配信装置,ファイル配信方法およびファイル配信プログラムに関し,特に,ファイルを複数のファイル受信装置にマルチキャストするファイル配信装置,ファイル配信方法およびファイル配信プログラムに関する。
【背景技術】 【0002】 映画コンテンツおよび書籍等のデジタル化により,大容量ファイルの効率的なファイル分配の運用が想定される。
【0005】 拠点数増加およびファイルの大容量化の状況下で,ファイル分配サービスを複数のサーバを設けることなく実現するシステムの提案が要求されている。
発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 ・・・ファイル配信システムは,各クライアント計算機の固定的なスペック値に応じてマルチキャスト先のグループ分けを行なう構成であるため,サーバおよびクライアント間の回線状態,ならびにクライアントの動作状態に応じてファイルを効率的に配信することができないという問題点があった。
【0014】 この発明は,上述の課題を解決するためになされたもので,その目的は,マルチキャスト先のグループ分けを適切に行なうことにより,ファイルを効率的に配信す ることが可能なファイル配信装置,ファイル配信方法およびファイル配信プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】 【0015】 上記課題を解決するために,この発明のある局面に係わるファイル配信装置は,複数のファイル受信装置にファイルを配信するためのファイル配信装置であって,上記複数のファイル受信装置における上記ファイルの受信品質の指標を含む品質情報を取得するための品質管理部と,上記品質管理部によって取得された上記品質情報に基づいて,上記複数のファイル受信装置を複数のグループに分け,上記グループごとに上記ファイルの配信を制御する送信制御部と,上記送信制御部の制御に基づいて,上記グループごとに上記ファイルをマルチキャストするための送信部とを備える。
【0016】 上記課題を解決するために,この発明のある局面に係わるファイル配信方法は,複数のファイル受信装置にファイルを配信するファイル配信方法であって,上記複数のファイル受信装置における上記ファイルの受信品質の指標を含む品質情報を取得するステップと,取得した上記品質情報に基づいて,上記複数のファイル受信装置を複数のグループに分け,上記グループごとに上記ファイルの配信を制御するステップと,上記制御に基づいて,上記グループごとに上記ファイルをマルチキャストするステップとを含む。
【0017】 上記課題を解決するために,この発明のある局面に係わるファイル配信プログラムは,複数のファイル受信装置にファイルを配信するためのファイル配信装置におけるファイル配信プログラムであって,コンピュータに,上記複数のファイル受信装置における上記ファイルの受信品質の指標を含む品質情報を取得するステップと,取得した上記品質情報に基づいて,上記複数のファイル受信装置を複数のグループ に分け,上記グループごとに上記ファイルの配信を制御するステップと,上記制御に基づいて,上記グループごとに上記ファイルをマルチキャストするステップとを実行させる。
【発明の効果】 【0018】 本発明によれば,マルチキャスト先のグループ分けを適切に行なうことにより,ファイルを効率的に配信することができる。
【発明を実施するための形態】 【0021】 <第1の実施の形態> [概要] 本発明の第1の実施の形態では,映像コンテンツなどの大容量ファイルを何千・何万台の拠点すなわちクライアントに分配する運用において,ファイル分配元となるサーバ(ファイル配信装置)は,ファイル分配先となるクライアント(ファイル受信装置)の受信品質および受信性能の情報を収集しながら受信品質および受信性能の少なくとも一方が類似するグループを作成する。そして,サーバは,グループ単位で最適な送信手段を判断し,データ送信を行なう。
【0022】 これにより,クライアントの受信性能を最大限に発揮しながら異常クライアントの発生を抑制し,かつ再送などの不要なデータ送信を抑制することが可能となる。
そして,効率的なデータ送信,および計画的かつスケジュール通りのファイル分配の運用を行なうことが可能となる。
【0035】 図2は,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムの構成,およびファイル配信システムにおけるデータの流れを示す図である。
【0039】 ・・・ファイル受信部12は,ファイル配信部2が最適な配信スケジュールファイル5を作成できるようにするために, ・・・クライアント211の受信性能および受信品質を示す品質情報31を収集する(フローF14)。ファイル受信部12は,コンテンツファイル30の受信を完了するたびに,ファイル配信部2に自己のクライアント211の最新の品質情報31を通知する(フローF15およびフローF22)。
【0040】 ファイル配信部2は,ファイル受信部12から品質情報31を受けて,各クライアント211におけるファイル受信部12が収集した品質情報31を品質情報4として一括管理する(フローF7)。そして,ファイル配信部2は,品質情報4を分析することにより,各クライアント単位で最適な送信手段を決定するとともに類似性能および類似品質のクライアントをグループ化し,マルチキャスト送信の手段および送信先を決定する。
【0045】 ・・・ファイル分配を行なうサーバ201は,複数のクライアント211の受信性能および受信品質を収集して管理することで,各クライアント211の受信性能および受信品質に合わせた最適な送信手段を決定し,常に安定したファイル分配を可能とする。
【0049】 図3は,本発明の第1の実施の形態に係るサーバの概略構成図である。なお,クライアント211の概略構成はサーバ201とたとえば同様であるため,ここでは,サーバ201の構成について代表的に説明する。
【0050】 図3を参照して,サーバ201は,演算処理部であるCPU(Central ProcessingUnit)101と,メインメモリ102と,ハードディスク103と,入力インターフェイス104と,表示コントローラ105と,データリーダ/ライタ106と, 通信インターフェイス107とを備える。これらの各部は,バス121を介して,互いにデータ通信可能に接続される。
【0053】 表示コントローラ105は,表示部の典型例であるディスプレイ110と接続され,ディスプレイ110での表示を制御する。すなわち,表示コントローラ105は,CPU101による画像処理の結果などをユーザに対して表示する。ディスプレイ110は,たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはCRT(CathodeRay Tube)である。
【0058】 図4は,本発明の実施の形態に係るサーバおよびクライアントが提供する制御構造を示すブロック図である。・・・ 【0059】 サーバ201において,ファイル配信部2は,送信スケジュール計画部(送信制御部)32と,データ送信部33と,品質データ管理部34とを含む。・・・ 【0065】 品質データ管理部34は,複数のクライアント211から通知される品質情報31に基づいて,品質情報4を更新して管理する(フローF35)。
【0072】 ・・・各クライアント211におけるファイル受信部12では,データ受信部42が,マルチキャスト送信されるパケットを受信しながらコンテンツファイル30を復元する(フローF43)。この動作と並行して,品質データ収集部43は,クライアント211の受信性能および受信品質を示す品質情報31を収集する(フローF44)。
【0073】 ここで,品質情報31は,たとえば以下の5種類の品質情報A〜Eの少なくともいずれか1つを含む。
【0074】 品質情報A:データ受信性能である。すなわち,クライアント211が安定してデータ受信可能な最大帯域である。パケットロスト率が閾値,たとえば全パケットの1%未満を超えないような受信帯域が設定される。通常は,回線速度に合わせた受信帯域がデータ受信性能になり,データ受信性能は,たとえばFTTH(Fiber ToThe Home)であれば2MBps(メガビット/秒),ADSL(Asymmetric DigitalSubscriber Line)であれば500KBps(キロビット/秒)に設定される。
【0075】 品質情報B:パケット受信率である。コンテンツファイル3を,ネットワーク10経由で送信するために,コンテンツファイル3は複数のパケットに分割される。
コンテンツファイル3の総パケット数とデータ受信部42が受信したパケット数とにより,クライアント211の受信品質を把握することができる。
【0076】 品質情報C:FEC(Forward Error Correction)の符号化率(冗長率)とパケット復元率である。FEC等の誤り訂正方式を採用することにより,クライアント211において一部のパケットをロストしても,受信済みのパケットからロストしたパケットを復元することができる。ロストしたパケットおよび復元できたパケットによってパケット復元率を取得する。パケット復元率は,FEC機能の有効性,および適切な符号化率を判断するための品質情報になる。
【0077】 品質情報D:データ受信時のCPU使用率である。この情報により,クライアント211で別のアプリケーションが動作している場合等における受信品質および受信性能の劣化状況を把握することができる。
【0078】 品質情報E:ディスク資源すなわち記憶部の使用率である。この情報により,クライアント211で別のアプリケーションが動作している場合等における受信品質 および受信性能の劣化状況を把握することができる。
【0079】 クライアント211のファイル受信部12における品質データ通知部44は,ファイル受信完了ごとに,品質データ収集部43によって収集された品質情報31をネットワーク10経由でサーバ201における品質データ管理部34に通知する(フローF42およびF45)。
【0098】 ・・・各クライアント211の品質情報4から得られる,各クライアント211が通常品質において許容範囲内で発生するパケットロスト率,および再送要求の発生時間に基づいて,グループ内全体で発生し得る再送処理に要する時間が再送時間55として計算される。
【0102】 図7は,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムにけるサーバおよびクライアント間のデータの流れを詳細に示す図である。
【0116】 フローF77〜F78は,ファイル分配完了後の処理を示す。すべてのデータを受信したクライアント002,および異常状態により切り離されたクライアント001は,最新の受信性能および受信品質を示す品質情報31を品質データ管理部34に通知する(フローF77)。
【0117】 品質データ管理部34は,各クライアント211の受信性能および受信品質を示す品質情報31を常に最新の情報に更新し(フローF78) 次のコンテンツファイ ,ル配信時の受信性能および受信品質の情報として利用する。
【0118】 ところで,特許文献1に記載のファイル配信システムは,各クライアント計算機の固定的なスペック値に応じてマルチキャスト先のグループ分けを行なう構成であ るため,サーバおよびクライアント間の回線状態,ならびにクライアントの動作状態に応じてファイルを効率的に配信することができないという問題点があった。
【0119】 これに対して,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,ファイル分配を行なうサーバ201が,複数のクライアント211の受信性能および受信品質を収集して管理し,マルチキャスト先のグループごとに最適な送信手段を決定する。より詳細には,サーバ201において,品質データ管理部34が,複数のクライアント211におけるファイルの受信品質の指標を含む品質情報31を取得する。送信スケジュール計画部32が,品質データ管理部34によって取得された品質情報31に基づいて,複数のクライアント211を複数のグループに分け,グループごとにファイルの配信を制御する。そして,データ送信部33が,送信スケジュール計画部32の制御内容すなわち配信スケジュールファイル5に基づいて,グループごとにファイルをマルチキャストする。
【0120】 このような構成により,サーバ201およびクライアント211間の回線状態,ならびにクライアント211の動作状態に応じてマルチキャスト先のグループ分けを適切に行い,ファイルを効率的に配信することができる。
【0121】 すなわち,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,各クライアントの受信品質に合わせた最適な送信手段を決定し,常に安定したファイル分配を可能とする。各クライアントの通常状態の受信品質を把握することにより,許容範囲内の異常状態に対してはQoS機能を実行することでファイルの完全性を保証するとともに,通常とは異なる許容範囲外の異常状態を早期に検出することにより,システム全体への影響を最小限に留める。また,各クライアントの受信品質を管理することにより,クライアント数の増加およびファイルの大容量化に合わせたファイル分配スケジュールを自動的に計画し,また,当該計画通りにファイル分配 を実行することが可能となる。
【0122】 また,クライアント211における異常状態の発生を抑止することにより,異常状態発生時のQoS機能のリカバリ処理に起因するファイル配信の遅延時間を削減できるため,計画通りのファイル分配の運用が可能となる。
【0123】 このように,本発明の第1の実施の形態に係るサーバ201における各構成要素のうち,品質データ管理部34,送信スケジュール計画部32およびデータ送信部33からなる最小構成により,マルチキャスト先のグループ分けを適切に行なうことにより,ファイルを効率的に配信するという本発明の目的を達成することが可能となる。
【0128】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,データ送信部33は,ファイルを複数のパケットに分割して送信する。そして,品質データ管理部34は,複数のクライアント211におけるパケットの受信率を含む品質情報を取得する。
【0130】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,データ送信部33は,ファイルを複数のパケットに分割し,各パケットに対して誤り訂正処理のための符号化を行なって送信する。品質データ管理部34は,複数のクライアント211において受信に失敗したパケットの復元率を含む品質情報を取得する。
【0132】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,送信スケジュール計画部32は,品質データ管理部34によって取得された複数のクライアント211における復元率に基づいて,複数のクライアント211を複数のグループに分け,グループごとにパケットに対する誤り訂正処理のための符号化率を決定す る。
【0134】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,品質データ管理部34は,複数のクライアント211の負荷率を含む品質情報を取得する。
【0136】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,品質データ管理部34は,複数のクライアント211における記憶部であるディスク資源の使用率を含む品質情報を取得する。
【0142】 また,本発明の第1の実施の形態に係るファイル配信システムでは,品質データ管理部34は,複数のクライアント211におけるファイルの受信品質の指標,および複数のクライアント211の受信性能の指標を含む品質情報を取得する。そして,送信スケジュール計画部32は,品質データ管理部34によって取得された品質情報の示す受信品質および受信性能に基づいて,複数のクライアント211を複数のグループに分け,グループごとにファイルの配信を制御する。
【0143】 このような構成により,サーバおよびクライアント間の回線状態,クライアントの動作状態,ならびに各クライアントの固定的なスペック値に応じてマルチキャスト先のグループ分けを行なうことができるため,より効率的なファイル配信を実現することができる。
【図2】 【図3】【図4】 イ 甲2技術 上記アによると,甲2には,前記第2の3(1)イ(ア)のとおり本件審決が認定した甲2技術が記載されていると認められる。
(2) 甲3技術 ア 甲3の記載事項 甲3は,発明の名称を「情報送信システム,情報処理装置,情報管理装置及び情報送信方法」とする発明に係る公開特許公報であり,甲3には,次の事項が記載されている。
【0001】 本発明は,ピアツーピア(P2P,Peer to Peer)システムに係る情報送信システム,情報処理装置,情報管理装置及び情報送信方法に関するものである。
【0033】 尚,ピア1A〜1Iは,ここでは,例えば,パーソナルコンピュータとする。しかし,ピア1A〜1Iは,パーソナルコンピュータなどの各種コンピュータのみならず,PDA(Personal Digital Assistance),携帯電話,電話,FAX,プリンタ,コピー機,プリンタ機能とコピー機能を含む複数の機能を備えた複合機,など のネットワーク接続可能なハードウェア,または,これらの機能を実現するソフトウェアであっても良い。以下では,ピア1A〜1Iを区別する必要がない場合には,その符号「A」〜「I」を省略して説明する。
【0045】 [第2の実施の形態] 次に,本実施の形態に係る情報送信システムの第2の実施の形態について説明する。なお,上述の第1の実施の形態と共通する部分については,同一の符号を使用して説明したり,説明を省略したりする。
【0046】 (1)構成 図5は,本実施の形態にかかる本実施の形態に係る情報送信システムを適用可能なP2PネットワークNT2の全体構成例を示す図である。本実施の形態にかかるP2PネットワークNT2の構成は,上述の第1の実施の形態にかかるP2PネットワークNT1の構成とは以下の点で異なる。P2PネットワークNT2は,ピア1の持つデータを管理する情報管理サーバ5が接続された,いわゆるハイブリッドP2Pネットワークの形態となっている。この情報管理サーバ5は,上述の第1の実施の形態においてピア1Aが有していたメタデータ管理部の機能を有する。
【0047】 ここで,ピア1及び情報管理サーバ5の機能的構成について説明する。図6は,ピア1A,1B及び情報管理サーバ5の機能的構成を例示するブロック図である。
ピア1Bは上述の第1の実施の形態と略同様であり,ピア1C〜1Iの内部構成はピア1Bと略同様である。尚,ピア1B〜1Iのメッセージ制御部101は,ユーザの所望するデータ,もしくは,あらかじめ指定されていたデータに対する検索リクエストを情報管理サーバ5に対して送信する。そして,メッセージ制御部101は,当該検索リクエストに応じた検索結果を情報管理サーバ5から受信する。
【0048】 ピア1Aの構成は,上述の第1の実施の形態では有していたメタデータ管理部112を有さない構成である。また,メタデータ生成部111は,配信対象のデータを新たに生成した場合,当該データのメタデータを新たに生成する。送信部113は,メタデータ生成部111が新たに生成したメタデータを情報管理サーバ5に送信する。また,メタデータ生成部111は,データ部115に記憶されたデータを更新した場合,当該メタデータを更新する。メッセージ制御部114は,データ部115に記憶されたデータをメタデータ生成部111が更新した場合,当該データが公開可能である場合に,当該メタデータ生成部111が更新したメタデータを送信部113を介して情報管理サーバ5に送信する。尚,データ部115に記憶されるデータには,例えば,当該データを公開するか否かを示す公開フラグが対応付けられており,メッセージ制御部114は,この公開フラグを参照して当該データが公開可能か否かを判断する。また,メッセージ制御部114は,メタデータにピア1Aの位置情報と,データ開示条件とを含め,当該メタデータを送信部113は情報管理サーバ5に対して送信する。位置情報とは,例えば,IPアドレスなどである。データ開示条件とは,データを送信する対象に関する条件である。具体的には,データ開示条件は,その対象となるピア1やピアグループ3について,データの送信が許可されるピア1や,データの送信が不可とされるピア1や,データの送信が許可されるピアグループや,データの送信が不可とされるピアグループを指定するものである。このデータ開示条件は,ユーザにより予め設定される。更に,メッセージ制御部114は,情報管理サーバ5に対して既に送信したメタデータを削除する場合,削除を指示する削除指示メッセージを送信部113を介して情報管理サーバ5に送信する。この削除指示メッセージに応じて情報管理サーバ5からメタデータが削除される。
【0049】 情報管理サーバ5は,受信部500と,送信部501と,メッセージ制御部502と,メタデータ管理部503と,メタデータ部504とを有する。受信部500 は,他のピア1から送信される検索リクエストやメタデータ購読要求を受信したり,ピア1Aから送信されたメタデータを受信したりする。送信部501は,メタデータ購読要求に従って,送信対象のデータの更新に伴い更新したメタデータを,当該メタデータ購読要求を送信した他のピア1に対して送信する。メタデータ部504は,受信部500が受信したメタデータを記憶する。メッセージ制御部502は,P2PネットワークNT1においてデータ共有サービス,検索サービスなどの各種サービスを提供する。例えば,メッセージ制御部502は,ピア1B〜1Iのいずれか(ここでは,検索要求ピアとする)から検索リクエストを受信すると,メタデータ部504に記憶されているメタデータを用いて該当のデータを検索する。メタデータ管理部503は,メタデータ部504に記憶されるメタデータを管理する。例えば,メタデータ管理部503は,ピア1Aから送信されたメタデータを受信部500を介して受信した場合,メタデータ部504に記憶されているメタデータを更新する。また,メタデータ管理部503は,検索リクエストに適合するデータのメタデータにデータ開示条件が含まれる場合,検索要求ピアがデータを開示条件を満たすかを判断し,当該判断結果が肯定的である場合に,当該メタデータを検索結果に含めて送信することを決定し,送信部501は当該検索結果をピア1Bに対して送信する。
【0050】 ここでは,更に,メタデータに対して,上述のデータ開示条件とは異なるデータ開示条件が設定される。これは,例えば,ネットワーク管理者により設定される。
ここでは,上述のメタデータに含まれるデータ開示条件と,ネットワーク管理者が設定するデータ開示条件とを区別するため,前者をデータ開示条件1とし,後者をデータ開示条件2とする。データ開示条件2は,例えば,メタデータに含まれる属性のうち「データのカテゴリ」に‘社外秘’を示す値がセットされている場合,ピアグループ3A〜3Cのうち社員グループとして予め設定されているピアグループに対してデータの開示を許可するなどの条件である。このように,上述のデータ開 示条件1をユーザが設定しない場合であっても,データ開示条件2を設定することで,データ開示条件を適切に設定することができ,データの開示範囲を適切に制限することができる。このようなデータ開示条件2は,例えば,メタデータ部504に記憶されている。メタデータ管理部503は,メタデータ部504にアクセスして,処理対象のメタデータに対してこのようなデータ開示条件が設定されている場合,検索要求ピアが当該データ開示条件を満たすかどうかを判断し,当該判断結果が肯定的である場合に,当該メタデータを検索結果に含めて検索要求ピアに対して送信する。
【0051】 また,メタデータ管理部503は,ピア1Aから送信された削除指示メッセージを受信部500が受信した場合,当該削除メッセージに従って,メタデータ部504に記憶されたメタデータを削除する。
【0052】 (2)動作 次に,本実施の形態にかかるピア1が行うデータの検索及び取得処理の手順について説明する。ピア1が行うデータの検索及び取得処理の手順は,図4に示したものと同様である。図7は,ピア1が行うデータの検索及び取得処理において情報管理サーバ5が行う処理の手順を示すフローチャートである。ここでは,データの検索を要求する検索要求ピアをピア1Bとして説明する。
【0053】 ここでは,図4のステップS1で,ピア1Bは,ユーザの所望するデータ,もしくは,あらかじめ指定されていたデータの検索を要求する検索リクエストを情報管理サーバ5に送信する。
【0054】 一方,図7において,情報管理サーバ5は,当該検索リクエストを受信すると(ステップS20,ステップS21:YES),メタデータ部504に記憶されているメ タデータを用いて該当のデータを検索する(ステップS22) ここで情報管理サー 。
バ5は,該当のデータに対するメタデータが見つかったとき,次いで,条件適合判断処理を行う(ステップS23)。条件適合判断処理では,情報管理サーバ5は,当該メタデータにデータ開示条件1が含まれる場合又は当該メタデータに対してデータ開示条件2が設定されている場合,ピア1Bがデータ開示条件1又はデータ開示条件2を満たすかを判断し,当該判断結果が肯定的である場合に(ステップS24:YES) 当該メタデータを検索結果に含めて当該ピア1Bに対して送信する , (ステップS25)。
【0055】 図4に戻り,ピア1Bは,情報管理サーバ5から送信された検索結果を受信すると,当該検索結果から所望のデータを選択する。ここでは,選択したデータがピア1Aに保持されているものとすると,ピア1Bは,当該1Aに対して該当のデータの送信を要求する(ステップS2)。そして,ピア1Bは,当該要求に従ってピア1Aから送信されたデータを取得する(ステップS2)。その後,ピア1Bは,ステップS2で取得したデータを最新の状態に保持するため,当該データのメタデータ購読要求を情報管理サーバ5に対して送信する(ステップS3)。
【0056】 一方,図7に戻り,情報管理サーバ5は,メタデータ購読要求を受信すると(ステップS20,ステップS26:YES),対象のデータに対してメタデータ部504に記憶されているメタデータの更新状態を監視し,当該メタデータが更新された場合には,次いで,上述と同様にしてステップS23の条件適合判断処理を行う。
尚,メタデータ部504に記憶されているメタデータの更新は,後述するピア1Aにおいて更新されたメタデータが情報管理サーバ5に送信され情報管理サーバ5が当該メタデータをメタデータ部504において更新することにより行われる。情報管理サーバ5は,条件適合判断処理における判断結果が肯定的である場合に(ステップS24),当該メタデータをピア1Bに対して送信する(ステップS25)。
【0057】 図4に戻り,ピア1Bは,当該メタデータを受信すると(ステップS4),当該メタデータに対応するデータの送信をピア1Aに対して要求し,当該要求に応じたピア1Aから当該データを取得する(ステップS5)。また,P2PネットワークNT2において配信対象のデータを記憶するファイルサーバを別途備え,ピア1Bは,当該ファイルサーバから該当のデータを取得すように構成しても良い。また,該当のデータはピア1Bが予め記憶しているものであっても良い。
【0058】 次に,ピア1Aが行うデータ/メタデータ生成処理の手順について説明する。図8は,ピア1Aが行うデータ/メタデータ生成処理の手順である。ピア1Aは,送信対象のデータを生成してこれをデータ部115記憶させた後(ステップS40),当該データに対するメタデータを生成し(ステップS41),これを情報管理サーバ5に送信する(ステップS42)。そして,ピア1Aは,データ部115に記憶させたデータを更新したとき,当該データに対するメタデータを更新し(ステップS43),これを情報管理サーバ5に送信する(ステップS44)。
【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】 イ 甲3技術 上記アによると,甲3には,前記第2の3(1)イ(イ)のとおり本件審決が認定した甲3技術が記載されていると認められる。
(3) 甲4技術 ア 甲4の記載事項 甲4は,発明の名称を「USER FEEDBACK-BASED SELECTION AND PRIORITIZING OFONLINE ADVERTISEMENTS」とする国際公開公報であり,甲4には,次の事項が記載されている(訳文は,原告提出の訳による。。
) [0001] この発明は,オンラインサービスにおいて,ユーザに広告を選択及び提示することに関する。特に,この発明は,オンラインサービスにおいて,以前の広告に対するユーザのフィードバックに基づいて,ユーザに広告を選択及び提示することに関する。
[0063] 図3Aは,一実施形態に従い,広告を閲覧し,かつ,広告に関するフィードバック応答を受け入れるためのユーザ装置310を説明するブロック図である。ユーザ装置310は,オンラインサービスコンピューティング装置108からの広告及びコンテンツアイテムを受信しかつ該広告及び該コンテンツアイテムにアクセスするためにユーザによってアクセスされる。ユーザ装置310は,通信能力を持つ種々の装置であってよく,例示に限定されないが,デスクトップコンピュータ,ラップトップコンピュータ,携帯電話,セットトップボックス及びゲーム機を含む。ユーザ装置310は,単一のユーザによって使用される個人用装置(例えば個人用ラップトップコンピュータ) 又は, , 複数のユーザによって使用される共有/公共装置(例えばインターネットキオスク)であってよい。
[0070] 一実施形態において,サービスインタフェース364は,インターネットブラウザとして実施される。サービスインタフェース364は,コンテンツアイテムを受信し,かつ,例えば図3Bを参照して以下に詳細に説明するようなグラフィカルユーザインタフェース画像を表示する。別の実施形態において,サービスインタフェース364は,メディアコンテンツアイテムを取り込みユーザに提 示するためのアプリケーション(例えばメディアプレイヤ)として実施される。サービスインタフェース364は,広告を受信して,例えば図3Cを参照して以下に詳細に説明するようなサービスインタフェース364のグラフィカルユーザインタフェースにより占められているスクリーンの一部領域に広告を表示する。
広告を表示してフィードバック応答を受けるユーザインタフェースの一例 [0071] 図3Bは,一実施形態に従い,インターネットブラウザにより取り込まれて表示されるコンテンツアイテムを説明するグラフィカルユーザインタフェース画像である。図3Bのコンテンツアイテムは,多数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテムを供給するオンラインソーシャルネットワーキングサービスから受信されたものである。ユーザコンテンツアイテムは,ナビゲーション領域380,ニュースフィード表示領域382及び広告領域384を備える。ナビゲーション領域380は,ユーザがオンラインサービスにより提供される別のサービスに移動できるようにする。種々のタブ(例えば“ニュースフィード”“アプリケーション”“写真”“リンク”“ビデオ”“もっと見る” , , , , , )がクリックされると,ブラウザは,クリックされたタブに応じたコンテンツアイテムを要求する要求をオンラインサービスコンピューティング装置108に送信して,かつ,受信されたコンテンツアイテムを処理することによりスクリーン上に画像を表示する。
[0072] ニュースフィード表示領域382は,オンラインサービスコンピューティング装置108経由でコンテンツを共有しているユーザ又は「友達」により供給されたニュースフィードを表示する。コンテンツアイテム370にアクセスするユーザ「ジョー・スミス」は,友達として「ジュリエッタ」と「サブラ‐アンヌ」を持っており,ユーザインタフェース領域371にメッセージを入力すること又はメディアファイルを追加することにより,これら友達とメッセージやメディアファイル(例えば画像又はビデオファイル)を供給できる。ソーシャルネットワーキングサービスにおけるニュースフィードのアップロード及び表示は,例えば, 「ソ ーシャルネットワーキング環境におけるメンバーの対話に基づくメディアコンテンツのニュースフィードの通信」と題された,2006年8月11日に出願された米国特許出願11/503,242号に記載されたとおりに実行できる。なお,この出願は参照によりそのまま本出願に組み込まれる。
[0073] 広告領域384は,3つの広告372A,374A及び376Aを表示する。各広告の下には,フィードバック応答アイコンが表示される。特に,各領域372B,374B及び376Bは,好意的又は肯定的フィードバック応答を示す“サムアップ”アイコン及び好意的でない又は否定的フィードバック応答を示す“サムダウン”アイコンを含む。ユーザが“サムアップ”又は“サムダウン”をクリックしたとき,インターネットブラウザは,オンラインサービスコンピューティング装置108に,ユーザからの肯定的又は否定的フィードバック応答を示す信号を送信する。以前に別のユーザから受信した肯定的又は否定的フィードバック応答の数もまた,領域372B,374B及び376B内の“好き”及び“嫌い”文字に隣接して表示される。
[0074] 図3Bに示すコンテンツアイテムは例示にすぎない。他の種々のレイアウトの他の種々のコンテンツアイテムが,インターネットブラウザ320を用いてスクリーン320に表示され得る。例えば,インターネットブラウザによりアクセスされるコンテンツアイテムは,検索語に対する検索結果,オンラインニュース記事及びオンラインショッピングに関する情報を含む。
図3B イ 甲4技術 上記アによると,甲4には,前記第2の3(1)イ(ウ)のとおり本件審決が認定した甲4技術が記載されていると認められる。
(4) 甲5技術 ア 甲5の記載事項 甲5は,発明の名称を「画像処理装置,画像処理システム,および画像処理プログラム」とする発明に係る公開特許公報であり,甲5には,次の事項が記載されている。
【0001】 本発明は,画像データに画像処理を施す画像処理装置,画像処理システム,およびコンピュータシステム内で実行されることによりそのコンピュータシステムを画像処理装置として動作させる画像処理プログラムに関する。
【背景技術】 【0002】従来,印刷等の分野において,スキャナなどで原画像を読み取って画像データを取 得し,画像処理装置で画像データに所定の画像処理を施した後,プリンタなどで画像データに基づく画像を出力する画像処理システムが広く適用されている。このような画像処理システムでは,オペレータによって,ハイライト点やシャドウ点の濃度や,カラーコレクションや色調変換の度合いなどといった画像の補正量が設定され,設定された補正量に従った画像処理が行なわれる。画像の補正量が適切に設定されることによって,画像データが表わす画像を見た目に好ましい色の画像に補正することができる。
【0003】 ところで,画像の補正量を適切な値に設定する作業は,熟練した技術が要求されるものであったが,近年では,画像データが表わす画像の色の階調などといった特性を解析し,自動的に画像処理を実行するオートセットアップが広く知られている(例えば,特許文献1,および特許文献2参照)。オートセットアップにおいては,印刷物の印象を決定する大きな要素である人物顔,青空,夕景などといったシーンごとに目標の濃度値などといった処理パラメータが予め用意されており,画像データが表わす画像のシーンが解析され,その解析結果と目標のパラメータとに基づいて画像の補正量が算出されて,その補正量に従った画像処理が実行される。オートセットアップを適用することによって,画像処理について詳しい知識がなくても,画像の色を見た目に好ましい色に補正することができるうえ,画像ごとに逐一補正量を設定する手間を省くことができる。
【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上述したように,オートセットアップを適用することによって,画像データが表わす画像が,一般的に好ましいと考えられている色の画像に補正されるが,オペレータによっては, 「人物の顔をもう少し明るくしたい」「空の色が明るすぎる」など ,と感じることもある。このような場合,オペレータが画像の補正量を手動で設定し直すとすると,熟練した技術を要するうえ,複数の画像に画像処理を施す場合には, それら複数の画像それぞれに対して補正量を設定する必要があり,大変手間がかかってしまうという問題がある。
【0005】 本発明は,上記事情に鑑み,画像データが表わす画像を,好みが反映された,見た目に好ましい色合いの画像に容易に補正することができる画像処理装置,画像処理システム,および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【0022】 図1は,本発明の一実施形態が適用された入力_編集_出力システムの全体構成図である。
【0023】 ここには,本発明の画像処理装置の一実施形態として動作する1台の画像処理サーバ100と,3台のクライアントマシン200,210,220と,2台のRIP(Raster Image Processor)サーバ300,310と,1台のスキャナ400と,3台の画像出力用のプリンタ600,610,620とが示されている。
【0042】 この図4には,画像処理装置100_1´,およびジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´で構成された画像処理システムが示されており,画像処理装置100_1´は,図3に示す画像処理プログラム160が図1に示す画像処理サーバ100にインストールされて実行されることによって構成されるものである。また,ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´は,図3に示すジョブチケット編集プログラム150が図1に示す画像処理サーバ100,およびクライアントマシン200,210,220にインストールされて実行されることにより構成されるものである。
【0043】 図4に示す画像処理装置100_1´は,画像取得部11,画像解析部12,濃度取得部13,濃度補正値統合部14,画像処理部15,確信度算出用メモリ21, 人物顔用パターンメモリ22,および目標濃度値メモリ23を備えている。図3に示す画像処理プログラム160を図1に示す画像処理サーバ100にインストールすると,画像処理プログラム160の画像取得部161は,画像処理装置100_1´に示す画像取得部11を構成し,以下同様に,画像解析部162は画像解析部12を構成し,濃度取得部163は濃度取得部13を構成し,濃度補正値統合部164は濃度補正値統合部を構成し,画像処理部165は画像処理部を構成し,保存部166は,確信度算出用メモリ21,人物顔用パターンメモリ22,および目標濃度値メモリ23を構成する。
【0048】 ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´は,画像処理装置100_1´で行われる画像処理において,入力画像データが格納された入力フォルダ,画像処理に使用するパラメータ,画像処理手順,画像処理後の画像データを格納する出力フォルダなどを記述したジョブチケットを編集する。画像処理装置100_1´は,ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´で編集されたジョブチケットに従って,画像データに画像処理を施す。
また,本実施形態においては,画像処理装置100_1´に,画像データが表わす画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正するオートセットアップ機能が搭載されている。
【0049】 ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´を構成する濃度調整部202は,クライアントマシン200,210,220のマウスやキーボードなどがその役割を担うものであり,画像処理装置100_1´の目標濃度値メモリ23に予め記憶された画像の被写体種類ごとの目標濃度値を調整して,新たな目標濃度値を設定する。設定された新たな目標濃度値は,目標濃度値メモリ23に記憶される。
【0050】 ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´を構成するジョブチケット作成・提供部201は,オペレータの操作に応じてジョブチケットを編集し,編集したジョブチケットを画像処理装置100_1´に送って,画像処理装置100_1´に画像処理の実行を要求する。ジョブチケット編集装置100_2´,200´,210´,220´から送られたジョブチケットは,画像処理装置100_1´の登録メモリ(図示しない)に登録される。
【0051】 画像処理装置100_1´の画像取得部は,ジョブチケットが登録されると,そのジョブチケットに記述された入力フォルダから入力画像データを取得する。取得された入力画像データは,画像解析部12,濃度取得部13,および画像処理部15のそれぞれに与えられる。
【0052】 画像解析部12は,与えられた入力画像データが表わす入力画像中に,あらかじめ定められた複数の被写体種類のそれぞれが,どの程度の割合(確からしさ)で含まれているかを表す確信度を,被写体種類ごとに算出する。画像解析部12には,確信度算出用メモリ21および人物顔用パターンデータ・メモリ22が接続されており,これらのメモリ21,22に記憶されたデータが用いられて,画像解析部12によって,入力画像データによって表される入力画像中に含まれる被写体種類ごとの確信度が算出される。画像解析部12における確信度算出処理,ならびに確信度算出用メモリ21および人物顔用パターンデータ メモリ22の詳細は後述する。
・ 【0053】 濃度取得部13は,入力画像の濃度補正のための値(濃度補正値)を,入力画像データに基づいて算出する回路である。濃度取得部13では,上述した複数の被写体種類のそれぞれについての目標濃度値が記憶された目標濃度値メモリ23が接続されている。濃度取得部13は,目標濃度値メモリ23に記憶されている複数の被写体種類のそれぞれについての目標濃度値に基づいて,被写体種類ごとに濃度補正 値を算出する。濃度取得部13の処理の詳細は後述する。
【0054】 濃度補正値統合部14は,濃度取得部13によって算出された,被写体種類ごとの濃度補正値を,画像解析部12において算出された被写体種類ごとの確信度,およびクライアントマシン200,210,220などから入力される被写体種類ごとの重要度に基づいて統合する回路である。確信度が大きい被写体種類についての濃度補正値が大きく反映され,かつ重要度が大きい被写体種類についての濃度補正値が大きく反映された,統合された濃度補正値が,濃度補正値統合部14において算出される。濃度補正値統合部14の処理の詳細は後述する。
【0055】 画像処理部15は,濃度補正値統合部14で算出された統合濃度補正値に基づいて,入力画像データの濃度を補正する。画像処理部15によって濃度補正された画像データが,図2の通信インタフェース117を介して画像処理装置100_1´からRIPサーバ300,310に送られ,さらに,プリンタ610,620で画像データに基づいた画像がプリント出力される。
イ 甲5技術 上記アによると,甲5には,前記第2の3(1)イ(エ)のとおり本件審決が認定した甲5技術が記載されていると認められる。
4 相違点1に係る構成の容易想到性について (1) 本件審決は,引用発明の構成b1の「コンテンツ」及び構成f1の「OTTデバイス」が,それぞれ本願発明8の「デジタル・コンテンツ・アイテム」及び「ディスプレイ装置」に相当するという判断を前提として,クライアントに対してファイルを配信する方法において配信の効率化を図ることは一般的課題であるから,引用発明に甲2技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるとし,引用発明に甲2技術を適用した発明は,OTTデバイスの「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構成を備える方法ということがで き,同構成は,構成Hの「1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構成に相当すると判断した。
(2) しかし,前記3(1)アの甲2の記載(段落【0002】【0005】【00 , ,12】【0014】〜【0018】【0072】〜【0079】【0116】〜【0 , , ,123】等。特に,品質情報を具体的に記載した段落【0073】〜【0078】)からすると,甲2技術は,ファイルの効率的な配信のための技術であって,そこで取得される品質情報は,クライアント計算機の性能や動作状態,あるいは回線状態などに関するものと認められる。なお,甲2の段落【0049】【0050】【0 , ,053】及び【図3】からすると,甲2において,サーバ201と同様の概略構成であり得るクライアント211がディスプレイ装置と接続されることは示唆されているが,他方で,ディスプレイ110は,あくまで,サーバ201に備わる表示コントローラ105と接続される外部装置として取り扱われており,そのような外部装置であるディスプレイ110から何らかの情報を取得することについての記載は見当たらない。
したがって,甲2技術における「受信品質の指標・・・および受信性能の指標を含む品質情報」に,ディスプレイ装置の品質等の情報が含まれているとまでは認められず,その点に係る技術常識等を認めるべき他の証拠もない。
(3) そうすると,仮に,引用発明の構成b1の「コンテンツ」及び構成f1の「OTTデバイス」が,それぞれ本願発明8の「デジタル・コンテンツ・アイテム」及び「ディスプレイ装置」に相当するという判断を前提とし,クライアントに対してファイルを配信する方法において配信の効率化を図ることが一般的課題であると解して,引用発明に甲2技術を適用し,OTTデバイスの「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構成を備えるものとしたとしても,直ちに「ディスプレイ装置」の「品質情報を取得する」ことまでをも含む構成になるということはできず,本願発明8の構成Hの「1つまたは複数のディスプレイ装 置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構成に相当するものになるとはいえない。
よって,本件審決における相違点1に係る容易想到性の判断には,誤りがある。
以上の認定判断に反する被告の主張は,採用することができない。
5 相違点2に係る構成の容易想到性について (1) 本件審決は,引用発明と甲3技術は,送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法である点において共通することから,引用発明に甲3技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるとし,引用発明に甲3技術を適用した発明は,OTTデバイス(ピア1A)から他のOTTデバイス(ピア1B)に対して, 「ピア1Bは,ピア1Aに該当のデータの送信を要求する」構成を備える方法ということができ,当該構成は,構成Jの「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構成に相当すると判断した。
(2) しかし,甲3技術がピアツーピアシステムに係るものである(構成i)のに対し,引用発明は,コンテンツの取込み,自動パブリッシング,配信及び格納並びに収益化等の複合的なタスクが実行可能であるもので,それ自体が主体的にコンテンツの取込みや配信等を行う方法であるものと解されるから,甲3技術と引用発明とは,少なからず技術分野を異にするものというべきである。この点, 「送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法」という広い技術分野に属することから直ちに,それらの関係性等を一切考慮することなく,引用発明に甲3技術を適用することを容易に想到することができるものとは認め難い。
そして,甲3に,他に,甲3技術を引用発明に適用する動機付けや示唆となる記載があるとも認め難い。
よって,本件審決における相違点2に係る容易想到性の判断には,誤りがある。
(3) 被告は,本願明細書(甲6)の段落【0130】の記載を踏まえて,本願発明8の構成Jにいう「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」という文言の意味について, 「デジタル・コンテンツ・アイテム」が「外部コンテンツ・ゲートウェイ」を経由するか否かにかかわらず, 「外部コンテンツ・ゲートウェイ」の機能「により転送する」ことをいうと主張するが,上記(2)の判断は,本願発明8の構成Jにいう「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」を上記の被告が主張するように理解したとしても左右されるものではない。
6 相違点3に係る構成の容易想到性について (1) 本願発明8の構成Kの「ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」については,構成Kの文言によると,サービス・クラウドに備えられ,コンテンツをサービス・クラウドの外部の供給源からディスプレイ装置に提供する機能を有するものと認められ(前記1(2)ウ(ク)),また,「ライブ・データ・フィード」という用語からすると,外部の供給源から供給されるデータには「ライブ」の要素が含まれるものと解される。
しかるに,甲4技術が,上記の「ライブ」の要素が含まれるデータの供給に関する構成を含むものであるかは明らかでない。
したがって,引用発明に甲4技術を適用しても,直ちに本願発明8の構成Kに至るものかは,明らかでない。
(2) 本件審決は,甲4技術の構成kの「オンラインサービスコンピューティング装置108」が,本願発明8の「ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当すると判断したが,上記(1)の点に関し,この判断の根拠が明確にされているとはいえない。
また,被告は,甲4技術の「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,コンテンツアイテムを外部供給源 「オンラインソーシャルネットワーキングサ (ービス」 から受信してユーザ装置310に送信するから, ) データを一方から他方へ転送する制御機能を有する「ゲートウェイ」に相当するとした上で,データは「多 数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテム」や「コンテンツを共有しているユーザ又は『友達』により供給されたニュースフィード」を含むから,上記ゲートウェイは「サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」といえると主張するが,上記(1)の点に関し,その根拠が明確にされているとはいえない。
(3) 以上の点は,原告が取消事由として主張するものではないが,特許庁において更なる審理判断がされることを考慮して判示するものである。
7 相違点4に係る構成の容易想到性について (1) 引用発明と甲5技術は,いずれもサーバにコンテンツを取り込む方法に係るものであるという点で技術的な共通性を有するといえ,引用発明に甲5技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
そして,引用発明に甲5技術を適用した発明は,OTTデバイスに表示するための「画像データが表す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正する」構成を備える方法ということができ,この構成は,本願発明8の構成F2の「前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成に相当するということができる。
よって,相違点4に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(2)ア 原告は,本願発明における解析は,ユーザが視聴するための,映画やテレビ番組等のコンテンツをディスプレイ装置に送信するために行われるものであるところ,ユーザにおいてそれらの画像の特定の部分(顔等)を調整したいという要求はないから,甲5技術に係る「画像データが表す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正する」構成は,本願発明8の構成F2には相当しないと主張する。
しかし,本願発明8の構成F2は,「ディスプレイ装置上に表示するための」「デ ジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」というもので, 「解析」の具体的な内容については記載されていない。そして,本願発明8の構成中に, 「デジタル・コンテンツ・アイテム」について,原告の主張するような内容のものに特定する旨の記載もなく,他に本願発明8の構成F2の「解析」を原告の主張するように限定して解釈すべき理由はない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,採用することができない。
イ 原告は,本願明細書の段落【0119】の記載から,本願発明8の構成F2の「解析」は,ビジュアル及び音響コンテンツの両方に対して行われ得るもので,甲5技術の「解析」とは異なる旨を主張するが,本願の特許請求の範囲の請求項8には, 「音」について何ら記載がなく,上記アのような記載があるのみであるから,本願発明8の構成F2の「解析」が音響に対しても行われるものと解することはできない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ 原告は,引用発明と甲5技術とを組み合わせる動機付けはなく,シーンごとに画像の特定の部分を調整するために,オペレータの好みに従って事前に手動で入力される「目標濃度」を用い,オートセットアップ機能を介して,画像を調整するという甲5技術の「解析」の特徴は,特定の装置の技術的仕様に画像をより良好に適合させるために画像の調整を行う本願発明の「解析」とは対照的であって,甲5技術の「解析」を本願発明に組み込むことは,無意味であり,逆効果であると主張するが,上記アで指摘したのと同様,本願発明8における「解析」について,特定の装置の技術的仕様に画像をより良好に適合させるために画像の調整を行うためのものと限定して解釈すべき理由はないから,原告の上記主張も,前提を欠くものであって採用することができない。
8 まとめ 以上によると,原告主張の取消事由のうち,相違点の認定の誤り及び相違点4に係る容易想到性の判断の誤りは,いずれも理由がないが,相違点1に係る容易想到 性の判断の誤り及び相違点2に係る容易想到性の判断の誤りは,いずれも理由がある。
結論
よって,原告の請求は理由があるから,本件審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 中島朋宏
裁判官 勝又来未子