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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成22ワ18041特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成24ネ10080特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
平成23ワ21311特許権侵害行為差止等請求事件  判例 特許
平成23ワ8085各損害賠償等請求事件 判例 特許
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事件 平成 23年 (ワ) 3572号 損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2012/11/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年11月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(ワ)第3572号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成24年8月30日

判 決

名古屋市中区<以下略>

原 告 エイディシーテクノロジー株式会社

訴訟代理人弁護士 水 野 健 司

補 佐 人 弁 理 士 衛 藤 寛 啓

東京都港区<以下略>

被 告 株会ソーコピーエタイメト
式社ニ・ンュタンテンン

訴訟代理人弁護士 熊 倉 禎 男

同 飯 田 圭

同 水 沼 淳

訴訟代理人弁理士 中 村 佳 正

補 佐 人 弁 理 士 谷 口 信 行

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成23年2月17日から

支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

本件は,発明の名称を「サーバ,利用者装置,プログラム,及び,指標処

理方法」とする特許第4612747号(以下,この特許を「本件特許1」,




この特許権を「本件特許権1」という。)及び発明の名称を「サーバ,利用

者装置,プログラム,及び,指標処理方法」とする特許第4644735号(以

下,この特許を「本件特許2」,この特許権を「本件特許権2」という。ま

た,本件特許1と本件特許2を併せて「本件各特許」,本件特許権1と本件

特許権2を併せて「本件各特許権」という。)の特許権者である原告が,被

告による別紙物件目録1記載の装置(以下「イ号装置」という。),同目録

2記載の製品(以下「ロ号製品」という。),同目録3記載の製品(以下「ハ

号製品」という。)及び同目録4記載のプログラム(以下「ニ号プログラム」

という。)の使用,製造及び販売が本件各特許権の侵害又は間接侵害(特許

101条1号,2号)に当たる旨主張して,被告に対し,特許権侵害の不

法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の

全趣旨により認められる事実である。)

(1) 当事者

ア 原告は,コンピュータソフトウエア,コンピュータ及びコンピュータ

関連機器の開発及び販売等を目的とする株式会社である。

イ 被告は,コンピュータシステムを利用した娯楽用・教育用電子機器等

の開発,製造,販売等を目的とする株式会社である。

(2) 特許庁における手続の経過等

ア 本件特許権1

(ア) 原告は,平成13年9月18日にした特許出願(特願2001−

283242号。以下「本件原出願」という。)の一部を分割して,

平成22年7月14日,特許出願(特願2010−160000号。

以下「本件出願1」という。)をした。

原告は,平成22年8月27日付け手続補正書(乙19)により,

本件出願1に係る明細書及び特許請求の範囲について補正(以下「本




件補正1」という。)をした。

その後,原告は,同年10月22日,本件出願1について,本件特

許権1の設定登録(請求項の数8)を受けた。

(イ) 原告は,平成22年11月30日,本件特許1の特許請求の範

囲(請求項1及び8)等について誤記の訂正を目的とする訂正審判

求(訂正2010−390119号事件)をした(以下,この訂正審判

請求に係る訂正を「本件訂正1−1」という。)。

特許庁は,同年12月28日,上記訂正審判事件について,「特許

第4612747号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付さ

れた訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。」との審決

をし,同審決は,平成23年1月7日,確定した(甲1ないし4)。

(ウ) 本件特許1について,被告が本件訴訟の係属後の平成23年9月

30日に無効審判請求(無効2011−800189号事件)をした

ところ,原告は,同年12月26日,本件特許1の特許請求の範囲(請

求項8)の減縮等を目的とする訂正請求(以下,この訂正請求に係る

訂正を「本件訂正1−2」という。)をした(甲24)。

特許庁は,平成24年3月30日,上記無効審判事件について,本

件訂正1−2を認めた上で,「特許第4612747号の請求項2な

いし8に係る発明についての特許を無効とする。特許第461274

7号の請求項1に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」

との審決(以下「別件審決1」という。)をした(乙63)。

原告は,同年4月28日,別件審決1のうち,「特許第46127

47号の請求項2ないし8に係る発明についての特許を無効とする。」

との部分の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成2

4年(行ケ)第10154号事件)を提起し,被告は,同年5月2日,

別件審決1のうち,「特許第4612747号の請求項1に係る発明




についての審判請求は,成り立たない。」との部分の取消しを求める

審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10162

号事件)を提起し,これらの訴訟は,現在知的財産高等裁判所に係属

中である(甲44,弁論の全趣旨)。

イ 本件特許権2

(ア) 原告は,本件原出願の一部を分割して,平成20年12月19日,

特許出願(特願2008−324143号。以下「本件出願2」とい

う。)をした。

原告は,本件出願2に係る明細書及び特許請求の範囲について,平

成21年1月21日付け手続補正書(乙22)により補正をし,さら

に,平成22年11月5日付け手続補正書(乙26)により補正(以

下「本件補正2」という。)をした。

その後,原告は,同年12月10日,本件出願2について,本件特

許権2の設定登録(請求項の数10)を受けた。

(イ) 本件特許2について,被告が本件訴訟の係属後の平成23年9月

30日に無効審判請求(無効2011−800190号事件)をした

ところ,原告は,同年12月26日,本件特許2の特許請求の範囲(請

求項10)の減縮等を目的とする訂正請求(以下,この訂正請求に係

る訂正を「本件訂正2」という。)をした(甲26)。

特許庁は,平成24年3月30日,上記無効審判事件について,本

件訂正2を認めた上で,「特許第4644735号の請求項2ないし

10に係る発明についての特許を無効とする。特許第4644735

号の請求項1に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」と

の審決(以下「別件審決2」という。)をした(乙64)。

原告は,同年4月28日,別件審決2のうち,「特許第46447

35号の請求項2ないし10に係る発明についての特許を無効とす




る。」との部分の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所

平成24年(行ケ)第10155号事件)を提起し,被告は,同年5

月2日,別件審決2のうち,「特許第4644735号の請求項1に

係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分の取消し

を求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第1

0163号事件)を提起し,これらの訴訟は,現在知的財産高等裁判

所に係属中である(甲48,弁論の全趣旨)。

(3) 発明の内容

ア 本件特許1

(ア) 本件訂正1−1後の本件特許1の特許請求の範囲は,請求項1な

いし8から成り,その請求項1,4ないし7の記載は,次のとおりで

ある(以下,本件訂正1−1後の請求項1に係る発明を「本件発明1

−1」,同請求項4に係る発明を「本件発明1−4」などという。)。

「【請求項1】 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置が

用いられて視聴されている番組であって放送中の番組を特定可能な

情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する視

聴番組状況受信手段と,前記利用者装置において録画予約されてい

る番組を特定可能な情報である録画予約状況情報を,複数の前記利

用者装置から受信する録画予約番組状況受信手段と,前記視聴番組

状況受信手段により受信された各利用者装置の前記視聴状況情報に

基づいて,現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指

標を算出する視聴指標算出手段と,前記録画予約番組状況受信手段

により受信された各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づい

て,番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標を算出する

録画予約指標算出手段と,前記利用者装置によって表示される番組

表上の番組に対応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記




録画予約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指

標と前記録画予約指標とを送信する指標送信手段と,を備えること

を特徴とするサーバ。」

「【請求項4】 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置で

あって,放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定可能

な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況情報送信手

段と,録画予約されている番組を特定可能な情報である録画予約状

況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信手段と,各利

用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバにおいて算出さ

れた現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指標と,

各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づいて算出された番組の

録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標とを受信する指標受信

手段と,前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組に

対応づけて表示可能なよう構成された番組表データをサーバから受

信する番組表データ受信手段と,前記視聴指標,前記録画予約指標,

及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約

指標とが番組表上の番組に対応づけられた番組表であって,現在放

送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを含む番

組表を出力する出力手段と,を備えることを特徴とする利用者装

置。」

「【請求項5】 請求項4に記載の利用者装置において,前記出力手

段は,現在視聴されている番組と同時に一画面において視聴者が視

聴可能なよう前記視聴指標,前記録画予約指標及び前記番組表を出

力すること,を特徴とする利用者装置。」

「【請求項6】 番組の視聴操作及び録画予約が可能なコンピュータ

である利用者装置に実行させるためのプログラムであって,放送中




の番組であって現在視聴されている番組を特定可能な情報である視

聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況情報送信ステップと,録画

予約されている番組を特定可能な情報である録画予約状況情報を前

記サーバへ送信する録画予約状況情報送信ステップと,各利用者装

置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバにおいて算出された現

在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指標と,各利用

者装置の前記録画予約状況情報に基づいて算出された番組の録画予

約数の多少を把握可能な録画予約指標とを前記サーバから受信する

指標受信ステップと,前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組

表上の番組に対応づけて表示可能なよう構成された番組表データを

サーバから受信する番組表データ受信ステップと,前記視聴指標,

前記録画予約指標,及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴

指標と前記録画予約指標とが番組表上の番組に対応づけられた番組

表であって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画

予約指標とを含む番組表を出力する出力ステップと,を前記利用者

装置に実行させるプログラム。」

「【請求項7】 請求項6に記載のプログラムにおいて,前記出力ス

テップは,現在視聴されている番組と同時に一画面において視聴者

が視聴可能なよう前記視聴指標,前記録画予約指標及び前記番組表

を出力すること,を特徴とするプログラム。」

(イ) 本件発明1−1,1−4ないし1−7を構成要件に分説すると,

次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件1−1A」,「構成

要件1−1B」などという。)。

a 本件発明1−1

1−1A 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置が用い

られて視聴されている番組であって放送中の番組を特定可




能な情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装置か

ら受信する視聴番組状況受信手段と,

1−1B 前記利用者装置において録画予約されている番組を特定

可能な情報である録画予約状況情報を,複数の前記利用者

装置から受信する録画予約番組状況受信手段と,

1−1C 前記視聴番組状況受信手段により受信された各利用者装

置の前記視聴状況情報に基づいて,現在放送中の番組の視

聴者数の多少を把握可能な視聴指標を算出する視聴指標算

出手段と,

1−1D 前記録画予約番組状況受信手段により受信された各利用

者装置の前記録画予約状況情報に基づいて,番組の録画予

約数の多少を把握可能な録画予約指標を算出する録画予約

指標算出手段と,

1−1E 前記利用者装置によって表示される番組表上の番組に対

応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記録画予

約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴

指標と前記録画予約指標とを送信する指標送信手段と,

1−1F を備えることを特徴とするサーバ。

b 本件発明1−4

1−4A 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置であっ

て,

1−4B 放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定可

能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況

情報送信手段と,

1−4C 録画予約されている番組を特定可能な情報である録画予

約状況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信




手段と,

1−4D 各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を

把握可能な視聴指標と,各利用者装置の前記録画予約状況

情報に基づいて算出された番組の録画予約数の多少を把握

可能な録画予約指標とを受信する指標受信手段と,

1−4E 前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組

に対応づけて表示可能なよう構成された番組表データをサ

ーバから受信する番組表データ受信手段と,

1−4F 前記視聴指標,前記録画予約指標,及び,前記番組表デ

ータに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約指標とが番

組表上の番組に対応づけられた番組表であって,現在放送

中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを

含む番組表を出力する出力手段と,

1−4G を備えることを特徴とする利用者装置。

c 本件発明1−5

1−5A 請求項4に記載の利用者装置において,

1−5B 前記出力手段は,現在視聴されている番組と同時に一画

面において視聴者が視聴可能なよう前記視聴指標,前記録

画予約指標及び前記番組表を出力すること,

1−5C を特徴とする利用者装置。

d 本件発明1−6

1−6A 番組の視聴操作及び録画予約が可能なコンピュータであ

る利用者装置に実行させるためのプログラムであって,

1−6B 放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定可

能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況




情報送信ステップと,

1−6C 録画予約されている番組を特定可能な情報である録画予

約状況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信

ステップと,

1−6D 各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を

把握可能な視聴指標と,各利用者装置の前記録画予約状況

情報に基づいて算出された番組の録画予約数の多少を把握

可能な録画予約指標とを前記サーバから受信する指標受信

ステップと,

1−6E 前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組

に対応づけて表示可能なよう構成された番組表データをサ

ーバから受信する番組表データ受信ステップと,

1−6F 前記視聴指標,前記録画予約指標,及び,前記番組表デ

ータに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約指標とが番

組表上の番組に対応づけられた番組表であって,現在放送

中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを

含む番組表を出力する出力ステップと,

1−6G を前記利用者装置に実行させるプログラム。

e 本件発明1−7

1−7A 請求項6に記載のプログラムにおいて,

1−7B 前記出力ステップは,現在視聴されている番組と同時に

一画面において視聴者が視聴可能なよう前記視聴指標,前

記録画予約指標及び前記番組表を出力すること,

1−7C を特徴とするプログラム。

イ 本件特許2




(ア) 本件特許2の設定登録時の特許請求の範囲は,請求項1ないし1

0から成り,その請求項1,4ないし9の記載は,次のとおりである(以

下,設定登録時の請求項1に係る発明を「本件発明2−1」,同請求

項4に係る発明を「本件発明2−4」などという。)。

「【請求項1】 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置が

用いられて視聴されている番組であって放送中の番組を特定可能な

情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する視

聴状況情報受信手段と,前記利用者装置において録画予約されてい

る番組を特定可能な情報である録画予約状況情報を,複数の前記利

用者装置から受信する録画予約状況情報受信手段と,前記視聴状況

情報受信手段により受信された各利用者装置の前記視聴状況情報に

基づいて,現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指

標を算出する視聴指標算出手段と,前記録画予約状況情報受信手段

により受信された各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づい

て,番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標を算出する

録画予約指標算出手段と,地域を特定可能な情報である地域特定情

報を,前記利用者装置から受信する地域特定情報受信手段と,前記

利用者装置によって表示される番組表上の番組に対応づけられて表

示されるための前記視聴指標と前記録画予約指標とであって,前記

地域特定情報受信手段により受信された前記地域特定情報に基づき

特定される地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標

と前記録画予約指標とを,前記地域特定情報を送信してきた前記利

用者装置へ送信する指標送信手段と,を備えることを特徴とするサ

ーバ。」

「【請求項4】 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置

であって,放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定




可能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況情報

送信手段と,録画予約されている番組を特定可能な情報である録

画予約状況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信手

段と,利用者からの操作を受け付ける受付手段と,前記受付手段

を介して利用者により指定された地域を特定可能な情報である地

域特定情報を,前記サーバへ送信する地域特定情報送信手段と,

各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバにおいて

算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴

指標と,各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づいて算出さ

れた番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標とを受信

する指標受信手段と,前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番

組表上の番組に対応づけて表示可能なよう構成された番組表デー

タをサーバから受信する番組表データ受信手段と,受信された前

記視聴指標と前記録画予約指標とが番組表上の番組に対応づけら

れた番組表であって,前記地域特定情報送信手段により送信され

た前記地域特定情報に対応する地域において現在放送中の番組に

対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを含む番組表を出力

する出力手段と,を備えることを特徴とする利用者装置。」

「【請求項5】 請求項4に記載の利用者装置において,前記出力

手段は,放送されている番組の映像も出力することができ,利用

者により現在視聴されている番組の映像と同時に一画面において

利用者が視聴可能なよう前記番組表を出力すること,を特徴とす

る利用者装置。」

「【請求項6】 請求項5に記載の利用者装置において,利用者に

より現在視聴されている番組の映像と同時に出力されている前記

番組表上で,その視聴されている番組と異なるチャンネルの番組




が前記受付手段を介して利用者により選択されると,その選択さ

れた番組のチャンネルに切り替えて前記出力手段に番組の映像を

出力させるチャンネル切替手段をさらに備えること,を特徴とす

る利用者装置。」

「【請求項7】 番組の視聴操作及び録画予約が可能なコンピュー

タである利用者装置に,放送中の番組であって現在視聴されてい

る番組を特定可能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する

視聴状況情報送信ステップと,録画予約されている番組を特定可

能な情報である録画予約状況情報を前記サーバへ送信する録画予

約状況情報送信ステップと,利用者からの操作を受け付ける受付

手段を介して利用者により指定された地域を特定可能な情報であ

る地域特定情報を,前記サーバへ送信する地域特定情報送信ステ

ップと,各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可

能な視聴指標と,各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づい

て算出された番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標

とを前記サーバから受信する指標受信ステップと,前記視聴指標

と前記録画予約指標とが,番組表上の番組に対応づけて表示可能

なよう構成された番組表データをサーバから受信する番組表デー

タ受信ステップと,前記視聴指標,前記録画予約指標,及び,前

記番組表データに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約指標と

が番組表上の番組に対応づけられた番組表であって,前記地域特

定情報送信ステップにより送信された前記地域特定情報に対応す

る地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記

録画予約指標とを含む番組表を出力する出力ステップと,を実行

させることを特徴とするプログラム。」




「【請求項8】 請求項7に記載のプログラムにおいて,前記出力

ステップは,現在視聴されている番組の映像と同時に一画面にお

いて視聴者が視聴可能なよう前記視聴指標と前記録画予約指標と

を含む前記番組表を出力すること,を特徴とするプログラム。」

「【請求項9】 請求項8に記載のプログラムにおいて,利用者に

より現在視聴されている番組の映像と同時に出力されている前記

番組表上で,その視聴されている番組と異なるチャンネルの番組

が前記受付手段を介して利用者により選択されると,その選択さ

れた番組のチャンネルへ切り替える指令を,チャンネルを切り替

える機能を有するチャンネル切替手段へ出力するチャンネル切替

ステップを,さらに前記利用者装置に実行させることを特徴とす

るプログラム。」

(イ) 本件発明2−1,2−4ないし2−9を構成要件に分説すると,

次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件2−1A」,「構成

要件2−1B」などという。)。

a 本件発明2−1

2−1A 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置が用い

られて視聴されている番組であって放送中の番組を特定可

能な情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装置か

ら受信する視聴状況情報受信手段と,

2−1B 前記利用者装置において録画予約されている番組を特定

可能な情報である録画予約状況情報を,複数の前記利用者

装置から受信する録画予約状況情報受信手段と,

2−1C 前記視聴状況情報受信手段により受信された各利用者装

置の前記視聴状況情報に基づいて,現在放送中の番組の視

聴者数の多少を把握可能な視聴指標を算出する視聴指標算




出手段と,

2−1D 前記録画予約状況情報受信手段により受信された各利用

者装置の前記録画予約状況情報に基づいて,番組の録画予

約数の多少を把握可能な録画予約指標を算出する録画予約

指標算出手段と,

2−1E 地域を特定可能な情報である地域特定情報を,前記利用

者装置から受信する地域特定情報受信手段と,

2−1F 前記利用者装置によって表示される番組表上の番組に対

応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記録画予

約指標とであって,前記地域特定情報受信手段により受信

された前記地域特定情報に基づき特定される地域において

現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約

指標とを,前記地域特定情報を送信してきた前記利用者装

置へ送信する指標送信手段と,

2−1G を備えることを特徴とするサーバ。

b 本件発明2−4

2−4A 番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置であっ

て,

2−4B 放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定可

能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況

情報送信手段と,

2−4C 録画予約されている番組を特定可能な情報である録画予

約状況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信

手段と,

2−4D 利用者からの操作を受け付ける受付手段と,

2−4E 前記受付手段を介して利用者により指定された地域を特




定可能な情報である地域特定情報を,前記サーバへ送信す

る地域特定情報送信手段と,

2−4F 各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を

把握可能な視聴指標と,各利用者装置の前記録画予約状況

情報に基づいて算出された番組の録画予約数の多少を把握

可能な録画予約指標とを受信する指標受信手段と,

2−4G 前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組

に対応づけて表示可能なよう構成された番組表データをサ

ーバから受信する番組表データ受信手段と,

2−4H 受信された前記視聴指標と前記録画予約指標とが番組表

上の番組に対応づけられた番組表であって,前記地域特定

情報送信手段により送信された前記地域特定情報に対応す

る地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標

と前記録画予約指標とを含む番組表を出力する出力手段

と,

2−4I を備えることを特徴とする利用者装置。

c 本件発明2−5

2−5A 請求項4に記載の利用者装置において,

2−5B 前記出力手段は,放送されている番組の映像も出力する

ことができ,利用者により現在視聴されている番組の映像

と同時に一画面において利用者が視聴可能なよう前記番組

表を出力すること,

2−5C を特徴とする利用者装置。

d 本件発明2−6

2−6A 請求項5に記載の利用者装置において,




2−6B 利用者により現在視聴されている番組の映像と同時に出

力されている前記番組表上で,その視聴されている番組と

異なるチャンネルの番組が前記受付手段を介して利用者に

より選択されると,その選択された番組のチャンネルに切

り替えて前記出力手段に番組の映像を出力させるチャンネ

ル切替手段をさらに備えること,

2−6C を特徴とする利用者装置。

e 本件発明2−7

2−7A 番組の視聴操作及び録画予約が可能なコンピュータであ

る利用者装置に,

2−7B 放送中の番組であって現在視聴されている番組を特定可

能な情報である視聴状況情報をサーバへ送信する視聴状況

情報送信ステップと,

2−7C 録画予約されている番組を特定可能な情報である録画予

約状況情報を前記サーバへ送信する録画予約状況情報送信

ステップと,

2−7D 利用者からの操作を受け付ける受付手段を介して利用者

により指定された地域を特定可能な情報である地域特定情

報を,前記サーバへ送信する地域特定情報送信ステップと,

2−7E 各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を

把握可能な視聴指標と,各利用者装置の前記録画予約状況

情報に基づいて算出された番組の録画予約数の多少を把握

可能な録画予約指標とを前記サーバから受信する指標受信

ステップと,

2−7F 前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組




に対応づけて表示可能なよう構成された番組表データをサ

ーバから受信する番組表データ受信ステップと,

2−7G 前記視聴指標,前記録画予約指標,及び,前記番組表デ

ータに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約指標とが番

組表上の番組に対応づけられた番組表であって,前記地域

特定情報送信ステップにより送信された前記地域特定情報

に対応する地域において現在放送中の番組に対応する前記

視聴指標と前記録画予約指標とを含む番組表を出力する出

力ステップと,

2−7H を実行させることを特徴とするプログラム。

f 本件発明2−8

2−8A 請求項7に記載のプログラムにおいて,

2−8B 前記出力ステップは,現在視聴されている番組の映像と

同時に一画面において視聴者が視聴可能なよう前記視聴指

標と前記録画予約指標とを含む前記番組表を出力するこ

と,

2−8C を特徴とするプログラム。

g 本件発明2−9

2−9A 請求項8に記載のプログラムにおいて,

2−9B 利用者により現在視聴されている番組の映像と同時に出

力されている前記番組表上で,その視聴されている番組と

異なるチャンネルの番組が前記受付手段を介して利用者に

より選択されると,その選択された番組のチャンネルへ切

り替える指令を,チャンネルを切り替える機能を有するチ

ャンネル切替手段へ出力するチャンネル切替ステップを,

さらに前記利用者装置に実行させること




2−9C を特徴とするプログラム。

(4) 被告の行為等

ア(ア) 被告は,平成22年3月ころから,ロ号製品及びハ号製品(ニ号

プログラムを記憶したディスクを同梱したもの。以下同じ。)を製造

し,販売し,販売の申出をしている。

(イ) 被告は,遅くとも平成22年3月ころから,ハ号製品のサービス

を提供するためにイ号装置を使用している。

イ(ア) イ号装置は,被告の管理するネットワークである「PSN(プレ

イステーションネットワーク)」(以下「PSN」という。)におけ

るマッチングサーバ「Matching2」(以下「本件マッチング

サーバ」という。)と同ストレージサーバ「Title User S

torage(TUS)」(以下「本件ストレージサーバ」という。)

とで構成されている。

ロ号製品は,ゲーム機「プレイステーション3」(以下「PS3」

という。)とハ号製品であるPS3専用地上デジタルレコーダーキッ

ト「torne(トルネ)」(以下「トルネ」という。)とのセット

製品である。

トルネ(ハ号製品) PS3専用地上波デジタル放送用チューナ
は, (以

下「トルネ本体」という場合がある。)と視聴・録画アプリケーショ

ンプログラム(ニ号プログラム)とで構成されている(甲9の1)。

(イ) 別紙概念図に示すように,ニ号プログラムがインストールされた

PS3を,地上波デジタル放送アンテナに接続したトルネ本体と,P

SNに接続することにより,地上波デジタル放送番組の視聴や録画の

ほかに,トルネで番組の録画予約をした者の人数(以下「トル情報」

という。),トルネで現在放送中の番組を視聴している者の人数(以

下「ミル情報」という。また,「トル情報」と「ミル情報」を併せて「ト




ルミル情報」という場合がある。)をテレビ画面上で表示する機能な

どの各種機能が実現できる(甲7,8の1,2,9の1ないし5,1

0)。

「ミル情報」の算出・送受信等の処理の概要は別紙1に,「トル情

報」の算出・送受信等の処理の概要は別紙2にそれぞれ記載のとおり

である(乙42,55)。

ウ(ア) イ号装置は,構成要件1−1A,1−1B,2−1A,2−1B

及び2−1Eを充足する。

(イ) ロ号製品は,構成要件1−4Aないし1−4C,2−4Aないし

2−4Eを充足する。

(ウ) ニ号プログラムは,構成要件1−6Aないし1−6C,2−7A

ないし2−7Dを充足する。

3 争点

本件の争点は,次のとおりである。

(1) 本件発明1−1,1−4ないし1−7,2−1,2−4ないし2−9(以

下「本件各発明」と総称する。)の技術的範囲の属否(争点1)

ア イ号装置又はイ号装置及びロ号製品の本件発明1−1の技術的範囲

属否(争点1−(1))

イ ロ号製品の本件発明1−4の技術的範囲の属否(争点1−(2))

ウ ロ号製品の本件発明1−5の技術的範囲の属否(争点1−(3))

エ ニ号プログラムの本件発明1−6の技術的範囲の属否(争点1−(4))

オ ニ号プログラムの本件発明1−7の技術的範囲の属否(争点1−(5))

カ イ号装置又はイ号装置及びロ号製品の本件発明2−1の技術的範囲

属否(争点1−(6))

キ ロ号製品の本件発明2−4の技術的範囲の属否(争点1−(7))

ク ロ号製品の本件発明2−5の技術的範囲の属否(争点1−(8))




ケ ロ号製品の本件発明2−6の技術的範囲の属否(争点1−(9))

コ ニ号プログラムの本件発明2−7の技術的範囲の属否(争点1−(10))

サ ニ号プログラムの本件発明2−8の技術的範囲の属否(争点1−(11))

シ ニ号プログラムの本件発明2−9の技術的範囲の属否(争点1−(12))

(2) 被告によるハ号製品の製造等についての本件発明1−4,1−5に係る

本件特許権1及び本件発明2−4ないし2−6に係る本件特許権2の間接

侵害(特許法101条1号,2号)の成否(争点2)

(3) 特許法104条の3第1項に基づく本件各特許権の権利行使制限の成

否(争点3)

(4) 被告が賠償すべき原告の損害額(争点4)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(本件各発明の技術的範囲の属否)について

(1) 本件発明1−1の技術的範囲の属否(争点1−(1))について

ア 原告の主張

(ア) イ号装置の構成について

イ号装置は,次のような構成を備えている。

a イ号装置は,ユーザーが保有する複数のロ号製品から,「トルミ

ル情報」を算出する基礎となる視聴情報,録画予約情報及び当該ロ

号製品の利用に関する情報を個人を特定しない形で受信する(甲1

0の写真13,14)。

b イ号装置は,受信した視聴情報及び録画予約情報から,「現在放

送されている番組を他のユーザーがどのくらい視聴しているか」に

関する情報(ミル情報)及び「これから放送される番組を,他のユ

ーザーがどのくらい録画予約しているか」に関する情報(トル情報)

を「トルミル情報」として算出する(甲10の写真4ないし7,1

2)。




c イ号装置は,算出した「トルミル情報」を,ロ号製品において,

現在放送中の番組を表示する画面と同一の画面内で,現在放送中の

番組ごとに番組表に含めた形で表示できるようにロ号製品へ送信す

る(甲10の写真4ないし7)。

d イ号装置は,ロ号製品からテレビの視聴地域を特定する情報を受

信し,受信したテレビの視聴地域に応じた番組表を送信する(甲1

0の写真4ないし7,15ないし18)。

(イ) 「視聴指標」について

構成要件1−1Cの「視聴指標」とは,「現在放送中の番組の視

聴者数の多少を把握可能な」情報を意味することは,本件特許1の

特許請求の範囲(請求項1)の記載から一義的に明確である。

そして,請求項1には,「視聴指標」を相対値(割合)に限定す

る記載はないから,「視聴指標」には,相対値(割合)のほか,絶

対値(実数)をも包含すると解すべきである。また,絶対値であっ

ても,ユーザーは過去の経験や現在放送されている他の番組の数値

との比較などから視聴者数の多少,すなわち多いか,少ないかを把

握することができるので,「視聴指標」について,絶対値(実数)

を除外し,相対値(割合)に限定解釈すべき理由はない。

さらに,本件特許1に係る本件訂正1−1後の明細書(甲3。以

下,図面(甲2)を含めて「本件明細書1」という。)を参酌する

と,本件明細書1には,「視聴率」を「視聴指標」とした実施例の

記載がある一方で,「本発明」の実施形態が実施例のものに限定さ

れないことが明確に記載されていること(段落【0069】),「番

組を視聴した平均人数」を表示する変形例も記載されており(段落

【0079】),この「番組を視聴した平均人数」は絶対値である

ことからすると,「視聴指標」は,相対値(割合)だけではなく,




絶対値(実数)をも包含することが開示されているといえる。

b イ号装置における「ミル情報」は,「現在放送中の番組の視聴者

数」(絶対値)であり,「ミル情報」から現在放送中の番組につい

て他のユーザーがどのくらい視聴しているかを知ることができるか

ら,構成要件1−1Cの「視聴指標」に該当する。

(ウ) 「録画予約指標」について

構成要件1−1Dの「録画予約指標」とは,「番組の録画予約数

の多少を把握可能な」情報を意味することは,本件特許1の特許請

求の範囲(請求項1)の記載から一義的に明確である。

そして,請求項1には,「録画予約指標」を相対値(割合)に限

定する記載はないから,「録画予約指標」には,相対値(割合)の

ほか,絶対値(実数)をも包含すると解すべきである。

また,本件明細書1を参酌すると,本件明細書1には,「録画率」

を「録画予約指標」とした実施例の記載がある一方で,「本発明」

実施形態が実施例のものに限定されないことが明確に記載されて

いること(段落【0069】)からすると,「録画予約指標」は,

相対値(割合)だけではなく,絶対値(実数)をも包含することが

開示されているといえる。

b イ号装置における「トル情報」は,「これから放送される番組の

録画予約者数」(絶対値)であり,「トル情報」からこれから放送

される番組について他のユーザーがどのくらい録画予約しているか

を知ることができるから,構成要件1−1Dの「録画予約指標」に

該当する。

(エ) 「サーバ」について

a(a) 本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)は,本件発明1−

1の「サーバ」が,「視聴状況情報を,複数の前記利用者装置か




ら受信する視聴番組状況受信手段」(構成要件1−1A)と,「録

画予約状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する録画予約

番組状況受信手段」(構成要件1−1B)と,「視聴指標を算出

する視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)と,「録画予約指

標 を算出する録 画 予 約 指標算出手段」(構成要件1−1D)

と,「前記視聴指標と前記録画予約指標とを送信する指標送信手

段」(構成要件1−1E)とを「備える」(構成要件1−1F)

と規定している。

「サーバ」とは,一般的に「ネットワーク上で他のコンピュー

ターやソフト,すなわちクライアントにサービスを提供するコン

ピューター。 を意味するものであり
」 (広辞苑第五版)(甲16),

ネットワーク上で他のコンピュータにサービス(具体的には情報)

を提供するコンピュータがサーバである。

請求項1は,本件発明1−1の「サーバ」の装置構成について,

例えば,一つの筐体に収納される装置であるとか,あるいは一つ

の処理装置(CPU)で構成される装置であるなどといった限定

を付していない。

次に,本件明細書1を参酌すると,本件明細書1には,本件発

明1−1の「サーバ」の一例である「調査者側装置10」につい

て,「1のコンピュータシステムによって構成されたものを例示

したが,複数のコンピュータシステムで構成されていても よ

い。」(段落【0070】),「調査者側装置10」及び「利用

者側端末20」について,いずれも「インターネットに接続され

る周知のコンピュータシステム」(段落【0028】,【002

9】)であるとの記載があり,また,図1からも「調査者側装置

10」及び「利用者側端末20」は特に構成を異にするものでは




なく,通常のパーソナルコンピュータを想定していることが分か

る。これらの記載によれば,「調査者側装置10」を複数のコン

ピュータシステムで構成する場合,その一つのコンピュータシス

テムが,「利用者側端末20」と同様の周知のコンピュータシス

テムで構成されてもよいことは,当然のこととして本件明細書1

から読み取れるから,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用者

装置」とは別異の構成要素としての「調査者側」の構成要素であ

る必要はない。

(b) 一般的に「サーバ」の文言は,本件原出願の出願時において,

次に述べるとおり,利用者側の端末を含み,複数のコンピュータ

からなる場合を含むものとして理解され,使われていた。

@ 特開平10−207945号公報(甲34)の図2,特開平

10−247177号公報(甲35)の図1には,「サーバ」

の文言は,ネットワーク上の複数のコンピュータから構成され

るものも含むことが開示されている。

また,甲34及び35によれば,本件原出願の出願時,同一

の機能又は異なる機能を有する複数のコンピュータが協働し

てサービスを提供することが周知であったものといえる。

A 「情報システムテクニカルガイド 分散システムのた め

の」(1995年6月30日発行)(甲36)の「(それに対

して,ピア・ツー・ピア・モデルではどのプロセスでも相互作

用を開始することができる)サーバは,他のサーバに要求を発

行することでクライアントになることもありえる。…クライア

ントとサーバは,…同一のマシンで走ることもあれば,別々の

マシンで走ることもある。」(282頁)との記載,特開平1

0−161777号公報(甲37)の段落【0001】,特開




平10−154030号公報(甲38)の段落【0010】,

【0014】,特開平9−138810号公報(甲39)の段

落【0231】,特開平9−51398号公報(甲40)の段

落【0028】,特開平9−73410号公報(甲41)の段

落【0003】には,「サーバ」の文言は,利用者側端末と機

能を兼ねるコンピュータにも使われることが開示されている。

B 特開平9−91220号公報(甲42)の段落【0004】

ないし【0006】,特開平10−149270号公報(甲4

3)の段落【0012】,【0017】には,サーバ機能とク

ライアント機能を兼ねる利用者側コンピュータを「サーバ」と

呼ぶことが開示されている。

(c) 以上を総合すれば,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用

者装置」とは別異の構成要素でなければならないと限定解釈すべ

き理由はなく,この「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が

担ってもよいと解すべきである。

したがって,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を担う「利

用者装置」の端末も,この「サーバ」に該当する。

b(a) イ号装置を構成する本件マッチングサーバは,以下のとお

り,「視聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構成要件1−1

C)を備えた「サーバ」に該当する。

@ Roomの数が1の場合

一つのLobbyの中に一つだけRoomが存在する場合,

そのRoom内のユーザー数を数える(計算する)主体は,R

oomを管理している本件マッチングサーバである。

そして,本件マッチングサーバが算出した視聴者数がそのま

ま(数値操作されることなく),本件マッチングサーバによっ




て各PS3(ロ号製品)にミル情報として提供される。

したがって,Roomの数が1の場合は,ミル情報(視聴者

数)を算出する主体は,本件マッチングサーバにほかならない。

A Roomの数が2以上の場合

ミル情報(視聴者数)は,Lobby内の各Roomのユー

ザー数を合計したものであるが,Lobby内の各Roomの

ユーザー数の算出自体は,本件マッチングサーバが行っている。

このようにRoomの数が2以上の場合であっても,少なく

ともミル情報(視聴者数)を算出するための基礎となる第1段

階の計算を本件マッチングサーバが行っていることからする

と,本件マッチングサーバで算出された各Room内のユーザ

ー数を合算する処理(算出動作)がPS3(ロ号製品)側でさ

れていたとしても,ミル情報(視聴者数)を算出する主体は,

本件マッチングサーバであるといえる。

B クエリーオーナーであるPS3が行うミル情報の算出動作は

本件マッチングサーバが支配管理していること

トルネが接続された複数のPS3(ロ号製品)のうち,いず

れのPS3がクエリーオーナーになるかは,本件マッチングサ

ーバが管理して決定しており,PS3側に選択権はない。

また,クエリーオーナーであるPS3が行うミル情報の算出

動作は,PS3のユーザー(利用者)の関与しない動作であり,

本件マッチングサーバから受け取るデータに基づいて行われる

動作である。

さらに,クエリーオーナーであるPS3が一部関与して算出

したミル情報は,クエリーオーナーであるPS3から本件マッ

チングサーバに渡され,本件マッチングサーバからミル情報と




して各PS3に配信される。

これらを総合的に判断すれば,クエリーオーナーであるPS

3が行うミル情報の算出動作は,本件マッチングサーバが支配

管理しているといえるから,本件マッチングサーバの動作と同

一視することができる。

(b) 仮にイ号装置を構成する本件マッチングサーバが「視聴指標

を算出する視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)を備えてい

ないとしても,クエリーオーナーであるPS3(ロ号製品)は,

本件マッチングサーバで算出された各Room内のユーザー数を

足し合わせ,その数値(視聴者数,すなわちミル情報)を本件マ

ッチングサーバに提供する特別なコンピュータであるから,「視

聴指標を算出する視聴指標算出手段」を備えた「サーバ」に該当

する。

c(a) イ号装置を構成する本件ストーレージサーバは,以下のとお

り,「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要

件1−1D)を備えた「サーバ」に該当する。

すなわち,PS3は,本件ストレージサーバが記憶する特定の

番組の録画予約数を+1した数値に書き換えることを依頼し,一

方,本件ストレージサーバは,その依頼を受け,記憶手段に記憶

している各PS3へ提供するための録画予約数を,+1した数値

に書き換える。本件ストレージサーバは,複数のPS3から依頼

を受ければ,録画予約数を,+1した数値に書き換えることを繰

り返し行い,結果として,ある番組の録画予約数が+2,+3と

いった数値になる。また,本件ストレージサーバに記憶されてい

るデータは,データベース管理システムと呼ばれるプログラムに

よって強固に管理され,当該プログラムに基づいて動作するCP




Uが,データを書き換えてもよいかどうかをアクセス権限やロッ

クの有無などを判断してデータを書き換えている。

したがって,システムを全体的にみれば,トル情報(録画予約

数)の算出主体は,本件ストレージサーバと評価するのが自然で

ある。

(b) 仮にイ号装置を構成する本件ストーレージサーバが「録画予

約指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要件1−1D)

を備えていないとしても,録画予約操作を行ったPS3がトル情

報テーブルにおける該当番組の録画予約数をインクリメント(+

1)し,当該トル情報テーブルを最新のトル情報テーブルとマー

ジし,本件ストレージサーバへ送信する動作は,他の多数のPS

3へ提供されるためのトル情報テーブルを生成して提供する動作

であり,これらの動作を行うPS3(ロ号製品)は,「ネットワ

ーク上で他のコンピューターやソフト,すなわちクライアントに

サービスを提供するコンピューター」にほかならないから,「録

画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」を備えた「サーバ」

に該当する。

(オ) 「番組表」について

構成要件1−1Eの「利用者装置によって表示される番組表上の

番組」中の「番組表」については,本件特許1の特許請求の範囲

定義が規定されていないため,当業者の通常の意味で解釈すべきで

ある。

一般に,「表」とは, 「こみいった事柄を,見やすいように配列

して書き表したもの。「−で示す」「年表ねんぴょう・図表・正誤表」 (甲


16)をいい,ここで縦軸のみで配列されている「年表(ねんぴょ

う)」が例示されているように,必ずしも縦軸及び横軸の2軸で構




成される必要はないものである。

したがって,構成要件1−1Eの「番組表」は,必ずしも2軸で

配列されたものに限定されず,たとえ1軸であっても,見やすいよ

うに配列して書き表したものであれば,これに含まれると解すべき

である。

b ロ号製品は「利用者装置」に該当するところ,ロ号製品において,

トル情報及びミル情報を組み込んで表示する対象は,現在放送中の

番組のタイトルが放送局ごとに横に並べられたものであり(甲10

の写真10等),時間の観点と放送局の観点で選出された番組のタ

イトルが並べられたものである。

また,ロ号製品において,「方向キー下」が押下されると,現在

放送されている番組のタイトル群が一体となって上方向にスクロ

ールされて消えるとともに,現在放送されている番組の次の時間に

放送される番組のタイトル群が一体となって下から現れて表示さ

れた状態になるのであるから(甲8の1の26頁),トル情報及び

ミル情報を組み込んで表示する対象は,時間を縦軸とする複数行か

ら構成された番組表であるといえる。

したがって,ロ号製品においてトル情報及びミル情報とともに表

示される対象は,構成要件1−1Eの「番組表」に該当する。

(カ) 構成要件1−1Cないし1−1Fの充足

a イ号装置が構成要件1−1A及び1−1Bを充足することは,前

記争いのない事実等(4)ウ(ア)のとおりである。

そして,前記(ア)ないし(オ)によれば,イ号装置における「ミル

情報」は「視聴指標」に,「トル情報」は「録画予約指標」に該当

し,イ号装置を構成する本件マッチングサーバにおいては,「利用

者装置」であるPS3(ロ号製品)から受信された「視聴状況情




報」(視聴情報)に基づいてミル情報を算出し,イ号装置を構成す

る本件ストレージサーバにおいては,PS3(ロ号製品)から受信

された「録画予約状況情報」(録画予約情報)に基づいてミル情報

を算出しているといえる。

そうすると,イ号装置を構成する本件マッチングサーバは,「視

聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)を備え

た「サーバ」(構成要件1−1F)に,イ号装置を構成する本件ス

トレージサーバは,「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手

段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)

にそれぞれ該当するといえるから,イ号装置は,構成要件1−1C,

1−1D及び1−1Fを充足する。

また,PS3(ロ号製品)において,トル情報及びミル情報を組

み込んで表示する対象は,構成要件1−1Eの「番組表」に該当し(前

記(オ)),イ号装置は,「番組表上の番組に対応づけられて表示さ

れるための前記視聴指標と前記録画予約指標」をPS3(ロ号製品)

に送信しているといえるから,構成要件1−1Eを充足する。

したがって,イ号装置は,本件発明1−1の構成要件を全て充足

する。

b 仮にイ号装置を構成する本件マッチングサーバが「視聴指標を算

出する視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)を備えていないと

しても,クエリーオーナーであるPS3(ロ号製品)は,「視聴指

標を算出する視聴指標算出手段」を備えた「サーバ」に該当する。

また,同様に,仮にイ号装置を構成する本件ストーレージサーバ

が「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要件

−1D)を備えていないとしても,トル情報テーブルにおける番組

の録画予約数をインクリメントするなどの動作を行うPS3(ロ号




製品)は,「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」を備

えた「サーバ」に該当する。

そして,イ号装置が「視聴状況情報を,複数の前記利用者装置か

ら受信する視聴番組状況受信手段」(構成要件1−1A)と,「録

画予約状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する録画予約番

組状況受信手段」(構成要件1−1B)と,「前記視聴指標と前記

録画予約指標とを送信する指標送信手段」(構成要件1−1E)と

を備える「サーバ」に該当することは前記aのとおりであるから,

イ号装置及びロ号製品は,本件発明1−1の構成要件を全て充足す

るというべきである。

(キ) まとめ

以上によれば,イ号装置又はイ号装置及びロ号製品は,本件発明1

−1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。

イ 被告の主張

(ア) イ号装置の構成に対する認否

a 原告の主張ア(ア)aのうち,ユーザーが保有する複数のPS3(ロ

号製品)から,「ミル情報」を算出する基礎となる視聴情報を本件

マッチングサーバが,「トル情報」を算出する基礎となる録画予約

情報を本件ストレージサーバが,個人を特定しない形で受信するこ

とについては認め,その余は否認する。

b 原告の主張ア(ア)bないしdは,いずれも否認する。

(イ) 「視聴指標」について

a(a) 本件原出願当時の用語の一般的な意義によれば,構成要件

−1Cの「番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指標」におけ

る「多少」とは,「多いことと少ないこと。また,多いか少ない

かの程度。」,「把握」とは,「しっかりと理解すること。」,




また,「指標」とは,「物事の見当をつけるためのめじるし。」

を意味する(広辞苑第五版)(乙16)。また,「多い」及び「少

ない」は相対的な概念であるため,「多少」を「把握」するため

には何らかの基準が必要となるから,「現在放送中の番組の視聴

者数の多少を把握可能な視聴指標」であるためには,視聴率のよ

うに全利用者数・現在の全視聴者数等を基準として現在放送中の

番組の視聴者数が多いのか,少ないのかを把握可能な視聴指標で

あることが必要である。また,構成要件1−1Eには,「前記視

聴指標」が「表示」されるものであることが規定されている。

そうすると,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載

及びその一般的な意義によれば,構成要件1−1Cの「視聴指標」

とは,「その表示自体により全利用者数・現在の全視聴者数等を

基準として現在放送中の番組の視聴者の数が多いのか少ないの

か,ないしどの程度多いのか,少ないのかをしっかりと理解可能

な視聴率その他の目印」を意味すると解するのが相当である。

次に,本件明細書1には,「視聴指標」は,「視聴率」と記載

されている。

さらに,本件特許1の出願経過をみると,本件出願1の願書に

最初に添付した明細書及び図面(乙18。以下,これらを併せて「本

件当初明細書1」という。)には,「番組の視聴者数の多少を把

握可能な視聴指標」との語が一切用いられておらず,本件出願1

の出願当初の特許請求の範囲(請求項1)においても,「調査対

象となる利用者数と前記カウント手段によってカウントされた利

用者の数とに基づいて視聴率を算出する」と記載されているだけ

であったが,構成要件1−1C,1−4D及び1−6Dにおけ

る「番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指標」との各構成要




素は,本件補正1により,構成要件1−1Cについては本件当初

明細書1の「第1実施形態」に係る段落【0040】及び【00

41】の記載,構成要件1−4D及び1−6Dについては本件当

初明細書1の「第2実施形態」に係る段落【0066】の記載を

それぞれ根拠として補正されたものであり,このような本件補正

1の根拠等からみて,新規事項追加の禁止の補正要件(特許法1

7条の2第3項)をも参酌すると,構成要件1−1Cの「視聴指

標」は,上記のとおり解釈するほかない。

以上のとおり,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記

載及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書1の記載及び図

面を参酌し,さらには,本件特許1の出願経過をも参酌すると,

構成要件1−1Cの「視聴指標」は,上記のとおり解釈すべきで

ある。

(b) この点,原告は,本件明細書1の段落【0069】及び【0

079】の記載を指摘して,「視聴指標」が絶対値(実数)をも

包含する旨主張する。

しかし,原告の指摘に係る段落【0069】の記載は,単に他

実施形態の存在可能性を抽象的に示すものにすぎず,何ら他の

実施形態の実在を具体的に示すものではないから,この記載に基

づき,具体的に他の実施形態が実際に存在することを前提として,

それを含み得るようにクレームを拡大解釈することが許されるも

のではない。また,原告の指摘に係る段落【0079】の「番組

を視聴した平均人数」との記載は,「演算により求められた多く

の人数の中間的な値」を意味するものであって,そもそも視聴者

の数の絶対値(実数)とは全く異なるものであるのみならず,段

落【0079】には,「視聴率または録画率以外に,…番組を視




聴 した平均人数などが記載される」旨が明記されている とお

り,「視聴率」に代えて「番組を視聴した平均人数」を記載する

ことを開示も示唆もしておらず,むしろ「視聴率または録画率」

を一切記載しないような態様を排除していることが明らかであ

る。

したがって,原告の上記主張は,失当である。

b 本件マッチングサーバにおける「ミル情報」は,現在放送中の番

組の視聴者数の絶対値であり,「ミル情報」の表示自体によっては,

現在放送中の番組の視聴者の数が多いのか,少ないのか,ないしど

の程度多いのか,少ないのかを,およそ理解することができないか

ら,構成要件1−1Cの「視聴指標」に該当しない。

(ウ) 「録画予約指標」について

構成要件1−1Dの「録画予約指標」とは,前記(イ)a(a)で述

べたところと同様に,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の

記載及びその一般的な意義によれば,「その表示自体により全利用

者数・同一時間帯の全録画予約者数等を基準として番組の録画予約

の数が多いのか,少ないのか,ないしどの程度多いのか,少ないの

かをしっかりと理解可能な録画率その他の目印」を意味すると解す

るのが相当である。

次に,本件明細書1には,「録画予約指標」は,全て「録画率」

と記載されている。

さらに,本件特許1の出願経過をみると,本件当初明細書1に

は,「番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標」との語

が一切用いられておらず,本件出願1の出願当初の特許請求の範

囲(請求項1)においても,「調査対象となる利用者数と前記カウ

ント手段によってカウントされた利用者の数とに基づいて視聴率を




算出する」と記載されているだけであったが,構成要件1−1D,

1−4D及び1−6Dにおける「番組の録画予約数の多少を把握可

能な録画予約指標」との各構成要素は,本件補正1により,構成要

件1−1Dについては本件当初明細書1の「第1実施形態」に係る

段落【0047】及び【0048】の記載,構成要件1−4D及び

1−6Dについては本件当初明細書1の「第2実施形態」に係る段

落【0066】の記載をそれぞれ根拠として補正されたものであり,

このような本件補正1の根拠等からみて,新規事項追加の禁止の補

正要件(特許法17条の2第3項)をも参酌すると,構成要件1−

1Dの「録画予約指標」は,上記のとおり解釈するほかない。

以上のとおり,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載

及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書1の記載及び図面を

参酌し,さらには,本件特許1の出願経過をも参酌すると,構成要

件1−1Dの「録画予約指標」は,上記のとおり解釈すべきである。

この点に関し,原告は,本件明細書1の段落【0069】の記載

を指摘して,「録画予約指標」が絶対値(実数)をも包含する旨主

張するが,前記(イ)a(b)で述べたところと同様に,上記主張は失

当である。

b 本件ストレージサーバにおける「トル情報」は,番組の録画予約

の数の絶対値であり,「トル情報」の表示自体によっては,番組の

録画予約の数が多いのか,少ないのか,ないしどの程度多いのか,

少ないのかを,およそ理解することができないから,構成要件1−

1Dの「録画予約指標」に該当しない。

(エ) 「サーバ」について

a(a) 本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及びその一

般的な意義によれば,構成要件1−1C及び1−1Fにおける「視




聴指標を算出する視聴指標算出手段」を備えた「サーバ」とは,「サ

ーバ自体が計算して求める視聴指標を出す手段を備えること」を

意味し,また,「視聴指標」の算出は,「利用者装置」から受信

される「視聴状況情報」に基づいて行うのであるから,上記「サ

ーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素であると解するの

が相当である。

次に,本件明細書1には,「利用者装置」とは別異の構成要素

である「調査者側」の構成要素としての「サーバ」又はその装置

自体が視聴率を算出していることが開示されており,一方で,「サ

ーバ」が「利用者装置」と同一の構成要素であり得ることや「調

査者側」の構成要素以外の構成要素であり得ることについての記

載も示唆もない。原告が指摘する本件明細書1の段落【0070

】における「調査者側装置10が1のコンピュータシステムによ

って構成されたものを例示したが,複数のコンピュータシステム

で構成されていてもよい。」との記載は,単に「調査者側装置1

0」それ自体に関する記載にすぎない。

さらに,本件特許1の出願経過をみると,本件当初明細書1に

は「利用者側(端末20)」と対置される「調査者側(装置10)」

それ自体において視聴率を算出することしか記載されて おら

ず(段落【0005】,【0012】,【0041】,【006

0】,【0065】,【0066】等),本件特許1の出願当初

の特許請求の範囲(請求項1)においても「前記調査者側に…調

査対象となる利用者数と前記カウント手段によってカウントされ

た利用者の数とに基づいて視聴率を算出する視聴率算出手段とを

備えていることを特徴とする視聴率調査システム」と記載されて

いるだけであったが,構成要件1−1C及び1−1Fにおける「視




聴指標を算出する視聴指標算出手段と,…を備えることを特徴と

するサーバ」,構成要件1−4D及び1−6Dにおける「前記サ

ーバにおいて算出された…視聴指標」との各構成要素は,本件補

正1により,構成要件1−1C及び1−1Fについては本件当初

明細書1の「第1実施形態」に係る段落【0040】及び【00

41】における「利用者側端末20」と対置される「調査者側装

置10」の記載,構成要件1−4D及び1−6Dについては本件

当初明細書1の「第2実施形態」に係る段落【0066】の記載

をそれぞれ根拠として補正されたものであり,このような本件補

正1の根拠等からみて,新規事項の追加禁止の補正要件(特許法

17条の2第3項)をも参酌すると,構成要件1−1C及び1−

1Fにおける「視聴指標を算出する視聴指標算出手段」を備え

た「サーバ」とは,上記のとおり解釈するほかない。

以上のとおり,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記

載及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書1の記載及び図

面を参酌し,さらには,本件特許1の出願経過をも参酌すると,

構成要件1−1C及び1−1Fにおける「視聴指標を算出する視

聴指標算出手段」を備えた「サーバ」とは,上記のとおり解釈す

べきである。

(b) この点に関し,原告は,甲34ないし43を挙げて,一般的

に「サーバ」の文言は,本件原出願の出願時において,利用者側

の端末を含み,複数のコンピュータからなる場合を含むものとし

て理解され,使われていたなどとして,本件発明1−1の「サー

バ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素でなければならない

と限定解釈すべき理由はなく,この「サーバ」の機能の一部を「利

用者装置」が担ってもよい旨主張する。




しかし,原告の指摘に係る甲34ないし43によっては,クラ

イアントサーバモデルにおいて,サーバの機能の一部をクライア

ント自身にも分担させる具体的な技術それ自体が本件原出願時の

周知技術あるいは当業者の技術常識であったことは立証されてお

らず,せいぜい本件原出願時の「サーバ」の語それ自体の一般的

な意義としてサーバ機能を有するクライアントをも含み得なくも

ないことぐらいしか立証されていない。

また,仮にクライアントサーバモデルにおいてサーバの機能の

一部をクライアント自身にも分担させる技術が抽象的に本件原出

願の出願時の周知技術あるいは当業者の技術常識であるとした場

合でも,そのような抽象的な周知技術技術常識だけでは,当業

者にとって,本件発明1−1における,複数の利用者装置からの

視聴状況情報・録画予約状況情報の受信,同各情報に基づく視聴

指標・録画予約指標の算出,番組表データへの同各指標の組み込

み,複数の利用者装置への同各指標を組み込んだ番組表データの

送信等という複数の様々な機能について,調査者側装置とそれ以

外の利用者側端末等において,どのように分担・協働して実施

る具体的な手段として実現できるかが,明らかではなく,その試

行錯誤が必須であり,困難であることが当然に認識・理解される。

他方,そのような状況の下,利用者側(端末20)と対置される「調

査者側(装置10)」それ自体において視聴率・録画率を算出す

ることしか記載されていない,本件出願1の出願当初の特許請求

の範囲請請求項1)及び本件当初明細書1により特許出願がされ

たものであることからすると,本件発明1−1においては複数

の「利用者装置」とこれとは別異の「調査者側」の「サーバ」と

からなるモデルについて同「サーバ」による中央集権型のモデル




が意識的に選択・採用されたものであることが明らかである。

したがって,原告の上記主張は,失当である。

b 本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及びその一般的

な意義によれば,構成要件1−1D及び1−1Fにおける「録画予

約指標を算出する録画予約指標算出手段」を備えた「サーバ」と

は,「サーバ自体が計算して求める録画予約指標を出す手段を備え

ること」を意味し,また,「録画予約指標」の算出は,「利用者装

置」から受信される「録画予約状況情報」に基づいて行うのである

から,上記「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素であ

ると解するのが相当である。

次に,本件明細書1には,「利用者装置」とは別異の構成要素で

ある「調査者側」の構成要素としての「サーバ」又はその装置自体

が視聴率を算出していることが開示されており,一方で,「サーバ」

が「利用者装置」と同一の構成要素であり得ることや「調査者側」

の構成要素以外の構成要素であり得ることについての記載も示唆も

ない。

さらに,本件特許1の出願経過をみると,本件当初明細書1に

は,「利用者側(端末20)」と対置される「調査者側(装置10)」

それ自体において録画率を算出することしか記載されておらず(段

落【0016】,【0023】,【0048】,【0061】,【

0065】,【0066】等),本件特許1の出願当初の特許請求

の範囲(請求項1)においても「前記調査者側に…調査対象となる

利用者数と前記カウント手段によってカウントされた利用者の数と

に基づいて視聴率を算出する視聴率算出手段とを備えていることを

特徴とする視聴率調査システム」と記載されているだけであったが,

構成要件1−1D及び1−1Fにおける「録画予約指標を算出する




録画予約指標算出手段と,…を備えることを特徴とするサーバ」,

構成要件1−4D及び1−6Dにおける「各利用者装置の前記録画

予約状況情報に基づいて算出された…録画予約指標」との各構成要

素は,本件補正1により,構成要件1−1D及び1−1Fについて

は本件当初明細書1の「第1実施形態」に係る段落【0047】及

び【0048】における「利用者側端末20」と対置される「調査

者側装置10」の記載,構成要件1−4D及び1−6Dについては

本件当初明細書1の「第2実施形態」に係る段落【0066】の記

載をそれぞれ根拠として補正されたものであり,このような本件補

正1の根拠等からみて,新規事項の追加禁止の補正要件(特許法1

7条の2第3項)をも参酌すると,構成要件1−1C及び1−1F

における「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」を備え

た「サーバ」とは,上記のとおり解釈するほかない。

以上のとおり,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載

及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書1の記載及び図面を

参酌し,さらには,本件特許1の出願経過をも参酌すると,構成要

件1−1C及び1−1Fにおける「録画予約指標を算出する録画予

約指標算出手段」を備えた「サーバ」とは,上記のとおり解釈すべ

きである。

c 別紙1記載のとおり,「ミル情報」の算出は,本件マッチングサ

ーバにおいては行われておらず,所定のPS3においてニ号プログ

ラムの実行により行われている。

すなわち,本件マッチングサーバにおけるRoomの数が1の場

合も,2以上の場合も,「ミル情報」を算出するための基礎となる

Room内のユーザー数は格別,このようなRoom内の「ユーザ

ー数の合算値」としての「ミル情報」それ自体は,本件マッチング




サーバにおいて算出されるものではなく,クエリーオーナー及びル

ームオーナーであるPS3において算出される。本件マッチングサ

ーバにおけるRoomの数が1の場合には,クエリーオーナーであ

るPS3は,2以上の場合と同一のコードにより,他のRoomの

ユーザー数がないものとして,加算処理することにより,「ミル情

報」を算出するものであるから,やはり,「ミル情報」それ自体が,

本件マッチングサーバではなく,クエリーオーナーであるPS3に

よって算出されることには,何ら変わりはない。

このように「ミル情報」の算出が,本件マッチングサーバではな

く,所定のPS3において本件プログラムの実行により行われるよ

うにしたことは,PSNのオンラインゲームで既に導入されていた

マッチングの仕組みを利用することができ,ユーザーの数が増えた

場合でも本件マッチングサーバにかかる負荷の増加を小さくするこ

とができ,トルネのソフトウェア・アップデートが行われた場合に

新旧バージョンごとにRoomを設定すればよいのでソフトウェア

・アップデートに柔軟に対応できるなどという独自の技術的意義

有するものである。また,本件マッチングサーバは,「ネットワー

クに接続された複数のユーザー間でセッションを作成し,ユーザー

間のメッセージングや情報共有を行うための機能を提供する。例え

ば,オンライン対戦ゲームにおける対戦相手探し(マッチング)や

チャット機能などで主に利用される」ものであり,もともと,「ミ

ル数」の集計を目的としたサーバではなく,各Room内の各ユー

ザー数を合算する機能を具備していないものである。

したがって,イ号装置を構成する本件マッチングサーバは,「視

聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)を備え

た「サーバ」(構成要件1−1F)に該当しない。




また,前記aのとおり,上記「サーバ」は,「利用者装置」とは

別異の構成要素であると解すべきであるから,「利用者装置」であ

るPS3(ロ号製品)は,上記「サーバ」に該当しない。

d 別紙2記載のとおり,「トル情報」の算出は,本件ストレージサ

ーバにおいては行われておらず,各PS3においてニ号プログラム

の実行により行われている。

すなわち,録画予約処理の際,「トル情報テーブル」中の録画予

約対象番組の録画予約数をインクリメントするのは,録画予約処理

を行うPS3自身であって,本件ストレージサーバではなく,この

ようにインクリメントされる「トル情報テーブル」中の録画予約対

象番組の録画予約数それ自体が「トル情報」それ自体である か

ら,「トル情報」の算出主体は,本件ストレージサーバではなく,

録画予約処理を行うPS3自身であることが明らかである。なお,

本件ストレージサーバは,あるPS3においてトル情報の更新が行

われている際には,「トル情報テーブル」をロックし,他のPS3

においてトル情報の更新を行うことができないように構成されてい

るため,本件ストレージサーバにおいて複数のPS3による録画予

約数のインクリメント分の合算を行う必要はない。

このように「トル情報」の算出が,本件ストレージサーバではな

く,各PS3において本件プログラムの実行により行われるように

したことは,PSNのオンラインゲームで既に導入されていたスト

レージの仕組みを利用することができ,ユーザーの数が増えた場合

でも本件ストレージサーバにかかる負荷の増加を小さくすることが

できるなどという独自の技術的意義を有するものである。また,本

件ストレージサーバは,「ネットワーク上にデータを保存するため

のネットワークストレージ機能を提供する」ものであり,もとも




と,「トル数」の集計を目的としたサーバではなく,録画予約数を

合算する機能を具備していないものである。

したがって,イ号装置を構成する本件ストレージサーバは,「録

画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要件1−1D)

を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)に該当しない。

また,前記bのとおり,上記「サーバ」は,「利用者装置」とは

別異の構成要素であると解すべきであるから,「利用者装置」であ

るPS3(ロ号製品)は,上記「サーバ」に該当しない。

(オ) 「番組表」について

a 一般に,「番組表」とは,「放送番組を,各放送局(チャンネル)

と放送時間とによって表としてまとめたもの。」,「表」とは,「こ

みいった事柄を,見やすいように配列して書きあらわしたも

の。」,「配列」とは,「ならべつらねること。順序よくならべる

こと。また,そのならび。」との各意義を有する(乙15,16)

そうすると,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及

びその一般的な意義によれば,構成要件1−1Eの「利用者装置に

よって表示される番組表」とは,「放送番組を各放送局(チャンネ

ル)と放送時間とによって並べ連ねたものとしてまとめたもの」を

意味すると解するのが相当である。

そして,この「放送番組」とは,番組の放送の単なる先後関係を

超えて,番組の放送時刻から終了時刻までの一定の時間すなわち放

送時間帯を意味する。

次に,本件明細書1には,このような各放送局(チャンネル)と

放送時間との2軸で構成されるという「番組表」の語の一般的な意

義をより具体化ないし詳細化するような記載こそあれ,これと別異

の記載は一切ない。




さらに,本件特許1の出願経過をみると,本件当初明細書1には,

番組表として具体的には「放送番組を各放送局(チャンネル)と放

送時間とによって並べ連ねたものとしてまとめたもの」しか記載さ

れておらず(段落【0002】,【0003】,【0004】,【

0008】 【0019】,【0031】,【0032】,図3(b)
, ,

【0064】,【0066】,図5等),本件特許1の出願当初の

特許請求の範囲(請求項1)においても「番組表」と記載されてい

るだけであったが,構成要件1−1Eにおける「番組表上の番組に

対応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記録画予約指

標」,構成要件1−4E,1−4F,1−6E及び1−6Fにおけ

る「前記視聴指標と前記録画予約指標とが,番組表上の番組に対応

づけて表示可能なよう構成された番組表データ」及び「前記視聴指

標と前記録画予約指標とが番組表上の番組に対応づけられた番組

表」との各構成要素は,本件補正1により,構成要件1−1Eにつ

いては本件当初明細書1の「第2実施形態」に係る段落【0063

】ないし【0066】等の記載,構成要件1−4E,1−4F,1

−6E及び1−6Fについては本件当初明細書1の「第2実施形態」

に係る段落【0066】及び図5等の記載をそれぞれ根拠として補

正されたものであり,このような本件補正1の根拠等からみて,新

規事項の追加禁止の補正要件(特許法17条の2第3項)をも参酌

すると,構成要件1−1Eの「番組表」とは,上記のとおり解釈す

るほかない。

以上のとおり,本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)の記載

及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書1の記載及び図面を

参酌し,さらには,本件特許1の出願経過をも参酌すると,構成要

件1−1Eにおける「番組表」とは,上記のとおり解釈すべきであ




る。

b トルネ,PS3及びニ号プログラムにより,その所在地において

受信可能な放送局から放送される放送波からEPGデータが取得さ

れ,そのEPGデータに基づき各放送局(チャンネル)と放送時間

の2軸の通常の電子番組表(EPG)が作成され,同電子番組表が,

テレビ画面に表示され,放送番組の探索・選択・視聴・録画・録画

予約等に供用されている。これとは別に,トルネ,PS3,ニ号プ

ログラム,本件マッチングサーバ及び本件ストレージサーバにおい

て,「ミル」機能及び「トル」機能の実現に当たり,EPGデータ

に基づき「ミル情報」及び「トル情報」を組み込んで作成・表示さ

れる番組リストは,放送時間帯それ自体とは直接関係がない,現在

放送中の番組のリスト,更なるユーザー操作によって表示される各

放送局(チャンネル)ごとに現在放送中の番組から三つ分の番組の

リストとして構成されており,各チャンネル内での各番組の先後関

係は規定されているが,放送時刻という1軸を有しておらず,当該

軸により各チャンネルの各番組の放送時間帯が反映されていないた

め,各チャンネル間での各番組の先後関係は規定されていない。

このように「ミル情報」及び「トル情報」を組み込んで表示する

対象は,EPGのような「放送番組を各放送局(チャンネル)と放

送時間とによって並べ連ねたものとしてまとめたもの」ではない。

したがって,ロ号製品(PS3)においてトル情報及びミル情報

を組み込んで表示する対象が構成要件1−1Eの「番組表」である

との原告の主張は,理由がない。

(カ) 構成要件1−1Cないし1−1Fの非充足

前記(ア)ないし(オ)のとおり,「ミル情報」が構成要件1−1C

の「視聴指標」に,「トル情報」が構成要件1−1Dの「録画予約指




標 」に,本件マッチングサーバが「視聴指標を算出する視聴指標算出

手段」(構成要件1−1C)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)

に,本件ストレージサーバが「録画予約指標を算出する録画予約指標

算出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件1−

1F)に,PS3(ロ号製品)がトル情報及びミル情報を組み込んで

表示する対象が構成要件1−1Eの「番組表」にそれぞれ該当すると

の原告の主張は,いずれも理由がない。

したがって,イ号装置は,本件発明1−1の構成要件1−1Cない

し1−1Fを充足しない。

また,前記(エ)のとおり,構成要件1−1Fの「サーバ」は,「利

用者装置」とは別異の構成要素であり,「利用者装置」であるPS3(ロ

号製品)は,「視聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構成要件

−1C)を備えた「サーバ」及び「録画予約指標を算出する録画予約

指標算出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件

1−1F)に該当しないから,イ号装置及びロ号製品を合わせた構成

も,構成要件1−1Cないし1−1Fを充足しない。

(キ) まとめ

以上によれば,イ号装置又はイ号装置及びロ号製品が本件発明1−

1の技術的範囲に属するとの原告の主張は理由がない。

い。

(2) 本件発明1−4及び1−5の技術的範囲の属否(争点1−(2)及び(3))

について

ア 原告の主張

(ア) ロ号製品の構成について

ロ号製品は,次のような構成を備えている。

a ユーザーは,ロ号製品を操作することでテレビの視聴が可能であ




る。

b ユーザーは,ロ号製品を操作することでテレビ番組の録画予約が

可能である(甲10の写真8ないし10)。

c ロ号製品は,「トルミル情報」を算出する基礎となる視聴情報,

録画予約情報及び当該ロ号製品の利用に関する情報を個人を特定し

ない形でイ号装置に送信する(甲10の写真13,14)。

d ロ号製品は,「現在放送されている番組を他のユーザーがどのく

らい視聴しているか」に関する情報(ミル情報)及び「これから放

送される番組を,他のユーザーがどのくらい録画予約しているか」

に関する情報(トル情報)を「トルミル情報」として受信する(甲

10の写真4ないし7,12)。

e ロ号製品は,イ号装置が算出して送信した「トルミル情報」を放

送中の番組ごとに関連付けて番組表とともに表示可能となる形で受

信する(甲9の2,甲9の4,甲10写真4〜写真7)。

f ロ号製品は,現在放送中の番組を表示する画面と同一の画面内で,

受信した「トルミル情報」を現在放送中の番組ごとに番組表に含め

た形で表示する(甲10の写真4ないし7)。

g ロ号製品は,ユーザーの操作を受け付けることによりテレビの視

聴地域を特定する情報を特定し,その情報をイ号装置へ送信し,そ

のテレビの視聴地域に応じた番組表を受信する(甲10の写真4な

いし7,15ないし18)。

h ロ号製品は,ユーザーの操作を受け付けることで番組表上で番組

の選択が可能であり,番組の選択に応じてチャンネルが変更され

る(甲10の写真4ないし6)。

(イ) 構成要件1−4Dないし1−4Gの充足

ロ号製品が構成要件1−4Aないし1−4Cを充足することは,前




記争いのない事実等(4)ウ(イ)のとおりである。

そして,前記(ア)及び前記(1)アによれば,ロ号製品は,構成要件

−4Dないし1−4Gを充足する。

したがって,ロ号製品は,本件発明1−4の構成要件を全て充足す

る。

(ウ) 構成要件1−5Aないし1−5Cの充足

前記(イ)のとおり,ロ号製品は,本件発明1−4の構成要件を全て

充足するから,構成要件1−5A及び1−5Cを充足する。

そして,前記(ア)fによれば,ロ号製品は,構成要件1−5Bを充

足する。

したがって,ロ号製品は,本件発明1−5の構成要件を全て充足す

る。

(エ) まとめ

以上によれば,ロ号製品は,本件発明1−4及び1−5の構成要件

を全て充足するから,本件発明1−4及び1−5の技術的範囲に属す

る。

イ 被告の主張

(ア) ロ号製品の構成に対する認否

a 原告の主張ア(ア)a,b及びdは,認める。

b 原告の主張ア(ア)cのうち,PS3(ロ号製品)が,「ミル情報」

を算出する基礎となる視聴情報を本件マッチングサーバに,「トル

情報」を算出する基礎となる録画予約情報を本件ストレージサーバ

に,個人を特定しない形で送信することについては認め,その余は

否認する。

c 原告の主張ア(ア)eないしhは,いずれも否認する。

(イ) 構成要件1−4Dないし1−4G,1−5Aないし1−5Cの非




充足

前記(1)イ(カ)によれば,「ミル情報」が構成要件1−4Dの「視聴

指標」に,「トル情報」が構成要件1−4Dの「録画予約指標」に,

本件マッチングサーバが構成要件1−4Dの「サーバ」に,本件スト

レージサーバが構成要件1−4Dの「サーバ」に,PS3(ロ号製品)

がトル情報及びミル情報を組み込んで表示する対象が構成要件1−4

E及び1−4Fの「番組表」にそれぞれ該当するとの原告の主張は,

いずれも理由がない。

また,前記(1)イ(オ)bのとおり,本件マッチングサーバ及び本件ス

トレージサーバにおいては,「ミル」機能及び「トル」機能の実現に

当たり,「番組表データ」を送信(送出)していないから,本件マッ

チングサーバ及び本件ストレージサーバは,構成要件1−4Eの「サ

ーバ」に該当しない。

したがって,ロ号製品は,本件発明1−4の構成要件1−4Dない

し1−4G,本件発明1−5の1−5Aないし1−5Cを充足しない。

(ウ) まとめ

以上によれば,ロ号製品が本件発明1−4及び1−5の技術的範囲

に属するとの原告の主張は,理由がない。

(3) 本件発明1−6及び1−7の技術的範囲の属否(争点1−(4)及び(5))

について

ア 原告の主張

(ア) ニ号プログラムの構成について

ニ号プログラムは,PS3(ロ号製品)にインストールされること

で,ロ号製品における前記(2)ア(ア)の各処理を実行する。

(イ) 構成要件1−6Dないし1−6Gの充足

ニ号プログラムが構成要件1−6Aないし1−6Cを充足すること




は,前記争いのない事実等(4)ウ(ウ)のとおりである。

そして,前記(ア)及び前記(1)アによれば,ニ号プログラムは,構成

要件1−6Dないし1−6Gを充足する。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明1−6の構成要件を全て

充足する。

(ウ) 構成要件1−7Aないし1−7Cの充足

前記(イ)のとおり,ニ号プログラムは,本件発明1−6の構成要件

を全て充足するから,構成要件1−7A及び1−7Cを充足する。

そして,前記(ア)及び前記(2)ア(ア)fによれば,ニ号プログラムは,

構成要件1−7Bを充足する。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明1−7の構成要件を全て

充足する。

(エ) まとめ

以上によれば,ニ号プログラムは,本件発明1−6及び1−7の構

成要件を全て充足するから,本件発明1−6及び1−7の技術的範囲

に属する。

イ 被告の主張

(ア) ニ号プログラムの構成に対する認否

原告の主張アのうち,ニ号プログラムがPS3にインストールされ

ることで実行されるものであることは認めるが,その余は否認する。

(イ) 構成要件1−6Dないし1−6G,1−7Aないし1−7Cの非

充足

前記(1)イ(カ)によれば,「ミル情報」が構成要件1−6Dの「視聴

指標」に,「トル情報」が構成要件1−6Dの「録画予約指標」に,

本件マッチングサーバが構成要件1−6Dの「サーバ」に,本件スト

レージサーバが構成要件1−6Dの「サーバ」(構成要件1−1F)




に,PS3(ロ号製品)がトル情報及びミル情報を組み込んで表示す

る対象が構成要件1−6E及び1−6Fの「番組表」にそれぞれ該当

するとの原告の主張は,いずれも理由がない。

また,前記(1)イ(オ)bのとおり,本件マッチングサーバ及び本件ス

トレージサーバにおいては,「ミル」機能及び「トル」機能の実現に

当たり,「番組表データ」を送信(送出)していないから,本件マッ

チングサーバ及び本件ストレージサーバは,構成要件1−6Eの「サ

ーバ」に該当しない。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明1−6の構成要件1−6

Dないし1−6G,本件発明1−7の1−7Aないし1−7Cを充足

しない。

(ウ) まとめ

以上によれば,ニ号プログラムが本件発明1−6及び1−7の技術

的範囲に属するとの原告の主張は,理由がない。

(4) 本件発明2−1の技術的範囲の属否(争点1−(6))について

ア 原告の主張

(ア) 構成要件2−1C,2−1D,2−1F及び2−1Gの充足

イ号装置が構成要件2−1A,2−1B及び2−1Eを充足するこ

とは,前記争いのない事実等(4)ウ(ア)のとおりである。

そして,前記(1)ア(カ)aと同様の理由により,イ号装置は,構成要

件2−1C,2−1D,2−1F及び2−1Gを充足するから,本件

発明2−1の構成要件を全て充足する。なお,被告は,後記のとおり,

構成要件2−1Fについて,「地域特定情報に基づき特定される地域

と視聴情報及び録画予約指定情報とは対応付けられていないこと」な

どと解釈すべきである旨主張するが,特許請求の範囲の記載に基づか

ないものであり,上記主張は理由がない。




また,仮にイ号装置が「視聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構

成要件2−1C)及び「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手

段」(構成要件2−1D)を備えていないとしても,前記(1)ア(カ)b

と同様の理由により,PS3(ロ号製品)がこれらを備えた「サーバ」

に該当し,イ号装置及びロ号製品は,本件発明2−1の構成要件を全

て充足する。

(イ) まとめ

以上によれば,イ号装置又はイ号装置及びロ号製品は,本件発明2

−1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。

イ 被告の主張

(ア) 構成要件2−1C,2−1D,2−1F及び2−1Gの非充足

a 前記(1)イ(ア)ないし(カ)で述べたのと同様に,「ミル情報」が構

成要件2−1Cの「視聴指標」に,「トル情報」が構成要件2−1

Dの「録画予約指標」に,本件マッチングサーバが「視聴指標を算

出する視聴指標算出手段」(構成要件2−1C)を備えた「サー

バ」(構成要件2−1G)に,本件ストレージサーバが「録画予約

指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要件2−1D)を備

えた「サーバ」(構成要件2−1G)に,PS3(ロ号製品)がト

ル情報及びミル情報を組み込んで表示する対象が構成要件2−1F

の「番組表」にそれぞれ該当するとの原告の主張は,いずれも理由

がない。

なお,前記(1)イ(ア)ないし(カ)中の「本件明細書1」は,「本件

特許2に係る明細書(甲15。以下,図面を含めて「本件明細書2」

という。)」に,「本件当初明細書1」は,「本件出願2の願書に

最初に添付した明細書及び図面(乙21。以下,これらを併せて「本

件当初明細書2」という。)」にそれぞれ読み替える。




b(a) 構成要件2−1Fにおける「前記地域特定情報に基づき特定

される地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と

前記録画予約指標」との記載は,その文言上,「視聴指標」と「録

画予約指標」とが問題とされる「番組」が「地域特定情報に基づ

き特定される地域において現在放送中の」ものであること,及

び,「視聴指標」と「録画予約指標」とが当該「番組」に「対応

する」ものであることは規定しているものの,「視聴指標」と「録

画予約指標」とが「地域特定情報に基づき特定される地域」に対

応付けられたものであることは規定していないことが明らかであ

る。

したがって,構成要件2−1Fの「前記地域特定情報に基づき

特定される地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指

標と前記録画予約指標」とは,「地域特定情報に基づき特定され

る地域と視聴情報及び録画予約指定情報とは対応付けられていな

いこと」を意味すると解するのが相当である。

また,本件明細書2には,「調査者側装置10」から「利用者

側端末20」に「送信」される「番組表」が「利用者側端末20」

から「調査者側装置10」に「要求データ」として「送信」され

る「利用者によりあらかじめ設定された」「地域を示すデータ」

に対応付けられたものであることは開示されているが(段落【0

037】【0038】等),「視聴率」と「録画率」とがこのよ

うな「利用者によりあらかじめ設定された」「地域を示すデータ」

に対応付けられたものであることは一切記載されていない。

さらに,本件当初明細書2には,構成要件2−1F,2−4H

及び2−7Gにおける「地域特定情報」との語が一切用いられて

いなかったところ,構成要件2−1Fにおける「前記地域特定情




報に基づき特定される地域において現在放送中の番組に対応する

前記視聴指標と前記録画予約指標」,構成要件2−4H及び2−

7Gにおける「前記地域特定情報に対応する地域において現在放

送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標」との各

構成要素は,本件補正2により,構成要件2−1Fについては「第

実施形態」に係る本件明細書2の段落【0072】ないし【0

075】の記載,構成要件2−4H及び2−7Gについては「第

実施形態」に係る図5の記載をそれぞれ根拠として補正された

ものであり,このような本件補正2の根拠等からみて,新規事項

の追加禁止の補正要件(特許法17条の2第3項)をも参酌する

と,構成要件2−1Fにおける「前記地域特定情報に基づき特定

される地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と

前記録画予約指標」とは,上記のとおり解釈するほかない。

以上のとおり,本件特許2の特許請求の範囲(請求項1)の記

載及びその一般的な意義に基づいて,本件明細書2の記載及び図

面を参酌し,さらには,本件特許2の出願経過をも参酌すると,

構成要件2−1Fにおける「前記地域特定情報に基づき特定され

る地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記

録画予約指標」とは,上記のとおり解釈すべきである。

(b) 「ミル」機能及び「トル」機能の実現に当たり,本件マッチ

ングサーバ及び本件ストレージサーバからPS3が受信する「ミ

ル情報」及び「トル情報」は,PS3から本件マッチングサーバ

及び本件ストレージサーバへ送信される地域を特定する情報に基

づき特定される地域に対応付けられたものとされているから,構

成要件2−1Fにおける「前記地域特定情報に基づき特定される

地域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録




画予約指標」を充足しない。

c 以上によれば,イ号装置は,本件発明2−1の構成要件2−1C,

2−1D,2−1F及び2−1Gを充足しない。

また,前記(1)イ(エ)のとおり,構成要件2−1Gの「サーバ」

は,「利用者装置」とは別異の構成要素であり,「利用者装置」で

あるPS3(ロ号製品)は,「視聴指標を算出する視聴指標算出手

段」(構成要件2−1C)を備えた「サーバ」(構成要件2−1G)

及び「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段」(構成要件

2−1D)を備えた「サーバ」(構成要件2−1G)に該当しない

から,イ号装置及びロ号製品を合わせ構成も,構成要件2−1C,

2−1D,2−1F及び2−1Gを充足しない。

(イ) まとめ

以上によれば,イ号装置又はイ号装置及びロ号製品が本件発明2−

1の技術的範囲に属するとの原告の主張は理由がない。

い。

(5) 本件発明2−4ないし2−6の技術的範囲の属否(争点1−(7)ないし

(9))について

ア 原告の主張

(ア) 構成要件2−4Fないし2−4Iの充足

ロ号製品が構成要件2−4Aないし2−4Eを充足することは,前

記争いのない事実等(4)ウ(イ)のとおりである。

そして,前記(2)ア(イ)及び(4)ア(ア)と同様の理由により,ロ号製

品は,構成要件2−4Fないし2−4Iを充足するから,本件発明2

−4の構成要件を全て充足する。

(イ) 構成要件2−5Aないし1−5Cの充足

前記(ア)のとおり,ロ号製品は,本件発明2−4の構成要件を全て




充足するから,構成要件2−5A及び2−5Cを充足する。

そして,前記(2)ア(ア)fによれば,ロ号製品は,構成要件2−5B

を充足する。

したがって,ロ号製品は,本件発明2−5の構成要件を全て充足す

る。

(ウ) 構成要件2−6Aないし2−6Cの充足

前記(ア)のとおり,ロ号製品は,本件発明2−5の構成要件を全て

充足するから,構成要件2−6A及び2−6Cを充足する。

そして,前記(2)ア(ア)hによれば,ロ号製品は,構成要件2−6B

を充足する。

したがって,ロ号製品は,本件発明2−6の構成要件を全て充足す

る。

(エ) まとめ

以上によれば,ロ号製品は,本件発明2−4ないし2−6の構成要

件を全て充足するから,本件発明2−4ないし2−6の技術的範囲

属する。

イ 被告の主張

(ア) 構成要件2−4Fないし2−4I,2−5Aないし2−5C,2

−6Aないし2−6Cの非充足

前記(2)イ(イ)で述べたのと同様に,「ミル情報」が構成要件2−4

Fの「視聴指標」に,「トル情報」が構成要件2−4Fの「録画予約

指標」に,本件マッチングサーバが構成要件2−4Fの「サーバ」に,

本件ストレージサーバが構成要件2−4Fの「サーバ」に,PS3(ロ

号製品)がトル情報及びミル情報を組み込んで表示する対象が構成要

件2−4G及び2−4Hの「番組表」にそれぞれ該当するとの原告の

主張は,いずれも理由がない。




また,前記(2)イ(イ)で述べたのと同様に,本件マッチングサーバ及

び本件ストレージサーバにおいては,「ミル」機能及び「トル」機能

の実現に当たり,「番組表データ」を送信(送出)していないから,

本件マッチングサーバ及び本件ストレージサーバは,構成要件2−4

Gの「サーバ」に該当しない。

さらに,前記(4)イ(ア)bで述べたのと同様に,ロ号製品は,構成要

件2−4Hにおける「前記地域特定情報に対応する地域において現在

放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標」を充足し

ない。

したがって,ロ号製品は,本件発明2−4の構成要件2−4Fない

し2−4I,本件発明2−5の構成要件2−5Aないし2−5C,本

件発明2−6の構成要件2−6Aないし2−6Cを充足しない。

(イ) まとめ

以上によれば,ロ号製品が本件発明2−4ないし2−6の技術的範

囲に属するとの原告の主張は,理由がない。

(6) 本件発明2−7ないし2−9の技術的範囲の属否(争点1−(10)ないし

(12))について

ア 原告の主張

(ア) 構成要件2−7Eないし2−7Hの充足

ニ号プログラムが構成要件2−7Aないし2−7Dを充足すること

は,前記争いのない事実等(4)ウ(ウ)のとおりである。

そして,前記(3)ア(イ)及び(4)ア(ア)と同様の理由により,ニ号プ

ログラムは,構成要件2−7Eないし2−7Hを充足する。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明2−7の構成要件を全て

充足する。

(イ) 構成要件2−8Aないし2−8Cの充足




前記(ア)のとおり,ニ号プログラムは,本件発明2−7の構成要件

を全て充足するから,構成要件2−8A及び2−8Cを充足する。

そして,前記(3)ア(ウ)と同様の理由により,ニ号プログラムは,構

成要件2−8Bを充足する。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明2−8の構成要件を全て

充足する。

(ウ) 構成要件2−9Aないし2−9Cの充足

前記(イ)のとおり,ニ号プログラムは,本件発明2−8の構成要件

を全て充足するから,構成要件2−9A及び2−9Cを充足する。

そして,前記(2)ア(ア)h及び前記(3)ア(ア)によれば,ニ号プログ

ラムは,構成要件2−9Bを充足する。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明2−9の構成要件を全て

充足する。

(エ) まとめ

以上によれば,ニ号プログラムは,本件発明2−7ないし2−9の

構成要件を全て充足するから,本件発明2−7ないし2−9の技術的

範囲に属する。

イ 被告の主張

(ア) 構成要件2−7Eないし2−7H,2−8Aないし2−8C,2

−9Aないし2−9Cの非充足

前記(3)イ(イ)で述べたのと同様に,「ミル情報」が構成要件2−7

Eの「視聴指標」に,「トル情報」が構成要件2−7Eの「録画予約

指標」に,本件マッチングサーバ及び本件ストレージサーバが構成要

件2−7Eの「サーバ」に,PS3(ロ号製品)がトル情報及びミル

情報を組み込んで表示する対象が構成要件2−7G及び2−7H

の「番組表」にそれぞれ該当するとの原告の主張は,いずれも理由が




ない。

また,前記(2)イ(イ)で述べたのと同様に,本件マッチングサーバ及

び本件ストレージサーバにおいては,「ミル」機能及び「トル」機能

の実現に当たり,「番組表データ」を送信(送出)していないから,

本件マッチングサーバ及び本件ストレージサーバは,構成要件2−7

Fの「サーバ」に該当しない。

さらに,前記(4)イ(ア)bで述べたのと同様に,ロ号製品は,構成要

件2−7Gにおける「前記地域特定情報に対応する地域において現在

放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標」を充足し

ない。

したがって,ニ号プログラムは,本件発明2−7の構成要件2−7

Dないし2−7H,本件発明2−8の構成要件2−8Aないし2−8

C,本件発明2−9の構成要件2−9Aないし2−9Cを充足しない。

(イ) まとめ

以上によれば,ニ号プログラムが本件発明2−7ないし2−9の技

術的範囲に属するとの原告の主張は,理由がない。

2 争点2(ハ号製品の製造等の間接侵害の成否)について

(1) 原告の主張

ア ハ号製品は,トルネ本体と視聴・録画アプリケーションプログラム(ニ

号プログラム)とで構成されている。

そして,トルネ本体をPS3に接続するとともに,ニ号プログラムを

PS3に読み込ませた構成は,ロ号製品と同様の構成となり,本件発明

1−4,1−5,2−4ないし2−6の「利用者装置」として機能させ

ることができるから(前記1(2)ア及び(5)ア),本件発明1−4,1−

5,2−4ないし2−6の技術的範囲に属する。

イ(ア) ハ号製品は,物の発明である本件発明1−4,1−5,2−4な




いし2−6の「その物の生産にのみ用いる物」(特許法101条1号

に該当する。

(イ) また,ハ号製品は,本件発明1−4,1−5,2−4ないし2−

6の「その物の生産に用いる物」であって,従来技術には見られない

特徴的技術手段(例えば,本件発明1−4及び1−5に係る利用者装

置における出力手段)について,当該手段を特徴付けている特有の構

成ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材又は道具に該当するか

ら,本件発明1−4,1−5,2−4ないし2−6による「課題の解

決に不可欠なもの」(特許法101条2号)に該当する。

ウ 以上によれば,被告によるハ号製品の製造及び販売について,本件発

明1−4,1−5に係る本件特許権1及び本件発明2−4ないし2−6

に係る本件特許権2の間接侵害(特許法101条1号,2号)が成立す

る。

(2) 被告の主張

原告の主張は争う。

3 争点3(本件各特許権に基づく権利行使の制限の成否)について

(1) 被告の主張

本件各発明に係る本件各特許には,以下のとおりの無効理由があり,特

許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3

第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件各特許権を行使すること

ができない。

ア 本件特許1

(ア) 無効理由1−1(補正要件違反)

本件発明1−1,1−4及び1−6に係る本件補正1は,以下のと

おり,「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記

載した事項の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加




当たり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないか

ら,本件発明1−1,1−4及び1−6に係る本件特許1には,同項

に違反する無効理由(同法123条1項1号)がある。

これと同様に,本件発明1−4の請求項4又は本件発明1−6の請

求項6を引用する本件発明1−5及び1−7に係る本件特許1には,

上記無効理由がある。

a 無効理由1−1a

(a) 補正事項1(視聴指標)

「現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指

標」(請求項1,4及び6)

(b) 無効理由

補正事項1が「現在放送中の番組の視聴者の数の絶対値をも含

む」と解釈されるとすれば,当業者にとって,本件当初明細書1

の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係

において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に最

初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の

範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

その理由は,前記1(1)イ(イ)aと同旨である。

b 無効理由1−1b

(a) 補正事項2(録画予約指標)

「番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標」(請求

項1,4及び6)

(b) 無効理由

補正事項2が「番組の録画予約の数の絶対値をも含む」と解釈

されるとすれば,当業者にとって,本件当初明細書1の全ての記

載を統合することにより導かれる技術的事項との関係において,




新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に最初に添付し

た明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」に

おいてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。その理由は,

前記1(1)イ(ウ)aと同旨である。

c 無効理由1−1c

(a) 補正事項3(視聴指標の算出主体)

「視聴指標を算出する視聴指標算出手段と,…を備えることを

特徴とするサーバ」(請求項1),「前記サーバにおいて算出さ

れた…視聴指標」(請求項4及び6)

(b) 無効理由

補正事項3が「「調査者側」の構成要素としてのサーバと別異

の構成要素である「利用者装置」が視聴指標を算出することをも

含む」と解釈されるとすれば,当業者にとって,本件当初明細書

1の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関

係において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に

最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項

の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

その理由は,前記1(1)イ(エ)aと同旨である。

d 無効理由1−1d

(a) 補正事項4(録画予約指標の算出主体)

「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段と,…を備え

ることを特徴とするサーバ」(請求項1),「各利用者装置の前

記録画予約状況情報に基づいて算出された…録画予約指標」(請

求項4及び6)

(b) 無効理由

補正事項4が「「調査者側」の構成要素としてのサーバと別異




の構成要素である「利用者装置」が録画予約指標を算出すること

をも含む」と解釈されるとすれば,当業者にとって,本件当初明

細書1の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項と

の関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願

書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した

事項の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当

たる。その理由は,前記1(1)イ(エ)bと同旨である。

e 無効理由1−1e

(a) 補正事項5(番組表)

「番組表上の番組に対応づけられて表示されるための前記視聴

指標と前記録画予約指標」(請求項1),「前記視聴指標と前記

録画予約指標とが,番組表上の番組に対応づけて表示可能なよう

構成された番組表データ」及び「前記視聴指標と前記録画予約指

標とが番組表上の番組に対応づけられた番組表」(請求項4及び

6)

(b) 無効理由

補正事項5が「視聴指標と録画予約指標とを組み込んで表示す

る対象が現在放送中の番組のリスト上の番組及びユーザー操作に

よって表示される各放送局(チャンネル)ごとに放送時間帯とは

無関係に現在放送中の番組から三つ分の番組であるものをも含

む」と解釈されるとすれば,当業者にとって,本件当初明細書1

の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係

において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に最

初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の

範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

その理由は,前記1(1)イ(オ)aと同旨である。




f 無効理由1−1f

(a) 補正事項6(番組表の送信主体)

「番組表データをサーバから受信する番組表データ受信手

段」(請求項4),「番組表データをサーバから受信する番組表

データ受信ステップ」(請求項6)

(b) 無効理由

補正事項6が「調査者側装置(サーバ)以外のサーバから番組

表データを送信ないし受信するものをも含む」と解釈されるとす

れば,当業者にとって,本件当初明細書1の全ての記載を統合す

ることにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術

的事項を導入するものであり,「願書に最初に添付した明細書,

特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」においてした

ものではなく,新規事項の追加に当たる。

g 無効理由1−1g

(a) 補正事項7(視聴指標,録画予約指標及び番組表の送信(送

出),受信及び出力態様)

「前記利用者装置によって表示される番組表上の番組に対応づ

けられて表示されるための前記視聴指標と前記録画予約指標とで

あって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予

約指標とを送信する」(請求項1),「視聴指標と,…録画予約

指標とを受信する指標受信手段と,…番組表データを…受信する

番組表データ受信手段と,前記視聴指標,前記録画予約指標,及

び,前記番組表データに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約

指標とが番組表上の番組に対応づけられた番組表であって,現在

放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを含

む番組表を出力する出力手段」(請求項4),「視聴指標と,…




録画予約指標とを…受信する指標受信ステップと,…番組表デー

タを…受信する番組表データ受信ステップと,前記視聴指標,前

記録画予約指標,及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴

指標と前記録画予約指標とが番組表上の番組に対応づけられた番

組表であって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記

録画予約指標とを含む番組表を出力する出力ステップ」(請求項

6)

(b) 無効理由

本件当初明細書1には,視聴率及び録画率のいずれか一方又は

両方を組み込んだ番組表が,調査者側の番組表作成手段によって

作成され,その作成された番組表が,調査者側の番組表送信手段

によって送信され,利用者装置によって受信され,表示されるこ

とが記載されているのみであり,番組表とは別体の視聴率や録画

率自体が調査者側のサーバから送信され,利用者装置によって受

信され,利用者装置において視聴率や録画率とは別体の番組表自

体を特に調査者側のサーバ以外から受信し,更にこのような別体

の視聴率や録画率と番組表に基づいて利用者装置において視聴率

や録画率を組み込んで番組表を作成し,表示することは,本件当

初明細書1には記載されておらず,また,本件当初明細書1の記

載に接した当業者に自明の事項でもなく,さらには,当業者にと

って本件当初明細書1の記載の全てを総合することにより導かれ

る技術的事項でもない。

したがって,補正事項7は,当業者にとって,本件当初明細書

1の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関

係において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に

最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項




の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

(イ) 無効理由1−2(本件発明1−1の進歩性欠如)

本件発明1−1は,本件原出願の出願前に頒布された刊行物である

乙28(特開2000−308035号公報)及び乙29(特開20

01−245243号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が

容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如し,本件

発明1−1に係る本件特許1には,特許法29条2項に違反する無効

理由(同法123条1項2号)がある。

a 本件発明1−1と乙28に記載された発明との対比

乙28の記載事項(段落【0001】,【0008】,【000

9】,【0011】,【0018】,【0019】,【0035】,

【0046】,【0049】,図1,3,4,6,7)を総合すれ

ば,乙28には,「番組の視聴予約が可能な家庭装置4が用いられ

て番組視聴が行われており,前記家庭装置4において視聴予約され

ている番組を特定可能な情報である番組予約情報を,複数の前記家

庭装置4から受信するスケジュール受信部40と,前記スケジュー

ル受信部40により受信された各家庭装置4の前記番組予約情報に

基づいて,番組の視聴予約数の多少を把握可能な予想視聴率を算出

する予想視聴率算出部42と,前記家庭装置4によって表示される

番組表上の番組に対応づけられて表示されるための前記予想視聴率

であって,現在放送中の番組に対応する前記予想視聴率を送信する

予想視聴率送信部43とを備えることを特徴とする局装置2」が記

載されている。

そして,本件発明1−1と乙28記載の「局装置2」(以下「乙

28記載発明@」という。)とは,次のとおりの一致点及び相違点

を有する。




(一致点)

「視聴機器に対する「視聴(再生) ,
」 「録画」 「視聴予約」 「録
, ,

画予約」といった適宜選択可能な周知の機能操作のうちの1以上の

操作機能を備え,かかる操作機能を介して入力された予約情報を利

用者装置から受信し,受信された予約状況情報に基づいて統計処理

を行って指標を算出し,算出された指標を,利用者装置によって表

示される番組表上の番組に対応づけて表示させるべく利用者装置に

送信するサーバ(ないし局装置)」である点。

(相違点)

本件発明1−1は,予約状況情報のみならず,現在放送中の番組

に対する視聴情報をも利用者装置から受信し,受信された視聴状況

情報に基づいて統計処理を行って指標を算出し,算出された指標(二

つの異なる指標(視聴指標及び録画予約指標))を,利用者装置によ

って表示される番組表上の番組に対応づけて表示させるべく利用者

装置に送信させることができるのに対し,乙28記載発明@は,一

つの指標のみを利用者装置に送信し,このような構成を備えていな

い点。

b 乙29の開示事項

乙29の記載事項(【請求項11】,【請求項22】,段落【0

003】,【0006】ないし【0011】,【0013】,【0

020】,【0026】,【0035】,【0036】,【004

2】,【0043】,【0060】,【0072】,【0073】,

【0087】,【0091】,【0095】等)を総合すれば,乙

29には,予約状況情報のみならず,現在放送中の番組に対する視

聴情報をも利用者装置から受信し,受信された視聴状況情報に基づ

いて統計処理を行って指標(視聴指標及び録画予約指標)をそれぞれ




算出するデータ集計局が開示されている。

容易想到性

映像音声記録再生機器において,「視聴(再生) ,
」 「録画」 「視


聴(再生)予約」,「録画予約」といった一連の機能は,ユーザー

にとって適宜選択可能に機器メーカーにおいて広く採用されてきた

周知の機能であるところ,ユーザーに対してどのような指標情報を

どのような形式で提供するかは当業者が接する通常の技術課題であ

ることからすると,乙28記載発明@の「視聴予約」に替えて,乙

29記載の視聴指標及び録画予約指標の両方を算出集計する 構

成(相違点に係る本件発明1−1の構成)を採用することは,当業

者において容易に想到することができたものである。

d まとめ

以上によれば,本件発明1−1は,当業者が,乙28及び乙29

に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたもので

あるから,進歩性が欠如している。

(ウ) 無効理由1−3(本件発明1−4の進歩性欠如)

本件発明1−4は,乙28及び乙29に記載された発明と周知技術

に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,

進歩性が欠如し,本件発明1−4に係る本件特許1には,特許法29

条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。

a 本件発明1−4と乙28に記載された発明との対比

乙28の記載事項(前記(イ)a)を総合すれば,乙28には,「番

組の視聴操作及び番組の視聴予約が可能な家庭装置4であって,視

聴予約されている番組を特定可能な情報である番組予約情報(スケ

ジュール)を局装置2へ送信するデータ送受信部20と,各家庭装

置4の前記番組予約(スケジュール)に基づいて算出された番組の




視聴予約数の多少を把握可能な予想視聴率を受信する視聴率受信部

25と,前記予想視聴率が,現在放送中の番組のものと各裏番組の

ものとを含めてTV画面の片隅に表示可能なように構成されたデー

タを局装置2から受信する視聴率受信部25と,現在放送中の番組

の予想視聴率と各裏番組の予想視聴率とを含めてTV画面の片隅に

表示可能なように構成されたデータに基づいて,現在放送中の番組

に対応する予想予約率と各裏番組の予想予約率とを含む番組一覧を

出力するTV受像機8とを備えることを特徴とする家庭装置4」が

記載されている。

そして,本件発明1−4と乙28記載の「家庭装置4」(以下「乙

28記載発明A」という。)とを対比すると,次のとおりの相違点

があるが,その余の構成は一致する。

(相違点)

本件発明1−4は,録画予約状況情報のみならず,放送中の番組

であって現在視聴されている番組を特定可能な情報である視聴状況

情報をサーバへ送信する視聴状況情報送信手段(1−4B)と,録

画予約指標のみならず,各利用者装置の前記視聴状況情報に基づい

て前記サーバにおいて算出された現在放送中の番組の視聴者数の多

少を把握可能な視聴指標を受信する指標受信手段(1−4D)と,

視聴指標と録画予約指標との両方を番組表の番組に対応付けられて

表示可能なよう構成された番組表データをサーバから受信する番組

表データ受信手段(1−4E)と,前記視聴指標,前記録画予約指

標,及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴指標と前記録画

予約指標との両方が番組表上の番組に対応づけられた番組表であっ

て,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標

とを含む番組表を出力する出力手段(1−4F)とを備えるのに対




し,乙28発明Aは,かかる構成を備えていない点。

容易想到性

(a) 番組情報の中に視聴率情報が含まれること,かかる番組情報

に基づいてユーザーのモニタ画面上に番組表を表示させること,

必要に応じて番組表とともに各番組の視聴率を表示させること

は,本件原出願の出願当時,周知の技術であった(乙30ないし

32)。

(b) 前記(イ)cのとおり,乙28記載発明@の「視聴予約」に替

えて,乙29記載の視聴指標及び録画予約指標の両方を算出集計

する構成(相違点に係る本件発明1−1の構成)を採用すること

は,当業者において容易に想到することができたものである。

そして,乙28記載発明@(局装置2)は,番組表送信手段3

5を備えており,乙28記載発明@において,現在放送中の番組

を含めた各裏番組の予想視聴率をTV画面の片隅に表示するか,

これらの予想視聴率を番組表送信手段35により番組表の中に表

示可能なように送信するかの相違は,設計事項にすぎないという

べきである。

そうすると,当業者であれば,乙28記載発明A(家庭装置4)

と乙29記載の視聴指標及び録画予約指標の両方を算出集計する

構成とを組み合わせ,前記aの周知技術を適用して,相違点に係

る本件発明1−4の構成に容易に想到することができたものであ

る。

c まとめ

以上によれば,本件発明1−4は,当業者が,乙28及び乙29

に記載された発明と周知技術に基づいて,容易に発明をすることが

できたものであるから,進歩性が欠如している。




(エ) 無効理由1−4(本件発明1−5の進歩性欠如)

本件発明1−5は,本件発明1−4の請求項を引用した発明であり,

本件発明1−5のうち,本件発明1−4に相当する構成が,乙28及

び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到すること

ができたことは,前記(ウ)のとおりである。

本件発明1−5は,「1−5B.前記出力手段は,現在視聴されて

いる番組と同時に一画面において視聴者が視聴可能なよう前記視聴指

標,前記録画予約指標及び前記番組表を出力する」点で,本件発明1

−4と相違するところ,放送中の番組映像に重畳して番組表を表示す

ることは,本件原出願の出願当時,周知の技術であった(乙32等)。

以上によれば,本件発明1−5は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明1−5に係る本

件特許1には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(オ) 無効理由1−5(本件発明1−6の進歩性欠如)

本件発明1−6は,乙28及び乙29に記載された発明と周知技術

に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,

進歩性が欠如し,本件発明1−6に係る本件特許1には,特許法29

条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。

a 本件発明1−6と乙28に記載された発明との対比

乙28の記載事項(前記(イ)a)を総合すれば,乙28には,「番

組の視聴操作及び番組の視聴予約が可能な家庭装置4で実行される

処理ステップあって,視聴予約されている番組を特定可能な情報で

ある番組予約情報(スケジュール)を局装置2へ送信する番組予約

情報(スケジュール)送信ステップと,各家庭装置4の前記番組予




約(スケジュール)に基づいて算出された番組の視聴予約数の多少

を把握可能な予想視聴率を局装置2から受信する視聴率受信ステッ

プと,前記予想視聴率が,現在放送中の番組のものと各裏番組のも

のとを含めてTV画面の片隅に表示可能なように構成されたデータ

を局装置2から受信する視聴率受信ステップと,現在放送中の番組

の予想視聴率と各裏番組の予想視聴率とを含めてTV画面の片隅に

表示可能なように構成されたデータに基づいて,現在放送中の番組

に対応する予想予約率と各裏番組の予想予約率とを含む番組一覧を

出力する出力ステップとを前記家庭装置4に実行させる処理ステッ

プ」が記載されている。

そして,本件発明1−6と乙28記載の「家庭装置4に実行させ

る処理ステップ」(以下「乙28記載発明B」という。)とを対比

すると,次のとおりの相違点があるが,その余の構成は一致する。

(相違点)

本件発明1−6は,録画予約状況情報のみならず,放送中の番組

であって現在視聴されている番組を特定可能な情報である視聴状況

情報をサーバへ送信するステップ(1−6B)と,録画予約指標の

みならず,各利用者装置の前記視聴状況情報に基づいて前記サーバ

において算出された現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能

な視聴指標を前記サーバから受信する指標受信ステップ(1−6D)

と,視聴指標と録画予約指標との両方を番組表の番組に対応付けら

れて表示可能なよう構成された番組表データをサーバから受信する

番組表データ受信ステップ(1−6E)と,前記視聴指標,前記録

画予約指標,及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴指標と

前記録画予約指標との両方が番組表上の番組に対応づけられた番組

表であって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画




予約指標とを含む番組表を出力する出力ステップ(1−6F)とを

備えるのに対し,乙28発明Bは,かかる構成を備えていない点。

容易想到性

前記(ウ)bで述べたのと同様理由により,本件発明1−6は,当

業者が,乙28及び乙29に記載された発明と上記各周知技術に基

づいて,容易に発明をすることができたものであるから,進歩性

欠如している。

(カ) 無効理由1−6(本件発明1−7の進歩性欠如)

本件発明1−7は,本件発明1−6の請求項を引用した発明であり,

本件発明1−7のうち,本件発明1−6に相当する構成が,乙28及

び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到すること

ができたことは,前記(オ)のとおりである。

本件発明1−7は,「1−7B.前記出力ステップは,現在視聴さ

れている番組と同時に一画面において視聴者が視聴可能なよう前記視

聴指標,前記録画予約指標及び前記番組表を出力する」点で,本件発

明1−6と相違するところ,放送中の番組映像に重畳して番組表を表

示することは,本件原出願の出願当時,周知の技術であったことは,

前記(エ)のとおりである。

以上によれば,本件発明1−7は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明1−7に係る本

件特許1には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

イ 本件特許2

(ア) 無効理由2−1(補正要件違反)

本件発明2−1,2−4及び2−7に係る本件補正2は,以下のと




おり,「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記

載した事項の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加

当たり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないか

ら,本件発明2−1,2−4及び2−7に係る本件特許2には,同項

に違反する無効理由(同法123条1項1号)がある。

これと同様に,本件発明2−4の請求項4又は本件発明2−7の請

求項7を引用する本件発明2−5,2−6,2−8及び2−9に係る

本件特許2には,上記無効理由がある。

a 無効理由2−1a

(a) 補正事項1(視聴指標)

「現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴指

標」(請求項1,4及び7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)a(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

b 無効理由2−1b

(a) 補正事項2(録画予約指標)

「番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標」(請求

項1,4及び7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)b(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

c 無効理由2−1c

(a) 補正事項3(視聴指標の算出主体)

「視聴指標を算出する視聴指標算出手段と,…を備えることを

特徴とするサーバ」(請求項1),「前記サーバにおいて算出さ




れた…視聴指標」(請求項4及び7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)c(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

d 無効理由2−1d

(a) 補正事項4(録画予約指標の算出主体)

「録画予約指標を算出する録画予約指標算出手段と,…を備え

ることを特徴とするサーバ」(請求項1),「各利用者装置の前

記録画予約状況情報に基づいて算出された…録画予約指標」(請

求項4及び7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)d(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

e 無効理由2−1e

(a) 補正事項5(番組表)

「番組表上の番組に対応づけられて表示されるための前記視聴

指標と前記録画予約指標」(請求項1),「前記視聴指標と前記

録画予約指標とが,番組表上の番組に対応づけて表示可能なよう

構成された番組表データ」及び「前記視聴指標と前記録画予約指

標とが番組表上の番組に対応づけられた番組表」(請求項4及び

7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)e(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

f 無効理由2−1f

(a) 補正事項6(番組表の送信主体)




「 番組表データをサーバから受信する番組表データ受信手

段」(請求項4),「番組表データをサーバから受信する番組表

データ受信ステップ」(請求項7)

(b) 無効理由

前記ア(ア)f(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

g 無効理由2−1g

(a) 補正事項7(視聴指標,録画予約指標及び番組表の送信(送

出),受信及び出力態様)

「前記利用者装置によって表示される番組表上の番組に対応づ

けられて表示されるための前記視聴指標と前記録画予約指標とで

あって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予

約指標とを送信する」(請求項1),「視聴指標と,…録画予約

指標とを受信する指標受信手段と,…番組表データを…受信する

番組表データ受信手段と,前記視聴指標,前記録画予約指標,及

び,前記番組表データに基づいて,前記視聴指標と前記録画予約

指標とが番組表上の番組に対応づけられた番組表であって,現在

放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標とを含

む番組表を出力する出力手段」(請求項4),「視聴指標と,…

録画予約指標とを…受信する指標受信ステップと,…番組表デー

タを…受信する番組表データ受信ステップと,前記視聴指標,前

記録画予約指標,及び,前記番組表データに基づいて,前記視聴

指標と前記録画予約指標とが番組表上の番組に対応づけられた番

組表であって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記

録画予約指標とを含む番組表を出力する出力ステップ」(請求項

7)




(b) 無効理由

前記ア(ア)g(b)と同旨。ただし,「本件当初明細書1」を「本

件当初明細書2」と読み替える。

h 無効理由2−1h

(a) 補正事項8(地域特定情報と視聴指標及び録画予約指標との

対応付けの有無)

「前記地域特定情報受信手段により受信された前記地域特定情

報に基づき特定される地域において現在放送中の番組に対応する

前記視聴指標と前記録画予約指標」(請求項1),「前記地域特

定情報送信手段により送信された前記地域特定情報に対応する地

域において現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画

予約指標」(請求項4),「前記地域特定情報送信ステップによ

り送信された前記地域特定情報に対応する地域において現在放送

中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予約指標」(請求項

7)

(b) 無効理由

補正事項8が「地域特定情報に基づき特定される地域と視聴指

標及び録画予約指標とが対応付けられていることを意味する」と

解釈されるとすれば,当業者にとって,本件当初明細書2の全て

の記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係におい

て,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に最初に添

付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」

においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

i 無効理由2−1i

(a) 補正事項9(地域特定情報と番組表との対応付けの有無)

「地域特定情報を,前記利用者装置から受信する地域特定情報




受信手段」(請求項1),「前記利用者装置によって表示される

番組表」(請求項1),「地域特定情報を,前記サーバへ送信す

る地域特定情報送信手段」(請求項4),「番組表データをサー

バから受信する番組表データ受信手段」(請求項4),「地域特

定情報を,前記サーバへ送信する地域特定情報送信ステップ」(請

求項7),「番組表データをサーバから受信する番組表データ受

信ステップ」(請求項7)

(b) 無効理由

本件当初明細書2には,利用者装置から送信される地域特定情

報により特定される地域に対応付けられた番組表が,利用者装置

によって表示されることが記載されているのみであり,利用者装

置がその所在地において受信できる放送波から取得できるEPG

データのような,利用者装置から送信される地域特定情報により

特定される地域には特に対応付けられていないデータに基づき,

利用者装置によって番組表及び番組リストが作成され,表示され

ることは,本件当初明細書2には記載されておらず,また,本件

当初明細書2の記載に接した当業者に自明の事項でもなく,さら

には,当業者にとって本件当初明細書2の記載の全てを総合する

ことにより導かれる技術的事項でもない。

したがって,補正事項9は,当業者にとって,本件当初明細書

2の全ての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関

係において,新たな技術的事項を導入するものであり,「願書に

最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項

の範囲内」においてしたものではなく,新規事項の追加に当たる。

(イ) 無効理由2−2(本件発明2−1の進歩性欠如)

本件発明1−1は当業者が乙28及び乙29に記載された発明に基




づいて容易に発明をすることができたものであることは,前記ア(イ)

のとおりである。

本件発明2−1は,「サーバから端末へ電子番組表を配信可能な映

像コンテンツ等の配信システムにおいて,地域を特定可能な情報であ

る地域特定情報を端末から受信し,かかる情報に基づいてサーバから

電子番組表を配信する」点で,本件発明1−1と相違し,その余の構

成は本件発明1−1と共通する。

しかるところ,映像コンテンツ等の配信システムにおいて配信され

る電子番組表を「地域特定情報」に基づいて配信ないし表示すること

は,本件原出願の出願時,周知の技術であった(乙35ないし37)。

以上によれば,本件発明2−1は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と周知技術に基づいて,容易に発明をすることができ

たものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−1に係る本件特許

2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項

号)がある。

(ウ) 無効理由2−3(本件発明2−4の進歩性欠如)

本件発明1−4は当業者が乙28及び乙29に記載された発明と周

知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであることは,

前記ア(ウ)のとおりである。

本件発明2−4は,「サーバから端末へ電子番組表を配信可能な映

像コンテンツ等の配信システムにおいて,地域を特定可能な情報であ

る地域特定情報を端末から受信し,かかる情報に基づいてサーバから

電子番組表を配信する」点で,本件発明1−4と相違し,その余の構

成は本件発明1−4と共通する。

しかるところ,映像コンテンツ等の配信システムにおいて配信され

る電子番組表を「地域特定情報」に基づいて配信ないし表示すること




は,本件原出願の出願時,周知の技術であったことは,前記(イ)のと

おりである。

以上によれば,本件発明2−4は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−4に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(エ) 無効理由2−4(本件発明2−5の進歩性欠如)

本件発明2−5は,本件発明2−4の請求項4を引用した発明であ

り,本件発明2−5のうち,本件発明2−4に相当する構成が,乙2

8及び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到する

ことができたことは,前記(ウ)のとおりである。

また,本件発明2−5の固有の構成は,本件発明1−5の固有の構

成と実質同一であるところ,本件発明1−5は,当業者が,乙28及

び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて,容易に発明をする

ことができたことは,前記ア(エ)のとおりである。

以上によれば,本件発明2−5は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−5に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(オ) 無効理由2−5(本件発明2−6の進歩性欠如)

本件発明2−6は,本件発明2−5の請求項5を引用した発明であ

り,本件発明2−6のうち,本件発明2−5に相当する構成が,乙2

8及び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到する

ことができたことは,前記(エ)のとおりである。




本件発明2−6は,「利用者により現在視聴されている番組の映像

と同時に出力されている前記番組表上で,その視聴されている番組と

異なるチャンネルの番組が前記受付手段を介して利用者により選択さ

れると,その選択された番組のチャンネルに切り替えて前記出力手段

に番組の映像を出力させるチャンネル切替手段をさらに備える」点で,

本件発明2−5と相違し,その余の構成は本件発明2−5と共通する。

しかるところ,利用者により現在視聴されている番組の映像と同時

に出力されている番組表上で,その視聴されている番組と異なるチャ

ンネルの番組が選択されると,その選択された番組のチャンネルに切

り替えて出力手段に番組の映像を出力させることは,本件原出願の出

願時,周知の技術であった(乙38ないし40)。

以上によれば,本件発明2−6は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−6に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(カ) 無効理由2−6(本件発明2−7の進歩性欠如)

本件発明1−6は,当業者が乙28及び乙29に記載された発明と

周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであること

は,前記ア(オ)のとおりである。

本件発明2−7は,「サーバから端末へ電子番組表を配信可能な映

像コンテンツ等の配信システムにおいて,地域を特定可能な情報であ

る地域特定情報を端末から受信し,かかる情報に基づいてサーバから

電子番組表を配信する」点で,本件発明1−6と相違し,その余の構

成は本件発明1−6と共通する。

しかるところ,映像コンテンツ等の配信システムにおいて配信され




る電子番組表を「地域特定情報」に基づいて配信ないし表示すること

は,本件原出願の出願時,周知の技術であったことは,前記(イ)のと

おりである。

以上によれば,本件発明2−7は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−7に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(キ) 無効理由2−7(本件発明2−8の進歩性欠如)

本件発明2−8は,本件発明2−7の請求項7を引用した発明であ

り,本件発明2−8のうち,本件発明2−7に相当する構成が,乙2

8及び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到する

ことができたことは,前記(カ)のとおりである。

また,本件発明2−8の固有の構成は,本件発明1−7の固有の構

成と実質同一であるところ,本件発明1−7は,当業者が,乙28及

び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて,容易に発明をする

ことができたことは,前記ア(カ)のとおりである。

以上によれば,本件発明2−8は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−8に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(ク) 無効理由2−8(本件発明2−9の進歩性欠如)

本件発明2−9は,本件発明2−8の請求項8を引用した発明であ

り,本件発明2−9のうち,本件発明2−8に相当する構成が,乙2

8及び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて容易に想到する




ことができたことは,前記(キ)のとおりである。

また,本件発明2−9の固有の構成は,本件発明2−6の固有の構

成と実質同一であるところ,本件発明2−6は,当業者が,乙28及

び乙29に記載された発明と周知技術に基づいて,容易に発明をする

ことができたことは,前記(カ)のとおりである。

以上によれば,本件発明2−9は,当業者が,乙28及び乙29に

記載された発明と上記各周知技術に基づいて,容易に発明をすること

ができたものであるから,進歩性が欠如し,本件発明2−9に係る本

件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条

1項2号)がある。

(2) 原告の主張

ア 本件特許1について

(ア) 無効理由1−1(補正要件違反)に対し

以下に述べるとおり,補正事項1ないし7に係る本件補正1が新規

事項の追加に当たり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満た

していないとの被告の主張は,理由がない。

a 補正事項1(無効理由1−1a)について

「視聴率」の一般的な意味は,「テレビの番組が視聴されている

程度。その地域の全受信機台数に対するその番組を受信した台数の

比率を種々の方法によって推計する。ラジオの場合は聴取率とい

う。」(甲16)であり,「テレビなどで,ある放送番組がどれく

らいの人や世帯で視聴されているかを示す割合。」(甲17)であ

る。一方,ユーザーは,視聴者数の絶対値(実数)であっても,過

去の経験から,又は,同時に表示された他の番組の視聴者数の絶対

値(実数)との比較から,その番組が視聴されている程度(多いか

少ないか)を把握可能である。




本件当初明細書1に,「視聴率」を算出し表示させるという技術

事項が開示されていれば,視聴率の一般的な意味からして,当業者

は「視聴者数の絶対値」を算出し表示させるとの技術事項も想起で

きると考えるのが自然である。

また,本件当初明細書1には,「視聴率」以外にも「番組を視聴

した平均人数」を表示させる態様についての開示もある。そし

て,「平均」とは,「多くの量または数の中間的な値」の意味であ

り(乙47),対象としている量や数を文字どおり平たく均(なら)

したものであるから,「番組を視聴した平均人数」とは,ある番組

の各時点の視聴者数を平たく均したものであり,その値は「視聴者

数」にほかならない。

このように本件当初明細書1には,視聴者数を表示する事項が開

示されており,本件発明1−1,1−4及び1−6にいう「視聴指

標」が「現在放送中の番組の視聴者の数の絶対値をも含む」と解釈

されても,補正事項1に係る本件補正1は,新規事項を追加する補

正に当たらない。

b 補正事項2(無効理由1−1b)について

前記aと同様に,本件当初明細書1に「録画率」を算出し表示さ

せるという技術事項が開示されていれば,当業者は,ここから「録

画予約数の絶対値」を算出し表示させるとの技術事項も想起できる

と考えるのが自然である。

また,本件当初明細書1では,番組毎の録画率の計算途中で番組

毎の「録画予約数の絶対値」を算出することが開示されている(段

落【0047】)。

したがって,本件発明1−1,1−4及び1−6に係る「録画予

約指標」が「番組の録画予約の数の絶対値」を含むと解釈されても,




補正事項2に係る本件補正1は,新規事項を追加する補正に当たら

ない。

c 補正事項3(無効理由1−1c)について

本件発明1−1は,サーバに関する発明であり,視聴指標を算出

する視聴指標算出手段をサーバが備えると記載されている以上,サ

ーバとして認定可能な装置において視聴指標が算出されることは明

らかである。また,本件発明1−4及び1−6については,「前記

サーバにおいて算出された」と記載されている以上,サーバとして

認定可能な装置において視聴指標が算出されることは明らかであ

る。

ここで「サーバ」とは,「ネットワーク上で他のコンピューター

やソフト,すなわちクライアントにサービスを提供するコンピュー

ター。」(甲16)である。

したがって,本件発明1−1,1−4及び1−6では,上記定義

に該当し得るコンピュータが視聴指標を算出するわけであり,コン

ピュータが利用者の手元にあるかどうかは問題ではなく,ネットワ

ーク上で他のコンピュータにサービス(具体的には情報)を提供し

ていればそれはサーバである。

しかるところ,被告は,補正事項3が「「調査者側」の構成要素

としてのサーバと別異の構成要素である「利用者装置」が視聴指標

を算出することをも含む」と解釈されるとすれば,新規事項を追加

するものである旨主張するが,その利用者側端末等 「利用者装置」
( )

がネットワーク上で他のコンピュータにサービスを提供しているか

どうかを評価した結果で判断されるべきであり,その観点が欠落し

ている議論には意味がなく,被告の上記主張は誤りである。

d 補正事項4(無効理由1−1d)について




前記cと同様に,本件発明1−1,1−4及び1−6に係る録画

予約指標の算出主体についての被告の主張は誤りである。

e 補正事項5(無効理由1−1e)について

本件当初明細書1には,放送局ごとに「現在放送中」の番組が並

べられた態様,すなわち,被告のいう「放送時間帯」に現在時刻が

含まれる番組が放送局ごとにに並べられた態様は,本件当初明細書

1(例えば,図5)に開示されている。そして,本件当初明細書1

には,その次に放送される番組が放送局毎に並べられた態様(例え

ば,図5) さらに次に放送される番組についても表示できること
, (例

えば,図5のプルダウンメニューM2)が開示されている。

したがって,補正事項5に係る本件補正1が新規事項を追加する

補正に当たるとの被告の主張は理由がない。

f 補正事項6(無効理由1−1f)について

本件発明1−4及び1−6において番組表データを送信する主体

は,単に「サーバ」とのみ記載されており,視聴指標や録画指標を

送信するサーバと同一のサーバであるかどうか等について限定され

ていない。

本件当初明細書1(乙18)には,「以上,本発明の実施形態に

ついて説明したが,本件発明は上記の具体的な実施形態に限定され

ず,このほかにも様々な形態で実施することができる。」(段落【

0069】),「調査者側装置10が1のコンピュータシステムに

よって構成されたものを例示したが,複数のコンピュータシステム

で構成されていてもよい。」(段落【0070】)との記載がある。

上記記載中の「コンピュータシステム」とは,サーバ,ストレージ

装置,管理コンピュータ,利用者コンピュータ,中継コンピュータ,

これらを接続するネットワーク等を意味することは当業者の当然の




理解である。

そうすると,本件当初明細書1では調査者側装置10が,複数の,

サーバ,ストレージ装置,管理コンピュータ,利用者コンピュータ,

中継コンピュータ,これらを接続するネットワーク等から構成され

ていてもよいことが述べられていると評価できる。

したがって,補正事項6に係る本件補正1が新規事項を追加する

補正に当たるとの被告の主張は理由がない。

g 補正事項7(無効理由1−1g)について

被告の主張は,要するに,本件発明1−1,1−4及び1−6に

関し,視聴指標及び録画予約指標が送信されるサーバ以外のサーバ

から番組表データが送信され,その番組表データが利用されて視聴

指標及び録画予約指標が組み込まれた番組表を表示させることを含

むとすれば,新規事項を追加する補正に当たるものというものであ

る。

しかし,前記fと同様の理由により,被告の主張は理由がない。

(イ) 無効理由1−2(本件発明1−1の進歩性欠如)に対し

a 乙29における相違点に係る本件発明1−1の構成の不開示

(a) 乙29記載のデータ集計局が吸い上げる対象は「録画デー

タ」(録画を終えた番組のデータである)である。このことは,

乙29の段落【0043】の「データ集計局24は,一週毎,一

月毎など,定期的にユーザの録画データを吸い上げ集計する。こ

れにより,データ集計局24はユーザの番組録画データを知るこ

とができる。」との記載から明らかである。そして,「録画デー

タ」というのは,その直前の段落【0036】で定義されている

とおり,「ビデオレコーダ11が実際に録画を行った番組のデー

タ」であり,録画を終えた番組のデータである。これをデータ集




計局24は,一週毎,一月毎など,定期的に収集して集計してい

る。

したがって,乙29記載のデータ集計局は,過去の録画の情報

を収集して集計しており,本件発明1−1のような,現在放送中

の番組に対応づけて送信可能な録画予約指標を算出できる「録画

予約状況情報」を収集して集計していない。

(b) 乙29では,ビデオ装置に関する発明(請求項1ないし22,

図1ないし4に対応する実施形態)と,テレビ装置に関する発

明(請求項23ないし36,図5及び6に対応する実施形態)と

に明確に分かれており,視聴指標及び録画予約指標の両方を算出

集計するテレビ視聴データ集計システムは開示されていない。

集計する装置の実施例として記載されているデータ集計局につ

いても,ビデオ装置に関する発明に対応するものは,符号として

24が付され(図1,4),テレビ装置に関する発明に対応する

ものは,符号として64と94が付されており(図5,6),完

全に分離している。

したがって,乙29には,視聴指標及び録画予約指標の両方を

算出集計するテレビ視聴データ集計システムは,開示されていな

い。

b 乙28と乙29の組合せの動機付けの不存在

乙28には,乙28に記載された発明に乙29に記載された発明

を組み合わせることを示唆する記載はなく,これらを組み合わせる

動機付けは存在しない。

他方で,乙28の段落【0006】,【0007】,【0056

】には,乙28に記載された発明の目的が,@紙に印刷された番組

表を用いることなく,A簡単に番組予約を実施でき,B予約された




日時が来ると自動的に予約された番組が放映され,C視聴者にとっ

て,1回の番組確認作業のみですみ,D見たい番組の見逃しを防止

でき,E使い勝手がよく,F視聴者に対するサービスを大幅に向上

できるCATVシステムを提供することにあることが開示されてい

る。

このように乙28に記載された発明の目的として見たい番組の見

逃しを防止があり,そのためには予約された日時が来ると自動的に

予約された番組が放映されることが必須であるところ,乙28記載

の「視聴予約」を乙29記載の「録画予約」に変更すると,ユーザ

ー所望の番組が放送時に視聴されるように選局が行われなくなり,

予約された日時が来たときに自動的に番組が放映されなくなり,乙

28に記載された発明の上記目的を達成し得なくなるとともに,効

果も奏しなくなる。

したがって,乙28に記載された発明と乙29に記載された発明

とを組み合わせることには阻害事由が存在する。

c まとめ

以上のとおり,乙29には相違点に係る本件発明1−1の構成の

具体的な開示はなく,また,乙28に記載された発明と乙29に記

載された発明とを組み合わせることの動機付けは存在せず,かえっ

てこれらを組み合わせることに阻害要因があるから,当業者が乙2

8及び乙29に記載された発明に基づいて本件発明1−1を容易に

想到することができたものということはできない。

したがって,被告主張の無効理由1−2は,理由がない。

(ウ) 無効理由1−3ないし1−6(本件発明1−4ないし1−7の進

歩性欠如)に対し

前記(イ)と同様の理由により,当業者が乙28及び乙29に記載さ




れた発明と原告主張の各周知技術にに基づいて本件発明本件発明1−

4ないし1−7を容易に想到することができたものということはでき

ないから,被告主張の無効理由1−3ないし1−6は,いずれも理由

がない。

イ 本件特許2について

(ア) 無効理由2−1(補正要件違反)に対し

以下に述べるとおり,補正事項1ないし9に係る本件補正2が新規

事項の追加に当たり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満た

していないとの被告の主張は,理由がない。

a 補正事項1(無効理由2−1a)について

前記ア(ア)aと同旨。

b 補正事項2(無効理由2−1b)について

前記ア(ア)bと同旨。

c 補正事項3(無効理由2−1c)について

前記ア(ア)cと同旨。

d 補正事項4(無効理由2−1d)について

前記ア(ア)dと同旨。

e 補正事項5(無効理由2−1e)について

前記ア(ア)eと同旨。

f 補正事項6(無効理由2−1f)について

前記ア(ア)fと同旨。

g 補正事項7(無効理由2−1g)について

前記ア(ア)gと同旨。

h 補正事項8(無効理由2−1h)について

本件当初明細書2の段落【0040】及び図2のフローチャート

には,利用者側端末が,プルダウンメニューM1において選ばれた




地域に対応する地域特定情報(地域を特定可能な情報)を指定して

調査者側装置に番組表を要求し,対応する番組表(例えば図5のよ

うな番組表)を受信することが記載されており,地域特定情報に基

づき特定される地域と視聴指標及び録画予約指標とは対応付けられ

ていることが開示されている。これが対応付けられていないとすれ

ば,番組のタイトル等と視聴指標及び録画予約指標とが対応付かな

いことになり,意味をなさないものとなる。

したがって,地域特定情報に基づき特定される地域と視聴指標及

び録画予約指標とが対応付けられていることは,本件当初明細書1

に記載されているといえるから,補正事項8に係る本件補正2が新

規事項を追加する補正に当たるとの被告の主張は理由がない。

i 補正事項9(無効理由2−1i)について

本件当初明細書2には,調査者側装置は,複数のコンピュータシ

ステム(例えば,サーバ)から構成されても良いことが説明されて

おり,視聴指標及び録画予約指標を集計して提供するサーバと,こ

れら指標以外の情報からなる番組表を提供するサーバとが別々にな

っていてもよいことが開示されている。

したがって,補正事項9に係る本件補正2が新規事項を追加する

補正に当たるとの被告の主張は理由がない。

(イ) 無効理由2−2(本件発明2−1の進歩性欠如)に対し

a 当業者が乙28及び乙29に記載された発明に基づいて本件発明

1−1を容易に想到することができたものといえないことは,前記

ア(イ)のとおりである。

b 被告が周知技術の根拠として挙げる乙35ないし37に記載され

た技術は,いずれも地域に応じた「番組表」を提供するものであり,

地域に応じた「視聴指標」や「録画予約指標」を提供するものでは




ない。このことは,本件原出願の出願当時には,「視聴指標」 「録
及び

画予約指標」の一方すら,地域に応じて提供する技術思想は存在し

ていなかったことを意味している。

また,乙28記載の「局装置2」は,CATV局の局装置であり,

CATV局は,基本的に単一の地域に根ざしたものであり,複数の

地域の番組表を利用者に提供するような構成を有さないものであ

る。一方,本件発明2−1は,現在放送中の番組の視聴指標と録画

予約指標とを利用者により指定された地域に応じて利用者に提供可

能である。

c 以上の事情を総合的に判断すれば,乙28記載の「局装置2」に

乙29を適用して変更した上で,さらに乙35ないし37を参照し

て本件発明2−1のように変更することは,当業者にとって容易で

あったとは到底いい難い。

したがって,当業者が乙28及び乙29に記載された発明と被告

主張の周知技術に基づいて本件発明2−1を容易に想到することが

できたものということはできないから,被告主張の無効理由2−2

は,理由がない。

(ウ) 無効理由2−3ないし2−8(本件発明2−4ないし2−9の進

歩性欠如)に対し

前記(イ)と同様の理由により,当業者が乙28及び乙29に記載さ

れた発明と原告主張の各周知技術に基づいて本件発明2−4ないし2

−9を容易に想到することができたものということはできないから,

被告主張の無効理由2−3ないし2−8は,いずれも理由がない。

4 争点4(原告の損害額)について

(1) 原告の主張

ア イ号装置に係る特許法102条3項に基づく損害額




(ア) 被告がイ号装置を使用した行為は,原告の本件特許権1(本件発

明1−1)及び本件特許権2(本件発明2−1)を侵害する不法行為

に当たるから,被告は原告に対し,原告が受けた損害を賠償する義務

を負う。

(イ) 被告が平成22年10月22日から平成23年2月3日(本件訴

えの提起日。以下同じ。)までの間にイ号装置を使用することにより

得られた利益は40億円を下らない。

そして,特許法102条3項の規定により,原告が受けるべき「特

許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」(実施料相当

額)の損害額は,上記利益額の10%である4億円を下らない。

イ ロ号製品に係る特許法102条3項に基づく損害額

(ア) 被告がロ号製品を製造及び販売した行為は,原告の本件特許権

1(本件発明1−1,1−4,1−5)及び本件特許権2(本件発明

2−1,2−4ないし2−6)を侵害する不法行為に当たるから,被

告は原告に対し,原告が受けた損害を賠償する義務を負う。

(イ) 被告が平成22年10月22日から平成23年2月3日までの間

に,ロ号製品を製造及び販売した数量は5万個を下らず,1個当たり

の単価は4万2800円を下らない。

そして,特許法102条3項の規定により,原告が受けるべき実施

料相当額の損害額は,上記期間のロ号製品の販売総額の10%である

2億1400万円を下らない。

ウ ハ号製品に係る特許法102条3項に基づく損害額

(ア) 被告がハ号製品を製造及び販売した行為は,原告の本件特許権

1(本件発明1−4,1−5)及び本件特許権2(本件発明2−4な

いし2−6)の間接侵害不法行為に当たるから,被告は原告に対し,

原告が受けた損害を賠償する義務を負う。




(イ) 被告が平成22年10月22日から平成23年2月3日(本件訴

訟の提起日)までの間に,ハ号製品を製造及び販売した数量は25万

台を下らず,1台当たりの単価は9980円を下らない。

そして,特許法102条3項の規定により,原告が受けるべき実施

料相当額の損害額は,上記期間のハ号製品の販売総額の10%である

2億4950万円を下らない。

エ ニ号プログラムに係る特許法102条3項に基づく損害額

(ア) 被告がニ号プログラムを製造及び販売した行為は,原告の本件特

許権1(本件発明1−6,1−7)及び本件特許権2(本件発明2−

7ないし2−9)を侵害する不法行為に当たるから,被告は原告に対

し,原告が受けた損害を賠償する義務を負う。

(イ) 被告が平成22年10月22日から平成23年2月3日(本件訴

訟の提起日)までの間に,ニ号プログラムを製造及び販売した数量は

30万個を下らず,1個当たりの単価は8000円を下らない。

そして,特許法102条3項の規定により,原告が受けるべき実施

料相当額の損害額は,上記期間のニ号プログラムの販売総額の10%

である2億4000万円を下らない。

オ まとめ

以上によれば,原告は,被告に対し,特許権侵害不法行為に基づく

損害賠償請求の一部請求として1億円及びこれに対する平成23年3月

19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割

合による遅延損害金の支払を求めることができる。

(2) 被告の主張

原告の主張は争う。

第4 当裁判所の判断

1 本件発明1−1の技術的範囲の属否(争点1−(1))について




(1) 構成要件1−1C,1−1D及び1−1Fの充足性

原告は,@イ号装置を構成する本件マッチングサーバにおいては,「利

用者装置」であるPS3(ロ号製品)から受信された「視聴状況情報」(視

聴情報)に基づいて「視聴指標」である「ミル情報」を算出し,イ号装置

を構成する本件ストレージサーバにおいては,PS3(ロ号製品)から受

信された「録画予約状況情報」(録画予約情報)に基づいて「録画予約指

標」である「トル情報」を算出しているから,イ号装置を構成する本件マ

ッチングサーバは,「視聴指標を算出する視聴指標算出手段」(構成要件

1−1C)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)に,イ号装置を構成

する本件ストレージサーバは,「録画予約指標を算出する録画予約指標算

出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)

にそれぞれ該当し,イ号装置は,構成要件1−1C,1−1D及び1−1

Fを充足する,Aまた,仮に@が認められないとしても,本件発明1−1

の「サーバ」は「利用者装置」とは別異の構成要素でなければならないと

限定解釈すべき理由はなく,この「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」

が担ってもよいと解すべきであり,所定のPS3が「視聴指標を算出する

視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)及び「録画予約指標を算出する

録画予約指標算出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成

要件1−1F)に該当するから,ロ号製品は,構成要件1−1C,1−1

D及び1−1Fを充足する旨主張する。

これに対し被告は,「ミル情報」が「視聴指標」に,「トル情報」が「録

画予約指標」に該当することを否認するとともに,構成要件1−1Fの「サ

ーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素であると解するのが相当で

あり,イ号装置を構成する本件マッチングサーバ及び本件ストレージサー

バにおいては,「ミル情報」及び「トル情報」を算出していないから,「視

聴指標を算出する視聴指標算出手段」及び「録画予約指標を算出する録画




予約指標算出手段」を備えておらず,イ号装置及び「利用者装置」である

ロ号製品は,構成要件1−1C,1−1D及び1−1Fを充足しない旨主

張する。

そこで,まず,本件発明1−1の「サーバ」の意義について検討し,そ

の上で,イ号装置又はロ号製品が構成要件1−1C,1−1D及び1−1

Fを充足するかどうかについて判断する。

ア 特許請求の範囲の記載

本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)は,前記争いのない事

実等(3)ア(ア)及び(イ)aのとおりであり,本件発明1−1の「サーバ」

について,「利用者装置が用いられて視聴されている番組であって放送

中の番組を特定可能な情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装

置から受信する視聴番組状況受信手段」(構成要件1−1A)と,「前

記利用者装置において録画予約されている番組を特定可能な情報である

録画予約状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する録画予約番組

状況受信手段」(構成要件1−1B)と,「受信された各利用者装置の

前記視聴状況情報に基づいて,視聴指標を算出する視聴指標算出手

段」(構成要件1−1C)と,「受信された各利用者装置の前記録画予

約状況情報に基づいて,録画予約指標を算出する録画予約指標算出手

段」(構成要件1−1D)と,「前記利用者装置によって表示される番

組表上の番組に対応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記録

画予約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前

記録画予約指標とを送信する指標送信手段」(構成要件1−1E)と

を「備えることを特徴とするサーバ」(構成要件1−1F)と記載して

いる。

上記記載は,本件発明1−1の「サーバ」が複数の「利用者装置」か

ら各「利用者装置」において視聴されている放送中の番組の「視聴状況




情報」及び録画予約されている番組の「録画予約状況情報」を受信し,

当該視聴状況情報に基づいて「視聴指標」を,当該録画予約状況情報に

基づいて「録画予約指標」をそれぞれ算出し,これらを「利用者装置」

に送信する各手段を備える装置であることを規定するものといえるか

ら,「サーバ」と「利用者装置」とは,本件発明1−1の構成要素とし

て別個のものであることは明らかである。

一方で,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)には,「利用

者装置」が「サーバ」の機能の全部又は一部を兼ねることができること

を規定した記載はなく,また,これをうかがわせる記載もない。

イ 本件明細書1の記載事項

(ア) 本件明細書1(甲3)の発明の詳細な説明には,次のような記載

がある(この記載中に引用する図1,2及び5については,別紙明細

書図面参照)。

a 「【技術分野】 本発明は,テレビ放送などで視聴率を調査する

際に利用されるサーバ,利用者装置,プログラム,及び,指標処理

方法に関する。」(段落【0001】)

b 「【背景技術】 現在,複数の番組を表形式に配列した番組表を

インターネットなどの通信回線網を介して提供することが行われて

いる。この番組表には,各番組の詳細な内容を確認したり,希望す

る番組を録画予約したりできるものがある。」(段落【0002】)

c 「【発明が解決しようとする課題】 しかし,上記のような番組

表の提供を受けた利用者が,番組表中からどのような番組を選んで

視聴または録画を行ったのかを知ることはできなかったため,この

種の番組表を利用した視聴や録画がどの程度行われているのかを知

りたいという要望があった。」(段落【0003】),「本発明は,

番組表を利用して視聴率を調査することができる技術を提供するこ




と,また,番組表を利用して録画率を調査することができる技術を

提供することを目的とする。」(段落【0004】)

d 「【課題を解決するための手段】 上記問題を解決するための構

成を以下に示す。番組の視聴操作及び録画予約が可能な利用者装置

が用いられて視聴されている番組であって放送中の番組を特定可能

な情報である視聴状況情報を,複数の前記利用者装置から受信する

視聴番組状況受信手段と,前記利用者装置において録画予約されて

いる番組を特定可能な情報である録画予約状況情報を,複数の前記

利用者装置から受信する録画予約番組状況受信手段と,前記視聴番

組状況受信手段により受信された各利用者装置の前記視聴状況情報

に基づいて,現在放送中の番組の視聴者数の多少を把握可能な視聴

指標を算出する視聴指標算出手段と,前記録画予約番組状況受信手

段により受信された各利用者装置の前記録画予約状況情報に基づい

て,番組の録画予約数の多少を把握可能な録画予約指標を算出する

録画予約指標算出手段と,前記利用者装置によって表示される番組

表上の番組に対応づけられて表示されるための前記視聴指標と前記

録画予約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指

標と前記録画予約指標とを送信する指標送信手段と,を備えること

を特徴とするサーバ。」,「このようなサーバであれば,現在放送

中の番組に対応する視聴指標と録画予約指標とを同時に確認するこ

とが可能になる。」,「また,次のような視聴率調査システムであ

ってもよい。利用者側から調査者側に送信されるデータに基づいて

視聴率を調査する視聴率調査システムであって,利用者側に,番組

表を表示する番組表表示手段と,前記番組表の中から利用者が視聴

する番組を指定可能な視聴番組指定手段と,該視聴番組指定手段に

より指定された番組を表示する視聴番組表示手段と,前記視聴番組




指定手段により指定された番組の放送チャンネルを特定可能なチャ

ンネルデータを前記調査者側に送信するデータ送信手段とを備え,

前記調査者側に,利用者側のデータ送信手段により送信されたチャ

ンネルデータを受信するデータ受信手段と,利用者側から送信され

るチャンネルデータに基づいて,該チャンネルデータで特定される

放送チャンネルの番組を視聴している利用者の数を,放送チャンネ

ル毎にカウントするカウント手段と,調査対象となる利用者数と前

記カウント手段によってカウントされた利用者の数とに基づいて視

聴率を算出する視聴率算出手段とを備えていることを特徴と す

る。」(以上,段落【0005】)

e 「この視聴率調査システムにおいて利用者側の備える各手段は,

例えば,コンピュータシステム,携帯情報端末,携帯電話機などの

端末装置に備えられるものである。また,番組表表示手段や視聴番

組表示手段は,例えば,パソコンのディスプレイ,携帯情報端末の

表示画面,テレビ画面などの表示装置に番組表,番組の映像を表示

するための手段である。これらの各手段が表示する番組表または映

像は,同一の表示装置に表示すればよく,例えば,表示画面を分割

して表示するように構成してもよいし,いずれか一方を表示画面の

全部に表示して両者の表示を任意に切り替えられるように構成して

もよい。また,両者を別の表示装置に表示するように構成してもよ

い。」(段落【0006】)

f 「また,調査者側の備える各手段は,例えば,周知のコンピュー

タシステムに備えられるものである。この視聴率調査システムでは,

まず,番組表表示手段が番組表を表示する。番組表は,例えば,電

子番組ガイドで利用されているものであって,縦方向に時刻,横方

向に放送チャンネルをとって番組を配列した表形式のものである。




この番組表は,通信回線網を介して受信したデータや,CD−RO

Mなどの記録媒体から読み出したデータであって,このようなデー

タに基づいて番組表表示手段が番組表を表示する。」(段落【00

08】)

g 「次に,利用者が番組表中の番組を視聴番組指定手段によって指

定すると,視聴番組表示手段が指定された番組の映像を表示すると

共に,データ送信手段がチャンネルデータを調査者側に送信する。

チャンネルデータは,放送チャンネルを特定することができるデー

タであればよく,例えば,放送チャンネル名そのものを示すデータ

や,放送チャンネルと一対一に対応するコードなどを利用すること

ができる。」(段落【0009】)

h 「次に,カウント手段が,番組を視聴している利用者の数を放送

チャンネル毎にカウントする。ここでは,チャンネルデータをデー

タ送信手段により送信してきた利用者を,チャンネルデータで特定

される番組を視聴している利用者(以降,視聴者とする)としてカ

ウントする。このカウント手段は,チャンネルデータを受信する毎

に,該チャンネルデータで特定される放送チャンネルの視聴者数

に「1」を加算する処理を実行すればよいが,このチャンネルデー

タを送信してきた利用者が直前に他の放送チャンネルの番組を視聴

していた場合には,該当する放送チャンネルの視聴者数から「1」

を減算する処理をも行う必要がある。このように減算するためには,

例えば,次のような処理を行えばよい。まず,チャンネルデータを,

視聴番組指定手段で指定された番組の放送チャンネルである第1放

送チャンネルと,直前まで視聴番組表示手段が表示していた放送チ

ャンネルである第2放送チャンネルとを特定できるようなデータと

する。そして,カウント手段が,チャンネルデータを構成する第1




放送チャンネルの視聴者数に「1」を加算すると共に,第2放送チ

ャンネルの視聴者数から「1」を減算する。」(段落【0010】)

i 「そして,視聴率算出手段が,調査対象となる利用者数と,カウ

ント手段によってカウントされた放送チャンネル毎の視聴者数とに

基づいて視聴率を算出する。調査対象となる利用者数とは,例えば,

番組表を利用している全利用者の数,該全利用者の中で実際に番組

を視聴している利用者の総数などである。視聴率算出手段は,例え

ば,調査対象となる利用者数のうち特定の放送チャンネルの視聴者

がどれだけいるかの割合(視聴者/調査対象)を視聴率として所定

時間毎に算出するように構成すればよい。」(段落【0011】)

j 「このように構成された視聴率調査システムによれば,番組表中

の番組が指定されることによって,指定された番組を視聴番組表示

手段が表示すると共に,データ送信手段がチャンネルデータを調査

者側に送信する。そのため,調査者側では,番組表上で指定された

番組の視聴率を,チャンネルデータに基づいて調査することができ

る。特に,このチャンネルデータは,番組表を利用して番組を視聴

している全ての利用者から送信されてくるものであるため,正確な

視聴率を算出することができる。」(段落【0012】)

k 「また,別の視聴率調査システムは,前記視聴率算出手段が,放

送チャンネルの番組毎に視聴率を算出するように構成されていて,

前記調査者側に,番組の視聴率が該番組に対応する領域に記載され

た番組表を作成する番組表作成手段と,番組表を利用者側に送信す

る番組表送信手段とを備え,利用者側に,前記調査側の前記番組表

送信手段により送信された番組表を受信する番組表受信手段を備え

ていることを特徴とする。」(段落【0013】),「この視聴率

調査システムにおいて,視聴率算出手段が算出する番組毎の視聴率




とは,例えば,一定時間毎に複数回算出された視聴率を番組の放送

時間内における算出回数で平均した平均視聴率,放送時間内に複数

回算出された視聴率のうち最も高い値となった最高視聴率または最

も低い値となった最低視聴率などである。 (段落
」 【0014】 ,
) 「こ

のように構成された視聴率調査システムによれば,放送が終了した

番組の視聴率や放送中の番組の視聴率を番組表上で確認することが

できる。そのため,番組の視聴率を利用者が番組表上で簡単にチェ

ックできる。」(段落【0015】),「また,別の録画率調査シ

ステムは,前記調査者側に,番組の録画率が該番組に対応する領域

に記載された番組表を作成する番組表作成手段と,番組表を利用者

側に送信する番組表送信手段とを備え,利用者側に,前記調査側の

前記番組表送信手段により送信された番組表を受信する番組表受信

手段を備えていることを特徴とする。」(段落【0024】),「こ

のように構成された録画率調査システムによれば,番組の録画率を

番組表上で確認することができる。そのため,番組の録画率を利用

者が番組表上で簡単にチェックできる。」(段落【0025】)

l 「【発明を実施するための形態】 次に本発明の実施の形態につ

いて例を挙げて説明する。[第1実施形態] 視聴率調査システム

1は,図1に示すように,インターネット100を介してデータ通

信可能に構成された調査者側装置10と,利用者側端末20などに

よって構成される。」(段落【0027】),「調査者側装置10

は,CPU11,ハードディスク(以降,HDとする)12,通信

装置13,ディスプレイ14,キーボード15などを備えた周知の

コンピュータシステムによって構成されるものであり,通信装置1

3を介してインターネット100に接続されている。」(段落【0

028】),「利用者側端末20は,CPU21,ハードディスク




22,通信装置23,ディスプレイ24,キーボード25,マウス

26,テレビチューナー27などを備えた周知のコンピュータシス

テムで構成されるものであり,通信装置23を介してインターネッ

ト100に接続されている。また,この利用者側端末20には,後

述する番組ガイド処理を利用者側端末20に実行させる番組ガイド

プログラムが内蔵されている。」(段落【0029】),「s14

の処理において,番組表中の番組を選択する操作が行われた場合(s

15:NO,s16:YES),利用者側端末20は,選択された

番組が放送中の番組であるかどうかをチェックする(s17)。こ

の処理では,s14の処理で番組表中の番組を選択することによっ

て抽出された放送開始時刻および放送終了時刻を,現在時刻と比較

することによって,選択された番組が放送中の番組であるかどうか

がチェックされる。このs17の処理において,選択された番組が

放送中の番組である場合(s17:YES),利用者側端末20は,

ディスプレイ24の第2領域A2に,選択された番組の映像を表示

する(s18)。この処理において,既にディスプレイ24の第2

領域A2に番組の映像が表示されている場合には,選択された番組

のものに放送チャンネルが切り替えられることになる。」(段落【

0037】),「次に,利用者側端末20は,変数sbcのデータ

を変数ebcにセットした後,変数sbcにs14の処理で選択さ

れた番組の放送チャンネルを示すデータをセットする(s19)。

これによって,直前までディスプレイ24の第2領域A2に映像が

表示されていた番組,つまり,視聴を終了した番組の放送チャンネ

ルが変数ebcにセットされて,新たに視聴する番組の放送チャン

ネルが変数sbcにセットされたことになる。」(段落【0038

】),「次に,利用者側端末20は,チャンネルデータを調査者側




装置10に送信する(s20)。この処理で送信されるチャンネル

データは,変数sbcおよび変数ebcで構成されたデータであ

る。」(段落【0039】)

m 「調査者側装置10は,チャンネルデータを受信することによっ

て,放送チャンネル毎に用意された視聴者数を示す変数bn(1〜

n)のうち,チャンネルデータを構成する変数sbcで特定される

放送チャンネル,つまり,利用者が新たに視聴する番組の放送チャ

ンネルに対応する変数bxに「1」を加算して,同時に変数ebc

で特定される放送チャンネル,つまり,利用者が視聴を終了した番

組の放送チャンネルに対応する変数byから「1」を減算する。こ

こで,変数sbcに「0」がセットされている場合は,以降の処理

で本システムによる番組の視聴を終了する状態となるため,変数b

xへの加算は行われない。また,変数ebcに「0」がセットされ

ている場合は,直線に他の番組を視聴していなかった状態であるた

め,変数byからの減算は行われない。なお,ここで利用者側端末

20から送信されてきたチャンネルデータを受信する調査者側装置

10は,上述したデータ受信手段として機能するものである。また,

変数bxに「1」を加算して,変数byから「1」を減算する調査

者側装置10は,上述したカウント手段として機能するものであ

る。」(段落【0040】),「そして,調査者側装置10は,タ

イムスケジュールに沿って一日の最初に放送される番組の放送が開

始されてから,以降,各放送チャンネルについて1分毎に視聴率を

算出して,随時ハードディスク12に記憶する。ここでは,まず,

1分毎に変数b1〜bnの視聴者数の合計(合計視聴者数)を算出

して,この合計視聴者数と放送チャンネルの視聴者数との比(視聴

者数/合計視聴者数)を視聴率として算出する。なお,本視聴率調




査システム1を会員制または登録制で利用できるシステムとして,

放送チャンネルの視聴者数と,会員または登録済の全ての利用者(総

利用者)との比(視聴者数/総利用者)を視聴率として算出しても

よい。また,上述のように視聴率を算出する調査者側装置10は,

上述した視聴率算出手段として機能するものである。」(段落【0

041】)

n 「このように構成された視聴率調査システム1によれば,番組表

中の番組が指定されることによって,指定された番組がディスプレ

イ24に表示されると共に,チャンネルデータが調査者側装置10

に送信される。そのため,調査者側装置10では,番組表上で指定

された番組の視聴率を,チャンネルデータに基づいて調査すること

ができる。特に,このチャンネルデータは,番組表を利用して番組

を視聴している全ての利用者から送信されてくるものであるため,

正確な視聴率を算出することができる。 (段落
」 【0060】 ,
) 「ま

た,メニュー画像中の録画予約ボタンB2が選択されることによっ

て,録画番組データが調査者側装置10に送信される。そのため,

調査者側装置10では,録画予約ボタンB2が選択された番組の録

画率を,録画番組データに基づいて調査することができる。特に,

この録画番組データは,番組表を利用して番組を録画する全ての利

用者から送信されてくるものであるため,正確な録画率を算出する

ことができる。」(段落【0061】)

o 「[第2実施形態] 視聴率調査システム2は,調査者側装置1

0が利用者側端末20から番組表の要求を受けた際に,後述する番

組表作成処理を実行するように構成されている点のみが第1実施

態と異なるものであって,以下の説明では,第1実施形態との相違

点のみを詳述する。」(段落【0062】),「調査者側装置10




が実行する番組表作成処理を図4に基づいて説明する。この番組表

作成処理は,番組表の送信を要求する内容の要求データを利用者側

端末20から受信することによって開始される。」(段落【006

3】),「まず,調査者側装置10は,要求データに基づいて要求

された地域,時間の番組表をハードディスク12から読み出す(s

51)。この処理で読み出される番組表は,要求データに基づいて

要求された時間以降3時間分の番組表である。」(段落【0064

】),「次に,調査者側装置10は,番組の視聴率が該番組に対応

する領域に記載された番組表を作成する(s52)。この処理にお

いて各番組の表示領域に記載される視聴率は,ハードディスク12

に記憶された視聴率から算出されたものであって,一定時間毎に複

数回算出された視聴率を番組の放送時間内における算出回数で平均

した平均視聴率である。なお,番組表中の番組が一定期間に複数回

連続して放送される番組である場合には,番組に対応する領域に前

回の放送での視聴率および録画率が記載されるように構成してもよ

い。また,番組の表示領域に記載される視聴率として,例えば,対

応する番組の放送時間となる視聴率のうち最大値となる最高視聴率

であってもよい。」(段落【0065】),「そして,調査者側装

置10は,s52の処理で作成された番組表を利用者側端末20に

送信する(s53)。この番組表を受信した利用者側端末20は,

図5に示すように,各番組の表示領域に視聴率および録画率が記載

された番組表が表示される。」(段落【0066】),「なお,以

上説明した視聴率調査システム2において,番組の視聴率が該番組

に対応する領域に記載された番組表を作成する調査者側装置10

は,上述した番組表作成手段として機能するものである。」(段落

【0067】)




p 「このように構成された視聴率調査システム2によれば,放送が

終了した番組の視聴率や放送中の番組の視聴率を利用者が番組表上

で簡単にチェックすることができる。また,番組の録画率を利用者

が番組表上で簡単にチェックすることができる。」(段落【006

8】)

q 「[変形例] 以上,本発明の実施形態について説明したが,本

発明は上記の具体的な実施形態に限定されず,このほかにも様々な

形態で実施することができる。」(段落【0069】),「例えば,

実施形態においては,調査者側装置10が1のコンピュータシス

テムによって構成されたものを例示したが,複数のコンピュータシ

ステムで構成されていてもよい。また,本実施形態においては,利

用者側端末20が周知のコンピュータシステムによって構成されて

いるものを例示したが,利用者側端末20として,携帯情報端末や

携帯電話機などを利用することもできる。 (段落
」 【0070】 ,
) 「ま

た,本実施形態においては,図4のs52において調査者側装置1

0が,番組表に視聴率および録画率を記載するものを例示したが,

番組表には,視聴率と録画率のうちいずれかのみが記載されるよう

に構成されていてもよい。また,視聴率または録画率以外に, (ま
最高

たは最低)視聴率となった時刻,番組を視聴した平均人数などが記

載されるように構成してもよい。」(段落【0079】)

(イ) 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の文言と本件明細

書1の「発明な詳細の説明」の前記(ア)の記載事項(図面を含む。)

を総合すれば,本件明細書1には,@従来,インターネットなどの通

信回線網を介して提供される複数の番組を表形式に配列した番組表に

は,各番組の詳細な内容を確認したり,希望する番組を録画予約した

りできるものがあるが,このような番組表の提供を受けた利用者が,




番組表中からどのような番組を選んで視聴又は録画を行ったのかを知

ることができなかったため,この種の番組表を利用した視聴や録画が

どの程度行われているのかを知りたいという要望があったこと(前記(

ア)b,c),A本件発明1−1は,この要望に応えることを課題とし,

番組表を利用して視聴率及び録画率を調査することができる技術を提

供することを目的とするものであり,この課題を解決するための手段

として,「利用者側」から「調査者側」に送信されるデータに基づい

て,「調査者側」で現在放送中の番組に対応する視聴指標及び録画予

約指標を算出し,上記視聴指標及び録画予約指標を「利用者側」に送

信し,「利用者側」に表示される番組表上の番組に対応づけられて上

記視聴指標及び録画予約指標が表示されるようにするために,「調査

者側」の「サーバ」において,上記データ(視聴状況情報及び録画予

約状況情報)の受信手段,上記視聴指標及び録画予約指標の算出手段

及び送信手段の各手段を備える構成を採用し(前記(ア)c,d),こ

れにより「調査者側」においては番組の正確な視聴率及び録画率を調

査することができ,「利用者側」においては利用者が番組表上で番組

の視聴率及び録画率を簡単にチェックすることができるという作用効

果を奏するようにしたこと(前記(ア)j,k,n,p)が開示されて

いるものと認められる。

上記認定の本件発明1−1の目的及び作用効果に照らすなら

ば,「調査者側」が行う視聴指標及び録画予約指標の調査については

その中立性ないし客観性を確保することは当然の要請であって,かか

る観点からみると,「調査者側」が自ら行う調査の調査対象となるこ

とは不合理であるから,本件発明1−1においては,「調査者側」 「サ


ーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねること,あるいは「利

用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」を兼ねること




は,想定されていないものと認められる。

また,本件明細書1記載の実施例は,前記(ア)lないしpのとお

り,「調査者側装置10」と「利用者側端末」とは,別個独立の装置

構成として記載されている。もっとも,本件明細書1には,「調査者

側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構成されていてもよ

い。」(段落【0070】。前記(ア)q)との記載があるが,上記記

載を段落【0070】の他の記載箇所と併せて読むと,上記記載は,「本

実施形態」では「調査者側装置10が1のコンピュータシステムによ

って構成されたもの」を例示したことを指摘した上で,「調査者側装

置10」が,「1のコンピュータシステム」ではなく,「複数のコン

ピュータシステム」によって構成し得ることを説明したものであり,

それ以上に,「調査者側装置」が「利用者側端末」をも含めて構成し

得ることまで述べたものと解することはできない。

さらに,本件明細書1を全体としてみても,「利用者側」の「利用

者装置」が「調査者側」の「サーバ」の機能の全部又は一部を兼ねる

ことができることの記載や示唆はない。

ウ 本件発明1−1の「サーバ」の意義

(ア) 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載(前記ア)

を基礎に,本件明細書1の記載事項(前記イ)を考慮すると,本件発

明1−1の「サーバ」(構成要件1−1F)は,「利用者装置」(構

成要件1−1A)とは別個独立の装置であって,「利用者装置」が「サ

ーバ」の機能の全部又は一部を兼ねるものとして「サーバ」に含まれ

ることはないものと解するのが相当である。

(イ) これに対し原告は,@「サーバ」とは,一般的に「ネットワーク

上で他のコンピューターやソフト,すなわちクライアントにサービス

を提供するコンピューター。」を意味するものであり,本件発明1−




1の特許請求の範囲(請求項1)は,本件発明1−1の「サーバ」の

装置構成について限定を付していないこと(以下「根拠@」という。 ,


A本件明細書1の【0028】,【0029】,【0070】及び図

1によれば,「調査者側装置10」及び「利用者側端末20」は,い

ずれも「インターネットに接続される周知のコンピュータシステム」

であって,特に構成を異にするものではなく,「調査者側装置10」

を複数のコンピュータシステムで構成する場合,その一つのコンピュ

ータシステムが,「利用者側端末20」と同様の周知のコンピュータ

システムで構成されてもよいことが読み取れるから,本件発明1−1

の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素としての「調査

者側」の構成要素である必要はないこと(以下「根拠A」という。),

B本件原出願の出願時において,同一の機能又は異なる機能を有する

複数のコンピュータが協働してサービスを提供することは周知であ

り,「サーバ」の文言は,利用者側の端末を含み,複数のコンピュー

タからなる場合を含むものとして理解され,使われていたこと(甲3

4ないし43)(以下「根拠B」という。)を総合すれば,本件発明

1−1の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素でなけれ

ばならないと限定解釈すべき理由はなく,この「サーバ」の機能の一

部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきである旨主張する。

しかしながら,原告の上記主張は,以下のとおり理由がない。

a 根拠@及びAについて

前記アで述べたとおり,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求

項1)の文言上,「サーバ」と「利用者装置」とは,本件発明1−

1の構成要素として別個のものであることは明らかであり,一方で,

請求項1には,「利用者装置」が「サーバ」の機能の全部又は一部

を兼ねることができることを規定した記載やこれをうかがわせる記




載はない。

次に,前記イ(イ)で述べたとおり,本件発明1−1の目的及び作

用効果に照らすならば,視聴指標及び録画予約指標の調査の中立性

ないし客観性の確保の観点からみて,「調査者側」が自ら行う調査

の調査対象となることは不合理であり,本件発明1−1において

は,「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を

兼ねること,あるいは「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」

の「サーバ」を兼ねることは,想定されていないものと認められる。

また,原告が指摘する本件明細書1の段落【0070】における「調

査者側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構成されてい

てもよい。」との記載は,「調査者側装置」が「利用者側端末」を

も含めて構成し得ることを記載したものではなく,本件明細書1を

全体としてみても,「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」

の「サーバ」の機能の全部又は一部を兼ねることができることの記

載や示唆はない。

以上によれば,原告が主張する根拠@及びAの点は,本件発明1

−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと

解すべきことの根拠となるものではない。

b 根拠Bについて

原告は,根拠Bに係る具体的な裏付けとして,@特開平10−2

07945号公報(甲34)の【図2】,特開平10−24717

7号公報(甲35)の【図1】には,「サーバ」の文言は,ネット

ワーク上の複数のコンピュータから構成されるものも含むことが

開示されていること,A「情報システムテクニカルガイド 分散シ

ステムのための」(1995年6月30日発行)(甲36)の「(そ

れに対して,ピア・ツー・ピア・モデルではどのプロセスでも相互




作用を開始することができる)サーバは,他のサーバに要求を発行

することでクライアントになることもありえる。…クライアントと

サーバは,…同一のマシンで走ることもあれば,別々のマシンで走

ることもある。」(282頁)との記載,特開平10−16177

7号公報(甲37)の段落【0001】,特開平10−15403

0号公報(甲38)の段落【0010】,【0014】,特開平9

−138810号公報(甲39)の段落【0231】,特開平9−

51398号公報(甲40)の段落【0028】,特開平9−73

410号公報(甲41)の段落【0003】には,「サーバ」の文

言は,利用者側端末と機能を兼ねるコンピュータにも使われること

が開示されていること,B特開平9−91220号公報(甲42)

の段落【0004】ないし【0006】,特開平10−14927

0号公報(甲43)の段落【0012】,【0017】には,サー

バ機能とクライアント機能を兼ねる利用者側コンピュータを「サー

バ」と呼ぶことが開示されていることを指摘する。

しかしながら,原告主張の上記@ないしBに係る開示事項(甲3

4ないし43)は,「サーバ」の文言が,サーバ機能とクライアン

ト機能を兼ねるコンピュータ(端末)に使用されていることを示す

ものにすぎず,サービスを提供する側が管理するサーバコンピュー

タの機能の一部をサービスの提供を受けるユーザー側が管理する

端末に持たせることで,ユーザー側に対するサービスの提供を可能

とする構成を開示したものではない。

したがって,原告主張の上記@ないしBに係る開示事項(甲34

ないし43)は,根拠Bの裏付けとなるものではなく,結局,根拠

Bは,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」

が担ってもよいと解すべきことの根拠となるものではない。




c 小括

以上によれば,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利

用者装置」が担ってもよいと解すべきであるとの原告の主張は理由

がない。

エ イ号装置及びロ号製品の構成要件1−1C,1−1D及び1−1Fの

充足の有無

(ア) ニ号プログラムがインストールされたPS3を,地上波デジタル

放送アンテナに接続したトルネ本体と,被告の管理するネットワーク

であるPSNに接続することにより,地上波デジタル放送番組の視聴

や録画のほかに,トルネで番組の録画予約をした者の人数(トル情報),

トルネで現在放送中の番組を視聴している者の人数(ミル情報)をテ

レビ画面上で表示する機能などの各種機能が実現できること(別紙概

念図参照),「ミル情報」の算出・送受信等の処理の概要は別紙1

に,「トル情報」の算出・送受信等の処理の概要は別紙2にそれぞれ

記載のとおりであることは,前記争いのない事実等(4)イ(イ)のとおり

である。

(イ) 原告は,イ号装置を構成する本件マッチングサーバは,「視聴指

標」としての「ミル情報」を「算出する視聴指標算出手段」(構成要

件1−1C)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)に該当する旨

主張する。

a そこで検討するに,前記(ア)の認定事実によれば,@別紙1記載

のとおり,クエリーオーナー及びルームオーナーとなった所定の「P

S3」が,自身がアクセスしている「Room」が属する「Lob

by」中の全ての「Room」のそれぞれについて現在アクセス

のユーザー数を「Lobby情報」として本件マッチングサーバよ

り受信し,受信した各Roomのユーザー数を合計することにより,




あるチャンネルのミル情報(「現在放送中の番組の視聴者数」とし

ての「ユーザー数の合計値」)を算出していること,Aこのミル情

報の算出処理は,Roomの数が1の場合も,2以上の場合も,P

S3にインスルトールされたニ号プログラムに実装された同一のア

ルゴリズム(乙55の2頁及び3頁参照)により実現されているこ

とが認められる。

上記認定事実によれば,「ミル情報」の算出は,本件マッチング

サーバにおいては行われておらず,クエリーオーナー及びルームオ

ーナーとなった所定のPS3においてニ号プログラムの実行により

行われていることが認められる。

b(a) これに対し原告は,Roomの数が1の場合は,本件マッチ

ングサーバが算出した視聴者数がそのまま(数値操作されること

なく),本件マッチングサーバによって各PS3(ロ号製品)に

ミル情報として提供されているから,ミル情報を算出する主体は,

本件マッチングサーバであり,また,Roomの数が2以上の場

合であっても,各Roomのユーザー数の算出自体は本件マッチ

ングサーバが行い,少なくともミル情報を算出するための基礎と

なる第1段階の計算を本件マッチングサーバが行っていることか

らすると,本件マッチングサーバで算出された各Room内のユ

ーザー数を合算する処理(算出動作)がPS3(ロ号製品)側で

されていたとしても,ミル情報(視聴者数)を算出する主体は,

本件マッチングサーバである旨主張する。

しかしながら,前記a認定のとおり,ミル情報(ユーザー数の

合計値)の算出処理は,Roomの数が1の場合も,2以上の場

合も,PS3にインスルトールされたニ号プログラムに実装され

た同一のアルゴリズム(乙55の2頁及び3頁参照)により実現




されており,本件マッチングサーバによる演算処理(算出処理)

は行われていないのであるから,ミル情報を算出する主体は,本

件マッチングサーバであるということはできず,原告の上記主張

は,採用することができない。

(b) また,原告は,@トルネが接続された複数のPS3(ロ号製

品)のうち,いずれのPS3がクエリーオーナーになるかは,本

件マッチングサーバが管理して決定しており,PS3側に選択権

はないこと,AクエリーオーナーであるPS3が行うミル情報の

算出動作は,PS3のユーザー(利用者)の関与しない動作であ

り,本件マッチングサーバから受け取るデータに基づいて行われ

る動作であること,BクエリーオーナーであるPS3が一部関与

して算出したミル情報は,クエリーオーナーであるPS3から本

件マッチングサーバに渡され,本件マッチングサーバからミル情

報として各PS3に配信されることからすると,クエリーオーナ

ーであるPS3が行うミル情報の算出動作は,本件マッチングサ

ーバが支配管理しているといえるから,本件マッチングサーバの

動作と同一視することができる旨主張する。

しかしながら,原告が挙げる上記@ないしBの諸点から,本件

マッチングサーバがクエリーオーナーであるPS3が行うミル情

報の算出動作を支配管理していると評価することはできず,また,

上記算出動作を本件マッチングサーバの動作と同一視することも

できないから,原告の上記主張は採用することができない。

c したがって,本件マッチングサーバが「ミル情報」を「算出する

視聴指標算出手段」(構成要件1−1C)を備えた「サーバ」(構

成要件1−1F)に該当するとの原告の主張は,理由がない。

(ウ) 原告は,イ号装置を構成する本件ストレージサーバは,「録画予




約指標」としての「トル情報」 「算出する録画予約指標算出手段」
を (構

成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件1−1F)に該当す

る旨主張する。

a そこで検討するに,前記(ア)の認定事実によれば,別紙2記載の

とおり,録画予約処理の際,「トル情報テーブル」中の録画予約対

象番組の録画予約数をインクリメントするのは,録画予約処理を行

うPS3自身であって,本件ストレージサーバではなく,このよう

にインクリメントされる「トル情報テーブル」中の録画予約対象番

組の録画予約数それ自体が「トル情報」であり,「トル情報」の算

出は,本件ストレージサーバにおいては行われておらず,所定のP

S3においてニ号プログラムの実行により行われていることが認め

られる。

b これに対し原告は,本件ストレージサーバに記憶されているデー

タは,データベース管理システムと呼ばれるプログラムによって強

固に管理され,当該プログラムに基づいて動作するCPUが,デー

タを書き換えてもよいかどうかをアクセス権限やロックの有無など

を判断してデータを書き換えているなどとして,システムを全体的

にみれば,トル情報(録画予約数)の算出主体は,本件ストレージ

サーバと評価するのが自然である旨主張する。

しかし,前記aのとおり,「トル情報テーブル」中の録画予約対

象番組の録画予約数をインクリメントするのは,録画予約処理を行

うPS3自身であって,本件ストレージサーバではないのであるか

ら,「トル情報」の算出が所定のPS3によって行われていること

は明らかであり,原告が挙げる諸点は,算出とは直接関係しないデ

ータの保管・管理を問題とするものにすぎない。

したがって,原告の上記主張は,採用することができない。




c 以上によれば,本件ストレージサーバが「トル情報」を「算出す

る録画予約指標算出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サー

バ」(構成要件1−1F)に該当するとの原告の主張は,理由がな

い。

(エ) さらに,原告は,仮に前記(ア)及び(イ)の主張が認められないと

しても,本件発明1−1の「サーバ」は「利用者装置」とは別異の構

成要素でなければならないと限定解釈すべき理由はなく,この「サー

バ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきであり,

所定のPS3(ロ号製品)が「視聴指標を算出する視聴指標算出手

段」(構成要件1−1C)及び「録画予約指標を算出する録画予約指

標算出手段」(構成要件1−1D)を備えた「サーバ」(構成要件

−1F)に該当する旨主張する。

しかしながら,前記ウ(ア)認定のとおり,本件発明1−1の「サー

バ」(構成要件1−1F)は,「利用者装置」(構成要件1−1A)

とは別個独立の装置であって,「利用者装置」が「サーバ」の機能の

全部又は一部を兼ねるものとして「サーバ」に含まれることはないも

のと解するのが相当であるから,「利用者装置」であるPS3(ロ号

製品)が本件発明1−1の「サーバ」に含まれることを前提とする原

告の上記主張は,理由がない。

(オ) 以上のとおり,イ号装置及びロ号製品は,構成要件1−1C,1

−1D及び1−1Fをいずれも充足しない。

(2) まとめ

以上によれば,イ号装置又はイ号装置及びロ号製品が本件発明1−1の

技術的範囲に属するとの原告の主張は理由がない。

2 本件発明1−4ないし1−7の技術的範囲の属否(争点1−(2)ないし(5))

について




前記1(1)エと同様の理由により,イ号装置及びロ号製品は本件発明1−4

構成要件1−4Dの「サーバ」に該当せず,ロ号製品は構成要件1−4D

を充足しないから,ロ号製品が本件発明1−4及び1−5の技術的範囲に属

するとの原告の主張は理由がない。

これと同様に,イ号装置及びロ号製品は本件発明1−6の構成要件1−6

Dの「サーバ」に該当せず,ニ号プログラムは構成要件1−6Dを充足しな

いから,ニ号プログラムが本件発明1−6及び1−7の技術的範囲に属する

との原告の主張は理由がない。

3 本件発明2−1,2−4ないし2−9の技術的範囲の属否(争点1−(6)な

いし(12))について

(1) 本件発明2−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記争いのな

い事実等(3)イ(ア)及び(イ)aのとおりであり,また,本件明細書2(甲1

5)の発明の詳細な説明には,前記1(1)イと同様の記載がある(ただし,

本件明細書1の段落【0005】,【0006】,【0008】ないし【

0015】,【0024】,【0025】,【0027】ないし【002

9】,【0037】ないし【0041】,【0060】ないし【0070

】は,それぞれ本件明細書2の段落【0005】及び【0006】,【0

007】及び【0008】,【0010】ないし【0018】,【002

9】,【0030】,【0031】ないし【0034】,【0044】な

いし【0048】,【0069】ないし【0080】である。)。

そして,本件発明2−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載を基礎に,

本件明細書2の記載事項を考慮すると,本件発明2−1の「サーバ」(構

成要件2−1G)は,「利用者装置」(構成要件2−1A)とは別個独立

の装置であって,「利用者装置」が「サーバ」の機能の全部又は一部を兼

ねるものとして「サーバ」に含まれることはないものと解するのが相当で

ある。




(2) 前記1(1)エと同様の理由により,イ号装置及びロ号製品は本件発明2

−1の「サーバ」に該当せず,イ号装置及びロ号製品は,構成要件2−1

C,2−1D及び2−1Gをいずれも充足しないから,イ号装置又はイ号

装置及びロ号製品が本件発明2−1の技術的範囲に属するとの原告の主

張は理由がない。

これと同様に,イ号装置及びロ号製品は本件発明2−4の構成要件2−

4Fの「サーバ」に該当せず,ロ号製品は構成要件2−4Fを充足しない

から,ロ号製品が本件発明2−4ないし2−6の技術的範囲に属するとの

原告の主張は理由がない。

また,同様に,イ号装置及びロ号製品は本件発明2−7の構成要件2−

7Eの「サーバ」に該当せず,ニ号プログラムは構成要件2−7Eを充足

しないから,ニ号プログラムが本件発明2−7ないし2−9の技術的範囲

に属するとの原告の主張は理由がない。

4 ハ号製品の製造等の間接侵害の成否(争点2)について

前記2及び3(2)認定のとおり,ロ号製品は本件発明1−4,1−5,2−

4ないし2−6の技術的範囲に属さないから,ロ号製品の構成は上記各発明

の「利用者装置」として機能させることはできない。

したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告によるハ号製

品の製造及び販売について本件発明1−4,1−5に係る本件特許権1及び

本件発明2−4ないし2−6に係る本件特許権2の間接侵害(特許法101

条1号,2号)が成立するとの原告の主張は,理由がない。

5 結論

以上のとおり,イ号装置,ロ号製品及びニ号プログラムは,いずれも本件

各発明の技術的範囲に属さず,また,被告によるハ号製品の製造及び販売に

ついて間接侵害(特許法101条1号,2号)は成立しない。

したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,い




ずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第46部



裁判長裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 上 田 真 史




裁判官 石 神 有 吾





(別紙) 物件目録

1 「PSN(プレイステーションネットワーク)」内の「マッチングサーバ」

及び「ストレージサーバ」

2 「プレイステーション3」及び「torne(トルネ)」(同梱されたディ

スク(プログラムが記憶された媒体)を含む。)

3 「torne(トルネ)」(同梱されたディスク(プログラムが記憶された

媒体)を含む。)

4 「torne(トルネ)」に付属するディスクに記憶されているプログラム





(別紙1)

●(省略)●





(別紙2)

●(省略)●





(別紙) 明細書図面



【図1】





【図2】





【図5】