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関連審決 無効2011-800081
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事件 平成 24年 (行ケ) 10091号 審決取消請求事件

原告 株式会社ユニバーサル エンターテインメント
同訴訟代理人弁理士 鹿股俊雄 瀧本十良三
被告Y
同訴訟代理人弁理士 黒田博道 北口智英 石井豪 鈴木毅
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/12/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2011-800081号事件について平成24年2月3日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,原告が,後記1のとおりの手続において,原告の後記2の本件発明に係る特許に対する被告の無効審判請求について,特許庁が,同請求を認め,当該特許を無効とした別紙審決書(写し)記載の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯 1 (1) 原告は,発明の名称を「スロットマシン」とする特許第4208368号(平成11年12月22日特許出願。平成20年10月31日設定登録。請求項の数1。以下「本件特許」という。)に係る特許権者である(甲22)。
(2) 被告は,平成23年5月25日,本件特許について特許無効審判を請求し,特許庁に無効2011-800081号事件として係属した。
(3) 原告は,平成23年8月11日付け訂正請求書により訂正請求したところ(甲14。以下「本件訂正」といい,本件訂正後の明細書(甲15)を,図面(甲22)を含め,「本件明細書」という。),特許庁は,平成24年2月3日,本件訂正を認めた上,本件特許を無効とする旨の本件審決をし,同月13日,その謄本が原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示す。以下,本件特許に係る発明を「本件発明」という。
複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールをステッピングモータで回転駆動させることにより前記図柄を可変表示する機器前面から観察される可変表示装置と,/乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段およびこの入賞態様決定手段によって決定された入賞態様に基づいて前記図柄の可変表示を制御する可変表示制御手段が構成された主制御回路と,/前面扉の表面側に設けられた種々の情報を表示する表示装置と,この表示装置の表示を制御する表示制御回路と,/効果音を出音するスピーカとを備えて構成されるスロットマシンにおいて,/前記スピーカの出音を制御すると共に前記入賞態様決定手段によって決定された入賞態様およびその時の遊技状態に基づいて前記表示装置に表示する画像演出パターンの種類の選択処理を行う,前記主制御回路に接続された副制御回路を備え,/前記主制御回路および前記副制御回路は機器を収容する筐体の背面内側に取り付けられた基板に構成され,/前記表示制御回路は,前記副制御回路に接続され,前記前面扉の背面側であって前記表示装置とは異なる位置に取り付けられた基板に構成されて 2 いることを特徴とするスロットマシン3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件審決の理由は,要するに,本件発明は,後記ア及びイの引用例1及び2に記載された発明並びに後記ウないしケの周知例1ないし7に記載された周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである,というものである。
ア 引用例1:特開平5-123444号公報(甲1)イ 引用例2:特開平11-244452号公報(甲2。平成11年9月14日公開)ウ 周知例1:特開平11-47351号公報(甲3。平成11年2月23日公開)エ 周知例2:特開平11-9761号公報(甲4。平成11年1月19日公開)オ 周知例3:特開平11-216222号公報(甲5。平成11年8月10日公開)カ 周知例4:「パチスロ完全攻略辞典VOL.10」32,77,116ないし117頁,日本文芸社,平成10年12月20日発行(甲7)キ 周知例5:特開平7-328201号公報(甲10)ク 周知例6:特開平11-434号公報(甲11。平成11年1月6日公開)ケ 周知例7:特開平11-276677号公報(甲12。平成11年10月12日公開) (2) なお,本件審決が認定した引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)並びに本件発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 引用発明:(A)前面枠の前面側上部にはパネル表示部が設けられている。
このパネル表示部の中央には可変表示部としての3つの可変表示窓が設けられ,各 3 可変表示窓には上,中,下段に1つずつ,合計3つずつ表示が現出されるようになっている。各可変表示窓中には可変表示ドラムがある。可変表示ドラム装置は,ドラムボックスと,該ドラムボックス中に設置された複数(例えば,3つ)のドラムユニットを備えている。前記ドラムユニットは,パルスモータ(ステッピングモータ等も含む。),該パルスモータの駆動軸に取り付けられた可変表示ドラムを具えている。前記パルスモータは,可変表示ドラムをその回転の停止角度位置を制御し得る状態で回転させる。前記可変表示ドラム装置の各可変表示ドラムのリール部の外周面には,可変表示ゲーム用の各種表示図柄が表示されている。
(B)以下の手順を含んだメイン制御処理を行うメイン制御装置を有する。
・スタートスイッチがオン(ON)されると,可変表示ドラムの回転制御を行う。
・ボーナス判定処理の結果として合格(ボーナスゲームが発生)したときにはボーナスフラグ成立の処理を行う。
・小役判定の結果が合格であるか(小役が発生したか)否かを判定し,判定の結果に応じて小役フラグの成立処理又は不成立処理を行う。
・可変表示ドラムの可変表示タイマがタイムアップしたか否かを判定する。タイムアップしたと判定したときには可変表示ドラムの停止制御を行う。タイムアップしていないと判定したときには,ストップスイッチがオンしたか否かを判定し,オンしたと判定したときには可変表示ドラムの停止処理を行う。
(C)前面枠の前面側上部にはパネル表示部が設けられている。パネル表示部の上部中央にはゲーム等に関する各種情報を表示する情報表示部が設けられている。
(D)液晶パネル制御基盤の制御により情報表示部へのメッセージ表示が開始される。
(E)スタート音,ストップ音及び賞球排出音を発するスピーカを有する。
“ビッグチャンス”が発生したときに“ビッグチャンス”の発生を知らせる効果音が発せられる。ビッグチャンスを発生させ得るリーチ状態が生じたときには効果音が発せられる。
4 (F)メイン制御装置上のマイクロコンピュータは液晶パネル制御基盤及びスピーカを制御又は支配する。
(G)液晶パネル制御基盤は,前面枠に取り付けられた液晶テレビ装置の図柄表示パターン等を管理する。情報表示部は,ビッグチャンス時に所定の表示がなされ,他の時に他の表示がなされる。
(H)メイン制御装置は,マイクロコンピュータ及び音声合成回路等の複数の回路から構成されるとともに,本体ケースに収容されている。
(I)メイン制御装置には,前面枠に取り付けられた液晶テレビ装置の図柄表示パターン等を管理する液晶パネル制御基盤が接続されている。前面枠裏側の上段側には液晶パネル制御基盤が設置されている。
(J)スロットマシンであるイ 一致点:複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールをステッピングモータで回転駆動させることにより前記図柄を可変表示する機器前面から観察される可変表示装置と,遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段及び前記図柄の可変表示を制御する可変表示制御手段が構成された主制御回路と,前面扉の表面側に設けられた種々の情報を表示する表示装置と,この表示装置の表示を制御する表示制御回路と,効果音を出音するスピーカとを備えて構成されるスロットマシンにおいて,前記スピーカの出音を制御し,その時の遊技状態に基づいて前記表示装置に表示する画像演出パターンの種類の選択処理を行い,前記主制御回路は機器を収容する筐体内の基板に構成され,前記表示制御回路は,前記前面扉の背面側に取り付けられた基板に構成されている,スロットマシンである点ウ 相違点1:本件発明が「乱数抽選によって」遊技の入賞態様を決定するのに対し,引用発明は,遊技の入賞態様をどのように決定するのか不明である点エ 相違点2:本件発明が「入賞態様決定手段によって決定された入賞態様に基づいて」図柄の可変表示を制御するのに対し,引用発明は,図柄の可変表示をどのように制御するのか不明である点 5 オ 相違点3:本件発明において「スピーカの出音を制御する」のが「主制御回路に接続された副制御回路」であるのに対し,引用発明において「スピーカ」の出音を制御するのは,本件発明における「主制御回路」に相当する「マイクロコンピュータ」であって,「副制御回路」ではない点カ 相違点4:本件発明における「前記表示装置に表示する画像演出パターンの種類の選択処理」が,「入賞態様決定手段によって決定された入賞態様」及び「その時の遊技状態」に基づくのに対し,引用発明における「図柄表示パターン」を選択する処理は,「その時の遊技状態」には基づくものの,「入賞態様決定手段によって決定された入賞態様」に基づくか否かは不明である点キ 相違点5:本件発明においては,「画像演出パターンの種類の選択処理」を「主制御回路に接続された副制御回路」が行うのに対し,引用発明においては,「図柄表示パターン」を選択する処理を何が行うのか不明である点ク 相違点6:本件発明においては,「主制御回路」及び「副制御回路」が「基板に構成される」のに対し,引用発明においては,「マイクロコンピュータ」及び「音声合成回路」等の複数の回路が「メイン制御装置」に構成されているものの,本件発明における「副制御回路」に相当する回路は構成されていない点ケ 相違点7:本件発明における「基板」が「筐体の背面内側に取り付けられ」ているのに対し,引用発明における「メイン制御装置」は,「本体ケース」内にはあるものの,「本体ケース」の「背面内側」に取り付けられたものではない点コ 相違点8:本件発明における「表示制御回路」が「副制御回路」に接続されているのに対し,引用発明における「液晶パネル制御基盤」はそのような構成ではない点サ 相違点9:本件発明における「表示制御回路」を構成する「基板」が「表示装置とは異なる位置に取り付けられた」のに対し,引用発明における「液晶パネル制御基盤」は「情報表示部」と同じ位置に取り付けられた点4 取消事由 6 容易想到性に係る判断の誤り (1) 本件発明と引用発明との対比の誤り (2) 相違点の認定の誤り (3) 相違点3,5及び8に係る判断の誤り (4) 相違点9に係る判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 1 本件発明と引用発明との対比の誤り (1) 本件審決は,本件発明と引用発明との一致点を認定する前提として,引用発明の「図柄表示パターン」は本件発明の「画像演出パターン」に相当すると認定した。
しかし,本件発明の「画像演出パターン」は,ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するものであり,これによりパチスロ機のゲーム性を豊かにして,ゲームの興趣を高めるという作用効果を果たすものである。
これに対し,引用発明の「図柄表示パターン」は,単に数字,文字又は文章を用いてゲームのガイダンスや賞球数等の各種数値を表示するものであり,遊技者に画像によってゲームの興趣を引き起こすようなものではないから,両者は表示内容や表示目的及び作用効果が明確に異なる。
したがって,本件審決の上記認定は誤りである。
(2) また,本件審決は,引用発明の「液晶パネル制御基盤」は本件発明の「表示制御回路」に相当すると認定した。
しかし,引用発明の液晶パネル制御基盤が行う「図柄表示パターン」と本件発明の「表示制御回路」が行う「画像演出パターン」とは,前記(1)のとおり,その内容が異なるものである。
したがって,引用発明の「液晶パネル制御基盤」と本件発明の「表示制御回路」 7 とは,それぞれが実行する演出内容,演出タイミングが明確に相違するから,本件審決の上記認定は誤りである。
(3) 被告の主張について被告は,原告が本件発明について主張する「人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示する」という作用効果は,単に実施例の作用効果を述べたものであり,特許請求の範囲の記載に基づいた主張ではないから,失当であると主張する。
しかし,特許請求の範囲に記載された用語の意義は,明細書及び図面の記載に基づいて解釈されるものであり(特許法70条2項),特許請求の範囲に記載された用語を明細書に記載された構成や作用効果等に基づいて解釈することは当然に許されるべきことである。また,知財高裁平成17年(ネ)第10103号同年10月28日判決においても,「特許発明技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが,その記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として明細書の他の部分にされている発明の構成及び作用効果を考慮することは,なんら差し支えないものと解すべきである」旨判示されている。
これを本件についてみると,本件明細書の「一般遊技中にハズレ当選フラグが立っている場合には,確率抽選結果がおもわしくなかったことを表示する悔しがる演出パターンが選択され,また,一般遊技中にBB当選フラグが立った場合には,確率抽選結果,内部当たりが発生したことを表示する喜ばしい演出パターンが選択される。」との記載(【0046】)や,「画像制御CPUは,入力ポートを介してサブ制御回路から入力される指示に従い,画像制御ICを制御して指定された演出パターンの画像表示を液晶表示装置に行う。画像制御ICは,この際,キャラクタ・データが記憶されたキャラクタROM及びカラーディスプレイ表示用メモリであるビデオRAMを用いて画像表示を行う」(【0048】)との記載を参酌すれば,本件発明の「画像演出パターン」は,人物キャラクタ等の喜怒哀楽を表示するような画像演出パターンであると解釈できることは明らかである。
8 以上のとおり,原告は,特許法70条2項の趣旨に添って,本件発明の「画像演出パターン」の内容及び意義を明細書の記載に基づいて解釈したものである。被告の主張は,同項の趣旨に反するものであって,失当である。
2 相違点の認定の誤り 引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものではないから,これらを相違点として認定すべきところ,本件審決には,この相違点を看過した誤りがある。
3 相違点3,5及び8に係る判断の誤り (1) 本件審決は,周知例5ないし7を挙げ,スピーカの出音を制御するとともに主制御回路からのデータに応じて表示制御回路を制御する副制御回路を,主制御回路及び表示制御回路とは別に設けることは周知である(以下「周知技術1」という。)から, 引用発明に周知技術1を適用して,マイクロコンピュータが実行しているスピーカの出音の制御並びに液晶パネル制御基盤の制御若しくは支配を,マイクロコンピュータ及び液晶パネル制御基盤とは別の副制御回路に担当させることは,当業者が適宜行い得るものであると判断した。
しかし,前記1のとおり,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものではないから,引用発明に周知技術1を適用したとしても,相違点3,5及び8に係る本件発明の構成が導かれることはない。
また,本件発明は,単に前面扉を交換するだけで演出内容を一新させるという目的を達成するために,表示制御回路をスロットマシンの前面扉に取り付け,主制御回路及び副制御回路を筐体に取り付けるという構成を採用したものである。これに対し,周知技術1の認定の根拠とされた周知例5ないし7は,いずれもパチンコ機に関する発明であって,前面扉はガラス板からなり(周知例7【0019】図4), 9 表示装置や表示制御回路を含む各種制御基板はパチンコ機本体(筐体)に装着されている。さらに,周知例5ないし7に示されている副制御回路(例えば,周知例5のLCD制御部)は液晶表示装置(同様に周知例5のLCD)に表示される図柄の可変表示制御や演出制御を行うもので,本件発明のように主制御回路がリールの可変表示制御等を行い,副制御回路が出音及び画像演出パターンの選択処理を行うものとは,主制御回路,副制御回路及び表示制御回路の機能,構成が明確に相違する。
以上のとおり,周知例5ないし7には,表示制御回路をスロットマシンの前面扉に取り付け,主制御回路及び副制御回路を筐体に取り付けるという本件発明の構成を何ら示唆するものではない。また,周知例5ないし7に記載の主制御回路,副制御回路及び表示制御回路の機能,構成は,本件発明に係る主制御回路,副制御回路及び表示制御回路とは異なるから,そのようなパチンコ機の構成を引用発明に適用しても,相違点3,5及び8に係る本件発明の構成が導かれることはない。
(2) 次に,本件審決は,引用発明においては,「図柄表示パターン」を選択する処理を何が行うのか不明であるが,「図柄表示パターン」を選択する処理を何に行わせるかは,「図柄表示パターン」を選択する上で,当業者が適宜決定し得るものであり,引用例2(【0033】【0034】【0038】【0067】等)には,入賞態様を決定する「内部当選判定部」(本件発明の主制御回路に相当する。)及び所定の演出パターンで演出用ランプを制御する「演出動作制御部」(同様に表示制御回路に相当する。)とは別に設けられた「演出動作決定部」(同様に副制御回路に相当する。)により,入賞態様に基づいて演出パターンの種類の選択処理を行うことが開示されているから,引用発明に周知技術1を適用して副制御回路を設けた場合において,当該副制御回路に「図柄表示パターン」を選択する処理を行わせることは,当業者が容易に想到し得るものであると判断した。
確かに,引用例1には,メイン制御装置からの指示に基づき液晶パネル制御基盤がゲームの進行に応じたメッセージやガイダンス又は賞球数等の各種数値を液晶テ 10 レビに表示することが開示されており,本件発明の表示制御回路が副制御部からの指示に基づいて入賞態様やその時の遊技状態に応じた画像演出パターンを表示する点で,一見類似しているように見える。
しかし,引用発明のメッセージ,ガイダンス又は数値表示からなる「図柄表示パターン」は,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が本質的に相違する。
また,引用例2に記載された演出パターンも,演出用ランプを点滅,点灯させることによる演出であって,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が全く異なる。
したがって,本件審決の上記判断は,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」が,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するとした誤りを前提としている点で失当である。
(3) 以上によれば,相違点3,5及び8に係る本件発明の構成が,引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知例5ないし7記載の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとした本件審決の判断は誤りである。
4 相違点9に係る判断の誤り本件審決は,異なる手段を異なる位置に取り付けることは周知であり(以下「周知技術2」という。),異なる手段を異なる位置に取り付けることにより各手段ごとに交換ができることも自明な効果にすぎないので,引用発明における液晶パネル制御基盤及び情報表示部をそれぞれ異なる位置に取り付けることは,当業者が適宜なし得るものであり,その場合の効果も予測し得る程度のものであると判断した。
しかし,本件発明は,表示制御回路を構成する基板が表示装置とは異なる位置に取り付けられる構成とすることにより,表示制御回路だけでなく,表示装置も新装の際に単独で交換することを可能ならしめ,その結果,液晶表示技術の進展に応じて表示画面の大型化や微細化等を図った表示装置に交換することを可能としたものであり,その技術的意義及び商業上の価値は大きなものである。また,前面扉に装着された表示制御回路と表示装置を別体としたことにより,いずれかが故障した場 11 合でも一方のみを交換すればよくなり,さらに,前面扉の厚みを薄くできるという作用効果も奏するものである。
本件審決の上記判断は,上記のような本件発明の新規な構成及びその技術的意義を全く無視したものである,また,本件審決は,上記判断の根拠となる技術分野や交換するという行為の背景を何ら示しておらず,極めて雑で,かつ漠然,曖昧な認定であり,何を根拠としているのか全く理解できない。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
〔被告の主張〕 1 本件発明と引用発明との対比の誤りについて (1) 原告は,引用発明の「画像表示パターン」と本件発明の「画像演出パターン」とは,表示内容や表示目的及び作用効果が明確に異なると主張する。
しかし,原告の主張は,特許請求の範囲に記載された構成に基づくものではない。
特に,本件発明が「人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示する」という作用効果は,特許請求の範囲に記載されたいずれの構成からも導き出せない作用効果である。原告の主張は,単に実施例の作用効果を述べたにすぎず,失当である。
(2) 原告は,引用発明の「液晶パネル制御基盤」と本件発明の「表示制御回路」とは,それぞれが実行する演出内容,演出タイミングが明確に相違するから,引用発明の「液晶パネル制御基盤」を本件発明の「表示制御回路」に相当するとした本件審決の認定は誤りであると主張する。
しかし,原告のいう「演出内容の相違」が,本件発明が「人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示する」ことにあるのだとすると,前記(1)と同様に,単に実施例の作用効果を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づく主張ではないから,失当である。
2 相違点の認定の誤りについて 原告は,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞ 12 れ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものでないことを前提して,本件審決には相違点を看過した誤りがある旨主張する。
しかし,前記1のとおり,原告の主張は,単に実施例の作用効果からの相違を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づいた主張ではないから,失当である。
3 相違点3,5及び8に係る判断の誤りについて(1) 原告は,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものではないから,引用発明に周知技術1を適用したとしても,相違点3,5及び8に係る本件発明の構成が導かれることはないと主張する。
しかし,原告の主張は,単に実施例の作用効果からの相違を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づくものではないから,失当である。
(2) 原告は,本件審決が周知技術1の根拠とした周知例5ないし7はいずれもパチンコ機に関するものであり,スロットマシンとはその構成が相違する旨主張する。
しかし,本件発明と引用発明との関係では,主制御回路に接続された副制御回路及びこの副制御回路に接続された表示制御回路の関係と,主制御回路,副制御回路及び表示制御回路の取付位置が問題とされているのである。いずれもパチンコ機及びスロットマシンでともに使用されている回路であるから,パチンコ機の構成をスロットマシンの構成に適用することに違法性はなく,本件審決の判断に誤りはない。
(3) 原告は,引用発明のメッセージ,ガイダンス又は数値表示からなる「図柄表示パターン」は本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が本質的に異なり,引用例2記載の演出パターンも,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が全く異なるなどと主張する。
しかし,原告の主張は,単に引用例1に記載された実施例の作用効果からの相違を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づいた主張ではないから,失 13 当である。
4 相違点9に係る判断の誤りについて原告は,異なる手段を異なる位置に取り付けることより各手段ごとに交換ができることは自明な効果にすぎないとした本件審決の判断は,根拠とする技術分野や交換するという行為の背景を何ら示しておらず,極めて雑であるなどと主張する。
しかし,本件審決が認定した周知技術2は,例示する必要がない程よく知られている技術であり,2つのものを重ねた場合と,別体にした場合の広く知られた作用効果を認定したものであって,本件審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 本件発明について (1) 本件発明は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲15)には,本件発明について,概略,次の記載がある。
ア 本件発明は,複数の図柄を可変表示する可変表示装置の他にさらに種々の情報を表示する表示装置を備えたスロットマシンに関するものである(【0001】)。
イ 図1は,従来のスロットマシンであり,前面扉の背後に3個のリールが3列に並設され,各リールの外周には種々の図柄が描かれており,前面扉に形成された各窓を介して観察される。各リールの右方の前面扉に設けられた液晶表示装置は,種々の情報を表示する表示装置であり,各リールの回転や遊技履歴を表示したり,ボーナスゲーム中に演出を行ったりする(【0002】〜【0004】)。
リール等の各装置は筐体に収容され,リールの上方の筐体の背面内側には主制御基板が取り付けられている。入賞態様決定手段及びリール停止制御回路は,この主制御基板の主制御回路に構成されている。液晶表示装置の表示を制御する表示制御回路もこの主制御基板に構成されている(【0005】)。
ウ 遊技店のスロットマシンは,一般的にある程度の期間が経過すると,遊技客の目先を変えるために装いを新たにする。遊技台がまるごと取り替えられるのでは 14 なく,一部の装置についてだけ小規模に行われ,新装にかかる労力及び費用が抑制される(【0006】)。
遊技台をまるごと替えない小規模な新装を行う手段として,前面扉のみを替えるという手段が提案されている。この手段により,遊技者が遊技台に触る部分あるいは遊技者の視界に入る部分が一新し,遊技台の外観に変化をもたらすことができる(【0007】)。
しかし,最近主流となりつつある液晶表示装置が搭載されたスロットマシンについては,前面扉のみを替えるだけでは,液晶表示装置の表示制御回路を替えることができないため,液晶表示装置の表示内容は従来と変わらず,遊技者に新鮮さを与えることはできないため,筐体内に取り付けられた主制御基板をも替えて,液晶表示装置の表示を制御する表示制御回路を替える必要があり,新装にかかる労力及び費用の抑制が徹底されないこととなる(【0008】【0009】)。
エ 本件発明は,上記課題を解決するため,請求項1記載の構成としたものである。スロットマシンの小規模な新装のため,前面扉を取り替えてその外観に変化をもたらす際,表示装置の表示制御回路が前面扉に集約されていることから,前面扉とともにこの表示制御回路も新たな回路に取り替えることができる。また,主制御回路及び副制御回路が機器を収容する筐体の背面内側に取り付けられた基板に構成されているため,新装の際に,表示制御回路は新たな回路に取り替えながら,主制御回路及び副制御回路は既存の回路を使うこともできる(【0010】【0011】【0013】)。
オ 本件発明の一実施形態について説明する(【0014】)。
サブCPUは,その時の遊技状態及び入賞態様決定手段で決定された当選フラグの種類といった情報を入力ポートを介してメイン制御回路から取り込み,取り込んだ遊技状態及び当選フラグに基づき,画像制御回路で行われる画像表示制御の画像演出パターンを選択する(【0045】)。
例えば,一般遊技中にハズレ当選フラグが立っている場合,確率抽選結果がおも 15 わしくなかったことを表示する悔しがる演出パターンが選択され,また,一般遊技中にBB当選フラグが立った場合には,確率抽選結果,内部当たりが発生したことを表示する喜ばしい演出パターンが選択される。選択された演出パターンは出力ポートを介して画像制御回路へ出力される(【0046】)。
画像制御CPUは,入力ポートを介してサブ制御回路から入力される指示に従い,画像制御ICを制御して指定された演出パターンの画像表示を液晶表示装置に行う。
画像制御ICは,この際,キャラクタ・データが記憶されたキャラクタROM及びカラーディスプレイ表示用メモリであるビデオRAMを用いて画像表示を行う(【0048】)。
(2) 以上の記載のとおり,従来のスロットマシンでは,遊技台をまるごと替えない小規模な新装を行う手段として,前面扉のみを替えるという手段があったところ,液晶表示装置を搭載した最近のスロットマシンでは,かかる手段を用いた新装では,液晶表示装置の表示内容まで一新することは不可能であり,表示内容を一新するには,筐体内に取り付けられた主制御基板をも替えて,液晶表示装置の表示を制御する表示制御回路を替えることが必要になるという課題があった。そこで,本件発明は,この課題を解決するため,表示装置の表示を制御する表示制御回路を前面扉に取り付け,また,主制御回路及び副制御回路は機器を収容する筐体の背面内側に取り付けられた基板に構成し,表示制御回路は,前面扉の背面側であって表示装置とは異なる位置に取り付けられた基板に構成することにより,前面扉を取り替えてその外観に変化をもたらす際に,前面扉とともにこの表示制御回路も新たな回路に取り替えることができ,また,主制御回路及び副制御回路が機器を収容する筐体の背面内側に取り付けられた基板に構成されているため,新装の際に,表示制御回路は新たな回路に取り替えながら,主制御回路及び副制御回路は既存の回路を使うことができるという作用効果を奏するというものである。
2 引用発明について(1) 引用発明は,前記第2の3(2)ア記載のとおりであるところ,引用例1(甲 16 1)には,引用発明について,概略,次の記載がある。
ア 引用発明は,基枠に対し片開き形式の前面枠がヒンジを介して開閉自在に取り付けられ,前面枠に各種電気部品が取り付けられた遊技機に関する(【0001】)。
イ 従来のスロットマシン等の遊技機としては,基枠に対しヒンジを介して開閉可能に支持された片開き形式の前面枠を有し,この前面枠に各種電気部品が取り付けられたものがある。前面枠に樹脂を使用した場合には,木板や金属板を使用した場合に比して,加工しやすく,コスト安になるという利点があるが,耐久性に欠け,ヒンジを構成する軸受金具の取付部が破損しやすいなどの問題点がある。また,前面枠として,いずれの材料を使った場合でも,前面枠の裏側の配線が複雑で邪魔になりやすいという問題点がある。
引用発明は,これらの問題点を解決するため,樹脂を採用した前面枠の強度性と裏側配線処理の簡素化とを同時に満足し得る遊技機を提供することを目的とする(【0002】【0003】)。
実施例(ア) パネル表示部の上部中央には,ゲーム等に関する各種情報を表示する情報表示部が設けられている(【0009】)。
(イ) 前面枠裏側の上段側には液晶パネル制御基盤が,また,その下段右側下部には中継基盤が,それぞれ設置されている(【0014】)。
(ウ) 液晶パネル制御基盤の制御により情報表示部へのメッセージ表示が開始され,可変表示窓中のランプ,スコア表示部中のランプが点灯した状態となる(【0018】)。
(エ) ゲームの結果,可変表示窓中の表示の組合せが“ビッグチャンス”を発生させる表示の組合せとなったときには,“ビッグチャンス”が発生してビッグチャンス表示部中のランプが点灯される。ビッグチャンスの発生時には情報表示部に, 17 “ビッグチャンスおめでとうございます。”の表示と,ボーナスゲームの発生し得る回数(ボーナスゲームの残りの回数)の表示がされる(【0024】)。
(オ) 情報表示部の表示としては,例えば,普通表示(ゲーム説明),オート/マニュアル表示,取込数表示,操作手順表示,クレジット数表示,賞球表示等がある(【0036】)。
(2) 以上の記載のとおり,引用発明は,基枠に対し片開き形式の前面枠がヒンジを介して開閉自在に取り付けられ,前面枠に各種電気部品が取り付けられた遊技機において,樹脂を採用した前面枠の強度性と裏側配線処理の簡素化とを同時に満足し得る遊技機の提供を目的とするものであるところ,引用発明においては,@液晶パネル制御基盤の制御により情報表示部へのメッセージ表示が開始される構成,A液晶パネル制御基盤が,前面枠に取り付けられた液晶テレビ装置の図柄表示パターン等を管理し,情報表示部は,ビッグチャンス時に所定の表示がなされ,他の時に他の表示がなされる構成等が用いられている。
3 本件発明と引用発明との対比の誤りについて(1) 引用発明の上記構成@との関係について引用発明の「液晶パネル制御基盤」は,「情報表示部」を制御するものであるから,「情報表示部」を制御するための回路が構成されていることは明らかである。
そうすると,引用発明の「液晶パネル制御基盤」は,本件発明において表示装置の表示を制御する「表示制御回路」に相当するものと認められる。
(2) 引用発明の上記構成Aとの関係について引用発明においては,ビッグチャンス時やボーナスゲーム時であることに基づき,「情報表示部」に表示される「図柄表示パターン」が選択処理されるものである。
他方,本件発明においても,乱数抽選によって決定された遊技の入賞態様及び遊技状態に基づき,副制御回路によって,表示装置に表示される「画像演出パターン」が選択処理されるものである(【請求項1】)。
そうすると,引用発明の「図柄表示パターン」は,本件発明の「画像演出パター 18 ン」に相当するものというべきである。
(3) 原告の主張についてア 原告は,本件発明の「画像演出パターン」は,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するものであるのに対し,引用発明の「図柄表示パターン」は,単に数字,文字又は文章を用いてゲームのガイダンスや賞球数等の各種数値を表示するものであり,両者は表示内容や表示目的及び作用効果が明確に異なるから,引用発明の「図柄表示パターン」が本件発明の「画像演出パターン」に相当するとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,本件発明の特許請求の範囲には,本件発明にいう「画像演出パターン」が,ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するものであるとの記載はない。また,本件明細書においても,「画像演出パターン」が,上記のような表示をするものであるとの定義はされていない。さらに,「人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示する」という作用効果は,特許請求の範囲に記載されたいずれの構成からも導き出せるものでもない。原告の主張は,単に実施例(【0046】【0048】)の作用効果を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
そして,「画像演出パターン」との用語が,文字や文章を用いた画像表示を排除したものであるとは認められないから,引用発明の「図柄表示パターン」が,本件発明の「画像演出パターン」に相当するとした本件審決に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
イ 原告は,特許法70条2項の趣旨に基づいて,本件発明の「画像演出パターン」の内容及び意義を本件明細書の記載に基づいて解釈すると,「ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するもの」と解釈されるべきである旨主張する。
しかしながら,特許法70条2項は,特許発明技術的範囲を定めるに当たり,特許請求の範囲に記載された用語については,明細書や図面の記載を考慮して解釈 19 するという規定であって,特許発明の特許要件たる進歩性の有無を審理し判断する前提として,当該特許発明に係る特許請求の範囲に記載された発明の要旨を認定する場面に適用されるべき規定ではない。原告が挙げた前掲知財高裁判決も,同様に特許発明技術的範囲の解釈について判示したものであり,特許発明の要旨認定について判示したものではない。
なお,特許発明の要旨の認定については,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであるところ,本件発明の特許請求の範囲に記載された「画像演出パターン」との用語が,それ自体では意味が全く不明で,本件明細書の対応する記載に置き換えなければ当該発明が特定できないというものではないし,その他,本件発明の特許請求の範囲の記載に照らしても,上記特段の事情があるものとは認められない。
したがって,原告の主張は失当であり,本件発明の「画像演出パターン」について,原告が主張するように,「ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するもの」と解釈すべき理由はない。
4 相違点の認定の誤りについて原告は,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものではないから,これらを相違点として認定すべきところ,本件審決の相違点の認定ではそれを看過した誤りがある旨を主張している。
しかしながら,前記3のとおり,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するから,原告の主張は採用することができない。
5 相違点3,5及び8に係る判断の誤りについて(1) 引用例2についてア 遊戯機に関する引用例2(甲2)には,概略,次の記載がある。
(ア) 本発明は,スロットマシン等の遊戯機に関するものである(【000 20 1】)。
(イ) 図柄を可変表示する可変表示部と,内部当選の判定を抽選により行う内部当選判定部と,判定された内部当選に基づいて可変表示部を制御する可変表示制御部とを備える従来の遊技機では,ボーナスゲーム成立等を予告する機構を有するものが知られているが,ボーナスゲームの種類(ビッグボーナス,レギュラーボーナス)まで予想させるものはなかった。また,ボーナスゲームの種類ごとに演出を変えることもできるが,このようにすると,レギュラーボーナスを予告する演出が出たときは,「ビッグボーナスが来るかもしれない」という期待感を損なってしまうという問題がある(【0002】〜【0007】)。
(ウ) 本発明は,上記問題を解決するため,当たり役の成立を遊戯者に予告する演出をする際に,当たり役に対して演出の形態が固定されないようにした遊戯機を提供することなどを目的とするものである(【0008】) (エ) 発明の実施の形態(【0019】)演出動作決定部におけるBB(ビッグボーナス)フラグ又はRB(レギュラーボーナス)フラグ成立時の演出パターンは,抽選によって決定される。演出動作決定部は,複数のパターンの中から特定の演出パターンを抽選するための演出用乱数生成回路等を備えている(【0033】)。
(オ) 演出動作制御部は,演出開始・終了制御回路,演出用ランプ制御回路,スピーカ制御回路を備えている(【0034】)。
(カ) 演出動作決定部は,内部当選の判定結果を参照し,演出動作をすべきか否か,いかなる演出をするかを決定する(【0038】)。
(キ) 演出動作制御部による演出内容としては,Aパターンの場合に演出用ランプ又はLEDを一定間隔で点滅させ,Bパターンの場合に演出用ランプ又はLEDを継続的に点灯させるという視覚に訴える手段がある。また,AパターンとBパターンとで異なった音声をスピーカから出力させるという聴覚に訴える手段がある。
また,その組み合わせでも良い(【0067】)。
21 イ 以上の記載からすると,引用例2には,入賞態様を決定する「内部当選判定部」及び所定の演出パターンで演出用ランプを制御する「演出動作制御部」とは別に設けられた「演出動作決定部」によって,入賞態様に基づいて演出パターンの種類の選択処理を行うという技術が開示されている。
(2) 周知例5ないし7についてア 周知例5について (ア) 遊技機の画像表示装置に関する周知例5(甲10)には,概略,次の記載がある。
画像制御回路は,LCD同期回路を駆動して,この同期回路から同期信号を発生させ,この同期信号に基づき,H/V同期回路はH(水平)及びV(垂直)の各方向の同期信号を生成してLCDに供給する。この結果,LCDにはCPUにより指示された画像が表示される。また,大当たりの条件を満たした場合にCPUからその旨の指示が行われると,画像制御回路はROMに格納されている各画像データの中から該当の符号化された音楽情報を取り出してRAM(34)を介しCPUへ転送する。CPUはこの音楽情報をPCM回路へ送って音楽データに変換させる(【0015】)。
CPUは,MPUの制御に基づき画像制御回路に対し,複数の画像データ(図柄)の中から選択的に1つの画像データ(図柄)を順次出力させるように制御する。
この結果,この画像データ(図柄)に対応する画像データ(色調)がRAM(39)から取り出されてLCDに出力される(【0018】)。
(イ) 以上の記載及び図1からすると,上記CPUは,音楽情報を制御するとともに,主たる制御回路であるMPUからのデータに応じて,画像を表示する画像制御回路を制御するものである。
イ 周知例6について(ア) 弾球遊技機に関する周知例6(甲11)には,概略,次の記載がある。
遊技制御部は,パチンコ遊技機の遊技盤の背面位置に設けられ,役物制御回路と, 22 入出力回路と,表示・音声制御回路とを備えている。役物制御回路は,入出力回路におけるセンサ及びアクチュエータ類の駆動制御を含む遊技制御を統括して行う。
特図ゲームを行う上で行われる表示及び音声処理等に関しては,役物制御回路から表示・音声制御回路に対して片方向通信による指示用データを送出することで,表示・音声制御回路が行う。これによって,処理負担の大きな表示制御処理及び音声制御処理は,表示・音声制御回路が独立して担当する(【0044】)。
図9は,遊技制御部における表示・音声制御回路の要部構成を示すものである。
表示・音声制御回路は,主制御部と,主制御部からの指示に基づいて,表示制御処理及び音声出力処理を行う表示処理部及び音声処理部とから構成されている。表示・音声制御回路は,役物制御回路から入力される指示用データに基づいて,役物制御回路による制御とは独立して,特別図柄表示装置での特図ゲームにおける映像表示制御及び音声出力制御を行う。これによって,ストーリー性豊かな表示影像及び特殊効果表示を実現でき,また,キャラクタのアクションにマッチした音声及び効果音等の出力が可能となる(【0055】)。
(イ) 以上の記載並びに図8及び9からすると,上記主制御部は,音声を制御するとともに,主たる制御回路である役物制御回路からのデータに応じて,画像を表示する表示処理部を制御するものである。
ウ 周知例7について(ア) 遊技機に関する周知例7(甲12)には,概略,次の記載がある。
本発明は,パチンコ機のような,遊技盤が交換可能に取り付けられた遊技機に関するものである(【0001】)。
画像制御基板には,マイコン67が設けられており,種々のデータ処理を行う。
画像処理プロセッサは,マイコン67からのコマンドにより,画像処理を高速に行う画像処理専用のプロセッサである(【0032】)。
マイコン67は,RAM内の画像制御プログラムに従って,画像処理プロセッサにコマンドを送り,所定の手順による一連の画像表示を行う。また,マイコン67 23 は,RAM内の音声制御プログラムに従って,音声合成回路にコマンドを送り,画像表示と同期した音声出力を行う(【0034】)。
主基板は,パチンコ機の各表示器やその他の部品の動作を制御するためのものである。主基板上の基本回路には,マイコン71が設けられており,種々のデータ処理を行う(【0038】)。
(イ) 以上の記載及び図7及び8からすると,上記マイコン67は,音声を制御するとともに,主たる制御回路であるマイコン71(図8)からのデータに応じて,画像を表示する画像処理プロセッサを制御するものである。
エ 以上の各記載によれば,スピーカの出音を制御するとともに,主制御回路からのデータに応じて表示制御回路を制御する副制御回路を,主制御回路及び表示制御回路とは別に設けることは,本件出願当時,周知の技術(周知技術1)であったということができる。
(3) 相違点3,5及び8に係る本件発明の構成の容易想到性について ア 前記第2の3(2)ア記載のとおり,引用発明は,メイン制御装置上のマイクロコンピュータが液晶パネル制御基盤及びスピーカを制御又は支配するものであるところ,前記(2)エのとおり,スピーカの出音を制御するとともに,主制御回路からのデータに応じて表示制御回路を制御する副制御回路を,主制御回路及び表示制御回路とは別に設けることは,周知の技術(周知技術1)であるから,引用発明に周知技術1を適用して,マイクロコンピュータが実行しているスピーカの出音の制御及び液晶パネル制御基盤の制御について,マイクロコンピュータ及び液晶パネル制御基盤とは別の副制御回路に担当させることは,当業者が適宜行うことができるものである。
イ また,引用発明においては,「図柄表示パターン」を選択する処理を何が行うのかは明らかでないが,「図柄表示パターン」を選択する処理を何に行わせるかは,「図柄表示パターン」を選択する上で,当業者が適宜決定し得るものである。
そして,前記(1)イのとおり,引用例2には,入賞態様を決定する「内部当選判 24 定部」(これは,本件発明の「主制御回路」に相当するものである。)及び所定の演出パターンで「演出用ランプ」を制御する「演出動作制御部」(同様に「表示制御回路」に相当するものであう。)とは別に設けられた「演出動作決定部」(同様に「副制御回路」に相当するものである。)により,入賞態様に基づいて前記演出パターンの種類の選択処理を行う点が開示されているところ,当たり役の成立を遊戯者に予告する演出をする際に,当たり役に対して演出の形態が固定されないようにした遊戯機を提供することによって,遊技者の期待感を損なうことのないようにするというのは,スロットマシンの構成において,当業者が一般的に有している課題であるということができるから,引用発明に周知技術1を適用して副制御回路を設けた場合において,引用例2に記載された発明を適用し,当該副制御回路に「図柄表示パターン」を選択する処理を行わせることも,当業者が容易に想到し得るものであるということができる。
ウ したがって,本件発明の相違点3(スピーカの出音を制御するのが主制御回路に接続された副制御回路である),相違点5(画像演出パターンの種類の選択処理を主制御回路に接続された副制御回路が行う)及び相違点8(表示制御回路が副制御回路に接続されている)に係る構成とすることは,引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知例5ないし7記載の周知技術に基づき,当業者が容易に想到することができたものである。
(4) 原告の主張についてア 原告は,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものではないから,引用発明に周知技術1を適用したとしても,相違点3,5及び8に係る本件発明の構成が導かれることはない旨主張する。
しかしながら,前記3のとおり,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものである。
25 したがって,原告の主張はその前提において誤りであり,これを採用することはできない。
イ 原告は,本件審決が周知技術1を認定する根拠とした周知例5ないし7はいずれもパチンコ機に関する発明であり,スロットマシンとは,機能,構成が相違するものである旨主張する。
確かに,周知例5ないし7は,いずれもパチンコ機に関する発明であるものの(なお,周知例5の請求項1には,当該遊技機について,「遊技機領域内の特定入賞口への遊技球の入賞」との構成が示されているから,同遊技機はパチンコ機であると認められる。),パチンコ機とスロットマシンとは,遊技ゲーム機であるという点で共通するものである。また,周知例5ないし7記載に記載されたパチンコ機と,引用発明のスロットマシンとは,いずれも表示装置と,当該表示装置の表示を制御する制御回路と,ゲーム機全体を制御する制御回路とを有する点でも共通しているから,周知例5ないし7に記載されたパチンコ機の制御技術を引用発明のスロットマシンの制御技術に適用することは,当業者が容易に着想し得ることであるし,また,その制御回路の構成を変更することに特別に困難な事情も見当たらない。
したがって,原告の主張は採用できない。
ウ 原告は,引用発明のメッセージ,ガイダンス又は数値表示からなる「図柄表示パターン」は,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が本質的に異なり,また,引用例2記載の演出パターンも,演出用ランプを点滅,点灯させることによる演出であり,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が全く異なる旨主張している。
しかしながら,前記3のとおり,引用発明の「図柄表示パターン」と「液晶パネル制御基盤」は,それぞれ本件発明の「画像演出パターン」と「表示制御回路」に相当するものである。また,引用例2記載の演出パターンが,本件発明の「画像演出パターン」とは表示内容が異なるとしても,制御回路による処理という点では共通しており,その適用が困難であるということはできない。
26 したがって,原告の主張は採用することができない。
6 相違点9に係る判断の誤りについて原告は,相違点9について,異なる手段を異なる位置に取り付けることは周知であり,異なる手段を異なる位置に取り付けることより各手段ごとに交換ができることも自明な効果にすぎないとした本件審決の判断は,根拠とする技術分野や交換するという行為の背景を何ら示しておらず,誤ったものである旨主張する。
しかしながら,本件発明における「表示制御装置」を構成する「基板」と「表示装置」のように,2つの異なる手段をスロットマシンの機体に取り付けるには,一体的に同じ場所に取り付ける方法と,個別に異なる場所に取り付ける方法とが考えられるところ,これらの方法のどちらを採用するかは,取り付ける空間の状況や,取扱いの容易性などを考慮して,当業者が適宜に設定し得ることは自明であり,異なる手段を異なる位置に取り付けることより各手段ごとに交換ができるという作用効果を奏することも当業者の技術常識である。
したがって,相違点9に係る本件審決の判断に誤りはなく,これに反する原告の主張は採用することができない。
7 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 土肥章大
裁判官 部眞規子
裁判官 齋藤巌
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