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関連審決 無効2009-890126
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22行ケ10226審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  包装 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  4条1項15号 /  品質誤認(4条1項16号) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  除斥期間 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  無効審判 /  非類似 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10215号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁理士伊藤捷雄
訴訟復代理人弁理士田中正平
被告 朝霧ヨーグル豚販売協同組合
訴訟代理人弁理士大津洋夫
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/11/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2009-890126号事件について,平成22年6月2日にした審決(「審判請求は成り立たない。」とした部分を除く。)を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯等 原告は,商標登録第4920741号(平成17年3月14日出願,平成18年1月13日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は,「ハーブヨーグルトン」の片仮名を標準文字で表記されたものであり,その指定商品は別紙指定商品目録1のとおりである。
被告は,平成21年11月20日,以下のとおり主張して,本件商標の登録2を無効にすることを求めて無効審判(無効2009-890126号。以下「本件無効審判」という。)の請求をした。
すなわち,?本件商標は,登録商標第4722030号(以下「引用商標」という。引用商標は,平成14年10月10日登録出願,平成15年10月31日設定登録され,「ヨーグルトン」の片仮名を標準文字で表記し,その指定商品は,別紙指定商品目録2のとおりである。)と,商標において類似し,かつ指定商品(本件商標中の「食用油脂,乳製品」を除く。)において類似するので,本件商標中の「食用油脂,乳製品」を除く指定商品について,商標法4条1項11号に該当する無効理由がある,?本件商標は,商標法4条1項16号に該当する無効理由があると主張した。
特許庁は,平成22年6月2日,「商標登録第4920741号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年6月10日,原告に送達された。
2審決の理由 別紙審決書写しのとおりである。要するに,?本件商標の登録は,指定商品中「食用油脂,乳製品」を除くものについて,商標法4条1項11号に該当するものについてされたものである,?本件商標は,指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるとはいえず,商標法4条1項16号に該当しない,?したがって,その指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」について,3商標法46条1項の規定により無効とし,その余の商品については,商標法4条1項16号に違反して登録されたものではないから,その登録を無効とすることはできない,というものである。
第3当事者の主張1取消事由に係る原告の主張 (1)商標法4条1項11号該当性判断の誤り(取消事由1) ア審決は,商標法4条1項11号該当性につき,次のとおり判断した。
(ア)本件商標について本件商標は,「ハーブヨーグルトン」の片仮名よりなり,外観上は,標準文字により,等間隔にまとまりよく表記されているが,全体が9文字とやや多く,構成全体から生ずる「ハーブヨーグルトン」の称呼は9音とやや冗長といえる。「ハーブヨーグルトン」は,特定の意味合いをもって知られている語とは認められず,また,「ハーブ」は,「薬草,香味料とする草の総称」を意味する語として,一般に広く知られたものということができる。
上記のことから,本件商標が「ハーブ」と「ヨーグルトン」を結合してなるものと理解する場合もあり,本件商標中の「ハーブ」の文字部分は,自他商品の識別力が無いか又は極めて弱いと認められ,「ヨーグルトン」の文字部分が自他商品識別力を有する部分というべきである。本件商標は,各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとの被申請人(原告)の主張は採用できない。
したがって,本件商標は,構成全体より「ハーブヨーグルトン」の称呼を生じ,その要部と認められる「ヨーグルトン」の文字部分より「ヨーグルトン」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものと認められる。
(イ)引用商標について4引用商標は,「ヨーグルトン」の片仮名文字を標準文字で表記したもので,意味を有しない造語よりなるから,構成文字に相応して「ヨーグルトン」の称呼を生ずるが,特定の観念を有しない。
(ウ)本件商標と引用商標の類否について本件商標の要部である「ヨーグルトン」の文字部分と引用商標は,外観上類似し,いずれも「ヨーグルトン」の称呼を生じ,観念については,両商標はいずれも特定の観念を生じないから比較することができない。
本件商標と引用商標は,称呼を共通にし外観も類似する互いに相紛らわしい類似の商標である。
本件商標の指定商品中,「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」は,引用商標の指定商品と同一であるから,本件商標の登録は,その指定商品中,上記のものについて,商標法4条1項11号に該当するものにされた。
イしかし,審決の判断には誤りがある。すなわち, (ア)本件商標の一体不可分性本件商標は,「ハーブヨーグルトン」と片仮名で,同書,同大,同間隔に表記されていることから,語呂や結合状体もよく,一挙によどみなく読むことができる。また,「ハーブヨーグルトン」は,特に意味のない造語であるが,「ハーブ」と「ヨーグルトン」の結合商標であるとの観点に立ったとしても,指定商品との関係から,「ハーブ」と「ヨーグルト又はヨーグルト状」の飼料で育てた豚という1つのまとまった観念を生じさせるものであり,「ヨーグルトン」には自他商品の識別機能は薄弱であるから,「ハーブ」と「ヨーグルトン」の文字部分に識別力の5軽重の差はない。
したがって,本件商標は一体不可分であり,「ハーブ」と「ヨーグルトン」に分離して観察しなくてはならない必要性はない。
(イ)本件商標と引用商標の類否a本件商標の外観,観念,称呼本件商標は,上記のとおり,一体不可分であり,一挙によどみなく読むことができるから,「ハーブヨーグルトン」の称呼のみが生じる。
また,「ヨーグルトン」は,多くの人が「ヨーグルト」を連想し,「トン」は「豚」の音読みであるから,「ヨーグルト,或いは,ヨーグルト状の発酵飼料を用いて育成した豚」という観念を生じさせるものであり,意味のない造語ではない。リキッドフィーディング,発酵リキッドフィーディングは,ヨーロッパで以前から知られた豚の給餌方法であり,日本でも,養豚業者や飼料会社のような一般取引者の間で良く知られ,引用商標出願時に,一般取引業者の間において,このような豚の飼育方法があることは周知であった。
b引用商標の外観,観念,称呼「ヨーグルトン」は,片仮名で同書,同大,同間隔で表記されたもので,「ヨーグルトン」の称呼のみを生じる。
また,「ヨーグルトン」は,上記のとおり,「ヨーグルト,或いは,ヨーグルト状の発酵飼料を用いて育成した豚」という観念を生じさせるものであり,意味のない造語ではなく,品質を表示するものであって,自他商品識別力がない商標である。
c類否判断本件商標を一体不可分として見た場合,本件商標と引用商標は,外観,観念,称呼において非類似である。
ウ小括6 本件商標と引用商標とは類似せず,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しないから,審決の判断は誤りである。
(2)本件無効審判請求の不当性(取消事由2)「ヨーグルトン」は,以下のとおりの無効理由を有する商標であり,現在使用していない商標であるから,被告が,これを引用商標として,無効審判請求をすることは許されない。
まず,引用商標は,商標法3条1項3号にいう品質を表示する標章に当たるものである。すなわち,引用商標の「ヨーグルトン」という名前の由来は,ヨーグルト状の飼料を食べさせて育てた豚(トン)であるが,ヨーグルト状の飼料を与えて豚を飼育する「リキッドフィーディング」は,引用商標の出願以前に,養豚業者や食肉の卸売業者には広く知られた豚の飼育方法であり,引用商標に接した養豚業者や食肉の卸売業者などの一般取引者は,直ちにヨーグルト状の飼料を与えて育てた豚,或いは豚肉であると理解する。
また,引用商標の出願前である昭和44年に設立された株式会社ヨーグルトン乳業という会社が存在し(甲58の1ないし6),同社は,設立当初から「ヨーグルトン」の商標を用いて「乳製品」の製造販売を行っている。乳製品は引用商標の出願時に第29類に分類されていたから引用商標と同一分類になる。すなわち,「ヨーグルトン」は,株式会社ヨーグルトン乳業の設立当初から,引用商標の出願日である平成14年10月10日まで,28年間の使用実績があり,周知性を取得していたものと考えられる。そうすると,引用商標は,出願時に,他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれのある商標として,本来,商標法4条1項15号の規定により,商標権を取得できなかったものである。しかも,被告は,平成18年10月24日付けの本件商標に係る登録維持の異議決定後,引用商標の登録日である平成15年10月31日から5年の除斥期間が経過した平成21年11月20日まで待って本件無効審判を請求している。
7さらに,被告は,引用商標を現在使用していない。
したがって,被告が,「ヨーグルトン」を引用商標として,無効審判請求に及ぶことは不当である。
2被告の反論 (1)取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)に対し 本件商標が,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は失当である。すなわち,ア原告は,本件商標について,「ハーブヨーグルトン」と片仮名で,同じ大きさ,同一の標準文字により同間隔に表記されているから,一体不可分のものとして理解されるべきであると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,本件商標の「ハーブ」の文字部分は,食品業界では食品の原材料,家畜の飼料として用いられることがよく知られているから,「ハーブ」と「ヨーグルトン」は,不可分的に結合しているとは認められない。
イ原告は,引用商標の「ヨーグルトン」は,ヨーグルト,或いは,ヨーグルト状の発酵飼料を用いて育成した豚という観念を生じさせるものであり,観念の生じない造語とはいえないと主張する。
しかし,原告の上記主張も,以下のとおり失当である。すなわち,「ヨーグルトン」は,辞書に記載のない用語であり,明確な意味を有しないから,その識別力は強いというべきである。
(2)取消事由2(本件無効審判請求の不当性)に対し 取消事由2は,審決において判断されなかった事項であり,本件訴訟の審理の対象とされるべきではないから,原告の主張は失当である。
また,引用商標が,商標法3条1項3号にいう品質を表示する標章に該当するとの原告の主張を前提とするならば,本件商標も,「ハーブ」と「ヨーグルトン」との組み合わせからなり,同様の理由により,商標法3条1項38号に該当することになり,登録要件を欠くことになる。
さらに,原告は,?引用商標には,商標法4条1項15号に該当する無効理由を有する商標であると主張するが,同主張に係る事項は,無効理由に該当せず,失当であり,?被告が,現在使用していない商標を引用して無効審判請求をすることは許されないと主張するが,引用商標は,被告において使用しているから,同主張は失当である(甲35の1ないし5)。
第4当裁判所の判断当裁判所は,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について (1)本件商標と引用商標の類否について ア事実認定 (ア)本件商標の称呼,観念及び外観本件商標は,「ハーブヨーグルトン」の文字を,同一の大きさ,同一の間隔で,標準文字(片仮名)により,一連に表記した商標である。
本件商標からは,「ハーブヨーグルトン」の称呼及び外観が生じる。
本件商標からは,以下のとおり,格別の観念は生じない。
本件商標は,一連に記載されているので,何を意味するか不明であり,仮に「ハーブ」部分と「ヨーグルトン」部分とを分けて理解したとしても,全体として,固有の意味は生じない。すなわち,同商標中の「ヨーグルトン」部分は,それ自体に固有の意味を有することのない造語であると理解される。「ヨーグルト」部分に着目するならば,牛乳等に乳酸菌を加えて発酵させた食品である「ヨーグルト」を連想させ,「トン」部分は,「豚」や重さの単位である「トン」を連想させるが,一般的には,相互に関連のない語の組み合わせであること,2つの語で重複する「ト」が単一の文字(音)となって用いられることになり,いずれか一9方の意味に関連させて理解した場合には,他の部分が全く意味を有しないことになる等の点に照らすならば,「ヨーグルトン」部分は,格別の観念を生じることのない造語であると理解するのが合理的である。同商標中の「ハーブ」部分は,草,香味料,薬草そのもの,及び健康食品,料理に用いられる香草等を指す語と理解され(甲4,5,乙28〜30),同部分からは,「香草等を用いた」との観念を生じる可能性があるが,「ヨーグルトン」部分が格別の観念を生じないことから,本件商標全体が,一連に記載されており,何を意味するか不明であることに照らすならば,本件商標全体として格別の観念を生じることはないというべきである。
(イ)引用商標の称呼,観念及び外観引用商標は,「ヨーグルトン」の文字を,同一の大きさ,同一の間隔で,標準文字(片仮名)により,一連に表記した商標である。
引用商標からは,「ヨーグルトン」の称呼及び外観が生じる。
引用商標からは,以下のとおり,格別の観念は生じない。「ヨーグルトン」は,それ自体に固有の意味を有することのない造語であると理解される。「ヨーグルト」部分に着目するならば,牛乳等に乳酸菌を加えて発酵させた食品である「ヨーグルト」を連想させ,「トン」部分に着目するならば,「豚」や重さの単位である「トン」を連想させるが,一般的には,相互に関連のない語の組み合わせであること,2つの語で重複する「ト」が単一の文字(音)となり,いずれか一方の意味に関連するように理解した場合には,他の部分が全く意味を有しないことになる等の点に照らすならば,「ヨーグルトン」は,格別の観念を生じることのない造語であると理解するのが合理的である。したがって,「ヨーグルトン」の語の識別力は,決して弱いものとはいえず,むしろ強く保護されてしかるべきである。
10 (ウ) 取引の実情原告は,昭和51年ころから,埼玉県深谷市において,井田ファームと称して養豚業を営み,平成15年1月ころから,食品残渣を利用して豚にヨーグルト状の飼料を与える「発酵リキッドフィーディングシステム」を用いた養豚を始めた。原告は,発酵リキッドの各原料の発酵時に穀物配合飼料の発酵タンクへ,ハーブの一種であるオレガノを含む液を混入させることにより,乳酸菌の多い液体ヨーグルト状を呈した,異臭を発しない,発酵リキッドを飼料として用いた。原告は,本件商標の設定登録を得た平成18年1月13日に先立つ,平成17年1月ころから,埼玉県に本社のある株式会社小林畜産を通じて,ハーブ入り発酵リキッド飼料を用いた豚肉を「ハーブヨーグルトン」の名称で販売してきた。
ところで,豚にヨーグルト状の飼料を与えて豚を育成させる給餌方法(リキッドフィーディング,発酵リキッドフィーディング)は,豚の成育に好影響を与え,疾病を減少させ,飼料のコストを抑制させるなどの利点があるとして,ヨーロッパでは以前から行われ,日本でも,平成13年の食品リサイクル法の施行,平成15年の農林水産省食品リサイクルモデル緊急整備事業等に伴い,全国の養豚業者や給餌機器の製造販売業者等の間に周知されるようになっている。
一方,被告は,平成15年2月に,乳酸菌発酵飼料を用いた豚の共同購入,共同加工,販売などを行なう目的で設立された協同組合である。
富士宮市,富士市,沼津市の食肉卸業者5社及び養豚事業者が,乳酸菌発酵飼料を用いた豚の普及を図るため,試食会などを開催したり,大学と連携して安全性や品質を保証するためのシステムの導入を進める等の活動を行っている。被告の販売に係る豚を取り扱う店は,富士宮市,富士市,沼津市及びその近郊に所在するスーパーを含む10数店舗であり,豚肉,ハム,ソーセージ等が販売されている。被告は,引用商標のほか,11「朝霧ヨーグル豚」,「ヨーグル豚」の商標を登録しており,豚肉,肉製品の販売,宣伝,広告等に使用している。商品の包装容器に貼付するラベルには「朝霧ヨーグル豚」が使用されることが多いが,ホームページの広告記事等には引用商標や「ヨーグル豚」も用いられている。(以上,甲26,35の1ないし6,36,38,42,48の1ないし5,60の1ないし10,61の1,2及び弁論の全趣旨) イ判断本件商標と引用商標とは,いずれも,それぞれも文字を同一の大きさ,同一の間隔で,標準文字(片仮名)により,一連に表記した商標である。
本件商標からは,「ハーブヨーグルトン」の称呼を生じるが,特定の観念を生じるとまではいえず,また,外観における特徴もない。また,引用商標から「ヨーグルトン」との称呼を生じるが,特定の観念を生じるとまではいえず,また,外観における特徴もない。
本件商標と引用商標を対比すると,本件商標を構成する9文字中の6文字からなる「ヨーグルトン」部分において共通する。そして,引用商標「ヨーグルトン」は,前記のとおり造語であることから,指定商品の取引にあたっては,強く認識され,記憶される称呼というべきである。したがって,引用商標は,称呼の観点からも,出所識別力は強い。これに対し,本件商標中の「ハーブ」は,9文字中3文字であり,ヨーグルトンと称される商品の中で,ハーブに関係する特徴を備えたものという付加的な表示と理解され,さほど重視されることはないというべきであるから,両商標は,称呼及び外観において類似するということができ,両商標とも特定の観念を生じることはないから,観念における相違はなく,両商標は,全体として類似すると解すべきである。
この点,原告は,我が国で,養豚業者や飼料会社のような一般取引業者の間において,リキッドフィーディング,発酵リキッドフィーディングに12よる豚の飼育方法があることは周知であったことに照らすと,「ヨーグルトン」の語は,「ヨーグルト,或いは,ヨーグルト状の発酵飼料を用いて育成した豚」という観念を生じさせ,「ヨーグルトン」部分の識別力は弱いと主張する。
しかし,本件全証拠によるも,出願時及び査定時において,本件商標又は引用商標に接する食肉,肉製品の需要者の間において,発酵リキッドフィーディングに関する知識を有していたこと,及び「ヨーグルトン」の語について,発酵リキッドフィーディングを用いて飼育した豚であると広く理解されていたことを認めることはできない。したがって,本件商標の「ヨーグルトン」部分は,発酵リキッドフィーディングを用いて飼育した豚を指す普通名詞であるから,特徴的な部分ではなく,本件商標の「ハーブ」部分のみが特徴的な部分であるとする原告の主張は,採用できない。
(2) 小括以上のとおりであり,本件商標は,その指定商品中の「食用油脂,乳製品」について,引用商標の指定商品とは非類似であるが,前記以外の指定商品については,引用商標の指定商品と同一又は類似であるから,本件商標の登録は,その指定商品中,「食用油脂,乳製品」を除くものについて,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は採用できない。
2取消事由2(本件無効審判請求の不当性)について原告は,「引用商標は,商標法3条1項3号にいう品質を表示する標章に当たるものであること,出願時に他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれのある商標として,本来,商標法4条1項15号の規定により,商標権を取得できなかったものであり,しかも,被告は,本件商標に係る登録維持の異議決定後,引用商標の登録日である平成15年10月31日から5年の除斥期間が経過した平成21年11月20日に本件無効審判を請求していること,被告は現13在,引用商標を使用していないことから,被告がこれを引用商標として,無効審判請求に及ぶことは不当である。」と主張する。
上記主張は,本件無効審判の手続において審理の対象とされなかった事項であり,特段の事情のない限り,本件訴訟において,審決の固有の取消事由として主張することができないというべきであり,本件において,取消訴訟において,そのような主張を判断することが正当であるとする特段の事情はない。
のみならず,原告の主張は,?引用商標の「ヨーグルトン」は,上記1のとおり,格別の観念を生じない造語であるから,品質を表示する標章であるとはいえず,また,?無効審判請求の除斥期間が経過した後に,自己の有する登録商標を引用商標として,商標法4条1項11号所定の無効審判請求を行うことが不当であるとする根拠はない。
よって,原告の主張は採用できない。
3小括以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。原告は,その他縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。
なお,原告は,平成22年9月30日に本件商標登録の指定商品の一部を放棄したとして,商標権の一部抹消登録申請書を提出したものであるが,そのことは審決の結論に影響を与えるものではないから,上記の判断は左右されない。
第5結論 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
14裁判長裁判官飯村敏明裁判官齊木教朗裁判官武宮英子15別紙指定商品目録1第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」ただし,原告は,上記指定商品中「食用油脂,乳製品,食肉(ハーブの粉を混ぜ合わせたヨーグルト状の発酵飼料で育てた豚肉を除く。),肉製品(ハーブの粉を混ぜ合わせたヨーグルト状の発酵飼料で育てた豚肉の肉製品を除く。)」については,平成22年9月30日に放棄したとして,商標権の一部抹消登録申請書を提出した。
(甲73)指定商品目録2第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」