関連審決 | 不服2009-16558 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成22行ケ10187審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成22行ケ10147審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成22行ケ10033審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10247審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10344審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 創作性(創作) / 物の発明 / 使用方法 / 29条1項3号 / 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 引用発明の認定 / 発明特定事項 / 一致点の認定 / 技術常識 / 共同出願 / 参酌 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 非公知 / 実施 / 混同 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / |
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事件 |
平成
22年
(行ケ)
10163号
審決取消請求事件
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原告株式会社伏見製薬所 原告X 上記両名訴訟代理人弁理士 山内康伸中井博 被告特 許庁長官 同 指定代理人星野紹英上條の ぶよ北村明弘豊田純一 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2010/12/22 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が不服2009-16558号事件について平成22年3月31日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告らが,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1特許庁における手続の経緯(1)出願手続(甲3)及び拒絶査定原告株式会社伏見製薬所(以下「原告会社」という。)は,平成15年1月9日,発明の名称を「経管栄養剤」(出願当時の発明の名称は「経管栄養剤,経管栄養剤セットおよび経管栄養剤の投与方法」)とする特許を出願した(特願2003-003526)。 原告会社は,平成20年9月5日,特許庁長官に対し,原告Xとの共同出願とする旨名義人変更を届け出た。 原告らは,平成21年5月29日付けで拒絶査定を受け(甲26),同年9月8日,これに対する不服の審判を請求した(甲27)。原告らは,平成22年2月22日付けで手続補正を行った(以下「本件補正」という。甲4)。 (2)審判手続及び本件審決特許庁は,これを不服2009-16558号事件として審理し,平成22年3月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その審決謄本は,同年4月22日,原告らに送達された。 2本願発明の要旨本件審決が判断の対象とした本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所である。以下,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」といい,本願発明に係る明細書(甲4)を「本願明細書」という。 胃瘻に配置された管状材を通して,数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される栄養剤であって,/該栄養剤は,/その粘度が,1000ミリパスカル秒以上〜60000ミリパスカル秒以下の粘体であって,/管状材を通過する前後において,粘体の状態が維持されるように調製されている/ことを特徴とする経管栄養剤3本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本願発明は,下記ア及びイの引用例1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである,というものである。 ア引用例1:藤岡真「PEGを施行し半固形状食品を胃瘻より直接注入することで種々のトラブルを解消できた症例」第12回青森静脈・経腸栄養研究会プログラム17頁(平成13年発行。甲1)イ引用例2:蟹江治郎ほか「固形化経腸栄養剤の投与により胃瘻栄養の慢性期合併症を改善し得た1例」日本老年医学会雑誌39巻4号448〜451頁(平成14年発行。甲2)(2)本件審決は,その判断の前提として,引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。),本願発明と引用発明との一致点及び相違点を,以下のとおり認定した。 ア引用発明:胃瘻から注入した半固形状食品(R)テルミールソフトイ一致点:胃瘻に配置された管状材を通して,供給される経管栄養剤ウ相違点1:本願発明では,「粘度が,1000ミリパスカル秒以上〜60000ミリパスカル秒以下の粘体であって」と特定されているのに対して,引用発明では,そのような特定がされていない点エ相違点2:本願発明では,「管状材を通過する前後において,粘体の状態が維持されるように調製されている経管栄養剤」と特定されているのに対して,引用発明では,そのような特定がされていない経管栄養剤である点オ相違点3:本願発明では,「数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される」と特定されているのに対して,引用発明では,そのような特定がされていない点4取消事由(1)一致点の認定の誤り(取消事由1)(2)相違点1についての判断の誤り(取消事由2)(3)相違点2についての認定判断の誤り(取消事由3)(4)相違点3についての判断の誤り(取消事由4)ア引用例1のすり替えイ引用例2の認定の誤りウ引用例1と引用例2との組合せの容易性の誤り第3当事者の主張1取消事由1(一致点の認定の誤り)について〔原告らの主張〕本件審決は,一致点に関して,引用発明に係る(R)テルミールソフトが「経管」の栄養剤であると認定したが,以下のとおり誤りである。 (1) 引用発明に係る「 (R)テルミールソフト」が現物の商品を指しているとするなら,引用例1の発行時及び本願出願時において,現物の商品の「(R)テルミールソフト」は「経口」栄養剤として販売使用されていたという事実があり(甲6,7),「経管」栄養剤として販売使用されていなかったし,予定もされていなかった。 (2) 引用発明が文献としての引用例1であるなら,その記載内容を誤って捉えたことになる。すなわち,引用例1は,食道代用の「再建胃管」に設けられた「再建胃管瘻」であり,胃として機能しない引用例1の治療技術と,胃が本来有する貯留能や排出能力を有していることを前提とする本願発明の治療技術とは,共通性はない。 (3)なお,引用例1の著者は,経腸栄養に関する専門ではない。 〔被告の主張〕本件審決の認定に誤りはない。 (1) 本件審決における「引用発明」は,「引用例1に記載された発明」であり,当該「引用発明」における「(R)テルミールソフト」は,当業者が引用例1の記載に接した場合に当然に想起する現実の商品である。引用例1の「胃瘻から(R)テルミールソフトを注入した」旨の記載は,本願明細書の【0001】等によれば,引用発明における「 (R)テルミールソフト」が,「胃瘻」という胃に設けた管(チューブ)を経て投与されると理解できるから,引用発明における「(R)テルミールソフト」が「経管」の栄養剤であることは明らかである。 原告らが提示する甲6等のパンフレットやラベルにおいて,「経口」栄養剤に該当する表記がされていたとしても,それは,「(R)テルミールソフト」なる商品が経口投与で使用されるものとして,当時販売されていたということを示すにすぎない。そして,「少量で栄養摂取ができるクリーミィタイプ」(甲6)と記載されるような当該商品の流動性を有する性状から,経口投与以外の投与態様があり得ないわけではなく,経管投与する場合が排除される理由はないから,引用例1で使用された栄養剤が「経管」の栄養剤であることは明らかである。 したがって,引用発明として,引用例1記載の「(R)テルミールソフト」を「経管」の栄養剤と認定したことに誤りはない。現実の商品である「(R)テルミールソフト」が経口栄養剤として販売使用されていたことを根拠に本件審決の認定が誤りであるとする原告らの主張には理由がない。 (2)原告らは,引用発明における胃瘻は,本願発明の治療技術と共通性はない旨主張するが,たとえ食道亜全摘術を受けた患者には「再建胃管瘻」が造設されることがあるとしても,引用例1には「胃瘻」と明記されていて,しかも,当該胃瘻から栄養剤を投与したと記載されているから,これを「再建胃管瘻」の意味で限定的に解すべき理由はない。引用例1記載の胃瘻は,栄養剤の投与にも利用される,通常の胃瘻と同様の機能を有するものと解するのが合理的である。 また,引用例1の「残胃にPEG施行。…胃瘻から半固形状食品(R)テルミールソフトを注入した」旨の記載は,「再建胃管瘻」を通して注入したというのではなく,栄養補給のための「胃瘻」が造設され,これを通して(R)テルミールソフトが投与されたことは明らかである。 2取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について〔原告らの主張〕相違点1の判断において,本件審決は,非公知の刊行物に基づいて,粘度の認定をしているが,これは出願時を基準としていない点で,重大な違法がある。 (1)本件審決は,当該商品の性状を記載したパンフレット「テルモの栄養補助食品 Line-Up」(テルモ株式会社,平成16年8月発行。甲17。以下,本件審決にならい「刊行物D」という。)によれば,上記「(R)テルミールソフト」の粘度は20℃で20000ミリパスカル秒であることが記載されており,刊行物Dは引用例1記載の試験が行われた時点よりもさらに後の,本件出願後の発行日が記載されたものであるとし,同一の商品名で市販されていたものであるから,本件出願時の当該商品と粘度は異ならないと判断した。 (2)しかしながら,進歩性判断の基準時は出願の時点であるから,進歩性判断に際して当業者(立場を変えれば,審判官)が参酌可能な文献は出願時前に刊行された公知文献でなければならないのが原則である。例外的に非公知文献による類推が許容される状況があるとすれば,それは何らかの予測可能な徴候あるいは示唆がある場合である。 (3)本件では,引用例1に粘度の示唆があったわけでもなく,引用例1が製品分析等によって粘度把握の可能性がある現物商品の(R)テルミールソフトであったわけでもなく,補充的な類推の前提となる記載が全くなかった事案であるから,例外的に非公知文献で粘度認定ができる余地はなく,原則にのっとり判断すべきである。 よって,本件出願後に発行された刊行物Dによる粘度認定には,進歩性判断の基準時を無視した違法がある。 〔被告の主張〕本件審決は,引用例1に記載された「(R)テルミールソフト」なる栄養剤の商品の物性及び性状を確認するために刊行物Dの記載を参酌したものであり,その認定判断に誤りはない。 (1) 「半固形状」という性状から,「 (R)テルミールソフト」が「特定の粘度を有する」ことは明らかであるから,引用例1で使用されている当該商品が本願発明で特定された範囲の粘度を有しているのであれば,たとえ引用例1において当該商品の粘度が明記されていなくても,本願発明に係る栄養剤と引用例1記載の「(R)テルミールソフト」とは,その粘度の範囲において「物」として差異があるとはいえないことになる。 (2) 一般に,出願時又は出願前の事実を認定をするために,出願後に発行された刊行物を参酌することは,直ちには否定されるものではなく,本件出願時の技術的知見を踏まえて,引用例1に記載された「(R)テルミールソフト」がいかなる粘度を有しているかを明らかにするために,出願後に発行された刊行物Dの記載を参酌することは違法ではない。 すなわち,本願出願日当時の技術的知見によれば,粘度の定義や測定方法は周知事項であり(甲29),粘度が「1000ミリパスカル秒以上〜60000ミリパスカル秒以下」の範囲には,多種の食品が含まれているから(甲29),引用例1の「(R)テルミールソフト」なる栄養剤についても,固有の粘度を有しており,測定可能であったことは明らかである。 さらに,「(R)テルミールソフト」の性状は,本願出願後の刊行物Dにおいても変更はないと考えられる。すなわち,刊行物Dには,「(R)テルミールソフト」の粘度は,20000ミリパスカル秒と記載されており,本願出願当時と比して,仮に当該商品の性状において多少の差異があったとしても,本願発明の粘度範囲(1000〜60000ミリパスカル秒)を外れるほどの性状変化が存在したとは考え難い。そして,出願当時のパンフレット等(甲6,7)と刊行物Dに記載された主な原材料には実質差異がないことから,同一の商品名で市販されていた「(R)テルミールソフト」は,購買者である消費者等に無用な混乱・混同を生じさせないよう,商品の性状を大きく変えることは考えられない。 (3) よって,引用例1の「 (R)テルミールソフト」が本願発明の粘度範囲に含まれる粘度を固有的に有しているから,相違点1につき,引用発明と本願発明とが実質的に相違するものとすることができないとした本件審決の判断に誤りはない。 (4) 原告らは,進歩性判断の基準時を無視していると主張するが,本件の場合,粘度の点では実質的に相違しないのであるから,他の公知文献を組み合わせて容易想到性を検討することは要しない。 3取消事由3(相違点2についての認定判断の誤り)について〔原告らの主張〕相違点2の判断において,本件審決は,引用例1のすり替えを行った上で本来の引用例ではない現実の商品に基づいて判断した点で違法である。 (1)本件審決は,引用例1を現実の商品である「(R)テルミールソフト」にすり替えたものである。 ア本件審決は,引用例1を現実の商品であると誤認したものであり,審理判断上の大きな過誤を犯しており,判断の前提に誤りがあるので,粘度の認定は成立しないし,状態維持の類推も誤っていることになる。 イ本件審決が現実の商品「(R)テルミールソフト」を引用したと誤認して判断したのであれば,引用例1を摘示していることと矛盾することになるし,仮に引用例1が現実の商品であれば,原告らは,その引用適格性(例えば,成分,粘度の把握可能性など)につき反論する機会を失ったことになる。 ウこのように,引用していないものに基づいて審決をしたことは,反論の機会を奪うという重大な手続違背であり,かつ引用例1の内容誤認という実体判断の違背も含んでいる。 (2)仮に,本件審決が引用例1のすり替えをしていないとしても,引用例1には粘度記載は全くないのであるから,本件審決は,根拠がないままこれを認定したことになり,それ自体重大な違法である。また,粘度認定を相違点1と同様に判断したのであれば,非公知文献により時間的判断基準を誤った認定をしたことになる。 〔被告の主張〕本件審決の相違点2の判断に誤りはない。 (1)本件審決及び拒絶理由通知書(甲28)においては,特許法29条2項に基づく拒絶理由として刊行物(引用例1)を引用したが,これは,当該刊行物に記載された発明を同条1項3号に該当するものとして引用し,この発明に基づいて,特許出願に係る発明が同条2項の拒絶理由に該当するか否かを判断するためである。 すなわち,本件審決が引用した「引用例1」は,特許法29条1項3号の「刊行物」であり,本願発明の進歩性の判断において本件審決が対比した「引用発明」は,「引用例1に記載された発明」であって,引用例1の記載事項から当業者に把握される技術思想である。よって,「引用例1の記載事項」と「引用例1に記載された発明」とを同一視して論議することは適当でない。 (2) 進歩性の判断において本願発明と対比される「引用発明」は,特許法29条1項各号に掲げる発明であり,「引用例1に記載された発明」が「引用発明」に該当する。 本件において引用例1における記載に接した当業者は,「(R)テルミールソフト」なる商品は,当時テルモ株式会社から現実に販売されていて,栄養剤の分野において利用されていた商品であると想起するから(甲6,7),本件審決が「引用例1に記載された発明」における「(R)テルミールソフト」が現実の商品であるとして対比及び判断をした点に誤りはない。 (3) 拒絶理由通知書(甲28)においても,進歩性の判断基準となる引用発明が「下記刊行物に記載された発明」であることは明記されているから,本件審決に至る手続の過程に何ら手続違背がないことは明らかである。 4取消事由4(相違点3についての判断の誤り)について〔原告らの主張〕本件審決の相違点3の判断には,以下のとおり誤りがある。 (1)引用例1のすり替えについて相違点3の判断においても,相違点2と同様,本件審決は,引用例のすり替えを行った上で,本来引用例ではない現実の商品に基づいて判断している点で,引用例を誤認した違法がある。 ア本件審決は,現実の商品「 (R)テルミールソフト」を誤って引用したのであるから,原告らは引用適格性(例えば,成分,粘度の把握可能性など)につき反論する機会を失ったことになるという,重大な手続違背があり,かつ引用例1の内容誤認という実体判断の違背を含んでいる。 イ仮に本件審決が引用例1のすり替えをしていないとしても,引用例1の記載事項を引用したとすると,その記載からは,「物」として同一性が不明なまま,容易想到性の判断に進むという論理の飛躍を犯している。 (2)引用例2の認定の誤りについて本件審決は,引用例2の認定において,重要な記載を意図的に無視しており,それによって引用例2の内容認定に重大な誤りが生じている。 アすなわち,引用例2では,固形化する固形化剤が多数ある中で,あえて「固形化した後は体温でも溶解せず」という性質を備えている「粉末寒天」を,固形化経腸栄養剤の固形化剤として選択している。言い換えれば,胃内において固形化経腸栄養剤が固体の状態を維持することができる固形化剤を選択しているのである。 この点は,引用例2の著者が,固体以外の栄養剤,例えば,ある程度の粘度を有する栄養剤を引用例2に記載されている投与態様において使用することを,他の著作物(甲8,9)において否定していることからも明らかである。 イ上記事項を考慮すれば,当業者であるならば,引用例2に記載の利点・効果の要因の一つとして,「固形化した後は体温でも溶解せず,低カロリーで繊維質を多く含有する寒天を用いて固形化経腸栄養剤を調製したこと」も欠くことができない重要な要因であると判断すべきである。 ウそうすると,本件審決は,引用例2の重要な記載を意図的に無視したことによって,引用例2に記載の利点・効果を生じさせる重要な要因を見逃しているのであるから,引用例2の内容認定に重大な誤りがある。 (3)引用例1と引用例2との組合せの容易性の誤りについて相違点3の判断につき,引用例1と引用例2との組合せを容易と判断した本件審決は誤っている。 ア引用例1及び引用例2の有効性に共通性はないこと引用例1において(R)テルミールソフトによる利点・効果の要因は,? (R)テルミールソフトが従来の液体の栄養剤に比べて高カロリーであること,?(R)テルミールソフトを患者に投与する量が少量であったこと,にある。これに対して,引用例2記載の固形化栄養剤による利点・効果の要因は,液体栄養剤に代えて,?固形の栄養剤を投与したこと,?固形化栄養剤を大量かつ短時間に投与したこと,にある。つまり,両者は逆流防止等の同じ利点・効果を奏するものの,その要因が全く異なる。 イ引用例2には引用例1との組合せを排除する阻害要因があること引用例2はその利点を得る上で,「固形化した後は体温でも溶解せず,低カロリーで繊維質を多く含有する寒天を用いて固形化経腸栄養剤を調製したこと」が欠くことのできない重要な要因であると判断する。しかも,その著者が,固体以外の栄養剤,例えば,ある程度の粘度を有する栄養剤を引用例2に記載の投与態様で使用することを,他の著作物で否定している。そうすると,引用例2は,固体以外の栄養剤の使用を排除していると考えられるので,固体ではないテルミールソフトを用いる引用例1に対する組合せの阻害要因となるものである。 〔被告の主張〕相違点3について当業者が容易に想到し得たものとした本件審決の判断に誤りはない。 (1)引用例1のすり替えについて本件審決は,請求項1において特定された「栄養剤」が,引用発明における「(R)テルミールソフト」とは「物」として実質的に差異があるとはいえないとの判断を経て,相違点3に係る投与形態についての容易想到性の判断を行っている。 本件審決が引用した「引用発明」は,「引用例1に記載された発明」であって,単に「引用例1の記載事項」を引用したものではない。本件審決は,引用例1の記載のみならず,引用例1の記載に接した当業者の理解及び刊行物Dの記載をも参酌して,引用発明における「(R)テルミールソフト」が本願発明の「栄養剤」とは「物」として差異があるとすることができないとしたのであって,その認定及び判断の過程において何ら違法性がないことは,前記のとおりである。 (2) 引用例2の認定の誤りについてア審決においては,引用する刊行物の記載について,全記載を摘記する必要はなく,審決の論旨に直接関係する記載を摘記すれば足りる。本件審決は,相違点3は容易であると判断するに至る根拠として,寒天に関する記載を摘示していないが,それは単に必要としなかっただけであり,引用例2の重要な記載を意図的に無視したことに当たらない。 イまた,引用例2記載の利点・効果について,粉末寒天に関する記載に基づく主張に理由がないことは,後記のとおりである。 (3) 引用例1と引用例2との組合せの容易性の誤りについてア引用例1と引用例2の有効性に共通性があること(ア ) 引用例1の記載によると,「 (R)テルミールソフト」の投与による利点・効果の要因が「半固形状」の食品にあることは明らかである。 (イ ) 引用例2には,従来の液体栄養剤投与における課題や固形化栄養剤の投与による改善効果に関する記載によれば,引用例2に記載の固形化栄養剤による利点・効果を奏する要因についての本件審決の認定に誤りはない。そして,半固形状の栄養剤の場合は,固形化栄養剤と比べて固形化の程度が異なるとしても,液体状のものと比べれば,胃内に充満し得る性状を備えて,短時間で投与が可能であるという性質を満たすことは明らかである。 (ウ ) 以上によれば,引用例1と引用例2とは,固形化の程度に差異があるとしても,投与する栄養剤の性状を液体状から固形化を進めたものを使用しており,いずれも液体状栄養剤の投与に比べて有効な栄養剤の投与が開示されている点で共通することは明らかである。 (エ ) 引用例1記載の「胃瘻」を「再建胃管瘻」と限定解釈する理由はなく,「再建胃管瘻」を前提とする原告らの主張も理由がない。仮に原告らの主張する要因があったとしても,引用例2に関して本件審決が述べた2つの要因に更に付加されるだけである。 イ引用例2には引用例1との組合せを排除する阻害要因がないこと(ア ) 引用例2には,寒天で固形化した経腸栄養剤を胃瘻に注入することが記載されている。 しかしながら,引用例2記載の利点・効果の要因は,投与する栄養剤が,「胃内において充満し得る性状を備えていること」及び「短時間での投与が可能であること」という2つの性質を有することにあり,従来の液体栄養剤に代えて,固形化栄養剤を使用した点にある。引用例2に記載された寒天は,かかる固形化に適する材料として採用されたものであって,上記の2つの性質を実現するための固形化手段であることに留まる。また,寒天以外の固形化手段を特に排除する記載があるわけでもないから,上記の要因を否定する理由にならない。 そして,引用例1の有効性と引用例2の有効性が共通することは上記アのとおりであるから,引用例2における寒天に関する記載は,両者を組み合わせることを阻害する要因にはならない。 (イ ) 甲8,9は,引用例2と著者が完全に一致していないし,引用例2の公表後に発行されたものである。甲8は引用例2の内容を超えるものでもないことから,甲8,9の内容によって,引用例2の記載が直接制約されるものではない。 したがって,引用例2の著者の一人が,甲8,9において,寒天に代表される固形化剤を使用することを推奨する記述をしていたとしても,相違点3の判断が誤りであるとする理由にはなり得ない。 引用例2記載の利点・効果の要因は,液体栄養剤に代えて固形化栄養剤を投与することにより,前記(ア )の2つの性質を実現した点にあり,当業者であれば,かかる性質を実現できる栄養剤であれば,従来の液体栄養剤で課題とされていた胃食道逆流症の抑制及びダンピング症候群の発生抑制という所望の効果に対して,相応の効果が期待できると考えるであろう。 固形化された「半固形状食品(R)テルミールソフト」を用いて従来の液体栄養剤の課題を解決した成功症例が引用例1に記載されているならば,引用例1の有効性と引用例2の有効性の共通性に着目して,引用例1記載の半固形状栄養剤についても引用例2と同様の効果が期待できると自然に考えるものである。 第4当裁判所の判断1取消事由1(一致点の認定の誤り)について(1)引用例1(甲1)には,「胃瘻から半固形状食品(R)テルミールソフトを注入した」との記載があるところ,「胃瘻」とは「胃につくった瘻孔」(丸善株式会社「科学大辞典〔第2版〕」)のことであって,かつ,胃瘻から体内に栄養を供給するときに,当該栄養は管(チューブ)を経て投与されることは技術常識であるから(甲2),引用発明の「(R)テルミールソフト」が「経管」の栄養剤であることは明らかである。 (2)原告らは,本願出願時において,「(R)テルミールソフト」は「経口」栄養剤として販売使用されていたのであるから(甲6,7),本件審決が,引用発明の「(R)テルミールソフト」を「経管」の栄養剤であると認定したのは誤りであると主張する。 なるほど,「(R)テルミールソフト」のパンフレット等(甲6,7)には「 (R)テルミールソフト」が「経口」で使用されることを前提とする記載があることが認められるが,それは「(R)テルミールソフト」が一般的に経口で使用されるものとして販売されていた事実を示すにすぎず,それ以外の使用方法を排除するものとまではいえない。そして,引用例1においては,上記のような「(R)テルミールソフト」を「経管」の栄養剤として使用したものであって,引用発明の「(R)テルミールソフト」が「経管」の栄養剤であるとした本件審決の認定に誤りはない。 (3)原告らは,引用例1は「再建胃管瘻」であり,胃として機能しない引用例1の治療技術と,胃が本来有する貯留能や排出能力を有していることを前提とする本願発明の治療技術とは共通性がないとも主張する。 しかし,仮に,食道亜全摘術を受けた患者に「再建胃管瘻」が造設されることがあるとしても,引用例1には「胃瘻」との記載があり,当該胃瘻から「(R)テルミールソフト」を注入したことが記載されているから,引用例1記載の「胃瘻」を「再建胃管瘻」の意味で限定的に解すべき理由はない。 また,本願発明は,「経管栄養剤」という物の発明であり,治療技術についての発明でないから,治療技術を前提とする原告らの主張は,そもそもその前提において失当といわなければならない。 (4)さらに,原告らは,引用例1の著者は経腸栄養に関する専門ではないと主張するが,刊行物に対する進歩性の有無の判断には,当該刊行物の著者が上記発明の技術分野における当業者であるか否かは影響を及ぼさないから,上記主張も採用することができない。 (5)小括以上によれば,取消事由1は,理由がない。 2取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について(1)「刊行物に記載された発明」について特許法29条2項は,特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,同条1項各号に掲げる発明に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明は,特許を受けることができない旨を規定している。そして,発明が技術的思想の創作であることからすると(特許法2条1項),特許を受けようとする発明が同条1項3号にいう特許出願前に「頒布された刊行物に記載された発明」に基づいて容易に発明をすることができたか否かは,特許出願当時の技術水準を基礎として,当業者が当該刊行物を見たときに,特許を受けようとする発明の内容との対比に必要な限度において,その技術的思想を実施し得る程度に技術的思想の内容が開示されていることが必要であり,かつ,それをもって足りると解するのが相当である。 これを,特許を受けようとする発明が物の発明である場合についてみると,特許を受けようとする発明と対比される同条1項3号にいう刊行物の記載としては,その物の構成が,特許を受けようとする発明の内容との対比に必要な限度で開示されていることが必要であるが,当業者が,当該刊行物の記載及び特許出願時の技術常識に基づいて,その物ないしその物と同一性のある構成の物を入手することが可能であれば,必ずしも,当該刊行物にその物の性状が具体的に開示されている必要はなく,それをもって足りるというべきである。 (2)引用発明の粘度についてア引用例1には,次の記載がある(甲1)。 (ア)既往歴:40才代に不整脈を指摘されていた。1995年食道癌にてA大学附属病院で食道亜全摘術(頚部食道胃吻合)を受けた。 (イ)経過:2001年2月14日残胃にPEG施行。2月20日より胃瘻から液体の注腸栄養剤の注入を開始したが体動時や訓練時に嘔吐を繰り返した。3月5日より胃瘻から半固形状食品(R)テルミールソフトを注入したところ嘔吐はみられなくなり栄養は改善され体重は3ヶ月で7kg増加した。 (ウ)考察:胃食道逆流でトラブルの起こる胃瘻患者に半固形状食品の有効性が示唆された。 イ上記の記載によると,引用例1には,胃瘻から注入する半固形状食品の「(R)テルミールソフト」が記載されていることが認められる。 また,「(R)テルミールソフト」は,本件出願前からテルモ株式会社が販売する栄養剤であるところ,引用例1に記載されている上記テルミールソフトと同じ製品がテルモ株式会社により販売され,容易に入手可能であったものと認められる(甲6,弁論の全趣旨)。 そうすると,刊行物である引用例1には,胃瘻から注入する半固形状食品の「(R)テルミールソフト」の発明が記載されているということができる。 ウそして,本願出願後に頒布されたものであることに争いのない刊行物D(甲17)には,「(R)テルミールソフト」が20℃で20000ミリパスカル秒の粘度であることが記載されている。この事実に弁論の全趣旨を総合すれば,本願出願時においても,同一商品名で販売されていた「(R)テルミールソフト」が,本願発明の粘度範囲である1000〜60000ミリパスカル秒の範囲にあったものと推認できる。 エ原告らは,本件審決が,本願出願後に頒布された刊行物D(甲17)に基づいて,引用例1記載の「(R)テルミールソフト」の粘度を認定したことは誤りであると主張する。 しかしながら,発明の進歩性の有無を判断するに当たり,上記出願当時の技術水準を出願後に領布された刊行物によって認定し,これにより上記進歩性の有無を判断しても,そのこと自体は,特許法29条2項の規定に反するものではない(最高裁昭和51年(行ツ)第9号同年4月30日第二小法廷判決・判例タイムズ360号148頁参照)。 よって,本願発明の進歩性の有無を判断するにあたって,引用発明である「(R)テルミールソフト」が持つ粘度を認定するために,本願出願後に頒布された刊行物Dを参酌したことは,特許法29条2項に反するものではない。 オ以上のとおり,引用発明に係る「(R)テルミールソフト」は,本願発明の粘度範囲である1000〜60000ミリパスカル秒の範囲にあったものと推認できるから,相違点1について,実質的に相違するものではないとした本件審決の判断に誤りはない。 (3)小括以上によれば,取消事由2は,理由がない。 3取消事由3(相違点2についての認定判断の誤り)について(1)引用発明の状態についてア原告らは,相違点2の判断において,本件審決が,引用例1のすり替えを行った上で本来の引用例ではない現実の商品に基づいて判断した点で違法であると主張する。 イしかしながら,前記2のとおり,本件審決が認定した引用発明は,特許法29条1項3号所定の「刊行物に記載された発明」にほかならない。そして,引用発明の認定が当業者の出願当時の技術常識に照らしてされるべきであることからすると,本件において入手可能な現実の商品の性質を勘案して引用発明を認定したことに,誤りはない。 ウそして,引用例1の「(R)テルミールソフト」が「半固形状」であることによると,管状材を通過する前も後も,粘体の状態であることは,技術常識というべきである。よって,引用発明は,管状材を通過する前後において,粘体の状態が維持されるように調製されている経管栄養剤であるということができる。 エよって,相違点2についての認定判断に誤りはない。 (2) 反論の機会についてなお,平成21年12月14日付拒絶理由通知書(甲28)において,本願発明の進歩性の判断の基礎となった上記引用発明が「刊行物に記載された発明」であると明記されていたのであるから,原告らに反論の機会がなかったということもできない。 (3)小括以上によれば,取消事由3は,理由がない。 4取消事由4(相違点3についての判断の誤り)について(1)本願発明の相違点3に係る構成についてア本願明細書によれば,本願発明の技術的意義は,以下のとおりと認められる(甲4)。 本願発明は,胃瘻経管栄養法に使用される栄養剤に関するものである(【0001】)。 低粘度の栄養剤を短時間で投与することで,ダンピング症候群や,嘔吐や胃食道逆流を生じさせるおそれがあるので,従来から,投与した栄養剤の粘度を胃の内部において高くする技術があったところ,この技術は,投与される栄養剤自体の粘度や増粘剤自体の粘度がいずれも低く,胃内に投与されてから栄養剤が所定の粘度になるまでには一定の時間が必要であり,また,個々の患者ごとに,その患者に最適な粘度を有する栄養剤を投与することが必要であるという問題があった(【0003】〜【0006】)。そこで,これら問題を解決する技術として,従来からも,粘度の高い栄養剤を直接胃内に投与する方法も提案されていたが,この技術では,栄養剤は人体に投与される前においては固化していて,人体に投入されてはじめて流動可能な状態となるので,人体に投与したときの栄養剤の粘度を正確に調製することは困難であった(【0007】〜【0008】)。 そこで,本願発明は,胃食道逆流やダンピング症候群を防ぎつつ,所望の粘度でかつ短時間で投与することができ,しかも安全かつ容易に調製することができる経管栄養剤を提供することを解決課題として(【0009】),人体内に投与する前に,粘体状であって所望の粘度に調製されており,その粘度を1000〜60000ミリパスカル秒とすることで,大量の栄養剤を短時間に胃に投与することを可能にし,さらに,栄養剤を胃内に確実に貯留させることを可能にして,もって上記課題解決を図るというものである(【0012】【0024】【0030】)。 イしかしながら,本願発明の相違点3に係る発明特定事項である「数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される」点については,単に本願発明である経管栄養剤の使用態様を説明するだけのものであり,経管栄養剤という物の発明である本願発明が有する特有の性状を示すものと解することはできない。 本願明細書には,「例えば,従来から使用されている200ml 〜400 ml の栄養剤と同等の栄養分を含むものであれば,約数分で投与することできる。」(【0020】),「そして,数分間で200ml 〜400 ml の栄養剤を加圧供給する,つまり,大量の栄養剤を短時間で胃に投与するので,この栄養剤が胃内に一定の時間貯留される。」(【0030】)等の記載があるが,これらの記載を勘案しても,本願発明の上記発明特定事項の意義を見いだすことができないし,「数分間で200ml 〜400 ml 」という数値の臨界的意義を見いだすこともできない。そもそも,「数分間で200ml 〜400 ml の栄養剤を加圧供給する…ので,…栄養剤が胃内に一定の時間貯留される」との記載(【0030】)については,このような一定時間貯留されるとの効果は,「粘度が,1000ミリパスカル秒以上〜60000ミリパスカル秒以下」であることから奏する効果であり,「数分間で200ml 〜400ml が加圧供給される」ことと関係があるとはいい難い。 ウそうすると,相違点3に係る本願発明の構成には,そもそも技術的意義を認めることはできないといわなければならない。 (2)相違点3の容易想到性について上記(1)のとおり,本願発明の相違点3に係る構成には,何ら技術的意義を認めることができない以上,引用発明に係る「(R)テルミールソフト」において,経管栄養剤という物の発明の解決課題とは無関係である,胃瘻から注入する際の使用態様について,上記相違点3に係る構成のように「数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される」とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないといわざるを得ない。なお,このことは,引用例2に記載されている事実等とは無関係である。 (3)本件審決の判断についてア本件審決は,相違点3について,引用発明に係る「(R)テルミールソフト」を,「数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される」という投与態様によって,引用例2記載の患者に対して投与することは,当業者が容易に想到し得たものと判断した。 イ上記(2)のとおり,引用発明から相違点3に係る本願発明の構成(数分間で200ml 〜400 ml が加圧供給される)に至ることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎず,引用例2に記載されている事実等とは無関係であって,引用例2を組み合わせるまでもないことである。本件審決の上記判断は,措辞必ずしも適切とはいえないが,当業者が容易に想到し得たという結論において誤りがあるとはいえない。 ウよって,その余の点について判断するまでもなく,相違点3についての本件審決の判断に,その結論に影響を及ぼすような違法はない。 (4)原告らの主張についてア原告らは,引用例1のすり替えがあったと主張するが,前記3のとおり,理由がない。 イ原告らは,引用例2の認定の誤り及び引用例1と引用例2との組合せが容易でないと主張する。しかし,本願発明は,引用例1に記載された発明それ自体から容易に想到することができたものであり,引用例2と組み合わせるまでもないことは前記のとおりであるから,原告らの主張は,理由がない。 (5)小括以上によれば,取消事由4は,理由がない。 5結論以上の次第であるから,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告らの請求は棄却されるべきものである。 |
裁判長裁判官 | 滝澤孝臣 |
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裁判官 | 高部眞規子 |
裁判官 | 井上泰人 |