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事件 平成 20年 (ワ) 34931号 損害賠償等請求事件
東京都中央区<以下略>
原告株 式会社トーエイ
同訴訟代理人弁護士野田房嗣 広島市中区<以下略>
被告株式会社夢工房 広島市安佐南区<以下略>
被告株 式会社アルミ工房
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2011/02/03
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告らは,別紙物品目録記載の雨戸を製造し,販売してはならない。
2被告らは,原告に対し,連帯して3195万6581円及びこれに対する平成21年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,これを10分し,その4を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
5この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1主文第1項と同旨2被告らは,原告に対し,連帯して6090万円及びこれに対する平成21年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,特殊な構造を有する雨戸を製造,販売する原告が,被告らが当該雨戸の製造に係る営業秘密を不正に取得した上で使用し,または,開示を受けたその営業秘密を不正の目的で使用して,同じ構造を有する雨戸を製造,販売していることが,不正競争防止法(以下「不競法」という )2条1項4号又は。
同項7号 以下 平成21年法律第30号による同号の改正の前後を通じて 7 (, 「号」という )の不正競争行為に該当するとして,被告らに対し,同法3条1 。
項に基づき当該雨戸の製造,販売の差止めを求めるとともに,同法4条に基づき損害賠償を求める事案である。
1前提となる事実(1)東衛産業株式会社(以下「東衛産業」という )は,昭和33年に設立 。
,, , された シャッター ブラインドの製造及び販売等を目的とする会社であり別紙物品目録記載の雨戸と同一の構造を有する光通風雨戸という名称の雨戸(「」。),(, ,, 以下光通風雨戸 というを製造し販売していた 甲12 1325,弁論の全趣旨 。平成18年当時,原告代表者であるA(以下「原告 )代表者」という )が東衛産業の代表者をしていた(甲25 。 。 )デイリー産業有限会社(以下「デイリー産業」という )は,平成8年に。
設立された,シャッター,ブラインドの製造及び販売等を目的とする会社であり,平成18年当時,原告代表者の妻であったBがデイリー産業の代表者をしていた(甲24,弁論の全趣旨 。)原告は,平成18年10月19日に設立された,シャッター,ブラインドの製造及び販売等を目的とする会社である(弁論の全趣旨 。)原告は,現在,光通風雨戸を製造し,販売している(甲14,41の1,原告代表者本人,弁論の全趣旨 。)(2)被告株式会社夢工房(以下「被告夢工房」という )は,平成元年に設。
立された設備工事業等を目的とする会社であり,平成16年12月16日,東衛産業との間で地区指定販売代理権契約を締結し,光通風雨戸の販売に関し,東衛産業の広島地区での販売代理店となった(甲11 。)被告夢工房の代表者Cは,平成18年8月4日,被告株式会社アルミ工房(以下 「被告アルミ工房」といい,被告夢工房と被告アルミ工房とを併せ ,「」, 「」。) て 被告ら といい 被告らの代表者であるCを 被告ら代表者 というを設立し,別紙物品目録記載の雨戸(以下「セキュアガード」という )を。
製造し,販売している(乙20,弁論の全趣旨 。)2争点及び当事者の主張(1)被告らの行為が不競法2条1項4号又は同項7号の不正競争行為に該当するか(原告の主張)ア光通風雨戸に関し,東衛産業,デイリー産業及び原告が保有する営業秘密(不競法2条6項)について(ア)東衛産業は,光通風雨戸に関し,有用性があり,公然と知られていない,次のaないしdの秘密情報を保有していた。
a光通風雨戸を構成するスラット,框,上下枠,縦枠の形状には,性,, 能の向上のために様々な工夫が施されており これらの部品の図面は東衛産業が秘密情報として保管していた。
もし,これらの図面によらずに,光通風雨戸の製品から新たに各部, ,, 品の図面を起こそうとすれば 新たに開発するのと同様の時間 労力費用を必要とする。
b光通風雨戸のスラットを製造する際には,スラットを所定の形状に切断し,ジャバラを固定するためのリベット穴を空ける必要があり,これらの加工を効率よく行うためには特別な加工用金型が必要である。この金型を東衛産業と共同で開発した金型製造会社であるF社に関する情報は,東衛産業が保有する秘密情報であった。
c光通風雨戸を構成する46点の部品のうち22点の部品が特別仕様の部品である。これらの部品には,東衛産業が獲得してきたノウハウや技術情報が詰まっており,その製造には図面が必要である。これらの特別仕様の部品についての設計図面や仕入先の情報は,東衛産業が保有する秘密情報であった。
仮に,光通風雨戸の製品を分解,分析することによって各部品の設計図を起こそうとすれば,多大な費用や労力を要することになる。
d光通風雨戸の製造には,製造の手順や製造の際に注意すべき事項などのノウハウがある。これらのノウハウも東衛産業が保有する秘密情報であった。
(イ)上記(ア)の光通風雨戸に関する秘密情報は,もともと東衛産業が保有していたものであり,東衛産業が,平成18年6月1日,光通風雨戸の製造販売権を含む営業権のすべてをデイリー産業に譲渡し,その後,デイリー産業が,平成20年5月10日,光通風雨戸の製造販売権を含む営業権のすべてを原告に譲渡したため,現在は原告が上記秘密情報を保有している。
(ウ)上記(ア)の秘密情報に係る秘密管理性についてa東衛産業,デイリー産業及び原告は,上記(ア)の秘密情報の記載された図面や書面を社長室にある鍵のかかった金庫内に保管しており,その鍵は原告代表者が厳重に管理し,同人以外の者が上記情報を持ち出すことは不可能であった。
また,金型製造会社に対しても,同一の金型を製造しないように要請していた。
さらに,特別仕様の部品を製造する会社に対しても,秘密を守るように命じていた。
b光通風雨戸の製造過程に関わる従業員に対しては上記(ア)の秘密情報の重要性を周知し,就業規則で秘密を保持することを義務付けていた。
c光通風雨戸の製造,販売に際しても,相手方企業との間で,必ず事前に秘密保持契約を締結していた。
(エ)以上によれば,上記(ア)の秘密情報は,不競法2条6項営業秘密に該当し,現在は原告がこれを保有している。
イ被告らの行為が不競法2条1項4号又は同項7号の不正競争行為に該当することについて(ア)東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房への営業秘密の開示被告夢工房は,平成18年5月7日ころから約20日間,その社員であるDをデイリー産業の工場に派遣し,光通風雨戸の製造作業を実習させた。そして,デイリー産業は,Dに対し,営業秘密である,ジャバラの製造,スラットのカット,プレス,ゴム入れ,框の製造,スラットの加工,雨戸の組立て等一切の工程における必要な技術を習得させた。
また,東衛産業及びデイリー産業は,被告夢工房に対し,同月23日ころ,特別仕様の部品の図面の一部,加工用金型の製造に必要な図面及び特別仕様の部品の仕入先に関する情報を含む取引業者一覧表を交付し,さらに,同年7月4日ころ,そのほかの特別仕様の部品の図面を交付し,光通風雨戸の製造に必要なすべての図面を交付した。
そして,東衛産業及びデイリー産業と被告夢工房は,同月10日,光通風雨戸について,商品の製造販売に関する契約(甲12。以下「本件製造販売契約」という )を締結し,被告夢工房は,同契約に基づく業 。
務の過程で知り得た東衛産業及びデイリー産業の技術上,営業上の秘密につき守秘義務を負うこととされた。
(イ)不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する被告らの行為についてa被告夢工房は,本件製造販売契約を締結し,東衛産業及びデイリー産業から上記ア(ア)の営業秘密を取得するや,同契約に基づいて供給された部品の代金を支払わないまま,上記営業秘密を使用し,光通風雨戸と同一の構造を有するセキュアガードを製造している。結局,被告夢工房は,本件製造販売契約を履行する意思がなかったにもかかわらず,これがあるかのように装い,東衛産業及びデイリー産業から営業秘密を騙取したものである。
bそして,被告夢工房は,被告アルミ工房と,光通風雨戸と同一の製品を製造,販売することを共謀し,不正に取得した上記ア(ア)の営業秘密を用いて スラット加工用金型 スラット等の押出成型用金型 以 ,, (下「ダイス」という )や特別仕様の部品の金型を製造させ,各部品 。
を調達し,自ら光通風雨戸と同一の構造を有するセキュアガードを製造し,販売している。
c以上の被告らの行為は,不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する。
(ウ)不競法2条1項7号の不正競争行為に該当する被告らの行為について, , 被告夢工房は 本件製造販売契約に基づく金員を支払わなかったためデイリー産業は,平成18年9月7日,同契約を解除した。
被告らは,上記契約が有効な限りにおいてのみ使用することができた上記ア(ア)の営業秘密を,同契約が終了した後も,正当な権利がないまま上記(イ)bのとおり使用しており,被告らには不正の利益を得る目的又は加害目的が認められる。
以上の被告らの行為は,不競法2条1項7号の不正競争行為に該当する。
(被告らの主張)ア光通風雨戸に関し,東衛産業,デイリー産業及び原告が保有する営業秘密(不競法2条6項)の主張について(ア)光通風雨戸と同様の構造を有する商品を販売する会社はほかに何社もあり,光通風雨戸の製造上のノウハウ等は原告だけが独占的に保有するものではなく,原告だけが製造することのできる製品であるということもない。
光通風雨戸の各部品について,製品の現物から図面を起こして製造することも,製造業者にとっては容易なことである。また,特別仕様の部品を製造するための特別なノウハウや技術は存在しない。さらに,光通風雨戸を製造するために特別な技術を習得する必要はない。
下記イ(ア)のとおり,被告らは,東衛産業,デイリー産業及び原告から秘密情報を開示されたことはなく,原告が主張する秘密情報がなくて, 。 も 光通風雨戸と同一の構造を有する製品を製造することは可能である(イ)東衛産業が,平成18年6月1日,光通風雨戸の製造販売権を含む営業権のすべてをデイリー産業に譲渡し,その後,デイリー産業が,平成20年5月10日,光通風雨戸の製造販売権を含む営業権のすべてを原告に譲渡したという事実は否認する。
光通風雨戸の製造販売権は,東衛産業からデイリー産業に譲渡される以前に,男鹿産業有限会社(以下「男鹿産業」という )に譲渡されて。
いたのであって,デイリー産業は,光通風雨戸の製造販売権を含む営業権を有していなかった。
被告アルミ工房は,平成18年9月29日,男鹿産業との間で特許権実施許諾契約を交わしている。
イ被告らの行為が不競法2条1項4号又は同項7号の不正競争行為に該当するとの主張について(ア)東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房への営業秘密の開示がないことa被告夢工房の社員であるDは,被告夢工房への納品が遅れていたデイリー産業でジャバラの製造を手伝ったのみで,光通風雨戸の製造のノウハウを実習したのではない。
そもそも,デイリー産業から被告夢工房に対して,特別仕様の部品の製造のノウハウや技術情報が開示されたことはない。
b東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房に対して,特別仕様の部品の図面及び加工用金型の製造に必要な図面は交付されていないし,特別仕様の部品の仕入先に関する情報も開示されていない。
被告ら代表者が東衛産業の本社を訪問したのは,平成18年7月4日の1回のみであり,このとき原告が主張するような資料は交付されなかった。原告代表者から同月10日に開示されたF社以外には取引先を開示されたことはなく,本件製造販売契約締結後も被告夢工房がデイリー産業からジャバラの完成品やその他の部品を購入することが同契約の条件であった。
,(「」 c平成18年4月の時点で 平野金属工業株式会社 以下 平野金属という )は,光通風雨戸と同様の製品を販売していた。被告らは, 。
デイリー産業が事業に行き詰まり,デイリー産業から部品を調達することができなくなってからは,平野金属から部品の供給を受けるようになり,さらに,より安く部品を調達するため,平野金属から仕入れた部品をサンプルとして別の工場に持ち込んで,部品を製造させてい。, , た したがって 被告アルミ工房が製造したセキュアガードの部品は平野金属の製品を基に製造されたものであって,東衛産業から開示された情報を用いて製造されたものではない。
(イ)被告らの行為が不競法2条1項4号の不正競争行為に該当しないこと本件製造販売契約は,光通風雨戸が特許権に係る製品であったために締結されたものであり,秘密を開示させる目的で締結されたものではない。
結局,上記特許権は男鹿産業に移転しており,デイリー産業が本件製造販売契約を履行することができなかったため,被告夢工房が同契約の解除を申し出たところ,デイリー産業も平成18年9月7日付けで解除の通知をした。したがって,上記契約は既に解除されているから,被告夢工房に金員の支払義務はない。
また,上記(ア)のとおり,そもそも,被告夢工房が東衛産業及びデイリー産業から光通風雨戸の製造に関するノウハウや仕入先情報などの営業秘密を開示されたことはないし,被告らが共謀した事実もない。
さらに,原告の光通風雨戸と被告らのセキュアガードは,全く同一の製品であるとはいえない。
(ウ)被告らの行為が不競法2条1項7号の不正競争行為に該当しないこと本件製造販売契約が解除された理由は,上記(イ)のとおりである。
また,被告らのセキュアガードは,東衛産業及びデイリー産業から開示された光通風雨戸の製造に関するノウハウや仕入先情報を用いて製造されたものではない。
(2)原告の損害(原告の主張)ア東衛産業及びデイリー産業が被告夢工房に光通風雨戸の製造を許諾した, , 後の3年間において デイリー産業及び原告の光通風雨戸の年間売上額は東衛産業の時代に比べ,1年当たり5800万円減少した。デイリー産業及び原告の売上げに対する利益率は35%であるから,デイリー産業及び原告は,被告らの不正競争行為によって,上記3年間で6090万円を下らない損害を被った(5800万円×0.35×3=6090万円 。)イ不競法5条2項の推定規定に基づく原告の損害(ア)被告夢工房の不正競争行為に係る原告の損害被告夢工房は,セキュアガードの製造,販売によって,別紙「被告夢工房の利益」のとおり,平成18年6月1日から平成19年5月31日までの間に,1900万8507円の利益を上げ,同年6月1日から平成20年5月31日までの間に,910万7920円の利益を上げ,同年6月1日から同年12月31日までの間に 1075万6113円 1 ,(229万2701円÷8×7=1075万6113円)の利益を上げている。
よって,被告夢工房は,平成18年6月1日から平成20年12月31日までの間に,合計3887万2540円の利益を上げており,これが原告の損害額と推定される。
(イ)被告アルミ工房の不正競争行為に係る原告の損害被告アルミ工房は,セキュアガードの製造,販売によって,別紙「被告アルミ工房の利益」のとおり,平成18年7月1日から平成19年6月30日までの間に,1331万2556円の利益を上げ,同年7月1日から平成20年6月30日までの間に,2460万1000円の利益を上げ,同年7月1日から同年12月31日までの間に,1432万8430円(1671万6502円÷7×6=1432万8430円)の利益を上げている。
よって,被告アルミ工房は,平成18年7月1日から平成20年12月31日までの間に,合計5224万1986円の利益を上げており,これが原告の損害額と推定される。
(ウ)したがって,不競法5条2項によって推定される原告の損害額は,合計して9111万4526円となり,原告はそのうち6090万円について損害賠償を請求する。
(被告らの主張)いずれも否認し,争う。
第3争点に対する判断1被告らの行為が不競法2条1項4号又は同項7号の不正競争行為に該当するか(争点(1))について(1)認定事実,(,,,,,, 前提となる事実 証拠 甲8 11ないし15 21 23 27 28,,,,,, 36 37 乙2ないし5 13の2 14の1ないし6 17ないし20証人E,原告代表者本人,被告ら代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
ア東衛産業と被告夢工房は,平成16年12月16日,光通風雨戸の販売について,地区指定販売代理権契約(甲11)を締結し,東衛産業は,被告夢工房が広島地区において光通風雨戸を販売することを許諾し,同社に対し定価の45%で納品することを約した。そして,東衛産業は,上記契約に従い,被告夢工房に対し光通風雨戸を納品し,被告夢工房はこれを顧客に販売していた。
イ平成17年12月ころ,東衛産業は,光通風雨戸の製造を委託していた株式会社ユニテ(以下「ユニテ」という )との間でトラブルを抱え,平 。
, 。, 成18年1月には 同社から光通風雨戸が納品されなくなった その結果東衛産業から被告夢工房に対する光通風雨戸の納品も次第に遅れるようになり,同年2月下旬ころには納品がされなくなった。
ウ東衛産業がユニテから光通風雨戸の納入を受けることができなくなった,, , ため 原告代表者は デイリー産業で光通風雨戸を製造することを計画し平成18年3月下旬ころからデイリー産業の工場において光通風雨戸の製造が開始された。
エ被告夢工房は,平成18年4月上旬ころ,東衛産業に対し,広島地区で販売する光通風雨戸を自ら製造することを提案し,東衛産業は,将来的に両社の間で製造委託に関する契約を締結することを前提に,被告夢工房の上記提案を検討することとした。
そして,東衛産業は,同月中旬ころ,被告夢工房に対し,光通風雨戸のスラット,框,上下レール枠及び縦枠(以下「スラット等アルミ部材」と。)([][])。 いうの図面 甲第15号証の1 ないし 8 の図面 を交付したオ被告夢工房は,平成18年4月下旬ころ,株式会社中国立山(以下「中国立山」という )に上記スラット等アルミ部材の図面を持ち込み,スラ 。
ット等アルミ部材の製造について価格の見積りを依頼した。そして,被告夢工房は,同年5月下旬ころ,中国立山にこれらの部材のダイスの製造を依頼し 中国立山の親会社である立山アルミニウム工業株式会社 以下 立 , (「山アルミ」という )は,同月22日,スラット等アルミ部材の図面(乙 。
14の1ないし6)を製作し,同月29日,これらの図面が被告夢工房に交付された。
被告夢工房は,同年6月中旬以降,中国立山にスラット等アルミ部材の製造を依頼し,これらの部材は同月末ころから被告夢工房に納品された。
カ平成18年5月上旬ころにおいても,東衛産業から被告夢工房への光通風雨戸の納品は遅れていた。そこで,被告夢工房の社員であるDは,光通風雨戸の製造を手伝うためにデイリー産業の工場を訪れ,約20日間,ジャバラの製造を中心に光通風雨戸の製造を手伝った。
キ東衛産業とデイリー産業は,平成18年6月1日,事業譲渡契約(甲13)を締結し,東衛産業からデイリー産業に対し,光通風雨戸の製造販売事業のすべてが譲渡され,これに伴い,光通風雨戸に係る構成部品の図面及び仕様に関する知識,構成部品の仕入先の情報等も移転された。
ク被告ら代表者は,平成18年7月4日,デイリー産業の本社を訪れ,原告代表者との間で,東衛産業及びデイリー産業と被告夢工房との間で締結する光通風雨戸の製造委託に関する契約の内容について話し合った。その際,被告ら代表者は,原告代表者に対し,中国立山から購入しているスラット等アルミ部材の価格を示した。また,このとき,原告代表者は,被告ら代表者に対し,光通風雨戸の部品明細表及び各部品の図面(甲第15号証の[10[11の1]ないし[11の15 )を交付した。 ], ]そして,東衛産業及びデイリー産業と被告夢工房は,同月中旬ころ,光通風雨戸の製造及び販売について,本件製造販売契約(甲12)を締結した。同契約においては,?東衛産業及びデイリー産業は,被告夢工房に光通風雨戸の製造を委託し,被告夢工房は,この委託を受託したものを除くほか,光通風雨戸又は光通風雨戸の製造に用いる部品を製造してはならないこと(同契約1条 ,?東衛産業及びデイリー産業の被告夢工房か )らの光通風雨戸の買上価格は,定価の32%相当の額とし,東衛産業及びデイリー産業の被告夢工房に対する光通風雨戸の売買代金の額は定価の45%相当の額とすること(同契約5条 ,?東衛産業及びデイリー産業 )は,被告夢工房に光通風雨戸を製造するのに必要な部品を有償で供給すること(同契約5条 ,?東衛産業及びデイリー産業は,被告夢工房に対 ), (), し 光通風雨戸を製造するために必要な技術を開示すること 同契約6条?上記部品の納入に伴う売買代金の決済は,毎月末日締めで,翌月末日までに支払うこと(同契約11条 ,?東衛産業及びデイリー産業と被 )告夢工房は,同契約の内容及び同契約に基づく業務の過程で知り得た相手方の技術上・営業上の秘密につき守秘義務を負うこと(同契約12条)が定められた。
ケ被告夢工房は,平成18年7月12日から同月29日まで,スラット等アルミ部材を東衛産業に納品した。他方,東衛産業は,同月末ころまで,被告夢工房からの要請に応じ,ジャバラその他の光通風雨戸の部品を供給した。
コ東衛産業及びデイリー産業は,被告夢工房が本件製造販売契約に基づき平成18年7月末ころまでに納品された光通風雨戸の部品の代金を期限までに支払わなかったため,同年9月7日,同契約を解除した。
サ男鹿産業は,平成18年7月13日ころ,東衛産業から光通風雨戸の特(,, ) 許権 甲28 特許第2958304号 発明の名称・ブラインド式雨戸を債務の担保として譲り受け,今般その担保を実行したとして,被告夢工房に対し,今後男鹿産業に無断で光通風雨戸の製造及び販売を行わないようにと警告する通知をした。
シ男鹿産業は,平成18年9月29日,被告アルミ工房との間で,上記特許権について,被告アルミ工房に対し非独占的通常実施権を許諾する旨の契約を締結した。
,,() スデイリー産業と原告は 平成20年5月10日 事業譲渡契約 甲14を締結し,デイリー産業から原告に対し,光通風雨戸の製造販売事業のすべてが譲渡され,これに伴い,光通風雨戸に係る構成部品の図面及び仕様に関する知識,構成部品の仕入先の情報等も移転された。
(2)東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房に対して開示された光通風雨戸に係る情報についてア上記(1)エのとおり,東衛産業が,平成18年4月中旬ころ,被告夢工房に対し,光通風雨戸のスラット等アルミ部材の図面を交付したこと,また,上記(1)クのとおり,原告代表者が,同年7月4日,被告ら代表者に対し,光通風雨戸の部品明細表及び各部品の図面を交付したことが認められる。
この点,被告らは,東衛産業及びデイリー産業から光通風雨戸の特別仕様の部品の図面等は交付されていない旨主張し,被告ら代表者本人もこれに沿った供述をする。しかしながら,甲第8,第27号証によれば,被告, ([][] 夢工房が スラット等アルミ部材の図面 甲第15号証の 1 ないし 8の図面)を中国立山に提供したことが認められ,その前提として,東衛産業から被告夢工房に同図面が交付されたことが認められるから,この認定に反する被告ら代表者本人の上記供述は採用することができない。また,被告らがセキュアガードの部品の製造等を委託した会社から交付されたとされる乙第5号証,第13号証の2に記載されている各部品の番号は,部品明細表(甲第15号証の[10 )及び各部品の図面(甲第15号証の ][11の1]ないし[11の15 )に記載された各部品の番号にほぼ対 ]応しており,このことから,被告ら代表者が上記部品明細表及び各部品の図面の交付を受けていたことが推認される。この事実と原告代表者本人の供述を総合すれば,上記のとおり,原告代表者が被告ら代表者に対し,光通風雨戸の部品明細表及び各部品の図面を交付したことが認められるから,この認定に反する被告ら代表者本人の上記供述は採用することができない。
イ(ア)原告は,上記ア認定の各情報のほかに,東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房に対し,平成18年5月23日ころ,特別仕様の部品の仕入先に関する情報を含む取引業者一覧表が交付された旨主張する。
, ([]) しかしながら 原告が主張する取引業者一覧表 甲第15号証の 9には 「06.6.22作成」との記載があり,同表は平成18年6 ,月22日ころに作成されたことが推認されること,同表を交付したとする原告代表者本人の供述自体あいまいなものであることからすると,東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房に対し,上記一覧表が交付されたことを認めることはできない。
(イ)なお,甲第9号証,第39号証の1によれば,F社が,平成18年7月26日,被告夢工房に対し,光通風雨戸のスラットを加工するための金型を販売したことが認められ,また,甲第10号証によれば,G社が,同月22日,被告夢工房に対し,光通風雨戸の部品となるシール・クッションゴムを納品したことが認められる。F社もG社も,上記取引業者一覧表に記載がある業者であるものの,上記(1)エ,カ,ク及びケのとおり,当時東衛産業及びデイリー産業と被告夢工房が光通風雨戸の製造について協力関係にあったことからすれば,東衛産業又はデイリー産業から被告夢工房に対し,F社やG社の情報について提供があったことも考えられる。他方,被告夢工房が上記取引業者一覧表記載の他の業者と接触したことを認めるに足りる証拠はないから,甲第9,第10号証,第39号証の1から認められる上記各事実は,上記(ア)の認定を左右するものではない。
ウさらに,原告は,デイリー産業が,工場に派遣された被告夢工房の社員であるDに対し,光通風雨戸のジャバラの製造,スラットのカット,プレス,ゴム入れ,框の製造,スラットの加工,雨戸の組立て等一切の工程における必要な技術を習得させたと主張する。この主張は,すなわち,デイリー産業からDに対し,原告が営業秘密と主張する光通風雨戸の製造に係るノウハウが伝達されたことを主張するものと理解される。
しかしながら,上記(1)カのとおり,Dが,ジャバラの製造を中心に光通風雨戸の製造を手伝ったことは認められるものの,その際,特別な製造についてのノウハウがDに伝達されたとは認められず(証人E ,そのほ)かに光通風雨戸の製造に係るノウハウがDに伝えられたことを認めるに足りる証拠もない。
(3)東衛産業及びデイリー産業から被告夢工房に対して開示された情報が不競法2条6項営業秘密に該当するかア上記(2)アのとおり,東衛産業やデイリー産業から被告夢工房に対し,光通風雨戸のスラット等アルミ部材の図面(以下「本件スラット等図面」という )が交付され,また,光通風雨戸の部品明細表及び各部品の図面 。
(以下「本件部品明細資料」という )が交付されている。被告夢工房に 。
開示されたこれらの情報が,不競法2条6項営業秘密に該当するか,以下,検討する。
イ本件スラット等図面及び本件部品明細資料の秘密管理性について(ア)証拠(甲21,証人E,原告代表者本人)によれば,東衛産業,デイリー産業及び原告は,本件スラット等図面及び本件部品明細資料を社長室の中にある鍵のかかった金庫の中に保管していたこと,原告代表者だけがこの金庫の鍵を開閉することができ,従業員は,社長室に入室することさえ許可されていなかったため,これらの情報を目にすることがなかったこと,東衛産業,デイリー産業及び原告は,金型を製造する会社に対しては,同一の金型を製造しないように要請していたこと,東衛産業,デイリー産業及び原告の従業員は,就業規則において,会社の業務上の機密となる事項を他に漏らさないことが義務付けられていたことが認められる。
(イ)上記(ア)の事実によれば,本件スラット等図面及び本件部品明細資料は,秘密として管理されていたと認められる。
ウ本件スラット等図面及び本件部品明細資料の非公知性について上記イのとおり,本件スラット等図面及び本件部品明細資料は,秘密として管理されており,それ自体は公にされていないものである。
この点,被告らは,光通風雨戸の各部品について,製品の現物から図面を起こして製造することも,製造業者にとっては容易なことである旨主張する。この主張は,すなわち,光通風雨戸のスラット等アルミ部材やそのほかの部品の形状は,光通風雨戸の製品から把握することができるから,本件スラット等図面及び本件部品明細資料に記載された情報は公然と知られているものであると主張しているものと理解される。
しかしながら,本件スラット等図面は,0.1ミリ単位の精密さで作ら, (,), れており 細かな溝や微妙な湾曲があること 甲15 27 からすると光通風雨戸の製品からスラット等アルミ部材の形状を正確に把握し,図面を起こすことは決して容易ではないというべきである。
また,本件部品明細資料についても,光通風雨戸の製品がいかなる部品から構成されているかについて,製品自体を分解して把握するには時間と費用を要する上,各部品の図面は0.1ミリ単位の精密さで作られていることから,特別に注文して作られている部品について,光通風雨戸の製品からその形状を正確に把握して図面に起こすことは決して容易ではないというべきである。
, ,。 被告らから 上記判断を左右するに足る証拠は 何ら提出されていない以上のとおり,光通風雨戸の製品から,スラット等アルミ部材の形状やそのほかの部品の形状を容易に把握することができるとは認められないから,本件スラット等図面及び本件部品明細資料に記載された情報は,光通風雨戸の製品が流通していたとしても,公然と知られているものであるとはいえない。
エそして,上記ウのとおり,公然と知られていない本件スラット等図面及び本件部品明細資料があれば,光通風雨戸の各部品の正確な形状を時間や費用をかけることなく把握することによって,容易に光通風雨戸を製造することが可能になるから,これらの情報は,有用な技術上の情報であるといえる。
オ以上によれば,本件スラット等図面及び本件部品明細資料は,不競法2条6項営業秘密に該当する(以下,本件スラット等図面及び本件部品明細資料を併せて「本件営業秘密」ということがある。。)(4)被告らの行為が不競法2条1項4号又は同項7号の不正競争行為に該当するかア原告は,被告夢工房が本件製造販売契約を履行する意思がなかったにもかかわらず,これがあるかのように装い,デイリー産業から本件営業秘密を騙取したと主張し,これが不競法2条1項4号の不正競争行為に該当する旨主張する。
しかし,上記(1)エ,ク及びケのとおり,被告夢工房は,光通風雨戸の製造委託に関し,東衛産業から本件スラット等図面を交付され,さらに東衛産業及びデイリー産業から本件部品明細資料を交付された後,最終的に本件製造販売契約の締結に至っており,同契約締結後も,被告夢工房から東衛産業に対し,スラット等アルミ部材が納品され,他方,東衛産業から被告夢工房に対し光通風雨戸の部品が供給されていたものである。このように,被告夢工房が本件営業秘密の開示を受けてから本件製造販売契約を締結し,さらに東衛産業に部品を融通しているという事実経過にかんがみれば,被告夢工房が,当初から本件製造販売契約を履行する意思がないにもかかわらず,本件営業秘密を騙取する目的でもって東衛産業及びデイリー産業から本件営業秘密を開示させたと認めることはできない。
よって,被告らの行為が不競法2条1項4号に該当するとは認められない。
イ被告らの行為が不競法2条1項7号の不正競争行為に該当するかについて,,,, (ア)上記(1)キ スのとおり 本件営業秘密は 平成18年6月1日に東衛産業からデイリー産業に移転され,平成20年5月10日にデイリー産業から原告に移転されている。
そして,上記(1)エ,クのとおり,被告夢工房は,本件営業秘密について,当時の営業秘密の保有者であった東衛産業又はデイリー産業から開示を受けている。
よって,被告夢工房は,本件営業秘密を保有する事業者(保有者)からその営業秘密を示されたといえる。
(イ)a上記(1)オのとおり,被告夢工房は,平成18年4月下旬ころ,本件スラット等図面を中国立山に持ち込み,同年5月下旬ころ,スラット等アルミ部材のダイスを製造させ,同年6月中旬ころから,これらの部材を製造させていた。
そして,同年8月4日に,被告アルミ工房が設立されてからは,同社が上記の部材を用いて光通風雨戸と同一の構造を有する製品(セキュアガード)を製造し,平成19年1月までは,被告夢工房にセキュアガードを販売し,さらに被告夢工房がその顧客にセキュアガードを販売するという営業形態がとられていた。さらに,同年2月以降,被告アルミ工房は,製造したセキュアガードの販売を被告夢工房に委託し,被告夢工房は被告アルミ工房からセキュアガードの販売手数料を受領していた。そして,現在,被告アルミ工房は,三協立山アルミ株式会社(立山アルミを承継した会社)からスラット等アルミ部材を納入し,セキュアガードを製造し,上記のとおり,被告夢工房を通じてこれを販売している (甲8,27,乙20,22,25,被告ら代 。
表者本人,弁論の全趣旨)bまた,証拠(甲15,乙5,13の1ないし3)によれば,被告夢工房が本件部品明細資料を用いて,光通風雨戸の特別仕様の部品に対応する部品の製造を部品製造会社に依頼していたことが認められる。
cそして,証拠(甲7,18)及び弁論の全趣旨によれば,光通風雨戸とセキュアガードとは,その形状や,部品構成においてほぼ同一であることが認められる。
d他方,上記第2の1(1),第3の1(1)ア,ウのとおり,東衛産業,デイリー産業及び原告は,それぞれ,光通風雨戸を製造又は販売していたことが認められる。
(ウ)上記(イ)の各事実によれば,被告アルミ工房は,営業秘密である本件スラット等図面を用いて作成されたダイスを用いて製造されたスラット等アルミ部材を使用し,また,営業秘密である本件部品明細資料を用いて製造された特別仕様の部品を用いて,光通風雨戸と同一の構造を有する製品であるセキュアガードを製造し,被告夢工房を通じて販売していたことが認められる。
したがって,被告夢工房と被告アルミ工房は,共同して,営業秘密である本件スラット等図面及び本件部品明細資料を使用していると認められる。
(エ)また,被告夢工房は,上記(1)エ,クのとおり,光通風雨戸の製造委託に関する契約が締結されることを前提に,東衛産業又はデイリー産業から本件営業秘密の開示を受けており,最終的に本件製造販売契約が締結され,当該契約では東衛産業及びデイリー産業から製造の委託を受けた光通風雨戸しか製造できず(同契約1条 ,その場合には定価の1 )3%に相当する金額を被告夢工房から東衛産業及びデイリー産業に支払う必要があり(同契約5条 ,さらに技術上・営業上の秘密につき守秘 )義務が課せられていた(同契約12条)にもかかわらず,同契約が解除,,,, されてからも 上記(イ)のとおり 本件営業秘密を使用して 東衛産業デイリー産業又は原告が製造,販売する光通風雨戸と同一の構造を有す,。 るセキュアガードを被告アルミ工房に製造させ 同製品を販売しているこのような被告らの行為は,本来契約の拘束の下で開示された本件営業秘密を使用することによって,本件営業秘密の保有者である東衛産業,デイリー産業及び原告が製造する製品と競合する製品を製造,販売し,自ら利益を上げることになるため,被告らには,不正の利益を得る目的があるといえる。
(オ)以上によれば,被告らが,共同してセキュアガードを製造し,販売することは,保有者から示された営業秘密を,不正の利益を得る目的で使用することに該当するから,不競法2条1項7号の不正競争行為に該当する。
なお,被告らは,被告アルミ工房が男鹿産業との間で同社の有する特許権について実施許諾契約を締結した旨主張する。しかしながら,上記特許権に係る発明は庇体を一体形成したことを特徴とするブラインド式, , 雨戸であって 本件営業秘密に関わるものと認めることはできないから上記の主張事実は,被告らにつき不正競争行為が成立するとの前記判断を左右するものではない。
(5)よって,現在本件営業秘密を保有している原告は,被告らが,共同してセキュアガードを製造し,販売する上記(4)イの不正競争行為によって営業上の利益を侵害されているから,不競法3条1項に基づき,被告らがセキュアガードを製造し,販売する行為の差止めを求めることができる。
なお,原告は,セキュアガードの構成部品の製造,販売についても差止めを求めているが,その対象となる個々の部品について具体的に特定していないため,これを認めることはできない。
2原告の損害(争点(2))について(1)上記1(4)イで説示したところによれば,被告らには,上記1(4)イの不, ,, 正競争行為について 故意又は過失があると認められ 不競法4条に基づき本件営業秘密の保有者である原告に対して損害賠償責任を負うことになる。
(2)原告は,デイリー産業が被告夢工房に光通風雨戸の製造を許諾した後の3年間において,デイリー産業及び原告の光通風雨戸の年間売上額は,東衛産業の時代に比べ,1年当たり5800万円減少したと主張し,原告代表者の陳述書(甲21)中にもこれに沿った記述があるものの,これを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されておらず,また,この売上高の減少と被告らの行為との間の因果関係を認めるに足りる証拠もない。よって,原告の上記主張は理由がない。
(3)不競法5条2項の推定規定に基づく原告の損害額についてア上記1(1)スのとおり,原告は,平成20年5月10日に締結した事業譲渡契約に基づき,デイリー産業から,本件営業秘密を譲り受けている。
したがって,原告が本件営業秘密の保有者となったのは,平成20年5, , 月10日以降であり この日以降における被告らの本件営業秘密の使用は原告の営業上の利益を侵害するといえるから,原告は,被告らに対し,本件営業秘密の使用により被った損害について,不競法4条に基づく損害賠償を請求することができる。
他方,平成20年5月10日より前の時点においては,東衛産業やデイリー産業が本件営業秘密の保有者であり,その時点における本件営業秘密の使用は,東衛産業やデイリー産業の営業上の利益を侵害することになるものの,原告の営業上の利益を侵害するものということはできない。したがって,平成20年5月10日より前の時点における被告らの本件営業秘密の使用については,原告は,被告らに対し,不競法4条に基づく損害賠償を請求することはできない(証拠上,東衛産業やデイリー産業が,上記の期間における損害賠償請求権を原告に譲渡したと認めることもできない。。)そこで,以下,被告らが平成20年5月10日以降,本件営業秘密を使用してセキュアガードを製造,販売したことによる,原告の損害額(不競法5条2項)について検討する。
イ被告夢工房に係る損害額(ア)上記1(4)イ(イ)aのとおり,被告アルミ工房は,その製造したセキュアガードの販売を被告夢工房に委託し,被告夢工房は被告アルミ工房からセキュアガードの販売手数料を受領していたものである。
(イ)平成20年5月1日から同年12月31日までの分として,被告アルミ工房から被告夢工房に対して支払われたセキュアガードの販売手数料は,合計1408万9650円である。このうち,平成20年5月分として支払われた手数料は,185万7600円であり,同年6月1日から同年12月31日までの分として支払われた手数料は,合計1223万2050円である (乙16,21,25,27) 。
(ウ)平成20年5月10日から同月31日までの分として被告夢工房に支払われた販売手数料の額は,同年5月分の内訳を直接示す証拠はないため日割計算により按分して算定すると 131万8296円となる 1 , (85万7600円÷31×22=131万8296円 。)(エ)乙第21号証によって認められる被告夢工房の販売費及び一般管理費中に,変動経費として売上高(販売手数料額)から控除されるべき費用が存在すると認めることはできない。
(オ)以上によれば,被告夢工房が平成20年5月10日から同月31日までの間にセキュアガードの販売によって得た利益は,131万8296円と認められる。また,上記認定によれば,被告夢工房は,同年6月, , 1日から同年12月31日までの間に セキュアガードの販売によって少なくとも原告の主張する1075万6113円の利益を得たものと認められる。
よって,被告夢工房が平成20年5月10日から同年12月31日までの間にセキュアガードの販売によって得た利益は,1207万4409円であると認められ,この金額が原告の損害額と推定される。
ウ被告アルミ工房に係る損害額(ア)乙第16号証によれば,平成20年7月1日から同年12月31日までのセキュアガードの売上高は,合計5362万8312円と認められ,また,同期間における売上原価は合計2408万4831円,被告アルミ工房が被告夢工房に支払った販売手数料は合計1027万1270円と認められる。
よって,同期間における被告アルミ工房の利益は,1927万2211円(5362万8312円-2408万4831円-1027万1270円=1927万2211円)と認められ,その利益率は,約35.9%となる。
(イ)乙第24号証によれば,平成20年4月1日から同年5月31日までのセキュアガードの売上高は,合計1827万9182円と認められるものの,その内訳を直接示す証拠はないため,同年5月10日から同月31日までの売上高は,日割計算により按分して算定すると,659万2491円となる(1827万9182円÷61×22=659万2491円 。また,乙第24号証によれば,平成20年6月1日から同 )月30日までのセキュアガードの売上高は,887万7544円と認められる。
よって,平成20年5月10日から同年6月30日までの被告アルミ工房のセキュアガードの売上高は,合計1547万0035円と認められる。
そして,同期間における売上原価の額を直接示す証拠はないものの,同期間における利益率も上記(ア)の期間における利益率と同程度であると考えられることからすると,上記金額の35.9%である555万3742円が平成20年5月10日から同年6月30日までの被告アルミ工房の利益と認めるのが相当である。
(ウ)上記販売手数料のほか,乙第16号証によって認められる被告アルミ工房の販売費及び一般管理費中に,変動経費として売上高から控除されるべき費用が存在すると認めることはできない。
(エ)以上によれば,被告アルミ工房が平成20年5月10日から同年6月30日までの間にセキュアガードの製造,販売によって得た利益は,555万3742円と認められる。また,上記認定によれば,被告アルミ工房は,同年7月1日から同年12月31日までの間に,セキュアガードの製造,販売によって,少なくとも原告の主張する1432万8430円の利益を得たものと認められる。
よって,被告アルミ工房が平成20年5月10日から同年12月31日までの間にセキュアガードの製造,販売によって得た利益は,1988万2172円と認められ,この金額が原告の損害額と推定される。
エ以上によれば,不競法5条2項によって,推定される原告の損害額は,イ,ウを合計した3195万6581円となる。
そして,被告夢工房と被告アルミ工房は,共同して上記1(4)イの不正競争行為を行っていると認められるから,共同不法行為(民法719条)が成立し,原告は,被告らに対し,連帯して,3195万6581円及びこれに対する不正競争行為の後である平成21年1月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求することができる。
第4結論以上によれば,原告の請求は,主文第1,2項記載の限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却し,主文第1項については仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門優
裁判官 小川卓逸
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