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事件 平成 23年 (ネ) 10056号 特許権侵害差止等請求控訴事件
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裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/01/16
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年1月16日判決言渡

平成23年(ネ)第10056号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地

方裁判所平成21年(ワ)第35411号)

口頭弁論終結日 平成23年11月29日

判 決



控 訴 人 ( 原 告 ) 株 式 会 社 ジ ン テ ッ ク



訴訟代理人弁護士 田 中 浩 之

野 口 明 男

飯 塚 卓 也
弁理士 原 島 典 孝



被控訴人(被告) 株式会社クローバー・ネットワーク・コム



訴訟代理人弁護士 石 嵜 信 憲

山 中 健 児
柊 木 野 一 紀

林 康 司

小 川 周 哉

補 佐 人 弁 理 士 坂 本 智 弘



主 文
本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。





事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は,原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない。

3 被控訴人は,前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピ
ュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体(マスター記録媒体

及びマスター記録媒体から作成されたものを含む。)を廃棄せよ。

4 仮執行宣言



第2 事案の概要

1 控訴人(原告)は,発明の名称を「電話番号リストのクリーニング方法」と

する本件特許権(特許第3462196号)の特許権者であるが,被控訴人(被告)

による原判決別紙被告方法目録記載の被告サービスの実施は上記特許権を侵害する

ものであると主張して,被告サービスの実施差止めと被告サービスのために用い

る電話番号使用状況調査用コンピュータ等の廃棄を求めた。

2 原判決は,被告サービスは本件特許発明構成要件を充足せず,これと均等

のものと認めることもできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3 争いのない事実は,原判決2頁13行目以下の「1 争いのない事実」記載

のとおりであり,そのうち,本件特許発明の特許請求の範囲の記載は次のとおりで

ある(下線部は,平成22年8月26日の訂正審決確定により追加された部分であ

る。また,A〜Dの項目は原判決が付したものである。)。
【請求項1】
A ISDNに接続した番号調査用コンピュータにより,使用されているすべての市
外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み
合わせからなる調査対象電話番号について回線交換呼の制御手順を発信端末として
実行し,網から得られる情報に基づいて有効な電話番号をリストアップして有効番
号リストを作成する網発呼プロセスと,




B 前記網発呼プロセスにより作成された前記有効番号リストを複数のクリーニング
用コンピュータに配布して読み取り可能にするリスト配布プロセスと,
C 前記各クリーニング用コンピュータにおいて,クリーニング処理しようとする顧
客などの電話番号リストを読み取り可能に準備し,このクリーニング対象電話番号
リストと前記有効番号リストとを対照することで,前記クリーニング対象電話番号
リスト中の有効な電話番号を区別するクリーニング処理プロセスと,
D を含んだことを特徴とする電話番号リストのクリーニング方法。



第3 当事者の主張

1 原審からの主張

原審における当事者の主張は,原判決4頁21行目以下の「3 争点に関する当

事者の主張」記載のとおりである。

2 当審における控訴人の主張(構成要件Aの充足の有無について)
(1) 原判決は,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局

番」という文言を,「市外局番および市内局番として使用されているすべての番号」

と解釈した上で,総務省が電気通信事業者に割り当てた市内局番の中に被控訴人が

調査対象としていない局番がいくつか存在するという事実のみをもって,被告サー

ビスは構成要件Aを充足しないと判断した。このような判断からすると,原判決は,

「使用されているすべての市外局番および市内局番」の意味を,総務省が電気通信事
業者に付与した市外局番及び市内局番であって,総務省の管理上「使用中」とされ

ているもの一切を指すという解釈を採ったものと考えられる。

(2) しかしながら,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当た

っては,明細書の記載を参酌すべきところ,本件明細書において,「すべての」と

いう語が用いられている部分や,構成要件Aに対応する調査対象電話番号の作成及

び発呼に係るプロセスにおいて用いられる市外局番及び市内局番に関する記載(段
落【0011】〜【0013】,【0026】)は,いずれも調査対象となる一定

の地域において使用されている市外局番及び市内局番を意味するものである。また,




構成要件Aに係る訂正を認めた訂正審決においても,調査対象地域を北海道・青森

県・秋田県・岩手県とする本件明細書の段落【0013】の記載から,当該訂正事

項は当初明細書に開示されていると判断している。さらに,本件特許発明の作用効

果は,地方,県,市町村を問わず一定の地域において使用されているすべての市外

局番及び市内局番を持つ電話番号を対象とした場合であっても提供可能であり,効
果を奏するものである。

他方,本件明細書のどこにも,原判決の採った上記解釈を基礎付ける記載はない

し,「使用されているすべての市外局番および市内局番」が日本中のすべての市外局

番及び市内局番であると解する根拠となる記載もない。

したがって,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」と

は,調査対象となる一定の地域において使用されているすべての市外局番及び市内

局番を意味するものと解釈されるべきである。

(3) 被控訴人は,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ等の7社に対して割り当

てられた市内局番について,調査対象としていない旨主張する。

しかしながら,北海道の愛別町,その他多数の市町村においては,被控訴人が調

査対象としていない(上記7社に対して割り当てられた)市内局番がない。そうす

ると,上記(2)のとおり,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市
内局番」を調査対象となる一定の地域において使用されているすべての市外局番及

び市内局番と解し,上記市町村を調査対象となる一定の地域とした場合には,被控

訴人は,すべての市外局番及び市内局番を調査対象としていることになるのであっ

て,被告サービスは構成要件Aを充足する。

(4) また,本件明細書の記載によれば,本件特許発明は,コンピュータを用い

て電話回線網で実際に使われている電話番号(又は使われていない電話番号)を調
査し,その調査結果に基づいて既存の電話番号リストをクリーニングする方法であ

るから,ここで念頭に置かれている「電話番号リスト」の電話番号は,顧客の電話

番号リストに代表されるように,いわゆる一般的な意味での電話番号,すなわち,




電話回線網を通じて一般に架電可能な電話番号を意味すると解すべきである。だと

すれば,この電話番号リストのクリーニングに用いる調査結果を得るための構成要

件Aにおける「使用されている」という語もまた,ごく通常の意味として,「電話

回線網を通じて一般に架電可能な電話番号に使用されているもの」と解すべきであ

る。したがって,電気通信事業者に使用が許可されている市内局番であったとして
も,外部から電話回線網を通じて接続できる電話番号が一つも付与されていないと

すれば,そのような市内局番は「使用されている市内局番」とはいえない。

そして,被控訴人が調査対象としていない旨主張する市内局番は,全国のうち2

8県において,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモに対してのみ使用が許可されて

いるところ,控訴人の調査によれば,同社に許可されている上記市内局番には,外

部から接続可能な加入者番号が付与されているものが1件も存在しないから,構成

要件Aの「使用されている市内局番」には該当しない。したがって,上記(2)のとお

りの解釈を採り,上記28県の各地域を「調査対象となる一定の地域」とした場合

には,被控訴人は,「使用されているすべての市内局番」を調査対象としているこ

とになるのであって,被告サービスは構成要件Aを充足する。

3 被控訴人の当審主張

(1) 控訴人の主張(2)に対して
そもそも,本件特許発明の特許請求の範囲に,控訴人が主張するような構成は一

切記載されていないし,それを示唆する記載も存しない。

また,控訴人の上記主張は,本件明細書の実施例のうち,段落【0011】〜【0

013】等の記載に依拠するものであり,そこには,北海道等の4道県の電話番号

を調査する旨の記載があるが,この4道県は例示にすぎないし,段落【0032】

には,これと同様のことを全国の各地域ごとに行い,全国の電話番号の調査を行う
ことが明瞭に開示されている。加えて,段落【0032】,【0039】には,全

国的な調査を地域的に分散させて行うことにより,本件特許発明の作用効果の一つ

である交換局の輻輳防止が図られる旨の記載がある。




これらの記載によれば,構成要件Aにおける「使用されているすべての市外局番

および市内局番」は,文字どおり何らの限定なく,全国で使用されているすべての

市外局番及び市内局番を意味すると解される。

なお,本件明細書の段落【0011】,【0026】には,市外局番及び市内局

番は一般に公開された情報である旨の記載がある。我が国の市外局番及び市内局番
は,関係法令に基づき総務省によって管理がされており,その総務省が公表する情

報が最も信頼できる公開情報である。したがって,総務省が「使用中」 「未使用」
, ,

「使用予定」等の区分を用いて公表している全国の局番に関する情報を前提として,

構成要件Aの技術的範囲を解釈することは妥当である。

(2) 控訴人の主張(4)に対して

本件特許発明の特許請求の範囲に,控訴人が主張するような構成は一切記載され

ていないし,それを示唆する記載も存しない。

また,上記(1)で主張したとおり,本件明細書には,一般に公開された情報から市

外局番及び市内局番を取得する旨の記載があるのであって,一般に公開されていな

い私的な電話番号リストなどを前提とするものではない。

さらに,控訴人は,本件明細書における「実際に使われている電話番号を調査す

る」という趣旨の記載を根拠に,調査対象は「実際に使われている電話番号」に限
定されると主張する。しかし,理論的に存在しうる電話番号のうち,どれが実際に

使われている電話番号かを調べることが本件特許発明の目的であり,控訴人の主張

は倒錯している。



第4 当裁判所の判断

1 当裁判所も,被告サービスは,少なくとも本件特許発明構成要件Aを充足
せず,禁反言の法理の関係で本件特許発明均等とは認められないものと判断する。

その理由は,次のとおり付加し,原判決43頁13行目〜14行目の「(調査対象

となる地域において)」を削るほかは,原判決30頁3行目以下の「第3 当裁判




所の判断」のとおりである。

2 控訴人の当審主張について

本件特許発明の特許請求の範囲においては,(使用されている)「すべて」の市

外局番及び市内局番という文言が用いられているのであって,範囲の広狭がある場

合には,最も広い範囲を指すと解するのが自然であり,逆に,これを「調査対象と
なる一定の地域」に限定する記載はない。

本件明細書(甲1,47)の記載をみても,【課題を解決するための手段】(段

落【0009】)には,「調査対象となる一定の地域」の市外局番及び市内局番に

限定する旨の記載はなく,唯一の実施例も,「ここまでは1台のパソコン1で北海

道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を行うと説明した。同様にして,全国の

電話網をいくつかの地域に分割し,それぞれの地域にて全国の電話番号の調査を複

数の地域に分散した複数のパソコンで分担実行する。そして,それぞれに担当した

地域の前記調査リストを通信などを通じて1つに集約することで,全国的な広域の

調査リストを作成できる。」(段落【0032】)と記載されるように,全国を対

象として調査するものである。なお,控訴人が主張の根拠とする記載(段落【00

11】〜【0013】,【0026】)は,全国を調査する一環として,ある地域

を分担したパソコンによる調査方法を説明したものであって,控訴人の主張するよ
うな,一定の地域に限定して調査を行う旨の記載であるとは認められない。また,

控訴人は,訂正審決が本件明細書の段落【0013】を根拠に訂正を認めたと主張

するが,審決は,当該段落に加えて上記の段落【0032】も引用して訂正事項が

当初明細書に開示されていると認定したのであり(甲47),控訴人の主張に沿う

判断をしたものではない。さらに,本件特許発明の解決課題・作用効果についても,

従来技術の2つの課題のうちの1つである「交換局の輻輳の問題」(段落【000
6】)に対して,本件特許発明では,全国を複数のパソコンで分担調査することに

より,コンピュータに近い交換局の輻輳が起きないという効果を奏する旨記載され

ているのであって(段落【0034】,【0039】),この点においても,全国




の調査を前提とするものである。

したがって,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」と

は,調査対象となる一定の地域において使用されているすべての市外局番及び市内

局番を意味するという控訴人の主張は,採用することができない。

そして,控訴人のその余の主張は,上記説示により排斥された解釈を前提として,
一定の地域においては,被控訴人が調査対象としていない局番が存在せず,すべて

の局番を調査していることになるので,構成要件Aを充足しているというものであ

るから,その前提を欠くことになる。

したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の主張は採用する

ことができない。



第5 結論

よって,被告サービスは本件特許発明技術的範囲に属するとはいえず,本件控

訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

塩 月 秀 平




裁判官
古 谷 健 二 郎





裁判官

田 邉 実






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