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事件 平成 23年 (行ケ) 10350号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/04/11
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年4月11日判決言渡

平成23年(行ケ)第10350号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年3月28日

判 決


原 告 株式会社DAPリアライズ




被 告 ソフトバンクモバイル株式会社



訴訟代理人弁理士 原 島 典 孝


主 文

原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由
第1 原告の求めた判決

特許庁が無効2011−800034号事件について平成23年9月29日にし
た審決を取り消す。



第2 事案の概要

本件は,被告の請求に基づき原告の特許を無効とした審決の取消訴訟である。争
点は,進歩性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯

原告は,本件特許第3872502号(発明の名称「携帯情報通信装置,携帯情




報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム及び携帯情報通信装置用外

部入出力ユニット」,平成16年12月24日及び平成17年7月28日の優先権
(日本)を主張しての平成18年2月27日出願,平成18年10月27日特許登

録。特許公報は甲13)の特許権者である。
これに対し,被告は,平成23年2月28日,本件特許の請求項5につき無効審
判を請求した(無効2011−800034号)。

その中で原告は平成23年4月26日付けで本件特許の請求項3〜5につき訂正
請求をしたが,特許庁は,平成23年9月29日,請求項3,4,5の訂正を認め

た上,特許第3872502号の請求項5に記載された発明についての特許を無効

とする。」旨の審決をし,その謄本は同年10月7日原告に送達された。



2 本件発明の要旨
【請求項5】(本件発明)

「(a)ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段
に送信する入力手段と,

(b)無線信号を受信してデジタル信号に変換の上,後記データ処理手段に送信す
るとともに,後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して
送信する無線通信手段と,

(c)後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可
能なデータファイルとを格納する記憶手段と,

(d)前記入力手段から送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラ
ムに基づき,前記無線通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段

から読み出したデータに必要な処理を行って,デジタル表示信号及びその他のデジ
タル信号を生成して送信するデータ処理手段と,
(e)画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプ

レイパネルAと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記




ディスプレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成

されるディスプレイ手段と,
(F)外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続

される周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信した
デジタル表示信号に基づき,TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号を送
信するインターフェース手段A1と,

(G)を備えるとともに,
前記データ処理手段と前記インターフェース手段A1とが相俟って,該インターフ

ェース手段A1から,高解像度デジタル外部表示信号を送信する機能を実現する携
帯情報通信装置であって,

(H)被写体からの撮像光をCCD,CMOSセンサー等の撮像素子によって画素
ごとの電気信号(以下,撮像電気信号と略記する)に変換し,該撮像電気信号をさ
らにデジタル動画信号に変換した上で前記データ処理手段に送信する撮像手段を備

え,
(i)前記データ処理手段は,前記デジタル動画信号の本来解像度が前記ディスプ

レイパネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画信号をリアルタ
イムで処理することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号を自らが処理可
能な画像データファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で

処理することによって,前記デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表
示信号を生成する機能を有する

(j)ことを特徴とする携帯情報通信装置。」
(記号(a)〜(e)(F)(G)(H)(i)(j)は,審判請求書及び審判事
, , , , ,

件答弁書の分説に従って,審決において付されたものである。)


3 審決の理由の要点

(1) 甲1号証(特開2004−320680号公報)には,実質的に以下の発




明(甲1発明)が記載されていることが認められる。

「操作者の操作によりキー情報を出力するキーマトリクス部と,
入射する光景に対応する第1の画像データを出力するカメラ部と,

外部から無線により第2の画像データを受けこの第2の画像データを出力する無線
部と,
前記キーマトリクス部が出力する前記キー情報と前記カメラ部が出力する前記第1

の画像データと前記無線部が出力する前記第2の画像データとを画像信号にそれぞ
れ変換して出力する制御部と,

前記制御部がそれぞれ出力する前記画像信号を受けて画像を表示する表示部と,
前記制御部が出力する前記画像信号をテレビ用の画像信号であるアナログコンポジ

ット信号に変換して出力する変換部と,
第1の画像データを格納するメモリと,
を備え,

前記制御部と前記変換部とが相俟って,該変換部からアナログコンポジット信号を
送信する機能を実現する携帯電話機」

(2) 甲2号証(特開2004−128587号公報)には,実質的に以下の発明
(甲2発明)が記載されていることが認められる。
「撮像素子によって被写体を撮影する撮像手段を有するデジタルカメラであって,

前記撮像素子から得られる画像を表示する表示手段と,
前記撮像素子から得られる画像を記録する記録手段と,

前記表示手段よりも高解像度の外部表示装置を接続可能な接続手段と,
前記撮像素子から得られる画像データに対して所定の解像度変換を行う解像度変換

部と,
を備え,
前記解像度変換部は,前記撮像手段の生成する画像データの本来解像度が前記表示

手段の画面解像度より大きい場合に,前記接続手段に対して前記外部表示装置が接




続された場合,前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを生

成するように構成されるデジタルカメラ」
(3) 甲2号証及び甲3号証(特開2003−125331号公報)には,実質的

に以下の周知技術(周知技術1)が記載されていることが認められる。
「動画像を記録可能なデジタルカメラにおいて,CCD等の撮像素子を含む撮像手
段からデジタル動画信号を出力すること」

(4) 甲4号証(特開平11−311969号公報),甲5号証(特開2001
−228841号公報),甲6号証(特開2004−208162号公報),甲7号

証(特開2004−304220) 甲8号証
, (特開2004−88272号公報),
甲9号証(2002−14664号公報),甲10号証(実用新案特許明細書CN2

641944Y)には,実質的に以下の周知技術(周知技術2)が記載されているこ
とが認められる。
「外部ディスプレイ装置に送信される外部表示信号をTMDS方式で伝送されるデ

ジタル外部表示信号とすること」
(5) 本件発明と甲1発明の一致点と相違点は次のとおりである。

【一致点】
「(a)ユーザーがマニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段に
送信する入力手段と,

(b’ 無線信号を受信してデジタル信号に変換の上,
) 後記データ処理手段に送信す
る無線通信手段と,

(c’)後記データ処理手段で処理可能なデータファイルを格納する記憶手段と,
(d’ 前記入力手段から送信されたデータに基づき,
) 前記無線通信手段から受信し

たデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読み出したデータに必要な処理を行っ
て,デジタル表示信号を生成して送信するデータ処理手段と,
(e)画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプ

レイパネルと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記デ




ィスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成される

ディスプレイ手段と,
(F’)外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続

される周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信した
デジタル表示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェース手段と,
(G’)を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段とが相俟って,該インターフェー
ス手段から,外部表示信号を送信する機能を実現する携帯情報通信装置であって,

(H’ 被写体からの撮像光をCCD,
) CMOSセンサー等の撮像素子によって画素
ごとの電気信号(以下,撮像電気信号と略記する)に変換し,該撮像電気信号をさ

らにデジタル信号に変換した上で前記データ処理手段に送信する撮像手段を備える,
(j)ことを特徴とする携帯情報通信装置。」
(一部に相違点を有する分説の記号には「’」を付した。)

【相違点】
(b’「無線通信手段」に関して,本件発明では「後記データ処理手段から受信し


たデジタル信号を無線信号に変換して送信する」のに対して,甲1発明の「無線部」
はそのような構成要件を欠く点。
(c’「記憶手段」に関して,本件発明では「後記データ処理手段を動作させるプ


ログラム」をも格納するのに対して,甲1発明の「メモリ」はそのような構成要件
を欠く点。

(d’「データ処理手段」に関して,本件発明では「前記記憶手段に格納されたプ

ログラム」にも基づき処理を行い,
「その他のデジタル信号」をも生成・送信するの

に対して,甲1発明の「制御部」はそのような構成要件を欠く点。
(F’「インターフェース手段」の送信する「外部表示信号」に関して,本件発明

では「TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号」であるのに対して,甲1

発明の「変換部」では「アナログコンポジット信号」である点。




(G’「携帯情報通信装置」の実現する機能として送信する「外部表示信号」に関


して,本件発明では「高解像度デジタル外部表示信号」であるのに対して,甲1発
明では「アナログコンポジット信号」である点。

(H’「撮像手段」が「データ処理手段」に送信する信号に関して,本件発明の「撮

像手段」では「デジタル動画信号」であるのに対して,甲1発明の「カメラ部」で
は「第1の画像データ」である点。

(i)本件発明では「前記データ処理手段は,前記デジタル動画信号の本来解像度
が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画

信号をリアルタイムで処理することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号
を自らが処理可能な画像データファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後

読み出した上で処理することによって,前記デジタル動画信号の本来画像の全体画
像のデジタル表示信号を生成する機能を有する」のに対して,甲1発明はそのよう
構成要件を欠く点。

(6) 以下の理由により,本件発明は,甲1発明,甲2発明及び周知技術に基づ
いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

@ 相違点(b’)について
甲1発明の「携帯電話機」も,電話機である以上電話通信として音声情報の通信
を行う装置であるが,電話通信が「双方向」の通信,すなわち受信のみならず送信

も行うものであるのは自明なことである。
甲1号証には電話通信関連部分の詳細についての記載はないものの,本件出願時

以前に既に日本の携帯電話通信システムはデジタル方式に移行しており,その「制
御部」が制御やデータ処理の中枢を担うものであるのは明らかである以上,甲1発

明の「無線部」(無線通信手段)を通じて送信すべきデータや情報があれば,「制御
部」
(データ処理手段)から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信するこ
ととなるのも明らかなことである。

したがって,相違点(b’)は格別のことではない。




A 相違点(c’)について

甲1発明の「制御部」(データ処理手段)は「CPU10」を含むものであるが,
「CPU」
(Central Processing Unit:中央処理装置)が,データ処理や制御動作の手

順としての命令語の記述である「プログラム」を近傍のメモリ(記憶手段)から逐
次読み出して動作することは,情報処理技術の基本常識であるから,記憶手段」
「 に,
「データ処理手段を動作させるプログラム」を格納したという相違点(c’)も格別

のことではない。
B 相違点(d’)について

「データ処理手段」が「前記記憶手段に格納されたプログラム」に基づき処理を
行う点は,相違点(c’)で判断したとおりである。

また,「データ処理手段」が,「その他のデジタル信号」をも生成・送信する点に
ついては,特に限定のないデジタル信号である以上適宜のことではあるが,相違点
(b’ の判断のとおり,
) 「無線通信手段」
(無線部)を通じて送信するべき信号を「制

御部」(データ処理手段)が生成するのであるから,これも格別の相違点ではない。
C 相違点(F’)について

そもそもデジタル入力可能な外部表示装置自体は,本件出願前,既に広く知られ
たものである。既にオーディオの世界では,いわゆるレコードのようなアナログ方
式から,CDのようなデジタル方式に移行して久しいが,DVDや地上波のテレビ

放送にも見られるように,情報量の大きい映像信号に関してもアナログからデジタ
ルへの移行は時代の趨勢であって,本件出願以前からそのための様々な検討がなさ

れていることは,周知のことである。そして,
「外部ディスプレイ装置に送信される
外部表示信号」についても,デジタル伝送方式の一種である「TMDS方式」は周

知技術である。したがって,甲1発明に周知技術2を適用し,その「変換部」
(イン
ターフェース手段)から出力される「外部表示信号」としての「アナログコンポジ
ット信号」を,「TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号」とすることは,

当業者であれば容易に想到し得たものと認定せざるを得ない。




D 相違点(G’)について

「TMDS方式で伝送されるデジタル外部表示信号」は周知のものであり,一般
に「外部ディスプレイ装置」のほうが,携帯機器本体の有するディスプレイ手段よ

りも「高解像度」であるのも普通のことであるから,
「携帯情報通信装置」の実現す
る機能として送信する「外部表示信号」に関しても,これを「高解像度デジタル外
部表示信号」とするのは格別のことではない。

E 相違点(H’)について
確かに甲1発明のような携帯端末においてはサイズ,重量や電源などの制約によ

りその機能が制限されがちなことは事実であるが,ここ数十年来の半導体微細化技
術の発展は,電子機器全般の高機能化を進めてきたことは周知のことであって,ま

た,限定的な機能の制約を外したいというのは,商品開発上の一般的な要望項目で
もあるから,カメラ機能に関して言えば,静止画機能だけでなく動画機能も加えた
いというのは自然な要求であって,甲1発明の携帯電話機のカメラ機能に周知技術

1を適用し動画機能も追加することは,当業者であれば適宜になし得ることに過ぎ
ず,相違点(H’)は格別のことではない。

また,例えば甲2号証の段落【0025】に「撮影動作前の撮影待機状態におけ
るライブビュー表示」として示唆があるように,通常の静止画撮影を行うデジタル
カメラであっても,撮影の瞬間まで逐次変化する被写体の画像が「動画像」として

ファインダーやモニタに表示されるのであるから,その撮像手段から発生する画像
信号は動画信号であるのは自明なことであり,甲1発明の「カメラ部」からの「第

1の画像データ」を「デジタル動画信号」とする相違点(H’)は格別のことではな
い。

F 相違点(i)について
甲2発明のデジタルカメラは,
「撮像手段」「表示手段」「記録手段」「
, , ,(解像度)
変換部」を備える点で,
「カメラ部」「表示部」「メモリ」「制御部」を有する,本
, , ,

質的にデジタル方式のカメラである甲1発明のカメラ機能部分と基本的構成が共通




するものであって,
「接続手段」
(変換部)を介して「外部表示装置」
(テレビ)にも

表示可能な点でも機能を同じくするものであるから,甲1発明の「携帯電話機」の
カメラ機能部分に甲2発明の「デジタルカメラ」を組み合わせることに特段の阻害

要因はない。
その場合,甲1発明の「携帯電話機」のカメラ機能部分に動画機能も追加するこ
とは,当業者であれば適宜になし得ることに過ぎないから,甲2発明の「解像度変

換部」(制御部,データ処理手段)は,「デジタル動画信号の本来解像度が前記ディ
スプレイパネルA(表示手段)の画面解像度より大きい場合」に動作するものとな

る。
また,そのような「デジタル動画信号」のデータ処理をリアルタイム(実時間)

で行うか,画像データファイルとしていったん記憶して後,読み出して処理するか
は適宜の慣用手段に過ぎないが,例えば甲2号証の撮影モードにおけるライブビュ
ー表示(甲2号証図7参照,リアルタイムデータ処理に相当)と,アフタービュー

表示あるいは再生モードにおける表示(甲2号証図10,11,13参照,ファイ
ル記録後の読み出しによるデータ処理に相当)にも開示があることに過ぎない。

そして,「デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成す
る」点についても,外部表示装置の画面解像度が「デジタル動画信号の本来画像の
全体画像」の解像度よりも大きければ,画像の全体が外部表示装置に表示可能であ

るのは自明なことに過ぎないから,必要に応じて全体画像をそのまま表示すれば良
いだけのことであって,格別のことではない。

したがって,デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成

する機能」に関する相違点(i)は,甲1発明の携帯電話機のカメラ機能部分に甲

2発明を組み合わせることにより当業者であれば容易になし得たものであって,格
別のものではない。



第3 原告主張の審決取消事由




1 取消事由1(甲2発明の認定の誤り)

甲2における表示装置2(外部表示装置)の映像フォーマットは,最大でも「1
125i(又は1125p)」であるところ,甲11(フリー百科事典「ウィキペデ

ィア(Wikipedia)」より「D端子」)によれば,1125iの解像度は1920×1
080画素(又は1440×1080画素)であり,1125pの解像度は192
0×1080画素である。そして,甲2において撮像手段が生成するデジタル動画

信号の本来画像の水平(横)解像度は2560画素である。したがって,甲2に記
載されている外部表示装置は,
「表示解像度のうち少なくとも水平解像度が,デジタ

ル動画信号の本来画像の全体画像の水平解像度よりも小さい外部表示装置」だけで
ある。

また,本件発明の優先権主張日(平成17年7月28日)当時,甲2において外
部表示装置として唯一具体的に記載されているデジタルテレビで実現されている水
平解像度は1980画素であり,デジタルカメラの撮像画素数が300万画素以上

であること(撮像画素数が300万画素以上であるデジタルカメラの水平解像度は
通常2000画素以上である。)は常態であった。したがって,本件発明の優先権

張日における技術常識を斟酌したとしても,甲2発明における解像度変換部が表示
解像度適合機能を発揮するのは,
「前記接続手段に対して『表示解像度のうち少なく
とも水平解像度は,デジタル動画信号の本来画像の全体画像の水平解像度よりも小

さい外部表示装置』が接続された場合」に限定されるというべきである。
このように,甲2発明における解像度変換部が表示解像度適合機能を発揮するの

は,
「前記接続手段に対して『表示解像度のうち少なくとも水平解像度は,デジタル
動画信号の本来画像の全体画像の水平解像度よりも小さい外部表示装置』が接続さ

れた場合」に限定されると認定すべきであるにもかかわらず,審決は,解像度変換
部は,「前記接続手段に対して前記外部表示装置が接続された場合」,外部表示装置
の表示解像度に関わらず,表示解像度適合機能を発揮すると認定した。審決におい

て認定された甲2発明は,甲2に記載されている事項及び記載されているに等しい




事項から把握されたものではないから,審決における甲2発明の認定は誤りである。



2 取消事由2(相違点(i)についての判断の誤り)

審決は,外部表示装置の画面解像度が
「 『デジタル動画信号の本来画像の全体画像』
の解像度よりも大きければ,画像の全体が外部表示装置に表示可能であるのは自明
なことに過ぎない」(判断1)とし,その判断に基づいて,「相違点(i)は,甲1

発明の携帯電話機のカメラ機能部分に甲2発明を組み合わせることにより当業者で
あれば容易になしえたものであって,格別のものではない」(判断2)とした。

しかし,判断1は,取消事由1のとおり,甲2発明に対する誤った認定を前提と
しており,このような誤った前提に基づいてなされた判断2も誤りである。



3 取消事由3(本件発明と甲1発明及び甲2発明の解決課題の誤った認定に基
づく容易相当性の判断の誤り)

本件発明が解決しようとする課題は,デジタル動画信号の本来解像度が付属ディ

スプレイよりも大きい場合でも,その本来画像の全体画像を高解度の外部ディスプ

レイ手段に表示すること」である。
これに対し,甲1発明の解決課題は,携帯電話機の表示部における表示画像が小
さいことに起因する不便を解消することであり,表示解像度についての問題意識は

一切見られず,本件発明の解決課題に対する記載や示唆はない。
また,甲2発明の解決課題は,デジタルテレビの表示解像度を活かした高精細な

画像表示を行うこと,及び再生表示の際の処理効率を良くすることである。このう
ち,前者は本件発明の解決課題に関連するが,それが「テジタルテレビの表示解像

度」を起点としてデジタルカメラをそれに適合させることを基本発想としているの
に対し,本件発明の解決課題はあくまでも「デジタル動画信号の本来画像」を起点
とし,外部ディスプレイ手段として「それを表示するのに十分な大きさの画面解像

度」を有するものを求めている。両者は課題設定の方向性が根本的に異なっている




ものであり,甲2において,本件発明の解決課題は記載も示唆もされていない。

したがって,本件発明の解決課題の設定は,当業者が甲1,2から容易に想到
きたものではないから,本件発明が甲1発明,甲2発明及び周知技術に基づいて当

業者が容易に発明することができたものであるとの判断は誤りである。


第4 被告の反論

1 取消事由1に対し
原告が甲2発明について指摘する解像度の具体的な数値は一実施例のものに止ま

る。
また,原告は,甲2発明の出願当時に実用化されていたデジタルテレビの解像度

に基づいて,甲2発明では,デジタルカメラに接続される外部表示装置が,
「表示解
像度のうち少なくとも水平解像度は,デジタル動画信号の本来画像の全体画像の水
平解像度よりも小さい」場合にのみ,当該外部表示装置の表示解像度に適合した画

像データを生成することができると主張する。
しかし,デジタルカメラ及びデジタルテレビに代表される外部表示装置の解像度

が日進月歩で向上していることは,当業者のみならず一般人にとってさえ周知の事
項であって,甲2発明の出願当時に実用化されていた外部表示装置の解像度がデジ
タルカメラのそれより小さかったとしても,より高い解像度の外部表示装置が登場

するであろうことは自明であって,甲2発明もそのことを当然の前提としており,
甲2発明に接する当業者も,実施例に記載された具体的な数値に捕らわれることな

く,デジタルカメラの画素数を活かすに十分な解像度の外部表示装置が出現するで
あろうことを前提として甲2発明を理解する。加えて,甲2の段落【0003】,
【0

012】【0039】【0064】の記載は,デジタルカメラで得られたデジタル
, ,
信号(ライブビュー表示の場合はデジタル動画信号)の解像度を,外部表示装置の
解像度に適合した画素数の信号とすることによって,本来解像度の画像を外部表示

装置に表示させることに他ならない。原告はこれらの記載を無視し,専ら一実施




の記載と甲2発明の出願当時に実用化されていたデジタルテレビの解像度を根拠に

審決による甲2発明の認定が誤りであると主張するが,外部表示装置として高解像
度のものが出現するであろうことは当業者にとって明らかであるから,審決が,
「外

部表示装置の画面解像度が『デジタル動画信号の本来画像の全体画像』の解像度よ
りも大きければ,画像の全体が外部表示装置に表示可能であるのは自明なことに過
ぎないから,必要に応じて全体画像をそのまま表示すればよいだけのことであって,

格別のことではない。 50頁38行〜51頁2行)

( と認定したことに誤りはない。



2 取消事由2に対し
取消事由2は,審決における甲2発明の認定が誤っていることを前提としている

ところ,審決の認定に誤りがないことは前記のとおりであるから,取消事由2はそ
の前提において失当である。



3 取消事由3に対し
取消事由3についての原告の主張は,本件発明の解決課題が甲1及び甲2に記載

も示唆もされていないから,これら引用発明の解決課題の誤った認定に基づいて本
件発明が容易になし得たとした審決が誤っている,というもののようである。
しかし,審決は,本件発明及び引用発明の解決課題について認定しておらず,解

決課題が同一であるなどともしていないのであるから,原告の主張はそもそも失当
である。

また,甲2には,デジタルカメラの付属ディスプレイに画像を表示するだけでな
く,デジタルカメラに接続された外部表示装置に表示する場合において,従来のデ

ジタルカメラでは近年の高精細なデジタルテレビの表示解像度を活かした画像表示
を行うことができないという問題に着目し,デジタルカメラがデジタルテレビにお

いて最適な画像表示を行うことを可能にする」という課題が明記されている(段落

【0002】〜【0010】。そして,甲2発明はこの課題を解決するために,
) 「外




部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを生成」する(段落【00

12】という構成を採用したのであって,
) まさに本件発明と同じ解決課題に着目し,
同じ構成によって解決したのである。

この点に関し原告は,本件発明の課題が「あくまでも『デジタル動画信号の本来
画像』を起点とし,外部ディスプレイ手段として『それを表示するのに十分な大き
さの画面解像度』を有するものを求めている」のに対し,甲2発明の課題は「デジ

タルテレビの表示解像度」を起点として,デジタルカメラをそれに適合させること
を基本的発想としている」から,
「課題設定の方向性が根本的に異なっている」と主

張する。しかし,甲2発明はデジタルカメラの撮像手段の有する解像度を活用した
表示を外部表示装置に行うことを目的とするものであるから,本件発明と方向性は

同じである。すなわち,甲2発明においても,撮像手段の本来解像度の全体画像デ
ータを「表示するのに十分な大きさの画面解像度」の外部ディスプレイ手段が接続
された場合,撮像手段の本来画像の全体画像の外部表示信号が出力されるものであ

る点において,本件発明と異なるところはない。
原告の主張は,甲2発明の誤解又は曲解に基づくものか,あるいは独自の見解に

よるものであり理由がない。


第5 当裁判所の判断

1 本件発明について
訂正明細書(甲14)によれば,本件発明の意義は以下のようなものと認められる。

本件発明は,携帯電話機などの携帯情報通信装置,携帯情報通信装置とともに用
いる接続ユニット,及び携帯情報通信装置とともに用いる外部出入力ユニットに関

するものである。携帯電話機などの携帯情報通信装置の携帯性を損なうことなく,
しかも,パソコンを併用することなく,長文の電子メールやパソコン向けウェブペ
ージ,テレビ番組映像などを大きな画面で表示するために付属ディスプレイよりも

大きい外部ディスプレイ装置を接続して画像を表示する技術としては,従来,携帯




情報通信装置と外部ディスプレイ装置を接続ユニットを介して接続するタイプ,外

部ディスプレイ装置において携帯情報通信装置から受信した表示データに処理を施
すタイプ,テレビモニタ等の汎用的なディスプレイを直接接続するタイプのものが

あったが(段落【0002】〜【0014】,前二者においては,ほぼ同等の機能

を有する表示データ処理手段を二重に保有することになる等の「不効率な二重投資」
と「非効率な資源利用」の問題があり,後者においても,付属ディスプレイの画面

解像度よりも大きい解像度の画像を表示することが可能なものにあっては,同様の
問題があった(段落【0019】〜【0029】。そこで,携帯情報通信装置に大


画面外部ディスプレイ装置を接続することにより,該大画面外部ディスプレイ手段
において,付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示するこ

とを,付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表示データ生
成手段(付属表示データ手段)とは別個に使用することなく,大画面ディスプレイ
手段を含む周辺装置,大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインタ

ーフェース手段の追加と,付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現
する携帯情報通信装置を提供することを目的とし,それを解決するための手段とし

て,内蔵ディスプレイであるディスプレイAへのデジタル表示信号を生成するデー
タ処理手段が生成するデジタル動画信号の本来解像度がこのディスプレイパネルA
の画面解像度より大きい場合でも,デジタル動画信号の本来画像の全体画像のデジ

タル表示信号を生成し,外部ディスプレイ手段を含む,又は外部ディスプレイ手段
が接続される周辺装置を接続するインターフェース手段A1がこの周辺装置に対し

てこのデータ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づくデジタル外部表示信
号を送信することを採用したものである。



2 取消事由1(甲2発明の認定の誤り)について
(1) 甲2には以下の事項が記載されているものと認められる。

甲2に記載された発明は,デジタルカメラにおいて画像の表示処理を行う際の画




像表示技術に関するものである(段落【0001】。近年の高精細な画像表示が可


能なデジタル放送対応テレビ受像器(デジタルテレビ)の普及に伴い,デジタルテ
レビを接続するとともに,デジタルテレビに対してデジタルカメラの画素数を活か

した画像表示を行うことの可能なデジタルカメラが出現しつつあるところ,従来の
デジタルテレビ対応カメラでは,デジタルテレビに対して,デジタルカメラの動作
状態等に応じた最適な画像表示を行うことができないという問題があった(段落【0

003】〜【0009】。そこで,デジタルカメラがデジタルテレビにおいて最適

な画像表示を行うことを可能にするために(段落【0010】,デジタルカメラの


解像度変換部において,表示装置が接続されていない場合には,例えば,EVF4
又はLCD5の表示画素数に適合した横320×縦240の画素数を有する画像デ

ータを生成し(段落【0039】,表示装置が接続されている場合には,全体制御

部が表示装置の表示解像度に応じて撮像素子であるCCDからの読出しモードと解
像度変換処理における変換処理を決定し,表示装置の表示解像度に適合した横14

40×縦1080等の画素数を有する画像を表示装置に表示して,EVF4又はL
CD5の表示画素数より大きい画素数の表示装置が接続された場合に,接続された

表示装置の画素数に適合した画像が表示されるようにすることなどが記載されてい
る(段落【0043】〜【0057】【0064】。
, )
上記の記載によれば,甲2には,審決が甲2発明として認定したように,デジタ

ルカメラにおいて,
「解像度変換部」が「前記撮像手段の生成する画像データの本来
解像度が前記表示手段の画面解像度より大きい場合に,前記接続手段に対して前記

外部表示装置が接続された場合,前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示
用画像データを生成する」旨が記載されているということができる。よって,審決

の甲2発明の認定に誤りはない。
(2) 原告は,審決の甲2発明の認定は,解像度変換部が有する機能を,甲2に
記載されている事項及び記載されているに等しい事項の範囲を超えて広く認定して

おり,甲2発明における「解像度変換部」が表示解像度適合機能を発揮するのは,




あくまでも,「前記接続手段に対して『表示解像度のうち少なくとも水平解像度は,

デジタル動画信号の本来画像の全体画像の水平解像度よりも小さい外部表示装置』
が接続された場合」に限定されるなどと主張する。

しかし,甲2の【請求項2】,段落【0012】には,「撮像素子によって被写体
を撮影するデジタルカメラ」について,
「前記撮像素子から得られる画像を表示する
表示手段と,前記撮像素子から得られる画像のサムネイル画像を生成するサムネイ

ル画像生成手段と,前記サムネイル画像とともに,前記撮像素子から得られる画像
を記録する記録手段と,前記表示手段よりも高解像度の外部表示装置を接続可能な

接続手段と,を備え,前記接続手段に対して前記外部表示装置が接続された場合,
前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを生成し,前記サム

ネイル画像を前記表示手段の表示解像度に適合させて生成する」旨の記載があると
ころ,その文言上,
「前記外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データ
を生成」することから,外部表示装置の表示解像度が「当該デジタルカメラの撮像

素子から得られる本来画像の全体画像」の解像度よりも大きい場合において,
「当該
デジタルカメラの撮像素子から得られる本来画像の全体画像のデジタル表示信号を

生成する」ことが除外されているとは解されず,むしろこのような場合も含んでい
ると認められる。
また,甲2においては,
「高精細な画像表示が可能なデジタルテレビを接続してデ

ジタルカメラの画素数を活かした最適な画像表示を行うため」の技術が記載されて
いるのであって,デジタルテレビの解像度がデジタルカメラの撮影画素数を上回る

ことがないことを前提とするものではなく,デジタルテレビにおいて高精細な画像
表示が可能であることを踏まえて課題設定がなされている(段落【0003】【0


004】【0010】。そうすると,実施例に外部表示装置の表示解像度が「当該
, )
デジタルカメラの撮像素子から得られる本来画像の全体画像」の解像度よりも大き
い場合において,当該デジタルカメラの撮像素子から得られる本来画像の全体画像


のデジタル表示信号を生成する」例の記載がないとしても(水平解像度及び垂直解




像度のいずれにおいてもデジタルテレビの解像度がデジタルカメラの撮影画素数を

上回る実施例の記載がないとしても)「表示解像度のうち少なくとも水平解像度」

が「デジタル動画信号の本来画像」の「水平解像度」よりも小さい外部表示装置」

が接続された場合に限定して開示しているとみることはできない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。



3 取消事由2(相違点(i)についての判断の誤り)について
審決の甲2発明の認定に誤りがないことは前記のとおりである。したがって,取

消事由2は理由がない。



4 取消事由3(本件発明と甲1発明及び甲2発明の解決課題の誤った認定に基
づく容易相当性の判断の誤り)について
(1) 甲1によれば,甲1発明は,表示部に表示する画像をTV等の外部の表示

装置に表示できるようにした携帯電話機及び携帯電話機システムに関するものであ
り,従来の携帯電話機は画像データを携帯電話機の表示部で表示した画像によって

しか見ることができないところ,携帯電話機の表示部は小さいため,画像を多数の
人で見るときには全員が同時に見ることができない,画像に迫力が感じられないと
いった欠点があるため,カメラ部や無線部等から取得した画像などを多数の人が同

時に見ることができ,表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられる携帯電話機及
び携帯電話機システムを提供することを目的とし,それを解決する手段として,審

決が認定した甲1発明の構成を備えたものであると認められる。
また,甲2発明は,前記のとおり,デジタルカメラをデジタルテレビに接続する

際の画像表示技術に関するものである。デジタルカメラにも表示部があるにもかか
わらずこれをデジタルテレビに接続してその表示部にて視聴を行うのは,デジタル
カメラの表示部は小さいため,デジタルカメラの画素数を活かした高精細の画像表

示ができないためであるほか,デジタルテレビの大きな画面に表示した方がより迫




力のある映像となるからであることは,甲2に明示的な記載はないものの,技術常

識として認めることができる。
そうすると,甲1発明と甲2発明は,カメラ部からの画像データを内蔵された表

示部のみならず外部の表示装置においても表示するものである点で共通しており,
いずれも内蔵された表示部が小さいことに起因する課題を解消しようとするものと
うことができるから,甲1発明にカメラ部からの画像データを外部の表示装置にお

いて表示する構成として甲2発明の構成を適用することは容易想到であるというべ
きである。

(2) 原告は,甲1には,表示解像度についての問題意識は一切見られず,本件
発明の解決課題に対する記載や示唆はないと主張するが,甲1において携帯電話機

を画面の大きいテレビ等の外部表示装置に接続するのは,前記のとおり,迫力ある
映像を求めてのことであるところ,表示解像度が高くより高精細な方が画面の迫力
が増すことは明らかである以上,甲1に表示解像度に関する発明である甲2発明を

適用する動機や示唆は存在するというべきである。
また,原告は,甲2発明は,
「テジタルテレビの表示解像度」を起点としてデジタ

ルカメラをそれに適合させることを基本発想としているのに対し,本件発明の解決
課題はあくまでも「デジタル動画信号の本来画像」を起点とし,外部ディスプレイ
手段として「それを表示するのに十分な大きさの画面解像度」を有するものを求め

ており,両者は課題設定の方向性が根本的に異なっているものであり,甲2におい
て,本件発明の解決課題は記載も示唆もされていないと主張する

しかし,前記のとおり,主引用例たる甲1発明にカメラ部からの画像データを外
部の表示装置において表示する構成として甲2発明の構成を適用することは容易想

到である以上,甲2発明に本件発明の解決課題が示唆されているか否は上記結論を
左右するものではない。かえって,甲2には,デジタルカメラの付属ディスプレイ
に画像を表示するだけでなく,デジタルカメラに接続された外部表示装置に表示す

る場合において,従来のデジタルカメラでは近年の高精細なデジタルテレビの表示




解像度を活かした画像表示を行うことができないという問題に着目し,デジタルカ


メラがデジタルテレビにおいて最適な画像表示を行うことを可能にする」という課
題が明記されているところ(段落【0002】〜【0010】,甲2発明はこの課


題を解決するために,外部表示装置の表示解像度に適合させて表示用画像データを

生成」する(段落【0012】)という構成を採用したのであって,まさに本件発明
と同じ解決課題に着目し,同じ構成によって解決したと認めることができる。甲2

発明はデジタルカメラの撮像手段の有する解像度を活用した表示を外部表示装置に
行うとするものであり,本件発明と方向性は同じである。すなわち,甲2発明にお

いても,撮像手段の本来解像度の全体画像データを「表示するのに十分な大きさの
画面解像度」の外部ディスプレイ手段が接続された場合,撮像手段の本来画像の全

体画像の外部表示信号が出力されるものである点において,本件発明と異なるとこ
ろはない。よって,原告の上記主張は採用することができない。



第6 結論
以上のとおりであって,原告主張の取消事由はすべて理由がない。

よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。


知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官
塩 月 秀 平




裁判官

真 辺 朋 子




裁判官

田 邉 実