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事件 平成 23年 (行ケ) 10283号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/06/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年6月28日判決言渡
平成23年(行ケ)第10283号 審決取消請求事件

平成24年3月8日 口頭弁論終結

判 決

原 告 X

訴訟代理人弁理士 服 部 雅 紀

同 臼 井 孝 尚
被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 大 河原 裕

同 田 村 嘉 章

同 藤 井 昇

同 黒 瀬 雅 一

同 芦 葉 松 美
主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30

日と定める。

事実及び理由
第1 請求

特許庁が不服2010−12220号事件について平成23年4月26日にした

審決を取り消す。

第2 当事者間に争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

原告は,発明の名称を「直列・並列混合式二動力駆動系統」とする発明について,
平成17年4月18日(パリ条約による優先権主張2004年4月19日,米国)

1
特許出願(特願2005−119771号。以下「本願」という。)をしたが,平
成22年2月5日付けで拒絶査定を受けた。これに対し,原告は,平成22年6月

7日付けで,拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2010−12220号)を

し,同日付けで手続補正をした(以下,
「本件補正」といい,本件補正後の明細書

を「本願明細書」という。。


特許庁は,平成23年4月26日,
「本件審判の請求は,成り立たない。
」との審

決をし(附加期間90日。以下,単に「審決」という。,その謄本は,同年5月1

2日,原告に送達された。

2 特許請求の範囲の記載

本件補正後の特許請求の範囲(請求項の数31)の請求項1の記載は,次のとお

りである(以下,本件補正後の請求項1に記載された発明を「本願発明」という。。


「直列式動力又は並列混合式動力の稼働能力を有し,

前記直列式動力は,エンジンにより発電機を駆動し,発電エネルギーによってモ
ーターを駆動して負荷を駆動し,

前記並列混合式動力は,
エンジン動力より負荷を直接に駆動でき,低負荷のとき,

直列式動力として稼働し,中負荷のとき,エンジン動力より駆動し,さらに,充放

電装置を取りつけ,エンジン駆動が停止された場合,充放電装置の電気エネルギー

によりモーターを駆動する直列・並列二動力混合方式の駆動系統であって,

エンジンを主動回転動力源とするとき,エンジン動力より負荷を直接に駆動でき
る他,駆動系統は,

(1) 直列式動力系統として稼働するとき,エンジンは発電機能として第一電機

ユニットを駆動し,生成された電気エネルギーは第二電機ユニットを駆動し,モー

ター機能として稼働することにより,機械を回転させるための動力エネルギーを出

力し,負荷を駆動し,エンジンを調節制御し,一定速度の稼働条件において,より

高いエネルギー効率で稼働でき,前述のエンジンが一定速度で稼働し,エンジンが
燃費低い状態で稼働しながら,
出力効率の高い省燃費条件の稼働速度範囲を獲得し,

2
最適なブレーキ正味燃料消費率 Brake Specific Fuel Consumption)の実現を指し,

系統に充放電装置を設けることにより,第一電機ユニットの発電エネルギ
(2)

ーを充放電装置に充電するか,又は充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニッ

トの発電エネルギーとを併せて,第二電機ユニットを駆動して,
モーターに出力し,

エンジンを一定速度の稼働条件に調節制御することによって,より高いエネルギー

効率で稼働でき,前述のエンジンが一定速度で稼働することは,エンジンは燃費低

い状態で稼働しながら,出力効率の高い省燃費条件の稼働速度範囲を獲得し,最適
なブレーキ正味燃料消費率(Brake Specific Fuel Consumption)の実現を指し,

(3) エンジンを動力の回転エネルギーとして負荷を駆動し,

系統に充放電装置を設置し,並列混合式動力系統として稼働するとき,充
(4)

放電装置の電気エネルギーは,第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのい

ずれを駆動して,モーター機能として稼働し,エンジン動力と併せて負荷を駆動す

るか,又は軽い負荷のときにエンジンの動力エネルギーでもって,第一電機ユニッ
ト及び第二電機ユニットそのいずれを駆動し,発電機として稼働し,充放電装置に

充電するか又は他の負荷に電気を提供し,

充放電装置の電気エネルギーは第一及び第二電機ユニット又はそのいずれ
(5)

を,モーター機能として稼働し負荷を駆動し,

(6) エンジン動力により,第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのい

ずれを駆動し,発電機能として稼働する,発電した電気エネルギーは充放電装置の
充電又は他の負荷に電気を供給し,

負荷より第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのいずれを反対方
(7)

向に駆動し,回生発電機として稼働し,発電した電気エネルギーは充放電装置の充

電又は他の負荷に電気を供給し,

エンジンの機械ダンパーにより,ブレーキ作動機能を働かせる,又は充放
(8)

電装置を設置したとき,第一電機ユニットと第二電機ユニットとを全部又はいずれ
かの一つを発電機として稼働し,充放電装置に充電するか,又は他の負荷に電気を

3
供給し,回生発電機のブレーキ作動機能を生成し,
充放電装置より第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのいずれを
(9)

駆動してモーター機能としてエンジンを起動し,

前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有し,
(10)

エンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善する

ことを特徴とする直列・並列二動力混合方式駆動系統の構造。」

3 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特開2

001−57705号公報(以下 引用例1」 (以下 引
「 という。 に記載された発明
) 「

という。 及び特開平10−327504号公報(以下 引用例2」
用発明」 ) 「 という。


に開示されている周知技術に基づき,容易に発明をすることができたものであり,

特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。

審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明の内容,引用発明と本願発明との一
致点,相違点について,次のとおり認定した。

(1) 引用発明の内容

「走行モータ2のみによる動力又はエンジン1と走行モータ2との併用による動

力の駆動能力を有し,

前記走行モータ2のみによる動力は,エンジン1の作動時にジェネレータ・モー

発電された電力を走行モータ2に供給して駆動輪9,
タ4で発電し, 10を駆動し,
前記併用による動力は,エンジン1の動力で駆動輪9,10を直接駆動でき,定

常低負荷走行時,走行モータ2のみによる動力で駆動し,定常中負荷走行時,エン

ジン1の動力で駆動し,さらに,バッテリ3を取りつけ,エンジン1が停止された

定常低負荷走行時,バッテリ3の電力により走行モータ2を駆動する複数動力が混

合された方式の駆動系統であって,

エンジン1を主動回転動力源とするとき,エンジン1の動力で駆動輪9,10を
直接駆動できる他,駆動系統は,

4
走行モータ2のみによる動力の系統として駆動するとき,定常低負荷走行
(1)
時のバッテリ蓄電量低下時において,エンジン1は発電機としてジェネレータ・モ

生成された発電電力はバッテリ3を介して走行モータ2を駆動し,
ータ4を駆動し,

モータとして駆動することにより,ギヤトレイン11を回転させるための駆動トル

クを出力し,駆動輪9,10を駆動し,

系統にバッテリ3を設けることにより,定常低負荷走行時のバッテリ蓄電
(2)

量低下時において, ェネレータ モータ4の発電電力をバッテリ3に充電するか,
ジ ・
又は定常高負荷走行時において,バッテリ3の電力とジェネレータ・モータ4の発

電電力とを併せて,走行モータ2を駆動し,

定常中負荷走行時にエンジン1を動力の回転エネルギーとして駆動輪9,
(3)

10を駆動し,

系統にバッテリ3を設置し,併用による動力の系統として駆動するとき,
(4)

定常高負荷走行時にバッテリ3の電力は,ジェネレータ・モータ4及び走行モータ
2又は走行モータ2のみを駆動して,モータとして駆動し,高出力運転されるエン

ジン1の動力と併せて駆動輪9,10を駆動するか,又は定常高負荷より軽い定常

中負荷走行時にエンジン1の動力でもって,ジェネレータ・モータ4を駆動し,発

電機として駆動し,バッテリ3に充電し,

定常低負荷走行時,定常高負荷走行時あるいは発進時にバッテリ3の電力
(5)

はジェネレータ・モータ4及び走行モータ2又は走行モータ2のみを,モータとし
て駆動し駆動輪9,10を駆動し,

定常中負荷走行時にエンジン1の動力により,ジェネレータ・モータ4を
(6)

駆動し,発電機として駆動し,発電した電力はバッテリ3を充電し,

減速時に駆動輪9,10で走行モータ2を惰性走行することにより回転さ
(7)

せ,回生発電機として駆動し,発生した回生電力はバッテリ3を充電し,

車両走行中においてアクセルの開度量が全閉状態となった減速時であって
(8)
バッテリ3を設置したとき,走行モータ2を発電機として駆動し,バッテリ3に充

5
電し,回生制動機能を生成し,
エンジン始動時においてバッテリ3によりジェネレータ・モータ4を駆動
(9)

してモータとしてエンジン1を起動し,

前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有し,
(10)

定常中負荷走行時においてエンジン1は高効率領域で運転される複数動力が混合

された方式の駆動系統の装置。


(2) 一致点
「直列式動力又は並列混合式動力の稼働能力を有し,

前記直列式動力は,エンジンにより発電機を駆動し,発電エネルギーによってモ

ーターを駆動して負荷を駆動し,

前記並列混合式動力は,
エンジン動力より負荷を直接に駆動でき,低負荷のとき,

直列式動力として稼働し,中負荷のとき,エンジン動力より駆動し,さらに,充放

電装置を取りつけ,エンジン駆動が停止された場合,充放電装置の電気エネルギー
によりモーターを駆動する直列・並列二動力混合方式の駆動系統であって,

エンジンを主動回転動力源とするとき,エンジン動力より負荷を直接に駆動でき

る他,駆動系統は,

(1) 直列式動力系統として稼働するとき,エンジンは発電機能として第一電機

ユニットを駆動し,生成された電気エネルギーは第二電機ユニットを駆動し,モー

ター機能として稼働することにより,機械を回転させるための動力エネルギーを出
力し,負荷を駆動し,

系統に充放電装置を設けることにより,第一電機ユニットの発電エネルギ
(2)

ーを充放電装置に充電するか,又は充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニッ

トの発電エネルギーとを併せて,第二電機ユニットを駆動して,
モーターに出力し,

(3) エンジンを動力の回転エネルギーとして負荷を駆動し,

系統に充放電装置を設置し,並列混合式動力系統として稼働するとき,充
(4)
放電装置の電気エネルギーは,第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのい

6
ずれを駆動して,モーター機能として稼働し,エンジン動力と併せて負荷を駆動す
るか,又は軽い負荷のときにエンジンの動力エネルギーでもって,第一電機ユニッ

ト及び第二電機ユニットそのいずれを駆動し,発電機として稼働し,充放電装置に

充電するか又は他の負荷に電気を提供し,

充放電装置の電気エネルギーは第一及び第二電機ユニット又はそのいずれ
(5)

を,モーター機能として稼働し負荷を駆動し,

(6) エンジン動力により,第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのい
ずれを駆動し,発電機能として稼働する,発電した電気エネルギーは充放電装置の

充電又は他の負荷に電気を供給し,

負荷より第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのいずれを反対方
(7)

向に駆動し,回生発電機として稼働し,発電した電気エネルギーは充放電装置の充

電又は他の負荷に電気を供給し,

エンジンの機械ダンパーにより,ブレーキ作動機能を働かせる,又は充放
(8)
電装置を設置したとき,第一電機ユニットと第二電機ユニットとを全部又はいずれ

かの一つを発電機として稼働し,充放電装置に充電するか,又は他の負荷に電気を

供給し,回生発電機のブレーキ作動機能を生成し,

充放電装置より第一電機ユニット及び第二電機ユニット又はそのいずれを
(9)

駆動してモーター機能としてエンジンを起動し,

前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有し,
(10)
エンジンにおける,効率低下を改善する直列・並列二動力混合方式駆動系統の構

造。


(3) 相違点

ア 相違点1


「直列式動力系統として稼働するとき,本願発明は, エンジンを調節制御し,一

定速度の稼働条件において,より高いエネルギー効率で稼働でき,前述のエンジン
が一定速度で稼働し,エンジンが燃費低い状態で稼働しながら,出力効率の高い省

7
燃費条件の稼働速度範囲を獲得し, 適なブレーキ正味燃料消費率 Brake Specific
最 (
Fuel Consumption)の実現を指し』としているのに対し,引用発明は,かかる特定

がなされていない点。


イ 相違点2

「系統に充放電装置を設けることにより,第一電機ユニットの発電エネルギーを

充放電装置に充電するか,又は充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの

発電エネルギーとを併せて,第二電機ユニットを駆動して,モーターに出力する際

に,本願発明は, エンジンを一定速度の稼働条件に調節制御することによって,よ

り高いエネルギー効率で稼働でき,前述のエンジンが一定速度で稼働することは,

エンジンは燃費低い状態で稼働しながら,出力効率の高い省燃費条件の稼働速度範

囲を獲得し,最適なブレーキ正味燃料消費率(Brake Specific Fuel Consumption)

の実現を指し』としているのに対し,引用発明は,かかる特定がされていない点」

ウ 相違点3
「 エンジンにおける,効率低下を改善する』態様に関し,本願発明は,エンジン


『の低いパワーと低速稼働』における,効率低下『と高い汚染課題』を改善すると

しているのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。


第3 当事者の主張

取消事由に関する原告の主張


(1) 取消事由1(引用例1の認定の誤り)
審決は,引用例1の記載に基づかずに,引用発明について,定常高負荷走行時に

おいて,バッテリ3の電力とジェネレータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行

モータ2を駆動するものと認定した誤りがある。

すなわち,引用例1の段落【0025】【0038】【0039】及び図1,1
, ,

1によれば,引用発明では,定常高負荷走行時及び急加速時において,エンジン1

が高出力運転されると共に,バッテリ3からジェネレータ・モータ4と走行モータ
2とに放電され,ジェネレータ・モータ4と走行モータ2が車輪駆動軸に対してト

8
ルクを出力するが,ジェネレータ・モータ4は,バッテリ3から放電されて,エン
ジン1に駆動力を与えるものであり,走行モータ2に対して発電電力を供給してい

ない。

したがって,引用発明は,定常高負荷走行時において,バッテリ3の電力とジェ

ネレータ モータ4の発電電力とを併せて, 行モータ2を駆動するものではなく,



上記審決の認定には誤りがある。

(2) 取消事由2(本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り)
審決は,引用例1の「定常高負荷走行時において,バッテリ3の電力とジェネレ

ータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行モータ2を駆動」する態様が,本願発

明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーとを併せ

て,第二電機ユニットを駆動して,モータに出力」する態様に相当すると認定する

が,以下のとおり,誤りがある。

すなわち,上記のとおり,引用発明の定常高負荷走行時における態様は,エンジ
ン1が高出力運転されるとともに,バッテリ3からジェネレータ・モータ4と走行

モータ2とに放電され,走行モータ2は車輪駆動軸に対してトルクを出力し,ジェ

ネレータ・モータ4はエンジン1を経由して車輪駆動軸に対してトルクを出力する

ものであり,本願発明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電

エネルギーとを併せて,第二電機ユニットを駆動して,モータに出力」する構成と

は異なる。また,引用例1では,定常高負荷走行時において,エンジンは高出力回
転されているのに対し,本願発明では,
「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユ

ニットの発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動」する態様と,
「エンジ

ンを一定速度の稼働条件に調節制御する」態様とが相互に密接な関係を有し,両態

様を同時に制御するものであって,その構成の一部分のみを取り出して,引用発明

の構成と対比することは相当でない。

したがって,引用例1の「定常高負荷走行時において,バッテリ3の電力とジェ
ネレータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行モータ2を駆動」する態様が,本

9
願発明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーとを
併せて,第二電機ユニットを駆動して,モータに出力」する態様に相当するとした

審決の認定には誤りがある。

(3) 取消事由3(容易想到性に係る認定,判断の誤り)

審決は,本願発明は,引用発明に周知技術を適用することにより,容易に発明

ることができたものであると認定,判断するが,以下のとおり,誤りがある。

すなわち,本願発明は,エンジンの低出力及び低速回転において,エネルギー効
率を向上し,排ガスに含まれる汚染物質の排出を低減することを課題とし,これを

解決する手段として,第一電機ユニットの発電エネルギーは,充放電装置に充電さ

れることなく,第二電機ユニットに供給され,充放電装置の電気エネルギーと第一

電機ユニットの発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動し,エンジンを

一定速度の稼働条件に調節制御している。また,本願発明は,第一電機ユニットの

発電エネルギーが,充放電装置に充電されることなく第二電機ユニットに供給され
ることにより,第一電機ユニットの発電エネルギーが熱損失によって低減すること

を抑制することができ,これにより,
エンジンを一定速度の稼働条件に調節制御し,

エンジンの低出力及び低速回転において,エネルギー効率を向上し,汚染物質の排

出を低減することができる。

これに対し,引用例1には,ジェネレータ・モータに異常が発生したことによる

走行困難な状態を回避すること及びバッテリの過充電を回避することを課題とし,
ジェネレータ・モータ4の発電エネルギーが,バッテリ3に充電され,バッテリ3

の電気エネルギーが走行モータ2に供給される構成が開示されており,ジェネレー

タ・モータ4の発電エネルギーがバッテリ3に充電されるときと,バッテリ3から

走行モータ2に放電されるときに,それぞれ熱損失が生じる。

また,引用例1の定常高負荷走行時の態様は,エンジンが並列式混合動力系統と

して稼働するものであり,エンジンが最適な回転速度で負荷を駆動させることが必
要となるから,エンジンの回転速度をブレーキ正味燃料消費率の範囲内で制御する

10
ことはできない。さらに,引用例2には,シリーズ方式とパラレル方式における各
問題点を解決するとともに,シリーズ方式とパラレル方式の各利点を併せ持ったハ

イブリッド電気自動車の提供を課題とし,第1の発電機10の発電エネルギーが,

バッテリ18に充電され,バッテリ18から電気エネルギーが第2のモータ14に

供給される構成が開示されているものの,バッテリが,エンジンの回転を最適なブ

レーキ正味燃料消費率の範囲内にするために機能することは,記載も示唆もされて

いない。
なお,審決が,引用発明と本願発明とが第一電機ユニットの発電エネルギーを充

放電装置に充電する構成を共通にすることや,本願の請求項1の構成(1)ないし

(9)のうち,一部の機能のみを有するものも本願発明に含まれることをもって審

決がなされたのであれば,出願人に対する不意打ちに当たり,審決は,特許法15

9条2項で準用する同法50条に違反する。

以上によれば,本願発明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの
発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動しているとき,エンジンを一定

速度の稼働条件に調節制御する」構成は,引用例1,2には記載も示唆もされてい

ない上,本願発明の奏する作用効果は,引用例1,2の記載から予測し得ないもの

である。

したがって,本願発明は,引用発明に引用例2に記載されたような周知技術を適

用することにより容易に発明できたとはいえず,審決の容易想到性に係る認定,判
断には誤りがある。

被告の反論


(1) 取消事由1(引用例1の認定の誤り)に対して

原告は,審決が,引用例1について,定常高負荷走行時において,バッテリ3の

電力とジェネレータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行モータ2を駆動するも

のとした認定には誤りがあると主張する。
しかし,原告の上記主張は,失当である。すなわち,引用例1の段落【0029】

11
によれば,引用発明は,ジェネレータ・モータで発電した電力を走行モータに供給
して駆動することも可能に構成されたものである。また,引用例1の段落【003

8】及び図10によれば,引用発明では,バッテリ3の蓄電量が十分に大きいとき

は,ジェネレータ・モータ4と走行モータ2に放電され,バッテリ3の蓄電量が減

少するに従い, ッテリ3とジェネレータ モータ4から走行モータ2に放電され,
バ ・

更にバッテリ3の蓄電量が減少したときには,ジェネレータ・モータ4は専ら発電

機として作動し,その発電力によりバッテリ3を充電することが示唆されている。
そうすると,引用発明において,バッテリ3は蓄電量に応じた起電力を有し,バッ

テリ3の電力とジェネレータ・モータ4の発電力を併せたものが走行モータ2を駆

動するが,バッテリ3の蓄電量に応じて,ジェネレータ・モータ4はバッテリ3か

ら放電されたり,バッテリ3に充電したりするものといえる。

以上によれば,引用例1には,定常高負荷走行時において,バッテリの電力とジ

ェネレータ・モータの発電電力とを併せて,走行モータを駆動することが開示され
ており,審決の引用例1の認定に誤りはない。

(2) 取消事由2(本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り)につい



原告は,引用例1の「定常高負荷走行時において,バッテリ3の電力とジェネレ

ータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行モータ2を駆動」する態様が,本願発

明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーとを併せ
て,第二電機ユニットを駆動して,モータに出力」する態様に相当するとした審決

の認定には誤りがあると主張する。しかし,上記のとおり,引用例1には,定常高

負荷走行時において,バッテリの電力とジェネレータ・モータの発電電力とを併せ

て走行モータを駆動することが開示されており,原告の上記主張は,失当である。

また,原告は,本願発明は,充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの

発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動する態様と,エンジンを一定速
度の稼働条件に調節制御する態様とが相互に密接な関係を有するものであって,そ

12
の構成の一部分のみを比較の対象とすることは誤りであると主張する。しかし,原
告の上記主張は,失当である。すなわち,本願発明において,充放電装置の電気エ

ネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動

する態様とは,第二電機ユニットに対して充放電装置と第一電機ユニットの両者か

ら電気エネルギーを供給する態様を意味するのに対し,エンジンを一定速度の稼働

条件に調節制御する態様とは,エンジンの回転速度の制御態様であり,両態様は制

御対象が異なり,それぞれが必須の構成ではなく,別個の制御が可能である。 た,

本願発明は,充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーと

を併せて第二電機ユニットを駆動することにより,初めてエンジンを一定速度の稼

働条件に調節制御することが可能となるものではない。

したがって,本願発明において,
「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニッ

トの発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動する態様」 「エンジンを
と,

一定速度の稼働条件に調節制御する態様」とを分けて,その構成の一部分と引用発
明を対比することが誤りとはいえない。また,審決は,
「エンジンを一定速度の稼働

条件に調節する」点を含めて,相違点2と認定し,その容易想到性について判断し

ており,本願発明の構成の一部分についてのみ判断しているものでもない。

(3) 取消事由3(容易想到性に係る認定,判断の誤り)について

原告は,本願発明の「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エ

ネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動しているとき,エンジンを一定速度の
稼働条件に調節制御する」 成は, 用例1,
構 引 2には記載も示唆もされていない上,

本願発明の奏する作用効果は,引用例1,2の記載から予測し得ないものであるか

ら,本願発明は,引用発明に引用例2に記載されたような周知技術を適用すること

により容易に発明できたとはいえず,審決の容易想到性に係る認定,判断には誤り

があると主張する。

しかし,原告の上記主張は,以下のとおり失当である。すなわち,
ア 原告は,引用発明において,バッテリ蓄電量低下時には,ジェネレータ・モ

13
ータ4の発電電力は,バッテリ3に供給されるとともに,バッテリ3の電気エネル
ギーが走行モータ2に供給されるところ,ジェネレータ・モータ4の発電エネルギ

ーがバッテリ3に充電されるときの熱損失と,バッテリ3から走行モータ2に放電

されるときの熱損失が生じると主張する。

しかし,原告の上記主張は,失当である。すなわち,バッテリへの充電とバッテ

リからの放電(電力供給)とを,共通の端子を用いて行うことは技術常識であると

ころ,引用発明において,バッテリ3の充電端子と走行モータ2への電力供給端子
とは共通のものと解され,バッテリ3に充電するときは,同時に,同端子に接続さ

れた走行モータ2にも電力が供給されることとなるから,引用発明は,ジェネレー

タ・モータ4の発電エネルギーが,バッテリ3に充電されるとともに,ジェネレー

タ・モータ4の発電エネルギーとバッテリ3からの電力が走行モータ2に供給され

る。そうすると,ジェネレータ・モータ4から直接走行モータ2に供給される発電

電力は,バッテリ3に充電されることはないから,充電時の熱損失もバッテリ3か
ら走行モータ2に放電されるときの熱損失も生じない。

イ 原告は,本願発明は,充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発

電エネルギーとを併せるものであるから,第一電機ユニットの発電エネルギーは,

充放電装置に充電されることなく,第二電機ユニットに供給されると主張する。し

かし,本願の特許請求の範囲には,
「充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニッ

トの発電エネルギーとを併せて」と記載されているのみで,第一電機ユニットの発
電エネルギーの全てを併せるとは記載されておらず,本願発明は,充放電装置の電

気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーの一部を併せて第二電機ユニッ

トを駆動するものであり,原告の上記主張は失当である。

ウ 原告は,本願発明は,第一電機ユニットの発電エネルギーが,充放電装置に

充電されることなく第二電機ユニットに供給されることで,第一電機ユニットの発

電エネルギーが熱損失によって低減することを抑制することができ,これにより,
エンジンを一定速度の稼働条件に調節制御し,エンジンの低出力及び低速回転にお

14
エネルギー効率を向上し,汚染物質の排出を低減できると主張する。 かし,
いて, し
原告の上記主張に係る作用効果は,本願明細書に記載がない上,原告の前置報告書

による審尋に対する回答書(甲9)及び本願明細書の段落【0041】の記載によ

れば,本願発明は,エンジンを一定速度の稼働条件に調節制御することにより,エ

ンジンが燃費低い状態で稼働しながら出力効率の高い省燃費条件の稼働速度範囲を

獲得し,最適なブレーキ正味燃料消費率を実現することができるものであり,充放

電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーとを併せて第二電機
ユニットを駆動することにより,エンジンの低出力及び低速回転において,エネル

ギー効率を向上し,汚染物質の排出を低減できるものではない。また,本願発明に

係る特許請求の範囲には,第一電機ユニットの発電エネルギーを充放電装置に充電

することと,充放電装置の電気エネルギーと第一電機ユニットの発電エネルギーと

を併せて第二電機ユニットを駆動し,モーターに出力することとが択一的に記載さ

れており,引用発明が後者の構成を備えていないとしても,前者の構成は備えてい
るから,原告の上記主張には理由がない。さらに,本願の請求項1には,(10)


前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有し」と記載されており,構成(1)

ないし(9)のうち,一部の機能のみを有するものも本願発明に含まれるから,構

成(2)が引用例1に開示されていないとしても,引用発明に引用例2に開示され

周知技術を適用することにより本願発明に想到することは容易といえる。

なお,審決の拒絶理由として示された引用例1は,審査における平成21年3月
4日付け拒絶理由通知書(甲2)及び平成22年2月2日付け拒絶査定(甲5)に

示されており,これに対し,原告は,それぞれ意見を述べたり,補正を行ったりし

ていること,全ての構成を必須の構成とするがそれぞれの構成が分離可能であるこ

とが明らかな発明に対してすべての構成要件について拒絶の理由が示されていれば,

一部の構成のみからなる発明についても,実質的に拒絶の理由が示されたこととな

ることからすれば,審決には,出願人である原告に対する不意打ちはなく,特許法
159条2項で準用する同法50条に違反しない。

15
エ 原告は,本願発明と引用例1,2の課題が異なる上,本願発明の奏する効果
は,引用例1,2の記載から予測し得るものではないと主張する。しかし,本願発

明及び引用例1,2は,いずれもエンジンとモータを備えたハイブリッド車両の技

術分野に属するものであり,当該技術分野において,効率の向上や排気ガス中の有

害成分の低減は,いずれも周知の課題であり,引用例1,2記載の発明にも当然に

内在している課題である。そして,エンジンを高効率・低公害で運転するため,エ

ンジンを最も排気ガスの少ない効率的な運転ができるように所定出力で運転し,一
定速度の稼働条件に調節制御すること,該エンジンの補助動力としてモータを使用

すること,エンジンの出力の余剰分を用いて発電機を駆動して補うよう構成するこ

とは,ハイブリッド電気自動車の分野において周知の技術である。そうすると,上

周知技術を,引用発明に適用することは容易であり,本願発明の奏する作用効果

も,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって,格別な

ものではない。
オ 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に開示された周知技術

容易に発明することができたものであるとした審決の判断に誤りはない。

当裁判所の判断
第4

当裁判所は,本願発明は引用発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることが

できたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができないとした審

決の判断に誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりであるが,事案
に鑑み,取消事由1ないし3について併せて検討する。

1 本願発明に係る特許請求の範囲の記載は,
前記第2の2記載のとおりである。

これによれば,本願発明は,直列式動力又は並列混合式動力の稼働能力を有し,直

列式動力は,エンジンにより発電機を駆動し,発電エネルギーによってモーターを

駆動して負荷を駆動し,並列混合式動力は,エンジン動力より負荷を直接に駆動で

き,低負荷のとき,直列式動力として稼働し,中負荷のとき,エンジン動力より駆
動し,さらに,充放電装置を取りつけ,エンジン駆動が停止された場合,充放電装

16
置の電気エネルギーによりモーターを駆動する直列・並列二動力混合方式の駆動系
統であって,エンジンを主動回転動力源とするとき,エンジン動力より負荷を直接

に駆動できる他,駆動系統に構成(1)ないし(9)に係る全て又は一部の機能を

有し,エンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善

することを特徴とする直列 並列二動力混合方式駆動系統の構造に係る発明である。


すなわち,本願発明の特許請求の範囲に「
(10)前記駆動系統に前述した全て又は

」と記載されていることに照らすならば,本願発明は,エンジン
一部の機能を有し,
動力により負荷を直接に駆動できる他,駆動系統に構成(1)ないし(9)に係る

全て又は一部の機能を有することで,エンジンの低いパワーと低速稼働における,

効率低下と高い汚染課題を改善することを特徴とする直列・並列二動力混合方式の

駆動系統を採用した発明であると理解できる。したがって,エンジンの低いパワー

と低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善するために,駆動系統に構成

(1)ないし(9)に係る機能を選択的に備えることで足りる。
2 これに対し,原告は,本願発明は,充放電装置の電気エネルギーと第一電機

ユニットの発電エネルギーとを併せて第二電機ユニットを駆動する態様と,エンジ

ンを一定速度の稼動条件に調節制御する態様とが相互に密接な関係を有し,両態様

を同時に制御するものであるのに対し,引用発明は定常高負荷走行時において,バ

ッテリ3の電力とジェネレータ・モータ4の発電電力とを併せて,走行モータ2を

駆動するものではないとして,審決の引用発明の認定,本願発明と引用発明との一
致点,相違点の認定,及び本願発明の容易想到性判断には誤りがあると主張する。

しかし,原告の上記主張は,失当である。すなわち,上記のとおり,本願発明は,

エンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善するた

め,駆動系統に構成(1)ないし(9)に係る機能を選択的に備えていれば足りる

ものと解されるところ,引用発明においても,駆動系統に構成(2)以外の構成に

係る機能が備わっていることについては,当事者間において争いがない。そして,
引用例2(甲12)には「・・・エンジンを全運転域で一定回転,一定負荷の条件

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の下で駆動させることができ,排出ガス量を低減できる。
・・・」 段落【0002】
( )
との記載があり,特開平7−336810号公報(乙1)には「このようなハイブ

リッド型車両としては,
・・・エンジンを高効率・低公害で運転するため,エンジン

を最も排気ガスの少ない効率的な運転ができるように所定出力で運転し,該エンジ

ンの補助動力としてモータを使用するものが知られている。
・・・」 段落【000


2】
)との記載があり,特公昭50−18136号公報(乙2)には「多動力源を使

用する動力装置は,車両用途に応用されると,現在の全機械式動力装置に優る数種
の利点を持つ。都市環境内の車両速度の上限,たとえば法定最高速度に一致するよ

うにモード遷移速度を選定することができる,
ということを強調しておく。
ゆえに,

都市運転(モード遷移速度以下)中の大部分の時間中,動力装置はその第1モード

にあつて内燃機関は準定常速度およびトルクで運転することになる。この様に運転

すると,エンジンは高い空燃比で運転して高い燃焼効率と低いエンジン放出とを確

保することができる。 (4頁8欄42行〜5頁9欄8行)との記載があり,
・・・」
上記記載によれば,エンジンを一定速度の稼動条件に調節制御することにより,エ

ンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善すること

は,駆動源としてエンジンと電気モータとを併用する,いわゆるハイブリッド電気

自動車の分野において,周知の技術事項といえる。そうすると,ハイブリッド電気

自動車である引用発明においても,効率の向上や排気ガス中の有害成分の低減とい

った課題は当然内在し,これを解決しようと試みることに格別困難はないから,引
用発明に上記周知技術を適用し,相違点3に係る構成,すなわち,エンジンの低い

パワーと低速稼働における効率低下と高い汚染課題を改善するとの構成に至ること

は容易であると認められる。

以上によれば,審決に,本願発明の駆動系統の構成(2)に関して,原告主張の

引用発明の認定の誤り,本願発明と引用発明との一致点,相違点の認定の誤りがあ

ったとしても,上記のとおり,本願発明は,引用発明に周知技術を適用することに
より容易に発明ができたといえるから, これを取り消すべき違法はない。
審決には,

18
3 また,原告は,審決が,本願発明の駆動系統の構成(1)ないし(9)のう
ち,一部の機能のみを有するものも本願発明に含まれることを理由になされたので

あれば,出願人に対する不意打ちに当たり,審決は,特許法159条2項で準用す

る同法50条に違反すると主張する。

しかし,原告の上記主張は,失当である。すなわち,上記のとおり,本願発明は,

「前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有」するものであって,特許請求

の範囲にこのような選択的記載が含まれる場合,全ての構成を含む態様と,その一
部のみを含む態様のいずれの態様も含まれるところ,全ての構成について拒絶の理

由が示されていれば,一部の構成のみからなる発明についても同様の拒絶の理由が

示されたものと理解することができ,原告には,当該拒絶理由通知の後,意見を述

べたり,補正を行ったりする機会があったといえ,審決は特許法159条2項で準

用する同法50条に違反するとはいえない。

4 結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に審決にはこれを取

り消すべき違法は認められない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,理

由がない。よって,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官
村 明
飯 敏




19
裁判官


八 木 貴




裁判官
知 野 明




20