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事件 平成 26年 (ワ) 22864号 特許法に基づく製造販売差止請求事件
東京都江東区<以下略>
原告A (以下「原告A」という。) 横浜市<以下略>
原告B (以下「原告B」という。) 東京都千代田区<以下略>
被告ウシオ電機株式会社
同訴訟代理人弁護士 服部秀一
同 秋山健人
同 長野孝昭
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/12/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,別紙物件目録記載の製品(以下「本件装置」という。)を製造し, 又は販売してはならない。
事案の概要
本件は,発明の名称を「画像からの濃度測定法」とする特許(特許第421 1463号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許 権」という。)を共有している原告らが,被告に対し,被告による 本件装置 1 の製造又は販売が本件特許権を侵害すると主張して,特許法100条1項に基 づき,本件装置の製造及び販売の差止めを求める事案である。
1 前提事実等(証拠等を付記しない事実は,当事者間に争いがない。) (1) 本件特許権 原告らは,次の内容の本件特許権を共有している(甲1,12)。
特 許 番 号 特許第4211463号 発明の名称 画像からの濃度定量法 出 願 日 平成15年2月25日 出 願 番 号 特願2003-96534 登 録 日 平成20年11月7日 (2) 本件発明 本件特許に係る明細書(本件特許は平成15年6月30日以前にされた出 願に係るものであるから,本件特許に係る明細書は特許請求の範囲を含むも のである〔平成14年法律第24号附則1条2号,3条1項,平成14年政 令第214号〕。参照の便宜のため,本判決の末尾に本件特許に係る特許公 報の写しを添付する。)の特許請求の範囲の請求項1及び2(以下,請求 項1及び2記載の各発明を併せて「本件各発明」という。)の記載は,以 下のとおりである(甲1)。
ア 請求項1 「一定の色調の階段状に濃淡を持つフイルムの吸光度を分光光度計で測定 し,その吸光度を表記したフイルムを用いる測定法において,当該フイ ルムをCCDカメラで読み取った画像データの画素値を基に,画素値と 吸光度との検量線を作成し,一方,濃度未知の試料である被試験試料を 同様CCDカメラで読み取った画像データの画素値について,前記画素 値と吸光度との検量線を用いて被試験試料の濃度を吸光度で表現するこ とを特徴とした濃度定量法。」 2 イ 請求項2 「被試験試料の一部に濃度既知の部分を設定し,前記濃度既知の部分につ いて請求項1の画素値と吸光度との検量線から吸光度を求め,その求め た吸光度と前記既知の濃度との関係から,吸光度と濃度との検量線を作 成し,この吸光度と濃度との検量線を用いて,濃度未知の被試験試料の 濃度を表示することを特徴とした請求項1の濃度測定法。」 (3) 被告の行為 被告は,本件装置を製造し,販売している。
2 争点及びこれに対する当事者の主張 本件の争点は,被告による本件装置の製造又は販売が本件特許権を侵害する か否かであり,これに対する当事者の主張は,以下のとおりである。
(原告らの主張) 本件装置の構成は,別紙カタログ記載のとおりである。
本件各発明は,本件装置に組み込まれてプログラムとして実現されており, 本件装置における濃度定量の重要な部分となっているから,本件装置は,本件 各発明の技術的範囲に属し,被告によるその製造又は販売は,本件特許権を侵 害する。このことは,本件装置が株式会社明日香特殊検査研究所(以下「本 件会社」という。なお,原告Aは,本件会社の代表取締役を務める者であ る。)と被告との間で締結された平成22年9月6日付け開発委託契約に基づ き開発されたものであること,原告Bが本件装置のプログラムを担当したこと から明らかである。
(被告の主張) 被告は,本件装置の製造及び販売の過程において,本件各発明を実施してい ない。被告は,原告Aが代表取締役を務める本件会社に対し,株式会社生研と の間で共同開発を行っていた機器に組み込むプログラムの一部に関する開発を 委託したが,上記共同開発により開発された本件装置は,被告が開発した金コ 3 ロイドイムノクロマト法という測定方法を採用しており,同方法は,本件各発 明とは異なる。
また,本件各発明は方法の発明であるところ,本件装置は同方法の使用に用 いる物ではない。
当裁判所の判断
原告らは,本件各発明が本件装置に組み込まれてプログラムとして実現され ており,本件装置における濃度定量の重要な部分となっているから,被告によ る本件装置の製造又は販売が本件特許権の侵害を構成する旨主張する。
しかし,前記前提事実等によれば,本件各発明は,方法の発明であって,物 を生産する方法の発明ではないことが認められる。一般に,物を製造又は販売 する行為が方法(物を生産する方法を除く。)の発明に係る特許権を侵害する というためには,当該製造行為又は販売行為それ自体が当該方法の実施行為を 含んでいるか,当該製造行為又は販売行為が特許法101条4項又は5項の規 定する行為に該当することが必要であるところ,原告らは,被告による本件装 置の製造又は販売が,本件各発明との関係において,上記のいずれかに該当す ることにつき何ら主張しないから,原告らの主張は主張自体失当である。
なお,本件全証拠によるも,本件装置に本件各発明が組み込まれてプログラ ムとして実現されていると認めることはできないから,原告らの主張は,この 点においてもその前提を欠くものであって,採用することができない。
結論
以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却するこ ととし,主文のとおり判決する。