関連審決 | 不服2009-25639 |
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事件 |
平成
23年
(行ケ)
10394号
審決取消請求事件
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原告 株式会社巴川製紙所 訴訟代理人弁理士 末成幹生 被告特許庁長官 指定代理人 川口真一 同 伊藤元人 同 柳田利夫 同 氏原康宏 同 芦葉松美 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2012/07/19 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2009-25639号事件について平成23年10月17日にした審決を取り消す。 |
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争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「グラビア塗布装置およびグラビア塗布方法」とする発明について,平成15年7月14日に特許出願(特願2003-274132)をしたが,平成21年2月9日発送の文書により拒絶理由通知を受け,同年4月10日に意見書を提出したが,同年10月1日発送の文書により拒絶査定を受けた。 原告は,平成21年12月25日,不服審判(不服2009-25639号事件)を請求するとともに,手続補正書を提出した上,平成22年5月7日発送の文書による審尋に対し,同年7月6日に回答書を提出したが,平成23年3月18日発送の文書により上記手続補正書による手続補正は却下され,同月22日発送の文書により拒絶理由通知を受けた。 原告は,平成23年5月23日,手続補正書及び意見書を提出し,特許請求の範囲及び明細書の補正をした(以下,同補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 特許庁は,平成23年10月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月27日に原告に送達された。 2 本願発明本願発明(特許請求の範囲の請求項1)は,次のとおりのものである。 「ロール基台と,このロール基台に回転可能に支持されたロールと,このロールに塗布液を供給する塗布液供給手段と,先端縁が上記ロールの外周面に接触させられて余剰の塗布液を掻き落とすブレードとを備え,上記ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,上記ブレードホルダは,上記ロール基台に対して水平方向に接近離間可能なブレード基台に支持されたグラビア塗布装置において,上記ロール基台および上記ブレード基台の少なくとも一方の両端部に,両者の相対距離を測定する水平方向測定手段と,両者の離間距離を調整する調整手段とを設け,上記ロール基台および上記ブレード基台の少なくとも一方に,上記ブレードホルダの先端縁の傾動方向に配置されて同先端縁までの相対距離を測定する傾斜方向測定手段を設け,上記ロールが下方へ向けて撓むのに対応させて上記ブレードを下方へ撓ませたことを特徴とするグラビア塗布装置。」 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,次のとおりである。 (1) 結論 本願発明は,本願 前 に 頒 布された特 公昭 58-49186号 公報 ( 甲 6。以下「引用文献1」という。)記載の発明(以下「引用発明1」という。),特開2001-129969号 公報( 甲 10。以下「 引 用文 献 2」という。)記 載 の発明(以下「引用発明2」という。)及び特公昭47-16088号公報(甲11)記載の発明(以下「引用発明3」という。)及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2) 引用発明1ないし3の内容並びに本願発明と引用発明1との一致点及び相違点 審決が上記結論を導くに当たって認定した引用発明1ないし3の内容並びに本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア 引用発明1の内容 「機枠3と,この機枠3に回転可能に支持された版胴1と,この版胴1にインキを供給するインキパン19と,先端縁が上記版胴1の外周面に接触させられて余剰のインキを掻き落とすドクター刃12とを備え, 上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,上記ドクター刃支持部13は,上記機枠3に対して水平方向に接近離間可能な2個の受台21に支持されたグラビア輪転印刷機において, 上記機枠3及び上記2個の受台21の少なくとも一方の両端部に,両者の離間距離を調整する調整手段Aが位置する,グラビア輪転印刷機。」 イ 引用発明2の内容 「グラビア塗布装置において,基体14に,作業ドクタ2の先端縁の傾動方向に配置されて作業ドクタ2のポジションを検出する間隔センサ46。」ウ 引用発明3の内容 「ロートグラビア印刷機において,版胴が下方へ向けて撓むのに対応させて刃を下方へ撓ませる発明。」エ 本願発明と引用発明1との一致点「ロール基台と,このロール基台に回転可能に支持されたロールと,このロールに塗布液を供給する塗布液供給手段と,先端縁が上記ロールの外周面に接触させられて余剰の塗布液を掻き落とすブレードとを備え, 上記ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,上記ブレードホルダは,上記ロール基台に対して水平方向に接近離間可能なブレード基台に支持されたグラビア塗布装置において, 上記ロール基台および上記ブレード基台の少なくとも一方の両端部に,両者の離間距離を調整する調整手段を設けた,グラビア塗布装置。」である点。 オ 本願発明と引用発明1との相違点 (ア) 相違点1 本願発明においては,「上記ロール基台および上記ブレード基台の少なくとも一方の両端部に,両者の相対距離を測定する水平方向測定手段と,両者の離間距離を調整する調整手段とを設けた」のに対し, 引用発明1においては,機枠3及び2個の受台21の少なくとも一方の両端部に,両者の離間距離を調整する調整手段Aを設けているものの,「両者の相対距離を測定する水平方向測定手段」に相当するものを設けていない点。 (イ) 相違点2 本願発明においては,「上記ロール基台および上記ブレード基台の少なくとも一方に,上記ブレードホルダの先端縁の傾動方向に配置されて同先端縁までの相対距離を測定する傾斜方向測定手段」を設けたのに対し, 引用発明1においては,このような手段を設けていない点。 (ウ) 相違点3 本願発明においては,「上記ロールが下方へ向けて撓むのに対応させて上記ブレードを下方へ撓ませた」のに対し, 引用発明1においては,ロール及びブレードが撓むかどうかが明らかではない点。 |
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当事者の主張
1 審決の取消事由に係る原告の主張 審決には,引用発明1の認定の誤りによる一致点の認定の誤り(取消事由1)及び相違点2に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2)があり,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は違法として取り消されるべきである。 (1) 引用発明1の認定の誤りによる一致点の認定の誤り(取消事由1) ア 審決は,引用発明1について,「上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,」と認定している。 しかし,引用発明1では,ドクター刃12が傾動し(角度を変え)ても,その先端の位置は変わらない(版胴1の方向に傾くわけではない)から,ドクター刃12が傾動しても,その先端縁は版胴1に対して接近離間しない。 したがって,審決の上記認定は誤りである。 イ また,審決が,本願発明と引用発明1との対比において,「上記ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され」という点で一致するとした点も,同様に誤りである。 (2) 相違点2に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2) 審決は,引用発明1に引用発明2を適用することによって相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者にとって容易想到であると判断している。 しかし,引用発明2は本願発明とは目的を異にしているから,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けは存在せず(後記ア),引用発明2の構成では本願発明の作用を奏することはできず(後記イ),引用発明1に引用発明2を組み合わせると技術的に意味のない構成になる(後記ウ)。したがって,相違点2に係る審決の上記判断は誤りである。 ア 引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないこと 審決は,引用発明2の目的について,「e 上記aないしcから,作業ドクタ2の先端縁近傍の位置を把握し,もって,作業ドクク2の当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握することを目的として,間隔センサ46で作業ドクク2のポジション を 検 出していることが 分か る。」(審決書5 頁 ),「また,本願発明において『同先端縁(ブレードホルダの先端縁)までの相対距離を測定する』ことと,引用文献2記載の発明において『作業ドクタ2のポジションを検出する』こととは,ブレード(作業ドクタ2)の先端縁近傍の位置を把握し,もって,ブレード(作業ドクタ2)の撓み量を把握することが目的である 点で共通する」(審決書9頁)と認定しているが,この認定は誤りである。引用発明2の目的は,作業ドクタ2の撓み量を把握することではなく,「作業ドクタの目下の摩耗を再現可能に検出する」(段落【0010】)ことである。 被告は,「間 隔センサ46(センサ手段)によって, 作業ド クタの 頂 部の 位 置(ポジション)を検出して,作業ドクタが,アニロックスローラの規定の箇所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられていることが示されている」として,間隔センサ46で作業ドクタ2のポジションを検出しているということは,作業ドクタ2の当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握することを目的としているといえると主張する。 確かに,引用発明2においては,作業ドクタの頂部の位置(ポジション)を検出し,これにより作業ドクタのアニロックスローラに対する当て付け角度を検出しているということはできるが,引用発明2では,作業ドクタの撓み量を管理してアニロックスローラを押圧する押圧力を管理しているのではないから,当て付け角度を検出することの作用(目的)が本願発明とは異なっている。 すなわち,引用発明2では,作業ドクタは,そのポジションによって基台14から突出する長さ(自由長)が異なり,自由長が短いときには曲げ剛性が高く,自由長が長いときには曲げ剛性が低いことから,作業ドクタの自由長が長くて撓み量が大きくアニロックスローラを押圧する押圧力が大きくなるべきときに,曲げ剛性が低くなりアニロックスローラを押圧する押圧力を減殺させる。そのため,作業ドクタの当て付け角度(撓み量)を把握してもアニロックスローラを押圧する押圧力を管理することはできない。換言すると,作業ドクタの当て付け角度(撓み量)を増減しても,アニロックスローラを押圧する押圧力を管理することは困難である。 このように,引用発明2の目的は,作業ドクタの当て付け角度(撓み量)を管理してアニロックスローラを押圧する押圧力を管理することではなく,上記のとおり,作業ドクタの撓み量を管理して「作業ドクタの目下の摩耗を再現可能に検出する」ことであり,本願発明とは目的が異なるものであるから,引用発明2を引用発明1に適用するに際しての動機付けが存在しない。 イ 引用発明2の構成では本願発明の作用を奏することはできないこと 審決は,引用発明2の「基体14」は本願発明の「ブレード基台」に相当すると認定しているが,「基体14」は傾動しないから,この認定は誤りである。 本願発明では,「上記ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,」ており,この構成によって,ロールに対するブレードの位置を調整することができる。これに対し,引用発明2では,作業ドクタ2を支持する基体14は傾動しないから,ロールに対するブレードの位置を調整することができない。 被告は,引用発明2においても,ロール(アニロックスロール)に対するブレード(作業ドクタ)の位置を調整していると主張する。 しかし,本願発明では,ブレードを傾動可能に支持するブレードホルダを備えることにより,ブレードの撓み量を管理することでロールに対するブレードの押圧力を管理することができるのに対し,引用発明2では,作業ドクタ2を支持する基体14は傾動せず,本願発明のブレードホルダに相当する構成を有していないから,ブレードの撓み量を管理しても,ロールに対する押圧力を管理することができない。 すなわち,引用発明2では,作業ドクタは傾動せず,その代わりに,後調節ねじ22を回転させることで作業ドクタ2を基体14から突出させ,これにより作業ドクタ2の位置を調整しているが,基体14から突出する作業ドクタ2の自由長が長くなると,作業ドクタ2の曲げ剛性が低くなり,アニロックスローラを押圧する押圧力を所望の値に設定することが困難である。アニロックスローラを押圧する押圧力を所望の値に設定するには,作業ドクタ2の曲げ剛性を変更することなく作業ドクタ2の当て付け状態を調整する必要があるが,引用発明2ではそのような調整は不可能である。 したがって,引用発明2の構成では,本願発明の作用を奏することはできない。 ウ 引用発明1に引用発明2を組み合わせると技術的に意味のない構成になること審決は,引用発明1に引用発明2を適用するとともに,ドクター刃支持部の先端縁までの相対距離を測定するようにして,相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者にとって容易想到であると判断している。 しかし,前記(1) で述べたとおり,引用発明1のドクター刃 支持部13は傾動してもその先端縁は版胴1に対して接近離間しないから,審決の言うように引用発明1に引用発明2を組み合わせると,ロールに対して接近離間しないドクター刃支持部13の先端縁までの相対距離を測定するという,技術的に意味のない構成になる。 エ 結語以上のように,ブレードをその先端縁がロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持し,ブレードホルダの先端縁の傾動方向に配置されて同先端縁までの相対距離を測定するという傾斜方向測定手段を設けることにより,ブレードの傾動方向の位置調整を行うという本願発明の概念は,引用文献1及び2に開示も示唆もされていない。また,本願発明では,最初の水平方向の位置合わせと次の傾動方向の位置合わせという2つの調整動作を行うことができ,これにより,ロールが下方へ向けて撓むのに対応させてブレードを下方へ撓ませて,ブレードの先端縁をグラビアロールの外周面に倣って当接させ,ブレードの先端縁を適正な圧力でロールを押圧することができ,ブレードの摩耗を軽減することができるという効果があるが,このような効果は,引用文献1及び2からは推測することは不可能である。 以上のとおり,審決の瑕疵は明白であるから,取り消されるべきである。 2 被告の反論 原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。 (1) 取消事由1(引用発明1の認定の誤りによる一致点の認定の誤り)に対し 引用文献1(甲6)には,「この発明を適用するグラビア輪転印刷機のドクター修正機構は,円弧軌道つき左右案内板14,14に係合したドクター刃支持部13が,版胴1に接するドクター刃12先端を中心として旋回するようにしたドクター角度調節機構・・・(中略)・・・だけ有すればよい。」(第2欄第13ないし20行),「このドクター装置は原則として上下調節機構を要しない。ドクター刃12の前後進と,その角度調節機構だけである。即ちドクター刃12の支持部13は左右の案内板14,14に可動的に係合し,案内板14,14は夫々,下端を受台21に軸支され流体圧シリンダにより起立させられ,稼働時は版胴1側へ加圧される。」(第3欄第27ないし33行)と記載されている。 このように,引用発明1は,版胴1に対するドクター刃12の押圧力を調整する,すなわちドクター刃12の撓み量を変更するために,流体圧シリンダ22により起立ないし加圧方向へドクター刃12の支持部13を保持する案内板14を作動させるとともに,円弧軌道付き左右案内板14に係合したドクター刃支持部13を旋回させるものである。つまり,ドクター刃12は,案内板14が流体圧シリンダ22により起立ないし加圧方向へ作動されること,及び,円弧軌道付き左右案内板14に係合したドクター刃支持部13が旋回されることで,角度調節可能とされているものである。そして,流体圧シリンダ22の作動により案内板14が回動するから,それに伴いドクター刃12の先端縁は,版胴1に対して接近離間することとなる。 したがって,審決の「上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,」との認定に誤りはない。 (2) 取消事由2(相違点2に係る容易想到性判断の誤り)に対しア 原告の主張ア(引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないこと)に対し(ア) 引用文献2(甲10)には,「インキ支持ローラの表面をきれいに掻き取るためには作業ドクタは,所定の角度を成してこのようなローラに当て付けられなければならない。・・・(中略)・・・従ってドクタブレードとローラとの間の許容できる角度は,狭く限定された角度範囲内にあり,これに相応してばね弾性的なエレメントによって伝達された当て付け力は,やはり狭く限定された範囲内になければならない。」(段落【0003】),「本発明の構成では,センサ手段が基体に対して相対的に作業ドクタの位置,特に作業ドクタの頂部の位置を検出するようにした。」(段落【0011】),「この第1のポジションにおいては,アニロックスローラからのインキの掻き取りが所望の結果を伴って行われるように,すなわち,アニロックスローラの表面に設けられた凹部に完全にインキが充填され,しかも凹部相互間のウェブからはインキがなくなるように,作業ドクタはアニロックスローラに当て付けられている。これにより,作業ドクタは第1のポジションにおいて規定された長さを有し,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられている。」(段落【0013】),「チャンバ型ドクタ1の基体14には,間隔センサ46,例えば機械的に作用するフィーラが配置されている。」(段落【0030】)と記載されている。 このように,引用文献2には,アニロックスローラの表面に設けられた凹部に完全にインキが充填され,しかも凹部相互間のウェブからはインキがなくなるように,間隔センサ46(センサ手段)によって,作業ドクタの頂部の位置(ポジション)を検出して,作業ドクタが,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられていることが示されているといえる。してみると,間隔センサ46で作業ドクタ2のポジションを検出しているということは,作業ドクタ2の当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握することを目的としているといえる。 また,そもそも,引用文献2(甲10)の段落【0003】に記載されているように,作業ドクタの当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握するという目的は,均質なグラビア塗布のため,グラビア塗布装置における普遍的な目的であるから,引用発明2においても自明の目的といえるものであって,その点からも審決の認定に誤りはない。 (イ) 上記のとおり,引用発明2は,作業ドクタの当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握することを目的とするものであり,かつ,そもそも,作業ドクタの当て付け角度(すなわち,撓み量)を把握するという目的は,グラビア塗布装置における普遍的な目的(課題)であるから,引用発明1においても自明の目的(課題)である。してみると,引用発明1と引用発明2とは,その課題(目的)が共通するから,その適用に格別の困難性はない。 したがって,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないとの原告の主張は理由がない。 イ 原告の主張イ(引用発明2の構成では本願発明の作用を奏しないこと)に対し (ア) 原告は,引用発明2の「基体14」は本願発明の「ブレード基台」に相当しない旨主張するが,この主張は誤りである。 すなわち,請求項1に,「ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,上記ブレードホルダは,ロール基台に対して水平方向に接近離間可能なブレード基台に支持された」と記載されているように,本願発明の「ブレード基台」は,ブレードをのせた台といえる。 一方,引用文献2に記載の発明において,「基体14に,作業ドクタ2の先端縁の傾動方向に配置されて」との認定や図4,5の開示から,「基体14」は,作業ドクタ2(本願発明の「ブレード」に相当する。)をのせた台といえる。したがって,引用発明2における「基体14」は,その機能,構造からみて,本願発明における「ブレード基台」に相当するものである。さらに,そもそも,本願発明において,「ブレード基台2」は傾動する構成となっておらず,原告の上記主張は,その前提において誤っている。 (イ) 原告は,引用発明2では,ロールに対するブレードの位置を調整することができないと主張する。しかし,引用文献2(甲10)には,「このチャンバ型ドクタの場合,作業ドクタ2は,モータ26によって回転可能な後調節ねじ22を介してガイドスリット24内で調節可能である。間隔センサ46,例えば機械的に作用するフィーラが作業ドクタ2と常にコンタクト状態にあり,制御装置48と,モータ26と作業ドクタ2と一緒に,閉じられた1つの制御回路50を形成する。作業ドクタ2が第2のポジション12に位置している場合,制御装置48はモータによる後調節をスタートさせる。これにより作業ドクタ2が第1のポジションに移動され,制御装置48は後調節を終了させる。」(段落【0031】)と記載されているように,間隔センサ46で作業ドクタ2のポジションを検出し,その検出結果から後調整ねじ22により作業ドクタ2の当て付け状態を調整する,すなわち,ロール(アニロックスロール)に対するブレード(作業ドクタ)の位置を調整しているから,原告の上記主張は根拠がない。 ウ 原告の主張ウ(引用発明1に引用発明2を組み合わせると技術的意味のない構成になること)に対し原告は,引用発明1のドクター刃支持部13は傾動してもその先端縁は版胴1にして接近離間しないから,引用発明1と引用発明2を組み合わせると,ロールに対して接近離間しないドクター刃支持部13の先端縁までの相対距離を測定するという技術的意味のない構成となる旨主張する。 しかし,前記(1) で述べたとおり,引用発明1のドクター刃 支持部13は,旋回することで,ドクター刃支持部13の先端縁と版胴1との相対距離が変わる,換言すれば,ドクター刃支持部13の先端縁は版胴1に対して接近離間するものである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 |
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当裁判所の判断
当裁判所は,原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく,請求を棄却すべきものと判断する。 1 取消事由1(引用発明1の認定の誤りによる一致点の認定の誤り)について 原告は,引用発明1では,ドクター刃12が傾動しても,その先端縁は版胴1に対して接近離間しないから,審決の,「上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,」との認定は誤りであると主張する。 そこで,以下, 引用文献1(甲6)の記載 事項(後記(1))に基づき, 引用発明1の構成を特定した上(後記(2)),審決の認定について検討する(後記(3))。 (1) 引用文献1(甲6)の記載事項 引用文献1(甲6)には,次の記載がある(下線は引用者)。 ア 第2欄12行目から20行目まで 「この発明の主たる 目的 はド クタ ーの上下調整を不要にする事である。そのため,この発明を適用するグラビア輪転印刷機のドクター修正機構は,円弧軌道つき左右案内板14,14に係合したドクター刃支持部13が,版胴 1 に接するドクター刃12先端を中心として旋回するようにしたドクター角度調節機構及びその調節機構全体を版胴上部へ向けて水平に前後進させる機構だけ有すればよい。」 イ 第3欄26行目から第4欄12行目まで 「次に,ドクター装置について説明する。 このドクター装置は原則として上下調節機構を要しない。ドクター刃12の前後進と,その角度調節機構だけである。即ちドクター刃12の支持部13は左右の案内板14,14に可動的に係合し,案内板14,14は夫々,下端を受台21に軸支され流体圧シリンダ22により起立させられ,稼動時は版胴1側へ加圧される。 この受台21は摺動台23上を前後調整ハンドル24とそのネジ棒により前後動する。また左右の摺動台23は連結材25により一体化され,揺動装置26により稼動中,左右に揺動を繰返す。27はその摺動台23のベツドである。 ドクター刃12の角度調整は,この実施例ではその支持部13端に出たハンドル28により行われる。即ち,ハンドル28を回すと軸28aにより一体として回る左右の小歯車29が夫々案内板14下面の歯に噛合い,軸28aの軸受をもつ支持部13の両端が案内板14の円弧軌道(この場合,案内板14下面及び円弧溝14a)に係合しつゝ旋回する。この旋回運動は前述のようにドクター刃12先端を中心として動くので,予め前後調整ハンドル24により刃先を版胴 1 の所要位置に合わせておけば,刃先のその位置を変えることなく刃の角度だけが変るのである。もし版胴 1 の所要位置にドクター刃12先端を合わせるため,ドクター刃の上下調整もできる方が好ましければ,ベツド27を機枠3に対し上下動する等,適宜の機構を加えてよい。しかし,その場合も適当に上下調整した後は版胴交換のつどこれを行う必要はない。」 (2) 引用発明1の構成 引用文献1の記載事項(上記(1) の下線部分)によれば,引用発明1の構成は,ドクター刃支持部13は,案内板14,14に係合し,案内板14,14は,各々下端を受台21に軸支され,流体圧シリンダ22により起立させられ,稼動時は版胴 1 側に加圧されるものであることが認められ,このことに引用文献1(甲6)記載の図面(特に第1図)を照らし合わせると,@案内板14,14が起立させられた状態(すなわち稼働時ではない状態)では,案内板は版胴 1 側に加圧されておらず,版胴 1 から離れた状態となっており,このとき案内板14に係合するドクター刃支持部13もドクター刃12とともに稼働時とは異なる方向に傾いていること,A稼働時には,案内板14が版胴 1 側に加圧され,案内板14に係合するドクター刃支持部13もその向きを変え,ドクター刃12とともに,版胴 1 側に近づいた状態になっていること(すなわち,第1図に記載された状態か,これに近い状態になること)が認められる。 第1図 上記認定事実によれば,案内板14が,流体圧シリンダ22の動作に伴い,起立させられた状態から版胴1側に加圧された状態に変われば,案内板14に係合するドクター刃支持部13及びドクター刃12も傾きを変えて版胴側に近づくように動くこと,すなわち,傾動することは明らかである。このようにドクター刃12が傾きを変えて動けば,その先端はロールに接近離間することが認められる。 したがって,引用発明1では,ドクター刃12は,その先端縁が版胴 1 に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって傾動可能に支持されているものということができる。 (3) 審決の認定について 審決は,「上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,」(下線は引用者)と 認 定している。し かし,ド クタ ー 刃支持部13は,ド クタ ー 刃12を支持し,流体圧シリンダ22により傾動可能ではあるものの,流体圧シリンダ22によってドクター刃12又はドクター刃支持部13の角度を調整することが可能であるとはいえない。したがって,審決の上記認定中,「角度調節可能に支持され,」とある部分については,「傾動可能に支持され,」と認定すべきであり,この点について審決の認定には誤りがある。 もっとも,本願発明において, 引 用発明1の上記 認 定部 分 に対応する 構 成は,「上記ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,」(下線は引用者)と特定されているのみであり,角度調節可能とは特定されていないため,本願発明と引用発明1との「傾動可能に支持され」という一致点に係る審決の認定には誤りがないといえる。 したがって,引用発明1の内容について,審決が「上記ドクター刃12は,その先端縁が上記版胴1に対して接近離間するようにドクター刃支持部13によって角度調節可能に支持され,」と認定したことは,審決の結論に影響を及ぼすものではない。 2 取消事由2(相違点2に係る容易想到性判断の誤り)について 原告は,相違点2に係る審決の容易想到性判断に誤りがある理由として,引用発明2は本願発明とは目的を異にしており,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないこと(原告の主張ア),引用発明2の構成では本願発明の作用を奏しないこと(原告の主張イ),引用発明1を引用発明2に組み合わせると技術的に意味のない構成になること(原告の主張ウ)を主張する。 そこで,以下, 引用文献2の記載事項(後記(1))に基づき,引用発明2の内容を特定した上(後記(2)),原告の主張アないしウについて順に検討し(後記(3)ないし(5)),相違点2に係る容易想到性について検討する(後記(6))。 (1) 引用文献2(甲10)の記載事項 引用文献2(甲10)には,次の記載がある(下線は引用者)。 ア 段落【0013】 「本発明によるドクタ装置の特徴とするところは,基体に対する作業ドクタの相対位置がセンサ手段によって検出されることである。摩耗に起因して変化する,ドクタ装置の基体に対する作業ドクタの相対位置の変化が客観的に検出されるので,ドクタローラに対して相対的にドクタ装置の基体の変化しない定置のポジションをベースにして,アニロックスローラに対する作業ドクタの相対位置の検出が可能になる。作業ドクタは以下に「第1のポジション」と呼ぶポジションに位置することができる。この第1のポジションにおいては,アニロックスローラからのインキの掻き取りが所望の結果を伴って行われるように,すなわち,アニロックスローラの表面に設けられた凹部に完全にインキが充填され,しかも凹部相互間のウェブからはインキがなくなるように,作業ドクタはアニロックスローラに当て付けられている。これにより,作業ドクタは第1のポジションにおいて規定された長さを有し,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられている。」 イ 段落【0030】 「図4に示した本発明によるチャンバ式ドクタ1の実施例の場合,チャンバ型ドクタ1の基体14には,間隔センサ46,例えば機械的に作用するフィーラが配置されている。このフィーラの検出ヘッド47は,直接的に作業ドクタ2に当て付けられ,作業ドクタ2のポジション変更に追従すると有利である。間隔センサ46に電気的に接続された表示装置54は,本発明のこの実施例の場合,表示装置が,間隔センサ46によって検出された,破線で示した第1のポジション10と破線で示した第2のポジションとの間の作業ドクタの全てのポジションを表示することができるように構成されている。」 図4ウ 段落【0031】「図5は本発明によるチャンバ型ドクタ1の別の実施例を示している。このチャンバ型ドクタの場合,作業ドクタ2は,モータ26によって回転可能な後調節ねじ22を介してガイドスリット24内で調節可能である。間隔センサ46,例えば機械的に作用するフィーラが作業ドクタ2と常にコンタクト状態にあり,制御装置48と,モータ26と作業ドクタ2と一緒に,閉じられた1つの制御回路50を形成する。作業ドクタ2が第2のポジション12に位置している場合,制御装置48はモータによる後調節をスタートさせる。これにより作業ドクタ2が第1のポジションに移動され,制御装置48は後調節を終了させる。これにより,アニロックスローラ6に対する作業ドクタ2の当て付け角の極めて僅かな変化だけが生ぜしめられる。」 図5(2) 引用発明2の内容引用文献2の記載事項(上記(1) ア,イ,ウの各下線部分)に,引用文献2記載の図4及び図5を照らし合わせると,間隔センサ46の検出ヘッド47は,作業ドクタ2の先端縁近傍の傾動方向を検出するように配置されていること,基体14に配置された間隔センサ46(例えば機械的に作用するフィーラ)の検出ヘッド47は,直接的に作業ドクタ2に当て付けられ,作業ドクタ2のポジション変更に追従することから,間隔センサ46で作業ドクタのポジションを検出していること,作業ドクタのポジションは,第1のポジションにおいて,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して当て付けられていることから,ポジショ ン を 検 出することにより作業 ド クタ の 当て 付 け 角度 を 把握 することができること,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,間隔センサ46は,作業ドクタ2の先端縁近傍の位置を把握し,もって,作業ドクタ2の当て付け角度を把握することができるように,作業ドクタ2のポジションを検出していること,作業ドクタ2の当て付け角度が変わることにより,作業ドクタ2の撓み量が変わることが認められる。 (3) 原告の主張ア(引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在しないこと)について 原告は,引用発明2の目的は,作業ドクタの当て付け角度(撓み量)を管理してアニロックスローラを押圧する押圧力を管理することではなく,作業ドクタの撓み量を管理して「作業ドクタの目下の摩耗を再現可能に検出する」ことであり,本願発明とは目的が異なるものであるから,引用発明2を引用発明1に適用する動機付けが存在しない旨主張する。 なるほど,引用文献2(甲10)の段落【0008】には,「解決策として与えられるのは,作業ドクタを後調節ねじによってローラに押し付けて,制御不能なドクタブレードのリバウンドまたは押し戻しが回避されるようにすることである。それというのは,ドクタブレードがそのガイド内で後調節ねじによって固定的に規定されたポジションに保持されるからである。しかしながらこの場合,ドクタブレードを場合によっては手によって後調節するために,印刷者が,摩耗に起因するドクタブレードのすり減らしをコントロールすることを可能にするようにしなければならない。」との記載があり,段落【0010】には,「【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は,輪転印刷機のインキ装置に設けられたドクタ装置を改良して,簡単な構造を有しており,印刷者にとって,作業ドクタの目下の摩擦を再現可能に検出して作業ドクタの最適な運転ポジションへの追従を簡単にすることが可能であるようなドクタ装置を提供することである。」との記載があり,これらの記載によれば,引用発明2は,摩耗に起因するドクタブレードのすり減らしをコントロールすることを課題としていることが認められる。 しかし,引用文献2の記載事項(段落【0013】の「作業ドクタは以下に『第1のポジション』と呼ぶポジションに位置することができる。この第1のポジション においては,( 省 略)作業 ド クタ はア ニ ロ ックス ローラに 当 て 付 けられている。」,「作業ドクタは第1のポジションにおいて規定された長さを有し,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられている。」,段落【0030】の「間隔センサ46,例えば機械的 に 作 用する フィ ーラが配置されている。この フィ ーラの 検 出ヘ ッ ド47は,直接的に作業ドクタ2に当て付けられ,作業ドクタ2のポジション変更に追従する」,段落【0031】の「間隔センサ46,例えば機械的に作用するフィーラが 作業 ド クタ 2と 常 に コンタクト状態 にあり,」)によれ ば , 引 用発明2において, 作業 ド クタ の 目 下の 摩耗 を 再現 可能に検 出するのは, 摩耗 に 起 因して 変 化 する,作業ドクタの基体に対する作業ドクタの相対位置の変化を検出し,作業ドクタを第1のポジションに位置させることで,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けるためであることが認められる。そして,アニロックスローラへの当て付け角度は,作業ドクタの撓み量に対応し,当て付け力は,押圧力に対応する物理量であるから,引用発明2は,作業ドクタの摩耗が原因となって変化することを想定した作業ドクタの撓み量ではあるものの,作業ドクタの撓み量を把握することを課題としていることは明らかである。 そして,作業ドクタの撓み量を把握するという目的は,グラビア塗布装置における普遍的な目的であるから,引用発明1においても自明の目的であるといえる。そうすると,引用発明1と引用発明2とは,その目的を共通にするものであるから,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けは存在するといえる。 したがって,原告の主張アは理由がない。 (4) 原告の主張イ(引用発明2の構成では本願発明の作用を奏することはできないこと)について 原告は,引用発明2の「基体14」は傾動しないから,本願発明の「ブレー アド基台2」に相当するものではない旨主張する。 原告の上記主張は,本願発明の「ブレード基台2」は傾動するのに対し,引用発明2の「基体14」は傾動しないということを前提とするものと解すると,そもそも本願発明において「ブレード基台2」は傾動する構成とはなっていないから,原告の上記主張は,その前提において誤りがあるというべきである(なお,原告は,本願発明における,傾動可能に支持するブレードホルダを含む構成と引用発明2の「基体14」とを比較して論じているものと解される。)。 また,請求項1には,「ブレードは,その先端縁が上記ロールに対して接近離間するようにブレードホルダによって傾動可能に支持され,上記ブレードホルダは,ロール基台に対して水平方向に接近離間可能なブレード基台に支持された」と記載されており,これによれば,本願発明の「ブレード基台」は,ブレードをのせた台であると認められる。一方,引用発明2は,「基体14に,作業ドクタ2の先端縁の傾動方向に配置されて」いるものであり,これに図4及び図5を照らし合わせると,「基体14」は,作業ドクタ2をのせた台であると認められる。したがって,引用発明2における「基体14」は,本願発明における「ブレード基台」に相当するものである。 イ 原告は,引用発明2では,作業ドクタを支持する基体14は傾動せず,本願発明のブレードホルダに相当する構成を有していないから,ロールに対する押圧力を管理することができず,本願発明の作用を奏することができない旨主張する。 しかし,前記認定の引用文献2の段落【0013】の記載,特に,「摩耗に起因して変化する,ドクタ装置の基体に対する作業ドクタの相対位置の変化が客観的に検出されるので,ドクタローラに対して相対的にドクタ装置の基体の変化しない定置のポジションをベースにして,アニロックスローラに対する作業ドクタの相対位置の検出が可能になる。作業ドクタは以下に「第1のポジション」と呼ぶポジションに位置することができる。」「作業ドクタは第1のポジションにおいて規定された長さを有し,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けられている。」との記載は,摩耗に起因して変化する,作業ドクタの基体に対する作業ドクタの相対位置の変化を検出し,作業ドクタを第1のポジションに位置させることで,アニロックスローラの規定の個所に,規定された当て付け角度を成して,規定の当て付け力を伴って当て付けることを開示するものと認められる。 このことは,引用発明2の実施例について次のように検討できることからも明らかである。すなわち,図4及び図5並びに段落【0030】【0031】の記載によれば,作業ドクタ2のポジションと作業ドクタ2からアニロックスローラ6に作用する押圧力との間には,一般に所定の関係が成立するということができる。原告の主張するように,作業ドクタ2の自由長によっても押圧力は変化するが,図4及び図5において,作業ドクタ2の自由長は,作業ドクタ2の基体14からの突出量になると考えられることから,この突出量は,作業ドクタ2のポジションに反映されることとなる。そうすると,引用発明2においても,作業ドクタ2のポジションを検出し制御することにより,作業ドクタ2からアニロックスローラ6に作用する押圧力及び作業ドクタの撓み量を管理しているということができる。 ウ したがって,原告の主張イは理由がない。 (5) 原告の主張ウ(引用発明1に引用発明2を組み合わせると技術的に意味のない構成になること)について 原告は,引用発明1のドクター刃支持部13は傾動してもその先端縁は版胴1に対して接近離間しないから,審決の言うように引用発明1と引用発明2を組み合わせると,ロールに対して接近離間しないドクター刃支持部13の先端縁までの相対距離を測定するという,技術的に意味のない構成になる旨主張する。 しかし,引用発明1のドクター刃支持部13は傾動してもその先端縁は版胴1に対して接近離間しないとの原告の主張に理由がないことは,前記1(2)のとおりである。 したがって,原告の主張ウは,その前提に誤りがあり,理由がない。 (6) 相違点2に係る容易想到性について 以上のとおり,引用発明2の「基体14」は本願発明の「ブレード基台」に相当し,引用発明2の「作業ドクタ2」は本願発明の「ブレード」に相当し,また,本願発明において「同先端縁(ブレードホルダの先端縁)までの相対距離を測定する」ことと,引用発明2において「作業ドクタ2のポジションを検出する」こととは,ブレード(作業ドクタ2)の先端縁近傍の位置を把握し,もって,ブレード(作業ドクタ2)の撓み量を把握することが目的である点で共通するから,引用発明2の「間隔センサ46」は,本願発明の「傾斜方向測定手段」に相当する。引用発明2では,本願発明においてブレードを支持するブレードホルダのような構成を欠くため,本願発明のように「同先端縁(ブレードホルダの先端縁)までの相対距離を測定するという構成にはなっていないが,ブレードの撓み量を把握するという目的との関係で重要なことは,ブレードの先端縁近傍の位置を測定することであるから,ブレード及びブレードホルダを備えた塗布装置にあっては,ブレードの先端縁を測定するか,ブレードホルダの先端縁を測定するかは,当業者が適宜選択し得ることである。 また,グラビアロールの外周面に塗布液が良好な状態で付着するようにするため,作業ドクタの撓み量が適切な範囲になるようにすることは,グラビア塗布装置における普遍的な目的であり,引用発明1においても自明の課題であるから,作業ドクタの当て付け角度(すなわち,撓み量)が適切な範囲になるようにするために作業ドクタの位置を検出するものである引用発明2を引用発明1に適用する動機付けは存在する。 したがって,引用発明1に引用発明2を適用するとともに,引用発明1のドクター刃支持部13の先端縁までの相対距離を測定するようにして,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。 よって,相違点2に係る審決の容易想到性判断に誤りはない。 3 まとめ以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消すべき違法は認められない。 |
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結論
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 芝俊 |
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