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関連審決 審判1998-35665
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事件 平成 15年 (行ケ) 537号 審決取消請求事件
原告 株式会社日商
訴訟代理人弁理士 永井義久
被告 株式会社マースエンジニアリング
訴訟代理人弁護士 安原正之,小林郁夫,鷹見雅和
訴訟代理人弁理士 安原正義
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/09/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成10年審判第35665号事件について平成15年10月27日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
本件は,特許を無効とする審決の取消しを求める事件であり,原告は無効とされた特許の特許権者,被告は上記特許に対する無効審判の請求人である。
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,発明の名称を「パチンコ遊技装置」とする特許第2787210号(昭和63年7月4日に優先権主張日を昭和62年12月28日(国内優先)として出願,平成10年6月5日にその特許の設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
(2) 被告は,本件特許について無効審判の請求をし,特許庁に平成10年審判第35665号事件として係属したところ,特許庁は,平成12年6月27日,「特許第2787210号の発明の特許を無効とする。」との審決(前審決)をした。
(3) 原告は,前審決の取消しを求める訴訟を提起し,東京高等裁判所は,平成13年12月20日,手続補正が明細書の要旨変更に当たるとした前審決の判断は誤りであるとして,前審決を取り消す旨の判決を言い渡し,確定した。
(4) 特許庁は,上記無効審判請求事件について再審理したところ,原告は,平成14年6月10日,明細書の訂正を請求し,さらに,平成15年4月14日,再度,明細書の訂正を請求した。特許庁は,同年7月10日,同年4月14日付訂正請求について,手続を却下する旨の決定をし,上記決定は確定した。
(5) 特許庁は,平成15年10月27日,上記無効審判請求事件について,「特許第2787210号の発明の特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決をし,平成15年11月6日にその謄本を原告代理人に送達した。
2 本件発明の要旨 (1) 特許査定時のもの 【請求項1】A 上に景品用パチンコ玉の受け皿および下に景品交換用パチンコ玉の受け皿を有するパチンコ機に対して,これに隣接する他のパチンコ機との間に金員のの投入に応じて玉貸用パチンコ玉を排出する玉貸機が1対1で設けられ,これらのパチンコ機と玉貸機との対が島方向に連続したパチンコ遊技装置であって, B 前記各玉貸機には,これへの金員の投入に応じて,玉貸機の前面から対応するパチンコ機の景品用パチンコ玉の受け皿に,直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした剛性を有する連結管を有し,その連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された排出装置が設けられており, C 前記排出装置に,これへの遊技者の操作に応じて玉貸用パチンコ玉の前記景品用パチンコ玉の受け皿への排出を一時停止するストッパー手段を設け, D 前記連結管を,パチンコ機を前方に開けたとき衝突しない位置まで水平にパチンコ機前方から玉貸機前方に逃げるように,玉貸機の前方において鉛直旋回軸心を有して旋回可能とした,ことを特徴とするパチンコ遊技装置。
(2) 平成14年6月10日付訂正請求によるもの(下線を付した箇所が訂正部分である。) 【請求項1】A 上に景品用パチンコ玉の受け皿および下に景品交換用パチンコ玉の受け皿を有するパチンコ機に対して,これに隣接する他のパチンコ機との間に金員の投入に応じて玉貸用パチンコ玉を排出する玉貸機が1対1で設けられ,これらのパチンコ機と玉貸機との対が島方向に連続したパチンコ遊技装置であって, B 前記各玉貸機には,これへの金員の投入に応じて,玉貸機の前面から対応するパチンコ機の景品用パチンコ玉の受け皿に,直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした剛性を有する連結管を有し,その連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された排出装置が設けられており, C 前記排出装置に,これへの遊技者の操作に応じて玉貸用パチンコ 玉の前記景品用 パチンコ 玉の受け皿への 全量排出 を一時停止 し,必要量 の排出 を選択 し残量 を前記排出装置内 に貯留 しておく ストッパー 手段 を設け, D 前記連結管を,パチンコ機を前方に開けたとき衝突しない位置まで水平にパチンコ機前方から玉貸機前方に逃げるように,玉貸機の前方において鉛直旋回軸心を有して旋回可能とした,ことを特徴とするパチンコ遊技装置。
なお,本件発明に係る特許の出願の願書に添付した図面(甲3,特許第2787210号公報図面)の一部は下記のとおりである。
3 審決の理由の要点 (1) 訂正後の請求項1に係る発明は,その出願の日前の出願であって,その出願後に出願公開された特願昭63-154242号の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(甲2,特開平1-320080号公報図面の一部は下記のとおり)に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一であると認められ,しかも,本件の発明者が先願発明をした者と同一であるとも,また,本件の出願の時にその出願人が先願発明に係る特許出願の出願人と同一であるとも認められないので,訂正後の請求項1に係る発明は,特許法29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから,上記訂正は,特許法134条5項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条3項の規定に適合しない。
よって,上記訂正を含む平成14年6月10日付の訂正請求は認められない。
(2) 本件請求項1に係る発明の構成要件全てを含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する訂正発明は,先願発明と同一であるから,訂正前の本件請求項1に係る発明も,同様な理由により,先願発明と同一であるというべきである。
したがって,訂正前の本件請求項1に係る発明は,先願発明と同一であり,特許無効理由は妥当なものというべきである。
(3) 独立特許要件違反の理由 ア 先願発明では,台間玉貸機(12)は,パチンコゲーム機(11)間の隙間毎に1台のパチンコゲーム機(11)毎に対応させて隣接させて設置するのであるから,訂正発明の,「隣接する他のパチンコ機との間に玉貸用パチンコ玉を排出する玉貸機が1対1で設けられ」に相当する。また,先願発明の第1図には,パチンコ機と玉貸機との対が島方向に連続する点が図示されている。そして,先願発明の「玉受部(13)」,「景品交換玉の受皿(14)」は,訂正発明の「景品用パチンコ玉の受け皿」,「景品交換用パチンコ玉の受け皿」に相当すると認められるので,先願発明は訂正発明の構成要件Aを備えている。
イ 先願発明の貸玉供給管(33)は回転可能であり,剛性を有していると認めることができ,先願発明の「貸玉供給管(33)の先端」は,訂正発明の「連結管の出口」に相当する。また,訂正発明における「排出装置」は訂正明細書に「パチンコ玉排出装置310として,上述したシュート236に接続されるハウジング311と,ケーシング312内を通るシュート313と,このシュート313と,出口が景品用パチンコ玉の受け皿32の上方に臨む連結管320とを備える。」(訂正明細書9頁末行〜10頁3行)とある点からみて,先願発明の「貸玉供給管(33)」及び「貸玉供給経路52」が上記訂正発明の「排出装置」に相当する。
したがって,先願発明は訂正発明の構成要件Bを備えている。
ウ 先願明細書には,貸玉供給管(33)を回動させ中途半端な位置を取れば,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面が,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されるのを阻止することができることが記載されており,この場合貸玉供給路(52)内に貸玉が残留するものと認められる。そして,貸玉供給管(33)は遊技者の操作により回転させるものであるから,その操作によって,排出を一時停止したり,必要量排出したりすることができるものということができる。また,訂正発明のストッパー手段には,その排出装置における具体的な取り付け位置,及び,例えば図5にストッパー322として図示され「ストッパー322は,手動式で,支点324を中心に回動する略L字状板325,この略L字状板325をパチンコ玉を連結管320内に貯留させる方向へ付勢するスプリング326からなる」(訂正明細書10頁20〜23行)とあるような具体的な構成の限定はなされていない。そうすると訂正発明におけるストッパー手段はそのような限定をしたものと解することはできず,上記C1(判決注:先願明細書の「貸玉供給管(33)の回動が中途半端な位置を取るときは,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面により妨げられ,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されることはない。」(6頁下段左欄2ないし5行)との記載)もストッパー手段の概念に含まれるということができる。
したがって,先願発明は訂正発明の構成要件Cを備えているということができる。
エ 訂正発明の連結管に相当する先願発明の貸玉供給管(33)が,パチンコ機を前方に開けたとき衝突しない位置まで水平にパチンコ機前方から玉貸機前方に逃げるように,玉貸機の前方において鉛直旋回軸心を有して旋回可能とする構成を備えているということができる。また,D4(判決注:先願明細書の「パチンコゲーム機(11)の,表面のガラス蓋を開けて釘の修正作業等を行うときは,スプリング(36)の付勢力に抗して,ゲーム者側に水平に約90度まで供給管取付部(34)を回転軸として回動させ,パチンコゲーム機(11)の表面から離して行う。」(6頁下段左欄6〜11行)との記載)には「ゲーム者側に水平に約90度まで供給管取付部(34)を回転軸として回動」させることにより,訂正発明の構成要件Dの作用・効果である「パチンコ機の内部の点検(先願発明では釘の修正作業)を支障なく行うことが可能となる」(訂正明細書12頁2行)を奏することも記載されている。
したがって,先願発明は訂正発明の構成要件Dを備えているということができる。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(排出装置について) 審決は,「先願発明の「貸玉供給管(33)」及び「貸玉供給経路52」が上記訂正発明の「排出装置」に相当する。」と認定判断したが,誤りである。
訂正明細書(甲4)の特許請求の範囲には,「玉貸機には,玉貸機の前面から対応するパチンコ機の景品用パチンコ玉の受け皿に,直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした剛性を有する連結管を有し,その連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された排出装置が設けられており,」と記載されており,これを自然に解釈すれば,訂正発明における「排出装置」とは,「玉貸機」のうちの「玉貸機の前面から・・・出口」に到る部分をいい,「玉貸機の前面」に到るまでのものを含まないことは明らかである。
これに対して,先願発明においては,先願図面(甲2)の図12から明らかなように,「貸玉供給経路52」は,台間玉貸機(2)の内部にあって,少なくとも「玉貸機の前面」に到るまでのものであるから,先願発明は,訂正発明の「排出装置」を有していない。
2 取消事由2(ストッパー手段について) (1) 審決は,「C1.貸玉供給管(33)の回動が中途半端な位置を取るときは,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面により妨げられ,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されることはない。」(6頁下段左欄2ないし5行)と記載されている。上記C1によれば,貸玉供給管(33)を回動させ中途半端な位置を取れば,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面が,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されるのを阻止することができることが記載されており,この場合貸玉供給路(52)内に貸玉が残留するものと認められる。・・・上記C1もストッパー手段の概念に含まれるということができる。」と認定し,先願発明が訂正発明の「排出装置に・・・ストッパー手段を設ける」点を備えていると判断したが,誤りである。
(2) 先願発明において,「貸玉供給路(52)内に貸玉が残留する」ことから,「上記C1もストッパー手段の概念に含まれるということができる。」としても,1のとおり,先願発明は訂正発明の「排出装置」を有していないから,先願発明が,訂正発明にいう「排出装置に,・・・ストッパー手段を設ける」点を備えているとはいえない。
(3) 訂正明細書(甲4)の発明の詳細な説明に,「排出装置に,これへの遊技者の操作に応じて玉貸用パチンコ玉の前記景品用パチンコ玉の受け皿への排出を一時停止するストッパー手段を設けた。したがって,遊技者は購入した玉貸用パチンコ玉をこのストッパー手段を操作して,景品用パチンコ玉の受け皿上に購入全量を排出することによる溢れを防止しながら,残量を貯留しておくことができる。また,予め大量に借入しておけば,景品用パチンコ玉の受け皿上の残数に応じて,必要量だけ玉貸機から遊技用パチンコ玉を追加することができ,残数との関係で興味ある遊技が可能となる。」(4頁28行〜5頁6行)と記載されているから,訂正発明のストッパー手段は,「連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された」状態で,「景品用パチンコ玉の受け皿上への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を前記排出装置内に貯留しておく」ものであって,遊技者が残量に関する積極的な選択のために操作するものである。
これに対して,先願発明においては,「貸玉供給管(33)を回動させ中途半端な位置を取れば」,「貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面が,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されるのを阻止することができる」というもので,貸玉供給路(52)内に貸玉が残留するというものでしかなく,また,貸玉供給管(33)を「中途半端な位置」の状態から,中子(348)へと導く位置へと回転した場合,貸玉供給路(52)内に残留していた貸玉は,全量が最終的に中子(348)に導かれてしまって,玉受部(13)に排出されることはない。したがって,「中途半端な位置」は,「景品用パチンコ玉の受け皿への」「必要量の排出を選択」するものではないのであって,遊技者が残量に関する積極的な選択のために操作するのではないし,中子(348)は,「景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された」ものではないから,先願発明には,訂正発明のストッパー手段に該当するものはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1について (1) 訂正発明の特許請求の範囲には,「前記各玉貸機には,これへの金員の投入に応じて,玉貸機の前面から対応するパチンコ機の景品用パチンコ玉の受け皿に,直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした剛性を有する連結管を有し,その連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された排出装置が設けられており,」との構成がある。この構成によると,「玉貸機の前面から」との文言は,「直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした」との文言に係ると解するのが妥当であり,また,「直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした」との文言は「連結管」との文言に,「連結管を有し,」との文言は「排出装置」との文言に係ることは明らかであるから,そうすると,玉貸用パチンコ玉を排出可能とする「連結管」は,玉貸機の前面に存在するものであるとしても,「排出装置」は,「連結管」を含むものであって,「連結管」そのものではないから,「排出装置」の全体が,「玉貸機の前面」に存在すると解することはできない。
そして,訂正明細書(甲4)の発明の詳細な説明には,「パチンコ玉排出装置310として,上述したシュート236に接続されるハウジング311と,ケーシング312内を通るシュート313と,このシュート313と,出口が景品用パチンコ玉の受け皿32の上方に臨む連結管320とを備える。」(9頁末行〜10頁3行)と記載されている。この記載によると,排出装置310(特許請求の範囲にいう「排出装置」の具体例と認められる。)は,ケーシング312内を通るシュート313(特許請求の範囲にいう「連結管」の具体例と認められる。)をも含んで構成されるものと認められるところ,シュート313が,ケーシング312内を通ることからすると,シュート313は,ケーシング312内にあって,玉貸機の前面にはないのであるから,訂正明細書(甲4)の上記記載に照らしても,「排出装置」の全体が,「玉貸機の前面」に存在すると解することはできないといわなければならない。
(2) これに対し,先願明細書(甲2)には,「硬貨投入口(21)に500円硬貨を投入する。・・・貸玉供給管の先端はパチンコゲーム機(11)の受皿状の玉受部(13)上部に位置するため,貸玉は玉受部(13)に供給される。」(5頁上段右欄20行〜6頁上段左欄12行),「基部(331)には管先端と貸玉供給路(52)とを連結する開口部(332),および貸玉供給路(52)と共通玉貸部(341)とを直接連結する切欠状のバイパス通路(333)を設ける。そして,第15図,第16図,第17図に図示するように,貸玉供給管(33)の回動によりそれぞれ一方を選択可能に,かつ途中では玉が流出しないように妨げるように設置する。」(4頁下段左欄7〜15行),と記載されている。上記記載によれば,貸玉供給路(52)は,貸玉供給管(33)及び共通玉貸部(341)とともに,貸玉の排出装置を構成していることが認められる。
(3) そうすると,訂正発明と先願発明とは,排出装置の構成において異なるところはないということができるから,審決が,先願発明の「貸玉供給管(33)」及び「貸玉供給経路52」が,訂正発明の「排出装置」に相当すると判断したことに誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由1は,理由がない。
2 取消事由2について (1) 取消事由2,(2)について 1,(2)に判示したように,貸玉供給路(52)は,貸玉供給管(33)及び共通玉貸部(341)とともに,貸玉の排出装置を構成していることが認められ,先願発明は,訂正発明の「排出装置」を有しているから,先願発明は,訂正発明にいう「排出装置に,・・・ストッパー手段を設ける」点を備えているということができる。
(2) 取消事由2,(3)について ア 先願明細書(甲2)には, (イ)「(33)は,貸玉供給管である。貸玉供給管(33)は,内部を通過する貸玉の視認可能なように透明なノズル状,管状からなり,先端は玉受部(13)の開口部上に位置して開口する。貸玉供給管(33)は,台間玉貸機(12)の表面に固定される供給管取付部(34)で台間玉貸機(12)に取り付けられ,供給管取付部(34)を軸として水平に90度まで回転可能である。90度以上の回転は,ストッパー等で規制し,反対側のパチンコゲーム機の玉受部(13)上には,先端がいかないようにする。更に,中間位置でも節度感をもたせて停止させてもよい。その場合,台間玉貸機(12)表面から突出させた位置も選択可能とすることで,貸玉を直接玉受部(13)に受けるだけでなく遊戯者は手でも直接貸玉を受けることができ,他の台での遊戯者の貸玉使用も可能となる。更にゲーム機表面の開閉時の作業を阻止することはない。」(3頁下段右欄15行〜4頁上段左欄12行), (ロ)「貸玉供給管(33)が台間玉貸機(12)の表面に平行に位置した場合と,垂直に位置した場合との2つの位置をとったときにそれぞれ嵌合して軽く固定させるための嵌合溝を2ヶ所に設ける。嵌合溝の代わりにあるいは嵌合溝と共に第4図に図示するようにスプリング(36)を設けてもよい。すなわち,スプリング(36)は板バネ,コイルバネからなり,常に特定のパチンコゲーム機(11)の盤面側に付勢される貸玉供給管(33)が,直接パチンコゲーム機(11)表面と衝突するのを避ける程度に,パチンコゲーム機(11)側に貸玉供給管(33)を,押圧してもよい。」(4頁下段右欄6〜18行), (ハ)「基部(331)には管先端と貸玉供給路(52)とを連結する開口部(332),および貸玉供給路(52)と共通玉貸部(341)とを直接連結する切欠状のバイパス通路(333)を設ける。そして,第15図,第16図,第17図に図示するように,貸玉供給管(33)の回動によりそれぞれ一方を選択可能に,かつ途中では玉が流出しないように妨げるように設置する。」(4頁下段左欄7〜15行), (ニ)「貸玉供給管(33)の回動が中途半端な位置を取るときは,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面により妨げられ,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されることはない。」(6頁下段左欄2〜5行),と記載されている。
上記(イ)及び(ロ)の記載によれば,貸玉供給管(33)は,貸玉供給管(33)が台間玉貸機(12)の表面に平行に位置した場合と,垂直に位置した場合との2つの位置で停止するとともに,両位置の中間においても停止することができるものであると認められ,また,上記(ハ)及び(ニ)の記載によれば,貸玉供給管(33)を回動させて,上記両位置の中間である中途半端な位置を取るようにすれば,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面が,貸玉が貸玉供給路(52)から排出されるのを阻止し,貸玉供給路(52)内に貸玉が残留すると認められる。そして,上記いずれの位置に,貸玉供給管(33)を停止させるかは,遊技者が任意に選択操作をすることができるのであって,貸玉供給管(33)を台間玉貸機(12)の表面と平行に位置させることにより,遊技者が望む必要量を玉受部(13)に排出させることができ,また,貸玉供給管(33)を回動させ中途半端な位置を取れば,玉受部(13)への排出を一時停止することができる。
そうすると,貸玉供給管(33)の切り欠きのない側面は,遊技者の選択操作に応じて,貸玉の玉受部(13)への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を貸玉供給管(33)内に貯留しておくという機能を有すると認めることができるから,「これへの遊技者の操作に応じて玉貸用パチンコ玉の前記景品用パチンコ玉の受け皿への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を前記排出装置内に貯留しておく」という,訂正発明のストッパー手段に該当するものであるということができる(なお,訂正発明のストッパー手段は,特許請求の範囲にその機能が規定されているだけであって,具体的な構造は規定されていない。)。
イ 原告は,貸玉供給管(33)を「中途半端な位置」の状態から,中子(348)へと導く位置へと回転した場合,すなわち,貸玉供給管(33)が台間玉貸機(12)の表面に垂直に位置した場合には,貸玉供給路(52)内に残留していた貸玉は,全量が最終的に中子(348)に導かれてしまい,玉受部(13)に排出されることはないのであって,「中途半端な位置」は,「景品用パチンコ玉の受け皿への」「必要量の排出を選択」するものではなく,したがって,遊技者が残量に関する積極的な選択のために操作するのではない旨主張する。
しかし,先願発明において,貸玉供給管(33)を,「中途半端な位置」から,貸玉を玉受部(13)へ導く位置へと回転させると,すなわち,貸玉供給管(33)が台間玉貸機(12)の表面に平行に位置した場合には,貸玉供給路(52)内に残留していた貸玉は,玉受部(13)へ排出されるのであり,再度,「中途半端な位置」へ戻せば,貸玉供給路(52)内に残留していた貸玉は,その全てが玉受部(13)に排出されないで,そのまま,貸玉供給路(52)内に残留することになるから,先願発明において,「中途半端な位置」は,「景品用パチンコ玉の受け皿への」「必要量の排出を選択」するものであるということができる。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ また,原告は,訂正発明のストッパー手段は,「連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された」状態で,「景品用パチンコ玉の受け皿上への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を前記排出装置内に貯留しておく」ものであるのに,中子(348)は,「景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された」ものではない旨主張する。
しかし,訂正発明におけるストッパー手段は,その要旨のとおり,「これへの遊技者の操作に応じて玉貸用パチンコ玉の前記景品用パチンコ玉の受け皿への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を前記排出装置内に貯留しておく」(構成C)というものであり,連結管の出口が受け皿の上方に臨んで配置されるときに,遊技者によって操作されるものであると規定されているわけではない。確かに,訂正発明の特許請求の範囲には,「前記各玉貸機には,これへの金員の投入に応じて,玉貸機の前面から対応するパチンコ機の景品用パチンコ玉の受け皿に,直接玉貸用パチンコ玉を排出可能とした剛性を有する連結管を有し,その連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された排出装置が設けられており,」(構成B)とあり,連結管の出口が,景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置されることが規定されているが,他方で,「前記連結管を,パチンコ機を前方に開けたとき衝突しない位置まで水平にパチンコ機前方から玉貸機前方に逃げるように,玉貸機の前方において鉛直旋回軸心を有して旋回可能とした,」(構成D)と規定されており,これによれば,連結管は,旋回可能であって,その出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨む位置に固定されているわけではないと認められる。
したがって,連結管の出口が,景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置されるとの上記構成Bの規定は,パチンコ玉を排出する際において,連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に位置すると解するのが相当であり,常に,「連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置された」状態にあるということもいえないし,また,常に,この状態において,ストッパー手段を操作して,「玉貸用パチンコ玉の前記景品用パチンコ玉の受け皿への全量排出を一時停止し,必要量の排出を選択し残量を前記排出装置内に貯留しておく」ようにするということもできない。訂正発明の特許請求の範囲に,「連結管の出口が受け皿の上方に臨んで配置された」との規定があるからといって,このことから直ちに,連結管の出口が受け皿の上方に臨んで配置されているときにおいて,ストッパー手段が,遊技者によって操作されると解することはできない。
そうすると,訂正発明のストッパー手段は,連結管の出口が,景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨んで配置されていなくても,ストッパー手段としての機能を発揮できるのであり,ストッパー手段としての機能が発揮されている状態にあって,連結管の出口を受け皿の上方に配置させるかどうかは,遊技者の操作次第によるものであるということができる。原告の上記主張は,これと異なる前提に立つものであって,採用することはできない。
(3) 以上の説示によれば,訂正発明のストッパー手段の構成は,連結管の出口が景品用パチンコ玉の受け皿の上方に臨む位置とパチンコ機を前方に開けたとき衝突しない位置との間において,ストッパー手段が機能するという点で,先願発明のストッパー手段の構成と異なる点はないというべきであるから,審決が,先願発明において,「排出装置」は「ストッパー手段」を有していると認定し,先願発明は,訂正発明の「ストッパー手段」を備えていると判断したことに誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由2は,理由がない。
3 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がないから,原告の請求は棄却されるべきである。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 田中昌利
裁判官 野輝久