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事件 平成 25年 (行ケ) 10143号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年3月27日判決言渡

平成25年(行ケ)第10143号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年1月30日

判 決

原 告 日本電動式遊技機特許株式会社

訴訟代理人弁理士 平 木 祐 輔

同 関 谷 三 男

同 渡 辺 敏 章

同 頭 師 教 文

被 告 株 式 会 社 三 共

訴訟代理人弁理士 深 見 久 郎

同 森 田 俊 雄

同 中 田 雅 彦

同 白 井 宏 紀

同 岩 井 將 晃

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が無効2012−800088号事件について平成25年4月12日にし

た審決を取り消す。

第2 前提となる事実

1 特許庁における手続の経緯等

被告は,発明の名称を「スロットマシン」とする特許第4368868号(平成

18年4月13日出願,平成21年9月4日設定登録。請求項の数は5。以下「本
件特許」という。)の特許権者である。

原告は,特許庁に対して,平成24年5月25日,本件特許を無効にすることを

求めて審判の請求(無効2012−800088号事件)をした。これに対して,

被告は,同年8月10日,訂正請求(訂正事項の数は11。以下「本件訂正」とい

う。)をした。特許庁は,平成25年4月12日,本件訂正を認める,本件審判請求

は成り立たない旨の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同月23日,

原告に送達された。

2 審決の概要

(1) 審決の理由は,別紙審決書写に記載のとおりで,審決はおおよそ次のとおり

判断した。

すなわち,本件訂正は,特許請求の範囲減縮又は明瞭でない記載釈明を目的

としたものに該当し,また,特許請求の範囲又は明瞭でない記載釈明については

特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実

質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものではないから,適法な訂正である。

本件訂正によって訂正された後の本件特許の請求項1に記載の発明(以下,本件

訂正による訂正前の本件特許の請求項1ないし5に記載の発明を「本件特許発明1」

ないし「本件特許発明5」といい,併せて「本件特許発明」という。また,本件訂

正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に記載の発明を「本件訂正発明1」

ないし「本件訂正発明5」といい,併せて「本件訂正発明」という。)と甲1(特許

第3750947号公報)に記載の発明(以下「甲1発明」という。)との間には,

他の相違点とともに後記(6)のとおりの相違点10が存するところ,相違点10につ

いて容易想到とすることはできないから,本件訂正発明1は,甲1発明及び甲2な

いし26に記載の技術的事項(以下,各証拠に記載の発明を証拠番号を付して「甲

2発明」等という。)に基づいて容易に想到することはできない。

本件訂正によって訂正された後の本件特許に係る明細書(以下「本件訂正明細書

という。本件訂正による訂正前の本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。)
及び本件訂正発明1ないし5は,特許法36条4項1号及び同条6項1号に規定す

る要件を満たしている。

(2) 本件特許発明

本件訂正による訂正前の本件特許の請求項1ないし5の記載(本件特許発明1な

いし5)は次のとおりである。

「【請求項1】

遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを

開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置

に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出され

た表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,

ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び

短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事

前決定手段と,

前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段

と,

前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定

手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段

と,

通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態に遊技状態を制御する有利状態

制御手段と,

所定の設定操作手段の操作に基づいて,前記事前決定手段により入賞表示結果の導

出を許容する旨が決定される確率を設定値毎に異ならせる複数種類の設定値のうち

から,いずれかの設定値を選択して設定する設定値設定手段と,

前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進

行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段

と,
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されてい

る前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,

前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータの

うちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により

保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと

一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と,

前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進

行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたと

きに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と,

ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読

み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定

可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判

定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが

適正ではないと判定する設定値判定手段と,

前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定され

たときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と,

前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記

第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設

定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定さ

れたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行

を可能とする不能化解除手段とを備え,

前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適

正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率

で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定する

とともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有

利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記有利状態制御手段は,

前記可変表示装置の表示結果として前記短期有利表示結果が導出されたときに,前

記有利状態のうちで所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態に遊技状態を制御

する短期有利状態制御手段と,

予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲ

ーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続するとともに,終了までに遊技者の得られ

る利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態に遊技状態を制御する長期有

利状態制御手段とを含み,

前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利

状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し,

前記導出制御手段は,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていると

きにおいて前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出

させる第一手順時導出手段と,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていると

きにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたとき

に該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段とを含み,

前記スロットマシンは,

前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示

結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報

を報知する情報報知手段をさらに備える

ことを特徴とするスロットマシン。

【請求項2】

前記事前決定手段は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態

への移行を伴う特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次の

ゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し,
前記短期有利状態制御手段は,前記短期有利状態として前記通常遊技状態よりも前

記再遊技表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態

に遊技状態を制御し,

前記スロットマシンは,

前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出され

るまで,該特別表示結果の導出を許容する旨の決定を持ち越させる特別決定持越手

段と,

前記可変表示装置の表示結果として前記特別表示結果が導出されたときに,前記特

別遊技状態に遊技状態を制御する特別遊技状態制御手段と,

前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出され

なかった後,及び前記短期有利表示結果が導出された後に所定の演出を実行する演

出実行手段とをさらに備え,

前記導出制御手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定が持ち越されて

いる状態で前記再遊技表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに該特別表示

結果よりも該再遊技表示結果を優先して前記可変表示装置の表示結果として導出さ

せる再遊技優先導出手段をさらに含む

ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。

【請求項3】

前記特別遊技状態に制御された後に所定の特別終了条件が成立したときに,該特別

遊技状態を終了させて,前記長期有利状態に遊技状態を制御する特別遊技状態終了

手段とをさらに備える

ことを特徴とする請求項2に記載のスロットマシン。

【請求項4】

前記事前決定手段は,

前記特別表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに該特別表示結果

とも前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を
許容する旨を決定するとともに,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,

さらに前記第三表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,

前記導出制御手段は,

前記特別表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨が決定されているときに

おいて,前記停止操作手段が特別手順で操作されたときに該特別表示結果を導出さ

せるとともに,前記停止操作手段が該特別手順とは異なる非特別手順で操作された

ときに該第三表示結果を導出させる特別許容時導出手段と,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨

が決定されているときにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とも前記第二手順

とも異なる第三手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる第三手順時導

出手段とをさらに含み,

前記スロットマシンは,

前記長期有利状態に制御されているゲームで前記第三表示結果が導出されたときに,

前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されているか否かを示す特別演出を実

行する特別演出実行手段をさらに備える

ことを特徴とする請求項2または3に記載のスロットマシン。

【請求項5】

前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として所定数の遊技用価値の付

与を伴う小役表示結果の導出を許容するか否かを決定し,

前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段

により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定された

ときに,前記所定の情報を報知し,

前記スロットマシンは,

前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定

数の遊技用価値により実行可能なゲーム数と前記所定ゲーム数との差が1未満とな
る数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段をさらに備える

ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスロットマシン。」

(3) 本件訂正

本件訂正の訂正事項1及び6は次のとおりである。

ア 訂正事項1

本件特許の請求項1(本件特許発明1)の「情報報知手段をさらに備える」を,

「情報報知手段をさらに備え,

前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下

である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム

数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結

果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定

の情報を報知する」と訂正する。

イ 訂正事項6

本件明細書【0009】の「情報報知手段(ステップS1007)をさらに備え

る」を,

「情報報知手段(ステップS1007)をさらに備え,

前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下

である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム

数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結

果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定

の情報を報知する」と訂正する。

(4) 本件訂正発明

本件訂正によって訂正された後の本件特許の請求項1ないし5の記載(本件訂正

発明1ないし5)は次のとおりである。

「【請求項1】

遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを
開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置

に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出され

た表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,

ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び

短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事

前決定手段と,

前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段

と,

前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定

手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段

と,

通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態に遊技状態を制御する有利状態

制御手段と,

所定の設定操作手段の操作に基づいて,前記事前決定手段により入賞表示結果の導

出を許容する旨が決定される確率を設定値毎に異ならせる複数種類の設定値のうち

から,いずれかの設定値を選択して設定する設定値設定手段と,

前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進

行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段

と,

前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されてい

る前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,

前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータの

うちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により

保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと

一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と,

前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進
行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたと

きに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と,

ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読

み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定

可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判

定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが

適正ではないと判定する設定値判定手段と,

前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定され

たときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と,

前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記

第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設

定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定さ

れたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行

を可能とする不能化解除手段とを備え,

前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適

正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率

で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定する

とともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有

利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,

前記有利状態制御手段は,

前記可変表示装置の表示結果として前記短期有利表示結果が導出されたときに,前

記有利状態のうちで所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態に遊技状態を制御

する短期有利状態制御手段と,

予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲ

ーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続するとともに,終了までに遊技者の得られ

る利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態に遊技状態を制御する長期有
利状態制御手段とを含み,

前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利

状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し,

前記導出制御手段は,

記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているとき

において前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出さ

せる第一手順時導出手段と,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていると

きにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたとき

に該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段とを含み,

前記スロットマシンは,

前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示

結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報

を報知する情報報知手段をさらに備え,

前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下で

ある場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数

が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果

と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の

情報を報知する

ことを特徴とするスロットマシン。

【請求項2】

前記特定表示結果は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態

への移行を伴う特別表示結果を含み,

前記事前決定手段は,前記特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いるこ

となく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否

かを決定し,
前記短期有利状態制御手段は,前記短期有利状態として前記通常遊技状態よりも前

記再遊技表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態

に遊技状態を制御し,

前記スロットマシンは,

前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出され

るまで,該特別表示結果の導出を許容する旨の決定を持ち越させる特別決定持越手

段と,

前記可変表示装置の表示結果として前記特別表示結果が導出されたときに,前記特

別遊技状態に遊技状態を制御する特別遊技状態制御手段と,

前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出され

なかった後,及び前記短期有利表示結果が導出された後に所定の演出を実行する演

出実行手段とをさらに備え,

前記導出制御手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定が持ち越されて

いる状態で前記再遊技表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに該特別表示

結果よりも該再遊技表示結果を優先して前記可変表示装置の表示結果として導出さ

せる再遊技優先導出手段をさらに含む

ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。

【請求項3】

前記特別遊技状態に制御された後に所定の特別終了条件が成立したときに,該特別

遊技状態を終了させて,前記長期有利状態に遊技状態を制御する特別遊技状態終了

手段とをさらに備える

ことを特徴とする請求項2に記載のスロットマシン。

【請求項4】

前記特定表示結果は,前記特別表示結果とは異なる所定表示結果を含み,

前記事前決定手段は,

前記特別表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,
さらに前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出

を許容する旨を決定するとともに,

前記所定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,

さらに前記第三表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,

前記導出制御手段は,

前記特別表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨

が決定されているときにおいて,前記停止操作手段が前記第一手順のうちの特別手

順で操作されたときに該特別表示結果を導出させるとともに,前記停止操作手段が

該特別手順とは異なる非特別手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる

特別許容時導出手段と,

前記所定表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨

が決定されているときにおいて,前記停止操作手段が前記第一手順のうちの所定手

順で操作されたときに前記所定表示結果を導出させるとともに,前記停止操作手段

が前記第一手順のうちの前記所定手順とも前記第二手順とも異なる第三手順で操作

されたときに該第三表示結果を導出させる第三手順時導出手段とをさらに含み,

前記スロットマシンは,

前記長期有利状態に制御されているゲームで前記第三表示結果が導出されたときに,

前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されているか否かを示す特別演出を実

行する特別演出実行手段をさらに備える

ことを特徴とする請求項2または3に記載のスロットマシン。

【請求項5】

前記特定表示結果は,特別表示結果とは異なる所定表示結果として所定数の遊技用

価値の付与を伴う小役表示結果を含み,

前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として前記小役表示結果の導出

を許容するか否かを決定し,

前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段
により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定された

ときに,前記所定の情報を報知し,

前記スロットマシンは,

前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定

数の遊技用価値により実行可能なゲーム数と前記所定ゲーム数との差が1未満とな

る数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段をさらに備える

ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスロットマシン。」

(5) 甲1発明

審決が認定した甲1発明は,次のとおりである。

「遊技媒体を用いて1ゲームに対して所定数の前記遊技媒体を投入することによ

りゲームを開始させることが可能となり,複数種類の図柄を変動表示させる図柄表

示窓3に表示結果が表示されることにより1ゲームが終了し,該図柄表示窓3に表

示された表示結果に応じて入賞が発生可能であるパチスロ機において,

ゲーム毎に,複数種類の表示結果のうち引込み制御を行う表示結果をいずれにす

るかを,スタートレバー9を操作することで出力されるスタート信号の受信を契機

として抽選する主制御部100と,

前記図柄の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止ボタン部1

0と,

前記停止ボタン部10が操作されたときに,該停止ボタン部10の操作タイミン

グと前記主制御部100の決定結果とに応じて前記図柄表示窓3に表示結果を表示

する前記主制御部100と,

一般遊技状態よりも遊技者にとって有利なボーナスゲーム状態に遊技状態を制御

する前記主制御部100と,

電源スイッチ170c,設定変更キー,設定用キースイッチ170aの操作に基

づいて,出玉率の段階設定を行う段階値1〜6の中から選択された所望の設定値を

選択して設定する段階設定部150と,
前記段階設定部150により設定された段階設定値を示す段階設定値データを含

むゲームの進行を制御するための制御データを読み出し及び書き込み可能に記憶す

るRAM102と,

前記段階設定値及び段階設定値の履歴情報を記憶し,前記パチスロ機への電源供

給が遮断しても電池でバックアップされるRAMを内蔵する副制御部160と,

遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操作する毎に,ワークR

AM領域に記憶している段階設定値のデータ読み出し,該読み出した段階設定値デ

ータが示す段階設定値が前記段階設定部150により設定可能な設定値の範囲内で

ある場合に前記読み出した段階設定値データが適正であると判定し,前記設定可能

な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが適正ではないと判定

する前記主制御部100と,

前記主制御部100により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定さ

れたときに,エラー処理を行わせる主制御部100と,

前記主制御部100により前記エラー処理が行われている状態において,前記段

階設定部150の操作に基づいて前記段階設定部150により前記段階設定値が所

定範囲の中から新たに設定されたことを条件に,該新たに設定された段階設定値を

使用して変動表示ゲームの当落を決定する前記主制御部100とを備えたパチスロ

機。」

(6) 相違点

審決が認定した本件訂正発明1と甲1発明との相違点は10あり,審決が認定し

た相違点10は次のとおりである(なお,審決の相違点1ないし9についての認定

判断については当事者間に争いがない。。


[相違点10]

本件訂正発明1の情報報知手段は「長期有利状態の残りゲーム数が所定ゲーム数

以下である場合には所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム

数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には事前決定手段により特定表示結果と短期
有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報

知」するが,甲1発明では,そもそも情報報知手段が存在しない点。

第3 取消事由に関する当事者の主張

1 原告の主張

(1) 訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否(取消事由1)

本件訂正の訂正事項1及び訂正事項6では,本件特許発明1の「情報報知手段」

に関連する訂正がされている。

本件特許発明1は,
「情報報知手段」が,一定の条件の成立に基くものとされてお

り,長期有利状態に制御されたゲームにおいて,特定表示結果と短期有利表示結果

の導出が許容されている場合には,長期有利状態の最終ゲームまで所定の情報を「必

ず(又は当然に)」報知するとの意味で解釈されるべきであって,所定の情報を報知

する場合と報知しない場合を含むものではない。

この点,審決は,本件訂正発明1の「情報報知手段」の意義を実施例に基づいて

認定し,それを前提にして本件訂正前の発明(本件特許発明1)の意義を認定する

判断手法を採用しているが,誤った手法である。また,
「短期有利状態」への移行は

常に不利な遊技状態となるわけではなく,審決の認定は技術常識を無視するもので

ある。

また,審決では,「所定の情報の報知」によって実現される,「特定表示結果の導

出が許容されていること」の通知機能や「特定表示結果と短期有利表示結果の導出

が許容されていないこと」の通知機能を無視するものであり,誤りである。

本件訂正前の発明(本件特許発明1)では,遊技者は,経過・残りゲーム数を把

握していれば,
「所定の情報の報知」に基づき,特定表示結果が導出されるように停

止操作手段を操作することも,短期有利表示結果が導出されるように停止操作手順

を操作することもでき,また,
「所定の情報の報知」がなければ,特定表示結果以外

の役が導出されるように停止操作手段を操作し,遊技用価値の取得(増加)を狙う

こともできることとなり,技術介入性の高いものであった。これに対して,本件訂
正後の発明(本件訂正発明1)は,長期有利状態の残りゲーム数が所定ゲーム数以

下の場合には,報知が行われないため技術介入の関与する余地がない。

以上のとおり,本件訂正は,特許請求の範囲の実質的拡張変更に該当するもの

で,これを適法であるとした審決には誤りがある。

(2) 相違点10についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)

審決は,相違点10について容易想到性を否定した。

本件特許の出願当時において,内部抽選においてリプレイに当選する確率が通常

遊技状態よりも高く設定された遊技状態は,リプレイタイム(RT)と呼ばれ,広

く知られていた。また,甲35(特開2006−15000号公報)及び甲36(特

開2006−68443号公報)にも開示されているとおり,ボーナス終了後のR

T中に解除図柄当選を報知する演出をし,所定回数を超えると表示せず,そのため,

遊技者が意図的に解除図柄を回避できる技術は周知技術であった。

審決は,長期有利状態の残りゲーム数との関係で,所定の情報を報知する場合と

報知しない場合を制御するとの技術思想がいずれの文献にも記載されていないとし

て,相違点10に係る構成が容易想到ではないとしているが,甲35及び甲36に

記載されているとおり,ボーナス遊技の終了直後に開始されたRTにおいて,遊技

開始から所定回数までは,解除図柄(所定の図柄)の当選を遊技者に報知し,遊技

者が解除図柄の導出を意図的に回避できるようにする一方,前記所定回数を超える

と,解除図柄の当選を遊技者に報知しない技術は,周知技術である。

ここで,RT最大回数があらかじめ決まっていれば,@RTの開始からのゲーム

数が所定回数までは報知するが,所定回数を超えると報知しないとする技術と,A

RTの残りゲーム数が所定回数より多ければ報知するが,所定回数以下であれば報

知しないとする技術とは,実質的に同じ技術内容である。

さらに,本件特許の出願当時において,遊技者にとって不利な図柄の導出の可能

性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しないという技術思想は一

般的であった。
そうすると,相違点10に係る構成とすることは,甲1発明に甲2発明及び甲3

発明を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技

術を組み合わせることにより,容易に想到することができたもので,審決の容易想

到性判断には誤りがある。

(3) 記載要件についての判断誤り(取消事由3)

ア 本件特許発明1の「ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるよ

り前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許

容するか否かを決定する事前決定手段」 発明の詳細な説明に記載されていない。
は,

また,本件特許発明4の「前記事前決定手段は,前記特別表示結果の導出を許容す

る旨を決定するときには,さらに該特別表示結果とも前記特定表示結果とも前記短

期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容する旨を決定するとともに」

も,発明の詳細な説明に記載されていない。

本件明細書の図5には,当選役テーブルの記載例があるが,そのいずれにも短期

有利表示結果は含まれていない。審決は,短期有利表示結果が抽選対象役に含まれ

ていない事実を無視し,短期有利表示結果が可変表示手段に導出される図柄の1つ

であることのみを根拠として事前決定手段の決定対象の1つであると認定したもの

で誤りである。なお,この認定手法を採用するのであれば,短期有利表示結果だけ

でなく可変表示手段に導出され得る全ての図柄が事前決定手段における決定の対象

となるべきであるが,そのような事実は本件明細書には開示も示唆もされていない。

また,特別表示結果と再遊技表示結果の両方が同時当選し得る抽選対象となること

を示す記載も本件明細書にはない。

イ 本件特許発明2の「前記事前決定手段は,前記有利状態とは異なる遊技者に

とって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用

価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出

を許容するか否かを決定し」は,発明の詳細な説明に記載されていない。

審決は,この記載は,
「特別表示結果」と「再遊技表示結果」が導出を許容するか
否か決定される複数種類の表示結果に含まれるものであると認定するが,この記載

には,前記複数種類の表示結果に,特別表示結果及び再遊技表示結果が含まれると

は記載されておらず,特別表示結果と再遊技表示結果との導出を許容するか否かを

決定するとのみ記載するのであり,
「特別表示結果と再遊技表示結果」を決定対象と

していることは明らかである。

2 被告の反論

(1) 訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否(取消事由1)に対して

本件明細書の【0009】【0015】及び「情報報知手段」をサポートする実


施例(図19)を参酌しても,本件訂正前の「情報報知手段」が,
「前記長期有利状

態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期

有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたとき」に必ず所定の情報を報知する

と限定して解釈すべき事情は存在しない。

むしろ,本件明細書の記載を参酌すれば,本件訂正前の「情報報知手段」の概念

は,ある条件が成立したときに必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他

の条件が成立したときに初めて報知するものとの双方を含むと解釈されるべきであ

る。

本件訂正前の「情報報知手段」について「必ず報知する」と限定解釈する根拠は

なく,原告の主張は失当である。

審決は,本件訂正前の「情報報知手段」の記載の検討に先だって,本件訂正後の

「情報報知手段」の技術的意義を確認しているものの,前者の検討は本件訂正前の

「情報報知手段」の記載に基づいて行っており,本件訂正前の「情報報知手段」の

技術的意義の認定に誤りはない。審決の判断に誤りはない。

(2) 相違点10についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)に対して

審決がいずれの証拠にも記載も示唆もないと認定した本件訂正発明1の構成は,

「報知する場合と報知しない場合とを長期有利状態の残りゲーム数が“短期有利状

態の継続ゲーム数と同じゲーム数”以下であるか否かで制御する構成」
(以下「本件
特有構成」という。)である。

本件特有構成は,甲35及び甲36を含むいずれの証拠においても記載も示唆も

されていないのであるから,甲3に記載された60GのRT中に所定の情報を報知

する技術事項に対して甲2に記載された事項などを組み合わせる根拠は存在しない。

原告は,甲35と甲36とを追加して引用した上で,甲21,甲22,甲35及

び甲36から,本件特許の出願当時において,遊技者にとって不利な図柄の導出の

可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しないという技術思想

は一般的であったと主張する。しかし,原告主張に係る技術思想は,
「遊技者にとっ

て不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知

しない」ものであり,「長期有利状態」「短期有利状態」とは関係がなく,長期有利

状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという技術思想とは異なる。

甲2には,
「2PRT中において所定の情報を報知しない」という技術事項が記載

されているにすぎず,リプレイタイムの総ゲーム数が遊技者にとって不利益である


かの価値判断の下,所定の情報に相当する予告音を意図的に報知しないという技術

事項」も「リプレイタイムとして継続するゲーム数が遊技者にとって不利益でない

ゲーム期間であれば所定の情報の報知を必要としないという動機」も記載されてい

ない。さらに「現在のリプレイタイムが途中で終了して別のリプレイタイムが新た

に開始されることが,遊技者にとって不利益となるかの価値判断に基づいて所定の

情報を報知しないとする技術思想」も記載されていない。

また,甲3には,
「長期のリプレイタイムにおいても,その残りゲーム数が短期の

リプレイタイムの遊技ゲーム数以下であれば,仮にプチRT絵柄(短期有利表示結

果)が導出されて遊技状態が長期のリプレイタイムから短期のリプレイタイムに移

行したとしても,長期のリプレイタイムから継続するリプレイタイムの総ゲーム数

が長期のリプレイタイムのゲーム数よりも短くならないこと」に着眼する記載はな

く,その着眼自体に困難性を有するから,自明であるということはできない。

したがって,相違点10に係る構成が容易想到でないとした審決の判断に誤りは
ない。

(3) 記載要件についての判断誤り(取消事由3)に対して

本件明細書の【0101】【0103】には,「特定表示結果」に相当する「ボー

ナス」か「スイカ」に当選して導出が許容されたときに,
「短期有利表示結果」に相

当する「チャンス目」の導出も許容されることが記載されているから,「ボーナス」

や「スイカ」と「チャンス目」とが導出を許容するか否か決定される複数種類の表

示結果に含まれていることが記載されている。

導出が許容される対象に「短期有利表示結果」が含まれることは,本件特許明細

書の【0101】【0103】などの記載から明らかである。

本件明細書(【0101】【0108】【0110】)には,内部抽選においてボー

ナスやスイカに当選させて導出を許容するか否かの決定を行うことにより,ボーナ

スかスイカに当選して導出を許容する旨が決定されたときにチャンス目の導出を許

容する旨も決定されることが記載されている。

特許請求の範囲には,
「特別表示結果」と「再遊技有利表示結果」とが,事前決定

手段によって導出を許容するか否かが決定される表示結果であることが規定されて

いるにすぎず,両表示結果を「同時当選し得る抽選対象役」と解釈すべき記載はな

い。

本件明細書の【0113】【0115】には,「特別表示結果」に相当する「ボー

ナス」と,
「再遊技表示結果」に相当する「リプレイ」とについて,導出を許容する

か否か決定されることが記載されている。

したがって,記載要件に関する審決の判断に誤りはない。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実

(1) 本件明細書の記載

本件明細書(甲27)には,次のとおりの記載がある(図5,17は別紙のとお

り。本件訂正前のもの。。

「【0001】

本発明は,スロットマシンに関し,特に有利状態として,所定ゲーム数の間だけ継

続する短期有利状態と該所定ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有

利状態とを有するスロットマシンに関する。

【背景技術】

【0002】

スロットマシンは,一般に,外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた

複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており,各リールは,遊

技者がスタートレバーを操作することにより回転を開始し,また,遊技者が各リー

ルに対応して設けられた停止ボタンを操作することにより,その操作タイミングか

ら予め定められた最大遅延時間の範囲内で回転を停止する。そして,全てのリール

の回転を停止したときに導出された表示態様に従って入賞が発生する。

【0003】

入賞となる役の種類としては,小役,ボーナス,リプレイといった種類がある。こ

こで,小役の入賞では,小役の種類毎に定められた数のメダルが払い出されるとい

う利益を遊技者が得ることができる。ボーナスの入賞では,次のゲームからレギュ

ラーボーナスやビッグボーナスといった遊技者にとって有利な遊技状態へ移行され

るという利益を遊技者が得ることができる。リプレイ入賞では,賭け数の設定に新

たなメダルを消費することなく次のゲームを行うことができるという利益を得るこ

とができる。

【0004】

ボーナス役を含めた各役の入賞が発生するためには,一般的には,事前(通常はス

タートレバー操作時)に行われる内部抽選に当選して当選フラグが設定されていな

ければならない。ここで,リプレイ入賞による賭け数の設定にメダルを消費しない

で済むという利益を遊技者が得られることを利用して,可変表示装置に導出された

図柄によりRT入賞が発生することで予め定められた所定ゲーム数だけ通常の遊技
状態とはリプレイ以外の役の当選確率を変えずにリプレイの当選確率を高くするR

T(ReplayTime)を,ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボ

ーナスと呼ばれる特別遊技状態以外の遊技者にとって有利な遊技状態として定めて

いるスロットマシンがあった(例えば,特許文献1参照)。

【0005】

遊技状態がRTに制御されているゲームでは,かなりの高確率でリプレイ当選し,

また,リプレイ当選しているゲームでは,さらにボーナス当選していても通常はリ

プレイの方が優先して導出される。つまり,遊技状態がRTに制御されていると,

ボーナス当選していてもボーナス入賞しにくくなるため,このRTに制御されてい

る期間を利用して,複数ゲームの期間に亘って実行される連続演出を行うものとし

たスロットマシンがあった(例えば,非特許文献1参照)。

【0006】

【特許文献1】特開2005−131323号公報(段落0035)

【非特許文献1】パチスロ攻略マガジン2003年1月号(16,17頁)

【発明の開示】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

上記したように,従来のスロットマシンにおけるRTは,特許文献1のようにボー

ナス以外で遊技者に有利な遊技状態を設けることで遊技の興趣を向上させようとす

るものか,非特許文献1のように当選の有無に関わらずボーナス入賞しにくくなる

ことを利用して連続演出を行うことで遊技の興趣を向上させようとするものでしか

なかった。遊技状態がRTに制御されるかどうかで遊技を有利に進められるかどう

かということに差異が生じても,そこに遊技における戦略性が生じることはなかっ

た。

【0008】

本発明は,有利状態として,所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態と該所定
ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有利状態とを設け,長期有利状

態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じて回避できるものとすることで,

技術介入性を高めるとともに遊技の戦略性を高くしたスロットマシンを提供するこ

とを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記目的を達成するため,本発明にかかるスロットマシンは,

遊技用価値(メダル)を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによ

りゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可

変表示装置(可変表示装置2)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了

し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロット

マシンにおいて,

ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果(レ

ギュラーボーナス,ビッグボーナス(1),ビッグボーナス(2),スイカ)及び短

期有利表示結果(チャンス目)を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否か

を決定する事前決定手段(ステップS403)と,

前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段

(停止ボタン12L,12C,12R)と,

前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定

手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段

(ステップS404)と,

通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態(RT)に遊技状態を制御する

有利状態制御手段(ステップS815,S916)と,

所定の設定操作手段(設定キースイッチ92,設定スイッチ91)の操作に基づい

て,前記事前決定手段により入賞表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を

設定値毎に異ならせる複数種類の設定値(設定値)のうちから,いずれかの設定値
を選択して設定する設定値設定手段(ステップS201〜S210)と,

前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進

行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段

(RAM112)と,

前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されてい

る前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,

前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータの

うちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により

保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと

一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段(ステップS105,S106)

と,

前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進

行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたと

きに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段(ステップS106(NO),ス

テップS301)と,

ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読

み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定

可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判

定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが

適正ではないと判定する設定値判定手段(ステップS508,S509)と,

前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定され

たときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段(ステップS509(NO),

ステップS301)と,

前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記

第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設

定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定さ
れたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行

を可能とする不能化解除手段(ステップS111,図11)とを備え,

前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適

正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率

で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定する

とともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有

利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,

前記有利状態制御手段は,

前記可変表示装置の表示結果として予め定められた短期有利表示結果(チャンス目)

が導出されたときに,前記有利状態のうちで所定ゲーム数(3ゲーム)の間だけ継

続する短期有利状態(ショートRT)に遊技状態を制御する短期有利状態制御手段

(ステップS815)と,

予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲ

ーム数よりも長いゲーム数(100ゲーム)の間だけ継続するとともに,終了まで

に遊技者の得られる利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態(ロングR

T)に遊技状態を制御する長期有利状態制御手段(ステップS906)とを含み,

前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利

状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し(ステップS815では,

これまでのRTカウンタの値に関わらず,RTカウンタの初期値として4をセット),

前記導出制御手段は,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていると

きにおいて前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出

させる第一手順時導出手段(図2,図8,図9)と,

前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていると

きにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたとき

に該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段(図2,図8,図9)とを
含み,

前記スロットマシンは,

前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示

結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報

(SRT可能性報知)を報知する情報報知手段(ステップS1007)をさらに備

える

ことを特徴とする。

【0010】

上記スロットマシンでは,有利状態に制御されると遊技者が通常遊技状態よりも有

利にゲームを進めることが可能となるが,この有利状態には,所定ゲーム数の間だ

け継続する短期有利状態と,これよりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有利状

態とがある。長期有利状態に制御されているときでも短期有利表示結果が導出され

ると,短期有利状態に遊技状態が制御され,有利状態全体としてのゲーム数が少な

くなってしまう場合がある。長期有利状態に制御されているときには,短期有利表

示結果を導出させない方が遊技者にとって有利なものとなる場合がある。

【0011】

ここで,短期有利表示結果が可変表示装置の表示結果として導出されるのは,特定

表示結果と短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていて,且つ停止操作

手段が第二手順で操作された場合だけである。また,長期有利状態で特定表示結果

と短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されると,所定の情報(実質的に,

第二手順で停止操作手段を操作することで該短期有利状態が導出される旨を示すこ

ととなる)が報知されるので,どのような操作手順で停止操作手段を操作すればよ

いかを判断できる。これにより,長期有利状態の維持に対して遊技者の技術介入性

が生じるとともに,遊技の戦略性も高まるので,遊技の興趣を向上させることがで

きる。」

「【0014】
なお,前記短期有利状態と前記長期有利状態とは,終了までの継続ゲーム数の他は

同じ有利状態としてもよい。この場合には,前記長期有利状態の残りゲーム数が前

記短期有利状態のゲーム数よりも大きいときに,長期有利状態の残りゲームで遊技

者が得られる利益は短期有利状態において遊技者が得られる利益よりも大きなもの

となる。

また,前記事前決定手段は,前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲ

ームを行うことが可能となる再遊技表示結果(リプレイ)の導出を許容するか否か

を決定するものとすることができ,ここで,

前記有利状態は,例えば,前記通常遊技状態よりも該再遊技表示結果の導出を許容

する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態とすることができる。

また,前記特定表示結果は,複数種類あってもよい。ここで,前記特定表示結果の

導出が許容する旨が決定されているときに該特定表示結果を導出させるための第一

手順は,前記特定表示結果の種類毎に異なっていてもよい。また,前記第二手順は,

前記停止操作手段の操作手順のうちの前記第一手順以外の全ての操作手順としても,

前記第一手順以外の操作手順のうちの一部の操作手順としてもよい。

【0015】

また,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで,該長期

有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる

利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報を報知するものとしてもよい。

一方,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで前記所定

の情報を報知するものの,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前

記短期有利状態において得られる利益よりも小さいときには,その旨を示す情報も

併せて報知するものとすることができる。これらの場合には,短期有利表示結果を

導出させた方が本当は有利な筈であるのに,遊技者が第二手順で停止操作手順を操

作しないで短期有利表示結果をわざと外してしまうといったことがなくて済むよう

になる。」
「【0029】

上記スロットマシンにおいて,

前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として所定数(9枚)の遊技用

価値の付与を伴う小役表示結果(スイカ)の導出を許容するか否かを決定し,

前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段

により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定された

ときに,前記所定の情報を報知してもよい。この場合において,上記スロットマシ

ンは,

前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定

数の遊技用価値により実行可能なゲーム数(3ゲーム)と前記所定ゲーム数との差

が1未満(0)となる数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段(ス

テップS902)をさらに備えるものとすることができる。

【0030】

この場合,情報報知手段から所定の情報が報知されたときに通常遊技状態であるか

有利状態であるかが遊技者に判断できなくなる場合もある。通常遊技状態であった

場合に短期有利表示結果が導出されないように停止操作手段を操作すると,遊技者

は,短期有利状態による利益を喪失してしまうこととなる。もっとも,第一手順で

停止操作手段を操作すれば小役表示結果を導出させることができ,これで付与され

る遊技用価値によって喪失した短期有利状態の利益を保全することができるので,

遊技者にとって不利なものとなることはない。」

「【発明を実施するための最良の形態】

【0049】

以下,添付図面を参照して,本発明の実施の形態について説明する。

【0050】

図1は,この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。

スロットマシン1の前面扉は,施錠装置19にキーを差し込み,時計回り方向に回
動操作することにより開放状態とすることができる。このスロットマシン1の上部

前面側には,可変表示装置2が設けられている。可変表示装置2の内部には,3つ

のリール3L,3C,3Rから構成されるリールユニット3が設けられている。リ

ール3L,3C,3Rは,それぞれリールモータ3ML,3MC,3MR(図3参

照)の駆動によって回転/停止させられる。

【0051】

リール3L,3C,3Rの外周部には,図2に示すように,それぞれ「7」「BA


R」「JAC」「スイカ」「チェリー」「ベル」といった互いに識別可能な複数種
, , , ,

類の図柄が所定の順序で描かれている。リール3L,3C,3Rのいずれについて

も,
「JAC」及び「ベル」は,最大でも5コマ以内の間隔で配置されている。中と

右のリール3C,3Rについて「スイカ」は,5コマ以内の間隔で配置されている。

右のリール3Rについて「チェリー」「7」または「BAR」のいずれかが最大で


5コマ以内の間隔で配置されている。リール3L,3C,3Rの外周部に描かれた

図柄は,可変表示装置2において上中下三段に表示される。

【0052】

リールユニット3内には,リール3L,3C,3Rのそれぞれに対して,その基準

位置を検出するリールセンサ3SL,3SC,3SR(図3参照)と,背面から光

を照射するリールランプ3LP(図3参照)とが設けられている。可変表示装置2

には,後述するレギュラーボーナスにおいて賭け数として1が設定されているとき

には,中段の1本の入賞ラインが設定される。レギュラーボーナス以外では賭け数

として3が設定されている状態でのみゲームを開始させることができ,この賭け数

として3が設定されているときには,上中下段の3本及び対角線の2本の合計5本

の入賞ラインが設定される。」

「【0096】

上記スロットマシン1においては,可変表示装置2のいずれかの入賞ライン上に役

図柄が揃うと,入賞となる。入賞となる役の種類は,遊技状態に応じて定められて
いるが,大きく分けて,特別遊技状態(レギュラーボーナス,ビッグボーナス)へ

の移行を伴う特別役と,メダルの払い出しを伴う小役と,賭け数の設定を必要とせ

ずに次のゲームを開始可能となる再遊技役とがある。図5(a)は,このスロット

マシン1において入賞となる役の種類と可変表示装置2における図柄の組み合わせ

を説明する図である。」

「【0101】

もっとも,適正な操作手順で操作されずに,これらの役に入賞しなかった場合には,

チャンス目(例えば,チェリー−スイカ−スイカ)が導出されることがある。停止

ボタン12L,12C,12Rの操作手順(特に停止ボタン12Lの操作タイミン

グ)によって「チェリー」の引き込みができずにチャンス目も導出できないときに

は,リーチ目(例えば,JAC−スイカ−スイカ)が導出される(スイカに併せて

当選している場合を含む)。すなわち,チャンス目及びリーチ目は,レギュラーボー

ナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選しているときには,

それぞれの役の表示態様とともに可変表示装置2の表示結果として導出が許容され

ている表示態様ということになる。」

「【0103】

もっとも,この場合にも,チャンス目(例えば,チェリー−スイカ−スイカ)が導

出されることがある。停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順(特に停止ボ

タン12Lの操作タイミング)によって「チェリー」の引き込みができずチャンス

目も導出できないときには,ハズレ目(例えば,ベル−スイカ−スイカ)が導出さ

れる。すなわち,チャンス目及びハズレ目は,スイカに当選しているときには,
「ス

イカ−スイカ−スイカ」の表示態様とともに可変表示装置2の表示結果として導出

が許容されている表示態様ということになる。」

「【0107】

リプレイは,通常の遊技状態またはRTにおいて入賞ライン(5本)のいずれかに

「JAC−JAC−JAC」の組み合わせが揃ったときに入賞となる。レギュラー
ボーナス(ビッグボーナス中を含む)では,この組み合わせが揃ったとしてもリプ

レイ入賞とならない。リプレイに入賞したときには,メダルの払い出しはないが次

のゲームを改めて賭け数を設定することなく開始できるので,次のゲームで設定不

要となった賭け数(レギュラーボーナスではリプレイ入賞しないので必ず3)に対

応した3枚のメダルが払い出されるのと実質的には同じこととなる。「JAC」は,

リール3L,3C,3Rの全てについて5コマ以内の間隔で配置されているので,

後述する内部抽選においてリプレイに当選したときには,必ずリプレイに入賞する

ものとなっている。

【0108】

以下,内部抽選について説明する。内部抽選は,上記した各役への入賞を許容する

かどうかを,可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には,スタ

ートレバー11の操作時),決定するものである。内部抽選では,乱数発生回路11

5から内部抽選用の乱数(0〜16383の整数)が取得される。そして,遊技状

態に応じて定められた各役について,取得した内部抽選用の乱数と,遊技者が設定

した賭け数と,設定スイッチ91により設定された設定値に応じて定められた各役

の判定値数に応じて行われる。内部抽選における当選は,排他的なものである。

【0109】

図5(b)は,遊技状態別当選役テーブルを示す図である。遊技状態別当選役テー

ブルは,ROM113に予め格納され,内部抽選において当選と判定される役を判

断するために用いられるものであるが,遊技状態別当選役テーブルの登録内容は,

遊技状態に応じて定められた役を示すものとなる。各ゲームにおける遊技状態にお

いて抽選対象となる役が参照される。ここで,複数の役が同時に抽選対象となる場

合もある。

【0110】

遊技状態がレギュラーボーナス(ビッグボーナス中に提供された場合を含む)にあ

るときには,スイカ,ベル,チェリーが内部抽選の対象役として順に読み出される。
通常の遊技状態にあるときには,レギュラーボーナス+スイカ,レギュラーボーナ

ス,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビッグボーナス(1),ビッグボーナス(2)

+スイカ,ビッグボーナス(2),スイカ,ベル,チェリー,リプレイ(通常)が内

部抽選の対象役として順に読み出される。遊技状態がRTにあるときには,レギュ

ラーボーナス+スイカ,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビ

ッグボーナス(1),ビッグボーナス(2)+スイカ,ビッグボーナス(2),スイ

カ,ベル,チェリー,リプレイ(RT)が内部抽選の対象役として順に読み出され

る。」

「【0113】

レギュラーボーナス+スイカ,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビッグボーナス(2)

+スイカは,通常の遊技状態またはRTで内部抽選の対象となり,通常の遊技状態

及びRTでの賭け数3に対応する判定値数の格納アドレスが登録されている。これ

らの役の共通フラグの値は1であり,設定値に関わらずに共通の判定値数の格納ア

ドレスが登録されている。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1),及びビッグ

ボーナス(2)は,通常の遊技状態またはRTで内部抽選の対象となり,通常の遊

技状態及びRTでの賭け数3に対応する判定値数の格納アドレスが登録されている。

これらの役については,共通フラグの値が0となっており,設定値に応じて個別に

判定値数の格納アドレスが登録されている。」

「【0115】

リプレイは,通常の遊技状態またはRTにおいて内部抽選の対象となるが,通常の

遊技状態とRTとでは別個の抽選対象の役として判定値数の格納アドレスが,それ

ぞれの遊技状態における賭け数3に対応して登録されている。通常の遊技状態にお

けるリプレイについてもRTにおけるリプレイについても,共通フラグは1であり,

設定値に関わらず共通の判定値数の格納アドレスが登録されている。」

「【0161】

SRT可能性報知は,RT残りゲーム数が4ゲーム以上であるゲーム(このときは,
必ずロングRT)においてチャンス目が導出される可能性があるとき,すなわち,

レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/

もしくはスイカに当選しているときに行われる。SRT可能性報知演出は,チャン

ス目が導出される可能性があることを直接的に示す態様で行われるのではなく,R

T残りゲーム数が4ゲーム以上でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)また

はビッグボーナス(2) 並びに/もしくはスイカに当選しているとき以外には絶対


に表示されることのない所定の画像を液晶表示器4に表示することにより行われる。

【0162】

チャンス演出は,SRT可能性報知が行われたゲームでチャンス目が導出されなか

ったときに行われるが,入賞の観点で言うとチャンス目はハズレなので,入賞情報

コマンドを参照してもハズレの表示結果が導出されたのならばそれがチャンス目で

あるかどうかを演出制御基板102のCPU121が認識することはできない。可

変表示装置2に導出されている表示態様(特にリール3L,3C,3Rの全てが停

止し,チャンス目が導出されるものとなったか)は,リール回転コマンド及びリー

ル停止コマンドに基づいて判断される。」

「【0164】

また,連続演出は,RT残りゲーム数が3となったゲームで開始され,RT残りゲ

ーム数が1となるゲームまで3ゲームの期間継続した後に終了させられる。連続演

出は,ロングRTで97ゲームを消化してRT残りゲーム数が3となったゲームに

おいても開始されるものの,前回のゲームでのチャンス目の導出によりショートR

Tに制御されたゲームでは,必ず開始されるものとなる。RT残りゲーム数は,遊

技制御基板101から送信される遊技状態コマンドにより判断することができる。

【0165】

ロングRTで97〜99ゲームを消化した後もレギュラーボーナス,ビッグボーナ

ス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していないこともあり,ショートRT

を開始させるチャンス目もスイカのみの当選でも導出されることがあるので,連続
演出は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)

に当選(持ち越しを含む)している場合にも当選していない場合にも行われる。」

「【0214】

次に,上記したステップS405の入賞判定処理について詳しく説明する。図17

は,CPU111がステップS405で実行する入賞判定処理を詳細に示すフロー

チャートである。入賞判定処理では,遊技状態に応じた入賞対象役を最初から順に

読み出す(ステップS801)。次に,当該読み出した役の図柄組み合わせが可変表

示装置2の5本の入賞ラインのうちのいずれかに(レギュラーボーナス時は,中段

1本の入賞ラインに)揃っているかどうかを判定する(ステップS802)。

【0215】

当該役の図柄組み合わせが揃っていれば,当該役の入賞フラグをRAM112に設

定して(ステップS803),ステップS804の処理に進む。当該役の図柄組み合

わせが揃っていなければ,そのままステップS804の処理に進む。ステップS8

04では,当該遊技状態に応じた役のうちで未だ入賞判定の対象としていない役が

あるかどうかを判定する。未だ入賞判定の対象としていない役があれば,ステップ

S801の処理に戻り,当該遊技状態に応じた次の役を読み出すものとする。

【0216】

当該遊技状態に応じた役の全てを入賞判定の対象としていれば,次に,RAM11

2にリプレイの入賞フラグが設定されているかどうかにより,リプレイ入賞したか

どうかを判定する(ステップS805)。リプレイ入賞していれば,リプレイゲーム

中フラグをRAM112に設定する(ステップS806) このリプレイゲーム中フ


ラグは,次のゲームで賭け数が自動設定されると消去されるものとなる。そして,

ステップS816の処理に進む。

【0217】

リプレイ入賞していなければ,RAM112にビッグボーナス(1)の入賞フラグ

が設定されているかどうかにより,ビッグボーナス(1)入賞したかどうかを判定
する(ステップS807)。ビッグボーナス(1)入賞していれば,ビッグボーナス

中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定されているビッグ

ボーナス(1)当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカウンタの値を

0に初期化する(ステップS808)。そして,ステップS816の処理に進む。

【0218】

ビッグボーナス(1)入賞していなければ,RAM112にビッグボーナス(2)

の入賞フラグが設定されているかどうかにより,ビッグボーナス(2)入賞したか

どうかを判定する(ステップS809)。ビッグボーナス(2)入賞していれば,ビ

ッグボーナス中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定され

ているビッグボーナス(2)当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカ

ウンタの値を0に初期化する(ステップS810)。そして,ステップS816の処

理に進む。

【0219】

ビッグボーナス(2)入賞していなければ,RAM112にレギュラーボーナスの

入賞フラグが設定されているかどうかにより,レギュラーボーナス入賞したかどう

かを判定する(ステップS811)。レギュラーボーナス入賞していれば,レギュラ

ーボーナス中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定されて

いるレギュラーボーナス当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカウン

タの値を0に初期化する(ステップS812)。そして,ステップS816の処理に

進む。

【0220】

レギュラーボーナス入賞もしていなければ,リール3L,3C,3Rにそれぞれ停

止されている図柄を参照して,可変表示装置2にチャンス目が導出されているかど

うかを判定する(ステップS813)。チャンス目が導出されていれば,RAM11

2にレギュラーボーナス中フラグまたはビッグボーナス中フラグが設定されている

かどうかにより,今回のゲームの遊技状態(または次のゲームで適用される遊技状
態)がレギュラーボーナスまたはビッグボーナスであるかどうかを判定する(ステ

ップS814)。

【0221】

遊技状態がレギュラーボーナスでもビッグボーナスでもなければ,現時点のRTカ

ウンタの値に関わらずに(すなわち,現在の遊技状態が通常の遊技状態,ショート

RT,ロングRTのいずれであるかに関わらずに) RAM122のRTカウンタの


初期値として4をセットし,ショートRTに遊技状態を制御する。ここで,初期値

として4をセットするのは,後述するステップS913において今回のゲームのう

ちにRTカウンタの値が1減算されてしまうため,ショートRTのゲーム数として

3ゲームを確保するためである(ステップS815)。そして,ステップS816の

処理に進む。チャンス目が導出されていなかった場合,或いは遊技状態がレギュラ

ーボーナスまたはビッグボーナスであった場合には,そのままステップS816の

処理に進む。

【0222】

ステップS816では,RAM112に設定されている入賞フラグ(但し,ハズレ

の場合は入賞フラグの設定はない)に基づいて入賞した役の種類を示す入賞情報コ

マンドを生成して,演出制御基板102に送信する。そして,入賞判定処理を終了

して,図13のフローチャートに復帰する。」

「【0235】

図19は,演出制御基板102のCPU121が実行する処理を示すフローチャー

トである。演出制御基板102側では,遊技制御基板101から送られてくるコマ

ンドを受信したかどうかを判定している(ステップS1001) 遊技制御基板10


1からいずれかのコマンドを受信すると,受信したコマンドの種類が何であるかを

判定する(ステップS1002)。

【0236】

受信したコマンドの種類がステップS526で送信された当選状況通知コマンドで
あった場合には,まず,受信した当選状況通知コマンドが示す当選状況(すなわち,

今回のゲームにおける当選フラグの設定状況)をRAM122の所定の領域に保存

する(ステップS1003)。次に,前回のゲームのステップS1027(後述)で

RAM122に保存した遊技状態がRT残りゲーム数が3以下であることを示して

いるかどうかを判定する(ステップS1004) RT残りゲーム数が4以上である


場合には,今回のゲームの遊技状態はロングRTである。

【0237】

ここでは,まず,受信した当選状況通知コマンドがレギュラーボーナス,ビッグボ

ーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選を示しているかどうかを判定する

(ステップS1005)。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)及びビッグボ

ーナス(2)のいずれにも当選していないのであれば,受信した当選状況通知コマ

ンドがスイカの当選を示しているかどうかを判定する(ステップS1006) スイ


カにも当選していないのであれば,ロングRTであってもチャンス目が導出される

可能性はないので,そのままステップS1001の処理に戻る。

【0238】

レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),もしくは

スイカに当選していれば,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可能性があ

るということなので,液晶表示器4に所定の画像(但し,チャンス目の導出可能性

を直接的に示すものではなく,これ以外の場合に表示されることのない画像)を表

示し,ロングRTからショートRTに移行されてしまう可能性があることを示すS

RT可能性報知を行う。また,RAM122にSRT可能性フラグを設定する(ス

テップS1007)。そして,ステップS1001の処理に戻る。

【0239】

ステップS1004でRT残りゲーム数が3以下であった場合には,さらに前回の

ゲームでのステップS1027(後述)でRAM122に保存した遊技状態がRT

残りゲーム数が1以上であることを示しているかどうかを判定する(ステップS1
008)。RT残りゲーム数が0,すなわちRT以外の遊技状態であれば,そのまま

ステップS1001の処理に戻る。

【0240】

RT残りゲーム数が1以上,すなわちロングRTで97ゲーム以上を消化して残り

ゲーム数が1以上3以下となっているか,ショートRT中である場合には,RAM

122にボーナス告知フラグが設定されているかどうかにより,前回以前のゲーム

で既にボーナス告知が行われているかどうかを判定する(ステップS1009) 前


回以前のゲームで既にボーナス告知が行われていれば,そのままステップS100

1の処理に戻る。未だボーナス告知が行われていなければ,RT残りゲーム数に応

じて,3ゲームで継続する連続演出のうちの今回のゲーム分の演出を開始させると

ともに,RAM122に連続演出フラグを設定する(ステップS1010)そして,


ステップS1201の処理に戻る。

【0241】

受信したコマンドの種類がステップS704で送信されたリール回転コマンドであ

った場合には,前のゲームでRAM122に保存したリール3L,3C,3Rの停

止図柄に関する情報をクリアする(ステップS1011)。そして,ステップS10

01の処理に戻る。

【0242】

受信したコマンドの種類がステップS716で送信されたリール停止コマンドであ

った場合には,受信したリール停止コマンドに従ってROM123のテーブルを参

照して図柄を特定し,当該リール停止コマンドが示すリールについて停止した図柄

をRAM122の停止図柄テーブルに保存する(ステップS1012)。

【0243】

次に,停止図柄テーブルを参照して,リール3L,3C,3Rの全てが停止したか

どうかを判定する(ステップS1013)。リール3L,3C,3Rのうちで未だ回

転中のものがあれば,そのままステップS1001の処理に戻る。リール3L,3
C,3Rの全てが停止した場合には,RAM122にSRT可能性フラグが設定さ

れているかどうかを判定する(ステップS1014) SRT可能性フラグが設定さ


れていなければ,そのままステップS1001の処理に戻る。

【0244】

SRT可能性フラグが設定されていれば,ステップS1007で行ったSRT可能

性報知を終了するとともに,RAM122に設定したSRT可能性フラグを消去す

る(ステップS1015) さらに,
。 停止図柄テーブル3L,3C,3Rを参照して,

可変表示装置2にチャンス目が導出されているかどうかを判定する(ステップS1

016) チャンス目が導出されていなければ,
。 液晶表示器4に所定の画像を表示す

ることなどによりチャンス演出を行う(ステップS1017)。そして,ステップS

1001の処理に戻る。チャンス目が導出されていれば,そのままステップS10

01の処理に戻る。

【0245】

なお,可変表示装置2の表示結果によりレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)に入賞したときにおいては,チャンス目が導出されて

いる訳ではないので,ステップS1017の処理としてチャンス演出は一応行われ

ることとなる。もっとも,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッ

グボーナス(2)に入賞していると,続けて受信する入賞情報コマンドによって,

遊技者がチャンス演出の実行を認識できるよりも前にチャンス演出が強制終了させ

られ,実質的にはチャンス演出が行われていないのと同じことになる。

【0246】

受信したコマンドの種類がステップS816で送信された入賞情報コマンドであっ

た場合には,当該入賞情報コマンドがレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)のいずれかの入賞を示しているかどうかを判定する(ス

テップS1018)。

【0247】
レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)のいずれ

かの入賞を示していれば,現在実行中の演出(連続演出,チャンス演出,ボーナス

告知,SRT可能性報知を含む)を強制終了させる(ステップS1019) さらに,


RAM122に設定されている連続演出フラグを消去し,ボーナス告知フラグを消

去する。これらのフラグが元々設定されていなければ,その状態が維持されるだけ

である(ステップS1020)。そして,ステップS1021の処理に進む。

【0248】

ステップS1021では,液晶表示器4に所定の画像を表示することなどにより,

レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の入賞を

示すボーナス入賞演出を行う。このボーナス入賞演出は,入賞したボーナスの種類

に応じて異なるものを行うものとしてもよい。そして,ステップS1001の処理

に戻る。

【0249】

ステップS1018でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)及びビッグボー

ナス(2)のいずれにも入賞していなかった場合には,RAM122に連続演出フ

ラグが設定されているかどうかにより,連続演出が実行されているかを判定する(ス

テップS1022) 連続演出が実行されていなければ,
。 そのままステップS100

1の処理に戻る。連続演出が実行されていれば,今回のゲーム分の連続演出の結果

を示すとともに,RAM122に設定されている連続演出フラグを消去する(ステ

ップS1023)。

【0250】

次に,前回のゲームのステップS1027でRAM122に保存した遊技状態がR

T残りゲーム数が1であることを示しているかどうかを判定する(ステップS10

24) RT残りゲーム数が1でなければ,
。 今回のゲーム限りでRTが終了すること

はなく,次ゲームでも連続演出を行うものとなるので,そのままステップS100

1の処理に戻る。RT残りゲーム数が1であれば,今回のゲーム限りでRTが終了
し,次のゲームでは通常の遊技状態になるということである。

【0251】

この場合には,ステップS1003でRAM122に保存した当選状況が,レギュ

ラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)のいずれかの当

選を示しているかどうかを判定する(ステップS1025)。レギュラーボーナス,

ビッグボーナス(1)及びビッグボーナス(2)のいずれの当選も示していなけれ

ば,そのままステップS1001の処理に戻る。レギュラーボーナス,ビッグボー

ナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選を示していれば,液晶表示器4に所

定の画像を表示することなどにより,これらの役の当選を確定的に遊技者に報知す

るボーナス告知を行い,RAM122にボーナス告知フラグを設定する(ステップ

S1026)。そして,ステップS1001の処理に戻る。

【0252】

受信したコマンドの種類がステップS915で送信された遊技状態コマンドであっ

た場合には,受信した遊技状態コマンドが示す遊技状態(すなわち,次のゲームに

おける遊技状態)をRAM122の所定の領域に保存する(ステップS1027)。

そして,ステップS1001の処理に戻る。

【0253】

また,受信したコマンドの種類が他のコマンドであった場合には,それぞれのコマ

ンドの種類に応じた処理(本発明と関係ないので,詳細は省略)を実行する(ステ

ップS1028)。その後,ステップS1001の処理に戻る。

【0254】

以上説明したように,この実施の形態にかかるスロットマシン1では,通常の遊技

状態よりもリプレイ当選確率を高くするRTとして,100ゲームの間継続するロ

ングRTと,3ゲームで終了するショートRTとがある。ここで,例えば,ロング

RTに制御されてRT残りゲーム数が4ゲーム以上あるときであっても,可変表示

装置2の表示結果としてチャンス目が導出されると,ショートRTに制御され,R
Tが終了するまでのゲーム数が少なくなってしまう。

【0255】

もっとも,ショートRTに遊技状態を移行させるチャンス目が導出される可能性が

あるのは,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),

並びに/もしくはスイカに当選しているときだけである。ここで,ロングRTでR

T残りゲーム数が4ゲーム以上あるときにこれらの役に当選していれば,液晶表示

器4においてSRT可能性報知が行われることとなる。SRT可能性報知は,ショ

ートRTに移行される可能性を直接的に示すものではないが,これ以外の条件では

行われないので,遊技者は,ロングRTにおいてRT残りゲーム数が4ゲーム以上

ある状態からショートRTに移行される可能性があることを認識することができる。

【0256】

また,ショートRTに遊技状態を移行させるチャンス目が導出されるのは,レギュ

ラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしく

はスイカの取りこぼしの場合だけに限られている。これらの取りこぼしの場合でも,

さらに左のリール3Lに「チェリー」を停止させる(第2,第3リールとして停止

されるなら,
「スイカ」の停止する入賞ライン上に停止させる)ことのできるタイミ

ングに限られており,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によってチャ

ンス目を導出させないようにすることができる。

【0257】

このため,遊技者は,遊技状態がショートRTに制御される可能性があるときであ

っても,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によって遊技状態をロング

RTのまま維持させることができるので,ここにも遊技者の技術介入が働いて,遊

技の興趣を向上させることができる。また,レギュラーボーナスまたはビッグボー

ナスに遊技状態がある場合以外は,できる限りロングRTに維持させるという遊技

における戦略性も高まるので,さらに遊技の興趣を向上させることができる。

【0258】
また,このようにチャンス目を導出させるかさせないかがRTの制御に影響を及ぼ

すものとなるため,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボー

ナス(2) 並びに/もしくはスイカを取りこぼしたときに導出されることのあるチ


ャンス目に,単にレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナ

ス(2)に当選している可能性を示す以外にも役割を与えることができる。このた

め,可変表示装置2の表示結果としてチャンス目が導出されるか否かに対する遊技

者の関心をさらに高めることができ,さらに遊技の興趣を向上させることができる。

【0259】

さらに,SRT可能性報知が行われた場合においてチャンス目が導出されなかった

場合には,チャンス演出が行われる(レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)に入賞した場合は,遊技者が認識する前に即座に強制

終了されるので,実質的にチャンス演出が行われないものとなる) チャンス目が導


出されていなくてもSRT可能性報知が行われたということで,レギュラーボーナ

ス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選している可能性は高

い。

【0260】

このため,チャンス演出によってもレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)ま

たはビッグボーナス(2)の当選に対する遊技者の期待感を高めさせることができ

るので,さらに遊技の興趣を向上させることができる。一方,ショートRTに移行

させずにロングRTが継続されることの遊技者の期待感も,このチャンス演出によ

ってさらに高めることができ,さらに遊技の興趣を向上させることができる。

【0261】

ところで,チャンス目が導出されるとショートRTに遊技状態が制御されるが,チ

ャンス目が導出されたということは,他にはスイカの当選しか考えられないので,

レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選し

ている可能性が高いということである。チャンス目は,レギュラーボーナス,ビッ
グボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカの当選時に

導出される出目なるので,チャンス目の導出及びこれに基づいて制御されるショー

トRT中に実行される連続演出では,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)の当選に対して適度な期待感を遊技者に与えることが

できる。

【0262】

また,連続演出が行われるものとなっているショートRTに制御されている3ゲー

ムの間は,リプレイ当選確率が高くなり,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)に当選していたとしてもリプレイの導出が優先される

ことで,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に関わらずに,これらの役

に入賞する可能性が非常に低くなる。

【0263】

このようにレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)

に当選していたとしてもショートRTの3ゲームの間は入賞の可能性を低めること

で,1ゲームだけではなく3ゲームの間継続して遊技者に期待感を与えることがで

き,遊技の興趣を向上させることができる。連続演出の終了時において実際にレギ

ュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選してい

れば,ボーナス告知が行われることとなるので,さらに遊技者の期待感を高めて遊

技の興趣を向上させることができる。

【0264】

また,ショートRTには,可変表示装置2にチャンス目が導出されることによって

移行されるが,ロングRTには,ビッグボーナスが終了したことによって移行され

ることとなる。このため,ビッグボーナスが終了した後にもメダルの払出率が1を

越えるRTで100ゲームを行うことができるので,ビッグボーナスが終了してか

ら遊技者が手持ちのメダルを減らさずに次のビッグボーナスまたはレギュラーボー

ナスを迎えることができることとなる場合が増えるので,遊技者の期待感を高めさ
せて,さらに遊技の興趣を向上させることができる。一方,レギュラーボーナスが

終了してもロングRTには制御されないので,ボーナスの種類としてレギュラーボ

ーナスよりもビッグボーナスをと望む遊技者の期待感をさらに高めることができる

ようになる。

【0265】

さらに,RTは,単にリプレイ当選確率が通常の遊技状態よりも高くなるというだ

けではなく,通常の遊技状態とは異なりメダルの払出率も1を越えるものとなって

いる。このため,遊技状態がRTにときにレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)に当選していても,当該RTが終了するまでレギュラ

ーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)入賞させずに遊技

を進めた方がよくなる。このため,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)ま

たはビッグボーナス(2)に当選していることでSRT可能性報知が行われたとき

には,これらに入賞もさせずチャンス目も導出させないという技量が要求されるこ

ととなるので,遊技者の技術介入性が非常に高いものとなり,さらに遊技の興趣を

向上させることができる。

【0266】

また,ビッグボーナスの終了後に制御されるロングRTは,ショートRTと同様に

リプレイ当選確率を極めて高くする遊技状態であり,ビッグボーナスの終了後しば

らくの間は,多くのゲームでリプレイ入賞することとなる。ここで,レギュラーボ

ーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)は,当選確率の極めて

高いリプレイとは同じゲームで当選しないので,可変表示装置2にハズレの表示結

果が導出された場合は,当該ゲームでこれらのボーナス役に当選した可能性がある

ということである。このため,とりわけロングRTにおいてハズレの結果が導出さ

れても,遊技者を落胆させることなく,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2)の当選の期待感を与えることができるものとなる。」

「【0288】
上記の実施の形態では,RT残りゲーム数が4以上であるときのみにSRT可能性

報知を行うものとしていた。すなわち,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)

またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選していても,他の遊技

状態にあるときにはSRT可能性報知を行うことはなかった。もっとも,レギュラ

ーボーナスまたはビッグボーナス以外の遊技状態でレギュラーボーナス,ビッグボ

ーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選している

とき,すなわち新たにショートRTに遊技状態が制御される可能性があるときには,

全てSRT可能性報知を行うものとしてもよい。

【0289】

この場合,SRT可能性報知が行われたときにおいて,通常の遊技状態にあるのか

RT(特にロングRT)の遊技状態にあるのかが遊技者に分からない場合もある。

通常の遊技状態であるならば,ハズレ目を導出させるよりもチャンス目を導出させ

た方が,3ゲームだけでも遊技状態がRTに制御されるので遊技者にとって有利な

ものとなる。ここで,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によりチャン

ス目を外すとハズレ目しか導出されないのであれば,遊技者は,チャンス目をわざ

と外すようなことはしない方がよいということになる。

【0290】

もっとも,チャンス目の導出は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)また

はビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカの当選当選が条件となっている。

前者の場合において,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてこれ

らの役に入賞させることができれば,レギュラーボーナスまたはビッグボーナスに

遊技状態が制御されるので,遊技者が損をすることはない。入賞できないまでも停

止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてリーチ目が導出されれば,こ

こでレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当

選を早期に確証することができるので,ショートRTに制御されなくても,必ずし

も遊技者が損をするとは言えない。
【0291】

また,後者の場合でも,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてス

イカに入賞させることができれば,これによって9枚のメダルの払い出しを受ける

ことができる。通常の遊技状態における1ゲーム当たりに設定する賭け数は3であ

るので,払い出されたメダルによって少なくとも3ゲームを行うことができること

となる。このため,チャンス目を敢えて外したとしても,スイカに入賞させること

ができるのであれば,遊技者が損をすることはない。

【0292】

上記の実施の形態では,SRT可能性報知は,チャンス目の導出可能性を直接的に

示すものではないが,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可能性がある場

合以外に表示されることのない所定の画像を液晶表示器4に表示することにより行

うものとしていた。これに対して,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可

能性がある旨を直接的に報知してもよい。
「スイカを狙え」 「BARを狙え」
や など,

チャンス目の導出を避けることのできる図柄を報知するものとしてもよい。また,

SRT可能性報知は,液晶表示器4に画像を表示して行う場合だけではなく,例え

ば,スタートレバー11を操作したときに所定のスタート音を出力したり,ランプ

類を所定のパターンで点灯させることなどによって行うものとしてもよい。」

(2) 甲1の記載

甲1(特許第3750947号公報)には次のとおりの記載がある。

「【0005】

そして,このビッグボーナスゲーム(BBゲーム)においては,小役ゲームが所定

数回(例えば,30回)消化されるか又はレギュラーボーナスゲーム(RBゲーム

又はジャックゲーム)が所定数回(例えば,3回)実行されると,BBゲームモー

ドが終了するようになっており,その結果,300枚〜700枚程度のメダルが払

い出される。」

「【0018】
以下,本発明に係る遊技機としてパチスロ機(回胴式遊技機)を一例に取り上げて

実施の形態を図面と共に詳細に説明する。」

「【0074】

また,遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操作すると,スター

トSWセンサ110はスタート信号を出力し,主制御部100はこのスタート信号

の受信を契機として乱数抽選等を行って変動表示ゲームを開始するとともに,ドラ

ム部2に駆動パルス信号を出力するようになっている。なお,この1回のスタート

レバー9の操作によって行われる遊技が1ゲームの変動表示ゲームとなっており,

遊技者はボーナスゲーム(ビッグボーナス又はレギュラーボーナス)を獲得してメ

ダルを増やすことを目的に遊技を繰り返す。

【0075】

そして,主制御部100は,変動表示ゲーム中に停止ボタン10a,10b及び1

0cが操作されると,回転ドラムの回転を停止させ,所定の役が成立(各回転ドラ

ムの図柄が予め定めた所定の組み合わせで表示されると入賞)してメダルの払い出

しを行う場合,その払出し数を表示LEDブロック4中のメダル払出枚数表示LE

D4cに表示し,これをクレジット数に加えてメダル貯留枚数表示LED4bに表

示させる。なお,精算ボタン6によって払い出し操作が行われた場合やクレジット

数が例えば最大数の50枚を超えた場合には,主制御部100はメダル払出装置1

8を駆動制御し,必要数のメダルをメダル払出口16から排出させて受け皿15に

蓄積させる。」

「【0077】

150は,段階設定部であり,後述する出玉率の段階設定操作を行うことにより,

ホール側は,イベントや新装オープンでの放出や収益改善のための回収状況に応じ

て,段階値1〜6の中から所望の設定値を選択することができる。」

「【0087】

各回胴帯には,それぞれ異なった並びの図柄が21個描かれており,ビッグボーナ
ス図柄の「赤7」や「青7」,ストックしているビッグボーナス又はレギュラーボー

ナス放出の契機となる十字架,低確率状態から高確率状態へモード移行させるため

の抽選の契機となるチェリー及びスイカ,逆の機能を有するベル及びリプレイがあ

る。」

「【0090】

主制御部100は,変動表示ゲームのスタート信号を受信し,抽選結果が当選とな

って役が成立した場合には,有効ライン上にその役の図柄を揃えるように引き込む

ための引込制御を行う。

【0091】

例えば,ビッグボーナス役が内部当選し,停止した左ドラム2aと中ドラム2bの

右斜め下の有効ライン上に図柄「7,7」が揃っている状態において,この有効ラ

インから4コマ以内に図柄「7」が位置する状態で停止ボタン10cが操作された

とき(図9(A)参照),主制御部100は,これを強制的に有効ライン上に揃えて

「7,7,7」の組み合せとなるように引込制御を行う(図9(B)参照)。一方,

抽選により内部当選して,いずれかの役が成立しているとしても,役に対応する所

定の図柄が有効ライン上に表示されなければ遊技者に有利な状態とはならない。例

えば,ビッグボーナスゲーム(BBゲーム)は,図9(B)のように表示されなけ

れば,開始されないようになっている。なお,この引込制御は,右ドラム2cだけ

ではなく,左ドラム2aや中ドラム2bのいずれの図柄に対しても行うようになっ

ている。」

「【0094】

主制御部100は,変動表示ゲームのスタート信号を受信し,抽選結果がハズレと

なって役が不成立の場合には,有効ライン上に当選役(ボーナスや小役)の図柄を

揃えないための回避制御を行う。

【0095】

例えば,ビッグボーナス役が内部当選しておらず,停止した左ドラム2aと中ドラ
ム2bの右斜め下の有効ライン上に図柄「7,7」が揃っている場合(所謂,
「リー

チ状態」である。)において,遊技者が「目押し」により,この有効ラインから1コ

マ以内に図柄「7」が位置する状態で停止ボタン10cが操作されたとき(例えば,

「ビタ押し」と呼ばれている。図10(A)参照),主制御部100は,有効ライン

上に「7,7,7」が揃わないように図柄「7」を一つ先まで移動させて強制的に

ハズレとする回避制御を行う(図10(B)参照)。なお,この回避制御は,右ドラ

ム2cだけではなく,左ドラム2aや中ドラム2bのいずれの図柄に対しても行う

ようになっている。」

「【0105】

主制御部100は,遊技者により変動表示ゲームの開始操作が行われると,内部抽

選を行い,その結果,上段チェリー(チェリー1)が当選した場合には,停止ボタ

ンが操作された位置(タイミング)により,チェリー図柄の引込制御(図9参照)

又は回避制御(図10参照)を行う。

【0106】

図31(B)は,引込制御の可能な範囲を示しており,主制御部100は,チェリ

ー図柄が上段丁度の位置からその4コマ上の位置において停止ボタン10aが操作

されると,窓部3の上段にチェリー図柄を停止させる。なお,実際には停止までに

約36ms必要なのでその分だけ上に位置するが,説明の都合上このように記して

いる。また,停止操作から190ms以内に停止することが規定されているので,

4コマ滑らない場合もある。

【0107】

一方,図31(C)及び図31(D)は回避制御等が行われる範囲を示しており,

主制御部100は,上段チェリーが当選した場合であっても,チェリー図柄が上段

位置から4コマより上の位置(つまり,図31(A)の4よりも上の位置)又は上

段位置を少しでも過ぎた位置において停止ボタン10aが操作されると,上段位置

の一つ上又は下段位置の一つ下にチェリー図柄を停止させハズレとする。つまり,
中段チェリー(チェリー2)又は下段チェリー(チェリー3)が当選していないの

で,チェリー図柄を強制的に窓部3の外に停止させなければならないのである。」

「【0134】

主制御部100は,図柄変動表示ゲームにおいてスタート信号を受信し,内部抽選

結果がビッグボーナスの赤7図柄及びベルが同時に当選となって2つのフラグが立

っている場合には,左ドラム2a及び中ドラム2bを図37(A)に示す様に停止

させ,ライン9でベル及びライン10で赤7図柄のダブルリーチ状態とする。」

「【0142】

図38(A)に示す通り,右ドラム2c上の赤7図柄はコマ番号2であるから(図

8参照) ビッグボーナスの赤7図柄及びベルが内部当選し,
, ダブルリーチ状態とな

っている場合,窓部3の最下段位置を計測基準とすると,主制御部100は図柄位

置データ「3」及び入力パルス相データ「0」〜「23」の範囲で停止ボタン10

cが操作されると,図柄位置及び入力パルス相に関連付けて回転している図柄を停

止させる位置を一つの図柄位置に対して少なくとも2つ以上記憶する図柄停止位置

記憶テーブル(図38(B)参照)に基づいて,回転ドラムの停止制御を行う。つ

まり主制御部100は,変動表示ゲーム中に停止ボタンが操作されたタイミングで

図柄位置データ記憶手段が記憶する図柄位置データ及び相データ記憶手段が記憶す

る入力パルス相データを認識するとともに,認識した図柄位置データ及び入力パル

ス相データに基づいて回転ドラムを停止させる制御を行って,図柄停止位置記憶手

段が記憶する図柄(赤7図柄又はベル図柄)が下段に表示されるように回転ドラム

を停止させる。」

「【0155】

例えば,本発明の回胴式遊技機の場合には,乱数値は0〜65535の値をランダ

ムにとり,低確率状態においてスタートレバー9が操作タイミングに合わせて図柄

の抽選をしたとき,乱数値が0〜m1の範囲であればビッグボーナス(BB)図柄

が当選となる。同様に,高確率状態において図柄の抽選をしたとき,乱数値が0〜
n1の範囲であればビッグボーナス図柄が当選となるが,m1<n1の関係になっ

ているので,高確率状態の方が低確率状態よりもビッグボーナス図柄が当選しやす

くなっている。また,レギュラーボーナス図柄及びストックしているボーナスゲー

ム(乱数抽選により非常に高い確率で当選したボーナスゲームで,ストックする最

大数は例えば255個である。 の放出契機となる十字架図柄が当選する確率も,
) m

3<n2及びm5<n3の関係になっているので,高確率状態の方がボーナス図柄

は当選しやすくなっている。なお,ボーナス図柄や十字架図柄が当選した場合には,

RAM102のフラグエリアにフラグ1を立て,図柄が有効ライン上に揃うまでク

リアしないので,遊技者は必ず所定の図柄を揃えてビッグボーナスゲームやドラキ

ュラミッション(大当り前兆モード)等へ突入することができる。ただし,十字架

図柄が有効ライン上に揃わなくても,所定ゲーム数が消化されると,ドラキュラミ

ッションが自動的に開始される。」

「【0160】

抽選テーブルとしては,出玉率の段階設定値1〜6(この図では,設定1〜設定6

と標記している。 及び投入メダル数に対応した6つの抽選テーブル1,
) 抽選テーブ

ル2…抽選テーブル6があり,主制御部は段階設定部150により設定された段階

設定値及び投入メダル数に応じて抽選テーブルを選択し,変動表示ゲームにおいて

ボーナスゲームや複数の小役の内部抽選を実行する。なお,内部抽選でボーナスゲ

ームが当選する期待値は,上記低確率状態及び高確率状態で説明した様に,抽選テ

ーブル1<抽選テーブル2<…<抽選テーブル6となっているので,遊技者は高設

定台を求めるのである。」

「【0162】

BB(ビッグボーナス)とは,
「赤7」又は「青7」のBB図柄が有効ライン上に揃

った場合の役名であり,これが揃うと15枚のメダルが獲得されるとともに,対応

するフラグエリアにフラグ1を立ててビッグボーナスゲーム(BBゲーム:役物連

続作動装置の作動)に突入する。」
「【0164】

スイカ図柄又はチェリー図柄が有効ライン上に揃った場合には,それぞれ5枚又は

2枚のメダルが獲得されるとともに,低確率状態にいる場合には,高確率状態へ移

行させるための昇格抽選がおこなわれる。更に,低確率状態から高確率状態へ移行

した場合,抽選で決定されたスイカ図柄又はチェリー図柄の一方で,夜画面(第二

表示ステージ)から昼画面(第一表示ステージ)へ画面表示が切り替えられる。な

お,低確率状態から高確率状態へ移行した場合でも,画面表示切り替えの抽選に当

選した場合にのみ,第二表示ステージから第一表示ステージへ切り替えることもあ

る。」

「【0166】

リプレイとは,リプレイ図柄が有効ライン上に揃った場合の役名であり,これに対

して通常はメダル獲得がされず,フラグエリアにフラグ1を立て,遊技者のスター

トレバー9の操作によりリプレイ動作を行ってフラグを下げる(即ち,0とする)。

つまり,次回のゲームはメダルを投入することなく行うことができる一方,高確率

状態にいる場合には,低確率状態へ移行させるための降格抽選がおこなわれる。」

「【0215】

次に,主制御部100は,ステップS240において,変動表示ゲームのメイン処

理を実行する。例えば,遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操

作すると,スタートSWセンサ110からスタート信号が出力されるので,まずワ

ークRAM領域に記憶している段階設定値のデータが0〜5(メダル払出枚数表示

LED4cに表示される段階設定値は各々1〜6に対応する)の範囲内にあるか否

かを確認する。

【0216】

主制御部100は,段階設定値が所定の範囲内になければ,表示演出装置11,ス

ピーカ部12及び遊技状態表示LED部13により警告「EE」
( エラーの文字表示,

発光及び警告音)を発生させてエラー処理を行わせる一方,所定の範囲内にあれば,
以下で説明する乱数抽選を行って変動表示ゲームを続行する。

【0217】

この「EE」エラーが発生した場合,パチンコホール等の店員は設定変更スイッチ

の操作を行って,段階設定値を所定範囲の中から1つ選択して新たにRAM102

に記憶させると,その後主制御部100は,新たに記憶した段階設定値を使用して

変動表示ゲームの当落を決定する。また,主制御部100は,段階設定値を新たに

RAM102に記憶させる場合,段階設定値をメダル払出枚数表示LED4cに表

示しない。その一方,段階設定値に応じた音や映像(例えば,段階設定値「1」の

場合,「ピッ」という音又は1匹のコウモリが表示演出装置11に表示される。)に

より間接的に表示される。そして,RAM102に記憶している制御データは,R

OM101が記憶する制御データの初期値に書き換えられてリセット(初期化)さ

れる。

【0218】

他の実施例としては,
「EE」エラーが発生した場合,パチンコホール等の店員が設

変更スイッチの操作を行って段階設定値を所定範囲の中から1つ選択したとき,

副制御部160は主制御部100から受信した段階設定値と内蔵RAMに記憶する

段階設定値とが一致した場合,一致した旨を表示又は報知する。例えば,副制御部

160は,表示演出装置11に「開店時の段階設定値と一致しました。を表示して,


及びスピーカ部12からビープ音を発生させたり,音声で「開店時の段階設定値と

一致しました。」の報知を繰り返す。その後,主制御部100は,副制御部160が

一致した旨を表示又は報知している状態で,段階設定部150が操作された場合,

送信した段階設定値を新たにRAM102に記憶させるとともに,新たに記憶した

段階設定値を使用して変動表示ゲームの当落を決定する。この様にすることで,遊

技者は安心して遊技を続行できる。」

「【0233】

そして,主制御部100は,一般遊技の各変動表示ゲームにおいて,同一図柄が有
効ライン上に並んで窓部3に表示されれば入賞とし,図15に示す配当表に従って,

遊技メダルをメダル払出装置(一般に「メダルホッパー」と呼ばれている。)から払

い出し,メダル払出口16より排出して,ステップS250に移行する。なお,ビ

ッグボーナスゲーム(BBゲーム)においては,直ちに6ゲームで1セットのRB

ゲーム(ジャックゲーム又は第一種特別役物)が繰り返し作動され,獲得枚数が3

75枚を超えた時点でBBゲームモードを終了する。また,レギュラーボーナスゲ

ーム(RBゲーム)においては,6ゲームのジャックゲームを実行し,RBゲーム

モードを終了する。」

(3) 甲2の記載

甲2(パチスロ攻略マガジン,2006年4月号,42ないし44頁)には,次

のとおりの記載がある。

「『萌え系パチスロ』の急先鋒『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』 本誌では,


キャラや演出がコミカルで愛らしさ満点な本機の中身を暴くべく,解析&シミュレ

ートを敢行。その結果,驚愕の事実が判明した!技術介入性の高さは既報の通りだ

が,内部数値をもとにシミュレートしたところ,完璧にプレイされた場合と適当に

打った場合とでは,PAYOUTに8%もの差が生じたのだ!

その詳細はP44を見て頂きたいが,はやる気持ちを抑えつつ,まずは内部シス

テムを把握しよう。本機最大の特徴は,スイカと1枚役の取りこぼし時に停止する

「RT目」だ。出現後2P間のリプレイ確率がアップするのだが,ボーナス後60

PのRT中に揃うと,逆にパンクしてしまう要因となる。そして,このRT目の存

在が,高い技術介入性を生み出す要因でもある!」

「RTがゲーム性の核!」

「ボーナス終了後 → 60PのRT突入」

「RT目出現後 → 2PのRT突入」

「ボーナス成立後 → ボーナスを揃えるまでリプレイ確率アップ」

「RT目出現時はボーナス成立のチャンスだが,どのみちリプレイ確率がアップす
るため,ボーナス成立か否かはわからない。」

「RT中のリプレイ確率(解析値)」

「60PRT中 1/1.820」

「2PRT中 1/1.560」

「ボーナス成立時 1/2.427」

「役の構成」

「赤7・赤7・赤7」「BIG BONUS + 60PのRT」

「青7・青7・青7」「CT + 60PのRT」

「白/黒ムギまる・白ムギまる/スイカ・スイカ」「2PのRT」

「RT消化手順」

「ボーナス後のRTはRT目を揃えると2Pで終了!」

「打ち方ひとつで大きな差が付く!」

「次に,本機の最重要ポイント「打ち方」について解説しよう。通常時はスイカを

取りこぼさず,1枚役をRT目で揃える上記手順がベストだ。左右の停止位置でR

T目を取りこぼす場所があるので注意。一方,ボーナス後の60PRT中はRT目

が揃うと2Pに書き換えられてしまう。このRTが本機の出玉能力の中核なので,

絶対に途中で終わらせないように。特に,連続演出中は予告音が発生しないため,

RT目が揃わない逆押し青7狙い(スイカ中段テンパイ時は左・スイカ狙い)で消

化しよう。そして,ボーナスの完璧消化は1回あたりの効果が少ないものの,ボー

ナス回数が多くなる本機では積み重ねで大きな差となるぞ。」

「通常時の打ち方」

「通常時の小役確率」

「解析値(設定1〜6)「リプレイ役
」 1/7.300」

「オヤジ打ち(8263P)「リプレイ役
」 1/7.35」

「ボーナス消化手順」

「CTMAX打法手順」「終了条件:払い出し224枚を越えると終了」
「BIG消化手順」「終了条件:払い出し345枚を越えると終了」

(4) 甲3の記載

甲3(パチスロオリジナル必勝法スペシャル 2006年4月号(2006年4

月1日発行))には次のとおりの記載がある。

「小役&ボーナス同時当選機能だムギー」

「5号機の特徴である小役とボーナスの同時抽選がメイン。対象はチェリー・スイ

カ・1枚役と,それらの取りこぼしで出るプチRT目だ。チェリーはBIG確定な

ので,スイカとプチRT目に注目しよう」

「RTについての処方せん」

「・BIG・CT後に必ず突入」「・RT中はリプレイ確率がアップ」「・RTは
, ,

60G消化,ボーナス成立,又はプチRT絵柄揃いで終了」「BIG・CT後は6


0GのRTに入る。順押しだとプチRT目で終了するので注意」

「プチRT絵柄の処方せん」

「プチRT絵柄とは?」
「一枚役,スイカ,チェリーの取りこぼし時に出現 ・ボー

ナス成立時に出現」

(5) 甲35の記載

甲35(特開2006−15000号公報)は,その明細書及び図面の記載から

みて,
「抽選で再遊技役が当選する確率を高くした状態を解除する条件に,遊技性の

ある内容を含ませることにより,遊技者の遊技に対する関心や新鮮味を長く継続さ

せることのできるスロットマシンを提供すること」を目的として,特に「所定の開

始要件を達成したときに,前記遊技の態様を,前記役抽選手段により前記再遊技役

が当選する確率がより高い値に設定された再遊技選択高状態に変更し,前記再遊技

選択高状態に変更後,所定の解除要件を達成したときに,前記再遊技選択高状態を

解除する再遊技選択高状態制御手段と,を含み,前記解除条件に,前記役抽選手段

により所定の役に当選し,かつ前記所定の役に対応した図柄が停止したときに前記

再遊技選択高状態を解除すること」により,
「所定の役に当選し,かつ所定の役に対
応した図柄が停止したときに,再遊技選択高状態を解除するようにすることによっ

て,遊技者は再遊技選択高状態を解除させるか否かについて,遊技的な面白さを体

験することが可能であり,遊技に対する興味を持続させることが期待できる。 【0



026】)としたものである。

(6) 甲36の記載

甲36(特開2006−68443号公報)は,その明細書及び図面の記載から

みて,抽選で再遊技役が当選する確率を高くした状態を解除する条件に変化を与え,


更に遊技性のある内容を含ませることにより,遊技者の遊技に対する関心や新鮮味

を長く継続させることのできるスロットマシンを提供すること」を目的として,特

に「所定の開始要件を達成したときに,前記遊技の態様を,前記役抽選手段により

前記再遊技役が当選する確率がより高い値に設定された再遊技選択高状態に変更し,

前記再遊技選択高状態に変更後,所定の解除要件を達成したときに,前記再遊技選

択高状態を解除する再遊技選択高状態制御手段と,を含み,前記解除要件に,所定

の図柄が停止したときに,前記再遊技選択高状態を解除することが含まれる場合に

おいて,遊技者が,前記所定の図柄が停止するのを回避して前記再遊技選択高状態

を継続させる手段をとることができること」とすることにより,
「遊技者は,例えば

リールの停止操作によって,所定の図柄が停止することを意図的に回避することが

できる。従って,遊技者は,遊技的な面白さを感じながら,有利な遊技状態を継続

させることができるので,遊技者の遊技に対する関心を高め継続させることが期待

できる。また,報知画像によって,遊技者は所定の図柄について情報を得ることが

できるので,その情報に基づいて,所定の図柄が停止するのを回避させ,再遊技選

択高状態を継続して行なうことができる,従って,遊技者の遊技に対する関心を高

めることが期待できる。(
」【0030】【0031】
, )としたものである。

2 取消事由1(訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否)について

(1) 原告は,審決には,本件訂正前の「情報報知手段」の認定は,技術的意義

ついて誤りがある旨主張する。
この点,審決は,
「情報報知手段」は,遊技者に対して利益が損なわれる可能性が

あることを報知して,未然に不利な状態に転落することを防ぐことができるように

したものであって,本件明細書【0015】 【図19】の記載を踏まえると,長期


有利状態中に短期有利表示結果が導出されると,短期有利状態に転落するものの,

長期有利状態の残りゲーム数が3ゲーム以下であれば,そのことによって少なくと

も遊技者にとって不利益が生じることはなく,報知を行わないとしたものであると

認定した。

本件特許発明は,長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じ


て回避できるものとすることで,技術介入性を高めるとともに遊技の戦略性を高く

したスロットマシンを提供すること」を達成するために,
「長期有利状態に制御され

ているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果

の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報を報知する情報報知手段をさ

らに備える」ことにより,
「長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量

に応じて回避できるものとすること」としたものである。

その際の具体的態様として,本件明細書には,
「長期有利状態に制御されていると

きには,短期有利表示結果を導出させない方が遊技者にとって有利なものとなる場

合がある。(
」【0010】,
)「前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されて

いるゲームで,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利

状態において得られる利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報を報知

するものとしてもよい。一方,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御され

ているゲームで前記所定の情報を報知するものの,該長期有利状態の残りゲーム数

の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも小さいときに

は,その旨を示す情報も併せて報知するものとすることができる。(
」【0015】)

と記載されている。

これらの記載によれば,本件特許発明では,一般的には,
「長期有利状態」が遊技

者にとって有利で,「短期有利状態」が遊技者にとって不利であるので,「情報報知
手段」の報知によって,
「長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に

応じて回避できるものとすること」としているものではあるが,本件特許発明では,

「長期有利状態」は,遊技者にとって必ずしも有利な状態でない場合があることを

前提としており,そのような場合,
「前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御

されているゲームで,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短

期有利状態において得られる利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報

を報知するものとしてもよい。(
」【0015】)とした選択肢を用意しているものと

理解される。

また,本件明細書には「上記の実施の形態では,RT残りゲーム数が4以上であ

るときのみにSRT可能性報知を行うものとしていた。すなわち,レギュラーボー

ナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカ

に当選していても,他の遊技状態にあるときにはSRT可能性報知を行うことはな

かった。もっとも,レギュラーボーナスまたはビッグボーナス以外の遊技状態でレ

ギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/も

しくはスイカに当選しているとき,すなわち新たにショートRTに遊技状態が制御

される可能性があるときには,全てSRT可能性報知を行うものとしてもよい。」

(【0288】)との記載があり,RT残りゲーム数が4以上であるときのみ報知す

る態様とRT残りゲーム数に限らず報知する態様の双方を許容している。

そうすると,本件訂正前の「情報報知手段」は,
「長期有利状態に制御されている

ゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出

を許容する旨が決定されたときに,所定の情報(SRT可能性報知)を報知する」

ものであるが,その報知条件として,
「長期有利状態に制御されているゲームで前記

事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨

が決定されたとき」に必ず報知することのみならず,他の条件をも加味して報知す

ることをも包含していると解するべきであって,この点についての審決の認定,判

断に誤りはない。
(2) また,原告は,本件訂正は,本件特許発明1は,技術介入性の高いものであ

ったのに対して,本件訂正発明1は,技術介入する余地がなく,本件訂正は特許請

求の範囲の実質的拡張変更に当たるので不適法である旨の主張をする。

前記(1)のとおり,本件訂正前の「情報報知手段」は,ある条件が成立したときに

必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて

報知するものとの双方を含むものである。

訂正事項1は,前記第2,2(3)アのとおり,「前記長期有利状態に制御されてい

るゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導

出を許容する旨が決定された」場合において,長期有利状態の中で2つに場合分け

をして,
「前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合」と

「前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事

前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の

決定がされたとき」に分けて,前者の場合には,所定の情報を報知しないで,後者

の場合には,必ず前記所定の情報を報知するようにしたものである。

このように,訂正事項1は,本件訂正前の「情報報知手段」が,ある条件が成立

したときに必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したと

きに初めて報知する(他の条件によっては報知しない)ものとの双方を含んでいた

のに対し,訂正によって,これを「ある条件が成立したときに必ず報知するもの」

と,
「ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて報知する(他の条

件によっては報知しない)」ものに分けたと解することができる。

以上のとおり,訂正事項1は,特許請求の範囲減縮を目的とするものといえる。

また,訂正事項1は,特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の

範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでない。

訂正事項6は,訂正事項1の訂正に伴い,本件明細書の関係箇所を訂正事項1と

整合させるための訂正であり,明瞭でない記載釈明を目的とするものであって,

特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実
質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでない。

(3) よって,訂正事項1及び訂正事項6に係る本件訂正を適法な訂正であると認

定判断した審決に誤りはない。

3 取消事由2(相違点10についての容易想到性判断の誤り)について

(1) 原告は,相違点10に係る構成は,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み

合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合

わせることにより,容易に想到することができた旨を主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり採用することはできない。

すなわち,甲2や甲3には,本件訂正発明のように,長期有利状態中にある図柄

が出現すると短期有利状態に移行するという前提の下に,情報報知手段は,前記長

期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合には前記所定の情報

を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多

い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導

出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知する技術について,

記載及び示唆はない。

また,原告が周知技術を示すものとする甲35及び甲36には,遊技者にとって

不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知し

ない,という技術思想についての記載はあるが,本件訂正発明のように,長期有利

状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという技術についての記載

はない。

そうすると,相違点10に係る構成は,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み

合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合

わせることにより,容易に想到することができたとは認めることができない。

(2) これに対して,原告は,甲35及び甲36は,ボーナス遊技の終了直後に開

始されたリプレイタイムにおいて,遊技開始から所定回数までは,解除図柄(所定

の図柄)の当選を遊技者に報知して遊技者が解除図柄の導出を意図的に回避できる
ようにする一方,前記所定回数を超えると,解除図柄の当選を遊技者に報知しない

技術を開示しているなどと主張する。

しかし,原告の主張は,採用することができない。すなわち,本件訂正発明にお

ける長期有利状態は,「長期有利状態」及び「短期有利状態」が存在している上で,

長期有利状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという前提の下に

おける長期有利状態であるので,甲35及び甲36におけるボーナス遊技の終了直

後に開始されるリプレイタイムが,本件訂正発明における長期有利状態に相当する

と解することはできない。

また,原告は,甲2には,現在のリプレイタイムの残りゲーム数と新たに開始さ

れるリプレイタイムの継続ゲーム数が一致することをもって遊技者に不利益を与え

ないという技術が開示されており,周知技術において開示されている非報知の期間

を短期有利状態に一致させることについて十分な動機が存在する旨主張する。

しかし,原告の上記主張も採用することができない。すなわち,甲2には,2P

のRT中において所定の情報を報知しないとの技術事項が記載されているにすぎず,

リプレイタイムの総ゲーム数が遊技者にとって不利益であるかの価値判断の下,所

定の情報に相当する予告音を意図的に報知しないとする技術,及びリプレイタイム

として継続するゲーム数が遊技者にとって不利益でないゲーム期間であれば所定の

情報の報知を必要としない技術についての記載及び示唆はない。また,現在のリプ

レイタイムが途中で終了して別のリプレイタイムが新たに開始されることが,遊技

者にとって不利益となるかの価値判断に基づいて所定の情報を報知しないとする技

術についての記載及び示唆もない。

したがって,原告の上記主張は採用できない。

(3) 以上によれば,相違点10に係る構成が,甲1発明に甲2発明及び甲3発明

を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術

組み合わせることにより容易想到であるとは認めるに足りず,審決に原告の主張に

係る違法があるとは認められない。
4 取消事由3(記載要件についての判断誤り)について

(1) 原告は,本件特許発明1(本件訂正発明1)の「ゲーム毎に前記可変表示装

置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複

数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段」は,発明の詳

細な説明に記載されていないと主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本件(訂正)

明細書の【0101】【0103】には,「特定表示結果」に相当する「ボーナス」

か「スイカ」に当選して導出が許容されたときに,
「短期有利表示結果」に相当する

「チャンス目」の導出も許容されることが記載されているから,
「ボーナス」や「ス

イカ」と「チャンス目」とが導出を許容するか否か決定される複数種類の表示結果

に含まれていることが記載されていると解される。導出が許容される対象に「短期

有利表示結果」が含まれることは,本件(訂正)明細書の【0101】【0103】

などの記載から明らかである。また,本件(訂正)明細書の【0101】
【0108】

【0110】の記載によれば,内部抽選においてボーナスやスイカに当選させて導

出を許容するか否かの決定を行うことにより,ボーナスかスイカに当選して導出を

許容する旨が決定されたときにチャンス目の導出を許容する旨も決定される旨の開

示があると解するのが相当である。

したがって,原告の主張は採用の限りではない。

(2) 原告は,本件特許発明2(本件訂正発明2)の「前記事前決定手段は,前記

有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結

果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能と

なる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し」は,発明の詳細な説明

記載されていない旨を主張する。

しかし,この点の原告の主張も,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本

特許発明2(本件訂正発明2)では,「特別表示結果」と「再遊技有利表示結果」

とが,事前決定手段によって導出を許容するか否かが決定される表示結果であると
されているにすぎず,両表示結果を「同時当選し得る抽選対象役」と解釈すべき記

載はない。かえって本件(訂正)明細書の【0113】【0115】には,「特別表

示結果」に相当する「ボーナス」と,
「再遊技表示結果」に相当する「リプレイ」と

について,導出を許容するか否か決定されることが記載されている。

したがって,原告の主張は,その前提を欠く。

(3) 原告は,本件特許発明4(本件訂正発明4)の「前記事前決定手段は,前記

特別表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに該特別表示結果とも

前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容

する旨を決定するとともに」は,発明の詳細な説明に記載されていない旨の主張を

する。

しかし,この点の原告の主張も,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本

特許発明4において,
「特別表示結果」と「短期有利表示結果」と「第三表示結果」

とについて「抽選対象役」と解釈すべき記載はない。かえって本件(訂正)明細書

の【0101】
【0113】
【0115】には,
「特別表示結果」に相当する「ボーナ

ス」と「短期有利表示結果」に相当する「チャンス目」との導出が許容されている

ときには,さらに「第三表示結果」に相当する「リーチ目」の導出も許容されるこ

とが記載されている。

したがって,原告の主張は採用の限りではない。

5 まとめ

以上のとおり,原告の主張に係る取消事由には理由がない。原告は,その他縷々

主張するが,いずれも採用の限りではない。よって,原告の請求を棄却することと

して主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官

飯 村 敏 明




裁判官
八 木 貴 美 子




裁判官

小 田 真 治
別紙

本件明細書の図5




本件明細書の図17
本件明細書の図19