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関連審決 不服2002-8801
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事件 平成 15年 (行ケ) 30号 審決取消請求事件
原告 大日本スクリーン製造株式会社
訴訟代理人弁理士 杉谷勉
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 加藤友也
同 高木進
同 西川惠雄
同 岡田孝博
同 宮川久成
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/10/18
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-8801号事件について平成14年12月9日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成2年4月16日にした特許出願(特願平2-100667号)の一部につき平成9年4月15日にした新たな特許出願(特願平9-96979号)の一部につき,平成13年5月11日,発明の名称を「基板処理装置」とする新たな特許出願(特願2001-141900号,以下「本件特許出願」という。)をしたが,平成14年4月11日に拒絶の査定を受けたので,同年5月16日,これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は,同請求を不服2002-8801号事件として審理した上,同年12月9日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。
2 願書に添付した明細書(平成14年6月14日付け手続補正書による補正後のもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の【請求項1】を引用する【請求項5】記載の発明(以下「本願発明」という。)の要旨 基板を多段に収納したカセットを載置するためのカセット載置部と, 前記カセット内の基板を順次取り出すように前後動し,かつ前記カセットに対して昇降する基板取り出し機構と, 前記基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,カセットから取り出した基板の周縁に当接して,基板の位置合わせをする位置合わせ機構と, 前記位置合わせ機構により位置合わせされた基板を前記基板取り出し機構から受け取って処理部に搬送する基板搬送機構と を備え, 前記装置はさらに,高さ方向に移動してカセット内の基板の有無を検出する検出手段を備えており, 前記基板取り出し機構は,前記検出手段によって検出されたカセット内の基板に対する位置に対して昇降し,前後動して基板の取り出しを行う基板処理装置。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明は,特開平2-1113号公報(甲10,以下「引用例1」という。),特開平1-140739号公報(甲11,以下「引用例2」という。)及び特開昭59-175740号公報(甲12)記載の発明ないし技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとした。
原告主張の審決取消事由
審決は,本願発明と引用例1(甲10)記載の発明(以下「引用例1発明」という。)との相違点2についての認定判断を誤った(取消事由1)ものであり,また,審決の結論に影響を与えるべき審判手続上の瑕疵がある(取消事由2)から,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点2についての認定判断の誤り) (1) 審決は,本願発明と引用例1発明との相違点2として認定した,「本件発明(注,本願発明)は,基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,カセットから取り出した基板の周縁に当接して,基板の位置合わせをする位置合わせ機構を有しているのに対し,引用例1記載の発明(注,引用例1発明)は,そうでない点」(審決謄本6頁「相違点2」)について,「本件(注,本願発明)の請求項1の『基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,・・・』という記載における『時』には,『基板取り出し機構がカセットから基板を取り出した後』で『処理部に搬送する前』という技術的意味しか認められず,基板取り出し機構がカセットから直線的に後退運動することと,基板の位置合わせ機構との関連について,それ以上の技術的意義を見出すことはできない。一方,引用例2(注,甲11)には,ウェハ保持具74(『基板取り出し機構』に相当する。)によりカセット1からウェハ2(『基板』に相当する。)を直線的に後退させて取り出した後で,該ウェハ2をプロセス処理工程(『処理部』に相当する。)に受け渡す前に,4本のセンタリングピン11をウェハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動(『基板の周縁に当接』に相当する。)させて,ウェハ2のセンタリング(『基板の位置合わせ』に相当する。)を行うことが記載されている。そして,基板をカセットから取り出した後,処理部に搬送するまでの間のどの位置で基板の位置合わせを行うかは,当業者が適宜選択することができるものである。したがって,引用例1記載の発明に,引用例2記載の技術的事項を適用し,その際に,基板取り出し機構が基板を取り出した位置で基板の位置合わせを行うようにすることは,当業者であれば容易に想到したことである」(同6頁〜7頁「相違点2について」)と判断したが,誤りである。
(2) 本願発明の上記「時に」は,「基板取り出し機構がカセットから基板を取り出したその時に」,すなわち,「基板取り出し機構がカセットから基板を取り出したその位置で」という技術的意味があり,審決は,この点を看過したものである。また,基板取り出し機構がカセットから直線的に後退移動したその時に,つまり後退移動したその位置で,基板の位置合わせ機構が作動して基板の位置合わせが行なわれるのであるから,基板取り出し機構がカセットから直線的に後退移動することと,基板の位置合わせ機構との関連性は明らかである。基板取り出し機構の後退移動と基板の位置合わせ機構との関連性は,本願発明によれば基板の位置合わせを迅速に行う,すなわち,別の位置合わせ場所に移送するなどの無駄な移送過程を経ることなく,カセットから取り出された基板をすぐに(取り出された基板をその位置で)位置合わせするという技術的意義を有する。
(3) 引用例2(甲11)の場合,ウエハ保持具74によりカセット1からウエハ2を後退させた時にセンタリング(位置合わせ)を行うのではなく,取り出したウエハ2をロボットアーム72の旋回操作により位置決め装置8にまで移送した後にセンタリングをしているのであるから,引用例2に記載された技術的事項は,「ウエハ保持具74によりカセット1からウエハ2を直線的に後退させて取り出し,該ウエハ2をプロセス処理工程に受け渡す前に,ロボットアームの旋回操作によりウエハセンタリング位置決め装置8まで移送し,ここで4本のセンタリングピン11をウエハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動させて,ウエハ2のセンタリングを行うこと」と認定されるべきであるが,審決は,引用例2に記載された技術的事項に関して,上記のカセット1から取り出したウエハ2を,ロボットアームの旋回操作によりウエハセンタリング位置決め装置8まで移送する点を看過した誤りがある。
(4) 引用例2(甲11)は,ウエハ2を保持したウエハ保持具74がカセット1から直線的に後退したその時に(後退したその位置で),ウエハ2を位置決めしようとすると,ロボット7と位置決め装置8との干渉の問題が生じることから,本願発明のように,基板をカセットから取り出したその時に,すなわち,基板をカセットから取り出したその位置で,基板の位置合わせを行うことは当業者が適宜選択できるものでない。他方,本願発明は,@基板取り出し機構がカセットから直線的に後退したその時に(後退したその位置で),基板の位置合わせをするので,引用例2の場合のように,位置合わせのために基板を移送する必要がなく,それだけ基板を迅速に処理部へ搬送することができ,A基板移送過程における基板の脱落・破損といった不都合も未然に防止することができるという特有の効果をも奏するものである。
(5) 被告は,後退した時に,すなわち,後退したその位置で基板の位置合わせを行うことは,特開平1-110747号公報(乙1,以下「乙1公報」という。)に記載されているように本件特許出願前(本件特許出願の出願日が遡及する平成2年4月16日前を指す。以下同じ。)に周知の技術的事項であると主張するが,同主張は,新たな拒絶理由というべきであり,本件訴訟において許されるべきでない。
2 取消事由2(審判手続上の瑕疵) 本願発明の「基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,・・・基板の位置合わせをする」という技術的事項は,引用例2(甲11)に何ら記載されておらず,その技術的意義を正しく理解すれば,当業者が適宜設計し得る事項でないことは明らかであるから,上記技術的事項に類似する引用例として乙1公報が発見された場合は,新たな拒絶理由の発見であり,当該拒絶理由は審判の段階で出願人に通知されなければならない(特許法159条において準用する同法50条)。しかしながら,本件の審判手続において,出願人である原告に対し,上記拒絶理由の通知はされておらず,その結果,原告は意見書及び手続補正書を提出する機会を奪われた。仮に,審判の段階で乙1公報を根拠とした新たな拒絶理由が通知されていたならば,原告は,本願発明と乙1公報との差異を意見書で主張するか,あるいは,特許請求の範囲の記載を補正することができ,審決の結論は異なったものになったはずである。したがって,本件の審判手続には審決の結論に影響を与える手続上の瑕疵があるというべきである。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(相違点2についての認定判断の誤り)について (1) 引用例2(甲11)の記載から,審決で認定した技術的事項を認定することは可能であり,審決の引用例2の認定に誤りはない。そもそも,引用例から,どのような発明,技術的事項を認定しても,そのような認定が可能である以上,引用例記載の発明,技術的事項の認定に問題はない。
(2) 審決が引用例2(甲11)から認定した技術的事項は,「ウェハ保持具74によりカセット1からウェハ2を直線的に後退させて取り出し,該ウェハ2をプロセス処理工程に受け渡す前に,4本のセンタリングピン11をウェハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動させて,ウェハ2のセンタリングを行うこと」(審決謄本4頁第3段落)であり,位置決めを引用例2に記載されたようなロボットにより行うことを認定したものではない。また,後退した時に,すなわち,後退したその位置で基板の位置合わせを行うことは,乙1公報に記載されているように本件特許出願前に周知の技術的事項である。そして,引用例1発明に引用例2記載の技術的事項を適用し,基板取り出し機構が直線的に後退してカセットから基板を取り出したその時に,基板の位置合わせをすることを想到した場合に,基板取り出し機構と干渉しないような位置合わせ機構を採用することは,当業者が当然に行うことである。
2 取消事由2(審判手続上の瑕疵)について 本件の審判手続に原告主張の瑕疵はない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点2についての認定判断の誤り)について (1) 原告は,本願発明の請求項1における「時に」は,「基板取り出し機構がカセットから基板を取り出したその時に」,すなわち,「基板取り出し機構がカセットから基板を取り出したその位置で」という技術的意味があり,審決は,この点を看過したものであると主張する。
そこで,本願発明について検討すると,本願発明は,上記第2の2のとおり,「基板取り出し機構」について,「前記カセット内の基板を順次取り出すように前後動し,かつ前記カセットに対して昇降する基板取り出し機構」と前後動する構成とした上,「位置合わせ機構」について,「前記基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,カセットから取り出した基板の周縁に当接して,基板の位置合わせをする位置合わせ機構」と特定し,さらに,「基板搬送機構」について,「前記位置合わせ機構により位置合わせされた基板を前記基板取り出し機構から受け取って処理部に搬送する基板搬送機構」と特定している。これによれば,@「位置合わせ機構」が位置合わせをする時は,前記基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時であり,「『基板取り出し機構がカセットから基板を取り出した後』で『処理部に搬送する前』」(審決謄本6頁下から第3段落)ということができ,また,A「位置合わせ機構」が位置合わせをする場所は,「基板取り出し機構」がカセットから直線的に後退して「基板を取り出した場所」ということができるところ,審決は,上記Aの点について触れるところはない。しかしながら,本願発明の要旨において,「位置合わせ機構」が位置合わせをする場所については,直接的に何ら規定されていないのであるから,審決が上記Aの点について触れていないこと自体を誤りということはできない。
(2) 原告は,引用例2(甲11)に記載された技術的事項は,「ウエハ保持具74によりカセット1からウエハ2を直線的に後退させて取り出し,該ウエハ2をプロセス処理工程に受け渡す前に,ロボットアームの旋回操作によりウエハセンタリング位置決め装置8まで移送し,ここで4本のセンタリングピン11をウエハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動させて,ウエハ2のセンタリングを行うこと」と認定されるべきであるが,審決は,引用例2に記載された技術的事項に関して,上記のカセット1から取り出したウエハ2を,ロボットアームの旋回操作によりウエハセンタリング位置決め装置8まで移送する点を看過した誤りがあると主張する。
そこで,引用例2の記載を検討すると,引用例2には,@「吸着式ウエハ保持具を装備し,ロボットアームの操作によりカセットから取出したウエハをウエハ処理装置へ受け渡しする半導体ウエハ搬送機器に対し,ウエハ搬送の途上でウエハをウエハ保持具に対してセンタリング位置に修正保持させるウエハセンタリング位置決め装置であって,ウエハ保持具の移動軌跡上に配備した案内基台と,該案内基台のセンタに対して点対象に分散位置して基台面より上方に突出し起立し,かつ案内基台の半径方向へ可動にガイド支持された複数本のセンタリングピンと,各センタリングピンを同時に同量だけ半径方向へ移動操作する駆動部とから成り,ウエハ搬送途上でウエハ保持具を前記案内基台のセンタ位置に移動させ,ここでウエハの吸着を一旦解除した状態で前記センタリングピンをウエハの周縁に引き寄せてウエハをウエハ保持具上のセンタリング位置に修正移動し,この位置でウエハをウエハ保持具へ再度吸着保持させることを特徴とする半導体ウエハ搬送機器のウエハセンタリング位置決め装置」(1頁左下欄〜右下欄「特許請求の範囲」の請求項1),A「〔従来の技術〕まず第5図,第6図により通常使用されている頭記ウエハ搬送用ロボットの構成,並びにウエハカセットとウエハ処理装置との間で行うウエハ搬送動作に付いて説明する。図において,1は複数枚のウエハ2を上下段に並べて収容したカセット,3はプラズマCVD装置等のプロセス反応室に連なるロードロック室,4はロードロック室3の前段に設けた中継準備室,5a,5bは中継準備室4の入口,出口側通路を仕切るゲート弁,6は中継準備室内に配備して室外より搬入されたウエハを受容保持する中継トレーである。なお中継トレーに受け渡しされたウエハは図示されてないウエハ搬送装置により反応室内に搬入される。ここで中継準備室4に入口に対向して室外側にはウエハ搬送機器としてのロボット7が設置されている。このロボット7は周知のメカニカルパンタグラフ型ロボットであって,その構成は駆動部71と,駆動部の出力軸に結合されて上下(Z方向),旋回(θ方向)操作されるアーム72と,アーム72の上で左右方向に直線移動操作されるアーム73と,該アーム73の先端に取付けたウエハ保持具74とから構成されたものであり,かかる構成でアーム72,73を移動操作することにより,ウエハ保持具74をX,Y,Zの座標系上で移動操作することができる。また該ロボット7はウエハ保持具74におけるウエハ吸着面のセンタ01を基準点として所望の動きを与えるように運転制御部に与えたプログラム指令による数値制御で移動操作される。一方,ウエハ保持具74はウエハ吸着トレーとしてそのトレーの面上にウエハ2をフェースアップに吸着保持する真空吸着機構75の吸引穴が開口している。かかる構成でロボット7の操作によりカセット1から所定の順位で1枚のウエハ2を取り出してウエハ保持具74の上面に吸着保持させ,矢印Pの搬送経路をたどって開放したゲート弁5bを通じて中継準備室4内に搬入し,ここでウエハ2を中継トレー6に受け渡す。なお中継トレー6は,その中央部がロボット7側のウエハ保持具74と干渉し合わないように切欠いた2分割の受け皿構造であり,その周縁には内周側に傾斜したテーパ付きガイド部を備えている。ここで中継トレー6へのウエハ受け渡しが済むと,ロボット7のウエハ保持具74を室外に後退させ,ゲート弁5bを閉じた上で中継準備室4を真空排気する。次いでロードロック室3との間のゲート弁5aを開き,図示されてないロードロック室側に配備のウエハ搬送装置により中継トレー6上に受容保持されているウエハ2を受取り,ここから図示されてないプロセス反応室内へ送り込む。ここで所定のウエハ処理が済み,ウエハが搬出経路を通じて室外に搬出されると,続いて前記と同様にロボット7の操作で次に処理するウエハ2がカセット1より取り出されて中継準備室4に送りこまれる」(2頁左上欄最終段落〜右下欄第1段落),B「〔発明が解決しようとする問題点〕ところで前記のウエハ搬送過程では,ウエハ搬送機器としてのロボット7による中継トレー6への受け渡しの際にしばしば中継トレー6に対するウエハ2の受け渡し位置がずれ,ここに中継トレー6のテーパガイド面滑り具合の不安定さ等が加わってウエハが中継トレー6上で斜め姿勢に引っ掛かる等の受け渡しミスの生じることがある。なおこのようなウエハ受け渡し位置のずれ発生の原因は,ウエハ外径寸法の公差等の他にカセット1内でのウエハ2の収容位置のずれ,ロボット7のウエハ保持具74でカセット1からウエハ2を吸着して取り出す際の滑り等でウエハ保持具74に対してウエハ2が正しいセンタリング位置に保持されないことが要因となるもので,このようなセンタリング位置にずれがあるとロボット7の動作精度が如何に高くても中継トレー6への受け渡し位置にずれが生じるようになる。しかもこのような移し替えミスが生じると後段でのウエハ搬送工程に支障を来すので,その都度装置の運転を停止して作業員によるウエハ位置修正をしなければならない等,装置全体でのスループットの低下をもたらす。この発明は上記の点にかんがみ成されたものであり,その目的はウエハ搬送機器の操作によりカセットから取り出したウエハを,プロセス処理装置へ受け渡しする以前のウエハ搬送途上でウエハ保持具に対し正しいセンタリング位置に修正保持させるようにしたウエハ搬送機器のウエハハンドリング位置決め装置を提供することにある」(2頁右下欄第2段落〜3頁左上欄第2段落),C「〔作用〕上記の構成で,案内基台には例えば4本のセンタリングピンが基台上に分散開口した半径方向のガイド溝内にガイド支持されており,また駆動部は各センタリングピンの基部と嵌合し合うスクロール溝を有する案内基台のセンタに同心配備されたカム板と,該カム板を回転操作する駆動モータとから成る。ここでカセットから取り出したウエハをウエハ処理装置へ受け渡しする搬送途上でウエハ保持具をセンタリング位置決め装置へ移送し,ここで案内基台のセンタ位置にウエハ保持具のセンタを合わせて停止した上でウエハの吸着を一旦解く。一方,案内基台側ではセンタリングピンが基台の外周側に後退待機しており,ここで駆動モータによりカム板を回転操作すると,複数本の各センタリングピンは工作機械のスクロールチャックと同様に同時に同量だけ案内基台のガイド溝に沿って求心移動し,この過程でセンタリングピンがウエハの外周縁を挟み込んで案内基台のセンタ位置へ引き寄せるようになる。これによりウエハ保持具上に自由状態で搭載されているウエハはセンタリングピンによる前記の引き寄せ操作でウエハ保持具のセンタリング位置に移動し,カセットからの取出し過程で生じたセンタリング位置のずれが正しい位置に修正されることになる。したがってこの修正位置でウエハをウエハ保持具に再度吸着保持させ,続いてロボット操作によりウエハ搬送を再開させることにより,ウエハを処理装置側の中継トレーへ移し替えミスなしに正しく受け渡すことができる。しかも前記のセンタリングピンの引き寄せ操作により,同じ装置でウエハサイズの変更,ウエハ外径公差のバラツキ等にもフレキシブルに対応させることが可能である」(3頁右上欄第2段落〜右下欄第1段落),D「次に上記構成によるウエハのセンタリング位置決め動作に付いて説明する。ウエハ2はロボット7の操作によりウエハ保持具74を介してカセットより一枚宛取り出され,続くロボットアームの旋回操作による搬送行程の途上でプロセス処理装置へ受け渡す以前にウエハセンタリング位置決め装置9へ移送され,ここで後述するセンタリング修正操作を行った後にプロセス処理装置側に移送してその中継トレー6に受け渡しされる。すなわちカセット1から取り出したウエハ2がロボット操作によりウエハ保持具74の上面に吸着保持されたままウエハセンタリング位置決め装置8まで移送されると,ここでウエハ保持具74をそのウエハ吸着面のセンタ01が案内基台10のセンタ02と一致するように両者を位置合わせして停止し,この位置でウエハ2の吸着を一旦釈放する。次に駆動モータ15でカム板14を回転操作し,案内基台10の外周側に待機位置していた4本のセンタリングピン11をガイド溝13に沿って同時に同量だけウエハ2を外周より挟み込むようにセンタ02に向けて引き寄せ移動操作する。これによりカセット1からウエハ2を取り出す過程でウエハ保持具74との間に生じたセンタリング位置のずれがセンタリングピン11の引き寄せ過程で修正移動され,ウエハ2はウエハ保持具74の上でそのセンタ01に正しくセンタリング位置されるようになる。このようにしてセンタリング位置の修正操作が行われると,次にウエハ保持具74でウエハ2を再度吸着保持し,ここからロボット7を再始動してウエハ保持具74をプロセス処理装置側の中継トレー6に対する指定の受け渡し位置まで移送し,ここでウエハ保持具の吸着を解いてウエハ2を中継トレー6へ受け渡しする。しかもこの受け渡し搬送過程では,当初にカセット1から取出した際に生じたセンタリング位置のずれ分が前記のセンタリング操作により修正されており,これによりウエハ2は受け渡しミスの発生なしに中継トレー6に対してそのセンタリング位置に精度よく受け渡すことができる」(4頁右上欄第2段落〜右下欄第1段落),E「〔発明の効果〕以上述べたようにこの発明によれば,・・・ロボット操作でカセットよりウエハを取り出す過程で生じたウエハ保持具に対するウエハの位置のずれを,そのウエハ搬送経路の途上に配備したセンタリング位置決め装置で正しいセンタリング位置に修正した上で次の工程へ搬送させることができ,これによりウエハをウエハ処理装置側へ受け渡しさせる際にその中継トレーへ受け渡しミスなしに位置精度よく,かつ円滑に受け渡すことができる。しかもそのセンタリング位置修正をセンタリングピンの引き寄せ操作により行うので,ウエハサイズの変更,ウエハ外径公差のバラツキ等にもフレキシブルに対応させることができる」(4頁右下欄最終段落〜5頁右上欄第1段落)との記載がある(審決は,上記Dを引用例2記載の技術的事項として引用している〔審決謄本3頁下から第2段落〜4頁第1段落〕。)。
上記記載によれば,引用例2には,技術的事項として,審決の説示するとおり,「ウェハ保持具74によりカセット1からウェハ2を直線的に後退させて取り出し,該ウェハ2をプロセス処理工程に受け渡す前に,4本のセンタリングピン11をウェハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動させて,ウェハ2のセンタリングを行うこと」(審決謄本4頁第3段落)が記載されているものと認められる。これに対し,原告は,審決は,引用例2に記載された技術的事項に関して,上記のカセット1から取り出したウエハ2を,ロボットアームの旋回操作によりウエハセンタリング位置決め装置8まで移送する点を看過した誤りがある旨主張するが,引用例2には,上記のとおり,複数の技術的事項が記載されているところ,進歩性の判断に当たっては,特許出願前に頒布された刊行物に記載された複数の技術的事項をすべて認定しなくてはならないものではなく,その判断に必要な部分を認定することができるし,また,それで足りることは当然というべきであるから,引用例2に記載された技術的事項についての審決の上記認定に,原告主張の看過があるということはできない。
(3) 原告は,引用例2(甲11)は,ロボット7と位置決め装置8との干渉の問題が生じることから,本願発明のように,基板をカセットから取り出したその時に,すなわち,基板をカセットから取り出したその位置で,基板の位置合わせを行うことは当業者が適宜選択できるものではないとも主張する。
しかしながら,引用例2の上記(2)Dには,ウエハの搬送途上で位置合わせを行うことのみが記載されているのであるから,基板をカセットから取り出した後,処理部に搬送するまでの間のどの位置で基板の位置合わせを行うかは,当業者が適宜選択することができるものというべきである。しかも,乙1公報によれば,搬送されるものに対し,外部から位置合わせを行う場合,連続する搬送動作に区切りをつける時点において,搬送されるものは静止状態となり,位置合わせが行い易くなること,また,その時点で位置合わせを行えば,次の搬送が安定化することは,本件特許出願前に,当業者の技術常識であったものと認められる。そうすると,当事者間に争いのない本願発明と引用例1発明の一致点である,「基板を多段に収納したカセットを載置するためのカセット載置部と,前記カセット内の基板を順次取り出すように前後動する基板取り出し機構と,前記基板を前記基板取り出し機構から受け取って処理部に搬送する基板搬送機構とを備えたことを特徴とする基板処理装置」(審決謄本5頁最終段落〜6頁第1段落)において,基板取り出し機構が,基板を取り出して,カセットから直線的に後退した時は,連続する搬送動作に区切りがつく時であるから,共に同一技術分野に属し,上記一致点に係る構成を有する引用例1発明に,引用例2に記載された技術的事項を適用するに当たって,基板取り出し機構が基板を取り出して,カセットから直線的に後退した時に,基板の位置合わせを行う構成を採ることは,当業者が容易に想到し得るものというべきである。
また,引用例2の上記(2)Dの記載によれば,その位置合わせ機構は,「4本のセンタリングピン11をウェハ2を外周より挟み込むように引き寄せ移動させて,ウェハ2のセンタリングを行う」との構成を有するものであるから,この構成の空間的配置として,基板(ウエハ)周辺部に位置させる構成が普通に考えられること,また,引用例1(甲10)の第4図及び引用例2の第1図に図示された各基板取り出し機構の大きさは,基板と同程度のものであり,基板取り出し機構は基板の下部に配置されているから,基板の周辺部には空間があり干渉するものがないこと,引用例2記載の基板取り出し機構は,上下動が可能であるから,基板の搬送路を位置合わせ機構と上下に分離可能にできることを併せ考えれば,基板取り出し機構と位置合わせ機構との干渉の問題が生じるとは認められず,原告主張の阻害要因があるということはできない。
さらに,原告は,本願発明は,@基板取り出し機構がカセットから直線的に後退したその時に(後退したその位置で),基板の位置合わせをするので,引用例2の場合のように,位置合わせのために基板を移送する必要がなく,それだけ基板を迅速に処理部へ搬送することができ,A基板移送過程における基板の脱落・破損といった不都合も未然に防止することができるという特有の効果をも奏するものである旨主張する。
しかしながら,当業者が本願発明を容易に想到し得ることは,上記のとおりであるところ,原告が主張する上記@,Aの効果は,本願発明の構成自体から通常予想される効果にすぎない。したがって,本願発明は,その構成自体から通常予測し得ない顕著な作用効果を奏するものということもできない。
(4) 原告は,後退した時に,すなわち,後退したその位置で基板の位置合わせを行うことは,乙1公報に記載されているように本件特許出願前に周知の技術的事項である旨の被告の主張は,新たな拒絶理由というべきであり,本件訴訟において許されるべきでないと主張する。
しかしながら,引用例2の上記(2)Dには,ウエハの搬送途上で位置合わせを行うことのみが記載されているのであるから,基板をカセットから取り出した後,処理部に搬送するまでの間のどの位置で基板の位置合わせを行うかは,当業者が適宜選択することができるものというべきであり,乙1公報によれば,搬送されるものに対し,外部から位置合わせを行う場合,連続する搬送動作に区切りをつける時点において,搬送されるものは静止状態となり,位置合わせが行い易くなること,また,その時点で位置合わせを行えば,次の搬送が安定化することが,本件特許出願前に,当業者の技術常識であったものと認められることは,上記(3)のとおりであるところ,周知の技術的事項ないし当業者の技術常識を立証するために,審判で提出していなかった証拠を,審決取消訴訟において提出することは許されるところであり,これを新たな拒絶理由ということはできないから,原告の上記主張も採用することができない。
(5) 以上によれば,原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(審判手続上の瑕疵)について 原告は,本願発明の「基板取り出し機構がカセットから直線的に後退した時に,・・・基板の位置合わせをする」という技術的事項は,引用例2(甲11)に何ら記載されておらず,その技術的意義を正しく理解すれば,当業者が適宜設計し得る事項でないことは明らかであるから,上記技術的事項に類似する引用例として乙1公報が発見された場合は,新たな拒絶理由の発見であり,当該拒絶理由は審判の段階で出願人に通知されなければならない(特許法159条において準用する同法50条)と主張する。しかしながら,乙1公報を審決取消訴訟において提出することが許され,これを新たな拒絶理由ということができないことは,上記1の(4)のとおりである。
したがって,本件の審判手続に原告主張の手続上の瑕疵があるということはできず,原告の取消事由2の主張も理由がない。
3 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴