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事件 |
平成
20年
(ワ)
36814号
特許権侵害差止等請求事件
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神戸市中央区<以下略> 原告シ スメックス株式会社 同訴訟代理人弁護士岩谷敏昭 同 堀田裕二 同訴訟代理人弁理士奥村茂樹 同 西野卓嗣 東京都渋谷区<以下略> 被告株 式会社セイシン企業 同訴訟代理人弁護士上谷清 同 永井紀昭 同 仁田睦郎 同 萩尾保繁 同 山口健司 同 薄葉健司 同 石神恒太郎 同 補佐人弁理 士水谷好男 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2011/01/20 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,使用し,販売し,輸出し又は販売の申し出をしてはならない。 2被告は,前項記載の製品を廃棄せよ。 3被告は,原告に対し,1億4679万3389円及び内金1億円に対する平成21年1月22日から,内金4679万3389円に対する平- 2 -成22年5月27日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4原告のその余の請求を棄却する。 5訴訟費用は,これを400分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1主文第1項及び第2項と同旨2被告は,原告に対し,1億4752万7616円及び内金1億円に対する平成21年1月22日から,内金4697万5566円に対する平成22年5月27日から,内金55万2050円に対する同年10月22日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,液中の粒子を撮像し,その粒子像を記憶,表示するとともに,粒子像を画像解析することによって,粒子の大きさや形状に関する情報を求める粒子画像分析装置についての特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という )の製造,販売等の行為は上記特許権を侵害する 。 ものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,販売等の差止め,同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として,1億4752万7616円及び内金1億円に対する平成21年1月22日(訴状送達の日の翌日)から,内金4697万5566円に対する平成22年5月27日(訴えの変更(請求の拡張)に係る原告第11準備書面送達の日の翌日)から,内金55万2050円に対する同年10月22(() ) 日 再度の訴えの変更 請求の拡張 に係る原告第14準備書面送達の日の翌日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがない事実である )。 ( )当事者1原告は,臨床検査機器,検査用試薬及び粒子分析機器の製造販売等を業とする株式会社である。 被告は,粉体設備機器及び粉体測定機器の製造販売等を業とする株式会社である。 ( )原告の有する特許権2原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1 ,請求項2の発明を「本件発明2 ,請求項 」 」4の発明を「本件発明4 ,請求項6の発明を「本件発明6」といい,これ 」らの発明を総称して「本件発明」という。また,本件発明に係る特許を「本件特許1」などといい,これらの特許を総称して「本件特許 ,本件特許に」係る明細書(別紙特許公報及び審決参照)を「本件明細書」という )を有。 する(甲1,17,18 。)特 許 番 号第3411112号発明の名称粒子画像分析装置出願日平成6年11月4日登録日平成15年3月20日訂正審判確定日平成21年6月5日特許請求の範囲(下線部分は,上記訂正(以下「本件訂正」という )に。 より追加された部分である )。 (請求項1)「粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと,変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と,照射された粒子を撮像する撮像手段と,撮像された粒子像を解析する画像解析手段と,表示手段とを備え,画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と,粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と,撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置 」。 (請求項2)「画像解析手段が,個々の粒子の円形度から円形度頻度データおよび/又は円形度の平均値と標準偏差を算出して表示手段に表示する演算手段をさらに備えてなる請求項1記載の粒子画像分析装置 」。 (請求項4)「シースフローセルが,粒子懸濁液を偏平な流れに変換すると共に,撮像手段が粒子懸濁液流の偏平な面を撮像することを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置 」。 (請求項6)「撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれの撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにしたことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置 」。 ( )構成要件の分説3本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1A」などという。。)(請求項1)1A粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと,1B変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と,1C照射された粒子を撮像する撮像手段と,1D撮像された粒子像を解析する画像解析手段と,1E表示手段とを備え,1F画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と,1G粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と,1H撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,1I記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなること1Jを特徴とする粒子画像分析装置。 (請求項2)2A画像解析手段が,個々の粒子の円形度から円形度頻度データおよび/又は円形度の平均値と標準偏差を算出して表示手段に表示する演算手段をさらに備えてなる2B請求項1記載の粒子画像分析装置。 (請求項4)4Aシースフローセルが,粒子懸濁液を偏平な流れに変換すると共に,撮像手段が粒子懸濁液流の偏平な面を撮像する4Bことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。 (請求項6)6A撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれの撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにした6Bことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。 ( )被告製品の製造,販売及び使用4被告は,被告製品を製造,販売した。また,被告は,被告の行う受託測定業務のために,被告製品を使用した。 ( )被告製品の構成5ア被告製品の構成を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説された構成要件をそれぞれ「構成1a」などという。ただし,被告製品が構成1gの下線部の構成を有するか否かについては,後記のとおり,当事者間に争いがある。。)1a分散煤に分散された粒子の流れを,分散煤と同じキャリアで挟み込むシースフローセルを備えている。 1bシースフローセル内で偏平になった流れにレンズの焦点が合わせられ,カメラで撮影されると共に,この流れに光が照射されるキセノンランプを備えている。 1c照射された粒子を撮り込むカメラを備えている。 1d撮り込んだ粒子画像を解析する画像解析手段を備えている。 1e粒子画像や解析結果を表示する表示手段を備えている。 1f撮り込んだ粒子の面積を測定して円相当径を算出する算出手段並びに撮り込んだ粒子の面積及び周囲長を測定して円形度を算出する算出手段を備えている。 1g円相当径のヒストグラムを作成すると共に,円相当径をX軸とし円形度をY軸としたスキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段を備えている。 1h撮り込んだ粒子画像を格納する記憶手段を備えている。 1i記憶手段に格納された粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段を備えている。 1j粒子画像分析装置である。 2a画像解析手段が,個々の粒子の円形度からヒストグラム及び/又は円形度の平均値と標準偏差を算出して表示手段に表示する演算手段を備えている。 6aカメラの倍率は電動レボルバにより自動変更されるようになってお,,, ., り カメラの測定範囲は 10〜1000μm 5 0〜500μm2.5〜200μm,1.0〜90μm及び0.5〜45μmの5種の範囲である。 イ構成1aないし1f及び1hないし1jは,構成要件1Aないし1F及び1Hないし1Jを,構成2aは構成要件2Aを,構成1bは構成要件4Aを,構成6aは構成要件6Aを,それぞれ充足する。 2争点( )被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか(被告製品は構成要件1G1を充足するか (争点1 。))( )本件特許は特許無効審判において無効とされるべきものか(争点2 。 2 )ア訂正要件違反の有無(争点2-1)イ記載要件違反の有無(争点2-2)ウ本件発明は進歩性を欠くか(争点2-3)( )原告の損害(争点3)33争点に関する主張( )争点1(被告製品は構成要件1Gを充足するか)について1[原告の主張]ア被告製品は「粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成する」こと構成要件1Gの「粒径」とは,円相当径のことである。また,構成要件,「 」 1Gは粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成するものであるが,ヒストグラムは頻度データを図面にしたものであるため,ヒストグラムを作成するには,円相当径の頻度データに基づくほかない。 したがって,構成1gの「円相当径のヒストグラムを作成する」とは,「 」。 円相当径の頻度データに基づいてヒストグラムを作成する ことであるよって,構成要件1Gの「粒径による粒度頻度データに基づいてヒスト」 ,「 」 グラムを作成する と 構成1gの 円相当径のヒストグラムを作成するとは,同一である。 イ被告製品は「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」すること(ア)本件発明の技術分野が属する粒子計測分野において権威があるベックマン・コールター社の用語辞典(甲14)によると 「スキャッタグ,ラム」とは 「2パラメータヒストグラム ,すなわち 「2つのパラメ , 」,ータを用いた頻度分布図」を意味する。 また,本件明細書の発明の詳細な説明には 「2次元スキャッタ頻度 ,データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することについて,次のとおり記載されている。 「各粒子像の円相当径が求められれば,次にその値をもとにして粒度頻度データを作成する(ステップS10 。工業用の粉体は多種多様で )粒径も非常に広い範囲に渡っている。従って,一般的に粒径はLOG(対数)変換し,LOG変換した値を等分割した上で粒度頻度データを求める(段落【0037 ) 。」】「従って,円相当径がd〜(d+Δd)の粒子頻度データは,式(5)で補正すればよい(段落【0040 ) 。」】「例えば,高倍率撮像と低倍率撮像でのオーバーラップ範囲を15〜30μmとした場合 そのオーバーラップ範囲内の粒径d〜d+Δd μ , (m)の粒子頻度値f(d)は,次式で算出する(段落【0045 ) 。」】「次に,円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データを求める(ステップS11 。この場合にも,まず高倍率 )撮像と低倍率撮像のそれぞれに対して2次元頻度データを求める。次に,粒度頻度データの補正処理と同様に,粒子像の大きさの違いによる頻度補正,異なる撮像倍率での試料分析量の違いによる頻度補正を行う。さらに,異なる撮像倍率でのオーバーラップ測定範囲での2次元頻度補正を,前記粒度頻度データのつなぎ合わせの時と同様に行う(段落【0047 ) 。」】「以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から,図7,図8に示すような粒度ヒストグラム,円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する ス , (テップS13 。図7では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を )頻度%と累積%の2つの意味に割当て,累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では,横軸をL, ,() OG変換した円相当径 縦軸を円形度としており 各分割点 ドットの色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている(段落【00。」50 )】,「 」,, したがって2次元スキャッタ頻度データ とは 粒度頻度データすなわち,粒径がd〜(d+Δd)の粒子の頻度値と同様に求められるものであり,粒径をdで表し,円形度をsで表せば [X軸,Y軸]=,[ d〜d+Δd(s〜s+Δs ]の領域における頻度データを意 (),)味するものであることが明らかである。本件明細書の段落【0050】における分割点ドットとはこのようなd〜d+Δds 「()」,[(),(〜s+Δs ]の領域( 分割」された 「幅を持った一定の区間 )の )「, 」ことを意味しており,単なる「点」を意味するものではない。同段落が引用する図8も,縦軸と横軸が一定間隔で区画された枡目を有するように表現され,かつ 「各分割点(ドット 」は,区画を有する趣旨から, ,)四角形で表現されている。 (イ)構成要件1Gの「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することの意味については,上記(ア)のとおりである。かかる2次元スキャッタグラムを作成するには,粒径と円形度のいずれかをX軸とし,他の一方をY軸としなければならない。 したがって,構成1gの「円相当径をX軸とし円形度をY軸としたスキャッタグラムを作成」するとは,構成要件1Gの「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することに相当する。被告が作成した被告製品のパンフレット(甲5)でも,被告製品の「装置特長」を紹介する箇所において,明確に 「スキャッタグラム等,最適な表現方法 ,として見易さを向上させました 」と説明されている。 。 ウよって,被告製品は,構成要件1Gを充足する。 [被告の主張]ア構成要件1Gの「スキャッタグラム」の解釈(ア)「散布図 」について 「統計科scatter diagram, scattergram, scatterplot ,学辞典 (乙2)は 「2次元観測値を平面上に表示したもの。散布図 」,は2つの変数の間にどのような関連性があるかをみるのに重要な助けになる 」と説明し,その例として,2つのパラメータを縦軸と横軸にと 。 りデータを点で表した図を挙げている(乙2・図43 。また 「散布),()」,「 」(), 図について新編 統計的方法 改訂版乙1はscatter diagram「 」, 互いに関連する二つの変量の関係を図にプロットしたもの と定義しその例として,2つのパラメータを縦軸と横軸にとりデータを点で表した図を挙げている(乙1・図9.1.1,図9.2.1 。)なお,ベックマン・コールター社の用語辞典(甲14)では 「スキ,ャッタグラム」とは「2パラメータヒストグラムのこと」であるとされるが,同辞典では 「2パラメータヒストグラム」とは 「FCMの表 , ,。(),, 示法の1種 測定された2つの指標 パラメーター をX Y軸にとり」,, 2次元座標軸上の1つの点として表示する方法 と定義しており 結局「スキャッタグラム」とは,測定された2つのパラメータをX,Y軸にとり,2次元座標軸上の1つの「点」として表示する方法をいうものと定義している。 ,「」,「【】」() 一方ヒストグラムとは工業用語大辞典第4版乙3JISによれば 「測定値の存在する範囲を幾つかの区間に分けた場合,各区 ,間を底辺とし,その区間に属する測定値の出現度数に比例する面積をもつ柱(長方形)を並べた図。区間の幅が一定ならば,柱の高さは各区間に属する値の出現度数に比例するから,高さに対して度数の目盛を与えることができる 」とされている。。 (イ)本件明細書の段落【0050】及び【図面の簡単な説明】では,図8及び図9が「スキャッタグラム」であるとするが,これらの図は,いずれも,2つのパラメータを縦軸と横軸にとり,データを「点」で表した図である。なお,図8及び図9では,分割点は四角形であり,幅を持っているが,これらの図では,各分割点は不規則に点在しており,任意のX及びYの値を,特に制限なしにとることができるようであるから,「」。, 幅を持った一定の区間 とみることはできない この種のグラフではデータの認識性を改善するために,各点の大きさを意図的に拡大し,ある程度の大きさの四角形や円形等で表現することが,普通に行われている。 【図8】【図9】(ウ)以上のことから,構成要件1Gの「スキャッタグラム」とは,2つのパラメータを縦軸と横軸にとりデータを「点」で表した図をいうものと解することができる。 このように 「スキャッタグラム」を,ヒストグラムと異なるものと ,して,2つのパラメータを縦軸と横軸にとりデータを「点」で表したものと理解することは,本件明細書が,請求の範囲や発明の詳細な説明において,ヒストグラムとスキャッタグラムとを明確に使い分けていることにも整合する。 なお,構成要件1Gは 「2次元スキャッタ頻度データに基づいて2 ,次元スキャッタグラムを作成」するものであるが,頻度データに基づく「2次元スキャッタグラム」が,常に,データを「領域」で表示するグラフとなるわけではない 「点」であっても,ある一点で重複すること 。 は理論上あり得るので,頻度の概念は生じ得る。点が重なる場合に2次元的に頻度を表示する手法としては,点が重なる場合に点の色を変えるほか,点を2重丸や3重丸にしたり,点の右肩に数字を入れたりする手法が存在する(乙17 。本件明細書の「各分割点(ドット)の色を2 )」(【】) 次元頻度値に応じて変えるようにしている との記載 段落 0050は,点が重なる場合に頻度に応じて点の色を変えることを説明したものと解するのが相当である。 イ構成要件1Gの「2次元スキャッタ頻度データ」の解釈原告は,構成要件1Gの「2次元スキャッタ頻度データ」とは 「粒径,をdで表し,円形度をsで表せば [X軸,Y軸]=[ d〜d+Δd , ,()(s〜s+Δs ]の領域における頻度データを意味する」と主張する。 )しかしながら,本件明細書には 「2次元スキャッタ頻度データ」の意 ,味について,原告の主張するように明記されてはいない。 また,本件明細書によれば,粒度頻度データの補正は,?粒子像の大きさの違いによる頻度補正(大きな粒子ほど画面の端にかかる確率が高いため,それを考慮して,大きな粒子の粒度頻度データを,より大きな頻度に補正するもの。段落【0038】〜【0040,?異なる撮像倍率で 】)の試料分析量の違いによる補正(段落【0041】〜【0042,?】)異なる撮像倍率での頻度分布をつなぎ合わせる際の補正(それぞれの倍率で得られた頻度分布曲線同士を滑らかにつなぐための補正。段落【0043】〜【0046,の3段階で行われる。この点,上記?の補正につ 】)いては,円形度頻度データについても,本件明細書に記載された方法に従って行うことが可能であるが,上記?の補正については,円形度の大小と画面の端にかかるかどうかは無関係であり,円形度頻度データを粒度頻度。, , データと同様に補正することはできない また 上記?の補正についても円形度頻度データの場合は,上記?の補正を終えた後の低倍率撮像での円形度頻度分布と高倍率撮像での円形度頻度分布は,円形度全域にわたってオーバーラップしているはずであり,倍率の違いによる円形度頻度の違いを補正するとしても,粒径の頻度データの補正と同様に行うことができないことは,明らかである。このように,本件明細書では,円形度頻度データの補正を具体的にどのようにすべきかが明らかではない。 本件明細書の段落【0047】には 「粒度頻度データの補正処理と同 ,様に,粒子像の大きさの違いによる頻度補正,異なる撮像倍率での試料分析量の違いによる頻度補正を行う。さらに異なる撮像倍率でのオーバーラップ測定範囲での2次元頻度補正を,前記粒度頻度データのつなぎ合わせの時と同様に行う 」と記載されているものの,上記のとおり円形度の頻 。 度補正を具体的にどのように行うべきかが明らかでないのだから 「2次,元頻度データ」の補正を粒度頻度データの補正と同様には行えないことが明らかである。 以上のとおり,本件明細書からは 「2次元スキャッタ頻度データ」の ,具体的な内容及びその算出方法については不明であるといわざるを得ない。 ウ被告製品は「スキャッタグラム」を作成するものではないこと原告は,被告製品は構成1g( 円相当径のヒストグラムを作成すると 「共に,円相当径をX軸とし円形度をY軸としたスキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段を備えている)を有する。」と主張する。しかしながら,被告製品はこのような構成を備えていない。 被告製品の備えている構成は 「円相当径のヒストグラムを作成するとと ,もに,円相当径をX軸として円形度をY軸とし頻度をZ軸とする3次元ヒストグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段 (構成」1gと異なる部分に下線を引いた )である。円相当径と円形度の2次元 。 グラフに着目すると,被告製品は,円相当径と円形度のデータを,あらかじめグラフのX軸 Y軸を有限の個数 25個 に分割して作った枡目 幅 ,()(を持った一定の区間)により表示するものである。 この3次元ヒストグラムは,少なくとも,2つのパラメータを縦軸と横軸にとりデータを「点」で表したものではない以上,構成要件1Gの「スキャッタグラム」とは明確に異なる。 よって,被告製品は,構成要件1Gを充足しない。 ( )争点2-1(訂正要件違反の有無)について2[被告の主張]本件訂正( 2次元スキャッタ頻度データに基づいて」との文言の追加) 「により,本件発明1の「2次元スキャッタグラム」が,データを粒子ごとに「点」で表示するものから 「領域」で表示するものとして明確になったと ,いうのであれば,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。したがって,本件訂正は,訂正要件を欠き,本件特許は無効である(特許法123条1項8号,126条1項1号,4項 。)また,本件発明1の特許請求の範囲は,本件訂正前は「2次元スキャッタグラム ,すなわち「2次元スキャッタ頻度データ」に基づかない「2次元 」スキャッタグラム」であったのに,本件訂正によって 「2次元スキャッタ,頻度データ」に基づく「2次元スキャッタグラム」になったものである。したがって,この意味においても,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるから,訂正要件を欠く。 なお,本件明細書の段落【0047】及び【0050】には 「2次元ス,キャッタ頻度データや頻度データの文言が散見されるが前記( ) 被 」 「」,[1告の主張]のとおり,本件明細書において,頻度データから本件発明1の2次元スキャッタグラムがどのように作成されるのかについては,具体的には何ら説明されていない。単に,明細書中に「2次元スキャッタ頻度データ」や「頻度データ」の文言が散見されることをもって,本件訂正前の「2次元スキャッタグラム」が 「2次元スキャッタ頻度データに基づかない2次元 ,スキャッタグラム」のほかに 「2次元スキャッタ頻度データに基づく2次 ,元スキャッタグラム」を含んでいたということはできない。 [原告の主張]前記( )[原告の主張]のとおり,本件明細書には,当初から,2次元ス1キャッタグラムは頻度データに基づいて作成すると記載されている。 原告は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することなく,請求項1だけを見ると,構成要件1Gの「2次元スキャッタグラム」とは「粒径と円形度の1個1個のデータを点で表したもの」も包含されていると解釈される可能性があるため,かかる解釈の生じる余地がないよう,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて 「2次元スキャッタグラム」は「2次 ,元スキャッタ頻度データに基づいて」作成されるものであると訂正したものである。 したがって,本件訂正が特許請求の範囲の減縮に該当することは明らかである。 ( )争点2-2(記載要件違反の有無)について 3[被告の主張]本件訂正によって追加された「2次元スキャッタ頻度データに基づいて」の語そのものが,極めて不明瞭な文言である上,前記( )[被告の主張]の1とおり,本件明細書では定義されておらず,具体的にどのようなデータのことをいうのかについて明確に説明されていない。また 「2次元スキャッタ,頻度データに基づいて」2次元スキャッタグラムを作成するとは,どのようなデータ処理を行って2次元スキャッタグラムを作成することをいうのかについても,本件明細書からは明らかでない。 したがって,本件特許は,特許請求の範囲の記載において,特許を受けようとする発明が明確でなく,無効である(特許法123条1項4号,36条6項2号 。)[原告の主張]前記( )[原告の主張]のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明によれ1ば 「2次元スキャッタ頻度データ」とは,粒径をdで表し,円形度をsで ,表したとき [X軸,Y軸]=[ d〜d+△d(s〜s+△s ]の領域 ,(),)における頻度データを意味するものであることが明白である。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は明確性要件に違反するものではない。 ( )争点2-3(本件発明の進歩性の有無)について4[被告の主張]本件特許は,次のとおり進歩性を欠くものであり,特許法29条2項により無効とされるべきである。 ア本件発明1は進歩性を欠くこと本件発明1は,以下のとおり,平成5年12月に刊行された「粉体および粉末冶金」40巻12号所収の論文である「高圧噴霧法により製造された粉末の粒子径と粒子形状の関係 (乙4。以下「乙4文献」という ) 」 。 に記載された発明に,昭和60年2月28日に公開された特開昭60-38653号公報(乙24。以下「乙24公報」という )に記載された発。 明又は周知技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア)乙4文献の記載及び同文献記載の発明と本件発明の一致点a乙4文献は,粉末の粒子径と粒子形状の関係について論じた論文で,(。「」。) あり画像解析装置以下乙4装置というGalai CIS-1 System及びその原理が,次のとおり説明されている。 (a)セルの中の粒子像を顕微鏡を通してCCDカメラで撮影し,これをフレームメモリに記憶する。画像の濃度分布,粒子濃度からしきい値を設定し,このしきい値に基づいて粒子像を背景(バックグラウンド)から区別し抽出する(1171頁左欄6行〜12行 。)(b)粒子の面積は,デジタル化された粒子イメージにおけるビットイメージ数から計算され,周囲長は背景(バックグラウンド)との境界に接しているビット数から求められる(1171頁左欄12行〜15行 。)また,乙4文献では 「(以下「SF」ということが ,」Shape Factorある )を 「=4πA/P (ただし,面積をAとし,周 。, Shape Factor2囲長をRとする」と定義し(1170頁右欄末行〜1171頁左 。)欄3行 ,粒子の分布を,粒子の大きさ(粒子径)及びSFとの関係 )で分析し,横軸を粒子径とし縦軸をSFとする粒子の分布図(図3)が示されている。 b乙4文献における「セル「CCDカメラ」及び「データ処理手 」,段」は,それぞれ,本件発明1における「シースフローセル (構成」要件1A「撮像手段 (構成要件1C)及び「画像解析手段 (構 ),」 」成要件1D)に相当する。また,乙4文献における「SF」は,本件発明1における「円形度(構成要件1F 」の2乗と一致する。 )cしたがって,乙4文献記載の発明と本件発明1とは 「粒子懸濁液,のセルと,粒子を撮像する撮像手段と,撮像された粒子像を解析する画像解析手段とを備え,画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置 」である点において,一致する。 。 (イ)乙4文献記載の発明と本件発明1の相違点乙4文献記載の発明と本件発明1とは,以下の点において相違する。 a相違点1本件発明1は 「シースフローセル (構成要件1A)及び「光を ,」照射する光照射手段 (構成要件1B)を持つのに対し,乙4文献に 」は 「セル」を持つとしか記載されておらず 「光照射手段」を有す , ,る点についても記載されていない点(以下「相違点1」という。。)b相違点2本件発明1の画像解析手段は 「粒径による粒度頻度データに基づ ,いてヒストグラムを作成するとともに粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段」(構成要件1G)を有するのに対し,乙4文献には 「図表作成手,段」についての記載がない点(以下「相違点2」という。。)c相違点3,「」(),「」() 本件発明1は表示手段構成要件1E記憶手段同1H「」(),, 及び粒子像呼出手段同1Iを有するのに対し乙4文献にはこれらについての記載がない点。また 「表示」に関して,本件発明 ,1は粒子像を表示手段に一括表示しているのに対し,乙4文献には,この点についての記載もない点(以下「相違点3」という。。)(ウ)相違点の容易想到性等a相違点1について粒子の形状を撮影する際にシースフローセルを用いることは,粒子分析の技術分野における当業者の慣用的手法である(乙24・図1A等 。また,乙4装置が光照射手段を備えていたことは,同装置を説 )明する刊行物である「」139巻11号(乙6。以Laboratory Practice下乙6文献というにストロボ光源が粒子を照射する1 「」。),「 。」(1頁右欄15行〜16行)と記載されていることから明らかである。 したがって,相違点1は,実質的な相違点ではない。 b相違点2について(a)乙4装置について説明する刊行物である乙「」(AEROSOL AGE5。以下「乙5文献」という )には,同装置が表示装置を有する 。 こと(28頁左欄,右欄下から8行)及び同装置を使って粒子を解析すること(29頁,30頁)が説明されている。また,乙5文献には,粒子データ,ヒストグラムデータ出力が,表示装置を使って示されている(図3 。)さらに,乙6文献では,乙4装置を使って,セメント粒子及びフライアッシュ(コンクリートの混和材として用いる )を解析して。 おり,その粒子像(図2)及びSFのヒストグラム(図3,図4)が示されること,モニターで粒子像が表示されていること(12頁左欄21行〜27行)が記載されている。 , , 以上のとおり 乙4文献と乙5文献及び乙6文献とを併せ読めば乙4装置が表示装置を備えていること,乙4装置で粒子像を表示すること,粒子を解析すること及びヒストグラムを作成し,表示することが示されているといえる。 (b)乙4文献には,前記のとおり,粒子径を横軸としSFを縦軸とするスキャッタグラムが示されている(図3 。このスキャッタグ)ラムは,乙4装置を使って粒子を読み取り(撮像し ,解析し,粒)子の粒子径と円形度についてデータを作成したものである。また,本件発明1の出願当時,粒径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成し,表示する装置()は,公知Julietの装置であった(乙15,22)。 したがって,本件発明1の出願当時の技術水準を考慮し,乙5文献の図3及び乙6文献の図が乙4装置に具備されている表示装置を使って表示されるものであること(乙6・12頁左欄21行〜22行)を勘案すれば,粒径と円形度の2つのパラメータのスキャッタグラムを作成し,表示装置で表示することは,容易に想到することができたといえる。 なお,仮に 「2次元スキャッタ頻度データ (構成要件1G) , 」の意味について,原告の主張するように「粒径をdで表し,円形度をsで表したとき [X軸,Y軸]=[ d〜d+△d(s〜s ,(),+△s ]の領域における頻度データを意味するもの」と解したと )しても,2つの頻度データで2変数ヒストグラム( 領域」で表示「)(,), するグラフ を作成する方法 乙19・13頁 乙20・69頁や,データの数が多い場合に,スキャッタグラムでは図示できないため,枡目に分割した相関表,2変数ヒストグラムで表示する方法(乙20・68頁8行〜9行)は,本件発明1の出願当時,当業者の技術常識であった。 (c)この点は,乙4文献記載の発明と,平成6年7月8日に公開された特開平6-186156号公報(乙8。以下「乙8公報」という )記載の発明とを組み合わせることによっても,容易に想到す 。 ることができた。すなわち,乙8公報には,粒子の特徴パラメータを使って2次元スキャッタグラム及びヒストグラムを作成することが記載されており(段落【0028,乙4文献も乙8公報も, 】)同じく粒子の分析を行うものであり,同じような装置構成を持つものであるから,乙8公報に記載された技術的思想を乙4文献記載の発明に組み合わせて,粒径と円形度の2つのパラメータのスキャッタグラムを作成し,表示装置に表示することは,容易に想到することができたものである。 なお,原告は,後記のとおり,粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて作成表示した2次元スキャッタグラムに,粒径のヒストグラムの表示及び粒子像の一括表示を併用することで,ヒストグラムや2次元スキャッタグラムのどの領域の被測定粒子が凝集しているか否かを知ることが可能となるなどの効果(本件明細書・段落【0051】〜【0056 )が生ずると主張する。しかしながら,これらの効果は,2 】次元スキャッタグラム表示機能や一括表示機能が当然に備える効果であったり,一括表示機能と2次元スキャッタグラム表示機能の個々の技術が当然に備える効果の単なる集合の域を出るものではなく,本件発明1に特有の顕著な作用効果ではない。 c相違点3について(a)「表示手段」について(), 乙5文献に掲載された乙4装置の概観の写真 28頁 によれば同装置は,2つの表示装置を備えており,中央の表示装置には粒子画像が示され,右の表示装置にはグラフが示されていることが理解できる。したがって,乙4文献と乙5文献とを併せ読めば,乙4装置は表示装置を有していることが分かる。 また,粒子画像の表示について,乙24公報には,粒子の静止画像を得てその粒子を中央処理装置46で画像処理した後,色彩モニタ52に表示することが記載されている(4頁右下欄12行〜5頁右下欄10行,図2,図3 。さらに,乙24公報には,粒子画像 )を,粒子の大きさ,色彩形状等の順序で一括表示する技術が開示されている(5頁右下欄11行〜6頁左上欄7行,図3 。なお,粒)子画像を一括表示するという技術が周知技術であることは,平成5年に刊行された「」16巻1号所収の「自動尿沈渣Sysmex Journal分析装置UAの評価」と題する論文(乙9)において,自動 -2000尿沈渣分析装置(UA)が表示画面において粒子画像を一括 -2000表示している写真(45頁・写真2〜5)が示されていることからも明らかである。 (b)「記憶手段」について記憶装置について,乙24公報には,画像を記憶している記憶手段が開示されている(図2 。)(c)「粒子像呼出手段」について画像呼出手段について,本件明細書では,記憶手段から画像を呼び出す程度に説明されているが(段落【0019,乙24公報】)においては記憶装置から画像を呼び出しているのであるから,同公報記載のものも同様に,画像呼出手段を有している。 (d)以上のとおり,相違点3は,乙4文献記載の発明に乙24公報記載の発明又は周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものである。 イ本件発明2が進歩性を欠くこと本件発明2は 「画像解析手段が,個々の粒子の円形度から円形度頻度 ,データおよび/又は円形度の平均値と標準偏差を算出して表示手段に表示する演算手段をさらに備えてなる」ことを規定している。 乙4装置が円形度ヒストグラムを算出し,表示することについては,上記アのとおりである。また,乙6文献には,円形度の平均値が記載されている(図3,4 。そして,この種の装置では統計的処理を行うものであ )るから,上記の平均値及び標準偏差を算出する程度のことは,当業者の設計的事項の範囲内のものである。 ウ本件発明4が進歩性を欠くこと本件発明4は 「シースフローセルが,粒子懸濁液を偏平な流れに変換 ,すると共に,撮像手段が粒子懸濁液流の偏平な面を撮像する」ことを規定する。 シースフローが流れを扁平な流れにすることは,乙8公報に記載されている(段落【0003。】)エ本件発明6が進歩性を欠くこと本件発明6は 「撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれ ,の撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにした」ことを規定する。 しかしながら,複数の撮像倍率を持つ装置によって粒子を測定するに当たって,粒径測定範囲のオーバーラップが必要不可欠であることは,当業者の常識である。粒子全体を測定するためには,低倍率で粒径を測定できる範囲と,高倍率で粒径を測定できる範囲とオーバーラップさせなければならないことは,技術的に当然のことを述べているにすぎず,仮に,高倍率の測定範囲と低倍率の測定範囲とが分離していて,測定範囲のオーバーラップがない範囲があるときは,粒子全体を測定することができなくなってしまう。 また昭和62年に刊行された10巻1号所収の多 , 「」「Sysmex Journal項目自動尿分析装置の概要」と題する論文(乙10。以下 YELLOW IRIS「乙10文献」という )には 「顕微鏡的検査は,まず弱拡大(対物レ 。,ンズ10倍;以下LPF)の分析として,装置による一次分類実施後,操作者によるマニュアル編集を行う。検体によっては強拡大(対物レンズ40倍;以下HPF)の分析に移行し,… (12頁左欄10行〜16 」行)と記載されており,同文献に記載されている装置が少なくとも10倍及び40倍の倍率を有していることが明らかである。また,一般に使用されているディスプレイ(表示画像面)では,対物レンズが10倍の時の粒径測定範囲の下限が対物レンズが40倍の時の粒径測定範囲の上限を上回, , 。 るので これらの対物レンズの粒径測定範囲は オーバーラップしている[原告の主張]ア本件発明1は進歩性を有すること(ア)被告の主張する本件発明1と乙4文献記載の発明との一致点及び相違点については認める。 (イ)相違点1が実質的な相違点でないことは認める。 (ウ)相違点2についての主張は争う。 乙4文献には 「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる ,2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成する」装置は記載されていない。乙4文献の図3に記載されている散布図は,乙4文献の筆者が,乙4装置で得られた1個1個の粒径及びSFのデータを元に,人手によってプロットしたものであり,乙4装置が2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成し,表示したものではない。乙4文献に記載された2次元頻度データに基づかない粒径と円形度との手書きの相関図を,2次元頻度データに基づく粒径と円形度との相関図に置換しようという動機付けもない。 また,乙8公報には,単に,2次元スキャッタグラムを作成し得ると記載されているだけであり,粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラ。() ムを作成表示する装置は記載されていない 他の乙号証 乙15〜20にも,このような2次元スキャッタ頻度データに基づき2次元スキャッタグラムを作成表示する装置は一切記載されていない。なお,乙第18ないし20号証には,2変量のデータに基づいて相関図を作成することが記載されているものの,これらの記載は,いずれも,相関図を手書きで作成するものであり,かかる相関図を作成して表示手段に表示する図表作成手段を備えた装置を開示するものではない。まして,装置で撮像され算出された粒径と円形度の2次元頻度データに基づいて,当該装置が粒径と円形度に関する2次元スキャッタグラムを作成することを開示するものではない。乙第18ないし20号証は,一般的な統計学の書物であって,粒径と円形度との相関図を両者の頻度データに基づいて作成することが記載されていないし,粒径と円形度との頻度データに基づく相関図を作成すれば,どのような技術的意義ないし作用効果が奏せられるのかについて,記載も示唆もされていない。 本件発明1において 「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータ ,による2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」するのは,単にデータ数が多くなったからではない。本件発明1では,粒径と円形度というパラメータを採用し,その頻度データに基づいて作成表示した2次元スキャッタグラムに,粒径のヒストグラムの表示及び粒子像の一括表示を併用することで,ヒストグラム及び2次元スキャッタグラムと一括表示された実際の粒子像を対比して評価,確認することができ,またその結果を様々な解析に用いることができる。これにより,例えば,ヒストグラムや2次元スキャッタグラムのどの領域の被測定粒子が凝集しているかを知ること,凝集した粒子ではなく真の粒子の粒径及び円形度を知ることなどが可能となる(本件明細書・段落【】,【】 【】,【】 【】)。 00200051 〜 00560058 〜 0060しかしながら,乙号各証中には,粒径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成することについて,何らの記載も示唆もない。 (エ)相違点3について,乙4装置に関して説明している乙5文献に表示手段が示されていることは認めるが,乙5文献に示されている表示手段と,構成要件1Eの「表示手段」とは,技術的意義が異なる。本件発明1の「表示手段」は,記憶手段に格納された各粒子像を一括表示するための表示手段であるのに対し,乙5文献に示されている表示手段は,記憶手段に格納された各粒子像を一括表示するためのものではない。乙5文献記載の装置に表示されている粒子画像は,測定領域を移動する粒子がリアルタイムで表示されているものであり,記憶した粒子画像が呼び出されて表示されているものではない。 また,乙第7,第9号証に,撮像された各粒子像を格納する記憶手段が記載されていること,乙9号証に,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段が記載されていることは認めるが,本件発明1とは,撮像された各粒子像の意義が異なっている。本件発明1では,記憶手段に格納され一括表示される粒子像は,おのおの,粒径と円形度が算出された粒子の像である(なお,原告は,粒径及び円形度の算出と記憶手段への格納の順序の後先を主張しているのではなく,記憶手段に格納されている粒子像と,粒径及び円形度が測定された粒子像とは別物ではなく,記憶手段に格納された粒子像については,すべて粒径及び円形度が算出されていると主張するものである。他方,。)乙7号証記載の記憶手段に格納される撮像された粒子像及び乙9号証記載の記憶手段に格納された一括表示される粒子像は,円形度が算出された粒子の像ではない。乙23号証( 蛋白質核酸酵素」臨時増刊号39 「巻11号所収の「汎用生物画像解析システム」と題する論文)及び乙24公報にも,粒径と円形度が算出された粒子像を一括表示することが記載されておらず,その他の乙号各証にも,円形度が算出された粒子像を記憶手段に格納することは記載されていない。 イ本件発明2は進歩性を有すること円形度頻度データは,乙4文献及び乙6文献に記載されており,乙4装置は,円形度頻度データを作成,表示するものである。 しかしながら,本件発明2は,本件発明1を引用した発明であり,本件発明1を技術的に限定したものであるから,本件発明1が進歩性を具備している限り,同様に進歩性を具備する。 ウ本件発明4は進歩性を有することシースフローセル中を流れる粒子懸濁液流の扁平な面を撮像することは,乙8公報に記載されている。 しかしながら,本件発明4は,本件発明1を引用した発明であり,本件発明1を技術的に限定したものであるから,本件発明1が進歩性を具備している限り,同様に進歩性を具備する。 エ本件発明6は進歩性を有すること本件発明6は,本件発明1を引用した発明であり,本件発明1を技術的に限定したものであるから,本件発明1が進歩性を具備している限り,同様に進歩性を具備する。 また,乙10文献に記載されている弱拡大と強拡大による顕微鏡的検査は,再検査のためのものであり,本件発明6のように,粒子画像分析のために撮像倍率を相違させること,及び各撮像倍率での粒径測定範囲をオーバーラップさせることという構成要件を採用したものとは,技術的意義が異なる。原告は,粒子測定においてオーバーラップを行うことは必要不可欠であって技術常識であると主張するが,そのような事実はない。 ( )争点3(原告の損害)について5[原告の主張]ア原告は 本件特許の実施品であるフロー式粒子画像分析装置としてF , ,「PIA-3000 (以下「原告製品3000」という )及び「FPI 」 。 A-3000S (以下「原告製品3000S」といい,原告製品300 」0と併せて「原告製品」ということがある )を製造,販売及び輸出して 。 いる。 , ,, イ被告は 平成17年ころから被告製品を製造し 平成22年3月までに被告製品17台を販売した。 ウ原告は,被告の本件特許権侵害行為により,次のとおり,少なくとも,1億4752万7616円の損害を被った。 (ア)特許法102条1項による損害の推定(主位的主張)a「侵害の行為がなければ販売することができた物」被告製品は,原告製品と市場で競合し,被告製品が販売されなければ原告製品の需要が喚起される関係にある。なお,被告製品と市場で競合するのは原告製品だけである。 したがって,原告製品は,被告の「侵害の行為がなければ販売することができた物 (特許法102条1項)に該当する。 」b原告製品の販売利益本件では,被告製品と市場で競合する原告製品が2種類あるため,被告の侵害行為がなければ原告が販売することができた物の単位数量当たりの「利益」の計算については,原告製品の1台当たりの限界利益を計算し,それらの加重平均値を求める必要がある。 そうすると,平成18年度から平成21年度までの間に販売された原告製品の1台当たりの限界利益(原告製品の売上高から,材料費,消耗材料費及び外注加工費を控除した金額 )は,別紙「FPIA- 。 3000(S)限界利益算定表 (以下「別紙算定表」という )記 」 。 載のとおり,原告製品3000につき●(省略)●円であり,原告製品3000Sにつき●(省略)●円である。なお,上記「材料費」とは,原告製品の材料に関する経費であり 「消耗材料費」とは,出荷 ,前検査に要する試薬等の消耗される材料に関する経費である。また,「外注加工費」とは,原告製品の組立てを外注委託する場合の加工賃等である。 また,平成18年度から平成21年度までの間に販売された原告製品は,原告製品3000が●(省略)●台であり,原告製品3000Sが●(省略)●台である。 したがって,別紙算定表のとおり,原告製品の1台当たり販売利益の加重平均は●(省略)●円となり,同金額から原告製品1台当たりの物流関係変動経費(旅費交通費,運送費,配達費,燃料費及び宿泊費)である●(省略)●円を控除した●(省略)●円が,原告製品1台当たりの限界利益となる。なお,原告は,同社の加古川工場(兵庫県加古川市)で原告製品を製造しており,製造された完成品は,原告製品も含め定期便により小野物流センター(同県小野市)に一括搬送される。この加古川工場と小野物流センター間の物流関係費は,定期便であるから固定費である。したがって,特許法102条1項所定のいわゆる「権利者の限界利益」の算定のために売上から控除される物流関係変動経費は,小野物流センターから顧客までの間で発生する分となり,原告製品1台当たりの平均額は●(省略)●円を超えない。 c小括よって,特許法102条1項により推定される原告の損害の額は,別紙算定表のとおり,1億3452万7616円となる。 (イ)特許法102条2項による損害の推定(予備的主張)上記イのとおり販売された被告製品の売上高は,総額2億2277万円である。また,上記販売に係る製造原価は総額1億2176万8939円であり,販売に係る旅費,交通費は198万7676円である。 したがって,被告製品の販売による限界利益は,9901万3385円であり,これが特許法102条2項により推定される原告の損害の額となる。 (ウ)弁護士費用,弁理士費用,,, , 本件訴訟は 専門性が高く 弁護士 弁理士が代理するのでなければ。,,, 原告による訴訟追行は不可能である 加えて 本件では 訂正審判請求専門委員同席の技術説明会,並行して進行する仮処分手続等も含め,代理人らの事務負担は極めて重い。 その他,認容される逸失利益の額等も考慮すれば,被告の行為と相当因果関係の認められる弁護士,弁理士費用相当額の損害の回復のため,原告に少なくとも1300万円の損害賠償請求が認められるべきである。 (エ)合計以上のとおり,原告の損害の額は,上記(ア)と(ウ)の合計額である1億4752万7616円を下らない。 エ遅延損害金の起算日(ア)内金1億円の遅延損害金の起算日原告が平成20年12月15日に本件訴訟を提起するまでに販売された被告製品の台数は,12台である。別紙算定表記載の原告製品1台当()() , たり限界利益 加重平均値 に12台を乗じた額 原告の逸失利益 に, , 同金額の1割に相当する弁護士 弁理士費用相当損害金を加算した額は1億円を超える。 したがって,上記1億円の損害賠償について,被告は訴状送達の日の翌日から履行遅滞に陥っているから,内金1億円の遅延損害金の起算日は,訴状送達の日の翌日となる。 (イ)内金4697万5566円の遅延損害金の起算日原告は,原告第11準備書面により損害賠償請求額を1億4697万5566円に拡張した。同時点までに被告が販売した被告製品は,17。 () 台である 別紙算定表記載の原告製品1台当たり限界利益 加重平均値に17台を乗じた額(原告の逸失利益)に,同金額の1割に相当する弁護士,弁理士費用相当損害金を加算した額は,上記ウ(エ)のとおり,拡張後の請求額である1億4697万5566円を超える。 したがって,上記金額と上記(ア)の1億円の差額である4697万5566円については,遅延損害金の起算日は,原告第11準備書面送達の日の翌日となる。 (ウ)内金55万2050円の遅延損害金の起算日原告は,原告第14準備書面において損害賠償請求額を1億4752万7616円に拡張した。拡張部分に相当する55万2050円については,遅延損害金の起算日は,同準備書面送達の日の翌日となる。 オよって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,合計1億4752万7616円及び内金1億円に対する平成21年1月22日(訴状送達の日の翌日)から,内金4697万5566円に対する平成22年5月27日(原告第11準備書面送達の日の翌日)から,内金55万2050円に対する同年10月22日(原告第14準備書面送達の日の翌日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 [被告の主張]ア被告が被告製品を製造し,平成22年3月までに被告製品17台を販売したこと,上記販売に係る被告製品の売上高が2億2277万円であり,製造原価が1億2176万8939円であること,旅費,交通費が198万7676円であることについては,認める。損害賠償請求権の有無及び金額については,否認ないし争う。 イ特許法102条1項による損害の推定について(ア)原告製品は,被告の「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たらないことa製品仕様の相違原告製品と被告製品とでは,その具体的仕様において,?原告製品の測定範囲は0.8〜300μmであるのに対し,被告製品の測定範囲は0.5〜1000μmである点,?原告製品の測定粒子の比重は4以下とされるのに対し,被告製品の場合は制限がない点,?原告製品は対物レンズが各撮像ユニットに固定されており,対物レンズを交換するためにはユニット自体の分解,交換,調整が必要となるのに対し,被告製品は対物レンズを任意に選択することができ,測定領域を容易に変更することができる点,?原告製品は測定セルが1種類のみで固定されているのに対し,被告製品は粗大粒子用セルと標準用セルを選択することができ,その交換を随時行うことができる点,において相違する。 b粒子測定業界においては,これらの相違点がユーザーによる装置の購入決定に大きく影響を及ぼしている。ユーザーが実際に測定しようとする粒子を測定できない,又は所望の測定データを得られない装置は,購入される余地がないことは明らかである。 本件においては,販売された被告製品17台のうち少なくとも13台については,測定を希望する粒子が300μm以上のものであった又は比重が4を超えるものであったものであり,原告製品を選択する余地がないものであった。 c被告は,被告製品を販売するために,?販促活動(被告製品のカタログ,営業資料の作成,ホームページデータの作成,顧客リストの作成,ダイレクトメールの送付等 ,?営業活動(電話営業,訪問営業 )による装置の紹介,展示会,ホームページによる装置の紹介,問合せ対応,カタログ送付,訪問説明等 ,?受注活動(被告製品のサンプ )ルテスト,比較データ作成,装置の持ち込みテスト実施,見積り作成),( ,,, 等?受注後の活動被告製品の出荷前装置動作確認納品検収取扱説明,アフターサービス,軽微なトラブル対応等 ,などを行っ)た。また,被告は,粉体工学機器の専門メーカーであり,粒度分布測定機の販売実績では原告を凌駕する実績を持っている。被告は,昭和63年以降 「」というスキャッタグラム表示機能を持った形状 ,Juliet分布測定機を日本で初めて大々的に販売したものであり,被告製品についても,販売の際に引き合いのあった昔からの被告の顧客がJuliet購入を希望してきたという経緯がある。 このように,被告の信用に基づいて創出された需要が一定程度存在するものであり,被告製品を購入した客のすべてが,被告の行為がなければ原告製品を購入したなどと,安易に断定することはできない。 また,この種の機器では,2次元スキャッタ頻度データに基づくスキャッタグラムなのか,通常のスキャッタグラムなのかというデータの表示方法の部分は,製品選択の重要な要因となるものではなく,製品選択の一要素となるにすぎない。 (イ)原告製品の販売利益についてa原告製品や被告製品のような製品は,材料を購入すればその後は自動的に最終製品になるものではなく,製造された装置が実際に正常に動作することが確認され,顧客が求めるデータを測定できるものとなっていなければ意味がない。 したがって,原告の「利益」を算定するに当たっては,受け入れ検査,各種加工,梱包,償却費等の費用も,販売価格から控除すべきである。 b原告製品や被告製品のような製品は,大量生産されている安価な日用品などとは異なり,1台ごとに,基礎的なテスト,組立て,改良,ソフトウェアの製作,調整,検査等の種々の製造工程を経なければ最終製品とはならない。 したがって,1台の製品を追加的に製造するに当たっては,上記のような製造工程に要したと評価される人件費その他があるはずである(そうでなければ,原告製品が被告製品の原材料費の2分の1以下で製造されるにもかかわらず,最終製品の価格は被告製品と同価格帯であることの合理的な説明がつかない )。 , , 粒子画像分析装置は 粒子を画像として捉える画像処理装置であり?精密かつ複雑な部品構成であるが故に精度の高い組立技術,?液体の分散,輸送,回収といった,取扱いが困難な測定サンプル(媒液)のハンドリング技術,?照明,CCDカメラによる撮像,光軸調整といった専門的知識等熟練を要する光学技術,?AD変換処理,通信,表示に至る専門的知識を要する電気技術が要求される。しかも,分析装置である以上,測定対象の試料を再現性よく分散し,搬送し,画像を取得し,データとして表現しなければならず,そのためには,非熟練者ではなし得ない高度の組立ノウハウ,装置知識,測定原理を十分に理解していることが必須である。原告の社内管理がいかに優れ,コ, , ストダウンに成功していたとしても なお相当の労務を要することは明らかである。 よって,少なくとも,金型等の減価償却費(金型は,性質上,特定の製品に対応し,当該製品を売り上げるに当たり不可避的に生じる費用といえる )や,製造加工費としての労務費等は,売上高から控除 。 する必要がある。 c旅費,交通費について,原告による立証は何らされていない。また,被告製品と同程度の費用を支出したとするのであれば,被告が被告製品の製造に当たって従業員が会議等の移動の際に発生した費用(以下「旅費,交通費(共通 」という(平成22年3月までで合計337万2 )。)726円)についても,売上高から控除すべきである。 d原告製品の売上げを立てるためには,原告製品のカタログ,ホームページデータの作成等に要する費用,原告製品の梱包費,運送,配達,燃料費等,相当額の販売管理費が投入されているはずである。 したがって,これらの販売管理費についても,売上高から控除すべきである。 e粒子画像分析装置の納品に際しては,裾付け,調整,測定,検収の作業等が必ず発生し,これらの作業は専門のサービスマンによって行われ。,( ) る したがって これらの費用 原告の従業員が行う場合はその労務費を,売上高から控除すべきである。 ウ特許法102条2項による損害の推定について以下のとおり,被告製品の売上高から被告製品の製造,販売に必要であった費用を除くと赤字となるから,被告に被告製品の販売による「利益」はない。 (ア)売上高(消費税を除く )2億2277万円 。 (イ)原材料費 1億2176万8939円(ウ)製造労務費 4832万5372円被告製品が販売できる状態(最終製品)となるまでには,部品の仕入れ(上記(イ))の他に,装置設計,組立て,テスト,調整・改良等の多数の過程を経ることが必要となる。この過程で生じる費用は,製造労務費として,製造原価に該当する。被告では,被告荒川工場に所属する少なくとも5名の従業員が上記過程に従事したことから,製造労務費は,その給与を基礎に算定した。 (エ)販売管理費 5679万1323円被告製品の販売にのみ寄与した費用に相当する販売管理費としては,被告製品の売上げを計上した部署の 部署ごとの 被告製品売上高× 全 ,「(販管費-減価償却費)/全売上高」については,売上高から控除するのが相当である。 (オ)販売促進用機器費1372万8516円被告は,被告製品の販売促進のために,平成20年8月以降,デモンストレーション用に被告製品を1台ずつ,被告名古屋支店及び大阪支店に設置している。この2台のデモンストレーションによる営業活動は,被告製品の販売に直接貢献しており,平成20年8月以降,被告製品は5台販売された。 したがって,上記デモンストレーション用の被告製品の減価償却費及び同製品の製造に係る労務費については,売上高から控除するのが相当である。 (カ)旅費,交通費(共通)337万2726円旅費,交通費(個別)198万7676円被告製品の製造に当たって従業員が会議等の移動の際に発生した費用(以下「旅費,交通費(共通 」という )は,平成22年3月までで )。 合計337万2726円である。 また,この種の測定用機器は,ただ販売すればよいというものではなく,購入者に測定のノウハウを伝える作業や調整作業等をしなければ,実際には使い物にならない。このような作業のための移動で発生した費用(以下「旅費,交通費(個別 」という )は,合計198万767 )。 6円である。 (キ)小括上記(ア)から,上記(イ)ないし(カ)の費用を差し引くと,2320万4552円の赤字となる したがって 被告製品の販売による被告の 利 。, 「益 (特許法102条2項)はない。 」第3当裁判所の判断1争点1(被告製品は構成要件1Gを充足するか)について「 」 ( )被告製品は 粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成1して「表示手段に表示する図表作成手段」を有するか否か前記第2の1( )のとおり,被告製品は 「円相当径のヒストグラムを作5 ,成」し 「表示手段に表示する図表作成手段」を備える(構成1g)もので ,ある。証拠(甲1,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,構成要件1Gの「粒径」とは,円相当径のことであり 「ヒストグラム」とは頻度データを図面 ,にしたものであると認められる。 ,「 」 したがって 被告製品の構成1gの 円相当径のヒストグラムを作成するとは 「粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成する」こ ,とであるということができるから,被告製品は 「粒径による粒度頻度デー ,」「 」 タに基づいてヒストグラムを作成 して 表示手段に表示する図表作成手段を有すると認められる。 ( )被告製品は「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元2スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段に表示する図表作成手段」を有するか否かア被告製品の構成() ,,() 証拠 甲5 及び弁論の全趣旨によれば 被告製品は 円相当径 粒径と円形度の頻度データを,円相当径をX軸とし円形度をY軸として,あらかじめX軸,Y軸を有限の個数(25個)に分割して作った枡目(幅を持った一定の区間)により表示する機能を有していると認められる。 本件では,上記機能が,本件発明の構成要件1Gの「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段に表示する図表作成手段」に当たるか否かが問題となる。 イ構成要件1Gの「2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成(する 」の解釈)(ア)この点について,原告は 「2次元スキャッタ頻度データ」とは, ,「粒径をdで表し,円形度をsで表せば [X軸,Y軸]=[ d〜d ,(+Δd(s〜s+Δs ]の領域における頻度データ」を意味するも ),)のであり 「スキャッタグラム」とは 「2パラメータヒストグラム , , , 」すなわち 「2つのパラメータを用いた頻度分布図」を意味する,と主 ,張する。 これに対し,被告は 「スキャッタグラム」とは,測定された2つの ,パラメータをX軸,Y軸にとり,2次元座標軸上の1つの「点」として表示する方法を意味するものであり,また,本件明細書には 「2次元,スキャッタ頻度データ」の意味について,原告の主張するように明記されてはいないと主張する。 (イ)そこで検討するに,証拠(甲14,乙1,2)及び弁論の全趣旨によれば 「スキャッタグラム」とは,技術用語であり 「互いに関連す , ,る二つの変量の関係を図にプロットしたもの (乙1「2次元観測値 」),を平面上に表示したもの。散布図は2つの変数の間にどのような関連性があるかをみるのに重要な助けになる」もの(乙2「2パラメータ),ヒストグラム(測定された2つの指標(パラメーター)をX,Y軸にと, )」(), り 2次元座標軸上の1つの点として表示する方法 のこと甲14などと説明され,これらの文献には,スキャッタグラムの例として,2つのパラメータを縦軸と横軸にとり,データを点で表した図(乙1・図9.1.1,乙2・図43)が挙げられていることが認められる。 上記認定の各文献の記載によれば 「スキャッタグラム」とは,広義 ,,「 」 では互いに関連する二つの変量の関係を平面上の図に表示したものを意味し,狭義では 「測定された2つの指標をX,Y軸にとり,2次 ,元座標軸上の1つの点として表示する」ものを意味するものと認められる。本件発明における「スキャッタグラム」がどのような意味を有するものであるかについては,特許請求の範囲の記載からは一義的に明確とはいえない。 また 「2次元スキャッタ頻度データ」という用語が一般的なもので ,ないことについては,当事者間に争いがない。 (ウ)本件明細書の発明の詳細な説明中には,次の記載が存在する。 「 産業上の利用分野】この発明は液中の粒子を撮像し,その粒子像を 【記憶,表示するとともに,粒子像を画像解析することによって,粒子の大きさや形状に関する情報を求める粒子画像分析装置に関する(2。」頁3欄28行〜32行,段落【0001 )】「 従来の技術】ファインセラミックス粒子,顔料,化粧品用パウダー 【等の粉体の品質を管理する上で,粒子の粒径を測定,管理することは非常に重要である。その測定装置として,古くから液相沈降法,電気的検知帯法(クールター法)による測定装置があり,最近ではレーザ回析散乱法による測定装置が広く使用されている(2頁3欄33行〜39 。」行,段落【0002 )】「 発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記のいづれの方式 【による測定装置においても,その測定精度(正確度)は,いまだに満足できるものではない。特に,対象とする粒子が偏平であったり細長い形をしている場合には,測定方法の違いによって,求められる粒径は大きく異なることがある。また,一般的に微小な粒子は測定中に凝集しやすく,その場合にも正確な粒度分布を求めることができない。また,粒子の球形度(円形度)や凝集度合い等に関する情報を,上記従来の粒度分布測定装置で得ることは困難である(2頁3欄40行〜50行,段 。」落【0003 )】「 課題を解決するための手段】この発明は,粒子懸濁液の流れをシー 【ス液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと,変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と,照射された粒子を撮像する撮像手段と,撮像された粒子像を解析する画像解析手段と,表示手段とを備え,画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と,粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と,撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置。」( ,【】) を提供するものである3頁5欄15行〜31行 段落 0011「この発明の装置の分析対象は,ファインセラミックス,顔料,化粧品用パウダーのような無機物の粉体および食品添加物のような有機物の粉体を含むものであり,予め染料や標識試薬によって染色処理された粒子であってもよい(3頁5欄32行〜36行,段落【0012 ) 。」 】「 作用】シースフローセルは,粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲 【み,細いあるいは偏平な流れに変換し,光照射手段は,変換された懸濁液流に対して光を照射し,撮像手段は,光照射された粒子を撮像する。 画像解析手段は,撮像された粒子像を解析して解析結果を粒子像と共に表示手段に表示する(3頁6欄11行〜17行,段落【0017 ) 。」 】「つまり,画像解析手段においては,算出手段が,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを算出し,そのデータから粒径と円形度を算出し,図表作成手段が,粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に,粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成してそれらを表示手段に表示する(3頁6欄18。」行〜24行,段落【0018 )】「一方,記憶手段は,撮像された各粒子像を格納し,粒子像呼出手段は,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する。つまり,この粒子分析装置では,撮像された各粒子像から粒子の大きさや周囲長を求め,また,実際の粒子の形態や凝集状態を一括表示される粒子像で確認することができる(3頁6欄25行〜30行,段落【0019 ) 。」 】「具体的には,粒子懸濁液を透明なフローセルに導き,その懸濁液を細い又は偏平な流れにする。その流れに対して光照射することによって,流れの中の粒子をビデオカメラで撮像する。撮像された各粒子像の投影面積と周囲長を算出し,次に粒径と円形度を算出する。さらに,粒径による粒度ヒストグラムおよび粒径と円形度の2次元スキャッタグラムを作成する。この2次元スキャッタグラムと実際の粒子像を評価,確認することによって,粒子の円形度や凝集度合いに関する情報を得ることができる(3頁6欄31行〜40行,段落【0020 ) 。」 】「撮像エリアの面積は,ビデオカメラ10の受光面に対する結像倍率とそのサイズによって決まる。対物レンズ9の倍率を大きくすれば撮像エリアが小さくなるが,小さな粒子まで大きく撮像できる。対物レンズ9の倍率を小さくすれば撮像エリアが大きくなり,大きな粒子を撮像するのに適している。この装置では,対物レンズ9の倍率を選択あるいは測定途中に切り換えできるようにしており(図示していない ,粒径の測定)レンジを広くしている(4頁7欄47行〜同頁8欄6行,段落【0 。」027 )】「高性能のパイプライン処理可能な画像処理装置を使用すれば,以上の画像処理を,1/30秒ごとに撮像される画面に対してリアルタイムに処理することができる。この装置では,ある倍率で撮像される複数の画面に対して上記画像処理を繰り返し行い,次に異なる撮像倍率に切り換えて撮像し,同様の画像処理を行う。また,撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い,切り出した粒子像を画像処理装置11の画像メモリに格納する(ステップS7(4頁8欄34行〜42行,段落【0 )。」032 )】「撮像が終了すると(ステップS8 ,各粒子像に対して求められた総画 )素数,総エッジ数,斜めエッジ数から,まず下記の式によって各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める(4頁8欄43行〜46行,段落 。」【0033 )】「次に,上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める(ステ)。()(「」。) ップS9中略円形当径判決注・ 円相当径の誤記と認めるとは,粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円を想定し,その円の直径のことであり,式( )で表される。円形度とは,例えば式( )で定義される3 4値であり,粒子像が円形の時に円形度は1になり,粒子像が細長くなればなるほど円形度は小さい値になる(5頁9欄2行〜7行,段落【0 。」035 )】「円相当径=(粒子投影像面積値/π)×2……( ) 円形度=(粒子31/2像と同じ投影面積値を持つ円の周囲長 /粒子投影像の周囲長 ……( ) )) 4(5頁9欄7行〜10行,段落【0036 )】「各粒子像の円相当径が求められれば,次にその値をもとにして粒度頻度データを作成する(ステップS10 。工業用の粉体は多種多様で粒径 )。,() も非常に広い範囲に渡っている 従って 一般的に粒径はLOG 対数, 。」 変換し LOG変換した値を等分割した上で粒度頻度データを求める(5頁9欄11行〜16行,段落【0037 )】「ところで,粒子撮像画面(フレーム)において,画面の端にかかる粒子像からは正しくその粒子の円相当径や円形度を求めることはできない。 従って,画面の端にかかって写っている粒子像は無視する必要がある。 図3に示すように,大きな粒子像ほど画面の端にかかる確率が高いことは明らかであり,画像処理法で粒度分布を正しく求めるにはこのことを考慮しなければならない。そして,粒子像の大きさに応じてその頻度値を補正する(5頁9欄17行〜24行,段落【0038 ) 。」 】「ビデオカメラ10の撮像エリアに対して粒子像が十分小さい場合には,画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアは,ほぼ撮像エリアと同じである。粒子像が大きい場合ほど,画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアは,撮像エリアに対して大きく狭まる(5頁10。」欄12行〜17行,段落【0039 )】「すなわち,大きな粒子ほど実質の試料分析量が減ることになり,大きな粒子ほど相対的に頻度が小さくなる。試料分析量は,画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアの面積に比例する。従って,円相当径がd〜(d+Δd)の粒子頻度データは,式( )で補正すればよい。つま5り,頻度補正係数は, (ビデオカメラの撮像エリアの面積)/{ 撮(像エリアX方向サイズ )×(撮像エリアY方向サイズ}……( )と-d -d5 )なる。ビデオカメラの撮像エリアと画像処理対象エリアが異なる場合には,上記撮像エリアを画像処理対象エリアに置き換えて算出する(5。」頁10欄18行〜同頁9欄29行,段落【0040 )】「粒度頻度データは,まずそれぞれの撮像倍率で撮像された粒子像に対して独立に求める。それぞれの撮像倍率での粒径測定範囲は異なり,例えば図6に示すように,高倍率撮像での粒径測定範囲を1〜30μm,低。, 倍率撮像での粒径測定範囲を15〜300μmとしている この例では15〜30μmの範囲をオーバーラップさせている(5頁9欄30。」行〜36行,段落【0041 )】「図6の例は,粒径が15〜30μmの範囲を越えて大きくばらついている粒子の例であり,高倍率撮像と低倍率撮像でのそれぞれの粒度頻度データをつなぎ合わせる必要がある。そのためには,まずそれぞれの撮像倍率での試料分析量の比に応じて,次式のような頻度補正を行う必要がある。低撮像倍率では撮像エリアが広いので,一般的に試料分析量を多くすることができる。 (高倍率撮像での頻度値)×(低倍率撮像での試料分析量)/(高倍率撮像での試料分析量)なお,試料分析量は (撮像面積)×(粒子懸濁液流の厚み)×(撮 ,像フレーム数)で求めることができる(5頁9欄37行〜50行, 。」段落【0042 )】「上記のような試料分析量の違いによる頻度補正を行っても,必ずしもそれぞれの頻度データによる頻度分布曲線が滑らかにつながらず,つなぎめで段差が生じることがある。その最も大きな原因は,粒子懸濁液の粒子濃度が薄い場合に,撮像された粒子数が少なくて,図6の破線で示すように頻度分布曲線が大きくがたつく場合である(5頁10欄27。」行〜33行,段落【0043 )】「他の原因として,対物レンズあるいは投影レンズの倍率が仕様通りの値になっていないために,高倍率撮像と低倍率撮像での真の試料分析量が予測とは異なり,上記試料分析量の違いによる頻度補正が正確でなくなる場合である。ただし,この撮像倍率が不正確であることによる段差の原因は,あらかじめ測定装置1台ごとに撮像倍率を校正することによって解決することができる。 この装置では,異なる撮像倍率での粒径測定範囲を一部オーバーラップさせ,そのオーバーラップ測定範囲において,それぞれの撮像倍率での頻度値を加重平均するようにしている 」。 (5頁10欄34行〜44行,段落【0044 )】「オーバーラップ測定範囲の上限に近いほど低倍率撮像での頻度値に大きな重みを付け,下限に近いほど高倍率撮像での頻度値に大きな重みを付けて加重平均する。このような加重平均法による頻度補正をすることによって,撮像粒子数が少ない場合でも,異なる撮像倍率での頻度分布データを滑らかにつなぎ合わせることができる。例えば,高倍率撮像と低倍率撮像でのオーバーラップ範囲を15〜30μmとした場合,そのオ(), ーバーラップ範囲内の粒径d〜d+Δd μm の粒子頻度値f(d)は次式で算出する(5頁10欄45行〜6頁11欄4行,段落【00 。」45 )】「f(d)=高倍率撮像頻度値(d)×(1-(d-)/(-)+153015 )低倍率撮像頻度値(d)×(1-(-d)/(-)303015 )以上のようにして求められた粒度頻度データを用いて,さらに累積粒度データを求める。例えば,個数基準の累積粒度データ(%)は,次式で算出する。 粒度dにおける累積粒度(d)=(粒径d以下の粒子数)×100/(全粒子数(6頁11欄5行〜12行,段落【0046 ) )」 】「次に,円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データを求める(ステップS11 。この場合にも,まず高倍率撮像 )と低倍率撮像のそれぞれに対して2次元頻度データを求める。次に,粒度頻度データの補正処理と同様に,粒子像の大きさの違いによる頻度補正,異なる撮像倍率での試料分析量の違いによる頻度補正を行う。さら, , に 異なる撮像倍率でのオーバーラップ測定範囲での2次元頻度補正を前記粒度頻度データのつなぎ合わせの時と同様に行う(6頁11欄。」13行〜21行,段落【0047 )】「上記のようにして求められた粒度頻度データ,累積粒度データ,および円相当径と円形度の2次元頻度データを用いて,さらに平均粒径,粒径の標準偏差,モード径,10%径,50%径,90%径,平均円形度,円形度標準偏差等を算出する(ステップS12(6頁11欄22行 )。」〜27行,段落【0048 )】「以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から,図7,図8に示すような粒度ヒストグラム,円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム,および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する(ステップS13 。図7では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を頻度% )と累積%の2つの意味に割当て,累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を円形度としており,各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている(6頁11欄34行〜43 。」行,段落【0050 )】「この装置では,上記のように撮像した粒子像から円相当径や円形度を求めるだけでなく,撮像した粒子像を記憶しておき,測定後に大きさ別にクラス分けして図4に示すように,一括表示する機能も有している。もっとも,画像を記憶する画像メモリの容量に制限があるので,撮像された全ての粒子像を記憶,表示するわけではない。撮像された粒子像を一括表示できる機能を有しているので,粒子の形態や凝集状態を直接使用者が確認することができる(6頁11欄44行〜12欄2行,段落 。」【0051 )】「粒子どうし凝集することが重要な意味を持つような場合には,図4に示,(),, す各枠内の粒子像について 一次 単独 粒子像か 2個凝集粒子像か3個凝集粒子像か,高次凝集塊か,あるいは対象外の粒子かを,使用者。 , が指定しキーボード13を用いて入力する その指定結果をもとにして凝集している粒子の数の比率を自動的に計算することができる。もし,一括表示された粒子像の中に凝集粒子像が全く無い場合には,上記2次元スキャッタグラムでの円形度算出値は,真に粒子の円形度を表していると考えてよい(6頁12欄3行〜12行,段落【0052 ) 。」 】「また,上記指定結果をもとにして,一次粒子像だけを対象にして画像解析し直すこともできる。記憶できる粒子像の数に限りがあるので,再現性の良い解析結果が得られない場合もあるが,対象外の粒子(ごみ等)や凝集粒子を除いて解析するので,より正確な粒度分布,円形度が求められる(6頁12欄13行〜18行,段落【0053 ) 。」 】「また,一括表示された粒子像により,使用者が,測定した粒子が球形であることを確認した場合には,凝集しやすい粒子でも円形度が1に近い粒子だけに限定して粒度解析しなおせば,より正確な粒度分布が求められる。また,粒子が球形である場合には,図9に示すように,円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいて,凝集粒子が分布していると考えられる領域を推定することもできる(6頁12欄19行。」〜26行,段落【0054 )】「図9の例では,点線で囲んだ枠内に分布する粒子は,凝集粒子と推定している。粒径の揃っている球形の粒子が2個凝集あるいは3個凝集した場合の粒子像では,その投影面積は大きく,円相当径は約√2倍あるいは√3倍になり,円形度は0.9以下と小さくなる。点線で囲った枠内の粒子数を計算すれば,粒子凝集度合いに関する指標を求めることができる(6頁12欄27行〜33行,段落【0055 ) 。」 】「この装置では,図9の例のように円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいてある2次元領域を設定し,その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析,円形度解析させることもできる。このような機能を利用することによって,ごみや凝集粒子を除いての粒度分布や平均円形度を求める,あるいは凝集している粒子数の比率を推定するといったことが可能になる。このような2次元領域は,測定する試料の種類ごとに,使用者がキーボード13やマウスを使って任意に設定,変更できる(6頁12欄34行〜43行,段落【005 。」6 )】「以上のように,このフロー方式粒子画像分析装置では,粒子像を使用者が直接目で確認できることはもちろんのこと,従来の電気的検知帯法やレーザ解析散乱法の測定装置では得られなかった定量的な情報,すなわち円形度や凝集度合い等の新規の情報が得られる。また,円相当径と円形度の2次元スキャッタグラムによって,試料中のごみや凝集粒子の分布領域を推定することができ,その領域内のデータを除外して粒度解析すれば,より正確な粒度分布が求められる(6頁12欄44行〜7 。」頁13欄2行,段落【0057 )】「 発明の効果】この発明は,次のような効果を奏する。 【1.粒子像を画像解析することによって,粒子の大きさ(円相当径)だけでなく,粒子像の周囲長や円形度の情報も求められる (後略(7。)」頁13欄3行〜7行,段落【0058 )】「 前略)4.撮像,記憶した粒子像を,測定後に表示手段に一括表示で (きるので,粒子の形態や凝集状態を容易に確認することができる(7。」頁13欄18行〜20行,段落【0059 )】「5.撮像,記憶した粒子像により,粒子が凝集しているかどうかを使用者が目視で識別分類でき,凝集している粒子の比率を求めることができる。 . , 6 粒子像一括表示により粒子が球形であることが確認された場合には凝集しやすい粒子でも,円形度が1に近い粒子のデータだけに限定して粒度解析すれば,より正確な粒度分布が求められる。 . , 7 粒子像一括表示により粒子が球形であることが確認された場合には円相当径と円形度の2次元スキャッタグラムから粒子凝集度合いに関する指標を得ることができる(7頁13欄21行〜31行,段落【0 。」060 )】(エ)本件明細書の上記記載によれば,本件発明において 「粒径と円形,度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することの技術的意義は,円相当径(粒径)と円形度による2次元スキャッタグラムと,実際の粒子像(本件発明では,撮像された粒子像を表示手段に一括表示することができる(構成要件1H,1I)における粒子の形態や凝集状態を, )。 直接,使用者が評価,確認することによって,粒子の円形度や凝集度合いに関する情報を得ることにあり(段落【0020,具体的には,】)円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいて,凝集粒子が, , 分布していると考えられる領域を推定したり ある2次元領域を設定しその領域内又は領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析や円形度解析をしたり,試料中のごみや凝集粒子の分布領域を推定したり,粒子像一括表示により粒子が球形であることが確認された場合には粒子凝集(【】,【】, 度合いに関する指標を得たりすること 段落 00540056【0057【0060 )にあると認められる。このように,本件発 】,】明は,2次元スキャッタグラムの「領域」に着目して各種の推定や設定を行うものである。 また,本件明細書では 「2次元スキャッタ頻度データ」とは 「円 , ,相当径と円形度の2つのパラメータ」による「2次元頻度データ」により求められるもの(段落【0047【0048 )とされており,円 】,】相当径の頻度データは 「工業用の粉体は多種多様で粒径も非常に広い ,」,「(), 範囲に渡っていることから一般的に粒径はLOG対数変換しLOG変換した値を等分割した上で求める (段落【0037 )もの 」】とされ 「円相当径がd〜(d+Δd)の粒子頻度データ」の補正方法 ,を,必要に応じて適用することについて具体的に説明されており(段落【0040【0042【0045【0046,円相当径と円 】,】,】,】)形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データも,粒度頻度データと同様に求めるものとされている(段落【0047。そし】)て 「以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から,図 ,7,図8に示すような粒度ヒストグラム,円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム ・・・を表示する(ステップS13・・・図8に示 , )。 すスキャッタグラム表示では,横軸をLOG変換した円相当径,縦軸を円形度としており,各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている(段落【0050 )と説明されている。 。」】これらの記載に鑑みると,構成要件1Gの「2次元スキャッタ頻度データ」に基づく「2次元スキャッタグラム」とは,粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる平面を長方形格子に分け,各格子に入る度数のデータを平面上の図に表したものを意味すると解するのが相当である。また,データが非常に多くなった場合に,1次元ヒストグラムと同様に平面を長方形格子に分け 各格子に入る度数にまとめる方法や 統 , (計学辞典(東洋経済新報社 。乙18 ,2変数データのサイズが極め ))て大きい場合に,2つの変数を階級に分割して度数分布で表示する方法(統計入門(東大出版会 。乙20)は,統計処理の手法として,本件 )特許の出願当時から広く知られていたものである。 ウ前記アのとおり,被告製品は,円相当径(粒径)と円形度の頻度データを,円相当径をX軸とし円形度をY軸として,あらかじめX軸,Y軸を有限の個数(25個)に分割して作った枡目(幅を持った一定の区間)により表示する機能を有するものである。本件発明の構成要件1Gの「2次元()」 スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成 するの意味は上記イのとおりであるから,被告製品が同構成要件を充足することは明らかである。 ( )以上のとおり,被告製品は構成要件1Gを充足する。また,被告製品が3構成要件1Aないし1F,1Hないし1J,2A,4A及び6Aを充足することについては,前記第2の1( )イ記載のとおりである(この点について5は,当事者間に争いがない。。)よって,被告製品は本件発明の技術的範囲に属する。 2争点2-1(訂正要件違反の有無)について被告は,本件発明1の特許請求の範囲は,本件訂正前は「2次元スキャッタグラム ,すなわち「2次元スキャッタ頻度データ」に基づかない「2次元ス 」キャッタグラム」であったのに,本件訂正によって 「2次元スキャッタ頻度 ,データ」に基づく「2次元スキャッタグラム」になったものであるから,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであって,訂正要件を欠き無効であるなどと主張する。 しかしながら,前記1で認定した「スキャッタグラム」という用語の通常の意味や,本件発明において「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラム」を作成することの技術的意義等に鑑みると,本件訂正前の「2次元スキャッタグラム」が「2次元スキャッタ頻度データに基づかない2次元スキャッタグラム」を意味するものと解することはできず,被告の主張は,その前提を欠くものであって理由がない。本件訂正は,訂正前の構成要件1Gの「2次元スキャッタグラムを作成」を 「2次元スキャッタ頻度 ,」 , データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成 に限定したものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 ,, , このように 本件訂正は 特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。被告の主張は理由がない。 3争点2-2(記載要件違反の有無)について被告は,本件訂正によって追加された「2次元スキャッタ頻度データに基づいて」との文言について 「2次元スキャッタ頻度データ」の語そのものが, ,極めて不明瞭な文言である上,本件明細書では定義されておらず,具体的にどのようなデータのことをいうのかについて明確に説明されていないものであるため 「2次元スキャッタ頻度データに基づいて」2次元スキャッタグラムを ,作成するとは,どのようなデータ処理を行って2次元スキャッタグラムを作成することをいうのか明らかではないから,本件特許は特許請求の範囲において特許を受けようとする発明が明確でなく,記載要件を欠き無効であると主張する。 しかしながら,前記1で説示したところによれば 「2次元スキャッタ頻度 ,データ」の意味については,請求項の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載から明確に理解することができるというべきである。 したがって,被告の主張は理由がない。 4争点2-3(進歩性の有無)について( )本件発明1の進歩性の有無1被告は,本件発明1は,乙4発明に乙24公報に記載された発明又は周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたと主張する。 ア乙4文献の記載証拠(乙4)によれば,乙4文献には,以下の記載が存在すると認められる。 「本研究において注目したShape Factor(以後 SF とする)は2次元的な面積Aと周長Pの比を用いる形状指数であり,次のように定義される。 2(1)Shape Factor=4πA/P水噴霧粒子のSF値の測定にはFig.1に示した画像解析装置(Galai CIS-1System)を用いた(1170頁右欄10行〜1171頁左欄5行) 。」「分散された粉末粒子の投影像を光学顕微鏡を通じてCCDカメラで512×512ビットのメモリーフレームに読み取り,画像の濃度分布及び粒子濃度から設定したしきい値により粒子イメージをバックグラウンドから抽出する。このデジタル化された粒子イメージにおけるビットイメージ数により面積,バックグラウンドとの境界に接しているビット数により周長などが求められ,それを基にSF値や粒子径が求められる(11。」71頁左欄9行〜16行)イ乙4文献記載の発明以上の記載から,乙4文献には 「粒子懸濁液のセルと,粒子を撮像す ,るCCDカメラと,撮像された粒子イメージを解析する画像解析手段と,を備え,画像解析手段は,撮像された各粒子イメージの面積および周長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒子径とSF値,。」(「」 を算出する算出手段からなる画像解析装置の発明以下乙4発明という )が開示されていると認められる。 。 ウ本件発明1と乙4発明との対比乙4発明における「粒子イメージ「周長「CCDカメラ「粒子 」,」,」,径」及び「SF値」は,それぞれ,本件発明1における「粒子像「周」,囲長「撮像手段「粒径」及び「円形度」に相当する。また,乙4発 」,」,明における「粒子懸濁液のセル」と,本件発明1における「粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセル とは粒」,「子懸濁液の収容手段」という点で一致する。 したがって,本件発明1と乙4発明とは 「粒子懸濁液の収容手段と, ,, , 粒子を撮像する撮像手段と 撮像された粒子像を解析する画像解析手段とを備え,画像解析手段は,撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し,その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段からなる,粒子画像分析装置 」である点で一致し,以下の 。 点で相違する。 (ア)相違点?粒子懸濁液の収容手段が,本件発明1では 「粒子懸濁液の流れをシ ,」, ース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセル であるのに対し乙4発明では 「粒子懸濁液のセル」である点。また,本件発明1は, ,「変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段」を有し,これに伴い,撮像手段により撮像されるのが「照射された粒子」であるのに対し,乙4発明は,撮像の際に粒子が照射されるか否かが明確でない点(以下「相違点?」という。。)(ウ)相違点?本件発明1は「表示手段」を有するとともに,本件発明1の「画像解析手段」は 「粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作 ,成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段」を有するのに対し,乙4発明, (「」。)。 は これらの手段を有するか明確でない点 以下 相違点? という(エ)相違点?本件発明1は 「撮像された各粒子像を格納する記憶手段」及び「記 ,憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段」を有しているのに対し,乙4発明は,これらの手段を有するか明確でない点(以下「相違点?」という。。)エ本件発明1の容易想到性(ア)相違点?について証拠(乙4,6,8)によれば,粒子についてその形状を撮影する際にシースフローセルを用いることは,粒子分析の技術分野における当業者の慣用手段であること(乙8・段落【0001【0003,乙】,】)4装置は光照射手段を備えていたこと(乙6・11頁右欄15行目 ,)が認められる。 したがって,粉末粒子をCCDカメラで光学的に読み取る装置である乙4装置において,読み取りに際し,シースフローセルや光照射手段を採用することは,当業者が適宜なし得ることであると認められる。 (イ)相違点?及び?についてa証拠(乙4〜9,18〜20,23,24)によれば,?乙4文献には,横軸を粒子径とし縦軸をSFとする粒子の分布図が示されていること,?乙5文献及び乙6文献には,乙4装置が表示装置を有することや,同装置を使って粒子が解析され,粒子データ,ヒストグラムデータ出力が,同装置の表示装置を使って示されることなどが記載されていること,?データが非常に多くなった場合に,1次元ヒストグラムと同様に平面を長方形格子に分け,各格子に入る度数にまとめる方法や,2変数データのサイズが極めて大きい場合に,2つの変数を階級に分割して度数分布で表示する方法は,統計処理の手法として,本件特許の出願当時から広く知られていたこと,?乙第7,9及び24号証には 「粒子を撮像する撮像手段と,表示手段とを備 ,え,撮像された各粒子像を格納する記憶手段と,記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなる,粒子画像分析装置 」の発明が開示されていることが認められる。 。 そして,被告は,本件発明1は乙4発明に乙24公報に記載された発明又は周知技術を適用することにより,当業者が容易に発明することができたと主張する。 bしかしながら,本件発明において 「粒径と円形度とに対応する2 ,つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段に表示する図表作成手段 (構」成要件1G)及び「記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段 (構成要件1I)を併せ備える構成をとる 」ことの技術的意義については,上記1のとおり,従前の粒子の測定装置では,その測定精度が満足できるものではなく,粒子の円形度や凝集度合い等に関する情報を得ることは困難であったという課題に対し,円相当径(粒径)と円形度による2次元スキャッタグラムと,実際の粒子像における粒子の形態や凝集状態を,直接,使用者が評価,確認することによって,粒子の円形度や凝集度合いに関する情報を得ることができるようにしたことにある。 このように,本件発明1では,粒子画像分析装置に相違点?及び相違点?の構成を併せ備えることに重要な技術意義があるところ,乙号各証には,このような課題及びそれを解決するための手段について,何らの開示も示唆もない。なお,乙4文献には,粒子径を横軸とし縦軸をSFとする粒子の分布図(図3)が開示されているが,同文献における粒子径とSF値の関係の解析は 「粉末微粒化の度合が形状に ,影響を与える」という観点で行われるものであって(乙4・1170頁右下欄5〜8行 ,粒子の凝集度合いに着目したものではない。ま )た,乙18号証ないし20号証には,2変数平面を長方形格子に分け各格子に入る度数にまとめ,かつ平面格子を度数に応じて濃淡,色塗りで表現することなどが開示されているが,これは,粒子の画像解析に関わらない一般的な知見であって,このような方法をとることによって粒子の凝集度合いが得られることを示唆するものではない。その他の乙号証に記載された発明も,粒子の凝集度合いに着目したものは存在しない(なお,乙5文献には,画像解析が「凝集体の研究において特に重要である」との記載(29頁右欄18行〜30頁4行)があるが 抽象的な記載にすぎず 本件発明の構成をとることによって 凝 ,, 「集度合い」という定量的な情報が得られることを示唆するものではない。。)cそうすると,上記のような相違点?及び?の構成を併せ備えることの意義を認識していない当業者において,上記相違点?及び?の構成を併せ持つ構成に想到することが容易であったとは認められない。 dよって,本件発明1は,当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。 ( )本件発明2及び本件発明4について2, 。 本件発明2及び本件発明4は いずれも本件発明1を引用した発明であるしたがって,本件発明1が進歩性を有する以上,これらの発明も進歩性を有するといえる。 ( )本件発明6について3本件発明6も,本件発明1を引用した発明であり,本件発明1が進歩性を有する以上本件発明6も進歩性を有するといえるものであるが,本件の事案に鑑み,次のとおり付言する。 ア本件発明6は 「撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれ ,の撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにしたことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置 」である。。 被告は 「撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれの撮像 ,倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲」() , が互に部分的にオーバーラップするようにした こと 構成要件6A は乙10文献に記載されている構成又は当業者の技術常識であるから,本件発明6は当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 そこで,構成要件6Aの構成が乙10文献に記載されているか,又は当業者の技術常識であるか否かについて検討する。 イ乙10文献の記載証拠 乙10 によれば 乙10文献は 尿の顕微鏡的検査等を行う 多 (),, 「項目自動尿分析装置」の概要を示す文献であり,以下の記載が存在すると認められる。 「顕微鏡的検査は,まず弱拡大(対物レンズ10倍;以下LPF)の分析として,装置による一次分類実施後,操作者によるマニュアル編集を行う。検体によっては強拡大(対物レンズ40倍;以下HPF)の分析に移行し,LPFと同様の分類・編集を行った後,終了とともに測定データを一括でプリントアウトする(12頁左欄10行〜17行) 。」「3.測定原理尿沈渣:顕微鏡的検査(中略)顕微鏡を通してビデオカメラでフラットシースフローチャンバー内の粒子を捉え,その大きさを測定し,大きさにより分類する(13頁左欄12行〜13行,14 。」頁右欄5行〜8行)ウ乙10文献記載の発明(ア)以上の記載から,乙10文献には 「顕微鏡及びビデオカメラにお ,いて対物レンズを用いて粒子を撮影し,対物レンズの10倍又は40倍のいずれかの倍率を選択する手段を有し,それぞれの倍率で粒子の大き,。」(「」 さの測定を行う多項目自動尿分析装置の発明以下乙10発明という )が開示されていると認められる。また,乙10発明における 。 「顕微鏡及びビデオカメラ「対物レンズの10倍又は40倍のいず 」,れかの倍率「粒子の大きさの測定」及び「多項目自動尿分析装置」 」,は,それぞれ,本件発明6における「撮像手段「撮像倍率「粒径」,」,測定」及び「粒子画像分析装置」に相当するので,乙10発明は 「撮,像手段は撮像倍率を選択する手段を有し,それぞれの撮像倍率で粒径測定を行う,粒子画像分析装置 」に相当する構成を備えているというこ 。 とができる。しかしながら,乙10文献中には,乙10発明が 「それ,ぞれの撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに,各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにした」構成を有する旨の記載は見当たらない。 (イ)これに対し,被告は,一般に使用されているディスプレイ(表示画像面)では,対物レンズが10倍の時の粒径測定範囲の下限が対物レンズが40倍の時の粒径測定範囲の上限を上回るので,乙10文献には上記対物レンズの粒径測定範囲がオーバーラップしていることが開示されていると主張する。 しかしながら,証拠(乙10)によれば,乙10文献には上記アの記載のほかに 「3)顕微鏡的検査(AIM 」として 「?円柱」は「/ , ),」,「)」,「)」 LPFの検査を?b移行上皮細胞?c腎尿細管上皮細胞「?a)白血球 「?赤血球」は「/HPF」の検査を 「?a)扁平 」 ,上皮細胞」は「/HPF」又は「/LPF」の検査を,それぞれ行うことが記載されている(15頁左欄)と認められる。 そうすると,乙10発明は,測定する特定の種類の粒子については強拡大(HPF)下での検査が必要であるため,弱拡大での一次分類とマニュアル編集後に,強拡大下での分類・編集が必要な粒子が含まれている検体については強拡大の分析をするというものであり 「検体によっ,ては強拡大の分析に移行」するとは,この意味に解される。 したがって,乙10発明は,各撮像倍率で粒径測定範囲に違いを持たせるものとも,各倍率の粒径測定範囲が互いに部分的にオーバーラップするようにしたものともいえないから,被告の主張は理由がない。 エ被告は,構成要件6Aの構成は当業者の技術常識であるとも主張する。 しかしながら,同主張を裏付けるに足りる証拠はない。 オよって,本件発明6は,乙10発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。 5争点3(原告の損害)について( )特許法102条1項による推定1ア被告製品の販売個数平成18年4月から平成22年3月までに販売された被告製品の数が17個であり,そのうち,本件訴訟の提起された平成20年12月15日までに販売された被告製品の数が12個であることについては,当事者間に争いがない。 イ「侵害がなければ販売することができた物」証拠(甲10,27)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,臨床検査機, , 器 検査用試薬及び粒子分析機器の製造販売等を業とする株式会社であり遅くとも平成18年4月以後,被告製品と市場において競合する商品(フロー式粒子画像分析装置)である原告製品を製造,販売及び輸出していることが認められる。 そうすると,被告が被告製品を製造,販売することにより,原告は原告製品を販売する機会を失い,原告製品の販売により原告が得ることのできた利益相当額の損害を被ったと推定される(特許法102条1項 。)ウ「特許権者が販売することができないとする事情」の有無被告は,?被告製品と原告製品とでは,粒子の測定範囲や測定粒子の比重,対物レンズが各撮像ユニットに固定されているか,測定セルを選択することができるかなどの,具体的仕様が異なり,これらの相違点はユーザーによる装置の購入決定に大きく影響を及ぼしており,被告が販売した被告製品17台のうち13台については,ユーザーが測定を希望する粒子が300μm以上のものであった,又は比重が4を超えるものであったこ, , とから 原告製品の仕様ではこれらの粒子を測定することができないためこれらの販売先が原告製品を選択する余地はなかった,?被告は,被告,(,,, 製品を販売するために 様々な営業活動 販促活動 営業活動 受注活動受注後の活動)を行っているほか,被告製品のような粒度分布測定機器の販売実績では原告を凌駕する実績を持っており,被告製品を購入した客のすべてが,被告の行為がなければ原告製品を購入したとは断定できない,?この種の機器では,2次元スキャッタ頻度データに基づくスキャッタグラムなのか,通常のスキャッタグラムなのかというデータの表示方法の部分は,製品選択の重要な要因となるものではなく,製品選択の一要素となるにすぎない,として,本件では,原告が原告製品を「販売することが」( )。 できないとする事情特許法102条1項ただし書 があると主張するそして,被告は,同主張を裏付ける証拠として,被告製品の購入先からの注文を受けて被告が作成したという要求仕様書や,購入先が指定した粒子を被告製品を用いて測定した結果を記載した粒度・形状分布測定機PITA-1解析結果等(乙48,51,52,56〜72)を提出する。 しかしながら,これらの証拠は,肝心の被告製品の販売先(注文者,測定依頼者)の部分が伏せ字となっている上,仕様を要求した目的,仕様の詳細等についての記載も,ほとんどが伏せ字とされている。したがって,これらの証拠だけからは,被告製品の販売先がいかなる目的ないし動機で被告製品を購入したのか,購入に当たって被告製品のいかなる機能を重視したのか,原告製品の仕様では上記目的をかなえることができなかったのか,などといった,原告が原告製品を「販売することができない事情」の有無を判断するに当たって重要な事情については明らかでないというべきである。また,上記証拠の他に,被告の主張を裏付けるに足りる客観的な証拠はない。 これに加えて,被告製品と原告製品とは上記のとおり市場において競合する商品であって,販売価格も似通っており,これらの製品と市場において競合する他者の製造販売する商品が存在することをうかがわせる事情もないことなどを考慮すると,本件では原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があったとは認めることはできないというべきである。 したがって,被告の主張は理由がない。 エ原告の実施能力(,,) ,, 証拠 甲27〜29 43 44 及び弁論の全趣旨によれば 原告は年間連結売上高約1100億円,従業員約1600人の企業であり,原告の加古川工場において原告製品その他の臨床検査機器を製造していること,同工場の従業員は100名以上おり,原告製品の組立てに従事する者も複数存在すること,原告製品1台の製造に要する時間は十数時間であること,同工場では約300種類の製品を年間約4万点製造していること,平成18年4月から平成21年3月までの間に原告製品●(省略)●台を販売したことが認められる。これらの事実によれば,原告は,被告が平成18年4月から平成22年3月までの間に販売した17台について,これに相当する原告製品を製造販売する能力( 実施の能力 (特許法102 「」条1項 )を有していたものと認められる。 )オ「単位数量当たりの利益の額」(ア)「侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額 (特許法102条1項)とは,仮に,特許権者において侵 」害品の販売数量に対応する数量の権利者製品を追加的に製造販売したとすれば,当該追加的製造販売により得られたであろう売上額から,追加的に製造販売するために要したであろう追加的費用(費用の増加分)を控除した額を,追加的製造販売量で除した額 (以下「限界利益」とい )う )であると解される。 。 また,本件では,被告製品と市場で競合する原告製品が2種類(原告製品3000,原告製品3000S)存在し,証拠(甲27〜29)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年4月から平成21年3月までの間に販売された原告製品は,原告製品3000が●(省略)●台であり,原告製品3000Sが●(省略)●台であると認められる。このような販売実績を考慮すると,仮に,被告製品が販売されなければ,原告製品3000が●(省略)●台(台×●(省略)●?●(省略)●台)17及び原告製品3000Sが●(省略)●台(台×●(省略)●?● 17(省略)●台)の合計17台を販売することができたといえる。 (イ)証拠(甲28〜38,40〜43。枝番号のある書証は,枝番号を含む )及び弁論の全趣旨によれば,平成18年度から平成21年度ま 。 での間に販売された原告製品の1台当たり限界利益(原告製品の売上高から,材料費(原告製品の材料に関する経費 ,消耗材料費(出荷前検 )査に要する試薬等の消耗される材料に関する経費)及び外注加工費(原)。) , 告製品の組立てを外注委託する場合の加工賃等 を控除した金額は別紙算定表記載のとおり,原告製品3000につき●(省略)●円であり,原告製品3000Sにつき●(省略)●円であると認められる。上記認定の利益額について,その合理性を疑わせるに足りる証拠はない。 したがって,以下の計算式のとおり,原告製品17台の販売利益合計1億3578万2389円から原告製品1台当たりの物流関係変動経費(旅費交通費,運送費,配達費,燃料費及び宿泊費)である11万7000円の17台分である198万9000円を控除した1億3379万3389円が,原告製品の限界利益となる。 (()()()()) ●省略●円×●省略●台+●省略●円×●省略 ●台-円×台=円117,00017133,793,389なお,原告は,売上から控除される物流関係変動経費は,小野物流センターから顧客までの間で発生する分であり,原告製品1台当たりの平均額は●(省略)●円を超えないと主張するが,同主張を裏付けるに足りる証拠はない。また,原告の主張する上記金額は,あくまでも,原告が実際に原告製品を販売した先への運送費であるが,限界利益の算定にあたって控除すべき運送費は,原告が原告製品を被告製品の販売先に納入したと仮定した場合に発生する運送費であると解するのが相当であるから,限界利益の算定に当たって控除すべき運送経費については,被告が被告製品を販売した際に要した費用であると主張する1台当たり11万7000円として計算するのが相当である。 (ウ)これに対し,被告は,原告製品の販売に係る原告の限界利益の算定に当たっては,原告の主張する費用のほかにも,金型等の減価償却費,製造加工費としての労務費被告製品の製造に当たって従業員が会議等の移動の際に発生した費用(旅費,交通費(共通 ,販売管理費,検収作 )業等の費用についても,原告製品の売上高から控除すべきであると主張する。 しかしながら,限界利益の意味については上記(ア)のとおりに解するのが相当であり,特段の事情のない限り,限界利益の算定に当たって,被告の主張する上記費用を控除すべきであるとはいえない。本件全証拠を検討しても,原告が主張する以上に,原告が原告製品を販売するに当たって直接要する具体的な費用と評価すべきものは認められない。 エ小括よって,特許法102条1項により推定される原告の損害は,1億3379万3389円となる。また,同金額は,原告が予備的に主張する,特許法102条2項により推定される損害額を上回る。 ( )弁護士費用等2原告は弁護士及び弁理士を選任して本件訴訟を追行しているところ,本件事案の内容,認容額及び本件訴訟の経過等を総合すると,上記特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用及び弁理士費用の額は1300万円と認められる。 ( )合計3したがって,被告は,原告に対し,上記( )及び( )の合計額である1億4 12679万3389円及び内金1億円に対する平成21年1月22日(訴状送達の日の翌日)から,内金4679万3389円に対する平成22年5月2(() ) 7日 訴えの変更 請求の拡張 に係る原告第11準備書面送達の日の翌日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。なお,原告は,損害賠償の内金1億円については訴状送達の日の翌日からの遅延損害金を請求しているところ,本件訴訟の提起までに販売された被告製品は12台であるから,その限界利益に弁護士費用(同利益の1割相当額)を加算した金額は1億円を超えることが明らかである(仮に,12台のうち11台が限界利益の少ない原告製品3000であったとしても,これに原告製品3000S1台を加えた限界利益は●(省略)●円となり,,(), これに弁護士費用 弁理士費用相当額 上記利益の1割相当額 を加えると1億円を超える。。)6結論以上のとおり,被告製品は本件発明の技術的範囲に属し,本件特許は無効にされるべきものとは認められないから,原告の特許法100条1項に基づく被告製品の製造,使用,販売,輸出及び販売の申し出の差止め並びに同条2項に基づく被告製品の廃棄請求は,理由がある(なお,本件では,被告が被告製品を輸出したことを認めるに足りる証拠はないが,証拠(甲8,9)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品の英語版パンフレットを作成したり,英語, ,, 圏 韓国語圏向けのホームページを開設していることが認められるので 今後被告製品を輸出するおそれがあると認められる。。)また,本件特許権侵害を理由とする損害賠償請求は,上記5で認定した限度で理由がある。 よって,原告の請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却し,仮執行宣言については,主文第1項及び第2項については相当でないからこれを付さないこととし主文のとおり判決する。 て, |
裁判長裁判官 | 阿部正幸 |
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裁判官 | 山門優 |
裁判官 | 小川卓逸 |