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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ネ10005損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
平成11ワ101特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成22ネ10089特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成11ワ26599特許権侵害差止請求事件 判例 特許
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事件 平成 1年 (ワ) 3743号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1994/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、別紙物件目録記載の東洋セラミック精米機CS−一〇〇B、CS−一〇〇BE型を製造し、譲渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示してはならない。
2 被告は、別紙物件目録記載の東洋セラミック精米機CS−一〇〇B、CS−一〇〇BE型及びその半製品(別紙物件目録記載の構造を具備しているが精米機として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金三四〇万円及びこれに対する平成元年四月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。
この判決は、第3項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告1 主文第1項、第2項同旨。
2 被告は、原告に対し、金三八〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 右第2項について仮執行宣言。
二 被告1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
請求原因
一 原告は、精米機を含む穀類調製加工機を製造販売する会社であり、被告は、食糧加工機及び精米関係機械を製造販売する会社である。
二 原告は、左記特許権(以下、「本件特許権」といい、特許請求の範囲第1項記載の発明を「本発明」という。)を有している。
1 登録番号 第一〇三六七五五号2 発明の名称 混水精米法3 出願日 昭和五〇年九月二六日4 出願公告日 昭和五五年七月九日5 登録日 昭和五六年三月二四日三 本発明の「特許請求の範囲」欄の記載は、本判決添付の特許審判請求公告公報(以下「本件公報」という。)写しの該当欄第1項記載のとおりである。
四 本発明の構成要件 本発明の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
a 六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米を多孔壁除糠精白室により更に精白して精白度を進行させる。
b 右進行過程において、
その白米中に米量に対し〇・一〜二%の水または塩水その他水溶液を添加する。
c そして、直ちに粒と粒の相互摩擦作用による精米を行なうと同時に前記多孔壁部を通して急速に除糠除水を行ない前記精白室から排出する。
d 以上を特徴とする混水精米法。
五 本発明の作用効果 本発明の作用効果は、従来至難とされた糊粉層の完全除去を容易にしたことは勿論、米粒全体が均一な高白度の白米となり、粒面が高密度の光沢平滑面に仕上がることにある。
六 被告製品の構造 被告の製造販売にかかる東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE型(以下これらを総称して「被告製品」という。)の構造は別紙物件目録記載のとおりである。
七 被告製品の作用 被告製品の作用は、次のとおりである。
1 運転ボタン74を押すと、電動機38、43、47、47´及び85がそれぞれ駆動する。電動機38の駆動により、調車39が回転し、その回転はベルト40を介して調車37に伝えられ、第一精米部Aの軸11と共に螺旋転子6とセラミックローター5とが一体的に回転する。
これと同様に、電動機43の駆動によって軸41と共に第二精米部Bの螺旋転子14、摩擦攪拌転子13及び調車50が回転し、調車50の回転により、調車70、70´と共に送穀螺旋22、22´が回転する。
また電動機47、47´の駆動によって第三精米部Cの主軸35と共に攪拌転子94、94´、螺旋転子25、25´及び摩擦攪拌転子24、24´が回転する。
更に、電動機85の駆動により圧送ファン86が回転し、第二精米部Bにおいて、外気を軸41の開口端部により中空部に導き、射風孔66より摩擦攪拌室15内に噴射し、多孔壁除糠筒12の多孔壁から集糠ホッパー34の内部に放出する。
同時に機外の吸引ファンを回転し、集糠ホッパー34内の空気を集糠ダクト33を介して外部に吸引する。
また、同様に第三精米部Cにおいては、外気を主軸35、35´の開口端部より中空部に導き、通風孔36、36´を介して射風孔69、69´より摩擦攪拌室26、26´内に噴射し、多孔壁除糠筒23、23´の多孔壁から集糠ホッパー34の内部に放出する。
2 シャッター2を開き、玄米誘導筒1から給米口3に原料玄米を供給すると、原料玄米は、第一精米部Aにおいて、螺旋転子6の回転によって精白筒4とセラミックローター5との間に強制的に送り込まれ、その表層部分の一部の糠がセラミックローター5の作用によって除去され、除去された糠と共に排米口8より圧迫板9を押し開いて下方に移動する。セラミックローター5による精米作用の強弱の調整は、電動機38に流れる電流値を電流計89によって確認しながら圧迫板9に設けた重錘72の位置を移動することによって行われる。
3 第一精米部Aである程度精白された米粒は、給米口18に供給されて第二精米部Bに送られる。給米口18に供給された米粒は、螺旋転子14の回転によって多孔壁除糠筒12と摩擦攪拌転子13との間に強制的に送り込まれ、摩擦攪拌転子13の回転によって突脈65から強制的な摩擦攪拌作用を受けて、米粒相互間で摩擦を繰り返すことによりその表面の糠が更に剥がされ、米粒面の平滑化がなされ、排米口19より圧迫板17を押し開いて下方に移動し、二方向分配器21に供給されて二方向に分岐され、送穀螺旋22、22´によって横方向に移送される。摩擦攪拌室15内で米粒より剥離された糠は、射風孔66から噴射される空気流によって多孔壁除糠筒12の多孔壁を通って摩擦攪拌室15の外に排出されて集糠ホッパー34に落下する。
摩擦攪拌作用の強弱は、電動機45に流れる電流値を電流計90によって確認しながら上段圧力調節器82にて調整する。第二精米部Bを通過した後の白米米粒は、原料玄米に比して重量比率で六パーセント以上精白されている。
4 送穀螺旋22、22´から第三精米部Cの給米口27、27´に供給された白米米粒は、攪拌室93、93´の内部で攪拌転子94、94´によって、送穀室92、92´の内部に送り込まれる。
そして送穀室92、92´内に設けられた螺旋転子25、25´によって摩擦攪拌室26、26´に強制的に送り込まれる。
この際、米粒は攪拌室93、93´と送穀室92、92´とに跨がるように臨ませて設けた加水ノズル部51、51´の加水ノズル54a、54´a、54b、54´bから水分等の添加を受ける。
表面が湿潤軟質化された米粒は、米粒相互間で摩擦を繰り返すことにより軟質化した表面の糠が更に剥がされ、射風孔69、69´からの通風作用によって急速に除糠される。これに引き続いて更に米粒相互間で摩擦を繰り返すことによりその表面が研磨され、米粒面に光沢をもたらし、光沢米となって排米口28、28´の方向に移動して排出される。
また、精白中の米粒は、常に射風孔69、69´からの通風作用を受けており、
剥離した糠はその通風作用によって多孔壁除糠筒23、23´の外側に排出されて集糠ホッパー34に落下し、集糠器に送られる。
5 水タンク62aの水は、ポンプ58a、58´aに送られて加圧される。ポンプ58aから排出された水はパイプ57及び56a、56bを経て加水ノズル54a、54bから攪拌室93及び送穀室92内の米粒に添加される。そして、ポンプ58´aから排出された水はパイプ57´及び56´a、56´bを経て加水ノズル54´a、54´bから攪拌室93´及び送穀室92´内の米粒に添加される。
6 溶液タンク62bの溶液は、ポンプ58b、58´bに送られて加圧される。
ポンプ58bから排出された溶液はパイプ57及び56a、56bを経て加水ノズル54a、54bから攪拌室93及び送穀室92内の米粒に添加される。そして、
ポンプ58´bから排出された溶液はパイプ57´及び56´a、56´bを経て加水ノズル54´a、54´bから攪拌室93´及び送穀室92´内の米粒に添加される。
7 適正運転時においては、供給原料の流量を流量調節器80により、一時間当たり約六〇〇〇キログラムに調整し、流量調整ボリウム84により、流水量を一時間当たり約一二キログラムとする。
八 本発明と被告製品の作用との対比1 構成要件aについて(一) 被告製品は、第一精米部A及び第二精米部Bを通過させ、原料玄米に比し重量比で六パーセント以上精白した白米を、攪拌室93、93´及び送穀室92、
92´を経由して多孔壁除糠筒23、23´と摩擦攪拌転子24、24´との間に形成された摩擦攪拌室26、26´に移送して第三精米部Cにおいて更に精白するという作用を有している。
(二) 構成要件aの「六分搗き」という言葉の意味についていうと、搗精歩合は、玄米に含まれている糠層と胚芽をどの程度除去したかを示す用語であるが、玄米全体に占める糠層や胚芽の割合は、その玄米の品種とか産地等により異なることはもちろん、玄米から糠層や胚芽のみを正確に取り出すこともできないので、正確にこれを歩留率と対応させることはできないし、この搗精歩合を判定する適当な装置や方法も存在しない。歩留率という用語も一般的には原料玄米の重量とこの玄米を搗精して得られた白米の重量との百分率で表されるが、搗精ロス分もあるため、
搗精歩合と歩留率を正確に対応させることは不可能である。しかし搗精歩合の根拠が玄米から糠層や胚芽をほぼ完全に除去し、完全精米とした状態を十分搗きとしていること、また一般の搗精作業において完全精白米として搗精されている白米の歩留率が九〇パーセントであるため、本発明では便宜的に玄米全体に占める糠層や胚芽の割合を一〇パーセントとし、搗精歩合と歩留率とに関連性を持たせたものである。このことは、原告が本発明の出願手続中に提出した手続補正書において、「玄米に対する歩留率九四パーセントもしくはそれ以下の白米即ち、六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米」と記載し、その文意から歩留率九四パーセントの白米と六分搗きの白米とを同じ状態のものとして位置付けていることからも明らかである。実際、搗精して得られる完全精白米の歩留率を基準として搗精度合いを示すといった本発明の考え方は、決して特異なものではなく、両者の対応関係が数値的に明白であることから、当業界において一般にとられている考え方でもある。被告は、出願経過において原告が「歩留率九四パーセントもしくはそれ以下の白米すなわち」という文言を削除したことについて、後記第三、五1(二)のように主張しているが、原告が右の文言を削除したのは、歩留率の九四パーセントと搗精率の六分搗きとが同じ概念であることから、クレームを簡潔にするため削除したものにすぎない。
(三) 被告製品が第一精米部A及び第二精米部Bにおいて、原料玄米に比して重量比で六パーセント以上精白した白米を、第三精米部Cにおいて更に精白していると認められる理由を示すと以下のとおりである。
(1) 現在、一般に流通している精米は、胚芽米のような特殊なものを除けば、
その殆どすべてが完全精白米である。そして食糧庁は、この完全精白米(一〇分搗米)は九一パーセントの搗精歩留のものとしている。
(2) 被告製品もこの完全精白米を生産するための装置である。しかるところ、
被告製品の第一精米部Aの電動機は二〇馬力であり、第二精米部Bの電動機は五〇馬力であり、第三精米部Cの電動機は四〇馬力といった配分になっている。この被告製品によって、一〇分搗の完全精白米(九一パーセント歩留)を得るものと仮定すると、全工程における単一馬力当たりの搗精能率を同一のものとした場合、全体の馬力と第一精米部Aと第二精米部Bとを合わせた馬力の配分率は一一〇馬力分の七〇馬力すなわち約六四パーセントとなることから、この両精米部で約六・四分まで搗精していることになる。通常、第三精米部Cの精白は糠層の大部分が除去されたもので、堅い糊粉層を精白するものであるから、第一精米部A及び第二精米部Bに比較して搗精能率が低下するものであり、実際上は第一精米部A及び第二精米部Bでは約七分程度までに搗精しているものと考えるのが相当である。
(3) 被告の作成にかかる被告製品に関する説明書(東洋セラミック精米機の原理・乙第一〇号証)の記載によれば、最終の精米歩留率が九〇パーセントとされ、
第一精米部Aにおいて精米歩留率九八パーセントまで即ち二分搗精し、第二精米部Bにおいて精米歩留率九一パーセントまで即ち七分搗精し、第三精米部Cにおいて精米歩留率九〇パーセントまで即ち一分搗精していることが看取される。
(4) このように、被告製品は「六分搗き」以上の精白度の白米を第三精米部Cに供給して搗精することを常態としているものであり、これ以外の六分搗き未満の白米を供給して搗精することは皆無である。
(四) 右(二)、(三)によれば、被告製品は、前記(一)の作用を有していると認められ、右は本発明の「六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米を多孔壁除糠精白室により更に精白して精白度を進行させる」といった構成要件aを充足する。
2 構成要件bについて(一) 被告製品は、攪拌室93、93´と送穀室92、92´とに跨がるように臨ませて設けた加水ノズル部51、51´の加水ノズル54a、54b、54´a、54´bから、適正運転時においては、一時間当たり約六〇〇〇キログラムの供給原料に対し、一時間当たり約一二キログラムの水を供給するという作用を有している。
(二) 被告製品の右(一)の作用は、本発明の「右進行過程において白米中に米量に対し〇・一〜二%の水または塩水その他水溶液を添加する」との構成要件bを充足する。
(三) 被告は本発明の構成要件bは、送穀室を除く狭義の精白室内において水分を添加するものに限られると主張しているが、本発明の水分添加時期は米粒が六分搗き以上に精白された後であって、最終歩留率まで精白される以前とは解されるものの、水分添加後精白するまでの時間的経過はなるべく短時間であるとだけ限定されていることなどを考慮すると、本発明における水分添加の時期もしくは場所は狭義の精白室内に限られないことは明らかで、水分添加場所は、広義の精白室、すなわち狭義の精白室の直前に設けられた送穀室や供給口も含まれるものである。本発明の実施例においても、精米機の供給口5に加水していることが図示されているが、これは米粒の種類に応じて糠の割合に多寡があることから、比較的糠が少ない場合、広義の精白室において加湿することが適当であるが、比較的糠が多い場合、
米粒表面皮層を軟質化するため若干加湿の時期を早めることも必要となってくるため、そのような実施例があげられているものである。
(四) 被告は、被告製品は、粘土糠を介して水分を間接的に米粒に添加するから、本構成要件を具備しないと主張する。しかし、本発明の米粒への加水方法は、
どのような形態であれ米粒に水分が添加されるのであれば、直接であると間接であるとを問わないものであるから、右主張は失当である。
3 構成要件cについて(一) 被告製品は、第三精米部Cにおいて、攪拌室93、93´及び送穀室92、92´で水分の添加を受けて主として表面のみが湿潤軟質化された米粒を、摩擦攪拌室26、26´内で米粒相互間の摩擦を繰り返すことによって急速に除糠しながら米粒面が平滑面となるように琢磨し、剥離した糠及び添加した水分を射風孔69、69´からの通風作用によって多孔壁除糠筒23、23´の外側に排出するという作用を有している。
(二) 被告製品の右(一)の作用は、本発明の「そして、直ちに粒と粒の相互摩擦作用による精米を行うと同時に前記多孔壁部を通して急速に除糠除水を行い前記精白室から排出する」との構成要件cを充足する。
(三) 被告は、構成要件cの「直ちに」との語句の意味を、精白室内で精白中の米粒に加水することを表現したものと主張しているが、右「直ちに」とは、水分を添加した後精米を行うまでの時間的経過に関してのもので、添加した水分が主として米粒の表面のみを湿潤軟質化し、その内質までを湿潤しない位の短い時間を意味するものであるから、被告の右主張は失当である。
(四) 被告は、「粒と粒との相互摩擦作用」について、被告製品が「粘土糠を介して」米粒と米粒を接触させて精米を行っているから、被告製品の精米方法は、右要件を欠くと主張しているが、仮に被告製品がそのような精米方法をとっているとしても、これは本構成要件の「粒と粒との相互摩擦作用」すなわち、摩擦精米方式に該当する。
(五) また構成要件cのうち「急速に除糠除水」の「急速に」とは、水分が主として米粒の表面だけを湿潤し、その内質までに及ばないように水分添加から精白終了までの時間経過を通常一〇秒以内、せいぜい二〇秒内外とすることを意味するところ、被告製品において、米粒が第三精米部Cに供給されて排出されるまでの米粒の通過時間は、その広義の精白室の容量と処理能力(毎時六トン)から算出すると、七・三秒ないし一二秒前後であり、水分が添加されて除糠除水される時間はこれより短いから、この点においても被告製品は本発明の「急速に除糠除水」という要件を満たすものである。
4 被告製品の第三精米部Cにおける精米方法は、右1ないし3の方法を採用することを特徴とした混水精米法であることから、本発明の構成要件dを充足する。
5 以上述べたように、被告製品の採用している方法は本発明の構成要件aないしdをすべて充足しているものであり、本発明の効果と同一の効果を奏する。
九 被告製品は集中精米工場に設置され、もっぱら本発明の実施にのみ使用される物である。
一〇1 被告は、昭和六一年一〇月頃から被告製品の製造販売を開始し、現在に至るまでの間少なくとも一九台を別紙納入先一覧表記載のとおりの納入先の集中精米工場に設置、納入してきた。
2 被告製品の販売価格は一台当たり平均二〇〇〇万円である。
3 原告は被告に対し、特許法102条2項に基づいて、本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を損害賠償として請求することができる。
そして、本発明の実施価値が従来不可能とされていた高精白度かつ超光沢の精白米を得ることを可能としたものとして実施価値が高いこと、国有特許権を第三者に実施許諾する場合、実施価値上のものは四パーセントを基準として実施料が定められること、被告製品は上段から順に第一精米部A、第二精米部B及び本発明を実施した第三精米部Cからなり第三精米部Cのウエイトが大きいことからすると、本件特許権の利用割合は五〇パーセントとも思われるが、加湿精米に関する別件東京地方裁判所平成元年(ワ)第三七四六号特許権侵害差止等請求事件の装置の特許発明(特許登録一二八七五九七号)があることから、その二分の一の二五パーセントに減額すべきと考えられることなどからすると、本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額は被告製品の販売価格の一パーセントが相当である。
そこで原告の損害は、
二〇〇〇万円×一パーセント×一九台=三八〇万円となる。
一一 よって、原告は被告に対し、被告製品の製造販売等の差止め、被告製品及びその半製品の廃棄並びに損害賠償として金三八〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
請求原因に対する認否及び被告の主張
一 請求原因一ないし四は認める。
二 請求原因五は争う。
三 請求原因六は、三、構造の説明、3、(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目に「送穀室92、92´とに跨がるように臨ませて」とある部分を否認し、
その余は認める。
右部分は「送穀室92、92´との境界部の位置に」とすべきである。
四1 請求原因七1は認める。
2 同2のうち、「その表層部分の一部の糠がセラミックローター5の作用によって除去され」のうち、「除去」とある部分を否認し、その余は認める。右は「剥離」というべきである。
3 同3のうち、「第二精米部Bを通過した後の白米米粒は、原料玄米に比して重量比率で六パーセント以上精白されている」のうち、「原料玄米に比して重量比率で六パーセント以上精白されている」とある部分を否認し、その余は認める。
4 同4のうち、「攪拌室93、93´と送穀室92、92´とに跨がるように」、「水分等の添加を受ける。」、「表面が湿潤軟質化された米粒」、「軟質化した表面の糠が更に剥がされ」、「通風作用によって急速に除糠される」、「米粒相互間で摩擦を繰り返すことによりその表面が研磨され」とある部分をそれぞれ否認する。
5 同5、6はすべて否認する。
6 同7は認める。
五1 請求原因八1について(一) 同(一)中、被告製品において第三精米部Cに送られる中途精米の程度が、常に原料玄米に比して重量比で六パーセント以上であることは否認し、その余は認める。
(二) 同(二)は否認する。原告は、六分搗きとは、糠層や胚芽の割合を一〇パーセントとし、そのうちの六パーセントを除去することであると主張しているが、
そもそも搗精というのは、糠層と胚芽を除去することであり、何分搗きというのはその糠層及び胚芽をどの程度除去したかの搗精度合いのことであるから、糠層及び胚芽部分を除去した結果、その除去割合が糠層及び胚芽の六〇パーセントである場合の精白度を六分搗きというのであり、したがって、米粒の重量に対し、糖層が六パーセント、胚芽が二パーセントの合計八パーセントの重量であるから、本発明の「六分搗きもしくはそれ以上の精白度」というのは、右合計八パーセントの糠層及び胚芽のうちの六〇パーセント以上を除去してその白米に加水することである。原告は本件特許出願手続過程において、「歩留率九四パーセントもしくはそれ以下の白米すなわち」「六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米」とされていた特許請求の範囲の記載から、前者の記載のみを削除しているが、これは原告自身、搗精率と歩留率とは区別されるべきものであることを前提に、搗精率の中に歩留率を持ち込むべきでないとして削除したものである。
原告は、砕米についても考慮の対象とすべきであるというように述べているが、
砕米等のロス分の問題は、搗精過程で発生する歩留率の問題で、玄米中の糠層を除去するという搗精度の概念と異なり糠白度と無関係であるから、搗精度合いにおいてロス分などの砕米を考慮することは許されない。
(三) 同(三)は否認する。被告製品は四分搗きないし九分搗きの米を完全精白米に搗精する能力を有している。被告製品においては、第一精米部A、第二精米部B及び第三精米部Cにおいてどのような搗精割合をもって搗精させるか、その選択は任意であり、被告製品の第三精米部Cは、六分以上に搗精した精白米のみを対象として精白するものではない。被告製品の各精米部は、重錘ないし圧迫板を調整して搗精割合を調整できるようになっており、電動機の馬力に比例しない。
(四) 同(四)は否認する。本発明は、八パーセントの糠層と胚芽のうちの六〇パーセント、すなわち四・八パーセントの糠層等を除去したものを対象とするものであるところ、被告製品は、右(三)によれば、四分搗きのもの、即ち糠層等を三・二パーセント除去したものも対象としているので、本発明の構成要件aを具備していない。
2 請求原因八2について(一) 同(一)は否認する。
(二) 同(二)は否認する。
(三)(1) 本発明は、「多孔壁除糠精白室により更に精白して精白度を進行させる過程」で水分を添加する方法であるが、この要件は、六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米を多孔壁除糠精白室により更に精白度を進行させる過程において、水溶液を添加させるのであり、水溶液を添加する部位は当然多孔壁除糠精白室内に限定される。
また本発明は、水溶液を添加した後「直ちに粒と粒の相互摩擦作用により精米を行う」と「同時に前記多孔壁部を通して急速に除糠除水を行う」ということからすれば、水溶液添加の部位は水溶液が添加された後直ちに精米し得る部位であることと、同時に急速に除糠除水を行うような部位であることの二つが必要である。本発明の水溶液添加の部位及び時期との関係からして、水溶液添加の部位は当然多孔壁除糠精白室内である。
更に原告は、被告を請求人とする無効審判請求に対する答弁書において、被告が提出した乙第四号証の引用例について、「(引用例)記載のものは、水分の付与が第一精米機から第二精米機への移行中に行われるのであって、水分の付与後直ちに精米が行われるものではない」として、本発明は水分の添加を穀粒の移送中ではなく穀粒を搗精する精米機即ち精白室において添加する構成であると主張しており、
多孔壁除糠精白室への移送機構である供給口とか送穀室に水分添加装置を設けることは、本発明に含まれないものである。
(2) これに対し被告製品の加水装置は、送穀室内に設けてあり本発明のように精白室に設けていないうえ、送穀室は多孔壁が構成されていないので搗精とか除糠作用を担っておらず、米粒を精白室に送るという作用を有するのみであるから、この点においても右要件を充足しない。
(四) 本発明は、「その白米中に」水または塩水を加えることを要件としており、右は、精白室内で精米中の米粒に直接水または塩水を添加する方法を採用しているものである。
しかし被告製品は精米中の米粒に直接水分を添加することはない。被告製品は、
粘液を添加する加水ノズル54が、送穀室の内側の壁に向けられているので、水は送穀室の内壁面に付着し、この水と糠が混合され粘土性の高い粘土糠となり、この水分を含んだ粘土糠を介して間接的に米粒に加水されるものであり、この点本発明と異なる。
したがって被告製品においては、米粒に直接水分を添加する本発明の要件を具備していない。
(五) また本発明は、白米中に米量に対し「〇・一〜二%」の水または塩水を添加することを要件とするものであるが、被告製品は〇・二〜一・五パーセントの水を添加するのであるから、本発明の水分添加量より下限は多いが上限は少ない水分の添加で精米でき、本発明の方法と異なる。
3 請求原因八3について(一) 同(一)は、第三精米部Cにおいて、米粒が主として表面のみが湿潤軟質化されること、米粒相互間の摩擦を繰り返すことによって急速に除糠しながら米粒面が平滑面となるように琢磨することを否認し、その余は争わない。
(二) 同(二)は否認する。
(三) 本発明は、水分を添加後「直ちに」精米を行うのであるが、本発明によれば精白室に加水装置を設けているので、加水装置により精白室内の米粒に直接水分を添加した後、時間的経過を経ずして請米することができる。むしろ本発明の場合、精白室内で精白中の米粒に加水することを「直ちに」と表現したと理解すべきである。
これに対し被告製品は、前記のように加水装置が送穀室に設けられていて、水分添加後も米粒は送穀室内で移動中であり、直ちに精米が行われることはない。したがって、被告製品は、本発明の構成要件cを具備していない。
(四) 本発明は、水分添加後直ちに「米粒と米粒との相互摩擦作用」により、精米を行うものであるが、被告製品は前記のように粘性の高い粘土糠を形成し、米粒がこの粘土糠に覆われた状態で第三精米部Cに送られ、水分は粘土糠を介して間接的に米粒に付与されるので、米粒への水分の浸透は緩慢であり、第三精米部Cでの除糠除水もゆっくりと進行する(この精米方法を被告は潤糠式と呼んでいる)。被告製品の第三精米部Cにおいては、米粒と米粒とを粘土糠を介して接触させて精米を行っており、本発明のように米粒と米粒とを直接接触させその相互摩擦作用による精米を行っていない。したがって、被告製品は、本発明の「粒と粒との相互摩擦作用」という要件も具備していない。
(五) 本発明は、水分添加後直ちに精米を行うと同時に「急速に除糠除水」を行うことを要件とするものである。この要件は、水分を「添加した後直ちに」米粒と米粒との相互摩擦作用を行うと同時に多孔壁部を通して「急速」に除糠除水を行うのであるから、水分の添加、相互摩擦作用及び除糠除水が同時期に行われるものと理解すべきである。即ち、右要件の「直ちに」とは、水分添加後精米開始から除糠除水までの時間を含めて、水分添加後直ちに搗精を開始し、同時に除糠除水させるという時間のことをいうものであり、「急速」というのは、除糠除水の時間をいうのであり、本件公報に記載されている「せいぜい二〇秒内外」と言うのは、水分添加後精米終了までの時間を指すものと解すべきである。
これに対し被告製品の加水は、第三精米部Cの前段階である送穀室において行われるので、水分を「添加した後直ちに」米粒と米粒との相互摩擦作用を行わないし、送穀室は多孔壁に構成していないので、「急速」に除糠除水も行われていない(なお、被告製品の第三精米部Cの白米通過時間は、最大一八・五秒程度である。)。被告製品の第三精米部Cにおける精米方法では、米粒への水分の浸透は緩慢であり、直接米粒に水分添加を行うため急速に除糠除水を必要とする本発明と異なり、水分を含んだ粘土糠を急速に精白室外に排出する必要がない。
したがって被告製品は、本発明の「急速に除糠除水を行う」という要件も具備していない。
(六) また本発明は、「水または塩水その他の水溶液」を添加するものであるが、本発明において精白米に添加する水溶液は急速に除水できるような性質を有するものに限定され、粘性の水溶液を使用するような構成は含まれないと理解すべきであるところ、被告製品は、送穀室の内壁において粘土糠を生成しやすくするため粘性を有する水溶液を使用しているので、この点からしても被告製品は本発明の技術的範囲に属しない。
4 請求原因八4は否認する。
5 請求原因八5は否認する。
六 請求原因九は否認する。
被告製品の第一精米部Aは、セラミックローターを設け、皮だけ括げて剥す方法である括剥方式を採用しているので、この段階である程度の糠層を精白する能力を有しているが、搗精の程度は二パーセントに限らず搗精圧により調整可能である。
第二精米部Bは、「へ」の字型のロールを設けた摩擦方式を採用しているが、この第二精米部Bにおいても搗精圧により搗精度を調整することが可能である。そして第三精米部Cは、既に述べたように粘土糠を利用し精白する潤糠方式を採用しているが、第一精米部A及び第二精米部Bで四分搗きあるいはそれ以上に搗精した精白米を完全精白米までに仕上げるようになっているので、前述のように被告製品は四分搗きないし九分搗きの精白米を完全精白米に搗精する能力を有しており、間接侵害に該当しないこと明らかである。
原告は、各精米部における電動機の出力割合から間接侵害に該当すると主張するが、各精米部は、重錘ないし圧迫板を調整して搗精割合を調整できるようになっており、電動機の馬力に比例するわけではないから失当である。
七1 請求原因一〇中、1は否認する。原告が主張する設置、納入先のうち、被告製品と同一の構造を有する精米機の設置、納入先は、埼玉南部米穀株式会社と山梨県米穀株式会社のみであり、その余の設置、納入先については、被告製品と第三精米部Cの構造が異なる。
被告は、昭和六一年頃から「BS型」精米機を製造販売していたが、昭和六二年頃から「CS型」精米機を製造販売するようになった。「BS型」及び初期のころの「CS型」精米機の送穀室内の螺旋転子の螺旋は、一定の間隔をもって構成されていたが螺旋のピッチが狭い形状のものであった。そして「CS型」精米機は、昭和六三年四月頃から螺旋転子の構成を、右初期の頃の螺旋転子の一部の螺旋のピッチを広くした本件訴訟の対象である被告製品のような構成の螺旋転子とした。
「CS型」精米機については、更に、平成二年一一月頃から、螺旋転子の螺旋をピッチは一定であるが、昭和六二年頃の初期の形状に比較するとピッチが長いものに変更した。
したがって、原告主張の一覧表に記載されている「CS型」精米機のうち、納入時期が昭和六三年四月以前のものは、元は「BS型」精米機であった精米機の部品を交換して「CS型」精米機に変更したものもふくめていずれも別紙物件目録記載の被告製品のような螺旋転子を備えていなかった。その後部品の交換により被告製品のような螺旋転子を備えることになったものが、前記の二社へ設置、納入したものである。
2 同2は否認する。
3 同3は争う。精白室において加水する構造はすでにほかに多く特許権があり、
被告製品の第三精米部Cの場合、本発明と異なる精米方式を採用していること、各精米部に比べて第三精米部Cの搗精率が低いこと、本発明にかかる部品の占める割合などが低いこと、加水精米機が公知の物で本発明の開拓に多額の費用を要する発明でもないことからすると、本件特許の実施料率はせいぜい〇・〇五パーセントである。
八 請求原因一一は争う。
証拠関係(省略)
理 由一 請求原因一ないし四は、当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第一号証(本件公報)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因五を認めることができる。
三 請求原因六中、別紙物件目録三、構造の説明、3(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目に「送穀室92、92´とに跨がるように臨ませて」とある部分は、当事者間に争いのない別紙物件目録第6図ないし第8図によってこれを認めることができ、その余の部分については当事者間に争いがない。
四1 請求原因七1は、当事者間に争いがない。
2 同2は、「その表層部分の一部の糠がセラミックローター5の作用によって除去され」のうち、「除去」とある部分以外は当事者間に争いがなく、右除去について、被告は剥離とすべきであると主張するが、玄米粒から表層部分の糠を剥離することは除去の一態様にすぎないから、被告は原告の右に関する主張を認めるものということができる。
3 同3の「第二精米部Bを通過した後の白米米粒は、原料玄米に比して重量比率で六パーセント以上精白されている」とある部分以外、同4の「攪拌室93、93´と送穀室92、92´とに跨がるように」、「水分等の添加を受ける。」、
「表面が湿潤軟質化された米粒」、「軟質化した表面の糠がさらに剥がされ」、
「通風作用によって急速に除糠される」、「米粒相互間で摩擦を繰り返すことによりその表面が研磨され」とある部分以外は、いずれも当事者間に争いがなく、また同7は、当事者間に争いがない。
五 請求原因八(本発明と被告製品の作用の対比)について判断する。
1 請求原因八1(構成要件a)について 請求原因八1(一)は、「第二精米部Bを通過した米が、原料玄米に比し重量比で六パーセント以上精白されている」とある部分以外は、当事者間に争いがない。
(一) 成立に争いのない甲第三号証、乙第一号証、乙第九号証、弁論の全趣旨によって真正に成立したものと認められる甲第四号証、乙第一〇号証並びに弁論の全趣旨によれば、精米とは、玄米から糠層と胚芽部を除く操作であるところ、重量比で玄米一〇〇パーセントに対して玄米粒の果皮から糊粉層までの糠層は五ないし六パーセント、胚芽部は二ないし三パーセントを占めており、これらを合わせた約八パーセントのものが通常糠と呼ばれて、搗精によって除去されること、精米業界において、玄米から糠層や胚芽をほぼ完全に除去し完全精白米とした状態を十分搗きとしていること、したがって完全精白米の理論上の搗精歩留(精米重量の元の玄米重量に対する割合)は約九二パーセントとなること、そこから精白米は八パーセントの糠が除かれるので歩留は九二パーセントになると解説する著書もあるが、搗精の実際においては部分的にでん粉層が削られたり、衝撃や圧力によって米粒が砕けたりするため、必ずしも理論通りの搗精歩留まりにはならず、通常搗精中の砕粒の発生、搗き込み分、ロス等を約一パーセント程度と見込み、理論上の歩留九二パーセントからこの一パーセントを差し引いて完全精白米で約九一パーセントとする見解もあること、食糧庁では、主食用として玄米を売却する場合、需給上の精米換算率を一から四等玄米について九一パーセントとしていること、更に、便宜上、糠が完全にとり除かれた完全精白米の歩留りを、約九〇パーセントとする例もあること、原告は本発明の出願過程中、昭和五二年一〇月一八日付け補正書により明細書全文を補正したが、その際の特許請求第1項の記載においては、「玄米に対する歩留率九四パーセントもしくはそれ以下の白米即ち、六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米を」と記載していたもので、その文意から歩留率九四パーセントの白米と六分搗きの白米とを同じ状態のものとして扱っていると見られること、被告代表者【A】が著作し被告が発行した「第三の精米方式 東洋セラミック精米機の原理」と題する説明書(乙第一〇号証。以下「被告説明書」という。)において、被告製品による搗精について、最終精米歩留率を九〇パーセントとして説明していることが認められ、右認定事実を総合すれば、一般の搗精作業において完全精白米として搗精されている白米の歩留率は九〇ないし九一パーセントであり、これを九〇パーセントとする考え方も決して異例ではなく、本発明も完全精白米の元の玄米に対する重量比(歩留率)を九〇パーセントとし、搗精歩合と歩留率とに関連性を持たせ、歩留率九四パーセントの白米を六分搗きと表現したものと認められる。
右認定に反する被告の第三、五1(二)の主張は採用できない。
(二) 弁論の全趣旨によれば、被告製品は玄米を右(一)認定の完全精白米に加工するための装置であること、被告製品の第一精米部Aの電動機は二〇馬力であり、第二精米部Bの電動機は五〇馬力であり、第三精米部Cの電動機は四〇馬力といった配分になっていることが認められ、玄米が、順次第一精米部A、第二精米部B、第三精米部Cを経て一〇分搗の完全精白米(九〇ないし九一パーセント歩留)を得るものであるから、全工程における単一馬力当たりの搗精能率を同一のものと仮定した場合、全体の馬力と第一精米部Aと第二精米部Bとを合わせた馬力の配分率は一一〇馬力分の七〇馬力すなわち約六四パーセントとなることから、この両精米部で少なくとも六四パーセント程度の搗精をしている計算になる。
また、成立の争いのない甲第九号証によれば、摩擦式精米機において、精米を行う際、歩留率九四パーセントくらいまでは主に玄米の果種皮(果皮)が大きく剥離され、この作用は比較的容易に行われ消費電力も少ないが、主として糊粉層が除去される歩留率九四パーセントくらいから、精白作用が大変困難になり消費電力も急速に増加することが認められ、前記乙第一〇号証、弁論の全趣旨によって真正に成立したものと認められる乙第一一号証によれば、被告製品についても第一精米部A及び第二精米部Bにおいては、除去が容易な果種皮(果皮)を中心に剥離する反面、第三精米部Cの精白は除去が困難な糊粉層を精白することを中心にするものであるから、第一精米部A及び第二精米部Bに比較して搗精能率が低下するものと認められる。
以上のことからすると、被告製品においては、第二精白部Bを経た後には全搗精のうち少なくとも六〇パーセント以上が行われているものと推認することには合理性がある。
また前記乙第一〇号証によれば、被告説明書において、搗精の進行に伴う、精米歩留率と精米の上昇温度の関係について、他の精米方法を採用した精米機と被告製品とを対比説明したグラフで、被告製品の最終の精米歩留率が九〇パーセントとされ、上中下段、すなわち第一、第二、第三精米部Cのそれぞれにおいて精白度を計測した結果、第一精米部Aにおいて精米歩留率九八パーセントまで即ち二分搗精され、第二精米部Bを経た段階において精米歩留率九一パーセントまで即ち九分搗精され、第三精米部Cを経た段階において精米歩留率九〇パーセントまで即ち一〇分搗精されていることが示されていること、説明の目的に照らせば、右のような結果は、被告製品の通常の使用方法を示していることが認められる。
以上を総合すれば、被告製品による搗精は、実際上は第一精米部A及び第二精米部Bで精米歩留率九四パーセント以下、原料玄米に対し重量比で六パーセント以上、即ち六分搗き以上に搗精しているものと認められ、右認定に反する証拠はない。
(三) したがって、被告製品は請求原因八1(一)のとおりの作用をしているものであり、この被告製品の作用は本発明の構成要件aを充足すると認められる。
2 請求原因八2(構成要件b)について(一) 請求原因八2(一)中、被告製品が、攪拌室93、93´と送穀室92、
92´とに跨がるように臨ませて加水ノズル部を設けていることは、前記三認定のとおりであり、その余の事実は当事者間に争いがない。
(二) 右認定事実によれば、被告製品の右請求原因八2(一)の作用は、本発明の「右進行過程において白米中に米量に対し〇・一〜二%の水または塩水その他水溶液を添加する」といった構成要件bを充足するものと認められる。
(三) 被告は、水溶液を添加する部位は多孔壁除糠精白室内に限定されるとして第三、五2(三)(1)のように主張する。
しかし特許請求の範囲には、「六分搗きもしくはそれ以上の精白度の白米を多孔壁除糠精白室により更に精白して精白度を進行させる過程において」その白米中に水分または水溶液を添加することが記載されているけれども、この記載から精白室内で水分の添加が行われなければならないと解されるものではない。むしろ、文理的には、「多孔壁除糖精白室により」という文言は、「六分搗き以上の精白度の白米を」「更に精白して精白度を進行させる」ための精白方法の大枠を規定するものであって、装置の場所を限定するものではないと解されるのであり、特許請求の範囲においても、水分添加から精米との時間的関係について、「直ちに」行うことが要件とされてはいるがそれ以外の限定はなく、また本件公報の発明の詳細な説明の記載を見ても、「なるべく最終仕上歩留率に近い過程において混水し」(本件公報二頁左欄一〇行から一一行)とあるのみで、これにより「通常米量に対し〇・一〜二%の範囲で適量の加水を行い白米粒の表面だけを湿潤して軟化し直ちに精白作用により精米する」(本件公報二頁左欄一一行から一三行)とされているほか、「表面だけを湿潤するのが立て前であって、表面皮層だけの軟質化を目的とするのである。」(本件公報二頁左欄四一行から四三行)とされていることからすれば、水分添加の場所について、精白室内で行わなければならないという限定があるとは認められない。
なお、本件公報記載の実施例においても、水分は、「給米口5から精白室2内に供給される白米に給水管6から計測器7と調節弁8によって制御された水量の水」(本件公報三頁左欄三九行から四一行)が添加されることになっているが、右給水管は二方向に分かれており、「二方に分岐した給水管は切換弁19により何れかに切換えられる」(本件公報三頁右欄一二行から一四行)ところ、本件公報第1図によれば、右切換の一方は、精白室内入口で水分を白米に供給するものであるが、もう一方は、給米口5において給水する構成となっていることは明らかであり、以上の実施例についての説明、図示からも、本発明における水分添加の時期もしくは場所が、狭義の精白室内に限定されず、精白室の直前に設けられた送穀室や供給口も含まれることは明らかである。
また成立に争いのない乙第三号証、乙第四号証によれば、原告は、被告を請求人とする無効審判請求事件において、昭和六一年五月六日付け答弁書をもって、被告が提出した乙四号証の引用例について、「(引用例)記載のものは、水分の付与が第一精米機から第二精米機への移送中に行われるのであって、水分の付与後直ちに精米が行われるものではない」と主張しているが、本発明について水分を精白室において添加する構成に限定されていると主張しているものとは認められない。
(四) 被告は、被告製品は水分を含んだ粘土糠を介して間接的に米糠に加水される旨第三、五2(四)のように主張する。しかし本発明は、白米中に水又は塩水その他水溶液を加えることを要件とするものではあるが、その添加方法は、米粒に直接添加するものとも、被告が被告製品の添加方法として主張するように粘土糠を介して間接的に添加するものとも、特に限定はないというべきであるから、被告の右主張も採用できない。
(五) 更に本発明の米量に対し「〇・一ないし二パーセント」の水分を添加するとの限定の趣旨は、水分添加量が右の範囲内であれば足りるというものであることは明らかであり、被告製品が被告主張のように〇・二ないし一・五パーセントの水分を添加するものであったとしても、本発明の水分添加量の範囲に含まれることは自明である。
3 請求原因八3(構成要件c)について(一) 前記四3のように、請求原因七4中、被告製品においては、剥離した糠及び添加した水分を射風孔69、69´からの通風作用によって多孔壁除糠筒23、
23´の外側に排出するという作用を有していることは被告が明らかに争わないから自白したものとみなす。したがって、被告製品の作用は、本発明の構成要件cのうち「前記多孔壁部を通して除糠除水を行い前記精白室から排出する。」を具備する。
別紙物件目録によれば、被告製品は、多孔壁除糠筒23、23´と摩擦攪拌転子24、24´との間に形成された摩擦攪拌室26、26´を有しており、摩擦攪拌室26、26´には、圧迫力を調節可能とした圧迫板29、29´を設けた排米口28、28´が設けられ、摩擦攪拌転子24、24´には2条の突脈68が形成されているのであるから、水分の添加を受けた米粒が、螺旋転子25、25´、摩擦攪拌転子24、24´の送穀力、圧迫板の圧迫力、摩擦攪拌転子の攪拌力を受けて、摩擦攪拌室26、26´内で米粒相互間の摩擦を繰り返すことによって除糠されるものと認められるから、被告製品の作用は、本件構成要件cのうち「粒と粒の相互摩擦作用による精米を行なう」を具備すると共に、前記の除糠除水は多孔壁除糠筒23、23´において行われるのであるから、被告製品の作用は、本発明の構成要件cのうち「精米を行なうと「同時に」……除糠除水を行な」うを具備する。
本発明の構成要件cの「直ちに」の意味について検討すると、本件公報の「本発明は六分搗き以上になった高白度白米に対し、なるべく最終仕上歩留率に近い過程において混水し、通常米量に対し〇・一〜二%の範囲で適量の加水を行い白米粒の表面だけを湿潤して軟化し直ちに精白作用により精米すると糠を発生して含水糠となるので糠と水が同時に多孔壁部を通して精白室外に排除され」(本件公報二頁左欄九行から一五行)、「本発明は…せいぜい二〇秒内外の短時間処理なので」(本件公報二頁左欄三六行から三八行)及び「調湿とは逆に、飽くまで内質に水分が及ばないようにし、表面だけを湿潤するのが立て前であって、表面皮層だけの軟質化を目的とするのである。」(本件公報二頁左欄四〇行から四三行)との記載によれば、右にいう「直ちに」とは、適量の加水を行って白米粒の表面だけを湿らせて柔らかにすることと、その後の精白作用により精米することとの時間的関係に関し、
添加水分が米粒の内質までを湿潤しない位の短い時間、具体的にはせいぜい二〇秒内外の時間を意味するものと解するのが相当である。また、本発明の構成要件cのうち「急速に除糠除水」の「急速に」も、右と同趣旨で水分が主として米粒の表面だけを湿潤し、その内質までに及ばないように水分添加から精白終了までの時間経過をせいぜい二〇秒内外とすることを意味するものと解することができる。
そして、被告製品においても、精白中の米粒は送穀室内において加水されたのち、すぐ隣の摩擦攪拌室において除糠除水されるのであり、被告製品において、米粒が第三精米部Cに供給されて排出されるまでの米粒の通過時間を、その広義の精白室の容量と処理能力(毎時六トン)から概算で算出してみると、原告の主張するところによれば七・三秒ないし一二秒前後であり、被告の主張するところによっても一八秒程度であって、水分が添加されて除糠除水される時間は、当然これらより短いと推認されるから、被告製品の作用は本発明の構成要件cのうち「直ちに」及び「急速に」を具備するものと認められる。
以上の事実によれば、被告製品の作用は、本発明の構成要件cを充足すると認められる。
(二) 被告は、被告製品は「粒と粒との相互摩擦作用」の要件を具備しない旨第三、五3(四)のように主張する。しかし、仮に被告製品が「粘土糠を介して」米粒と米粒を接触させて精米を行っているとしても、これは本構成要件の「粒と粒との相互摩擦作用」による精米の一態様に過ぎないと認められるから、被告の右主張も採用できない。
(三) 被告は、被告製品においては粘性を有する水溶液を使用する旨第三、五3(六)のように主張する。しかし、本発明においては、「水または塩水その他水溶液を添加」することが要件であり、水に他の物が加えられた水溶液を添加するものも本発明の要件を具備することは明らかであり、この点に関する被告の右主張も採用できない。
その他の被告の主張は、前記(一)に判断したところによりいずれも採用できない。
4 請求原因八4(構成要件d)について 以上認定によれば、被告製品の作用は右1ないし3の方法を採用することを特徴とした混水精米法であることから、本発明の構成要件dを充足する。
5 以上によれば、被告製品における精米方法は、本発明の技術的範囲に属するものと認められる。
六 前記認定五1によれば、被告製品はもっぱら本発明の実施にのみ使用する物であると認められるから、被告が業として被告製品の製造、販売をすることは、特許法101条2号により本発明についての原告の特許権を侵害するものとみなされる。
被告は、被告製品は、四分搗きないし九分搗きの精白米を完全精白米に搗精する能力を有しており、間接侵害に当たらない旨主張する。
前記五1(一)、(二)に認定判断したところによれば、被告製品による搗精は、実際上は第一精米部A及び第二精米部Bで六分搗き以上に搗精しているものと認められる。被告製品において、第一精米部A、第二精米部Bでの搗精効率をことさらに低下させて運転すれば、第三精米部Cで四分搗き以上、六分搗き未満の精白米を完全精白米に搗精することが可能であるとしても、第一精米部A、第二精米部Bの搗精効率をことさらに低下させることに技術上、実用的な意味があること、現実にそのような運転が行われている例があることの証明がない以上、右のような可能性は、単にやってできないことはないというにすぎず、商業的、実用的な意義を有するものではないから、被告製品が本発明の実施にのみ使用する物と認定することを妨げるものではない。
七1(一) 原本の存在及びその成立に争いのない甲第一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、昭和六一年一一月頃から昭和六三年三月頃までの間に、被告製品を別紙納入先一覧表の番号@ないしMのとおり一七台製造、販売したことが認められる。
これを越える製造、販売を認めるに足りる証拠はない。
特許法103条により、被告は右の製造、販売について、過失があったものと推認される。
(二) 被告は、別紙納入先一覧表記載の納入先の内被告製品を納入したのは二社二台のみである旨第三、七1のとおり主張する。しかしながら、前記甲第一〇号証によれば、被告により昭和六三年三月付けで作成された「東洋セラミック精米機納入先一覧表」と題する書面に、右(一)に認定した一七台の納入先が被告製品であるCS-一〇〇の納入先として記載されているところ、本訴において被告が製造販売している被告製品「東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE」型について、原告が平成二年一二月三日の第一一回口頭弁論期日において、同日付け準備書面を陳述して別紙物件目録記載のものであると主張したのに対し、被告は、平成三年一月二三日の第一二回口頭弁論期日において、同日付け準備書面を陳述して、右物件目録中の三、構造の説明、3、(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目の部分を除き右物件目録の記載を認めていたことは記録上明らかであり、このような本件の弁論の経過に照らせば、前記甲第一〇号証に記載されたCS-一〇〇の型式番号の製品は、別紙物件目録記載のとおりの構造(争いのある部分については前記三に認定のとおり)を有していたものと推認される。また、仮に別紙納入先一覧表に記載された納入先へ納入された製品が被告の認める二社二台分以外は被告の主張のとおりであったとしても、被告製品の東洋セラミック精米機CS-一〇〇型との違いは、螺旋転子のピッチの幅に過ぎないのであるから、それら製品が採用する精米方法は、いずれも本発明の技術的範囲に属し、それら製品は本発明の実施にのみ使用するものと認められ、いずれにせよ被告は前記(一)認定の一七台の東洋セラミック精米機CS-一〇〇型の製造販売について、本件特許権の侵害による損害賠償の責任を免れない。
2 弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一二号証によれば、
被告製品の販売価格は一台につき少なくとも二〇〇〇万円であったものと認めることができる。
3 国有特許権を第三者に実施承諾する場合に使用される国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の記載中、実施料算定方法の項の記載によれば、算定の基準となる基準率は、
販売価格を基礎とする場合、実施価値上のものは四パーセント、実施価値中のものは三パーセント、実施価値下のものは二パーセントと定められていることは当裁判所に顕著である。このことと、前記甲第一号証によって認められる、本発明は「従来の乾式精米法では白米粒面を光沢の強い滑面に加工仕上げすることは如何なる方法を以つてしても不可能である。特に歩留率90%以上の高白度精白米になると、
最も除去困難とされる縦溝内の糊粉層が残り白い粒面に鮮明に露出して来るので非常に見苦しい白米となるのが常であ」ったのに(本件公報一頁右欄九行から一四行)、「従来至難とされた糊粉層の完全除去を容易にしたことは勿論、超高白度の能率的な精白をも可能となし、白米粒面の美麗化と光沢化に併せて米粒本質の硬度如何に関係なく精白能率を著しく向上させる等の諸点に特に顕著な効果がある」(本件公報三頁右欄二一行から二六行)ものであること、また、前記乙第一〇号証によって認められる被告も被告説明書において、被告製品に採用されている第三精米部Cの精白方法について、その精白作用が優れていることを強調していること、
別紙物件目録のとおり被告製品の精米装置は、第一精米部Aから第三精米部Cの三つにわかれていて、本発明は第三精米部Cにおける精白方法に特徴のあるものであること、原告自身も本発明の相当実施料率を主張するに当たって、当庁平成元年(ワ)第三七四六号事件の請求の基礎となっている特許権の存在を考慮して、被告製品における本発明の利用率を四分の一と算定していることは原告の主張から明らかである。これらの諸事実を総合考慮すると、原告が被告製品における本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額は、原告主張のとおり被告製品の販売価格の一パーセントが相当であると認められ、これに反する被告の主張は、右認定に照らし採用できない。
したがって被告による本発明の侵害により原告が被告に対し請求することができる本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する損害額は、
二〇〇〇万円×〇・〇一×一七台=三四〇万円であると認められる。
八 よって、原告の本訴請求中、別紙物件目録記載の物件の製造、譲渡、譲渡又は貸渡のための展示の差止め、同目録記載の物件及び半製品の廃棄並びに損害賠償金三四〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成元年四月一四日から支払済まで民法所定年五分の割合の金員の支払いを求める部分は、理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法89条92条本文を、仮執行宣言について同法196条1項を各適用して、主文のとおり判決する。
特許審判請求公告公報及び別紙納入先一覧表(省略) 物件目録別紙図面及びその説明書記載の製品は、被告の製造・販売にかかる「東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE」型(以下これらを総称して被告製品という)である。
(図面の説明書)一、 図面の説明 第一図は正面図、第二図は右側面図、第三図は背面図、第四図は右側断面図、第五図は送穀螺旋及び精白筒の一部の位置を示す正面概略図、第六図は第三精米部Cの断面図、第七図は第六図のX-X断面図、第八図は第六図の前半部斜視図、
第九図は加水ノズル部51の拡大斜視図、第十図は送水系統の説明図、第十一図は操作パネルの概略図である。
二、 符号の説明A…第一精米部 B…第二精米部 C…第三精米部1…玄米誘導筒 2…シャッター 3…給米口4…筒体 5…セラミックローター 6…螺旋転子7…搗精室 8…排米口 9…圧迫板10…送穀筒 11…軸 12…多孔壁除糖筒13…摩擦攪拌転子 14…螺旋転子 15…摩擦攪拌室 16…筒体 17…圧迫板 18…給米口19…排米口 20…発条 21…二方向分配器22…送穀螺旋 23…多孔壁除糖筒 24…摩擦攪拌転子25…螺旋転子 26…摩擦攪拌室 27…給米口28…排米口 29…圧迫板 30…発条31…調節ボルト 32…機枠 33…集糖ダクト34…集糖ホッパー 35…主軸 36…通風孔37…調車 38…電動機 39…調車40…ベルト 41…軸 42…調車43…電動機 44…調車 45…ベルト46…調車 47…電動機 48…調車49…ベルト 50…調車 51…加水ノズル部52…通孔 53…取付体 54…加水ノズル55…漏水防止リンク 56…パイプ 57…パイプ58…ポンプ 59…電磁弁 60…水フィルター62a…水タンク 62b…水溶液タンク63…水道管 64…レベル計 65…突脈66…射風孔 67…排米口 68…突脈69…射風孔 70…調車 71…ベルト72…重錘 73…操作パネル 74…運転ボタン75…警報停止ボタン 76…非常停止ボタン 77…シャッター切替スイツチ78…ポンプ切換スイッチ 79…リセットボタン 80…流量調整器81…白度調節器 82…上段圧力調節器 83…上段回転数調整ボリウム84…流液量調節ボリウム 85…電動機 86…圧送ファン87…フレキシブルホース 88…フレキシブルホース 89…電流計90…電流計 91…送穀室 92…送穀室93…攪拌室 94…攪拌転子 95…送穀室96…送穀筒三、 構造の説明 被告製品は、上段より第一精米部A、第二精米部B、第三精米部Cと順に配列し、
これに送水系統及びその他を加えて成る。
1、 (第一精米部A) 玄米誘導筒1の下方にシャッター2を介して給米口3を設け、給米口3を送穀筒96と螺旋転子6との間に形成した送穀室95に臨ませる。送穀筒96に連接した筒体4の内部に、円筒体の周面部に一六本のセラミック製突脈を形成したセラミックローター5を位置させ、筒体4とセラミックローター5との間に搗精室7を形成して、搗精室7を送穀室95に連通する。螺旋転子6とセラミックローター5とを軸11に固定して回転自在に支持する。給米口3の反対側に排米口8を設け、排米口8には重錘72によって圧力調節自在の圧迫板9を設ける。軸11の一端に取付けた調車37と電動機38の端部に設けた調車39とをベルト40を介して連動連結する。
2、 (第二精米部B) 第一精米部Aの排米口8の下方に給米口18を設け、給米口18を円筒状の送穀筒10と螺旋転子14との間に形成した送穀室91に臨ませる。送穀筒10に連設して六角筒状の多孔壁除糖筒12を設け、多孔壁除糖筒12と摩擦攪拌転子13との間に摩擦攪拌室15を形成して、摩擦攪拌室15を送穀室91に連通する。摩擦攪拌転子13には2条の突脈65とその回転方向反対側に位置する射風孔66とを形成する。螺旋転子14と摩擦攪拌転子13とを中空状の軸41に固定して回転自在に支持する。軸41の開口端部に間隙を介してフレキシブルホース87の一端を連結し、その他端を電動機85で駆動される圧送ファン86に接続する。
給米口18を送穀室91に臨ませ、これに連接した摩擦攪拌室15の反対側に排米口19を設ける。排米口19には圧迫板17を支架し、圧迫板17を発条20によって閉鎖方向に付勢する。排米口19の下方位置に二方向分配器21を配設し、
二方向分配器21の排米口67、67´をそれぞれ送穀螺旋22、22´の一端上方に臨ませる。
軸41の一端に取付けた調車42と電動機43の端部に設けた調車44とをベルト45を介して連動連結する。
また、軸41には別の調車50を設け、ベルト71を介して送穀螺旋22、22´の他端に設けた調車70、70´に連動連結する。
3、 (第三精米部C) 送穀螺旋22、22´の端部の下方位置に給米口27、27´を設け、給米口27、27´を筒体16、16´と攪拌転子94、94´(但し、被告はこれらを後述の螺旋転子25、25´の一部と主張。以下被告A主張という)との間に形成した攪拌室93、93´(但し、被告はこれらを後述の送穀室92、92´の一部と主張。以下被告B主張という)に臨ませる。筒体16、16´の内部には攪拌転子94、94´(被告A主張)に連接して螺旋転子25、25´を設け、螺旋転子25、25´と筒体16、16´との間に攪拌室93、93´(被告B主張)に連通した送穀室92、92´を形成する。筒体16、16´に連接して多孔壁除糖筒23、23´を設け、多孔壁除糖筒23、23´と摩擦攪拌転子24、24´との間に摩擦攪拌室26、26´を形成して、摩擦攪拌室26、26´を送穀室92、92´に連通する。
摩擦攪拌転子24、24´には、2条の突脈68とその回転方向反対側に位置する射風孔69とを形成する。攪拌転子94、94´(被告A主張)と螺旋転子25、25´と摩擦攪拌転子24、24´とを中空状の主軸35、35´に固定して回転自在に支持する。摩擦攪拌室26、26´に排米口28、28´を設ける。排米口28、28´には圧迫板29、29´を設け、圧迫板29、29´は発条30、30´を介して調節ボルト31、31´でその圧迫力を調整可能とする。主軸35、35´は、排米口28、28´側の一端を閉鎖し、またその他端を開口した中空状とし、主軸35、35´の摩擦攪拌転子24、24´に対向する部分の周壁複数の通風孔36を軸方向に連設する。
主軸35、35´の開口端部に間隙を介してフレキシブルホース88、88´の一端を連絡し、その他端を圧送フアン86に接続する。
主軸35、35´の一端に取付けた調車46、46´と電動機47、47´の端部に設けた調車48、48´とをベルト49を介して連動連結する。
第三精米部Cの攪拌室93、93´(被告B主張)と送穀室92、92´とに跨るように臨ませて(第六図乃至第八図に示す)加水ノズル部51、51´を設ける。すなわち加水ノズル部51、51´において、先端に細孔を有する加水ノズル54a、54b及び54´a、54´bを外部より通孔52a、52b及び52´a、52´bを介して攪拌室93、93´(被告B主張)及び送穀室92、92´の周縁の接続方向に差し込み、取付体53、53´にて固定する。55a、55b及び55´a、55’b(図示せず)は漏水防止リングである。
4、 送水系統 水道管63を水フィルター60及び電磁弁59を介してレベル計64を備えた水タンク62aに連結する。水タンク62aをポンプ58a、58´aの給水側に接続し、ポンプ58aの吐出側はパイプ57で配管し、途中でパイプ56a、56bに分岐し、加水ノズル部51の加水ノズル54a、54bに接続する。ポンプ58´aの吐出側はパイプ57´で配管し、途中でパイプ56´a、56´bに分岐し、加水ノズル部51’の加水ノズル54´a、54´bに接続する。
又、水タンク62aとは別に、水溶液タンク62bを設け、水溶液タンク62bをポンプ58b、58´bの給水側に接続し、ポンプ58bの吐出側はパイプ57に合流し、ポンプ58´bの吐出側はパイプ57´に合流する。
5、(その他) 略密閉状にカバーした機枠32の内部下方には集糖ダクト33に連通したホッパー34を設け、集糖ダクト33は機外へ延設して吸引ファンとバッグフィルターを有する集糖器(図示せず)に連絡する。
73は操作パネルであり、操作パネル73上には運転ボタン74、警報停止ボタン75、非常停止ボタン76、シャッター切替スイッチ77、ポンプ切替スイッチ78、リセットボタン79、流量調整器80、白度調節器81、上段圧力調節器82、上段回転数調整ボリウム83、流液量調節ボリウム84が設けてある。
また、本体の正面のパネルには、電流計89、90が設けられている。
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