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事件 平成 23年 (行ケ) 10250号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/05/23
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年5月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(行ケ)第10250号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年5月9日

判 決

原 告 ユ ニ チ カ 株 式 会 社

同訴訟代理人弁理士 奥 村 茂 樹

阿 部 清 二

被 告 東 洋 紡 績 株 式 会 社

同訴訟代理人弁理士 植 木 久 一

植 木 久 i

菅 河 忠 志

柴 田 有 佳 理

主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が無効2010−800229号事件について平成23年6月29日にし

た審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の下記2の本件発明に係

る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たな

いとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,

下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

1 特許庁における手続の経緯

(1) 本件特許



被告は,平成5年3月11日,発明の名称を「生分解性衛生用繊維集合体」とす

る特許出願(特願平5−50884号)をし,平成17年11月4日,設定の登録

(特許第3735734号。請求項の数1)を受けた(甲31)。以下,この特許

を「本件特許」という。

(2) 原告は,平成22年12月13日,本件特許について,特許無効審判を請求

し,無効2010−800229号事件として係属した(甲28)。

(3) 被告は,平成23年3月14日,訂正請求(甲32。以下「本件訂正」とい

う。)をし,特許庁は,同年6月29日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成

り立たない。」旨の本件審決をし,同年7月6日,その謄本が原告に送達された。

2 特許請求の範囲の記載

本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりのものである。以

下,本件訂正後の請求項1の発明を「本件発明」といい,本件訂正後の明細書(甲

31,32)を「本件明細書」という。

下記a群の用途の中のいずれかである生分解性衛生用繊維集合体であって,式−

O−CH(CH3)−CO−を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を主成分とする

モノフィラメント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く)からなることを

特徴とする生分解性衛生用繊維集合体

a群

使い捨て衣料,サニタリーナプキン,パンティーシールド,成人用オムツ,ベビ

ーオムツ,失禁者パッド,シーツ,ベッドカバー,マクラカバー,エプロン,キッ

チン用手袋

3 本件審決の理由の要旨

(1) 本件審決の理由は,要するに,本件発明は,@下記アの引用例1に記載され

た発明及び下記ウないしオの周知例に記載された事項に基づいて,当業者が容易に

発明をすることができたものであるとはいえない,A下記イの引用例2に記載され

た発明及び下記ウないしオの周知例に記載された事項に基づいて,当業者が容易に



発明をすることができたものであるとはいえない,などとしたものである。

ア 引用例1:特開昭61−37158号公報(甲1)

イ 引用例2:特開昭64−72744号公報(甲3)

ウ 周知例1:特開平4−57953号公報(甲4)

エ 周知例2:特開平5−59612号公報(甲5。平成5年3月9日公開)

オ 周知例3:特開平3−262430号公報(甲6)

(2) なお,本件審決は,その判断の前提として,引用例1に記載された発明(以

下「引用発明1」という。 並びに本件発明と引用発明1との一致点及び相違点を,


以下のとおり認定した。

ア 引用発明1:ポリエステルのモノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸

を,経糸及び緯糸に用いて,経方向及び緯方向のカバーファクタが800〜150

0の織物を製織し,該織物に加熱及びプレス加工処理を施して通気度を30〜10

0cc/p2/sec としたエアベッド用フィルタシーツ地

イ 一致点:用途がシーツである衛生用の繊維集合体であって,ポリエステルを

主成分とするモノフィラメント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く)か

らなる繊維集合体である点

ウ 相違点:上記の,用途がシーツである衛生用の繊維集合体であって,ポリエ

ステルを主成分とするモノフィラメント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を

除く)からなる繊維集合体が,本件発明では,式−O−CH(CH3)−CO−を

主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を主成分とする生分解性の繊維集合体であるの

に対し,引用発明1では,ポリエステルを主成分とする生分解性でない繊維集合体

である点

(3) また,本件審決は,引用例2に記載された発明(以下「引用発明2−1」「引

用発明2−2」という。),本件発明と引用発明2−1,2−2との一致点及び相

違点を,以下のとおり認定した。

ア 引用発明2−1:互いに平行に配されたフィラメントの群と,互いに平行に



配されたリボン状のフィルムの群とが,一体化されることから成る疎水性の多孔質

シートからなる,吸収性物品の表面材であって,上記フィラメントは疎水性の合成

樹脂からなり,上記フィルムは疎水性の樹脂からなる,吸収性物品の表面材

イ 本件発明と引用発明2−1との一致点:用途がサニタリーナプキン,成人用

オムツ又はベビーオムツである衛生用の繊維製品

ウ 本件発明と引用発明2−1との相違点 上記の,
: 用途がサニタリーナプキン,

成人用オムツ又はベビーオムツである衛生用の繊維製品が,本件発明では,式−O

−CH(CH3)−CO−を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を主成分とするモ

ノフィラメント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く)からなる生分解性

の繊維集合体であるのに対し,引用発明2−1では,互いに平行に配されたフィラ

メントの群と,互いに平行に配されたリボン状のフィルムの群とが,一体化される

ことから成る疎水性の多孔質シートからなり,上記フィラメントは疎水性の合成樹

脂からなり,上記フィルムは疎水性の樹脂からなるものである点

エ 引用発明2−2:疎水性の繊維からなる不織布からなる,吸収性物品の表面



オ 本件発明と引用発明2−2との一致点:用途がサニタリーナプキン,成人用

オムツ又はベビーオムツである衛生用のモノフィラメント及び/又はマルチフィラ

メント(複合糸を除く)からなる繊維集合体

カ 本件発明と引用発明2−2との相違点 上記の,
: 用途がサニタリーナプキン,

成人用オムツ又はベビーオムツである衛生用のモノフィラメント及び/又はマルチ

フィラメント(複合糸を除く)からなる繊維集合体が,本件発明では,式−O−C

H(CH3)−CO−を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を主成分とする生分解

性の繊維集合体であるのに対し,引用発明2−2では,疎水性の合成樹脂からなる

ものである点

4 取消事由

(1) 引用例1を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由



1)

(2) 引用例2を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由

2)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(引用例1を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り)

について

〔原告の主張〕

(1) 容易想到性の判断の前提となる認定について

容易想到性の判断を行う場合,本件発明の解決課題及び解決手段を適切に認定し

なければならない。また,各証拠記載内容を適切に認定しなければならない。本件

発明の解決課題及び解決手段の認定を誤ったり,証拠の記載内容の認定を誤ると,

容易想到性の判断を誤る結果となる。

(2) 本件発明の解決課題及び解決手段の認定について

ア まず,本件発明の解決課題及び解決手段の認定は,明細書の記載に基づいて

行わなければならない。

本件明細書(【0002】〜【0005】)の記載によれば,自然環境下で分解

する衛生用繊維集合体を得ることを解決課題とし,ポリ乳酸を素材とする繊維集合

体とすることを解決手段とするものである。かかる解決手段による効果は,優れた

生分解性と良好な物性を有しているので,自然環境下で分解され環境破壊の心配が

ないというものである(【0015】)。ここで,優れた生分解性が発現するのは,

素材がポリ乳酸だからであり,良好な物性を有しているのも,素材がポリ乳酸だか

らである。なぜなら,本件特許請求の範囲には,生分解性と物性が発現する構成要

件は,ポリ乳酸という構成要件しか存在しないからである。

そうすると,本件発明の解決課題は,従来の衛生用繊維集合体は素材がポリエチ

レン等であるので自然環境下で分解しないため,自然環境下で分解する衛生用繊維

集合体を提供することであり,本件発明の解決手段は繊維集合体の素材として従来



のポリエチレン等に代えて,ポリ乳酸を用いるということである。そして,ポリ乳

酸は生分解性と良好な物性を有しているので,使用後に自然環境下で分解し環境破

壊の心配がないというものである。

イ 本件審決は,本件発明の効果について実施例を持ち出して説明しているが,

本件明細書に記載された実施例は,本件発明の実施例ではなく,比較例又は参考例

なのである。

ウ 本件審決は,本件明細書に記載された解決課題,解決手段及び効果の認定を

誤っている。

(3) 本件発明と引用例1に記載された発明との対比について

本件審決の引用発明1の認定は不適切であるが,一致点及び相違点の認定に誤り

はなく,引用発明1ではモノフィラメント又はマルチフィラメントの素材がポリエ

ステルであるのに対して,本件発明ではその素材がポリ乳酸である点で相違する。

(4) 周知例1ないし3の記載事項の認定の誤りについて

ア 本件審決の副引用例に相当する周知例1ないし3の認定にも誤りがある。

本件審決は,ポリラクチド(ポリ乳酸)は生分解性を有しているけれども,高価

であるという問題を,従来のポリエステル等を素材とする不織布が生分解性を有し

ておらず,環境破壊を起こすという問題にすり替えている。すなわち,周知例1に

は,従来のポリエステル等を素材とする不織布が生分解性を有しておらず,環境破

壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用いることが記載されており,

ポリ乳酸は生分解性を有しているけれども高価であるという問題を解決するために

周知例1の請求項1に記載された構成を採用することが記載されているのである。

本件発明は,従来のポリエステル等を素材とする不織布が生分解性を有しておら

ず,環境破壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用いるというもので

あり,ポリ乳酸は生分解性を有しているけれども高価であるという問題を解決する

ものではない。

したがって,本件審決が摘示した相違点は,周知例1に記載されている。



イ 周知例2に関する本件審決の認定も,周知例1の場合と同様の誤りがある。

周知例2には,従来のポリエステル等を素材とするマルチフィラメントが生分解

性を有しておらず,環境破壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用い

ることが記載されており,ポリ乳酸は生分解性を有しているけれども,高価である

とか高強度のものが得られないという問題を解決するために,周知例2の請求項1

に記載された構成を採用することが記載されている。

本件発明は,従来のポリエステル等を素材とするマルチフィラメントが生分解性

を有しておらず,環境破壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用いる

というものであり,ポリ乳酸は生分解性を有しているけれども,高価であるとか高

強度のものが得られないという問題を解決するものではない。

したがって,本件審決が認定した相違点は,周知例2に記載されている。

ウ 本件審決は,周知例3に記載されている事項を記載されていないと判断した

もので,誤りである。

すなわち,周知例3には,漁網の素材としてポリ乳酸を使用することが特許請求

の範囲に記載されており,ポリ乳酸は生分解性であるため,環境破壊を防止しうる

と記載されている。したがって,周知例3には相違点が記載されており,引用例1

と周知例3の記載に基づいて,本件発明は容易に想到できる。

相違点の判断において,一致点を持ち出すことは,容易想到性の判断に非論理性

を持ち込むものであり,本件審決のかかる判断は誤っている。

(5) 容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件審決は,引用例1のみを持ち出して動機付けの記載がないと認定判断す

るが,誤りである。動機付けの存否は主引用例にのみ基づくものではなく,副引用

例や技術常識に基づいても認定判断しなければならない。環境破壊を防止するため

に,生分解性の素材であるポリ乳酸を使用すればよいという動機付けは,周知例1

ないし3に記載されている。

イ 本件審決は,相違点の検討において,引用発明1のエアベッド用フィルター



シーツ地は環境に放置することによる廃棄が想定されるものではないとの意味不明

な判断を行っている。いったん一致点と認定したにもかかわらず,相違点の判断

箇所で持ち出して,相違するとすること自体,矛盾である。

ウ 本件発明の効果はポリ乳酸を用いたことにより,使用後に自然環境下で分解

し環境破壊の心配がないというものであり,いずれも,周知例1ないし3に記載さ

れている効果である。したがって,本件発明の効果が周知例1ないし3の記載から

予測し得ないとの判断は誤りである。

(6) 小括

以上のとおり,本件審決は,周知例1ないし3の記載事項の認定を誤り,しかも

相違点の検討であるにもかかわらず一致点を持ち出すという誤りを犯し,動機付け

の判断を誤り,その結果,容易想到性の判断を誤ったものである。

〔被告の主張〕

(1) 容易想到性の判断の前提となる認定について

原告は,本件審決が本件発明の解決課題及び解決手段並びに周知例記載内容の認

定を誤っていると主張するが,誤りはない。

(2) 本件発明の解決課題及び解決手段の認定について

ア 特許請求の範囲には,素材としてポリ乳酸を主体とすることのほか,a 群で

示される特定の用途として用いられることを技術的事項として記載しており,これ

らの用途におけるポリエチレンなどの期待効果と本件発明におけるポリ乳酸の期待

効果は大きく相違し,本件発明によってもたらされる衛生材料分野での技術的・環

境的・社会的貢献を軽々しい評価で済ますべきではない。

本件発明は,使い捨て衣料等が,陸上で投棄された後,太陽光,風雨,温度・湿

度の変化,陸上微生物の多様性などに曝される中での適切な期間経過における分解

・崩壊を意図して,これまでこのような環境条件に曝される可能性のある使い捨て

衣料等の分野で使用されたことのないポリ乳酸に着目し,実施例に記載したような

実験事実を積み重ねながら本件発明の課題解決に至ったのである。



本件発明では土壌中での自然分解効果を,繊維集合体に加工する前のポリマー素

材段階にあるポリ乳酸の繊維あるいは化学物質において確認したのではない。ポリ

乳酸のステープルを開綿してウェブを作成し,更にこれをヒートロールで熱圧着し

て不織布を得た上で,土壌中での自然分解効果を確認しているのである。つまり「繊

維集合体」の形で本件発明の効果が確認されているのであり,当業者がこのような

実験結果に接すれば,特許請求の範囲にかかるモノフィラメント及び/又はマルチ

フィラメント繊維集合体において同様の自然分解効果が得られることを容易かつ直

ちに理解し得るところである。

イ 本件発明の課題は,陸上投棄した際の自然分解効果を期待できる使い捨て衣

料等を提供しようとするものであり,本件審決はこれを正しく認定している。そし

てこの課題を a 群として特定された使い捨て衣料等の繊維集合体として解決したこ

とが本件明細書には記載されているのである。

(3) 本件発明と引用発明1との対比について

カバーファクター,プレス加工処理及び通気度等は,本件発明の構成要件ではな

いが,本件発明と引用発明の対比に際しては,引用発明の中から一致部分のみを抽

出する理解では引用発明の正確な把握ができず,両発明の一致点が両発明において

どのように位置付けられるか,また両発明の相違点が両発明においてどのように位

置付けられるかを正しく理解しなければ,その後,副引用例を適用する際の動機付

けの有無や作用効果の予測可能性などを正しく総合判断することができないのであ

る。つまり主引用例となる発明と本件発明の対比に際しては,主引用例中で規定さ

れている構造的特徴を当該比較の都合のみから任意に捨象して「単にポリエステル

で形成されている」といった発明が記載されていたかのように仮想することは,到

底許容できない。進歩性判断における主引用例との対比においては,当該主引用例

の各技術的事項が総合的に作用してその課題を解決し,所望の効果を達成するもの

であるから,これらの技術的事項の結合を無視してそれらを分離して個別かつ独立

した技術的事項の単位で把握することは,当該発明の理解を誤る原因ともなる。各



技術的事項の結合・組合せも当該発明においては欠くことのできない技術的事項な

のである。よって,主引用例と本件発明の対比を行うに際しては,主引用例の全技

術的事項との関連の中で各個別の技術的事項を把握しなければならない。

原告は,本件審決にかかる一致点・相違点の認定を争っていないが,ここで特に

注意すべき点は,ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートを,いわゆるエステル結

合化学物質である点で共通しているとの短絡的理解を排すべきことであり,これら

は化学的性質,物理化学的性質,生物化学的性質,製造方法,開発の歴史,適用分

野などのあらゆる視点において全く相違し,単純に代替・置換使用できるものでは

ない。

(4) 周知例1ないし3の記載事項の認定の誤りについて

ア 原告の本件審決に関する理解には大きな誤りがある。本件審決は,ポリラク

チドの自然分解性に着目し,実質的にポリラクチドでは周知例2に挙げられた課題

を総合的に解決できなかったことを教示していると認定している。そして,ポリカ

プロラクトンを使用することにより全ての課題を総合的に解決できることが記載さ

れていると認定している。本件審決は,ポリラクチドに関して課題を総合的に克服

できるという示唆を周知例2からは読み取れない旨を説示しており,論理構成には

いささかの誤りもない。

イ 周知例1及び3についての原告の主張が誤りであることは,上記と同様であ

る。

(5) 容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件審決では,引用発明1が疎水性・耐水性を有し,生分解性を有しないポ

リエステルを用いるものであるのに対し,本件発明は加水分解しやすい生分解性の

ポリ乳酸を用いるものである点に注視した判断が示されているのであり,引用例1

は,むしろ阻害的要因の位置づけにある刊行物である。周知例1ないし3に動機付

けがないことは前記のとおりであり,本件審決に取り消されるべき瑕疵はない。

イ ポリエステルを主成分とする生分解性でない織物の素材を本件発明の生分解



性繊維集合体という構成に変更することを容易に想定できたということはできない

という本件審決は,本件発明の容易想到性について適確な判断を下している。

ウ 周知例1は生分解性を有しないポリエチレンにポリカプロラクトンを3〜3

0重量%の比率で配合するものであり,周知例2は特定の引張強度を有するポリカ

プロラクトンのマルチフィラメントを集中的に選択して使用するものであり,周知

例3は水により分解するポリグリコール酸を主体とし,かつ衛生分野とは全く相違

する海中などで使用するものである。

したがって,ポリ乳酸を繊維集合体として本件発明で示すような a 群の用途で用

いたときの効果を,当業者が容易に想到し得たという原告の主張は,明白な誤解で

ある。

(6) 小括

よって,本件審決に取り消されるべき理由は存在しない。

2 取消理由2(引用例2を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り)

について

〔原告の主張〕

(1) 引用例2に記載された発明の認定の誤りについて

ア 引用例2に記載された発明は,本件発明との対比のために行うのであるから,

本件発明と対比しやすいように認定すべきである。本件審決のように,特許請求の

範囲のみから,又は従来技術の記載のみから認定するのは不適切であって,引用例

2の全体の記載から,本件発明との関係でどのような発明が記載されているのかを

認定しなければならない。

イ 引用例2には,フィラメントからなる多孔質シートを表面材とする生理用ナ

プキン又は使い捨てオムツが記載されている。そして,フィラメントは,ポリエス

テル等からなるモノフィラメントが用いられるから,引用例2には,ポリエステル

を素材とするモノフィラメントからなる多孔質シートを表面材とする生理用ナプキ

ン又は使い捨てオムツが記載されている。



よって,引用例2に記載された発明は,「生理用ナプキンや使い捨てオムツの表

面材が,ポリエステルよりなるモノフィラメントで形成された多孔質シートである

こと」と認定されるべきである。

(2) 一致点及び相違点の認定の誤りについて

ア 本件審決は,引用例2に記載されている多孔質シートが,フィルムを含むも

のであるから,本件発明の繊維集合体に該当しないと認定したが,かかる認定は誤

りである。なぜなら,本件特許請求の範囲には,モノフィラメントからなる繊維集

合体と記載されており,フィルムを含まないとは記載されていないからである。ま

た,本件明細書の記載を参酌しても,他のコーティング材料やポリマー材料が含ま

れていてもよいと記載されているからである。特に,コーティング加工を行えば,

繊維集合体の表面にフィルムが積層一体化されるのであり,フィルムを含むものも

積極的に包含されているからである。

イ したがって,一致点としては,「用途がサニタリーナプキン,成人用オムツ

又はベビーオムツである,衛生用繊維集合体がポリエステルよりなるモノフィラメ

ントで形成されている点」,相違点としては,「本件発明はモノフィラメントがポ

リ乳酸を素材とするものであるのに対して,引用例2ではモノフィラメントがポリ

エステルを素材とするものである点」と認定されるべきである。

(3) 容易想到性の判断の誤りについて

動機付けの存否は主引用例にのみ基づくものではなく,副引用例や技術常識に基

づいても認定判断しなければならない。本件審決の動機付けの判断は誤りである。

本件発明に至る動機付けは,周知例1ないし3の記載にあるところ,本件審決は,

周知例1ないし3の記載事項の認定を誤っており,その結果,容易想到性の判断を

誤っている。

(4) 小括

以上のとおり,本件審決は,引用例2記載の発明の認定を誤り,周知例1ないし

3の記載事項の認定を誤り,一致点及び相違点の認定を誤り,しかも相違点の検討



であるにもかかわらず一致点を持ち出すという誤りを犯し,動機付けの判断を誤り,

その結果,容易想到性の判断を誤ったものであり,取り消されるべきものである。

〔被告の主張〕

(1) 引用例2に記載された発明の認定の誤りについて

ア 引用発明2−1は特許請求の範囲に基づいて認定され,引用発明2−2は従

来技術として記載されていることに基づいて認定されている。

引用発明の認定そのものに際して,原告のいうように本件発明との対比の便宜を

念頭に置くこととすれば,引用発明の技術的事項を,引用発明思想から外れて本件

発明思想の視点から把握する過ちを犯すことになる。そうでなく,本件審決のよう

に,引用発明の記載を忠実に反映しつつその技術的思想を適確に表現できるように

技術的事項の摘示を行い,それらを基礎とした上で本件発明の技術的事項との対比

を行わなければならない。したがって,本件審決における引用発明2−1及び2−

2の認定に誤りはない。

イ 引用発明2の表面材は,「平行配置されたフィラメント群と平行配置された

リボン状フィルム群とが一体化された疎水性の多孔質シート」であり,このような

構造的特徴を捨象して「単にポリエステルモノフィラメントで形成されている」と

いった発明を仮想すべきではない。

(2) 一致点及び相違点の認定の誤りについて

本件発明における a 群においては,これらを生産あるいは販売する事業者の設計

思想によっては,変形態様を実施することもあり得るのであり,このような態様に

関する説明を取り上げて,「フィルムを含まないとは記載されていない」と主張す

るのは,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみ」を記

載すべきであるとした特許法の規定を無視するものであり,到底採用されるべきも

のではない。

原告解釈に基づく一致点・相違点は,その解釈の前提が誤っているから,このよ

うな一致点・相違点に基づく原告主張は誤りである。本件発明の変形態様である「コ



ーティング等の加工」を行った繊維集合体におけるコーティング層と,引用発明2

−1における「互いに平行に配されたリボン状のフィルム群」の「フィルム」が技

術的に全く異なる構造であり,一致点にはなり得ない。

(3) 容易想到性の判断の誤りについて

本件審決の引用例2に記載された発明の認定自体に誤りがない以上,その余の原

告の主張は,失当である。

第4 当裁判所の判断

1 本件発明について

(1) 本件明細書の記載

本件発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであり,本件明細書

には,以下の記載がある(甲31,32)。

ア 本件発明は,衛生用繊維集合体に関し,更に詳しくは自然環境下で徐々に分

解し,最終的には消失するため,使用後の焼却による大気汚染や放置による環境破

壊のない生分解性衛生用繊維集合体に関する(【0001】)。

従来,使い捨ておむつ,生理用品,使い捨てシーツ等の衛生用繊維集合体はポリ

エチレン,ポリ塩化ビニル等のプラスチック材料が使用されている。

これら繊維集合体は,使用後回収され,焼却,埋め立てにより処理されているが,

焼却処理による大気汚染,埋め立て地の確保が困難等の問題がある。また,回収に

は多大な労力を必要とするために回収しきれず,土中等の自然界に放置され,環境

破壊等様々な問題を引き起こしている(【0002】)。

イ 本発明者らの目的は,自然環境下で徐々に分解し,最終的には消失するため,

使用後の焼却処理による大気汚染や放置による環境破壊の心配のない生分解性衛生

用繊維集合体を提供することにある(【0003】)。

発明者らは上記事情を鑑み,焼却処理による大気汚染や放置による環境破壊の

ない衛生用繊維集合体を得るべく鋭意検討を重ねた結果,式−O−CH(CH3)

−CO−を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を用いることにより,目的を達成で



きることを見出し,本件発明を完成するに至った(【0004】)。

本件発明による衛生用繊維集合体は,優れた生分解性と良好な物性を有している

故,使用後の焼却による大気汚染や放置による環境破壊の心配がないことから産業

界又は環境保護に寄与すること大である(【0015】)。

ウ 本件発明の繊維集合体とは,規則的あるいは不規則的にモノフィラメント及

び/又はマルチフィラメントあるいはステープル繊維が集合した構成体,例えば,

繊維束や編物,織物,組布,不織布,多軸積層体等の布帛として得ることができる

が特にこれらに限定されるものではない(【0009】)。

実施例1

粘度平均分子量9万のポリ乳酸繊維,2デニール,繊維長51oのステープルを

公知の製造法により形成し,通常のカード機で開綿し,目付け70g/uのウェブ

を作成した。該ウェブを突起圧着部有するヒートロールで熱圧着し,不織布を得た。

得られた不織布の不織布片(縦10o×横10o)を土壌中に埋設し,重量変化

を調査したところ,半年後で初期重量の53%となり,1年後には22%となり,

1年半後には形状が確認できないほど分解していた。

(2) このように,本件発明は,使い捨て衣料等の用途に用いられる,モノフィラ

メント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く。)からなる衛生用繊維集合

体において,使用後の焼却処理による大気汚染や放置による環境破壊等の問題を解

決するために,その素材として,自然環境下で徐々に分解し最終的には消失する,

生分解性のポリ乳酸を主成分とするものを用いるものである。

2 取消事由1(引用例1を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り)

について

(1) 引用例1の記載

引用例1には,以下の記載がある(甲1)。

ア 特許請求の範囲

ポリエステルフィラメント糸を経糸及び緯糸に用いて,経方向及び緯方向のカバ



ーファクタが800〜1500の織物を製織し,該織物に加熱及びプレス加工処理

を施して通気度を30〜100cc/p2/sec とすることを特徴とするエアベッド

用フィルタシーツ地の製造方法

イ 産業上の利用分野

本発明は,熱傷治療等に用いられるエアベッド用フィルタシーツ地の製造方法

関するものである。

ウ 従来の技術

(ア) 従来から,熱傷治療用ベッドとして,ウオータベッド,エアベッド等が用

いられ,身体の特定の部位にのみ圧力が加わることを防ぐため,頻繁に体位を変え

ることなどが行われてきた。これらのうち,ウオータベッドは,体重を全身に均一

に分散できるという点で優れているが,ベッド面がプラスチック膜で形成され,し

かも無孔であるため,ベッド面と身体のとの間に患部からの浸出液や汗などの分泌

物が溜り,細菌感染が発生しやすいという欠点がある。これに対しエアベッドは,

ウオータベッドの上記のごとき欠点を防ぐものとして開発され,ベッドの敷蒲団の

代わりに60〜160μ程度のガラスビーズの厚さ約30pの堆積層を織物で包被

し,下面から空気を吹込んでガラスビーズを流動化させ,そしてその上に人体を横

臥させるのであって,体重分散効果があり,かつベッド面のシーツ地に多数の小孔

(織目間隙)を有し,浸出液,汗等がその小孔を通って下側へ落ちていき,床ずれ

などの発生が少なく,重症の熱傷の患部にソフトに接触して治療期間が短縮され,

またエアベッド内へ供給する空気の流速,温度,湿度を自由に変えることができ,

患者の体温調整などに有効で,広範囲熱傷治療等に最適である。しかしながら,エ

アベッドのガラスビーズを包被する,エアベッド用フィルタシーツに適した,高密

度でガラスビーズが漏れることがなく,しかも均斉な小孔を有する織物を製造する

ことが困難であり,今後の課題とされていた。

(イ) エアベッド用フィルタシーツに適する織物の条件について整理すると,次

のような事項があげられる。



i)患部から出る分泌液の透過性が良く,しかも人が乗っても伸びが少ないこと

ii)織物の小孔の大きさが均斉で,しかも60μ以下で,30〜100cc/p2/

sec 程度の適度の通気度を有し,人が乗った程度で目ずれが生じないこと

これらの諸条件を満足させるためには,疎水性でヤング率の高いポリエステルモ

ノフィラメント又は撚糸されたポリエステルマルチフィラメントの40D前後の太

さの糸を,経糸及び緯糸に用い,カバーファクタ(K)が800〜1500の範囲

の高密度で織込む必要がある。しかも60μ程度のガラスビーズが漏れないために

は,極めて均斉な繊密度が要求される。また,モノフィラメント織物の場合は交絡

点が滑り易く,目寄れが発生しやすい。

エ 本発明が解決しようとする問題点

本発明は,従来のエアベッド用フィルタシーツ地における,上記のような諸問題

を解決し,比較的容易に,しかも均斉度のすぐれたエアベッド用フィルタシーツ地

を製造する方法を提供しようとするものである。

オ 問題点を解決するための手段及び作用

本発明においては,まず上記のごとく,エアベッド用フィルタシーツに適する織

物としての要件を満足させるため,経糸及び緯糸に,疎水性でヤング率の高いポリ

エステル繊維のモノフィラメント糸またはマルチフィラメント撚糸を用い,カバー

ファクタが経方向及び緯方向ともに800〜1500の織物を製織する。

次に前記の織物に加熱及びプレス加工処理を施して,通気度を30〜100cc/

p2/sec に調整する。

カ 発明の効果

本発明における,上記加熱及びプレス加工処理により,織物が圧迫されて,織目

間隔が減少して上記の所望の通気度に調整されるとともに,さらに熱可塑性繊維の

特徴である熱セット性と経緯交錯点のプレスにより,繊組織が固定され,洗濯を繰

り返しても目寄れのない,均斉な織物が得られる。

本発明の製造方法で得られた加工織物は極めて均斉な織目を有し,エアベッド用



フィルタシーツ地として用いた際,患部からの分泌液等の透過性が良く,むれがな

く,しかも内部のガラスビーズ等が漏れ出すこともなく,又洗濯を繰り返しても目

寄れが発生しない等の格別の効果を奏するものである。

キ 以上の記載によれば,引用例1には,ポリエステルのモノフィラメント糸又

はマルチフィラメント糸を,経糸及び緯糸に用いて,経方向及び緯方向のカバーフ

ァクタが800〜1500の織物を製織し,該織物に加熱及びプレス加工処理を施

して通気度を30〜100cc/c u/sec としたエアベッド用フィルタシーツ地,す

なわち,本件審決が認定した引用発明1が記載されている。

(2) 相違点の判断について

ア 本件審決が認定した相違点に争いはないところ,繊維集合体が,本件発明で

は,ポリ乳酸を主成分とする生分解性の繊維集合体であるのに対し,引用発明1で

は,ポリエステルを主成分とする生分解性でない繊維集合体である点において,相

違する。

イ 引用発明1は,熱傷治療等に用いられるエアベッド用フィルタシーツ地に関

し,「ポリエステルのモノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸を,経糸及び

緯糸に用い」るものである。

また,上記ウ(イ)の引用例1のエアベッド用フィルタシーツに関する記載によれ

ば,引用発明1は,エアベッド用フィルタシーツに適する織物の条件を満足させる

必要性から,その素材を疎水性でヤング率の高いポリエステルとしたものと解され

る。また,引用例1には,ポリエステル以外の素材については何ら記載されていな

い。

そうすると,引用発明1においては,上記の必要性から選択した素材を,別の素

材に変更する動機付けはないと解される。

ウ 他方,周知例1(甲4)には,@衛生材等に用いられる不織布について,使

い捨て用の使用済みの不織布は,焼却されるか,あるいは土中に埋設されることに

より処理されるが,焼却処理では多大の諸経費が必要とされ,埋設処理では土中で



長期間にわたって元の状態のまま残るという問題があるため,使い捨て製品に使用

される不織布に関して,短期間の内に自然に分解される新しい不織布が要望されて

いること,A一般に,微生物分解性がある素材として,合成高分子素材であるポリ

ラクチド(ポリ乳酸)等が広く知られているが,重合体のコストが高いため,その

適用は,生体吸収性縫合糸のような分野に限られていること,B上記課題を解決す

るために,不織布の素材として,ポリカプロラクトンを3〜30重量%含むポリエ

チレンを用いること,以上の事項が記載されている。

また,周知例2(甲5)には,@従来,漁業や農業,土木用として用いられる産

業資材用繊維としては,主としてポリアミド,ポリエステル,ビニロン,ポリオレ

フィン等からなるものが使用されているが,これらの繊維は自己分解性がなく,使

用後,海や山野に放置すると種々の公害を引き起こすという問題があること,Aこ

のような問題を解決する方法として,自然分解性(微生物分解性又は生分解性)の

素材を用いることが考えられること,B従来,自然分解性ポリマーとして,ポリラ

クチド(ポリ乳酸)等の合成脂肪族ポリエステル等がよく知られているが,これら

のポリマーから繊維を製造する場合,湿式紡糸法で製造しなければならなかったり,

素材のコストが極めて高いため,製造原価が高価になったり,高強度の繊維を得る

ことができなかったりするという問題があったこと,Cこのような問題を解決する

ために,比較的安価で,実用に供することができる強度を有し,微生物により完全

に分解されるポリカプロラクトンを用いること,以上の事項が記載されている。

また,周知例3(甲6)には,@従来,漁網を構成する素材としては安価な強度

的に優れるポリアミド系,ポリエステル系,ポリエチレン系等の合成繊維糸が用い

られているが,自然の環境下において極めて安定であり,長期にわたってその強度

を維持するために,不要時の処分に困難を来し,環境汚染の原因となっていること,

A漁網をポリ乳酸等の分解性高分子にて構成したので,水中に放置しておよそ数か

月ないし1年以上経過後にはモノマー化し,最終的には微生物の餌となって消失し

てしまうので従来のような放置に伴う環境汚染の問題を生じないこと,以上の事項



が記載されている。

しかし,周知例1ないし3に,上記事項が記載されているとしても,エアベッド

用フィルタシーツについては何ら記載されていない。そうすると,周知例1ないし

3の上記記載は,エアベッド用フィルタシーツ地に関する引用発明1において,前

記の必要性から選択した素材であるポリエステルを,別の素材であるポリ乳酸に変

更するほどの動機付けがあることを示すものとはいえない。

エ 以上のとおりであるから,引用発明1において,ポリエステルをポリ乳酸に

変更する動機付けがあるということはできないから,本件発明と引用発明1との相

違点が,当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

(3) 原告の主張について

ア 原告は,周知例1には,従来のポリエステル等を素材とする不織布が生分解

性を有しておらず,環境破壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用い

ることが記載され,周知例2にも同様の事項が記載され,また,周知例3には,漁

網の素材としてポリ乳酸を使用することが記載され,ポリ乳酸は生分解性であるた

め環境破壊を防止しうることが記載されているから,周知例1ないし3には,本件

発明と引用発明1との相違点が記載されていると主張する。

しかし,周知例1ないし3に原告が主張する事項が記載されているとしても,そ

の記載は,エアベッド用フィルタシーツ地に関する引用発明1において,前記の必

要性から選択した素材であるポリエステルを,別の素材であるポリ乳酸に変更する

ほどの動機付けがあることを示すものとはいえない。

イ 原告は,引用例1のみを持ち出して動機付けがないとした本件審決は誤りで

あり,動機付けの存否は主引用例にのみ基づくものではなく,副引用例や技術常識

に基づいても認定判断しなければならず,環境破壊を防止するために,生分解性の

素材であるポリ乳酸を使用すればよいという動機付けは,周知例1ないし3に記載

されていると主張する。

しかし,上記のとおり,周知例1ないし3の記載は,エアベッド用フィルタシー



ツ地に関する引用発明1において,上記の必要性から選択した素材であるポリエス

テルを,別の素材であるポリ乳酸に変更するほどの動機付けがあることを示すもの

とはいえない。

ウ 原告は,本件審決は,周知例2及び3に関して,用途については一致点とし

て検討済みであるのに,相違点の判断において一致点を持ち出すことは,容易想到

性の判断に非論理性を持ち込むものであり,誤りであると主張する。

しかし,引用発明1において,周知例2及び3に記載された事項を適用すること

容易想到性を判断する際に,引用発明1の用途と,周知例2及び3に記載された

発明の用途との関連性を検討することは相当であり,容易想到性の判断に非論理性

を持ち込むものとはいえない。

エ 原告は,相違点の検討において,引用発明1のエアベッド用フィルタシーツ

地は環境に放置することによる廃棄が想定されるものではないとした本件審決の判

断について,シーツについて,いったん一致点と認定したにもかかわらず,相違点

の判断で持ち出してこれを相違するとすることは矛盾であると主張する。

しかし,引用発明1において,素材をポリ乳酸に変更することとの関連で,どの

ような使用態様があるか検討することに問題はなく,これが誤りであるとはいえな

い。

オ 原告は,ポリ乳酸を用いたことにより,使用後に自然環境下で分解し環境破

壊の心配がないという本件発明の効果は,周知例1ないし3に記載されており,本

件発明の効果が周知例1ないし3の記載から予測し得ないものであるとの本件審決

の判断は誤りであると主張する。

しかし,引用発明1において,ポリエステルをポリ乳酸に変更する動機付けがあ

るとはいえない以上,効果も予測できないというべきであり,原告の主張は採用で

きない。

(4) 小括

以上のとおり,引用発明1に基づいて本件発明を容易に想到することはできない



から,取消事由1は,理由がない。

3 取消事由2(引用例2を主引用例とした場合の容易想到性に係る判断の誤り)

について

(1) 引用例2の記載

引用例2には,以下の記載がある(甲3)。

ア 特許請求の範囲

互いに平行に配されたフィラメントの群と,互いに平行に配されたリボン状のフ

ィルムの群とが,一体化されることから成る疎水性の多孔質シートを表面材として

用いたことを特徴とする吸収性物品

イ 産業上の利用分野

本発明は,使用感に優れた使い捨ての吸収性物品,特に生理用ナプキン,使い捨

てオムツ等の使い捨ての吸収性物品に関するものである。

ウ 従来の技術及びその問題点

(ア) 従来から,液体吸収後の吸収性物品の表面を出来る限り乾燥した状態に保

つことにより,着用者がいわゆるカブレなどの皮膚疾患を起こさず,快適な使用感

を覚えることを目的とした研究については,数多くの成果が報告されている。例え

ば,表面材として疎水性の繊維から成る不繊布を用い,表面材中での液体の拡散保

留を低減することにより,表面の乾燥特性を向上させる技術が挙げられる。

(イ) しかし,従来の表面材では,表面の乾燥特性に優れかつ良好な肌触りと十

分な強度を有するものがなく,使用感の良好な吸収性物品を得ることができなかっ

た。

エ 問題点を解決するための手段

(ア) 本発明者らは,かかる問題点を克服すべく鋭意研究を重ねた結果,フィル

ムとフィラメントとの複合から成る全く新しい表面材を用いた吸収性物品を創造す

ることに成功し,本発明を完成するに至った。

(イ) 本発明の複合シートにおいては,フィラメント群ないしフィルム群がそれ



ぞれ平行に配されていることから,開孔の大きさや開孔密度は,フィラメントない

しフィルムの間隔やフィラメントないしフィルムの交差角により自由に制御するこ

とができる。それらを適正に設定することにより,微視的空隙は全く存在せずに,

フィラメントないしフィルムにより完全に隔離された巨視的開孔のみを有する複合

シートが得られるから,表面材として用いれば,不織布の場合に問題となった表面

材中での液体の拡散保留は起こらない。

また,複合シートにはフィラメントが存在するため,大きな開孔密度を有するも

のであっても吸収性物品の表面材としての十分な強度を有するので,有孔フィルム

の場合に問題となった表面材と体表面の間での液体の保留や強度の不足などの問題

も起こらない。

また,小径のフィラメントを用いることができ,フィラメントの全てが平行に配

され,フィラメント同士の交差部が全く存在しないので,肌触りはネットのような

ざらつき感がない。

(ウ) フィラメントの素材は疎水性であればどんな物を用いても良い。例えば,

ポリオレフィン,オレフィンとアクリル酸エステルや酢酸ビニルなどの他モノマー

との共重合体,ポリエステル,ポリアミド,ポリアクリルニトリル,酢酸セルロー

スといった合成樹脂単体又はそれらのブレンド物などが挙げられるが,肌触りや加

工性を考慮するとポリオレフィン,オレフィンと他モノマーとの共重合体,それら

のブレンド物又はポリアミドが好ましい。

(エ) フィルムを構成する樹脂としては,例えば,ポリオレフィン,オレフィン

とアクリル酸エステルや酢酸ビニルなどの他モノマーとの共重合体,ポリアクリル

酸エステル,合成ゴムなどが挙げられるが,用いるフィラメントと必要な接着力を

有しかつ疎水性である物なら何を用いても良い。

オ 発明の効果

本発明に係わる表面材は,強度が大きく肌触りも良好であり,しかも液残りが小

さく表面の乾燥特性に優れており,使用感が非常に良好な吸収性物品が得られる。



(2) 引用例2に記載された発明について

ア 前記(1)アのとおり,引用例2の特許請求の範囲には,「互いに平行に配され

たフィラメントの群と,互いに平行に配されたリボン状のフィルムの群とが,一体

化されることから成る疎水性の多孔質シートを表面材として用いたことを特徴とす

る吸収性物品」が記載されている(甲3)。

上記フィラメントの素材としては,前記(1)エ(ウ)の記載から,疎水性の合成樹脂

を用いることができる。

また,上記フィルムの素材としては,前記(1)エ(エ)の記載から,疎水性の樹脂を

用いることができる。

以上の記載を本件発明に対応させて整理すると,引用例2の特許請求の範囲には,

「互いに平行に配されたフィラメントの群と,互いに平行に配されたリボン状のフ

ィルムの群とが,一体化されることから成る疎水性の多孔質シートからなる,吸収

性物品の表面材であって,上記フィラメントは疎水性の合成樹脂からなり,上記フ

ィルムは疎水性の樹脂からなる,吸収性物品の表面材」,すなわち本件審決が認定

した引用発明2−1が記載されていると認められる。

イ また,引用例2には,吸収性物品の表面材の従来技術に関して,前記(1)ウ(ア)

のとおり記載されており,この記載を本件発明に対応させて整理すると,引用例2

には,従来技術として,「疎水性の繊維からなる不織布からなる,吸収性物品の表

面材」,すなわち本件審決が認定した引用発明2−2が記載されていると認められ

る。

ウ 以上のとおり,引用例2には,上記2つの発明が記載されていると認められ,

本件審決の認定に誤りはない。

エ 原告の主張について

原告は,引用例2に記載された発明は,本件発明との対比のために行うのである

から,本件発明と対比しやすいように摘示すべきであり,特許請求の範囲のみから,

又は従来技術の記載のみから認定するのは不適切であって,引用例2の全体の記載



から,本件発明との関係でどのような発明が記載されているのかを認定しなければ

ならないとして,引用例2に記載された発明は,「生理用ナプキンや使い捨てオム

ツの表面材が,ポリエステルよりなるモノフィラメントで形成された多孔質シート

であること」と認定されるべきであると主張する。

しかし,原告が主張する引用例2に記載された発明は,「互いに平行に配された

フィラメントの群と,互いに平行に配されたリボン状のフィルムの群とが,一体化

される」構成等を有しないものであり,引用例2には,このような発明が記載され

ていないことは明らかである。よって,原告の主張は採用できない。

(3) 一致点及び相違点の認定について

ア 本件発明と引用発明2−1とを対比する。

引用発明2−1の吸収性物品とは,前記(1)イの記載から,生理用ナプキン,使い

捨てオムツ等のことであるから,引用発明2−1の「吸収性物品の表面材」は,本

件発明の「衛生用」の「サニタリーナプキン」,「成人用オムツ」又は「ベビーオ

ムツ」に相当する。

また,本件発明の「繊維集合体」について,本件明細書には,「本発明の繊維集

合体とは,規則的あるいは不規則的にモノフィラメント及び/又はマルチフィラメ

ントあるいはステープル繊維が集合した構成体を言い,例えば,繊維束や編物,織

物,組布,不織布,多軸積層体等の布帛として得ることができるが特にこれらに限

定されるものではない。」(【0009】)と記載されている。

他方,引用発明2−1の吸収性物品の表面材は,「互いに平行に配されたフィラ

メントの群」と「互いに平行に配されたリボン状のフィルムの群」とが一体化され

て形成された多孔質シートからなるものである。この多孔質シートは,前記(1)エ

(イ)の記載によれば,フィラメント又はフィルムの間隔やフィラメントとフィルム

の交差角により,開孔の大きさや開孔密度を制御することで,表面材中での液体の

拡散保留が起こらないようにするものであり,フィラメントの群とフィルムの群と

の配置の仕方に技術的意義を有するものと解される。そうすると,上記多孔質シー



トは,フィラメントを用いて形成されたものではあるが,本件発明の「繊維集合体」

とは異なるものと認められる。また,本件明細書には,「更には得られたそれらの

衛生用繊維集合体に目的に応じてコーティング等の加工,あるいは他ポリマーとの

併用を行っても差し支えない。」(【0010】)と記載されているものの,引用

発明2−1におけるフィルムは,上記のとおり,単なるコーティングや,単に他ポ

リマーを併用したものとは異なるものである。

以上のとおりであるから,引用発明2−1の「多孔質シート」は,本件発明の「繊

維集合体」に相当するものとはいえない。本件発明の「繊維集合体」と引用発明2

−1の「多孔質シート」は,いずれも繊維製品である点で一致するにとどまる。

以上によれば,本件発明と引用発明2−1とは,「用途がサニタリーナプキン,

成人用オムツ又はベビーオムツである,衛生用の繊維製品」の点で一致し,上記繊

維製品が,本件発明では,「式−O−CH(CH3)−CO−を主たる繰り返し単位

とするポリ乳酸を主成分とするモノフィラメント及び/又はマルチフィラメント

(複合糸を除く)からなる生分解性の繊維集合体」であるのに対し,引用発明2−

1では,「互いに平行に配されたフィラメントの群と,互いに平行に配されたリボ

ン状のフィルムの群とが,一体化されることから成る疎水性の多孔質シートからな

り,上記フィラメントは疎水性の合成樹脂からなり,上記フィルムは疎水性の樹脂

からなるもの」である点で相違する。

イ 本件発明と引用発明2−2とを対比する。

引用発明2−2は,引用発明2−1の従来技術に相当するものであるから,引用

発明2−2の「吸収性物品の表面材」は,引用発明2−1の場合と同様,本件発明

の「衛生用」の「サニタリーナプキン」,「成人用オムツ」又は「ベビーオムツ」

に相当する。

また,引用発明2−2の「繊維からなる不織布」が,本件発明の「モノフィラメ

ント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く)からなる繊維集合体」に相当

することは明らかである。



以上によれば,本件発明と引用発明2−2は,「用途がサニタリーナプキン,成

人用オムツ又はベビーオムツである,モノフィラメント及び/又はマルチフィラメ

ント(複合糸を除く)からなる衛生用繊維集合体」の点で一致し,上記モノフィラ

メント及び/又はマルチフィラメント(複合糸を除く)が,本件発明では,「式−

O−CH(CH3)−CO−を主たる繰り返し単位とするポリ乳酸を主成分とする」

「生分解性」のものであるのに対し,引用発明2−2では,「疎水性」のものであ

る点で相違する。

ウ 原告は,本件審決は,引用例2に記載されている多孔質シートがフィルムを

含むものであるから,本件発明の繊維集合体に該当しないと認定判断しているが,

本件明細書の特許請求の範囲には,モノフィラメントからなる繊維集合体と記載さ

れており,フィルムを含まないとは記載されておらず,また,本件明細書に他のコ

ーティング材料やポリマー材料が含まれていてもよいと記載されており,コーティ

ング加工を行えば,繊維集合体の表面にフィルムが積層一体化され,フィルムを含

むものも積極的に包含するから,本件発明と引用例2に記載された発明との一致点

としては,「用途がサニタリーナプキン,成人用オムツ又はベビーオムツである,

衛生用繊維集合体がポリエステルよりなるモノフィラメントで形成されている点」

と認定されるべきであり,また,相違点としては,「本件発明はモノフィラメント

がポリ乳酸を素材とするものであるのに対して,引用例2に記載された発明ではモ

ノフィラメントがポリエステルを素材とするものである点」と認定されるべきと主

張する。

しかし,原告が主張する一致点及び相違点は,原告が主張する引用例2に記載さ

れた発明の認定を前提とするものであり,そのような発明が引用例2に記載されて

いないことは上記のとおりであるから,それを前提とした主張は採用できない。

なお,引用発明2−1の「多孔質シート」が,本件発明の「繊維集合体」に相当

するものとはいえないことは,上記のとおりである。また,本件審決の引用発明2

−1及び引用発明2−2の認定自体に誤りがなく,本件発明と引用発明2−1及び



引用発明2−2との相違点は,前記ア,イのとおりであって,本件審決が認定した

相違点と実質的に同一であるから,本件審決の認定した相違点にも誤りはない。

(4) 相違点の判断について

ア 引用発明2−1について

(ア) 引用発明2−1の吸収性物品の表面材は,上記のとおり,「互いに平行に

配されたフィラメントの群」と「互いに平行に配されたリボン状のフィルムの群」

とが一体化されて形成された多孔質シートからなるものであり,フィラメントの群

とフィルムの群との配置の仕方に技術的意義を有するものと解される。そうすると,

引用発明2−1において,このような技術的意義を有する多孔質シートを,本件発

明のような繊維集合体に変更する動機付けはないと解される。

(イ) 周知例1の記載事項は,前記2認定のとおりであるが,その記載によれば,

ポリ乳酸は,重合体のコストが高いため,その適用は,生体吸収性縫合糸のような

分野に限られており,周知例1においては,衛生材に用いられる不織布の使用後の

処分に関する課題を解決する手段としては,実際には用いられていないことが認め

られる。そうすると,そのようなポリ乳酸が,上記課題を解決するための手段とし

て周知例1に記載されているということはできないし,また,当業者は,引用発明

2−1において,そのようなポリ乳酸を上記課題を解決するための手段としては採

用しないと解される。

よって,周知例1の上記記載は,引用発明2−1において,吸収性物品の表面材

の素材を,ポリ乳酸を主成分とする生分解性のものに変更する動機付けが存在する

ことを示すものとはいえない。

(ウ) 周知例2及び3の記載事項は,前記2認定のとおりである。しかし,周知

例2に,漁業や農業,土木用として用いられる産業資材用繊維について記載され,

また,周知例3に,漁網について記載されているとしても,周知例2及び3には,

吸収性物品の表面材については何ら記載も示唆もないから,周知例2及び3の上記

記載は,吸収性物品の表面材に関する引用発明2−1において,使用後の処分に関



する課題が存在することを示すものではなく,また,そのような課題を解決するた

めに,吸収性物品の表面の素材を,ポリ乳酸を主成分とする生分解性のものに変更

する動機付けが存在することを示すものともいえない。

(エ) 以上のとおり,引用発明2−1において,多孔質シートを繊維集合体に変

更する動機付けはなく,また,吸収性物品の表面の素材を,ポリ乳酸を主成分とす

る生分解性のものに変更する動機付けがあるということはできないから,本件発明

と引用発明2−1との相違点について,当業者が容易に想到することができたもの

とはいえない。

イ 引用発明2−2について

前記ア(イ)(ウ)と同様の理由により,引用発明2−2において,吸収性物品の表

面の素材を,ポリ乳酸を主成分とする生分解性のものに変更する動機付けがあると

いうことはできないから,本件発明と引用発明2−2との相違点について,当業者

容易に想到することができたものとはいえない。

ウ 原告は,周知例1には,従来のポリエステル等を素材とする不織布が生分解

性を有しておらず,環境破壊を起こすという問題を解決するためにポリ乳酸を用い

ることが記載され,周知例2にも同様の事項が記載され,また,周知例3には,漁

網の素材としてポリ乳酸を使用することが記載され,ポリ乳酸は生分解性であるた

め環境破壊を防止しうることが記載されているから,周知例1ないし3には,本件

発明と引用発明2−1及び引用発明2−2との相違点が記載されていると主張する。

しかし,上記のとおり,ポリ乳酸は,コスト等の問題があるため,周知例1にお

いては,使用後の処分に関する課題を解決するための手段としては,実際には用い

られていないのであり,そのようなポリ乳酸が,上記課題を解決するための手段と

して周知例1に記載されているということはできない。また,周知例2及び3の記

載は,吸収性物品の表面材に関する引用発明2−1及び引用発明2−2において,

使用後の処分に関する課題が存在することを示すものではなく,そうすると,上記

発明において,そのような課題を解決するために,素材をポリ乳酸を主成分とする



生分解性のものに変更する動機付けが存在することを示すものともいえないから,

周知例2及び3に,本件発明と引用発明2−1及び引用発明2−2との相違点が記

載されているとはいえない。

エ 原告は,引用例2のみを持ち出して動機付けがないとした本件審決は誤りで

あり,動機付けの存否は主引用例にのみ基づくものではなく,副引用例や技術常識

に基づいても認定判断しなければならず,環境破壊を防止するために,生分解性の

素材であるポリ乳酸を使用すればよいという動機付けは,周知例1ないし3に記載

されていると主張する。

しかし,上記のとおり,周知例1ないし3の記載は,引用発明2−1及び引用発

明2−2において,吸収性物品の表面材の素材を,ポリ乳酸を主成分とする生分解

性のものに変更する動機付けが存在することを示すものとはいえない。

オ 原告は,周知例1ないし3について,上記のほか,取消事由1と同様の主張

をするが,それが採用できないことは,前記2と同様である。

(5) 小括

以上のとおり,取消事由2も理由がない。

4 結論

以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣




裁判官 部 眞 規 子





裁判官 齋 藤 巌