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関連審決 無効2009-800108
関連ワード 技術的思想 /  創作性(創作) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  先行技術 /  択一的 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  設定登録 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 22年 (行ケ ) 10131号 審決取消請求事件
原告 株式会社コスメック
被告パスカルエンジニアリング株式会社
訴訟代理人弁理士 深見久郎 森田俊雄 吉田昌司 荒川伸夫 佐々木 眞人高橋智洋
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2011/01/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が無効2009−800108号事件について平成22年3月24日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた判決主文同旨第2事案の概要本件は,被告が特許権者である特許の無効審判請求について,特許庁がした請求不成立の審決の取消訴訟である。争点は,本件発明の進歩性の有無である。
1特許庁における手続の経緯原告は,平成21年5月25日,被告が特許権者であり,発明の名称を「クランプ装置」とする本件特許第4217539号(平成15年6月2日出願,平成20年11月14日設定登録)について,無効審判の請求をした。
特許庁は,上記請求を無効2009-800108号事件として審理した上,平成22年3月24日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年4月5日原告に送達された。
2本件発明の要旨平成21年8月12日付け訂正請求書(甲51)により訂正された特許請求の範囲の請求項1〜5に係る発明(以下,それぞれを「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は,以下のとおりである。
【請求項1】クランプ本体と,このクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと,出力ロッドを進出側と退入側の少なくとも一方に駆動する油圧シリンダとを有するクランプ装置において,前記クランプ本体は,油圧給排用の油圧ポートと,前記油圧ポートおよび前記油圧シリンダに接続された油圧給排用の油路と,この油路を流れる油圧の流量を調節可能な流量調整弁とを有し,前記流量調整弁は,前記油路の途中部に形成された弁孔と,この弁孔に少なくとも部分的に挿入される弁体部を有し,この弁体部が弁孔に接近/離隔する方向にクランプ本体に相対移動可能に設けられ弁体部と弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え,前記クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,前記弁部材が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着され,前記弁部材は,この弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部を有し,前記油路は,前記油圧ポートと前記装着穴とを接続する第1油路と,前記油圧シリンダの油室に連なる第2油路とを含み,前記弁部材は,前記弁体部と弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と,このバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁をさらに有する,ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】前記弁体部に,油圧を微調整する為の切欠状の溝部であって,先端側ほど溝の深さが深い溝部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】クランプ本体と,このクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと,出力ロッドを進出側と退入側の少なくとも一方に駆動する油圧シリンダとを有するクランプ装置において,前記クランプ本体は,油圧給排用の油圧ポートと,前記油圧ポートおよび前記油圧シリンダに接続された油圧給排用の油路と,この油路を流れる油圧の流量を調節可能な流量調整弁とを有し,前記流量調整弁は,前記油路の途中部に形成された弁座と,この弁座に対向する弁体部を有し,この弁体部が弁座に対して接近/離隔する方向にクランプ本体に相対移動可能に設けられ弁体部と弁座との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え,前記クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,前記弁部材が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着され,前記弁部材は,この弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部を有し,前記油路は,前記油圧ポートと前記装着穴とを接続する第1油路と,前記油圧シリンダの油室に連なる第2油路とを含み,前記弁部材は,前記弁体部と弁座との間の隙間をバイパスするバイパス流路と,このバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁をさらに有する,ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】前記流量調整弁を部分的に覆う防塵カバーが設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のクランプ装置。
【請求項5】前記弁部材に,油圧中に混入したエアを排出する為のエア抜き弁が設けられ,このエア抜き弁は,前記油路に連通するエア抜き孔を閉止可能なエア抜き用弁体と,前記弁部材に螺着され前記エア抜き用弁体をエア抜き孔を閉止する方向に押圧可能なネジ部材とを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のクランプ装置。
3審判で原告が主張した無効理由(無効理由1)本件発明1は,甲34(特開2001-107914号公報)に記載された発明(以下「甲34発明」という。)と甲32(米国特許3303746号明細書) に記載された発明(以下「甲32発明」という。)との組み合わせ及び下記の周知技術[a][b]によって,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
[a] ハウジングの装着穴に流量調整弁を組込む構造は,甲3〜6,甲40,甲42〜47に示すように周知技術である。
[b ] 弁部材に相当する部材を弁ケースに螺合する構造は,甲3〜6,甲42〜44に示すように,周知技術である。
(無効理由2)本件発明2は,上記無効理由1の甲号証に加えて,甲11〜17の周知技術(切欠状の溝部)によって容易に想到できる。
(無効理由3 )本件発明3は,上記無効理由1と同様の理由によって容易に想到できる。
(無効理由4)本件発明4は,上記無効理由1及び2の甲号証に加えて,甲18〜23の周知技術(防塵カバー)によって容易に想到できる。
(無効理由5)本件発明5は,上記無効理由1〜4の甲号証に加えて,甲24〜31の周知技術(エア抜き弁)によって容易に想到できる。
4審決の理由の要点(1)無効理由1について本件発明1が,「油路を流れる油圧の流量を調節可能な流量調整弁」を有し,その流量調整弁は「油路の途中部に形成された弁孔と,この弁孔に少なくとも部分的に挿入される弁体部を有し,この弁体部が弁孔に接近/離隔する方向にクランプ本体に相対移動可能に設けられ弁体部と弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え,クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,弁部材が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着され,弁部材は,この弁部材をクランプ本体に対して接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部を有し,油路は,油圧ポートと装着穴とを接続する第1油路と,油圧シリンダの油室に連なる第2油路とを含み,弁部材は,弁体部と弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と,このバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁をさらに有」しているのに対し,甲34発明は,そのような流量調整弁を有していないという相違点1について,甲34発明のクランプシリンダに流量調整弁を内蔵するという動機付けが存在するといえるが,そのような動機付けがあっても,機能の異なる甲32記載の逆止弁と絞り弁のユニット6(流量調整弁)を適用することが,容易に想到し得たとは認められないから,本件発明1が甲34発明,甲32発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない(なお,本件発明1が,作動流体が「油」であり,流体圧シリンダが「油圧シリンダ」であるのに対し,甲34発明は,作動流体が不明であるという相違点2について,流体圧シリンダとして作動流体を油とし,油圧シリンダとすることは,周知・慣用の事項であり,クランプ装置においても,油圧シリンダを使用することは通常行われていることであるから,甲34発明の流体圧シリンダを,作動流体を油とし,油圧シリンダとすることに,格別の困難性は認められない。)。
(2)無効理由2について本件発明2は,請求項1を引用する発明であり,本件発明1が,進歩性を有するものである以上,本件発明2も進歩性を有する。
(3)無効理由3について本件発明3が,「油路を流れる油圧の流量を調節可能な流量調整弁」を有し,その流量調整弁は「油路の途中部に形成された弁座と,この弁座に対向する弁体部を有し,この弁体部が弁座に対して接近/離隔する方向にクランプ本体に相対移動可能に設けられ弁体部と弁座との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え,クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,弁部材が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着され,弁部材は,この弁部材をクランプ本体に対して接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部を有し,油路は,油圧ポートと装着穴とを接続する第1油路と,油圧シリンダの油室に連なる第2油路とを含み,弁部材は,弁体部と弁座との間の隙間をバイパスするバイパス流路と,このバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁をさらに有」しているのに対し,甲34発明は,そのような流量調整弁を有していないという相違点3について,上記相違点1の「弁孔」を「弁座」としただけで,実質的に相違点1と同じであり,本件発明1について検討したとおりであるから,本件発明3も進歩性を有する。
(4)無効理由4について本件発明4は,請求項1〜3を択一的に引用して,更に限定事項を付加した発明であり,本件発明1〜3が,進歩性を有するものである以上,本件発明4も進歩性を有する。
(5)無効理由5について本件発明5は,請求項1〜4を択一的に引用して,更に限定事項を付加した発明であり,本件発明1〜4が,進歩性を有するものである以上,本件発明5も進歩性を有する。
第3原告主張の審決取消事由1取消事由1(無効理由1のうち甲32発明に関する認定の誤り)(1)審決は,相違点1の判断において,甲34発明のクランプシリンダに甲32発明の流量調整弁を適用することの検討に当たり,「クランプシリンダに一般的に用いられる流量調整弁は,クランプを駆動するための油圧を給排する油路に設けられ,クランプに固定されるピストンロッドの作動領域において,ピストンロッドの作動速度を調整するものであることが理解できる。 一方,甲32には,逆止弁と絞り弁のユニット6が,シリンダヘッド4,5に形成された孔内に螺合固定された流体圧作動シリンダが記載されている。逆止弁と絞り弁のユニット6は,ピストンロッド8のクッション部材13が,空所10内に侵入することにより,通路26を流れる流量を調整して,ストロークエンドにおけるピストン3のクッション作用を生じさせるものである。つまり,甲32に記載された逆止弁と絞り弁のユニット6は,1)ピストンロッド8の作動領域に亘って作動するものでなく,クッション部材13が,空所10内に侵入することによって作動する点,2)ピストンロッド8の作動速度を制御するのではなく,ストロークエンドにおけるピストン3のクッション作用を生じさせるものである点,において,クランプシリンダに周知に用いられている流量制御弁とは,機能が異なるものである。」(22頁1行〜18行)と認定する。
審決の上記認定は,概略,甲32発明に記載された逆止弁と絞り弁のユニット6は,甲1及び甲2に記載されたクランプシリンダに周知に用いられている流量制御弁とは機能が異なるというものであるが,以下の(2) 〜 (5) の理由のいずれかにより,誤りである。
したがって,審決が,「例え,甲34発明のクランプシリンダに流量調整弁を内蔵するという動機付けがあっても,機能の異なる甲32記載の逆止弁と絞り弁のユニット6(流量調整弁)を適用することが,容易に想到し得たとは認められない。」(22頁19行〜22行)と判断したのも誤りである。
(2)甲32の流量調整弁の構成及び技術的意義についての認定の誤り審決は,機能が異なる第1の理由として,「上記の「逆止弁と絞り弁のユニット6」は,ピストンロッド8の作動領域に亘って作動するものでなく,クッション部材13が,空所10内に侵入することによって作動する点」を指摘する。しかし,上記機能の相違は,ピストン3のストロークエンドでクッション部材13を空所10内に侵入させるというシリンダ装置の構成に由来するものであり,甲32の流量調整弁の構成に由来するものではない。したがって,審決の上記認定は,甲32の流量調整弁の構成に基づかないで当該流量調整弁の機能を認定したことになり,誤りである。
また,審決は,機能が異なる第2の理由として,「上記の「逆止弁と絞り弁のユニット6」は,ピストンロッド8の作動速度を制御するのではなく,ストロークエンドにおけるピストン3のクッション作用を生じさせるものである点」を指摘する。
しかし,上記クッション作用の技術的意義は,シリンダ装置の作動室から排出される圧力流体に絞り抵抗を付与してピストン3及びピストンロッド8の作動速度が遅くなるように制御することであり,周知の流量調整弁の絞り作用と同一である。したがって,上記クッション作用と周知の流量調整弁の絞り作用とは,その作用の表現だけが相違しているにすぎず,技術的には同一の機能であるから,審決の上記認定は,甲32の流量調整弁の技術的意義に基づかないで当該流量調整弁の機能を認定したことになり,誤りである。
(3)当業者であれば,上記「逆止弁と絞り弁のユニット6」と「周知の流量制御弁」との機能が同一であると認識すること甲1(米国特許5695177号明細書)の図3,第4欄48行〜53行及び第5欄11行〜24行の記載によれば,流量制御手段の機能は,シリンダ装置の作動室へ供給される圧油を絞り操作したり,上記作動室から排出される圧油を絞り操作することであると認識できる。また,甲2(特開2000?145724号公報)の図9,段落【0004】の記載によっても,流量調整弁の機能は,同様の機能を有するものと認識できる。
他方,甲32の図1及び2並びに明細書第2欄1行〜4行及び第3欄30行〜50行の記載によれば,「逆止弁と絞り弁のユニット6」の機能は,シリンダ装置の作動室から通路26を通って給排路12へ排出される流体を絞り操作することであると認識できる。
そうすると,甲32発明の上記「逆止弁と絞り弁のユニット6」の機能は,シリンダ装置の作動室から排出される流体を絞り操作するという技術的意義において,甲1及び甲2の「周知の流量制御弁」の機能と同一である。
(4)当業者であれば,甲32発明において,「逆止弁と絞り弁のユニット6」を流量調整弁として抽出及び認識することこの種の流量調整弁は,シリンダ装置(クランプ装置)とは切り離された状態で単独で存在することが周知である(甲46,47及び64)。また,この点は,甲7〜10の流量調整弁についても同様である。
したがって,当業者であれば,甲32発明において,ピストンのストロークエンドだけで「逆止弁と絞り弁のユニット6」が流量制御するように構成したシリンダ装置から,上記「逆止弁と絞り弁のユニット6」を切り離して,その「逆止弁と絞り弁のユニット6」だけを流量調整弁として抽出及び認識できることが明らかである。
(5)流量調整弁は,クッション作用の有無に左右されないこと流量調整弁を設けたシリンダ装置においては,クッション作用なしのシステム(例えば,甲58〜63)と,クッション作用を有するシステム(例えば,甲65〜68)との,両方のシステムがいずれも周知である。
したがって,流量調整弁は,シリンダ装置がクッション作用を有するか否かに左右されないことが明らかであり,当業者であれば,クッション作用を有するシリンダ装置(クランプ装置)に設けた流量調整弁も,通常の流量調整弁として当然に認識できる。
2取消事由2(無効理由1のうち甲34発明に関する認定の誤り)(1) 審決が,前記相違点1の判断において,甲34発明に関し,「甲34のクランプシリンダには,ロッドカバー7に側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bが設けられ,これらのポートは断面T字状の通路を形成していると認められる。そして,上記記載事項ウには,側面配管ポート15a,15bを配管に接続する場合は,端面配管ポート17a,17bは埋栓で塞ぎ,端面配管ポート17a,17bを配管に接続する場合は,側面配管ポート15a,15bは埋栓で塞ぐことが記載されている。これは,配管接続の自由度を増すためであると考えられるが,側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を設けると,配管は端面配管ポート17a,17bにしか接続できず,結局,配管接続の自由度を低下させることになる。」(22頁33行目〜23頁6行)と認定したのは,以下に述べるとおり,誤りである。
したがって,審決が,「例え,ハウジング又はケーシングに設けられたT字状の通路のアングル流路のエルボ部分に流量調整弁を挿入すること自体が周知・慣用の技術であったとしても,甲34発明の側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bは,配管の接続方向を選択可能にするために設けたのであるから,両配管ポートのうち側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を挿入することが,容易であるとは認められない。」(23頁7行〜12行)と判断したのも誤りである。
(2)すなわち,甲34発明のクランプ装置(クランプシリンダ)は,未使用の状態では,審決が認定したように,側面配管ポート15a,15bと端面配管ポート17a,17bとのいずれか一方を任意に選択できるので配管接続の自由度が高いといえる。
しかし,この種のクランプ装置は,未使用の状態のまま放置されるものではなく,ワーク等の被固定物をクランプするためにワークパレット等の固定側部材に固定されて使用される。そして,甲34発明のクランプ装置の使用状態において,ワークパレット等の固定側部材に固定されたクランプ装置に,端面配管ポート17a,17bと側面配管ポート15a,15bとの両者のうちの一方に油路(又は油圧配管)を既に接続している場合には,上記両者のうちの他方がプラグ止めされており,そのプラグ止めされた配管ポートに油路(又は油圧配管)を接続する余地はない(例えば,甲57参照)。つまり,甲34のクランプ装置の両ポートにおいては,そのクランプ装置の未使用状態では両ポートのいずれかを任意に選択できるのに対して,クランプ装置の使用状態では両ポートを任意に選択する余地がなくなるのである。
3取消事由3(無効理由2についての認定判断の誤り)審決は,本件発明1が進歩性を有するという理由のみで本件発明2の進歩性を肯定している(23頁25行〜26行)。しかし,本件発明1が進歩性を有しないことは前述したとおりである。
4取消事由4(無効理由3についての認定判断の誤り)審決における本件発明3についての認定判断(23頁29行〜24頁31行)は,本件発明1についての認定判断に対する取消事由1及び2と同様の理由により,誤りである。
5取消事由5(無効理由4についての認定判断の誤り)審決は,本件発明1〜3が進歩性を有するという理由のみで本件発明4の進歩性を肯定している(24頁33行〜末行)。しかし,本件発明1〜3が進歩性を有しないことは前述したとおりである。
6取消事由6(無効理由5についての認定判断の誤り)審決は,本件発明1〜4が進歩性を有するという理由のみで本件発明5の進歩性を肯定している(25頁2行〜4行)。しかし,本件発明1〜4が進歩性を有しないことは前述したとおりである。
第4被告の反論1取消事由1に対し(1) 原告の主張は,刊行物に記載された発明の認定の前提において誤っており,失当である。そもそも,「刊行物に記載された発明」とは,刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握できる発明である。
したがって,刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握することができない発明は,「刊行物に記載された発明」とはいえず,「引用発明」とすることができない。
甲32に記載された発明の認定(一部の構成のみを都合よく取り出して認定するものではない。)に当たっては,「ユニット6」の構成のみを都合よく取り出すのではなく,「ユニット6」を含む発明として,甲32にどのような発明が開示されているかを認定しなければならない。すなわち,技術的思想創作たる発明とは,その目的(課題),構成,効果の三要素から把握されるものであり,特定の構成だけを都合よく取り出して発明を把握することはできない。したがって,甲32発明の認定に当たって,シリンダ装置における「ユニット6」の機能を無視できないことは明白である。
(2) 甲32には,「ユニット6」を「クッション弁」として用いることが示されているが,この「ユニット6」をシリンダ装置の全ストロークに亘って作用させるという技術的思想は,甲32には記載も示唆もなされていない。さらに,「ユニット6」をシリンダ装置から単独で切り離してもよいとする技術的思想も,甲32には記載も示唆もなされていない。
したがって,甲32には,「クッション弁」としての「ユニット6」が示されているだけであり,本件発明1のように全ストロークに亘って作用する流量調整弁の発明は開示されていない。審決は,上記に基づいて,甲32に記載の「ユニット6」はシリンダ装置の全ストロークに亘って流量調整を行う流量調整弁とは機能が異なることを指摘しているのであって,この点において誤りはない。
また,甲65〜68に本件発明1に対する先行技術となり得る「流量調整弁」が設けられているとの原告主張自体,失当である。すなわち,上記各甲号証における弁(甲65の「弁ユニット6」,甲66の「チェック弁17,18」及び「絞り弁 15,16」,甲67の「絞り弁9」及び甲68の「クッション弁27」)は,甲32の「ユニット6」と同様,シリンダの全ストロークに亘って作用する「流量調整弁」ではなく,ストロークエンドのみで作用するクッション弁にすぎないのである。
2取消事由2に対しクランプ装置への配管接続は,クランプ装置の使用状態で行われるものではなく,未使用の状態で行われるものである。すなわち,審決は,クランプ装置の未使用状態において,「側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を設けると,…配管接続の自由度が低下する」と認定したのであり,原告の審決に対する理解は誤りである。
仮に,原告主張のとおり,クランプ装置の使用状態を考慮するとしても,端面配管ポート17a,17bに油圧配管を接続した状態だけを都合よく取り出している点で,原告の前記主張は失当である。すなわち,甲34発明において,配管ポートを側面と端面との2箇所に設けているのは,配管接続の自由度を増すためであるところ,側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bのいずれのポートに油圧配管を接続した場合にも,同じ機能が得られるようにしなければ,配管接続の自由度が増したことにはならない。したがって,端面配管ポート17a,17bに油圧配管を接続する状態だけでなく,側面配管ポート15a,15bに油圧配管を接続する状態も併せて考慮しなければならず,端面配管ポート17a,17bに油圧配管を接続した状態だけを都合よく取り出している原告の主張は,失当である。
さらに,仮に,原告が主張するように,甲34の側面配管ポート15a,15bに甲32の「ユニット6」を装着し,端面配管ポート17a,17bに油圧配管を接続した場合,この状態から,側面配管ポート15a,15bに油圧配管を接続しなおそうとすると,「ユニット6」は端面配管ポート17a,17bに装着しなおさなければならない。しかし,甲32の「ユニット6」は,図2に示すとおり,互いに交差する方向に形成された「上側のカウンタ孔25」と「横向き通路26」との間の「中間のカウンタ孔23」に装着されるものであるから,甲34の端面配管ポート17a,17bには,その構造上,甲32の「ユニット6」を装着することができない。したがって,側面配管ポート15a,15bに配管を接続する場合は,「流量調整機能」を得ることはできず,これでは,2つの配管接続状態で同じ機能が実現できないから,配管の自由度が増したことにはならない。
3取消事由3〜6に対し原告は,取消事由1及び2に理由があることを前提に,取消事由3〜6を主張するが,その前提となる取消事由1及び2についての原告主張がすべて失当であることは,上述のとおりである。
したがって,取消事由3〜6についても,すべて理由がない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(無効理由1のうち甲32発明に関する認定の誤り)について原告は,審決が,本件発明1と甲32発明との相違点1の判断において,甲34発明のクランプシリンダに甲32発明の流量調整弁を適用することの検討に当たり,「甲32には,逆止弁と絞り弁のユニット6が,シリンダヘッド4,5に形成された孔内に螺合固定された流体圧作動シリンダが記載されている。逆止弁と絞り弁のユニット6は,ピストンロッド8のクッション部材13が,空所10内に侵入することにより,通路26を流れる流量を調整して,ストロークエンドにおけるピストン3のクッション作用を生じさせるものである。つまり,甲32に記載された逆止弁と絞り弁のユニット6は,1)ピストンロッド8の作動領域に亘って作動するものでなく,クッション部材13が,空所10内に侵入することによって作動する点,2)ピストンロッド8の作動速度を制御するのではなく,ストロークエンドにおけるピストン3のクッション作用を生じさせるものである点,において,クランプシリンダに周知に用いられている流量制御弁とは,機能が異なるものである。」(22頁6行〜18行)と認定して,本件発明1の進歩性を肯定したことが誤りであると主張するので,以下検討する。
(1)甲32発明は,米国特許公報である甲32及びそれに対応する我が国の実用新案公報である甲65の各記載によれば,以下のとおりと認められる。
すなわち,甲32発明は,逆止弁と絞り弁とが結合されたユニット6を設け,ピストンロッド8の作動途中で通路を切り換えてクッション作用を奏する流体圧作動シリンダに関するものであり,具体的には,ピストン3の移動によるピストンロッド8のストロークエンドでは,ピストンロッド8のクッション部材13が空所10(「室10」の誤りと解されるので,以下「室10」と表記する。)内に侵入することにより,そこに存在する通路が閉じられ,シリンダ室内の流体が排出されるのが阻止されるとともに,この閉じられた通路とは別の通路26を経由して流体が流れ,通路26から室10への間に設けられたユニット6が,その内部を流れる流体の流量を調整するものと認められる。ユニット6は,より具体的には,上記の通路26から室10へ流体が流れる場合には,逆止弁であるボール弁が閉じた状態で絞り弁により流量を調整し,シリンダ室内から排出される流体に絞り抵抗を付与してピストン3及びピストンロッド8の作動速度が遅くなるように制御する一方,ピストンロッド8の戻り行程では,逆止弁が開いて室10からの自由流れを許容するものである。また,ストロークエンド以外のピストンロッド8の作動領域では,ピストンロッド8のクッション部材13が室10内に侵入しないことにより,そこに存在する通路が開かれ,この通路を主体としてユニット6をほとんど経由せずに流体が流れる。
したがって,甲32発明の解決課題とされるピストン3のクッション作用は,ピストンロッド8に設けられたクッション部材13の動作によって,ストロークエンドで流体が流れる通路が通路26に切り換えられ,その後,通路26を流れる流体の流量を,逆止弁と絞り弁とが結合されたユニット6が調整することによって達成されるものと認められる。そして,ユニット6は,ピストンロッド8の作動の全領域に亘って作動するものでないが,流体の流路が通路26に切り換えられた後に,クッション部材13の動作とは関係なく,一方向においては逆止弁が閉じた状態で絞り弁により流量を調整する一方,他方向においては逆止弁が開いて自由流れを許容するという,一般的な絞り弁としての機能を果たしているものであり,その限りにおいて,甲1及び2に開示された周知の流量調整弁と機能的に何ら相違しないものと解される。
そうすると,甲32発明に接した当業者は,ユニット6が,ピストンロッド8の作動の全領域に亘って作動するものでないとしても,一方向においては逆止弁が閉じた状態で絞り弁にて流量を調整する一方,他方向においては逆止弁が開いて自由流れを許容するという,周知の流量調整弁の一形態である絞り弁として技術的に把握できるものといわなければならない。
そして,甲34発明のクランプシリンダにおいて,ピストンロッドの作動速度を調整する観点から,流量調整弁を内蔵するという動機付けが存することは,審決も認める(21頁18行〜33行)ところであり,これは甲1及び2の記載事項から見ても正当と認められるから,当業者が,甲34発明のクランプシリンダにおいて,甲32発明に開示された流量調整弁であるユニット6の構成を採用することは,容易に想到できるものといえる。
(2)被告は,甲32には,「ユニット6」を「クッション弁」として用いることが示されているが,この「ユニット6」をシリンダ装置の全ストロークに亘って作用させるという技術的思想や,「ユニット6」をシリンダ装置から単独で切り離してもよいとする技術的思想は,記載も示唆もなされていないと主張する。
確かに,ユニット6は,ピストンロッド8の作動の全領域に亘って作動するものではないが,そうであるからといって,ユニット6を1つの技術的思想として当業者が把握できないわけではなく,これは,甲32発明におけるユニット6の構成及びその技術的役割を具体的に検討して判断されなければならないものと解される。
そして,甲32発明において,ユニット6は,前示のとおり,ピストンロッド8のストロークエンドにおいてのみ作動するものではあるが,その技術的内容は,一方向においては逆止弁が閉じた状態で絞り弁により流量を調整する一方,他方向においては逆止弁が開いて自由流れを許容するという,周知の流量調整弁の一形態である絞り弁にすぎないものである。しかも,甲46の図1,甲47の図2〜4及び甲64の第2図には,同様に作動する絞り弁の構成が開示され,本件特許の出願時にそれ単独で周知の構成であったと認められるのであるから,これを1つの技術的思想として当業者が把握することに困難性はないものといわなければならない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(3)また,被告は,甲32には,「クッション弁」としての「ユニット6」が示されているだけであり,本件発明1のように全ストロークに亘って作用する流量調整弁の発明は開示されていない主張する。
甲32発明のユニット6は,ピストンロッド8のストロークエンドでのみ作動し,ピストンロッド8の全領域に亘って作動するものでないが,それは,前示のとおり,クッション部材13により流体の流路が切り換えられたことによるものであり,ユニット6自体は,一方向においては逆止弁が閉じた状態で絞り弁により流量を調整する一方,他方向においては逆止弁が開いて自由流れを許容するという,一般的な絞り弁としての機能を果たしているにすぎず,それ自体周知の構成と認められるのであるから,そのような構成をピストンの作動する全ストロークに亘って作用するよう用いることについて,困難性はないものといわなければならない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
2取消事由2(無効理由1のうち甲34発明に関する認定の誤り)について(1) 原告は,審決が,前記相違点1の判断において,甲34発明に関し,「甲34のクランプシリンダには,ロッドカバー7に側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bが設けられ,これらのポートは断面T字状の通路を形成していると認められる。そして,上記記載事項ウには,側面配管ポート15a,15bを配管に接続する場合は,端面配管ポート17a,17bは埋栓で塞ぎ,端面配管ポート17a,17bを配管に接続する場合は,側面配管ポート15a,15bは埋栓で塞ぐことが記載されている。これは,配管接続の自由度を増すためであると考えられるが,側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を設けると,配管は端面配管ポート17a,17bにしか接続できず,結局,配管接続の自由度を低下させることになる。」(22頁33行〜23頁6行)と認定し,「例え,ハウジング又はケーシングに設けられたT字状の通路のアングル流路のエルボ部分に流量調整弁を挿入すること自体が周知・慣用の技術であったとしても,甲34発明の側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bは,配管の接続方向を選択可能にするために設けたのであるから,両配管ポートのうち側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を挿入することが,容易であるとは認められない。」(23頁7行〜12行)と判断して,本件発明1の進歩性を肯定したことが誤りであると主張する。
審決の上記判断は,甲34のクランプシリンダでは,ロッドカバー7に側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bを設け,両配管ポートに配管に接続することを可能とし,配管接続の自由度を増大させているところ,両配管ポートのうち側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を設けると,配管は端面配管ポート17a,17bにしか接続できず,配管接続の自由度を低下させるから,当業者が,側面配管ポート15a,15bに流量制御弁を挿入することを容易に想到するものではないとしたものと解される。
(2) ところで,本件発明1の特許請求の範囲は,「流量調整弁は,前記油路の途中部に形成された弁孔と,この弁孔に少なくとも部分的に挿入される弁体部を有し,この弁体部が弁孔に接近/離隔する方向にクランプ本体に相対移動可能に設けられ弁体部と弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え,前記クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,前記弁部材が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着され,前記弁部材は,この弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部を有し,前記油路は,前記油圧ポートと前記装着穴とを接続する第1油路と,前記油圧シリンダの油室に連なる第2油路とを含み,前記弁部材は,前記弁体部と弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と,このバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁をさらに有する」というものであり,流量調整弁の配置については,油圧ポートと油圧シリンダの油室の途中に,弁体部を挿入する弁孔が設けられ,クランプ本体に設けられた装着穴に固定された弁ケースに,弁体部と弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材が出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着されることが規定されるだけであり(なお,流量調整弁を境界として,油圧ポートと装着穴とを接続する第1油路と,油圧シリンダの油室に連なる第2油路とに区分される。),それ以上に流量調整弁を設置する場所が特定されるものではない。
(3) 甲34によれば,ロッドカバー7の側面配管ポート15a,15bを配管に接続する場合は,端面配管ポート17a,17bは埋栓で塞ぎ,端面配管ポート17a,17bを配管に接続する場合は,側面配管ポート15a,15bは埋栓で塞ぐことが記載されており,甲34発明は,適宜,両配管ポートに配管を接続することを可能とすることにより,配管接続の自由度を増大させていると解することができる。
しかし,本件発明1の流量調整弁は,前示のとおり,油圧ポートと油圧シリンダの油室の途中に設けられ,クランプ本体に固定された弁ケースに弁部材が出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着されることが規定されるだけであり,前記相違点1の検討において,甲34発明のクランプシリンダに,甲32発明に開示された流量調整弁(ユニット6)を適用しようとする場合も,その位置が側面配管ポート15a,15bに限定されるものではなく,例えば,弁部材が出力ロッドの長手方向と交差する方向に螺着できるのであれば,油圧シリンダの油室から両配管ポートの分岐箇所までの適宜の位置に流量制御弁を設けることも検討可能であるから,甲34発明が配管接続の自由度を増大させていることは,当業者による前記適用を阻害する理由となるものではない。
(4) 被告は,甲34発明において,配管ポートを側面と端面との2箇所に設けているのは,配管接続の自由度を増すためであるところ,側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bのいずれのポートに油圧配管を接続した場合にも,同じ機能が得られるようにしなければ,配管接続の自由度が増したことにはならず,端面配管ポート17a,17bに油圧配管を接続する状態だけでなく,側面配管ポート15a,15bに油圧配管を接続する状態も併せて考慮しなければならないと主張する。
しかし,前記のとおり,甲32発明に開示された流量調整弁を,甲34発明のクランプシリンダに適用しようとする場合,その位置は,側面配管ポート15a,15b及び端面配管ポート17a,17bのいずれかに限定されるものではないから,被告の前記主張は,その前提において誤りがあり採用できない。
3本件発明1の容易想到性について以上1及び2で判断したとおり,審決が本件発明1と甲34発明との間の相違点1についてした容易推考性判断には,原告が取消事由1及び2で主張する誤りがあり,甲32発明の構成を適用して甲34発明から相違点1の構成に至ることは,当業者にとって容易に推考可能であるものといわなければならない。
そして,本件発明1と甲34発明との間の相違点2を容易想到とした審決の判断については,当事者双方から特段の主張立証はないので,本件発明1は,甲34発明に甲32発明の構成を適用することによって,容易に推考し得たものというべきである。
4その他の取消事由(本件発明2以下の判断)について審決は,本件発明2が本件発明1を引用することを理由にその進歩性を認めている(23頁25行〜26行)。しかし,前記取消事由1及び2に説示したとおり,本件発明1には進歩性が認められないから,本件発明2における「油圧を微調整する為の切欠状の溝部であって,先端側ほど溝の深さが深い溝部が形成されたことを特徴とする」との構成について検討した上,改めて本件発明2の進歩性を判断すべきものといえる。
また,審決は,本件発明3が本件発明1と実質的に同じであることを理由にその進歩性を認めている(24頁23行〜26行)。そうすると,本件発明1に進歩性が認められない以上,本件発明3も進歩性が認められないこととなる。さらに,審決は,本件発明4について,本件発明1〜3を択一的に引用した上,限定事項が付加されているとし(24頁33行〜末行),本件発明5について,本件発明1〜4を択一的に引用した上,限定事項が付加されているとする(25頁2行〜4行)。そうすると,本件発明4及び5については,上記限定事項について検討した上,改めてその進歩性を判断すべきものといわなければならない。
第6結論以上によれば,原告の主張する取消事由には理由があり,審決は取り消されるべきものといわなければならない。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 清水節
裁判官 古谷健二郎