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事件 平成 23年 (ワ) 22642号 発信者情報開示請求事件
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裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2011/11/29
判例全文
判例全文
平成23年11月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(ワ)第22642号 発信者情報開示請求事件

口頭弁論終結日 平成23年10月6日

判 決

東京都港区<以下略>

原 告 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン

東京都港区<以下略>

原 告 エイベックス・エンタテインメント株式会社

東京都港区<以下略>

原 告 株式会社エピックレコードジャパン

東京都港区<以下略>

原 告 株式会社EMIミュージック・ジャパン

東京都港区<以下略>

原 告 株式会社ポニーキャニオン

東京都千代田区<以下略>

原 告 株式会社エスエムイーレコーズ

東京都港区<以下略>

原 告 ユニバーサルミュージック合同会社

東京都渋谷区<以下略>

原 告 株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ

原告ら訴訟代理人弁護士 前 田 哲 男

同 中 川 達 也

同 尋 木 浩 司

同 林 幸 平

同 塚 本 智 康

東京都千代田区<以下略>





被 告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社

同訴訟代理人弁護士 五 島 丈 裕

主 文

1 被告は,原告株式会社EMIミュージック・ジャパンに対し,平成22

年6月26日21時41分51秒ころに「114.154.44.2」と

いうインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続

していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

2 被告は,原告株式会社エスエムイーレコーズに対し,平成22年6月2

6日7時34分10秒ころに「114.154.44.2」というインタ

ーネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者

の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

3 被告は,原告株式会社エスエムイーレコーズに対し,平成22年6月2

5日14時50分47秒ころに「123.227.37.239」という

インターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続して

いた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

4 被告は,原告株式会社ポニーキャニオンに対し,平成22年6月18日

8時1分16秒ころに「123.227.37.239」というインター

ネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の

氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

5 被告は,原告株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズに対し,平成

22年6月26日14時51分9秒ころに「123.227.37.23

9」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネット

に接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

6 被告は,原告株式会社EMIミュージック・ジャパンに対し,平成22

年6月18日0時7分28秒ころに「124.101.162.160」

というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接





続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

7 被告は,原告株式会社エピックレコードジャパンに対し,平成22年6

月27日1時50分59秒ころに「124.101.162.160」と

いうインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続

していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

8 被告は,原告株式会社ワーナーミュージック・ジャパンに対し,平成2

2年6月25日14時42分32秒ころに「124.101.162.1

60」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネッ

トに接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

9 被告は,原告株式会社エスエムイーレコーズに対し,平成22年6月1

4日21時4分19秒ころに「125.207.43.73」というイン

ターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた

者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

10 被告は,原告ユニバーサルミュージック合同会社に対し,平成22年6

月15日14時51分54秒ころに「125.207.43.73」とい

インターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続し

ていた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

11 被告は,原告株式会社EMIミュージック・ジャパンに対し,平成22

年7月15日11時29分47秒ころに「124.99.54.180」

というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接

続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

12 被告は,原告株式会社エピックレコードジャパンに対し,平成22年7

月16日5時35分17秒ころに「124.99.54.180」という

インターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続して

いた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

13 被告は,原告株式会社エピックレコードジャパンに対し,平成22年7





月31日6時57分33秒ころに「122.16.241.165」とい

インターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続し

ていた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

14 被告は,原告エイベックス・エンタテインメント株式会社に対し,平成

22年7月11日15時24分26秒ころに「122.16.241.1

65」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネッ

トに接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

15 被告は,原告エイベックス・エンタテインメント株式会社に対し,平成

22年10月25日14時58分34秒ころに「123.224.171.

126」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネ

ットに接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

16 被告は,原告株式会社エピックレコードジャパンに対し,平成22年1

0月24日17時0分19秒ころに「123.224.171.126」

というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接

続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

17 被告は,原告株式会社ワーナーミュージック・ジャパンに対し,平成2

2年10月26日4時19分42秒ころに「118.8.52.66」と

いうインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続

していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

18 被告は,原告エイベックス・エンタテインメント株式会社に対し,平成

22年10月24日14時36分6秒ころに「118.8.52.66」

というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接

続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

19 被告は,原告株式会社エピックレコードジャパンに対し,平成22年1

0月25日5時52分18秒ころに「122.19.229.32」とい

インターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続し





ていた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

20 被告は,原告ユニバーサルミュージック合同会社に対し,平成22年1

0月22日21時27分51秒ころに「122.19.229.32」と

いうインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続

していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。

21 訴訟費用は,原告株式会社EMIミュージック・ジャパンに生じた費用

の5分の2と被告に生じた費用の25分の2を原告株式会社EMIミュー

ジック・ジャパンの負担とし,原告エイベックス・エンタテインメント株

式会社に生じた費用の4分の1と被告に生じた費用の25分の1を原告エ

イベックス・エンタテインメント株式会社の負担とし,原告らに生じたそ

の余の費用と被告に生じたその余の費用を被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

本件は,レコード製作会社である原告らが,インターネット接続プロバイダ

事業を行っている被告に対し,原告らが送信可能化権(著作権法96条の2

を有するレコードが氏名不詳者によって原告らに無断で複製され,被告のイン

ターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置かれたことにより,原

告らの送信可能化権が侵害されたと主張して,被告に対し,特定電気通信役務

提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロ

バイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記氏名不詳者に係る発信

者情報の開示を求める事案である。

1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがな

い事実である。)

(1) 当事者





ア 原告らは,いずれも,大手レコード会社であり,多数のレコードを製作

の上,これらを複製してCD等として発売している。

イ 被告は,一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行

っている株式会社である。

(2) 原告らの送信可能化権

ア 原告株式会社EMIミュージック・ジャパン(以下「原告EMI社」と

いう。)は,実演家であるRADWIMPSが歌唱する楽曲「最大公約数」

を録音したレコード(以下「原告レコード1」という。)を製作の上,平成

18年2月15日, RADWIMPS3〜無人島に持っていき忘れた一枚


〜」との名称の商業用12センチ音楽CD(商品番号:TOCT−259

33)の9曲目に収録して,日本全国で発売した。原告EMI社は,原告

レコード1のレコード製作者であるから,同レコードについて送信可能化

権(著作権法96条の2。以下同じ。)を有する(甲3の1)。

イ 原告株式会社エスエムイーレコーズ(以下「原告エスエムイー社」とい

う。 は,
) 実演家である西野カナが歌唱する楽曲「会いたくて 会いたくて」

を録音したレコード(以下「原告レコード2」という。)を製作の上,平成

22年5月19日,
「会いたくて 会いたくて」との名称の商業用12セン

チ音楽CD(商品番号:SECL−864)の1曲目に収録して,日本全

国で発売した。原告エスエムイー社は,原告レコード2のレコード製作者

であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の2)。

ウ 原告エスエムイー社は,実演家である西野カナが歌唱する楽曲「君の声

を feat.VERBAL(m−flo) を録音したレコード
」 (以下「原

告レコード3」という。)を製作の上,平成21年6月24日,「LOVE

one.」との名称の商業用12センチ音楽CD(商品番号:SECL−7

92)の5曲目に収録して,日本全国で発売した。原告エスエムイー社は,

原告レコード3のレコード製作者であるから,同レコードについて送信可





能化権を有する(甲3の3)。

エ 原告株式会社ポニーキャニオン(以下「原告ポニー社」という。)は,実

演家であるaikoが歌唱する楽曲「それだけ」を録音したレコード(以

下「原告レコード4」という。)を製作の上,平成14年9月4日,
「秋 そ

ばにいるよ」との名称の商業用12センチ音楽CD(商品番号:PCCA

−01778)の11曲目に収録して,日本全国で発売した。原告ポニー

社は,原告レコード4のレコード製作者であるから,同レコードについて

送信可能化権を有する(甲3の4)。

オ 原告株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ(以下「原告徳間ジャ

パン社」という。)は,実演家であるperfumeが歌唱する楽曲「シー

クレットシークレット」を録音したレコード(以下「原告レコード5」と

いう。)を製作の上,平成20年4月16日,「GAME」との名称の商業

用12センチ音楽CD(商品番号:TKCA−73325)の9曲目に収

録して,日本全国で発売した。原告徳間ジャパン社は,原告レコード5の

レコード製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲

3の5)。

カ 原告EMI社は,実演家であるRADWIMPSが歌唱する楽曲「ふた

りごと」を録音したレコード(以下「原告レコード6」という。)を製作の

上,平成18年5月17日,
「ふたりごと」との名称の商業用12センチ音

楽CD(商品番号:TOCT−4985)の1曲目に収録して,日本全国

で発売した。原告EMI社は,原告レコード6のレコード製作者であるか

ら,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の6)。

キ 原告株式会社エピックレコードジャパン(以下「原告エピック社」とい

う。)は,実演家である「いきものがかり」が歌唱する楽曲「君と歩いた季

節」を録音したレコード(以下「原告レコード7」という。)を製作の上,

「桜咲く街物語」
平成19年3月7日, との名称の商業用12センチ音楽C





D(商品番号:ESCL−2910)の4曲目に収録して,日本全国で発

売した。原告エピック社は,原告レコード7のレコード製作者であるから,

同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の7)。

ク 原告株式会社ワーナーミュージック・ジャパン(以下「原告ワーナー社」

という。)は,実演家であるコブクロが歌唱する楽曲「Million F

ilms」を録音したレコード(以下「原告レコード8」という。)を製作

の上,平成18年9月27日,
「ALL SINGLES BEST」との

名称の商業用12センチ音楽CD(商品番号:WPCL−10368−9)

の5曲目に収録して,日本全国で発売した。原告ワーナー社は,原告レコ

ード8のレコード製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を

有する(甲3の8)。

ケ 原告エスエムイー社は,実演家である西野カナが歌唱する楽曲「Dea

r・・・」を録音したレコード(以下「原告レコード9」という。)を製作

の上,平成21年12月2日,
「Dear・・・/MAYBE」との名称の

商業用12センチ音楽CD(商品番号:SECL−831)の1曲目に収

録して,日本全国で発売した。原告エスエムイー社は,原告レコード9の

レコード製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲

3の12)。

コ 原告ユニバーサルミュージック合同会社(以下「原告ユニバーサル社」

という。)は,実演家であるヒルクライムが歌唱する楽曲「春夏秋冬」を録

音したレコード(以下「原告レコード10」という。)を製作の上,平成2

1年9月30日,
「春夏秋冬」との名称の商業用12センチ音楽CD(商品

番号:UPCH−5623)の1曲目に収録して,日本全国で発売した。

原告ユニバーサル社は,原告レコード10のレコード製作者であるから,

同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の13)。

サ 原告EMI社は,実演家であるRADWIMPSが歌唱する楽曲「有心





論」を録音したレコード(以下「原告レコード11」という。 を製作の上,


平成18年7月26日, 有心論」
「 との名称の商業用12センチ音楽CD(商

品番号:TOCT−40012)の1曲目に収録して,日本全国で発売し

た。原告EMI社は,原告レコード11のレコード製作者であるから,同

レコードについて送信可能化権を有する(甲3の17)。

シ 原告エピック社は,実演家である「いきものがかり」が歌唱する楽曲「Y

ELL」を録音したレコード(以下「原告レコード12」という。)を製作

の上,平成21年9月23日,
「YELL/じょいふる」との名称の商業用

12センチ音楽CD(商品番号:ESCL−3280)の1曲目に収録し

て,日本全国で発売した。原告エピック社は,原告レコード12のレコー

ド製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の

18)。

ス 原告エピック社は,実演家である「いきものがかり」が歌唱する楽曲「流

星ミラクル」を録音したレコード(以下「原告レコード13」という。)を

製作の上,平成18年12月6日,
「流星ミラクル」との名称の商業用12

センチ音楽CD(商品番号:ESCL−2897)の1曲目に収録して,

日本全国で発売した。原告エピック社は,原告レコード13のレコード製

作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の19)。

セ 原告エイベックス・エンタテインメント株式会社(以下「原告エイベッ

クス社」という。)は,実演家である浜崎あゆみが歌唱する楽曲「voya

ge」を録音したレコード(以下「原告レコード14」という。)を製作の

上,平成14年9月26日,
「Voyage」との名称の商業用12センチ

音楽CD(商品番号:AVCD−30405)の1曲目に収録して,日本

全国で発売した。原告エイベックス社は,原告レコード14のレコード製

作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の20)。

ソ 原告エイベックス社は,実演家である浜崎あゆみが歌唱する楽曲「Ru





le」を録音したレコード(以下「原告レコード15」という。)を製作の

上,平成21年2月25日,
「Rule/Sparkle」との名称の商業

用12センチ音楽CD(商品番号:AVCD−31606)の 1 曲目に収

録して,日本全国で発売した。原告エイベックス社は,原告レコード15

のレコード製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する

(甲3の21)。

タ 原告エピック社は,実演家である「いきものがかり」が歌唱する楽曲「じ

ょいふる」を録音したレコード(以下「原告レコード16」という。)を製

作の上,平成21年9月23日,
「YELL/じょいふる」との名称の商業

用12センチ音楽CD(商品番号:ESCL−3280)の2曲目に収録

して,日本全国で発売した。原告エピック社は,原告レコード16のレコ

ード製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3

の22)。

チ 原告ワーナー社は,実演家であるコブクロが歌唱する楽曲「YELL〜

エール〜」を録音したレコード(以下「原告レコード17」という。)を製

作の上,平成18年9月27日,
「ALL SINGLES BEST」と

の名称の商業用12センチ音楽CD(商品番号:WPC−10368−9)

のDisc2の4曲目に収録して,日本全国で発売した。原告ワーナー社

は,原告レコード17のレコード製作者であるから,同レコードについて

送信可能化権を有する(甲3の23)。

ツ 原告エイベックス社は,実演家である浜崎あゆみが歌唱する楽曲「SE

ASONS」を録音したレコード(以下「原告レコード18」という。)を

製作の上,平成12年6月7日,
「SEASONS」との名称の商業用12

センチ音楽CD(商品番号:AVCD−30119)の1曲目に収録して,

日本全国で発売した。原告エイベックス社は,原告レコード18のレコー

ド製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の





24)。

テ 原告エピック社は,実演家である「いきものがかり」が歌唱する楽曲「卒

業写真」を録音したレコード(以下「原告レコード19」という。)を製作

の上,平成18年3月15日,
「SAKURA」との名称の商業用12セン

チ音楽CD(商品番号:ESCL−2803)の3曲目に収録して,日本

全国で発売した。原告エピック社は,原告レコード19のレコード製作者

であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の25)。

ト 原告ユニバーサル社は,実演家であるヒルクライムが歌唱する楽曲「純

也と真菜実」を録音したレコード(以下「原告レコード20」という。)を

製作の上,平成21年7月15日,
「純也と真菜実」との名称の商業用12

センチ音楽CD(商品番号:UPCH−5609)の1曲目に収録して,

日本全国で発売した。原告ユニバーサル社は,原告レコード20のレコー

ド製作者であるから,同レコードについて送信可能化権を有する(甲3の

26)。

(3) 被告は,原告レコード1ないし20(以下「原告各レコード」という。)の

送信可能化権を侵害したとされている氏名不詳者らに係る発信者情報(氏名,

住所及び電子メールアドレス)を保有している。

2 争点

原告らの被告に対するプロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報

開示請求の可否

3 争点に関する当事者の主張

[原告らの主張]

(1) 被告の利用者による原告らの送信可能化権の侵害

ア 氏名不詳者(以下「本件利用者1」という。)は,原告レコード1をフ

ァイル圧縮方式の一つであるmp3方式(以下「mp3方式」という。)

により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル1」という。)を





コンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被

告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレス(イ

ンターネットプロトコルアドレス)「114.154.44.2」の割当

てを受けてインターネットに接続し,平成22年6月26日21時41分

51秒ころ,いわゆるファイル交換共有ソフトウェアであるGnutel

la互換ソフトウェア(以下「Gnutella互換ソフトウェア」とい

う。)により,本件ファイル 1 を,インターネットに接続している不特定

の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインターネット回線を

経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告EMI社が原告レコー

ド1について有する送信可能化権を侵害した。

イ 氏名不詳者(以下「本件利用者2」という。)は,原告レコード2をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル2」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「114.154.44.2」の割当てを受けてインターネットに接

続し,平成22年6月26日7時34分10秒ころ,Gnutella互

換ソフトウェアにより,本件ファイル2を,インターネットに接続してい

る不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインターネッ

ト回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エスエムイー

社が原告レコード2について有する送信可能化権を侵害した。

ウ 氏名不詳者(以下「本件利用者3」という。)は,原告レコード3をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル3」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「123.227.37.239」の割当てを受けてインターネット

に接続し,平成22年6月25日14時50分47秒ころ,Gnutel





la互換ソフトウェアにより,本件ファイル3を,インターネットに接続

している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインタ

ーネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エスエ

ムイー社が原告レコード3について有する送信可能化権を侵害した。

エ 氏名不詳者(以下「本件利用者4」という。)は,原告レコード4をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル4」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「123.227.37.239」の割当てを受けてインターネット

に接続し,平成22年6月18日8時1分16秒ころ,Gnutella

互換ソフトウェアにより,本件ファイル4を,インターネットに接続して

いる不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインターネ

ット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告ポニー社が

原告レコード4について有する送信可能化権を侵害した。

オ 氏名不詳者(以下「本件利用者5」という。)は,原告レコード5をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル5」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「123.227.37.239」の割当てを受けてインターネット

に接続し,平成22年6月26日14時51分9秒ころ,Gnutell

a互換ソフトウェアにより,本件ファイル5を,インターネットに接続し

ている不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインター

ネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告徳間ジャ

パン社が原告レコード5について有する送信可能化権を侵害した。

カ 氏名不詳者(以下「本件利用者6」という。)は,原告レコード6をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル6」とい





う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「124.101.162.160」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年6月18日0時7分28秒ころ,Gnutell

a互換ソフトウェアにより,本件ファイル6を,インターネットに接続し

ている不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインター

ネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告EMI社

が原告レコード6について有する送信可能化権を侵害した。

キ 氏名不詳者(以下「本件利用者7」という。)は,原告レコード7をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル7」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「124.101.162.160」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年6月27日1時50分59秒ころ,Gnutel

la互換ソフトウェアにより,本件ファイル7を,インターネットに接続

している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインタ

ーネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エピッ

ク社が原告レコード7について有する送信可能化権を侵害した。

ク 氏名不詳者(以下「本件利用者8」という。)は,原告レコード8をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル8」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「124.101.162.160」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年6月25日14時42分32秒ころ,Gnute

lla互換ソフトウェアにより,本件ファイル8を,インターネットに接

続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイン





ターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告ワー

ナー社が原告レコード8について有する送信可能化権を侵害した。

ケ 氏名不詳者(以下「本件利用者9」という。)は,原告レコード9をm

p3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル9」とい

う。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュー

タを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアド

レス「125.207.43.73」の割当てを受けてインターネット

接続し,平成22年6月14日21時4分19秒ころ,Gnutella

互換ソフトウェアにより,本件ファイル9を,インターネットに接続して

いる不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインターネ

ット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エスエムイ

ー社が原告レコード9について有する送信可能化権を侵害した。

コ 氏名不詳者(以下「本件利用者10」という。)は,原告レコード10

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル10」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「125.207.43.73」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年6月15日14時51分54秒ころ,Gnute

lla互換ソフトウェアにより,本件ファイル10を,インターネット

接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイ

ンターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告ユ

ニバーサル社が原告レコード10について有する送信可能化権を侵害

た。

サ 氏名不詳者(以下「本件利用者11」という。)は,原告レコード11

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル11」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ





ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「124.99.54.180」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年7月15日11時29分47秒ころ,Gnute

lla互換ソフトウェアにより,本件ファイル11を,インターネット

接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイ

ンターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告E

MI社が原告レコード11について有する送信可能化権を侵害した。

シ 氏名不詳者(以下「本件利用者12」という。)は,原告レコード12

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル12」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「124.99.54.180」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年7月16日5時35分17秒ころ,Gnutel

la互換ソフトウェアにより,本件ファイル12を,インターネットに接

続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイン

ターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エピ

ック社が原告レコード12について有する送信可能化権を侵害した。

ス 氏名不詳者(以下「本件利用者13」という。)は,原告レコード13

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル13」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「122.16.241.165」の割当てを受けてインターネ

ットに接続し,平成22年7月31日6時57分33秒ころ,Gnute

lla互換ソフトウェアにより,本件ファイル13を,インターネット

接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイ

ンターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エ





ピック社が原告レコード13について有する送信可能化権を侵害した。

セ 氏名不詳者(以下「本件利用者14」という。)は,原告レコード14

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル14」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「122.16.241.165」の割当てを受けてインターネ

ットに接続し,平成22年7月11日15時24分26秒ころ,Gnut

ella互換ソフトウェアにより,本件ファイル14を,インターネット

に接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じて

インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告

エイベックス社が原告レコード14について有する送信可能化権を侵害

した。

ソ 氏名不詳者(以下「本件利用者15」という。)は,原告レコード15

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル15」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「123.224.171.126」の割当てを受けてインター

ネットに接続し,平成22年10月25日14時58分34秒ころ,Gn

utella互換ソフトウェアにより,本件ファイル15を,インターネ

ットに接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応

じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって

原告エイベックス社が原告レコード15について有する送信可能化権を

侵害した。

タ 氏名不詳者(以下「本件利用者16」という。)は,原告レコード16

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル16」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ





ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「123.224.171.126」の割当てを受けてインター

ネットに接続し,平成22年10月24日17時0分19秒ころ,Gnu

tella互換ソフトウェアにより,本件ファイル16を,インターネッ

トに接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じ

インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原

告エピック社が原告レコード16について有する送信可能化権を侵害

た。

チ 氏名不詳者(以下「本件利用者17」という。)は,原告レコード17

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル17」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「118.8.52.66」の割当てを受けてインターネット

接続し,平成22年10月26日4時19分42秒ころ,Gnutell

a互換ソフトウェアにより,本件ファイル17を,インターネットに接続

している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインタ

ーネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告ワーナ

ー社が原告レコード17について有する送信可能化権を侵害した。

ツ 氏名不詳者(以下「本件利用者18」という。)は,原告レコード18

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル18」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「118.8.52.66」の割当てを受けてインターネット

接続し,平成22年10月24日14時36分6秒ころ,Gnutell

a互換ソフトウェアにより,本件ファイル18を,インターネットに接続

している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてインタ





ーネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エイベ

ックス社が原告レコード18について有する送信可能化権を侵害した。

テ 氏名不詳者(以下「本件利用者19」という。)は,原告レコード19

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル19」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「122.19.229.32」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年10月25日5時52分18秒ころ,Gnute

lla互換ソフトウェアにより,本件ファイル19を,インターネット

接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じてイ

ンターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告エ

ピック社が原告レコード19について有する送信可能化権を侵害した。

ト 氏名不詳者(以下「本件利用者20」という。)は,原告レコード20

をmp3方式により圧縮して複製したファイル(以下「本件ファイル20」

という。)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピ

ュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIP

アドレス「122.19.229.32」の割当てを受けてインターネッ

トに接続し,平成22年10月22日21時27分51秒ころ,Gnut

ella互換ソフトウェアにより,本件ファイル20を,インターネット

に接続している不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じて

インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にし,もって原告

ユニバーサル社が原告レコード20について有する送信可能化権を侵害

した。

ナ よって,原告らが原告レコード1ないし20(以下「原告各レコード」

と総称する。)について有する送信可能化権が被告のインターネット接続

サービス利用者である本件利用者1ないし20(以下「本件各利用者」と





総称する。)によって侵害されたことは,明らかである。

(2) 発信者情報開示請求の要件

ア 本件各利用者は,いずれも,他のGnutella互換ソフトウェア利

用者からの求めに応じて原告各レコードを送信可能な状態にすることによ

り原告らの送信可能化権を侵害していたことが,明らかである。

イ 本件各利用者から見て,他のGnutella互換ソフトウェア利用者

は不特定な者であるから,本件各利用者は,不特定の者によって受信され

ることを目的とする電気通信の送信(特定電気通信)の用に被告の電気通

信設備を利用していたといえる。

被告は,このような特定電気通信の用に電気通信設備を供していたもの

であるから,プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」

に該当し,本件各利用者による原告各レコードの送信可能化権侵害との関

係において,同法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる。

ウ 原告らは,各自が原告各レコードについて有する送信可能化権侵害に基

づき,本件各利用者に対して損害賠償請求及び差止請求を行う必要がある

ところ,本件各利用者の氏名・住所等は原告らに不明であるため,原告ら

が本件各利用者に対して上記請求を行うことが実際上できない状態にある。

したがって,原告らには,本件各利用者に対する損害賠償請求権及び差

止請求権の行使のために被告から本件各利用者に係る発信者情報(住所及

び氏名)の開示を受けるべき正当な理由がある。

(3) よって,原告らは,被告に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づ

き,本件各利用者に係る発信者情報であるその者の氏名,住所及び電子メー

ルアドレスの開示を求める。

[被告の主張]

(1) 上記(1) 被告の利用者による原告らの送信可能化権の侵害
( については,

否認ないし争う。





(2) 上記(2)(発信者情報開示請求の要件)については,被告が本件各利用者

による原告各レコードの送信可能化権侵害との関係においてプロバイダ責任

制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当することは認め,その余に

ついては否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断

1 被告の利用者による原告らの送信可能化権の侵害の有無について

(1) 送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自

動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ

所定の方法により自動公衆送信(公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自

動的に行うもの。著作権法2条1項9号の4)し得るようにする行為をいう。

(2) そこで検討するに,証拠(甲2の1〜8,甲2の12・13,甲2の17

〜26,甲3の1〜8,甲3の12・13,甲3の17〜26,甲6)及び

弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

ア Gnutellaネットワークについて

Gnutellaネットワークとは,ファイル共有ソフトであるGnu

tellaという名前のソフトウェア及び同ソフトウェアと共通するプロ

トコルを持つファイル共有クライアントソフト(LimeWire,Ca

bos等)のユーザーが,インターネットに接続しているパソコンにこれ

らのソフトウェアを組み込むことで,これらのソフトウェアを起動してい

るユーザー同士が互いのハードディスクにあるファイル(情報)を相互に

交換することができるネットワークのことをいう。

Gnutellaネットワークでは,ある利用者が検索キーワードを送

信すると,同キーワードをファイル名に含むファイルに関するキー情報(当

該ファイルを保有している利用者のIPアドレス,ポート番号,ファイル

名等)が返信される。上記利用者は,上記キー情報の中から,同人の希望

するファイルを保有しているノードのIPアドレス及びポート番号を選択





し,同アドレスに対してダウンロード要求を行う。当該ファイルが公開状

態にある場合,同要求に応じて,当該ファイルを保有しているノードから,

上記利用者に対し,要求されたファイルが自動的に送信される。

イ 「P2P FINDER」について

「P2P FINDER」とは,株式会社クロスワープ(以下「クロス

ワープ社」という。)が開発したインターネット上の著作権侵害検出シス

テムであり,Gnutellaネットワークその他の各種P2Pネットワ

ークに接続し,同ネットワークにおいて流通するファイル(ダウンロード

されたファイル)及びダウンロード時の情報(送信元となったノードのI

Pアドレス,ポート番号,ファイルハッシュ値,ダウンロード完了時刻等)

を収集,分析等するものである。

クロスワープ社は,平成15年から「P2P FINDER」を稼働し,

レコード会社等から依頼を受けて,同システムを使って,設定されたキー

ワードに基づき,市販されているCDの音源が各種P2Pネットワーク上

で公開されているかどうかを検索している。

ウ クロスワープ社による調査

クロスワープ社は,原告らから依頼を受け,「P2P FINDER」

を使用して,キーワード名を,原告各レコードの実演家である「RADW

IMPS」,「西野カナ」,「aiko」,「perfume」,「いき

ものがかり」,「コブクロ」,「ヒルクライム」及び「浜崎あゆみ」とし

て検索した。

その結果,前記第2の3[原告らの主張](1)アないしト記載のIPアド

レスから本件ファイル1ないし20(以下「本件各ファイル」という。)

が送信され,同項記載の時刻に本件各ファイルのダウンロードが完了した

ことが確認された(以下「本件調査結果」という。)。

エ 本件調査結果の信用性





(ア) クロスワープ社は,平成22年6月4日14時から同月8日14時

までの間及び同年7月2日19時から同月5日13時までの間の2回に

わたり,次のとおり,「P2P FINDER」のデータベースに記録

されたファイルの発信元のIPアドレス(インターネットに接続する際

インターネット接続プロバイダから割り当てられるグローバルIPア

ドレス)が実際の送信元のIPアドレスと一致しているかどうかを確認

する試験(以下「本件確認試験」という。)を行った。

(イ) 本件確認試験の実施手順は,次のとおりである。

a クロスワープ社は,マイクロソフト株式会社がWindows7に

搭載しているインターネット時刻の同期機能を利用してタイムサーバ

ーに問い合わせを行い,クロスワープ社において用意したファイル送

信用のパソコン(以下「試験用パソコン」という。)の時刻同期(時

刻合わせ)を行う。

b クロスワープ社は,試験用パソコンを起動し,インターネットに接

続した際にインターネット接続プロバイダから割り当てられるIPア

ドレスを確認する。そして,ファイル送信用パソコンから,他の人に

よってアップロードされる可能性の極めて少ないランダムな文字列で

生成したファイル名(以下「試験ファイル名」という。)を付けたファイ

ル(以下「試験ファイル」という。)を,Gnutellaネットワーク

上で公開し,ダウンロード可能な状態に置く。

c クロスワープ社は,「P2P FINDER」を使用し,試験ファ

イル名の一部をキーワードとして設定し,Gnutellaネットワ

ークを監視する。そして,同キーワードをファイル名に含むファイル

を検索し,その検索結果に基づき,当該ファイルの保有先のIPアド

レス(グローバルIPアドレス)に対してダウンロード要求を行い,

試験ファイルをダウンロードする。





(ウ) 本件確認試験の結果は,以下のとおりである。また,本件確認試験

における実験システムの構成について,特段不合理な点は認められな

い。

a 平成22年6月4日14時から同月8日14時までの間に行われた

試験では,公開された試験ファイル50種類のうち45種類のファイ

ルが延べ197回ダウンロードされた事実が,確認された。これらの

ファイルの送信元のIPアドレスは,いずれも,試験用パソコンがイ

ンターネット接続プロバイダから割り当てられたIPアドレスであっ

た。

b 平成22年7月2日19時から同月5日13時までの間に行われた

試験では,公開された試験ファイル50種類のうち49種類のファイ

ルが延べ357回ダウンロードされた事実が,確認された。これらの

ファイルの送信元のIPアドレスも,いずれも,試験用パソコンがイ

ンターネット接続プロバイダから割り当てられたIPアドレスと同一

であった。

(3) 本件確認試験の結果等によれば,「P2P FINDER」による検索

結果,すなわち本件調査結果については,その信用性を疑わせるような事

情は見当たらず,信頼を置くことができるものと認められる。

したがって,本件調査結果に基づき,前記第2の3[原告らの主張](1)

アないしトの事実,すなわち,@ 本件各利用者は,原告各レコードを複

製し,この複製に係るファイル(本件各ファイル)をコンピュータ内の記

録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット

接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインタ

ーネットに接続したこと,A そして,本件各利用者は,Gnutell

a互換ソフトウェアにより,本件各ファイルを,インターネットに接続し

ている,本件各利用者からみて不特定の他の同ソフトウェア利用者(公衆)





からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る

状態にしたこと(すなわち,原告らの原告各レコードに係る送信可能化権

侵害したこと),が認められる。

2 発信者情報開示請求の要件について

(1) 被告が本件各利用者による原告各レコードの送信可能化権侵害との関係

においてプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当す

ることについては,当事者間に争いがない。

(2) また,前記第2の1(争いのない事実等)の(2)(原告らの送信可能化権)

及び上記1で認定した事実によれば,本件各利用者は,被告のインターネッ

ト接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当を受けてインター

ネットに接続し,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件各ファイ

ルを公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことによって,

原告らが原告各レコードについて有する送信可能化権を侵害したことが,明

らかであると認められる。

(3) さらに,証拠(甲1の1〜8,甲1の12・13,甲1の17〜26)及

び弁論の全趣旨によれば,原告らは,原告ら各自が原告各レコードについて

有する送信可能化権に基づき,本件各利用者に対して損害賠償請求及び差止

請求を行う必要があるところ,本件各利用者の氏名・住所等は原告らに不明

であるため,上記請求を行うことが実際上できない状態にあることが認めら

れる。

(4) したがって,原告らには,被告から本件各利用者に係る発信者情報(氏名,

住所及び電子メールアドレス)の開示を受けるべき正当な理由がある。

3 よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれを認容し,訴訟費用の

負担につき民事訴訟法61条及び62条を適用して,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部





裁判長裁判官 阿 部 正 幸




裁判官 山 門 優




裁判官 小 川 卓 逸