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関連審決 訂正2003-39078 無効2002-35360
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10081審決取消請求事件 判例 特許
平成18ワ13040特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14行ケ604審決取消請求事件 判例 特許
平成14ワ25697特許権侵害に基づく損害賠償請求事件 判例 特許
平成16行ケ191審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  先願発明との同一性 /  実質的に同一 /  特許発明 /  実施 /  交換 /  設定登録 /  審理範囲 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 176号 審決取消請求事件
原告 ベンクジャパン株式会社
訴訟代理人弁護士 高橋隆二
同 櫻井彰人
訴訟代理人弁理士 高野昌俊
被告 シャープ株式会社
訴訟代理人弁護士 永島孝明
同 山本光太郎
同 伊藤晴國
訴訟代理人弁理士 中尾俊輔
同 伊藤高英
同 磯田志郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/07/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2002−35360号事件について平成15年3月31日にした審決中「特許第2823993号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実等
1 特許庁における手続の経緯 被告は,発明の名称を「液晶表示装置」とする特許第2823993号の特許(平成4年8月3日特許出願(以下「本件出願」という。),平成10年9月4日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は3である。)の特許権者である。
原告は,平成14年8月29日,本件特許を請求項1ないし3のすべてに関して無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は,この請求を無効2002-35360号事件として審理し,その結果,平成15年3月31日,「特許第2823993号の請求項1,3に係る発明についての特許を無効とする。特許第2823993号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし,審決の謄本を同年4月10日に原告に送達した。
その後,被告は,本件出願に係る願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2003-39078号事件として審理し,その結果,平成15年6月30日に訂正(以下「本件訂正」という。)することを認める旨の審決をし,これが確定した。(甲7号証) 2 本件訂正前の特許請求の範囲 「【請求項1】液晶表示素子を照明する後方照明装置と,少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え,前記後方照明装置は,液晶表示素子の後方に配された導光板と,該導光板の端部に配された光源と,該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において, 前記光源は,前記光源保持体に一体的に保持され,該光源保持体は,前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって,前記保持筺体に対して着脱自在とされたことを特徴とする液晶表示装置。 【請求項2】前記光源保持体に,前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。 【請求項3】前記光源保持体は,前記光源からの発散光を前記導光板へ向けて反射する反射体であることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示装置。」 3 本件訂正後の特許請求の範囲(【請求項1】及び【請求項2】。下線部が訂正された部分である。以下,本件訂正後の明細書と図面を「本件明細書」という。) 「【請求項1】液晶表示素子を照明する後方照明装置と,少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え,前記後方照明装置は,液晶表示素子の後方に配された導光板と,該導光板の端部に配された光源と,該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において,前記光源は,前記光源保持体に一体的に保持され,該光源保持体は,前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって,前記保持筺体および前記導光板に対して着脱自在とされたことを特徴とする液晶表示装置。 【請求項2】液晶表示素子を照明する後方照明装置と,少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え,前記後方照明装置は,液晶表示素子の後方に配された導光板と,該導光板の端部に配された光源と,該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において,前記光源は,前記光源保持体に一体的に保持され,該光源保持体は,前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって,前記保持筺体に対して着脱自在とされ, 前記光源保持体に,前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられたことを特徴とする液晶表示装置。」 (ただし,【請求項2】についての本件訂正は,【請求項1】について本件訂正を行ったことに伴い,従前の【請求項1】を引用する形式で記載されていたのを改め,これを独立形式で記載しただけのものであり(甲7号証),実質的には従前の【請求項2】と変わるところはない。以下,本件訂正後の【請求項2】の発明を,審決と同様に「本件特許発明2」という。別紙図面A参照。) 4 審決(無効2002-35360号事件の審決,以下同じ。)の理由 (1) 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件特許発明2は,特開平4-288526号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下,審決と同様に「先願発明」という。別紙図面B参照)と同一であるということはできず,また,特開平4-102888号公報に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と実願昭55-159055号(実開昭57-82344号)のマイクロフィルムに記載された発明(以下「引用発明2」という。)から当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない,と認定判断して,【請求項2】について原告主張の無効理由をすべて排斥するものである。
(2) 審決が,上記結論を導くに当たり,本件特許発明2と先願発明との一致点及び相違点として認定したところは,次のとおりである。
一致点 「液晶表示素子を照明する後方照明装置と,少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え,前記後方照明装置は,液晶表示素子の後方に配された導光板と,該導光板の端部に配された光源と,該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において,前記光源は,前記光源保持体に一体的に保持され,該光源保持体は,前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって,前記保持筺体に対して着脱自在とされた液晶表示装置」 相違点 「本件特許発明2は,本件特許発明1(判決注・本件訂正前の【請求項1】の発明)をさらに「前記光源保持体に,前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられた」と限定するものであるが,甲第1号証(判決注・刊行物1)には,反射板7a,7b及びバックライトケース8に光源の電力供給用配線の保持機構が設けられている旨の直接の記載はない。(この点は,口頭審理において請求人も認めたところである。) そして,甲第1号証に,「【0010】【実施例】実施例1.・・・9a,9b…は蛍光ランプ5のソケットで,ソケット9からリード線13a,13bが引き出され,点灯装置(図示を省略)に結線されている。」と記載されており,また図1にリード線13a,bが存在することがみてとれるとしても,むしろ該リード線は保持されない状態で放置されていると把握できるものであって,保持することを記載するものではない。またそれ以外にもリード線13a,13bは比較的短いものと把握できることを勘案すると,甲第1号証において,上記リード線13a,bを保持機構により保持しなければならない必然性あるいは動機付けは窺えない。よって,先願発明は,光源の電力供給用配線の保持機構を有する点で本件特許発明2と相違する」
原告主張の審決取消事由の要点
審決が,本件特許発明2と先願発明とが同一であるということができないとした認定判断は誤りであり(取消事由1),また,本件特許発明2は,引用発明1と引用発明2に基づいて容易に発明することができたものであるにもかかわらず,容易に発明することができたものではないと誤って判断したものであり(取消事由2),これらの誤りがそれぞれその結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件特許発明2と先願発明との同一性の認定判断の誤り) 審決は,刊行物1の図1に示されているリード線13a,13bにつき,「さらに比較的短いリード線13a,13bは,バックライトケース8の内側のコーナー部に配置されていることがみてとれる。」(審決書7頁22行〜24行)と認定した上で,本件特許発明2と先願発明との同一性について,上記のとおり認定判断した。
すなわち,審決は,刊行物1の図1のリード線13a,13bについて, @ 比較的短いリード線であり,バックライトケース8の内側のコーナー部に配置されている, A リード線13a,13bは保持されていない放置状態と把握すべきである, B リード線13a,13bは比較的短いものであるから保持しなければならない必然性あるいは動機付けは窺えない, と認定した。しかし,審決のこの認定は誤りである。
(1) 刊行物1には,「ソケット9からリード線13a,13bが引き出され,点灯装置(図示を省略)に結線されている。」(甲第2号証【0003】)と記載されており,当業者であれば,この記載と図1とから,ソケット9から出ているリード線13a,13bが図示しない点灯装置にまで延びていること,及び,このことから,リード線13a,13bは,明らかに,バックライトケース8のコーナー部に配置された短いリード線ではないことを,容易に理解することができるのである。
また,刊行物1には,「なお,意匠ケース14aとバックライト4間にオス・メスの固定コネクタを設置すれば,バックライト収納ケース8の引き上げ又は挿入動作時に,点灯装置(図示を省略)との結線も,同時に切/入できる。」(同【0013】)と記載されている。
刊行物1のこの記載と図1からすれば,先願発明の点灯装置は,バックライトケース8以外のところに設けられている構成となっていることが明らかであり,かつ,リード線13a,13bはバックライトケース8内を通って延び,図示しない点灯装置に接続されていることも明らかである。
刊行物1の図1では,リード線13a,13bが短い線のように描かれているが,これは,ソケット9a,9bからバックライトケース8を通って図示しない点灯装置まで延びる比較的長い線材であるリード線13a,13bの一部分のみが見えていることを表していることは明らかである。
このように,刊行物1の図1では,リード線13a,13bについては,ソケット9とバックライトケース8との問の比較的短い部分のみが露出している状態が示されているだけであり,その他の部分はバックライトケース8内に引き込まれていることが明らかに理解できるにもかかわらず,審決では,図1に示されているリード線13a,13bの技術的意味をよく理解せず,リード線13a,13bはバックライトケース8の内側コーナー部に配置された短い線であると誤って認定したのである。
(2) 審決は,リード線13a,13bは比較的短いものであるという誤った認定に基づいて,リード線13a,13bは保持されない状態で放置されていると認定したものであり,この認定も誤りである。
先願発明は,上記のとおり,ソケット9から延びるリード線13a,13bがバックライトケース8のところで終端しているのではなく,バックライトケース8内を通って,図示しない点灯装置にまで延びている,という構成であることからすれば,刊行物1の図1は,リード線13a,13bが,バックライトケース8の壁部にあけられた孔を通って内部に引き込まれている様子を示しているものであり,リード線13a,13bがこのようにしてバックライトケース8内に引き込まれた結果,リード線13a,13bは,小さな孔によって拘束され,さらには,バックライトケース8によって拘束されているという構成を開示していることは明らかである。
(3) 上記のとおり,先願発明においては,ソケット9からのリード線13a,13bがバックライトケース8によって保持されているという構成になっていることは明らかであり,先願発明は,本件特許発明2の「光源の電力供給用配線の保持機構」に対応する構成を明らかに備えている。審決は,先願発明におけるリード線13a,13bの認定を誤り,リード線13a,13bを保持するための機構がバックライトケース8に構成されているにもかかわらず,これを看過したものである。
(4) 光源への電力供給用のリード線を自由にさせておくと各種作業の場合に邪魔になるという課題に対して,これを適宜に拘束させるための保持機構を設けることにより課題の解決を図ることは,例えば,特開平2-195379号公報(以下「甲8文献」という。)に,本件特許発明2の「保持機構」に該当する発明が開示されていることからも明らかなように,電気的装置においては当業者が適宜になす設計的事項であって,慣用技術である。したがって,仮に,刊行物1の図1において,液晶表示装置の「保持機構」が明瞭に示されていないとしても,本件特許発明2における配線の保持機構は,慣用的に用いられている慣用技術にすぎないものであるから,本件特許発明2は,先願発明と実質的に同一であるというべきである。
2 取消事由2(引用発明1との相違点についての判断の誤り) 審決は,引用発明1の技術内容を誤認し,また,引用発明2の技術分野の認定を誤った結果,本件特許発明2と引用発明1との相違点についての判断を誤ったものである。
被告の反論の要点
1 取消事由1(本件特許発明2と先願発明との同一性の認定判断の誤り)について (1) 刊行物1の図1に図示されている事項は,審決が認定するとおり,バックライトケース8の内側のコーナー部に比較的短いリード線13a,13bが保持されない状態で放置されていることだけであり,図1には,「オス・メスの固定コネクタ」(甲第2号証【0013】)も,原告が主張する,バックライトケース8の壁部にあけられた孔も,記載されていない。原告が引用する刊行物1の【0013】の記載は,「なお,…オス・メスの固定コネクタを設置すれば…」というものであり,刊行物1の図1を説明したものではない。刊行物1の図1からはリード線13a,13bとオス・メスの固定コネクタの関係は一切不明である。図1において,「オス・メスの固定コネクタ」を設置すると仮定する場合であっても,リード線13a,13bが必要であるか否かは不明であり,仮に,リード線13a,13bが必要であったとしても,「オス・メスの固定コネクタ」に接続されているのかも不明である(刊行物1の図4を見ると,蛍光ランプ5には上下二つの口金17a,17bを通電用の端子として備えており,このいずれか一方の端子をリード線で,他方の端子を「オス・メスの固定コネクタ」で接続する構成も想定される。)。また,リード線13a,13bが「オス・メスの固定コネクタ」に接続されていると仮定したとしても,図1からは,「オス・メスの固定コネクタ」の配置も不明であり,リード線13a,13bがバックライトケース内を通っているか,バックライトケース外を通っているかも不明である。原告は,リード線13a,13bがバックライトケース内を通って延びる構成を想定するが,バックライトケース内を通って「オス・メスの固定コネクタ」に接続するのであれば,最初からバックライトケース内を通せばよく,リード線13a,13bを一旦バックライトケース外に出して,その後バックライトケースの壁の小さな孔から内部に通す必要はないのである。刊行物1の図1の構成を前提とするならば,むしろリード線13a,13bはバックライトケース外を通って接続されていると理解する方が合理的である。
以上のとおり,刊行物1の図1からは,リード線13a,13bがバックライトケース8内を通って延びる,という構成,すなわち「保持機構」は,全く明らかにされていない。
(2) 刊行物1の図1においては,リード線13a,13bは導光板6(バックライトケース8ではない)の上面の端から多少内側の位置で終わっているが,導光板6は,側面に配置された光源からの光を均一な面光源とするための光学素子であり,導光板6に孔を形成することになれば,その部分において光が散乱するので均一な面光源を得ることができず,もはや導光板としての機能を喪失する。また,原告が主張するように,刊行物1の図1においてリード線13a,13bの終わっている位置がバックライトケース8の壁部であると仮定するとしても,バックライトケース8の内側には隙間を持たずに導光板6が存在しているため,バックライトケース8の壁部のみに孔をあけたとしても,導光板6が障害となってバックライトケース8の内部にリード線13a,13bを引き込むことはできない。リード線13a,13bをバックライトケース8の内部に引き込むには,導光板6に孔を形成しなければならず,そうすれば,上記のとおり,導光板6はその機能を喪失するのである。したがって,当業者は,導光板6の機能を考えると,刊行物1の図1から,リード線13a,13bが導光板6に形成された孔を通じて延在するという構成を示唆しているとは見ないのである。
リード線は,導光板6が内在するバックライトケース8の内部を通過させるとリード線によって光が散乱するため,バックライトケース外を通すのが一般的である。
(3) 原告は,刊行物1の図1において,液晶表示装置の「保持機構」が明瞭に示されていないとしても,同機構は慣用的に用いられている慣用技術であるから,先願発明は本件特許発明2と実質的に同一である,と主張する。しかし,原告のこの新たな選択的主張は,審判において審理判断されなかった周知技術,慣用技術に基づく無効原因を新たに主張するものであるから,審決取消訴訟における審理範囲を外れるものであり,許されない(最高裁昭和51年3月10日判決,民集30巻2号79頁)。
仮に,原告の新たな選択的主張が本件訴訟の審理範囲内のものであったとしても,原告の引用する甲8文献によっては,本件特許発明2の「保持機構」が周知技術であることも慣用技術であることも立証されていないし,そもそも,本件特許発明2における,液晶表示素子の直下に導光板を配置し光源を導光板の端部に配置するサイドライト式(エッジライト方式ともいう)後方照明装置においては,後方照明装置全体を保持する保持筐体以外に別途光源を保持するための光源保持体を備えた構成は一般的には用いられておらず,光源は保持筐体で保持されていたので,「光源保持体」に電力供給用配線の保持機構を設けることは,周知技術でも慣用技術でもなかったのであるから,原告の主張は採用されるべきではない。
2 取消事由2(引用発明1との相違点についての判断の誤り)について 原告の取消事由2の主張はすべて争う。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件特許発明2と先願発明との同一性の認定判断の誤り)について (1) 刊行物1には,リード線13a,13bに関し,「【0010】【実施例】実施例1.・・・9a,9b…は蛍光ランプ5のソケットで,ソケット9からリード線13a,13bが引き出され,点灯装置(図示を省略)に結線されている。」(甲第2号証)との記載があり,その図1にはソケット9から引き出されたリード線13a,13bが描かれているものの,そのほかにその具体的な接続の態様を直接的に記載しているところはない。
しかしながら,刊行物1には,次の記載もある(甲第2号証) 「【0012】次に本発明の表示装置において,バックライト4の交換方法を説明する。まず,意匠ケース蓋14bを外し,バックライトケース8の耳を指でつまみこれを上部に引き上げる。点灯装置(図示を省略)からのリード線13を外し,使用寿命に達したバックライトが取り出せる。新しいバックライトの収納は,上記説明の逆手順で行えばよい。
【0013】なお,意匠ケース14aとバックライト4間にオス・メスの固定コネクタを設置すれば,バックライト収納ケース8の引き上げ又は挿入動作時に,点灯装置(図示を省略)との結線も,同時に切/入できる。」 この記載によれば,先願発明においては,リード線13が何らかの形で任意に設けられる点灯装置と結線されることも開示されている。
また,刊行物1には,「【0003】図8は,例えばパーソナルコンピュータ用液晶表示装置の従来例を示す分解斜視図である。・・・・9a,9b・・・は蛍光ランプ5のソケットで,ソケット9からリード線13a,13b・・が引き出され,点灯装置(図示を省略)に結線されている。・・・」「【0004】なお,蛍光ランプ5を動作させる点灯装置(図示省略)は,液晶表示装置200内に設置してもよいし,液晶表示装置外に設置してもよい。」との記載があり,「従来技術」についてではあるものの,先願発明と近似した構成である図8においてリード線13a,13bが描かれるとともに,当該リード線が液晶表示装置200内又は外部に置かれた点灯装置に接続されていることが記載されている。
これらの点を総合すると,刊行物1においては,リード線13a,13bがソケット9a,9bから引き出され,何らかの形でコネクタに結線された上で点灯装置と接続される,との発明が開示されているものと認められる。そして,先願発明の意匠ケース14aとバックライト4間にオス・メスのコネクタを設置し,バックライト収納ケース8の引き上げ又は挿入動作時にコネクタの接続/解除がなされることからすれば,バックライト4の底部にコネクタが配置されると理解するのが自然であり,合理的であるから,リード線13a,13bは,ソケット9から引き出され,バックライトケース8の上面から同ケース内に引き込まれ,バックライト4の底部に配置されたコネクタまで同ケース内を通って延びているものと認めるのが相当である。
(2) 本件明細書の「【0010】・・・反射体14に,光源13の電力供給用リード線17の保持機構19を設けているので,組み立て時および光源交換時にリード線17が邪魔にならず,かつコンパクトな液晶表示装置を得られる。」「【0016】前記リード線保持部19は,リード線17を嵌合する嵌合溝であり」「【0026】そして,光源保持体にリード線の保持機構を設けているので,組み立て時および光源交換時にリード線が邪魔にならず,光源の取り付け作業および交換作業が容易となる。」(甲第6,第7号証)との記載,及び,本件明細書の【図2】からすれば,本件特許発明2における「前記光源保持体に,前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられた」との構成における「保持機構」とは,組立て時及び光源交換時にリード線が邪魔にならないようにするため,光源保持体からはみ出さないように,光源保持体に設けられた,リード線を保持する機構であり,嵌合溝のような所定の空間内にリード線が収まるものであればよい,と認められる。
先願発明におけるバックライトケース8は,リード線をそのケース内に通すことにより,これをバックライトケース内に保持するものであり,バックライトを交換するときには,刊行物1の「意匠ケース蓋14bを外し,バックライトケース8の耳を指でつまみこれを上部に引き上げる。点灯装置(図示を省略)からのリード線13を外し,使用寿命に達したバックライトが取り出せる。新しいバックライトの収納は,上記説明の逆手順で行えばよい。」(甲第2号証【0012】)との記載から明らかなように,バックライトケース内にリード線を保持し,交換作業の邪魔とならないようにしたものであるから,本件特許発明2における「光源の電力供給用配線の保持機構」に当たるものということができる。
(3) 被告は,「刊行物1の図1からはリード線13a,13bとオス・メスの固定コネクタの関係は一切不明である。図1において,「オス・メスの固定コネクタ」を設置すると仮定する場合であっても,リード線13a,13bが必要であるか否かは不明であり,仮にリード線13a,13bが必要であったとしても「オス・メスの固定コネクタ」に接続されているのかも不明である。また,リード線13a,13bが「オス・メスの固定コネクタ」に接続されていると仮定したとしても,図1からは,「オス・メスの固定コネクタ」の配置も不明であり,リード線13a,13bがバックライトケース内を通っているか,バックライトケース外を通っているかも不明である」などと主張する。
確かに,刊行物1の図1自体からは,リード線13a,13bやコネクタの具体的な配置関係を把握することができないことは被告主張のとおりである。しかし,刊行物1の前記記載事項を読めば,前記のとおり,リード線がバックライトケースの下方まで延び,同コネクタに接続されていると考えるのが自然かつ合理的であって,これによって,リード線がバックライトケース内において保持されることは上記のとおりであるから,単に刊行物1の図1だけをとらえて,その接続態様等が不明であるとする被告の上記主張は受け入れがたい。
被告は,「刊行物1の図1においては,リード線13a,13bは導光板6(バックライトケース8ではない)の上面の端から多少内側の位置で終わっているが,導光板6は,側面に配置された光源からの光を均一な面光源とするための光学素子であり,原告が主張するように導光板6に孔を形成することになれば,その部分において光が散乱するので均一な面光源を得ることができず,もはや導光板としての機能を喪失する。また,原告が主張するように,刊行物1の図1においてリード線13a,13bの終わっている位置がバックライトケース8の壁部であると仮定するとしても,バックライトケース8の内側には隙間を持たずに導光板6が存在しているため,バックライトケース8の壁部のみに孔をあけたとしても,導光板6が障害となってバックライトケース8の内部にリード線13a,13bを引き込むことはできない。」などと主張する。
確かに,導光板の内部にリード線を貫通させることや,そのための孔を設けるようなことは,導光板の機能を損なうものであるから,そのような構成を先願発明が採用しているとは考えられない。しかしながら,バックライトケースの内側には隙間なく導光板が存在しているために,内部にリード線を引き込むことはできないとの被告の主張も首肯しがたい。すなわち,導光板は蛍光灯の光を拡散させてLCDパネルを背部から照射するものであるから,バックライトケースの中にリード線を通す余裕もないほどに導光板が稠密に存在しなければならないとは考えられず,それほどの太さでもないリード線を通す空間が存在しないと考える必要はない。前記のとおり,先願発明におけるリード線は,バックライトケース内の空間に引き込まれ,底部に導かれ,コネクタに接続され,保持されていると認めるのが相当である。
(4) 以上からすれば,先願発明は,光源の電力供給配線(リード線)の保持機構を備えない点で本件特許発明2と相違するとした審決の認定判断は誤りであり,本件特許発明2は,先願発明と同一であると認めるのが相当である。
2 結論 以上に検討したところによれば,本件特許発明2が先願発明と同一ではない,とした審決の認定判断は誤りであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決は,請求項2について取消しを免れない。
そうすると,原告の本訴請求は,理由があるから,これを認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂隆一
裁判官 若林辰繁