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関連審決 不服2008-20006
関連ワード 発明者 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  補正要件 /  分割出願 /  侵害 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  前置審査 /  審理終結通知 /  拒絶理由通知 /  誤訳の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  釈明 /  国際公開 /  国内公表 / 
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事件 平成 22年 (行ケ ) 10263号 審決取消請求事件
原告 X
被告 特許庁長官
指定代理人 伊藤幸仙神 悦彦廣瀬文雄 田村正明
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2011/02/03
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた判決特許庁が不服2008-20006号事件について平成22年7月2日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,特許出願に対する拒絶査定に係る不服の審判請求について,特許庁がした請求不成立の審決の取消訴訟である。争点は,本件審判手続の適法性である。
1特許庁における手続の経緯原告は,平成18年8月2日,名称を「情報出力装置,媒体および情報入出力装置」(平成20年4月8日付け手続補正書において「情報出力装置」と変更)とする発明について国際特許出願(特願2007-531140号 ,平成19年2月22日国際公開(WO2007/021249号),平成20年1月24日国内公表(特表2008-501490号))をし,平成20年4月8日に手続補正をしたが,平成20年7月3日付けで拒絶査定を受けたので,同年8月6日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同年9月5日に手続補正(本件補正)をした。
特許庁は,上記請求を不服2008-20006号事件として審理した上,平成22年7月2日,平成20年9月5日付けの手続補正を却下するとともに,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成22年7月14日原告に送達された。
2本願発明の要旨平成20年4月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る本願発明は,以下のとおりである。
【請求項1】ステージ面上に,その媒体面に所定の規則に基づいたドットパターンが印刷された媒体を前記ステージ面と対面させた状態で載置し,ステージ下空間に配置された撮像手段によって前記ドットパターンを読み取って,当該撮像手段から得られた撮影画像からドットパターンの意味するコード値又は座標値に変換し,該コード値又は座標値に対応した情報を出力する情報出力装置であって,前記ステージ面の複数の媒体載置位置にはそれぞれ光透過性の読取孔が設けられており,前記各読取孔に対応するステージ下空間にはそれぞれ撮像手段が前記読取孔上に載置された媒体の媒体面を撮像可能に配置された情報出力装置。
3審決の理由の要点(1)本件補正は不適法で却下すべきなので,補正前の本願発明についてにみるに,本願発明は,引用例(特開2004-41740号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(2)なお,本件審判手続においては,審判請求人の意見を求めるために平成21年5月1日付けで審尋がなされ,請求人(本訴原告)から同年7月6日に当該審尋に対する回答書が提出されたところ,請求人は,上記回答書において「本件補正後の請求項は,いずれも出願当初の明細書及び図面に記載されているものであり,出願の分割を行いたいから面接を希望する」旨要望したが,平成20年9月5日付け補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでないから,同補正に基づく分割出願は適法なものではなく,したがって,請求人の上記要望を受け入れることに意義を見いだせないことから,面接は行わない。
第3原告主張の審決取消事由(面接を行わないとした判断の誤り)1審決送達までの経緯原告は,平成21年5月7日,同日発送の審尋を受領し,そこに記載された「前置報告書の内容」には,平成20年9月5日付け手続補正書による補正が,「特許請求の範囲の(いわゆる限定的)減縮」,「誤記又は誤訳の訂正」,「明りょうでない記載の釈明」のいずれでもなく,却下されるべきものである旨が記されていた。
原告は,検討の結果,この前置報告書の内容,すなわち,当該補正が補正要件を満たしていないことは認めることとしたが,補正後の請求項は,出願当初の明細書及び図面の範囲内に記載されていると確信していたので,分割出願を行えば特許を取得することができると考えた。
そこで,原告は,平成21年7月6日付けの回答書にて,補正後の請求項で特許を取得したい旨,及び原告(出願人)の方針を説明するため,審判官面接の機会を与えていただきたい旨を記載した。さらに,分割の機会を得るために拒絶理由を通知していただきたい旨を記載した。
また,本願の明細書及び図面中には,本願発明及び本願を原出願とした分割出願(特願2008-100869号,特許第4268659号)に係る発明以外にも,特許取得を希望する発明が多数含まれていた。原告は,回答書には明記しなかったが,拒絶理由が通知されたら,補正後の請求項のほかに,明細書及び図面中の発明についても分割出願を行うことを計画しており,この点について,審判官面接の際に説明することを予定していた。
しかし,審判官面接の機会が与えられることも拒絶理由が通知されることもないまま,平成22年6月21日,審理終結通知書(平成22年6月16日起案)を受領した。「審理が終結した」との突然の知らせに驚いた原告は,正式に審決が通知される前にその結果を知りたいと考え,審判長に電話をしたところ,「請求不成立」とのコメントを受けた。原告は,電話にて,面接を強く希望していた旨,本願発明以外にも特許を取得したい発明が多数あり,そのためにも分割出願の機会を得たかった旨を審判長に伝えが,審理の再開がなされることもなく,電話でのコメントと同じ結論の審決が送達された。
2審判合議体の判断の誤りについて審決は,面接を行わなかった理由として,「請求人は上記回答書において,「本件補正後の請求項は,いずれも出願当初の明細書及び図面に記載されているものであり,出願の分割を行いたいから面接を希望する」旨要望したが,上記「第2」に示したとおり,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでないから,本件補正に基づく分割出願は適法なものではない。したがって,請求人の上記要望を受け入れることに意義を見いだせないことから,面接は行っていない。」(11頁9行〜16行)と述べている。
そして,審決の「第2平成20年9月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定」には,補正後の請求項1の「ステージ下の空間は,前記撮像手段の分のみ確保されている」という構成要素が,当初明細書に記載された事項とすることができず,当業者にとって自明な事項であるともいえない旨が記載されている。
しかし,原告は,分割出願を行った後に同様の拒絶理由が通知された場合には,当該拒絶理由が妥当でない旨を意見書で主張する,又は請求項の補正を行うことにより,拒絶理由を克服することができたはずである。したがって,分割出願が適法でないことを理由に,分割出願を行う機会及び面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断は,一方的なものであり,誤った判断である。
なお,被告の主張のとおり,本件出願について分割の機会があったことは認めるが,原告は,代理人である弁理士に手続を依頼するための経済的な余裕がなく,個人で出願・中間処理等すべての手続を行わざるを得ず,したがって,経済的にも労力的にも分割時期をできるだけ先延ばしする必要があったのである。
また,特許庁が発行している「面接ガイドライン(審判編)」(乙1,以下「ガイドライン」という。)中には,面接等の要請に応じることができない12の事例が挙げられているところ,原告の面接要請は,いずれの事例にも該当しない。このことからも,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断は,ガイドライン違反であり,誤った判断である。
この点について被告は,本件はガイドライン5.(12)に記載された「例外的な場合」に該当するため面接は行わなかった旨述べるが,上記ガイドラインの記載中では,「例外的な場合」が具体的にどのような場合であるか,一切例示されておらず,例示されていない限りは,出願人は,自身の面接の要請が例外的な場合に該当するとは考えず,面接を行ってもらえるものと理解するのは当然であり,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断に違法がある。特に本件は,前置審査の段階で,技術説明及び本件の方針を説明することを目的とした審査官面接を要請したところ断られ,審判の段階で対応してもらうように審査官から示唆されたものであり,原告としては,審判段階では面接の機会が与えられるものと信じて疑わなかったわけである。
さらに,上記1で述べたように,原告は,本願発明以外にも,本願の明細書及び図面中の発明について,分割出願を行うことにより特許化を図ることを計画していた。しかし,面接の機会が与えられなかったため,原告は,当該計画について説明することができず,貴重な発明を特許化する機会を逸してしまった。これによる原告の損害は甚大なものである。
この点からも,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断は,補正後の請求項に係る発明も含め,本願発明の明細書及び図面中の発明について多数の特許を取得することを予定した原告の期待権を侵害するものであり,誤った判断である。
第4 被告の反論1原告主張の「審決送達までの経緯」については,争わない。
2原告主張の「審判合議体の判断の誤り」に対し(1) 特許出願における出願の分割については,特許法44条1項(平成18年法律第55号による改正前のもの)には,「特許出願人は,願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる期間内に限り,二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定されている。
また,補正をすることができる期間については,特許法17条から17条の4に規定されており,本件出願については,少なくとも,以下の(a)〜(c)の期間に,分割を行う機会があった。
(a)特許をすべき旨の査定の謄本の送達前で,拒絶理由通知を受ける前(特許法17条の2第1項柱書き)(b)拒絶理由通知を受けた後の指定された期間内(同1項1号)(c)拒絶査定不服審判を請求する場合において,その審判の請求の日から30日以内(同1項4号)そして,その機会に分割出願を行うかどうかは,出願人(原告)の自由な判断に委ねられたものである。実際,原告は,平成20年2月4日付け拒絶理由通知の指定期間内である同年4月8日に,分割出願(特願2008-100869(特開2008-212697号),乙2)を行っている。そうすると,本件出願について度重なる分割の機会があり,その度に自らの自由な判断で別の新たな分割出願をすることができたにもかかわらず,新たな分割出願を行わなかったのであるから,審決に際して審判合議体が分割出願を行う機会を与えなかったからといって,審判合議体の判断に違法性はない。
(2)面接は,審判請求事件において,審判合議体と請求人側との意思疎通を図り,それにより審理の促進に役立てるために行うものである。(ガイドライン(乙1)参照)。
また,拒絶査定不服審判は,書面審理を原則としており,面接は,審判合議体の審理を補完する役割を有するにすぎない。したがって,審理に際して面接を行うか否かは,個々の事案ごとに,審判合議体が判断すべき裁量の範囲内である。
これに対して,原告は,本願発明の発明者による技術説明及びデモンストレーションのための面接や本件に対する特許を取得するための原告の方針を説明するための面接を希望した。
しかし,審判合議体は,上記「本願発明の発明者による技術説明及びデモンストレーションのための面接」に対しては,合議体が事件の内容を十分に理解しており,説明を受ける必要がなく,面接を行わない「例外的な場合」と判断したものである(ガイドライン5.(12)参照)。また,上記「本件に対する特許を取得するための原告の方針を説明するための面接」に対しては,具体的には分割出願を希望することであるから,審理の促進に役立つとは認められないと判断した(ガイドライン5.(9)参照)のである。
よって,上記面接をする機会を与えなかったからといって,面接の目的及び書面審理の原則に照らして,審判合議体の判断に違法性はない。
第5当裁判所の判断原告は,審決について,その内容は争わず,審判手続における違法を,取消事由(面接を行わないとした判断の誤り)として主張する。
しかし,原告が審判官との面接を希望したのは,審判官が補正は不適法であるとした平成20年10月15日作成の前置報告書の指摘(甲8)は認めつつも,なお,補正後の請求項を前提として分割出願を希望しその機会を与えてもらうためであったところ(甲9),本件訴訟においても,本件補正が不適法であること自体について原告は争っておらず,これが適法であることを裏付けるべき主張立証もないので,本件補正を前提としての本願発明の分割出願が適法になるものということはできない。そうである以上,審判官が上記内容についての面接要請に応じなかったことをもって,審判手続に違法があるとすることはできない。
原告が主張する審決取消事由に理由がないことは以上のとおりであるが,なお原告が主張しているところにかんがみ,以下の点を補足する。
すなわち,原告は,特許庁が発行しているガイドライン(乙1)中には,面接等の要請に応じることができない12の事例が挙げられているところ,原告の面接要請は,いずれの事例にも該当しないから,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断は,ガイドライン違反であると主張する。
しかし,ガイドラインは特許庁が定めている基準であって,面接の機会を与えられなかったことが違法となるか否かは本件訴訟で独自に判断すべきである。そして,本件審判手続において面接を行わなかったことをもって違法とすべき事実関係を認めることができないことは,冒頭に説示したとおりである。拒絶査定不服審判は,書面審理により行われるものである(特許法145条2項)ところ,審判手続において,審判合議体と請求人側との密な意思疎通を図り,それにより審理の促進に役立てるために面接が実務上行われているとしても(ガイドライン1.1(乙1)参照。),それは,特許法上規定された手続ではなく,請求人に対するいわゆる行政サービスの性質を持つものである。
そうすると,拒絶査定不服審判の審理に際して面接を行うか否かは,個々の事案において審判合議体の裁量に属する事項であり,特段の事情のない限り,面接を行わなかったことが審判手続上の違法となるものではない。そして,上記説示したところによれば,本件においてこの特段の事情はない。
原告は,さらに,面接をする機会を与えなかった審判合議体の判断が,補正後の請求項に係る発明も含め,本願発明の明細書及び図面中の発明について多数の特許を取得することを予定した原告の期待権を侵害するものであると主張する。
しかし,原告が主張する期待権侵害も,面接を受けられなかったことについての違法をいうものに帰するのであって,前記のとおり,面接を行わなかった審判合議体の判断を違法とすることはできないのであるから,原告のこの主張も,採用することができない。
第6結論以上によれば,原告主張の取消事由は理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 清水節
裁判官 古谷健二郎
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