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事件 平成 23年 (行ケ) 10406号 審決取消請求事件
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裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/03/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年3月8日判決言渡

平成23年(行ケ)第10406号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年2月14日

判 決




原 告 エボニック デグサ ゲーエムベーハー




訴訟代理人弁護士 木 村 育 代

同 原 澤 敦 美

訴訟代理人弁理士 篠 良 一

同 住 吉 秀 一

同 河 辺 幸 代

同 宮 城 康 史

同 来 間 清 志



被 告 特 許 庁 長 官



指 定 代 理 人 小 林 均

同 大 島 祥 吾

同 藤 本 保

同 唐 木 以 知 良

同 芦 葉 松 美

主 文

1 特許庁が不服2009−2080号事件について平成23年8月9日に


1
した審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

ヒユールス・アクチエンゲゼルシヤフトは,発明の名称を「水/アルコールを基

礎とするフルオロアルキル官能性オルガノポリシロキサン含有組成物,その製造方

法および使用法」とする発明について,平成9年8月26日に特許出願した(以下

「本願」という。(甲1)
) 。原告は,平成14年6月ころ,同社の出願人の地位を承

継した(甲18)。

原告は,平成16年6月30日に出願審査請求を行い(甲4),平成20年10月

28日,拒絶査定を受け(甲8) 平成21年1月27日,
拒絶査定不服審判請求(不

服2009−2080号事件。以下「本件審判」という。)をした(甲9)。

原告は,平成21年2月25日,明細書を変更する旨の手続補正を行い(甲11),

平成23年3月23日付けで拒絶理由通知がされたが,通知書には,通知書発送の

日から3か月以内に意見書を提出するように記載されていた(甲14)。原告は,特

許庁に対し,同年5月27日,手続書類翻訳のため書類の提出期間を1か月延長す

るように求めた期間延長請求書を3通提出し,特許庁は,同日付けで,上記延長請

求をいずれも許可した(甲15ないし18)。

特許庁は,同年7月25日付けで審理終結通知を行い,同年8月9日,
「本件審判

の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本

は同月24日,原告に送達された。

2 本件審決の理由

本件審決の理由は,本願に係る発明は,平成21年2月25日に提出された手続


2
補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜10により特定されるもので

あり,これに対して,平成23年3月23日付けで拒絶理由を通知し,期間を指定

して意見書を提出する機会を与えたが,原告からは何の応答もないので,上記拒絶

理由は妥当なものと認められるというものである。

第3 当事者の主張

1 取消事由に係る原告の主張

本件審決には,以下のとおり,手続の過程において重大な誤りがあり,違法とし

て取り消すべきである。

平成23年3月23日付拒絶理由通知書は同月30日に発送されたため,当初の

意見書提出期限は同年6月30日であったが,原告は,特許法5条1項に基づき,

期間延長請求を3度行い,被告は,これらをいずれも許可した。したがって,原告

の意見書提出期限は,同年9月30日まで適法に延長された。しかし,被告はこれ

を看過し,同年7月25日,審理を終結し,同年8月9日,本件審決を行った。

上記のとおり,被告は,原告の意見書提出の権利を奪って,原告に不利益な審決

をしたものであり,本件審判手続には重大な瑕疵があり,このような瑕疵のある手

続に基づいてなされた本件審決は違法である。

2 被告の反論

平成23年3月23日付拒絶理由通知書が発送されてから約4か月後であって,

本件審決の審決書が送達される約1か月前である同年7月25日に,審理終結通知

書が原告に対して発送されており,意見書提出期限前に意見書提出などの手続がで

きなくなったことを意味するものであるから,原告に,意見書提出の意思があった

のであれば,審理終結通知書が発送された時点で,特許庁に対して,確認,上申書

提出などの行為をなし得たはずである。原告がこのような行為をしていれば,その

後に審決書が送達されることもなかったのであるから,本件審決に関し,重大な手

続上の瑕疵があったとまではいえない。

第4 当裁判所の判断


3
当裁判所は,本件審決には重大な手続違背があると判断する。その理由は,以下

のとおりである。

1 特許法は,審判官が,拒絶査定不服審判手続において,拒絶査定の理由と異

なる拒絶理由を発見した場合には,審判請求人に対して,拒絶理由を通知し,相当

の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならないと規定する(平

成14年法律第24号による改正前の特許法159条2項50条)。同条が,審判

官において,査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に,相当の期間を指定し

て,意見書提出の機会を付与した理由は,審判請求人に意見を述べる機会を与える

ことによって,審判官の誤解などに基づいた判断がされることを,できる限り防止

して,審判請求人に不利な審決がされることを回避することにあり,同規定は,審

判請求人のための手続的な保障規定といえる。また,意見書提出のための相当の期

間を定めることも,上記の手続的な保障を実質ならしめるためのものであると解さ

れる。

上記の観点から検討する。本件においては,平成23年3月23日付けの拒絶理

由通知に対する意見書の提出期限は,当初同年6月30日とされたが,原告からの

合計3か月の期間延長申請に対して許可がされたことにより,同年9月30日まで

延長された。しかるに,本件審判においては,上記提出期限より約2か月前である

平成23年7月25日付けで審理終結通知がされ,同年8月9日付けで上記拒絶理

由を理由として本件審決がされた。したがって,本件審決は,実質的に意見書提出

の機会を付与することなくされたものであり,手続違背の違法があるといえる。

この点,被告は,本件審決の審決書が送達される約1か月前である同年7月25

日に,審理終結通知書が原告に対して発送されているから,原告に,意見書提出の

意思があったのであれば,審理終結通知書が発送された時点で,特許庁に対して,

確認,上申書提出などの行為をなし得たはずであると主張する。しかし,被告の主

張は,意見書提出の機会を付与すべきと定めた特許法の上記の趣旨に反する主張で

あり,採用の余地はない。


4
2 結論

以上のとおりであるから,原告主張の取消事由には理由があり,本件審決は違法

であるとして取り消すべきである。

よって,原告の請求は理由があるから,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官

飯 村 敏 明




裁判官

八 木 貴 美 子




裁判官

知 野 明




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