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事件 平成 23年 (行ケ) 10180号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/03/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年3月22日判決言渡

平成23年(行ケ)第10180号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年1月31日

判 決



原 告 株 式 会 社 巴 川 製 紙 所



訴訟代理人弁護士 竹 田 稔

同 木 村 耕 太 郎

同 片 山 英 二

同 服 部 誠

訴訟代理人弁理士 加 藤 志 麻 子

同 田 村 恭 子

同 末 成 幹 生



被 告 特 許 庁 長 官



指 定 代 理 人 村 田 尚 英

同 橋 本 直 明

同 田 部 元 史

同 芦 葉 松 美

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求




特許庁が訂正2010−390118号事件について平成23年4月26日にし

た審決を取り消す。

第2 争いのない事実

1 特許庁における審判手続の経緯

原告は,発明の名称を「防眩材料及びそれを用いた偏光フィルム」とする特許第

4017273号(出願日:平成10年12月25日,登録日:平成19年9月2

8日)に係る特許(以下「本件特許」という。)の特許権者である。

原告は,平成22年11月26日,特許庁に対し,本件特許を訂正することを求

めて訂正審判請求(以下「本件審判請求」という。)をした。特許庁は,訂正20

10−390118号事件として審理し,平成23年4月26日,「本件審判の請

求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決」という。)をし,審決の謄本は,

平成23年5月11日,原告に送達された。

2 本件審判請求の内容

本件審判請求は,本件特許の明細書(以下「特許明細書」という。甲30)を本

件審判請求書(甲31の1)に添付された訂正明細書(以下「本件訂正明細書」と

いう。甲31の2)のとおりに訂正することを求めるものであって,その訂正事項

は以下のとおりである(判決注 訂正箇所に下線を付した。)。

(1) 訂正事項1

「【請求項1】

透明基体の片面もしくは両面に,直接或いは他の層を介して,少なくとも樹脂マ

トリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層を有し,該フィラーの粒子径D

の粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<

D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲

のものが5重量%以下,かつ,該樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.

10以下であることを特徴とする防眩材料。」

を,




「【請求項1】

透明基体の片面もしくは両面に,直接或いは他の層を介して,少なくとも樹脂マ

トリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層を有し,該フィラーの粒子径D

の粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<

D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲

のものが5重量%以下,かつ,該樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.

05以下であることを特徴とする防眩材料。」(以下「本件訂正発明1」という。)

と訂正する。

(2) 訂正事項2

「【請求項2】

透明基体の片面に,直接或いは他の層を介して,少なくとも樹脂マトリックス中

にフィラーが分散されてなる粗面化層が設けられ,該フィラーの粒子径Dの粒度分

布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<D≦10.

0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲のものが5

重量%以下であり,該透明基体の粗面化層とは反対面に,偏光基体を介して保護材

を積層してなる構成を有し,前記樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.

10以下であることを特徴とする偏光フィルム。」

を,

「【請求項2】

透明基体の片面に,直接或いは他の層を介して,少なくとも樹脂マトリックス中

にフィラーが分散されてなる粗面化層が設けられ,該フィラーの粒子径Dの粒度分

布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<D≦10.

0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲のものが5

重量%以下であり,該透明基体の粗面化層とは反対面に,偏光基体を介して保護材

を積層してなる構成を有し,前記樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.

05以下であることを特徴とする偏光フィルム。」(以下「本件訂正発明2」とい




う。)

と訂正する。

(3) 訂正事項3

特許明細書の段落【0006】

「本発明の防眩材料は,透明基体の片面もしくは両面に,直接或は他の層を介し

て,少なくとも樹脂マトリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層を有し,

該フィラーの粒子径Dの粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60

重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D

≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下,該樹脂マトリックスとフィラーの屈

折率の差が0.10以下であることを特徴とする。

また,本発明の偏光フィルムは,透明基体の片面に,直接或は他の層を介して,

少なくとも樹脂マトリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層が設けられ,

該フィラーの粒子径Dの粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60

重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D

≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下であり,該透明基体の粗面化層とは反

対面に,偏光基体を介して保護材を積層してなる構成を有し,前記樹脂マトリック

スとフィラーの屈折率の差が0.10以下であることを特徴とする。」



特許明細書の段落【0006】

「本発明の防眩材料は,透明基体の片面もしくは両面に,直接或は他の層を介し

て,少なくとも樹脂マトリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層を有し,

該フィラーの粒子径Dの粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60

重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D

≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下,該樹脂マトリックスとフィラーの屈

折率の差が0.05以下であることを特徴とする。

また,本発明の偏光フィルムは,透明基体の片面に,直接或は他の層を介して,




少なくとも樹脂マトリックス中にフィラーが分散されてなる粗面化層が設けられ,

該フィラーの粒子径Dの粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60

重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D

≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下であり,該透明基体の粗面化層とは反

対面に,偏光基体を介して保護材を積層してなる構成を有し,前記樹脂マトリック

スとフィラーの屈折率の差が0.05以下であることを特徴とする。」

と訂正する。

3 審決の理由

(1) 別紙審決書写しのとおりである。審決は,本件訂正発明1及び2は,いずれ

も本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平10−264284号公報(甲

1)に記載された発明(以下「甲1発明」という。),特開平6−18706号公

報(甲3)及び特開平10−264322号公報(甲5)に記載された技術的事項

に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立し

て特許を受けることができず,特許法126条5項の規定に適合しないと判断した。

(2) 上記判断に際し,審決が認定した甲1発明の内容,本件訂正発明1と甲1発

明との一致点,相違点は,以下のとおりである。

ア 甲1発明の内容

「透明基体の片面又は両面に粗面化層を設けた防眩材料であって,HAZE値(J

IS K7105)が3〜30の範囲にあり,前記粗面化層が,少なくともエポキ

シ系化合物および光カチオン重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂と架橋アクリル樹

脂ビーズとから形成されてなり,前記架橋アクリル樹脂ビーズが,粒子径0.5〜

6.0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.0μmより大きい粒子が2

0重量%未満の粒度分布を有する防眩材料,ならびに,前記粗面化層を前記透明基

体の片面に設けた第1の保護材を,その非粗面化面が偏光基体に接するように積層

し,前記偏光基体の他面に第2の保護材を積層してなる偏光フィルム。」

イ 一致点




「透明基体の片面もしくは両面に,直接,少なくとも樹脂マトリックス中にフィ

ラーが分散されてなる粗面化層を有し,該フィラーの粒子径Dの粒度分布が,0.

5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,である防眩材料。」という点。

ウ 相違点a

フィラーの粒子径Dの粒度分布について,0.5≦D≦6.0μmの範囲のもの

が60重量%以上であるという要件に加えて,

本件訂正発明1は,「6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,

10<D≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下」としているのに対し,甲1

発明は「6.0μmより大きい粒子が20重量%未満」としている点。

エ 相違点b

樹脂マトリックスとフィラーの屈折率について,

本件訂正発明1は,「樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.05以下」

としているのに対し,甲1発明は,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差に関

する規定がない点。

第3 当事者の主張

1 取消事由に係る原告の主張

審決には,以下のとおり,(1)相違点aに関する容易想到性判断の誤り(取消事由

1),(2)相違点bに関する容易想到性判断の誤り(取消事由2),(3)相違点a及

びbに係る構成により生じる相乗効果に関する判断の誤り(取消事由3),(4)本件

訂正発明2についての容易想到性判断の誤り(取消事由4)がある。

(1) 相違点aに関する容易想到性判断の誤り(取消事由1)

審決は,相違点aに係る構成の容易想到性について,@D>6.0の範囲のもの

が20重量%未満である範囲においては,相違点aは実質的な相違点ではない(審

決書21頁1〜3行),A本件訂正明細書には,粒度分布を規定する際の境界値と

して,10.0μm,あるいは,15.0μmを選択したことによる有利な作用効

果や技術的意義について何ら記載されていないから,甲1発明の「粒子径6.0μ




mより大きい粒子が20重量%未満」の粒度分布の要件に代えて,「6.0<D≦

10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲のも

のが5重量%以下」と規定することに格別の創意を見出すことはできない(審決書

21頁8〜18行),B本件訂正発明1において3つに区分されたそれぞれの粒子

径範囲内のフィラーを必須とすべき合理的な根拠も見いだせず,また,本件訂正発

明1と甲1発明とでは,解決すべき課題に何ら差異はないから,甲1発明において,

解決すべき課題やその他の要求される性能を勘案して,相違点aの事項を得ること

は,当業者が容易に想到し得ると判断した(審決書21頁19行〜30行)。

しかし,審決の上記判断は,以下のとおり,誤りがある。

ア 本件訂正発明1における,フィラーの粒子径の粒度分布の意義について

本件訂正発明1におけるフィラーの粒子径の粒度分布の規定は,屈折率差の要件

との組み合わせで,本件訂正発明1の解決すべき課題であるギラツキ及びモアレを

解消するための発明特定事項として一体的に理解されるべきである。すなわち,本

件訂正発明1は,フィラーの粒子径の粒度分布(要件a)と屈折率差の要件(要件

b)を組み合わせることによって,課題の解決を図るものであるから,要件aから

見れば,要件bとしてどのような値を選択するかによって,好適な値は変化すると

いう関係にある。屈折率差によっては,6.0<D≦10.0μm,および,10

<D≦15.0μmの範囲の粒子を含ませるほうが好適である場合もあるし,逆に,

屈折率差によっては,これらの粒子を必ずしも含ませなくても課題の解決を図れる

場合がある。

審決は,本件訂正発明1におけるフィラーの粒子径Dの粒度分布に係る構成を分

断して,その一部についてのみ着目して,D>6.0の範囲のものが20重量%未

満である範囲においては,相違点aに係る事項は相違点でないと判断している点で,

審決の上記@,Aの判断に誤りがある。また,審決は,「(a)本件訂正発明1におい

て3つに区分されたそれぞれの粒子径範囲内のフィラーを必須とすべき合理的な根

拠が見いだせない,(b)本件訂正発明1と甲1発明とでは,解決すべき課題に差異が




ない,という2つの前提に立つと,甲1発明において,解決すべき課題やその他の

要求される性能を勘案して,相違点aの事項を得ることは,当業者が容易に想到

得る」と判断したが,上記(a),(b)は誤りであるから,審決の上記Bの判断も誤り

である。

イ 本件訂正発明1の解決課題,作用効果について

審決は,「フィラーの粒径Dの粒度分布が,0.5≦D≦6.0μmの範囲のも

のが60重量%以上という必須要件を課しつつ,それ以外の残部のフィラーの粒子

径を如何に配合するかは,解決すべき課題やその他の要求される性能を勘案しつつ,

当業者が実験的に適宜選定しうる」(審決書21頁11〜14行)と判断する。

しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。すなわち,本件訂正発明1の

解決すべき課題は,下記のとおり,ギラツキに加えてモアレを防止することである。

これに対し,甲1発明においては,上記課題は,何ら認識されていないから,甲

1発明から,本件訂正発明1のフィラーの粒子径の粒度分布の構成に到達すること

はない。甲1発明においては,ギラツキを防止するために,「粒子径0.5〜6.

0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.0μmより大きい粒子が20重

量%未満」の粒度分布を選択しており,当該選択によって,ギラツキ防止の課題は

解決されているのであるから,甲1発明を起点として,本件訂正発明1に至る動機

付けはない。

(ア) 本件訂正発明1の解決課題について

本件訂正発明1の解決課題は,「ギラツキ」のみならず「モアレ」の解消である。

本件訂正明細書の段落【0002】ないし段落【0004】には,ディスプレイ

表面において「外光の映り込みを防止」するための基礎的技術に関する事項,「ギ

ラツキ」の問題点とその解決策,「UV硬化型樹脂とシリカ顔料」を用いた場合の

問題点である凝集(オレンジピール)の発生に基づくギラツキの顕著化の問題点,

いわゆるモアレの問題点が記載されている。そして「UV樹脂とシリカからなる粗

面化層の表面ではシリカの凸の部分と樹脂の凹の部分で光の干渉が起きやすく,干




渉縞の発生という問題を有するものであった。」との記載内容は,段落【0003】

で説明されている従来技術のように,ディスプレイ表面において凹凸が面全体で均

一に形成されている場合には,その凸部と凹部とによる模様(ピッチ)と,画素に

よる模様(ピッチ)が重なり合い,干渉縞(モアレ)が生じるとの問題点を指して

いる。なお,「干渉縞(モアレ)」は,光学的な意味での「光の干渉」による「干

渉縞」とは異なる。

また,段落【0025】には,「ギラツキ(モアレ)」についての説明がされて

いるが,内部散乱を大きくするとギラツキの防止に役立つという当業者の技術常識

に照らして理解すれば,ここで説明されているのは,「モアレ」であって,「ギラ

ツキ」ではない。

さらに,段落【0052】には,「前記防眩材料10を図3に示されるガラス基

板33の上に粗面化層が上になるように重ね,防眩材料をゆっくり時計方向に36

0回転させる。ギラツキ(モアレ)がある場合,画面上に光のスジが発生するので,

このスジの有無や程度を目視により評価した。ギラツキ(モアレ)が全くない場合

を○,ギラツキがあるものを×とした。」と記載されており,評価方法の条件とし

て防眩材料を回転させていること,及び,光のスジの有無や程度を観察しているこ

とに照らすならば,解決課題とされている「ディスプレイの視認性の欠陥」の対象

は,「ギラツキ」ではなく「モアレ」である。

甲12,甲17及び甲5の記載によれば,フィラーを含有させた塗工層を設ける

粗面化方法を採用した場合に,画素ピッチと防眩フィルムの凹凸ピッチとの双方の

規則的配列が要因となって,モアレが発生することは,本件出願時における当業者

技術常識であったといえる。

(イ) 本件訂正発明1の作用効果について

本件訂正明細書の段落【0028】には,フィラーの粒度分布に関して,「フィ

ラーの粒子径D(JIS B9921)としては15.0μm以下が望ましく,粒度

分布としては,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<




D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,更に,10<D≦15.0μm

の範囲のものが5重量%以下である。特に0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが

80重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが10重量%未満,10

<D≦15.0μmの範囲のものは全く含まないことが好ましい。0.5≦D≦6.

0μmの範囲にあるフィラーの重量%が60%未満の場合は,0.5μm未満の粒

子が多くなるとディスプレイの防眩効果が悪くなり,逆に15μm以上のものが多

くなるとギラツキを生じるおそれがある。また,6.0<D≦10.0μmの範囲

にあるフィラーが30重量%以上もしくは,10<D≦15.0μmの範囲にある

フィラーが30重量%以上もしくは10<D≦15.0μmの範囲にあるフィラー

が5重量%以上の場合は,ディスプレイの画像にギラツキが発生し易くなる。」と

記載されている。

本件訂正明細書の上記のフィラーの粒度分布の記載部分には,「ギラツキ」を解

決するための手段のみならず,モアレ発生の防止の手段についての説明がされてい

る。すなわち,本件訂正発明1においては,凹凸ピッチの規則性を壊す観点から,

フィラーの粒度分布について,「0.5≦D≦6.0μm」,「6.0<D≦10.

0μm」,「10<D≦15.0μm」の3段階に設定し,粒子径が「0.5≦D

≦6.0μm」の範囲にあるものばかりでなく,粒子径が「6.0<D≦10.0

μm」,「10<D≦15.0μm」を含めた記載がされている。モアレは,凹凸

を緻密化し,かつ凹凸が面全体で均一になるようにしたことに起因して生じる問題

であるから,本件訂正発明1は,モアレの発生を防止すべく,凹凸が均一にならな

いことを作用効果としていると理解できる。

なお,本件訂正明細書には,粒子径が「6.0<D≦10.0μm」,「10<

D≦15.0μm」の粒子に関しては,それぞれ含有量を「30重量%未満」,「5

重量%以下」としており,これらを含まない場合であってもよいと記載されている。

これは,粒子径「0.5≦D≦6.0μm」のもののみを選択した場合であっても,

ある程度粒子径のばらつきがあれば,モアレの原因の1つである,凹凸ピッチの規




則性を壊すことが可能であるからである。

本件訂正発明1は,ディスプレイの視認性の問題としてギラツキに加えてモアレ

を解消すると共に,高コントラストで,耐薬品性,耐摩耗性を有する防眩フィルム

を得ることができるという作用効果を奏する。

ウ 小括

以上のとおり,相違点aに係る構成が容易想到であるとした審決の判断には誤り

がある。

(2) 相違点bに関する容易想到性判断の誤り(取消事由2)

審決は,相違点bに係る本件訂正発明1の構成について,@本件訂正発明1の解

決すべき課題と甲1発明の解決すべき課題とには差異がない,A防眩材料において,

透明性の配慮を行うことは当業者が当然に行う事項であるから,甲1発明と,甲3

及び甲5に記載された事項を組み合わせることができる,B屈折率差をどのような

値とするかは,解決すべき課題やその他の要求される性能を勘案しつつ,当業者が,

実験的に,また,甲1等の公知文献に記載された実施例について,当業者の認識で

きる範囲での追試を行って適宜選定し得ると判断した(審決書21頁32行〜23

頁30行)。

しかし,審決の上記判断は,以下のとおり,誤りである。

ア 甲3記載の技術を適用することについて

甲3に記載されている技術的事項は,無機粒子ではないビーズを用いる場合に,

電離放射線硬化型樹脂の屈折率とできるだけ近い屈折率である,「屈折率1.40

〜1.60」を選択することを超えるものではない。また,甲3には,モアレ解消

のために,特定の粒度分布を選択した上で,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率

差を0.05以下にすることについては何ら記載されておらず,ギラツキ防止の課

題も何ら認識されていない。以上に照らすならば,甲3に記載されている開示内容

は,防眩フィルムにおける「防眩性」と「透明性」との両立を図ることができる技

術についてであり,防眩フィルムを設けたディスプレイにおける,ギラツキ防止や,




モアレ解消の観点から,フィラーの粒度分布との関係で,樹脂マトリックスとフィ

ラーの屈折率差としてどのような値を選択するべきかに関する技術についての示唆

はない。

イ 甲5記載の技術を適用することについて

甲5記載の技術は,平均二次粒子径が1.5μm〜2μmであると共に平均二次

粒子径の標準偏差が0.2〜0.7の微粒子及び電離放射線硬化型樹脂からなる硬

化被膜層を有することを特徴とするハードコートフィルムに関する技術である(請

求項1)。甲5には,「上記微粒子としては,例えば,シリカ,アルミナ,ジルコ

ニア等の無機微粒子の他,電離放射線硬化樹脂の透明性を損なわないように,電離

放射線硬化型樹脂の屈折率に近い,例えば,アクリル樹脂,ポリスチレン樹脂,ポ

リ塩化ビニル樹脂,ポリカーボネート樹脂,PMMA樹脂等のポリマービーズも使

用されるが,防眩性や解像性等の点からシリカ粒子が好ましい。」(段落【000

6】)との記載はあるものの,どの程度屈折率の近いものを用いるのかについての

記載はない。甲5には,従来技術の課題としてギラツキの問題があったと記載され

ているが(段落【0003】),甲5において,ギラツキを解決する手段は,上記

の極めて微細な粒子を用いることであり,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差

を調節することにより,ギラツキ防止を図ることについては,記載も示唆もされて

いない。さらに,甲5には,モアレ解消のために,特定の粒度分布を選択した上で,

樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差を0.05以下にすることについては何ら

記載されていない。以上に照らすならば,甲5記載の技術は,防眩フィルムを設け

たディスプレイの視認性に関して,ギラツキ防止や,モアレ解消の観点から,フィ

ラーの粒度分布との関係で,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差としてどのよ

うな値を選択すべきかについての示唆を与えるものではない。

ウ 小括

前記のとおり,本件訂正発明1の解決課題は,ギラツキの防止のみならす,モア

レの解消を含む。これに対し,甲1発明は,ディスプレイの視認性の問題として,




ギラツキの防止のみを目的とするものであり,発明の解決すべき課題において相違

する。また,本件訂正発明1は,樹脂マトリックスとフィラーの特許請求の範囲

載の屈折率の差(以下「屈折率差」という。)を必須の構成とすることにより,上

記課題の解決を実現している。甲1発明においては,モアレの発生の問題を解決す

るべく,「樹脂マトリックスとフィラーとの屈折率の差を0.05以下にする」と

いう構成を採用すべき動機付けがなく,甲1発明においては,相違点bに係る本件

訂正発明1の構成を組み合わせるべき理由がない。

そして,甲3及び甲5には,ギラツキに加えて,モアレを解消するために,フィ

ラーの粒度分布との関係で,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差としてどのよ

うな値を選択するべきか,との点に関しての何らの記載も示唆もないから,甲1に

甲3又は甲5を組み合わせたとしても,相違点bに係る本件訂正発明1の構成を容

易に想到することはない。

甲1発明においては,ギラツキ解消のために,さらに屈折率差の要件を組み合わ

るべき動機付けを生じることがなく,また,甲1発明の前提と,甲3,甲5発明の

前提の違いからすると,甲3,甲5に記載された技術的事項を,甲1発明に転用で

きるとすべき理由はないから,甲1と甲3,甲5を組み合わせることにより,相違

点bが当業者にとって容易になし得るということはない。

(3) 相違点a及びbに係る構成により生じる相乗効果に関する判断の誤り(取消

事由3)

審決は,本件訂正明細書において,相違点a及びbによる相乗的作用効果が検証

されていないと判断して,本件訂正発明1に進歩性がないとした誤りがある。すな

わち,本件訂正明細書によれば,比較例1〜3と実施例1,3との対比から,相違

点a及びbの双方が関与することによって,本件訂正発明1の効果が得られている

ことが記載されているから,審決の判断は,前提において,誤りがある。

(4) 本件訂正発明2についての容易想到性判断の誤り(取消事由4)

審決は,本件訂正発明2についても,甲1発明,甲3及び甲5に記載された技術




的事項に基づいて,当業者が容易になし得ると判断した。

しかし,本件訂正発明2についても,甲1発明,甲3及び甲5に記載された技術

的事項に基づいて,当業者が容易になし得るものではないことは,前記(1)ないし(3)

記載のとおりである。

2 被告の反論

(1) 相違点aに関する容易想到性判断の誤り(取消事由1)に対して

ア 本件訂正発明1における,フィラーの粒子径の粒度分布の意義について

原告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,仮に,原告が主張するよ

うに,本件訂正発明1の内容について,「屈折率差によっては6.0<D≦10μ

m,および,10<D≦15μmの範囲の粒子を含ませるほうが好適である場合も

あるし,逆に,屈折率によっては,これらの粒子を必ずしも含ませなくても課題の

解決を図れる場合があるということであるから,6.0<D≦10μmの範囲,お

よび,10<D≦15μmの範囲のフィラーに関しては,任意選択的な規定と解釈

すべきである」ことを前提とすると,特許発明技術的範囲を特定することができ

ないから,原告の主張は誤りである。また,本件訂正明細書には,粒度分布と屈折

率差をどのように相関させるかについての具体的な指針についての記載はなく,ど

のような屈折率差の場合に6.0<D≦10μm,および,10<D≦15μmの

範囲の粒子を含ませることが好適で,どのような屈折率差の場合にこれらの粒子を

含ませなくても良いかについての記載はない。したがって,原告の「粒度分布にか

かる規定は,課題を解決すべき要件として一体的に理解すべきものである」という

主張は,理由がない。

なお,本件訂正明細書の【0028】には,6.0<D≦10μm,および,1

0<D≦15μmの範囲の粒子に関して,それらの粒径範囲の粒子が所定重量%以

上の場合にはギラツキが発生し易くなる旨の記載があるが,同記載は技術的意義

説明したものではない。本件訂正明細書には,粒度分布を規定する際の粒子径Dの

境界値として,10.0μm,あるいは15.0μmを選択したことによる有利な




技術的意義についての記載はないといえる。

したがって,審決が,粒度分布を規定する粒子径Dの境界値の選択に関して技術

的意義がないと判断したことに誤りはない。

また,@所定の条件が与えられていたとしても,材料の変更やその他の様々な要

求性能等々を勘案して最適化を図ることにより,更に優れた製品開発を行うことは,

当業者が通常行っている事項であり,A甲1発明がギラツキの解消という課題を達

成した発明であったとしても,ギラツキの解消を目的としつつ,甲1発明に基づい

て,更に実験的に最適化を図ることができるから,相違点aの構成とすることは当

業者が容易になし得る。

審決の相違点aに関する判断に誤りはない。

イ 本件訂正発明1の解決課題及び作用効果について

(ア) 本件訂正発明1の解決課題について

「本件訂正明細書の記載からして,本件訂正発明1が解決すべき課題は,『凹凸

の間隔が画素ピッチより大きい場合に発生する干渉によるギラツキ』あるいは『干

渉による縞状のギラツキパターン』の解消と解するのが相当である」とした審決の

認定には,以下のとおり誤りはない。

本件訂正明細書の【0002】〜【0005】,【0025】,【0052】に

記載によれば,本件訂正発明1が解決すべき課題は,ギラツキの解消であって,そ

のギラツキは,前記「凹凸の干渉が画素ピッチよりも大きい場合に発生する干渉に

よるギラツキ」,あるいは,「干渉による縞状のギラツキパターン」であり,原告

が主張するような「干渉縞(モアレ)の発生の防止」と解することはできない。

したがって,審決には,原告の主張するような認定の誤りはなく,本件訂正発明

1の解決課題についての認定に誤りはない。

(イ) 本件訂正発明1の作用効果について

本件訂正明細書には,粒子径Dと屈折率差を関連づけ,その相乗的作用効果が得

られる旨の記載はない。本件訂正明細書には,凹凸ピッチの規則性を壊すとともに,




樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差を調整するという性質の異なる2つの要件

を組み合わせることにより,原告の主張に係る「ギラツキに加えてモアレの解消」

を有効に図ることができたこと,粒子径のばらつきが小さい場合には当該屈折率差

をより厳しく調整する等により相乗的作用効果が得られることに関する記載はな

い。

(2) 相違点bに関する容易想到性判断の誤り(取消事由2)に対して

原告は,本件訂正発明1の解決課題が「ギラツキ防止に加えてモアレ解消」であ

ることを前提として,審決の相違点bに係る構成が容易であるとした審決の判断に

誤りがあると主張する。しかし,原告が主張する前提を採用することができないか

ら,原告の主張は,主張自体失当である。

また,甲1には,「本発明における紫外線硬化型樹脂の透明性は高いほど好まし

く,光線透過率(JIS C−6714)として,透明基体の場合と同様,80%

以上,好ましくは90%以上のものが使用される。なお,防眩材料の透明性は,紫

外線硬化型樹脂の屈折率にも影響されるが,本発明における紫外線硬化型樹脂の屈

折率は,透明基体の屈折率以下であることが好ましい。」と記載されていて,マト

リックス樹脂(紫外線硬化型樹脂)の透明性は高いほど好ましいこと,基体を含む

防眩材料全体としても透明性が要求されること,当該透明性は隣接する材料間の屈

折率に影響される,という技術的事項が記載されているといえるし,前記隣接する

材料間での屈折率による透明性への影響は,両材料界面における光の屈折,散乱や

反射によって生じるものであって,前記散乱や反射の発生が透明性低下の要因とな

ることは,当業者の技術常識に属する事項である。そうすると,ギラツキを解消し

つつ透明性を確保するため,甲3や甲5に記載された屈折率差に関する技術的事項

を甲1発明に適用することが充分に動機付けられるというべきであるから,原告の

主張は当を得ない。

さらに,本件訂正明細書の記載からは,粒度分布の要件と屈折率差の要件による

相乗的作用効果を見いだせず,その2つの要件に格別の関連を見いだすことはでき




ないから,原告の主張は失当である。

以上のとおり,取消事由2に係る原告の主張はいずれも当を得ないものであり,

審決の相違点bに関する判断に誤りはない。

(3) 相違点a及びbに係る構成により生じる相乗効果に関する判断の誤り(取消

事由3)に対して

原告は,本件訂正発明1が,粒度分布に係る条件と屈折率差に係る条件との組合

せによって,原告の主張する「ギラツキに加えて,モアレを解消する」との課題解

決を図った発明であると主張する。しかし,本件訂正明細書には,粒度分布に応じ

て,どのように屈折率差を設定すべきかに関する記載がなく,原告の主張は,主張

自体失当である。

したがって,本件訂正明細書には,粒度分布と屈折率差を関連付けた技術による

相乗的作用効果について検証されていないとした審決の判断に誤りはない。

(4) 本件訂正発明2についての容易想到性判断の誤り(取消事由4)に対して

原告が本件訂正発明1について主張する取消事由1ないし3が失当であること

は,上記のとおりであるから,同様に,本件訂正発明2についての原告の主張も失

当である。

第4 当裁判所の判断

当裁判所は,本件訂正発明1,2に係る取消事由は,いずれも理由がないものと

判断する。

事案にかんがみ,原告が,前提として主張する,本件訂正発明1に係る解決課題

について,先に判断する。

1 本件訂正発明1の解決課題について

原告は,本件訂正発明1の主たる解決すべき課題は,ギラツキに加えて,「モア

レ」の解消であることを前提として,審決には,取消事由1ないし3に係る誤りが

あると主張する。しかし,本件訂正明細書の記載から,ギラツキに加えて,「モア

レ」の解消も,本件訂正発明1の解決すべき課題であると認めることはできない。




その理由は,以下のとおりである。

(1) 本件訂正明細書の記載

本件訂正明細書(甲31の2)には,以下の記載がある。
【0001】

【発明の属する技術分野】

本発明は液晶ディスプレイ(LCD),プラズマディスプレイ(PDP),CRT,EL等の画像表示体等

に好適に用いられ,特に,画像のギラツキ防止,コントラストの向上等の優れた防眩性を有し,かつ,耐薬品

性,耐磨耗性に優れた防眩材料及びそれを使用した偏光フィルムに関するものである。

・・・・・・

【0003】

ところで,表面に凹凸を形成したディスプレイ表面は,ディスプレイの高精細化,高画質化に伴い,上記粗

面化層の凹凸ピッチとの関係で画像がぎらつくという問題を有する。このディスプレイの高精細化は,画素の

高集積化によるが,前記凹凸の間隔がこの画素ピッチより大きい場合,干渉によるギラツキを発生させる。ギ

ラツキを防止するためには,上記粗面化層の凹凸の高さや間隔を緻密化し,更に,凹凸が面全体で均一になる

ようにコントロールしなければならない。このような均一な粗面化層を形成するためには,前記の粗面化の方

法のうちフィラーを含有させた塗工層を設ける方法に着目して,該フィラーの粒径及び含有量をコントロール

する方法が提案されている。かかる塗工剤に使用する樹脂としては,透過性,耐熱性,耐磨耗性,耐薬品性等

に優れたものが望ましいが,基材が耐熱性に乏しい高透明なプラスチックフィルムである場合が多いことから,

樹脂としてはUV硬化型樹脂が好んで使用されている。その例として,UV硬化型樹脂とシリカ顔料を構成要

素とする特開平1−105738号や特開平5−162261号などが報告されている。

【0004】

しかしながら,UV硬化型樹脂とシリカ顔料からなる粗面化層は,塗料を基材に塗布してからUVを照射す

るまでの間,低粘度の液状態を呈しているため,粗面化層中のフィラー同士がくっつき合い,凝集(オレンジ

ピール)するという問題を有していた。粗面化層表面の凹凸を緻密化するようフィラーの含有量を増加させた

り,粗面化層の厚さをコントロールするために粗面化層の塗料を溶剤等で希釈する場合,特に顕著で,ディス

プレイの高精細化と相まって,ギラツキも著しいものとなっていた。しかも,UV樹脂とシリカからなる粗面





化層の表面ではシリカの凸の部分と樹脂の凹の部分で光の干渉が起きやすく,干渉縞の発生という問題を有す

るものであった。更に,携帯端末用ディスプレイとしては,軽量,コンパクト,汎用性等の特徴を有するLC

Dが市場を独占するものと考えられているが,これらの携帯端末にはタッチパネルを搭載し,プラスチックの

ペンや指で直接触れ操作するものが主流となってきている。そのため,上述の反射防止性に加えてディスプレ

イ表面への耐磨耗性,耐薬品性に対する要求が高まっている。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】

本発明は,従来技術における上記した実情に鑑みてなされたもので,即ち,本発明の目的はディスプレイへ

の太陽光及び蛍光灯等の外部光の映り込みを防止した,優れた反射防止性や画像コントラストを低下させるこ

となく,ギラツキ等のない鮮明な画像を得ることができる優れた防眩性を有し,かつ,優れた耐磨耗性,耐薬

品性を示す,ディスプレイ,特に,フルカラー液晶ディスプレイに好適な防眩材料を提供することにある。ま

た,本発明の他の目的は,上記防眩材料を使用した偏光フィルムを提供することにある。

・・・・・・

【0025】

本発明においては上記の樹脂マトリックス中にかかる樹脂マトリックスと屈折率の差が小さいフィラーを含

有させることで,表面を粗面化し,優れた防眩効果を持たせることができる。すなわちフィラーの屈折率と樹

脂マトリックの屈折率は,どちらが大きくても良いが近いほど望ましい。そして,フィラーと透明マトリック

スとの屈折率の差は0.10以下であることが必要であり,好ましくは0.05以下が良い。屈折率の差が0.

10を越える場合は,内部散乱が大きくなり,透明性が損なわれ,ギラツキ(モアレ)も非常に目立ってくる。

樹脂マトリックスとフィラーの屈折率は,上記の如くその差が0.10以下であれば特に限定されるものでは

ないが,樹脂マトリックス及びフィラーの屈折率としては,1.40〜1.60のものが透明基体の屈折率と

の関係から,防眩性,反射防止性等の光学特性上好ましく,特にこれら材料の屈折率が1.45〜1.53の

範囲のものが光学特性に優れており好適である。なお,樹脂マトリックス及びフィラーの屈折率はJIS K

−7142により測定される。

・・・・・・

【0028】





また,フィラーの粒径及び粒度分布は,粗面化層表面の凹凸を緻密にコントロールする上で重要である。フ

ィラーの粒子径D(JIS B9921)としては15.0μm以下が望ましく,粒度分布としては,0.5≦

D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが30重量%未満,

更に,10<D≦15.0μmの範囲のものが5重量%以下である。特に0.5≦D≦6.0μmの範囲のも

のが80重量%以上,6.0<D≦10.0μmの範囲のものが10重量%未満,10<D≦15.0μmの

範囲のものは全く含まないことが好ましい。0.5≦D≦6.0μmの範囲にあるフィラーの重量%が60%

未満の場合は,0.5μm未満の粒子が多くなるとディスプレイの防眩効果が悪くなり,逆に15μm以上の

ものが多くなるとギラツキを生じるおそれがある。また,6.0<D≦10.0μmの範囲にあるフィラーが

30重量%以上もしくは,10<D≦15.0μmの範囲にあるフィラーが30重量%以上もしくは10<D

≦15.0μmの範囲にあるフィラーが5重量%以上の場合は,ディスプレイの画像にギラツキが発生し易く

なる。フィラーの配合量については,粗面化層における全固形分比で,0.5〜30重量%の範囲が良い。特

に1〜15重量%の範囲が好ましい。配合量が0.5重量%未満では,防眩効果が不十分となり,30重量%

を超えると,耐磨耗性や耐環境性等の耐久性が悪くなる。

・・・・・・

【0030】

本発明においては,粗面化層中のフィラーの粒径及び粒度分布と,粗面化層の厚さなどの形成条件をコント

ロールすることで,粗面化層のより優れた光学特性が得られる表面形態とすることが可能である。粗面化層の

厚さとしては,0.5〜10μmの範囲が,好ましくは1〜5μmの範囲が良い。粗面化層が0.5μmより

薄い場合は,粗面化層の耐磨耗性が悪くなったり,紫外線硬化型樹脂を使用した場合など,酸素阻害により,

硬化不良を起こす。10μより厚い場合は樹脂の硬化収縮により,カールが発生したり,粗面化層にマイクロ

クラックが発生したり,更に,透明基材との密着性が低下したりする。粗面化層の表面粗さ(JIS B060

1)は,Ra(中心線平均粗さ)0.03≦Ra≦0.30,2≦Sm≦50(凹凸の平均間隔)の範囲にあ

ることが望ましい。Ra及びSmがこの範囲を外れると,防眩性が悪くなったり,画像のギラツキが発生し易

くなる。

・・・・・・

【0051】





実施例1〜3,比較例1〜3で得られた防眩材料10を用い,防眩性,画像ギラツキ,耐磨耗性,耐薬品性,

画像コントラストについて評価した。

なお,画像コントラストに関しては,前記防眩材料10を用い,図2に示される構成の偏光フィルム20を

作製し,該偏光フィルム20を図3に示されるようにガラス基盤33に貼り付け,液晶表示体30を得た。尚,

液晶表示体30の画像サイズは例えば10.4インチとし,解像度は例えば800ドット×600ドットとし

て評価した。

なお,評価方法は下記のとおりである。

<防眩性>

スガ試験機(株)社製の写像性測定器ICM−1DP(JIS K7105)を使用,透過モードで,光学く

し幅2mmで測定した。測定値が小さいほど防眩性が高い。ここでは,50%未満を○,50%以上,70%

未満を△,70以上を×として評価した。

【0052】

<画像ギラツキ>

前記防眩材料10を図3に示されるガラス基板33の上に粗面化層が上になるように重ね,防眩材料をゆっ

くり時計方向に360回転させる。ギラツキ(モアレ)がある場合,画面上に光のスジが発生するので,この

スジの有無や程度を目視により評価した。ギラツキ(モアレ)が全くない場合を○,ギラツキがあるものを×

とした。

<耐磨耗性>

日本スチールウール性のスチールウール#0000を板紙耐摩耗試験機(熊谷理機工業社製)に取り付け,

防眩材料の粗面化層面を荷重200g/cm2 にて50回往復させる。その後,その部分のHAZE値を東洋

精機製HAZEメーターで測定し,HAZE値変化δHを求めた。耐磨耗性は下記計算に基づくδHが1以下

で良好で,5を越えると傷が多くなり,実用上問題となる。HAZE値の測定は反射防止材料単体で行った。

HAZE値変化δH=試験後のHAZE値−試験前のHAZE値

・・・・・・

【0054】

以上の評価結果を表1に示す。





【表1】




【0055】

表1の結果から明らかなように本発明の防眩材料はいずれも良好な特性が得られたのに対し,粗面化層の樹

脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が大きい比較例はいずれも画像のギラツキの問題を有するものであっ

た。

【0056】





【発明の効果】

本発明の防眩材料は透明基体の片面もしくは両面に,直接或は他の層を介して,樹脂マトリックス中にフィ

ラーが分散されてなる粗面化層を設けた構成において,前記樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差が0.

10以下であることから,CRTやLCD等の画像表示体,特に高精細な画像表示体へ適用した場合は,ギラ

ツキがなく,高コントラストで,かつ鮮明な画像を得ることが可能となる。

更に,該粗面化層に紫外線,電子線及び/または熱で硬化する樹脂を,それに特定の粒度分布を有するフィ

ラーを選択することで,優れた耐薬品性,耐磨耗性,防眩性を発現することができる。本発明の防眩材料を使

用した偏光フィルムは,優れた防眩性を有し,ギラツキがなく,良好な画像コントラストを得ることができる

ことから,液晶パネル等の画像表示体として有用である。更に,また,粗面化層上に反射防止膜を設けること

により,ディスプレイの画質を一層向上させることができる。

(2) 判断

ア 本件訂正明細書の段落【0003】,【0004】によれば,本件訂正発明

1における画像のギラツキの原因は,粗面化層の凹凸の間隔が画素ピッチより大き

いことによる干渉,又は,フィラーの凝集(オレンジピール)である旨が記載され

ている。他方,モアレの原因については,本件訂正明細書には何ら記載されていな

い。甲11によれば,モアレとは,「格子,スクリーンや規則的間隔のものなど,

一般に類似した周期的パタンの重なりにより生じる干渉で現れる縞状の模様の総

称」であることに照らすならば,「ギラツキ」と「モアレ」は,異なる原因によっ

て発生する,異なる現象であると認められる。

また,本件訂正明細書における「ギラツキ」及び「モアレ」の語がどのように使

用されているかをみると,「ギラツキ」の語は,「ぎらつく」も含めて,合計15

箇所,単独で使用されている(【0001】,【0003】,【0004】,【0

005】,【0028】,【0030】,【0051】,【0052】,【005

4】の【表1】,【0055】,【0056】)。これに対して,「モアレ」の語

が単独で用いられている例はなく,わずかに「ギラツキ(モアレ)」が3箇所用い

られるにとどまる(【0025】,【0052】)。




そして,本件訂正明細書における防眩材料の評価をみると,段落【0052】の

冒頭に「<画像ギラツキ>」と記載され,評価の対象が,画像ギラツキであること

は明らかであり,これに続いて,「ギラツキ(モアレ)がある場合,画面上に光の

スジが発生するので,このスジの有無や程度を目視により評価した。ギラツキ(モ

アレ)が全くない場合を○,ギラツキがあるものを×とした。」と記載されている

ことに照らすと,「モアレ」をギラツキと別個に評価していると解することはでき

ない。

また,本件訂正明細書には,「類似した周期的パタン」や「類似した周期的パタ

ンの重なりにより生じる干渉で現れる縞状の模様」については,何らの記載もない。

以上によれば,本件訂正明細書の段落【0025】,段落【0052】に記載さ

れている「ギラツキ(モアレ)」は,「モアレ」を指すものと理解することはでき

ず,本件訂正発明1は,解決課題の対象が「ギラツキ」のみならず「モアレ」であ

るとはいえず,また,本件訂正発明1により,「モアレの解消」との課題が解決し

たと理解することもできない。

イ これに対して,原告は,以下のとおり主張する。しかし,原告の主張は,い

ずれも,失当である。

まず,原告は,段落【0004】では,「画素による模様(ピッチ)」との関係

で干渉縞(モアレ)が生じると明記されてはいないものの,モアレが一般に類似し

た周期的パタンの重なりにより生じる干渉で現れる縞状の模様であること,防眩層

と液晶表示装置との関係でモアレ縞が発生することは,当業者の技術常識であり,

また,「スジ」として表現でき,回転によって変化するディスプレイの視認性の欠

陥は「モアレ」しかないから,「干渉縞の発生という問題」とは,「ギラツキ」と

は異なる「モアレ」の問題を意味するなどと主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,本件訂正明細書(甲

31の2)の段落【0004】には,「しかも,UV樹脂とシリカからなる粗面化

層の表面ではシリカの凸の部分と樹脂の凹の部分で光の干渉が起きやすく,干渉縞




の発生という問題を有するものであった。」と記載されており,ここでの「干渉縞」

は,文字どおりシリカの凸の部分と樹脂の凹の部分での光の干渉によって発生する

ものと解され,この記載からは,シリカの凸の部分と樹脂の凹の部分とによって規

則正しい模様が形成されることや,この規則正しい模様(ピッチ)と,画素による

模様(ピッチ)が重なり合うことによってモアレ縞が発生することは読み取ること

はできない。したがって,本件訂正明細書の段落【0004】記載の「シリカの凸

の部分と樹脂の凹の部分」によって生じる干渉縞が,モアレを意味するとの原告の

主張は,採用の限りでない。

また,原告は,フィラー等の微粒子を含有させた粗面化層中のフィラーはローラ

塗工によって規則配列するものであり,液晶表示装置に用いる防眩層の作製におい

て,このような塗工法が用いられることも,甲17及び甲5(【0010】)等に

記載されているとおりであるから,これらの記載からすれば,フィラーを含有させ

た塗工層を設ける粗面化方法を採用した場合に,画素ピッチと防眩フィルムの凹凸

ピッチとの双方の規則的配列が要因となって,モアレが発生することは,本件出願

時における当業者の技術常識であったといえると主張する。

しかし,原告の上記主張も失当である。すなわち,甲17に記載されている塗工

方法は,いずれもローラ塗工法であると認められ,粗面化層の形成方法としては,

本件訂正明細書(甲31の2)の段落【0029】に,「本発明の粗面化層を形成

する方法としては,・・・エアドクターコーティング,ブレードコーティング,ナ

イフコーティング,リバースコーティング,トランスファロールコーティング,グ

ラビアロールコーティング,キスコーティング,キャストコーティング,スプレー

コーティング,スロットオリフィスコーティング,カレンダーコーティング,電着

コーティング,ディップコーティング,ダイコーティング等のコーティングや,フ

レキソ印刷等の凸版印刷,ダイレクトグラビア印刷,オフセットグラビア印刷等の

凹版印刷,オフセット印刷等の平版印刷,スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷に

より透明基材の片面もしくは両面上に,直接或いは他の層を介し,単層もしくは多




層に分けて設け・・・」と記載されているように,ローラ塗工法のみならず,様々

な塗工方法が知られており,甲17及び甲5(【0010】)等の記載からは,こ

れら任意の塗工方法によって粗面化層中のフィラーが規則配列するとはいえない。

そうすると,任意の塗工方法によって形成された粗面化層中のフィラーが規則配列

することが技術常識であるとはいえない。

したがって,原告の上記主張も採用の限りでない。

(3) 小括

以上によれば,本件訂正発明1の解決すべき課題が,ギラツキに加えて「モアレ」

の解消であるということはできない。したがって,この点についての原告の主張に

は理由がなく,本件訂正発明1の解決すべき課題がギラツキに加えて「モアレ」の

解消であることを根拠とする原告の主張は,いずれも理由がない。

2 相違点aに関する容易想到性判断の誤り(取消事由1)について

(1) 甲1の記載内容

甲1には以下の記載がある。
【請求項1】 透明基体の片面又は両面に粗面化層を設けた防眩材料において,HAZE値(JIS K71

05)が3〜30の範囲にあり,前記粗面化層が,少なくともエポキシ系化合物および光カチオン重合開始剤

を含む紫外線硬化型樹脂と架橋アクリル樹脂ビーズとから形成されてなり,前記架橋アクリル樹脂ビーズが,

粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.0μmより大きい粒子が20重量%未

満の粒度分布を有することを特徴とする防眩材料。

・・・・・・

【請求項5】 偏光基体の一面に,少なくともエポキシ系化合物および光カチオン重合開始剤を含む紫外線硬

化型樹脂と,架橋アクリル樹脂ビーズとから形成された粗面化層を透明基体の片面に設けた第1の保護材を,

その非粗面化面が偏光基体に接するように積層し,偏光基体の他面に第2の保護材を積層してなり,前記架橋

アクリル樹脂ビーズが,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.0μmより大

きい粒子が20重量%未満の粒度分布を有し,かつ第1の保護材のHAZE値(JIS K7105)が3〜

30の範囲にあることを特徴とする偏光フィルム。





・・・・・・

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は,LCD(Liquid Crystal Display)およびCRT(Cathode-Ray Tube)等の

画像表示体等に好適に用いられ,特に,画像部の防眩,耐薬品性,耐磨耗性,更に,指紋等による耐汚染性に

優れた防眩材料及びそれを使用した偏光フィルムに関するものである。

・・・・・・

【0005】防眩性に関しては,従来,この種の防眩を実現するために,磨きガラスのように,光を散乱また

は拡散させて像をぼかす手法が一般的に行われている。通常,光を散乱または拡散させるためには,光の入射

する基体面を粗面化させることが基本となっており,粗面化処理としては,サンドブラスト法やエンボス法等

により基体表面を直接粗面化する方法,基体表面にフィラーを含有させた塗工層を設ける方法,および基体表

面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等が採用されている。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】ディスプレイの解像度が向上するに伴い,粗面の凹凸の高さや間隔にも緻密

化が要求されるようになってきた。画像の高精細化は,主に画像ドットの高密度化により達成されるが,上記

凹凸の間隔が画像ドットのピッチより小さい場合には問題は生じないが,大きい場合には干渉によるギラツキ

が発生するという問題がある。防眩性が良好であり,ギラツキのない鮮明な画像を得るためには,上記凹凸の

高さ及び間隔を小さくすると共に,バラツキがないようにコントロールしなければならない。

【0007】現在,基体表面にフィラーを含有させた塗工層を設ける方法は,フィラーの粒径により粗面の凹

凸の大きさを比較的容易にコントロールできること,及び製造が容易であること等の利点があることから,好

適に用いられている。塗工剤に使用する樹脂としては,透過性,耐熱性,耐磨耗性,耐薬品性等の諸性質に優

れてたものが望ましいが,基体として耐熱性に乏しい高透明なプラスチックフィルムを用いる場合が多いため,

紫外線硬化型樹脂が好んで使用されている。その例として,紫外線硬化型樹脂及びシリカ顔料を用いる方法が,

特開平1−105738号公報および特開平5−162261号公報等に提案されている。

【0008】しかしながら,上記公報等に提案されている紫外線硬化型樹脂とシリカ顔料からなる粗面化層に

おいて,シリカ顔料の分散性は必ずしも十分とはいえない上に,紫外線硬化を行うまでの塗工層は,低粘度の

液状態を呈しているため,塗布液を基体に塗布してから紫外線を照射するまでの間に,塗工層中のフィラーが





お互いにくっつき,凝集(オレンジピール)するという問題を有していた。特に,塗工層表面に凹凸を緻密化

させる目的でフィラーの含有量を増加させたり,フィラーを塗工層面から突出させる目的で溶剤等を用いて希

釈する場合には,この現象が特に顕著であった。

【0009】また,これらの提案は,顔料として給油性が高いシリカ顔料を使用していることから,粗面化層

は指紋等の油分を吸収しやすいために,汚れやすいという欠点を有していた。更に,この汚れはアルコール等

の溶媒を染み込ませた布で拭いても取れにくい上に,拭き取った部分に布の繊維が付着したり,顔料が削れた

りして,白くなるため,ディスプレイ用途では画像のコントラストが低下するという問題も有していた。

【0010】本発明は,従来技術における上記した実情に鑑みてなれたものである。すなわち,本発明の目的

は,ディスプレイへの太陽光及び蛍光灯等の外部光の映り込みを防止することにより,優れた防眩特性を発揮

し,かつ,ギラツキ等のない鮮明な画像及び高精細画像を得ることができ,更に優れた耐磨耗性,耐薬品性,

耐汚染性を示す,ディスプレイ,特に,フルカラー液晶ディスプレイに好適な防眩材料を提供することにある。

また,本発明の他の目的は,上記防眩材料を使用した良好な防眩性を有する偏光フィルムを提供することにあ

る。

【0011】

【課題を解決するための手段】本発明の防眩材料は,透明基体の片面又は両面に粗面化層を設けた防眩材料に

おいて,HAZE値(JIS K7105)が3〜30の範囲にあり,前記粗面化層が,少なくともエポキシ

系化合物および光カチオン重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂と架橋アクリル樹脂ビーズとから形成されてな

り,前記架橋アクリル樹脂ビーズが,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.

0μmより大きい粒子が20重量%未満の粒度分布を有することを特徴とする。

・・・・・・

【0024】また,本発明における紫外線硬化型樹脂の透明性は高いほど好ましく,光線透過率(JIS C

−6714)として,透明基体の場合と同様,80%以上,好ましくは90%以上のものが使用される。なお,

防眩材料の透明性は,紫外線硬化型樹脂の屈折率にも影響されるが,本発明における紫外線硬化型樹脂の屈折

率は,透明基体の屈折率以下であることが好ましい。

・・・・・・

【0026】本発明において使用する架橋アクリル樹脂ビーズは,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が





60重量%以上,粒子径6.0μmより大きい粒子が20重量%未満の粒度分布を有することが必要である。

特に,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が80重量%以上で,6.0μmより大きい粒子が10重量%

未満の粒度分布を有するものが好ましい。粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%未満であった

り,粒子径6.0μmより大きい粒子が20重量%以上である場合には,ディスプレイのギラツキが発生する。

また,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%未満で,かつ,粒子径6.0μmを越える粒子が

20重量%未満である場合には,ギラツキが発生すると共に,ディスプレイの防眩性が悪くなる。

・・・・・・

【0041】

実施例】本発明を実施例によって具体的に説明する。なお,「部」は,すべて「重量部」を意味する。

実施例1

まず,架橋アクリル樹脂ビーズとトルエンの混合物をサンドミルにて30分間分散することによって得られ

た下記配合の分散液と,下記配合からなるベース塗料をディスパーにて15分間撹拌,混合して塗布液を得た。

この塗布液を,膜厚80μm,透過率92%のトリアセチルセルロースからなる透明基体の片面上に,リバー

スコーティング方式によって塗布し,100℃で2分間乾燥した後,120W/cm集光型高圧水銀灯1灯を

用いて,照射距離(ランプ中心から塗工面間での距離)10cm,処理速度(塗工面基体側の紫外線ランプに

対する速度)5m/分で紫外線照射を行い,塗工膜を硬化させた。それにより,厚さ2.5μmの粗面化層を

有するHAZE値16.5の防眩材料を得た。

【0042】

[分散液の配合]

・架橋アクリル樹脂ビーズ 9部

(商品名:MX150(架橋ポリメチルメタクリレート),

粒子径1.5±0.5μm,綜研化学社製,

粒子径0.5〜6.0μmの範囲が99重量%,

粒子径6.0μmより大きいものが1重量%未満)

・トルエン 210部

[ベース塗料の配合]





・アクリル系化合物 45部

(ジペンタエリスリトールトリアクリレート)

・エポキシ系化合物 45部

(商品名:セロキサイト2021,ダイセル化学工業社製)

・光カチオン重合開始剤 2部

【化3】




・イソプロピルアルコール 5部

【0043】実施例2

粗面化層を下記の分散液およびベース塗料を用いて形成した以外は,実施例1と同様にして,厚さ3.6μm

の粗面化層を有するHAZE値22.0の防眩材料を得た。

[分散液の配合]

・架橋アクリル樹脂ビーズ 14部

(商品名:MX300(架橋ポリメチルメタクリレート),

粒子径3.0±0.5μm,綜研化学社製,

粒子径0.5〜6.0μmの範囲が99重量%,

粒子径6.0μmより大きいものが1重量%未満)

・トルエン 205部

[ベース塗料の配合]

・アクリル系化合物 45部

(トリペンタエリスリトールポリアクリレート)

・エポキシ系化合物 45部

(商品名:サイラキュアUVR−6110,ユニオンカーバイド社製)





・光カチオン重合開始剤 2部

(商品名:サイラキュアUVI−6990,ユニオンカーバイド社製)

・イソプロピルアルコール 5部

・・・・・・

【0058】

【発明の効果】本発明の防眩材料は,透明基体の片面または両面に,少なくともエポキシ系化合物および光カ

チオン重合剤を含む紫外線(UV)硬化型樹脂と,所定の粒度分布を有する架橋アクリル樹脂ビーズとから形

成された粗面化層を設けた層構成を有し,所定のHAZE値を有するから,良好な防眩性を示すと共に,CR

TやLCD等の画像表示体に用いた場合,ギラツキがなく,鮮明で高精細な画像コントラストを発現すること

ができる。また,本発明の防眩材料を使用して作製された偏光フィルムは,良好な防眩性を有し,ギラツキの

ない,優れた画像コントラストを示し,したがって,液晶パネル等の画像表示体として有用なものである。

(2) 判断

ア 上記甲1の記載によれば,甲1発明は,画像表示体等に好適に用いられる防

眩材料及びそれを使用した偏光フィルムに関するものであること(段落【000

1】),従来,画像の高精細化は,主に画像ドットの高密度化により達成されるが,

光の入射する基体面の粗面の凹凸の間隔が画像ドットのピッチより大きい場合には

干渉によるギラツキが発生するという問題があり(段落【0005】 【0006】 ,
〜 )

また,紫外線硬化型樹脂とシリカ顔料からなる粗面化層において,シリカ顔料の分

散性は必ずしも十分とはいえない上に,紫外線硬化を行うまでの塗工層は,低粘度

の液状態を呈しているため,塗布液を基体に塗布してから紫外線を照射するまでの

間に,塗工層中のフィラーがお互いにくっつき,凝集(オレンジピール)するとい

う問題を有している(段落【0008】)ことに加えて,顔料として給油性が高い

シリカ顔料を使用していることから,粗面化層は指紋等の油分を吸収しやすいため

に,汚れやすいという欠点を有しており,更に,この汚れはアルコール等の溶媒を

染み込ませた布で拭いても取れにくい上に,拭き取った部分に布の繊維が付着した

り,顔料が削れたりして,白くなるため,ディスプレイ用途では画像のコントラス




トが低下するという問題も有していたこと(段落【0009】),そこで,甲1発

明では,ディスプレイへの太陽光,蛍光灯等の外部光の映り込みを防止することに

より,優れた防眩特性を発揮し,かつ,ギラツキ等のない鮮明な画像及び高精細画

像を得ることができ,更に優れた耐磨耗性,耐薬品性,耐汚染性を示す,ディスプ

レイに好適な防眩材料及びそれを使用した良好な防眩性を有する偏光フィルムを提

供することを目的とし(段落【0010】),粗面化層を設けた防眩材料として,

HAZE値(JIS K7105)が3〜30の範囲とし,前記粗面化層を,少な

くともエポキシ系化合物および光カチオン重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂と架

橋アクリル樹脂ビーズとから形成し,前記架橋アクリル樹脂ビーズを,粒子径0.

5〜6.0μmの範囲の粒子が60重量%以上,粒子径6.0μmより大きい粒子

が20重量%未満の粒度分布とすることによって(請求項1),良好な防眩性を示

すと共に,ギラツキがなく,鮮明で高精細な画像コントラストを発現するという効

果が得られるものであること(段落【0058】)が認められる。

他方,本件訂正発明1の特許請求の範囲には,フィラーの粒子径Dの粒度分布に

ついて,「0.5≦D≦6.0μmの範囲のものが60重量%以上,6.0<D≦

10.0μmの範囲のものが30重量%未満,10<D≦15.0μmの範囲のも

のが5重量%以下」と記載されている。

特許請求の範囲の上記記載によれば,本件訂正発明1のフィラーの粒子径Dの粒

度分布は,0.5≦D≦6.0μmの範囲のものを60重量%以上含むことを必須

の構成とするが,6.0<D≦10.0μm及び10<D≦15.0μmの範囲に

ついては,0重量%が排除されていない以上,その含有割合(重量%)は,上限のみ

を規定したものであり,下限は,何らの規定もされていないと解すべきである。な

お,本件訂正明細書(甲31の2)の実施例2においても,粒子径「0.5≦D≦6.

0μm」のフィラーのみ(100%)の例が示されている。

本件訂正発明1のフィラーの粒子径Dの粒度分布は,上記のとおり,0.5≦D

≦6.0μmの範囲のものを60重量%以上含むことを必須の構成とし,6.0<




D≦10.0μm及び10<D≦15.0μmの範囲のものは,0重量%を含む任

意のものであるところ,甲1発明の架橋アクリル樹脂ビーズ(本件訂正発明1の「フ

ィラー」に相当)の粒度分布は,粒子径0.5〜6.0μmの範囲の粒子を60重

量%以上含んでいるから,この点で両発明は一致しているといえる。

したがって,相違点aは,実質的な相違点ではないとした審決の認定,判断に誤

りはない。

イ これに対して,原告は,「本件訂正発明1における粒度分布の規定は,屈折

率差の要件との組み合わせで,解決すべき課題であるギラツキ及びモアレを解消す

るための必須の構成として,一体的に理解されるべきである。本件訂正発明1は,

フィラーの粒子径の粒度分布と屈折率差の要件を組み合わせることによって課題の

解決を図るものであり,屈折率差によっては6.0<D≦10.0μm,および,

10<D≦15.0μmの範囲の粒子を含ませるほうが好適である場合もあるし,

逆の場合もある。」と主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。本件訂正発明1の解決課題に,

「モアレ」の解消という課題がないことは,前記のとおりであるから,原告の主張

は,主張の前提において,採用できない。また,本件訂正発明1において,6.0

<D≦10.0μm及び10<D≦15.0μmの範囲のフィラーが0重量%を含

む任意のものであることは,上記ア記載のとおりであり,また,本件訂正明細書(甲

31の2)には,本件訂正発明1が,フィラーの粒子径の粒度分布と屈折率差の要

件を組み合わせることによって課題の解決を図るものであることや,屈折率差の要

件によって,フィラーの粒径の粒度分布を変更させることは何ら記載されていない。

したがって,本件訂正発明1は,フィラーの粒子径の粒度分布と屈折率差の要件

を組み合わせることによって課題の解決を図るものではないから,両要件を課題解

決のための必須の構成であると理解する根拠はない。

ウ 小括

以上のとおり,原告主張の取消事由1には理由がない。




3 相違点bに関する容易想到性判断の誤り(取消事由2)について

(1) 甲3及び甲5の記載内容

ア 甲3には,以下の記載がある。
【請求項1】 透明基板上に,屈折率1.40〜1.60の樹脂ビーズと電離放射線硬化型樹脂組成物から本

質的に構成される防眩層が形成されていることを特徴とする耐擦傷性防眩フィルム。

・・・・・・

【0001】

【産業上の利用分野】本発明は,ワープロ,コンピュータ,テレビ等の各種ディスプレイ等,特に液晶ディス

プレイの表面に用いられる耐擦傷性防眩フィルム,偏光板,及びその製造方法に関する。

・・・・・・

【0025】また電離放射線としては,紫外線,可視光線等の電磁波,電子線等の粒子線が用いられる。

樹脂ビーズ:前記電離放射線硬化型樹脂組成物には,防眩性を付与するために屈折率1.40〜1.60の樹

脂ビーズが混合される。樹脂ビーズの屈折率をこのような値に限定する理由は,電離放射線硬化型樹脂,特に

アクリレート又はメタアクリレート系樹脂の屈折率は通常1.40〜1.50であることから,電離放射線硬

化型樹脂の屈折率にできるだけ近い屈折率を持つ樹脂ビーズを選択すると,塗膜の透明性が損なわれずに,し

かも,防眩性を増すことができるからである。ところで,電離放射線硬化型樹脂の屈折率に近い屈折率を持つ

樹脂ビーズを次の表1に示す。

【0026】

【表1】





【0027】これらの樹脂ビーズの粒径は,3〜8μmのものが好適に用いられ,樹脂100重量部に対して

2〜10重量部,通常4重量部程度用いられる。この塗料にこのような樹脂ビーズを混入させると,塗料使用

時には容器の底に沈澱した樹脂ビーズを攪拌して良く分散させる必要がある。・・・

・・・・・・

【0088】

【発明の効果】本発明は前記した構成を採用することにより,防眩性に優れると同時に透明性に優れ,さらに,

解像度,コントラストが優れ,かつ表面硬度,耐溶剤性が良好で帯電防止された透明保護基板の製造方法,そ

製造方法で得られた透明保護基板,及びこの透明保護基板を用いた偏光板を提供することができる。

イ 甲5には,以下の記載がある。
【請求項1】 透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に,平均二次粒子径が1.5μm〜2μmで

あると共に平均二次粒子径の標準偏差が0.2〜0.7の微粒子及び電離放射線硬化型樹脂からなる組成物に

電離放射線を照射し硬化させた硬化被膜層を設けてなることを特徴とするハードコートフィルム。

・・・・・・

【0001】

【発明が属する技術分野】本発明は,ハードコートフィルムに関し,特にCRTディスプレイやフラットパネ

ルディスプレイ(液晶表示体,プラズマディスプレイ,ELディスプレイ等)の表面に用いる防眩フィルムと

して適したハードコートフィルムに関する。

・・・・・・

【0003】

【発明が解決しようとする課題】そこで,本発明者等は,微粒子を用いたハードコートフィルムの視認性に関

して鋭意検討を行った結果,ハードコートフィルムを通して表示を見た場合,バックライトの光等が,該フィ

ルム内の大きな粒子で大きく散乱したり,後方散乱する光の割合が増加するためにギラツキが発生し,これが

視認性を悪化させるので,従来の如き,粒度分布に対して全く配慮していない通常のフィラー配合方式では,

必然的に含有される大きな粒径の粒子によって視認性が悪化すること,及び,特に特定の透過鮮明度及び反射

鮮明度を具備させることにより視認性を改善することができることを見出し,本発明に到達した。従って本発

明の目的は,防眩性のみならず視認性にも優れたハードコートフィルムを提供することにある。





・・・・・・

【0006】本発明で使用する微粒子は,平均二次粒子径が1.5μm〜2μm,かつ平均二次粒子径の標準

偏差が0.2〜7であって,電離放射線硬化型樹脂に分散させることが出来るものであれば特に限定されるも

のではない。上記微粒子としては,例えば,シリカ,アルミナ,ジルコニア等の無機微粒子の他,電離放射線

硬化樹脂の透明性を損なわないように,電離放射線硬化型樹脂の屈折率に近い,例えば,アクリル樹脂,ポリ

スチレン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリカーボネート樹脂,PMMA樹脂等のポリマービーズも使用される

が,防眩性や解像性等の点からシリカ粒子が好ましい。上記微粒子は,公知の方法によって被膜層塗布液に混

合・分散させることにより,容易に硬化被膜層に含有させることが出来る。

(2) 判断

ア 本件訂正発明1において,相違点bに係る構成(「樹脂マトリックスとフィ

ラーの屈折率の差を0.05以下」との構成)を採用したことの技術的意義につい

て検討する。

本件訂正明細書(甲31の2)には,樹脂マトリックスとフィラーの屈折率の差

について,「本発明においては上記の樹脂マトリックス中にかかる樹脂マトリック

スと屈折率の差が小さいフィラーを含有させることで,表面を粗面化し,優れた防

眩効果を持たせることができる。すなわちフィラーの屈折率と樹脂マトリックの屈

折率は,どちらが大きくても良いが近いほど望ましい。そして,フィラーと透明マ

トリックスとの屈折率の差は0.10以下であることが必要であり,好ましくは0.

05以下が良い。屈折率の差が0.10を越える場合は,内部散乱が大きくなり,

透明性が損なわれ,ギラツキ(モアレ)も非常に目立ってくる。樹脂マトリックス

とフィラーの屈折率は,上記の如くその差が0.10以下であれば特に限定される

ものではないが,樹脂マトリックス及びフィラーの屈折率としては,1.40〜1.

60のものが透明基体の屈折率との関係から,防眩性,反射防止性等の光学特性上

好ましく,特にこれら材料の屈折率が1.45〜1.53の範囲のものが光学特性

に優れており好適である。」(段落【0025】)と記載されており,屈折率の差

は0.05以下が好ましいことが一応説明されているものの,0.10以下である




べきことも説明されており,0.05なる数値には,臨界的な意義があるとはいえ

ないし,また,フィラーと樹脂マトリックスの屈折率の差を0.05以下とするこ

とに技術的な意義があるとはいえない。

そして,上記認定のとおり,甲3には,耐擦傷性防眩フィルムにおいて,電離放

射線硬化型樹脂の屈折率にできるだけ近い屈折率を持つ樹脂ビーズを選択すると,

塗膜の透明性が損なわれずに,しかも,防眩性を増すことができるという技術的事

項が記載されている。また,上記認定のとおり,甲5には,防眩フィルムにおいて,

電離放射線硬化樹脂の透明性を損なわないように,電離放射線硬化型樹脂の屈折率

に近い微粒子を用いるという技術的事項が記載されている。

したがって,審決が,相違点bに係る本件訂正発明1の構成について,@本件訂

正発明1の解決すべき課題と甲1発明の解決すべき課題とには差異がない,A防眩

材料において,透明性の配慮を行うことは当業者が当然に行う事項であるから,甲

1発明と,甲3及び甲5に記載された事項を組み合わせることができる旨判断した

点に誤りはない。

イ これに対して,原告は,@甲3には,モアレ解消のために,特定の粒度分布

を選択した上で,樹脂マトリックスとフィラーとの屈折率差を0.05以下にする

ことについては何ら記載されておらず,ギラツキ防止の課題の認識もなく,また,

甲3は,ギラツキ防止やモアレ解消の観点から,フィラーの粒度分布との関係で,

樹脂マトリックスとフィラーの屈折率差としてどのような値を選択するべきかにつ

いて,何らの技術的示唆を与えていない,A甲5は,ギラツキ防止や,モアレ解消

の観点から,フィラーの粒度分布との関係で,樹脂マトリックスとフィラーの屈折

率差としてどのような値を選択するべきかという点に関しての何らの技術的示唆を

与えるものはないなどと主張する。

しかし,原告の主張は,いずれも失当である。すなわち,上記のとおり,本件訂

正発明1の解決課題はモアレの解消ではなく,本件訂正発明1は,粒度分布の規定

と屈折率差の要件との組み合わせによって,課題を解決するものとはいえないから,




原告の主張は,その前提において誤りがあり,いずれも採用できない。

上記のとおり,甲3には,耐擦傷性防眩フィルムにおいて,電離放射線硬化型樹

脂の屈折率にできるだけ近い屈折率を持つ樹脂ビーズを選択すると,塗膜の透明性

が損なわれずに,しかも,防眩性を増すことができるという技術的事項が記載され

ており,また,甲5には,防眩フィルムにおいて,電離放射線硬化樹脂の透明性を

損なわないように,電離放射線硬化型樹脂の屈折率に近い微粒子を用いるという技

術的事項が記載されていることからすると,甲1発明と甲3及び甲5は,粗面化層

の透明性を損なわないようにするという点で共通しているから,甲1発明に甲3及

び甲5に記載されている技術的事項を組み合わせることに阻害要因はない。

ウ 小括

以上のとおり,原告主張の取消事由2には理由がない。

4 相違点a及びbに係る構成により生じる相乗効果に関する判断の誤り(取消

事由3)について

原告は,本件訂正明細書(甲31の2)の段落【0025】,【0028】の記

載等からすれば,相違点a及びbの双方の関与により本件訂正発明1の効果が得ら

れていること,すなわち,相違点a,bによる相乗効果が得られるから,審決の判

断は誤りであると主張する。

しかし,本件訂正明細書(甲31の2)の段落【0025】には,屈折率差につ

いての記載はあるものの,フィラーの粒子径の粒度分布についての記載はなく,一

方,同段落【0028】には,フィラーの粒子径の粒度分布についての記載はある

ものの,屈折率差についての記載はないから,これらの記載から,フィラーの粒子

径の粒度分布についての相違点a及び屈折率差についての相違点bの双方の関与に

より本件訂正発明1の効果が得られるとはいえない。

したがって,原告主張の取消事由3には理由がない。

5 本件訂正発明2についての容易想到性判断の誤り(取消事由4)について

原告は,本件訂正発明1が,甲1発明,甲3及び甲5に記載された技術的事項に




基づいて,当業者が容易になし得るものでないことと同様の理由により,本件訂正

発明2についての判断は誤りであると主張する。

しかし,上記のとおり,本件訂正発明1は,甲1発明,甲3及び甲5に記載され

た技術的事項に基づいて,当業者が容易になし得たものであるから,同様の理由に

より,本件訂正発明2は,甲1発明,甲3及び甲5に記載された技術的事項に基づ

いて,当業者が容易になし得たものである。

したがって,審決における本件訂正発明2についての判断は誤りであるとはいえ

ず,原告主張の取消事由4には理由がない。

第5 結論

以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。その他,原告は縷々

主張するが,いずれも理由がない。よって,原告の本訴請求は理由がないから,こ

れを棄却することとし,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官

飯 村 敏 明




裁判官

池 下 朗





裁判官

武 宮 英 子