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関連審決 無効2014-800005
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ワ24183 損害賠償請求事件 判例 特許
平成26ワ12198 損害賠償請求事件 判例 特許
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事件 平成 26年 (ワ) 371号 債務不存在確認請求事件
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/12/25
権利種別 特許権
主文 1 被告が,原告に対し,原告による別紙物件目録記載の各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,別紙特許権目録記載の特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文第1項と同旨
事案の概要
1 本件は,原告が,別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を保有する被告に対し,原告による別紙物件目録記載の各製品(以下「原告製品」と総称する。)の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)(以下,併せて「生産・譲渡等」という。)は,本件特許権の侵害を構成しない旨主張して,被告が原告に本件特許権の侵害を理由とする不法行為(その性質上,本件特許権の設定の登録がされた平成18年10月20日から口頭弁論終結日までの期間が対象とされていると解するのが相当である。ただし,被告が本件特許権を単独で保有することとなった平成25年3月26日より前の期間については,本件特許権についての被告持分の侵害を理由とする不法行為の趣旨と解される。)に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求める事案である。
1 2 前提事実(当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに各項末尾の括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,特に断らない限り,書証の枝番の記載は省略する。) (1) 当事者 ア 原告は,親会社であるアップルインコーポレイテッド(Apple Inc.)の製造,販売するスマートフォン,コンピュータ等の輸入・販売を業とする合同会社である。
イ 被告は,コンピュータの周辺機器の製造及び販売を業とする株式会社である。
(2) 本件特許権 被告は,本件特許権の設定登録がされた平成18年10月20日以降,同特許権を持分2分の1の割合で共有していたが,平成25年3月26日以降,同特許権を単独で保有している。本件特許に係る明細書(特許権設定登録時のもの。以下,図面と併せて「本件明細書」という。なお,本件特許は平成15年6月30日以前にされた出願に係るものであるから,本件特許に係る明細書は特許請求の範囲を含むものである〔平成14年法律第24号附則1条2号,3条1項,平成15年政令第214号〕。)の特許請求の範囲(以下,単に「特許請求の範囲」,あるいは「本件特許の特許請求の範囲」ということがある。)は,別紙特許公報(甲3)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。 (甲2,3) ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A 情報処理装置と,該情報処理装置に接続され,複数の指示部位を有す る指示体による入力検出面へのタッチ動作を前記情報処理装置へ伝える ための,前記入力検出面にタッチされる指示部位の指示位置を検出する 位置検出手段を備えたタッチパネルとを有するタッチパネルシステムで あって,該タッチパネルシステムは, B 前記タッチパネルの入力検出面に同時に又は順にタッチされる指示部 位の数をカウントするカウント手段と, 2 C 前記位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にあ る2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段と, D 前記カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,前記 距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的 な変化に応じて前記情報処理装置が所定の動作を行うようにする制御手 段と,を具備することを特徴とする E 複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム。
イ 本件特許の特許請求の範囲の請求項2は,同請求項1を引用しており,同請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)の構成要件は,上記構成要件AないしEと,次の構成要件Fに分説される。
F 前記カウント手段は,該複数の指示部位が隣接しているときは1つの 指示部位がタッチされたものとして指示部位の数をカウントすることを 特徴とする複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム。
ウ 本件特許の特許請求の範囲の請求項4は,同請求項1を引用しており,同請求項4に係る発明(以下「本件発明4」という。)の構成要件は,上記構成要件AないしEと,次の構成要件Gに分説される。
G 前記制御手段は,前記位置検出手段により検出される複数の指示部位 の指示位置のうち最初若しくは最後にタッチされる指示位置を,指示部 位の指示位置として前記情報処理装置が所定の動作を行うようにするこ とを特徴とする複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム。
エ 本件特許の特許請求の範囲の請求項6は,同請求項1を引用しており,同請求項6に係る発明(以下「本件発明6」という。また,本件発明1,本件発明2,本件発明4及び本件発明6を併せて「本件各発明」という。)の構成要件は,上記構成要件AないしEと,次の構成要件Hに分説される。
H 前記情報処理装置の所定の動作とは,指示部位の指示位置を最初にタッ チした位置に静止しておく動作を含むことを特徴とする複数の指示部位 3 で操作可能なタッチパネルシステム。
(3) 原告製品 ア 原告は,本件特許権の設定登録がされた後,現在に至るまでの間に,業として,原告製品の輸入,販売及び販売の申出(販売のための展示を含む。)をしたことがある。 (弁論の全趣旨) イ 原告製品は,少なくとも,次の構成を有する。
(ア) 原告製品は,「A7チップ」,「A6チップ」,「A6Xチップ」又は「A5チップ」と呼ばれるSoC(System on a Chip。システムの動作に必要な一連の機能を一つの半導体チップに実装した集積回路で,CPU〔中央演算処理装置〕とGPU〔グラフィックス描画処理装置〕とを内蔵している。)を搭載するとともに,「マルチタッチディスプレイ」,「マルチタッチ画面」,「Apple Retinaディスプレイ」又は「タッチスクリーン」と呼ばれるタッチパネルとを有し,このタッチパネルはSoCに接続されており,これらがタッチパネルシステムを構成している。上記タッチパネルは,入力検出面としての画面にタッチされた指(指示部位)の位置(タッチ位置)を検出する位置検出手段を備えており,これは複数の指によるタッチ(複数の指示部位の指示位置)をも区別できる機能を備えている。タッチパネルに指でタッチすると,タッチされた指の情報は,SoCに伝えられ,SoCは,上記指の操作に応じて画像処理を含む各種情報処理をすることとなっている。このように,原告製品は,複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステムである(以上により,構成要件A,Eを満たす。)。 (乙3ないし9,21ないし25,弁論の全趣旨) (イ) 原告製品は,タッチパネルの画面にタッチされた指の本数を数えるための「numberOfTouches」と称するプログラムを搭載しており,これにより,画面に同時又は順次にタッチされた指(指示部位)の数をカウントすることができる(構成要件Bを満たす。)。 (乙24,弁論の全趣旨) (4) 本件訴訟に至る経緯等 ア 被告は,原告製品につき,関税法69条の13に基づく輸入差止めに係る申 4 立てをし,平成25年11月29日,同申立てがされたことが公表された。(甲1) イ 被告は,本件訴訟において,「被告は,原告に対し,原告による原告製品の生産・譲渡等について,本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有する。」旨主張している。
なお,被告は,平成26年2月19日,原告を相手取り,本件特許権に基づく差止請求権を被保全権利として,原告製品の生産,使用,譲渡等の禁止等を命ずる仮処分命令を求める申立てをした(当庁平成26年(ヨ)第22017号仮処分命令申立事件)。 (顕著な事実) (5) 無効審判請求及び訂正請求 ア 原告は,平成26年1月9日付けで,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6に係る発明についての特許を無効とすることを求めて,特許無効審判を請求した(無効2014-800005号)。
(甲25,弁論の全趣旨) イ 上記無効審判事件において,審判長は,平成27年1月21日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6に係る発明についての特許を無効とする旨の審決の予告をした(同審決の予告の「結論」は,請求項を特定していないが,「理由」の「第5 むすび」によれば,同審決の予告が同請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6について判断し,その余の請求項について判断したものでないことは,明らかである。)。 (甲21) ウ 上記無効審判事件において,被告は,平成27年3月30日付けで,本件特許の特許請求の範囲を別紙訂正明細書(乙32)中の特許請求の範囲記載のとおり一群の請求項又は請求項ごとに訂正することを含む訂正請求(以下「本件訂正請求」という。また,本件訂正請求による訂正のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6からなる一群の請求項に係る訂正を「本件訂正」といい,本件訂正後の同請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6に係る各発明をそれぞれ「本件訂正発明1」などといい,これらを総称して 5 「本件各訂正発明」という。)をした。本件訂正発明1を構成要件に分説すると,別紙訂正目録記載1のとおりであって,本件訂正発明1,2,4及び6の各構成要件は,構成要件D(前記(2)ア)を構成要件D’(同目録記載1)に置き換えるほかは,それぞれ本件発明1,2,4及び6の構成要件と同じである。(乙31,32) エ 上記無効審判事件において,被告は,平成27年6月11日,本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1について「又は該数の過渡的な変化」という文言(2か所)を削除することなどを内容とする平成27年3月30日付け訂正請求書の補正(以下「本件補正」という。また,本件補正を反映した本件訂正を「本件補正後の本件訂正」といい,同訂正後の同請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6に係る各発明をそれぞれ「本件補正後の本件訂正発明1」などといい,これらを総称して「本件補正後の本件各訂正発明」という。)をした。本件補正後の本件訂正発明1を構成要件に分説すると,別紙訂正目録記載2のとおりであって,本件補正後の本件訂正発明1,2,4及び6の各構成要件は,構成要件D(前記(2)ア)を構成要件D”(同目録記載2)に置き換えるほかは,それぞれ本件発明1,2,4及び6の構成要件と同じである。 (乙36) オ 上記無効審判事件において,特許庁は,平成27年8月11日,本件補正は認められず,本件訂正も認められないとした上で,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6に係る発明(本件各発明)についての特許を無効とすることなどを内容とする審決をした。 (甲25) 3 争点 (1) 原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1) ア 原告製品は構成要件Cを充足するか(争点1-1) イ 原告製品は構成要件Dを充足するか(争点1-2) ウ 原告製品は構成要件Fを充足するか(争点1-3) エ 原告製品は構成要件Gを充足するか(争点1-4) オ 原告製品は構成要件Hを充足するか(争点1-5) 6 (2) 本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2) ア 無効理由1(新規性欠如又は進歩性欠如)は成り立つか(争点2-1) イ 無効理由2(拡大先願違反)は成り立つか(争点2-2) ウ 無効理由3(実施可能要件違反)は成り立つか(争点2-3) エ 無効理由4(サポート要件違反)は成り立つか(争点2-4) オ 無効理由5(明確性要件違反)は成り立つか(争点2-5) (3) 訂正の対抗主張(再々抗弁)は成り立つか(争点3) 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について 【被告の主張】 ア 争点1-1(原告製品は構成要件Cを充足するか)について 原告製品は,2本の指のタッチによるピンチジェスチャ(タッチパネルの画面に表示されたイメージを拡大・縮小するために,画面にタッチした2本の指を広げたり狭めたりする動作)をした場合,「UIPinchGestureRecognizer」と称するプログラムが,2つのタッチ位置の間の距離を算出して,当該距離の変化を判断した上で,ピンチジェスチャを認識する。そして,2本の指のジェスチャの場合,2つのタッチ位置は,「複数の指示部位のうち最外端の2個所」にそのまま該当する(ここで,「最外端」を特定するための具体的なプロセスを問う必要はない。)。
そうすると,2つのタッチ位置の座標(x,y)に基づいて「距離」を算出するプログラムが原告製品のCPUによって実行されるとき,CPUは,「位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」として機能することになるから,原告製品は,構成要件Cを充足する。
なお,原告は,3本指のピンチジェスチャの場合を論拠として構成要件Cの非充足を主張するが,構成要件Cの「複数」には「2つ」の場合が当然含まれるところ, 7 通常の用法である「2本指のピンチジェスチャ」において上記のとおり侵害となる以上,実用上特殊な場合である「3本指以上のピンチジェスチャ」を殊更取り上げて論じることに意味はない。
イ 争点1-2(原告製品は構成要件Dを充足するか)について 原告製品においては,「UIPinchGestureRecognizer」と称するプログラムが,カウント手段によりカウントされたタッチの数と,距離算出手段により算出されたタッチ間の距離の過渡的変化とに基づいて,ピンチジェスチャが成立したか否かを判断し,ここでピンチジェスチャが成立したと判断されると,「CGAffineTransformMakeScale」と称するプログラム及び「UIView」の「transform」と称するプログラムが実行される。これらを含む一連のプログラムが実行されるとき,CPUは,「カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化に応じて情報処理装置が所定の動作を行うようにする制御手段」として機能することになる。したがって,原告製品は,構成要件Dを充足する。
ウ 争点1-3(原告製品は構成要件Fを充足するか)について 原告製品においては,2本の指を離してダブルタップを行うと,イメージが縮小するのに対し,2本の指を互いに接触させてダブルタップを行うと,1本の指によるダブルタップと同様,イメージが拡大する。これらの表示挙動から,2本の指を接触させた状態すなわち隣接した状態で画面をタッチした場合,カウント手段として機能するCPUは,1本の指でタッチされたものとみなし,画面にタッチされた指の数を1本としてカウントしていることが容易に理解される。したがって,原告製品は,構成要件Fを充足する。
エ 争点1-4(原告製品は構成要件Gを充足するか)について 原告製品においては,地図エリアを1本目の指でタッチし,その状態を維持したままで2本目の指で検索エリアにタッチすると,検索用の文字を入力するためのキーボードは表示されず,1本目の指による最初のタッチ位置に基づいて,イメージの 8 拡大又は縮小が行われる。また,地図エリアを最初にタッチした1本目の指を検索エリアにスライドさせた後,地図エリアを2本目の指でタッチしてピンチ動作を行うと,検索用の文字を入力するためのキーボードは表示されず,1本目の指による最初のタッチ位置に基づいて,イメージの拡大又は縮小が行われる。これらの表示挙動から,最初のタッチ位置に割り当てられた属性(地図エリア)と,その後のタッチ位置に割り当てられた属性(検索エリア)とが異なる場合,最初の属性(地図エリア)に対応付けられた動作(イメージの拡大又は縮小)が優先されることが容易に理解される。これは,タッチ位置が移動する過程において,タッチ位置が存在する各場所が異なる動作に対応している場合,複数の動作のうちのいずれが行われるかは,最初のタッチ位置に依存することを示しており,所定の動作を行うためのタッチ位置として最初のタッチ位置が用いられることを示している。したがって,原告製品は,構成要件Gを充足する。
オ 争点1-5(原告製品は構成要件Hを充足するか)について 原告製品における上記エの表示挙動は,ピンチ動作に入る前に,又はピンチ動作の最中に,指の動きに伴って属性が変化したとしても,最初のタッチ位置に静止され(最初のタッチによる選択状態が継続され),この位置に応じた動作が行われる(最初のタッチ位置が地図エリアならば,その動作はイメージの拡大又は縮小に固定される。)ことを示している。したがって,原告製品は,構成要件Hを充足する。
カ 小括 以上を前記前提事実(3)イと総合すれば,原告製品は,本件各発明の構成要件AないしHをいずれも充足するから,本件各発明の技術的範囲に属する。したがって,原告による原告製品の生産・譲渡等は,本件特許権を侵害するものであり,これについて,被告は,原告に対し本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権を有する。
【原告の主張】 ア 争点1-1(原告製品は構成要件Cを充足するか)について 構成要件Cにいう「最外端にある2個所の指示部位」は,複数の指示部位のうち, 9 互いに最も離れた2つの指示部位を意味するものと解されるところ,同構成要件は,タッチ画面が検出した3本以上の指のうち,互いに最も離れた2本の指を特定する機能を備えることを要件としていることは明らかである。しかるに,原告製品は,最初及び2番目に画面にタッチした指を特定する(それらの指と他の指との位置関係は問題にしない。)ものであって,「最外端にある2個所」の指を特定するものではなく,それらの間の距離を算出するものではない(原告製品の動作原理は,指が画面にタッチした順番に着目するものであって,指の位置に着目する本件各発明の動作原理とは根本的に異なる。)。したがって,原告製品は,構成要件Cを充足しない。
なお,「最外端」の文言を含む構成要件Cは,先行技術文献の存在を理由とする拒絶理由を克服するために追加されたものであるところ,この構成要件の解釈として,「最外端」の候補を評価,選択することを要素とする必要はないかのようにいう被告の主張は,誤りである。
イ 争点1-2(原告製品は構成要件Dを充足するか)について 原告製品は,上記アのとおり,最外端にある2本の指の距離を算出するものではないため,かかる距離又は当該距離の過渡的な変化に応じて所定の動作を行うものではないから,構成要件Dを充足しない。
ウ 争点1-3(原告製品は構成要件Fを充足するか)について 原告製品は,「隣接」する複数の指で画面をタッチしたときでも,(複数の隣接した指を検出した上で)1本の指によりタッチされたものとカウントするものではないため,構成要件Fを充足しない。
エ 争点1-4(原告製品は構成要件Gを充足するか)について 原告製品は,最初にタッチする指の位置に応じて所定の動作を行うものではないため,構成要件Gを充足しない。
オ 争点1-5(原告製品は構成要件Hを充足するか)について 原告製品は,指示位置を最初にタッチした位置に「静止しておく」ものではない 10 ため,構成要件Hを充足しない。
カ 小括 以上によれば,原告製品は,本件各発明の技術的範囲に属するものではなく,原告による原告製品の生産・譲渡等は,本件特許権を侵害するものではない。
(2) 争点2(本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)について ア 争点2-1(無効理由1〔新規性欠如又は進歩性欠如〕は成り立つか)について 【原告の主張】 (ア) 甲12に基づく新規性進歩性の欠如 a 本件特許出願前である平成11年7月29日に頒布された刊行物である国際公開第99/38149号(甲12)に記載された発明(以下「甲12発明」という。)には,構成要件AないしEが全て開示されている。したがって,本件発明1は,甲12発明と同一の発明であり,あるいは甲12発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。
b 甲12発明には,構成要件AないしEのみならず構成要件Fも開示されている。したがって,本件発明2は,甲12発明と同一の発明であり,あるいは甲12発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。
c 本件発明4は,甲12発明に特開平9-146708号公報(甲15)に記載された発明(以下「甲15発明」という。)を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
d 本件発明6は,甲12発明に甲15発明を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
(イ) 甲13に基づく新規性進歩性の欠如 a 本件特許出願前である平成7年8月29日に頒布された刊行物である特開平 11 7-230352号公報(甲13)に記載された発明(以下「甲13発明」という。)には,構成要件AないしEが全て開示されている。したがって,本件発明1は,甲13発明と同一の発明であり,あるいは甲13発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。
b 甲13発明には,構成要件AないしEのみならず構成要件Fも開示されている。したがって,本件発明2は,甲13発明と同一の発明であり,あるいは甲13発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。また,本件発明2は,甲13発明に特開平11-119911号公報(甲14)に記載された発明を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
c 甲13発明には,構成要件AないしEのみならず構成要件Gも開示されている。したがって,本件発明4は,甲13発明と同一の発明であり,あるいは甲13発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。また,本件発明4は,甲13発明に甲15発明を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
d 甲13発明には,構成要件AないしEのみならず構成要件Hも開示されている。したがって,本件発明6は,甲13発明と同一の発明であり,あるいは甲13発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,新規性又は進歩性を欠く。また,本件発明6は,甲13発明に甲15発明を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠く。
(ウ) 小括 以上のとおり,本件各発明は,新規性又は進歩性を欠くものであるから,本件各発明についての特許は,特許法29条1項又は2項に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当するから,特許無効審判により無効にされるべきものである。
【被告の主張】 12 (ア) 甲12に基づく新規性進歩性の欠如について 甲12発明の「近傍センサ」は,構成要件Aの「位置検出手段」と全く相違するし,甲12発明の「近接」又は「近傍」は,本件各発明における「タッチ」とは概念的に全く異なる。また,甲12発明の「最内および最外」は,構成要件Cの「最外端にある2個所」と相違する。
本件各発明は,少なくとも構成要件AないしDにおいて,甲12発明と同一ではないし,甲12発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(イ) 甲13に基づく新規性進歩性の欠如について 甲13発明は,「指示位置」の移動ベクトルを評価することによって「距離が変わるかどうか」を判定するものにすぎず,「距離」自体を算出するものではないし,ましてや「算出された距離」を用いた判定を行うものでもない。そして,本件各発明のように,マルチタッチパネルにおいて「2点間の遠近」を評価するために,移動ベクトルではなく,あえて「距離」に着目することは,当業者の格別の創意を要するものであって,「距離」を算出して「算出された距離」を基に判定を行うことは,当業者が容易に想到し得たものではない。
本件各発明は,少なくとも構成要件C・Dにおいて,甲13発明と同一ではないし,甲13発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(ウ) 小括 以上によると,本件各発明は,新規性及び進歩性を有するものであるから,本件各発明についての特許は,特許法29条1項及び2項に適合しており,無効にされるべきものではない。
イ 争点2-2(無効理由2〔拡大先願違反〕は成り立つか)について 【原告の主張】 本件各発明は,本件特許の出願前の他の特許出願であって本件特許の出願後に公開された特開2000-163031号公報(甲16)に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同 13 一である。そして,本件各発明の発明者は先願発明の発明者と同一ではなく,本件特許の出願時にその出願人が先願発明に係る特許出願の出願人と同一でもないから,本件各発明は,特許法29条の2により,特許を受けることができないものである。
したがって,本件各発明についての特許は,同法123条1項2号に該当し,特許無効審判により無効にされるべきものである。
【被告の主張】 先願発明は,「移動履歴」に基づいて「距離の変化」を判断するものであり,2点間の「距離」の算出をするものではない。本件各発明は,少なくとも構成要件C・Dにおいて,先願発明と同一ではない。
したがって,本件各発明は,特許法29条の2により特許を受けることができないものではなく,これについての特許は,無効にされるべきものではない。
ウ 争点2-3(無効理由3〔実施可能要件違反〕は成り立つか)について 【原告の主張】 (ア) 構成要件Bは,入力検出面に同時に又は順にタッチされる指示部位の数をカウントするカウント手段を要件とするが,本件明細書に記載された実施形態では,指の数を正しくカウントすることができない場合があり,本件各発明を実施することができない。
(イ) 構成要件Cは,複数の指のうち最外端にある2本の指の間の距離を算出する距離算出手段を要件とするが,本件明細書記載の実施形態では,最外端にある2本の指の間の距離を算出できない場合があり,本件各発明を実施することができない。
(ウ) 構成要件Fは,カウント手段が,複数の指示部位が「隣接している」ときは1つの指示部位がタッチされたものとして指示部位の数をカウントすることを要件とするが,「隣接している」の意味が不明確である上,本件明細書の記載では,複数の指が互いに隣接していることを判定する手段は存在しないし,2本の指を揃えてタッチした場合にこれらの指を一つとしてカウントしているわけでもないから,本件発明2を実施することができない。
14 (エ) 以上によると,本件明細書における発明の詳細な説明は,当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,特許法36条4項の記載要件(実施可能要件)を満たさない。したがって,本件各発明についての特許は,同法123条1項4号に該当するから,特許無効審判により無効にされるべきものである。
【被告の主張】 本件明細書の【0027】や【0028】の記載に照らせば,構成要件Bのカウント手段や構成要件Cの距離算出手段は実施可能である。また,構成要件Fの「隣接」の意義も明確である。
したがって,本件明細書における発明の詳細な説明は,当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるから,特許法36条4項の記載要件に適合している。したがって,本件各発明についての特許は,無効にされるべきものではない。
エ 争点2-4(無効理由4〔サポート要件違反〕は成り立つか)について 【原告の主張】 (ア) 構成要件Cの距離算出手段については,1次元の軸に沿って最外端にある2本の指だけでなく,2次元の面にタッチされる複数の指から最外端にある2本の指を特定できる必要があるが,本件明細書にはこのような技術が開示されていない。
(イ) 構成要件Fは,カウント手段が,入力検出面にタッチされた複数の指が互いに「隣接している」ときは1本としてカウントすることを要件とするが,本件明細書には,複数の指が互いに「隣接している」ことをシステムがどのように判定するかについて説明されていない。
(ウ) 構成要件Gは,制御手段が,最初又は最後に指がタッチした入力検出面の位置に基づいて情報処理装置が所定の動作を行うようにすることを要件とするが, 本件明細書には,最初又は最後に指がタッチした位置に応じて行われる所定の動作のタイプの例が何ら記載されていない。
15 (エ) 構成要件Hは,最初に指がタッチした位置に関する情報を「静止しておく」ことを要件とするが,本件明細書には,システムが,最初に指がタッチした位置の位置情報を記憶し,当該位置に基づいて実行される所定の動作のタイプを選択することの例が何ら記載されていない。
(オ) 以上によると,本件各発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないから,特許法36条6項1号の記載要件(サポート要件)を満たさない。したがって,本件各発明についての特許は,同法123条1項4号に該当するから,特許無効審判により無効にされるべきものである。
【被告の主張】 前記ウにおいて指摘した点などを考慮すると,原告の主張は失当であり,本件各発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえるから,特許法36条6項1号の記載要件に適合している。したがって,本件各発明についての特許は,無効にされるべきものではない。
オ 争点2-5(無効理由5〔明確性要件違反〕は成り立つか)について 【原告の主張】 @構成要件Cにおける「最外端」という文言,A構成要件Fにおける「隣接している」という文言,B構成要件Gにおける「最初若しくは最後にタッチされる指示位置を,指示部位の指示位置として《中略》所定の動作を行う」という文言及び C構成要件Hにおける「指示部位の指示位置を最初にタッチした位置に静止しておく動作」という文言は,いずれも明確でない。
このように,本件各発明の特許請求の範囲は,特許を受けようとする発明を明確に記載したものとはいえないから,特許法36条6項2号の記載要件(明確性要件)を満たさない。したがって,本件各発明についての特許は,同法123条1項4号に該当するから,特許無効審判により無効にされるべきものである。
【被告の主張】 原告の指摘する上記@ないしCの各文言は,いずれも明確である。本件各発明の 16 特許請求の範囲は,特許を受けようとする発明を明確に記載したものといえるから,特許法36条6項2号の記載要件に適合しており,本件各発明についての特許は,無効にされるべきものではない。
(3) 争点3(訂正の対抗主張〔再々抗弁〕は成り立つか)について 【被告の主張】 ア 目的要件への適合性 本件訂正及び本件補正後の本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号所定の「特許請求の範囲減縮」を目的とするものである。
なお,本件各発明における「指示部位の数」は,「指示部位の数の過渡的な変化」を内包していたものであるが,本件訂正が「又は該数の過渡的な変化」という選択肢を追加しているという誤解を防ぐため,適法な本件補正により同文言を削除して,本件補正後の本件訂正では,同訂正が特許請求の範囲減縮を目的とするものであることを文言上疑義がないようにした。
新規事項の追加でないこと 本件明細書の【0042】,【0044】,【0049】,【0051】,【0054】,【0058】,【0053】,【図19】等の記載に照らすと,本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」における訂正である。
ウ 小括 以上のとおり,本件訂正及び本件補正後の本件訂正は,訂正要件を満たす適法なものである。
そして,本件訂正あるいは本件補正後の本件訂正により,本件各発明と甲12発明,甲13発明及び先願発明との構成の違いが明確になって無効理由1ないし3が解消し,また,原告製品は,本件各訂正発明及び本件補正後の本件各訂正発明の技術的範囲に属するから,訂正の対抗主張(再々抗弁)が成り立つ。
【原告の主張】 17 ア 目的要件違反 本件訂正は,訂正前の構成要件Dには含まれていなかった「『指示位置の間の距離』及び『指示部位の数の過渡的な変化』に応じて所定の動作を情報処理装置が行うようにすること」並びに「『指示位置の間の距離の過渡的な変化』及び『指示部位の数の過渡的な変化』に応じて所定の動作を情報処理装置が行うようにすること」を追加することを目的とするものであるから,「特許請求の範囲減縮」を目的とする訂正に該当しない。
なお,本件補正は,訂正請求書の要旨を変更するものであるから,特許法134条の2第9項の準用する同法131条の2第1項に違反し,許されない。
新規事項の追加 本件訂正は,本件明細書に記載されていなかった「一定の時間」及び「特定の時間」という新たな技術的事項を導入するものであり,いわゆる新規事項の追加として許されない。
ウ 小括 以上のとおり,本件訂正は,訂正要件を満たさない。また,原告製品がそもそも本件各発明の構成要件を充足しないことは,既に述べたとおりである。したがって,訂正の対抗主張(再々抗弁)は成り立たない。
当裁判所の判断
1 争点1-1(構成要件C充足性)について (1) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1並びにこれを引用する同請求項2,同請求項4及び同請求項6においては,本件各発明が,「位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」(構成要件C)を具備することを特徴とするタッチパネルシステムであることが規定されている。上記「複数の指示部位」には,当然,指示部位が2個である場合と指示部位が3個以上である場合の双方が含まれるところ,上記特許請求の範囲の記載の文理や,本件明細書において,入力検出面に3つの位 18 置指示具が存在する場合に,当該3個所の位置(光量が0の領域)の中から最外端にある2個所の位置(光量が0の領域)を特定する実施例について説明がされていること(甲3の【0035】,【図7】)からすれば,当該タッチパネルシステムが具備するところの「距離算出手段」は,「位置検出手段により検出される指示部位が2個であれ3個以上であれ,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」であると解される(換言すれば,「位置検出手段により検出される指示部位が2個である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するが,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するわけではない距離算出手段」はこれに当たらないと解される。)。なお,上記「最外端」という文言それ自体の意義については一義的でないようにも思われるが,本件明細書の【0035】,【0040】,【図7】,【図10】の記載及び弁論の全趣旨に照らせば,「最外端にある2個所」とは,「互いに最も離れた位置にある2個所」を指すものと解するのが相当である。
そうすると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を具備していなければ,当該タッチパネルシステムは,構成要件Cを充足しないというほかはない。
(2) これに対し,被告は,通常の用法である「2本指のピンチジェスチャ」(指示部位が2個である場合)においては,2つのタッチ位置が「複数の指示部位のうち最外端の2個所」にそのまま該当し,侵害となる以上,実用上特殊な場合である「3本指以上のピンチジェスチャ」(指示部位が3個以上である場合)を殊更取り上げることに意味はないなどと主張する。
しかしながら,前記(1)で説示したとおり,本件各発明の構成要件の充足性を判断するに当たっては,当該タッチパネルシステムが具備する距離算出手段がどのよう 19 な距離算出手段であるのかが問われるのであって,被告の上記主張のように特定の使用態様(2本指のピンチジェスチャ)のみに着目することによって,「複数の指示部位」という文言が指すもののうちから「2個の指示部位」の場合のみを切り出し,その場合のみを基に侵害判断をすることは相当でない。そして,2本指のピンチジェスチャが通常の用法であるとしても,@「複数の指示部位」という文言が「3個以上の指示部位」の場合をも含むことは当然である上,A実際,頻度は少ないにせよ「3個以上の指示部位」が検出される場合があり得ること,B被告自身,本件明細書(【0035】【図7】)において,3つの位置指示具が存在する場合について説明をしていることに照らすと,指示部位が3個以上である場合を取り上げることに意味がないなどということはできない。さらに,「最外端」の特定は,発明における動作原理にも関係することを考慮すると,被告の上記主張は到底採用することができない。
(3) 以上を前提として原告製品について検討すると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を原告製品が具備していることを示す証拠はない。
かえって,証拠(甲9,18,19)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品のタッチパネルに3本ないし5本の指で1本ずつタッチしてピンチ操作を行った場合,表示イメージの拡大縮小は,最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指の間の距離に基づいて実行されるものではなく,最初及び2番目にタッチされた2本の指に基づいて実行されることが認められる。
(4) そうすると,原告製品は,構成要件Cを充足しないというほかはない。
2 侵害の有無について 以上の次第で,原告製品は,本件各発明の技術的範囲に属しない。
なお,原告製品が本件特許の特許請求の範囲の請求項1,同請求項2,同請求項4及び同請求項6以外の請求項に係る発明の技術的範囲に属する旨の主張立証は, 20 されていない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告による原告製品の生産・譲渡等が本件特許権の侵害を構成すると認めることはできず,被告が原告に本件特許権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことは,明らかである。
結論
よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
追加
21 (別紙)当事者目録原告AppleJapan合同会社同訴訟代理人弁護士長沢幸男同矢倉千栄同蔵原慎一朗同訴訟代理人弁理士大塚康徳同補佐人弁理士大塚康弘同木村秀二同江嶋清仁同大戸隆広被告株式会社シロク同訴訟代理人弁護士永島孝明同安國忠彦同朝吹英太同安友雄一郎同訴訟復代理人弁護士野中信宏同補佐人弁理士久米川正光同若山俊輔22 (別紙)物件目録1iPhone5s2iPhone5c3iPhone54iPhone4S5iPadAir6iPadRetinaディスプレイ・モデル7iPadminiRetinaディスプレイ・モデル8iPadmini9iPad2iPodtouch(第5世代)23 (別紙)特許権目録特許番号第3867226号発明の名称複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム出願日平成12年2月15日登録日平成18年10月20日24 (別紙)訂正目録1本件訂正発明1の分説(下線部は,本件訂正による訂正箇所である。)A情報処理装置と,該情報処理装置に接続され,複数の指示部位を有する指示体による入力検出面へのタッチ動作を前記情報処理装置へ伝えるための,前記入力検出面にタッチされる指示部位の指示位置を検出する位置検出手段を備えたタッチパネルとを有するタッチパネルシステムであって,該タッチパネルシステムは,B前記タッチパネルの入力検出面に同時に又は順にタッチされる指示部位の数をカウントするカウント手段と,C前記位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段と,D’前記距離算出手段により一定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化に応じて,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,前記情報処理装置が行うようにする制御手段と,を具備することを特徴とするE複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム。
2本件補正後の本件訂正発明1の分説(下線部は,本件補正による補正個所である。)A情報処理装置と,該情報処理装置に接続され,複数の指示部位を有する25 指示体による入力検出面へのタッチ動作を前記情報処理装置へ伝えるための,前記入力検出面にタッチされる指示部位の指示位置を検出する位置検出手段を備えたタッチパネルとを有するタッチパネルシステムであって,該タッチパネルシステムは,B前記タッチパネルの入力検出面に同時に又は順にタッチされる指示部位の数をカウントするカウント手段と,C前記位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段と,D”前記距離算出手段により一定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数に応じて,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,前記情報処理装置が行うようにする制御手段と,を具備することを特徴とするE複数の指示部位で操作可能なタッチパネルシステム。
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裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 笹本哲朗