審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21ワ31535損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成24ネ10012特許権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成23ネ10004特許権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成22ワ43749特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成23ネ10060特許権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
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事件 |
平成
23年
(ワ)
29049号
特許権に基づく製造販売差止等請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2012/09/20 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
言渡 平成24年9月20日 交付 平成24年9月20日 裁 判所書記官 平 成23年(ワ)第29049号 特許権に基づく製造販売差止等請求事件 口頭弁論の終結の日 平成24年6月28日 判 決 愛知県大府市<以下略> 原 告 株式会社名南製作所 同訴訟代理人弁護士 高 橋 譲 二 松 永 圭 太 同訴訟代理人弁理士 石 田 喜 樹 同補佐人弁理士 園 田 清 隆 石 田 正 己 愛知県高浜市<以下略> 被 告 橋本電機工業株式会社 同訴訟代理人弁護士 三 木 浩 太 郎 小 川 晶 露 早 川 尚 志 主 文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品1目録記載の製品を製造し,販売し,又は輸出しては ならない。 2 被 告は,別紙被告製品1目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品を製造し,販売し,又は輸出しては ならない。 4 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 5 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成23年9月13日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,板状体のスカーフ面加工方法及び装置に関する特許権を有する原告 が,被告の製造販売するスカーフジョインターについて,原告の特許権に係る 特許発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,そのスカーフジョイ ンターの製造,販売等の差止め及び廃棄,特許法65条に基づく補償金650 万円及び民法709条に基づく損害賠償金1億4300万円の合計1億495 0万円のうち5000万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成 23年9月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 の支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実) (1) 本件特許権 原告は,発明の名称を「板状体のスカーフ面加工方法及び装置」とする特 許権(特許番号第4460618号。以下,この特許を「本件特許」とい う。)の特許権者である。本件特許は,平成10年6月16日にした原出願 (特願平10−186866,以下「原出願」という。)から,平成21年 1月9日に分割出願されたものであり,平成22年2月19日に特許権の設 定 の登録がされた(以下,この特許権を「本件特許権」という。)。 (2) 本件発明 本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2の記載は,本判決 添付の特許 公報 (以下「本件 公報 」という。)の 該 当項記載のと お りである (以下,この請求項2に係る発明を「本件発明」という。)。 (3) 構 成要件の分 説 本 件発明は, 次 の 構 成要件からなる。 刃 物受台 の板状体を支 持 する支 持 面に対し 傾斜 して 備 えられた 回転切削 A 刃物 を, 当 該回転切削刃物 の 刃先 と前記 刃物受台 の 刃先 当 接部 とを当 接 させ 乍 B ら,前記板状体に対して 相 対的に 直線移動 させることにより, 前 記板状体の 端部 をスカーフ面に 切削 加工し, C 前 記 刃先 当 接部 から 突 出した前記板状体 端部 を 切削屑 として 排除 する板 D 状体のスカーフ面加工装置に お いて, 前 記 回転切削刃物 の前記 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ当 該回転切削 E 刃物 の 刃先近傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 され ることになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で, 而 も前記 回転切削 刃物 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 を設 け , 前 記 押圧部材 と前記 刃物受台 とによ っ て,前記 切削屑 として 排除 される F ことになる 部 分を 挟持 し 乍 ら 切削 加工することを特 徴 とする, 板 状体のスカーフ面加工装置。 G (4) 被告の 行為 被 告は,別紙被告製品1目録記載の製品(以下「被告製品1」という。) を製造,販売している。 (5) 被告製品1の 構 成 被告製品1の 構 成は,本件発明の 構 成要件に対 比 させて 表現 すると, 次 の と お りである。 刃 物受台上 の 単 板を支 持 する支 持 面に対し 傾斜 して 備 えられたスカーフ a 加工用の 回転刃 を, a の 回転刃 の 刃先 と 刃物受台 の 刃先 当 接部 とを当 接 させつつ, a の 単 板 b に対して 相 対的に 直線移動 させることにより, a の 単 板の 端部 をスカーフ面に 切削 加工し, c b の 刃先 当 接部 から 突 出した a の 単 板 端部 を 切削屑 として 排除 する板状 d 体のスカーフ面加工装置に お いて, a の 回転刃 の 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ 回転刃 の 刃先近傍 に おけ e る a の 単 板の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 されることになる 部 分及び 切 削屑 として 排除 されない 部 分の 両領域 を a の 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で, 而 も a の 回転刃 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 を設 け , e の 押圧部材 と a の 刃物受台 とによ っ て, 切削屑 として 排除 されること f になる 部 分を 挟 みこみ,これを 保持 しつつ 切削 加工することを特 徴 とす る, 板 状体のスカーフ面加工装置。 g (6) 本件発明と被告製品1との対 比 被 告製品1は,本件発明の 構 成要件 A ないし D , F 及び G を 充足 するが, 構 成要件 E について, 構 成要件に「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」とあるのに対し,被告製品1では「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分及び 切削屑 として 排除 されない 部 分の 両領域 」である 点 で 相違 する。 (7) 原告による 警 告 原告は,被告に対し,平成19年12月1日に被告に 到 達した 内容証 明 郵 便 により,原出願の願書に添付された明 細 書の特許請求の範囲の請求項3に 係る発明の 内容 を記載して,被告製品1がその技術的範囲に属する 旨 の 警 告 をした。 2 争点 (1) 被告が別紙被告製品2目録記載の製品(以下「被告製品2」という。被 告製品1と 併 せて,以下「 各 被告製品」という。)を製造,販売し,又はそ の お それがあるか 否 か(争 点 1) (2) 各 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか 否 か(争 点 2) (3) 被告が 先使 用による 通常 実 施 権を有するか 否 か(争 点 3) (4) 本件特許が特許 無効審 判により 無効 にされる べき ものと 認 められるか 否 か(争 点 4) (5) 原告が補償金の支払を請求することがで き るか 否 か(争 点 5) (6) 被告の 責任 及び損害 額 (争 点 6) 3 争 点 についての当事者の主張 (1) 被告が被告製品2を製造,販売し,又はその お それがあるか 否 か(争 点 1) 原 告の主張 ア 被 告は,被告製品2を製造,販売している。 イ 被告の主張 被告は,平成12年4月,被告製品2の 試 作機を製作して 西北プラ イ ウ ッド 株式会社に 納入 し, テ ス ト 及び 改 造を 繰 り 返 したが,所定の 能力 を発 揮 することがで き なか っ たので,平成17年5月にこれを 撤去 して廃棄し たものであり,被告は,被告製品2を製造していないし, 今後 もこれを製 造する 予 定はない。 (2) 各 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか 否 か(争 点 2) 原 告の主張 ア (ア ) 被告製品1は, a の 回転刃 の 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ 回転 刃 の 刃先近傍 に おけ る a の 単 板の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 され ることになる 部 分を a の 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で, 而 も a の 回転 刃 と 一 体 化 して 相 対的 直線 移動 す る 押 圧 部材 を 設 け たもの であ るか ら,本件発明の 構 成要件 E を 充足 する。 (イ) 被告製品2のスカーフカ ッ ターは,板状体のスカーフカ ッ ターで, 単 板のスカーフカ ッ ターである被告製品1のスカーフカ ッ ターとは, 対 象 を板状体とするか, 単 板とするかの 違 いがある だけ で,その 余 の 構 成は同 一 であるから,被告製品2も本件発明の 構 成要件 E を 充足 す る。 イ 被告の主張 (ア ) 本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は, 押圧部材 によ っ て 押 圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定し て 規 定 して いる。 また ,本 件特許 の願 書 に添付 され た明 細 書( 以下 「本件明 細 書」という。)の発明の 詳細 な 説 明の 段落【 0012 】 , 【 0013 】 及び 【 0051 】 の記載によれ ば ,本件発明は, 回転切 削刃物 が 切断 する 部 分,すな わ ち,「 該回転切削刃物 によ っ て 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」が 押圧部材 によ っ て 押圧 され,か つ, 押圧部材 と 刃物受台 とに 挟持 されることによ っ て,同 部 分付 近 の あ ば れが平 坦 に 矯 正され,も っ て加工 精度 の高い 良好 な 切断 面を 得 る という作用 効果 を 奏 するものであることが理 解 されるし,本件特許の 願書に添付された 図 面のうち, 【図 2 】 , 【図 10 】 ( b )及び 【図 12 】 によれ ば , 押圧部材 はまさに 切削屑 を 押圧 していることが理 解 される。 (イ) も っ とも,本件発明の明 細 書の発明の 詳細 な 説 明には,「 該押圧 面 13は, 該単 板3から 切削屑 として 排除 されることになる 部 分の 全部 を 必 ずしも 押圧 する 必 要はなく, 例 え ば ,その 一部 分でも 良 い。 更 に は, 該単 板3から 切削屑 として 排除 されることになる 部 分以 外 の 表 面 に 押圧 面13が 広 が っ ても 良 い。しかし, 該押圧 面13は, 少 なくと も 切削屑 として 排除 されることになる 部 分には 含 まれていな け れ ば な らない。」( 段落【 0024 】 ),「 該押圧 面13は 切屑化部 分 だけ ではなく, 切断線 19の 丸鋸 5が 直線移動 する方 向上手側 付 近 に及 ん でも差し支えはない。これは, 押圧部材 11が 単 板3の 少 なくとも 切 屑化部 分を 押圧 していれ ば スカーフ面の 切断精度 を高めることがで き るからである。」( 段落【 0052 】 )との記載があり,これによれ ば , 押圧部材 によ っ て 押圧 されるのは, 少 なくとも,「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」を 含ん でいれ ば よく,それ以 外 の 部 分を 押圧 することでもよいと 解 する 余地 もある。 しかしながら,原告は,原出願の 審査過程 に お いて,原出願に対する 拒絶 理由 通 知を 受け て 審査官 と面 接 し,その 際 の「 押圧部材 によ っ て 押圧 する 箇 所が, 切削 くず 側 「のみ」であることを 限 定すれ ば , 進歩 性 が出ると 考 えられるが,原状の クレ ー ム の記載では, 拒絶 理由 解消 は 難 しい。」との 審査官 の 意見 に対 応 して,原出願に係る特許請求の 範囲の請求項3の「 該回転切削刃物 の 刃先近傍 の 表 面のうち, 少 なく とも 該 板状体から 切削屑 として 排除 される 側 の前記 表 面の 少 なくとも 一部 分を 押圧可能 に 備 える 押圧部材 」を「当 該回転切削刃物 の 刃先近 傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 されることに なる 部 分を 前記 刃 物受 台 に 向け て 押圧 可 能 で」 と補 正し, 2か 所の 「 少 なくとも」の文 言 を 削除 して, 押圧箇 所を「 切削屑 として 排除 さ れることになる 部 分」に 限 定したのであり,それにもかか わ らず, 再 度拒絶 理由 通 知を 受け たので,本件特許を分割出願したのである。そ うすると,原告は, 上 記補正によ っ て, 押圧箇 所を「 切削屑 として 排 除 されることになる 部 分」に 限 定し,「 少 なくとも 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を 押圧 することでも 良 い」 旨 の記載を 意識 的に 除外 したのであるから,本件明 細 書の発明の 詳細 な 説 明に おけ る 段落 【 0024 】 及び 【 0052 】 の記載は,本件発明の技術的範囲を 確 定するに当た っ て 参酌 す べき ではない。 (ウ ) したが っ て,本件発明の 構 成要件 E は, 押圧部材 が当 該回転切削刃 物 の 刃先近傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち,特に 切削屑 として 排 除 されることになる 部 分のみを前記 刃物受台 に 向け て 押圧 するものと 解 す べき である。 各 被告製品は, 押圧部材 が 切削屑 として 排除 される ことになる 部 分及び 切削屑 として 排除 されない 部 分の 両領域 を 押圧 す るのであ っ て, 切削屑 として 排除 されることになる 部 分のみを 押圧 す るものではないから,本件発明の 構 成要件 E を 充足 しない。 被 告の主張に対する原告の 反 論 ウ 本件発明の技術的範囲は,原 則 として,本件発明に係る特許請求の範囲 の記載 や その補正等の 経過 を 斟酌 して定める べき であり,本件特許とは別 の 手続 である原出願の 審査経過 を 斟酌 して定める べき ではない。 仮 に原出 願の 審査経過 を 斟酌 することが許されるとしても,原告が補正に当たり 「 少 なくとも」との文 言 を 削除 したのは,「 少 なくとも」という文 言 が 単 に 強調 的な 意味 しか 持 たないからであるにす ぎ ないし,これを 削除 するこ とが 押圧 対 象 を 切削屑 として 排除 されることになる 部 分のみに 限 定するこ とになるものでもない。 (3) 被告が 先使 用による 通常 実 施 権を有するか 否 か(争 点 3) 被 告の主張 ア (ア) 被告 従 業員の A は,平成6年8月 頃 , 丸 カ ッ ターの 進行 方 向 前方 で,かつ, 丸 カ ッ ターの 刃先近傍 の板のうち 切削屑 として 排除 される ことになる 部 分とそれ以 外 の 部 分を 押 さえ, 丸 カ ッ ターと 共 に 移動 す る前 押 さえ 部 を設 け た合板用スカーフカ ッ ターを設計し,その 試 作品 を 製造した。そして,被告 従 業員の B は, A が 開 発した 上 記「前 押 さ え 部 」を設 け た 単 板用スカーフカ ッ ターを設計するな ど して,平成9 年7月 頃 ,本件発明と技術的 思想 を同 一 にする発明を 完 成した。 (イ) 被告は,本件発明の 内容 を知らないで, @ 株 式会社 サ ン テック ( 現商 号「 株式会 社大 三 商 行サ ン テッ ク 事業 部 」。 以下「 サ ン テッ ク 」という。)から,スカーフカ ッ ター3 台 を 含む スカーフ 切断接 合 シ ス テム 3基の製造を 依頼 され, 上 記発明に基づいて,スカーフカ ッ ター( 以下 「 サ ン テッ ク 用 スカー フカ ッ ター」 とい う。) を製 造し て,平成9年7月 頃 ,これを サ ン テック に譲 渡 し,また, A マレ ー シア国 の SHIN P LYWOOD 社(以下「 シ ン ヤ ン」 Y ANG という。)から, オ ー ト フ ィ ー ダ ー, 整 合装置,スカーフカ ッ ター, キャリ ン グ 装置, 糊 付 ・冷圧接 合 ・クラ ン プ・ 定 尺切断 装置(ジョイ ン ト 装置)及び 堆積 機( オ ー ト スタ ッ カー)を 一 体的に 構 成したスカ ーフ 切断接 合 シ ス テム の製造を 依頼 され, 上 記発明に基づいてスカー フカ ッ ター(以下「 シ ン ヤ ン用スカーフカ ッ ター」という。)を製造 して,同年10月29日から11月2日までの間,名 古屋 市 港 区 内 の 名 古屋 市 国際 展示場ポ ー ト メ ッ セ な ご や に お いて 開 催 された第33 回 名 古屋国際 木工機 械展 に出品した 上 ,平成10年1月 頃 ,これを シ ン ヤ ンに譲 渡 した。 (ウ) サ ン テック 用スカーフカ ッ ター及び シ ン ヤ ン用スカーフカ ッ ター は,いずれもカ ッ ターの 進行 方 向 前方で,かつ, 丸 カ ッ ターの 刃先近 傍 の板のうち 切削屑 として 排除 されることになる 部 分とそれ以 外 の 部 分を 押 さえ, 丸 カ ッ ターと 共 に 移動 する前 押 さえ 部 を設 け たスカーフ カ ッ ターであり,その発明は本件発明と同 一 であるから,被告は,本 件特許権について 通常 実 施 権(特許法79条)を有する。 イ 原告の主張 本件発明の第1の特 徴 は, 構 成要件 E の「 切削屑 として 排除 されること になる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で」ある「 押圧部材 を設 け 」 ていることにあり,第2の特 徴 は, 構 成要件 F の「前記 押圧部材 と前記 刃 物受台 とによ っ て,前記 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を 挟持 し 乍 ら 切削 加工する」ことにあるが, サ ン テック 用スカーフカ ッ ター及び シ ン ヤ ン用スカーフカ ッ ターが本件発明の 上 記特 徴 を 呈 することはないか ら, 少 なくとも 構 成要件 E と 構 成要件 F に お いては,被告が本件発明に 至 っ た事実があるとは 認 められない。 したが っ て,被告は,当 時 ,本件発明の 構 成要件 E 及び F の 構 成を有す る発明を 完 成していなか っ たし,当 該 発明の実 施 である事業をすることが で き なか っ たから, 先使 用による 通常 実 施 権を有しない。 (4) 本件特許が特許 無効審 判により 無効 にされる べき ものと 認 められるか 否 か(争 点 4) 被 告の主張 ア サ ン テック 用スカーフカ ッ ター及び シ ン ヤ ン用スカーフカ ッ ターに係る 発明は,前記(3) ア のと お り,いずれも本件発明と同 一 であ っ て,本件特 許出願前に日本 国内 に お いて 公 然 知られ,又は 公 然 実 施 をされた発明であ るから,本件特許権には,特許法123条1項2号,同法29条1項の 無 効 事由がある。 したが っ て,本件特許は,特許 無効審 判により 無効 にされる べき ものと 認 められるから,特許法104条の3により,原告は,被告に対し本件特 許権を 行使 することがで き ない。 イ 原告の主張 前記(3)イのと お り, 少 なくとも 構 成要件 E と 構 成要件 F に お いて,被 告が本件発明に 至 っ た事実があるとは 認 められないから,被告は,本件発 明の 構 成要件 E 及び F の 構 成を有する発明を 完 成していなか っ た。 したが っ て,本件特許は, 新 規性 の 欠如 を理由に,特許 無効審 判により 無効 にされる べき ものとは 認 められない。 (5) 原告が補償金の支払を請求することがで き るか 否 か(争 点 5) 原 告の主張 ア (ア ) 特許法65条が 警 告又は 悪 意 を補償金請求の要件としたのは,第三 者に対する 不 意 打 ち 防 止のためであるから,分割出願前になされた 警 告であ っ ても,それが第三者にと っ て 不 意 打 ちに当たらな け れ ば 「 警 告」に 該 当するという べき である。 本件特許は,原出願からの分割出願であるとこ ろ ,分割出願は, 新 た な出願ではあるものの, 複数 の発明を 含む 原出願の 一部 を分割するも ので,分割出願に係る発明は原出願の明 細 書,特許請求の範囲又は 図 面に 開 示 されていたものでな け れ ば ならないとされているから,分割 出願に係る発明は原出願に お いて 開 示 された発明に 包 含 されていると いえる。原告は,原出願に係る発明について 警 告をしているから,原 出願の明 細 書,特許請求の範囲又は 図 面に 開 示 されていた分割出願に 係る発明についても 警 告をしたと 評価 することがで き るのであ っ て, 第三者にと っ て 不 意 打 ちに当たらない。 (イ) 被告は,平成19年12月1日に原告から 警 告を 受け ,平成22年 2月19日までの間に,被告製品1を6500万円で 少 なくとも1 台 販売し た。 本件特 許権 の実 施 料率 は1 0 % とみ るの が 相 当 であ るか ら,原告がその実 施 に対して 受け る べき 金 銭 の 額 は,650万円を下 らない。 イ 被告の主張 (ア ) 原告が平成19年12月1日にした 警 告は,本件特許権が原出願か ら分割出願される前であ っ て,その 内容 も 専 ら原出願に係る特許請求 の範囲の請求項3に係る発明に関するものであるから,本件発明の 内 容 を記載して 警 告をしたということはで き ない。 (イ) 被告製品1は, オ ー ト フ ィ ー ダ ー, 整 合装置,スカーフカ ッ ター, キャリ ン グ 装置, 糊 付 ・冷圧接 合 ・クラ ン プ・ 定 尺切断 装置(ジョイ ン ト 装置)及び 堆積 機( オ ー ト スタ ッ カー)を 一 体的に 構 成したスカ ーフ 切断接 合 シ ス テム全 体であり,本件発明は,その 一部 を 構 成する スカーフカ ッ ターに関するものであるから,実 施 料 相 当 額 が被告製品 1の代金の10 % ということはあり 得 ない。 (6) 被告の 責任 及び損害 額 (争 点 6) 原 告の主張 ア (ア ) 被告は, 各 被告製品を製造販売することが本件特許権を 侵 害するも の であることを知り,又は 過 失 によりこれを知らないで, 各 被告製品 を製造,販売した。 (イ) 被告は,平成22年2月19日から 現 在 までの間に, 各 被告製品を 少 なくとも5 台 製造して1 台 6500万円で販売したものであり,被 告の 利益率 は40 % と 推測 されるから,被告は, 各 被告製品の製造販 売により 少 なくとも1億3000万円の 利益 を 受け た。 原告は,本件特許権を実 施 していたのであ っ て,被告の 侵 害 行為 に よ っ て損害を 受け たことは明らかであるとこ ろ ,被告の 利益 の 額 は原 告が 受け た損害の 額 と 推 定される(特許法102条2項)から,被告 の 侵 害 行為 によ っ て原告が 受け た損害の 額 は,1億3000万円を下 らない。 また,被告の 侵 害 行為 と 相 当 因 果 関係のある弁護士費用は1300万 円とするのが 相 当である。 イ 被告の主張 原告の主張は争う。 第3 当 裁 判所の判 断 1 争 点 1(被告が被告製品2を製造,販売し,又はその お それがあるか 否 か) について 被告が被告製品2を製造,販売していること及びその お それがあることにつ いては,これを 認 めるに 足 りる 証 拠 がない。 したが っ て,被告製品2に係る原告の請求は,その 余 の 点 について判 断 する までもなく,理由がない。 2 争 点 2(被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか 否 か) (1) 本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2の記載によれ ば ,本件発明に いう「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧 可能 で」とは,文 言 のと お り, 回転切削刃物 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 す る 押圧部材 が, 回転切削刃物 の 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で,かつ, 回転切 削刃物 の 刃先近傍 に おけ る板状体の 表 面のうちで, 切削屑 として 排除 される ことになる 部 分を 刃物受台 に 向け て 押圧 することがで き るものであることを 意味 するものと 認 められるとこ ろ ,本件明 細 書に,この 認 定に 反 する記載は ない( 甲 1)。 前記の前提となる事実(5)によれ ば ,被告製品1は, 回転刃 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 が, 回転刃 の 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で,か つ, 回転刃 の 刃先近傍 に おけ る 単 板の 表 面のうちで, 切削屑 として 排除 され ることになる 部 分及び 切削屑 として 排除 されない 部 分の 両領域 を 刃物受台 に 向け て 押圧 することがで き るというのであり, 押圧部材 が, 切削屑 として 排 除 されることになる 部 分を 刃物受台 に 向け て 押圧 することがで き るものであ るから,被告製品1は,本件発明の 構 成要件 E を 充足 する。 (2) 被告は,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は, 押圧部材 によ っ て 押圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定して 規 定しているし,本件明 細 書の発明の 詳細 な 説 明の記載によれ ば ,本件発明 は,「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」が 押圧部材 によ っ て 押圧 さ れることな ど によ っ て,同 部 分付 近 のあ ば れが平 坦 に 矯 正され,も っ て加工 精度 の高い 良好 な 切断 面を 得 るという作用 効果 を 奏 するものであることが理 解 され,また, 図 面によれ ば , 押圧部材 が 切削屑 を 押圧 していることが理 解 されると主張する。 しかしながら,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は,「 切削屑 と して 排除 されることになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で」と 規 定 しているのであ っ て,その文 言 から, 押圧部材 によ っ て 押圧 される 部 分を 「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定して 規 定したと 解 釈 する ことはで き ないし,特許請求の範囲の請求項2に, 押圧部材 によ っ て 押圧 さ れる 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定したことを 窺 わ せるような記載もない。 そして, 甲 1(本件 公報 )によれ ば ,本件明 細 書の発明の 詳細 な 説 明に は,「前記 回転切削刃物 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 によ っ て,前記 回転切削刃物 の前記 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ当 該回転切削 刃物 の 刃先近傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 される ことになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧 し,当 該切削屑 として 排除 され ることになる 部 分を当 該押圧部材 と前記 刃物受台 とによ っ て 挟持 し 乍 ら 切削 加 工 す るこ と を特 徴 とす る ,板 状 体の スカ ー フ 面加 工 方法 及 び装 置 と し た。」( 段落【 0012 】 ),「本願発明は, 上 述 のと お り 構 成されている ので,以下に記載されるような 効果 を 奏 する。 先 ず, 回転切削刃物 と 一 体 化 して 刃物受台 で支 持 された板状体に対して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 によ っ て,前記 回転切削刃物 の前記 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ当 該回転切 削物 の 刃先近傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち, 切削屑 として 排除 される ことになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧 し,当 該切削屑 として 排除 され る ことになる 部 分を当 該押圧部材 と前記 刃物受台 とによ っ て 挟持 し 乍 ら 切削 加工するものであるから, 該 板状体にあ ば れが 存在 していても, 該回転切削 刃物 により 切断 される 部 分の 近傍 のあ ば れは, 該押圧部材 と 刃物受台 との 挟 持 作用で 順 次 平 坦 に 矯 正されてい き , 該回転切削刃物 は 該 平 坦 に 矯 正された 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を 切断 するので,これまでにない加 工精度の高い,良好な切断面を得ることができる。」(段落【001 3 】 ),「 押圧部材 11によ っ て 押圧 される 押圧 面13は, 丸鋸 5が 移動 す る方 向 の下 手側 の 刃先 軌跡 5 a に 極 めて 近 い 部 分の 単 板 表 面であ っ て, し かも 該単 板3から 丸鋸 5により 切削屑 として 排除 されることになる 部 分(以 下, 切屑化部 分という)の 単 板 表 面である。」( 段落【 0051 】 )との記 載があることが 認 められるが,これらの記載によ っ ても, 押圧部材 によ っ て 押圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定したと 解 釈 することはで き ないし,本件明 細 書の発明の 詳細 な 説 明に お いて, 押圧 部材 によ っ て 押圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」 に 限 定したことを 示唆 するような記載はなく,かえ っ て,「 該押圧 面13 は, 該単 板3から 切削屑 として 排除 されることになる 部 分の 全部 を 必 ずしも 押圧 する 必 要はなく, 例 え ば ,その 一部 分でも 良 い。 更 には, 該単 板3から 切削屑 として 排除 されることになる 部 分以 外 の 表 面に 押圧 面13が 広 が っ て も 良 い。しかし, 該押圧 面13は, 少 なくとも 切削屑 として 排除 されること になる 部 分には 含 まれていな け れ ば ならない。」( 段落【 0024 】 ), 「 該押圧 面13は 切屑化部 分 だけ ではなく, 切断線 19の 丸鋸 5が 直線移動 する方 向上手側 付 近 に及 ん でも差し支えはない。これは, 押圧部材 11が 単 板 3の 少 なくとも 切屑化部 分を 押圧 していれ ば スカーフ面の 切断精度 を高め ることがで き るからである。」( 段落【 0052 】 )との記載があることが 認 められるのである( 甲 1)。また,本件特許の願書に添付された 図 面に は, 押圧部材 が「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」 だけ を 押圧 して いるもの( 【図 2 】 , 【図 10 】 ( b )及び 【図 12 】 )があるが,発明の 詳細 な 説 明の記載に 鑑 みれ ば , 押圧部材 によ っ て 押圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定する 趣 旨 で 上 記 図 面を添付したと は 考 え 難 いとこ ろ である(な お ,被告は,原告は,原出願に係る特許請求の 範囲の請求項3を補正し,2か所の「 少 なくとも」の文 言 を 削除 して, 押圧 箇 所を「 切削屑 として 排除 されることになる 部 分」に 限 定し,「 少 なくとも 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を 押圧 することでも 良 い」 旨 の記載 を 意識 的に 除外 したと主張するが, 証 拠 ( 甲 3, 乙 16)によれ ば ,原告 は,平成20年5月26日付 手続 補正書により,原出願に係る特許請求の範 囲の請求項3の「 回転切削刃物 が 該 板状体に対して 相 対的に 直線移動 する方 向 の下 手側 で 且 つ 該 板状体の 後 述 する 刃物受台 に 接 する 表 面と 反 対 側 の 表 面 に おけ る 該回転切削刃物 の 刃先近傍 の 表 面のうち, 少 なくとも 該 板状体から 切削屑 として 排除 される 側 の前記 表 面の 少 なくとも 一部 分を 押圧可能 に 備 え る 押圧部材 」を「 回転切削刃物 の前記 相 対的 直線移動 方 向 下 手側 で 且 つ当 該 回転切削刃物 の 刃先近傍 に おけ る前記板状体の 表 面のうち, 切削屑 として 排 除 されることになる 部 分を前記 刃物受台 に 向け て 押圧可能 で, 而 も前記 回転 切削刃物 と 一 体 化 して 相 対的 直線移動 する 押圧部材 」と補正したことが 認 め られるとこ ろ ,2か所の「 少 なくとも」の文 言 を 削除 しても,補正 後 の 上 記 文 言 が, 押圧部材 によ っ て 押圧 される 部 分を「 切削屑 として 排除 されること になる 部 分」に 限 定した 趣 旨 であるとは 解 することがで き ないのであ っ て, 原告が,「 少 なくとも 切削屑 として 排除 されることになる 部 分を 押圧 するこ とでも 良 い」 旨 の記載を 意識 的に 除外 したとは 認 められない。)。 そうであるから,被告の前記主張は, 採 用することがで き ない。 (3) 被告製品1は,本件発明の 構 成要件 E を 充足 し,また, 構 成要件 A ない し D , F 及び G を 充足 しているから(前記の前提となる事実(6)),本件発 明の技術的範囲に属する。 3 争 点 3(被告が 先使 用による 通常 実 施 権を有するか 否 か)について (1) 各 項 末尾掲 記の 証 拠 及び弁論の前 趣 旨 によれ ば , 次 の事実が 認 められ る。 被 告は,平成7年11月 頃 , サ ン テック から,スカーフカ ッ ター3 台 を ア 含む スカーフ 切断接 合 シ ス テム 3基の製造を 依頼 され, 開 発 部次 長 であ っ た B を 中心 に 開 発,設計を 行 い, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターを 組 み 込 んだ スカーフ 切断接 合 シ ス テム (スカーフジョインター)を製造し,平成 9年7月24日, 他 社が製造した プレ ス機 や ロ ー ル ドラ イ ヤ ーな ど ととも に, L V L ( 単 板 積 層 木 材 )製造装置として サ ン テック に 引 き渡 した。 ( 乙 6の1ないし4,7の1ないし9,35ないし38) イ サ ン テック 用スカーフカ ッ ターは,スカーフジョインターの 一部 を 構 成 するもので, 刃物受台 に対して 傾斜 して 備 えられた 丸鋸 を, 刃物受台 に当 接 させながら 直線 に 移動 させ,板状体の 端部 を 切削 してスカーフ面に加工 する装置であり,その前 切部 には, 丸鋸 による 切削 位 置の前方付 近 に, 空 気 圧 で ピ ス ト ン ロ ッド が出 入 りする ガ イ ド 付 き 薄型 シリ ン ダ によ っ て 制御 される M C ナ イ ロ ン製の プレ ー ト が 備 え付 け られている。 ( 乙 7の1ないし9,41ないし46,48) 上 記 プレ ー ト は, 丸鋸 が板状体の 端部 を 切削 する 際 に,板状体の 表 面に ウ 向け て 切削屑 として 排除 されることになる 部 分とそれ以 外 の 部 分を 押圧 し て, 丸鋸 とともに 移動 するものであり, プレ ー ト が板状体の 表 面に 向け て 押圧 する結 果 ,板状体が プレ ー ト と 刃物受台 とによ っ て 挟持 されるもので ある。 ( 乙 8,45) (2) 上 記(1)の 認 定事実によれ ば , サ ン テック 用スカーフカ ッ ターは,スカー フジョインターの 一部 を 構 成するもので, 刃物受台 に対して 傾斜 して 備 えら れた 丸鋸 を, 刃物受台 に当 接 させながら 直線 に 移動 させて,板状体の前 後端 を 切削 してスカーフ面に加工する装置であるから,本件発明の 構 成要件 A な いし D 及び G を 充足 する。また, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターには, 丸鋸 による 切削 位 置の前方付 近 に プレ ー ト が 備 え付 け られ,これが板状体の 表 面 に 向け て 切削屑 として 排除 されることになる 部 分とそれ以 外 の 部 分を 押圧 し て, 丸鋸 とともに 移動 するというのであ っ て, 上 記 プレ ー ト は,本件発明の 「 押圧部材 」に 該 当するものと 認 められるから, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターは本件発明の 構 成要件 E を 充足 する。さらに, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターは, 上 記 プレ ー ト と 刃物受台 とによ っ て板状体を 挟持 するものである から,本件発明の 構 成要件 F を 充足 する。 したが っ て, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターは,本件発明の技術的範囲に 属するとい わ な け れ ば ならない。 (3) 原告は, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターの設計 図 ( 乙 7の3の 拡 大 図 で ある 乙 7の7)によれ ば , プレ ー ト の 最 下 点 の下面と 刃物受台 との間 隔 は4 o で, 単 板の 厚 さは3 . 2 o であるから, 単 板が プレ ー ト と 刃物受台 との間 に 来 たとしてもな お 0 . 8 o の 隙 間があるから, プレ ー ト は, 単 板を 押 さえ るものではなく, 単 板を 単 に ガ イ ド するものとして設計されていると主張す る。しかしながら,そもそも, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターの設計 図 ( 乙 7の7)は, 端 縁 押 え プレ ー ト の下面と 刃物受台 との間 隔 が4 o であること を 示 している だけ であ っ て, プレ ー ト の下面と 刃物受台 との間 隔 が4 o であ ることを 示 している わけ ではないし, プレ ー ト が 最 下 点 にある 時 点 に おけ る 状 態 を 示 したものであるということもで き ない。そして, プレ ー ト は, ガ イ ド 付 き 薄型 シリ ン ダ の ピ ス ト ン ロ ッド に 取 り付 け られ, 空気 圧 で 上 下に 動 作 するように 制御 されているのであるから,このことに 鑑 みれ ば , プレ ー ト が 単 板を 単 に ガ イ ド するものとして設計されたとは 認 めることがで き ない。 また,原告は, サ ン テック 用スカーフカ ッ ターの プレ ー ト は,設計 図 で は, 単 体 構 造で ボル ト 穴 が4 個 であるのに, 近 時撮影 された サ ン テック 用ス カーフカ ッ ターの プレ ー ト は,高さ方 向 に 重 なる 上 下の 部 品を有するととも に ボル ト 穴 のようなものが7 個 あることが 認 められるから,事 後 的に, 切削 屑 として 排除 される 部 分を 押圧 するように設計の 変 更 をしたと主張する。し かしながら, プレ ー ト の ボル ト 穴 のうち4 個 については設計 図 と 位 置関係が 一 致 するのであり,また, プレ ー ト は,当 初 から, ガ イ ド 付 き 薄型 シリ ン ダ の ピ ス ト ン ロ ッド に 取 り付 け られていて, 空気 圧 で 上 下に 動 作するように 制 御 されていたのであるから,事 後 的に, 切削屑 として 排除 される 部 分を 押圧 するように設計の 変 更 をしたとは 考 え 難 い。 (4) サ ン テック 用スカーフカ ッ ターに係る発明は,本件発明と同 一 の発明で あると 認 められるとこ ろ ,その発明をした被告の 従 業員を 具 体的に特定する ことはで き ないものの,被告はその発明をした 従 業員からこれを知 得 して, 本件特許出願の 際現 に日本 国内 に お いてその発明の実 施 である事業をしてい たものである。そして,被告が当 時 本件発明の 内容 を知 っ ていたこと 窺 わ せ るような 証 拠 は 全 くないから,このことに 鑑 みれ ば ,被告は,本件発明の 内 容 を知らないでその発明をした 従 業員からこれを知 得 したものと 認 められ る。 そうすると,被告は,本件特許権について, 先使 用による 通常 実 施 権を有 する。 4 以 上 によれ ば ,被告製品1に係る原告の請求も,理由がない。 第4 結論 よ っ て,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のと お り判決す る。 東 京 地 方 裁 判所民事第47 部 裁 判 長裁 判 官 高 野 輝 久 裁判官 志 賀 勝 裁 判 官 棚 橋知 子 は, 海 外 出張のため 署 名 押 印 することがで き ない。 裁 判 長裁 判 官 高 野 輝 久 ( 別紙特許 公報 は 省 略) |