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事件 平成 27年 (ワ) 8704号 損害賠償請求事件

原告 P1
同訴訟補佐人弁理士 伊藤晃
被告株式会社中広
同訴訟代理人弁護士 家田真吾
同訴訟代理人弁理士 廣江武典
同 服部素明
同補佐人弁理士 吉田哲基
同 廣江政典
同 橋本哲
同 谷口直也
同 中山公博
同 隅田俊隆
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2016/05/12
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成27年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,原告が被告に対し,別紙被告システム目録記載のシステム(以下「被告システム」という。)を構築するなどの被告の行為が,原告の有する特許権を侵害するものであるとして,平成23年1月から平成26年1月までの特許権侵害不法行為に基づく損害額4620万円のうち2000万円(補佐人弁理士費用を含む。)及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実) (1) 当事者 ア 原告は,肩書地に住所を有する個人であり,後記(2)の特許権を有している。
イ 被告は,メディア事業や広告SP事業(セールスプロモーション)等の広告代理業を行う株式会社であり,当該メディア事業の一環として,講演(講師依頼,講師派遣,企画,運営等),イベント(行政各種団体主催,企業・団体主催の記念事業・記念イベント等あらゆるジャンルのイベントの企画,運営)及びコンサート(各種団体主催の記念事業コンサート,あらゆるジャンルの音楽の企画・提案・運営)等の各種サービスの提供をすることを事業内容とするイベントセミナー事業を行っている。
(2) 原告の特許権(甲1,2) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」といい,本件特許権の特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項2に係る発明を「本件発明2」,両発明を併せて「本件発明」という。)を有している。
特許番号 第3807897号 特許出願日 平成12年05月22日 登録日 平成18年05月26日 発明の名称 電子ショッピングシステム 特許請求の範囲 【請求項1】 加盟店を傘下に持つ本部が使用するサーバーと,加盟店が募集した会員が使用するクライアント端末とがインターネットを介して接続されるフランチャイズ制の電子ショッピングシステムであって,上記サーバーは,加盟店が販売する商品の情報を蓄積した商品情報記憶手段と,ホームページを作成するときに用いる各加盟店用の店名ロゴを記憶したデータベースと,ホームページを作成するホームページ作成手段と,該作成手段で作成したホームページを発信するホームページ発信手段と,このホームページを通じてクライアント端末からの注文を受信する受注手段とを有すると共に,会員のクライアント端末から該サーバーへアクセスするためのURLが,ドメインでなる該サーバーへの接続用部分とサブドメインでなる加盟店識別用部分とから構成されており,かつ該サーバーは,上記URLからアクセスした会員が属する加盟店を表すサブドメインを識別する加盟店識別手段を有すると共に,上記ホームページ作成手段は,上記加盟店識別手段で識別したサブドメインが表す加盟店の店名ロゴを上記データベースから読み出し,その店名ロゴと上記商品情報記憶手段から読み出した商品データとを用いてホームページを作成することを特徴とする電子ショッピングシステム。
【請求項2】 本部が使用するサーバーにインターネットを介して接続される加盟店用端末が備えられ,かつ,上記サーバーには,受注手段で受信した発注者及び受注商品を含む受注データを加盟店識別手段で識別したサブドメインが表す加盟店用端末に伝達する受注データ伝達手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子ショッピングシステム。
(3) 本件発明の構成要件 本件発明は,別紙対比表の「本件発明1の分説」及び「本件発明2の分説」欄記載の構成要件に分説することができる。
(4) 被告の行為 被告は,平成20年8月頃から講演会に関するホームページを開設し,平成25年7月頃から,講師紹介サイトである「講演会インフォ」と称する被告システムの利用に関して各加盟店と業務提携し,契約各加盟店に被告が管理する加盟店のホームページと本部サーバーに記憶された講師情報やイベント情報あるいはコンサート情報等を利用させるようになった。
被告システムのもとでは,被告システムを利用する各加盟店のホームページは被告が管理しているサーバーで一元管理されている。
2 争点 (1) 被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するか ア 文言侵害の成否(争点1-1) イ 均等侵害の成否(争点1-2)(予備的主張) (2) 被告システムは本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2) (3) 原告の損害(争点3) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1-1(被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否))について 【原告の主張】 被告システムは,別紙対比表の「原告主張被告システムの構成」欄記載のとおり,aないしjの構成を有するものであり,aないしjの構成は,いずれも本件発明1の構成要件AないしJに対応し,これらを充足する。
構成要件A (ア) 「フランチャイズ制」の用語については明確に定義されていないが,フランチャイズが一般的に,本部が加盟者に対し,特定の商標,商号等を使用する権利を与えるとともに,加盟者の物品販売,サービス提供,その他事業・経営について統一的な方法で統制,指導,援助を行い,これらの対価として加盟者が本部に金銭を 支払う事業形態であるとされることに加え,本件明細書の記載を参酌すれば,本件発明にいう「フランチャイズ制」は,自己の製作運営するサーバーに格納したホームページのコンテンツを基本的内容とし,かつ,加盟店ごとに加盟店等の店名ロゴ等,最小限のコンテンツについて各加盟店用に個別的にカスタマイズした加盟店ごとのホームページを本部から各加盟店に提供する(又は,各加盟店の使用に供する)システムのことを意味すると解するのが自然である。
被告システムにおいては,被告が運営する本部ホームページの情報を各加盟店に提供しており,異なる経営主体同士が結合したり,各加盟店が主体となって本部を結成したりしているなどの事情もうかがえないのであるから, フランチャイズ制」 「に該当する。
また,「傘下に持つ」との用語は,請求項1と本件明細書の【課題を解決するための手段】にのみ使用されているところ,これを定義する記載はないから,通常有する意味として,1つの本部とその本部に対してそれぞれ提携関係にある多数の加盟店が傘のように結びついている様を表現しているのであって,加盟店と本部が対等であるなどの力関係は関係がない。
(イ) 「電子ショッピングシステム」の定義は明確に定められていないが,電子商取引(電子ショッピング)における商取引には,商品の売買,宣伝,契約締結,資金決済までも含まれ,また,商取引の一部の実施でも電子商取引に含まれるものでもあり,契約の成立は条件とはならない。
被告システムにおいては,講師派遣サービス等の契約はインターネットの枠外で締結されるけれども,顧客が本件システムのホームページ上で講師依頼や問合せのフォームに依頼者情報や講演開催に関する詳細項目に入力して講師依頼フォームを送信することにより商取引行為が開始されるのであるから,電子ショッピングシステムに該当する。
また被告システムが,単なる広告であるとしても,上記した電子商取引の意義に照らし,「電子ショッピングシステム」に該当するといえる。
構成要件B 「商品情報記憶手段」とは,商品情報の主要部又は残部が各加盟店共用の一つのデータベースから読み出され,商品情報のデータ容量が小さくなるという効果を享受できるのであれば,その要件を充足するものといえる。
被告は,全ての商品情報をまとめて蓄積する必要がある旨主張するが,特許発明実施例の記載に限定される理由はなく,被告が主張するような限定は特許請求の範囲には一切ないから,出願経過を考慮しても,このような限定がされているとみることはできない。
したがって,被告システムでは,商品の一部や付加的情報が本部にあるデータベース以外から読み出されるが,[kouenkai.info]のディレクトリに記憶されている共通商品情報のデータ容量は,サブドメインのディレクトリの容量に比して圧倒的に多く,商品情報の主要部であるということができるから,「商品情報記憶手段」に該当する。
なお,被告は,講師情報が各加盟店のディレクトリに記憶されているので共通の商品情報ではない旨主張するが,一つの本部サーバー内に講師プロフィールファイルが保存されており,それが本部及び各加盟店のホームページを作成するために使用されていることに相違なく,ただ,それが本部と加盟店の数だけ重複しているだけであり,いずれの講師プロフィールファイルも各加盟店のホームページに共通しているのであるから,構成要件Bを充足する。
構成要件C 被告システムには,「店名ロゴ」そのものはないが,「マイクをデザインしたマーク」,「講演会インフォ」のロゴ,都道府県名の地域ロゴが結合して表示されている。
そして,被告システムにおいて,加盟店は1都道府県1加盟店とされているから,地域名ロゴは加盟店の店名ロゴと同一の識別機能を発揮しているもので,地域名表示は実質的に店名ロゴといえる。
すなわち,「マイクをデザインしたマーク」,「講演会インフォ」のロゴ,都道府県名の地域ロゴを結合した表示標章全体が構成要件Cにおける「店名ロゴ」に相当する。
構成要件F 被告システムでは,クライアント端末に表示される加盟店のホームページ上で,各講師の「講師を依頼する」ボタンをクリックして現れる「お問い合わせ(講師依頼)」のフォームに,講師依頼の注文を入力する。すなわち,これは,依頼主に関するあらゆる情報,希望する講演に関するあらゆる情報を記載するようになっているものであるから,講師の発注に他ならず,被告システムには,クライアント端末からの「注文を受信する受注手段」があるといえる。
構成要件H 構成要件Hは,加盟店を表すサブドメインを識別する加盟店識別手段について規定しているものである。すなわち,加盟店を識別するサブドメインを含むURLの入力により本部サーバーにアクセスすれば,そのサブドメインを識別してどの加盟店にアクセスしているかを識別する手段を備えているというものである。
被告システムにおいては,たとえば地域名ロゴであるサブドメインを含むURLで本部サーバーにアクセスすれば,マイクをデザインしたマーク,「講演会インフォ」のロゴ,都道府県名の地域ロゴを結合した表示標章を加えたホームページが顧客の端末に表示されるのであるから,構成要件Hを充足する。
構成要件I及びJ 上記アないしオのとおりであるから,被告システムは,構成要件I及びJを充足する。
【被告の主張】 被告システムが,構成要件D,E及びGを充足することは認めるが,その余の構成要件を充足しない。
構成要件A 被告システムは,「フランチャイズ制」,「電子ショッピングシステム」の要件を充足しない。
すなわち,被告が管理するサーバーと顧客が使用するクライアント端末とがインターネットを介して接続されているが,被告と加盟店は対等な関係であり,加盟店が被告の傘下にあるわけではないから,フランチャイズ制ではない。
また,「電子ショッピングシステム」は,電子的なネットワークを通じて商品の売買契約を完結させるシステムであるところ,被告システムは,講演会の講師紹介のサービスを行うもので,顧客からの問合せを受信する機能は有しているが,被告システム内ではいかなる契約も締結することができないから,「電子ショッピングシステム」には該当しない。
構成要件B 構成要件Bにいう「商品情報記憶手段」とは,「サーバーが,各加盟店が販売するすべての商品情報を各加盟店で共有するようにまとめて蓄積した,商品情報記憶手段」を意味しており,各加盟店が販売する一部の商品の情報を各加盟店が個々に使用するように個別に蓄積した商品情報記憶手段は含まれないと解される。
被告システムにおいては,各加盟店のホームページの情報は,加盟店のディレクトリごとに保存された情報であって,一か所に保存された共通の情報ではないから,構成要件Bを充足しない。
構成要件C 構成要件Cにおける「各加盟店用の店名ロゴ」とは,本件明細書,図4,図6及びロゴの持つ通常の意味からすれば,加盟店用に店の名前について,二個以上の文字を組み合わせて一個の活字としたもの,加盟店の店名を独特の字体・デザインで表したものと解される。
被告システムにおいては,提携企業のロゴではなく,地域名ロゴが用いられているが「店名ロゴ」は使用されていないから,構成要件Cを充足しない。
構成要件F 構成要件Fにおける「注文」とは,顧客からのあらゆる問合せを含む概念ではなく,商品を購入する意思表示としての「売買契約の申込行為」をいうと解される。
被告システムは,顧客が被告に質問等を行う問合せ手段を有しているが,契約の申込みである注文を受信するための受信手段を有していないため,構成要件Fを充足しない。
構成要件H 構成要件Hにおける「加盟店を表すサブドメイン」とは,本件明細書の【0028】,【0034】欄の各記載及び本件特許の出願経過等からすれば,「加盟店の店名を示唆する文字等で構成することで,会員がそのサブドメイン自体の態様から,加盟店を直接的にはっきりと認識できるもの」をいい,営業範囲を表すサブドメインを含まないと解される。
被告システムにおいては,加盟店のサブドメインは,加盟店の店名に一致又は対応する文字等で構成されておらず,「shikoku」などの営業範囲を表すものであるから,「加盟店を表すサブドメイン」に該当するものはなく,構成要件Hを充足しない。
構成要件I及びJ 上記アないしオのとおりであるから,構成要件I及びJも充足しない。
(2) 争点1-2(被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するか(均等侵害の成否)について 【原告の主張】 被告システムが,構成要件Bの「商品情報記憶手段」を文言において充足しないとしても,被告システムの,同一の講師情報(プロフィール)ファイルをサブドメイン(各加盟店ホームページ・URL)のディレクトリごとに保存する商品情報記憶手段(構成b′)は,以下のとおり,構成要件Bの商品情報記憶手段と均等であるから,均等侵害が成立する。
ア 本質的部分ではないこと 本件発明1の構成上の本質的部分は,「各加盟店のホームページを本部サーバーで一元管理することにし,共通化した商品等コンテンツを本部サーバーに記憶させておき,クライアント端末からのアクセスがあったときに,その共通化商品等のコンテンツと,各加盟店固有の店名ロゴとを使用した当該加盟店のホームページを作成して,これをクライアント端末に送信するシステムとしている。そして,クライアント端末から本部サーバーにアクセスするためのURLを,ドメインでなる本部サーバーへの接続用部分とサブドメインでなる加盟店識別用部分とで構成して,サーバー側で,クライアント端末がリクエストする加盟店を判別して,当該加盟店のホームページをクライアント端末に送信するようにシステム構成している。」という点にある。
そうすると,本部サーバー内に記憶される商品情報の記憶領域の個数自体は重要ではなく,集中記憶するか分散記憶するかはプログラム作成技術だけの問題にすぎず,要は,クライアントが本部サーバーにアクセスするごとに,本部や各加盟店のホームページを構成する商品情報をクライアント端末に送信できればよいのであり,「共通商品情報を本部サーバー内に記憶(蓄積)させておくこと」は本質的部分に属するが,商品情報記憶手段が,各加盟店が販売する「すべての商品情報を各加盟店で共用するようにまとめて蓄積している」ことは本質的部分ではない。
置換可能性があること 本件発明1においては,クライアント端末から本部サーバーにアクセスされた場合,各加盟店のホームページを作成するに際しては,商品情報記憶手段から読み出された商品データと,本部サーバーから読み出された店名ロゴとを用いてホームページが作成される。
これに対し,被告システムにおいても,クライアント端末から本部サーバーにアクセスされたとき,商品情報記憶手段(講師ポートレートや各バナーを蓄積した記憶手段と講師プロフィールを蓄積した記憶手段)から読み出された商品データと,本部サーバーから読み出された店名ロゴ(店名ロゴが各加盟店のディレクトリに蓄 積されているとしても,全ての加盟店の店名ロゴが本部サーバーに蓄積されていることには違いがないので,当該本部サーバーは,店名ロゴのデータベースを備えていると観念することができる。)とを用いてホームページが作成される。講師ポートレートや各バナーに関しては本部ディレクトリのデータベースから読み出され,講師プロフィールに関しては,一つの各加盟店のディレクトリから読み出されるが,同じ本部サーバーから読み出される点においては変わりがない。一つのサーバーの一つの記憶領域から講師情報(プロフィール)を読み出しても,各ディレクトリから読み出しても,同一商品情報のホームページを作成して送信できるので,作用効果は構成要件Bの商品情報記憶手段と同一である。したがって,構成b′は構成要件Bと置換可能である。
置換容易であること 構成b′は構成要件Bの構成である全て蓄積された情報を各ディレクトリに蓄積しているだけであるから,このような構成にすることは当業者がシステム製作の際に容易に想到することができるもので,置換容易であることは明らかである。
進歩性を具備すること 構成b′であっても,本件発明と技術的意義を共通にしているので,進歩性が否定される理由はない。
オ 特段の事情はないこと 出願過程において原告が提出した回答書(乙2)では,「共用するデータベースから商品情報を読み出す」との趣旨の主張をしているが,これは,個別具体的な引用発明に対する反論として主張しているだけであり,本部サーバー内において一部の情報を別のデータベースに分離して記憶させることを排斥することを意図するものではない。
【被告の主張】 本件発明と被告システムは,構成要件B以外にも多数の相違点があり,各相違点は,本件発明の本質的部分についてのものといえるため,均等侵害も成立しない。
ア 本質的部分であること 本件明細書の【0034】の記載や,以下の本件特許の出願経過において原告が提出した書面(乙2,平成17年8月22日付け回答書)における記載(「店名ロゴを除く全てのホームページデータは,商品情報を含めて本部が作成したものを強要することになるので,加盟店は自らの店名ロゴを作成することで足り・・・」,「また,本願発明では,1種類のホームページデータと各加盟店の店名ロゴを記録した1つのデータベースだけで多数の加盟店用に特化されたホームページを展開することができるから,各加盟店毎にホームページデータを保存した多数のフォルダを用意しなければならない周知技術のものと比較して,サーバーの記憶容量を著しく少なくできるメリットもあります」)からすれば,本件発明は,店名ロゴを除く全てのホームページデータを共用することで,サーバーの記憶容量を著しく減少させ,資金力等において劣る中小企業又は個人店舗でも効果的な電子商取引を行えるようにすること(本件明細書【0005】)を前提としており,すべての商品情報を各加盟店で共用するようにまとめて蓄積することは,本件発明の本質的部分である。
したがって,構成要件Bに係る相違点は本件特許発明の本質的部分に係る相違点であり,均等侵害の第1要件を充足しない。
なお,「共通商品情報を本部サーバー内に記憶(蓄積)させておくこと」自体は原告自身も本件特許発明の本質的部分に属すると認めているが,被告システムでは,共通(重複)する講師情報(プロフィール)についてもサブドメインごとにディレクトリ内に保存しており,仮に原告の主張(「共通商品情報を本部サーバー内に記憶(蓄積)させておくこと」自体は原告自身も本件発明の本質的部分に属すること)を前提にしても,本件相違点は本件発明の本質的部分についてのものといえる。
置換可能性 被告システムのように,共通する情報についてもサブドメインのディレクトリ内に重複して保存していては,サーバーの記憶容量を著しく減少させることはできず, 本件発明の目的を達することはできない。
したがって,本件発明と被告システムの相違点により,本件発明の目的を達成することはできず,同一の作用効果を奏することもできないため,置換可能ではない。
進歩性 被告システムは,サブドメインごとに多数のフォルダを用意しなければならないシステムであり,周知技術であり,進歩性を欠く。
エ 特段の事情 原告は,本件特許の出願経過において,前記イに記載のとおりの主張を行っていたもので,構成要件Bについて減縮的な補正は行っていないものの,これらの出願経過からすれば,共通商品情報について加盟店ごとに多数のフォルダを用意しなければならない周知技術のような発明は意識的に除外されているといえる。
(3) 争点2(被告システムは本件発明2の技術的範囲に属するか)について 【原告の主張】 被告システムは,別紙対比表(請求項2)の「原告主張被告システムの構成欄」に記載のとおりの構成を有しているから,構成要件K及びLを充足する。
【被告の主張】 否認ないし争う。
(4) 争点3(原告の損害)について 【原告の主張】 ア 特許法102条3項に基づく損害 被告が,平成25年7月から平成27年7月までの間,本件発明1及び2を実施して得た売上額は,6億円を下らない。
そして,特許発明実施に対して受けるべき金銭の額に相当する額としては,インターネット技術分野の平均的実施料率と本件発明の有用性や経済的効果を考慮し,被告の総売上額の7%を下回ることはない。
したがって,原告は,4200万円を下らない損害を受けたものである。
イ 補佐人費用 また,原告は,本訴訟を遂行するにつき補佐人を要したもので,その費用は本件特許権侵害相当因果関係のある損害といえ,その額は,原告の損害額の10%に相当する420万円を下らない。
【被告の主張】 否認する。
当裁判所の判断
1 争点1-1(被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否))について 被告システムが,本件発明1の構成要件D,E及びGを充足することについては当事者間で争いがないが,その余の構成要件の充足については争いがあるところ,以下のとおり,被告システムは,少なくとも,構成要件A,F及びJに相当する構成要件を備えないから,文言侵害は成立しない。
(1) 前提事項 ア 本件明細書の記載 本件明細書には,以下の記載がある。
発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,例えばレコードショップ等が加盟するフランチャイズ制の電子ショッピングシステムに関し,インターネットを利用した電子商取引の技術分野に関する。
【発明が解決しようとする課題】・・・【0005】・・・本発明は,現実の小売り業界やファーストフード業界等で採用されているフランチャイズシステムをインターネット上の仮想ショッピングシステムに適用することにより,例えば資金力等において劣る中小企業もしくは個人店舗にあっても, 効果的な電子商取引を可能とすることを課題とする。
【0012】上記のように構成することにより,本願各発明によれば次のような作用が得られる。
【0013】 まず,第1発明によれば,いずれかの加盟店が募集した会員が,本部に備えられたサーバーのホームページ作成手段によって作成されたホームページを介して商品を注文したときに,上記サーバーに備えられた加盟店識別手段が,会員が入力したURLのサブドメインからいずれの加盟店の会員からの注文であるかを識別する。
そこで,本部はそのサブドメインが表す加盟店の端末に,発注者及び受注商品を含む受注データを伝達することにより,加盟店は自らホームページを所持しなくても,また本部が所有する商品情報を利用して,当該会員との間の商取引を行うことが可能となる。
【0020】【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について説明する。なお以下の実施の形態は,本発明の電子ショッピングシステムをレコードショップのフランチャイズシステムに適用したものである。
【0021】 図1は,本実施の形態に係る電子ショッピングシステムの概略の構成図であり,このシステム1 は,フランチャイズシステムの本部が所有するサーバー10と,このフランチャイズシステムに加盟している加盟店が所有する加盟店クライアント端末20・・・20(1つのみ図示)と,この加盟店が店頭等で募集した自店の顧客等である会員が所有する会員クライアント端末30・・・30(1つのみ図示)と,これらを接続するインターネット40とで構成されている。
【0035】 そして,会員クラインアント端末30側での所定の注文処理を受け,サーバー1 0は,当該会員のID番号,受注商品,商品の引き渡し方法,代金受け取り方法等の受注データを入手する(ステップS12)。
【0036】 このようにして,いずれかの加盟店に属する会員からの受注が完了すると,本部サーバー10は,その後,受注データを当該加盟店のクライアント端末20に,例えばE-メール等によりインターネットを介して転送する。
【0037】そして,これを受け取った加盟店は,必要な場合には当該会員とコンタクトを取った上で,受注データにしたがって商品の引き渡し及び代金の受け取りを行う。その場合に,受注した商品が自店に在庫のないものであっても,加盟店は本部から或いは本部を経由してこれを入手することが可能となる。
【0038】以上のようにしてインターネット上に展開されるホームページを利用した電子商取引が行われることになるが,このシステムによると,各加盟店はホームページの作成及び維持管理を必要とすることなく,自店用に特化されたホームページを会員に提示することが可能となり,また,提供する商品情報も,自店に在庫があるものだけに限らず,本部の膨大なデータに基づいて,多様な態様で提供することが可能となる。
【0041】【発明の効果】 以上のように本発明によれば,いずれかの加盟店が募集した会員が,本部が作成したホームページを介して商品を注文したときに,本部のサーバーが,会員が入力したURLのサブドメインからいずれの加盟店の会員からの注文であるかを識別する。そして,その受注データは,識別された加盟店に伝達される。
【0042】したがって,加盟店は,その受注データにしたがって当該会員に商品を引き渡すと 共に代金を受領することにより,自らホームページを所持しなくても,インターネットを利用した商取引が可能となる。
【0043】特に,本部が所有する膨大な商品情報や在庫商品を利用することができ,また,商品がレコードやCD等の著作権に関連する処理が必要な場合であっても,これを本部が代行することが可能となるなど,各加盟店は少ない負担で効率のよい電子商取引が可能となる。
【0044】 そして,特に本発明によれば,いずれかの加盟店に属する会員が,インターネットを介して本部のサーバーにアクセスしたときに,その会員がいずれの加盟店に属する会員であるかが入力したURLのサブドメインに基づいて識別され,その加盟店用として特化されたホームページが提示されることになるので,会員は本部の存在を意識せず,あたかも自分が属している加盟店との間で直接取り引きしているものと認識することになる。したがって,当該加盟店は,それだけ自店の存在をアピールすることができ,ひいては自店の販売促進が図られることになる。
【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の実施の形態に係るシステムのハード構成図である。・・・【符号の説明】10 本部サーバー11 商品データベース13 会員データベース14 加盟店データベース15 ホームページデータ用データベース20 加盟店クライアント30 会員クライアント40 インターネット イ 被告システムについて 証拠(甲12から甲15の各1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,被告システムにつき次の事実が認められる(別紙被告システム概念図を参照)。
(ア) 概要 被告システムは,「講演会インフォ」と称する,被告が運営管理する講演会の講師紹介システムであり,被告の管理する本部サーバーが,顧客のPC,スマートフォン等の端末とインターネットを介して接続可能となっており,本部サーバーは,顧客がアクセスしてきたURLに基づいて,各提携企業(加盟店)のホームページを顧客に提示するシステムである。
(イ) 講師情報(ポートレート,プロフィール)及びロゴの保存方法 本部サーバーは,ドメイン(kouenkai.info)のディレクトリ内に,個別(サブドメインごと)に「講師情報(ポートレート)」を保存している。また,サブドメイ ン(shikoku,hokkaido,nagasaki 等)ごとに,地名(四国,北海道,長崎等)を用いた「地域名ロゴ」及び「講師情報(プロフィール)」をディレクトリ内に保存している。
したがって,「講師情報(プロフィール)」は,複数のサブドメインに重複して保存されている。
なお,サブドメイン「shikoku」は株式会社C1に,「hokkaido」は株式会社C2に,「nagasaki」は株式会社C3に,「ibaraki」は株式会社C4に対応している。
(ウ) ホームページの作成方法 顧客端末からサブドメインを含むURLを用いて本部サーバーへアクセスがあると,サブドメインごとに用意されているソースコードにより,ドメイン(kouenkai.info)のディレクトリ内に保存している「講師情報(ポートレート)」と,サブドメイン(shikoku,hokkaido,nagasaki 等)のディレクトリ内に保存している「地域名ロゴ」及び「講師情報(プロフィール)」を用いて,各提携企業のホームページを作成し,顧客の端末へ送信する。
(エ) 被告システムの具体的な動作 a 顧客は,端末を用いて,特定提携企業のホームページのURL(株式会社C1である場合は「http://shikoku.kouenkai.info/」)を入力して,本部サーバーにアクセスする。
b 本部サーバーは, 「http://shikoku.kouenkai.info/」 この のサブドメイン「shikoku」を識別し,このサブドメイン「shikoku」のディレクトリ内に保存されている「ロゴ(四国)」や「講師情報(プロフィール)」等のホームページ情報を読み出す。
c 本部サーバーは,識別した「ロゴ(四国) 及び 」 「講師情報(プロフィール)」と,ドメイン「kouenkai.info」のディレクトリ内の「講師情報(ポートレート)」を用いて,上記提携企業用のホームページを自身に実装したソフトウェアで作成し,ホームページのソースコードを,インターネットを介して顧客の端末へ送信する。
d 本部サーバーから顧客の端末へ送信されたソースコードにより,顧客の端末 に上記提携企業のホームページが表示され,顧客は同社のホームページに表示される講師情報を閲覧する。
e 顧客は講演会の講師を選択し,当該講師の「講演を依頼する」タグを選択すると,「講演会インフォ」の「お問合わせ(講師依頼)」画面(以下「問合せ画面」という。)が表示される。
f 問合せ画面に必要事項を入力して送信すると,本部のサーバーから被告及び上記提携企業のサーバーにインターネットを介してeメールが送付される(なお,「お問い合わせ(講師依頼)」として顧客が入力すべき内容は,顧客の名称,住所,電話番号等の顧客自身を特定し,かつ連絡可能とする情報であり,これに加えて,講演依頼に関する情報も入力する必要があるが,講演テーマ,開催趣旨,講演会場などの基本的情報は特定することが予定されているものの,講演開催時期は幅のある期間をもって記載し,また希望講師についても第3希望まで書ける欄が設けられている。また,講演依頼に関する情報についての記載は「わかる範囲で結構」とされているので,講演テーマ,講演会場とを含め,漠然とした内容の講演依頼であっても受け付けられることが予定されている。)。
g 上記提携企業は,eメールを自身のサーバー(提携企業サーバー)から取得し,提携企業サーバーが問合せ画面に入力された情報(以下「問合せ情報」という。)を,上記提携企業のPC(提携企業PC)へ伝達する。
h 上記提携企業は,問合せ情報をもとに,顧客を訪問又は電話ないしメール等で連絡を取り合い,顧客の希望に沿った講演会の内容・レベル・対象・講師・構成などを聴取し,顧客と契約できるよう交渉を行う。
(オ) 顧客による被告へのアクセス 顧客は,各提携企業を介さず,直接,被告のホームページにアクセスして,上記(エ)dにおける各提携企業のホームページを介して得られる講師のプロフィール 等と全く同じ情報を得ることができ,また「お問い合わせ(講演依頼)」を介して,同じように講演依頼をすることも可能である。
(2) 検討 ア 構成要件Aの「フランチャイズ制」について (ア) 「フランチャイズ制」の意義については,本件明細書中に定義はないが,フランチャイズシステムとは,一般的には,本部が加盟者に対し,特定の商標,商号等を使用する権利を与えるとともに,加盟店の物品販売,サービス提供,その他の事業・経営について統一的な方法で統制,指導,援助を行い,これらの対価として加盟店が本部に金銭を支払う事業形態であるとされている(甲7)。
そして,構成要件Aには,「本部」が「加盟店を傘下に持つ」ものとされ,また本件明細書【0005】によれば,本件発明が,小売業界等で採用されているフランチャイズシステムを,「インターネット上の仮想ショッピングシステムに適用した」というのであり,また本件発明は,加盟店が共通して利用するデータを本部サーバーで一元管理して,各加盟店は,本部サーバーで店名ロゴと上記データを使用して作成されるホームページの送信を受けて利用することで加盟店独自のホームページ開設のための設備投資を省略できるというのであるから,構成要件Aにいう「フランチャイズ制」とは,本部と加盟店の関係が,上記一般のフランチャイズシステムに類する関係,すなわち,本部が加盟者に対し,特定の商標,商号等を使用する権利を与えるとともに,加盟店の事業について統一的な方法で統制を行い,これらの対価として加盟店が本部に金銭を支払う事業形態にあることを表現したものと解するのが相当である。
(イ) これにより被告システムについてみると,被告システムを利用する加盟店は,いずれも「講演会インフォ」という名称を共通して利用しているから,これは本部である被告から,特定の商標を利用する権利を与えられているといえるし,また被告システムにおいては,本部サーバーを運営する被告が,加盟店である提携企業が自らホームページを作成しなくても,顧客が提携企業のホームページのURLを入力することにより,本部サーバー内にある当該提携企業のサブドメインのディレクトリ内に保存されている地域名ロゴや講師情報(プロフィール)を用いて当該提携 企業のホームページを作成するなどして顧客に送信するサービスを提供しているから,加盟店の事業について統一的な方法で統制を行っているといえるし,加盟店に相当する提携企業は,当該サービスの対価として,通常,提携企業から対価を得ているものと合理的に推認されることから,フランチャイズシステムに類する面があることは明らかである。
なお,被告が主張するボランタリー・チェーンというのは,被告自身も提携企業である加盟店自身も,同じ事業を営む関係で提携している面を強調していっているものと解されるが,一般のフランチャイズシステムには,本部自らも加盟店と同様の業態の事業を営むものもあるから,これをもって「フランチャイズ制」の要件を充たしているということは妨げられないというべきである。
構成要件Aの「電子ショッピングシステム」について (ア) 「電子ショッピングシステム」の意義についても,本件明細書中に明確な定義はないが,「ショッピング」が一般的な意味において売買を指すことは明らかであるし,加えて構成要件Fからすると,この電子ショッピングには,少なくとも「注文」と「受注」が起きることが必要であるし,また本件明細書の【0001】には,【発明の属する技術分野】として「本発明は,例えばレコードショップ等が加盟するフランチャイズ制の電子ショッピングシステムに関し,インターネットを利用した電子商取引の技術分野に関する。」とあり,さらに【発明の効果】を記載した【0042】に「受注データにしたがって当該会員に商品を引き渡すと共に代金を受領することにより,自らホームページを所持しなくても,インターネットを利用した商取引が可能となる。」とあることから,ここにいう「電子ショッピングシステム」とは,インターネットを利用してされる有償の商品の取引を指すものと解するのが相当であり,その取引においては,「注文」と「受注」,すなわち売買契約締結に向けて顧客からの具体的法律行為がなされ得ることが必要であると解される。
これに対し,原告は,電子ショッピングシステムの定義について,商品の広告,受発注,設計,開発,決済などのあらゆる経済活動と捉えるもので,商品の宣伝で あってもこれに含まれる旨主張するところ,確かに,本件明細書には,「電子ショッピングシステム」でなす経済活動について,「電子商取引」(【0001】,【0005】,【0038】,【0043】),「商取引」(【0013】,【0042】)などとする記載があり,さらに証拠(甲19ないし21)によれば,「電子商取引」の定義については上記原告主張に一部沿うものが認められる。
しかし,「宣伝」に触れる記載(甲19)は,取引ではなく,インターネット上の商行為について触れるものであるし,「広告」を含む通商産業省の定義(甲20)は,その当時の郵政省の定義とは異なることからすると,これは省庁の規制目的で対象範囲の定義をしていると理解でき,直ちに一般的に通用する定義に結びつくものとはいえない。
そして,そもそも,ここでは本件発明の構成要件にいう「電子ショッピングシステム」の定義を問題にしているのであるから,上記説示のとおり本件明細書の記載を考慮して解すべきであって,したがって,「電子ショッピンング」に,少なくとも原告の主張するような宣伝,広告までを含んで解することはできないというべきである。
(イ) これを前提に被告システムにつき検討するに,被告システムは,前記認定のとおり,顧客は各提携企業のホームページにおいて,講演会の講師を選択し,当該講師の「講演を依頼する」タグを選択することにより現れる問合せ画面に名称,住所,電話番号等の自らを特定する情報を記載し,さらに講演の希望内容を入力するなどして送信すると本部のサーバーがこれを受信し,それに伴って各提携企業サーバーにeメールが送信されることで各提携企業が得る上記情報を基に,顧客を訪問する,電話ないしメール等で連絡を取り合うなど営業活動をして,顧客の希望に沿った講演会の内容・レベル・対象・講師・構成などを聴取し,顧客と契約できるよう交渉を行うという方式である。
すなわち,被告システムの役割は,講演開催運営を取り扱う各提携企業に対し,講演開催希望者がインターネットを使ってアクセスするホームページを設けて,そ の潜在的需要を顕在化させ,もって各提携企業が営業活動をすべき講演開催希望者の情報を得ることができるというところまでであり,その後の講演開催実現に至るまでの営業活動は,インターネット外,すなわち被告システム外の接触交渉が予定されているというものである。また,その機会における顧客が被告システムを利用して「お問い合わせ(講演依頼)」をする行為は,漠然とした講演開催希望に基づくものであってもよく,したがって,これにより提携企業との間で講演開催に向けての交渉が開始されたとしても,それだけでは当事者間に法的な関係が直ちに生じたとはいえないから,被告システムは,それは最終的に締結されるだろう講演開催委託契約に向けての各提携企業の営業活動の契機を与えるものにすぎないものといえる。そして,このように見ると,被告システムでされている内容は,潜在的需要者をインターネットアクセスさせ,その潜在的な需要を顕在化させ,その情報をもとに実際の営業活動に結びつけるという,一般的な広告宣伝の手法と何ら変わらないものといい得る。
なお,被告システム利用者の中には,希望講師のみならず講演会開催の日時,場所とも確定して利用する者が含まれることはあり得るところ,その場合,そのような「お問い合わせ(講演依頼)」によるアクセス行為は,商品購入の注文に極めて似ているといえるが,その場合であっても,被告システムを介して,そのアクセスを受けた各提携企業は,自らが講演する主体ではなく,また掲載講師のスケジュールを管理している主体とも認められないから,直ちに承諾,すなわち「受注」することができるわけではなく,その後,講師との関係を調整して,具体的講演開催に向けて交渉を重ねる必要があるはずであって,したがって,利用者の 「お問い合わせ(講演依頼)」をいかに具体化しても,これを売買契約における「注文」に準じるものということができるわけではない。
したがって,被告システムは,構成要件Aにいう「電子ショッピングシステム」には相当しないというべきである。
構成要件Fの「注文を受信する受注手段」について (ア) 本件発明にいう「電子ショッピング」が上記イ(ア)のとおりであることからすると,「注文」とは,「電子ショッピング」が想定しているところの売買契約における注文であり,「注文を受信する受注手段」とは,その「注文」を前提に受信する手段であると解される。
(イ) これにより被告システムについてみると,上記イ(イ)のとおり,被告システムにおいては,売買がなされているわけではなく,顧客からの各提携企業へのアクセスは,その後の各提携企業からの営業活動の契機を与えるものにすぎないから, 「お問い合わせ(講演依頼)」をもってするアクセスは「注文」に該当せず,またしたがって,被告システムに「お問い合わせ(講演依頼)」を受信する手段が備わっていたとしても,これをもって「注文を受信する受注手段」とはいえない。
エ 以上によれば,被告システムは,構成要件A,F及びJを充足しないといえるから,他の構成要件の充足性を判断するまでもなく文言侵害は成立しないということになる。
2 争点1-2(被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するか(均等侵害の成否))について 原告は,被告システムは本件発明とは構成要件Bだけに相違点があって文言上非充足であることを前提に,被告システムが本件発明と均等である旨主張するが,上記1で検討したとおり,被告システムは少なくとも構成要件A,F及びJを充足しないのであるから,原告主張に係る均等侵害の主張は,その判断に及ぶまでもなく理由がないことは明らかである。
3 争点2(被告システムは本件発明2の技術的範囲に属するか)について 本件発明2は,本件発明1の電子ショッピングシステムを構成要件に含むものである(別紙対比表「本件発明2の分説」構成要件L)から,被告システムが本件発明1の技術的範囲に属さない以上,本件発明2の技術的範囲にも属さない。
4 結論 以上によれば,原告の被告に対する請求は,その余の点について判断するまでも なく理由がないことが明らかである。
よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)被告システム目録インターネット上で,本部ホームページのURLが「http://kouenkai.info/」であって,かつ,ホームページトップに「講演会インフォ」の名称が表示され,加盟店ホームページのURLが,本部ホームページのURL「http://kouenkai.info/」のメインドメイン「kouenkai.info/」に加盟店地域名を表す「hokkaido.」等のサブドメインを付加して「http://hokkaido.kouenkai.info/」等のように構成され,かつ,「講演会インフォ」の表示に加えて「北海道」等の加盟店の地域名を付加した「講演会インフォ北海道」等の名称が表示されてなる[本部-加盟店]方式の電子講演会等サービス提供システム。
(別紙)対比表本件発明1の分説原告主張被告システムの構成A:加盟店を傘下に持つ本部が使用するa:加盟店((株)C1,(株)C2,(株)サーバーと,加盟店が募集した会員が使C3,(株)C5等)を傘下に持つ本部(株)(用するクライアント端末とがインター中広)が使用するサーバーと,本部/加盟ネットを介して接続されるフランチャ店の各ホームページを閲覧する顧客が使イズ制の電子ショッピングシステムで用するクライアント端末とがインターネあって,ットを介して接続される[本部-加盟店]方式の電子講演会等サービス提供システム,である。
B:上記サーバーは,加盟店が販売するb:上記サーバーは,加盟店が提供するサ商品の情報を蓄積した商品情報記憶手ービス(=商品)の内容をなす講師情報(講段と,師プロフィールや講師ポートレート等)を蓄積したサービス情報記憶手段を備えている。
C:ホームページを作成するときに用いc:ホームページを作成するときに用いるる各加盟店用の店名ロゴを記憶したデ各加盟店用の店名ロゴ(北海道,四国,及ータベースと,び長崎,岡山等の表示:ホームページのトップページのヘッド部と末尾ページのフッター部に表示される)を記憶したディレクトリ型データベース又は記憶手段を備えている。
D:ホームページを作成するホームペーd:クライアントから本部サーバーへのリジ作成手段と,クエストがあると,本部サーバー内に予め準備されている該当加盟店のディレクト リ中のホームページソースプログラムがXOOPS・プラットフォーム上でPHPエンジンにより実行され,店名ロゴについては,ディレクトリ型データベースのリンク先から店名ロゴ情報(イメージ情報)を取り出すとともに,講師情報についてはPHPが実行され,その結果,新たな処理済み・HTMLソースコードが生成される,従ってホームページが作成される。
E:該作成手段で作成したホームページe:各加盟店のHTMLソースコード,従を発信するホームページ発信手段と,ってホームページが本部サーバーからクライアント端末に現に送信されている。
F:このホームページを通じてクライアf:クライアント端末に表示される加盟店ント端末からの注文を受信する受注手のホームページ上で,問合せ(講師依頼)段とを有すると共に,の頁に講師依頼注文を入力するようになっており,本部サーバーはその注文を受け取るようになっている。
G:会員のクライアント端末から該サーg:顧客のクライアント端末から本部サーバーへアクセスするためのURLが,ドバーへアクセスするためのURLが,メイメインでなる該サーバーへの接続用部ンドメイン"kouenkai.info"でなる本部サー分とサブドメインでなる加盟店識別用バーへの接続用部分と,サブドメイン部分"shikoku","hokkaido","nagasaki",とから構成されており,"okayama"等でなる加盟店識別用部分とから構成されている。なお,本部ホームページのURLは,サブドメインが「無(ナシ)」 であることにより他の加盟店URLと区別される。
そして,例えば,サブドメイン"hokkaido"を含むURLを入力すると運営会社C2のホームページが表示され,サブドメイン"shikoku"を含むURLを入力するとC1のホームページが表示される。メインドメイン"kouenkai"のみの入力なら,本部のホームページが表示される。
H:かつ該サーバーは,上記URLからh:顧客がクライアント端末で,例えば,アクセスした会員が属する加盟店を表サブドメイン"hokkaido"を含むURLを入すサブドメインを識別する加盟店識別力すると運営会社C2のホームページが手段を有すると共に,表示され,サブドメイン"shikoku"を含むURLを入力すると運営会社C1のホームページが表示される。
よって,本部サーバーは,サブドメインによって,応答すべき加盟店のホームページを識別する機能を有している。
I:上記ホームページ作成手段は,上記i:(構成dのところで述べたように,)加盟店識別手段で識別したサブドメイクライアントから本部サーバーへのリクンが表す加盟店の店名ロゴを上記デーエストがあると,本部サーバー内に予め準タベースから読み出し,その店名ロゴと備されている該当加盟店のディレクトリ上記商品情報記憶手段から読み出した中のホームページソースプログラムがX商品データとを用いてホームページをOOPS・プラットフォーム上でPHPエ作成するンジンにより実行され,店名ロゴについては,ディレクトリ型データベースのリンク 先から店名ロゴ情報(イメージ情報)を取り出すとともに,講師情報についてはPHPが実行され,その結果,新たなHTMLソースコードが生成される。
J:ことを特徴とする電子ショッピングj:電子講演会等サービス提供システム。
システム。
(請求項2)本件発明2の分説原告主張被告システムの構成K:本部が使用するサーバーにインターk:各加盟店が端末を備えていることは,ネットを介して接続される加盟店用端本システムがホームページを介して受注す末が備えられ,かつ,上記サーバーには,るシステムである以上,自明である。
受注手段で受信した発注者及び受注商各加盟店のメールアドレスは,品を含む受注データを加盟店識別手段*******@kouenkai.infoであるので,ホストで識別したサブドメインが表す加盟店名は本部のURLのメインドメインと同一用端末に伝達する受注データ伝達手段であり,かつ,ローカル部が各加盟店名でが設けられているあるので,クライアントの注文は,本部のサーバー又はメールサーバーで受信されかつ当該サーバー内にデータが蓄積される。
加盟店は通常のメールソフトでアカウント+@kouenkai.infoにアカウント(例えばc2@kouenkai.infoのように,c1,c2,c3,c5等)が設定されているので,常時受注をチェックできる。
L:ことを特徴とする請求項1に記載のl:電子講演会等サービス提供システム。
電子ショッピングシステム。
-32- (別紙)被告システム概念図本部サーバkouenkai.info講師情報(ポートレート)ーロゴ(地名)shikoku講師情報(プロフィール)ロゴ(地名)hokkaido講師情報(プロフィール)インターネットロゴ(地名)nagasaki講師情報(プロフィール)顧客端末提携企業サーバーまつPC提携企業PC
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 田原美奈子
裁判官 大川潤子