• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2008-21018
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22行ケ10051審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10332審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10300審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10266審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10402審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 自然法則 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  技術常識 /  明確性 /  発明を特定する事項 /  発明が明確 /  優先権 /  国内優先権 /  明瞭でない記載 /  実質的に同一 /  共有 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  釈明 /  独立特許要件 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 22年 (行ケ) 10188号 審決取消請求事件
原告日本ソリッド株式会社
被告特 許庁長官
同 指定代理人遠藤秀明千葉成就紀本孝豊田純一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/12/15
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2008-21018号事件について平成22年4月28日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,特許請求の範囲の記載を下記2の(1)から(2)へと補正する本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件出願(甲2)及び拒絶査定発明の名称:物品出願番号:平成10年特許願第177950号出願日:平成10年5月22日国内優先権主張日:平成9年6月2日各手続補正日:平成18年10月4日付け(乙2),平成19年8月3日付け(乙5),同年11月14日付け(乙8)平成19年11月14日付け補正の却下決定日:平成20年7月4日(乙10)拒絶査定日:平成20年7月4日(乙11)(2)審判請求及び本件審決審判請求日:平成20年8月15日(不服2008-21018号事件。乙12)手続補正日:平成20年8月15日(甲3。以下,同日の補正を「本件補正」という。)審決日:平成22年4月28日審決の結論:本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成22年5月18日2本件補正前後の特許請求の範囲の記載本件補正前及び本件補正後の各特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
以下,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」ということがある。なお,下記(2)の本件補正後の特許請求の範囲の記載における下線部分は,本件補正による補正箇所である。
(1)本件補正前の特許請求の範囲(甲2,乙2,乙5)請求項1:亀甲模様を施した,透過部を有する構造体に,同じ亀甲模様を施した透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品請求項2:透光性を有する素材からなる構造体に,亀甲模様を同一または同一色の濃淡,あるいは異なる色彩によって描いてなる請求項1記載の物品(2)本件補正後の特許請求の範囲(甲2,乙2,乙5,甲3)請求項1:図1の図形模様を施した,透過部を有する構造体と ,図1の図形 模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した, 透過部を有する構造体とを間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品請求項2:透光性を有する素材からなる構造体に,図1の図形模様を同一または同一色の濃淡,あるいは異なる色彩によって描いてなる請求項1記載の物品なお,上記の図1は,本件出願の願書に添付された下記の図面である。
3本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,?本件補正は,請求項の削除,特許請求の範囲減縮,誤記の訂正及び明瞭でない記載釈明のいずれをも目的とするものではないから,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第4項(以下「法17条の2第4項」という。)各号のいずれの事項にも該当しないから却下を免れず,?仮に本件補正が特許請求の範囲減縮を目的としたものであったとしても,同改正前の特許法36条6項(以下「法36条6項」という。)2号に適合するものではないから,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであり,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に違反するものとして,却下すべきものであり,?本願発明は,実願昭56-78790号(実開昭57-189900号)のマイクロフィルム(甲5。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
(2)なお,本件審決が認定した引用発明並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア引用発明:六角模様を施した,透明板(1a)に,同じ六角模様を施した,透明板(1b)を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成されてなる装飾板イ一致点:亀甲模様を施した,構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品ウ相違点:構造体が,本願発明では,亀甲模様を施した透過部を有するものであるのに対して,引用発明では,透明板(1a),(1b)に六角模様を施したものである点4取消事由(1)本件補正を却下した判断の誤り(取消事由1)(2)本願発明を拒絶した判断の誤り(取消事由2)第3当事者の主張1取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)法17条の2第4項該当性本件審決は,30度回転させる対象を「構造体」から「図形模様」へと変更することは,発明を特定する事項を限定することによる特許請求の範囲減縮を目的とするものということができず,また,誤記の訂正を目的とするものとも,明瞭でない記載釈明を目的とするものとも認められないとした。
しかしながら,図形模様は,構造体に描かれているもので,両者は一体のものであるから,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転させることと実質的に同一であるので,変更には当たらない。
そして,「構造体」を「図形模様」に補正することは,図柄の組合せ状態を明確にしたものであって,明瞭でない記載釈明に該当するものである。
(2)明確性の要件本件審決は,本件補正における「図1の図形模様」とは,図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)のことを意味するのか,複数の亀甲模様(六角形の模様)が集合して形成された集合体により形成される模様のことを意味するのか,若しくは図1に示される全体の形状からなる模様を意味するのか明らかでなく,特許を受けようとする発明が明確となるように特許請求の範囲の記載がされたものではないとした。
しかしながら,本件審決の上記認定は,「亀甲模様」の意味を間違えて解釈した上での認定であって失当である。
「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なっている模様」を意味するから(「国語大辞典」昭和56年12月10日小学館発行。甲4),「亀甲模様」との用語から,図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)との解釈が生ずる余地はない。
「亀甲模様」とは,本願補正前の明細書(甲2。以下,添付の図面を含めて「本願明細書」という。)の図1のとおり,六角形を形成する輪郭線が互いに隣接する六角形と共有して構成されたものであって,同図は,正六角形の形状を有する亀甲模様を表したものである。
(3)補正案に対する説示なお,本件審決は,本件補正を却下するに当たり,原告作成の平成21年12月9日付け回答書(甲7)に,特許請求の範囲及び図1の補正案(以下「本件補正案」という。)が示されているが,同補正案には法的根拠はなく,仮に,同補正案を勘案し,同補正案の図1を参酌しても,本願発明の「図1の図形模様」との記載が,どのような図形模様を意味するのか明確ではないとした。
しかしながら,同補正案の図1をみると,これが「正六角形の亀甲模様」であることが明白である。
〔被告の主張〕(1)法17条の2第4項該当性原告は,図形模様は構造体に描かれているもので,構造体と図形模様とは一体のものであるから,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転させることと実質的に同一であるので,変更には当たらず,「構造体」を「図形模様」に補正することは,明瞭でない記載釈明に該当すると主張する。
しかしながら,本願明細書【0010】には,図形模様を構造体に施す方法として,「打ち抜きや印刷,刻印,転写,吹き付け」することが記載されており,このような手法(特に転写)を採用するに当たっては,図形模様の原板が必要であり,原板の図形模様を構造体に形成することになる。そして,構造体,例えば「ガラス」の向きを変えることなく図形模様の向きを変えることも可能となるのであって,両者が一体という原告の主張は理由がない。
また,本件出願の当初明細書(公開公報は甲2)【0005】及び【0007】によると,図形模様と構造体とは必ずしも一体的なものではなく,所定の効果を得るための可動対象として選択的に記載されていたものであって,これらの記載についてのその後の補正によって,図形模様と構造体の性質が出願当初のものから変更されるものではない。
したがって,30度回転させる対象を,「構造体」から「図形模様」とする本件補正は,目的とする効果を得るために手段を変更する補正であるということができ,明瞭でない記載釈明を目的としたものと認めることができない。
(2)明確性の要件原告は,「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なった模様」を意味するのであり,「亀甲模様」との用語から図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)との解釈が生ずる余地はないと主張する。
しかしながら,そもそも,本件補正発明には,「図1の図形模様」との記載があるものの,「亀甲模様」との記載はなく,原告の主張は失当である。
また,原告は,「亀甲模様」なる用語から「図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)」との解釈が生まれる余地はないと主張するが,原告がそれぞれ提出した平成19年11月14日付け意見書(乙9)における「本願発明の図形模様は,本願添付図面の図1に示すように,亀甲模様同士が隙間なく互いに連接された状態に構成されているものであって」との記載及び平成20年8月15日付け審判請求書(乙12)における「本願発明は,図1に示す如く,正六角形の図形がそれぞれ接合された状態で構成された図形模様を構造体に施すものであります。」との記載からすると,原告において「亀甲模様」の意味が一定しておらず,原告の主張には理由がない。
(3)本件補正発明の進歩性の有無さらに,本件補正の目的及び発明の明確性の点を措くとしても,本件審決が「仮に,当該手続補正が適法なものであり却下されないものであったとしても」として本件補正発明の進歩性について説示しているとおり,本件補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあって,進歩性を有しないから,独立特許要件を欠き,本件補正が却下されるべきことに違いはない。
(4)補正案に対する説示なお,本件補正案には法的根拠はなく,本件補正案に関する判断は本件審決の結論に影響しないものである。
2取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 一致点の認定の誤りの有無本件審決は,「亀甲形」とは「亀の甲のように六角形が上下左右に並んだ模様」のことであるから,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模様」に相当すると認定した。
しかしながら,「亀甲模様」とは,前記1の〔原告の主張〕の(2)のとおり,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なった模様」であって,「亀甲模様」との用語から,「本願明細書の図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)」との解釈が生ずる余地はなく,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは別異の模様である。そして,本願発明における亀甲模様を重ね合わせてできる模様は,多数の形状のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させることができるものであって,引用発明のような比較的単純なものではない。
したがって,本願発明と引用発明とは,亀甲模様を施した構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品との点で一致するとの認定は誤りといわざるを得ない。
(2)相違点の判断の誤りの有無ア透過部について本件審決は,本願発明と引用発明との相違点の検討において,引用発明の透明板(1a),(1b)に施された隣り合う六角模様により形成される部分は透過部であるということができるから,引用発明の透明板(1a),(1b)は,亀甲模様を施した透過部を有する構造体であるとした。そして,本願発明の「亀甲模様」自体が「透過部」であることにつき,引用発明において,そのモアレ効果を考慮しつつ六角模様の輪郭線内部の色彩や透過性を適宜変更することは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず,相違点に係る事項は,当業者であれば想到することが容易であるとした。
しかしながら,引用発明において「白抜き模様」としたとしても,その模様は依然として「亀甲形の模様」に変わりはなく,本願発明の「亀甲模様」とは別異のものである。そして,本願発明のように,亀甲模様とその部分が透過部であることとの組合せによって,初めて繊細な模様を生起することができるのである。
イ作用効果について本件審決は,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できる程度のものであって,格別のものではないとした。
しかしながら,本願明細書の図1に示す正六角形の亀甲模様を重ね合わせた場合,描かれる模様は8種類の形状の図形から構成され,更に柄数も85個から構成されていることから極めて繊細な模様を得ることができる。他方,引用発明のように,正六角形を「亀甲形」に配列した模様を重ね合わせても,6種類の形状の図形からしか構成されず,また,柄数も42個にすぎず,極めて大柄の模様しか得ることができない。
このような本願発明の極めて繊細な模様が得られるという優れた技術的効果は,引用発明から容易に想到し得るものではない。
本願発明の「亀甲模様」は,「エネルギー最小消費で最短の軌道を通り,最大の効果を得る」最小原理を基盤として高度の最適解を追求した図形である。自然の成り立ちは,この最小原理を基盤とした無駄のない設計がされている。
本願発明は,自然法則に最も近い構造からなるもので,4の数を基盤とした世界の曼荼羅とは異なり,6を基盤とした全てを内包する新しい高次曼荼羅模様を容易に作図することを可能としたものである。数字では「1や9を中心とする最高位概念」が従来文献にあるが,あまねく内包するものには中心も下位・上位もないが全てが少しずつ異なった図形が連なって,どのような形もその中に内在することができるものである。平等の形の図形は捉われたところがなく,無端の円環が明確に現れて,近代科学ではナノチューブに見られるものである。これは,自然の形が偶然現れたもので,究極の構造といわれた60個のカーボンが集まる「フラーレン」より次元が高いものである。
〔被告の主張〕(1)一致点の認定の誤りの有無「亀甲模様」とは,「亀の甲羅を図案化した六角形の文様。めでたい印として古くから単独・連続で使われる。」(「日本語大辞典」平成元年11月6日講談社発行。乙13)との意味であり,六角形が一定のピッチ幅で連続している場合も含む模様であるから,引用発明の「六角模様」は,亀甲模様であるといえる。
したがって,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模様」に相当する。
(2) 相違点についての判断の誤りの有無ア透過部について引用発明の模様は,本願発明の「亀甲模様」に相当するものであるから,これを否定することを前提とする原告の主張は失当といわざるを得ない。
なお,原告も,本件訴訟において,「亀甲模様の輪郭線(境界部分)にあっては,目的とする物品によってその幅を適宜選択すれば良いだけのことである。」と主張しており,本願発明の亀甲模様について,六角形同士が輪郭線(境界部分)により一定幅離れていてもよく,亀甲模様の輪郭線(境界部分),すなわち六角形のピッチ幅については,設定的事項であることを認めている。
イ作用効果について特定の模様を施した2つの構造体を重ねて得られる図柄の繊細さが,構造体に施す模様や構造体同士のずれ幅(あるいは回転角度)などに依存することは技術常識であり,構造体に施す模様のピッチを小さくしたり,模様自体を細かくすることで,構造体を重ねたときに,より繊細な図柄が得られることは,当業者が予測可能な程度のものであり,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できる程度のものであって,格別のものということはできない。
第4当裁判所の判断1取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について(1)本件補正のうち請求項1についての補正は,前記のとおり,?「亀甲模様」を「図1の図形模様」とするとともに,?「同じ亀甲模様を施した透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて」を「図1の図形模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した,透過部を有する構造体とを間隙を設けて重ね合わせて」とするものである。
(2)原告は,上記(1)?の補正部分につき,図形模様と構造体とは一体のものであって,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転させることと実質的に同一であるので,変更には当たらないとした上,「構造体」を「図形模様」に補正することは,図柄の組合せ状態を明確にしたものであって,明瞭でない記載釈明に該当するものであると主張する。
(3)しかしながら,法17条の2第4項は,拒絶査定不服審判を請求する場合において,その審判の請求と同時にする特許請求の範囲についてする補正は,同項1号ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限ると規定しているのであって,明瞭でない記載釈明として補正が許されるのは,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限られるところ(法17条の2第4項4号),平成20年7月4日付け拒絶査定(乙11)の理由となる同19年10月1日付け拒絶理由通知(乙7)は,引用文献との関係で進歩性の欠如を指摘するものであって,上記(1)?の補正部分の補正前の規定について指摘するものではなく,同部分の補正は,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものではないから,明瞭でない記載釈明に該当するということはできない。
また,上記(1)?の補正部分は,法17条の2第4項1号(請求項の削除),2号(特許請求の範囲減縮)及び3号(誤記の訂正)のいずれの事項に該当するものでもない。
(4)したがって,上記(1)?の補正部分が法36条6項2号所定の明確性の要件に欠けるとした本件審決の認定判断に誤りを認め得るものであったとしても,本件補正の目的は法17条の2第4項各号のいずれにも該当しないとした本件審決の判断を左右するものではなく,本件補正を不適法なものとして却下すべきとした本件審決の結論はこれを是認することができる。
(5)なお,原告は,本件審決が,本件補正案の図1を参酌しても,本願発明の「図1の図形模様」との記載が,どのような図形模様を意味するのか明確でないとしたことを非難するが,補正案の提出は補正ではないから,この点に関する原告の主張は失当である。
2取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)について(1)引用発明の内容ア引用例の記載によると,引用発明は,透明又は半透明板に適当な幾何学模様を多数形成し,該板の少なくとも2枚を重ね合わせて,その各板を相対的に移動させてモアレ模様を表出させるべく構成したことを特徴とする装飾板であって,引用例添付の下記第1図のとおり,透明板の少なくとも一方の外表面に,六角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成し,これらの2枚の透明板(1a)及び(1b)を適宜隙間をあけて対向状に重ね合わせるとともに,一方の透明板を他方の透明版に対して回動可能に支持させ,透明板(1a)及び(1b)がその各六角模様が互いに重なり合うように対向位置させた状態から一方の透明板(1a)を他方の板(1b)に対して約30度回動させたときには,回動中心地域及び周辺地域に小柄の花柄モアレ模様が多数表出されるものである。
イ以上によると,引用発明は,「六角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数施した透明板(1a)に,同じ六角模様を施した透明板(1b)を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成されてなる装飾板」と認めることができる。
(2)一致点の認定の誤りの有無ア原告は,本件審決が,「亀甲形」とは「亀の甲のように六角形が上下左右に並んだ模様」のことであるから,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模様」に相当するとしたことにつき,「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なった模様」であるから,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは別異の模様であるとして,本件審決の一致点の認定には誤りがあると主張する。
イしかしながら,上記(1)のとおり,引用発明は,その第1図に示すように,透明板の少なくとも一方の外表面に,六角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成したものであって,六角模様が適宜の間隔を置いて,上下,左右に連なっているものであるところ,個別の六角模様相互の間隔については,引用例も本願発明も特定しているものではないから,この点については適宜の設計事項ということができ,引用発明における「六角模様を施した」ことは,本願発明における「亀甲模様を施した」ことに相当するということができる。
ウこの点について,原告は,甲4を引用し,「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なった模様」であるから,「亀甲模様」との用語から,本願明細書の図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)との解釈が生ずる余地はなく,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは別異の模様であると主張する。
しかしながら,上記のとおり,引用発明も,六角模様が上下,左右に連なっているものを含むものであって,原告の主張は失当といわざるを得ない。
また,原告は,本願発明における亀甲模様を重ね合わせてできる模様は,多数の形状のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させることができるのであって,引用発明のような比較的単純なものではないと主張する。
しかしながら,本願発明に係る特許請求の範囲の記載による限り,これが多数の形状のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させるものに限定されるものであるとみることができない上に,引用発明においても,六角模様を規則正しく多数施す際,個別の六角模様の輪郭を細くしたり,個別の六角模様同士の間隔を適宜調整したりすることによって,原告が主張するような本願発明における繊細な模様を作り出すことができるものであり,引用発明と比較して本願発明が繊細な模様を生起させるものであるとする原告の主張は採用することができない。
エ以上によると,本願発明と上記(1)のとおりに認定される引用発明との一致点について,前記第2の3(2)イのとおり,「亀甲模様を施した,構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品」とした本件審決に誤りはない。
(3)相違点についての判断の誤りの有無ア透過部について原告は,本件審決が,本願発明の「亀甲模様」自体が「透過部」であることについて,引用発明において,そのモアレ効果を考慮しつつ六角模様の輪郭線内部の色彩や透過性を適宜変更することは,当業者が適宜なし得る設計的事項であるとしたことにつき,引用発明の模様は「亀甲形の模様」であって,本願発明の「亀甲模様」とは別異のものであるから,本願発明のように,亀甲模様とその部分が透過部であることとの組合せによって生起される模様とすることができないと主張する。
しかしながら,前記(2)のとおり,本願発明と引用発明とのいずれも,六角(亀甲)模様が上下,左右に連なっているものであって,その六角模様が適宜の間隔を置いている引用発明においても,その間隔のない状態にすることは予定されているから,そのような引用発明の模様が,本願発明の模様とは異なるとの原告の上記主張は理由がない。
イ作用効果について原告は,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できないものであるなどと主張する。
しかしながら,引用発明も,本願発明との一致点のとおり,「亀甲模様を施した,構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品」であり,引用発明において,六角(亀甲)模様を等間隔をあけて規則正しく多数施した透明板に,同じく六角模様を施した透明板を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成するにおいて,六角模様を規則正しく多数施す際,個別の六角模様の輪郭を細くしたり,個別の六角模様同士の間隔を適宜調整したりすることによって,原告が主張するような本願発明における繊細な模様を作り出すことができるものであるから,本願発明が奏する作用効果も,結局のところ,引用発明から当業者が容易に予測できるものといわざるを得ず,原告の主張を採用することはできない。
3結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 本多知成
裁判官 荒井章光
  • この表をプリントする