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事件 平成 21年 (行ケ) 10284号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/01/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年1月27日 判決言渡

平成21年(行ケ)第10284号 審決取消請求事件(特許)

口頭弁論終結日 平成23年10月19日

判 決

原 告 協和発酵キリン株式会社

(以下「協和キリン社」という。)

訴訟代理人弁護士 吉 澤 敬 夫

同 三 村 量 一

訴訟代理人弁理士 廣 田 雅 紀

同 高 柳 昌 生

同 杉 村 純 子

被 告 テバ ジョジセルジャール ザートケルエン

ムケド レースベニュタールシャシャーグ

(以下「テバ社」という。)

訴訟代理人弁護士 上 谷 清

同 永 井 紀 昭

同 仁 田 陸 郎

同 萩 尾 保 繁

同 薄 葉 健 司

同 石 神 恒 太 郎

訴訟代理人弁理士 福 本 積

同 中 島 勝

同 田 坂 一 朗

上記当事者間の頭書事件につき,当裁判所は特許法180条の2の規定に基づき

特許庁長官の意見を聴いた上,次のとおり判決する。

主 文




1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実 及び 理由

第1 請求

特許庁が無効2008−800055号事件について平成21年8月25

日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 本件は,被告(テバ社)を特許権者とする特許第3737801号(発明の

名称「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプ

ラバスタチンナトリウム,並びにそれを含む組成物」,請求項の数9,以下「本

件特許」という。)について,原告(協和キリン社)がその全請求項につき特

許無効審判請求をし,これに対し被告は訂正請求をして対抗したところ,特許

庁が,訂正を認めた上で請求不成立の審決をしたことから,これに不服の原告

がその取消しを求めた事案である。

2 争点は,@上記訂正の可否,A上記訂正前の各発明(請求項1ないし9)が

本件特許の優先日前に公然実施されたか
新規性欠如,
特許法29条1項2号


B上記訂正前の各発明及び訂正後の各発明が下記甲1発明又は甲2発明と同一

であったか(新規性欠如,特許法29条1項3号),C上記訂正前の各発明及

び訂正後の各発明が下記甲1発明ないし甲6発明との関係で容易想到であった

か(進歩性欠如,特許法29条2項),D上記訂正前の各発明及び訂正後の各

発明に記載要件違反(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条

項〔「・・・発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その

発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすること

ができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない」,実施可能要件

又は同条6項1号〔「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載し

たものであること」,サポート要件〕)があるか,である。






・甲1: A社発行「医薬品インタビューフォーム(メバロチン錠)1997

年10月改定版」(以下「甲1文献」といい,これに記載された発明

を「甲1発明」という。また,甲1文献に記載された製剤を「甲1製

剤」という。)

・甲2: BIOGAL 社作成の「PRODUCT SPECICATIONS AND CERCIFICATE OF

ANALYSIS:Certificate No.205/00・Batch No.PR-00100」(訳・ビオ

ガル社「製品の使用および分析結果の証明」,以下「甲2文献」とい

い,これに記載された発明を「甲2発明」という。また,甲2文献に

記載されたサンプルを「甲2サンプル」という。)

・甲5: 平成20年5月30日付けB社Eの協和発酵工業株式会社F宛ての

書簡(以下「甲5文献」といい,そこに記載された原末のサンプルを

「甲5サンプル」という。)

・甲6: Council of Europa 作成の PHARMEUROPA VOL.12,No.1January 2000,

114〜116 頁(以下「甲6文献」といい,これに記載された発明を「甲

6発明」という。)

3 なお,本件被告であるテバ社は本件原告である協和キリン社を相手方(被告)

として,訂正前の本件特許(請求項1〜9)に基づき,協和キリン社の販売す

る「プラバスタチンNa塩錠10mg・KH」が上記特許権を侵害するとして

特許権侵害差止訴訟を提起したが,一審の東京地裁は平成22年3月31日請

求棄却の判決(平成19年(ワ)第35324号)をしたため,テバ社が控訴

し,当裁判所に係属中である(知財高裁平成22年(ネ)第10043号)。

第3 当事者の主張

1 請求の原因

(1) 特許庁における手続の経緯

ア 被告(テバ社)は,下記内容の特許(本件特許)の特許権者である。






・優 先 日 平成12年(2000年)10月5日(米国)

・国 際 出 願 日 平成13年(2001年)10月5日(PCT/US

2001/031230,特願2002−53385

8号)

・国 際 公 開 日 平成14年(2002年)4月18日(WO 200

2/030415)

翻訳文提出日 平成14年11月27日(公表特許公報は特表200

4−510817号)

・出 願 人 ビオガル ジョジセルジャール アール テー.

・登 録 日 平成17年11月4日

・特 許 番 号 特許第3737801号

・発 明 の 名 称 プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実

質的に含まないプラバスタチンナトリウム,並びにそ

れを含む組成物

・請 求 項 の 数 9

イ 原告は,平成20年3月27日,本件特許の訂正前請求項1ないし9に

つき,下記無効理由に基づき,特許無効審判請求をしたところ,特許庁は

上記請求を無効2008−800055号事件として審理し,その中で被

告は平成20年7月22日付けで特許請求の範囲変更等を内容とする

訂正請求(本件訂正。訂正内容は後記のとおり,請求項の数9)をしたと

ころ,特許庁は,平成21年8月25日,「訂正を認める。本件審判の請

求は,成り立たない。」旨の審決をし,その謄本は同年8月28日原告に

送達された。



・無効理由A−1: 訂正前の本件各発明は,甲1発明であるか,又は公




実施された発明である(特許法29条1項2号,3

号)。

・無効理由A−2: 訂正前の本件各発明は,甲2発明であるか,又は公

実施された発明である(特許法29条1項2号,3

号)。

・無効理由B−1: 訂正前の本件各発明は,甲1発明及び技術常識に基

づいて当業者(その発明の属する技術の分野における

通常の知識を有する者)が容易に発明できたものであ

る(特許法29条2項)。

・無効理由B−2: 訂正前の本件各発明は,甲2発明及び技術常識に基

づいて当業者が容易に発明できたものである(特許法

29条2項)。

・無効理由B−3: 訂正前の本件各発明は,公然実施の下記甲5サンプ

ルの発明及び下記甲6発明に基づいて当業者が容易

に発明できたものである(特許法29条2項)。

・無効理由B−4: 訂正前の本件各発明は,甲1発明又は公然実施の甲

1製剤の発明及び下記甲6発明に基づいて当業者が

容易に発明できたものである(特許法29条2項)。

・無効理由B−5: 訂正前の本件各発明は,甲2発明又は公然実施の甲

2サンプルの発明及び甲6発明に基づいて容易に発

明できたものである(特許法29条2項)。

・無効理由C−1: 本件特許の特許請求の範囲請求項1(訂正前)に記

載された「プラバスタチンラクトンの混入量が0.5

重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量

%未満である」は,発明の詳細な説明に,当業者が当

該発明の課題を解決できると認識できる程度に具体




例を開示せず,本件出願時の当業者の技術常識参酌

しても,特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで

発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一

般化できるとはいえないから,無効である(前記改正

前特許法36条4項,6項1号)。

(2) 発明の内容

ア 本件訂正前の請求項1〜9(本件訂正前発明1)として記載されている

内容は,以下のとおりである。

・【請求項1】

次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンナトリウム単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混

入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未

満であるプラバスタチンナトリウム。

・【請求項2】

水性の培養液を第一の有機溶媒で抽出し,8.0〜9.5のpHの水

溶液でプラバスタチンを逆抽出し,塩基性溶液を2.0〜3.7のpH

に酸性化し,そして酸性化した水溶液を第二の有機溶媒で抽出してプラ

バスタチンの濃縮有機溶液を形成する,請求項1に記載のプラバスタチ

ンナトリウム。

・【請求項3】




第一と第二の有機溶媒が酢酸イソブチルである,請求項2に記載のプ

ラバスタチンナトリウム。

・【請求項4】

アンモニウム塩が少なくとも1回の結晶化によって,水と逆溶媒の混

合物から精製される,請求項1に記載のプラバスタチンナトリウム。

・【請求項5】

逆溶媒が酢酸イソブチル及びアセトンから成る群から選択される,請

求項4に記載のプラバスタチンナトリウム。

・【請求項6】

塩化アンモニウム塩が水と逆溶媒の混合物に添加され,アンモニウム

塩の結晶化を誘導する,請求項4に記載のプラバスタチンナトリウム。

・【請求項7】

アンモニウム塩が,酸性又はキレート型のイオン交換樹脂を用いて置

き換えられる,請求項1に記載のプラバスタチンナトリウム。

・【請求項8】

プラバスタチンナトリウムが再結晶化によって単離される,請求項1

に記載のプラバスタチンナトリウム。

・【請求項9】

プラバスタチンナトリウムが凍結乾燥によって単離される,請求項1

に記載のプラバスタチンナトリウム。

イ 本件訂正後の請求項1〜9(本件訂正発明1〜9)の内容は,次のとお

りである(なお,訂正部分を下線部分で示した)。

・【請求項1】

次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,




c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンナトリウムを単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混

入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未

満であるプラバスタチンナトリウム。」

・【請求項2〜9】は,本件訂正前のそれと同じ

(3) 審決の内容

審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,@ 本件訂正

請求は,脱字の加入及び明細書記載事項の範囲内の訂正であるので適法であ

る,A 本件各訂正発明は甲1発明あるいは甲2発明と実質的に同一とも公

実施ともいえず,また,それらの発明と甲5文献,甲6発明及び技術常識

に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない,B 本件各

訂正発明には特許法36条(改正前)にいう前記記載要件違反はない,とい

うものである。

(4) 審決の取消事由

しかしながら,審決には以下に述べるとおりの誤りがあるから,審決は違

法として取り消されるべきである。

ア 取消事由1(本件訂正に関する判断の誤り)

(ア) 本件訂正前発明1の技術的範囲については,特許請求の範囲の記載を

文言どおりにとらえれば,「プラバスタチンラクトンの混入量が0.5

重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラ

バスタチンナトリウム」,すなわち,プラバスタチンラクトンの混入量

A重量%が0≦A<0.5であり,エピプラバの混入量B重量%が0≦

B<0.2であるという数字さえ満たせば,本件訂正前発明1の技術的




範囲に属するように見える。

しかし,そのように即断することは誤りである。本件訂正前発明1は,

不純物であるプラバスタチンラクトン及びエピプラバの混入量を減ら

し,高純度のプラバスタチンナトリウムを得ることを目的とした発明で

あり,プラバスタチンラクトン及びエピプラバの混入量を一定数値以下

に抑えたことをもって,従来にない作用効果とするものである。

そうであれば,プラバスタチンラクトンの混入量A重量%が0≦A<

0.5であり,エピプラバの混入量B重量%が0≦B<0.2であると

いう数字さえ満たせば本件訂正前発明1の技術的範囲に属するという

ことはできない。すなわち,数字の上では,プラバスタチンラクトン及

びエピプラバの混入量がいずれも0(あるいは,0に限りなく近い数値)

であるものも,本件訂正前発明1の技術的範囲に属するように見える。

しかし,そのように不純物の混入量が微少なプラバスタチンナトリウム

は,本件訂正前発明1よりもはるかに高度な課題を達成したもの(発明

としての技術が高度なもの)であるから,それよりも課題の達成度の低

い(発明としての技術が未熟である)本件訂正前発明1の技術的範囲

含まれると解することは背理以外の何ものでもない。

(イ) 本件訂正は,不純物であるプラバスタチンラクトンの混入量を訂正前

の「0.5重量%未満」から一挙にその半分以下である「0.2重量%

未満」と変更し,エピプラバの混入量を「0.2重量%未満」からその

半分である「0.1重量%未満」と変更するというものであり,混入量

の数値を大幅に減少させる内容であって,その内容自体からして,「特

請求の範囲減縮を目的とするもの」とは,到底いえない。

(ウ) 仮に,本件訂正について,訂正前後における「特許請求の範囲」の記

載を形式的に比較することで「特許請求の範囲減縮を目的とするも

の」に該当するということが可能であるとしても,本件訂正は実質上特




請求の範囲変更するものとして許されない。すなわち,前記(ア) 及

び(イ) で検討したことを踏まえれば,本件訂正前発明1は,実質上,「プ

ラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%を若干下回る数値であ

り,エピプラバの混入量が0.2重量%を若干下回る数値のプラバスタ

チンナトリウム」をもって,技術的範囲というべきである。そうすると,

訂正後の特許請求の範囲の記載は,実質上当該技術的範囲の外にあるも

のであるから,本件訂正は,「特許請求の範囲を実質的に変更するもの」

というべきである。ここで,「特許請求の範囲を実質的に変更するもの」

に該当するかどうかは,明細書全体ではなく,専ら「特許請求の範囲

の問題であり,訂正の前後における「特許請求の範囲」の記載を比較し

て,発明としての同一性を判断すべきものである。前記(イ) のとおり,

本件訂正は,不純物であるプラバスタチンラクトンの混入量を訂正前の

「0.5重量%未満」から一挙にその半分以下である「0.2重量%未

満」と変更し,エピプラバの混入量を「0.2重量%未満」からその半

分である「0.1重量%未満」と変更するものであり,混入量の数値を

大幅に減少させる内容であって,訂正前後の「特許請求の範囲」の記載

を比較するときには,発明の同一性を欠くことは明らかである。

(エ) 本件訂正前発明1は,プラバスタチンナトリウム自体の純度を規定し

ておらず,組成物中のプラバスタチンラクトンとエピプラバの混入量を

規定しているだけであって,それ以外の不純物の混入量を規定していな

いから,プラバスタチンナトリウムが「高純度」であることを特定した

発明ということはできない。要するに,プラバスタチンナトリウム自体

の純度が規定されず,混合物中の他の不純物の混入量も規定されていな

い以上,本件訂正前発明1も本件訂正発明1も,全く産業分野への応用

可能性を欠く発明であり,この点において既に無効事由を備えたものと

いうべきである。




イ 取消事由2(新規性の欠如に関する判断の誤り)

(ア) 甲1発明と本件訂正前各発明及び本件各訂正発明との同一性を認め

なかった判断の誤り(無効理由A−1に関する判断の誤り)

a プロダクト・バイ・プロセス・クレームの要旨の認定について

特許庁における特許要件の審査・審判においては,いわゆるプロダ

クト・バイ・プロセス・クレームとして規定された発明については,

発明の要旨は,当該製造方法によって得られた物に限定されることな

く,製造方法にかかわらず当該物自体を発明の対象と解することと

し,新規性進歩性を判断するに当たっても,当該物自体を公知の物

と対比する(いわゆる「物同一説」)という運用がされている。他方,

特許権侵害訴訟における特許発明技術的範囲の認定では,特許要件

の審査・審判におけるのと同様,特段の事情がない限り物同一説によ

るとする裁判例(東京地裁平成11年9月30日判決)と,技術的範

囲の解釈は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈すべきであるから,

特段の事情がない限り,請求の範囲の記載を意味のないものとして解

釈することはできない(いわゆる「製法限定説」)とする裁判例(東

京地裁平成14年1月28日判決)があり,学説もこれらの裁判例に

対応するように,分かれている。

しかし,いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームとして規

定された発明においても,特許請求の範囲製造方法が明確に記載さ

れている以上,当該製造方法を無視して発明の要旨を認定すべきでは

ない。このことは,特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について

審理するに当たっての発明の要旨認定につき,特段の事情のない限

り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされる

べきであるとした最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45

巻3号123頁〔リパーゼ事件〕及び特許法70条の趣旨に照らして




も明らかである。

したがって,本件においても,プロダクト・バイ・プロセス・クレ

ームとして規定された発明であるからといって,本件訂正前発明1に

つき,製造方法についての記載部分を除外して発明の要旨を認定する

ことは許されないものと解すべきである。

上記の趣旨に照らし,本訴において,原告は,審決の取消事由とし

て,新規性進歩性の欠如を理由とする無効理由に対する判断の誤り

を主張する点については,製法限定説を主位的に主張し,物同一説を

予備的に主張する。

もっとも,製造方法を考慮するとしても,本件訂正発明1のように,

プラバスタチンを「塩析結晶化」する工程を含むことに進歩性はない。

このことは,被告の「プラバスタチン又はその医薬として許容される

塩の単離及び精製方法」に係る特願2004−278522の出願

(甲24),及びプラバスタチンをアンモニウム塩の形態で「塩析結

晶化」する方法について,特願2005−304900の出願(甲3

4)が特許庁において,いずれもプラバスタチンの精製方法において

周知の塩析方法を用いるにすぎず,当業者であれば容易になし得る,

として拒絶されている(甲25,甲35)ことからも明らかである。

また,水溶性の物質を塩析を用いて精製する方法は本件特許の優先

日前に公知であり(甲30),スタチン系の物質の精製に塩化アンモ

ニウムを用いることについての動機付けもある(甲26)。塩析法自

体は,不純物を除去する精製法の一種であるから,塩化アンモニウム

を用いた塩析により,エピプラバ,またはプラバスタチンラクトンが

除去できることは特段,顕著な効果ということはできない(甲25,

甲33)。

さらに,プラバスタチンラクトンをプラバスタチンナトリウムに変




換する方法(水酸化ナトリウムを用いる方法。甲20)は本件特許の

優先日前に公知であるから,塩析法にはエピプラバの除去だけを望め

ばよく,エピプラバを効率よく除去できる塩を選択すればよいこと

は,当業者が容易に想到できる。

このように,塩化アンモニウムを塩として採用して塩析を行うこと

によりプラバスタチンアンモニウム塩の結晶を取得する工程でエピ

プラバを除去し,塩析で除ききれなかったプラバスタチンラクトン,

及びその後の精製工程で生成したプラバスタチンラクトンは,水酸化

ナトリウムを加えることによりプラバスタチンナトリウムに変換で

きるので,最終的にエピプラバ及びプラバスタチンラクトンの含有量

が少ないプラバスタチンナトリウムを取得することは,本件特許の優

先日において当業者が容易に想到できることであった。

以上のとおり,審決が本件特許発明進歩性判断において,「塩析

結晶化」という方法の部分について進歩性を肯定した点は誤りであ

る。

b 本件訂正前発明1との対比

本件訂正前発明1の技術的範囲は,「プラバスタチンラクトンの混

入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%

未満であるプラバスタチンナトリウム」である。

これに対し,甲1文献のメバロチン錠は,HPLCで測定した時の

面積百分率で,「プラバスタチンラクトンを0.02〜0.06%,エ

ピプラバを0.19〜0.65%含有するプラバスタチンナトリウム

製剤」であり,該面積百分率の値が重量%で表示した値とほとんど同

じであることは審決の認定するところであるから,本件訂正前発明1

は,実質的に甲1発明である。

c 本件訂正発明1との対比




本件訂正発明1の技術的範囲は,「プラバスタチンラクトンの混入

量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未

満であるプラバスタチンナトリウム」というにすぎず,甲1発明の「プ

ラバスタチンラクトンを0.02〜0.06%,エピプラバを0.19

〜0.65%含有するプラバスタチンナトリウム製剤」とは,プラバ

スタチンラクトンの混入量で一致し,エピプラバの混入量が0.09

%程度異なるにすぎない。0.09%程度異なる差異は,原料,反応

条件又は精製操作次第で常に変動するものであって,当業者にとって

両者は同一と判断される範囲にすぎない。

したがって,本件訂正発明1と甲1発明とは実質的に同一である。

d 以上のことは,請求項1を直接又は間接に引用する本件訂正前発明

2ないし9及び本件訂正発明2ないし9についても同様である。

(イ) 甲2発明と本件訂正前各発明及び本件各訂正発明との同一性を認め

なかった判断の誤り(無効理由A−2に関する判断の誤り)

a 甲2文献及び甲2サンプルの公知性を認めなかった誤り

審決は,甲3(平成20年9月10日付け書簡)等の原告(協和キ

リン社)が提出した証拠について,「これらの証拠をもって秘密保持

契約が締結されていなければ秘密保持義務はないとするのが医薬品

業界における常識であるとすることはできず,秘密保持契約書が提出

されていないことをもって,甲2文献及びその分析対象のサンプルが

誰でも入手可能であったとすることはできない。」(審決13頁15

行〜19行)と判断して,甲2文献及びその分析対象である甲2サン

プルの公知性を否定した。

しかし,甲2文献及び甲2サンプルは,甲3(平成20年9月10

日付け書簡)に記載されているとおり,本件特許の優先日前にビオガ

ル社から商社(C社)を介して訴外製薬会社(B社)に,秘密事項で




あるとの契約・説明等がなく配布されて,その内容が公然実施された

ものであり,公知性はそれだけで肯定される。秘密保持契約の存在等

の公知性を妨げる事情は,特許権者において主張立証すべきものであ

り,審決は,主張立証責任の分配について解釈を誤ったものである。

加えて,本件では,秘密保持契約が締結されていなかったことについ

ては当事者間に争いがない上,その旨の合意や業界の慣習等の存在し

なかったことは原告の提出した陳述書,書簡(甲11〜16)等によ

り明らかである。

b 本件訂正前発明1との対比

本件訂正前発明1の技術的範囲は前記(ア)bのとおりであり,これ

に対し,甲2発明は,「プラバスタチンラクトンを0.03%,エピ

プラバを0.11%含有するプラバスタチンナトリウム製剤」である

から,本件訂正前発明1は実質的に甲2発明である。

c 本件訂正発明1との対比

本件訂正発明1の技術的範囲は前記(ア)cのとおりであるが,甲2

発明の「プラバスタチンラクトンを0.03%,エピプラバを0.11

%含有するプラバスタチンナトリウム製剤」とは,プラバスタチンラ

クトンの混入量で一致し,エピプラバの混入量が0.01%程度異な

るにすぎない。エピプラバの混入量が0.01%程度異なる差異は,

検出誤差の範囲にとどまる程度の差異であるから,両者は実質的に同

一である。

d 以上のことは,請求項1を直接又は間接に引用する本件訂正前発明

2ないし9及び本件訂正発明2ないし9についても同様である。

ウ 取消事由3(進歩性の欠如に関する判断の誤り)

(ア) 無効理由B−1に関する判断の誤り

a 審決が,甲1発明及び技術常識に基づいても本件各訂正発明を容易




に想到できないとした判断は誤りである。

審決は,「医薬品に関する技術分野において,その有効成分である

化学物質をできるだけ高純度で得ることは当然の課題であるとして

も,有効成分である化学物質をある純度以上に高純度とする手段を当

業者が容易に想到し得ない場合は,そのような高純度の有効成分であ

る化学物質の発明は,当業者が容易に発明をすることができるもので

はない。

そこで,上記相違点について,エピプラバの混入量を0.1重量%

未満とする手段を当業者が容易に想到し得るかどうかを以下検討す

る」(審決16頁21行〜27行)とし,「エビプラバの混入量を減

少させるために,精製を繰り返すとプラバスタチンラクトンの混入量

が増大するおそれがある。そうすると,本件特許発明1のプラバスタ

チンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エビプラバの混入

量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウムは,単に精製

工程を繰り返せば得られるというものではない。 と認定している
」 (審

決16頁34行〜17頁2行)。

し か し , 一般的な技術常識として,医薬品の純度を高め,不純物

の混入量を低減させようとすることは当業者が普通に行うことであ

る。純度や混入不純物量で特定された有用化学物質に係る発明が,公

知の高純度の有用化学物質に係る発明に対して進歩性が認められる

場合があるのは,公知の発明から予測できない特別な技術的な効果を

奏する場合に限られると解されるが,甲1文献の10頁右欄には,プ

ラバスタチン類縁物であるプラバスタチンラクトンやエピプラバ等

の混入量が低減された99%前後の高純度プラバスタチンナトリウ

ムが開示されている。既にこのように高純度であるプラバスタチンナ

トリウムに比して,エピプラバの混入量がわずかに0.09%程度少




ないプラバスタチンナトリウムが,当業者の予測を超えた優れた治療

効果などの技術的効果を奏するとは到底考えられない。したがって,

エピプラバの混入量の低減に進歩性はない。

また,プラバスタチンラクトンが増大するとされる点についても,

エピプラバはプラバスタチンと構造自体は非常に似ているが,プラバ

スタチンラクトンと違い,自己の分子骨格内で基が移動する分子内転

位によってプラバスタチンに変換する物質ではないため,本件訂正発

明1に記載されるような通常のプラバスタチンナトリウムの精製操

作において,プラバスタチンからエピプラバが生じることがないこと

は周知である。一方,プラバスタチンラクトンは,プラバスタチンと

その構造は大きく異なるが,pHにより容易にプラバスタチンに転換

する性質があることも周知である。よって,エピプラバを除去した後,

プラバスタチンラクトンを除去する工程をとれば,プラバスタチンラ

クトンの増大を招くことなく,エピプラバ,プラバスタチンラクトン

とも高度に除去されたプラバスタチンナトリウムが得られることは

周知の事実から当然導かれることである。

したがって,審決の上記理由は失当である。

b 審決は,さらに,「本件特許発明1は,プラバスタチンをアンモニ

ウム塩の形態で『塩析結晶化』するという甲第1号証には記載されて

いない工程を採用することにより,プラバスタチンラクトンの混入量

が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満

であるプラバスタチンナトリウムを得ることができるものである。」

(審決17頁3行〜7行)と認定しているが,製造方法を考慮すると

しても,プラバスタチンを「塩析結晶化」する工程を含むことなどに

進歩性がないことは,前記イ(ア)aのとおりである。

(イ) 無効理由B−2に関する判断の誤り




審決が,甲2発明及び技術常識に基づいても本件各訂正発明を容易に

想到できないとした判断は誤りである。

審決は,「請求人の提出した証拠からは,甲第2号証の書面及びその

分析対象のサンプルが,本件特許の優先日前に誰でも入手可能であった

とすることはできない。」(審決17頁22行〜24行),「そして甲

第2号証には,プラバスタチンをアンモニウム塩の形態で『塩析結晶化』

するという精製工程は記載されておらず,上記(4) イ.のとおり,甲第

2号証に基づいてプラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満

であり,エビプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチン

ナトリウムを得るための手段を当業者が容易に想到することはできな

い。」(審決18頁2行〜6行)と認定している。

しかし,甲2文献及び原末サンプルの公知性を否定した判断が誤りで

あることは,前記イ(イ)aのとおりであり,また,プラバスタチンを「塩

析結晶化」する工程を含むことなどに進歩性がないことは,前記イ(ア)

aのとおりであるから,審決の上記理由は失当である。

そして,前記イ(イ)bのとおり,甲2文献には,プラバスタチン類縁

物であるプラバスタチンラクトンやエピプラバ等の混入量が既に十分

に低減された高純度プラバスタチンナトリウムが開示されており,この

ように高純度であるプラバスタチンナトリウムに比して,エピプラバの

混入量がわずかに0.01%程度少ないプラバスタチンナトリウムが,

当業者の予測を越えた優れた治療効果などの技術的効果を奏するとは

到底考えられない。

甲2文献との0.01%程度のエピプラバの混入量の差は,製造時に

日常的に起きる微差にすぎず,そのような混入量の差異によって進歩性

が認められることはない。

(ウ) 無効理由B−3に関する判断の誤り




審決が,甲5文献に記載された甲5サンプル及び甲6発明に基づいて

も本件各訂正発明を容易に想到できないとした判断は誤りである。

a 審決は,甲5文献に記載された「秘密事項」に関する記載は個人的

見解を示したものであることを理由として,「プラバスタチンナトリ

ウムの原末のサンプルの発明(甲第5号証参照)は,本件特許の優先

日前に公然実施された発明ということはできない」(審決20頁4行

〜6行)と認定する。

しかし,本件では,秘密保持契約がなかったことは当事者間で争い

がなく,また,上記サンプルが顧客に交付された時点で秘密保持契約

が存在しなかったことについては甲3等の第三者の供述書によって,

当業界において秘密保持契約なしに秘密保持義務を負うなどの慣習

など存在しないことについては甲11〜15,甲16などによって明

らかであって,甲5サンプルの公知性については疑問の余地がない。

この点,審決は,上記甲号証を「個人的な見解」などとして退け,

公知性を否定しているが,甲5サンプルが顧客に交付されたことに関

して当該顧客が秘密保持義務を負うことについては,それを主張する

被告側に立証責任があるのであって,審決は立証責任の解釈を誤って

いる。そして,被告は,顧客に秘密保持義務が存在したことを立証し

得ていないことは明らかである。

b 審決は,「甲第6号証記載の検査方法においては,プラバスタチン

ラクトンは検査対象不純物として認識されておらず,プラバスタチン

ラクトンについては何ら言及がなされていない。そうすると,甲第6

号証の記載からは,同号証に記載された高速液体クロマトグラフィー

(HPLC)法が,プラバスタチンラクトンとプラバスタチンナトリ

ウムを分離できるものであるかどうかは不明であり,エピプラバの混

入量,プラバスタチンラクトンの混入量をともに一定量以下に抑える




ために,甲第6号証に記載された高速液体クロマトグラフィー(HP

LC)法を採用することを当業者が容易に想到し得るということはで

きない。なお,請求人は『分析方法』を『精製方法』に転用すること

は通常行われていることであると主張しているが,仮にそうであると

しても・・・容易に想到し得るということはできない」(審決20頁

18行〜26行)とする。

しかし,甲6文献にはプラバスタチンラクトンに関する記載こそな

いが,むしろプラバスタチンと構造的に非常に近いエピプラバが分離

できる条件であることから,構造的にはより遠いものであるプラバス

タチンラクトンであれば当然に分離できる条件にあることは技術常

識である。また,プラバスタチンはラクトン化することで疎水性が上

がるため,甲6文献の逆相液体クロマトグラフフィー(HPLC)の

条件では,プラバスタチンラクトンはプラバスタチンよりも後にピー

クが検出されることも技術常識であり,実際に甲4(D社の「プラバ

スタチンの精製試験結果報告書」)でもそのとおりの結果が得られて

いる。

さらに,「分析方法」が公知の場合,それを「精製方法」に転用を

試みることは当業者の技術常識であるから,「分析方法」から「精製

方法」への転用の発想自体はごく当たり前のことである。

すなわち,分析用HPLCをそのまま物質の精製に用いることは,

通常行われていることである(甲61)。また,当業者であれば,分

析用HPLCの条件を分取用に最適化できる。プラバスタチンナトリ

ウムとその類縁物質がカラムにより分離できる方法が知られている

場合,カラムからのHPLCによる物質の分離を「分析」に用いるか,

「精製」に用いるかは,目的の違いにすぎない(甲46)。

この点に関して,被告は,甲6文献で得られるプラバスタチン画分




の分取液には酢酸及びトリエチルアミンが混入しており,これを除去

することが困難であると主張する。

しかし,プラバスタチン分取画分に酢酸及びトリエチルアミン等の

水溶性の塩が含まれていたとしても,それらを除去することは技術的

に容易であり,技術常識である。

したがって,審決の上記判断は誤りである。

(エ) 無効理由B−4に関する判断の誤り

審決が,甲1発明又は公然実施の原末サンプル及び甲6発明に基づい

ても本件各訂正発明を容易に想到できないとした判断が誤りであるこ

とは,前記(ア) 及び(ウ) から明らかである。

(オ) 無効理由B−5に関する判断の誤り

審決が,甲2発明又は公然実施の原末サンプル及び甲6発明に基づい

ても本件各訂正発明を容易に想到できないとした判断が誤りであるこ

とは,前記(イ) 及び(ウ) から明らかである。

エ 取消事由4(無効理由C−1に関する判断の誤り)

(ア) サポート要件違反

a 審決は,「本発明の好ましい態様を遵守するプラバスタチンナトリ

ウムの製造実験例であり,かつ,段落【0031】に,『本発明の好

ましい態様を遵守することによりプラバスタチンナトリウムが,プラ

バスタチンラクトンが0.2%(w/w)未満で且つエピプラバが0.

1%(w/w)未満で単離されうる』ことを例示する2つの例であると

記載されている,例1及び例3は,いずれもプラバスタチンナトリウ

ムが,プラバスタチンラクトンが0.2%(w/w)未満で且つエピプ

ラバが0.1%(w/w)未満で単離されたプラバスタチンナトリウム

の製造実験例であると理解するのが自然である。そうすると,本件特

許明細書の発明の詳細な説明には,プラバスタチンラクトンの混入量




が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満

であるプラバスタチンナトリウムを製造するための,工程a)〜工程

e)おける具体的な条件が,工程a)〜工程e)に関する段落【00

10】〜【0030】に,『好ましい態様』として具体的に記載され

ている。そして,その製造実施例が例1,例3として記載され,混入

量の具体的な数値は記載されていないが,プラバスタチンラクトンの

混入量が0.2%(w/w)未満で且つエピプラバの混入量が0.1%

(w/w)未満であったことが記載されているといえる。」(審決25

頁15行〜31行)と認定判断している。

しかし,本件明細書には,「プラバスタチンナトリウムは更に,2

つが例1及び3で例示される,本発明の好ましい態様を遵守すること

によってプラバスタチンラクトンが0.2%(w/w)未満で且つエピ

プラバが0.1%(w/w)未満で単離されうる。」との記載があるだ

けで,プラバスタチンナトリウムの不純物であるプラバスタチンラク

トンやエピプラバを実際に測定した数値は何ら記載されていないし,

「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満」及び「エピ

プラバの混入量が0.1重量%未満」であるプラバスタチンナトリウ

ムが得られたことを裏付ける,実験によりサポートされた具体例の開

示はおろか,かかるプラバスタチンナトリウムが得られたか否かを確

認するための具体的な測定方法すら明細書に開示されていない。

このように,特許請求の範囲の記載が,実験によりサポートされた

具体例により開示されていないときは前記改正前特許法36条6項

1号が定めるいわゆる明細書のサポート要件に適合しないというべ

きである。

b また,審決は,「段落【0031】には『単離されうる』と記載さ

れているが,・・・,各工程に関する段落【0010】〜段落【00




30】の記載,この段落【0031】の記及び『得られた』と記載さ

れている例1,例3の製造実験例の記載とから,本件特許明細書はサ

ポート要件を満たすものといえるのであるから,段落【0031】が

『単離されうる』と記載されていることをもって本件特許明細書がサ

ポート要件を満たさないとすることはできない。」(審決26頁36

行〜27頁3行)と認定判断している。

しかし,上記段落【0010】〜【0030】の記載からは不純物

の量は導けないし,「単離されうる」との記載は,あくまでも可能性

を述べているにすぎない。プラバスタチンラクトン及びエピプラバと

いう複数の不純物成分の含量を共に実際に測定しているとはいえな

い明細書の記載に照らせば,「プラバスタチンラクトンが0.2%

(w/w)未満で且つエピプラバが0.1%(w/w)未満」が,実験によ

りサポートされていないことは明らかであり,上記審決における判断

は失当である。

c 審決は,「当審の上記判断は上記のとおりであり,例5において純

度が99.9%であることを含め,例1,3〜6の純度に基づくもの

ではなく,この点は当審の上記判断に影響を及ぼすものではない。」

(審決25頁38行〜26頁2行)との判断を示している。

この「例1,3〜6の純度に基づくものではない」旨の判断は,以

下の理由によるものと思われる。すなわち,甲2文献の「Assay(on

water-free and solvent-free basis)」の欄には,「SPECIFICATION」

として「98.0−101.0%」,「RESULTS」として「99.8

%」と記載されている。この記載からも明らかなように,プラバスタ

チンナトリウムの純度は101.0%になりうることが示されてい

る。このことは,日本薬局方の通則(甲9)の記載,「31 医薬品

各条の定量法で得られる成分含量の値について,単にある%以上を示




し,その上限を示さない場合は101.0%を上限とする.」によっ

ても裏付けられている。

そうだとすると,本件明細書の例5に記載されている最高純度(約

99.9%)のプラバスタチンナトリウムであっても,最大約1.1

%の不純物を含むことになり,仮にプラバスタチンラクトンとエピプ

ラバの比率がおよそ2:1であるとした場合,プラバスタチンラクト

ンの混入量が0.7重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.3

重量%未満であるということはできても,「例5にはプラバスタチン

ナトリウムの純度が約99.9%である旨記載されており,例えば,

プラバスタチンラクトンの含有量は必然的に0.2%未満である」と

か,「製品はプラバスタチンラクトン以外の不純物を含むであろうか

ら,プラバスタチンラクトンの含量は0.2%となる筈である」とは

いえないことは明らかである。

(イ) 実施可能要件違反

前記(ア)によれば,当業者が本件明細書の記載に基づいて「プラバス

タチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入

量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」を得ることが

できるとはいえないから,前記改正前特許法36条4項1号が定めるい

わゆる実施可能要件を満たしていないことも,明らかである。

2 請求原因に対する認否

請求原因(1)ないし(3) の各事実は認めるが,(4)は争う。

3 被告の反論

審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

(1) 取消事由1に対し

本件訂正は,特許請求の範囲の「減縮」を目的とし,かつ,実質上特許請

求の範囲を拡張し又は変更するものでないから,訂正を認めた審決の認定に




何ら違法はない。

ア 原告の主張(ア) につき

原告は,プラバスタチンラクトン及びエピプラバの混入量がいずれも0

(あるいは,0に限りなく近い数値)であるプラバスタチンナトリウムは,

本件訂正前発明1よりはるかに高度な課題を達成したものであるから,そ

れよりも課題の達成度の低い本件訂正前発明1の技術的範囲に含まれる

ものではないと主張する。

しかし,本件訂正前発明1の技術的範囲は,請求項記載のとおりの「プ

ラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの

混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」であり,

文理解釈上,この技術的範囲には,「プラバスタチンラクトンの混入量が

0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満である

高純度プラバスタチンナトリウム」の全てが包含されるのは当然であっ

て,当然に本件訂正発明1のプラバスタチンナトリウムも包含される。

このことは,本件明細書(特許公報,甲43)の「例5」には純度99.

9%のプラバスタチンナトリウムの例が記載されているように,プラバス

タチンラクトン,エピプラバの混入量が0(ゼロ)に限りなく近いプラバ

スタチンナトリウムをサポートする実施例があることからも裏付けられ

る。

以上のとおり,当該技術的範囲には,不純物の混入量が微少なプラバス

タチンナトリウムも明らかに包含されているから,原告の上記主張は誤り

である。

イ 原告の主張(イ) につき

原告は,本件訂正は,混入量の数値を大幅に減少させる内容であって,

その内容自体からして「特許請求の範囲減縮を目的とするもの」とはい

えないと主張する。




しかし,本件訂正は,プラバスタチンラクトンの混入量について「0.

5重量%未満」から「0.2重量%未満」に,エピプラバの混入量につい

て「0.2重量%未満」から「0.1重量%未満」に,各訂正するもので

あるから,特許請求の範囲の「減縮」に当たることは明らかである。

そして,前記アで述べたとおり,本件訂正前発明1の技術的範囲には,

不純物の混入量が微少なプラバスタチンナトリウムも明らかに包含され

ているから,プラバスタチンラクトンあるいはエピプラバの混入量の上限

を「0.5重量%未満」あるいは「0.2重量%未満」から「大幅に減少」

させようと,そうしたプラバスタチンナトリウムが依然本件訂正前発明1

技術的範囲に含まれることは明らかであり,原告の上記主張は失当であ

る。

ウ 原告の主張(ウ) につき

原告は,本件訂正前発明1は,実質上,「プラバスタチンラクトンの混

入量が0.5重量%を若干下回る数値であり,エピプラバの混入量が0.

2重量%を若干下回る数値のプラバスタチンナトリウム」をもって,技術

的範囲というべきであるから,本件訂正は,「特許請求の範囲を実質的に

変更するもの」というべきであると主張する。

しかし,原告の上記解釈は,そもそも本件訂正前発明1の請求項に「0.

5重量%未満」,「0.2重量%未満」という明確な記載があるにもかか

わらず,請求項に記載されていない事項を付加して解釈すべきとするもの

であって全く論拠がなく,また,具体的にどの程度下回る数値なのか明ら

かにしておらず,発明の「構成」を何ら特定していない点で不合理であり,

誤りであることは明らかである。

前記ア及びイのとおり,本件訂正前発明1の技術的範囲には,文理解釈,

実施例によるサポート等に照らして,「プラバスタチンラクトンの混入量

が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であ




るような高純度プラバスタチンナトリウム」の全てが包含されるから,本

件訂正が発明の「変更」に当たるということはできない。

(2) 取消事由2に対し

ア 原告の主張イ(ア)(甲1発明との同一性)につき

(ア) 本件訂正前各発明のように,新規な「物」が得られた場合,多くの場

合において,その新規な「物」を得るための新規な方法を実現すること

が必要である。しかし,このように,新規な「物」の取得が,新規な方

法の取得により初めて可能になった場合でも,いったん新規な「物」が

得られれば,その「物」に係る発明は,その製造方法による限定を受け

ることなく,「物」自体の発明として特許性を有するのである。このこ

とは,我が国の化学分野における確立した実務慣行である。

このことは,例えば次の卑近な例からも明らかである。すなわち,新

規な抗生物質の発明においては,多くの場合,新規な微生物を自然界か

ら分離し,その新規な微生物を培養するという新規な方法により,初め

て新規な抗生物質が得られる。すなわち,新規な培養方法は,新規な抗

生物質の発明の成立のための必須要素である。このような場合において

も,当該抗生物質の発明は,培養方法(微生物)の拘束を離れて特許さ

れる。なお,抗生物質を目的物とする場合,そのための生産微生物は製

造方法の概念に属する(乙27)。したがって,本件訂正前各発明の要

旨に関する被告(テバ社)の主張に何ら矛盾はない。

(イ) ところで,甲1文献及び甲1製剤は,そこに開示のプラバスタチンナ

トリウムについてその取得方法(製法)を開示せず,かつ,「従来技術」

参酌しても,甲1文献からその製法を読み取ることはできない。

したがって,前記のように,甲1文献及び甲1製剤は「発明」を開示

するものではなく,新規性はもちろんのこと,進歩性を判断する際の「引

用例」となり得ないというべきであるから,原告の主張は失当である。




(ウ) 本件訂正発明1との対比

原告は,本件訂正発明1と甲1発明とは,プラバスタチンラクトンの

混入量で一致し,エピプラバの混入量が0.09%程度異なるにすぎず,

0.09%程度の差異は当業者にとって両者は同一と判断される範囲に

すぎないから,両者は実質的に同一であると主張する。

しかし,特許発明技術的範囲は,請求項の記載により特定される(特

許法70条1項) 請求項の記載は明瞭であることが義務付けられる
。 (同

36条6項2号)。また,引用例の開示事項も,その文理に従って,

一義的かつ明瞭に解釈されるべきことが原則である。明瞭な基準,根拠

もなく,文理解釈を無視した実質解釈を採用すべき理由はない。

したがって,原告の上記主張は文理解釈の原則を失念した不合理な主

張であって,失当である。

イ 原告の主張イ(イ)(甲2発明との同一性)につき

(ア) 原告の主張(イ)a(甲2文献の公知性等)につき

a 原告は,本件では,秘密保持契約が締結されていなかったことにつ

いては当事者間に争いがない上,その旨の合意や業界の慣習等も存在

しなかったと主張する。

しかし,甲2文献及び甲2サンプルには,次のとおり,秘密保持義

務が課されており,「公然実施」された発明(29条1項2号),「刊

行物に記載」の発明(29条1項3号),のいずれにも該当するもの

でもない。

すなわち,甲2文献及び甲2サンプルは,テバグループが日本市場

への本格的な進出を始めた2000年(平成12年)に,ビオガル社

(被告の前身会社)からB社に提供されたものであるが,日本市場へ

の本格参入に当たり,テバグループは,ビジネスの提携が可能と思わ

れる日本の製薬企業を厳選した。甲2文献や甲2サンプルは,極めて




限定された顧客に配布されたものであり,「誰でも入手可能なもので

あった」との事実はない。

また,本件での提供は,研究開発段階(未承認段階)の後発薬のた

めの原薬サンプル及び甲2(試験成績書)の提供である。よって,こ

れらはあくまで研究開発目的用であり,B社内部においても,これら

アクセスし得る者は同社の製剤研究部の者に限定されていた。甲2

文献における「Sample for Experimental purposes only」の記載は,

まさに,原薬サンプル・試験成績書は,これを受領した後発薬を開発

している当該製薬企業の研究開発部門内限りで,研究開発の目的のた

めのみに使用されるように,との意味である。

そして,未承認の後発薬のためのサンプル・試験成績書の情報は,

秘密裏に保つというのが世界の製薬業界における通常の常識である。

日本市場,欧米市場を問わず,後発薬(ジェネリックドラッグ)につ

いては,その製品の品質の維持,信用性の確保にジェネリックメーカ

ーは腐心している。サンプル提供という取引開始段階で,いちいち秘

密保持契約を締結していては商取引の迅速性が失われる。このため,

書面による秘密保持契約を締結しない場合が多々ある。しかし,この

ような場合に,秘密保持契約はなくとも,特定の相手方との商取引の

内容や情報を,当事者間限りで扱われる情報とすることは,一般的に

も商取引における常識である。すなわち,商慣習上,取引の内容や情

報を秘密扱いとすることが期待され,了解されているのである。

さらに,サンプル・試験成績書の提供があった2000年(平成1

2年)当時,先発薬であるA社のプラバスタチンナトリウム製品(メ

バロチン錠)を保護する同社の基本特許(特許第1347361号)

が存続中であった。本件は,同特許の存続中における後発薬開発のた

めの原薬サンプル・試験成績書提供であり,2000年(平成12年)




当時,サンプルやその試験成績書を秘密裏に保つ必要があったし,そ

の他,先発メーカーに対する配慮という日本独特のしがらみや,B社

とテバ社との継続的で円満なビジネス関係の存在という観点からも

秘密に保持することは当然の要請であったのである。

この点は,2000年(平成12年)の提供時から本件無効審判に

至るまでの8年間以上もの間,甲2文献及び甲2サンプルやそれらに

関する情報が第三者に開示されることもなくB社の研究開発部門に

おいて保管されていたという客観的事実状況自体からも明らかであ

る。

以上のとおり,本件では,書面による秘密保持契約がなくとも,黙

示の秘密保持契約若しくは秘密保持の慣習があったというべきであ

るから,甲2文献及び甲2サンプルの公知性を認めなかった審決の判

断に誤りはない。

b 甲2文献及び甲2サンプルは,開示にかかる「物」の取得方法(製

法)の開示を欠き,公然実施された「発明」(29条1項2号)や,刊

行物記載の「発明」(29条1項3号)を証するものではない。

すなわち,甲2文献は,開示にかかるプラバスタチンナトリウムの

製造方法(精製方法)について記載を欠いている。物の「発明」を開

示するというためには,その物の取得方法が周知でない限り, 「製
その

法」の記載も要する。「製法」の記載を欠く甲2文献及び甲2サンプ

ルは,公然実施された「発明」(29条1項2号)や,刊行物記載の「発

明」(29条1項3号)を開示するものではなく,新規性はもちろん

のこと,進歩性を判断する際の引用例とすることはできない。

c 甲2文献の刊行物性

特許法29条1項3号の「刊行物」といえるためには,不特定又は

多数の者を対象としているという「公開性」と,対象が本来的に頒布




する目的であるという「頒布性」が必要であるとされる。

しかし,甲2文献は,B社という特定企業宛てに作成されており,

およそ不特定または多数の者を対象としているとの事情はない。 ま

た,当該特定企業に対して提供されたものであって,本来的に「頒布」

を目的としたとの事情もない。したがって,甲2文献は,「刊行物」

に当たらない。

(イ) 本件訂正発明1との対比

原告は,本件訂正発明1と甲2発明とは,プラバスタチンラクトンの

混入量で一致し,エピプラバの混入量が0.01%程度異なるにすぎず,

エピプラバの混入量が0.01%程度の差異は,検出誤差の範囲にとど

まる程度の差異であるから,両者は実質的に同一であると主張する。

しかし,前記ア(ウ)のとおり,新規性あるいは進歩性の判断に際して,

発明の要旨認定についてはもちろんのこと,引用例の解釈においても,

明確な文理解釈が貫かれるべきである。明確に存在する「エピプラバの

混入量が0.01%」の相違点について,検出誤差であるから実質的に

同一であると解釈してよいとの主張は許されないというべきである。

(3) 取消事由3に対し

ア 無効理由B−1につき

(ア) 原告の主張(ア) aに関し

a 原告は,エピプラバの混入量がわずかに0.09%程度少ないプラ

バスタチンナトリウムが,当業者の予測を超えた優れた治療効果など

の技術的効果を奏するとは到底考えられないなどとして,甲1発明及

技術常識に基づいても本件各訂正発明を容易に想到できないとし

た審決の判断は誤りであると主張する。

しかし,本件訂正発明1は,プラバスタチンラクトンの混入量を0.

2重量%未満に低減し,かつエピプラバの混入量を0.1重量%未満




に低減させることにより極めて高純度にしたプラバスタチンナトリ

ウムに関するものであり,このように高純度にしたプラバスタチンナ

トリウムは,本件訂正発明1の前には存在せず,新規な「化学物質」

である。

そして,新規な化学物質に係る発明の進歩性は,まず第一に,当該

新規な化学物質を得る(製造する)ための方法を見出したことの困難

性(すなわち,構成の困難性)に依拠すべきものである。

したがって,本件訂正発明1の,甲1発明に対する進歩性は,甲1

文献における,「プラバスタチンラクトンの混入量が0.02〜0.

06%であり,エピプラバの混入量が0.19〜0.65%であるプ

ラバスタチンナトリウム」に関する記載に基づいて,本件訂正発明1

の,「プラバスタチンラクトンの混入量を0.2重量%未満に低減し,

かつエピプラバの混入量を0.1重量%未満に低減させることにより

極めて高純度にしたプラバスタチンナトリウム」との構成が,容易に

製造できたか否かにより判断すべきである。

この点,本件訂正発明1は,上記の困難性を,プラバスタチンを,

いったんアンモニウム塩に転換し,これを塩析結晶化法にかけるとい

う全く新規な方法により克服したのである。

これに対し,甲1文献には,「プラバスタチンラクトンの混入量が

0.02〜0.06%であり,エピプラバの混入量が0.19〜0.

65%であるプラバスタチンナトリウム」の記載は存在するが,その

製造方法は全く記載されていない。つまり,当業者は,甲1文献によ

っても,そこに記載されている「プラバスタチンラクトンの混入量が

0.02〜0.06%であり,エピプラバの混入量が0.19〜0.

65%であるプラバスタチンナトリウム」から,プラバスタチンラク

トンの混入量を0.2重量%未満に低減し,かつエピプラバの混入量




を0.1重量%未満に低減させることにより極めて高純度にしたプラ

バスタチンナトリウムを製造するにはいかにすればよいか,そのヒン

トを得ることは不可能である。

そして,「エピプラバの混入量が0.09%少ない」との構成の差

異はわずかであるとの原告の主張も,原告の単なる恣意的な主張にす

ぎず,この構成の相違を克服する「手段」に当業者が容易に想到でき

なかったことは明らかである。

そして,このことは,請求項1を直接又は間接に引用する本件訂正

発明2ないし9についても同様である。

以上により,甲1発明及び技術常識に基づいても本件各訂正発明を

容易に想到できないとした審決の判断に誤りはない。

b また,原告は,「エビプラバの混入量を減少させるために,精製を

繰り返すとプラバスタチンラクトンの混入量が増大するおそれがあ

る。」との審決の判断を非難するが,エピプラバは,プラバスタチン

と極めて類似しており,したがって相互に分離することが極めて困難

である。他方,プラバスタチンラクトンは,プラバスタチンのラクト

ン体であり,例えば精製工程においてプラバスタチンから生成する。

したがって,プラバスタチンからプラバスタチンラクトンへのラクト

ン化を防止しながらエピプラバ及びプラバスタチンラクトンの両者

を所定量(エピプラバは0.1重量%,プラバスタチンラクトンは0.

2重量%)未満に低減することは非常に困難である。つまり,従来技

術である精製方法を繰り返したとしても,本件訂正発明1が規定する

プラバスタチンナトリウムを取得することは極めて困難であるのは

事実であるから,この点に関する審決の判断に誤りはない。

c 原告は,エピプラバを除去した後,プラバスタチンラクトンを除去

する工程をとれば,プラバスタチンラクトンの増大を招くことはない




等と主張する。

しかし,原告の主張は典型的な「後知恵」である。すなわち,原告

が提案する方法は,まず第1工程としてエピプラバを除去し,その後

第2工程として,プラバスタチンラクトンを除去する「2段階法」で

ある。しかしながら,エピプラバとプラバスタチンラクトンの両方を

所定のレベル未満に低減する方法として,まず第1工程としてエピプ

ラバを除去し,その後第2工程として,プラバスタチンラクトンを除

去するという「2段階法」が,本件特許の優先日前に知られていた又

は示唆されていたことを示す証拠は全く存在しない。

(イ) 原告の主張(ア) bに関し

原告は,本件訂正発明1において,製造方法を考慮するとしても,プ

ラバスタチンを「塩析結晶化」する工程を含むことなどに進歩性がない

と主張する。

しかし,前記(ア)aのとおり,新規な化学物質の進歩性はその構成取

得の困難性に基づいて評価すれば足りるところ,これを本件訂正発明1

についていえば,甲1文献における「プラバスタチンラクトンの混入量

が0.02〜0.06%であり,エピプラバの混入量が0.19〜0.

65%であるプラバスタチンナトリウム」に関する記載に基づいて,本

件訂正発明1の,「プラバスタチンラクトンの混入量を0.2重量%未

満に低減し,かつエピプラバの混入量を0.1重量%未満に低減させる

ことにより極めて高純度にしたプラバスタチンナトリウム」は容易に取

得できなかったところであり,甲1文献との対比において本件訂正発明

1の進歩性は明らかであり,請求項1を直接又は間接に引用する本件訂

正発明2ないし9についても同様である。

イ 無効理由B−2につき

原告は,甲2文献との0.01%程度のエピプラバの混入量の差は,製




造時に日常的に起きる微差にすぎず,そのような混入量の差異によって進

歩性が認められることはないとして,審決が甲2発明及び技術常識に基づ

いても本件各訂正発明を容易に想到できないとした判断は誤りであると

主張する。

しかし,そもそも甲2文献が公知性,刊行物性を欠いており,進歩性

判断する際の「引用例」になり得ないことは,前記(2)イ(ア)のとおりであ

る。

仮に,甲2文献が,特許法29条1項に該当し,同29条2項進歩性

判断の基礎となり得るとしても,甲2発明と,本件訂正発明1とは,エピ

プラバの混入量において0.01%以上の差があり明確に異なっている。

そうしたところ,甲2文献には,プラバスタチンラクトンの増量を抑えつ

つ,プラバスタチンラクトンとエピプラバの双方を減少させ得る本件訂正

発明1に特有の「塩析結晶化法」という精製工程の開示はなく,また,従

来技術である精製工程を単に繰り返しても本件訂正発明1の構成を取得

できないことは前記のとおりであるから,当業者は,甲2発明に基づいて,

本件訂正発明1の構成に想到することは極めて困難である。

したがって,甲2発明と対比しての本件訂正発明1の進歩性は明らかで

あり,また,請求項1を直接又は間接に引用する本件訂正発明2ないし9

も同様であるから,原告の上記主張は失当である。

ウ 無効理由B−3につき

(ア) 原告の主張(ウ) aに関し

甲5サンプルに公知性がないことは,甲2サンプルに関する前記(2)

イ(ア)と同様である。

(イ) 原告の主張(ウ) bに関し

原告は,甲6文献に記載された逆相液体クロマトグラフィー(HPL

C)は記載こそないがプラバスタチンラクトンに使用できるとした上,




「分析方法」が公知の場合,それを「精製方法」に転用を試みることは

当業者の技術常識であると主張する。

しかし,甲6文献は,わが国における「日本薬局方」に相当し,欧州

における医薬品の許可基準及びそれとの適合性を試験するための検査

方法などを公定した書類であり,そこには,この試験・検定方法をプラ

バスタチンナトリウムの精製に使用することについては,全く記載され

ていない。また,本件優先日前に,そのような技術常識が存在したとの

証拠は全く存在せず,現実に高速液体クロマトグラフィーによりプラバ

スタチンナトリウムの精製が行われたという証拠はどこにも存在しな

い。

また,甲6文献に記載のHPLC分析法をプラバスタチンナトリウム

の精製に転用することに関しては,その動機付けを阻害する具体的な事

情が存在する。すなわち,甲6文献の方法では,プラバスタチンナトリ

ウムをHPLC分析する際に,移動相に酢酸及びトリエチルアミンを酢

酸が過剰となるように加えており,甲4(精製試験結果報告書)もそれ

を踏襲している。その結果,HPLCにより分取されたプラバスタチン

溶液には,酢酸及びトリエチルアミンが酢酸が過剰となるように混入さ

れることとなる。このような過剰量の酢酸が混入したプラバスタチン溶

液を乾燥して固体とする場合,酢酸イオンの一部がナトリウムイオンと

結合するため,プラバスタチンイオンとナトリウムイオンとの比率が崩

れ,プラバスタチンイオンの一部がナトリウムイオンと結合できなくな

る。ナトリウムイオンと結合できなかったプラバスタチンイオンはラク

トンを形成し,プラバスタチンラクトンを生じる傾向がある。これは,

溶出液から,プラバスタチンナトリウムを乾燥などにより回収しようと

する場合顕著となる。したがって,高純度のプラバスタチンナトリウム

の獲得を意図する当業者であれば,不純物量を増大させる甲6文献のH




PLC法をプラバスタチンナトリウムの精製に適用することはあり得

ず,当業者が,プラバスタチンの精製のために甲6文献のHPLC法を

適用することの動機付けを欠くことは明らかである。

エ 無効理由B−4につき

この点に関する原告の主張は,甲6文献にはプラバスタチンナトリウム

の分析方法が記載されているから,甲1製剤に甲6文献記載の分析方法を

適用すれば,本件訂正発明1の高純度プラバスタチンナトリウムが得られ

たはずであるというものである。

しかし,甲6文献には,HPLCによりプラバスタチンナトリウムの精

製に関しては記載がないこと,また,そのような精製が行われたという証

拠も存在しないこと,甲6文献に記載のHPLC分析法をプラバスタチン

ナトリウムの精製に転用する動機付けを欠くことは前記ウのとおりであ

るから,原告の上記主張は失当である。

オ 無効理由B−5につき

この点に関する原告の主張は,甲6文献にはプラバスタチンナトリウム

の分析方法が記載されているから,甲2文献及び甲2サンプルに甲6文献

記載の分析方法を適用すれば,本件訂正発明1の高純度プラバスタチンナ

トリウムが得られたはずであるというものである。

しかし,甲2文献及び甲2サンプルが進歩性判断のための「引用例」に

なり得ないことは,前記(2)イ(ア)のとおりであり,また,甲6文献記載の

HPLC分析法をプラバスタチンナトリウムの精製に転用する動機付け

を欠くことは前記ウのとおりであるから,原告の上記主張は失当である。

(4) 取消事由4に対し

ア(ア) 原告の主張エ(ア)(サポート要件違反)a及びbにつき

原告は,本件明細書には,「単離されうる。」との記載があるだけで,

「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満」及び「エピプ




ラバの混入量が0.1重量%未満」であるプラバスタチンナトリウムが

得られたことを裏付ける具体例の開示も具体的な測定方法も開示され

ていないとして,本件訂正発明1はサポート要件に違反する旨主張す

る。

しかし,請求項1には,「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2

重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラ

バスタチンナトリウム」を得ることができる方法の例として,工程a)

〜e)が記載されているところ,本件明細書の「発明の詳細な説明」に

は上記工程a)〜e)の好ましい態様が具体的にかつ詳細に記載されて

おり,また,本件明細書の段落【0031】には,「プラバスタチンナ

トリウムは更に,2つが例1及び3に例示される,本発明の好ましい態

様を遵守することによってプラバスタチンラクトンが0.2%(w/w)

未満で且つエピプラバが0.1%(w/w)未満で単離されうる。」と

記載されており,そして,上記例1及び例3においては,上記の工程a)

〜e)の好ましい態様の具体例が実際に行われ,その結果として,約9

9.8%の純度のプラバスタチンナトリウムが現実に得られている。

したがって,段落【0031】の記載を考えれば,上記例1及び例3

において得られた約99.8%の純度のプラバスタチンナトリウムが,

「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプ

ラバの混入量が0.1重量%未満である」という要件を満たしているこ

とは明らかである。

また,本件明細書の段落【0051】の最終文章には,例5において

製造されたプラバスタチンナトリウムの純度が「約99.9%」であっ

たことが記載されている。このことは,プラバスタチンラクトン及びエ

ピプラバ並びにその他の不純物の合計が約0.1%未満であることを意

味する。したがって,プラバスタチンラクトンの混入量が0.2%(w/w)




未満であり,エピプラバの混入が0.1%(w/w)未満であるという要件

が必然的に満たされている。

以上により,この点に関する審決の判断は妥当であり,原告の上記主

張は失当である。

(イ) 原告の主張エ(ア) cにつき

原告は,甲2文献及び甲9文献の記載を根拠として,本件明細書の例

5に記載されている最高純度(約99.9%)のプラバスタチンナトリ

ウムであっても,プラバスタチンナトリウムの最高純度は101%であ

り得るから,最大約1.1%の不純物を含むことになり,したがって,

不純物の合計量が0.1%とは限らない旨主張する。

しかし,甲2文献における[Assay」(分析)の欄の右側の欄は,ビオ

ガル社の社内製品規格,すなわち製品とし出荷できるか否かを判断する

際の判断基準を定めたものであり,原告が併行して引用する甲9文献

は,医薬の一般的な製品企画を公的に定めたものであって,いずれにし

ても医薬製剤の製品規格(すなわち商品の規格)を政策的あるいは商業

的観点から定めたものである。そして,上記の基準はあくまで,プラバ

スタチンナトリウムの純度のみを「内部標準法」により測定した値(定

量値)について,その許容され得る上限値が101%であることを意味

するものであり,不純物の量とは無関係である。他方,本件明細書の例

5の「約99.9%」という値は,「面積百分率法」により測定された

値であり,プラバスタチンナトリウムと他の不純物との総量を100%

とした場合に,プラバスタチンナトリウムの相対比率が約99.9%で

あったことを意味する。かかる手法で測定された純度の上限値は100

%であり,これよりも高くなることはあり得ない。

したがって,原告の上記主張は失当である。

イ 原告の主張エ(イ) (実施可能要件違反)につき




上記アと同様の理由により,本件訂正発明1が実施可能要件を満たすこ

とは明らかであり,この点に関する原告の主張は失当である。

第4 特許法180条の2第2項に基づく特許庁長官の意見

1 当裁判所が本件訴訟に関し,特許法180条の2第1項に基づき特許庁長官

に対し平成23年5月20日付けでなした求意見の内容は次のとおりである。

(1) 本件特許の請求項 1(訂正前と訂正後を含む。)のa)〜e)には製造方

法が記載されているが,同請求項は特許庁の審査基準にいう「プロダクト・

バイ・プロセス・クレーム」と理解してよいか。

(2) 審決は,本件の無効理由B−1を判断するに当たり,「甲第 1 号証には記

載されていない工程を採用することにより,」と「プラバスタチンナトリウ

ムを得るための手段を当業者が容易に想到することはできない。」(17頁

3行〜11行)として,製法要件の相違をもって進歩性の有無を判断してい

るように解されるが,そのような理解でよいか。特許庁の審査基準との関係

はどうか。

(3) その他本件に関する参考意見

2 平成23年7月5日付け特許庁長官の意見

(1) 求意見事項(1) について

ア 審査基準にいうプロダクト・バイ・プロセス・クレーム

審査基準は,特許法36条5項(以下,法条は,特許法を指す。)の「特

許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事

項のすべてを記載」すべき旨の規定の趣旨に鑑み,特許請求の範囲の記載

について,種々の表現形式を用いること,例えば,特許を受けようとする

発明が「物の発明」の場合については,その特定事項として,作用・機能

・性質・特性・方法・用途その他のさまざまな表現方式を用いることを許

容する。(審査基準,第T部 明細書及び特許請求の範囲 第 1 章 明細書

及び特許請求の範囲の記載要件5〜6頁,2.2.2(4)参照)




そして,上記表現方式として,特に製造方法により生産物を特定しよう

とする記載がある請求項を「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と

称し,特許請求の範囲の記載要件についての審査における指針や,新規性

進歩性の審査における発明の認定の指針を示している。(審査基準,第

T部 明細書及び特許請求の範囲 第 1 章 明細書及び特許請求の範囲の記

載要件11頁,2.2.2.1(7)及び第U部 特許要件 第 2 章 新規

性・進歩性8頁,1.5.2(3)参照)

イ 本件特許の訂正前及び訂正後の請求項1について

(ア) 本件特許の訂正前及び訂正後の請求項1の記載は,それぞれ次のとお

りである。

・ 訂正前

「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え

そして

e)プラバスタチンナトリウム単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの

混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重

量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

・ 訂正後

「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,




d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え

そして

e)プラバスタチンナトリウムを単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの

混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重

量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

(イ) 上記請求項には,物の発明であるプラバスタチンナトリウムを特定す

る事項について,不純物であるプラバスタチンラクトンならびにエピプ

ラバの混入量についての記載があるほか,当該物の製造方法として段階

a)〜e)を含んで成ることが記載されている。

そうすると,上記アのとおり,審査基準において,製造方法によって

生産物を特定しようとする記載がある請求項を「プロダクト・バイ・プ

ロセス・クレーム」と指呼するのであるから,「段階a)〜e)を含ん

で成る方法によって製造される…プラバスタチンナトリウム」という表

現方式をとる本件特許の訂正前及び訂正後の請求項1はいずれも,審査

基準にいう「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」である。

(2) 求意見事項(2) について

ア 審決の記載

審決は,想到容易性に係る原告主張の無効理由B−1について,以下の

とおり判断する。(審決16頁7行〜17頁19行。なお,A〜Kは,説

明の便宜のために各段落ごとに付与した記号であり,以下,各段落を,「段

落A」,「段落B」,…などという。)

A 本件特許発明1はプラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未

満であり,エピプラバの混入量が 0.1 重量%未満であるプラバスタチン

ナトリウムであるのに対し,甲第1号証に記載された発明はプラバスタ

チンラクトンを0.02〜0.06%,エビプラバ(意見書注:「エピ




プラバ」の誤記と解する。以下同じ。)を0.19〜0.65%を含有

するプラバスタチンナトリウムであるから,両発明は,エビプラバの混

入量の点で異なる。

B 請求人は,一般に,医薬品等に用いられる有機化学物質の純度を高め,

不純物である有機化学物質の混入量を低減させようとすることは当業

者が普通におこなうことであるから有機化学物質自体の発明の進歩性

の判断に際しては,純度や混入不純物量で特定された有機化学物質に係

る発明が,公知の高純度の有機化学物質に係る発明に対して進歩性が認

められるのは,公知の発明から予測できない技術的な効果を奏する場合

に限られると解せられるとした上で,本件特許発明はいずれも当業者の

予測を超えた技術的効果(例えば,優れた治療効果)を奏するものでは

なく進歩性を有しないと主張している。

C 医薬品に関する技術分野において,その有効成分である化学物質をで

きるだけ高純度で得ることは当然の課題であるとしても,有効成分であ

る化学物質をある純度以上に高純度とする手段を当業者が容易に想到

し得ない場合は,そのような高純度の有効成分である化学物質の発明

は,当業者が容易に発明をすることができるものではない。

D そこで,上記相違点について,エビプラバの混入量を 0.1 重量%未満

とする手段を当業者が容易に想到し得るかどうかを以下検討する。

E エピプラバは,本件特許明細書の段落【0006】に,「プラバスタ

チン C-6 エピマー(「エピプラバ(epiprava)」)と記載があるとおり,

プラバスタチンC-6 エピマーであって,プラバスタチンと 6 位の置換

の立体配置が異なるのみの化学構造がきわめて類似した化合物であり,

エビプラバをプラバスタチンと分離することは困難である。さらに,プ

ラバスタチンラクトンは,プラバスタチンの分子内反応により生成し,

この反応は精製工程においても生ずる(乙第3号証の第2頁目(例3))




ものであり,エビプラバの混入量を減少させるために,精製を繰り返す

とプラバスタチンラクトンの混入量が増大するおそれがある。

F そうすると,本件特許発明1のプラバスタチンラクトンの混入量が

0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であ

るプラバスタチンナトリウムは,単に精製工程を繰り返せば得られると

いうものではない。

G そして,本件特許明発明1(意見書注:「本件特許発明1」の誤記と

解する。)は,プラバスタチンをアンモニウム塩の形態で「塩析結晶化」

するという甲第1号証には記載されていない工程を採用することによ

り,プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピ

プラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウムを

得ることができるものである。

H したがって,甲第1号証に基づいて,プラバスタチンラクトンの混入

量が 0.2 重量%未満であり,エピプラバの混入量が 0.1 重量%未満であ

るプラバスタチンナトリウムを得るための手段を当業者が容易に想到

することはできない。

I また,本件特許発明1を引用し,さらに特定事項を付する本件特許発

明2〜9についても同様である。

J よって,本件特許発明1〜9は,甲第1号証に記載された発明に基づ

いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

K なお,同様の理由により,本件特許発明1〜9は,甲第1号証にその

説明が記載されている本出願前に販売されていたメバロチン錠の発明

に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはで

きないことを念のために記す。

イ 特許庁における進歩性有無の判断手法について

(ア) 審判審理における29条2項所定の要件の判断,すなわち,当業者が




同条1項各号に該当する発明に基づいて容易に発明をすることができ

たか否かの判断は,通常,審理の対象となる請求項に係る発明の要旨を

認定し,先行技術のうちで請求項に係る発明の構成に近似する特定の先

行技術を選択して引用発明を認定し,両発明を対比して両発明の相違す

る構成(相違点)を認定し,上記引用発明やそれ以外の先行技術ないし

周知技術等を総合的に考慮し,当業者において,上記相違点を補完ない

し代替させることによって,請求項に係る発明に到達することが容易で

あったか否かにより行われる。

ちなみに,審査基準(第U部 第 2 章 新規性進歩性14頁,「2.

進歩性判断の基本的な考え方」参照)に示されるように,審査にお

いても,審判審理と同様な判断手法がとられる。

(イ) また特に,新規性進歩性の判断におけるプロダクト・バイ・プロセ

ス・クレームに係る発明の要旨の認定について,審判では,原則,最終

的に得られた生産物自体を意味しているものと解して審理を行ってお

り,審査でも同様な手法がとられている。(審査基準,第U部 特許要

件第 2 章 新規性進歩性8頁,1.5.2(3)参照)

物の発明の中には,生産物の構造等によってはその生産物を適切に表

現することができず,製造方法によってのみ生産物を適切に表現するこ

とができる場合(例えば,動植物等の材料から特定の方法を用いて単離

した物質等)がある。2条3項に規定されているように,「物の発明

実施行為と「物を生産する方法の発明」の実施行為とは異なるため,

上記のような場合に,「物を製造(生産)する方法の発明」とは別に「物

の発明」について特許を受けようとする出願人は,製造方法により表現

した物の発明を特許請求することとなる。にもかかわらず,製造方法

より表現した(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)物を,請求項

に記載された製造方法によって得られた物に限定して解釈すると,「物




の発明」と「物を生産する方法の発明」の実施行為は実質的に同じとな

ってしまい,発明の保護の観点から適切でなく,「物の発明」として特

許を取得する意味が没却されてしまう。プロダクト・バイ・プロセス・

クレームとしては,上記のような場合のほかにもさまざまな場合がある

が,上記(1)アで述べたとおり,プロダクト・バイ・プロセス・クレー

ムに係る発明は,あくまでも「物の発明」であって表現形式として製造

方法を用いたにすぎないものである。以上の観点から,プロダクト・バ

イ・プロセス・クレームに係る発明は,新規性進歩性等の特許要件の

判断に際し,一律に,最終的に得られた生産物自体を意味しているもの

と解することとしている。

ウ 本件審決の進歩性有無の判断についての具体的意見

(ア) 原告主張の無効理由B−1は,訂正後の請求項1に係る発明(本件特

許発明1)は甲1に記載された発明及び技術常識から想到容易であると

いうものである。そこで審決は,プロダクト・バイ・プロセス・クレー

ムに係る発明である本件特許発明1の進歩性有無を検討するに際し,上

記イに記載した判断手法にしたがい,まず,本件特許発明1の要旨を「プ

ラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバ

の混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」と認定

し,甲1に記載された発明(引用発明)を「プラバスタチンラクトンを

0.02〜0.06%,エビプラバを0.19〜0.65%を含有する

プラバスタチンナトリウム」と認定し,さらに,両発明の相違点につい

ては「エビプラバの混入量の点で異なる」と認定している。 【段落A】
( )

ところで,本件明細書には,請求項に記載されたプラバスタチンナト

リウムの単離方法の詳細について記載され 【0011】 【0030】 ,
( 〜 )

続けて「・・・本発明の方法の実施で単離されるプラバスタチンナトリ

ウムは,プラバスタチンラクトン及びエピプラバを実質的に含まない。




以下の例で示すように,プラバスタチンナトリウムは,プラバスタチン

ラクトンの混入が0.5%(W/W)未満で且つエピプラバの混入が0.2

%(W/W)未満で単離されうる。プラバスタチンナトリウムは更に,2つ

が例1及び3で例示される,本発明の好ましい態様を遵守することによ

ってプラバスタチンラクトンが0.2%(W/W)未満で且つエピプラバが

0.1%(W/W)未満で単離されうる。」(【0031】)と記載されて

いる。これらの記載から,請求項に記載された製造方法を採用すること

によって,請求項に記載された「プラバスタチンラクトンが0.2重量

%未満で且つエピプラバが0.1重量%未満」のプラバスタチンナトリ

ウムが得られると理解することができる。すなわち,請求項1に記載さ

れたa)〜e)の工程は,結局のところ,その工程を経て得られたプラ

バスタチンナトリウムの不純物濃度に帰結する要素であり,不純物濃度

で規定されている「プラバスタチンラクトンが0.2重量%未満で且つ

エピプラバが0.1重量%未満」のプラバスタチンナトリウムに,さら

になんらかの限定を加える事項ではないと理解することができる。

そのような理由で,審決は,本件特許発明1の要旨を認定するに際し

て,製造方法を特定した部分である段階a)〜e)に言及することなく

最終生産物を認定し,また,引用発明との対比においても,上記段階a)

〜e)の製造方法を相違点として認定せず,最終生成物であるプラバス

タチンナトリウムに含まれた不純物であるエピプラバの混入量の差異

(本件特許発明1:0.1重量%未満,引用発明:0.19〜0.65

%)のみを認定している。そして,本件特許発明1における上記相違点

に係る構成に到達することが容易であったか否か,すなわち,「エピプ

ラバの混入量が0.1重量%未満」であるプラバスタチンナトリウムが

引用発明及び技術常識から想到容易であるかどうかについて,【段落

B】以下で検討を行っている。




以上のことから,審決は,本件特許発明1が段階a)〜e)という特

定の製造方法を含むものであること,すなわち,本件特許発明1と引用

発明との相違点が製法要件の相違であることを前提に進歩性の判断を

したわけではないと,形式上,いうことができる。

そして,以下述べるように,審決は,実質的にも,製法要件の相違を

もって進歩性の有無を判断するものではないといえる。

(イ) 審決は,相違点に係る構成の想到容易性について検討するに当たり,

「有効成分である化学物質をある純度以上に高純度とする手段を当業

者が容易に想到し得ない場合は,そのような高純度の有効成分である化

学物質の発明は,当業者が容易に発明をすることができるものではな

い。」(【段落C】)として医薬品の技術分野において進歩性が肯定さ

れる場合の考え方を示し,当該考え方を「相違点について,エビプラバ

の混入量を 0.1 重量%未満とする手段を当業者が容易に想到し得るかど

うかを以下検討する。」(【段落D〜H】)として本件事案に当てはめ

て,本件特許発明1は引用発明から想到容易でない旨の結論を導き出し

ている。

(ウ) 一般に,本件特許発明1のような化学物質に関する発明において,そ

の化学物質を得るための手段を示す刊行物や技術常識等が存在しない

ときは,当該発明の新規性及び進歩性は肯定される。

これを本件事案に則していうと,プラバスタチンナトリウムの純度を

高くすることが仮に自明の課題であったとしても,高い純度のプラバス

タチンナトリウムを得るためのいかなる手段(本件特許の明細書等に記

載されている手段と同じかどうかを問わない。)も本件特許の出願時に

おいて知られていなかったときに,本件特許発明1において,はじめて

課題を達成し,不純物であるエピプラバの混入量を特定の値未満とする

ことができたのであれば,当該特定純度のプラバスタチンナトリウムの




発明には,新規性及び進歩性が認められることとなる。審決の【段落C】

は,これを説示するものである。

(エ) 上記(ウ)のような考え方は,審査基準に具体的には記載されていない

が,進歩性の通常の判断手法(上記イ(ア))を踏まえれば,当然の帰結

である。

進歩性の判断においては,請求項に係る発明と引用発明とを対比して

認定した相違点について,引用発明やそれ以外の先行技術ないし周知技

術等を総合的に考慮し,相違点を補完ないし代替させることで請求項に

係る発明が想到容易かを判断する。これを本件に当てはめると,本件特

許発明1と甲1に記載された発明(引用発明)との相違点は有効成分で

ある化学物質(プラバスタチンナトリウム)における不純物(エピプラ

バ)の混入量の差異のみであって,これが単に自明の課題を特定したも

のにすぎないとしても,課題が自明であるというだけでは進歩性を否定

する根拠には足りず,相違点を補完ないし代替させるための技術,すな

わち当該課題を達成するための手段(その発明に係る明細書等に開示さ

れている課題を達成するための手段と同じかどうかを問わない。)が,

本件出願時において,引用発明やそれ以外の先行技術ないし周知技術

として当業者に知られたものであるか否かが審理される。そして,相違

点を補完ないし代替させるための技術,本件についていえば,課題を達

成するための手段が本件出願時に存在しなければ,本件出願時の技術水

準からその課題を達成することは困難であったということになり,発明

進歩性は肯定される。

(オ) 審決は,「本件特許発明1は,・・・甲第1号証には記載されていな

い工程を採用することにより,・・・エピプラバの混入量が 0.1 重量%

未満であるプラバスタチンナトリウムを得ることができるものである。

したがって,甲第1号証に基づいて,・・・エピプラバの混入量が 0.1




重量%未満であるプラバスタチンナトリウムを得るための手段を当業

者が容易に想到することはできない。」(【段落G〜H】)と説示する

が,この部分の説示は,製法要件の相違すなわち本件特許の請求項1に

記載されている段階a)〜e)からなる製造方法が甲1に記載された発

明(引用発明)に特定されていないことをもって進歩性の有無を判断し

ているのではない。上記ア〜エを総合すると,審決は,引用発明との相

違点に係る構成であるエピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプ

ラバスタチンナトリウムを達成する手段は,本件特許発明1が採用した

手段を含め,甲1には記載も示唆もなく,出願時の技術常識でもないこ

とをもって進歩性の有無を判断していることが理解できる。審決が,

「プラバスタチンをアンモニウム塩の形態で『塩析結晶化』するという

甲第1号証には記載されていない工程を採用することにより」(【段落

G】)のように,本件特許の請求項1に記載の製造方法をことさら挙げ

て説示したのは,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバ

スタチンナトリウムを具体的に達成する手段として唯一存在する請求

項1に記載の製造方法ですら,甲1には記載も示唆もされていないこと

をいうためである。

そして,この審決の判断は,仮に,本件特許発明1が製造方法につい

ての特定事項を有しないもの,換言すれば,本件特許の請求項1の記載

が「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピ

プラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

であったとしても変わるものではないのは,上述(エ)のとおりである。

(カ) また,審査基準との関係についてみると,審決は,無効理由B−1を

判断するに当たって,プロダクト・バイ・プロセス・クレームである請

求項1に係る発明を,最終的に得られた生産物自体と解して進歩性の判

断をしており,審査基準に則しているといえる。審査基準は,あらゆる




ケースについて具体的な判断手法を記載するものではないため,本件発

明のような高純度の化学物質に関する発明についての具体的な判断手

法は,審査基準に記載されているわけではないが,審決の判断が審査基

準に示された一般的な判断手法(前述した第U部 第 2 章 新規性・進歩

性14頁,「2.4 進歩性判断の基本的な考え方」参照)からみて当

然の判断であることは,上述したとおりである。

(3) 求意見事項(3) について

本件が特許されるまでの審査官による審査は,以下述べるように,審査基

準に則したものではない点を付記する。

ア 本件特許に係る審査経緯

概ね,次のとおりである。

被告は,平成13年10月5日に本件特許の国際出願をした。その特許

請求の範囲には,製造方法の記載を含む請求項,含まない請求項がそれぞ

れ記載されていた。

本件特許の出願に対して,平成16年3月17日付けで,出願に係る発

明は新規性進歩性を欠く等の理由で,拒絶理由通知がされた。これに対

し,被告は,平成16年9月24日付けで手続補正書等を提出した。

本件特許の出願は,平成17年4月22日付けで,進歩性を欠く等の理

由で拒絶査定を受けた。しかし,この拒絶査定において,製造方法の記載

がされていた請求項(本件特許の訂正前の請求項1と同一の内容)につい

ては,拒絶理由がある請求項としては挙げられていなかったが,製造方法

の記載がなく,プラバスタチンラクトンやエピプラバの含有量のみで特定

したプラバスタチンナトリウムに関する請求項については,拒絶査定の対

象となっていた。

これに対し,被告は,平成17年7月25日,拒絶査定不服審判の請求

をするとともに,同日付けで手続補正書を提出して,製造方法の記載がな




く,プラバスタチンラクトンやエピプラバの含有量のみで特定したプラバ

スタチンナトリウムに関する請求項をすべて削除し,本件特許の訂正前の

特許請求の範囲の記載と同一とする補正を行った。そして,前置審査の結

果,本件出願は,同年9月16日付けで特許査定を受けた。

イ 審査についての審査基準との整合性

審査官は,拒絶査定において,拒絶理由がある請求項として製造方法

限定のない請求項のみを挙げ,プロダクト・バイ・プロセス・クレームを挙

げておらず,さらに,前置審査において,製造方法の限定のない請求項が削

除され,プロダクト・バイ・プロセス・クレームのみが特許請求の範囲に記

載されることとなった出願について特許査定をした事実が認められる。

しかし,審査基準では,プロダクト・バイ・プロセス・クレームは,最

終的に得られた生産物自体を意味しているものと解して,新規性進歩性

審査を行うこととなっており(上記(2)イ(イ)参照),最終生産物が同じであ

れば,製造方法の限定のある請求項に係る発明も限定のない発明も同じ発明

と解して審査を行うことになるから,製造方法の限定の有無によって異なる

判断をした審査は,審査基準に則したものということはできない。そうする

と,製造方法の限定がされていることのみをもってその請求項に係る発明の

新規性ないし進歩性を肯定した本件特許に係る審査は,少なくとも審査基準

に沿うものではない。

3 平成23年8月23日付け特許庁長官の意見(補足)

(1) 求意見事項(1) についての意見の補足

ア 審査基準にいうプロダクト・バイ・プロセス・クレームについて,前回

意見書において,以下のとおり意見を述べたが,これに関連し,後記イ以

降に,補足意見を述べる。

「審査基準は,特許法36条5項(以下,法条は,特許法を指す。)の

「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認




める事項のすべてを記載」すべき旨の規定の趣旨に鑑み,特許請求の範

囲の記載について,種々の表現形式を用いること,例えば,特許を受け

ようとする発明が「物の発明」の場合については,その特定事項として,

作用・機能・性質・特性・方法・用途その他のさまざまな表現方式を用

いることを許容する(審査基準,第T部 明細書及び特許請求の範囲

1 章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件5〜6頁,2.2.2(4)

参照)。

そして,上記表現方式として,特に製造方法により生産物を特定しよ

うとする記載がある請求項を「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

と称し,特許請求の範囲の記載要件についての審査における指針や,新

規性・進歩性の審査における発明の認定の指針を示している。(審査基

準,第T部 明細書及び特許請求の範囲 第 1 章 明細書及び特許請求の

範囲の記載要件11頁,2.2.2.1(7)及び第U部 特許要件 第

2 章 新規性進歩性8頁,1.5.2(3)参照)」

イ 前回意見書で引用する審査基準の「第T部 明細書及び特許請求の範囲

第 1 章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件11頁, 2. 1
2. 2. (7)」

には,

「発明の対象となる物の構成を,製造方法と無関係に,物性等により直

接的に特定することが,不可能,困難,あるいは何らかの意味で不適切

(例えば,不可能でも困難でもないものの,理解しにくくなる度合いが

大きい場合などが考えられる。)であるときは,その物の製造方法によ

って物自体を特定することができる(プロダクト・バイ・プロセス・ク

レーム)。参考:東京高判平14.06.11(平成11年(行ケ)4

37異議決定取消請求事件「光ディスク用ポリカーボネート形成材料」)

しかし,請求項が製造方法による物の特定を含む場合,機能・特性等

による物の特定を含む場合と同様,必ずしも発明の範囲が明確とはいえ




ず,発明を明確に把握することができない場合がある。」

という記載があるが,これは,

「請求項が製造方法による物の特定を含む場合(プロダクト・バイ・プ

ロセス・クレーム)は,機能・特性等による物の特定を含む場合と同様,

必ずしも発明の範囲が明確とはいえず,発明を明確に把握することがで

きない場合がある。」

という記載であったものが,平成15年の審査基準改訂の際に,判決の判

示内容を加えるために訂正されたものである。

この審査基準の改訂の前後で「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

の意味に実質的な変更はなく,改訂前の「請求項が製造方法による物の特

定を含む場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)」と同様,改訂

後においても「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」はその直前に記

載されている「その物の製造方法によって物自体を特定」しようとする請

求項を意味するものである。その意味は,審査基準の「第U部 特許要件

第 2 章 新規性進歩性8頁,1.5.2(3)」に記載された

製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合(プロダ

クト・バイ・プロセス・クレーム)」

とも同じである。

ウ このように,審査基準において,製造方法によって生産物を特定しよう

とする記載がある請求項を「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と

指呼するのであるから,「段階a)〜e)を含んで成る方法によって製造

される…プラバスタチンナトリウム」という表現方式をとる本件特許の訂

正前及び訂正後の請求項1はいずれも,審査基準にいう「プロダクト・バ

イ・プロセス・クレーム」である。

エ なお,前回意見書で引用する審査基準の「第T部 明細書及び特許請求

の範囲 第 1 章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件11〜12頁,2.




2.2.1(7)」には,さらに,

「当業者が,出願時の技術常識を考慮して,請求項に記載された当該物

を特定するための事項から,当該製造方法により製造される具体的な物

を想定できる場合は,発明の範囲は明確であり」

「具体的な物を想定できない場合には,発明に属する具体的な事物を理

解することができず,通常,発明の範囲は明確であるとはいえない」

としつつ,

「製造法により製造される具体的な物を想定できない場合であっても,

(i) 当該製造方法による物の特定以外には,明細書又は図面に記載さ

れた発明を適切に特定することができないことが理解でき,かつ

(ii) 当該製造方法により製造される物と出願時の技術水準との関係

が理解できる場合は,発明の範囲が明確でないとはいえない。」

との記載がある。

審査基準には,36条6項2号明確性要件)について,

「特許請求の範囲の記載は,これに基づいて新規性進歩性等の特許要

件の判断がなされ,これに基づいて特許発明技術的範囲が定められる

という点において重要な意義を有するものであり,一の請求項から発明

が明確に把握されることが必要である。」(第T部 明細書及び特許請

求の範囲 第 1 章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件4頁,2.2.

2(1))

という基本的な考え方が記載されているが,上記プロダクト・バイ・プロ

セス・クレームについての明確性要件の判断手法は,「具体的な物を想定

できるか否か」を判断基準にするとともに,具体的な物を想定できない場

合であっても(i)(ii)の要件を満たすときには,明確であると取り扱うこ

とが説明されており,「一の請求項から発明が明確に把握されることが必

要である」という明確性要件の基本的な考え方どおりの説明となっていな




い。また,審査基準には,(i)の「製造方法による物の特定以外には,明

細書又は図面に記載された発明を適切に特定することができないことが

理解でき」の要件を判断するための指標を説明しにくいことから,この要

件をどのように判断するのかについて具体的な記載がなく,その判断が難

しいため,審査官による判断のばらつきが懸念されていた。

現在,「第I部 第1章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審

査基準については,改訂作業を行っているところであり,プロダクト・バ

イ・プロセス・クレームにおける明確性要件の判断手法に関する上記の記

載は削除し,最終的に得られた生産物自体を意味する請求項であることを

前提に,明確性要件の基本的な考え方に沿った説明となるように修正する

予定である。

(2) 参考意見(求意見事項(3))の補足

新規性進歩性の判断におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム

に係る発明の要旨の認定を,原則,最終的に得られた生産物自体を意味し

ているものと解して審査,審理を行っている理由について,前回意見書の

において以下のとおり意見を述べたが,これに関連した参考意見を後記イ

以降に補足する。

物の発明の中には,生産物の構造等によってはその生産物を適切に表

現することができず,製造方法によってのみ生産物を適切に表現するこ

とができる場合(例えば,動植物等の材料から特定の方法を用いて単離

した物質等)がある。2条3項に規定されているように,「物の発明

実施行為と「物を生産する方法の発明」の実施行為とは異なるため,

上記のような場合に,「物を製造(生産)する方法の発明」とは別に「物

の発明」について特許を受けようとする出願人は,製造方法により表現

した物の発明を特許請求することとなる。にもかかわらず,製造方法

より表現した(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)物を,請求項




に記載された製造方法によって得られた物に限定して解釈すると,「物

の発明」と「物を生産する方法の発明」の実施行為は実質的に同じとな

ってしまい,発明の保護の観点から適切でなく,「物の発明」として特

許を取得する意味が没却されてしまう。プロダクト・バイ・プロセス・

クレームとしては,上記のような場合のほかにもさまざまな場合がある

が,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る発明は,あくまでも

物の発明」であって表現形式として製造方法を用いたにすぎないもの

である。以上の観点から,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係

る発明は,新規性進歩性等の特許要件の判断に際し,一律に,最終的

に得られた生産物自体を意味しているものと解することとしている。」

新規性進歩性の判断におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム

に係る発明を,最終的に得られた生産物自体を意味していると解するとい

う運用は,日欧米三極特許庁で一致している。この点は,2009年(平

成21年)に日米欧三極特許庁において行われた「新規性についての法令

・審査基準の比較研究」において確認され,その成果物である「COMPARATIVE

STUDY REPORT ON NOVELTY」,及びその仮訳である「新規性に関する比較

研究報告書」には,

「d.製造方法で製品を特定するクレーム(プロダクト・バイ・プロ

セス・クレーム

三極特許庁はすべて,製造方法によって生産物を特定しようとする

記載がある場合には,その記載は最終的に得られた生産物自体を意味

している物と解釈する。したがって,生産物自体が公知であれば,そ

の発明は新規性を有しない。」

と記載されている。

実際,欧州特許庁審査便覧の「C部 第 III 章−11 4.12」によ

れば,方法によって製品を規定するクレームは,その製品自体に関するク




レームとして解釈されるべきであるとされ,製品は新規な方法によって生

産されたという事実のみでは新規とはされない。

また,米国特許商標庁特許審査便覧の「2113 プロダクト・バイ・プロ

セス・クレーム」によれば,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特

許性の判定は製品そのものを根拠とするとされ,プロダクト・バイ・プロ

セス・クレームにおける製品が先行技術による製品と同一,あるいはそこ

から明白である場合,当該先行技術製品が異なったプロセスによって製造

されていても,当該請求項は特許可能でないと取り扱われている。

ウ 平成6年の特許法改正(平成6年12月法律116号)において,技術

の多様性への対応の必要性や国際調和の必要性という観点から明細書の

記載要件の見直しが行われ,これに合わせて新規性進歩性を判断する際

の発明の認定についても運用の明確化が行われた。そして,同改正以来,

特許庁は一貫して,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る発明は

最終的に得られた生産物自体を意味していると解して新規性進歩性の判

断を行っている。

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る発明の特許の権利解釈の

場面で,製法で物を特定せざるを得ない場合等に,製法が異なっても得ら

れた物が同じであれば技術的範囲に属すると考える,いわゆる「物同一説」

が採用されることがあるのであれば,プロダクト・バイ・プロセス・クレ

ームに係る発明を,最終的に得られた生産物自体を意味していると解して

新規性進歩性等の特許性の判断を行うことが必要である。なぜならば,

権利解釈の場面で「物同一説」が採用されるにもかかわらず,権利設定の

場面では,特定の製造方法によって得られた生産物を意味すると解する,

いわゆる「製法限定説」によって特許性の判断を行うならば,特許性の判

断を部分的にしか行っていない発明が特許され,第三者に無用の混乱を招

くことになるからである。




これまでの裁判例は,権利解釈の場面で「物同一説」を原則論とするも

のが多かったため,特許庁の運用は理に適ったものということができる。

エ ところで,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る発明を最終的

に得られた生産物自体を意味していると解するということは,当該クレー

ムに記載された発明特定事項のうちの製造方法の部分を無視するという

ことではない。明細書の記載及び出願時の技術常識参酌して,生産物を

特定しようとする製造方法の意義,すなわち当該製造方法が生産物の構造

や性質にどのような影響を及ぼすのかを考慮して,最終的に得られた生産

物を解釈するということである。

なお,このような手法は,米国特許商標庁特許審査便覧に,

先行技術に対するプロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許性を

評価するに当たっては,当該プロセスの各ステップによって含意される

構造が考慮されなければならない。特に,当該製品がその製品が生産さ

れる際のプロセスの各ステップによってのみ特定される場合,あるい

は,製造プロセスの各ステップが最終製品に明確な構造的諸特性を与え

ると期待される場合がそうである。」

と記載されているように,米国においても採られているものである。

我が国の審査基準においても,例えば,審査基準の「第U部 特許要件

第 2 章 新規性進歩性8頁,1.5.2(3)例2」において,「溶接

により鉄製部材Aとニッケル製部材Bを固着してなる二重構造パネル」の

発明につき,

「仮に溶接以外の方法で,溶接により固着した二重構造パネルと同じ構

造の物が得られるものとすると,それが公知である場合には,新規性

否定されることになるが,通常は溶接により固着された物と同一の構造

の物は他の方法では得られないため,溶接という方法を使用した二重構

造パネルの発明が公知でなければ新規性は否定されない」




と記載されているように,「溶接により・・・固着して」というプロセス

が,生産物である二重構造パネルの構造にどのように影響を及ぼすのかを

考慮して,生産物を解釈することが理解されよう。

この例は,請求項に記載された製造方法が生産物の構造に影響を及ぼす

例であり,請求項に記載された製造方法によってもたらされる構造と同じ

構造が他の方法によって得られることが出願前に公知でない場合には,生

物の発明新規性は肯定されるが,出願前に公知である場合には,生産

物の発明新規性は否定されることになる。

他方,「方法Pで製造された,構造式Xで表される化学物質。」(Pは

新規性及び進歩性を有する方法。なお,構造式Xで表される化学物質は公

知。)という発明について考えてみると,生産物である化学物質は構造式

Xによって特定できており,製法Pによって化学構造に何らの影響をも及

ぼさないことが明らかであるから,構造式Xで表される化学物質が公知で

あれば,この発明は新規性がないと判断される。

この例は,請求項に記載された製造方法が生産物の構造に影響を及ぼさ

ない例である。この例において,構造式Xで表される化学物質が新規でな

いにもかかわらず,方法Pで製造された化学物質に限定して解釈すること

によって,方法Pが新規でかつ進歩性があることをもって物の発明の新規

性及び進歩性を肯定することは,不合理であるし,新規性及び進歩性の結

論が欧米と異なることになってしまう。

以上2つの例から明らかなように,明細書の記載及び出願時の技術常識

参酌して,生産物を特定しようとする製造方法が生産物の構造や性質に

どのような影響を及ぼすのかを考慮することにより,「物の発明」である

「生産物自体の発明」についての新規性及び進歩性の判断を行うことが妥

当である。

オ 後者の例に挙げたような発明は,プロダクト・バイ・プロセス・クレー




ムを最終的に得られた生産物自体を意味していると解する運用のもとで

は,新規性がないと判断されるから,このような,物の構造等に何の影響

も及ぼさない製造方法によって表現された物の発明が,特許になって侵害

訴訟で争われることは通常は起こらない。また,プロダクト・バイ・プロ

セス・クレームについての侵害訴訟においては,特許出願後に第三者が独

創的な方法で同じような生産物を製造している等の状況が起こりうる。

このように権利設定の場面とは事情が異なる侵害訴訟の場面において

は,侵害の存否の前提となる特許発明の解釈及び同一訴訟における無効の

抗弁の前提となる特許発明の解釈を,請求項に記載された製造方法によっ

て得られた生産物に限定して行うことが妥当であるようにみえる場合が

あるかもしれない。

しかしながら,権利設定の段階では,上記エの後者の例で示したように

物の構造等に何の影響も及ぼさない製造方法によって表現されたプロダ

クト・バイ・プロセス・クレームも存在する以上,製造方法が生産物の構

造や性質に影響を及ぼしているか否かを考慮することなく,プロダクト・

バイ・プロセス・クレームを,請求項に記載された製造方法によって得ら

れた生産物に限定して解釈することは,妥当ではないと考える。

第5 当裁判所の判断

当裁判所は,本件特許無効審判請求において,請求人たる原告が主張した無効

理由によっては無効とすることはできない,と判断する。その理由は以下に述べ

るとおりである。

1 請求原因(1) (特許庁における手続の経緯),(2) (記載発明の内容),(3)

(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。

2 本件特許の出願経過

(1) 証拠(甲68の1〜18)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の出願の

経緯及びその過程において被告が行った説明等は,次のとおりであったこと




が認められる。

ア 被告は,平成12年(2000年)10月5日の優先権(米国)を主張

して,平成13年(2001年)10月5日に本件特許の国際出願をし,

平成14年11月27日付けで,願書に添付して提出した明細書とみなさ

れる翻訳文を提出した。当該翻訳文中の特許請求の範囲には,次のとおり,

製造方法の記載を含まない請求項が含まれていた(甲68の1)。

「【請求項1】実質的に純粋なプラバスタチンナトリウム。

【請求項2】0.5%未満のプラバスタチンラクトンを含む,請求項1に

記載のプラバスタチンナトリウム。

【請求項3】0.2%未満のエピプラバを含む,請求項1に記載のプラバ

スタチンナトリウム。

【請求項4】0.5%未満のプラバスタチンラクトン及び0.2%未満の

エピプラバを含む,請求項1に記載のプラバスタチンナトリウム。

【請求項5】0.2%未満のプラバスタチンラクトンを含む,請求項1に

記載のプラバスタチンナトリウム。

【請求項6】0.1%未満のエピプラバを含む,請求項1に記載のプラバ

スタチンナトリウム。

【請求項7】0.2%未満のプラバスタチンラクトン及び0.1%未満の

エピプラバを含む,請求項1に記載のプラバスタチンナトリウム。

【請求項8】次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンラクトン及びエピプラバを実質的に含まないプラ




バスタチンナトリウム単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,実質的に純粋なプラバスタチン

ナトリウム。

(【請求項9】ないし【請求項20】を省略)」

イ 被告は,平成16年1月29日に特許庁に提出した「早期審査に関する

事情説明書」(甲68の5)において,特許協力条約に基づく国際調査

告において引用された3つの文献(引用文献1:米国特許No.4346

227明細書,引用文献2:米国特許No.5202029明細書,引用

文献3:WO 00/17182)との対比説明として,次のように記載

した。

(ア) 前記引用文献1

「引用文献1に開示されているのは,スタチン類の新規な化合物であっ

て,それらを高純度に精製する方法については記載されていません。」

(イ) 前記引用文献2

「引用文献2には,HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の高純度精製方

法が記載されていますが,この方法はシリカゲルクロマトグラフィーを

使用することを特徴としており,本願発明の方法とは異なります。また,

この引用文献に具体的に記載されているのはロバスタチンの精製であ

り,プラバスタチンナトリウムの精製については記載されていません。」

(ウ) 前記引用文献3

「引用文献3には,プラバスタチンなどの精製方法が記載されています

が,高性能液体クロマトグラフィーを用いる方法であり,本願発明の方

法とは異なります。」

ウ 特許庁は,平成16年3月17日,本件特許出願に対し,出願に係る発

明は刊行物等に記載された発明と同一であるか又はこれに基づき容易に

発明をすることができたから新規性進歩性を欠くことなどを理由とする




拒絶理由通知をした(甲68の8)。

エ これに対し,出願人である被告は,平成16年9月24日付けの意見書

(甲68の10)及び手続補正書(甲68の11)を提出した。当該意見

書及び手続補正書には,次のような記載があった。

(ア) 意見書の記載(甲68の10,3頁以下)。

「7.理由6及び7(特許法第29条第1項第3号及び同条第2項)に

ついて

(1) 本願発明について 削除 A
削除:


既に御説明致した通り,高純度のプラバスタチンナトリウムを得るの

は極めて困難であり,従来技術においては,例えば99.5%以上とい

う高純度のプラバスタチン又はプラバスタチンナトリウムを得ること

は不可能でありました。その主な理由は,プラバスタチンの生成の過程

で必然的に生成するプラバスタチンラクトン及びエピプラバはその理

化学的性質がプラバスタチンに非常によく似ているためです。本発明

は,(1)精製の前段階として,酢酸ブチル類又は酢酸プロピル類を用い

て,発酵液からプラバスタチンを抽出すること,及び(2)(a)酸処理及び

/又は塩基処理によりプラバスタチンラクトン及びエピプラバを破壊

するか,又は(b)プラバスタチンのアンモニウム塩の結晶化を反復して

プラバスタチンラクトン及びエピプラバを除去することです。」

(イ) 手続補正書の記載(甲68の11,下線は補正部)

「【請求項1】0.5重量%未満のプラバスタチンラクトンが混入して

いる,プラバスタチンナトリウム。

【請求項2】0.2重量%未満のエピプラバが混入している,プラバス

タチンナトリウム。

【請求項3】0.5重量%未満のプラバスタチンラクトン及び0.2重

量%未満のエピプラバが混入している,プラバスタチンナトリウム。




【請求項4】0.2重量%未満のプラバスタチンラクトンが混入してい

る,プラバスタチンナトリウム。

【請求項5】0.1重量%未満のエピプラバが混入している,プラバス

タチンナトリウム。

【請求項6】0.2重量%未満のプラバスタチンラクトン及び0.1重

量%未満のエピプラバが混入している,プラバスタチンナトリウム。

【請求項7】次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンナトリウム単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入

量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満

であるプラバスタチンナトリウム。

(以下省略)」

オ 特許庁は,平成17年4月22日,本件特許出願に対し,「引用例2に

は,99.7〜99.8%のHPLC純度を有するプラバスタチンのナト

リウム塩が記載されている(実施例1〜3)。引用例2には,プラバスタ

チンラクトン又はエピプラバの含有量についての記載はないが,医薬とし

て使用される化合物はより純度の高い方が好ましいことは技術常識であ

るところ,プラバスタチンのナトリウム塩の精製を繰り返すことにより,

より純度の高い,プラバスタチンラクトン又はエピプラバの含有量の少な

い本発明のプラバスタチンナトリウム等を得ることは当業者が容易にな

し得ることである。」等の理由により,拒絶査定をした(甲68の13)。




なお,この拒絶査定においては,製造方法の記載がされていた前記【請

求項7】(本件発明1と同一の内容)については,拒絶理由があるとはさ

れていなかった。

カ これに対し,出願人である被告は,平成17年7月25日,拒絶査定

服審判の請求をするとともに(甲68の14),同日付けで手続補正書を

提出して,製造方法の記載がなく,プラバスタチンラクトンやエピプラバ

の含有量を示すことのみで特定したプラバスタチンナトリウムに関する

請求項(すなわち,物のみを記載した請求項)をすべて削除し,本件各発

明に係る特許請求の範囲の記載と同一とする補正を行い(甲68の15),

前置審査の結果,同年9月16日付けで特許査定がされ(甲68の18),

同年11月4日付けで特許登録がなされた(甲43)。

(2) ところで,本件特許の訂正前請求項1には前記のとおり「プラバスタチン

ラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2

重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」との記載部分があり,また,

証拠(甲1,43,乙24,25)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の

優先日(平成12年10月5日)当時,プラバスタチンナトリウム自体は当

業者にとって公知の物質であったと認められるところ,出願当初の特許請求

の範囲には,製造方法の記載がない物と,製造方法の記載がある物の双方に

係る請求項が含まれていたが,製造方法の記載がない物の請求項について進

歩性がないとして拒絶査定がされたことにより,その後の拒絶査定不服審判

請求時の補正において,製造方法の記載がない請求項をすべて削除し,その

前置審査の結果,製造方法の記載のある請求項について特許査定を受けたこ

と,被告はそれらの審査の過程で進歩性判断に係る引用発明とは異なる特徴

を有する製造方法によるものであることを強調し,その結果,前記のとおり

の特許査定に至ったものであることが認められる。

3 原告主張の取消事由の有無




(1) 本件訂正の可否(取消事由1)について

ア 本件特許の意義

(ア) 本件訂正前明細書(特許公報,甲43)には,次の記載がある。

a 特許請求の範囲

・【請求項1】〜【請求項9】 前記第3,1(2)ア のとおり。

発明の詳細な説明

・「本発明の分野

本発明は,スタチン及び更に詳細にはプラバスタチンナトリウム,

並びに培養液からのコンパクチンの酵素的ヒドロキシル化産物と

してそれを単離するための方法,に関する。」(段落【0002】)

・「本発明の背景

スタチン系薬は,心血管疾患の危険性がある患者の血流中のLDL

レベルを低下させるのに利用可能な,現在最も治療的に有効な薬物

である。この薬物のクラスは,特にコンパクチン,ロバスタチン,

シンバスタチン,フルバスタチン及びアトルバスタチンを含む。」

(段落【0003】)

・「本発明は,高純度,高効率で,予備的な規模で且つクロマトグラ

フィーによる精製無しに,培養液からプラバスタチンナトリウムを

単離する効率的な方法についての当業界での必要性を満たす。」

(段落【0006】)

・「本発明の要約

本発明は,プラバスタチンラクトン及び,プラバスタチンのC−

6エピマーであるエピプラバ,を実質的に含まないプラバスタチン

ナトリウムを提供する。本発明は更に,その様な実質的に純粋なプ

ラバスタチンナトリウムを製造するための,工業的な規模で実施

れ得る方法を提供する。」(段落【0007】)




・「本方法の好ましい態様は,水性培養液から有機溶媒へのプラバス

タチンの抽出,塩基性水性溶液へのプラバスタチンの逆抽出及び有

機溶媒への再抽出を含み,その結果培養液中のプラバスタチンの初

濃度と比較してプラバスタチンに富む有機溶液をもたらす。プラバ

スタチンは,そのアンモニウム塩としての沈殿及びそれに続く当該

アンモニウム塩の再結晶による精製によって豊富となった溶液か

ら得ることができる。」(段落【0008】)

・「本発明の詳細な説明

本発明は,プラバスタチンラクトン及びエピプラバを実質的に含ま

ないプラバスタチンナトリウム,並びにプラバスタチンナトリウム

塩を高純度で培養液から単離するための方法を提供する。」(段落

【0009】)

・「コンパクチンの酵素的ヒドロキシル化

プラバスタチンが単離される酵素的ヒドロキシル化培養液は,コ

ンパクチンの工業的な規模での培養について知られている任意な

水性の培養液であってもよく,・・・・好ましくは,酵素的ヒドロ

キシル化は,コンパクチン及びデキストロースの栄養混合物を含

む,生きているステプトミセス(Steptomyces)の培養液を用いて実

施される。培養液が醗酵の完了時に中性又は塩基性である場合,培

養液を約1〜6,好ましくは1〜5.5,そして更に好ましくは2

〜4のpHにするために酸がそれに加えられる。・・・・培養液の

酸性化は,培養液中の任意なプラバスタチンカルボン酸塩を遊離酸

及び/又はラクトンへと変換する。」(段落「【0010】)

・「実質的に純水なプラバスタチンナトリウムの単離

プラバスタチンは,一連の抽出及び逆抽出段階によって,比較的

高度に濃縮された有機溶液中での水性培養液から最初に単離され




る。」(段落【0011】)

・「第一段階において,プラバスタチンが培養液から抽出される。C

2 −C4アルキルのギ酸塩及びC2−C4カルボン酸のC 1−C4アル

キルエステルは,水性溶媒液からプラバスタチンの効率的な抽出を

行うことができる・・・・好ましいエステルはギ酸エチル,・・・

・を含む。これらの好ましい有機溶媒の中でも,我々は酢酸エチル,

酢酸i−ブチル,酢酸プロピル及びギ酸エチルが特によく適してい

ることを発見した。最も好ましい抽出溶媒は酢酸i−ブチルであ

る。他の有機溶媒も当該エステルと交換されてもよい。(略) (段


落【0012】)

・「プラバスタチンは,約8.0〜約9.5のpHの塩基性溶液中に

任意に逆抽出される。・・・・抽出溶媒は,好ましくは,有機層中

のプラバスタチンの量が,薄層クロマトグラフィー又は,完全な抽

出のために十分な接触が起こったという主観的な判断を含む任意

な他の方法,によって決定した場合に実質的に枯渇するまで,塩基

性水溶液と接触される。複数回の逆抽出は,至適な回収のために実

施され得る。・・・・逆抽出は,有機性の抽出液の量未満の量の水

性塩基を用いることによってプラバスタチンを濃縮するために使

用され得る。好ましくは,逆抽出は,有機性抽出液の量の1/3未

満,更に好ましくは有機性抽出液の1/4未満,最も好ましくは約

1/5の量未満の量の塩基性水溶液と接触される。」(段落【00

13】)

・「水溶液は,好ましくは酸,・・・・を用いて,約1.0〜約6.

5,更に好ましくは約2.0〜約3.7のpHに酸性化される。」

(段落【0014】)

・「プラバスタチンは,好ましくは,培養液からプラバスタチンを抽




出するのに適しているとして既に記載した有機溶媒の1つへ再抽

出される。・・・・この再抽出において,プラバスタチンの更なる

濃縮は,好ましくは水性抽出液の約50%(v/v),更に好まし

くは約33%(v/v)〜約20%(v/v),そしてより更に好

ましくは約25%(v/v)の量の水性抽出液よりも少ない量の有

機溶媒に再抽出することによって達成されうる。プラバスタチン

は,最初の有機抽出液から89%の収率で,100Lの培養液から

8Lの濃縮有機溶液へと濃縮されうる。当業者には,本発明の実施

にとっての好ましい態様においてわずかに1回の抽出を記載した

高収率の精製プラバスタチンが,複数回の抽出を実施することによ

って達成されうることが理解される。この好ましい態様は,溶媒の

経済性と高い生成物の収率との平衡をもたらす。・・・・「塩折」

によって濃縮した有機溶液からプラバスタチンを得る手順の前に,

濃縮した有機溶液は好ましくは乾燥され,これは常用の乾燥剤(略)

を用いることによって行われることがあり,そして任意に活性炭を

用いて脱色される。乾燥し,そして/あるいは脱色した濃縮有機溶

液は,好ましくは,続いて常用の方法で,例えば濾過又はデカンテ

ーションによって分離される。」(段落【0015】)

・「次の段階において,プラバスタチンは,アンモニア又はアミンを

用いて濃縮有機溶液から塩折され得る。・・・・窒素上の置換の有

無又はそれが多数であるか否かに関わらず,アンモニア又はアミン

の反応によって形成される塩は,以降アンモニウム塩として言及す

る。この意味は,アミンの塩及びアンモニアの塩を包含することを

意図する。」(段落【0016】)

・「プラバスタチンのアンモニウム塩の沈澱も,アンモニウム塩単独

の,又はアンモニア若しくはアミンと組み合わせた添加によって誘




導され得る。・・・・アンモニウム塩並びに高沸点の液体及び固体

のアミンが,常用の手段によって,好ましくはよく換気された領域

で,固体,ニートな液体又は水性若しくは有機性溶媒中の溶液とし

て加えられ得る。・・・・特に好ましい態様において,プラバスタ

チンは,濃縮有機溶液への気体のアンモニア及びNH4Clの添加

によって,アンモニアのプラバスタチン塩として,濃縮有機溶液か

ら得られる。」(段落【0017】)

・「凍結乾燥又は結晶化あるいは生成物の純度を損なわない他の手段

によって単離されようとなかろうと,本発明の方法の実施で単離さ

れるプラバスタチンナトリウムは,プラバスタチンラクトン及びエ

ピプラバを実質的に含まない。以下の例で示すように,プラバスタ

チンナトリウムは,プラバスタチンラクトンの混入が0. (w/w)
5%

未満で且つエピプラバの混入が0.2%(w/w)未満で単離されう

る。プラバスタチンナトリウムは更に,2つが例1及び3で例示さ

れる,本発明の好ましい態様を遵守することによってプラバスタチ

ンラクトンが0. (w/w)
2% 未満で且つエピプラバが0. (w/w)
1%

未満で単離されうる。」(段落【0031】)

・「例1

プラバスタチンの精製

培養液(100L)を硫酸の添加によって約2.5〜約5.0に

酸性化した。酸性化した培養液を酢酸i− ブチル(3×50L)

で抽出した。・・・・一緒にした酢酸i−ブチル層を,続いて濃水

酸化アンモニウムの添加によって約pH7.5〜約pH11.0と

なった水(35L)を用いて抽出した。生じたプラバスタチン水溶

液は,続いて5M硫酸の添加によって約2.0〜約4.0のpHに

再酸性化され,そして酢酸i−ブチル(8L)で逆抽出された。生




じたプラバスタチンの酢酸i−ブチル溶液は,パーライト及びNa

2SO4上で部分的に乾燥された。プラバスタチン溶液をデカンテー

ションし,そして次に乾燥剤から濾過され,そして活性炭(1.7

g)で脱色された。溶液を続いて濾過し,活性炭を除いてガス注入

口を備えたフラスコに移した。」(段落【0039】)

・「アンモニアガスを,素速く撹拌した前記溶液の上のヘッドスペー

スに導入した。プラバスタチンの炭酸アンモニウム塩の沈澱した結

晶を濾過によって回収し,そして酢酸i−ブチル,次にアセトンで

洗浄し,それにより,λ=238nm で測定するUV吸光度計を備え

たHPLCによって決定した場合,約94%の純度のプラバスタチ

ンアンモニウム塩が生成された。」(段落【0040】)

・「プラバスタチンアンモニウム塩は,以下の様に飽和塩化アンモニ

ウム溶液から結晶によって更に精製された。162gの活性物質を

含むプラバスタチン塩を水(960ml)に溶解し,そしてアセトン

(96ml)及び酢酸i−ブチル(96ml)を用いて35〜40℃で

希釈した。この溶液を約30〜32℃に冷却し,そしてプラバスタ

チンアンモニウムは,固体のNH4 Clの添加によって結晶化する

様に誘導され,これは更なる添加が結晶の形成の見かけ上の増大が

生じなくなるまで続けられた。塩化アンモニウムの添加の後,この

溶液を約0〜26℃に冷却した。プラバスタチンアンモニウムの結

晶を濾過によって回収し,そして酢酸i−ブチル及びアセトンで洗

浄し,以前のとおり,続いて約40℃で乾燥した。生じたプラバス

タチンアンモニウム塩の結晶(155.5g)が,前述の条件を適

用するHPLCによって決定した場合に,約98%の純度で得られ

た。」(段落【0041】)

・「プラバスタチンアンモニウム塩を,以下の別の結晶によって更に




精製した。プラバスタチンアンモニウム塩(155.5gの活性物

質)を水(900ml)に溶解した。イソブタノール(2ml)を加え,

そしてpHを濃水酸化ナトリウム溶液の添加によって約pH10

〜約pH13.7に上げ,そしてこの溶液を周囲温度で30分間撹

拌した。この溶液を硫酸の添加によって約7のpHへと中性化し,

プラバスタチンアンモニウムの結晶化を固体のNH4 Clの添加に

よって誘導した。結晶(150g)は濾過によって回収され,そし

てアセトンで洗浄した。プラバスタチンアンモニウムは,上述した

条件を用いるHPLCの決定によって約99.3%であることが明

らかとなった。」(段落【0042】)

・「プラバスタチンアンモニウムは,続いて,以下の様にナトリウム

塩へと置き換えられた。プラバスタチンアンモニウム塩の結晶を水

(1800ml)に溶解した。酢酸i−ブチル(10.5L)を添加

した。この溶液を硫酸の添加によって約pH2〜約pH4の間のp

Hに酸性化し,これにより,プラバスタチンをその遊離酸へと戻し

た。プラバスタチンを含む酢酸i−ブチル層を水(5×10ml)で

洗浄した。プラバスタチンは,続いてそのナトリウム塩へと変換さ

れ,そして約pH7.4〜約pH13のpHに達するまで8MのN

aOHを途中添加しながら,約900〜2700ml の水の中で酢酸

i−ブチル溶液を撹拌することによって別の水層の中に逆抽出し

た。」(段落【0043】)

・「プラバスタチンナトリウム塩溶液は,続いて過剰なナトリウムカ

チオンを捕捉するために,イオン交換樹脂で処理された。分離後,

水層をH+ イオン交換樹脂のIRC上で30分間撹拌した。撹拌は,

約pH7.4〜約pH7.8の pH に達するまで続けられた。」(段

落【0044】)




・「この溶液は,樹脂を除くために続いて濾過され,そして減圧下で

508gの重さに部分的に濃縮された。アセトニトリル(480ml)

を加え,そしてこの溶液を脱色するために活性炭(5g)上で撹拌

した。プラバスタチンナトリウムが,約−10〜約0℃に冷却しな

がら,1/3/12の水/アセトン/アセトニトリル混合物(5.

9L)を形成するためにアセトン及びアセトニトリルを添加した後

に,結晶化によって90%の収率で結晶として得られた。プラバス

タチンナトリウムは,上述した条件を用いるHPLCによって測定

した場合に,出発時の培養によって生成した活性物質から,65%

の全収率,約99.8%の純度で得られた。」(段落【0045】)

・「例3

プラバスタチンアンモニウム塩の結晶化を1回繰り返すことによ

ってプラバスタチンアンモニウム塩を更に精製したことを除き,例

1の手順に従い,プラバスタチンナトリウムが約99.8%の純度

及び68.4%の収率で得られた。」(段落【0047】)

・「例5

例1の手順に従い,培養液(100L)を硫酸の添加によって約

2 .5〜約5.0のpHに酸性化した。酸性化した培養液を酢酸

i−ブチル(3×50L)で抽出した。一緒にした酢酸i−ブチル

層を,濃水酸化アンモニウムの添加によって約pH7.5〜約pH

11.0のpHに塩基性化した水(35L)で抽出した。」(段落

【0049】)

・「水性抽出物を再び酸性化し,そして例1で行った様に更に濃縮さ

れた溶液を得るために酢酸i−ブチルで抽出する代わりに,水性の

抽出物を減圧下で140g/Lに濃縮した。生じた濃縮溶液は,続

いて1M HClの添加によって約pH4.0〜約pH7.5のp




Hに酸性化された。」(段落【0050】)

・「塩化アンモニウムの結晶(405g)を続いて濃縮溶液に加え,

そしてプラバスタチンアンモニウム塩が周囲温度で放置されて結

晶化した。結晶は続いて濾過によって単離され,そして塩化アンモ

ニウムの飽和溶液を用いて洗浄された。続いて結晶を40℃の水

(1L)に加えた。溶解後,温度を30℃に下げ,そして塩化アン

モニウム(330g)を溶液に加えた。続いてこの溶液を周囲温度

で15時間撹拌し,そしてプラバスタチンアンモニウム塩の結晶を

濾過によって回収し,そして酢酸i−ブチル,その後アセトンで洗

浄し,そして乾燥した。生じた結晶は,続いてナトリウム塩に置き

換えられる再結晶化によって更に精製され,そして例1に記載の様

に単離された。プラバスタチンナトリウムは,約99.9%の純度

及び67.7%の収率で得られた。」(段落【0051】)

(イ) 上記記載によると,本件訂正前各発明は,心血管疾患の危険性がある

患者の血流中のLDLレベルを低下させるのに有効な薬物であるプラ

バスタチンナトリウムに関し,より高純度・高効率で,かつクロマトグ

ラフィーによる精製なしに,培養液からプラバスタチンナトリウムを効

率的に単離するために,「液−液抽出法」によって生成された濃縮有機

溶液を請求項1記載の工程a)ないしe)の製造方法を用いて精製・単

離することにより,不純物であるプラバスタチンラクトンの混入量が

0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満しか

含まれないプラバスタチンナトリウムという物の発明であると認める

ことができる。

イ 本件訂正の内容

証拠(訂正請求書,甲54)によれば,本件訂正は,前記のとおり,訂

正前の旧請求項1の記載である




「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンナトリウム単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混

入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未

満であるプラバスタチンナトリウム。」

を,新請求項1の記載(下線部が訂正箇所)である

「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そ

して

e)プラバスタチンナトリウムを単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混

入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未

満であるプラバスタチンナトリウム。」

に訂正しようとするものであり,その根拠は,@ 請求項1においてプラ

バスタチンラクトンの混入量を「0.5重量%未満」から「0.2重量%

未満」に訂正しエピプラバの混入量を「0.2重量%未満」から「0.1

重量%未満」に訂正することは,特許請求の範囲減縮を目的とするもの

である,A また「e)プラバスタチンナトリウム単離すること」を「e)




プラバスタチンナトリウムを単離すること」に訂正することは,誤記の訂

正を目的とするものである,というものである。

ウ 検討

(ア) 本件訂正@は,上記のとおり,プラバスタチンラクトンの混入量が0.

5重量%未満から0.2重量%未満へ,エピプラバの混入量が0.2重

量%未満から0.1重量%未満へ,それぞれ限定するものであるが,「プ

ラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバ

の混入量が0.1重量%未満である」という数値限定が「プラバスタチ

ンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が

0.2重量%未満である」に数値上含まれていることは明らかである。

そして,上記の限定に関して,本件訂正前明細書(特許公報,甲43)

の段落【0031】には,以下の例で示すように,「プラバスタチンナ

トリウムは,プラバスタチンラクトンの混入が0.5%(w/w)未満で

且つエピプラバの混入が0.2%(w/w)未満で単離されうる。プラバ

スタチンナトリウムは更に,2つが例1及び3で例示される,本発明の

好ましい態様を遵守することによってプラバスタチンラクトンが0.2

%(w/w)未満で且つエピプラバが0.1%(w/w)未満で単離されうる。」

と記載されており,本件訂正で限定する数値が記載されている。また,

本件訂正前明細書の実施例には,段落【0040】ないし【0045】

及び【0047】のとおり,得られたプラバスタチンナトリウムの純度

が約99.8%の例1,3が記載されており,これらの例では,本件訂

正によって限定されたプラバスタチンラクトンとエピプラバの混入量

の要件が達成されている蓋然性が高いと考えられる。すなわち,本件訂

正で限定されたプラバスタチンナトリウムは,本件訂正前明細書に実質

的に記載されていると認められる。

したがって,本件訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範




囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲拡張し,

又は変更するものでないことも明らかである。

(イ) また,本件訂正Aは,脱字を記載するものであり,誤記の訂正を目的

とするものであることは明らかである。

エ 原告の主張に対する補足説明

(ア) 原告は,前記第3,1(4)ア(ア)において,「数字の上では,プラバス

タチンラクトン及びエピプラバの混入量がいずれも0(あるいは,0に

限りなく近い数値)であるものも,本件訂正前発明1の技術的範囲に属

するように見える。しかし,そのように不純物の混入量が微少なプラバ

スタチンナトリウムは,本件訂正前発明1よりもはるかに高度な課題を

達成したもの(発明としての技術が高度なもの)であるから,それより

も課題の達成度の低い(発明としての技術が未熟である)本件訂正前発

明1の技術的範囲に含まれると解することは背理以外の何ものでもな

い。」と主張する。

しかし,原告が指摘する「プラバスタチンラクトン及びエピプラバの

混入量がいずれも0(あるいは,0に限りなく近い数値)であるもの」

が本件訂正前発明1の技術的範囲に含まれるか否かは,本件明細書に記

載された高純度のプラバスタチンナトリウムの精製方法によってその

ようなものを得ることができるか否かを実質的に検討して判断される

事項であるから,本件訂正前発明1の技術的範囲に「プラバスタチンラ

クトン及びエピプラバの混入量がいずれも0(あるいは,0に限りなく

近い数値)であるもの」が含まれるとは直ちにいえないから,原告の主

張はその前提において誤りであり,採用することができない。

(イ) 次に,原告は,前記第3,1(4) ア(イ) において,「本件訂正は,不

純物であるプラバスタチンラクトンの混入量を訂正前の『0.5重量%

未満』から一挙にその半分以下である『0.2重量%未満』と変更し,




エピプラバの混入量を『0.2重量%未満』からその半分である『0.

1重量%未満』と変更するというものであり,混入量の数値を大幅に減

少させる内容であって,その内容自体からして,『特許請求の範囲の減

縮を目的とするもの』とは到底いうことができない。」と主張する。

しかし,前記ウ(ア) で検討したとおり,本件訂正で限定されたプラバ

スタチンナトリウムは,本件訂正前明細書に実質的に記載されていたと

いえるものであり,また,本件訂正による限定は,その数値を限定する

ものであるから,特許請求の範囲減縮に該当することは明らかであ

り,原告の上記主張は採用することができない。

(ウ) 原告は,前記第3,1(4) ア(ウ) において,「本件訂正は,不純物で

あるプラバスタチンラクトンの混入量を訂正前の『0.5重量%未満』

から一挙にその半分以下である『0.2重量%未満』と変更し,エピプ

ラバの混入量を『0.2重量%未満』からその半分である『0.1重量

%未満』と変更するというものであり,混入量の数値を大幅に減少させ

る内容であって,訂正前後の『特許請求の範囲』の記載を比較するとき

には,発明の同一性を欠くことは明らかである。」と主張する。

しかし,前記ア(ア) の本件訂正前明細書の記載からみて,本件訂正前

発明1は高純度のプラバスタチンナトリウムに関するものであるから,

本件訂正前明細書に記載された発明の中において,より高純度のものに

特定された本件訂正発明1が,本件訂正前発明1と発明の同一性を有す

ることは明らかであるから,原告の上記主張は採用することができな

い。

なお,この点に関し,原告は,前記第3,1(4) ア(エ) において,「本

件訂正前発明1は,プラバスタチンナトリウム自体の純度を規定してお

らず,組成物中のプラバスタチンラクトンとエピプラバの混入量を規定

しているだけであって,それ以外の不純物の混入量を規定していないか




ら,プラバスタチンナトリウムが『高純度』であることを特定した発明

ということはできない。」と主張する。

しかし,本件特許が出願当初から一貫して「高純度のプラバスタチン

ナトリウム」に関する発明であることは,本件訂正前明細書の記載から

みて明らかであり,また,プラバスタチンラクトン及びエピプラバはプ

ラバスタチンナトリウムに含まれる不純物の主要な不純物であり,とり

わけその除去が困難な不純物であるから,「それ以外の不純物の混入量

を規定していない」からといって,「高純度」であることを特定してい

ないということはできない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

オ 以上のとおり,本件訂正を認めた審決の判断に誤りはない。

(2) 新規性の欠如(取消事由2)及び進歩性の欠如(取消事由3)に関する主

張について

ア 甲2文献及び甲2サンプル等の公知性の有無

(ア) 原告は,審決が,「これらの証拠をもって秘密保持契約が締結されて

いなければ秘密保持義務はないとするのが医薬品業界における常識で

あるとすることはできず,秘密保持契約書が提出されていないことをも

って,甲第2号証の書面及びその分析対象のサンプルが誰でも入手可能

であったとすることはできない」(13頁15行〜19行)としたこと

に対し,「甲2文献及び甲2サンプルは,甲3に記載されているとおり,

本件特許の優先日前にビオガル社を介して訴外製薬会社に,秘密事由で

あるとの契約・説明等がなく配布された」から公知性はそれだけで肯定

される等と主張するので,以下検討する。

(イ) 証拠(甲2,3,17,58,乙32,証人G,同H)及び弁論の全

趣旨によれば,甲2文献は,被告の前身であるビオガル社が本件特許の

優先日以前の2000年(平成12年)3月31日に作成した書面で,




その内容は,同社が売却を検討しているプラバスタチンナトリウム製品

バッチNo.PR−00100仕様及び分析結果の説明に関する書面で

あること,同書面(甲2)は,2000年(平成12年)4月6日以前

に,商社であるC社を通じて,日本の後発医薬メーカーである複数のメ

ーカー(B社ほか)に製品サンプルと共に送付されたが,後発医薬品

ーカーは,ビオガル社と明示の秘密保持契約を締結することはなかった

こと,甲2文献には「Sample for Experimental purposes only」(試

験目的使用のみのサンプル)との記載があったこと,ビオガル社が日本

後発医薬品メーカーに対して甲2文献と甲2サンプルを送付したの

は,基本特許を持つA社の特許期間がまもなく切れることから,上記基

本特許に抵触するが特許期間満了後は後発医薬品として販売すること

ができる甲2サンプルを日本の後発医薬品メーカーに納入すべく,その

試験用として送付したものであること,甲2文献とそのサンプルを受け

取ったB社は,これを試験用に使用したが,甲2文献やそのサンプルを

他の第三者に開示することはなかったこと,以上の事実を認めることが

できる。

(ウ) 確かに原告主張のとおり,被告の前身であるビオガル社が後発医薬メ

ーカーに配布した甲2文献及び同サンプルに関し,同メーカーとビオガ

ル社との間で明示の秘密保持契約を交わしたことはないものの,甲2文

献には前記のとおり,「Sample for Experimental purposes only」(試

験目的使用のみのサンプル)との表示があり,現にこれを受け取ったB

社等においても基本特許の特許期間満了前である事情等もあって,これ

を第三者に開示したことはなかったのであるから,甲2文献及びそのサ

ンプルの後発医薬メーカーへの配布をもって特許法29条1項2号

公然実施」ないし3号の「配布された刊行物」に該当すると解するこ

とは相当でないというべきである。




(エ) そうすると,「甲第2号証は,本件特許の優先日以前に頒布された刊

行物にはあたらない」とした審決の判断に誤りはない。

(オ) なお,以上の経緯に鑑み,念のため,甲2文献も含めて,原告主張の

取消事由について,以下検討する。

イ 特許無効審判請求における発明の要旨の認定方法

(ア) 本件訴訟において審理の対象とされているのは,特許庁が平成21年

8月25日付けでなした本件審決の当否であり,一方,本件審決がその

審理の対象としているのは,原告が平成20年3月27日でなした本件

特許についての特許無効審判請求である。

ところで,上記特許無効審判請求は,特許法123条に基づく請求で

あるが,その第1項本文は「特許が次の各号のいずれかに該当するとき

は,その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することが

できる。この場合において,2以上の請求項に係るものについては,請

求項ごとに請求することができる。」と定め,また,その対象となる特

許権については特許法66条が,その第1項において「特許権は,設定

の登録により発生する」とし,その第3項において「前項の登録があっ

たときは,次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。」と

した上,特許権者の氏名・発明者の氏名・願書に添付した明細書及び特

請求の範囲・図面等が特許公報の記載対象となるとしている。

そうすると,特許権の設定登録後になされる手続である特許無効審判

請求において,特許庁がその審理の対象として把握すべき請求項の具体

的内容(発明の要旨)は,特許公報に記載された請求項(特許請求の範

囲)によりなされるべきものであり,そこには「特許出願人が特許を受

けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載

されている(特許法36条5項)ほか,「特許を受けようとする発明が

明確である」(明確性要件,36条6項2号)とともにその「記載が簡




潔である」(36条6項3号)必要があることになる。特許法における

上記の規定,特に,特許公報の公示機能を考慮すると,無効審判事由の

有無の前提となる発明の要旨の認定においては,特許請求の範囲の記載

の全てが基準になるのが原則であるというべきである。

したがって,本件のように「物の発明」に係る「特許請求の範囲」に

その物の製造方法が記載されている場合,当該発明の要旨の認定は,当

製造方法により製造された物に限定されるものとして解釈・確定され

るべきであって,特許請求の範囲に記載された当該製造方法を超えて,

他の製造方法を含むものとして解釈・確定されることは許されないのが

原則である。

もっとも,本件のような「物の発明」の場合,特許請求の範囲は,物

の構造又は特性により記載され特定されることが望ましいが,物の構造

又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困

難であるとの事情が存在するときには,発明を奨励し産業の発達に寄与

することを目的とした特許法1条等の趣旨に照らして,その物の製造方

法によって物を特定することも許され,特許法36条6項2号にも反し

ないと解される。そして,そのような事情が存在する場合の発明の要旨

の認定は,特許請求の範囲に特定の製造方法が記載されていたとして

も,製造方法は物を特定する目的で記載されたものとして,特許請求の

範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと

解釈され,確定されることとなる。

ところで,物の発明において,特許請求の範囲製造方法が記載され

ている場合,このような形式のクレームは,広く「プロダクト・バイ・

プロセス・クレーム」と称されることもあるが,前述の観点に照らすな

らば,上記プロダクト・バイ・プロセス・クレームには,「物の特定を

直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困




難であるとの事情が存在するため,製造方法によりこれを行っていると

き」(本件では,このようなクレームを,便宜上「真正プロダクト・バ

イ・プロセス・クレーム」ということとする。)と,「物の製造方法

付加して記載されている場合において,当該発明の対象となる物を,そ

の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能

又は困難であるとの事情が存在するとはいえないとき」(本件では,こ

のようなクレームを,便宜上「不真正プロダクト・バイ・プロセス・ク

レーム」ということとする。)の2種類があることになる。そして,真

正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の要旨

の認定は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることな

く,同方法により製造される物と同一の物」と解釈されるのに対し,不

真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の要

旨の認定は,「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される

物」に限定されると解釈されることになる。この場合,特許無効審判手

続を主宰する審判官としては,発明の対象となる物の構成を,製造方法

によることなく,物の構造又は特性により特定することが出願時におい

て不可能又は困難であるとの事情が存在すると認めることができたと

きは真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームとして扱うが,全証拠

によるも上記事情があると認めるに足りないときは,これを上記にいう

不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームとして扱うべきものと解

するのが相当である。

(イ) そこで,以上の見地に立って本件についてみると,証拠(甲1,6)

及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の優先日(平成12年〔2000

年〕10月5日)当時,本件訂正発明1に開示されているプラバスタチ

ンナトリウム自体は,当業者にとって公知の物質であり,また,プラバ

スタチンラクトン及びエピプラバは,プラバスタチンナトリウムに含ま




れる不純物であることが認められる。したがって,特許請求の範囲請求

項1の記載における「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%

未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタ

チンナトリウム」の構成は,不純物であるプラバスタチンラクトン及び

エピプラバが公知の物質であるプラバスタチンナトリウムに含まれる

量を数値限定したにすぎないものであるから,その記載自体によって物

質的に特定されていると認められる。そうすると,特許請求の範囲請求

項1に記載された「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未

満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチ

ンナトリウム」という「物」は,その当該物の特定のために,その製造

方法を記載する必要がないものである。

したがって,本件訂正前発明1は物の発明に係る特許請求の範囲の記

載中に発明の対象となる物の製造方法が付加して記載されているもの

の,当該発明の対象となる物を,製造方法によることなく,その構造や

特性により直接的に特定することが出願時において不可能,困難である

との事情が存在するとは認められないから,特許無効審判請求における

発明の要旨の認定は,特許公報に記載された特許請求の範囲に基づいて

その記載どおりに行われるべきであり,その内容は,以下のとおりのも

のとなる。

「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え

そして

e)プラバスタチンナトリウム単離すること,




を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの

混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量

%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

そして,特許請求の範囲はその後の本件訂正により変更されているの

で,検討の前提となる請求項1(本件訂正発明1)の内容は,次のとお

りのものである。

「次の段階:

a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,

b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,

c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,

d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え

そして

e)プラバスタチンナトリウムを単離すること,

を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの

混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量

%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

(ウ) なお,本件訂正発明2ないし9も,請求項1を引用しているから,

その発明の要旨は,特許請求の範囲請求項2ないし9として記載されて

いるとおりのものとなる。

ウ 取消事由2及び3について

審決は,本件各訂正発明は甲1発明あるいは甲2発明と実質的に同一

いえず,また,それらの発明と甲5文献,甲6発明及び技術常識に基づい

て当業者が容易に発明することができたものでもないとし,一方,原告は

これを争うので,以下検討する(甲2文献及び甲2サンプルに公知性がな

いことは前述のとおりであるが,念のため併せて検討する。)。

(ア) 本件訂正発明1の要旨




前記第3,1(2) イのとおり。

(イ) 各引用例の意義

a 甲1発明

(a) 甲1(「医薬品インタビューフォーム(メバロチン錠)1997

年10月改定版」)によれば,甲1文献はプラバスタチンナトリウ

ム製剤である「メバロチン錠」の医薬品インタビューフォームであ

って,そこには,「IV.製剤に関する項目 6.混入する可能性

のある夾雑物」の項に,「本品は99%前後の含量を有する高純度

品であるため,本品中に含まれる類縁物質は微量である。本品をH

PLCで測定した時の結果を次に示す。」と記載され,続いて示さ

れた表中には,RMS−414(判決注:プラバスタチンラクトン)

の面積百分率が0.02〜0.06%,RMS−418(判決注:

エピプラバ)の面積百分率が0.19〜0.65%であることが示

されていることが認められる。

(b) 以上の記載によれば,甲1発明は,「プラバスタチンラクトンの

混入量が0.02〜0.06%(面積百分率)であり,エピプラバ

の混入量が0.19〜0.65%(面積百分率)であるプラバスタ

チンナトリウム。」という発明であることが認められる。

b 甲2発明

(a) 甲2(「PRODUCT SPECICATIONS AND CERCIFICATE OF

ANALYSIS:Certificate No.205/00・Batch No.PR-00100」)によれ

ば,甲2文献はプラバスタチンナトリウム製品(バッチ No.

PR-00100。甲2サンプル)の仕様及び分析結果の証明に関する書面

であって,その関連物質の項に,エピプラバスタチンが0.11%,

プラバスタチンラクトンが0.03%であることが記載されている

と認められる。




(b) 以上の記載によれば,甲2発明は,「プラバスタチンラクトンの

混入量が0.03重量%であり,エピプラバの混入量が0.11重

量%であるプラバスタチンナトリウム。」という発明であると認め

られる。

c 甲5文献

(a) 甲5(平成20年5月30日付書簡)によれば,甲5文献は,本

件無効審判請求後の平成20年5月30日に,原末のサンプルを入

荷したとされる製薬企業の物性分析研究部長が原告の従業員であ

る知的財産部長に宛てて個人として作成した書簡であって,そこに

は,原末の小瓶「プラバスタチン Na Biogal 81100100100」を原告

の要請により提供すること,当該小瓶は,平成12年(2000年)

7月10日に入荷した原末(Lot.81100100100)を小分けしたもので

あること,平成12年(2000年)8月21日に当該製薬企業で

純度等を試験した結果を示す文書である「原末試験成績結果」を添

付したこと,平成12年(2000年)7月当時,当該原末は誰で

も入手できるものであり,秘密事項であるとの契約・説明等はなか

ったことが記載されていることが認められ,添付書類として,上記

小瓶の写真及び類縁物資が0.11%で,定量が99.7%と記載

された「原末試験成績書」が付属していることが認められる。

(b) 以上の記載によれば,甲5サンプルは,本願優先日(平成12年

10月5日)以前に配布された薬物のサンプルであって,不純物の

含有量が0.11%であるプラバスタチンナトリウムの原末である

ことが認められる。

d 甲6発明

(a) 甲6(PHARMEUROPA VOL.12,No.1January 2000,114〜116 頁)に

よれば,甲6文献は,本件特許の優先日前の平成12年(2000




年)1月に欧州評議会により作成された「PHARMEUROPA」の「プラ

バスタチンナトリウム」の項であって,そこには,高速液体クロマ

トグラフィ(HPLC)によりプラバスタチンナトリウム

(C23H35NaO7)の百分含有量(percentage content)を検査する方

法,検査溶液の調製方法,クロマトグラフィ工程の操作条件,プラ

バスタチンナトリウムの百分含有量の計算式等が記載され,さら

に,その検査の結果検出された不純物が記載されており,不純物A

(エピプラバ)の記載はあるものの,プラバスタチンラクトンの記

載はないことが認められる。

(b) 以上の記載によれば,甲6文献には,高速液体クロマトグラフィ

(HPLC)により,エピプラバの含有量を検査する方法が記載さ

れているが,あくまで不純物の分析方法が記載されているにすぎ

ず,プラバスタチンナトリウム自体を分取する方法についての記載

はないことが認められる。

(ウ) 本件訂正発明1と各引用例との対比

a 本件訂正発明1と甲1発明及び甲1サンプル

前記のとおり,甲1発明は,「プラバスタチンラクトンの混入量が

0.02〜0.06%(面積百分率)であり,エピプラバの混入量が

0.19〜0.65%(面積百分率)であるプラバスタチンナトリウ

ム。」という発明と認められるが,その製造方法についての記載はな

く,製造方法は明らかではない。ここで,面積百分率が重量%とほぼ

同じ値であることについては当事者間に争いはない。

したがって,本件訂正発明1と甲1発明を対比すると,プラバスタ

チンラクトンの混入量が0,2重量%未満であるプラバスタチンナト

リウムという点で一致するものの,エピプラバの混入量が前者では

「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では0.19重量%であ




ること,また,前者は塩析結晶化法等により製造されたものであるの

に対し,後者はその製造方法が明らかでない点で相違する。

b 本件訂正発明1と甲2発明及び甲2サンプル

前記のとおり,甲2発明は,「プラバスタチンラクトンの混入量が

0.03重量%であり,エピプラバの混入量が0.11重量%である

プラバスタチンナトリウム。」という発明であると認められるが,そ

製造方法についての記載はなく,製造方法は明らかではない。

したがって,本件訂正発明1と甲2発明を対比すると,プラバスタ

チンラクトンの混入量が0,2重量%未満であるプラバスタチンナト

リウムという点で一致するものの,エピプラバの混入量が前者では

「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では0.11重量%であ

ること,また,前者は塩析結晶化法等により製造されたものであるの

に対し,後者はその製造方法が明らかでない点で相違する。

c 本件訂正発明1と甲5文献及び甲5サンプル

前記のとおり,甲5サンプルは,本願優先日以前に配布された薬物

のサンプルであって,不純物の含有量が0.11%であるプラバスタ

チンナトリウムの原末であることが認められるが,その製造方法につ

いての記載はなく,製造方法は明らかではない。

したがって,本件訂正発明1と甲5サンプルを対比すると,プラバ

スタチンナトリウムという点で一致するものの,含有される不純物に

つき,前者がプラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満で

あり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるのに対し,後者

では類縁物質0.11重量%であること,また,前者は塩析結晶化法

等により製造されたものであるのに対し,後者はその製造方法が明ら

かでない点で相違する。

(エ) 取消事由2について




a 無効理由A−1に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)aのとおり,本件訂正発明1と甲1発明が実質的に同一

いえないことは明らかである。

以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する本件訂正

発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由A−1に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

b 無効理由A−2に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)bのとおり,本件訂正発明1と甲2発明が実質的に同一

いえないことは明らかである。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由A−2に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

c この点に関して原告は,プラバスタチンを「塩析結晶化」する工程

を含むことに進歩性はないとし,その理由として,プラバスタチンを

アンモニウム塩の形態で「塩析結晶化」する方法については特許庁に

おいて拒絶査定されているとか,塩化アンモニウムを塩として採用し

て塩析を行うことによりプラバスタチンアンモニウム塩の結晶を取

得する工程でエピプラバを除去し,塩析で除ききれなかったプラバス

タチンラクトン,及びその後の精製工程で生成したプラバスタチンラ

クトンは,水酸化ナトリウムを加えることによりプラバスタチンナト

リウムに変換できるので,最終的にエピプラバ及びプラバスタチンラ

クトンの含有量が少ないプラバスタチンナトリウムを取得すること

は,本件特許の優先日において当業者が容易に想到できることであっ

たなどと主張する。




しかし,本件訂正発明1は,工程a)〜工程e)に記載された製造

方法によって製造されるプラバスタチンラクトンの混入量が0.2重

量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラ

バスタチンナトリウムという発明であるから,単にプラバスタチンを

アンモニウム塩の形態で「塩析結晶化」する方法が知られていたとい

うことのみで容易に想到し得ると断言できるものでないことは明ら

かである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

d 以上によれば,原告主張の取消事由2は理由がない。

(オ) 取消事由3について

a 無効理由B−1に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)aのとおり,本件訂正発明1と甲1発明とは,エピプラバ

の混入量が前者では「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では

0.19重量%であること,また,前者は塩析結晶化法等により製造

されたものであるのに対し,後者はその製造方法が明らかでない点で

相違するところ,少なくとも,塩析結晶化法等を用いてエピプラバの

混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウムを製造す

ることが容易であったと認めるに足りる的確な証拠はないから,本件

訂正発明1が甲1発明及び技術常識に基づき当業者が容易に発明

きたとはいえない。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由B−1に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

b 無効理由B−2に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)bのとおり,本件訂正発明1と甲2発明とは,エピプラバ

の混入量が前者では「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では




0.11重量%であること,また,前者は塩析結晶化法等により製造

されたものであるのに対し,後者はその製造方法が明らかでない点で

相違するところ,前記のとおり,少なくとも,塩析結晶化法等を用い

てエピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナト

リウムを製造することが容易であったと認めるに足りる的確な証拠

はないから,本件訂正発明1が甲2発明及び技術常識に基づき当業者

容易に発明できたとはいえない。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由B−2に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

c 無効理由B−3に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)cのとおり,本件訂正発明1と甲5サンプルとは,含有さ

れる不純物につき,前者がプラバスタチンラクトンの混入量が0.2

重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるの

に対し,後者では類縁物質0.11重量%であること,また,前者は

塩析結晶化法等により製造されたものであるのに対し,後者はその製

造方法が明らかでない点で相違するところ,前記(イ)dのとおり,甲

6発明は,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により不純物の含

有量を検査する方法であって,塩析結晶化法とは全く異なるものであ

るから,これを甲5サンプルに適用しても,当業者が容易に訂正発明

1に想到できたということはできない。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由B−3に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。




d 無効理由B−4に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)aのとおり,本件訂正発明1と甲1発明とは,エピプラバ

の混入量が前者では「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では

0.19重量%であること,また,前者は塩析結晶化法等により製造

されたものであるのに対し,後者はその製造方法が明らかでない点で

相違するところ,前記(イ)dのとおり,甲6発明は,高速液体クロマ

トグラフィ(HPLC)により不純物の含有量を検査する方法であっ

て,塩析結晶化法とは全く異なるものであるから,これを甲1発明に

適用しても,当業者が容易に訂正発明1に想到できたということはで

きない。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。

したがって,無効理由B−4に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

e 無効理由B−5に関する判断の誤りにつき

前記(ウ)bのとおり,本件訂正発明1と甲2発明とは,エピプラバ

の混入量が前者では「0.1重量%未満」であるのに対し,後者では

0.11重量%であること,また,前者は塩析結晶化法等により製造

されたものであるのに対し,後者はその製造方法が明らかでない点で

相違するところ,前記(イ)dのとおり,甲6発明は,高速液体クロマ

トグラフィ(HPLC)により不純物の含有量を検査する方法であっ

て,塩析結晶化法とは全く異なるものであるから,これを甲1発明に

適用しても,当業者が容易に訂正発明1に想到できたということはで

きない。

そして,以上のことは,本件訂正発明1を直接又は間接に引用する

本件訂正発明2ないし9についても同様である。




したがって,無効理由B−5に理由がないとした審決の判断に誤り

はない。

f 以上によれば,原告主張の取消事由3は理由がない。

(3) 取消事由4(無効理由C−1に関する判断の誤り)について

ア サポート要件違反の有無

(ア) 原告の主張(ア) a及びbにつき

a 原告は,本件明細書には「単離されうる。」との記載があるだけで,

プラバスタチンナトリウムの不純物であるプラバスタチンラクトン

やエピプラバを実際に測定した数値は何ら記載されていないと主張

する。

確かに,本件明細書の段落【0031】には,「プラバスタチンナ

トリウムは更に,2つが例1及び3に例示される,本発明の好ましい

態様を遵守することによってプラバスタチンラクトンが0.2%(w

/w)未満で且つエピプラバが0.1%(w/w)未満で単離されう

る。」と記載されているにすぎず,実施例においてプラバスタチンラ

クトンやエピプラバに関する上記数値を実際に測定した記載はみら

れない。

しかし,本件明細書の段落【0045】及び【0047】の記載の

とおり,「本発明の好ましい態様を遵守する」ものと考えられる例1

及び例3には,プラバスタチンナトリウムが約99.8%の純度で得

られたことが記載されており,すなわち,例1及び例3のプラバスタ

チンナトリウムは不純物を全て合わせても約0.2%しか含有されて

いないところ,そこには甲1文献の「6.混入する可能性のある夾雑

物」の項に示されているようなプラバスタチンラクトンやエピプラバ

以外の不純物も含有されていると考えられるから,これらの例におけ

るプラバスタチンラクトンとエピプラバの混入量は「プラバスタチン




ラクトンが0.2%(w/w)未満で且つエピプラバが0.1%(w

/w)未満」という要件を満たしているということができる。

b また,原告は,数値要件を満たすプラバスタチンナトリウムが得ら

れたか否かを確認するための具体的な測定方法すら明細書に開示さ

れていないと主張する。

確かに,本件明細書にはプラバスタチンラクトンやエピプラバの測

定方法に関しての記載はない。

しかし,当業界において不純物を測定する一般的な方法として「面

積百分率法」が知られており,実際,甲1文献の10頁「9.混入す

る可能性のある夾雑物」の項において,HPLCを用いた「面積百分

率法」により不純物を測定していることから,本件明細書に不純物の

測定方法が具体的に記載されていなくとも,当業者はこのような一般

的な方法によって不純物の混入量を測定することができると考えら

れるから,原告の上記主張は採用することができない。

c したがって,本件明細書の実施例においてプラバスタチンラクトン

やエピプラバの含有量が直接測定されていなくても,本件明細書には

上記数値を満たすプラバスタチンナトリウムが記載されており,ま

た,それを得る手段も具体的に記載されていると認められる。

(イ) 原告の主張(ア) cにつき

原告は,甲2文献及び甲9文献の記載を根拠として,プラバスタチン

ナトリウムの最高純度は101%であり,最大約1.1%の不純物を含

むことになると主張する。

しかし,甲39(日本薬局方解説書)の記載(B−13頁)によれば,

製品中のプラバスタチンナトリウム等の活性成分を測定するには「内部

標準法」又は「絶対検量線法」が用いられるが,一般的に,原薬を内部

標準法や絶対検量線法で定量することにより,一定量中に含有される原




薬の重量比がわかり,かつ含有される異性体の吸光係数がわかっていれ

ば,特定波長で検出される不純物の総面積比と,絶対検量線法等で定量

した原薬の重量比の和がおよそ100.0〜101.0%であれば,未検

出の不純物はほとんどないと考えることができ,逆に100.0〜10

1.0%に大きく届かなければ,特定波長で検出されないか,吸光係数

が大きく異なる異性体が混入している可能性が高くなると認められる

ところ,甲2文献の記載をみると,製品を分析した結果,「関連物質」

と「プラバスタチンナトリウム」の合計が99.8%であることが示さ

れているが,「関連物質」 「プラバスタチンナトリウム」
と の合計が「不

純物の総面積比」と「原薬の重量比」の和に相当するから,その合計が

「99.8%」であることは「およそ100.0〜101.0%」に該当

することになる。したがって,原告が指摘する甲2文献の「98.0−

101.0%」という記載は,この値が98.0−101.0%の範囲

であるから分析が正確に行われたことを示しているにすぎないと解さ

れるのであって,プラバスタチンナトリウムの純度が101.0%にな

りうることを示すものではない。

また,原告の指摘する甲9の記載は,日本薬局方の通則として記載さ

れたものであるが,「31 医薬品各条の定量法で得られる成分含量の

値について,単にある%以上を示し,その上限を示さない場合は101.

0%を上限とする」との記載は,医薬品に含まれる各成分について,個

々の成分含量を示すとき,その合計の上限が101.0%であることを

記載しているにすぎないと認められる。すなわち,これは,測定誤差や

数値の四捨五入などを勘案しても,全ての成分についての含有率を合計

した場合に上限が101.0%までとなるような精度で秤量あるいは分

析をし,成分含量を示すべきであることを述べたにすぎず,プラバスタ

チンナトリウムの純度が101.0%となりうることを述べたものでな




い。

これに対して,プラバスタチンナトリウム等の活性成分と共にエピプ

ラバ等の不純物を測定するには「面積百分率」が用いられる。このこと

は,甲39(日本薬局方解説書)に「純度は,通例,試料中の混在物の

限度に対応する濃度の標準溶液を用いる方法,又は面積百分率法により

試験を行う。別に規定するもののほか,試料の異性体比は面積百分率法

により求める。面積百分率法は,クロマトグラム上に得られた各成分の

ピーク面積の総和を 100 とし,それに対するそれぞれの成分のピーク面

積から組成比を求める。ただし,正確組成比を得るためには混在物検出

感度に基づくピーク面積の補正を行う。」(B−12頁下から5行目〜

B−13頁1行目)と記載されていることからも裏付けられる。すなわ

ち,活性成分の純度を表す場合には完全に純粋な化学物質について純度

を100%とし,それを基準として純度を表すことが一般的な方法であ

り,本件明細書の実施例においても,そのような一般的方法で純度を表

しているものと認められる。したがって,完全に純粋な場合が100%

であり,それ以上の数値となることはないと解される。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

(ウ) 以上のとおり,本件明細書にはプラバスタチンラクトンの混入量が0.

2重量%未満でかつエピプラバの混入量が0.1重量%未満であったこ

とが記載されていると認められるから,特許法36条6項1号の要件を

満たしており,この点に関する審決の判断に誤りはない。

実施可能要件違反の有無

原告は,当業者が本件明細書の記載に基づいて「プラバスタチンラクト

ンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.1重量

%未満であるプラバスタチンナトリウム」を得ることができるとはいえな

いと主張するが,上記アと同様の理由により,本件明細書には「プラバス




タチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり,エピプラバの混入量

が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」の具体例もまたそ

れを得る手段も具体的に記載されていると認められるから,実施可能要件

を満たしているものと認められる。

したがって,この点に関する審決の判断に誤りはなく,原告の主張は採

用することができない。

4 結論

以上のとおりであるから,本件特許無効審判請求においてなした請求人主張

の無効理由によっては無効と判断することはできないとした審決の結論に誤り

はない。

よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所 第1部



裁判長裁判官 中 野 哲 弘




裁判官 東 海 林 保




裁判官 矢 口 俊 哉






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