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事件 平成 22年 (ワ) 31756号 損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2012/02/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年2月22日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成22年(ワ)第31756号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成23年11月22日

判 決

神奈川県高座郡<以下略>

原 告 株 式 会 社 荒 井 鉄 工 所

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 日 野 和 昌

同 中 田 利 通

同 補 佐 人 弁 理 士 丹 羽 宏 之

同 西 尾 美 良

宮城県石巻市<以下略>

被 告 信和エンジニアリング株式会社

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 鈴 木 和 夫

同 鈴 木 き ほ

同 補 佐 人 弁 理 士 小 田 治 親

同 齊 藤 誠 一

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は原告に対し1億2750万円及びこれに対する平成22年9月4日か

ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 仮執行宣言

第2 事案の概要

1
本件は,「スクレーパ濾過システム」との名称の特許権を有する原告が,被

告の製造販売している別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告各製品」と

いう。)は上記特許権に係る特許発明技術的範囲に属すると主張して,被告

に対し,民法709条及び特許法102条2項に基づく損害賠償1億2750

万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成22年9月4日から支払済

みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)

(1) 当事者等

ア 原告は,濾過用フィルター及び濾過装置の製造並びに販売等を業と

する株式会社である。

イ 被告は,機械設備及びプラント類等の設計などを業とする株式会社

である。

(2) 原告の特許権

ア 原告は,次の特許(以下「本件特許」という。)につき特許権(以下

「本件特許権」という。)を有していた。

(ア) 特許番号 第2551480号

(イ) 発明の名称 スクレーパ濾過システム

(ウ) 出願日 平成1年4月28日

(エ) 登録日 平成8年8月22日

イ 本件特許に係る明細書(後記エの訂正がされる前のもの。以下「本件明

細書」といい,本判決末尾に添付する。)の「特許請求の範囲」請求項1

の記載は下記のとおりである(以下,請求項1記載の発明を「本件発明」

という。)。

「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾

過システムであって,筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタ

エレメントの周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿っ

2
て,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開

けずに設けたスクレーパ機構を設けて前記フィルタエレメントの周面に付

着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなることを特徴とするス

クレーパ濾過システム。」

ウ 本件発明の構成要件の分説

本件発明を構成要件に分説すると,下記のとおりである(以下,各構成

要件を「構成要件A」などという。)。

A 濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾

過システムであって,

B 筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの

C 周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記

フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに

設けたスクレーパ機構を設けて

D 前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去で

きるようにしてなることを特徴とする

E スクレーパ濾過システム。

エ 本件特許の特許請求の範囲等の訂正

原告は,被告の提起した本件特許の請求項1及び2に係る無効審判請求

事件(無効2011−800014。乙6)において,平成23年4月1

8日付けで,本件明細書の訂正の請求(以下「本件訂正」という。)を行

った(甲11)。

本件訂正のうち,本件特許の請求項1に係る部分は下記のとおりであ

る(下線で示した部分は訂正部分である。以下,本件訂正後の請求項1に

係る発明を「本件訂正発明」という。)。

(ア) 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレー

パ濾過システムであって,」を「濾カスに圧力を加えて前方に押し出し

3
ながら濾過を行う豆乳原液などの被濾過液体より液体分と固形分に分離

するスクレーパ濾過システムであって,」と訂正する(以下,上記訂正

を「本件訂正事項1」という。)。

(イ) 「筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメント

の」を「筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメント

の排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,前記

フィルタエレメントの」と訂正する(以下,上記訂正を「本件訂正事項

2」という。)。

また,本件訂正のうち,【発明の詳細な説明】に係る部分は下記の

とおりである(下線で示した部分は訂正部分である。)。

(ウ) 〔課題を解決するための手段〕欄の「濾カスに圧力を加えて前方

に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾過システムであって」(本件

明細書2頁3欄12行〜14行)を「濾カスに圧力を加えて前方に押し

出しながら濾過を行う豆乳原液などの被濾過液体より液体分と固形分に

分離するスクレーパ濾過システムであって,」と訂正する(以下,上記

訂正を「本件訂正事項3」という。)。

(エ) 〔課題を解決するための手段〕欄の「筒状ないし円錐状の所望の

濾過孔を有するフィルタエレメントの周面」(本件明細書2頁3欄14

〜15行)を「筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレ

メントの排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,

前記フィルタエレメントの周面」と訂正する(以下,上記訂正を「本件

訂正事項4」という。)。

(オ) 〔発明の効果〕欄の「各種食品用として,またその他の機械的切

削油の固液分離など広く利用できる。」(本件明細書3頁6欄24行〜

25行)を「各種食品用として固液分離など広く利用できる。」と訂正

する(以下,上記訂正を「本件訂正事項5」という。)。

4
オ 本件訂正発明の構成要件の分説

(ア) 濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う豆乳原液な

どの被濾過液体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過システム

であって,

(イ) 筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの

(ウ) 排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,前

記フィルタエレメントの,

(エ) 周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前

記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けず

に設けたスクレーパ機構を設けて

(オ) 前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去

できるようにしてなることを特徴とする

(カ) スクレーパ濾過システム。

カ 本件特許権は,平成21年4月28日,存続期間満了により消滅した。

(3) 被告の行為

ア 被告は,本件特許権の存続期間中に,別紙被告製品目録記載の各製品

のうち,型番SRE141−LPH,型番SRE181−LPH及び型番

SRE255−LPHの各製品を製造販売した。

被告各製品のうち,型番SRE350−LPHについては,本件特許権

存続期間満了日である平成21年4月28日以前に製造販売されたもの

であることを認めるに足りる証拠はない(以下,被告各製品のうち,型番

SRE350−LPHを除いたものを併せて「被告製品」という。)。

イ 被告製品の構成及び図面

被告製品の図面は,いずれも別紙被告製品図面1ないし5のとおりで

ある。

被告製品の構成についての原告の主張は,別紙被告製品の構成(原

5
告)のとおりであり,被告の主張は,別紙被告製品の構成(被告)のとお

りである。

2 争点

(1) 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか。

構成要件A,Eの充足性

構成要件Bの充足性

構成要件Cの充足性

構成要件Dの充足性

オ 作用効果の同一性

(2) 本件特許は,特許法123条1項2号に該当し,特許無効審判により無

効とされるべきものか。

ア 本件発明は,米国特許第4041854号公報(以下「乙7文献」とい

う。)に係る発明(以下「乙7発明」という。)と同一の発明であって,

特許法29条1項3号に違反するものか。

イ 本件発明は,乙7発明から容易に想到することができたものとして特許

29条2項に違反するものか。

ウ 本件発明は,特開昭60−247498号公報(以下「乙8文献」とい

う。)に記載された発明(以下「乙8発明」という。)から容易に想到

ることができたものとして特許法29条2項に違反するものか。

エ 本件発明は,特開昭63−147510号公報(以下「乙9文献」とい

う。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)から容易に想到

ることができたものとして特許法29条2項に違反するものか。

(3) 本件訂正に基づく訂正の再抗弁の成否

ア 本件訂正は訂正要件を満たすか。

イ 被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか。

ウ 本件訂正により争点(2)の無効理由を解消することができるか。

6
(4) 損害額

第3 争点に対する当事者の主張

1 争 点 (1)( 被 告 製 品 は , 本 件 発 明 の 技 術 的 範 囲 に 属 す る か ) に つ い て

(1) 構 成 要 件 A , E の 充 足 性 ( 争 点 (1)ア )

(原告の主張)

ア 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」(構成

要件A)について

(ア ) 被告製品は,スクリーン4内部に送り込まれた食品原料にスク

リュ3の回転作用で圧力を加え,下方に移動させることによって,

上記食品原料をスクリーン4とスクリュ羽根等との間に形成された

空間(ピッチ)内で圧縮し,スクリーン4に設けられた細孔4aか

ら液体分を抽出し,圧搾分離液と脱水粕に濾過分離するものである

から,被告製品は,構成要件Aの「濾カスに圧力を加えて前方に押

し出しながら濾過を行う」を充足する。

(イ ) 被告の主張について

被告は,被告製品が食品原料に圧力を加えて濾過を行うものであ

ることを否認し,被告製品はスクリュ3が食品原料投入側(上方)

から排出側(下方)にかけて細くなるよう構成されていることによ

る減容比率を用いて食品原料を脱水するものであると主張するが,

スクリュ3の1ピッチ毎の容積は,スクリーン内周面積とスクリュ

1ピッチの間隔の積から,スクリュ軸の外周面積とスクリュ1ピッ

チの間隔との積を差し引いたものとみるべきであるところ,乙3の

被告製品写真では,被告製品のスクリュ3の1ピッチ毎の間隔は,

上方よりも下方の方が広くなっているように見えるから,スクリー

ン内周径(スクリュの径)が上から下にかけて小さくなっているか

らといって,必ずしもスクリュ3の1ピッチ毎の容積が上から下に

7
かけて小さくなっているものとはいえず,被告の上記主張は裏付け

を欠く。

また,もし,被告製品において上方から下方にかけてスクリュ3

の1ピッチ毎の容積が減縮しているものだとしても,被告の主張に

よれば,被告製品では,食品原料は入口容積の19ないし20%

(約5分の1)しか投入されないというのであるから,出口容積が

入口容積の5分の1以下でなければ,食品原料は減容しないことに

なるところ,被告製品目録添付の図1のとおり,被告製品の出口容

積が入口容積の5分の1以下であるとは到底考えられない。

さらに,食品原料がスクリュの各ピッチを満たしている場合を考

えても,食品原料の比重が一定である以上,上方の食品原料が下方

に移動することはないから,外部から圧力を加えない限り,食品原

料が減容することは考えられない。

加えて,外部から圧力を加えずに搾汁を行うということは,重力

(重力加速度)のみによる搾汁を意味するものであるところ,もし,

重力加速度のみによって搾汁が可能であるとすれば,食品原料を布

袋などに入れて放置するのみで液体と固体を分離することができる

ことになり,経費を投入して搾り機など購入する必要はないことに

なるが,これが当業者の常識に反することは明らかである。

被告製品が「圧力を加えて」搾汁を行うものであることは,被告

が,被告製品のカタログ(甲7)において,「最後の1滴までギュ

ッ!と」,「特殊スクリューで連続圧搾し,豆腐や果汁を分離精製

するスクリューリファイナー」など,圧力を加えて食品原料を圧縮

する旨を強調する表示をしていることや,同カタログには「特許取

得」と表示されているところ,被告が搾り機について有する唯一の

特許である特許第3222738号(以下「被告特許」という。)

8
に係る明細書(甲8。以下「被告特許明細書」という。)の【00

05】を見ると,「本発明は…スクリーンの目詰まりがなく,強力

に圧搾することにより液体の収率を向上させ…ることを目的とす

る。」との記載があることからも明らかである。

イ 「スクレーパ濾過システム」(構成要件A,E)について

(ア ) 「スクレーパ濾過システム」とは,フィルタエレメントの内周

面に付着した濾カスをスクレーパ(引掻き)作用により剥取する機

能を有する脱水濾過機をいうところ,被告製品には,スクリーン4

の内周面に沿って回転するスクリュ3の先端全長にわたり樹脂部材

5が接合されており,上記樹脂部材5は,食品原料をスクリーン4

内に投入して濾過を行うに当たり,スクリーン4に摺接して(なお,

この点については構成要件Cに関する原告の主張で詳述する。),

スクリーン4の内周面に付着した濾カスを剥取する機能を有するも

のであって,被告製品は,このようなスクレーパ機構を備えた食品

原料搾り機であるから,「スクレーパ濾過システム」に相当する。

(イ ) 被告の主張について

被告は,樹脂部材5はスクリーン4に摺接しておらず,引掻き作

用でスクリーン内周面に付着した固形分を除去する作用はないから,

被告製品はスクレーパ機構を備えるものではないと主張する。しか

し,構成要件Cに関する原告の主張で詳述するとおり,被告製品の

作動時には,樹脂部材5とスクリーン4内周面との間のクリアラン

ス6は消失し,樹脂部材5はスクリーン4内周面に摺接するもので

あるところ,これにより,樹脂部材5がスクリーン4の内周面に付

着する固形分を引掻除去する作用を有することは明らかであり,被

告の主張は事実に反する。

なお,樹脂部材5がスクレーパ機能を有しないとすれば,被告製

9
品は運転中に濾カス固形物がスクリーン4に付着して細孔4aを閉

塞し,搾り効率を著しく低下させることになる。被告は,これをア

ルカリ洗浄液による洗浄で解消していると主張するが,運転中にア

ルカリを投入すると,それが食品原料と混合し,食品としての製品

を得ることができないし,運転を停止し濾カスを排出した後アルカ

リ洗浄をするのでは生産効率が著しく低下するのであって,被告製

品がこのような非効率な方法を採用するものとは考えられない。

ウ したがって,被告製品は,構成要件A及びEを充足する。

(被告の主張)

ア 原告の主張は否認する。

イ 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」(構成

要件A)について

(ア ) 「濾カスに圧力を加えて」の意義

本件明細書の【発明の詳細な説明】には,「〔作用〕」として

「スクレーパ機構がスクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに,フィ

ルタエレメントと常に接しているため,加圧力の洩れが生ずること

なく濾カスを前方に押し出すので,非常に効率の良い絞りが得られ

る」(2頁3欄29行〜32行),「〔発明の効果〕」として「ス

クレーパ機構がスクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けられ,

その全域がフィルタエレメントに摺接していることにより,加圧力

の洩れが生じることがなく,濾過固形分を前方に押しやるので,絞

り濾過を効率よく行うことができる(3頁6欄13行〜17行)と

記載されているから,「濾カスに圧力を加えて」(構成要件A)と

は,「搾り機内部の圧力を高めるために外部から圧力を加えるこ

と」を意味すると解される。

(イ ) 被告製品の構成

10
被告製品は,スクリュ3が,食品原料の投入側(上方)から排出

側(下方)に向けて徐々に細く形成されていることにより,スクリ

ュ3の入口容積と出口容積の減容比率を用いて食品原料を搾り込む

ものであり,ほとんど無圧で運転されているものであって,外部か

ら圧力を加え,その加圧力で食品原料を前方に押し出すものではな

い。これは,被告製品において,スクリュ3に取り付けられた各樹

脂部材5の間に間隔7が,樹脂部材5とスクリーン4の内周面との

間にクリアランス6が各形成されており,食品原料に圧力を加えた

としても,上記間隔及びクリアランスから加圧力が洩れてしまう構

造となっていることからも明らかである。

(ウ ) 被告製品は,脱水すべき原料をポンプ等を用いて投入口8から

時間当たり一定量を定量的に供給するものであって,ポンプを使用

するのは原料を投入口8から投入するためであり,内部を加圧する

ものではない。投入口から供給される食品原料の供給量は,1ピッ

チの容積に対して約19〜23%以内とされるから,投入口8から

の食品原料の供給によって,濾カスに圧力が加えられることはない。

(エ ) したがって,被告製品は,搾り機内部の圧力を高めるために外

部から圧力を加えるものではなく,「濾カスに圧力を加えて前方に

押し出しながら濾過を行う」を充足しない。

ウ 「スクレーパ濾過システム」(構成要件A,E)について

(ア ) 「スクレーパ」とは,一般に「掻き取ったり削り取ったりする

道具」(乙4;大辞林第三版)を意味するところ,本件発明におけ

る「スクレーパ」は,構成要件Cのとおり,「フィルタエレメント

と摺接し,フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引

掻除去できる」部材を意味するものと解される。

(イ ) 被告製品の構成

11
被告製品は「濾過システム」であるが,被告製品の樹脂部材5は,

構成要件Cに関する被告の主張で詳述するとおり,スクリーン4の

内周面との間に約0.15〜0.2oのクリアランス6を有して回

転するものであり,スクリーン4の内周面に付着した固形物を引掻

除去する機能を有しないから,被告製品は,「スクレーパ」に相当

する部材を有しない。なお,被告製品の樹脂部材5は,スクリーン

4内周面との接触による摩擦を軽減することを目的とするものであ

り,被告製品においては,スクレーパ作用で固形物の除去が行われ

ないから,スクリーン4の内周面に固形物が付着し,細孔4aが目

詰まりを起こすことがあり得るが,この場合には,アルカリ洗浄を

行うことによって目詰まりを解消している。

(ウ ) したがって,被告製品は,「スクレーパ濾過システム」を充足

しない。

エ 以上のとおり,被告製品は構成要件A,Eを充足しない。

(2) 構 成 要 件 B の 充 足 性 ( 争 点 (1)イ )

(原告の主張)

ア 被告製品のスクリーン4は,多数の細孔4aを有する円錐状に形成

され,縦方向に起立させて設置され,上記細孔4aにより食品原料を

脱水して濾過を行うものであるところ,本件明細書の「〔実施例〕」

には,「円筒管体6は,横方向でなく縦方向に起立しても差支えな

い。」(3頁5欄39行〜40行)と記載されているから,被告製品

のスクリーン4は,構成要件B(「筒状ないし円錐状の濾過孔を有す

るフィルタエレメントの」)を充足する。

イ 被告の主張について

被告は,被告製品の細孔4は堅固な構造を有するものではないから

構成要件Bを充足しないと主張するが,本件明細書の「〔実施例〕」

12
には「円筒状フィルタエレメントは図示の構成の他,例えばパンチン

グメタルとかポーラス構造のものなど,好みの濾過孔を備えた円筒状

フィルタについても同様に実施できることはもちろんである。」(3

頁5欄35行〜38行)と記載されているとおり,フィルタエレメン

トの濾過孔の構造について何ら限定は加えられていないから,構成要

件Bを限定解釈するのは相当ではなく,被告製品の構成要件B充足性

に問題はない。

(被告の主張)

ア 原告の主張は争う。

イ 「フィルタエレメント」の意義について

本件発明においては,濾カス固形分を引掻除去するため,スクレー

パが常にフィルタエレメントと摺接するから,フィルタエレメントは,

この衝撃に耐え得る堅固な構造を有する必要がある。そうすると,構

成要件Bの「フィルタエレメント」とは,スクレーパが常に接するこ

とに耐えられる堅固な構造を有するものを想定しているとみるのが合

理的である。このことは,本件明細書に,フィルタエレメントの実施

例として,「1は円筒状のフィルタエレメントを示し,断面二等辺三

角 形 状 の ワ イ ヤ 2 の フ ラ ッ ト な 底 面 2a を 内 側 に 保 持 し な が ら , 頂 角 尖

鋭 部 2b を 外 側 に し て 多 孔 枠 筒 3 の 内 周 に 穿 っ た ス パ イ ラ ル 状 の 溝 4 に

係合して捲装し,隣り合うワイヤ2間に所望の大きさのスリット孔5

を 形 成 す る と 共 に , フ ラ ッ ト な 底 面 2a に よ り 捲 回 し た ワ イ ヤ 2 の 内 周

面をフラットαに形成できる。」(2頁3欄39行〜45行)と記載

され,第3図として,円筒状フィルタエレメントの一部切欠斜視図が

示されているところ,これらが極めて堅固な構造を有するものである

ことからも明らかである。

ウ 被告製品のスクリーン4は,円錐状に形成したスクリーンに細孔4

13
aを多数形成したものにすぎず,スクレーパが常に接することに耐え

られる堅固な構造を有していない。したがって,被告製品は,構成要

件Bを充足しない。

(3) 構 成 要 件 C の 充 足 性 ( 争 点 (1)ウ )

(原告の主張)

ア 「前記フィルタエレメントと摺接し」について

(ア ) 「摺接」とは,フィルタエレメントとスクレーパ機構が当接す

る状態となることをいうところ,被告製品の樹脂部材5(後記ウの

とおり,スクレーパ機構に相当する。)は,スクリーン4(前記

(2)の と お り , フ ィ ル タ エ レ メ ン ト に 相 当 す る 。 ) の 内 周 面 に 当 接

しているから,被告製品は「前記フィルタエレメントと摺接し」を

充足する。

(イ ) 被告の主張について

a 被告は,被告製品の樹脂部材5は,スクリーン4との間に,約

0.15〜0.20mmのクリアランス6を残してスクリュ3に

接合されているから,上記樹脂部材5はスクリーン4と摺接する

ものではないと主張するが,否認する。

そもそも,被告製品は搾り機であり,濾過孔4aに関する点を

除き,1o未満の数値が問題とされるような機器ではなく,スク

リーン4の内周面や樹脂部材5の表面には0.15o以上の凹凸

があり,スクリーン4やスクリュ3は真円ではなく,樹脂部材5

も真円をなすように取り付けられているものではないのが通常で

あって,樹脂部材5とスクリーン4との間に,常に0.15oの

クリアランスが形成されているということは,経費面からしても

あり得ない。また,被告製品は,スクリーン4が外周を覆う構造

となっているのであるから,スクリーン4とスクリュ3との間の

14
わずか0.15oの隙間を計測するのは不可能であって,常に0.

15oの隙間を残すように被告製品を調整することは技術的にあ

り得ない。

b 加えて,被告製品の樹脂部材5が,非作動時において,スクリ

ーン4の内周面との間に0.15o程度のクリアランス6を有す

るものであるとしても,樹脂部材5は,下記計算式のとおり,作

動時には,105℃程度の高温の食品原料(豆腐原料である煮

汁)が投入されることにより直径方向に膨張し,クリアランス6

は消失し,樹脂部材5はスクリーン4と当接する状態となる。

す な わ ち , 樹脂部材5の半径方向の長さ(高さ)hを10mmと

した場合(なお,樹脂部材5の材質であるキャストナイロンの線膨

張係数はα=8×10 − 5 /℃,常温はt 1 =20℃,原料の豆腐原

料の煮汁の処理温度はt 2 =105℃とする。)についての熱膨張に

よる樹脂部材5の半径方向の伸びの長さΔhは下記のとおり0.0

68oとなる。

Δh=α・(t 2 −t 1 )・h

Δh=8×10 −5 ×(105−20)×10=0.068o

また,熱膨張の場合と同1条件(ただし,線膨張率に代え吸水率を

用いる。また,飽和吸水率を6%とした時,寸法増加量βは0.01

4oである。)のもとにおける膨潤による樹脂部材5の半径方向の伸

びの長さΔHは下記のとおり0.14oとなる。

ΔH=β×10o

ΔH=0.014×10=0.14o

したがって,樹脂部材5の熱膨張及び膨潤による半径方向の伸びは,

上記0.068oと0.14oの和である0.208oとなり,クリ

アランス6の数値0.15〜0.2oより大きいものとなり,作動時

15
において,樹脂部材5はクリアランス6を閉塞することになる。

c なお,被告は,被告製品の非作動時の状態を前提に,被告製品

構成要件Cを充足することはないと主張するが,被告製品は豆

腐などの製造に係る機械であり,単に設置するだけでは何の意味

もなく,それを作動させて初めてその効用が達成されるものであ

り,作動時こそ,その物の通常の状態というべきであるから,停

止時の状態を前提に充足性を否定する被告の論理は受け入れるこ

とができない。

d また,樹脂部材5とスクリーン4との間にクリアランス6があ

っては,濾カスに圧力を加えても,濾カスがクリアランス6を通

ってスクリーンの上部に移動するだけで,濾カスを圧縮すること

ができず,搾り機としての作用を果たすことができないものであ

るところ,被告製品が搾り機である以上,その効用を果たすため

に,少なくとも作動時に,樹脂部材5がスクリーン4に摺接し,

圧力が逃げることなく濾カスに働くよう,上記クリアランスが消

失していることは明らかである。このことは,被告特許明細書に

おいて,樹脂部材5に相当する部材が摺接部材として表現されて

おり,摺接部材は常にスクリーンに摺接しており,摺接部材が摩

耗し,スクリーンとの間に隙間が生じたときは,スクリュを下げ

ることにより摺接部材を再度スクリーンの内面に摺動させる旨記

載されており,被告自身,搾り機での液体の収率を上げ,強力に

圧縮するために,樹脂部材5がスクリーンに常に摺接しているこ

とが必要であると認識しているとみられることからも明らかであ

る。

(ウ) したがって,被告製品は,「前記フィルタエレメントと摺接し」を

充足する。

16
イ 「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた」について

(ア ) 被告製品において,スクリーン4の内周面に沿って回転するス

クリュ3の羽根の先端には,全長にわたって溝が設けられ,上記溝

に沿って,各樹脂部材5が,相互に約10ないし15oの間隔7を

開けて接合されている。上記間隔7は,被告製品の作動時に高温の

食品原料が投入されることによる各樹脂部材5の伸びを円周方向に

逃がすために設けられているものであり,そのために,各一端のみ

がビス5aにより固定され,他端は固定されていない。したがって,

作動時には,熱膨張及び膨潤による伸びのため,樹脂部材5相互の

間隔7は閉塞され,隣り合う樹脂部材5同士は当接する状態となる。

したがって,被告製品の樹脂部材5は,スクリュ3の羽根の前後に

隙間を開けずに設けられたものであり,「スクリュ状羽根の前後に

隙間を開けずに設けた」を充足する。

(イ ) 被告の主張について

a 被告は,本件特許発明出願経過を挙げて,「スクリュ状羽根

の前後に隙間を開けずに設けた」の構成を拡大解釈することは許

されないと主張するが,本件特許は,特許請求の範囲の記載が不

明瞭であるとして拒絶査定されたのに対し,これを補正したこと

により特許査定されるに至ったものであり,スクレーパ機構の構

成を「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた」ものに限

定したことにより特許査定されたものではないから,被告の主張

は相当ではない。

b また,被告は,被告製品の非作動時に間隔7が存在することを

挙げて「隙間を開けずに設けた」を争うが,停止時の状態を前提

と す る 被 告 の 主 張 が 不 相 当 な も の で あ る こ と は 前 記 (3)ア (イ )c

で主張したとおりである。

17
c さらに,被告は,被告製品の作動時において間隔7が消失する

ことを否認するが,下記計算式のとおり失当である。

すなわち,樹脂部材5の1ピッチ毎の長さ? を750oとした

場 合 ( なお,キャストナイロンの線膨張係数,常温及び豆腐原料の

処理温度については前記(3)ア(イ)bと同様の条件とする。)の樹脂

部材5の熱膨張による円周方向への伸びの長さΔ? は下記のとおり

5.1oとなる。

Δ? =α・(t 2 −t 1 )・?

=8×10 −5 ×(105−20)×750=5.1o

また,前記(3)ア(イ)bと同1条件(なお,線膨張率に代え吸水率

を用い,かつ,寸法増加量βを0.014oとする。)のもとにおけ

る膨潤による樹脂部材5の円周方向の伸びの長さΔLは下記のとおり

10.5oとなる。

ΔL=β×750

=0.014×750=10.5o

したがって,樹脂部材5の熱膨張及び膨潤による円周方向の伸びは,

上記5.1oと10.5oの和である15.6oとなり,これは,間

隔7の大きさ(10ないし15o)よりも大きいから,各樹脂部材間

の間隔7は閉塞し,樹脂部材5は相互に当接する状態となる。

(ウ) したがって,被告製品は,「スクリュ状羽根の前後に隙間を開

けずに設けた」を充足する。

ウ 「スクレーパ機構を設けて」について

被 告 製 品 の 樹 脂 部 材 5 は , 前 記 (3)ア で 主 張 し た と お り , 作 動 時 に お

いてスクリーン4の内周面に当接して回転するものであり,これによ

り,スクリーン4の内周面に付着した固形分を引掻除去することがで

きるものであるから,「スクレーパ機構」に相当する。

18
エ したがって,被告製品は構成要件Cを充足する。

(被告の主張)

ア 原告の主張はいずれも争う。

イ 「前記フィルタエレメントと摺接し」について

(ア ) 「摺接」とは,「滑る状態で接すること」(乙5;特許技術用

語集)をいうところ,本件明細書には,「〔作用〕」として,「ス

クレーパ機構が…フィルタエレメントと常に接している」(2頁3

欄29行〜30行)と記載されているから,本件特許発明にいう

「摺接」とは,スクレーパ機構がフィルタエレメントと常に接して

いることを意味すると解される。

被告製品の取扱説明書(乙1)に「スクリューとスクリーンのク

リアランス調整方法」として,「クリアランスは,0.15〜0.

20m/mを基準とし,スキ間ゲージで計測してください。」と記

載されているとおり,被告製品のスクリュ3の周面に取り付けられ

た樹脂部材5は,薄板状のスキ間ゲージで隙間を計測し,調整を行

って,スクリーン4内周面との間に約0.15〜0.20oのクリ

アランス6を残して回転するものであるから,スクリーン4と常に

接するものでなく,被告製品は「前記フィルタエレメントと摺接

し」を充足しない。

(イ ) なお,本件発明の特許請求の範囲の記載は,物として通常存在

する状態における「濾過システム」を記述したものであるから,被

告製品が物として通常存在する状態(非作動時の状態)においてク

リアランス6を有する以上,被告製品が「前記フィルタエレメント

と摺接し」を充足することはない。

(ウ ) 加えて,クリアランス6は,作動時に,樹脂部材5がスクリー

ン4に接触し,スクリーン4が損耗することを防ぐために設けられ

19
たものであり,作動時の熱膨張によっても上記クリアランス6が消

失しないように設計されているから,作動時の状態を前提にしたと

しても,樹脂部材5はスクリーン4の内周面と常に接するものでは

なく,上記の点を充足しない。

すなわち,被告製品の樹脂部材5の材質は超高分子ポリエチレン

素材「ポリペンコ(登録商標)U−PE100(ナチュラルグレー

ド ) 」 ( 日 本 ポ リ ペ ン コ 株 式 会 社 ) で あ り , 線 膨 張 係 数 は 「20.

0×10 − 5 /℃」,吸水率は「23℃,水中24時間浸漬」において

「<0.01%」である(乙15)。上記吸水率をみると,樹脂部材

5はほとんど膨潤することはないから,吸水率を考慮する必要はない

と考えられるが,一応検出限界を物性値として計算を行う。

被告製品の樹脂部材5の半径方向の長さ(高さ)Hは,いずれも7o

であり,常温は「t 1 =20℃」とする。なお,原告は,食品原料(豆

腐原料の煮汁)の処理温度を「t 2 =105℃」としているが,被告製

品は圧力を加えて濾カスを前方に押し出すものではないから,食品原料

の処理温度がスクリュ4内部において100℃を超えることはなく,実

際の作業においては98℃程度にとどまると考えられるから,「t 2 =

98℃」とする。

上記物性に基づいて,膨張係数を「α」とした場合,熱膨張による樹

脂部材5の半径方向の伸びの長さ「Δh」は下記のとおり0.1092

oとなる。

Δh=α×(t 2 −t 1 )×H

Δh=20.0×10 −5 (98−20)×7=0.1092o

また,上記物性に基づいて,吸水率を「β」とした場合,膨潤による

樹脂部材5の半径方向の伸びの長さ「ΔH」は下記のとおり0.000

7oとなる。

20
ΔH=β÷100×H

ΔH=0.01÷100×7=0.0007o

したがって,樹脂部材5の熱膨張及び膨潤による半径方向の伸びは,

上記0.1092oと0.0007oの和である0.1099oとなり,

これはクリアランス6の大きさ(0.15〜0.20o)より小さいか

ら,熱膨張及び膨潤によってもクリアランス6は消失しない。

(エ) なお,被告製品は,0.15oのクリアランスが一様に形成される

ものではなく,樹脂部材5がスクリーン4の内周面に接触することもあ

り得るものであるが,前記イ(ア)のとおり,「摺接」とはスクレーパ機

構とフィルタエレメントが常に接することをいうところ,樹脂部材5が

一部においてスクリーン4の内周面と接するものであるとしても,「常

に」接するものでない以上,被告製品の樹脂部材5がスクリーン4の内

周面と「摺接」するものに当たらないことは明らかである。

(オ) したがって,被告製品は,「前記フィルタエレメントと摺接し」を

充足しない。

ウ 「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた」について

(ア) 原告の主張は争う。

(イ ) 出願経過による限定解釈

本件発明における「スクレーパ機構」の構成は,出願時には「スク

リュ状羽根の端面に,前記フィルタエレメントと摺接するスクレーパ

機構」(特許請求の範囲(1),乙16)と記載されていたものであるが,

平成6年3月25日付け手続補正書(乙17)において,「スクリュ

状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接する

スクレーパ機構」と補正された。しかし,特許庁は,平成7年2月2

0日付け拒絶査定(乙21の1)において,特開昭63−14751

0号公報(乙9)には,液体の自動ストレーナにおいて,スクリュー

21
コンベヤ型に構成された清掃部材4の外周端面全域に沿って円筒状の

多孔性エレメントの濾過面を擦洗するブラシを設けることが記載され

ているところ,特開昭63−126509号公報(乙19),実開昭

62−136205号公報(乙12),実開昭62−174611号

公報(乙13)を参照すると明らかなとおり,濾過装置の濾過エレメ

ントの清掃部材として,上記濾過エレメントに付着した固形物を引掻

除去するスクレーパを用いることは慣用技術であるから,上記特開昭

和63−147510号公報(乙9)に記載された装置において,単

にブラシをスクレーパとすることは当業者が容易になし得ることであ

るとして拒絶査定した。

これに対し原告は,拒絶査定不服審判を請求し,同審判手続におけ

る平成8年2月28日付け手続補正書(乙21の7)により,上記特

請求の範囲の記載を「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前

記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開け

ずに設けたスクレーパ機構」(下線部は補正部分である。)と補正し,

当該補正によって本件特許は特許審決されるに至ったものである。

上記の出願経過に照らせば,脱水処理装置においてフィルタの目詰ま

り防止のためにスクレーパ機構を設けることは慣用技術であり,本件発

明は,スクレーパ機構に関し,「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けず

に設けた」という限定的な構成を採用したことにより,特許性を付与さ

れたものであるから,上記構成を拡張解釈することは許されない。

(ウ) 被告製品の構成

a 被告製品の樹脂部材5は,スクリュ3の先端の全長にわたり,相

互に約10ないし15oの間隔7を開けて接合されているから,

「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた」を充足しない。

b な お , 前 記 イ (イ )で 主 張 し た と お り , 本 件 発 明 の 特 許 請 求 の 範

22
囲の記載は,物として通常存在する状態における「濾過システ

ム」を記述したものである上,「スクリュ状羽根の前後に隙間を

開けずに設けた」を拡張解釈することが許されないから,被告製

品が物として通常存在する状態(非作動時の状態)において間隔

7を有する以上,被告製品が「隙間を開けずに設けた」を充足す

ることはない。

c 加えて,間隔7は,作動時における熱膨張による樹脂部材5の

伸びを円周方向に逃がすために設けられたものであるから,作動

時に熱膨張や浸潤によって間隔7が消失することはあり得ず,作

動時の状態を前提にしたとしても上記の点を充足しない。

す な わ ち , 被 告 製 品 の 線 膨 張 係 数 及 び 吸 水 率 は 前 記 イ (ウ )で 主

張 し た と お り で あ り , 常 温 ( t1)及び食品原料の処理温度(t

2 )も前記イ(ウ)と同様(t 1 =20℃,t 2 =105℃)とした場

合,樹脂部材5のうち,最も長いもの(「SRE255−LPH」

の樹脂部材5のうち,最も食品原料投入口寄りに設置されるもの。

892o)の熱膨張による円周方向の伸びΔ? は,下記のとおり1

3.9oとなる。

Δ? =α×(t 2 −t 1 )×L

Δ? =20.0×10 −5 (98−20)×892=13.9o

また,上記物性値を前提とした上記樹脂部材5の膨潤による円周方

向への伸びΔLは,下記計算式のとおり0.0892oとなる。

ΔL=β÷100×L

ΔL=0.01÷100×892=0.0892o

したがって,上記樹脂部材5の熱膨張及び膨潤による円周方向への

伸びは,上記13.9oと0.0892oの和である13.989o

となり,これは,間隔7の大きさ(最大15o)より小さいから,熱

23
膨張及び膨潤によっても間隔7は消失しない。

なお,間隔7の大きさは10ないし15oであるが,被告各製品に

おける樹脂部材5の各ピッチ当たりの長さは32.3oから89.2

oまで様々であり,各ピッチ当たりの円周方向への伸びも5.0oか

ら13.9oまで様々であって,被告製品においては,各樹脂部材5

の長さ並びに熱膨張及び膨潤による伸びの大きさを考慮し,当該箇所

において間隔7が閉塞しないように間隔7を調整している。

(エ) したがって,被告製品は,「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けず

に設けた」を充足しない。

エ 「スクレーパ機構」について

(ア) 構成要件Cの「スクレーパ機構」とは,フィルタエレメントと摺接

し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けられた部材であって,

フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できるも

のをいうと解される。

(イ) そうすると,前記イ及びウで主張したとおり,被告製品の樹脂部材

5は,スクリーン4の内周面との間にクリアランス6を残し,かつ,相

互に間隔7を開けて接合されているものであって,スクリーン4の内周

面に付着した固形分を常に引掻除去する作用を有しない以上,被告製品

の樹脂部材5は構成要件Cの「スクレーパ機構」に当たらない。

オ したがって,被告製品は,構成要件Cを充足しない。

(4) 構成要件Dの充足性(争点(1)エ)

(原告の主張)

ア 被告製品の樹脂部材5は,スクリーン4の内周面に付着した固形物を引

掻除去するものであるから,構成要件Dを充足する。

イ 被告の主張について

(ア) 樹脂部材5とスクリーン4との間のクリアランス6が作動時に消失

24
することは構成要件Cに関する原告の主張のとおりであるから,樹脂部

材5はスクリーン4の内周面との間にクリアランス6を有し,スクリー

ン4の内周面に付着する固形物を引掻除去することはできないとの被告

の主張は失当である。

(イ) 被告は,樹脂部材5はスクリーン4との接触によるスクリーン4の

損傷又は摩耗を軽減するための部材であり,固形物を引掻除去するため

の部材ではないとも主張するが,そもそも,樹脂部材5とスクリーン4

が接触した場合,両者の材質からいって,損傷又は摩耗するのはスクリ

ーン4ではなく樹脂部材5であると解される上,もし,樹脂部材5がス

クリーン4を損傷又は摩耗を軽減させるだけのものであるなら,樹脂部

材5を取り外し,クリアランス6を大きくすれば,スクリュ3とスクリ

ーン4が接触することはなくなるのであって,樹脂部材5をスクリュ3

に取り付ける必要性はない。にもかかわらず,被告製品に樹脂部材5が

取り付けられているのは,樹脂部材5に,損傷又は摩耗の軽減とは別の

目的があるからに他ならず,上記目的とは,スクリーン内周面の目詰ま

り防止の点にあるとしか考えられない。

被告製品の樹脂部材5がスクリーン内周面の目詰まり防止のための部

材であることは,被告特許明細書に被告製品の樹脂部材5に相当する部

材が摺接部材18として表現されており,「摺接部材18は,スクリー

ン4内面を摺動して原料7をスクリーン4に押し付け,圧力の損失をな

くすと共にスクリーン4の目詰まりを防止するものであり,スクリーン

4よりも摩耗強度が弱くスクリーン面を良く滑ることができる樹脂等が

好適である」(被告特許明細書6欄1行〜6行)と記載されていること

からも明らかである。

(ウ) したがって,被告の主張はいずれも失当であり,被告製品は構成要

件Dを充足する。

25
(被告の主張)

ア 原告の主張は争う。

構成要件Dの「濾カス固形分を引掻除去できる」とは,本件明細書に

「スクレーパ機構を設けてフィルタエレメントの周面に摺接して引掻作用

で常に固形分を除去するので無理なく濾過作用が行われる」(2頁3欄2

6〜28行)と記載されていることにかんがみ,作動時において常に濾カ

ス固形分を引掻除去する作用を有することを意味するものと解されるとこ

ろ,前記(3)(構成要件Cの充足性)に関する被告の主張のとおり,被告

製品の樹脂部材5はクリアランス6及び間隔7を有し,常に濾カス固形分

を引掻除去するものではない。また,被告製品の樹脂部材5は,スクリー

ン4との接触によるスクリーン4の損傷又は摩耗を軽減するための部材で

あり,スクリーン4の内周面に付着した固形物を引掻除去するための部材

ではない。

したがって,被告製品は,構成要件Dを充足しない。

(5) 作用効果の同一性(争点(1)オ)

(原告の主張)

被告製品は,スクリュ3に樹脂部材5を設けることによって,目詰まり減

少や加圧力の洩れが生じることなく濾過を行うものであり,本件発明と同一

の作用効果を奏するものである。

(被告の主張)

ア 原告の主張は争う。

イ 本件発明は,スクレーパ機構がフィルタエレメントの周面に摺接してい

るため,@フィルタエレメントの濾過孔の目詰まり減少が生ずることなく,

粘性が強い固形物であっても必要に応じてフィルタエレメントの内周面か

ら除去することができ,無理なく濾過作用を行うことができ,A加圧力の

洩れが生じず,絞り濾過を非常に効率良く行うことができるという作用効

26
果を奏するものであるところ,被告製品は,樹脂部材5とスクリーン4の

内周面との間にクリアランスを有すること及び樹脂部材5は,スクリュ3

の1ピッチ毎に約10〜15oの間隔7を有して接合されているから,@

スクリーン4に設けられた細孔4aの目詰まり減少が生ずることがあり,

かつ,A上記クリアランスから加圧力が逃がされるものであって,本件特

許発明と同一の作用効果を奏しない。

2 争点(2)(本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものか。)に

ついて

(1) 争点(2)ア(本件発明は,乙7発明と同一の発明であって,特許法29条

1項3号に違反するものか。)

(被告の主張)

ア 乙7発明の内容

本件特許の出願日(平成1年4月28日)前に頒布された刊行物である

乙7文献には,下記の発明が記載されている(以下,下記のaないしeの

構成を,それぞれ「乙7発明a」などという。)。

a 被処理物にポンプ45で圧力を加えて前方に送りながら濾過を行うと

ともに,清掃用ブレード87が濾過式脱水用媒体48の内側表面74の

固形物を拭き取る濾過装置であって,

b フープあるいはリング56,56a,56b同士の間の環状空間58

を備えた濾過式脱水用媒体48の

c 内側表面74によく合致した排出用スクリューコンベア43のブレー

ドあるいはフライト76の外周端面全域にわたって清掃用ブレード87,

98が設けられ,上記清掃用ブレード87,98は,濾過式脱水用媒体

48の内側表面74との間で連続状に接触し,

d 清掃用ブレード87,98は,濾過式脱水用媒体48の内側表面74

からの固形物の効率的清掃を行う

27
e 固形物を拭き取りながら濾過を行う装置。

イ 乙7発明と本件特許発明との対比

(ア) 構成要件A,E

乙7発明a,eは本件特許発明構成要件A,Eと同一である。

(イ) 構成要件

乙7発明の「フープあるいはリング56,56a,56b同士の間の

環状空間58を備えた濾過式脱水用媒体48」は,本件特許発明のフィ

ルタエレメントの実施例(断面二等辺三角形状のワイヤ2のフラットな

底面2aを内側に保持しながら,頂角尖鋭部2bを外側にして多孔枠筒

3の内周に穿ったスパイラル状の溝4に係合して捲装し,隣り合うワイ

ヤ2間に所望の大きさのスリット孔5を形成するとともに,フラットな

底面2aにより捲回したワイヤ2の内周面をフラットαに形成したも

の)と同様の構成を有しており,本件特許発明の「筒状ないし円錐状の

所望の濾過孔を有するフィルタエレメント」に相当する。

したがって,乙7発明bと本件発明の構成要件Bは同一である。

(ウ) 構成要件

乙7発明の「濾過式脱水用媒体48の内側表面74によく合致した排

出用スクリューコンベア43のブレードあるいはフライト76」は,本

特許発明の「(フィルタエレメントの)周面に沿って回転するスクリ

ュ状羽根」に相当する。また,乙7発明の「清掃用ブレード87」は,

乙7の図2,13のとおり,汚泥入力端部51から固形物出力開口55

まで連続して形成されている「ブレードあるいはフライト76」の外周

端面全域にわたって設けられ,ばね作用あるいは拡張傾向によって,コ

イルばね式のブレード87と濾過式脱水用媒体48の内側表面74との

間に連続的接触をもたらすものであるから,本件特許発明の「前記フィ

ルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設け

28
たスクレーパ機構」に相当する。

したがって,乙7発明cと本件特許発明構成要件Cは同一である。

(エ) 構成要件

乙7発明dの「清掃用ブレード87,98」は,濾過式脱水用媒体4

8の内側表面74の表面から固形物の拭き取り,すなわち清掃を行うも

のであるから,乙7発明dと本件特許発明構成要件Dは同一である。

(オ) 作用効果

乙7発明の「清掃用ブレード87,98」は,ゴム又は軟質ポリ塩化

ビニル又は他のプラスチックからなるものであるところ,このような清

掃用ブレードが濾過式脱水用媒体42の内側表面に連続状に接触すれば,

加圧力の洩れが生じず,絞り濾過を効率よく行うことができるという本

特許発明同一の作用効果を奏することは明らかである。

(カ) なお,原告は,乙7発明において「清掃用ブレード87」とは別に

「ブレード100」が存在するから両発明の構成は同一ではないと主張

するが,乙7の抄訳8頁15行〜16行に「ブレード87あるいは98,

ノズル90およびブレード100は独立して利用することができる。」

と記載されているとおり,清掃用ブレード87とブレード100は別個

独立の部材であるから,ブレード100の存在は清掃用ブレード87と

「スクリュ状羽根の…スクレーパ機構」(構成要件C)が同一であるこ

とに影響しない。また,原告は,清掃用ブレード87のみでは濾過孔の

目詰まり除去及び摺接面の清掃を行うことはできないから,清掃用ブレ

ード87は「スクリュ状羽根の…スクレーパ機構」(構成要件C)に相

当しないとも主張するが,上記清掃を行うことができない理由を説明し

ておらず,失当である。

ウ したがって,乙7発明には本件特許発明構成要件AないしEの全てが

開示されており,本件特許発明は特許法29条1項3号に違反し,同法1

29
23条1項2号により,特許無効審判により無効とされるべきものに当た

る。

(原告の主張)

ア 被告の主張は争う。

イ(ア) 構成要件

本件発明は「濾カスに圧力を加えて濾過を行う」(構成要件A)もの

であるのに対し,乙7発明の技術は,スクリュにより汚泥を移送する中

で,液体分と固形分を分離して取り出すものにすぎず,圧縮・絞り作用

を有しないものであって,両発明はこの点で相違する。

(イ) 構成要件C,D

本件発明のスクレーパ片はフィルタエレメントの周面と摺接し,フィ

ルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去するものであ

り(構成要件C,D),スクレーパ片のみでフィルタエレメントの内周

面と濾過孔の目詰まり防止を行うものであるのに対し,乙7発明は,ス

クリュ羽根の外周に歯状の清掃用ブレード100を設け,リング状スリ

ット(濾過孔〔構成要件B〕に相当する。)に挿通回転させて目詰まり

除去を行うとともに,スクリュ羽根の外周縁に清掃用ブレード87を設

け,濾過式脱水用構造体42の内側表面74に付着するスラッジの固形

分を払い落としているものであり,乙7発明のブレード87は,内周面

に摺接し清掃(スクレーパ)を行うとともに,濾過孔の目詰まりを防止

する構成のものではない点で,本件発明の「スクレーパ機構」と相違す

る。

(ウ) 乙7発明はスクリュ羽根に通ずる案内孔を設けて空気又は水などの

流体を流通させ,ブレード87の先端にノズル90を設けて濾過筒の内

周面に吐出させ,付着物を外方に吐出させる構成を有しているが,これ

は,所望の液体の濃度が希釈され有害な結果を招くものであり,乙7発

30
明の構成は本件発明の目的に反するものである。

ウ したがって,本件発明は乙7発明と同一のものではなく,本件発明は乙

7発明によって無効とされるべきものではない。

(2) 争点(2)イ(本件特許発明は,乙7発明から容易に想到することができた

ものとして特許法29条2項に違反するか。)

(被告の主張)

ア 乙7発明と本件特許発明との相違点

乙7発明の内容及び本件発明との対比は前記2(1)ア及びイで主張した

とおりであるが,乙7発明と本件特許発明において相違する点があるとす

れば下記のとおりである。

(ア) 相違点1

本件発明は,「筒状ないし円錐状の…フィルタエレメント」(構成要

件B)を有するのに対し,乙7発明の「濾過式脱水用媒体48」は,円

錐状部分50の次に円錐台状部分53があり,その次に,より小径の終

端側円筒状部分54がある濾過式脱水用構造体42の形状に即した形状

となっている点。

(イ) 相違点2

本件発明の「所望の濾過孔を有するフィルタエレメント」が,本件明

細書に実施例として開示された構成のもの(断面二等辺三角形状のワイ

ヤ2のフラットな底面2aを内側に保持しながら,頂角尖鋭部2bを外

側にして多孔枠筒3の内周に穿ったスパイラル状の溝4に係合して捲装

し,隣り合うワイヤ2間に所望の大きさのスリット孔5を形成するとと

もに,フラットな底面2aにより捲回したワイヤ2の内周面をフラット

αに形成したもの)であるのに対し,乙7発明の「フープあるいはリン

グ56,56a,56b同士の環状空間58を備えた濾過式脱水用媒体

48」の構成が上記のものではない点。

31
イ 相違点の検討

(ア) 相違点1について

本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙8文献には,後部

に供給口21が,前部に排出口22がそれぞれ形成された前後に長

い筒状のケーシング20を備える脱水装置が開示されているところ,

当業者であれば,上記ケーシング20の形状を乙7発明の濾過式脱水用

媒体に適用して本件発明の構成要件Bと同一の構成とすることは容易で

ある。

(イ) 相違点2について

本件特許の出願前に頒布された刊行物である実開昭63−9204号

公報(以下「乙14文献」といい,同文献に開示された発明を「乙14

発明」という。)には,断面三角形状の線材3を捲装することによって

線材3の外表面に所望のスリット孔5を形成する構成が開示されており,

上記構成は本件明細書の実施例に記載されたものと同一であるところ,

当業者であれば,これを乙7発明の濾過式脱水用媒体48に適用して本

件明細書の実施例と同一の構成とすることは容易である。

ウ したがって,本件特許発明は,乙7,乙8,乙14に記載された各発明

に基づいて当業者が容易に想到することができたものであって進歩性を欠

くから,本件特許は特許法29条2項に違反し,同法123条1項2号

より,特許無効審判により無効とされるべきものに当たる。

(原告の主張)

被告の主張は争う。

(3) 争点(2)ウ(本件特許発明は,乙8発明から容易に想到することができたも

のとして特許法29条2項に違反するか。)

(被告の主張)

ア 乙8発明の内容

32
乙8文献(本件特許の出願前に頒布された刊行物であることについ

て は 前 記 2 (2)イ (ア )で 主 張 し た と お り で あ る 。 ) に は , 後 部 に 供 給

口21が,前部に排出口22がそれぞれ形成された前後に長い筒状の

ケーシング20を備え,ケーシング20内には,供給口21から投入,

供給される被処理物を排出口22側へ送りながらこれを圧搾させる中

空状の筒状シャフト30がケーシング20の前後方向に沿って回転可

能にして支承されるとともに,シャフト30の外周には螺旋状の送り

羽根31が突設され,ケーシング20には多数の水切孔23が穿設さ

れ,シャフト30外周とケーシング20内周との間で圧縮された被処

理物から絞出される水分をケーシング20外へ浸出させて排出する汚

泥その他の脱水処理装置が開示されている。

イ 本件発明と乙8発明の対比

(ア ) 乙8の被処理物は排出口22側に送られる際に圧搾されるもの

であるから,被処理物は加圧されるものであると解され,「濾カス

に圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うシステム」(構成

要件Aの「スクレーパ機構」を除く部分)に相当する。また,乙8

の「前後に長い筒状の多数の水切孔23が穿設されたケーシング2

0」は本件発明の「筒状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメン

ト」(構成要件B)に,「螺旋状の送り羽根31」は本件発明の

「フィルタエレメントの周面に沿って回転するスクリュ状羽根」

構成要件C)に各相当する。

(イ ) したがって,本件特許発明と乙8発明とは,「濾カスに圧力を

加えて前方に押し出しながら濾過を行うシステムであって,筒状の

濾過孔を有するフィルタエレメントの周面に沿って回転するスクリ

ュ状羽根を設けた濾過システム」という点で一致し,以下の点で相

違する。

33
(ウ ) 相違点

本件発明は,「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フ

ィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けず

に設けたスクレーパ機構を設けて前記フィルタエレメントの周面に

付着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなるスクレー

パ」を備える濾過システムであるのに対し,乙8発明はこのような

スクレーパを備えるものではない点。

(エ ) 相違点の検討

乙8文献の3頁右上欄4行〜10行には,ケーシング20の水切

孔23の目詰まりを防止するためにケーシング20の外部に清浄水

を噴射させることが記載されているから,乙8において,水切孔2

3の目詰まり防止という課題が示されているものということができ

る。乙7文献,特開昭62−282611号公報(乙10。以下

「乙10文献」といい,同文献に開示された発明を「乙10発明」

という。),特開昭63−126509号公報(乙11。以下「乙

11文献」といい,同文献に開示された発明を「乙11発明」とい

う。),実開昭62−136205号公報(乙12。以下「乙12

文献」といい,同文献に開示された発明を「乙12発明」とい

う。),実開昭62−174611号公報(乙13。以下「乙13

文献」といい,同文献に開示された発明を「乙13発明」とい

う。)は,いずれも,本件特許の出願前に頒布された刊行物に当た

るところ,乙7発明にはコイルばね式清掃用ブレード87を備える

脱水システムが,乙10発明にはスクレーパを配置した円筒状濾過

タンクが,乙11にはスクレーパブレード11を設けた可変目開き

型濾過装置が,乙12にはスクレーパシュー及びブラシを備える固

形燃料スラリ濾過用ストレーナが,乙13にはスクレーパを備える

34
スラリストレーナが各開示されているとおり,一般の脱水処理装置

においてフィルタの目詰まり防止のためにスクレーパ機構を設ける

ことは慣用技術であるから,上記課題解決のため,乙8発明の脱水

処理装置の送り羽根31にスクレーパ機構を適用することは当業者

にとって容易である。

また,乙8文献の4頁左上欄3行〜7行には,「ケーシング20

内で回転されるシャフト30の送り羽根31外縁とケーシング20

内周面とはいずれの部位でも密接状のものとすることができ,被処

理物の前方への送り込みを確実にする。」と記載されており,これ

は,送り羽根31の外縁に沿ってスクレーパ機構を設ける際に,ケ

ーシング20の内周面と摺接し,送り羽根31の前後に隙間を開け

ずに設けたものとすることについての動機付けとなるものであり,

慣用技術に基づき乙8発明に適用するスクレーパ機構につき,上記

動機付けに従い,ケーシング20内周面に摺接し,かつ,送り羽根

31の前後に隙間を開けずに設けたものとすることは当業者にとっ

て容易であるというべきである。

(オ ) したがって,本件特許発明は,乙8発明に乙7,10ないし13

文献に記載された慣用技術を適用することによって,当業者が容易に

想到することができたものであって進歩性を欠くから,本件特許は特

許法29条2項に違反し,同法123条1項2号により,特許無効審

判により無効とされるべきものに当たる。

(原告の主張)

ア 被告の主張は争う。

イ 乙8発明は,ケーシング20に水切孔23を設けるのみでなく,ケーシ

ング20内のシャフト30にも多数の脱水孔32を設け,水切孔23及び

脱水孔32により,被処理物の水分を機械的に脱水するものであって,被

35
処理物を押圧し,圧力の漏れを防いで搾汁処理するものではなく,本件特

許発明とは技術内容において明確に相違する。

ウ 乙8発明には,スクリュ羽根の外周端面全域に沿って設けられたスクレ

ーパ機構の構成は開示されていないところ,乙7,10ないし13文献に

開示された各発明には,いずれもスクリュ羽根に設けられるスクレーパ機

構の構成は開示されておらず,乙8発明に乙7,10ないし13発明を組

み合わせてスクレーパ機構を有する本件発明の構成とすることは容易では

ない。

すなわち,乙7発明に開示されたブレード100はリング状スリットの

目詰まり除去のみを行うものであり,内周面の付着物除去は清掃用ブレー

ド87で行うものであって,目詰まり防止及び内周面の清掃を同時に行う

スクレーパ機構が乙7に開示されていないことは争点(2)ア(本件発明は,

乙7発明と同一の発明であって特許法29条1項3号に違反するもの

か。)に関する原告の主張のとおりである。また,乙10発明はスクリー

ン部材により懸濁物含有液体を濾過分離する濾過装置において,スクリー

ン部材又はクリーナー機構を振動素子を介して微震動させる装置であるが,

スクレーパ機構は設けておらず,機能も構成も本件発明とは異質である。

乙11発明は目詰まりを起こすことなく長時間連続運転可能な可変目開き

型濾過装置において,スクレーパブレードを設けたものであるが,スクレ

ーパブレードは,スクリュ状羽根に設けられておらず,本件発明とは目的,

作用,効果が全く異質のものである。乙12は石炭等の固形燃料を水等の

液体と混合して粉砕し,固形スラリ燃料を製造するに当たり,固形スラリ

中の粗粒子を除去して,所定粒径以下の微粉粒子からなる固形スラリ燃料

を得るストレーナ装置において,スクレーパ機構を備えたものであるが,

スクレーパ機構は本件発明のようにスクリュ状羽根に設けたものとは異な

り,作用,目的,構成を異にした異質の技術内容である。乙13発明はス

36
ラリストレーナにおいて,スクリーンの内部に回転自在に設置されたシャ

フト及び上記シャフトに連設されるとともに上記スクリーン面に圧着され,

スクリーン面に沿って移動自在に設けられたスクレーパを備えたものであ

るが,スクリュ状羽根にスクレーパ機構を備えたものではなく,本件特許

発明とは異質の技術内容であるというべきである。乙14発明はフィルタ

ーエレメント用線材の掛止構造に係る技術であるが,いわゆる外装構造の

もので,本件発明のフィルタエレメントにはなり得ない全く異質の技術内

容である。

したがって,これらの技術を乙8発明に適用して,スクレーパ機構を有

する本件発明の構成に至ることは,当業者にとって容易ではないというべ

きである。

エ したがって,本件特許発明は,乙8発明から容易に想到することができ

たものには当たらない。

(4) 争 点 (2)エ ( 本 件 特 許 発 明 は , 乙 9 発 明 か ら 容 易 に 想 到 す る こ と が で

きたものとして特許法29条2項に違反するものか。)

(被告の主張)

ア 乙9発明の内容

本件特許出願前に頒布された刊行物である乙9文献には「自動スト

レーナ」が開示されており,その第1図ないし第4図は別紙乙9文献

図面のとおりであって,その円筒状の多孔性エレメント3内には同心

円状に回転軸5が設けられ,この回転軸5にスクリューコンベア型の

清掃部材4が固定配備されており,清掃部材4にはエレメント3の内

周 面 を 擦 走 ( 擦 過 清 掃 ) し 得 る ブ ラシ4 1 が 付 設 さ れ て い る こ と が 記 載

されている。

イ 本件発明と乙9発明との対比

(ア ) 乙9発明の「多孔性エレメント3」は本件発明の「筒状ないし

37
円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメント」(構成要件

B)に相当する。また,「スクリューコンベア型の清掃部材4」は

「スクレーパ機構」に相当するところ,清掃部材4が外周端面全域

に沿ってフィルタエレメントと摺接すること及びスクリュ状羽根の

前後に隙間を開けずに設けられていることは,乙9文献の図1に示

されており,「周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全

域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の

前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて」(構成要件

C)に相当する。

(イ ) したがって,本件発明と乙9発明は,「筒状ないし円錐状の所

望の濾過孔を有するフィルタエレメントの周面に沿って回転するス

クリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと

摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた清掃部材を

設けて前記フィルタエレメントの周面に付着した固形物を引掻除去

できるようにしてなることを特徴とするシステム」という点で一致

し,以下の点で相違する。

(ウ ) 相違点1

本件発明が濾カスに圧力を加えて濾過を行うものであるのに対し,

乙9発明の自動ストレーナは透過液に圧力を加えて濾過を行うもの

ではない点。

(エ ) 相違点2

本件発明はスクレーパ機構を有する濾過システムであるのに対し,

乙 9 発 明 の 自 動 ス ト レ ー ナ は 清 掃 部 材 4 に ブ ラ シ 41を 有 す る の み で ,

スクレーパ機構を有するものではない点。

ウ 相違点の検討

(ア ) 相違点1について

38
乙7文献に「ポンプ45が利用されるときには,入口圧力によっ

て送給汚泥の圧力が大気圧よりも高くなり」(抄訳3頁3行〜4

行)と,乙11文献に「このような装置において原液は加圧されて

第1図矢印に示すように,ケーシング1の下端の原液供給口2を経

て外側スクリーン5の下部から内側スクリーン8内に入り…」(3

頁右上欄18行〜左下欄1行)と記載されているとおり,脱水処理

装置において被処理物に圧力を加えることは公知であるから,これ

を乙9発明の自動ストレーナに適用して,被処理物(透過液)に圧

力を加える構成とすることは当業者にとって容易である。

(イ ) 相違点2について

前 記 (3)( 争 点 (2)ウ ) 被 告 の 主 張 イ (エ )で み た よ う に , 脱 水 処 理

装置においてスクレーパを設けることは乙7,10ないし13文献

に示されているとおり慣用技術であるところ,清掃部材であるブラ

シ 41を , 乙 7 文 献 に 記 載 さ れ て い る よ う な テ フ ロ ン , ゴ ム , 軟 質 ポ

リ塩化ビニル材料などからなるスクレーパに置き換えることは当業

者にとって容易であり,乙9発明の自動ストレーナにスクレーパ機

構を適用した装置は,本件発明の「スクレーパ濾過システム」に相

当することになる。

エ したがって,本件特許発明は,乙9発明に乙7,10ないし13文献

に記載された公知慣用の技術を適用して当業者が容易に想到することがで

きたものであって進歩性を欠くから,本件特許は特許法29条2項に違反

し,同法123条1項2号により,特許無効審判により無効とされるべき

ものに当たる。

(原告の主張)

ア 被告の主張は争う。

イ 乙9発明は,液体中に配設し,液体の流れを整えるために用いられ

39
る「自動ストレーナ」に関する技術であり,濾過も専ら上記目的のた

めに用いられるものにすぎず,濾過分離を対象とする技術とは認めら

れないから,乙9発明に本件発明に対応する構成は認められない。

3 争 点 (3)( 本 件 訂 正 に 基 づ く 訂 正 の 再 抗 弁 の 成 否 ) に つ い て

(1) 争 点 (3)ア ( 本 件 訂 正 は 訂 正 要 件 を 満 た す か 。 )

(原告の主張)

ア 本件訂正事項1

本件訂正のうち,「スクレーパ濾過システム」を「豆乳原液などの

被濾過液体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過システム」

と訂正する点は,一般的なスクレーパ濾過システムに係る広範な記載

を,豆乳原液などの被濾過液体を豆乳原液の液体分とオカラなどの固

体分とに分離することに限定したものであり,「豆乳原液など」の

「など」とは,豆乳原液に類する各種果汁等の食品を指すことが明瞭

に特定され認知できるものであり,特許請求の範囲減縮に該当する

ものである。

イ 本件訂正事項2

(ア ) 本件訂正のうち,「フィルタエレメントの周面」を「フィルタ

エレメントの排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁

を設置し,前記フィルタエレメントの周面」と訂正する点は,フィ

ルタエレメントの排出口に設けられる押圧弁の構成を明確に限定し,

フィルタエレメント内に配設されるスクリュ羽根とスクレーパ片と

の押圧作用を可変調節して応動する構成とし,各種食品の固形分の

搾汁効果を得られるように減縮したものであり,特許請求の範囲

減縮に該当するものである。

(イ ) 被告の主張について

訂正前の請求項1は,「筒状ないし円錐状の濾過孔を有するフィ

40
ルタエレメント」について明記しており,かつ,本件明細書の【発

明の詳細な説明】の〔実施例〕には,フィルタエレメントの具体的

構成について,被処理液体の導入口7及び排出口8並びに固形分取

出機構9が明記され,さらに,固形分取出機構9の排出口8に当接

する押圧弁17及び押圧弁17による固形分の搾汁効果の可変調節

について詳細な開示がされている。したがって,本件訂正事項2は,

上記のとおり本件明細書に開示された構成であるフィルタエレメン

トの排出口及び当該排出口を開閉する押圧弁を請求項1に付加し,

本件特許が目的とする搾汁効果の機構を明記したものにすぎず,か

つ,搾汁効果の可変調節機能については,フィルタエレメントが本

来具備すべき自明の構成に基づく本件発明の技術的特徴を付加減縮

したものにすぎないから,本件訂正事項2は,発明の具体的な目的

の範囲を逸脱してその技術的事項を変更する場合には当たらない。

ウ 本件訂正事項3ないし5

本件訂正事項3ないし5は,本件明細書の【特許請求の範囲】のう

ち,本件訂正事項1及び2によって訂正された記載と,【発明の詳細

な説明】の記載とを一致させ,もって,不明りょうな記載となること

を避けるため,本件明細書の〔課題を解決するための手段〕及び〔発

明の効果〕欄の記載を訂正したものである。

エ したがって,本件訂正は,いずれも訂正要件を満たすものである。

(被告の主張)

ア 原告の主張は争う。

イ 本件訂正事項2について

平成7年6月30日以前の特許出願については,平成6年12月1

4日法律第116号による改正前の特許法36条3項所定の明細書の

発明の詳細な説明」には,同条4項により,「その発明の目的,構

41
成及び効果を記載しなければならない。」と規定されていたため,

「その訂正によって特許請求の範囲減縮されるものであっても,訂

正前の請求項に記載された事項によって構成される発明の具体的な目

的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更する場合」(審判便覧54

−10)には訂正が認められないものとされていた。

本件訂正事項2は,「フィルタエレメントの排出口には固形分の搾

汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,」を付加することにより,

請求項1を減縮しようとするものであるが,本件明細書に記載された

本件発明の目的には,押圧弁による搾汁効果の可変調節については記

載されておらず,また,訂正前の請求項1に「押圧弁」に関する記載

もないことから,本件訂正事項2は,訂正前の請求項1に記載された

事実によって特定される発明の具体的な目的の範囲を逸脱するもので

ある。

そうすると,本件特許発明が平成1年4月28日出願に係るもので

あり,平成7年6月30日以前の特許出願に該当するものである以上,

本件訂正事項2は「具体的目的内の減縮」という訂正要件を満たさな

いものであり,平成23年6月8日法律第63号による改正前の特許

134条の2第5項で準用する同法126条4項に規定する訂正要

件を満たしていない。

(2) 争 点 (3)イ ( 被 告 製 品 が 本 件 訂 正 後 の 本 件 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 に 属 す

るか。)

(原告の主張)

ア 本件訂正発明の構成要件を分説すると,下記のとおりとなる(以下,

構成要件訂正A」などという。)。

A 濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う豆乳原液

などの被濾過液体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過シ

42
ステムであって,

B 筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの

C 排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し

D 前記フィルタエレメント周面に沿って回転するスクリュ状羽根の

外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリ

ュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて

E 前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除

去できるようにしてなることを特徴とする

F スクレーパ濾過システム。

イ 被告製品はスクリュ3の回転作用により,豆乳原液などの食品原料

を下方に押し出しながら絞り込み,スクリーン4により,圧搾分離液

と脱水粕に濾過分離する搾り機であるから,構成要件訂正Aを充足す

る。

ウ 被告製品は,スクリーン4の排出口付近に閉止用蓋13を配設して

いるところ,上記閉止用蓋13は,ピッチ内の内圧がバネの付勢力を

超えると押し下げられるようになっており,ツマミを回転することに

よって,上記閉止用蓋13の押圧力が調整できるようになっているも

のであるから,「固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁」(構成

要件訂正C)に相当し,被告製品は,構成要件訂正Cを充足する。こ

れは,被告製品の説明書(乙1)に,「圧縮バネがゆるんでいる」と

「オカラの絞りが悪くなる」とか,「搾りすぎによるオカラ詰まりが

生じたとき」は「圧縮バネを緩める」などと記載されていることから

も明らかである。

エ その他の構成要件は本件訂正により変更されていないから,被告製

品は,本件訂正後の構成要件をすべて充足し,被告製品は本件訂正発

明の技術的範囲に属する。

43
(被告の主張)

ア 原告の主張のうち,事実に関する点は否認し,法的主張は争う。

イ 本件明細書の1頁2欄2〜3行には「この発明は,特に粘度の高い

流体の濾過に好適なスクレーパ濾過システムに関する。」と,同欄5

〜8行には「一般に粘度の高い豆乳原液などの濾過は,…原始的な濾

過によって処理しているものが多い。」と,同欄10〜15行には

「最近に至り,本発明者は…濾過処理できる装置,方法を開発したが,

固形分に粘性があり,その粘度が高い目詰まりという不都合が生ずる

ことが判明した。」と各記載され,3頁6欄25行には「その他の機

械的切削油の固液分離」が例示されているのであるから,構成要件

正Aの「被濾過液体」は高粘度の流体を指すと解するべきであり,豆

乳原液は高粘度の流体の一例として例示されたものと解するのが相当

である。そうすると,被告製品における被濾過液体は高粘度の流体に

限らないから,被告製品は,構成要件訂正Aを充足しない。

構成要件訂正Cについて

被告製品の閉止用蓋13は,単に脱水粕の排出量を調整するための

ものであり,スクリーン4内の圧力を調整して搾汁効果を可変調節す

るものではないから,被告製品は,構成要件訂正Cを充足しない。

被告製品では,食品原料の供給において,最上部のスクリュ3の上

段の1ピッチの容積に対して約19〜23%以内となる量しか供給し

ない。したがって,スクリュ3内は加圧状態で運転されるものではな

い。しかし,最下方側では次々と移送されてくる食品原料によって圧

力が高まり脱水が促進される。そして,最下方側ではバネ12によっ

て付勢された閉止用蓋13によって閉塞されているので次々と移送さ

れてくる食品原料の脱水粕が次第に充満してくる。そこで,脱水粕が

送られてくる速度と脱水粕を閉止用蓋13の隙間から排出するための

44
開度とを均衡させることにより最下方側のピッチ内の脱水粕の圧力を

維持した状態で脱水粕を連続的に排出するようにしたものである。

(3) 争 点 (3)ウ ( 本 件 訂 正 に よ り 争 点 (2)の 無 効 理 由 を 解 消 す る こ と が で

きるか。)

(原告の主張)

ア 争 点 (2)ア , イ ( 乙 7 発 明 に 基 づ く 無 効 理 由 ) に 相 当 す る 無 効 理 由

について

(ア ) 本件訂正発明は,豆乳原液などの各種食品を対象とし,濾過し

た液体分(豆乳)及び固形分(オカラ)を食物として利用するため

のスクレーパ濾過システムであるのに対し,乙7発明は,汚泥を対

象とする清掃機構である。前者は,食品として用いるため,濾過さ

れる液体分への固形分の混入は排除されなければならないが,後者

は,濾過される汚水中に微細な固形分が混入したとしても格別問題

となることはない。

したがって,両発明は技術分野を明確に異にするものであるから,

汚泥濾過を目的とする乙7発明の技術を本件訂正発明に適用するこ

とには阻害要因があるというべきである。

なお,被告は,本件訂正によっても,本件訂正発明は食品用の濾

過を対象とするものに限定されないと主張するが,そもそも本件発

明は,豆乳原液の濾過を前提とし,豆乳原液を固体分及び液体分に

分離濾過する過程で搾汁,絞りを有効に行わせるための構成,シス

テムを開示したものであるところ,本件訂正により,機械的切削油

の固液分離への適用を除外することにより,食品用の濾過を対象と

することをより明確にしたものであり,本件訂正により,対象を食

品とするものに減縮されたことが明らかである。

(イ ) また,乙7発明を食品の濾過に適用したとしても,乙7発明は

45
後述のとおり押圧弁に相当する構成を有しておらず,被処理物に圧

力を加えて濾過を行うものでもないから,本件訂正発明における圧

縮作用による搾りなどの機能構成はない。このように,乙7発明の

技術内容には,単に汚泥中の液体分と固形分との濾過分離について

の構成が示されているのみで,スクリュ状羽根,スクレーパ機構及

び押圧弁による圧力漏れを防いだ搾汁効果について全く示唆がなく,

本件訂正発明に至る動機付けは皆無である。また,本件訂正発明で

は,濾過孔の目詰まりに対してはスクレーパ片の引掻作用で取り除

いているのに対し,乙7発明では濾過筒内周面の清掃と濾過孔の目

詰まり防止のために,それぞれ異なる構成の清掃用ブレード87と

カッターあるいは長穴清掃用ブレード100を必要としている。か

かる構成は,汚泥の固液分離を実施するために不可欠な構成である。

このように,乙7発明の技術には,スクレーパ機構のみによって食

品を対象とする濾過を行うという示唆ないし動機付けは全く認めら

れない。

(ウ ) さらに,本件訂正により,本件訂正発明には,フィルタエレメ

ントの排出口に食品の種類や濾過条件に応じて圧力を調整すること

が可能な押圧弁の構成が付加されたところ,乙7発明には,作動初

期の泥分を集積するキャップが排出口付近に存在するのみであり,

上記キャップは,泥分がまとまった量に達した後においては開口し

て汚泥を連続的に排出するものであるから,乙7発明に上記押圧弁

に相当する構成は存在せず,乙7発明と本件訂正発明が同一の構成

のものともいうことができない。

(エ ) 以上のとおり,本件訂正発明と乙7発明とでは技術の基本的構

成を異にしており,その結果,本件訂正発明の技術で汚泥濾過をし

ようとすると,本件訂正発明には乙7発明の常時清掃用ブレード1

46
00のような機構がないため目詰まりが生じ,さらに本件訂正発明

には可変調節自在な押圧弁を備えているので,汚泥のスクリュ状羽

根による円滑な移送は阻止され,汚泥の円滑な濾過分離は全く不可

能となる。他方,乙7発明の技術で食品濾過をしようとすると,押

圧搾汁作用を発揮することができず,食物繊維質がスリットの濾過

孔を清掃するブレードに絡んでスクリュ状羽根の回転を阻害するこ

とになる。

このように,本件訂正発明と乙7発明とでは,技術の基本的構成

を異にするから,本件訂正発明が乙7発明と同一であるということ

はできないし,乙7発明から本件訂正発明を容易に想到できるもの

でもなく,本件訂正発明は,乙7発明により無効とされるべきもの

ではない。

(オ ) なお,原告は,米国において,本件訂正発明に係る特許出願を

優先権主張の基礎として特許出願したところ,乙7発明を引用技術

として提示されることなく特許査定を受けた。国際的な審査の共通

性を目指す国際協調の実情に即し,米国特許制度における上記判断

は尊重されるべきである。

イ 争 点 (2)ウ ( 乙 8 発 明 に 基 づ く 無 効 理 由 ) に 相 当 す る 無 効 理 由 に つ

いて

(ア ) 乙8発明は,乙7発明と同様に,汚泥その他の脱水処理装置に

関するものであるから,乙8発明と本件訂正発明の技術内容は相違

する。乙8発明を各種食品用の濾過装置に関する技術である本件訂

正 発 明 に 適 用 す る こ と に は 上 記 ア (ア )と 同 様 に 阻 害 要 因 が あ る 。

(イ ) また,本件訂正発明の濾過孔がフィルタエレメントのみに設け

られるものであり,かつ,スクレーパ片を備えたスクリュ状羽根で

食品原料を押圧することにより圧力の洩れを防ぎ,押圧弁との間で

47
可変自在の挟持圧で搾汁処理させて,種々の食品に適合した圧力を

加えることができる技術内容であるのに対し,乙8発明は,ケーシ

ングのみではなくシャフト30にも脱水孔を有する構成によって,

ケーシング内を移送される被処理物の液体分を単に機械的に分離す

るものであって,この点でも両発明の技術内容は明確に相違するも

のである。

(ウ ) したがって,本件訂正発明は,乙8発明によって無効とされる

べきものではない。

ウ 争 点 (2)エ ( 乙 9 発 明 に 基 づ く 無 効 理 由 ) に 相 当 す る 無 効 理 由 に つ

いて

乙9発明の技術分野が本件訂正発明と技術分野を異にするものであ

る こ と は , 前 記 2 (4)( 原 告 の 主 張 ) イ の と お り で あ る 。

また,本件訂正発明には,フィルタエレメントの排出口に食品の種

類や濾過条件に応じて圧力を調整することが可能な押圧弁の構成が付

加されたところ,乙9発明には上記押圧弁に相当する構成は存在しな

い。

したがって,本件訂正発明は,乙9発明により無効とされるべきも

のではない。

エ 特許法36条6項2号による無効理由の主張について

被告の主張は争う。

オ し た が っ て , 本 件 訂 正 に よ り , 争 点 (2)の 無 効 理 由 は い ず れ も 解 消

することができるものである。

(被告の主張)

ア 原告の主張はいずれも争う。

イ 阻害要因の不存在

本件訂正は,本件訂正発明の対象を食品に限定するものではなく,

48
かつ,「圧搾」を行うものである点で乙7,8発明と同一のものであ

ることは本件訂正によっても変わらないから,本件訂正発明と乙7,

乙8発明は同一の技術分野に属するものであり,乙7,乙8発明を本

件訂正発明に適用することに何ら阻害要因はない。

すなわち,構成要件訂正Aの「豆乳原液などの被濾過液体」におけ

る「豆乳原液など」は,単なる「被濾過液体」の例示にすぎず,上記

文言から,「被濾過液体」が食品に限定されることを認めることは,

日本語の構文解釈として採ることはできない。また,本件明細書の記

載上,被濾過液体は高粘度の流体であることが前提とされており,豆

乳原液は高粘度の流体の一例として例示されたものにすぎず,食品を

例示するものとして記載されたものと解釈するべきではない。したが

って,本件訂正は,本件訂正発明の対象を食品に限定するものではな

く,乙7,8発明と本件訂正発明は用途を異にするものではない。ま

た,仮に本件訂正発明の対象が食品に限定されるものであるとしても,

本件訂正発明と乙7,8発明は,いずれも「圧搾」を内容とするもの

である点で技術分野を同一にするものである。

ウ 乙7,8発明による進歩性欠如の無効理由

(ア ) 乙7発明を主引例とする無効理由

本件訂正は,本件特許発明に係る構成に「フィルタエレメントの

排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設」する

という構成を付加するものであるが,乙8文献の3頁左上欄14行

〜右上欄3行には「図中24は搾り機構であり,図示のように,シ

ャフト30前端に外嵌固定したドーナツ状固定部25とケーシング

20前端開口である前記排出口22を略閉塞するドーナツ円錐状押

圧盤27との間に押圧スプリング26を介在して成り,押圧スプリ

ング26の排出口22がわへの押圧力を変更することで圧縮されて

49
半ば固形化される被処理物に対しての貯留室16がわへの排出を規

制し,被処理物の含水率すなわち脱水率の調整を可能とする。」と

の記載があるところ,上記「ドーナツ円錐状押圧盤27」,「排出

口22」,「被処理物の含水率すなわち脱水率の調整を可能とす

る。」は,それぞれ構成要件訂正Bの「押圧弁」,「フィルタエレ

メントの排出口」,「搾汁効果を可変調節できる」に相当する。

原告は,乙7発明においては,清掃用ブレード87とは別にブレ

ード100が存在するから,スクレーパ機構のみを備える本件訂正

発明とは異なると主張する。しかし,ブレード100は,スクレー

パ機構に相当するブレード87あるいは98とは別個独立した部材

であって,清掃用ブレード87が本件訂正発明の「スクリュ状羽根

の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構と同一の機構である

ことは明らかである。

乙7文献には,訂正前の本件特許発明に係る構成がすべて開示さ

れているのであるから,当業者であれば乙7発明に乙8文献に記載

された「ドーナツ円錐状押圧盤27」を付加して本件訂正発明に至

るのは容易になし得ることである。

(イ ) 乙8発明を主引例とする無効理由

乙8発明に「押圧弁」に相当する「ドーナツ円錐状押圧盤27」

が 開 示 さ れ て い る こ と は 前 記 (イ )の と お り で あ る と こ ろ , こ れ に 乙

7,10ないし13文献に示されたスクレーパ機構を適用して本件

訂 正 発 明 と す る こ と が 当 業 者 に と っ て 容 易 で あ る こ と は , 争 点 (2)

ウに関する被告の主張において述べたとおりである。

エ 特許法36条6項2号違反

構成要件訂正Aの「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾

過を行う豆乳原液などの被濾過液体より液体分と固形分に分離するス

50
クレーパ濾過システム」のうち,「豆乳原液など」がどの範囲を示す

のか不明確であるから,本件訂正発明は,特許法36条6項2号に規

定される要件を満たしておらず,同法123条1項4号に該当し,無

効とされるべきものである。

4 争 点 (4)( 損 害 額 )

(原告の主張)

(1) 被告は,本件特許登録後の平成8年9月から本件特許権が消滅する

平成21年4月28日までの間に,被告製品(単価850万円)を少な

くとも50台製造販売しており,その売上高は4億2500万円を下ら

ないところ,その利益率は30%と推定されるので,被告の得た利益は

1億2750万円を下らない。

(2) したがって,1億2750万円が,本件特許権侵害に基づく原告の

損害額と推定される(特許法102条2項)。

(被告の主張)

原告の主張のうち,事実については否認し,法的評価については争う。

第4 当裁判所の判断

1 争 点 (1)( 被 告 製 品 は , 本 件 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 に 属 す る か 。 ) に つ

いて

(1) 争 点 (1)ア ( 構成要件Aの充足性)について

ア 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」

(ア) 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」の意義

a 本件明細書には,次の記載がある。

「〔産業上の利用分野〕

この発明は,特に粘度の高い流体の濾過に好適なスクレーパ濾過

システムに関する。

〔従来の技術〕

51
一般に粘度の高い豆乳原液などの濾過は,濾過孔が大きいものか

ら小さいものに変わって行く多段階による濾過とか,メッシュを使

った原始的な濾過によって処理しているものが多い。

〔発明が解決しようとする課題〕

最近に至り,本発明者は筒状ないし円錐状のフィルタエレメント

を用い,スクリュ状羽根を用いてフィルタエレメントの周面に付着

する濾カス固形分を除去しながら濾過処理できる装置,方法を開発

したが,固形分に粘性があり,その粘度が高い目詰まりという不都

合が生じることが判明した。そこで,さらにスクリュ状羽根に支柱

を設け,この支柱よりスクレーパを突出させてフィルタエレメント

の周面と摺接させ,直接フィルタエレメント周面の附着固形物を引

掻いて除去する方法,装置を開発したが,折角,除去された固形物

がスクレーパの支柱部分で溜り,そこで附着状態が成長して了うと

いう不都合が分った。この発明は,かかる不都合を無くし,フィル

タエレメントの目詰まりがなく,かつ,絞り効果が大きく濾過効率

の高いスクレーパ濾過システムを提供することを目的とする。」

(2頁2欄1行ないし3欄10行)

「〔作用〕

被処理流体は,スクリュ状羽根の回転作用によってフィルタエレ

メントに形成される濾過孔に相当する大きさ以上の固形分を残して

濾過流体を得ることができる。…スクレーパ機構がスクリュ状羽根

の前後に隙間を開けずに,フィルタエレメントと常に接しているた

め,加圧力の洩れが生ずることなく濾カスを前方に押し出すので,

非常に効率の良い絞りが得られる。また濾カス固形分は,柱等がな

いので滞留することなくスクリュ状羽根によって一方向に押し出さ

れる。」(2頁3欄23行〜34行)

52
「〔発明の効果〕

この発明によれば,・・・スクレーパ機構がスクリュ状羽根の前

後に隙間を開けずに設けられ,その全域がフィルタエレメントに摺

接していることにより,加圧力の洩れが生じることがなく,濾過固

形分を前方に押しやるので,絞り濾過を効率よく行うことができ

る。」(3頁6欄5行〜17行)

b 本件明細書の上記記載によれば,従来技術においては,粘度の高

い豆乳原液などの濾過を行う際に,濾過孔の大きさが徐々に小さく

なる多段階の濾過装置や,メッシュを使った原始的な濾過装置が用

いられていたにすぎなかったところ,上記従来技術に代えて,筒状

ないし円錐状のフィルタエレメントの内部で回転するスクリュ状羽

根を用いた装置・方法を採用することで,濾カスに圧力を加えて前

方に押し出し,かつ,フィルタエレメントの周面に附着する濾カス

固形分を除去しながら濾過を行うことを可能とした(従来の改良技

術1)。しかし,同装置・方法において,粘性固形分の目詰まりと

いう不都合が判明したため,上記不都合を解決するため,上記装

置・方法を,スクリュ状の羽根に支柱を設け,当該支柱からスクレ

ーパを突出させてフィルタエレメントの周面と摺接させ,同周面上

の附着固形物を直接引掻除去することができるものとしたところ

(従来の改良技術2),なお,除去した固形分がスクレーパの支柱

部分で溜まり,濾過に支障を来すという不都合が判明したことから,

本件発明に至ったものと理解することができる。そうすると,本件

発明は,従来技術(多段階による濾過,メッシュを使った原始的濾

過等)を改良した従来の改良技術1・2(フィルタエレメント内を

回転するスクリュ状羽根を用いることにより,濾カスに圧力を加え

て前方に押し出しながら濾過を行うことができ,かつ,スクリュ状

53
羽根に支柱を設けてスクレーパを突出させ,フィルタエレメント周

面と摺接させることで,周面に附着する粘性固形物を除去すること

ができる技術。以下「従来改良技術」という。)を前提とし,スク

レーパ機構の形状等に関し,スクリュ状羽根の外周端面全域に沿っ

てスクレーパ機構を前後に隙間なく設けたものとし,これをフィル

タエレメントの周面に摺接させるという,構成要件Cに係る構成を

採用することによって,フィルタエレメントの周面に付着する濾カ

ス固形分を引掻除去し,これが滞留することなく押し出されるよう

にするとともに,スクリュ状羽根の回転作用によって濾カスを前方

に押し出し,かつ,濾カスを前に押し出す作用によって生じる加圧

力が,フィルタエレメントの周面とスクリュ状羽根との間の隙間に

よって洩れることがないようにしたものであるということができる。

そして,構成要件Aは,その文言,構成要件C,Dの記載との対比

及び前記従来改良技術についての本件明細書の記載内容からみて,

上記の従来改良技術を含むスクレーパ機構付きのスクリュ状羽根に

よる濾過システムをいうものと解することができるから,構成要件

Aの「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」と

は,上記のとおり前提となる従来改良技術の内容を参酌し,スクリ

ュ状羽根の回転作用によって濾カスを前方に押し出し,押し出す作

用によって濾カスに圧力を加えることを意味するものと解するのが

相当である。

(イ) 被告製品の充足性

前記前提事実(3)イのとおり,被告製品の構造は,いずれも別紙被告

製品図面のとおりであるところ,証拠(甲7,乙1)及び弁論の全趣旨

によれば,被告製品において,投入口8から投入された食品原料は,ス

クリュ3がスクリュ駆動モーターによって回転することにより下方に移

54
送され,徐々に上記スクリュ3の羽根,スクリーン4内周面及びスクリ

ュ3の回転軸との間に形成された空間(以下,上記空間を指して「ピッ

チ」という。)内に充満し,スクリュ3の羽根の回転作用によって食品

原料が下方に押し出されることによって,ピッチ内の圧力が高まり,脱

水が促進されることが認められ,被告製品は,スクリュ3の羽根の回転

により,食品原料に対し,前方に押し出し,食品原料に圧力を加えて,

固形分を残して脱水する力を加えるものであることが認められる。

よって,被告製品は「濾カスに圧力を加えて」前方に押し出し,濾過

を行うものであると認められる。

この点に関し,被告は,被告製品はほとんど無圧で運転されるもので

あり,外部から圧力を加え,その加圧力で食品原料を前方に押し出した

り,脱水したりするものではないと主張する。この主張は,本件発明が

外部からの加圧力により食品原料を前方に押し出す発明であることを前

提としているが,本件発明の加圧力は,前記のとおり,スクリュ状羽根

の回転作用により,濾過流体が前方に押し出されることによって濾過流

体に生じる加圧力を意味しているから,被告の主張がそれ以外の加圧力

をもって「外部からの加圧力」と主張しているのであれば,被告の主張

は正当でない。そして,被告製品図面記載の被告製品の構造上,被告製

品において,スクリュ3の回転により食品原料が前方に移送されること

及び食品原料がピッチ内に充満した時点において,スクリュ3の回転に

よる食品原料の前方への押し出しが食品原料の圧力を高め,脱水を促進

する働きをすることは明らかである。

また,被告は,ピッチ内の食品原料の圧力が高まるのは,各ピッチの

容積が徐々に減少するためであって,スクリュ3によって外力が加えら

れるためではないとも主張するが,仮に各ピッチの容積が徐々に減少す

るものであるとしても,それによって,スクリュ状羽根の回転による食

55
品原料の前方への押し出しがなくなるわけではないから,仮に各ピッチ

の容積が徐々に減少したとしても,それによって,スクリュ状羽根の回

転による加圧作用がなくなるわけではなく,被告の主張は失当である。

また,食品原料に押し出しという外力が加えられない限りは,ピッチ内

の食品原料の圧力が脱水を可能とするほどに高まるものとは考え難く,

この点においても被告の主張を採用することはできない。

さらに,被告は,被告製品のスクリュ3の羽根の外周端面に取り付け

られた樹脂部材5とスクリーン4の内周面との間にはクリアランス6が

形成されており,かつ,樹脂部材5は,相互に間隔7をもって取り付け

られているところ,上記クリアランス及び間隔から加圧力が洩れてしま

う構造となっていることからも,被告製品が「濾カスに圧力を加えて」

濾過を行うものでないことが裏付けられると主張する。

しかし,「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う」

ことの意義は,前記のとおり,スクリュ状羽根の回転によって,濾過流

体を前方に押し出し,これに圧力を加えることを意味するのであるから,

加圧力の洩れの有無にかかわらず,このような構成で加圧が生じていれ

ば,構成要件Aは充足するのであって,被告の主張は,加圧力の洩れを

防止するための構成である構成要件Cと構成要件Aとを混同するもので

あって,被告の主張は採用することができない。

また,被告は,被告製品の投入口から投入される食品原料の供給量は,

1ピッチの容積に対して約19〜23%以内とされるから,投入口から

の食品原料の供給によって,濾カスに圧力が加えられることはないと主

張するが,本件で問題となるのは,被告製品の構成であって,その使用

方法ではないから,被告製品の構成が構成要件Aを充足するのであれば,

その利用態様の如何によって構成要件の充足性が左右されるものではな

く,被告の主張は採用することができない。

56
イ 「スクレーパ濾過システム」

上記ア(ア)でみたとおり,本件発明において「濾過」とは被処理流体か

ら一定の大きさ以上の固形分を残して濾過流体を得ることをいい,「濾過

システム」とは上記作用を奏する機器を指すものと解されるところ,被告

製品は食品原料を液状の圧搾分離液と脱水粕とに分離する搾り機であるか

ら(この点の構成については当事者間に争いがない。),「濾過システ

ム」に当たることは明らかである。

本件特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Aの「スクレーパ」は,

構成要件Eの「スクレーパ」と異なり,構成要件C,Dのような限定の付

されていない「スクレーパ」を意味するものと解されるところ,本件明細

書によれば,従来技術におけるスクレーパに関し,「そこで,さらにスク

リュ状の羽根に支柱を設け,この支柱よりスクレーパを突出させてフィル

タエレメントの周面と摺接させ,直接フィルタエレメントの周面上の附着

固形物を引掻いて除去する方法,装置を開発したが,折角,除去された固

形分がスクレーパの支柱部分で溜り,そこで附着状態が成長して了うとい

う不都合が分かった。」(2頁3欄1行〜6行)との記載があり,この記

載を参照すれば,構成要件Aにおけるスクレーパとは,スクリュ状羽根に

設けられてフィルタエレメントの周面に附着した固形物を引掻除去する装

置を意味するものと解するのが相当である。

構成要件Aにおいては,本来,このような広い意味での「スクレーパ」

を充足するか否かを判断すれば足りるものと解されるが,実際のところは,

被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かを判断するについては,

被告製品の構成において具体的に特定されるスクレーパが,構成要件Cの

「…スクレーパ機構を設けて」を充足するか否か,構成要件Dの「前記フ

ィルタエレメントの周面に付着する濾カスを引掻除去できるようにしてな

ることを特徴とする」を踏まえた構成要件Eの「スクレーパ」を充足する

57
か否かを判断しなければならないのであり,これらの構成要件C,Eを充

足する場合には,当然に,構成要件Aの「スクレーパ」を充足するものと

解されるから,被告製品の構成要件Aの「スクレーパ」充足性については

構成要件C及びDの検討を踏まえて判断する。

(2) 争点(1)イ(構成要件Bの充足性)について

ア 被告製品は,円錐状のスクリーン4を有し,上記スクリーンには,多数

の細孔4aが形成されており,食品原料の圧搾分離液は,上記細孔から脱

水されるものであることが認められる(乙1)から,被告製品は,構成要

件B(「筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメント

の」)を充足する。

イ 被告は,構成要件Bの「フィルタエレメント」は,スクレーパ機構が常

に接することに耐え得る堅固な構造を有するものであることを要すると主

張するが,上記主張は,本件明細書の〔実施例〕に例示されたフィルタエ

レメントの構造に基づくものである。しかし,本件明細書には「フィルタ

エレメント」を堅固な構造を有するものに限定する記載はなく,むしろ,

「この発明について一実施例を説明したが,ことに円筒状フィルタエレメ

ントは図示の構成の他,例えばパンチングメタルとかポーラス構造のもの

など,好みの濾過孔を備えた円筒状フィルタについても同様に実施できる

ことはもちろんである。」(3頁5欄34行〜38行)と記載されている

のであるから,構成要件Bの「フィルタエレメント」を限定解釈するのは

相当ではなく,被告の主張は採用できない。

(3) 争点(1)ウ(構成要件Cの充足性)について

ア 「前記フィルタエレメントと摺接し」

(ア) 「摺接」の意義

「摺接」とは一般に「滑る状態で接すること」(特許技術用語集,乙

5)をいうが,本件特許発明技術的特徴に照らし,技術的見地から上

58
記文言の意義をさらに検討すると,本件明細書には,「〔発明が解決し

ようとする課題〕」として「最近に至り,本発明者は筒状ないし円錐状

のフィルタエレメントを用い,スクリュ状羽根を用いてフィルタエレメ

ントの周面に附着する濾カス固形分を除去しながら濾過処理できる装置,

方法を開発したが,固形分に粘性があり,その粘度が高い目詰りという

不都合が生ずることが判明した。…この発明は,かかる不都合を無くし,

フィルタエレメントの目詰りがなく,かつ,絞り効果が大きく濾過効率

の高いスクレーパ濾過システムを提供することを目的とする。」との記

載(1頁2欄10行〜2頁3欄10行)が,「〔作用〕」として「スク

リュ状羽根の周面には,スクレーパ機構を設けてフィルタエレメントの

周面に摺接して引掻作用で常に固形分を除去するので無理なく濾過作用

が行われる。しかも,スクレーパ機構がスクリュ状羽根の前後に隙間を

開けずに,フィルタエレメントと常に接しているため,加圧力の洩れが

生ずることなく濾カスを前方に押し出すので,非常に効率の良い絞りが

得られる。」との記載(2頁3欄26行〜32行)があることが認めら

れる。

そうすると,本件発明は,濾カスに圧力を加えて前方に押し出しなが

ら濾過を行う機器において,フィルタエレメントの周面に固形物が付着

し濾過孔が目詰まりを起こすという課題を解決し,絞り効果が大きく濾

過効率の高い濾過システムを提供するために,スクリュ状羽根の周面に

フィルタエレメントに摺接するスクレーパ機構を設けたものであり,

「摺接」とは,濾カスに圧力を加え前方に押し出して濾過を行うに当た

り,フィルタエレメントの周面に付着する固形物を除去し目詰まりを解

消し,かつ,濾過効率を低めるような加圧力の洩れを生じないという機

能を果たすことができる距離に近接していることをいうと解するのが相

当である。本件明細書の〔発明が解決しようとする課題〕の他の部分の

59
「摺接」の記載(2頁3欄3行),〔課題を解決するための手段〕にお

ける「摺接」の記載(2頁3欄16行)もいずれも同様の意義を有する

ものと解される。

そうすると,「摺接」を充足するためには,フィルタエレメントの周

面とスクレーパ機構が,上記機能を果たすことができる距離に近接して

いれば足り,両者の間に物理的な距離がないことまでは必要ではなく,

むしろ,上記スクレーパ機構がフィルタエレメントの周面に沿って回転

するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って設けられるものであること

を考慮すれば,摩擦力によりスクリュ状羽根の回転が不可能となること

のないよう,周面に付着する固形物の除去という上記機能を妨げない限

度で,ごくわずかな距離を両者の間に設けることは当然に予定されてい

るものというべきである。

(イ) 被告製品の充足性

a 証拠(乙1)によれば,被告製品において,調整ネジを回すことに

よりスクリュは垂直方向に上下に動かすことができ,スクリーンが円

錐状であることと相まって,スクリュの上下により,上記樹脂部材と

スクリーン内周面との間のクリアランス(「スキマ」ともいう。)を

調整することができ,上記クリアランスは,0.15〜0.20oを

基準として調整されるべきものとされていることが認められる。

被告製品において,スクリュ羽根は,ピッチ内を回転するものであ

るが,スクリーンの最も細くなっている部分においても,内周面の直

径は105o,スクリュ回転軸の直径は85oであって(被告準備書

面(4)添付の別表1ないし3,弁論の全趣旨),各ピッチの横断面に

おける断面積は,最も狭い部分においても,950π平方oとなるも

のであり(52.5o×52.5o×π−42.5o×42.5o×

π=950π平方o),これに対して,クリアランス部分の断面積は,

60
最大でも20.96平方oとなる(52.5o×52.5o×π−5

2.3o×52.3o×π=20.96平方o)。また,樹脂部材5

の円周方向の間隔7は約10ないし15oであり(被告準備書面(4)

添付の別表1ないし3,乙2の1ないし3,3の1ないし5),樹脂

部材5の1本毎の長さが323oないし892oである(被告準備書

面(4)別表1ないし3参照,弁論の全趣旨)。樹脂部材5は,スクリ

ュ羽根の外周にわたって設けられた溝状接合部にはめ込まれて接合さ

れており,樹脂部材5は上記溝状接合部から直径方向外側に突出して

設けられている(別紙被告製品図面の図4,5,乙2の1ないし3)。

b 上記aの被告製品の構成によれば,各ピッチにおいてクリアランス

の断面積のピッチ横断面の断面積に占める割合は,樹脂部材5の存在

を考慮しないとしても,極めて小さいものであるということができる

上,樹脂部材5が設けられたスクリュ羽根とスクリーン内周面との間

に生じる空間は更にわずかなものにとどまることが認められる。

また樹脂部材5の円周方向の間隔は樹脂部材5の1本毎の長さと比

較して相対的に小さいものである。

加えて,被告製品の使用時においては,高温の食品原料が内部に投

入されることにより,樹脂部材5は膨張し(なお,樹脂部材5の膨張

の程度については当事者間に争いがあるが,樹脂部材5が高温になる

ことで膨張すること自体については争いがない。),上記クリアラン

ス及び間隔はさらに小さいものとなることが認められる。

c さらに,被告製品の取扱説明書(乙1)の「故障と対策」(12

頁)において,「故障状況」として「オカラの搾りが悪い」,「原

因」として「スクリーン内面に皮膜が張っている」,「対策」として

「スクリューとのクリアランス調整」と各記載されていることからす

れば,クリアランスが前記のとおり基準値とされる0.15〜0.2

61
0oに調整されていれば,スクリーン内周面に張った皮膜(スクリー

ン内周面に付着する固形物と評価することができる。)を除去し,上

記皮膜による目詰まりを解消して,オカラの良好な搾りを得ることが

できるものと解することができる。さらに,被告製品の取扱説明書の

同頁において,「故障状況」として「スクリューが廻らない」,「原

因」として「スクリューとスクリーンが当たっている」,「対策」と

して「スキマを調整する」と各記載されていることにかんがみれば,

被告製品のクリアランス6は,スクリュ3の回転を妨げないために設

けられていることがうかがわれるところ,このような目的でごくわず

かな距離を設けることが本件特許発明においても当然に予定されてい

るものであることは前記(ア)のとおりである。

d そうすると,被告製品は,スクリーン4内周面と樹脂部材5とを,

クリアランスを開けて近接する状態とすることで,スクリュ3の回転

を可能として食品原料に圧力を加え前方に押し出して効率の良い濾過

を行いつつ,スクリーン4内周面に付着する固形物を除去し目詰まり

を解消するという,「摺接」の果たすべき機能を奏しているものと認

められ,被告製品の樹脂部材5は,スクリーン4内周面と「摺接」し

ているものと評価することができる。

(ウ) この点に関し,被告は,被告製品にクリアランス6が存在すること

及び樹脂部材5の膨張によっても上記クリアランスが消失しないことを

挙げて「摺接」を争い,原告は,樹脂部材5の膨張の程度が被告の主張

する限度にとどまることを否認するが,前記(イ)でみたところによれば,

樹脂部材5の膨張の程度及び上記膨張によるクリアランス6消失の有無

は結論に影響するものではない。

(エ) したがって,被告製品は,「フィルタエレメントと摺接し」(構成

要件C)を充足する。

62
イ 「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けた」(構成要件C)

(ア) 「隙間を開けずに設けた」の意義

本件明細書の「〔作用〕」欄には,「スクレーパ機構がスクリュ状羽

根の前後に隙間を開けずに,フィルタエレメントと常に接しているため,

加圧力の洩れが生ずることなく濾カスを前方に押し出すので,非常に効

率の良い絞りが得られる。」(2頁3欄29〜32行)と記載されてい

るのであるから,「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに」スクレー

パ機構を設ける技術的意義は,加圧力の洩れが生じることなく濾カスを

前方に押し出し,効率の良い絞りを得ることにあるものと解される。

そうすると,加圧力の洩れが生じ,濾カスの前方への押出しや効率的

な絞りに支障を来すような隙間がある場合,「隙間を開けずに設けた」

ものとは評価されないものと解される。

一方,本件明細書の「〔実施例〕」には,スクレーパ機構の構成とし

て,「短尺にしてこれを連続に取り付けるようにすることもできる。」

(2頁4欄47〜48行)との記載があるから,本件明細書には,スク

レーパ機構を,スクリュ状羽根の外周端面全域を通じて一本のものとす

るのではなく,短尺のものを複数本取り付ける構成とすることが示唆さ

れているというべきであるところ,高温によって膨張する素材によって

スクレーパ機構を構成する場合,スクリュ状羽根との膨張の差を考慮し,

上記短尺間に膨張を逃がすことのできる間隔を置くことは当然に予定さ

れているものということができ,上記間隔が,加圧力の洩れが生じ,濾

カスの前方への押出しや効率的な絞りに支障を来すようなものでない限

り,なお「隙間を開けずに設けた」ものと評価されるものと解される。

この点に関し,被告は,本件特許の出願経過を挙げ,「隙間を開けず

に設けた」との要件を拡張解釈することは許されないと主張する。確か

に,証拠(乙21の6・7)によれば,原告は,本件特許出願につき,

63
平成8年2月28日付けで拒絶理由通知がされたのに対し,同日付けで

手続補正書を提出し,「スクレーパ機構」を「スクリュ状羽根の前後に

隙間を開けずに設けた」ものに限定したものであることが認められるが,

上記出願経過参酌しても,上記構成要件を前記のとおり解釈すること

は妨げられず,被告の主張を採用することはできない。

(イ) 被告製品の充足性

別紙被告製品図面によれば,被告製品において,各樹脂部材は,スク

リュ羽根の外周にわたって設けられた溝状接合部に,相互に一定の間隔

を空けてはめ込まれ,その一端のみをビス5aで止めて固定されている

ものであるところ,前記(イ)aのとおり,各樹脂部材の長さは323o

ないし892o,上記間隔は10ないし15oであると認められる。

しかし,被告製品が高温の食品原料を投入することがあり得るもので

あり,樹脂部材5が,上記のとおり高温の食品原料が投入されることに

よりある程度膨張するものであることは前記(イ)bでみたとおりである

ところ,前記のとおり,樹脂部材5は,その一端のみがビス止めされ,

他端は溝にはめ込まれているのみであり,これにより,ビス止めされて

いない方の端は,樹脂部材5の膨張に伴い,溝に沿って円周方向に伸び

ることができるものと解されるから,上記間隔は,樹脂部材5の熱膨張

による伸びを逃がすために設けられているものとみることができる。そ

うすると,前述のとおり,このような目的で間隔を置くことは本件特許

発明においても当然に予定されているものであり,上記間隔が,加圧力

の洩れが生じ,濾カスの前方への押出しや効率的な絞りに支障を来すよ

うなものでない限り,なお「隙間を開けずに設けた」ものと評価される

ものとなるところ,被告製品において樹脂部材が嵌め込まれたスクリュ

羽根とスクリーンが「摺接」すると評価できるほど接近していることに

照らせば,たとえ間隔7が存在したとしても,食品原料を前方に押し出

64
して濾過を行うという目的に影響を及ぼすような加圧力の減損があるも

のとは考えられない。

以上によれば,被告製品における間隔7は,構成要件Cにいう「隙

間」に当たるものではないから,被告製品の樹脂部材5は,「隙間を開

けずに設けた」ものに該当する。

(ウ) したがって,被告製品は,「スクリュ状羽根の前後に隙間を開けず

に設けた」(構成要件C)を充足する。

ウ 「スクレーパ機構」(構成要件C)

「スクレーパ機構」とは,フィルタエレメントの周面に付着する濾カス

固形分を引掻除去することができる機構をいうものと解されるところ(乙

4,本件明細書2頁3欄1行〜10行参照),被告製品の樹脂部材が,ス

クリーン内周面に付着した固形分を除去することができるものであること

は前記ア(イ)のとおりであるから,上記樹脂部材は「スクレーパ機構」に

相当する。

エ 小括

以上によれば,被告製品は,構成要件C(「周面に沿って回転するスク

リュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,

スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設け

て」)を充足する。

(4) 争点(1)エ(構成要件Dの充足性)について

被告製品が,樹脂部材5により,スクリーン内周面に付着した固形分を引

掻除去することができるものであることは前記(3)ア(イ)及びウのとおりで

あるから,被告製品は,構成要件D(「前記フィルタエレメントの周面に付

着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなることを特徴とする」)

を充足する。

(5) 「スクレーパ濾過システム」(構成要件A,E)について

65
被告製品が構成要件BないしDを充足するものである以上,これが構成要

件Eの「スクレーパ濾過システム」を充足することは明らかであり,その結

果,構成要件Aの「スクレーパ濾過システム」も充足する。

したがって,被告製品は,構成要件A,Eを充足する。

(6) 争点(1)オ(作用効果の同一性)について

本件明細書の「〔作用〕」欄に記載された本件特許発明の作用は,「フィ

ルタエレメントに形成される濾過孔に相当する大きさ以上の固形分を残して

濾過流体を得ることができる」(2頁3欄23行〜25行),「引掻作用で

常に固形分を除去するので無理なく濾過作用が行われる」(同欄27行〜2

8行),「加圧力の洩れが生ずることなく濾カスを前方に押し出すので,非

常に効率の良い絞りが得られる」(同欄31行〜32行),「濾カス固形分

は,柱等がないので滞留することなくスクリュ状羽根によって一方向に押し

出される」(同欄33行〜34行)というものであり,「〔発明の効果〕」

欄に記載された本件発明の効果は,「スクリュ状羽根の働きによって,導入

移送される所望の被処理液体は,フィルタエレメントにより濾過されている

と共に,スクリュ状羽根の端面に設けたスクレーパ機構によって目詰まり減

少を全く生ずることもなく,濾過固形分は邪魔物がないので粘性が強くても

スクリュの回転移送方向に送られ,必要に応じて除去することができる。」

(3頁6欄6行〜12行),「加圧力の洩れが生じることがなく,濾過固形

分を前方に押しやるので,絞り濾過を効率よく行うことができる」(6欄1

5行〜17行)というものであるところ,構成要件AないしEの充足性の検

討でみたところによれば,被告製品がこれらの作用効果を奏するものである

ことは明らかである。

(7) 小括

したがって,被告製品は,本件特許発明技術的範囲に属する。

2 争点(2)(本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものか。)に

66
ついて

(1) 争点(2)ア(本件特許発明は,乙7発明と同一の発明であって,特許法2

9条1項3号に違反するものか。)について

ア 乙7文献の記載

証拠(乙7)によれば,乙7文献の「詳細な実施例の説明」(抄訳)に

は以下の記載があり,その図1(FIG.1)ないし図17(FIG.1

7)は別紙乙7文献図面のとおりである。

(ア) このシステムには濾過式脱水・圧搾機40が備わっており,この脱

水・圧搾機には,一般に無孔の濾過水/液体収集ハウジング41と,濾

過式脱水用構造体42と,汚泥圧搾・脱水ずみ固形物結合体の排出用ス

クリューコンベア43とがある。(抄訳1頁本文2行目〜5行目)

(イ) 圧搾機40の濾過式脱水用媒体42には,濾過式脱水用媒体48が

あり,また,好ましくは始端側円筒状部分50が備わっていて,…円筒

状部分50の次には円錐台状部分53があり,この円錐台状部分の次に

はさらに,より小径の終端側円筒状部分54があり,この終端側円筒状

部分には脱水ずみ固形物出力開口55が含まれている。…ここで,濾過

式脱水用媒体48には一組のフープあるいはリング56,56aおよび

56bが備わっており,これらは,互いに隔てられ,かつ,近接して間

隔をおいて配置されているとともに,単一ユニットとして(ヘリアーク

溶接によって)強化フレーム57へ固定状に保持されている。濾過式脱

水用リング56,56a,56bどうしの間の環状空間58によって,

液体あるいは濾過水を通すことができるものの固形物の逃がしを可能に

するほど広くはない逃がし通路がもたらされている。(抄訳1頁本文1

8行目〜2頁10行目)

(ウ) ポンプ45が利用されるときには,入口圧力によって送給汚泥の圧

力が大気圧よりも高くなり,また,濾過式脱水用構造体42を介する汚

67
泥の搬送および圧縮の間に生じる汚泥の圧搾および圧締とともに,大気

圧よりも高い圧力にある構造体42の内部における汚泥あるいは他のス

ラリーと,真空ポンプ60によって生成された大気圧よりも低い圧力に

ある構造体42の外側から収集された濾過水との間に,差圧が確立され

る。上記汚泥に関連した濾過水あるいは液体は,構造体42の濾過式脱

水用のフープあるいはリング56,56a,56bどうしの間の環状空

間58によって画定された開放区域を通して押し出されるかあるいは排

出されて,濾過水ハウジング41によって構造体42の外側に収集され

る。これらの固形物は,構造体42の内側表面に堆積しあるいは保持さ

れて,さらに別の圧縮および脱水のために構造体42を通して搬送され,

また,それらは,比較的乾燥した状態で脱水ずみ固形物出力開口55を

出て,汚泥圧搾・脱水ずみ固形物結合体の排出用スクリューコンベア4

3によって搬送される。(抄訳3頁3行目〜16行目)

(エ) 汚泥圧搾・脱水ずみ固形物結合体の排出用スクリューコンベア43

には,一定直径の中心シャフト75が備わっており,このシャフト75

には,その軸に沿ってその上に渦巻状−らせん状のブレードあるいはフ

ライト76が取り付けられ,このブレードあるいはフライト76は,濾

過式脱水用構造体42の内側表面74によく合致しており,中心シャフ

ト75と,汚泥入力端部51から固形物出力開口55まで延びている濾

過式脱水用構造体42の内側表面74との間の空間によって画定された

渦巻状−らせん状の空間あるいは押出通路をもたらしている。…スクリ

ューコンベアシャフト75は,構造体42の内部における回転のために,

…支持されてもよい。(抄訳4頁3行目〜19行目)

(オ) これまでに説明された構造については,濾過式脱水用構造体42の

濾過式脱水用のフープあるいはリング56,56a,56bどうしの間

における濾過式脱水・圧搾機40の開放区域あるいは環状空間58の目

68
詰まりあるいは目つぶしと,連続的濾過式脱水の中断という問題点があ

る。本発明は,このような問題点を,好ましくは図13〜17に示され

たようなコイルばね式の拭き取り用あるいは清掃用ブレード87を設け

ることによって解消する。このブレード87は,一組のガイド88によ

ってブレード76の外側端部に配置することができる。ブレード87の

ばね作用あるいは拡張傾向によって,コイルばね式のブレード87と濾

過式脱水用媒体48の内側表面74との間に連続状接触が存在している。

この連続状接触によって,内側表面74からの固形物の拭き取りが,従

って,清掃が行われる。(抄訳5頁14行目〜24行目)

(カ) このブレード87は,渦巻状−らせん状ブレード76の半径方向外

側縁部の全体に沿って延びる連続状のらせんコイルあるいはブレードで

あってもよく,このようなコイルばね式ブレード87の一方端部は,ブ

レード76へ固定状に取り付けることができる。…ブレード87は,そ

のばね作用によって拡張する傾向にあり,また,表面74との所望の連

続状接触をもたらし,その表面からの固形物の効率的清掃を与える。

(抄訳6頁5行目〜16行目)

(キ) 図13,14および15に示されたように,ブレード87は短いガ

イドクリップ88によって配置することができるが,これらのガイドク

リップ88は,スクリューコンベアのフライト76へ取り付けられて,

ブレード87の圧縮および拡張を可能にする。ブレード87が装着され

ると,そのばね作用が引き続いて生じ,表面74との良好な接触が保証

されるので,スクリューコンベア43が回転すると良好な清掃が保証さ

れる。図16は代わりの構造体を示しており,その構造体では,ブレー

ド87はらせん状ブレード76aの溝89に配置されている。図17は

代わりのばね式ブレード構造体を示している。ここで,ゴムまたは軟質

ポリ塩化ビニルあるいは他のプラスチックからなるブレード98には,

69
コイルばね99が含まれている。このばね99によって,ばね作用ある

いは拡張の傾向がもたらされるが,プラスチックブレード98は表面7

4の実際の清掃を行う。(抄訳6頁17行目〜29行目)

イ 乙7発明の内容

乙7文献に実施例として記載された濾過式脱水・圧搾機は,濾過式脱水

用構造体42及び汚泥圧搾・脱水ずみ固形物結合体の排出用スクリューコ

ンベア43とを有し(ア(ア),第2図),上記濾過式脱水用構造体42は,

液体又は濾過水を通すが固形物は通さないよう,互いに間隔を置いて配置

されたフープあるいはリング間の環状空間58を備えた濾過式脱水用媒体

48を有し(ア(イ),第2図),ポンプ45によって濾過式脱水用構造体

42に送られる汚泥の圧力を高めることにより,濾過式脱水用構造体42

に入った汚泥が搬送及び圧縮されるとともに,濾過式脱水用媒体48から

濾過水が排出され,汚泥は比較的乾燥した状態で,排出用スクリューコン

ベア43によって脱水済み固形物出力開口から押し出されるものである

(ア(ウ))ところ,上記排出用スクリューコンベア43の中心シャフト7

5には,濾過式脱水用媒体の内側表面によく合致したらせん状のブレード

76が設けられており(ア(エ),第2図),上記ブレード76の先端には,

上記ブレードの半径方向外側縁部の全体に沿って延びるコイルばね式清掃

用ブレード87を設けることができ,上記コイルばね式清掃用ブレード8

7は,濾過式脱水用媒体48と連続的に接触し,スクリューコンベア43

の回転に伴い,濾過式脱水用媒体48の内側表面74の固形物を清掃し

(ア(オ)ないし(キ),第2図,第13図,第15ないし17図),これに

より,濾過式脱水用媒体48のフープあるいはリング間の環状空間58の

目詰まりを解消するものである(ア(オ))。

そうすると,乙7発明には,「汚泥に圧力を加えて前方に押し出しなが

ら濾過を行い,汚泥を液体分と固形分に分離するに当たり,濾過式脱水用

70
媒体48内周面74に付着する固形物を清掃しながら濾過を行う濾過式・

脱水圧搾機であって,筒状及び円錐状部分からなる,フープあるいはリン

グ間の環状空間58を有する濾過式脱水用媒体48の内周面74に沿って

回転するスクリューコンベアブレード76の外側縁部の全体に沿って,上

記濾過式脱水用媒体内周面74と連続的に接触するコイルばね式清掃用ブ

レード87を設け,上記濾過式脱水用媒体内周面74に付着する固形物を

連続的に清掃できるようにしてなることを特徴とする,濾過式脱水用媒体

内周面74に付着する固形物を清掃しながら濾過を行う濾過式脱水・圧搾

機」が開示されているということができる。

ウ 本件発明と乙7発明との対比

本件発明(その内容は前記前提事実(2)イのとおりである。)を乙7発

明と対比すると,以下のとおりである。

(ア) 構成要件A,E

乙7発明の「濾過式脱水用媒体内周面74に付着する固形物の清掃」

は,前記ア(オ)のとおり,コイルばね式清掃用ブレード76が濾過式脱

水用媒体内周面74に接触し,固形物を拭き取ることにより行われるも

のであるから,乙7発明の「コイルばね式清掃用ブレード76」は本件

発明の「スクレーパ」(構成要件A,E)を行うものに相当する。また,

乙7発明は汚泥に圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行い,汚泥

を液体分と固形分に分離するに当たり,濾過式脱水用媒体内周面74に

付着する固形物を清掃しながら濾過を行う濾過式・脱水圧搾機である。

したがって,乙7発明は,本件発明の「濾カスに圧力を加えて前方に押

し出しながら濾過を行なうスクレーパ濾過システム」(構成要件A),

「スクレーパ濾過システム」(構成要件E)と一致する。

この点につき,原告は,乙7発明の濾過式・脱水圧搾機のスクリュー

コンベア43は汚泥を移送するのみであり,汚泥に圧力を加えて圧縮・

71
絞り作用を発揮するものではないと主張する。

確かに,前記ア(ウ)及び(エ)でみたところによれば,乙7発明の濾過

式・脱水圧搾機においては,ポンプを利用して汚泥を送ることにより汚

泥に圧力を加えることも可能なものである。しかし,本件発明において,

「圧力を加えて」とは,濾カスを前方に押し出して絞り,被処理流体か

ら一定の大きさ以上の固形分を残して濾過流体を得る(すなわち,濾過

する)力を加えることを意味するものと解されることは前記第4の1

(1)ア(ア)のとおりであり,乙7発明も,渦巻状−らせん状のブレード

あるいはフライト76によって汚泥を前方に押し出して汚泥に圧力を加

えるものと認められるから,乙7発明がポンプにより圧力を加えること

があるとしても,この点が両発明の相違点となるものとは解されず,原

告の主張は採用できない。

(イ) 構成要件

乙7発明の「フープあるいはリング間の環状空間58」は,液体又は

濾過水を通すが固形物は通さないよう,互いに間隔を置いて配置された

もの(前記2(1)ア(イ))であるから,本件発明の「濾過孔」に相当し,

「筒状及び円錐状部分からなる濾過式脱水用媒体48」は本件発明の

「筒状ないし円錐状の…フィルタエレメント」に相当する。

なお,乙7発明のフィルタエレメントは,筒状部分及び円錐状部分を

有するものであるが,本件明細書の「〔実施例〕」には「フィルタエレ

メントは,専ら円筒状であるが円錐状のもので同様に実施できる」(3

頁5欄41行〜同頁6欄1行)との記載があるところ,円筒状部分と円

錐状部分を同時に有するものであっても本件発明の実施に支障はないも

のと解され,本件発明がこのような形状のフィルタエレメントを除外し

ているものとは解されないから,この点は実質的な相違点となるもので

はない。

72
したがって,乙7発明は,本件発明の「筒状ないし円錐状の所望の濾

過孔を有するフィルタエレメントの」(構成要件B)と一致する。

(ウ) 構成要件

乙7発明の「スクリューコンベアブレード76」は本件発明の「スク

リュ状羽根」(構成要件C)に相当するところ,これは,濾過式脱水用

媒体48の内周面に沿って回転するものであるから,本件発明の「(フ

ィルタエレメントの)周面に沿って回転する」と一致する。

また,乙7発明のコイルばね式清掃用ブレード87が本件特許発明

「スクレーパ」(構成要件A,E)を行うものに相当することは前記2

(1)ウ(ア)のとおりであるところ,前記2(1)ア(オ)のとおり,上記コイ

ルばね式清掃用ブレード87は,そのばね作用によって拡張し,濾過式

脱水用媒体の内周面74と連続的に接触するものであるから,同内周面

と摺接するものに当たる。また,前記2(1)ア(カ)のとおり,上記コイ

ルばね式清掃用ブレードは,スクリューコンベアブレード76の半径方

向外側縁部の全体に沿って延びる連続状のらせんコイルあるいはブレー

ドであってもよいとされているから,乙7発明には,上記コイルばね式

清掃用ブレードにつき,スクリューコンベアブレードの前後に隙間を開

けずに設けたものが開示されているということができる。

この点に関し,原告は,@本件発明の「スクレーパ機構」は,内周面

に摺接し固形物の除去を行うとともに,濾過孔の目詰まりを除去するも

のであるのに対し,乙7発明において,スクリューコンベアブレード7

6には,コイルばね式清掃用ブレード87のほか,歯状の清掃用ブレー

ド100が設けられており,濾過式脱水用媒体48の環状空間58の目

詰まり除去は,上記歯状清掃用ブレード100によって行うものである

から,両発明はこの点で相違し,かつ,A乙7発明は,スクリューコン

ベアブレード76の先端にノズル90を設けて水分を吐出させ,付着物

73
を除去する構成が開示されているところ,これは,本件特許発明の目的

に反するものであるから,両発明はこの点でも相違すると主張する。

しかし,乙7文献の「詳細な実施例の説明」(抄訳)には,「ブレー

ド87あるいは98,ノズル90およびブレード100は独立して使用

することができる。」(抄訳8頁15行〜16行目)と記載されている

のであるから,乙7文献には,ノズル90及びブレード100を用いず,

コイルばね式清掃用ブレード87のみを用いる構成が開示されているも

のということができるのであって,前記2(1)ア(オ)のとおり,乙7文

献には,上記構成によっても,内周面に付着した固形物の除去及び目詰

まりの解消が可能である旨記載されているものと認められるから,この

点は相違点とはならず,原告の主張を採用することはできない。

したがって,乙7発明は,本件発明の「周面に沿って回転するスクリ

ュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,

前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて」(構成要件C)

と一致する。

(エ) 構成要件

乙7発明のコイルばね式清掃用ブレード87は,前記2(1)ア(オ)の

とおり,濾過式脱水用媒体内周面74に接触し,固形物を拭き取ること

により,上記濾過式脱水用媒体内周面74に付着する固形物を連続的に

清掃するものであるから,本件発明の「前記フィルタエレメントの周面

に付着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなることを特徴と

する」(構成要件D)と一致する。

エ 小括

したがって,本件特許発明は,乙7発明と同一の発明であって,特許法

29条1項3号に違反し,同法123条1項2号により,特許無効審判に

より無効とされるべきものと認められる。

74
(2) 争点(2)イ(本件特許発明は乙7発明から容易に想到することができたも

のとして特許法29条2項に違反するものか。)について

前記争点(2)アに関する当裁判所の判断のとおり,本件特許発明が乙7発

明と同一の発明であると認められる以上,両発明に相違点があることを前提

とした無効理由の有無(争点(2)イ)については検討しない。

(3) 争点(2)ウ(本件特許発明は,乙8発明から容易に想到することができた

ものとして特許法29条2項に違反するものか。)について

ア 乙8文献の記載

証拠(乙8)によれば,本件特許の出願前である昭和60年12月7日

頒布された刊行物である乙8文献には以下の記載があり,その第1図な

いし第3図は別紙乙8文献図面のとおりである。

(ア) 特許請求の範囲

前後に長い略密閉された機枠内に,後部に供給口,前部に排出口が

夫々形成された前後に長い筒状ケーシングを配装し,後部から前部に至

るに伴ない次第に大径となし,外周に螺旋状の送り羽根が突設された中

空の筒状シャフトをケーシングの前後方向で回転可能にしてケーシング

内に支承すると共に,ケーシングに多数の水切孔を,シャフトに多数の

脱水孔を夫々開穿しておき,供給された被処理物をケーシング前部に送

る過程においてシャフト外周とケーシング内周との間で圧縮し,脱水さ

せるようにしたことを特徴とする汚泥その他の脱水処理装置。(1頁左

下欄4行〜15行)

(イ) 発明の技術分野

本発明は汚泥その他の脱水処理装置に係り,公害処理施設においての

し尿処理場その他での汚泥,醸造施設においてのモロミ,食品製造施設

においての水産物その他の加工食品,製紙製造施設においてのボード類

等の含水繊維物その他の産業廃棄物の連続圧搾脱水を図れるようにした

75
汚泥その他の脱水処理装置に関するものである。(1頁右下欄6行〜1

2行)

(ウ) 発明の実施

図において示される符号1はベースであり,…被処理物を脱水処理す

るためのケーシング20が内装された機枠10を支持してある。(2頁

右上欄13行〜同頁左下欄1行)

…この機枠10に内装されるケーシング20はその後部に供給口21

が,前部に排出口22が夫々形成された前後に長い筒状になっており,

…ケーシング20自体は前後方向を合致させて機枠10に配装される。

(同頁左下欄4行〜11行)

ケーシング20内には,供給口21から投入,供給される被処理物を

排出口22がわへ送りながらこれを圧搾させる中空の筒状シャフト30

がケーシング20の前後方向に沿って回転可能にしてケーシング内に支

承されている。(同頁左下欄12行〜16行)

…ケーシング20には,被処理物の固形粒に比し小さい多数の小径な

水切孔23が後部から前部に至るに伴ない次第に大径なものとなるよう

にして,…前述のように圧縮された被処理物から絞出される水分を…ケ

ーシング20外へ浸出させるものとしてある。(同頁右下欄第14行〜

3頁左上欄1行)

更に,ケーシング20自体は後部,前部において同径とするも,また,

前部において内部空間を狭くするためシャフト30が次第に大径となる

も,送り羽根31外径は後部,前部において全く同径でよいから,ケー

シング20内で回転されるシャフト30の送り羽根31外縁とケーシン

グ20内周面とはいずれの部位でも密接状のものとすることができ,被

処理物の前方への送り込みを確実にする。(同頁右下欄19行〜4頁左

上欄7行)

76
イ 乙8発明の内容

(ア) 乙8発明の特許請求の範囲に記載された脱水処理装置は,公害処理

施設においてのし尿処理場その他での汚泥,醸造施設においてのモロミ,

食品製造施設においての水産物その他の加工食品,製紙製造施設におい

てのボード類等の含水繊維物その他の産業廃棄物を被処理物とするもの

であり(上記ア(ア)),ケーシング20内で回転するシャフト30を有

するものであるところ,その実施例に記載されているとおり,上記シャ

フト30は,供給口21から投入,供給される被処理物を排出口22が

わから送りながらこれを圧搾させるものであり,その送り羽根31の外

縁は,ケーシング20内周面といずれの部位でも密接状のものとするこ

とができ,被処理物の前方への送り込みを確実にすることができる構成

とされている(上記ア(ウ),第1図)。また,ケーシング20に形成さ

れる水切孔は,圧縮された被処理物から絞り出される水分をケーシング

20外へ浸出させるものである(上記ア(ウ))。

そうすると,乙8発明には,「汚泥その他の被処理物に圧力を加えて

前方に押し出しながら脱水処理を行う脱水処理装置であって,筒状の多

数の水切孔を有するケーシング20の内部で回転するシャフト30の送

り羽根31の外縁が,上記ケーシング20の内面といずれの部位でも密

接状のものとされる脱水処理装置」が開示されているということができ

る。

(イ) この点に関し,原告は,乙8発明の脱水処理機が被処理物に圧力を

加えて脱水処理を行うものであることを争うが,前記ア(ア)のとおり,

乙8文献には,上記脱水処理機が被処理物を「圧搾」するものであるこ

とが記載され,かつ,前記ア(ウ)のとおり,上記圧搾はシャフトの回転

によって行われることが記載されているのであるから,上記脱水処理機

が被処理物に圧力を加えて脱水処理を行うものであることは明らかであ

77
り,原告の主張を採用することはできない。

ウ 本件特許発明と乙8発明との対比

(ア) 本件特許発明と乙8発明とを対比すると,乙8発明の「被処理物」,

「脱水処理機」,「水切孔」,「ケーシング20」,「シャフト30の

送り羽根31」は,本件特許発明の「濾カス」,「濾過システム」,

「濾過孔」,「フィルタエレメント」,「スクリュ状羽根」に各相当す

るから,本件特許発明と乙8発明は,「濾カスに圧力を加えて前方に押

し出しながら濾過を行う濾過システムであって,筒状の所望の濾過孔を

有するフィルタエレメントの周面に沿って回転するスクリュ状羽根を有

する濾過システム」である点で一致し,本件特許発明が「スクリュ状羽

根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリ

ュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて前記フ

ィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できるよう

にしてなることを特徴とするスクレーパ濾過システム」であるのに対し,

乙8発明にはこの点に関する記載がない点で相違する。

(イ) この点に関し,原告は,本件特許発明はフィルタエレメントのみに

濾過孔を設けるものであるのに対し,乙8発明はケーシング20のみな

らずシャフト30にも多数の水切孔を設けている点でも相違すると主張

するが,上記の点は乙8発明が前記イ(ア)でみた構成を有することを妨

げるものではなく,単なる付加に係るものとみることができるから,実

質的な相違点ということはできず,原告の主張は採用できない。

エ 相違点の検討

(ア) そこで,上記相違点について検討すると,乙8文献には,「また,

17はケーシング20上方で前後方向に配された洗浄管で適宜の圧力を

付与した清浄水をケーシング20外部に噴射させることでケーシング2

0における水切孔23の目詰まりを防止するものであ…る。」(3頁右

78
上欄4〜10行)と記載されているから,乙8文献には,ケーシング2

0の水切孔の目詰まり防止が技術的課題として示されており,かつ,上

記課題の解決手段として,適宜の圧力を付与した清浄水を噴射させる方

法が示されているものであって,上記技術的課題を解決するための他の

手段を検討するについての動機付けが存在するものということができる。

(イ) 前記2(1)ア(オ)及びイのとおり,乙7発明は,汚泥の濾過式脱水

圧搾機に関するものであり,上記濾過式脱水圧搾機の濾過孔の目詰まり

を解消するため,スクリューコンベアブレードの外側端部の全体に沿っ

て,濾過式脱水用媒体の内周面と隙間なく連続的に接触するコイルばね

式清掃用ブレード87を設け,これにより上記内周面に付着する固形物

を清掃するものであるから,乙7発明は,汚泥の脱水処理に関する技術

である点で乙8発明と技術分野を共通にし,かつ,濾過式脱水装置の濾

過孔の目詰まりの防止を解決課題とするものである点で乙8発明と解決

課題を共通にするものであるということができる。

したがって,乙8発明につき,上記エ(ア)でみた動機付けに従って,

汚泥の脱水処理における脱水装置の濾過孔の目詰まり防止という課題解

決手段を検討するに当たり,技術分野及び課題において共通する乙7発

明に記載された技術を適用し,上記課題解決手段として,乙7発明に示

された,スクリューコンベアブレード76の外側端部に設けられた濾過

式脱水用媒体内周面74と隙間なく連続的に接触するコイルばね式清掃

用ブレード87を適用して,乙8発明に記載された脱水処理装置を,シ

ャフトの送り羽根先端に沿って,ケーシング20と隙間なく連続的に接

触するコイルばね式清掃用ブレード(「スクリュ状羽根の外周端面全域

に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に

隙間を開けずに設けたスクレーパ機構」)を有するものとし,ケーシン

グ20内周面に付着する固形物を清掃できる(「前記フィルタエレメン

79
トの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できる」)ことを特徴とす

るスクレーパシステムとすることは当業者にとって容易であるというこ

とができる。

オ 小括

以上のとおり,本件特許発明は乙8発明から容易に想到することがで

きたものであるから特許法29条2項に違反し,特許無効審判により無

効とされるべきものと認められる。

3 争点(3)(本件訂正による訂正の再抗弁の成否)について

(1) 争点(3)ア(本件訂正は訂正要件を満たすか。)について

ア 本件訂正事項1について

前記前提事実(2)エ(ア)のとおり,本件訂正事項1は,「濾カスに圧

力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾過システムで

あって」を「濾カスに圧力を加えて濾過を行う豆乳原液などの被濾過液

体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過システムであって」と

訂正するものであり,「スクレーパ濾過システム」を,「豆乳原液など

の被濾過液体より液体分と固形分に分離する」ものに特定するものであ

るから,特許法134条の2第1項1号所定の特許請求の範囲減縮

目的とするものに当たるということができる。

また,本件明細書には,「所望の被濾過液体,例えば豆乳原液などの

固液混合液体を…供給して…回転させれば,豆乳原液は…移送され,円

筒状フィルタエレメント1のスリット孔5を通過できる液体分のみが濾

過液の豆乳として取り出され,…得られる。この種の豆乳原液は,粘着

性,附着性の高い固形分を含有している…」(5欄8行〜16行),

「豆乳原液より豆乳とオカラとの分離を能率よく行うことができる」

(6欄23行〜24行)と記載されているから,本件明細書には,豆乳

原液を被濾過液体とし,本件発明のスクレーパ濾過システムによって,

80
豆乳原液を液体分(豆乳)と固形分に分離することが示されているもの

ということができ,本件訂正事項1は,本件明細書に記載された事項の

範囲内においてされたものであり,特許法134条の2第5項で引用さ

れる同法126条3項の要件を満たすものということができる。

したがって,本件訂正事項1は訂正要件を満たすものである。

イ 本件訂正事項2について

(ア) 前記前提事実(2)エ(イ)のとおり,本件訂正事項2は,「筒状な

いし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの」を「筒状

ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの排出口に

は固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,前記フィルタ

エレメントの」と訂正するものであり,「スクレーパ濾過システム」

を,フィルタエレメントの排出口に「固形分の搾汁効果を可変調節で

きる押圧弁を配設し」たものに特定する訂正であるから,訂正事項2

は,特許法134条の2第1項1号所定の特許請求の範囲減縮する

ものに当たるということができる。

(イ) また,訂正前の発明の具体的目的の逸脱の有無・新規事項の追加

の有無についてみると,本件明細書には,「所望の大きさのスリット

孔5を有する円筒状フィルタエレメント1を選択的に固着した円筒管

体を示し,一側には被処理液体の導入口7を,他側には濾カスの排出

口8を有する固形分取出機構9をそれぞれ設けてある。」(3欄46

行〜50行),「前記固形分取出機構9は,口径を狭少と搾り込んだ

排出口8に対し,コイルバネ16で圧接される押圧弁17を当接させ

ると共に,前記コイルバネ16に対しては,そのバネ圧を可変調節で

きる螺杵18を附設して取り出される固形分の搾汁効果を可変調節で

きるようになっている。」(4欄18行〜23行)と記載されており,

コイルバネ圧を可変調節できるものとすることによって,押圧弁によ

81
る押圧を変更し,調節することが可能となり,これにより,固形分の

搾汁効果が可変調節されることが示されているということができ,訂

正事項2は,新規事項を追加するものには当たらない。また,本件発

明は,「フィルタエレメントの目詰りがなく,かつ,絞り効果が大き

く濾過効率の高いスクレーパ濾過システムを提供することを目的とす

る」(3欄7行〜10行)ものであるところ,本件訂正事項2によっ

ても,上記目的が変更されるものとは認められず,本件訂正事項2は

訂正前の発明の具体的目的の範囲を逸脱するものにも当たらない。

(ウ) したがって,本件訂正事項2は,特許法134条の2第5項で準

用する126条3項及び4項の要件を満たすものである。

ウ 訂正事項3ないし5

訂正事項3ないし5における訂正の内容は前記前提事実(2)エ(ウ)な

いし(オ)のとおりであるところ,これらは,本件訂正事項1及び2に伴

い,本件明細書の【発明の詳細な説明】の記載を,上記各訂正事項に沿

う内容のものに訂正したものであるから,いずれも,特許法134条

2第5項所定の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに当たり,

かつ,本件訂正事項1及び2と同様に,新規事項の追加又は特許請求の

範囲の拡張変更に当たるものではないから,特許法134条の2第5

項で準用する126条3項及び4項の要件を満たすものである。

エ 小括

以上のとおりであり,本件各訂正事項はいずれも訂正要件を満たし,

適法である。

(2) 争点(3)イ(被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか。)につ

いて

ア 本件訂正発明の内容

(ア) 本件訂正発明の構成要件を分説すると以下のとおりとするのが相

82
当である(以下「構成要件訂正A」などという。)。

A 濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う豆乳原液

などの被濾過液体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過シ

ステムであって

B 筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの

C 排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,

前記フィルタエレメントの

D 周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,

前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を

開けずに設けたスクレーパ機構を設けて

E 前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除

去できるようにしてなることを特徴とする

F スクレーパ濾過システム。

(イ) 本件訂正後の上記各構成要件のうち,構成要件訂正B,Dないし

F(なお,構成要件訂正DないしFは,本件訂正前の構成要件Cない

しEに各相当する。)については,本件訂正による変更はなく,被告

製品が上記各構成要件を充足することは争点(1)に関する当裁判所の

判断でみたとおりであるから,以下,構成要件訂正A及びCについて,

被告製品の充足性を検討する。

イ 「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行う豆乳原液な

どの被濾過液体より液体分と固形分に分離するスクレーパ濾過システム

であって(構成要件訂正A)について

(ア) 「豆乳原液などの被濾過液体」の意義

「被濾過液体」とは「濾過を受ける液体」を意味するものと解され,

「豆乳原液」は,被濾過液体の例示として挙げられているものと解さ

れるところ,前記訂正事項5のとおり,本件訂正により,本件明細書

83
の「各種食品用として,またその他の機械的切削油の固液分離など広

く利用できる。」との記載から「,またその他の機械的切削油の」が

削除されたことにより,本件明細書には,本件訂正発明の用途に関し

「各種食品用として固液分離など広く利用できる。」と記載されてい

るのみとなったことを考慮すれば,本件訂正発明における「被濾過液

体」は食品原料を指すものと解され,豆乳原液は,上記のとおり食品

原料に限定される被濾過液体の例示として挙げられたものと解するの

が相当である。

なお,この点に関し,被告は,本件訂正発明の「被濾過液体」は高

粘度の流体を指すものと解するべきであると主張するが,本件明細書

中には,〔産業上の利用分野〕について「特に粘度の高い流体の濾過

に好適なスクレーパ濾過システムに関する。」と記載されているのみ

であって,本件訂正によっても,本件訂正発明がその濾過対象を高粘

度の流体に限定したものとは解されないから,被告の主張を採用する

ことはできない。

(イ) 被告製品の充足性

証拠(甲7,乙1)によれば,被告製品は豆乳原液,果実,野菜等

の搾り濾過,茶・コーヒーの抽出濾過,おからペーストの水分調整・

脱水濾過等のために使用されるものであるから,食品原料である被濾

過液体から液体分と固形分を分離するものに当たり,「豆乳原液など

の被濾過液体より液体分と固形分に分離する」ものに相当する。

構成要件訂正Aのその他の要件は訂正前と同一であるから,被告製

品は,構成要件訂正Aを充足する。

ウ 「排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,前

記フィルタエレメントの」(構成要件訂正C)

(ア) 「固形分の搾汁効果を可変調節できる押圧弁」

84
別紙被告製品図面のとおり,被告製品は,閉止用蓋13を有するも

のであり,上記閉止用蓋13は,左右各1本のバネ12によって付勢

されており,上記バネの下部にはツマミ11があることが認められる

ところ,証拠(乙1)によれば,上記バネの押し付け力はツマミ(乙

1では「締付ナット」と記載されている。)の回転によって調節する

ことが可能であり,「オカラの搾りが悪い」原因として「圧縮バネが

ゆるんでいる」,「内圧が上がっている」ことへの対策として「圧縮

バネを緩める」と記載されていることが認められるから,上記閉止用

蓋13は,ツマミ11を回転させてバネ12の押し付け力を調整する

ことにより,食品原料の搾汁効果を可変調節するものであると認めら

れる。

この点に関し,被告は,被告製品の閉止用蓋13は食品原料の排出

量を調整するためのものにすぎず,食品原料の搾汁効果を可変調節す

る機能を有しないと主張するが,被告製品の上記構造及び被告製品説

明書(乙1)の記載と整合せず,これを採用することはできない。

(イ) 別紙被告製品図面のとおり,被告製品は,閉止用蓋13が押し下

げられることにより生じた隙間から,脱水後の食品原料が外部へ排出

されるものであるから,閉止用蓋13は「排出口」に「配設し」たも

のに当たる。

したがって,被告製品は,構成要件訂正Cを充足する。

エ 小括

したがって,被告製品は,構成要件訂正AないしFをいずれも充足し,

本件訂正発明の技術的範囲に属する。

(3) 争点(3)ウ(本件訂正により争点(2)の無効理由を解消することができ

るか)について

ア 乙7文献に基づく無効理由について

85
(ア) 本件訂正発明の内容は前記第4の3(2)アのとおりであり,乙7

文献の記載及び乙7発明の内容は前記第4の2(1)ア及びイのとおり

である。

(イ) 本件訂正発明と乙7発明の対比

そこで,本件訂正発明と乙7発明とを対比すると,両発明は,@本

件訂正発明におけるスクレーパ濾過システムが豆乳原液などの食品原

料を被濾過液体とするものであるのに対し,乙7発明における濾過

式・脱水圧搾機が汚泥を被処理物とするものである点,A本件訂正発

明がフィルタエレメントの排出口に固形分の搾汁効果を可変調節でき

る押圧弁を配設するものであるのに対し,乙7発明にこのような押圧

弁について記載がない点において相違し,争点(2)アに関する当裁判

所の判断でみたとおり,その余の点について一致する。

上記相違点は実質的相違点であって,本件訂正発明を乙7発明と同

一の発明ということはできない。

(ウ) 相違点の検討

本件訂正発明は,食品原料の濾過システムをその内容とするもので

あるところ,乙7発明は,汚泥処理を目的とするものであり,両発明

は,その技術分野を異にするものであるということができる。そうす

ると,当業者が,乙7発明を食品原料の濾過システムに適用し,本件

訂正発明に想到することが容易であったとはいうことはできない。

(エ) 小括

したがって,乙7文献に基づく無効理由(前記第4の2(1)でみた

もの)は,本件訂正によって解消することができるものである。

イ 乙8文献に基づく無効理由(進歩性欠如)について

(ア) 本件訂正発明の内容は前記第4の3(2)アのとおりであるところ,

証拠(乙8)によれば,乙8文献には,前記第4の2(3)アでみた点

86
に加え,〔発明の実施例〕に次の記載があることが認められる。

「図中24は搾り機構であり,図示のように,シャフト30前端に

外嵌固定したドーナツ状固定部25とケーシング20前端開口である

前記排出口22を略閉塞するドーナツ円錐状押圧盤27との間に押圧

スプリング26を介在して成り,押圧スプリング26の排出口22が

わへの押圧力を変更することで圧縮されて半ば固形化される被処理物

に対しての貯留室16がわへの排出を規制し,被処理物の含水率すな

わち脱水率の調整を可能とする。」(3頁左上欄14行〜右上欄3行

目)

そうすると,乙8発明には,「汚泥その他の被処理物に圧力を加え

て前方に押し出しながら脱水処理を行う脱水処理装置であって,筒状

の多数の水切孔を有するケーシング20の排出口に被処理物の脱水率

の調整を可能とするドーナツ円錐状押圧盤27を有し,ケーシング2

0の内部で回転するシャフト30の送り羽根31の外縁が,上記ケー

シング20の内面といずれの部位でも密接状のものとされる脱水処理

機」が開示されているということができる。

(イ) 本件訂正発明と乙8発明の対比

本件訂正発明と乙8発明とを対比すると,乙8発明の「ドーナツ円

錐状押圧盤27」は本件訂正発明の「押圧弁」に相当し,「被処理物

の脱水率の調整を可能とする」は「固形分の搾汁効果を可変調節でき

る」と一致するから,本件訂正発明と乙8発明は,「濾カスに圧力を

加えて前方に押し出しながら濾過を行う濾過システムであって,筒状

の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの排出口付近には固形分

の搾汁効果を可変調節できる押圧弁を配設し,前記フィルタエレメン

トの周面に沿って回転するスクリュ状羽根を有する濾過システム」で

ある点で一致し,@本件訂正発明が前記イ(ア)のとおり豆乳原料など

87
の食品原料を被濾過液体とするものであるのに対し,乙8発明が公害

処理施設…その他での汚泥,醸造施設においてのモロミ,食品製造施

設においての水産物その他の加工食品,製紙製造施設においてのボー

ド類等の含水繊維物その他の産業廃棄物を被処理物とするものである

(前記第4の2(3)イ(ア))点,A本件訂正発明が「スクリュ状羽根

の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリ

ュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて前記

フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できる

ようにしてなることを特徴とするスクレーパ濾過システム」であるの

に対し,乙8発明にはこの点に関する記載がない点で相違する。

(ウ) 相違点の検討

そこで,まず,相違点@について検討すると,乙8発明で挙げられ

た被処理物のうち,「醸造施設においてのモロミ」及び「食品製造施

設においての水産物その他の加工食品」が食品原料に当たることは明

らかであり,乙8発明の技術分野は本件訂正発明における食品原料の

濾過システムの技術分野を含むものであるから,相違点@は実質的な

相違点とは認められない。

次に,相違点Aについて検討すると,乙8文献に,ケーシング20

の目詰まり防止が技術的課題として示されていることは,前記第4の

2(3)エ(ア)でみたとおりであるところ,乙8発明が食品原料以外の

汚泥,産業廃棄物等にも利用することができるものであることは前記

のとおりであって,上記技術的課題は,被処理物の種類にかかわらず

共通のものとして示されているものということができる。そうすると,

乙8発明に接した食品原料の濾過システムの技術分野の当業者は,汚

泥,産業廃棄物等の処理技術が食品原料の濾過システムの分野におけ

る技術分野に適用できることを容易に認識することができる。また,

88
乙8発明には,上記目詰まり防止という課題の解決手段として,適宜

の圧力を付与した清浄水を噴射させる方法が示されているものである

ことは前記第4の2(3)エ(ア)のとおりであって,乙8発明には,上

記技術的課題を解決するための他の手段を検討するについての動機付

けが存在するものということができる。

そして,乙7発明は,汚泥の濾過式脱水圧搾機に関するものであり,

上記濾過式脱水圧搾機の濾過孔の目詰まりを解消するため,スクリュ

ーコンベアブレードの外側端部の全体に沿って,濾過式脱水用媒体の

内周面と隙間なく連続的に接触するコイルばね式清掃用ブレードを設

け,これにより上記内周面に付着する固形物を清掃するものであるこ

とは前記第4の2(1)ア(オ)のとおりであり,乙7発明は,脱水処理

機における濾過孔の目詰まり防止を技術的課題とするものであるとい

うことができる。

そうすると,食品原料の濾過システムの技術分野における当業者は,

目詰まり防止に関する技術が食品原料を被処理物とする場合に限定さ

れず,汚泥処理技術にも共通することを容易に認識できるものである

以上,乙8発明に接することよって,前記技術的課題(脱水処理装置

における濾過孔の目詰まり防止)を動機付けられ,さらに,乙8発明

と乙7発明は,技術的課題を共通にするものと認識した上で,解決課

題において共通する乙7発明に記載された技術を適用し,上記課題解

決手段として,乙7発明に示されたコイルばね式清掃用ブレードを適

用して,乙8発明に記載された脱水処理装置を,シャフトの送り羽根

先端に沿って,ケーシング20内周面と隙間なく連続的に接触するコ

イルばね式清掃用ブレード(「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿っ

て,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間

を開けずに設けたスクレーパ機構」)を有するものとし,ケーシング

89
20内周面に付着する固形物を清掃できる(「前記フィルタエレメン

トの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できる」)ことを特徴と

するスクレーパ濾過システムとすることは容易であるということがで

きる。

(エ) 小括

したがって,本件訂正発明は,乙8発明によって無効とされるべき

ものであり,乙8文献に基づく無効理由(前記第4の2(3)でみたも

の)は,本件訂正によっても解消されない。

4 まとめ

以上のとおりであり,その余の点について検討するまでもなく,原告の

請求は理由がないことに帰着する。

第5 結論

したがって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第29部




裁判長裁判官 大 須 賀 滋




裁判官 菊 池 絵 理




90
裁判官 森 川 さ つ き




91
(別紙)



被告製品目録



下記型番の縦型固液分離精製搾り機。



SRE141−LPH

SRE181−LPH

SRE255−LPH

SRE350−LPH

以上




92
(別紙)



被告製品図面

添付の図1〜5のとおり



<図の説明>

図1は被告製品の内部構造を一部断面によって示した側面図である。

図2は図1中のA−A部分の拡大図である。

図3は図2中のB−B部分の拡大図である。

図4は図3部分の断面図である。

図5は図2のE部分の拡大図である。



<符号の説明>

1 搾り機

2 筒体

3 スクリュ

4 スクリーン

4a 細孔

5 樹脂部材

5a ビス

6 クリアランス

7 間隔

8 投入口

9 排出口

10 圧力計

11 ツマミ

93
12 バネ

13 閉止用蓋

20 支持軸

21 軸受




94
(別紙)

被告製品の構成(原告)

a スクリュ3の回転作用で,食品原料を下方に押し出しながら搾り込み,スクリ

ーン4により,圧縮分離液と脱水粕とに濾過分離する搾り機1であって,

b 前記スクリーン4は,濾過孔に相当する多数の細孔4aを有する円錐状に形成

され,

c スクリーン4の排出口には固形分の搾汁効果を可変調節できる閉止用蓋13を

配設し,

d 前記スクリーン4の内周面に沿って回転する螺旋状のスクリュ3の先端の全長

に亘り,非作動時にはスクリーン4の内周面との間に約0.15〜0.20mm

というミクロン単位の計測不能の微少なクリアランス6を有し,1ピッチ毎に約

10〜15mmの間隔7を有して接合された樹脂部材5を設け,作動時には,熱

膨張及び膨潤による前記樹脂部材5の伸びを円周方向及び直径方向に逃がしてク

リアランス6及び間隔7は消失し,前記樹脂部材5の外周端はスクリーン4の内

周面を摺動し,

e 前記樹脂部材5は,スクリーンの目詰まりを防止する

f 搾り機1。




95
(別紙)

被告製品の構成(被告)

a スクリュ3を食品原料の投入側の上方から排出側の下方に向けて徐々に細かく

形成し,スクリュ3の入口容積と出口容積の減容比率を用いて食品原料を搾り込

み,液状の圧縮分離液と脱水粕とに分離する搾り機1であって,

b 細孔4aを有する円錐状スクリーン4,

c スクリーン4の排出口には閉止用蓋13を配設し,

d スクリーン4の内周面に沿って回転する螺旋状のスクリュ3の先端の全長に亘

り,スクリーン4の内周面との間に約0.15〜0.20mmのクリアランス6

を有し,1ピッチ毎に約10〜15mmの間隔7を有して接合された樹脂部材5

を設け,

e 熱膨張による前記樹脂部材5の伸びを円周方向に逃がすと共に,前記スクリー

ン4との接触による摩擦を軽減するように構成された

f 搾り機1。




96

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