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関連審決 不服2008-13398
関連ワード インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  相違点の認定 /  相違点の判断 /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 22年 (行ケ ) 10216号 審決取消請求事件
原告 X
被告 特許庁長官
指定代理人 稲積義登田部元史 廣瀬文雄 田村正明
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2011/03/03
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた判決特許庁が不服2008-13398号事件について平成22年4月23日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,特許出願に対する拒絶査定に係る不服の審判請求について,特許庁がした請求不成立の審決の取消訴訟である。争点は,本願発明の進歩性の有無である。
1特許庁における手続の経緯原告は,平成15年6月23日,名称を「通話機能付情報端末による教授システム」とする発明について,特許出願(特願2003-177736号,平成17年1月20日出願公開,特開2005-17318号) をしたが,平成20年3月26日付けで拒絶査定を受けたので,同年5月2日,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は,上記請求を不服2008-13398号事件として審理した上,平成22年4月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年6月12日原告に送達された。
2本願発明の要旨平成20年5月2日付けの手続補正書(甲9)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る本願発明は,以下のとおりである。
【請求項1】ユーザが通話機能付情報端末でサーバに接続し,前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し,その教授内容を教授する教師と通話を行い,通話後に教師の評価をユーザが前記データベースに記録し,且つ通話に対する利用料をサーバが課金し,教授した教師には教授報酬を入金することを特徴とする通話機能付情報端末による教授システム。
3審決の理由の要点 (1)本願発明は,引用例(特開2003-29611号公報,甲1)に記載された発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(2)引用発明の認定,同発明と本願発明との一致点及び相違点の認定並びに相違点についての判断は,以下のとおりである。
【引用発明】「生徒と講師との間での応答を仲介する応答システムであって,それぞれインターネット等の通信ネットワーク4に接続されている,WWWサーバとして機能する応答仲介装置1,生徒用情報処理装置2,講師用情報処理装置3を有し,応答システムが生徒と講師との応答を仲介するときの動作の流れは,生徒は学習を始めるとき,生徒用情報処理装置2を操作して応答システムにログインし,応答仲介装置1は,この生徒が応答システムに登録されている生徒であることの認証を行い,応答システムへのログインが完了した旨を示すデータを生徒用情報処理装置2へ送信し,生徒は,この学習において質問等がある場合,生徒用情報処理装置2を操作して,応答仲介装置1によって講師テーブルからデータが読み出され,画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択し,これに対し応答仲介装置1は,前記生徒用情報処理装置2と当該講師名に対応するIPアドレスによって特定される講師用情報処理装置3との間で,音声,画像,及び文字を示すデータを送受信させ,生徒と講師との間で応答を行わせ,生徒用情報処理装置2の画像表示装置26aには,コンピュータ3に接続されたCCDカメラ36bによって撮像された講師の動画と,生徒用情報処理装置2に接続されたCCDカメラ26bによって撮像された生徒の動画と,講師が講師用情報処理装置3に接続された入力装置37aを操作して入力した画像及び文字とが表示され,また,この表示と同時に講師用情報処理装置3に接続された音声入力装置38bにて集音した音声が音声出力装置28aから出力され,また,講師用情報処理装置3の画像表示装置36aにも略同様の画面が表示され,生徒用情報処理装置2に接続された音声入力装置28bにて集音した音声が音声出力装置38bから出力され,また,生徒データベースDB2に記憶されている応答回数の内,この生徒の応答回数を1だけインクリメントするように,生徒データベースDB2が更新され,応答システムが生徒に対する課金処理を行うときは,所定の期間毎に,応答仲介装置1は,生徒データベースDB2から,生徒データベースDB2のレコードの応答回数及びクレジットカード番号を取得し,この生徒に対する料金を,例えば,取得した応答回数に,1回の応答に対して予め設定されている応答料金を乗じた結果と,予め設定されている基本料金との和を計算することにより演算して,通信ネットワーク4又は専用の通信回線にて接続された金融機関が運営管理する外部の決算用サーバコンピュータに対して,クレジットカード番号及び演算した料金のデータを送信することにより,この生徒に対する前記料金の徴収を行い,また,講師に支払うべき料金についても算出して支払う,生徒と講師との間での応答を仲介する応答システム。」【一致点】「ユーザが通話機能付情報端末でサーバに接続し,前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し,その教授内容を教授する教師と通話を行い,且つ通話に対する利用料をサーバが課金し,教授した教師には教授報酬を入金する通話機能付情報端末による教授システム。」【相違点】本願発明は,「通話後に教師の評価をユーザが前記データベースに記録」するものであるのに対して,引用発明はそのような構成を具備しない点。
【相違点についての判断】教師の評価を生徒が行うことは,本願出願時において広く行われていたものと認められ(例えば,拒絶査定の拒絶理由に引用された特開2003-21999号公報(甲2)の段落【0032】のほか,特開2002-133238号公報(甲3)の図26,図29参照),引用発明において,生徒が教師を評価するように本願発明の相違点に係る構成にすることは,当業者が容易になし得たことである。
第3原告主張の審決取消事由(原告主張の取消事由の項目立てを,その内容に即して以下のとおり整理する。)1取消事由1(引用発明の認定の誤り)審決は,引用発明について,「引用発明において,生徒は,この学習において質問等がある場合,生徒用情報処理装置2を操作して,応答仲介装置1によって講師テーブルからデータが読み出され,画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択しているので,引用発明と本願発明とは「ユーザが・・・前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し」ている点で一致する。」(10頁31行〜11頁5行)と認定するが,誤りである。
なぜなら,引用発明は,例えば,引用例の段落【0153】に「・・・そしてCPU11は,講師名,専門科目,講師の状態,講師の待機開始予定時刻,及び各専門科目毎のログインしている講師数のデータを通信インターフェース15に送信させる・・・」などと記載されるように,講師名(教師)と専門科目(話題)は選択肢の中で分離されておらず,専門科目(話題)で教師を選択するわけではない。
また,引用発明は,「生徒は,この学習において質問等がある場合,生徒用情報処理装置2を操作して,応答仲介装置1によって講師テーブルからデータが読み出され,画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択」するものであり,講師名が専門科目などと一緒に記載されている以上,それは専門科目と同時に複数の講師名も列挙された選択肢であると考えるのが妥当である。つまり,「講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内」と記載されている以上,その複数の選択肢が列挙されていて分かれておらず,専門科目だけを選択することにはなっていないと解される。引用発明が,「生徒が学習している科目を専門科目とし」,かつ,「前記状態が待機状態である一の講師を選択」するものであることも,専門科目が選択肢として分かれていないことを示している。
さらに,引用例の段落【0145】には,「CPU11は、生徒データベースDB2を検索し、このデータに含まれる講師名及びパスワードが関連付けられて生徒データベースDB2に記憶してあるか否かの判別、即ちこの生徒が本実施の形態に係る応答システムに登録されている生徒であることの認証を行う」と記載されており,これは,既に講師名と関連付けられた登録済みの生徒が,学習科目を選んで科目データを送信するということであり,引用発明では,生徒が科目を選択する前に講師名を選択する選択肢があることを意味しているから,被告が主張するような「生徒は,まず学習する科目を選択し,その後,選択した科目を専門科目とする講師の内から,一の講師を選択する」システムではない。
2取消事由2(一致点の誤認及び相違点の看過)審決は,本願発明と引用発明との一致点を,審決の理由の要点で示したとおりに認定する(11頁22行〜26行)。
しかし,本願発明は,求める教授内容(ユーザと教師の共通の話題)と教師が選択肢として分離されているシステムであり,ユーザはまず,共通の話題を選択し,その選択肢を満たす教師が,次の段階で選択されるシステムであるのに対して,引用発明は,講師名(教師)と専門科目(話題)は選択肢の中で分離されておらず,専門科目(話題)で教師を選択するわけではない。このように,教授内容(共通の話題)と教師が,選択肢として分けられている本願発明と,分けられていない引用発明とは,「前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し」の点で相違し,一致するものではない。
したがって,審決は,本願発明と引用発明との一致点を誤認するとともに,相違点を看過したといえる。
3取消事由3(相違点の判断の誤り)審決は,「本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当事者が容易に発明をすることができたものである。」(12頁4行〜5行)と判断するが,本願発明と引用発明とを対比すると,取消事由2に示した新たな相違点が認められるのであるから,引用発明から本願発明を容易に発明することはできず,上記の判断は誤りである。
第 4被告の反論1取消事由1に対し本願発明を,原告の主張するようなシステムと解すべきかどうかはともかく,原告の主張するように解したとしても,原告の主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,引用例の記載によれば,引用発明の「応答仲介装置1によって講師テーブルからデータが読み出され,画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師」とは,全講師のうち,「生徒が,学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力(ステップ512)した後,応答仲介装置として用いるコンピュータ1のCPU11によって,RAM12に格納されている講師テーブルから,前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名,専門科目,及び状態を夫々示すデータが読み出され(ステップ520),生徒用情報処理装置2のCPU21に与えられて,CPU21が,前記科目データの科目を専門科目とする講師であって,その時点でログインしている講師の講師名,専門科目,及び状態,各講師の待機開始予定時刻を画像表示装置26aに表示させ(ステップ525)」たものといえる。
そうすると,引用発明は,「生徒が,学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力して選択した後,講師テーブルから,前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名,専門科目,及び状態を夫々示すデータが読み出され,前記科目データの科目を専門科目とする講師であって,その時点でログインしている講師の講師名,専門科目,及び状態を画像表示装置26aに表示させ,」「生徒は学習において質問等がある場合,画像表示装置26aに表示されている前記講師の内の一の講師を選択する」ものといえ,生徒は,まず学習する科目を選択し,その後,選択した科目を専門科目とする講師の内から,一人の講師を選択するのであるから,学習する科目(求める教授内容)と講師(教師)が選択肢として分離されているシステムであって,生徒(ユーザ)はまず,学習する科目(求める教授内容)を選択し,その選択肢を満たす教師が,次の段階で選択されるシステムといえる。
したがって,本願発明を,求める教授内容(ユーザと教師の共通の話題)と教師が選択肢として分離されているシステムで,ユーザはまず,共通の話題を選択し,その選択肢を満たす教師が,次の段階で選択されるシステムであると解しても,引用発明も同様のものといえる。
2取消事由2及び3に対し取消事由2及び3は,引用発明が,「ユーザが・・・前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し」ていない点で本願発明と相違しており,審決は,一致点を誤認するとともにこの相違点を看過した上,引用発明と本願発明との相違点を判断したものであって,本願発明の進歩性を否定した結論に誤りがあるとの主張であるが,この主張がその前提において失当であることは,上記取消事由1について反論したとおりである。
第5当裁判所の判断1取消事由1(引用発明の認定の誤り)について (1) 原告は,審決が,「引用発明において,生徒は,この学習において質問等がある場合,生徒用情報処理装置2を操作して,応答仲介装置1によって講師テーブルからデータが読み出され,画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択している」(10頁31行〜11頁3行 )と認定したことが誤りであると主張する。
(2) 前記審決の理由の要点の (2) のように審決が認定した引用発明については,当裁判所としても引用例(甲1)から認めることができるところ,この認定に併せ,引用例の段落【0149】「生徒は生徒用情報処理装置2の入力装置27aを操作することにより,学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力する(ステップ512)。CPU21は,入力された科目データを,通信インタフェース25に送信させ(ステップ513),コンピュータ1の通信インタフェース15によって,前記科目データが受信される(ステップ514)。」,【0153】「また,CPU11によって,RAM12に格納されている講師テーブルから,前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名,専門科目,及び状態を夫々示すデータが読み出される(ステップ520)。またCPU11は,講師データベースDB1から,全ての講師の待機開始予定時刻を示すデータを読み出し(ステップ521),更に,講師テーブルから読み出したデータを用いて,各専門科目毎にログインしている講師数を計数する(ステップ522)。そしてCPU11は,講師名,専門科目,講師の状態,講師の待機開始予定時刻,及び各専門科目毎のログインしている講師数のデータを通信インタフェース15に送信させる(ステップ523)。」,【0154】「前記データが通信インタフェース25によって受信され(ステップ524),CPU21に与えられて,CPU21が前記科目データの科目を専門科目とする講師であって,その時点で本実施の形態に係る応答システムにログインしている講師の講師名,専門科目,及び状態,各講師の待機開始予定時刻,並びに各科目毎のログインしている講師数を画像表示装置26aに表示させるべく,画像入出力インタフェース26に画像信号を出力させる(ステップ525)。」との各発明の詳細な説明における記載,そして,引用例の図15及び図16の各記載によれば,引用発明では,生徒が,学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力(ステップ512)した後,応答仲介装置として用いるコンピュータ1のCPU11によって,RAM12に格納されている講師テーブルから,前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名,専門科目,及び状態をそれぞれ示すデータが読み出され(ステップ520),講師テーブルから読み出したデータを用いて,各専門科目毎にログインしている講師数を計数し(ステップ522),CPU11は,講師名,専門科目,講師の状態,講師の待機開始予定時刻,及び各専門科目毎のログインしている講師数のデータを通信インタフェース15に送信させ(ステップ523),当該データが生徒用情報処理装置2のCPU21に与えられて,CPU21が,前記科目データの科目を専門科目とする講師であって,その時点でログインしている講師の講師名,専門科目,及び状態と各講師の待機開始予定時刻を画像表示装置26aに表示させる(ステップ525)態様を含むものと認められる。
そうすると,引用発明では,生徒が,学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力した後,講師テーブルから前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名,専門科目,及び状態等を示すデータが読み出され,前記科目データの科目を専門科目とする講師であって,その時点でログインしている講師の講師名,専門科目,及び状態等が画像表示装置26aに表示される態様を含むのであるから,「画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択している」ものと認められ,この点に関する審決の判断に誤りはない。
(3) 原告は,引用発明では,引用例の段落【0153】に「そしてCPU11は,講師名,専門科目,講師の状態,講師の待機開始予定時刻,及び各専門科目毎のログインしている講師数のデータを通信インターフェース15に送信させる」などと記載されるように,講師名(教師)と専門科目(話題)は選択肢の中で分離されておらず,専門科目(話題)で教師を選択するわけではないと主張する。
しかし,前記(2) のとおり,引用発明には,まず生徒が学習する科目を示す科目データを生徒用情報処理装置2に入力した後,これに基づいて,講師テーブルから前記科目データの科目を専門科目とする講師の講師名等のデータが読み出される態様が含まれているのである。原告が指摘する当該段落【0153】の記載は,講師の講師名や専門科目等のデータが講師テーブルから読み出されることを示したものであり,当該専門科目データが講師数を計数するために併せて読み出される旨を説明したにすぎないから,この記載を理由に生徒が専門科目により講師を選択することを否定することはできない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(4) また,原告は,引用例の段落【0145】の記載が,既に講師名と関連付けられた登録済みの生徒が,学習科目を選んで科目データを送信するということであり,引用発明では,生徒が科目を選択する前に講師名を選択する選択肢があることを意味していると主張する。
しかし,引用例の段落【0074】「生徒データベースDB2は,生徒が本実施の形態に係る応答システムにログインするときに用いられる生徒名及びパスワード,生徒が講師から応答を受けた応答回数,並びに生徒のクレジットカード番号が関連付けられて記憶されている。そして,この生徒データベースDB2に生徒名及びパスワードの各データが登録されている生徒が,本実施の形態に係る応答システムに登録されている生徒とされる。」,【0143】「次に,生徒が入力装置27aを操作して,本実施の形態に係る応答システムにログインする指示を生徒用情報処理装置2に入力する(ステップ502)。CPU21は,本実施の形態に係る応答システムに,この生徒用情報処理装置2を用いる生徒がログインするときに,コンピュータ1にて生徒の認証に用いられる生徒名とパスワードとを夫々示すデータの入力を受け付けるための入力画面を,画像表示装置26aに表示させるべく,画像入出力インタフェース26に画像信号を出力させる(ステップ503)。」,【0144】「そして,生徒が入力装置27aを操作することにより,生徒用情報処理装置2に生徒名及びパスワードを夫々示すデータが入力され(ステップ504),CPU21によって,前記データが通信インタフェース25から送信される(ステップ505)。」,【0145】「コンピュータ1の通信インタフェース15によって前記データが受信され,このデータがCPU11に与えられる(ステップ506)。CPU11は,生徒データベースDB2を検索し,このデータに含まれる講師名及びパスワードが関連付けられて生徒データベースDB2に記憶してあるか否かの判別,即ちこの生徒が本実施の形態に係る応答システムに登録されている生徒であることの認証を行う(ステップ507)。」の各発明の詳細な説明における記載と図4及び図15の記載を総合すれば,引用発明では,生徒が生徒用情報処理装置2を用いてログインする場合に入力された生徒名とパスワードが送信され,コンピュータ1の通信インタフェース15により受信されて,当該生徒名とパスワードのデータが生徒データベースDB2に記憶してあるデータと合致するか否かを判別し,生徒が登録されていることの認証を行うものであると認められるから,生徒から送信されるデータ及び生徒データベースDB2に記憶してあるデータは,いずれも生徒名とパスワードである。そうすると,前記段落【0145】における「講師名」の記載は,それ以前に講師名についての記載がないことも考慮すれば,「生徒名」の誤記であることが,当業者にとって明らかであるといえる。
原告の上記主張は,引用例における上記の誤記を理由とするものであり,これを採用することはできない。
(5) 以上のとおりであるから,引用発明の認定が誤りであるとする原告の前記(1) の主張を採用することはできない。
2取消事由2(一致点の誤認及び相違点の看過)について取消事由2は,本願発明が,求める教授内容(ユーザと教師の共通の話題)と教師が選択肢として分離されているシステムであって,ユーザはまず,共通の話題を選択し,その選択肢を満たす教師が,次の段階で選択されるシステムであることを前提として,教授内容(共通の話題)と教師が,選択肢として分けられている本願発明と,分けられていない引用発明とは,「前記サーバに接続されたデータベースに登録された通話可能な教師を,求める教授内容から選択し」の点で相違しており,審決は,この相違点を看過するとともに,一致点を誤認したと主張するものである。
しかし,本願発明は,本願明細書(甲4)の段落【0028】の「・・・この実施例に制限されないのは勿論である。例えば、話題を選ばずに会話したい相手(芸能人や有名人)そのものを選んで電話することもでき、・・」との記載からみて,求める教授内容から教師を選択するものであればよく,必ずしも「教師」の「選択」に先立って「求める教授内容」が「選択」される必要はないものと認められる。また,引用発明が,「画像表示装置26aに表示されている講師名,専門科目,及び状態が表示される講師の内,生徒が学習している科目を専門科目とし前記状態が待機状態である一の講師を選択している」ものであることは,取消事由1で判示したとおりであるから,いずれにしても審決に相違点の看過及び一致点の誤認はなく,取消事由2には理由がない。
3取消事由3(相違点の判断の誤り)について取消事由3は,本願発明と引用発明との対比において,取消事由2に示した新たな相違点が認められるのであるから,引用発明から本願発明を容易に発明することはできず,本願発明の進歩性を否定した審決の判断が誤りであると主張するものである。
しかし,本願発明と引用発明との対比において新たに相違点が認められるものでないことは,取消事由1及び2で判示したとおりであるから,本願発明の進歩性を否定した審決の判断の前提に誤りはなく,取消事由3には理由がない。
第6結論以上によれば,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 清水節
裁判官 古谷健二郎