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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  取消決定 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 151号 特許取消決定取消請求事件
原告 パイオニア株式会社
訴訟代理人弁理士 石川泰男
同 奥和幸
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 岩本正義
同 大野覚美
同 村上哲
同 高橋泰史
同 涌井幸一
同 宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/09/16
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2002−71413号事件について平成15年2月25日にした決定中「特許第3235866号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
1 原告 (1) 主文1と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 主文2と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「ナビゲーション装置」とする特許第3235866号(平成4年5月8日出願,平成13年9月28日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は8である。)の特許権者である。
本件特許に対して特許異議の申立てがされ,特許庁は,これを異議2002-71413号事件として審理した。その過程において,原告は,特許庁から取消理由通知を受け,平成14年12月24日,願書に添付した明細書及び図面の訂正の請求をした。その結果,特許庁は,平成15年2月25日,この訂正を認めた上で(以下「本件第1訂正」という。),「特許第3235866号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年3月17日,その決定の謄本を原告に送達した。
2 決定の理由 決定の理由は,要するに,本件請求項1ないし8に係る発明は,「ELECTRO MULTIVSION(エレクトロマルチビジョン)SOARER 取扱書」(トヨタ自動車,1992年4月20日発行,74頁〜80頁,)及び特開昭59-52710号公報などの刊行物の記載並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとするものである。
3 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成16年6月16日付けで,本件特許の出願の願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2004-39138号事件として審理し,その結果,平成16年8月9日にその請求のとおり訂正(以下「本件第2訂正」という。)することを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
4 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲(本件第1訂正後のもの) 【請求項1】 少なくとも出発地点,経由地点及び目的地点の各々の位置を示す位置情報からなるルートの設定入力を受け付ける手段と, 前記位置情報を用いて,前記出発地点から前記経由地点を介して前記目的地点までのルートを設定するルート設定手段と, 前記設定されたルートと各地点の走行順序と各地点の位置関係を表示する表示制御手段と, 前記経由地点の追加及び変更を少なくとも行う手段と,を備え, 前記経由地点が変更又は追加された場合には,前記ルート設定手段は,前記変更又は追加された経由地点の位置を示す位置情報を用いて前記ルートを設定しなおすとともに, 前記表示制御手段は,当該設定しなおされたルートと前記変更又は追加された経由地点を含む各地点の走行順序と各地点の位置関係を概略図形で表示することを特徴とするルート表示装置。 【請求項2】 請求項1に記載のルート表示装置において, 前記表示制御手段は,前記設定されたルートと各地点の走行順序とともに,各地点と現在地点との位置関係を表示することを特徴とするルート表示装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載のルート表示装置において, 経由地点と目的地点のうち次に進むべき地点を目標地点として設定する目標地点設定手段を備えることを特徴とするルート表示装置。 【請求項4】 請求項3に記載のルート制御装置において, 目標地点を変更する目標地点変更手段を備え, 前記目標地点が変更されたとき,前記ルート設定手段は,前記ルートを設定しなおし, 前記目標地点設定手段は,前記目標地点を設定しなおし, 前記表示制御手段は,前記設定しなおされたルートと前記変更された地点を含む各地点の走行順序と各地点の位置関係を表示することを特徴とするルート表示装置。
【請求項5】 出発地点から経由地点を介して目的地点までのルートを設定するルート設定手段を備え,前記ルート設定手段により設定されたルートに含まれる出発地点と経由地点と目的地点から構成される地点リストを作成し,前記設定されたルートと共に前記作成された地点リストを表示するルート表示装置であって, 前記リストには,目的地点を示すマークと経由地点を示すマークと出発地点を示すマークとを含み,各地点が区別可能に表示されることを特徴とするルート表示装置。
【請求項6】 請求項5に記載のルート表示装置において, 前記経由地点を示すマークは,走行順序が認識可能なマークであることを特徴とするルート表示装置。
【請求項7】 請求項5または6に記載のルート表示装置において, 前記地点リストが表示されている状態において,前記リストに含まれる各地点のマークを線上に配置することにより各地点の位置関係と走行順序を認識可能に表示することを特徴とするルート表示装置。
【請求項8】 請求項5乃至7の何れかに記載のルート表示装置において, 前記地点リストが表示されている状態において,前記経由地点を削除または新たな経由地点を追加することにより,前記ルートを変更するルート変更手段を備えることを特徴とするルート表示装置。
5 本件訂正審決による訂正の内容 (1) 発明の名称を「ルート表示装置」とする。
請求項の数を8から6とする(以下,変更後の請求項を「新請求項」という。)。本件訂正審決による訂正前の請求項(以下「旧請求項」という。)との関係を次のとおりとする。
新請求項1は,旧請求項1に旧請求項3の構成を付加し,新請求項2は旧請求項2の文言をそのまま用いて新請求項1を引用する形式とし,新請求項3は旧請求項4を繰上げて新請求項1又は2を引用する形式とし,新請求項4は旧請求項5に旧請求項1及び8の構成を付加し,新請求項5は旧請求項6をそのまま用いて新請求項4を引用する形式とし,新請求項6は旧請求項7を用いて新請求項4又は5を引用する形式とする。
(2) 新請求項の内容 【請求項1】 出発地点から経由地点を介して目的地点までのルートを設定するルート設定手段と, 前記設定されたルートと各地点の走行順序と各地点の位置関係を表示する表示制御手段と, 前記経由地点を変更する手段と,を備え, 前記経由地点が変更された場合には,前記ルート設定手段は,前記ルートを変更するとともに,前記表示制御手段は,当該変更されたルートと前記変更された経由地点を含む各地点の走行順序と各地点の位置関係を概略図形で表示し, さらに,前記経由地点と前記目的地点のうち次に進むべき地点を目標地点として設定し,現在位置から前記目標地点の方向を示す矢印記号を表示する目標地点設定表示手段を備えることを特徴とするルート表示装置。 【請求項2】 請求項1に記載のルート表示装置において, 前記表示制御手段は,前記設定されたルートと各地点の走行順序とともに,各地点と現在地点との位置関係を表示することを特徴とするルート表示装置。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のルート表示装置において, 前記目標地点を変更する目標地点変更手段を備え, 前記目標地点が変更されたとき,前記ルート設定手段は,前記ルートを変更し,前記目標地点設定手段は,前記目標地点を設定しなおし,前記表示制御手段は,前記変更されたルートと,前記変更された地点を含む各地点の走行順序と,各地点の位置関係を表示することを特徴とするルート表示装置。
【請求項4】 出発地点から経由地点を介して目的地点までのルートを設定するルート設定手段と, 前記設定されたルートと各地点の走行順序と各地点の位置関係を表示する表示制御手段と, 前記経由地点を変更する手段と,を備え, 前記経由地点が変更された場合には,前記ルート設定手段は,前記ルートを変更するとともに,前記表示制御手段は,当該変更されたルートと前記変更された経由地点を含む各地点の走行順序と各地点の位置関係を概略図形で表示するルート表示装置であって, さらに,前記ルート設定手段により設定されたルートに含まれる出発地点と経由地点と目的地点から構成され,前記目的地点を示すマークと前記経由地点を示すマークと前記出発地点を示すマークとを含んで各地点が区別可能に表示される地点リストを作成してこれを表示する地点リスト表示手段を備え, 前記ルートを変更する場合には,前記地点リストが表示されている状態において,前記経由地点を削除または新たな経由地点を追加することにより,前記ルートを変更することを特徴とするルート表示装置。
【請求項5】 請求項4に記載のルート表示装置において, 前記経由地点を示すマークは,走行順序が認識可能なマークであることを特徴とするルート表示装置。
【請求項6】 請求項4または5に記載のルート表示装置において, 前記地点リストが表示されている状態において,前記地点リストに含まれる各地点のマークを前記概略図形におけるルートを示す線上に配置することにより各地点の位置関係と走行順序を認識可能に表示することを特徴とするルート表示装置。
当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし8については,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であることを理由にこれらの特許を取り消した決定の取消を求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲減縮を含む訂正審判の請求がなされ,特許庁は,同請求を認める旨の本件訂正審決をし,これが確定したということができる。そうすると,決定は,これにより,結果として,請求項1ないし8について,判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の認定を誤ったことになり,この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし8に係る特許を取り消した決定は,取消を免れない。
以上によれば,本訴請求は理由があるので,これを認容することとし,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂驤
裁判官 若林辰繁