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関連審決 不服2006-6097
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10376審決取消請求事件 判例 特許
平成17ワ12207特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成21行ケ10293審決取消請求事件 判例 特許
平成14行ケ426特許取消決定取消請求事件 判例 特許
平成17行ケ10490審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  有用性 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  国内優先権 /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10134号 審決取消請求事件
原告 カルビー株式会社
訴訟代理人弁理士渡辺秀治下平俊直神山直史川村憲正
被告 特許庁長官
指定代理人 田代吉成井上正廣瀬文雄田村正明
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/12/20
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた判決特許庁が不服2006-6097号事件について平成22年3月15日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,拒絶査定を不服とする審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。
争点は本願発明の進歩性の有無である。
1特許庁における手続の経緯原告は,平成16年6月7日の国内優先権を主張して,平成17年6月3日名称を「販促ツールの受注/出荷管理/評価システム」とする発明について特許出願(特願2005-163771号)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。
特許庁は,上記請求を不服2006-6097号事件として審理し,その中で原告は平成21年12月28日付けでも特許請求の範囲変更等を内容とする補正(甲10)をしたが,特許庁は,平成22年3月15日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成22年3月30日原告に送達された。
2本願発明の要旨本願発明は販促ツールの受注/出荷管理/評価システムに関する発明で,上記補正後の請求項は2つから成るが,このうち請求項1に係る発明(本願発明)の要旨は以下のとおりである。
「電子タグ,電子透かし,3次元コード,または2次元コードのいずれかの自動認識のシンボルであって,1個の上記自動認識のシンボルに,販促ツールが配置された売り場を評価するための動作を消費者の携帯端末に実行させる特定動作用データと,当該販促ツールの受注/出荷管理を行う場合及び上記売り場の評価をする場合に使用する当該販促ツールの種類を示す識別子と,当該販促ツールの注文者を示す識別子とを含ませ,当該自動認識のシンボルを付した販促ツールの受注/出荷管理を行うとともに,当該販促ツールが使用された売り場の評価を行う処理手段,記憶手段,表示手段を有するサーバを含む受注/出荷管理/評価システムであって,上記サーバが受注/出荷管理を行う場合は,上記処理手段が,販促ツールを注文する上記注文者を示す識別子,受注した販促ツールの種類を示す識別子及び数量とを上記注文者の端末装置から取得し,それらを上記記憶手段に関連付けて記憶し,上記処理手段が,選択されている注文者について,出荷前に,販促ツールに付された上記自動認識のシンボルから当該販促ツールの種類を示す識別子を読み込み,読み込んだ種類について上記記憶手段に記憶されている受注数量を相殺してゆき,上記相殺の状況を上記表示手段に表示し,上記サーバが評価を行う場合は,消費者の携帯端末において,消費者の操作に応じて,上記販促ツールに付されている上記特定動作用データが読み込まれて実行されると,上記処理手段が,その結果として上記携帯端末に表示された入力画面から入力されて送信された,複数の評価項目を含む評価データ,上記販促ツールの種類を示す識別子および当該販促ツールの注文者を示す識別子とをコンピュータネットワークを介して受信して上記記憶手段に記憶し,上記処理手段が,上記携帯端末から受信して上記記憶手段に記憶された上記評価データ,上記種類を示す識別子および注文者を示す識別子に基づいて,評価データを上記種類を示す識別子毎または上記注文者を示す識別子毎に上記評価項目単位で集計する集計処理を実行し,上記注文者から印刷用データの生成が指示された場合には,上記処理手段が,上記注文者によって注文時に上記注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された上記特定動作用データ,上記種類を示す識別子および上記注文者を示す識別子を1個の自動認識のシンボルに変換し,上記処理手段が,得られた自動認識のシンボルと,上記注文者によって注文時に上記注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された上記販促ツールの雛形のデータとを重畳することを特徴とした受注/出荷管理/評価システム。」3審決の理由の要点 (1) 特開2003-122282号 (引用文献1。甲1 )には次の発明 (引用文献1発明)が記載されているといえる。
「バーコードに,広告媒体についての複数の評価情報をアンケートによって評価するための広告出稿者のURLにリンクするサーバコンピュータへのアクセスをユーザーの携帯電話に実行させるURLと,当該広告媒体の宣伝広告の効果とファーストフード店のトレーとの関係を把握する場合に使用する当該広告媒体の種類を示す広告媒体IDとを含ませ,当該バーコードを付した広告媒体の宣伝広告の効果とファーストフード店のトレーとの関係を把握するCPU,ハードディスク,CRTを有するサーバコンピュータを含む広告媒体情報検出システムであって,上記サーバコンピュータが上記広告媒体の宣伝広告の効果とファーストフード店のトレーとの関係を把握する場合は,ユーザの携帯電話において,ユーザーの読み取り動作に応じて,当該広告媒体に付された上記バーコードに含まれる上記URLが入力されてアクセスされると,上記CPUが上記アクセスの結果として送信された広告媒体IDを,インターネットを介して受信して上記ハードディスクに記憶すると共に,広告出稿者のコンピュータが,携帯端末に表示された入力画面から入力されて送信された複数の評価項目を含む評価データをインターネットを介して受信し,上記CPUが,上記携帯電話から受信して上記ハードディスクに記憶された上記広告媒体IDに基づいて,アクセス回数を広告媒体ID毎に統計処理することを特徴とする広告媒体情報検出システム。」(2) 本願発明と引用文献1発明を対比すると,次の一致点で一致し,各相違点で相違する。
【一致点】「自動認識のシンボルであって,1個の上記自動認識のシンボルに,広告掲示に係わる評価情報を評価するための動作を消費者の携帯端末に実行させる特定動作用データと,広告媒体が配置された売り場の評価をする場合に使用する当該広告媒体の種類を示す識別子とを含ませ,自動認識シンボルを付した広告媒体が使用された売り場の評価を行う処理手段,記憶手段,表示手段を有するサーバを含む評価システムであって,上記サーバが評価を行う場合は,消費者の携帯端末において,消費者の操作に応じて,上記広告媒体に付されている上記特定動作用データが読み込まれて実行されると,上記処理手段が,その結果として送信された上記広告媒体の種類を示す識別子をコンピュータネットワークを介して受信して上記記憶手段に記憶し,上記処理手段が,上記携帯端末から受信して上記記憶手段に記憶された上記種類を示す識別子に基づいて,評価データを上記種類を示す識別子毎に集計する集計処理を実行することを特徴とした評価システム。」【相違点1】 本願発明は,自動認識シンボルが電子タグ,電子透かし,3次元コード,または2次元コードのいずれかであるのに対し,引用文献1発明では,自動認識シンボルがバーコードである点。
【相違点2】本願発明では,自動認識のシンボルを付した広告媒体の受注/出荷管理を行うとともに当該広告媒体が使用された売り場の評価を行う受注/出荷管理/評価システムにおいて,自動認識シンボルが,広告掲示に係わる評価情報を評価するための特定動作用データ,広告媒体の受注/出荷管理を行う場合及び広告媒体が配置された売り場の評価をする場合に使用する当該広告媒体の種類を示す識別子並びに当該注文者を示す識別子を含み,そのため,広告媒体の注文者から印刷用データの生成が指示された場合には,処理手段が,当該注文者によって注文時に当該注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された特定動作用データ,当該広告媒体の種類を示す識別子および当該注文者を示す識別子を自動認識シンボルに変換し,上記処理手段が,得られた自動認識シンボルと,上記注文者によって注文時に上記注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された上記広告媒体の雛形のデータとを重畳するのに対し,引用文献1発明では,自動認識のシンボルを付した広告媒体が使用された売り場の評価を行う評価システムにおいて,自動認識シンボルが,広告掲示に係わる評価情報を評価するための特定動作用データ及び広告媒体が配置された売り場の評価をする場合に使用する当該広告媒体の種類を示す識別子を含むものの,上記注文者を示す識別子を含まず,また当該広告媒体の種類を示す識別子は広告媒体の受注/出荷管理を行う場合に使用されるものではなく,そのため,処理手段が,上記のような処理を行っていない点。
【相違点3】 本願発明では,受注/出荷管理を行う場合は,処理手段が,広告媒体を注文する注文者を示す識別子,受注した広告媒体の種類を示す識別子及び数量とを上記注文者の端末装置から取得し,それらを上記記憶手段に関連付けて記憶し,上記処理手段が,選択されている注文者について,出荷前に,広告媒体に付された自動認識のシンボルから当該広告媒体の種類を示す識別子を読み込み,読み込んだ種類について記憶手段に記憶されている受注数量を相殺してゆき,上記相殺の状況を上記表示手段に表示するのに対し,引用文献1発明では,そのような構成でない点。
【相違点4】 本願発明では,広告媒体を販促ツールとし,広告掲示に係わる評価情報が,販促ツールが配置された売り場であり,そのため,評価システムが,消費者の携帯端末に売り場を評価するための動作を実行させるのに対し,引用文献1発明では,広告媒体が,必ずしも売り場での販売を促進するツールではなく,広告掲示に係わる情報が広告媒体についての複数の評価情報であり,そのため,評価システムが,消費者の携帯端末に広告媒体の複数の評価情報を評価するための動作を実行させる点。
【相違点5】 本願発明では,評価データに評価項目を含めて集計処理し,そのため,処理手段が,携帯端末に表示された入力画面から入力されて送信された,複数の評価項目を含む評価データを受信して記憶手段に記憶し,複数の評価項目に基づいて,複数の評価項目単位で集計処理するのに対し,引用文献1発明では,評価データに評価項目を含めて集計処理しておらず,そのため,処理手段ではなく広告出稿者のコンピュータが,携帯端末に表示された入力画面から入力されて送信された,複数の評価項目を含む評価データを受信するに留まり,処理手段が,携帯端末に表示された入力画面から入力されて送信された,複数の評価項目を含む評価データを受信して記憶手段に記憶しておらず,当該処理手段が,評価データを集計処理するものの,上記したような集計処理を行っていない点。
【相違点6】本願発明では,処理手段が,広告媒体の注文者を示す識別子に基づいて,当該注文者を示す識別子毎に集計処理を実行し,そのため,上記処理手段が,当該注文者を示す識別子を受信して記憶するのに対し,引用文献1発明では,処理手段が,広告媒体の注文者を示す識別子に基づいて,当該注文者を示す識別子毎に集計処理を実行しておらず,そのため,上記処理手段が,当該注文者を示す識別子を受信して記憶していない点。
(3) 以下の理由により,本願発明は当事者が容易に発明をすることができたものである。
?相違点1に係る本願発明の構成は,引用文献1発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?相違点2に係る本願発明の構成は,「引用文献1発明,A『CASE STUDY キリンビール-在庫削減』,LOGI-BIZ,ライノス・パブリケーションズ発行(2001-4-1),42頁〜45頁」(引用文献2。甲2)に見られる周知技術,特開2004-94461号(引用文献3。甲3)に見られる周知技術,特開2002-74151号(引用文献4。甲4)に見られる周知技術,特開2003-263424号(引用文献5。甲5)に見られる周知技術及び常套手段に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?相違点3に係る本願発明の構成は,引用文献1発明,引用文献2に見られる周知技術,引用文献3に見られる周知技術,引用文献4に見られる周知技術及び常套手段に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?相違点4に係る本願発明の構成は,引用文献1発明及び特開平11-219481号(引用文献6。甲6)に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?相違点5に係る本願発明の構成は,引用文献1発明及び特開2004-38367号(引用文献7。甲7)に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?相違点6に係る本願発明の構成は,引用文献1発明及び引用文献4に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
?本願発明の作用効果も,引用文献1発明,引用文献2に見られる周知技術,引用文献3に見られる周知技術,引用文献4に見られる周知技術,引用文献5に見られる周知技術,引用文献6に見られる周知技術,引用文献7に見られる周知技術,常套手段及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。
第3原告主張の審決取消事由1取消事由1(本願発明と引用文献1発明の一致点認定の誤り)審決には,本願発明の「販促ツールの種類を示す識別子」と引用文献1における「広告媒体の種類を示す識別子」が一致するとしている点に誤りがある。
すなわち,本願発明における「販促ツールの種類を示す識別子」は,本願図面の【図10】(甲25 )にあるように,販促ツールの種類ごとに特定される識別子であり,実際の販促ツールとこの販促ツールに付与される識別子との関係は,1対1の関係である。一方,引用文献1では「販促ツールの種類を示す識別子」に対応するものとして「広告媒体ID」が挙げられているが,この「広告媒体ID」は,引用文献1の段落【0039】,【図13】,【図14】にあるように,同一の広告媒体であっても「機能発揮状態」に応じて異なる識別子が付与されている。たとえば,「広告媒体の種類」が「ポスター」であっても,掲示される対象が電車である場合とバスである場合では広告媒体IDが異なる。つまり,実際の広告媒体とこの広告媒体に付与される識別子との関係は1対1の関係ではなく,掲示される対象物や場所により別の識別子が付与されるため,1対多の関係である。
そして,本願発明における「販促ツールの種類を示す識別子」と引用文献1発明における「広告媒体ID」の差は,実際のシステム運用時に決定的な効果の差を生じさせるものである。例えば,販促ツールの評価システムの側面から見た場合,引用文献1発明では本願発明のように実際の販促ツールの種類毎に評価データを収集することはできない。次に,販促ツールの受注・出荷管理システムの側面から見た場合,引用文献1発明では同一の種類とされる販促ツールであってもどこに掲示されるかにより識別子が異なるため,実際の販促ツール自体のデザインが同じであっても別物として管理される。そのため,引用文献1発明では,実際の販促ツールのデザインが同じであっても,管理スペース等の管理上必要とされる種々のものがその識別子の数だけ必要であり,非効率である。また,引用文献1発明では,同じデザインの販促ツールでも別物としてデータ上では取り扱うため,これらの販促ツールに付したバーコードを逐一読まなければ同一の販促ツールであるか否かはわからないというデメリットがあり,出荷ミス等を生じさせる要因にもなる。さらに,引用文献1発明では,同じデザインの販促ツールであってもデータ管理上は別物としてバーコードに記録して取り扱っているため,使いまわしをすることができず,余剰在庫の要因にもなる。一方,本願発明では,同一の種類の販促ツールは同一のものとして扱われるため,管理スペース等の管理上必要とされる種々のものを一元化でき,引用文献1発明と比較すると省スペース化等が図れる。次に,本願発明では,引用文献1発明のように同じデザインの販促ツールを出荷時に別々に取り扱う必要もないため,出荷ミスの防止にもなる。また,本願発明では,引用文献1発明のように同じデザインでも別物としてデータ上では取り扱うことがないので,販促ツールに付してある一つの自動認識シンボルを逐一読まなくても同一の販促ツールであるか否かは容易に把握可能である。さらに,本願発明では,同じデザインの販促ツールでかつ同じ注文主であれば,別の場所へ送付することも柔軟に対応できるため,余剰在庫の要因とはならない。
本願発明は,販促ツールを作成し販売するメーカーの視点に基づいて,販促ツールの評価だけでなく,受注・出荷管理をすべて考慮した場合の効率性を追求した技術的思想であるのに対して,引用文献1発明は,多数の種類の販促ツールが作成されることで利益を生もうとする広告会社の視点から捉えた技術的思想である。このように引用文献1の「広告媒体ID」は本願発明の「販促ツールの種類を示す識別子」とは一致するものではなく,効果も上記のとおり異なるものであり,これらを一致しているとする前提に誤りがある。
2取消事由2(相違点2の判断に係る周知技術の認定の誤り)審決は,「・・・引用文献4にみられるように,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うことも周知技術である。」(21頁25行〜28行)と判断した。また,平成21年10月27日発送の拒絶理由通知(甲13)には,引用文献4(拒絶理由通知では「引用文献7」とされている。
)の段落【0028】,【0040】,【0052】の記載から「販促ツールである『広告』に付された自動認識シンボルである『JANコード』には,当該販促ツールの注文者である『広告主』の識別子である『広告主コード』が含まれているものと解することができる。」(47頁23行〜39行)旨の記載がある。
しかし,引用文献4の段落【0035】〜【0048】及び図面10,11には,ユーザー40がサーバー10にアクセスし,商品購入に至るまでの流れが説明されている。具体的には,ユーザー40が表示画面を見て商品の購入を動機付けられると,「本システムにアクセスするためのURL」をクリックしてサーバー10との間でユーザー認証を行い(段落【0036】,図10のST101,ST102,ST103,ST104参照),サーバー10が「アイテムナンバー」と称している「商品コード」と「広告枠コード」をユーザー40の情報端末に表示し(段落【0035】,段落【0037】,図10のST105参照),ユーザー40が情報端末上に表示された画面により,アイテムナンバーと数量を入力する(段落【0038】,ST111参照)。ここで,「アイテムナンバー」の表示態様については図示されていないが,「アイテムナンバー」は1つの自動認識シンボルの態様ではなく数字列として表示されていること,表示された画面を見たユーザー40がアイテムナンバーと数量を「入力する」旨が記載されている点を考慮すると,「アイテムナンバー」は「商品コード」と「広告枠コード」を組み合わせた数字列が情報端末の画面内に表示されていると推測することができる。
そして,引用文献4の「また,掲載する商品に,個々の商品を識別可能な標準的なコードである例えばJANコードや,個々の商品を分類する標準的なコードである例えばJICFSコードを持たせることにより,アンケート調査などに頼ることなく,広告商品に対する広告枠の有効性をより詳しく分析することができる。」(段落【0052】)との記載について,仮に審決及び先の拒絶理由通知のように解釈すると,ユーザの情報端末に表示される「アイテムナンバー」は「広告枠コード」を含んだ「JANコード」であって,かつ「1つの自動認識シンボル」として表示されることになる。そうすると,この「1つの自動認識シンボル」を見たユーザー40は,別の読み取り機器等を用いなければこの「1つの自動認識シンボル」からこの「アイテムナンバー」を読み取ることができず,また,「アイテムナンバー」と「数量」を情報端末に入力できないことになる。一方,段落【0052】の記載について,前記の推測のとおり「アイテムナンバー」は「商品コード」と「広告枠コード」を組み合わせた数字列が表示されていると解釈した場合には,「商品コード」としては「JANコード」で定義された数字が表され,この数字と「広告枠コード」の数字が組み合わされた数字列が「アイテムナンバー」として表示される。そのため,ユーザー10は,問題なく情報端末上に表示されたこの「アイテムナンバー」に基づいて,「アイテムナンバー」と「数量」を入力することができると解される。加えて,「商品コード」としては「JANコード」が使用されることで,標準的なコード体系で商品が識別可能となるため,「広告商品に対する広告枠の有効性をより詳しく分析することができる」ものとなる。つまり,引用文献4に接した当業者であれば,段落【0052】でいう「JANコード」や「JICFSコード」とは,これらの規則に従って生成された数字列であると解するのが自然であり,「一つの自動認識シンボル」である「JANコード」に「広告主コード」を含んだ態様で表示されることが段落【0052】に記載されていると解釈する合理的な根拠がない。したがって,引用文献4の段落【0052】には,「掲載する商品」に個々の商品を識別可能な標準的なコードである「JANコード」を「持たせる」(掲載する商品をJANコードで表す)ことは記載されているが,この「JANコード」が「広告主コード」を含む「1つの自動認識シンボル」として表されていると把握することはできない。
仮に引用文献4の段落【0052】について,審決及び先の拒絶理由通知にあるように「販促ツールである『広告』に付された自動認識シンボルである『JANコード』には,当該販促ツールの注文者である『広告主』の識別子である『広告主コード』が含まれている」ものと解したとすると,ユーザは,「広告主コード」を含む「JANコード」として表された1つの自動認識シンボルから「アイテムコード」を入力できなくなり,引用文献4の発明は実施できなくなる。
よって,引用文献4の段落【0052】の記載から「販促ツールである『広告』に付された自動認識シンボルである『JANコード』には,当該販促ツールの注文者である『広告主』の識別子である『広告主コード』が含まれているものと解することができる。」とした審決には誤りがある。
3取消事由3(相違点判断の誤り)(1) 本願発明の目的は,「(1)販促ツールを梱包する場面にあっては,注文に応じた販促ツールの種類・数量が確実に梱包されるように作業者が目視確認に労力を費やしていた。(2)店舗では販促ツールでできるだけ多くの消費者の興味を惹きたいと考えていた。(3)店舗によっては他の店舗と異なる個性的な販促ツールを利用したいと考えていた。(4)店舗が販促ツールを欲してから入手できるまでの期間を更に短縮することが望まれていた。(5)売り場に設置された販促ツールに,実際にどれだけの効果があったのかを,簡易に調査することが望まれていた。」(本願明細書の段落【0003】)といった,販促ツールを作成し,販売する会社が抱える重要な多くの問題を解決することである。
一方,引用文献1の目的は,「ポスターをどこに掲げれば宣伝広告効果を効率よく発揮できるか等の宣伝広告効果を把握するための広告媒体情報を得難く,今後の宣伝広告を出稿する際の的確な判断資料を得がたい」(段落【0003】)という問題を解決するという広告業界の課題解決を図るものであり,しかも宣伝広告効果に的を絞ったものである。
また,引用文献2の要旨は,全国各地で分散管理している販促ツールの余剰在庫を削減させるという問題を解決するものであり,販促ツールの出荷管理や在庫管理に的を絞ったものである。
引用文献3の目的は,ディスクメディア配布による販売促進を目的としたセールスおよびサービスプロモーションにおいて情報収集される情報の有用性及び正確性の向上といった問題を解決するものであり,ディスクメディアを配布して収集される情報に的を絞ったものである。
引用文献4の目的は,「複数の媒体の広告枠に期を同じくして広告を出した場合に,広告主および広告代理店側では,消費者がどの広告枠を見て動機付けられて購入したかまで把握することができない。したがって,広告の有効性を正確に把握することが困難」(段落【0003】)であるという問題を解決するものであり,広告主及び代理店側が抱える問題であり,しかも広告の有効性の把握に的を絞ったものである。
引用文献5の目的は,さまざまな理由から販売店側のサービスに適したカタログ,パンフレット,チラシ,DM などの印刷物を安価に製造できないという問題を解決するものであり,印刷物の製造側が抱える問題であり,しかも製造コストに的を絞ったものである。
引用文献6の目的は,個々の顧客に適した広告を行えないという問題を解決するものであり,広告主が抱える問題であり,広告効果に的を絞ったものである。
引用文献7の目的は,要約にあるように「ホームページのアドレスを直接入力するとき,入力手段が数字を主体とする携帯電話にとっては最適な入力手段ではない」という問題を解決するものである。
すなわち,引用文献1〜7は,広告効果,販促ツールの余剰削減,評価する情報の正確性や有効性の向上など特定の課題を解決するものであり,本願発明のように,販促ツールを作成し,販売する会社が抱える重要な多くの問題をすべて解決するものではない。
また,引用文献1〜7には,販促ツールの評価/受注/出荷管理を一体的に構築するために,特定用動作データと販促ツールの種類を示す識別子と注文主の識別子を最低限の情報として選択し,これらを1つの自動認識シンボルに含ませることを想到し,1つの自動認識シンボルに2次元コードを採用するという点を示唆する具体的な記載および動機付けは一切ない。
このような示唆及び動機付けがないにも関らず,引用文献1のバーコードを2次元コードとすることは設計変更の範囲内とした上で,上記のとおり,引用文献2〜7に開示される本願発明と部分的に共通する点のみを集めて容易に想到できるとした判断は事後分析的であることは否めず,審決においての判断プロセスに違法性がある。
(2) 本願発明の奏する効果本願発明は,販促ツールの評価/受注/出荷管理を必要最低限の情報として,「特定用動作データと,販促ツールの種類を示す識別子と,注文主の識別子」のみを用いて実現しているものである。
引用文献1では,「販促ツールの種類を示す識別子」とは異なる「広告媒体ID」によって情報を収集するため,販促ツール毎の評価を収集することができず,販促ツールを製造販売する会社の観点ではない。また,引用文献1では,販促ツールを注文者毎に評価するということも開示されておらず,やはり販促ツールを製造販売する会社の観点ではない。
引用文献4では,1つの自動認識シンボルに注文者を示す識別子を含む態様は開示されておらず,この文献から広告に付された1つの自動認識シンボルに注文者を示す識別子を含ませ,注文者毎に評価処理を行うことが周知技術であるとはいえない。
仮に,他に注文者毎に評価処理を行う文献があり,周知技術であったとしても,それだけでは評価処理を行う際に注文者を示す識別子を用いることが周知技術であるというだけであり,販促ツールの評価/受注/出荷管理のすべてを一体的に行うために注文者を示す識別子を1つの自動認識シンボルに含めるという示唆がない限り,本願発明の技術的思想とは異なる。
よって,本願発明は,販促ツール毎に注文者毎の評価を収集することが可能であるとともに,受注/出荷管理までを一元的に構築することが可能となるシステムであり,引用文献1〜7を単純に組み合わせても容易に想到できないものであることは明らかである。
第4被告の反論1取消事由1に対し(1) 本願発明の「販促ツールの種類を示す識別子」では,本願発明について,単に販促ツールの種類を示す識別子を備えること,換言すれば,識別子が販促ツールの種類を識別する機能を有し,そのような機能を有する識別子を1つ選べばこれと対応する販促ツールの種類が示されることを特定するのみであって,その逆の販促ツールの種類を1つ選べばこれと対応する販促ツールの種類を示す識別子が示されることを特定していない。
また,この点につき,本願明細書の段落【0006】,【0007】の記載を参酌しても,本願明細書又は図面は,発明の内容として,「販促ツールの種類の識別子」が販促ツールの種類を識別するための情報であるものと定義すること,すなわち,販促ツールの種類を示す識別子を1つ選べばこれと対応する販促ツールの種類が示されることを開示しているにすぎないし,本願明細書の段落【0088】との記載及び図10を参酌しても,本願明細書又は図面は,発明の内容として,注文者識別番号と販促ツールの種類を示す識別子との対応関係を記憶しこれを特定することを開示しているにすぎず,販促ツールの種類を1つ選べばこれと対応する販促ツールの種類を示す識別子が示されることについて何らの開示もなされていない。
したがって,請求項1の「販促ツールの種類を示す識別子」の記載から,販促ツールの種類を示す識別子と販促ツールの種類とが1対1の関係であることが自明であるということはできない。
また,引用文献1の段落【0031】,【0039】の記載によれば,広告媒体IDが広告媒体情報を特定し,当該広告媒体情報が広告媒体の種類である広告媒体の物理的な種類に関する情報であることから,広告媒体IDを1つ選べばこれと対応する広告媒体の種類が示されること,すなわち,当該広告媒体IDが広告媒体の種類を示す識別子であることは明らかである。
したがって,引用文献1発明の広告媒体IDは,本願発明の販促ツールの種類を示す識別子と同様に,広告媒体の識別子を1つ選べばこれと対応する広告媒体の種類が示されるものであるから,広告媒体の種類を示す識別子として用いられているものである。
原告の主張は,特許請求の範囲に基づかないものであり,採用することができない。
(2) 前記のとおり,請求項1には「販促ツールの種類を示す識別子」が記載されているものの,この記載から販促ツールの種類を示す識別子と販促ツールの種類とが1対1の関係であることが自明であるということはできない。したがって,本願発明は,特許請求の範囲の記載からみて,同一の種類の販促ツールを同一のものとして扱わない場合を排除していないから,引用文献1発明と比較して,管理スペース等の管理上必要とされる種々のものを一元化でき省スペース化等が図れるというといった原告の主張する格別の効果を有しているということはできない。
(3) 審決は,引用文献1発明における「広告媒体の種類を示す識別子」との事項と本願発明における「販促ツールの種類を示す識別子」との事項とが一致するとは認定しておらず,引用文献1発明における「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」との事項と本願発明における「販促ツールの種類を示す識別子」との事項とは,共に「広告媒体の種類を示す識別子」という点で共通すると認定している。原告の主張は審決を正解しないものであって,失当である。
2取消事由2に対し (1) 引用文献4にみられる周知技術の認定に関する主張につき引用文献4の段落【0028】,【0040】,【0052】の記載に基づくと,「商品コード」に「広告主コード」が「含まれている」ことと,「掲載する商品」に「個々の商品を識別可能な標準的なコード」である「JANコード」を「持たせる」ことにより,当該「JANコード」を表示し認識させることをみてとれる。してみると,引用文献4に接した者であれば,広告主コードが含まれている商品コードと対応する商品を広告に掲載し,その商品の商品コードをJANコードで表すこと,すなわち,販促ツールである「広告」に付された「JANコード」には,当該販促ツールの注文者である「広告主」の識別子である「広告主コード」が含まれているものと解することができる。
また,当業者であれば,「JANコード」を商品に掲載しこれを認識させるためのデータキャリアとしてもっぱら常用されるものがJANシンボル等の自動認識シンボルであることを技術常識として知っているのであるから,このような技術常識を知る当業者が「掲載する商品に・・・(中略)・・・JANコード・・・(中略)・・・を持たせること」との記載に接したのであれば,当該「JANコード」を商品に掲載しこれを認識させる態様として,自動認識シンボルであるJANシンボルを当然に想定できるものである。
したがって,審決が,引用文献4にみられるように,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うことが周知技術であると認定した点に誤りはない。
(2) 引用文献4にみられる周知技術の技術的な解釈に関する主張につき販促ツールである「広告」に付された「JANコード」の態様が自動認識シンボルであると解したとしても,引用文献4の段落【0035】に「・・・アイテムナンバー『11111-001-1234』が表示される。『11111-001』が商品コードで,『1234』が広告枠コードである。」と記載されているように,アイテムナンバーは,商品コードの部分と広告枠コードの部分とに分解して把握できるものである。したがって,ユーザが「広告主コード」を含む「JANコード」として表された1つの自動認識シンボルから商品コードの部分を入力すると共に,広告枠コードの部分を別途入力しさえすれば,当業者は引用文献4の発明を実施できるから技術的に何らの矛盾も生じ得ない。
よって,審決が,引用文献4にみられるように,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うことが周知技術であると認定した点に誤りはない。
3取消事由3に対し (1) ア本願明細書の段落【0056】,【0105】,【0124】の記載を参酌すると,原告が主張する本願発明の「店舗が販促ツールを欲してから入手できるまでの期間を更に短縮することが望まれていた。」との課題を解決するためには,販促ツールを注文者端末側で印刷出力すること,注文と印刷とを連続して行うこと,印刷データを注文者端末に直接送信し,注文者端末において印刷を行うことを発明の構成として備える必要があるものと解することができる。しかしながら,請求項1は,上記課題を解決するための構成を特定していないことは明らかである。してみると,上記原告が主張する本願発明の「店舗が販促ツールを欲してから入手できるまでの期間を更に短縮することが望まれていた。」との課題は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないから失当である。
イ引用文献2には,受注/出荷のための管理の対象商品を広告媒体である販促ツールとし,当該販促ツールを確認するためのシンボルを使用して当該販促ツールの受注/出荷管理を行うことが示されており,引用文献3には,広告媒体の受注/出荷管理を行う場合及びアンケートを評価する場合に,広告媒体に設けられた当該広告媒体の種類である「地域ごと」の識別子を使用することが示されており,受注/出荷管理を行う場合に,受注した商品の出荷を注文者毎に管理することは常套手段であり,引用文献4には,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うことが示されている。
してみると,引用文献2〜4にみられるこれらの周知技術及び常套手段に接した当業者であれば,広告媒体の受注/出荷を管理する側において,広告媒体として販促ツールを提供するとともに,広告媒体の受注/出荷管理を行うこと及び広告媒体を評価することを目的として,引用文献1発明にこれらの周知技術及び常套手段を適用することは当然のことである。
その際,販促ツールが受注/出荷を管理する側により製造販売し評価する対象商品となるのであるから,原告が主張の販促ツールを作成し販売する会社が抱える問題である「販促ツールを梱包する場面にあっては,注文に応じた販促ツールの種類・数量が確実に梱包されるように作業者が目視確認に労力を費やしていた。」との課題が解決されることは明らかである。
ウ引用文献5には,注文者からの発注に伴って印刷用データの生成が指示された場合に,処理手段が,注文者により選択された広告媒体の情報と広告媒体の雛形のデータを重畳し,前記雛形データが前記注文者によって選択可能である受注/出荷管理システムが示されている。
してみると,引用文献5にみられる周知技術に接した当業者であれば,広告媒体の受注/出荷を管理する側において広告媒体として販促ツールを提供するとともに,広告媒体の受注/出荷管理を行うこと及び広告媒体を評価することを目的とすることに加えて,さらに広告媒体の利用側において,広告媒体をカスタマイズできるようにすることを目的として,引用文献1発明に当該周知技術を適用することは当然のことである。
その際,販促ツールがこれを利用する側によりカスタマイズされることになるのであるから,原告主張の「店舗では販促ツールでできるだけ多くの消費者の興味を惹きたいと考えていた。」及び「店舗によっては他の店舗と異なる個性的な販促ツールを利用したいと考えていた。」との課題が解決されることは明らかである。
エ引用文献6には,広告媒体として売り場での販売を促進するツールを採用し,当該広告媒体による広告掲示に係わるアンケート情報に売り場の評価を含めることが示されている。
してみると,さらに引用文献6にみられる周知技術に接した当業者であれば,上記の,広告媒体の受注/出荷を管理する側において,広告媒体として販促ツールを提供するとともに,広告媒体の受注/出荷管理を行うこと,広告媒体を評価すること及び広告媒体の利用側において,広告媒体をカスタマイズできるようにすることを目的とすることに加えて,さらに売り場に設置された販促ツールの効果を評価することを目的として,引用文献1発明に当該周知技術を適用することは当然のことである。
オ引用文献7には,広告媒体が配置された場所の評価を行うために,サーバにおいて,広告掲示に係わる評価情報である「ユーザが興味」を持った「広告の特定」の「結果」情報と「アンケート」等による評価項目を含む評価データを受信しこれらを併用して集計処理することが示されている。
してみると,さらに引用文献7にみられる周知技術に接した当業者であれば,広告媒体の受注/出荷を管理する側において,広告媒体として販促ツールを提供するとともに,広告媒体の受注/出荷管理を行うこと,広告媒体を評価すること,広告媒体の利用側において,広告媒体をカスタマイズできるようにすること及び売り場に設置された販促ツールの効果を評価することを目的とすることに加えて,さらに売り場に設置された広告媒体の効果を評価項目を含めて評価することを目的として,引用文献1発明に当該周知技術を適用することは当然のことである。
その際,販促ツールが受注/出荷管理する側により製造販売し評価する対象商品となり,当該評価では評価項目を含めているから,原告が主張の「売り場に設置された販促ツールに,実際にどれだけの効果があったのかを,簡易に調査することが望まれていた。」との課題が解決されることは明らかである。
カ上記のとおり,引用文献2〜7及び常套手段に接した当業者であれば,原告が主張する本願発明と同様の販促ツールを作成し,販売する会社が抱える問題を解決することを想定することは明らかであるといえる。そして,引用文献2〜7及び常套手段には,本願発明と同様,販促ツールを作成し,販売する会社が抱える上記問題を解決することが示されているのであるから,引用文献1発明において,上記問題を解決することを動機付けとして,広告媒体の評価/受注/出荷管理を一体的に構築し,そのために,特定用動作データと広告媒体の種類を示す識別子を最低限の情報として選択し,これらを1つの自動認識シンボルに含ませることもまた設計的事項にすぎないものである。
さらに,自動認識シンボルとして2次元コードは周知事項である。してみると,上記周知事項を知る当業者であれば,引用文献1発明は,自動認識シンボルを利用する発明であるから,そのことを動機付けとして,当該自動認識シンボルの具体化手段として,バーコードに代えて2次元コードとすることは設計的事項にすぎないものである。
(2) 本願発明の効果に関する主張につき請求項1には「特定動作用データと・・・(中略)・・・販促ツールの種類を示す識別子と・・・(中略)・・・注文者を示す識別子とを含ませ」が記載され,当該「特定用動作データ」と当該「販促ツールの種類を示す識別子」と当該「注文者を示す識別子」を「含ませ」ることは,これら以外の情報を含ませないことを何ら特定するものではないから,本願発明は,販促ツールの評価/受注/出荷管理が,特定用動作データと販促ツールの種類を示す識別子と注文主以外の情報も用いて実現する場合もその技術的範囲に含まれるものである。してみると,本願発明は,販促ツールの評価/受注/出荷管理を「特定用動作データと,販促ツールの種類を示す識別子と,注文主」のみを用いて実現する場合をその技術的範囲に含むとしても,これら以外の情報も用いて実現する場合もその技術的範囲に含むものであるから,原告が主張するような,販促ツールの評価/受注/出荷管理を「特定用動作データと,販促ツールの種類を示す識別子と,注文主」のみを用いて実現する場合に基づく本願発明の効果は採用することができない。
また,前記のとおり,本願発明は,請求項1の記載からみて,販促ツールの種類毎に識別子を付与していないのであるから,販促ツールA,B毎の評価を容易に収集することができないという点で引用文献1発明と相違するものではない。してみると,販促ツール毎の評価を収集することができるという原告が主張する本願発明の効果は,引用文献1発明と比較して格別のものとはいえない。
さらに,前記のとおり,引用文献4には,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うとの周知技術が開示されている。してみると,引用文献4にみられるように,広告に付された1つの自動認識シンボルに注文者を示す識別子を含ませ,注文者毎に評価処理を行うことは周知技術である。
また,広告媒体として売り場での販売を促進するツールを採用し,当該広告媒体による広告掲示に係わるアンケート情報に売り場の評価を含めることも,周知技術である。
したがって,これらの周知技術を知る当業者であれば,引用文献1発明において,上記周知技術を適用し,広告に付された1つの自動認識シンボルに注文者を示す識別子を含ませ,注文者毎に評価処理を行うよう構成し,広告媒体として売り場での販売を促進するツールを採用した発明において,販促ツールを注文者毎に評価するという効果が発現することは,予測し得る範囲の効果にすぎない。
そして,前記のとおり,引用文献2〜7及び常套手段に接した当業者であれば,本願発明と同様の,販促ツールを作成し,販売する会社が抱える問題を解決することを想定することは明らかであるから,販促ツールを製造販売する会社の観点が排除されるものではない。
また,前記のとおり,広告媒体の受注/出荷管理を行う場合及びアンケートを評価する場合に,広告媒体に設けられた当該広告媒体の種類である「地域ごと」の識別子を使用することは周知技術である。してみると,当該周知技術を知る当業者であれば,引用文献1発明において,販促ツールの評価/受注/出荷管理を一体的に構築することは設計的事項にすぎないものであり,そのために,特定用動作データと,販促ツールの種類を示す識別子を最低限の情報として選択し,これらを1つの自動認識シンボルに含ませること,1つの自動認識シンボルにバーコードを採用することもまた設計的事項にすぎないものである。
以上のとおりであるから,原告が主張する本願発明の効果は,いずれも格別なものではなく,当業者が予測し得る範囲の効果にすぎずないものである。
第5当裁判所の判断1取消事由1について(1) 本願発明の意義本願明細書(甲8,10,19)の記載によれば,本願発明は,販促ツールの受注/出荷管理/評価システムに関する発明であって,販促ツールを店舗の要望を受けてから印刷し送付するサービスを行う従来技術においては,a販促ツールを梱包する場面にあっては,注文に応じた販促ツールの種類・数量が確実に梱包されるように作業者が目視確認に労力を費やしており,b店舗では販促ツールでできるだけ多くの消費者の興味を惹きたいと考えており,c店舗によっては他の店舗と異なる個性的な販促ツールを利用したいと考えており,d店舗が販促ツールを欲してから入手できるまでの期間を更に短縮することが望まれており,e売り場に設置された販促ツールに実際にどれだけの効果があったのかを簡易に調査することが望まれていた,という5つの不都合の解消という課題を解決するため,?,販促ツールの受注/出荷管理を行うにあたって,販促ツールの種類を示す識別子を含む自動の認識シンボル(自動認識シンボル)をこの販促ツールに付しておき,販促ツールを注文する注文者の端末装置からこの注文者を示す識別子,受注した販促ツールの種類を示す識別子及びその数量を取得して記憶しておいた受注/出荷サーバが,出荷前に販促ツールに付された自動認識シンボルからその販促ツールの種類を示す識別子を読み込み,選択されている注文者と読み込んだ販促ツールの種類につき記憶している受注数量を相殺してゆき,この相殺の状況を表示する機能を担うシステムと,?販促ツールが配置された売り場を評価するにあたって,売り場を評価するための動作を消費者の携帯端末に実行させる特定動作用データ,販促ツールの種類を示す識別子及び販促ツールの注文者を示す識別子を含む1個の自動認識シンボルをこの販促ツールに付しておき,消費者の携帯端末において,消費者の操作に応じて販促ツールに自動認識シンボルとして付された特定動作用データが読み込まれて実行されると,サーバがその結果として表示された表示画面から入力された複数の評価項目を含む評価データとともに自動認識シンボルとして付されたその販促ツールの種類を示す識別子及びその販促ツールの注文者を示す識別子を受信し,販促ツールの種類毎又は注文者毎に評価項目単位で評価データを集計する機能を担うシステムの2つのシステムを合わせたシステムを実現しようとするものであり,さらに,このシステムの実現にあたって,?注文者からの印刷データの生成が指示された場合に,注文者により予め選択された特定動作用データ,販促ツールの種類を示す識別子及び販促ツールの注文者を示す識別子を1個の自動認識シンボルに変換したものを注文者により予め選択された雛形のデータと重畳するように構成し,これら?〜?を総合して,前記の課題を解決しようとしたものであることが認められる。
(2) 本願発明の「販促ツールの種類を示す識別子」の技術的意義 一般に,「識別子」は,「コンピューターで対象を一意に識別するために使われる記号列」(広辞苑第六版)を意味する文言であるから,識別子毎に識別される対象が特定される必要はあるものの,対象毎にそれを識別する記号列が特定される必要はない。
また,本願発明の特許請求の範囲の記載(請求項1)によれば,課題解決手段としての本願発明における「販促ツールの種類を示す識別子」は,選択されている注文者についてサーバが読み込んだ販促ツールの種類について受注数量の相殺の状況を表示するために当該販促ツールに付された自動認識シンボルから読み込まれるものであるとともに,販促ツールが配置された売り場を評価すべく,販促ツールの種類毎に評価データを集計するために,消費者の携帯端末から入力された評価データとともにサーバに送信されるべく,その消費者の携帯端末により読み込まれるものであるから,販促ツールの受注数量の相殺及び評価データの集計を行うために用いられるものであるところ,1つの「販促ツールの種類」に対し複数の「識別子」が対応する場合であっても,同一種類の販促ツールの識別子の数を積算して当該販促ツールの種類の識別子の数を算出することは可能であり,「識別子」を用いた「販促ツールの種類」毎の受注数量の相殺や評価データの集計は可能である。
さらに,発明の詳細な説明にも,1つの「販促ツールの種類」に対し複数の「識別子」が対応する場合を排除すべき根拠は記載されていない。
そうすると,本願発明における「識別子」は,「販促ツールの種類」毎に1つの識別子が対応する場合のみならず,1つの「販促ツールの種類」に対し複数の「識別子」が対応する場合も含まれるものであると解される。
(3) 引用文献1発明の「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」の意義審決が認定した引用文献1発明の「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」は,引用文献1(甲1 )の「媒体データベース11bは,広告媒体に関する広告媒体情報を登録している。この実施形態における広告媒体情報は,図13及び図14に示すように広告媒体の物理的な種類に関する情報,広告媒体の機能発揮状態を特定する情報,・・・等の各情報を広告媒体情報として広告媒体IDと関連付けて登録している。 」(段落【0039】)の記載に基づき認定されたものであり,この記載によれば,広告媒体IDと関連付けられた広告媒体情報が「広告媒体の物理的な種類に関する情報」以外の「広告媒体の機能発揮状態を特定する情報」等の情報を含んでおり,同じ広告媒体の物理的な種類であっても広告媒体の機能発揮状態が異なる場合等を区別して割り当てられた広告媒体IDの例が示されている。
したがって,引用文献1発明の「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」は,1つの広告媒体の種類に対して複数の広告媒体IDが対応する場合を含んでいるものと認めることができる。
なお,引用文献1の段落【0082】には,「また,この実施形態においては,広告媒体に関する広告媒体情報を特定するための広告媒体情報特定データとしての媒体IDを,広告媒体記録情報として広告媒体に記録するようにして実施しているが,この形態のものに限らず,例えば広告媒体記録情報として,図13及び図14に示した媒体データベース11bに登録した広告媒体に関する広告媒体情報,具体的には,広告媒体の物理的な種類,広告媒体の掲示された被掲示物を特定し得る情報,広告媒体により広告される内容に関する情報,広告媒体に出稿した出稿者に関する情報等の一部又は全部を記録するようにしても良く,適宜変更し得る。」との記載があるから,「広告媒体ID」と関連付けられる情報に広告媒体の物理的な種類に関する情報以外の情報を含めなければならないとまではいえない。
(4) 対比引用文献1発明における「広告媒体」は,引用文献1の段落【0005】の「ここに,広告媒体とは,広告の表示されたもの,又は,広告を目的として頒布された商品自体(キャンペーン商品を含む)をいう。又,広告の表示されたものとしては,例えばポスター等の掲示物,・・・宣伝広告用のティッシュ等の宣伝広告用物品,又はファーストフード店等のトレーの等の掲載物を挙げることができ,広告を目的として頒布された商品自体としては,例えば販売促進キャンペーンにおけるキャンペーン商品(商品パッケージ)等を挙げることができる。」との記載からすれば,印刷された店頭掲示物を含むものである。
他方,本願発明の「販促ツール」は,本願明細書の段落【0001】の「店頭における商品の販売促進に用いられるポップ広告等」との記載及び特許請求の範囲の「上記注文者から印刷用データの生成が指示された場合には,上記処理手段が,上記注文者によって注文時に上記注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された上記特定動作用データ,上記種類を示す識別子および上記注文者を示す識別子を1個の自動認識のシンボルに変換し,上記処理手段が,得られた自動認識のシンボルと,上記注文者によって注文時に上記注文者の端末装置からの操作を受けて予め選択された上記販促ツールの雛形のデータとを重畳する」との記載からみて,印刷された店頭掲示物を含むものである。
そして,引用文献1発明の「広告媒体」は,印刷された店頭掲示物を含むものであるから本願発明の「販促ツール」に相当し,他方で,引用文献1発明の「統計処理」は,販促ツールによる広告の効果に関する処理である点において本願発明の「集計」に対応しているから,販促ツールの種類毎の販促ツールによる広告の効果に関する処理を行うために用いられる引用文献1発明の「広告媒体の種類」は,本願発明の「販促ツールの種類」に相当する。そして,引用文献1発明の「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」は対象となる販促ツールの種類を識別する記号列であるから,本願発明の「販促ツールの種類示す識別子」に相当するものである。
(5) 以上より,本願発明における「識別子」は,「販促ツールの種類」毎に1の識別子が対応する場合のみならず,1つの「販促ツールの種類」に対し複数の「識別子」が対応する場合も含まれるものと解されるから,原告の主張は,「本願発明における『販促ツールの種類を示す識別子』は販促ツールの種類毎に特定される識別子であり,実際の販促ツールとこの販促ツールに付与される識別子との関係は1対1の関係である。」との点において前提に誤りがある上,引用文献1発明の「広告媒体の種類を示す広告媒体ID」は対象となる販促ツールの種類を識別する記号列であり,本願発明の「販促ツールの種類示す識別子」に相当するものと解されるから,審決の判断に原告主張の一致点認定の誤りはない。
2取消事由2について取消事由2は,審決が「・・・先の拒絶理由により提示した特開2002-74151号公報(判決注:引用文献4のこと )・・・に見られるように,評価処理を行う場合に,広告媒体に付された自動認識シンボルに含まれる注文者の識別子を使用して注文者毎に集計処理を行うことも周知技術である。」(21頁24行〜28行 )との認定の誤りを主張するものであるところ,引用文献1発明が自動認識シンボルであるバーコードを付した広告媒体につきこのバーコードを用いて評価のための集計処理を行うものであることに照らすと,審決の上記認定は,自動認識シンボルに認識後の処理に用いるべく注文者の識別子を含めることが周知である旨を示す趣旨のものであり,引用文献4(甲4 )はこれが周知であることを示すための周知例として示されたものである。
そして,自動認識シンボルが含む情報を認識後の処理においていかようにも取り扱えることは技術常識である。また,引用文献4(甲4 )は,広告枠の有効性評価を可能とする広告管理システムに関する発明の公開特許公報であり(段落【0001】),通常は自動認識シンボルに含めて利用されるJANコードが広告主コードと関連付けることが記載されているところ(段落段落【0023】,【0024】,【0052】,【図6】),このように関連づけられたJANコードが注文主としての広告主を識別できることを踏まえれば,自動認識シンボルに認識後の処理に用いるために含められる情報としての注文者の識別子を含めたものが記載されているといえる。してみると,自動認識シンボルに認識後の処理に用いるための注文者の識別子を含めることは周知技術なのであって,審決の前記認定に誤りはない。
3取消事由3について原告は,本願発明は,販促ツール毎に注文者毎の評価を収集することが可能であるとともに,受注/出荷管理までを一元的に構築することが可能となるシステムであるのに対し,引用文献1〜7は,広告効果,販促ツールの余剰削減,評価する情報の正確性や有効性の向上など特定の課題を解決するものであり,本願発明のように,販促ツールを作成し,販売する会社が抱える重要な多くの問題をすべて解決するものではなく,引用文献1〜7に記載された技術を単純に組み合わせても容易に想到できないものであるにもかかわらず,引用文献2〜7に開示される本願発明と部分的に共通する点のみを集めて容易に想到できるとした判断は事後分析的であることは否めず,審決においての判断プロセスに違法性があるなどと主張する。
しかし,原告の上記主張は進歩性の判断手法についての一般論を述べたものにすぎず,具体的な取消事由を指摘したものとはいえない。また,引用文献2〜7には販促ツールを作成し,販売する会社が抱える問題を解決するための技術事項が摘示されているのであるから,これを販促ツールを含む広告媒体情報検出システムである引用文献1発明に適用して,販売ツールの作成・販売会社が抱える様々な問題を解決するとともに,広告媒体の評価/受注 /出荷管理までを一元的に管理するシステムに想到することは,特段の阻害要因も見当たらないことに照らせば,容易であるというべきである。そして,本願発明の効果は,引用文献1発明に引用文献2〜7に記載された技術を組み合わせたものとして格別の効果を奏するものではない。
よって,審決の判断に原告主張の相違点判断の誤りはない。
第6結論以上によれば,原告主張の取消事由はすべて理由がない。
よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 真辺朋子
裁判官 田邉実