関連審決 | 不服2005-2326 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21行ケ10140審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10370審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成21行ケ10068審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10384審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成22行ケ10090審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 発明特定事項 / 一致点の認定 / 下位概念 / 翻訳文 / 優先権 / 限定的減縮 / 名義変更 / 技術的意義 / 実施 / 交換 / 構成要件 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 減縮 / 変更 / 特許協力条約 / 国際出願 / 国際公開 / 翻訳文提出 / 国内公表 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
22年
(行ケ)
10117号
審決取消請求事件
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原告ジーメンス エレクトロニクス アセンブリー システムズ ゲゼルシヤフト ミット ベシュレ ンクテル ハフツング ウント コンパニー コマ ンディートゲゼルシヤフト 訴訟代理人弁護士加藤義明 同松永章吾 同原澤敦美 訴訟代理人弁理士矢野敏雄 同星公弘 同高橋佳大 被告特許庁長官 指定代理 人吉水純子 同山本一正 同黒瀬雅一 同小林和男 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2010/10/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 - 2 -2訴訟費用は原告の負担とする。 3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が不服2005-2326号事件について平成21年12月14日にした審決を取り消す。 第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯本訴において審決取消が請求された拒絶査定不服審判(不服2005-2326号事件)に係る特許出願は,平成12年(2000年)4月3日,国際出願された(優先権主張平成11年(1999年)4月30日ドイツ連邦共和国,特願2000-614793号,以下「本願」という。。)本願は,発明の名称を「自動装着機の作動方法,自動装着機,自動装着機用の交換可能なコンポーネント,並びに自動装着機と交換可能なコンポーネントとからなるシステム」とし,平成12年11月9日,国際公開され(WO00/67544 ,平成14年12月17日,国内公表された(特表2002- )543602号,甲12,国内公表時の請求項の数は14であった。。)本願については,平成13年10月30日付けで特許協力条約34条補正の翻訳文提出書が提出され(甲13 ,平成16年5月17日付けで拒絶理由通 )知が送付され(甲5 ,同年10月21日付けで願書に添付した明細書につい )ての手続補正がされるとともに(甲7)意見書が提出されたが(甲6 ,同年)11月10日付けで拒絶査定された(甲8 。)平成17年2月10日,拒絶査定不服審判(不服2005-2326号)が請求され,同年3月8日付けで明細書の変更(甲9の1)をする手続補正及び同日付けで審判請求書の変更(甲9の2)をする手続補正が行われたが,特許庁は,平成20年7月8日付けで請求不成立の審決(以下「第1次審決」という )をした。なお,審決取消訴訟の出訴期間として90日の付加期間が定め 。 られた。 これに対し,平成20年11月20日,審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10432号)が提起され(甲15 ,知的財産高等裁判所は,平成21年 )8月20日,審決を取り消す判決を言い渡した(甲14 。)本願については,平成21年9月16日,出願人名義変更届が提出され(甲22 ,特許庁は,再度審理の上,同年12月14日 「本件審判の請求は,成 ) ,り立たない 」との審決(以下,単に「審決」という )をし,その謄本は,同 。 。 月25日,原告に送達された。なお,審決取消訴訟の出訴期間として90日の付加期間が定められた。 2特許請求の範囲平成16年10月21日付け手続補正後による変更後で平成17年3月8日(, 「」。) 付け手続補正 以下 平成17年3月8日付け手続補正を 本件補正 という(,「」。 による変更前の明細書 以下 同明細書を図面とともに 本願明細書 という請求項の数は9であった,及び本件補正による変更後の明細書(請求項の数 。)は7であった )の各特許請求の範囲の請求項の記載は,次のとおりである。 。 ( )本願明細書の特許請求の範囲1【請求項1】制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって,前記制御装置は,サブストレート(1)への構成素子(2)の装着を制御するようにした当該の作動方法において,自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置, (, , の基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3 5) (), 17 の幾何学的特性データを自動装着機 7 内へのマウント前に求め交換可能なコンポーネント 3 5 17 に割り当てられた記憶装置 1 (, ,) (5,16,18)内に記憶し,自動装着機(7)内への交換可能なコンポーネント(3,5,17)のマウント後,先ず,特性データの少なくとも一部を,記憶装置(15,16,18)から自動装着機(7)の制御装置(6)内へ転送し,特性データを,自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにしたことを特徴とする自動装着機の作動方法。 (以下,本願明細書の請求項1を「旧請求項1」といい,旧請求項1記載の発明を「本願発明1」という )。 【請求項2】交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的データをマウント前に測定することを特徴とする請求項1記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項3】交換可能なコンポーネント(3,5,17)の記憶装置(15,16,18)と,自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換が電気的線路を介して行われるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項4】交換可能なコンポーネント(3,5,17)の記憶装置(15,16,18)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換を無線で()。 行うことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機 7 の作動方法【請求項5】自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し,構成素子(2)を受容するためと,後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろ()(), して装着するための装着ヘッド 5 を有する自動装着機 7 において制御装置(6)は読出し装置を有し,該読出し装置により,自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データが,前記交換可能なコンポーネント(3,5,17)に結合された記憶装置(15,16,18)から読出し可能であり,制御装置(6)は,読み出された特性データを記憶し,装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7 。)【請求項6】自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置, (, , の基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3 5) (,,) 17 の幾何学的特性データに対する所属の記憶装置 15 16 18を有することを特徴とする自動装着機(7)用の交換可能なコンポーネント(3,5,17 。)【請求項7】記憶装置(15,16,18)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,該メモリは,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする,請求項6記載の交換可能なコンポーネント(3,5,17 。)【請求項8】交換可能なコンポーネント(3,5,17)は,装着ヘッド(5)として構成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の交換可能なコンポーネント(3,5,17 。)【請求項9】()() (, 自動装着機 7 と自動装着機 7 の交換可能なコンポーネント 35,17)とから成るシステムにおいて,自動装着機(7)は制御装置(6)を有し,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データに対する記憶装置(15,16,18)が結合されており,制御装置(6)は,記憶装置(15,16,18)から特性データを読出し,それらのデータを装着プロセスのために使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)とから成るシステム。 ( )本件補正による変更後の明細書の特許請求の範囲(下線部は,本件補正2による補正箇所である )。 【請求項1】制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって,前記制御装置は,サブストレート(1)への構成素子(2)の装着を制御するようにした当該の作動方法において,自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた,該交換可能な装着ヘッ()(),() ド 5 の他の保持装置 4 の幾何学的特性データを 自動装着機 7内へのマウント前に求め,交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)内に記憶し,自動装着機(7)内への交換可能な装着ヘッド(5)のマウント後,先, ,()() ず 特性データの少なくとも一部を 記憶装置 15 から自動装着機 7の制御装置(6)内へ転送し,特性データを,自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにしたことを特徴とする自動装着機の作動方法。 (以下,本件補正による変更後の後の明細書の請求項1を「新請求項1」という )。 【請求項2】該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データをマウント前に測定することを特徴とする請求項1記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項3】交換可能な装着ヘッド(5)の記憶装置(15)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換が電気的線路を介して行われるように()。 したことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機 7 の作動方法【請求項4】交換可能な装着ヘッド(5)の記憶装置(15)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換を無線で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項5】自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し,構成素子(2)を受容するためと,後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろ()(), して装着するための装着ヘッド 5 を有する自動装着機 7 において制御装置(6)は読出し装置を有し,該読出し装置により,自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データが 前記交換可能な装着ヘッド 5 に割り当てられた記憶装置 1 , () (5)から読出し可能であり,制御装置(6)は,読み出された特性データを記憶し,装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7 。)【請求項6】該記憶装置(15)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されていることを特徴とする請求項5記載の自動装着機(7 。)【請求項7】自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)とから成るシステムにおいて,自動装着機(7)は制御装置(6)を有し,交換可能な装着ヘッド(5)に,該交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データを記憶する記憶装置(15)が設けられており,制御装置(6)は,記憶装置(15)から特性データを読出し,それらのデータを装着プロセスのために使用するように構成されていることを特()()() 徴とする自動装着機 7 と自動装着機 7 の交換可能な装着ヘッド 5とから成るシステム。 3審決の理由( )別紙審決書写しのとおりであり,要旨は次のとおりである1ア本件補正の許否について本件補正は,平成14年法律第24号改正附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という場合がある )17条の2第4項の規定に違反するので,同法159条1 。 項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 イ本願発明1の進歩性について本願発明1は,甲1(特開平7-15172号公報)記載の発明に基づいて,その出願の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 ( )審決が,本願発明1に進歩性がないとの結論を導く過程において認定し2た甲1記載の発明(以下「引用発明」という,本願発明1と引用発明の一 。)致点,相違点は,次のとおりである。 ア引用発明制御装置を備えた部品供給装置が設けられた電子部品実装機の作動方法であって,プリント基板に電子部品を実装する当該作動方法において,電子部品実装機における交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値を求め,パーツカセットに取り付けられた記憶手段に記憶し,パーツカセットの交換後,上記補正値を,上記記憶手段から電子部品実装機の上記制御装置へ伝達し,上記制御装置により,上記補正値に基いて電子部品の吸着動作を制御する,電子部品実装機の作動方法。 イ一致点制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって,サブス()() , トレート 1 への構成素子 2 の装着をする当該の作動方法において自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置, (, , の基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3 5) , (, , 17 の幾何学的特性データを求め 交換可能なコンポーネント 3 517)に割り当てられた記憶装置(15,16,18)内に記憶し,自動装着機(7)内への交換可能なコンポーネント(3,5,17)のマウント後,先ず,特性データの少なくとも一部を,記憶装置(15,16,18)から自動装着機(7)の制御装置(6)内へ転送し,特性データを,自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにした自動装着機の作動方法。 ウ相違点(ア)相違点1本願発明1では,交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データを,自動装着機(7)内へ「マウント前に」求めているのに対して,引用発明では,パーツカセットの補正値(幾何学的特性データ)を,電子部品実装機におけるパーツカセットの交換前(自動装着機内へのマウント前)に求めているのか明らかでない点(イ)相違点2,「()() 本願発明1では 制御装置は サブストレート 1 への構成素子 2の装着を制御する のに対して 引用発明では 制御装置は電子部品 構 」,,(成素子)の吸着動作を制御するが,それに加えて,プリント基板(サブストレート)への電子部品(構成素子)の装着を制御するのか不明である点第3取消事由に関する原告の主張審決は,補正却下に関する判断の誤り(取消事由1 ,進歩性の判断の誤り )(取消事由2 ,手続違背(取消事由3)があるから,違法として取り消され )るべきである。 1補正却下に関する判断の誤り(取消事由1)旧請求項1を新請求項1とする補正,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正,旧請求項7を新請求項6とする補正は,いずれも限定的減縮(平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第4項2号)を目的とするものに該当するから,これらを限定的減縮を目的とするものに該当しないとした審決の判断は,誤りである。その理由は,以下のとおりである。 ( )旧請求項1を新請求項1とする補正について1審決が,旧請求項1を新請求項1とする補正について,限定的減縮を目的とするものに該当しないとした判断は,以下の理由により,誤りである。 すなわち,旧請求項1を新請求項1とする補正の内容は,?旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17 」を構成していた供給ユニッ )ト(3 ,装着ヘッド(5 ,サブストレートカメラ(17)の中から装着ヘ ))ッド(5)だけを選択し,?旧請求項1の「コンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,コンポーネントの幾何学的特性データ」を「装着ヘッドの定置の基準点としての一つの保持装置に関連付けて求められた,コンポーネントの他の保持装置の幾何学的特性データ」と補正し,?旧請求項1の「定置の基準点に関連づけて求められた,コンポーネントの幾何学的特性データ」を「装着ヘッドの一つの保持装置」を基準点とする「装着ヘッドの他の保持装置の相対的位置データ」に限定したものである。 そして,新請求項1は 「一つの保持装置」を基準に「他の保持装置」の ,相対的位置関係を求め 「定置の基準点としての一つの保持装置」に対する ,「他の保持装置」の相対的位置関係をマウント前に求めることを特定しているにすぎないから 「一つの保持装置」とは 「他の保持装置」を特定するた ,,めの基準となる「或る保持装置」を規定したものであって 「数」を特徴と,するものではなく,請求項1についての補正は,保持装置の数について新たな発明特定事項を付加したものではない。 したがって,旧請求項1を新請求項1とする補正は,限定的減縮を目的とするものに該当する。 ( )旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,92を新請求項5,7とする補正について審決が,?旧請求項2ないし4は,保持装置の数を特定事項として含まない旧請求項1の記載を引用しているのに対し,新請求項2ないし4は,交換可能な装着ヘッド(5)が2以上の保持装置を有することを前提として「一つの保持装置「他の保持装置」との発明特定事項を含む新請求項1を引用 」,しており,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正は,保持装置の数について新たな発明特定事項を付加したものであるから,限定的減縮を目的とするものに該当しないとした判断,及び?旧請求項5,9をそれぞれ新請求項5,7とする補正は,保持装置の数を特定事項として含まない旧請求項5,9を,交換可能な装着ヘッド(5)が2以上の保持装置を有することを前提として「一つの保持装置「他の保持装置」との発明特定事項を 」,含む新請求項5,7に変更するものであり,保持装置の数について新たな発明特定事項を付加したものであるから,限定的減縮を目的とするものに該当しないとした判断は,以下のとおり,いずれも誤りである。 すなわち,新請求項1,5,7の「一つの保持装置」とは 「他の保持装,」 「」, 置 を特定するための基準となる 或る保持装置 を規定したものであって「数」を特徴とするものではなく,保持装置の数について新たな発明特定事項を付加したものではないから,旧請求項1を引用する旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正は,いずれも限定的減縮を目的とするものに該当する。 ( )旧請求項7を新請求項6とする補正について3旧請求項7を新請求項6とする補正は,限定的減縮を目的とするものであり,この補正について,限定的減縮を目的とするものに該当しないとした審決の判断は,誤りである。その理由は,以下のとおりである。 すなわち,旧請求項7の「コンポーネント」は,具体的には「記憶装置」であり,新請求項5の「自動装着機」の特定事項の一つとして「記憶装置」が記載されているから,旧請求項7を,新請求項5を引用する新請求項6とする補正は,限定的減縮を目的とするものに該当する。 , (, 旧請求項7は 旧請求項6に記載されたコンポーネントの記憶装置 1516,18)を限定するものであり,他方,新請求項6は,新請求項5に記載された自動装着機の記憶装置を限定したものにすぎないから,旧請求項7の「コンポーネント」を,新請求項6記載の「請求項5記載の自動装着機」に形式的に変更したことは,限定的減縮に該当する。 また,新請求項6に含まれる「制御装置「読出し装置「一つの保持 」,」,装置「他の保持装置」との特定事項は,発明対象を旧請求項7の「コンポ 」,ーネント」から新請求項5の「自動装着装置」に形式的に変更することに伴って組み入れられただけのことであるから,これらの特定事項が付加されたとしても,限定的減縮に該当する。 さらに,新請求項6の「前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15 」という記載によれば,記憶装置と交換可能なコンポー )ネント(3,5,17)の装着ヘッド(5)が直接接続された状態にあることが分かるから,旧請求項7と新請求項6の特定事項に差異はない。 2進歩性の判断の誤り(取消事由2)審決が,本願発明1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とが一致するとした認定は誤りであり,その認定を前提とした本願発明1の進歩性の判断にも誤りがある。その理由は,以下のとおりである。 ( )本願発明1と引用発明の一致点について1ア本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」の意味について本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」とは,以下のとおり 「コンポーネント上の基準点に関連づけて求められた,該 ,コンポーネント自体の幾何学的特性データ」と解される。 (ア)「コンポーネントの基準点」についてa本願発明1の「コンポーネントの(定置の)基準点」との構成に関し,助詞の「の」には 「場所を示す「所属を示す」との意味があ ,」,るから,同構成は 「コンポーネントに所在する基準点「コンポー , 」,ネントに所属する基準点」すなわち「コンポーネント上の基準点」と解釈すべきであり,審決のように「コンポーネントの幾何学的特性データを測定するための基準点」と解釈することは,不当な拡大解釈である。出願人は,これについて,平成16年10月21日付け意見書() 「 」 甲6 で 交換可能なコンポーネント上に設けられた定置の基準点と主張したものであり,本件明細書の【0023】によれば,本願発明1の実施例においても,基準点である第1の吸着ピペットは装着ヘッド上の基準点であり,基準点はコンポーネント上に存在する。 () 「()」 b旧請求項1 本願発明1 の コンポーネントの 定置の 基準点が「コンポーネント外の基準点」を含むという解釈は,旧請求項1の「() (, , 構成要件が 自動装着機 7 の交換可能なコンポーネント 3 5)」,,「() 17 の定置の基準点 ではなく それとは異なり自動装着機 7の定置の基準点」であって 「 自動装着機(7)の定置の基準点』に ,『, (, ,) 関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3 5 17() 」 の幾何学的特性データを自動装着機 7 内へのマウント前に求めると請求項に記載されているとした場合の解釈として成り立ち得るにすぎない。 また,旧請求項1の「基準点」の技術的意味は,本願明細書の記載に基づいて認定すべきであり,甲1ないし3に記載された内容から認定すべきものではない。 (イ)「コンポーネントの幾何学的特性データ」についてa本願発明1の「コンポーネントの幾何学的特性データ」とは,コンポーネント自体の幾何学的特性データである。本件明細書の【0023】には 「この過程は,他の7つの吸着ピペット4において繰り返 ,され,そして,第1の吸着ピペットに対するオフセットが,コントロール装置20において求められ,それに引き続いて,記憶装置15内に記憶される 」との記載があり,この記載によれば,実施例におけ 。 るコンポーネントの幾何学的特性データとは,第1の吸着ピペットに対する第2ないし第8の各吸着ピペットの相対的位置関係のデータであって,コンポーネント自体の幾何学的特性データである。 b本願発明1の「コンポーネントの幾何学的特性データ」は,コンポーネント自体の形状データであり,引用発明の部品装着機上の基準点に対するパーツカセットの部品供給位置のずれ量は,これに含まれない。 本願発明の実施例に,第1の吸着ピペットに対する第2ないし第8の吸着ピペットの各相対的位置関係を示すデータが記載されていることから 「相対的位置関係を示すデータ」のみを拡大解釈して,引用 ,発明の「部品供給装置(自動装着機)上の基準点に対する,パーツカセットの部品供給位置のずれ(相対位置)のデータ」まで本願発明1に含まれるとすることはできない。 基準点の自動装着機に対する位置関係が決定された時点で,その他の特徴点の自動装着機に対する位置関係が瞬時に決定されることは,装着ヘッド(5)だけでなく,コンポーネントを構成する供給ユニット(3)やサブストレートカメラ(17)についても当てはまる。 本願明細書の実施例には,引用発明に記載されたような「所定の基準位置と交換可能なパーツカセットの部品供給位置とのずれ」に関する記載はない。 イ引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」について引用発明は,所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置)と各パーツカセット特有の部品供給位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値を,各パーツカセットの装着前に求めてメモリに記憶しておけば,各パーツカセットを装着した時,そのパーツカセット特有の部品供給位置のずれ量を測定することなく,即座に,そのパーツカセットは,部品を正しい供給位置(所定の基準位置)に供給でき,装着ノズルは,その部品を確実に吸着できるというものである。 したがって,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とは,所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置)と,コンポーネントに相当する各パーツカセット特有の部品供給位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値(機能に関する幾何学的特性データ)である。 ウ本願発明1と引用発明の対比について本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」とは,「コンポーネント上の基準点に関連付けて求められた,該コンポーネント自体の幾何学的特性データ」との意味である。 これに対し,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とは,所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置)と,コンポーネントに相当する各パーツカセット特有の部品供給位置とのずれ量である高さや平面位, , 置における補正値であり 幾何学的特性データという文言に言い換えれば「コンポーネントの幾何学的特性データ」ではなく 「コンポーネントの,機能(部品供給機能)に関する幾何学的特性データ」であるにとどまる。 ,( ) , 本願発明1は コンポーネントの基準点 第1吸着ピペットの位置 の自動装着機に対する相対位置が特定されれば,該コンポーネントに関するその他の位置(第2ないし第8ピペットの位置)の自動装着機に対する相対位置が即座に特定されるから,基準点以外の位置特定が即座になされ,位置特定のステップが高速化するという優れた効果を奏する。しかし,引用発明は,このような優れた効果を奏しない。 したがって,本願発明1の「自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とは異なり,これらが一致するとした審決の判断は誤りである。 ( )進歩性の判断について2ア前記( )のとおり,審決による本願発明1と引用発明の一致点の認定は 1誤っているから,その認定を前提とした進歩性の判断にも誤りがある。 イまた,本願発明1は,基準点がコンポーネント上にあることによって,以下のような優れた作用効果を有するから,進歩性があり,本願発明1に進歩性がないとした審決の判断は誤りである。 (ア)コンポーネントが移動した場合の効果引用発明のように基準点がコンポーネント外にある場合は,幾何学的特性データを測定した位置からコンポーネントが移動した場合,又は装着位置が変更した場合には,幾何学的特性データの利用は不可能になってしまう。これに対し,基準点がコンポーネント上にある場合は,コンポーネントが自動装着機のどこに移動しようと,又はどこに装着されようと,記憶装置に記憶された幾何学的特性データの精度に相対的な変化はなく,幾何学的特性データの利用は可能である。 (イ)コンポーネントの各位置のデータに含まれる誤差についての効果基準点がコンポーネント上にあれば,基準点と自動装着機との相対的位置関係に含まれる計測誤差が,コンポーネントの他の位置と自動装着機との相対的位置関係にも共通して含まれるのに対し,基準点がコンポーネントの外にあれば,コンポーネントの各位置と自動装着機との相対的位置関係には,それぞれ独自の誤差が含まれることになり,誤差が共通して含まれる場合よりも精度調整が複雑になる。 (ウ)位置特定の高速化の効果コンポーネント上の定置の基準点に関連付けて求められた,コンポーネントの基準点以外の各位置の幾何学的特性データをマウント前に求めて記憶装置に記憶しておけば,マウント後に,自動装着機に対するコンポーネント上の定置の基準点の位置が一義的に決まり,基準点以外の各位置も自動的に(即座に)一義的に決定されるという優れた効果が得られる。本件明細書の【0023】に「第1の吸着ピペットのオフセットがマウント後自動装着機7において位置固定のセンサにより(例えばガラスサブストレートへのガラスモジュールの装着により)検出される。 他のすべての吸着ピペットのデータは,記憶装置15から制御装置6へ伝送され,そこで処理される。自動装着機7は,次いで第1の吸着ピペット4に関連づけて他の7つの吸着ピペットのオフセットをも算出する 」と記載されているように,第1の吸着ピペット(定置の基準点) 。 の自動装着機に対する相対位置が特定されれば,第2ないし第8の吸着ピペットの自動装着機に対する相対位置も自動的に(即座に)一義的に決定されるから,位置特定のステップを高速化することができる。 3手続違背(取消事由3)本願の審査,審判手続は,審決に至るまで本願に対する具体的な拒絶理由が示されず,出願人に反論の機会が与えられておらず,特許法50条,159条2項・50条に違反する違法がある。その理由は,以下のとおりである。 平成16年5月17日付け拒絶理由通知書(甲5)は,備考欄に「引用文献, 。」 1〜3の基準点からのずれの記憶 引用文献4のヘッドの情報の記憶を参照と記載されているのみであり,具体的な拒絶理由は記載されていなかった。 平成16年5月17日付け拒絶理由通知を受け,本願の請求項1の記載を旧請求項1のとおりとする同年10月21日付け手続補正を行うと同時に提出された同日付け意見書(甲6)により,出願人は,本願発明1と甲1ないし3記載の発明との関係について 「旧請求項1のデータは,基準点がコンポーネン ,ト上にあり,交換可能なコンポーネント自体の幾何学的データ(空間的寸法)であるのに対し,引用発明のデータは,基準点がコンポーネント外にあり,交換可能なコンポーネントと基準点との相対的位置関係を示すデータであって,本願発明1と甲1ないし3の開示内容は異なる」旨主張した。 ところが,特許庁は,上記意見書記載の主張に対する見解を示すことなく拒絶査定を行い,平成16年11月10日付け拒絶査定(甲8)には 「甲1な,いし3に記載されたデータが,本願発明1における『交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ』に相当する」旨の結論が記載されていたのみであって,同年10月21日付け意見書(甲6)記載の出願人の主張を失当とする理由は記載されていなかった。 ,, () さらに 第1次審決においても 平成16年10月21日付け意見書 甲6記載の主張に対する検討は示されていなかった。第1次審決が取り消された後の審判においても,拒絶理由が通知されることはなく,審決が行われ,審決の理由中(第3,7.補足)において,平成16年10月21日付け意見書(甲6)記載の主張に対する実質的な拒絶理由が事後的に通知されたにとどまる。 第4被告の反論原告主張の取消事由は,いずれも理由がなく,審決には,取り消されるべき違法はない。 1補正却下に関する判断の誤り(取消事由1)に対し旧請求項1を新請求項1とする補正,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正,旧請求項7を新請求項6とする補正は,いずれも限定的減縮を目的とするものに該当せず,同旨の審決の判断に,誤りはない。その理由は,以下のとおりである。 ( )旧請求項1を新請求項1とする補正について1審決が,旧請求項1を新請求項1とする補正について,限定的減縮を目的とするものに該当しないとした判断に,誤りはない。 ,「 (, 旧請求項1を新請求項1とする補正は交換可能なコンポーネント 35,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」を 「交換可能な装着ヘッ ,ド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性」,,「 (, データ と変更するものであるが これは交換可能なコンポーネント 35,17 」を「交換可能な装着ヘッド(5 」とする点では,限定的減縮を ) )目的とするものに該当する。また,装着ヘッドが装着すべき電子部品を保持するための保持装置を有することは その機能からみて自明であるから交 , ,「換可能なコンポーネント(3,5,17 」を「保持装置(4)を有する交 )換可能な装着ヘッド(5 」と限定する点では,限定的減縮を目的とするも )のに該当する。 しかし 「装着ヘッド」には 「一つの保持装置」のみを有するもの(例え ,,ば,甲4の図1,図4の「吸着ノズル13」が保持装置に該当する )と,。 複数の保持装置を有するもの(例えば,甲3の図6の「吸着ノズル2」が保持装置に該当する )とが存在するから,装着ヘッドは当然に複数の保持装 。 置を備えるものではない。そして,装着ヘッドを 「一つの保持装置(4) ,と他の保持装置(4)とを有する」装着ヘッドとする限定は,補正前の請求項に記載のない装着ヘッドの「保持装置の数」について,新たな発明特定事項を付け加えるものである。したがって,旧請求項1を新請求項1とする補正は,限定的減縮を目的とするものに該当しない。 ( )旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,92を新請求項5,7とする補正について旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正は,いずれも,補正前の請求項に記載のない装着ヘッドの「保持装置の数」について,新たな発明特定事項を付け加えるものであるから,限定的減縮を目的とするものに該当しない。 ( )旧請求項7を新請求項6とする補正について3ア旧請求項7は,旧請求項6を引用するものであり,独立形式で表現すると,次のとおりである。 「自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定, (, 置の基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3,) (,, 5 17 の幾何学的特性データに対する所属の記憶装置 15 1618)を有し,(,,) , , 前記記憶装置 15 16 18 は 無接触式に書き込み可能及び読出し可能なメモリとして構成されており,該メモリは,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする自動装着機(7)用の交換可能なコンポーネント(3,5,17」)。 新請求項6は,新請求項5を引用するものであり,独立形式で表現すると,次のとおりである。 「自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し,構成素子(2)を受容するためと,後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろして装着するための装着ヘッド(5)を有する自動装着機(7)において,制御装置(6)は読出し装置を有し,該読出し装置により,自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データが,前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)から読出し可能であり,該記憶装置(15)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,制御装置(6)は,読み出された特性データを記憶し,装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7」)。 イ旧請求項7に記載された発明の対象である「コンポーネント」は,新請求項6においては「自動装着機」に変更された 「コンポーネント」は, 。 「自動装着機」に交換可能に取り付けられているものであって 「自動装,着機」は「コンポーネント」の下位概念ではない。 また,旧請求項7に記載された発明には 「制御装置「読出し装置」 ,」,との発明特定事項はないが,新請求項6に記載された発明は,新請求項5を引用することから 「制御装置「読出し装置」との発明特定事項が付 ,」,け加えられた。 さらに,旧請求項7に記載された発明は 「記憶装置(15,16,1 ,8)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,該メモリは,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されている」との構成であることから,記憶装置がコンポーネントに直接接続されている これに対し 新請求項6に記載された発明は前 。, ,「記交換可能なヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15 」との構成),, () を備えることから 記憶装置は 交換可能なコンポーネント 装着ヘッドに割り当てられているだけであり,交換可能なコンポーネントに直接接続されているものではない。そうすると,新請求項6に記載された発明は,旧請求項7に記載された発明の「コンポーネントに直接接続されている」との発明特定事項を 「コンポーネントに割り当てられた」と変更するも ,のである。 したがって,旧請求項7を新請求項6とする補正は,限定的減縮を目的とするものに該当しない。 2進歩性の判断の誤り(取消事由2)に対し審決が,本願発明1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とが一致するとした判断に誤りはなく,その判断を前提とした本願発明1の進歩性の判断にも誤りがない。その理由は,以下のとおりである。 ( )本願発明1と引用発明の一致点について1ア本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」の意味について「定置の基準点」については,旧請求項1に「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点」と記載されているから,その文言どおりに明確に解釈することができ,原告主張のように「コンポーネント上の定置の基準点」と限定して解釈する根拠はない。 原告は,本願発明1の「定置の基準点」は 「コンポーネント上の定置 ,の基準点」である旨主張する。しかし,本願明細書には,装着ヘッド5の第1の吸着ピペットを定置の基準点とする実施例は記載されているものの,装着ヘッド5とともに交換可能なコンポーネントとして挙げられている供給ユニット3やサブストレートカメラ17については,それらの上に求められる定置の基準点に関し,何らの具体的な記載はないし,装着ヘッド5上の定置の基準点の位置から,供給ユニット3上又はサブストレートカメラ17上の定置の基準点の位置を推認することもできない。 したがって,本件発明の「コンポーネントの定置の基準点」は 「コン,ポーネント上に設けられた定置の基準点」のみではなく 「コンポーネン,ト外に設けられた定置の基準点」をも含むものであり 「コンポーネント,の幾何学的特性データ」は,コンポーネント上又はコンポーネント外の定置の基準点に対するコンポーネントの相対位置のデータを意味する。 イ引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」について引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」は,所定の基準位置に対するパーツカセット(本件発明の「コンポーネント」に相当する )。 の部品供給位置の平面方向及び高さ方向における離間距離であり,位置ずれに関するデータであるから,幾何学的な特性データといえる。 ウ本願発明1と引用発明の対比について,「 (, ,) そうすると 本願発明1の 交換可能なコンポーネント 3 5 17の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」は一致し,同旨の審決の認定に誤りはない。 ( )進歩性の判断について2ア審決による本願発明1と引用発明の一致点の認定に誤りはないから,一致点の認定が誤っていることを理由としてその認定を前提とする進歩性の判断が誤っているということはできない。 イまた,本願発明1は基準点がコンポーネント上にあることによって優れた作用効果を有するから進歩性がある旨の原告の主張も,以下の理由により,採用することができない。 すなわち,原告が本願発明1の作用効果として主張するコンポーネントが移動した場合の効果(前記第3,2( )イ(ア) ,コンポーネントの各位2 )置のデータに含まれる誤差についての効果(前記第3,2( )イ(イ) ,位2 )置特定の高速化の効果(前記第3,2( )イ(ウ))は,いずれも本願明細2書に記載されていないから,本願発明1の効果ということはできない。仮にこれらの効果が自明であるとしても,原告が主張するコンポーネントが移動した場合の効果(前記第3,2( )イ(ア) ,コンポーネントの各位置2 )のデータに含まれる誤差についての効果(前記第3,2( )イ(イ))は,2基準点がコンポーネント上にあることを前提とするものであり,本願発明1に基づかない効果である。原告が主張する位置特定の高速化の効果(前記第3,2( )イ(ウ))は,コンポーネントが複数の吸着ピペットを有す2, 。 ることを前提とするものであり 本願発明1の効果ということはできない3手続違背(取消事由3)に対し以下のとおり,本願の審査,審判手続を通じて,出願人に対して拒絶理由が通知され,出願人はそれに反論する機会があったから,本願の審査,審判手続に,特許法50条,159条2項・50条に違反する違法はない。 すなわち,平成16年5月17日付けの拒絶理由通知書(甲5)には,拒絶理由の「1」として,引用文献1ないし4(甲1ないし4)に基づいて進歩性に欠ける旨が記載されていた。出願人が,平成16年10月21日付け手続補正を行うと同時に提出した同日付け意見書(甲6)には,本願発明1のデータと引用発明のデータは異なる旨記載されていたが,同年11月10日付け拒絶(),, () 査定 甲8 には 本願について 同年5月17日付け拒絶理由通知書 甲5に記載した理由1によって拒絶をすべきものであると記載されており,備考欄に 「引用文献1〜3に記載されたズレ量,補正位置データ等の幾何学的特性 ,データは本願発明1における『交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ』に相当する」旨記載されていた。したがって,平成16年11月10日付け拒絶査定(甲8)により,同年10月21日付け意見書(甲6)に記載された出願人の主張に対する見解は示されていた。 そして,拒絶査定不服審判請求後,本件補正が行われ,それとともに審判請求書の補正書(甲9の2)が提出され,出願人は 「 定置の基準点』とは『装 ,『着ヘッド5一つの保持装置4の位置データ』であるから 『交換可能なコンポ,ーネント(装着ヘッド)上に設けられた定置の基準点』であり 『幾何学的特性,データ』とは『一つの保持装置4の位置データに関連付けて求められた,装着ヘッド5の他の保持装置4の相対的位置データ』であるから 『該交換可能な,コンポーネント(装着ヘッド)自体の空間的な寸法に関するもの』である」との主張を行った。 そうすると,少なくとも拒絶査定において,出願人の主張に対する見解は示,,, , されており その見解を踏まえた上で 出願人は 拒絶査定不服審判において審判請求書の補正書(甲9の2)により更に主張を行い,本件補正を行った。 このような本件の審査,審判の経緯に照らせば,それらの手続は,特許法50条,159条2項・50条に違反することはないし,その他の違法もない。 第5当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由は,いずれも理由がなく,審決には,取り消されるべき違法はないと判断する。 1補正却下に関する判断の誤り(取消事由1)について旧請求項1を新請求項1とする補正,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正,旧請求項7を新請求項6とする補正は,いずれも旧特許法17条の2第4項2号所定の限定,,。 的減縮を目的とするものに該当しないから 同旨の審決の判断に 誤りはないその理由は,以下のとおりである。 ( )旧請求項1を新請求項1とする補正について1本件補正は,旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17), (, の定置の基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 35,17)の幾何学的特性データ」を,新請求項1の「交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データ」と変更するものである。 旧特許法17条の2第4項は,特許請求の範囲についてする補正は,同条4項1ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限る旨を,さらに,同条4項2号は,特許請求の範囲の減縮を目的とする場合には,同法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る旨(限定的減縮)を規定する。そこで,本件補正が,旧特許法17条の2第4項2号における限定的減縮に当たるか否かについて検討する。 アコンポーネントから保持装置を備える装着ヘッドへの変更について本願明細書の【0020【0022】及び図面の記載によれば 「交 】, ,換可能なコンポーネント(3,5,17 」は,具体的には 「供給ユニッ ),ト3「装着ヘッド5「サブストレートカメラ17」を示すものと認 」,」,められ 「装着ヘッド(5 」は 「交換可能なコンポーネント(3,5, ,),17 」の一つであると認められる。また 「装着ヘッド(5 」は,供給 ) ,)ユニットから取り出された構成素子をサブストレート上へ装着するものであるから 「保持装置(4 」を備えると解される。 ,)したがって 「交換可能なコンポーネント(3,5,17 」を 「保持 , ),装置(4 」を備える「装着ヘッド(5 」と特定する補正は,限定的減縮 ) )を目的とするものに該当するといえる。 イ基準点に関連付けて求められた幾何学的特性データについて【】,「 ,, 本件明細書の 0002 には複数の構成素子を受容でき ついで受容された構成素子を相次いでサブストレートの所定位置に装着し・・・装着ヘッド「単に1つの構成素子を受容するが,この構成素子を高精度 」,でサブストレート上へ装着する装着ヘッドも公知である 」と記載されて。 おり,保持装置を複数備える装着ヘッド及び保持装置を一つだけ備える装着ヘッドが存在することが記載されている。また,甲3の図6には,保持装置(図6の「吸着ノズル2」が保持装置に該当する )を複数備える装。 着ヘッドが示されており,甲4の図1,図4には,保持装置(図1,図4の「吸着ノズル13」が保持装置に該当する )を一つだけ備える装着ヘ 。 ッドが示されている。したがって,装着ヘッドは,保持装置を複数備えるものも存在するが,保持装置を一つだけ備えるものも存在し,常に保持装置を複数備えるとは限らないことが認められる。旧請求項1は,装着ヘッドの保持装置の数について,一つであるとも複数であるとも何ら特定していなかったのに対し,新請求項1は,装着ヘッドを 「一つの保持装置」,と「他の保持装置」の少なくとも二つ(複数)の保持装置を備えるものとして特定する。 また,旧請求項1における「定置の基準点」は,交換可能なコンポーネント(3,5,17)上の点であるか,交換可能なコンポーネント外の点であるか問わず,また 「幾何学的特性データ」は 「定置の基準点」に関 , ,連付けて求められた,交換可能なコンポーネントのものであれば足り,交換可能なコンポーネント上のいずれの点について求められた幾何学的特性データであるかを問わない。これに対し,新請求項1においては 「定置,の基準点」は,交換可能な装着ヘッド(5)の一つの保持装置(4)であり,また 「幾何学的特性データ」は,装着ヘッド(5)の一つの保持装 ,置(4)に関連付けて求められた,装着ヘッドの他の保持装置(4)の幾何学的特性データである。 そうすると,新請求項1は,旧請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を単に限定しただけではなく,装着ヘッドについて,複数の保持装置を備えるという新たな技術的事項を付け加え,また,幾何学的特性データについて,複数の保持装置を有する装着ヘッドの一つの保持装置を基準点として求められた他の保持装置の幾何学的特性データという新たな技術的事項を付け加えたものといえる。 ,,「 (, ,) したがって 本件補正は交換可能なコンポーネント 3 5 17の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(, ,)」 「() 3 5 17 の幾何学的特性データ を 交換可能な装着ヘッド 5の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の装置の幾何学的特性データ」と変更する点において,限定的減縮を目的とするものには該当しないものと認められる。 ウ原告の主張に対し原告は,新請求項1の「一つの保持装置」とは 「他の保持装置」を特 ,「」,「」 定するための基準となる 或る保持装置 を規定したものであって数を特徴とするものではなく,請求項1についての補正は,保持装置の数について新たな発明特定事項を付加したものではないから,旧請求項1を新請求項1とする補正は,限定的減縮を目的とするものであると主張する。 確かに,新請求項1の「一つの保持装置」は 「他の保持装置」の幾何 ,学的特性データを特定するための基準としての意味を有するものである。 しかし,それとともに,前記イのとおり,旧請求項1は,装着ヘッドの保持装置の数について,一つであるとも複数であるとも何ら特定していなかったのに対し,新請求項1は,装着ヘッドについて,一つの保持装置と他の保持装置の少なくとも二つ(複数)の保持装置を備えるという新たな技術的事項を付け加えるものであり,また,新請求項1は,幾何学的特性データについて,複数の保持装置を有する装着ヘッドの一つの保持装置を基準点として求められた他の保持装置の幾何学的特性データという新たな技術的事項を付け加えるものである。そうすると,旧請求項1を新請求項1とする補正は,旧特許法17条の2第4項2号所定の限定的減縮を目的とするものには該当せず,原告の上記主張は,採用することができない。 ( )旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,92を新請求項5,7とする補正について旧請求項2ないし4は,旧請求項1の記載を引用しており,新請求項2ないし4は,新請求項1を引用しているから,旧請求項2ないし4を新請求項, () 2ないし4とする補正は 旧請求項1を新請求項1とする補正 前記( )イ1と同様に,装着ヘッドについて,複数の保持装置を備えるという新たな技術的事項を付け加え,また,幾何学的特性データについて,複数の保持装置を有する装着ヘッドの一つの保持装置を基準点として求められた他の保持装置の幾何学的特性データという新たな技術的事項を付け加えたものであり,したがって,旧特許法17条の2第4項2号所定の限定的減縮を目的とするものに該当しない。 旧請求項5を新請求項5とする補正は,旧請求項5の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」を,新請求項5の「交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた,()()」 該交換可能な装着ヘッド 5 の他の保持装置 4 の幾何学的特性データと変更するものであり,旧請求項9を新請求項7とする補正は,旧請求項9の「該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」を,新請求項7の「該交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内への,()() マウント前に求められた 該交換可能な装着ヘッド 5 の他の保持装置 4の幾何学的特性データ」と変更するものであり,いずれも,旧請求項1を新請求項1とする補正(前記( )イ)と同様に,装着ヘッドについて,複数の1保持装置を備えるという新たな技術的事項を付け加え,また,幾何学的特性データについて,複数の保持装置を有する装着ヘッドの一つの保持装置を基準点として求められた他の保持装置の幾何学的特性データという新たな技術, 。 的事項を付け加えたものであり 限定的減縮を目的とするものに該当しないそのため,旧請求項5を新請求項5とする補正及び旧請求項9を新請求項7とする補正は,いずれも,限定的減縮を目的とするものに該当しない。 したがって,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正は,いずれも旧特許法17条の2第4項2号所定の限定的減縮を目的とするものに当たらない。 ( )旧請求項7を新請求項6とする補正について3ア旧請求項7と新請求項6の内容(ア)旧請求項7は「記憶装置(15,16,18)は,無接触式に書き, ,, 込み可能及び 読出し可能なメモリとして構成されており 該メモリは交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする,請求項6記載の交換可能なコンポーネント(3,5,1)。」, ,, 7であり 旧請求項6を引用しているから 独立形式で表現すると次のとおりとなる。 「自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データに対する所属の記憶装置(15,16,18)を有し,前記記憶装置(15,16,18)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,該メモリは,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする自動装着機(7)用の交換可能なコンポーネント(3,5,17」)。 (イ)新請求項6は 「該記憶装置(15)は,無接触式に書き込み可能 ,及び,読出し可能なメモリとして構成されていることを特徴とする請求()。」, , 項5記載の自動装着機 7であり 新請求項5を引用しているから独立形式で表現すると,次のとおりとなる。 「自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し,構成素子(2),()() を受容するためと 後続してサブストレート 1 上へ構成素子 2()() をおろして装着するための装着ヘッド 5 を有する自動装着機 7において,制御装置(6)は読出し装置を有し,該読出し装置により,自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント,()() 前に求められた 該交換可能な装着ヘッド 5 の他の保持装置 4の幾何学的特性データが,前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)から読出し可能であり,該記憶装置(15)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,制御装置(6)は,読み出された特性データを記憶し,装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7」)。 イ旧請求項7と新請求項6の対比(ア)コンポーネントから保持装置を備える装着ヘッドへの変更,及び幾何学的特性データについて記憶装置に記憶されるデータは,旧請求項7において 「自動装着機,(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」であるのに対し,新請求項6においては 「自,動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた,該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データ」である。また,新請求項6では,幾何学的特性データが,装着ヘッド(5)の自動装着機(7)内へのマウント前に求められるものとされている。 したがって,新請求項6は,旧請求項7と対比すると,装着ヘッドに, ,, ついて 複数の保持装置を備えるという発明特定事項を付け加え また幾何学的特性データについて,複数の保持装置を有する装着ヘッドの一つの保持装置を基準点として求められた他の保持装置の幾何学的特性データであり,装着ヘッドの自動装着機内へのマウント前に求められるもの,という新たな技術的事項を付け加えたものである。 (イ)発明の対象について旧請求項7は,交換可能なコンポーネント(3,5,17)の発明であるのに対し,新請求項6は自動装着機(7)の発明である。本件明細書には 「・・・並びに自動装着機と交換可能なコンポーネントとから ,なるシステム ( 0001「コンポーネントの交換後,コンポーネ 」【】),ントと自動装着機との相互間の一義的位置関係がもはや確保されない。 従って,交換可能なコンポーネントのマウント後自動装着機が新たに校正される( 0004 )などの記載があり,自動装着機は,コンポ 。」【】ーネントを取り付けて使用する装置であるから,コンポーネントは,自動装着機とは異なるものであり,コンポーネントの下位概念に当たるものでもない。そのため,新請求項6は,旧請求項7とは発明の対象を異にするものである。 (ウ)制御装置,読み出し装置について旧請求項7には,自動装着機が有する制御装置,制御装置が有する読出し装置についての記載はない。これに対し,新請求項6には,自動装着機が作動のために制御装置を有すること,制御装置が読出し装置を有することが記載されている。したがって,新請求項6は,旧請求項7と対比すると,旧請求項7に記載された発明を限定するものではなく,自動装着機が有する制御装置,制御装置が有する読出し装置という新たな技術的事項を付け加えるものである。 (エ)記憶装置とコンポーネントの関係について旧請求項7には 「前記記憶装置(15,16,18)は,無接触式 ,に書き込み可能及び,読出し可能なメモリとして構成されており,該メモリは,交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されている」と記載されていることから,記憶装置は,交換可能なコンポーネントに直接接続されているものと認められる そして直接 とは 間 。,「」「に他のものがはいらないこと。じか(角川国語辞典,久松潜一・佐藤 。」謙三編「間に何も挟まず,対象にじかに接するさま。じかに(大 ), 。」辞林,村松明編)の意味であり 「接続」とは「つづくこと。つづける ,こと。つなぐこと。つながること(角川国語辞典「つなぐこと。 。」),つながること(大辞林)の意味であるから 「直接接続」とは 「間 。」 ,,に他のものがはいらず,つづいていること又はつながれていること」を意味するものと解される。そのため,旧請求項7においては,記憶装置は,交換可能なコンポーネントに,間に他のものがはいらず,つづいており又はつながれているものと解される。 他方,新請求項6には 「前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当 ,てられた記憶装置(15 」と記載されており 「割り当てる」とは「分 ),けてあてがう。分配する(角川国語辞典「全体をいくつかに分け 。」),,,,。 たり 順番を決めたりして それぞれに与えたり 受け持たせたりする割り振る(大辞林)の意味であるから,新請求項6においては,記憶 。」装置は,交換可能な装着ヘッドに分けあてがわれ,分配され,又は受け持たれているものと解される。 ,, , そうすると 旧請求項7の記憶装置は 交換可能なコンポーネントに間に他のものがはいらず,つづいており又はつながれていなければならないのに対し,新請求項6の記憶装置は,交換可能なコンポーネントの一つである装着ヘッドに,間に他のものがはいらず,つづいており又はつながれているものに限られず,装着ヘッドに分けあてがわれ,分配され,又は受け持たれているものであれば足りることとなり,記憶装置について,旧請求項7に該当しなかったものが新請求項6に該当する場合があるものと認められる。したがって,旧請求項7を新請求項6とする補正は,記憶装置とコンポーネントの関係について,旧特許法17条の2第4項2号所定の特許請求の範囲の減縮には当たらない。 ( )補正の適否について4以上によれば,旧請求項1を新請求項1とする補正,旧請求項2ないし4を新請求項2ないし4とする補正,旧請求項5,9を新請求項5,7とする補正,旧請求項7を新請求項6とする補正は,いずれも限定的減縮を目的とするものに該当しないから,同旨の審決の判断に誤りはない。 2進歩性の判断の誤り(取消事由2)について,「() (, 審決が 本願発明1の 自動装着機 7 の交換可能なコンポーネント 35,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とが一致するとした判断に誤りはなく,その判断を前提とした本願発明1の進歩性の判断にも誤りはない。その理由は,以下のとおりである。 ( )本願発明1と引用発明の一致点について1ア本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」の意味について原告は,本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関, 」 連付けて求められた 該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データとは 「コンポーネント上の基準点に関連づけて求められた,該コンポー ,ネント自体の幾何学的特性データ」であると主張する(前記第3,2( )1ア 。しかし,原告の上記主張は,以下のとおり,採用することはできな )い。 (ア)本願明細書の記載本願明細書には,特許請求の範囲に旧請求項1の記載があるほか,次のとおりの記載がある。 a「 0002】【自動装着機では構成素子が装着ヘッドを用いて供給ユニットから取出され,所定の位置でサブストレート上へ装着される。構成素子をサブストレート上に適正な位置にて装着するため,装着ヘッドでの構成素子の位置がセンサを用いて求められる。その際自動装着機の制御装置が,構成素子の求められた位置に依存して,装着ヘッドをサブストレートの平面に並行に制御し,ここで,装着が適正な位置で行われるようにその並行制御を行う。種々のサブストレート上に種々の構成素子を装着する際できるだけ高い融通性を得るため,自動装着機のコンポーネントの一部が交換可能に構成されている。こうして,例えば,複数の構成素子を受容でき,ついで,受容された構成素子を相次いでサブストレートの所定位置に装着し,その間に供給ユニットに再度移動させる必要性のない装着ヘッドが構成されている。それにより,高い装着性能が得られる,即ち,単位時間あたりできるだけ多数の構成。 , 素子を装着できるようになる また単に1つの構成素子を受容するがこの構成素子を高精度でサブストレート上へ装着する装着ヘッドも公知である。さらに,種々の大きさの構成素子に対して,同じく種々の大きさの装着ヘッドが設けられ,その結果装着プロセスに応じて,種々の装着ヘッドが使用される。 【0003】装着すべき構成素子の種類に応じて,種々の供給ユニットも使用され,更に,例えば種々のセンサも,サブストレートの位置識別のため使用される。 【0004】コンポーネントの交換後,コンポーネントと自動装着機との相互間の一義的位置関係がもはや確保されない。従って,交換可能なコンポーネントのマウント後自動装着機が新たに校正される。例えば,US5537204から公知の方法では,装着しようとするサブストレートの代わりにマーキングを有するガラスサブストレートが利用され,ガラスサブストレート上に構成素子の代わりにガラス小板が位置定めされる。それに引き続いて,ガラスサブストレート上でのガラス小板。, , の位置が光学的に測定される 次いで 規定位置に比して測定されたガラスサブストレートの位置の偏差が自動装着機の制御装置内に入力され,それにより制御装置が事後の装着プロセスにおいてそのような偏差を考慮するものである。そのような校正は,いうまでもなく,時間の掛かるものであり,その所要時間はほぼ1〜2時間である。 【0005】本発明の課題とするところは,交換可能なコンポーネントのより一層迅速かつ簡単な交換を可能にする自動装着機の作動方法,自動装着機,自動装着機用の交換可能なコンポーネント,並びに自動装着機と交換可能なコンポーネントとからなるシステムを提供することにある 」。 b「 0007】【ここで,交換可能なコンポーネント内の記憶装置,及び記憶装置の読出しをする自動装着機の制御装置が設けられている。交換可能なコンポーネントの記憶装置内には,交換可能なコンポーネントの特性データが記憶され,この特性データは,それらのコンポーネントのマウ, 。,, ント後 制御装置により読み出される 読出されたデータは その後後続の装着プロセスにおいて制御装置により使用される 」。 c「 0020】【図1には自動装着機7の側面略図を示し,図2には,対応する平面略図を示す。自動装着機7では,次のようにしてサブストレート1に構成素子2が装着される,即ち,供給ユニット3から供給される構成素子2が装着ヘッド5の保持装置としての吸着ピペット4により受容され,引き続いて,所定の位置においてサブストレート1上へ装着されるのである。ここで,装着ヘッド5は,サブストレート1の表面に対して実質的に並行に可動である。このために第1のレール11が用いられ,この第1のレール11には第1の滑り体12が可動に取り付けられている。この第1の滑り体12では,第1のレール11に対してほぼ垂直方向に,第2のレール13が,取り付けられており,この第2のレール13に沿って第2の滑り体14が動く。第2の滑り体14は第2の装着ヘッド5に連結されている。制御装置6は,第1の滑り体12を第2の滑り体14のところへ動かし,ここで,装着ヘッド, , 5が供給ユニット3のところへ動かされ 1つの構成素子2の受容後サブストレート2の表面に対してほぼ並行に動かされるように制御する。装着ヘッド5には構成素子?カメラ21が設けられており,この構成素子?カメラ21は,吸着ピペット4に吊される構成素子2の画,。 , 像を撮像し 制御装置6に伝送する 制御装置6では画像が評価され評価される画像に依存して,装着ヘッド5が制御され,ここで,構成素子2が正しい位置でサブストレート1上に装着されるように制御される。送り装置10は,装着位置に至るまで自動装着機7内へサブストレート1を送り込みそして,再び自動装着機7外へサブストレート1を送り出すために用いられる。更に,装着ヘッド5にはサブストレートカメラ17が設けられており,このサブストレートカメラ17により,サブストレート1の位置が検出される。サブストレート1の位置も,また,構成素子2の精確な位置定めのための計算に関与する。 【0021】装着ヘッド5は,記憶装置15を有し,この記憶装置15は,制御装置6により無線又は有線で制御される。記憶装置15は,装着ヘッド5内に統合的に組込でき,例えば,無接触式に読出し可能及び書き込み可能なメモリ(トランスポンダ,TAG)の形態で,又は,別個の記憶媒体(ディスケット)として構成でき,その記憶装置上に,1つの所定の装着ヘッド5のデータが記憶され,その記憶装置は,制御装置6のディスケット走行装置により読み出される。 【0022】供給ユニット3も,また,記憶装置16を有し,このことは,サブストレートカメラ17が記憶装置18を有するのと同様である。ここで,記憶装置15,16,18は,それぞれ,装着ヘッド5,供給ユニット3ないしサブストレートカメラ17の特性データを含み,その結果それらの交換可能なコンポーネントの交換後それらのデータは,制御装置6に供給可能である。制御装置6は,サブストレート1への構成素子2の装着のために使用される。 【0023】記憶装置15内に記憶されるデータの検出を,図3において装着ヘッド5の例について説明する。ここで,本事例において,装着ヘッド5の周囲に沿って形成されている全部で8つの吸着ピペット4を有する1つのいわゆるリボルバヘッドが示されている。装着ヘッド5は,最終組み付け後試験台へもたらされる。その後,第1の吸着ピペット4は,静止カメラ22を介して試験台へ動かされ,そこから,走出した状態で(装着の際の吸着ピペットの位置に相応する)測定される。 次いで,その第1の吸着ピペット4が装着ヘッド5の構成素子?カメラ21へクロック制御され,そこに走入した状態で(装着プロセスの期間中の構成素子の光学的測定の際,及び送りの際の吸着ピペットの位置に相応する)測定される。それにより,一般に,静止カメラ22と構成素子?カメラ21との差異 いわゆるオフセット が得られ 中 ()(心オフセット ,この差異は,コントロール装置20において評価さ )れる。この過程は,他の7つの吸着ピペット4において繰り返され,そして,第1の吸着ピペットに対するオフセットが,コントロール装置20において求められ,それに引き続いて,記憶装置15内に記憶される。自動装着機7内での装着ヘッド5のマウント後ごとに,従来の手段で,第1の吸着ピペット4のオフセットを検出しさえすればよい。上記オフセットは既知であるか,それとも検出される。前者のように既知である理由は,装着ヘッド5自体が,自動装着機7に対する基準点が知られている高精度の機械的インターフェースを介して,自動装着機7に接続されるからである。後者のオフセットの検出に際して,第1の吸着ピペットのオフセットがマウント後自動装着機7において位置固定のセンサにより(例えばガラスサブストレートへのガラスモジュールの装着により)検出される。他のすべての吸着ピペットのデータは,記憶装置15から制御装置6へ伝送され,そこで処理される。自動装着機7は,次いで第1の吸着ピペット4に関連づけて他の7つの吸着ピペットのオフセットをも算出する。第1の吸着ピペット4の代わりに,自動装着機7におけるその位置が既知であるか,又は容易に測定できる他の固定の基準点も選択可能である。交換可能なコンポーネント3,5,17のマウント前にそれの幾何学的データが前記の固定的基準点に関連つけて求められ,記憶装置15,16,18において記憶される 」。 (イ)本願発明の技術的意義前記(ア)の本願明細書の記載によれば,本願発明の技術的意義は,次のとおり認められる。 すなわち,構成素子をサブストレート上に装着するための自動装着装置では,種々のサブストレート上に種々の構成素子を装着する際にできるだけ高い融通性を得るため,自動装着機のコンポーネントの一部が交換可能に構成されているが( 0002,コンポーネントの交換後, 【】)コンポーネントと自動装着機との相互間の一義的位置関係がもはや確保されないという問題があるため,従来は,コンポーネントの交換後に位置の偏差に関する校正を1ないし2時間かけて行っていた( 000【4。】)本願発明の課題は,コンポーネントのより一層迅速かつ簡単な交換を可能にすることである( 0005。【】)本願発明は,供給ユニット3,装着ヘッド5,サブストレートカメラ17などの交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連づけて求められた,当該コンポーネントの幾何学的特性データを自動装着機内へのマウント前に求めてこれを記憶装置に記憶し,マウント後に,記憶した幾何学的特性データを自動装着機の制御装置に転送し,自動装着機の制御装置は,コンポーネントの記憶装置から,幾何学的特性データの転送を受け,その幾何学的特性データに基づいて,制御に必要なコンポーネントの特定部位(例えば,吸着ピペット4)の正確な位置を把握し,装着を制御する(旧請求項1 【0021【0022【0023。 ,】,】,】)このようにすることによって,コンポーネントの交換時に,当該コンポーネントの幾何学的特性データが自動装着機に転送されるので,コンポーネントの交換時ごとに長時間の校正作業を行うことなく,コンポーネントと自動装着機の一義的位置関係が確保される。 (ウ)幾何学的特性データ等の意味旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の, (, , 基準点に関連付けて求められた 該交換可能なコンポーネント 3 517)の幾何学的特性データ」との文言によれば,定置の基準点は,コンポーネント上に設けられているものに限られるとは解されない。そして,前記(イ)の本願発明の技術的意義に照らせば,幾何学的特性データの定置の基準とされる位置がコンポーネント上又はコンポーネント外のいずれに決められていても,コンポーネントの制御に必要な特定部位の位置は,定置の基準とされる位置との関係で幾何学的特性データを有しているから,その正確な位置を把握することが可能である。そのため,定置の基準点がコンポーネント上に決められている場合はもとより,コンポーネント外に決められている場合も,コンポーネントの交換時ごとに長時間の校正作業を行うことなく,コンポーネントと自動装着機の位置関係が確保されるとの作用効果を得ることができ,コンポーネントのより一層迅速かつ簡単な交換を可能にするとの課題を解決することができる。 また,本願明細書の【0023】には 「第1の吸着ピペット4の代 ,わりに,自動装着機7におけるその位置が既知であるか,又は容易に測定できる他の固定の基準点も選択可能である 」と記載されており,基 。 準点が,コンポーネント上の点ではなく,自動装着機の固定の基準点でもよいことが記載されている。 そうすると,本願発明1の「定置の基準点」は,コンポーネント上のものに限られず,コンポーネント外の基準点も含まれており,本願発明1の「交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ」は,原告が主張するような「コンポーネント上の基準点に関連づけて求められた,該コンポーネント自体の幾何学的特性データ」に限られることはない。 イ引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」の意味について(ア)甲1の記載甲1には,次のとおりの記載がある。 a「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,電子部品をプリント基板に実装する電子部品実装機に設けられる部品供給装置に関するものである 」。 b「 0003】以下,図3,図4を参照しながら従来の部品供給装 【置について説明する。図3において,1は電子部品実装機の部品供給部に配設されるパーツカセットで,所定の電子部品2が多数設けられている。この電子部品2はパーツカセット1の所定位置で装着ノズル3に供給されて吸着される。 【0004】パーツカセット1の交換作業は図4に示すように行われる。まず,工程1において,部品切れや,段取り替えによりパーツカセット1の交換を実施する。各パーツカセット1は位置補正を行わなければその部品供給位置が所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置)に対してずれており,このずれ量(オフセット寸法)は各パーツカセット1で異なるため,次の工程2で,そのパーツカセット1に該, 。, 当するX Y方向の位置や高さhの補正値の入力を行う この操作はオペレーターが手作業で実施する。次に工程3において装着ノズル3の位置を補正して電子部品2の実装運転を開始する。 【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来構成では,部品供給部のパーツカセット1を入れ換えるたびに,そのパーツカセット1のX,Y方向の位置や高さhの補正値を同時に入力しなければならず,操作が繁雑で手間がかる(判決注「かかる」の誤記と認められる )ため,実現困難となっていた。その結果,パーツカセット 。 1を入れ換える際に,生産性が低下したり,吸着率や精度が変化したりしていた。 【0006】本発明は上記問題を解決するもので,パーツカセットを入れ換えた場合でも手間を掛けることなく,高い吸着率,精度を確保できる部品供給装置を提供することを目的とするものである。 【0007】【課題を解決するための手段】上記問題を解決するために本発明は,パーツカセットに記憶手段を設け,その記憶手段に,各パーツカセットに対応するずれ量である高さおよびX-Y位置の補正値を記憶させておき,生産時には,その内容を読み出して装着ノズルの吸着動作時に位置補正を制御手段により行うものである 」。 c「 0010】図1に示すように,各パーツカセット1には,パー 【ツカセット1の部品供給位置と所定の基準位置(装着ノズル3の基準吸着位置)とのずれ量である高さhおよびX-Y位置の補正値を記憶するメモリー4が取り付けられている。また,部品供給装置には,このパーツカセット1のメモリー4から補正値を読み出す読み取りヘッド5と,この読み取りヘッド5により読み取られた補正値の大きさに。」 応じて部品供給動作を位置補正する制御手段6とが備えられている(イ)引用発明の技術的意義前記(ア)の甲1の記載によれば,引用発明は,電子部品(本願発明の構成素子に該当する )をプリント基板(本願発明のサブストレートに 。 該当する )に実装する電子部品実装機に設けられる部品供給装置に関 。 するものであり( 0001,パーツカセット(本願発明のコンポー 【】)ネントに該当する )を入れ替えた場合でも手間を掛けることなく高い 。 吸着率,精度を確保できる部品供給装置を提供することを目的,課題とする( 0006。そのため,パーツカセットの部品供給位置と所定 【】)の基準位置(装着ノズル3の基準吸着位置)とのずれ量(補正値)をあらかじめパーツカセットの記憶手段(メモリー)に記憶させておき,部品供給装置は その内容を読み出して装着ノズルの位置補正を行う0 , (【007【0010 )ものである。 】,】(ウ)引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」の意味「」 , 甲1記載の引用発明における電子部品実装機の パーツカセット は本願発明における自動装着機の「コンポーネント」に相当し,引用発明における「所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置 」は,パーツ)カセットを交換する際に位置補正を行うための基準となる位置であるから,本願発明における「コンポーネントの定置の基準点」に相当する。 もっとも,引用発明において,所定の基準位置は,装着ノズルの基準吸着位置であり,パーツカセットの外に設けられているから,本願発明1に当てはめれば,定置の基準点がコンポーネント外に設けられているといえる。しかし,前記ア(ウ)のとおり,本願発明1の定置の基準点は,コンポーネント上のものに限られず,コンポーネント外の基準点も含まれるから,引用発明の「所定の基準位置」は,本願発明1の「コンポーネントの定置の基準点」に相当するといえる。 また,引用発明における「ずれ量である高さや平面位置における補正値」は,所定の基準位置との関係におけるパーツカセットの部品供給位置のX,Y方向及び高さ方向のずれ量,すなわち,平面方向及び高さ方向における離間距離であり,基準点に関連付けられて求められた幾何学的なデータであるから,本願発明1の「幾何学的特性データ」に相当する。 そうすると,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置」 , と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値 は本願発明1の「交換可能なコンポーネント(3.5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」に該当するといえる。 ウ原告の主張に対し(ア)原告は,本願発明1の「コンポーネントの(定置の)基準点」との構成に関し,助詞の「の」には 「場所を示す「所属を示す」との意 ,」,味があるから,同構成は 「コンポーネント上の基準点」と解釈すべき ,であり,審決のように「コンポーネントの幾何学的特性データを測定するための基準点」と解釈することは不当な拡大解釈であると主張する。 しかし,原告の上記主張は,以下のとおり,採用することができない。 「コンポーネントの基準点」にいう「の」は,格助詞であり 「連帯,格を示す。前の語句の内容を後の体言に付け加え,その体言の内容を限定する もので場所を示す時を示す位置・方角を示す向 」,「」,「」,「」,「かって行く時・所を示す「対象を示す「所有者を示す「所属を 」,」,」,示す「同格の関係であることを示す「原料・材料を示す「資格 」, 」,」,」(, や置かれた状態・状況を示す など様々な意味を有する 広辞苑第六版甲23 。そのため 「コンポーネントの基準点」という文言のみでは, ),そこにおける「の」が場所を示し 「コンポーネント上の基準点」を意 ,味すると直ちに解することはできない。前記ア(ウ)のとおり,旧請求項1及び本願明細書の記載に照らすならば 「コンポーネントの基準点」 ,は,コンポーネント上の基準点のみならず,コンポーネント外の基準点も含むものと解すべきである。 (イ)また,原告は,本願明細書の【0023】の記載から,本願発明1の実施例におけるコンポーネントの幾何学的特性データとは,第1の吸着ピペットに対する第2ないし第8の各吸着ピペットの相対的位置関係のデータであって,コンポーネント自体の幾何学的特性データであると主張する。 確かに,本願明細書の【0023】には,実施例として,第1の吸着ピペットに対する第2ないし第8の各吸着ピペットの相対的位置関係のデータが,コンポーネントの幾何学的特性データとして示されている。 しかし,それは実施例の記載であり,本願発明1がそのような実施例に限定されるとする合理的根拠はない むしろ 前記ア(ウ)のとおり0 。,,【023】には 「第1の吸着ピペット4の代わりに,自動装着装置7に ,おけるその位置が既知であるか,又は容易に測定できる他の固定の基準点も選択可能である 」と記載されており,コンポーネント外に定置の 。 基準点を選択することも可能であることが示されている。したがって,本願明細書の【0023】の記載に基づいて,本願発明1の幾何学的特性データが,コンポーネント自体の幾何学的特性データであるということはできない。 エ一致点の認定の当否,「 (, ,) したがって 本願発明1の 交換可能なコンポーネント 3 5 17の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」とは一致するものであり,同旨の審決の一致点の認定に誤りはない。 ( )進歩性の判断について2ア審決による本願発明1と引用発明の一致点の認定に誤りはないから,一致点の認定が誤っていることを理由としてその認定を前提とする進歩性の判断が誤っているということはできない。 イまた,原告は,本願発明1は,基準点がコンポーネント上にあり,それによって優れた作用効果を有するから,進歩性があり,本願発明1に進歩性がないとした審決の判断は誤りであると主張するが,この主張は,以下の理由により,採用することができない。 すなわち,前記( )ア(ウ)のとおり,本願発明1は基準点が必ずコンポ1ーネント上にあるとは解されず,基準点がコンポーネント外にあるものも含まれるから,原告の上記主張は,その前提において採用することができない。また,仮にその点を措くとしても,原告主張の作用効果のうち,コンポーネントが移動した場合の効果(前記第3,2( )イ(ア) ,コンポー2 )ネントの各位置のデータに含まれる誤差についての効果 前記第3 2( )(,2イ(イ))は,本願明細書に記載されていないから,本願発明1の作用効果ということはできないし,そのような効果が,進歩性を基礎づけるに足りる優れた作用効果であることを認めるに足りる証拠があるとはいえない。 さらに,位置特定の高速化の効果(前記第3,2( )イ(ウ))について,2原告が指摘する本願明細書の【0023】の記載( 第1の吸着ピペット「のオフセットがマウント後自動装着機7において位置固定のセンサにより(例えばガラスサブストレートへのガラスモジュールの装着により)検出される。他のすべての吸着ピペットのデータは,記憶装置15から制御装置6へ伝送され,そこで処理される。自動装着機7は,次いで第1の吸着ピペット4に関連づけて他の7つの吸着ピペットのオフセットをも算出する)は,本願明細書全体の記載に照らすならば,実施例の説明にとどま 。」るものであり,それをもって本願発明1の作用効果であるということはできず,したがって,原告が主張する位置特定の高速化の効果(前記第3,2( )イ(ウ))も,本願発明1の作用効果ということはできない。 23手続違背(取消事由3)について原告は,本願の審査,審判手続は,審決に至るまで本願に対する具体的な拒絶理由が示されず,出願人に反論の機会が与えられておらず,特許法50条,159条2項・50条に違反する違法があると主張する。しかし,原告の上記主張は,以下の理由により,採用することができない。 ( )拒絶理由に関連する本願の審査,審判の経緯1拒絶理由に関連する本願の審査,審判の経緯は,次のとおりである。 ア本願についての平成13年10月30日付けの特許協力条約34条補正の翻訳文提出書(甲13)に記載された同補正後の請求項1には,特性デ,「() (, , ータについて自動装着機 7 の交換可能なコンポーネント 3 5) , 」。 17 の 定置の基準点に関連付けられた特性データ と記載されていたイ平成16年5月17日付けの拒絶理由通知書(甲5)には,拒絶理由の「1」として 「本願の請求項1ないし14に係る発明は,引用文献1な ,いし4(本訴の甲1ないし4と同一である )に記載された発明に基づい 。 て容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない」旨記載されており,備考欄に「引用文献1〜3の基準点からのずれの記憶,引用文献4のヘッドの情報の記憶を参照 」と記載されていた。 。 上記の拒絶理由通知書の記載によれば,拒絶理由として 「本願に係る,発明の特性データは,甲1ないし3に記載された,部品供給位置と基準位置とのずれ量に該当するから,本願に係る発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない」旨が通知されたものと解され,そのことは,当業者であれば容易に理解することができたものと認められる。 ウ上記拒絶理由通知書による拒絶理由通知を受けて提出された平成16年10月21日付け手続補正書(甲7)において,請求項1の特性データに,「() (, ,) ついて自動装着機 7 の交換可能なコンポーネント 3 5 17の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ (下線部は補正箇所である ) 」 。 と補正された。 エ平成16年10月21日付け手続補正書(甲7)とともに提出された同日付け意見書(甲6)には,次のとおり記載されていた。 「2.特許法第29条第2項について請求項1と引例1〜4との関係について説明します。 本願請求項1の発明の特徴は,記憶装置に記憶されるデータに特徴があり,そのデータは,交換可能なコンポーネント上に設けられた定置の基準点に関連づけられて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的データです。そして,幾何学的データとは,該交換可能なコンポーネント自体の空間的な寸法に関するものです。 一方,引例1〜3に開示されているものは,交換可能なコンポーネントである供給ユニットを交換した際の供給ユニットと部品装着装置(電子部品実装装置)の固定の基準点とのズレを算出したり,場合により,。,, そのズレを補正することが開示されています つまり データとしては交換可能なコンポーネントの装着位置と部品装着機の固定点との相対的な空間的位置関係を示すデータです。 このように,本願請求項1の発明のデータは,交換可能なコンポーネント自体の幾何学的データ(空間的寸法)であるのに対し,引例のデータは,交換可能なコンポーネントと固定点との相対位置関係を示すデー, 。」 タであるので 本願発明と引例1〜3の開示内容とは全く異なりますオ平成16年11月10日付け拒絶査定(甲8)には,本願について,同年5月17日付け拒絶理由通知書(甲5)に記載した理由1によって拒絶をすべきものであると記載されており,備考欄に次のとおり記載されていた。 「請求項1〜9について引用文献1〜3に記載のものは,装着装置に部品供給装置を取り付ける前に,部品供給装置の記憶手段にズレ量,補正位置データ等の幾何学的特性データを記憶させていることから,これらのデータは本願発明における『交換可能なコンポーネントの定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネントの幾何学的特性データ』に相当する 」。 カ拒絶査定不服審判請求後,平成17年3月8日付けで,審判請求書を変更する手続補正が行われるとともに(甲9の2 ,旧請求項1から新)請求項1への変更を含む本件補正が行われた(甲9の1 。そして,本)件補正により 「定置の基準点」は,新請求項1においては,装着ヘッ ,ド5の一つの保持装置4とされ 「幾何学的特性データ」は,新請求項 ,1においては,一つの保持装置4に関連づけて求められた他の保持装置4の幾何学的特性データとされた。 ( )手続違背の有無について2前記( )の本願の審査,審判の経緯によれば,平成16年5月17日付け1拒絶理由通知により(甲5「本願発明の特性データは,甲1ないし3に記 ),載された,部品供給部位置と基準位置とのずれ量に該当するから,本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない」旨の拒絶理由が通知され,それを受け,同年10月21日付け手続補正が行われるとともに(甲7 ,同日付け意見書(甲6)において 「本願発明1の幾何学的特 ) ,性データは,甲1ないし3に記載されたデータと異なる」旨の主張がされたが,上記拒絶理由により,同年11月10日付け拒絶査定が行われた。そし,,,「」 て 拒絶査定不服審判請求後 本件補正により 請求項1の 定置の基準点がコンポーネント上に設けられた基準点(一つの保持装置)とされ 「幾何,学的特性データ」が,コンポーネント上の他の点(他の保持装置)がコンポーネント上の基準点(一つの保持装置)との関係で有する幾何学的特性データとされて,新請求項1記載の発明を,定置の基準点がコンポーネント外に設けられている引用発明とは異なるものとする意図で補正がされたものと認められる(ただし,本件補正は,前記1のとおり,限定的減縮を目的とするものに該当せず,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第4項2号に違反するものである。。)なお,前記2( )のとおり,旧請求項1及び本願明細書の記載によれば,1本願発明1の「交換可能なコンポーネント(3.5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた,該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」と,引用発明の「交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値」, 。 とは一致するものと認められ 上記拒絶理由は相当なものであったといえるそうすると,本件の審査,審判手続の過程においては,出願人に対して拒絶理由が通知され,出願人は,拒絶理由の趣旨を理解した上で,手続補正を行うとともに意見書による主張を行ったが,拒絶理由を解消することができず,拒絶査定を受けたものであり,出願人に対して意見書を提出する機会が与えられていたから,審査手続に,特許法50条に違反する違法はなく,また,本件は,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由が発見された場合でもないから,特許法159条2項・50条に違反する違法もない。さらに,出願人は,審判段階においても,審判請求書の補正書により主張を行い,本件補正を行う機会があったから,実質的にみても,出願人に主張,反論の機会が与えられていたといえる。 したがって,本件の審査,審判の手続には,特許法50条,159条2項・50条に違反する違法はなく,また,その他の違法があるとは認められない。 4結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。 よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 中平健 |
裁判官 | 知野明 |