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事件 平成 22年 (行ケ) 10288号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2011/04/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成23年4月27日判決言渡

平成22年(行ケ)第10288号 審決取消請求事件

平成23年3月16日 口頭弁論終結

判 決



原 告 株 式 会 社 荒 井 鉄 工 所



訴訟代理人弁理士 丹 羽 宏 之

同 西 尾 美 良



被 告 信和エンジニアリング株式会社




被 告 Y

被告ら訴訟代理人弁護士 鈴 木 和 夫

同 鈴 木 き ほ

被告ら訴訟代理人弁理士 齊 藤 誠 一

同 小 田 治 親

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が無効2009−800256号事件について平成22年8月4日にした

審決を取り消す。

第2 当事者間に争いのない事実

1
1 特許庁における手続の経緯

被告らは,特許第3222738号(発明の名称「縦形式固液分離精製搾り機」。

以下「本件特許」という。)の特許権者である。

本件特許は,平成7年9月22日,出願され(特願平7−267972号),平

成13年8月17日に設定登録がされた(甲10。請求項の数3。以下,設定登録

時の明細書を図面と併せて「本件明細書」という。。


原告は,平成21年12月28日付けで,特許庁に対し,本件特許を無効とする

ことを求めて無効審判を請求した(甲12。無効2009−800256号)。これ

に対し,被告らは,平成22年4月16日付けで,訂正請求書を提出した(甲11。

以下「本件訂正」といい,本件訂正後の明細書を図面と併せて「訂正明細書」とい

う。。特許庁は,平成22年8月4日,
) 「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立

たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その審決の謄本は,同月12日,

原告に送達された。

2 特許請求の範囲の記載

(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(甲10。以下,

これらの請求項に係る発明を項番号に対応して,「本件発明1」などという。。


【請求項1】

「機械内に投入された食品原料を搾り込んで液状の圧搾分離液と脱水粕とに分離

する搾り機であって,前記食品原料投入口と前記圧搾分離液および脱水粕の排出口

とを有し垂直方向に沿って支持台に片持ち懸下支持される縦型筒体と,該縦型筒体

内に垂直に収納され,投入側の上方から排出側の下方に向かって隣接する羽根間の

容積を縮減するように形成され,上方から下方に向かって徐々に細く形成されるス

クリューと,該スクリューの回転機構部と,前記縦型筒体と前記スクリュー間に配

設され,前記スクリューの羽根先端に接合される摺接部材と,該摺接部材が摺動す

るスクリーンと,を設けてなり,前記摺接部材が磨耗した場合に前記スクリューを

下降させ,前記摺接部材が前記スクリーン面に摺動することができる機構を有する

2
ことを特徴とする縦形式固液分離精製搾り機。」

【請求項2】

「前記スクリューを前記縦型筒内で下降したときにも前記スクリューを駆動する

大歯車が外れない長さを有する小歯車をモータに取り付けてなることを特徴とする

請求項1に記載の縦形式固液分離精製搾り機。」

【請求項3】

「前記脱水粕の排出口には圧縮シリンダにより押圧される閉止用蓋が設けられて

いることを特徴とする請求項1に記載の縦形式固液分離精製搾り機。」

(2) 本件訂正の内容は,次のとおりである(甲11)。

ア 訂正事項1

請求項1に「上方から下方に向かって徐々に細く形成されるスクリューと, とあ


るのを,
「上方から下方に向かって徐々に細く形成されると共に,下端の支持軸は前

記縦型筒体の下方に固定されたカラー部材内を下降可能に嵌着された支持具に枢支

されたスクリューと,」と訂正する。

イ 訂正事項2

請求項1に「前記摺接部材が磨耗した場合に前記スクリューを下降させ, とある


のを,前記摺接部材が磨耗した場合に前記支持具を下げることにより前記スクリュ


ーを下降させ,」と訂正する。

ウ 訂正事項3

明細書段落【0006】6行目に記載した「上方から下方に向かって徐々に細く

形成されるスクリューと,」を,「上方から下方に向かって徐々に細く形成されると

共に,下端の支持軸は前記縦型筒体の下方に固定されたカラー部材内を下降可能に

嵌着された支持具に枢支されたスクリューと,」に訂正する。

エ 訂正事項4

明細書段落【0006】9行目に記載した「前記摺接部材が磨耗した場合に前記

スクリューを下降させ,」とあるのを,「前記摺接部材が磨耗した場合に前記支持具

3
を下げることにより前記スクリューを下降させ,」に訂正する。

(3) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(下線を引いた部

分が訂正箇所である。甲11。以下,これらの請求項に係る発明を項番号に対応し

て,「本件訂正発明1」などという。。


「【請求項1】機械内に投入された食品原料を搾り込んで液状の圧搾分離液と脱水

粕とに分離する搾り機であって,前記食品原料投入口と前記圧搾分離液および脱水

粕の排出口とを有し垂直方向に沿って支持台に片持ち懸下支持される縦型筒体と,

該縦型筒体内に垂直に収納され,投入側の上方から排出側の下方に向かって隣接す

る羽根間の容積を縮減するように形成され,上方から下方に向かって徐々に細く形

成されると共に,下端の支持軸は前記縦型筒体の下方に固定されたカラー部材内を

下降可能に嵌着された支持具に枢支されたスクリューと,該スクリューの回転機構

部と,前記縦型筒体と前記スクリュー間に配設され,前記スクリューの羽根先端に

接合される摺接部材と,該摺接部材が摺動するスクリーンと,を設けてなり,前記

摺接部材が磨耗した場合に前記支持具を下げることにより前記スクリューを下降さ

せ,前記摺接部材が前記スクリーン面に摺動することができる機構を有することを

特徴とする縦形式固液分離精製搾り機。」

「【請求項2】前記スクリューを前記縦型筒内で下降したときにも前記スクリュー

を駆動する大歯車が外れない長さを有する小歯車をモータに取り付けてなることを

特徴とする請求項1に記載の縦形式固液分離精製搾り機。」

「【請求項3】前記脱水粕の排出口には圧縮シリンダにより押圧される閉止用蓋が

設けられていることを特徴とする請求項1に記載の縦形式固液分離精製搾り機。」

3 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,審決は,@本件訂正

は,特許請求の範囲減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とし,いずれも,

願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって,実質上特許請求

の範囲を拡張し,又は変更するものでないから,特許法134条の2第1項ただし

4
書,及び同条5項において準用する同法126条3項,4項の要件を満たす,A本

件訂正発明1は,甲1(実願昭61−177374号〔実開昭63−80990号

公報〕に添付のマイクロフィルム),甲2(特開平2−290208号公報),甲3

(特開昭49−19074号公報),甲6(1)(特開昭54−13069号公報),甲

6(2)(実願昭63−133034号〔実開平2−53892号公報〕に添付のマイ

クロフィルム),甲6(3)(特開昭49−15269号公報),甲7(実願昭49−4

3999号〔実開昭50−134389号公報〕に添付のマイクロフィルム)の記

載に基づいて,当業者が容易になし得たとはいえず,上記記載からは予測できない

格別な効果を奏するものであるから,無効とすることはできない,B本件訂正発明

2,3は,いずれも,本件訂正発明1を引用して更に限定したものであり,甲1な

いし7の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえないか

ら,無効とすることはできない,とするものである。

審決は,上記結論を導くに当たり,甲1記載の発明(以下「甲1発明」という。)

と本件訂正発明1との一致点及び相違点を次のとおり認定した。

(1) 甲1発明

「機械内に投入された大豆原料を搾り込んで豆乳とおからとに分離する搾り機で

あって,前記原料大豆と前記豆乳及びおからとに分離する搾り機であって,前記原

料大豆投入口と前記豆乳及びおからの排出口とを有し,台枠上の垂直方向の支柱に

支持される二重の金網フィルタと,該金網フィルタ内に垂直に収納され,上段から

下段に向かってねじのピッチ及び深さを次第に小さく形成した段付スクリューシャ

フトを,前記台枠内部の無段階減速機から垂設させた回転軸に取付け回転自在に固

定し,段付スクリューシャフトの外側の金網フィルタの内側を摺接させることによ

り,段付スクリューシャフトの回転に伴い,大豆原料が金網フィルタとの間で順次

圧搾され完全に豆乳が絞り出され,おからはシャフトの溝に沿って下に送られる縦

形式大豆搾り機。」

(2) 本件訂正発明1と甲1発明との一致点

5
「機械内に投入された食品原料を搾り込んで液状の圧搾分離液と脱水粕とに分離

する搾り機であって,前記食品原料投入口と前記圧搾分離液および脱水粕の排出口

とを有し,垂直方向に支持されるスクリーンと,該スクリーン内に垂直に収納され,

外側がスクリーン面に摺動することができ,投入側の上方から排出側の下方に向か

って隣接する羽根間の容積を縮減するように形成されたスクリューと,該スクリュ

ーの回転機構部を設けてなる縦形式固液分離精製搾り機。」

(3) 本件訂正発明1と甲1発明との相違点

(イ) 本件訂正発明1では,スクリューの羽根先端に摺接部材を接合し,該摺接部

材とスクリーンを摺動するものであるのに対して,甲1発明では,摺接部材を設け

ていない点。

(ロ) 本件訂正発明1では,摺接部材が磨耗した場合にスクリューを下降させ,前

記摺接部材が前記スクリーン面に摺動することができる機構を有しているのに対し

て,甲1発明ではスクリーンに摺接するスクリューの外側が磨耗した場合に,スク

リューを前記スクリーン面に摺動することができる機構を有していない点。

(ハ) 本件訂正発明1では,上記相違点(ロ)の機構がスクリューを上方から下方に

向かって徐々に細く形成すると共に,スクリューの下端の支持軸を,縦型筒体の下

方に固定されたカラー部材内を下降可能に嵌着された支持具に枢支させ,前記摺接

部材が磨耗した場合には前記支持具を下げることにより前記スクリューを下降させ

るものであるのに対して,甲1発明には,かかる機構は記載されていない点。

(ニ) 本件訂正発明1では,スクリーンの外周にさらに縦型筒体を設け,縦型筒体

を垂直方向に沿って支持台に片持ち懸下支持させることにより,縦形式固液分離精

製搾り機全体を片持ち懸下支持させているのに対して,甲1発明では,そのような

縦型筒体を設けて片持ち懸下支持させていない点。

(ホ) 食品原料投入口と前記圧搾分離液および脱水粕の排出口とを,本件訂正発明

1では,縦型筒体に設けているのに対し,甲1発明では,スクリーンに設けている

点。

6
第3 取消事由に関する原告の主張

審決には,本件訂正の可否についての判断の誤り(取消事由1),本件訂正が違法

であるとした場合の,本件発明1の認定,相違点の認定の誤り,容易想到性の判断

の誤り(取消事由2),本件訂正が適法であるとした場合の,容易想到性の判断の誤

り(取消事由3)があるから,違法として取り消されるべきである。

1 取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)

(1) 審決は,訂正事項1,3において,
「上方から下方に向かって徐々に細く形

成されるスクリューと」とあるのを,
「上方から下方に向かって徐々に細く形成され

ると共に,下端の支持軸は前記縦型筒体の下方に固定されたカラー部材内を下降可

能に嵌着された支持具に枢支されたスクリューと, と訂正することについて,
」 本件

明細書に「スクリュー3の・・・下端の支持軸21は下方のカラー部材15内に嵌

着され,上下に移動して固定可能な支持具22に枢支される。(段落【0011】
」 )

と記載されていることを理由に,上記訂正は,願書に添付した明細書に記載された

事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するもの

でないと判断している。しかし,本件明細書の段落【0012】の記載及び図1(別

紙図面のとおり)によれば,下方側のカラー部材15は,スクリーン4の下方に設

けられており,縦型筒体の下方に存在しない。

したがって,上記訂正は,願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のも

のとはいえない。

(2) 審決は,訂正事項2,4について,「スクリューを下降させ」る手段につい

て,
「前記支持具を下げることにより」という限定を付加するものであり,特許請求

の範囲の減縮を目的とするものに該当すると判断している。

しかし,支持具を上下に移動することに関し,本件明細書には,何ら具体的な構

成が開示されておらず,希望的な構成を示したにすぎない。むしろ,被告信和エン

ジニアリング株式会社は,本件特許の実施品において,甲3に記載された調整ナッ

トと同様に,スクリューの上部の軸受部に設けた調整ネジを回動させてスクリュー

7
を上下動させる構成を採っている。したがって,支持具を下げることによりスクリ

ューを下降させるとの構成を付加する訂正事項2,4は,本件特許の技術内容を不

明確にする訂正であって,明りょうでない記載の釈明には当たらない。

(3) 以上のとおり,本件訂正について,特許法134条の2第1項ただし書,及

び同条5項において準用する同法126条3項,4項に規定する要件を満たすもの

とした審決は誤りである。

2 取消事由2(本件訂正が違法であることを前提とした審決の認定・判断の誤

り)

(1) 本件発明1の認定の誤り

審決は,本件発明1について,縦型筒体と上方から下方に向かって縮径するテー

パー状のスクリーンとを明確に区別することを避け,縦型筒体に食品原料投入口や

脱水粕の排出口を有すると認定している。

しかし,本件発明1において,縦型筒体は,専らスクリーンの外周より濾過され

る濾過液を逸散することなく,纏めて下部に設けた圧搾分離液の排出口より取り出

せる構成としており,脱水粕の排出口は,スクリーンの下方のカラー部材に設けら

れており,また,食品原料投入口は,スクリーンの上方のカラー部材に設けられて

おり,いずれも,縦型筒体には設けられていない。

したがって,審決の本件発明1の認定には誤りがある。

(2) 相違点の認定の誤り

ア 相違点(ハ)

審決は,本件発明1のスクリューの下端の支持軸について,縦型筒体の下方に固

定されたカラー部材内に下降可能に嵌着されていることを前提に,甲1発明と対比

している。しかし,本件発明1において,縦型筒体の下方にはカラー部材が固定さ

れていないから,この構成を除外して相違点を認定するべきである。そうすると,

本件発明1では,摺接部材が磨耗した場合,スクリューを下降させる機構を有して

いるのに対し,甲1発明ではかかる構成が記載されていない点を相違点とすべきで

8
あり,審決の相違点(ハ)の認定には誤りがある。

イ 相違点(ニ)

審決は,甲1には,本件発明1における縦型筒体の支持台に片持ち懸下支持する

との構成が開示されていないとして,相違点(ニ)を認定している。しかし,本件発明

1においても,縦型筒体の片持ち懸下は,図1に示すように支持棒16を利用し,

スクリーン4の下部の環状鍔部と下方のカラー部材15の環状鍔部を介して挟持し,

カラー部材15の下端の環状の底板10で縦型筒体の下端を支持しており,縦型筒

体を片持ち懸下支持するとの構成を採っていない。したがって,審決の相違点(ニ)

の認定には誤りがある。

ウ 相違点(ホ)

審決は,本件発明1では,食品原料投入口及び脱水粕の排出口を縦型筒体に設け

ていると認定しているが,縦型筒体には圧搾分離液の排出口しか有していない。し

したがって,審決の相違点(ホ)の認定には誤りがある。

エ 対比の対象

審決は,本件発明1と甲1発明について対比を行い,一致点及び相違点を挙げて

いるが,本件発明1との対比は,甲1ではなく,甲2に記載された技術内容と対比

すべきである。

(3) 本件発明1に係る容易想到性の判断の誤り

審決は,甲3には,相違点(ロ)の構成及び相違点(ハ)の一部の構成が記載されてい

るかのようにみえるとしながら,甲3記載の縦形絞り機と甲1記載の縦型絞り機と

は,絞り機としての形式,機構が異なり,甲3記載の構成を,甲1発明に適用し,

スクリューの外側が磨耗した場合にスクリューを下降させ,スクリューの外側がス

クリーン面に摺動することができる構成とすることは,当業者に容易想到とはいえ

ないと判断している。

しかし,濾過孔を穿った外筒(スクリーン)内に原液を供給して固液分離する形

式の固液分離装置では,外筒は静止し,外筒内のスクリューが回転する方式が一般

9
的であるから,甲3記載の外筒を回転させて中心体を固定させる構成に代えて,外

筒を固定して中心体を回転させる構成を選択することは,当業者にとって容易であ

る。

したがって,相違点(ロ)及び(ハ)は,甲1発明に甲3発明を適用することにより容

易に想到することができるから,上記審決の判断には誤りがある。

(4) 本件発明2,3に係る容易想到性の判断の誤り

本件発明2,3は,本件発明1を引用し,更に限定したものであるところ,前記

(3)のとおり,本件発明1は容易想到であり,大歯車と小歯車とが,小歯車が上下動

しても噛合状態を確保するとの構成,排出口は,圧縮シリンダを有する閉止用蓋に

より押圧されるとの構成は,いずれも周知であるから,本件発明2,3も容易想到

であり,審決の本件発明2,3にかかる容易想到性の判断には誤りがある。

3 取消事由3(本件訂正が適法であることを前提とした審決の判断の誤り)

(1) 本件訂正発明1に係る容易想到性の判断の誤り

仮に,本件訂正が適法であるとしても,本件訂正発明1は,引用発明,甲2及び

甲3等の技術内容に基づいて,容易に発明することができたものであり,審決の判

断には誤りがある。

(2) 本件訂正発明2,3に係る容易想到性の判断の誤り

仮に,本件訂正が適法であるとしても,本件訂正発明2,3は,本件訂正発明1

を引用し,更に限定したものであるところ,前記(1)のとおり,本件訂正発明1は容

易想到であり,大歯車と小歯車とが,小歯車が上下動しても噛合状態を確保すると

の構成,排出口は,圧縮シリンダを有する閉止用蓋により押圧されるとの構成は,

いずれも周知であるから,本件訂正発明2,3も容易想到であり,審決の本件訂正

発明2,3にかかる容易想到性の判断には誤りがある。

第4 被告らの反論

1 取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)に対し

(1) 原告は,訂正事項1,3では,カラー部材が縦型筒体の下方に固定されて

10
いるとされたが,本件明細書の段落【0012】の記載及び図1によれば,下方側

のカラー部材15は,スクリーン4の下方に設けられており,縦型筒体の下方に存

在しないから,上記訂正は,願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のも

のではなく,審決の判断には誤りがあると主張する。

しかし,本件明細書には,
「縦型筒体2の上下にはカラー部材14,15が固定さ

れる。(段落【0010】,
」 )「スクリュー3の・・・下端の支持軸21は下方のカラ

ー部材15内に嵌着され,上下に移動して固定可能な支持具22に枢止される。 段



落【0011】)と記載されると共に,図1には縦型筒体2の下方に下側のカラー部

材15が示されている。

したがって,本件明細書において縦型筒体の下方にカラー部材が存在しないこと

を前提とした原告の主張には理由がなく,訂正事項1,3は,願書に添付した明細

書に記載された事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲拡張し,又

変更するものではない。

(2) 原告は,訂正事項2,4について,支持具を上下に移動することに関し,本

件明細書には,何ら具体的な構成が開示されておらず,支持具を下げることにより

スクリューを下降させるとの構成は,本件特許の技術内容を不明確にする訂正であ

って,明りょうでない記載の釈明には当たらないと主張する。

しかし,明細書には,当業者が実施できる程度の記載がされていればよいのであ

って,具体的な構成が示されていないからといって訂正が許されないわけではなく,

原告の上記主張には理由がない。

(3) なお,原告は,審判手続において本件訂正が不適法であるとの主張を撤回し

ているから,本訴において,本件訂正の適法性を争うことは許されない。

2 取消事由2(本件訂正が違法であることを前提とした審決の認定・判断の誤

り)に対し

(1) 前記1のとおり,本件訂正は適法であるから,これが違法であることを前提

にした原告の主張は,いずれも失当である。

11
(2) 相違点の認定の誤り

ア 相違点(ハ)

原告は,相違点(ハ)について,縦型筒体の下方にはカラー部材が存在しないから,

この構成を除外して相違点を認定すべきと主張する。しかし,前記1(1)のとおり,

カラー部材は,縦型筒体の下方に固定されて設けられており,原告の上記主張は失

当である。

イ 相違点(ニ)

原告は,本件発明1においても,縦型筒体を片持ち懸下支持するとの構成を採っ

ていないと主張する。

しかし,本件明細書には,「縦型筒体2は支持台6に片持ち懸下支持され」(段落

【0010】)と記載されており,片持ち懸下であることが示されている。なお,本

件明細書には,
「また,縦型筒体2は一体構造でもよいが,本実施例では中間分離型

のものからなり組立性の向上を図っている。なお,縦型筒体2は支持棒16により

補強支持される。(段落【0010】
」 )と記載されているように,支持棒16は縦型

筒体2を補強するための構造を示すものであり,図1からも縦型筒体2は片持ち状

態で懸下支持されていることは明らかである。また,図1の構造はあくまで一例を

示したものに過ぎず,縦型筒体が図示されたものに限定されるわけではない。

したがって,原告の上記主張は失当である。

ウ 相違点(ホ)

原告は,縦型筒体に食品原料投入口及び脱水粕の排出口は開口しておらず,圧搾

分離液の排出口しか有していないと主張する。

しかし,本件明細書には,
「縦型筒体2の底板10の排出口13は閉止用蓋28に

より閉止される。(段落【0015】
」 )と記載されているように,底板10は縦型筒

体2を構成する部材であることが明記されている。また,本件明細書には,
「投入口

から縦型筒体内に投入された食品原料は垂直に配設されるスクリューとスクリーン

間の間隙内に入り上方から下方に向かってスクリューのリードと自重によって送ら

12
れる。(段落【0007】,
」 )「縦型筒体2は支持台6に片持ち懸下支持され,食品原

料7・・・の投入される投入口8と圧搾分離液12を取出す排出口9を形成する。」

(段落【0010】)と記載されており,投入口は縦型筒体に設けられていることが

示されている。そうすると,本件発明1の縦型筒体は,本件明細書の実施例に示さ

れた縦型筒体2,上下のカラー部材14,15,底板10,排出口13等を含むも

のとして理解すべきである。

したがって,原告の上記主張は失当である。

エ 対比の対象

原告は,審判手続きにおいて,自ら甲1発明を主引例としており,甲2発明を主

引例とすべきとの主張はこれと矛盾し許されない。

3 取消事由3(本件訂正が適法であることを前提とした審決の判断の誤り)に

対し

(1) 引用発明に甲3発明を適用しても,当業者が本件訂正発明1の構成を容易に

想到できたとはいえず,審決の判断に誤りはない。

仮に,甲2を主引例にしたとしても,甲2には,スクレーパ片が磨耗した場合に

スクリューを降下させ,当該スクレーパ機構をフィルタエレメントに摺動させる機

構を設けることは記載も示唆もされておらず,かかる機構によってスクリーンの目

詰まりを防止しようとする動機付けとなり得るものが存在しない。また,甲2に上

記動機付けとなり得るものが存在したとしても,甲3に記載された豆乳絞り装置は,

本件訂正発明1のスクリューに相当する螺旋板を固定して,本件訂正発明1のスク

リーンに相当する擦網筒を回転させ,さらに,底面から送入された大豆原料を,擦

網筒の回転により順次上昇しながら固液分離して,上面からオカラを排出するもの

であり,この機構は甲2記載の絞り機とは形式及び機構が異なる。そうすると,甲

2に甲3の上記機構を適用し,スクレーパ片が磨耗した場合にスクリュー状羽根を

降下させ,スクレーパ片がフィルタエレメントに摺動することができる機構として

採用することは,当業者が容易に想到し得るものではない。したがって,仮に,甲

13
2を主引例とし,甲3に記載された豆乳絞り装置の構成を適用したところで,当業

者が本件訂正発明1の構成に容易に想到し得たとはいえない。

(2) 本件訂正発明2,3は,本件訂正発明1を引用し,更に限定したものである

ところ,前記(1)のとおり,本件訂正発明1は容易想到とはいえないから,本件訂正

発明2,3も容易想到とはいえず,審決の本件訂正発明2,3にかかる容易想到性

の判断にも誤りはない。

第5 当裁判所の判断

当裁判所は,原告が主張する取消事由には理由がなく,審決を取り消すべき違法

は認められないから,原告の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,以下

のとおりである。

1 取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)について

本件訂正は,願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり,実

質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものではないとした審決の判断に誤り

はない。その理由は,以下のとおりである。

(1) 事実(争いのない事実を含む。)

本件訂正の内容は,第2の2の(2)のとおりである。また,本件明細書には,次の

とおりの記載がある(甲10)。

「【0007】【発明の実施の形態】投入口から縦型筒体内に投入された食品原料

は垂直に配設されるスクリューとスクリーン間の間隙内に入り上方から下方に向か

ってスクリューのリードと自重により送られる。スクリューは上方側から下方側に

向かって隣接する羽根間の容積が小さくなり,スクリューの羽根の先端にはスクリ

ーン内面を摺動する摺接部材が接合され,かつスクリーンが下方に向かって縮径す

るテーパ状に形成されているため食品原料は下方に進むに従って圧縮される。この

場合,スクリーンが垂直に配設されているため全面に搾られた食品の液体が回り込

み乾燥しない。そのため目詰まりが発生せず搾り作業効率も高い。スクリーンによ

り食品原料は圧搾分離液と脱水粕に分離され,それぞれ排出口から次工程側に送出

14
される。また,高温時においても垂直方向に歪みが集中して生じ,各部に偏荷重が

負荷されない。そのためスクリューが円滑に駆動され,軸受等の寿命低下が防止さ

れる。更にスクリューの羽根先端部には摺接部材が接合されており,この摺接部材

がスクリーン内面を摺動するため,摺接部材が摩耗しスクリーン内面との間に間隙

が生じた場合には,スクリューを下げることにより再度摺接部材がスクリーン内面

を摺動する状態にすることができるため,常に圧力を最大に維持することができる

と共にスクリーンの目詰まりを防止できる。」

「【0009】図1に示すように,本発明の縦形式固液分離精製搾り機1は大別し

て垂直方向に沿って配置される縦型筒体2と,同じく垂直方向に沿って配設され縦

型筒体2内に収納されるスクリュー3と,該スクリュー3の回転機構部5と,縦型

筒体2間とスクリュー3の間に配設され前記スクリュー3の羽根18先端に接合さ

れる摺接部材18a・・・と,該摺接部材18aが摺動するスクリーン4等からな

る。」

「【0010】縦型筒体2は支持台6に片持ち懸下支持され,食品原料7・・・の

投入される投入口8と圧搾分離液12を取出す排出口9を形成する。また,その下

端の底板10には脱水粕11(図2)が排出される排出口13が形成される。なお,

図1に示す如く縦型筒体2の上下にはカラー部材14,15が固定される。また,

縦型筒体2は一体的構造でもよいが,本実施例では中間分離型のものからなり組立

性の向上を図っている。なお,縦型筒体2は支持棒16により補強支持される。」

「【0011】スクリュー3は円筒体の回転軸17とこの外周に一体的にねじ状に

形成される羽根18から形成される。なお,羽根18は上方側から下方側に向かっ

て縮径する構造のものからなる。従って上方の隣接する羽根18,18間の容積は

下方の羽根18,18間の容積よりも大きい。スクリュー3の上端の支持軸19は

上方のカラー部材14に連結するブラケット20に上下移動可能に枢支される。ま

た,下端の支持軸21は下方のカラー部材15内に嵌着され,上下に移動して固定

可能な支持具22に枢支される。なお,支持具22には排出口13側に開口する脱

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水粕通路23が貫通形成される。」

「【0012】スクリーン4は微細な細孔を有する板上のスクリーン状部材からな

り,スクリュー3の羽根18先端に接合される摺接部材18aが摺動する状態に配

置される。本発明では上方から下方に向かって縮径するテーパ状のものからなる。

スクリーン4は上方側のカラー部材14と下方側のカラー部材15間に架設される。

また,その中間部は保持板24により補強支持される。」

「【0015】縦型筒体2の底板10の排出口13は閉止用蓋28により閉止され

る。閉止用蓋28はリンク部材29を介して圧縮シリンダ30に連結する。なお,

圧縮シリンダ30は底板10側に固定される。」

そして,別紙図面のとおりの実施例として図1が示されている。

(2) 判断

特許法126条3項は,訂正が許されるためには,
「願書に添付された明細書又は

図面に記載した事項の範囲内」であることを要する旨規定する。同規定は,第三者

に対する不測の損害の発生を防止し,特許権者と第三者との衡平を確保する趣旨で

設けられたものであるから,同規定の要件を充足するか否かは,同趣旨に照らし,

訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明

示的な記載があるか否かを基準により形式的に判断すべきではなく,当業者におい

て,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわ

ち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識でき

る技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準

として,実質的に判断すべきである。

上記観点から,本件訂正が許されないとする原告の主張の当否について検討する。

原告は,本件明細書の段落【0012】の記載及び図1(別紙図面のとおり)に

よれば,下方側のカラー部材15は,スクリーン4の下方に設けられており,縦型

筒体の下方に存在するものではないから,訂正事項1,3中の「カラー部材が縦型

筒体の下方に固定されている」との点は,願書に添付した明細書に記載された事項

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の範囲内のものではないと主張する(訂正事項1,3)。

しかし,原告の上記主張は,採用することができない。

すなわち,本件明細書には,
「スクリーン4は上方側のカラー部材14と下方側の

カラー部材15間に架設される。(段落【0012】
」 )と記載される一方で,「本発

明の縦形式固液分離精製搾り機1は大別して垂直方向に沿って配置される縦型筒体

2と,同じく垂直方向に沿って配設され縦型筒体2内に収納されるスクリュー3と,

該スクリュー3の回転機構部5と,縦型筒体2間とスクリュー3の間に配設され前

記スクリュー3の羽根18先端に接合される摺接部材18a・・・と,該摺接部材

18aが摺動するスクリーン4等からなる。(段落【0009】,
」 )「縦型筒体2は支

持台6に片持ち懸下支持され,食品原料7・・・の投入される投入口8と圧搾分離

液12を取出す排出口9を形成する。また,その下端の底板10には脱水粕11(図

2)が排出される排出口13が形成される。なお,図1に示す如く縦型筒体2の上

下にはカラー部材14,15が固定される。(段落【0010】,
」 )「下端の支持軸2

1は下方のカラー部材15内に嵌着され,上下に移動して固定可能な支持具22に

枢支される。なお,支持具22には排出口13側に開口する脱水粕通路23が貫通

形成される。(段落【0011】,
」 )「縦型筒体2の底板10の排出口13は閉止用蓋

28により閉止される。(段落【0015】
」 )と記載されている。

上記明細書の記載及び図1(別紙図面)を総合すると,本件発明1における「縦

型筒体」は,カラー部材及び底板も含めた全体を指し,圧搾分離液排出口,原料投

入口及び脱水粕排出口を有するものと解するのが合理的である。したがって,本件

明細書及び図面には,カラー部材は,
「縦型筒体」の下方に固定されていることが示

されていると理解することができる。そうすると,訂正事項1,3により新たな技

術的事項を導入するものとはいえない。

また,原告は,本件明細書には,支持具を上下に移動することに関して,具体的

な構成が開示されていないから,支持具を下げることによりスクリューを下降させ


(る)」との構成は,明りょうでない記載の釈明には当たらないと主張する(訂正事

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項2,4)。

摺接部材が磨耗した場合に支持具を下げることによりスクリューを降下させるこ

との技術的意義は明確であるから,本件訂正が本件特許の技術内容を不明確にする

との原告の主張は採用の限りでない。

以上によれば,本件訂正は,いずれも,願書に添付した明細書に記載された事項

の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものでな

く,特許法134条の2第1項ただし書,及び同条5項において準用する同法12

6条3項,4項の要件を満たすとした審決の判断に誤りはない。

2 取消事由2(本件訂正が違法であることを前提とした審決の認定・判断の誤

り)について

前記1のとおり,本件訂正は適法であるから,これが違法であることを前提にし

た原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも失当である。

3 取消事由3(本件訂正が適法であることを前提とした審決の判断の誤り)に

ついて

原告は,本件訂正発明1ないし3は,引用発明(甲1),甲2及び甲3等の技術内

容に基づいて,容易に発明することができたものであり,これに反する審決の判断

には誤りがある旨主張する。

しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,甲1には,縦

型食品絞り機において,スクリューの先端に摺接部材を接合することの記載はなく,

摺接部材の磨耗という課題についての示唆はない。また,甲1においては,スクリ

ューの外径が上方から下方に向かって一定であり,該スクリューを上下動させても

スクリューの外端とスクリーンの間隔が変化するものではないから,スクリューを

下降させる構成を採るべき動機付けが存在しない。

他方,甲2には,筒型固液分離装置において,スクリュ状羽根の端面に,フィル

タエレメント(本件訂正発明1のスクリーンに相当)と摺接するスクレーパ機構(本

件訂正発明1の摺接部材に相当)を設け,上記フィルタエレメントの周面に付着す

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る濾カス固形分を引掻除去する構成が記載され,
「円筒管体6は,横方向でなく縦方

向に起立しても差支えない。「上記実施例におけるフィルタエレメントは,専ら円


筒状であるが円錐状のもので同様に実施できる・・・」との記載はある(3頁右下

欄6〜10行)が,スクレーパ片が磨耗した場合にスクリューを降下させ,当該ス

クレーパ機構をフィルタエレメントに摺動させる機構を設けることについての記載

や示唆はない。

また,甲3には,
「固定筒13は外側には,外周に剛毛ブラシ15をもった螺旋板

5を固定的且垂直方向に配設し,又内側は円筒21に嵌合し,更に上部に取付けた

調整ナット22で固定軸11に螺着する。23はロックナット。ここに調整ナット

22は剛毛ブラシ15が摩損した時螺旋板5を下方に下げて調整する時に使用す

る。(2頁左上欄7〜14行)「即ち本発明の装置は豆乳原料をポンプ1又はボイ
」 ,

ラー圧によって固定された螺旋板5にそって下方から上方に圧送して,この際該螺

旋板5の外周に取付けた剛毛ブラシ15に圧接して回転する擦網筒3との間に生ず

る圧縮及び摩擦を利用して,豆乳とオカラに分離する作業を連続して行なうもので

あって,・・・」(2頁右上欄10〜16行)との記載が存在し,螺旋板外周の剛毛

ブラシ(本件訂正発明1の「スクリュー先端の摺接部材」に相当)の磨耗という課

題,及び螺旋板(本件訂正発明1の「スクリュー」に相当)を下降させることによ

り,螺旋板の外端と擦網筒(本件訂正発明1の「スクリーン」に相当)の間隔を調

節するとの構成が示されている。しかし,上記のとおり,甲3に記載された縦形絞

り機は,螺旋板を固定し,擦網筒を回転させ,底面から送入された大豆原料を,擦

網筒の回転により順次上昇させながら固液分離し,上面からオカラ(脱水粕)を排

出するとの構成を採っており,甲1又は甲2に記載された絞り機とは形式及び機構

が異なっている。そうすると,引用発明又は甲2発明に,甲3における部材同士の

移動関係とは逆の装置の構成を適用することには,阻害要因があるというべきであ

り,本件訂正発明は,容易に想到できたとはいえない(なお,審決が,原告の主張

に基づき,甲1を主引例として,本件訂正発明の進歩性について検討したことにも

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違法はない。甲12,14,15参照)。したがって,本件訂正発明1は,容易想到

とはいえず,本件訂正発明1を引用し,更に限定した本件訂正発明2,3も容易想

到とはいえない。

4 結論

以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に本件審決にはこれ

を取り消すべき違法は認められない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,

理由がない。よって,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官

飯 村 敏 明




裁判官

知 野 明



裁判官中平健は,転補のため,署名押印することができない。




裁判長裁判官

飯 村 敏 明

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(別紙) 図面〔本件特許の願書に添付された図1〕




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