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関連審決 不服2006-1061
関連ワード 使用方法 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  出願公開 /  パリ条約 /  優先権 /  技術的意義 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の理由 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10400号 審決取消請求事件
原告 三星電子株式会社
訴訟代理人弁理士 佐藤英昭丸山亮林晴男
被告 特許庁長官
指定代理人近藤聡江嶋清仁 岩崎伸二 田村正明
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/10/13
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
原告の求めた判決
特許庁が不服2006-1061号事件について平成21年7月27日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願の拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決の取消訴訟である。
争点は,平成18年2月15日付けでなされた特許請求の範囲の補正を含む手続補正(以下「本件補正」という。)が,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項の規定に適合するか,である。 1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成10年5月15日,名称を「インターネットを利用した顧客支援システム」とする発明について,特許出願(パリ条約による優先権主張1997年5月15日,大韓民国,特願平10-133904号,平成10年12月22日出願公開
特開平10-340144号) をしたが,平成16年3月16日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して同年9月24日付けで手続補正をしたが,平成17年10月14日付けで拒絶査定を受けたので,平成18年1月16日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同年2月15日付けで特許請求の範囲の補正を含む本件補正と,審判請求書の請求の理由を補正することを含む手続補正をした。 特許庁は,上記不服審判請求を不服2006-1061号事件として審理した上,平成21年7月27日,本件補正を却下するとともに,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年8月11日原告に送達された(出訴のための附加期間90日)。 2 本件補正の内容と発明の要旨 本件補正により補正された特許請求の範囲は,請求項1ないし23からなるが,そのうち請求項1に係る発明は,以下のとおりである(補正事項は下線部のとおり。
以下「本件補正事項」という。) 「【請求項1】 所定の製品に対する顧客支援サービスを,インタネットを利用して提供する顧客支援システムにおいて, 前記所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する顧客支援エンジンと前記顧客支援エンジンが利用する製品関連情報を格納しているデータベースとを具備した顧客支援サーバと, 前記インタネットを介して前記顧客支援サーバに接続可能なインタネット通信手段を具備した使用者コンピュータとから構成された顧客支援システムであって, 前記顧客支援サーバの前記顧客支援エンジンは, 前記顧客支援システムのホームページとして所定の顧客支援サービスに対するメニュを提供するゲートページと, 前記ゲートページで提供された所定のメニュが選択された場合に,前記選択されたメニュに対応する顧客支援サービスを提供する複数のサービスページを具備し, 前記サービスページは, 少なくとも前記製品に関するソフトウェアを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードページを具備すると共に,前記ダウンロードページを含む複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュを具備し, 前記サービスページは, 前記製品モデルと前記製品に関連した各種装置の使用方法と前記製品に関連した技術資料を提供するための使用案内ページであり, 前記使用案内ページは, 前記製品モデルを選択するモデルメニュ画面部と, 前記製品モデルの仕様および関連する各種情報などの細部項目を選択する仕様画面部と, 前記製品の関連情報を格納するデータベースにアクセスして,前記製品の使用方法および技術資料を提供する使用案内サービス部と, を含み, 前記使用案内サービス部は, 前記製品がパソコンである場合には, 前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と, 前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と, 前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と, 前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを少なくとも提供し, 前記ダウンロードページは, 前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と, 前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と, 前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部とを含む ことを特徴とするインタネットを利用した顧客支援システム。」 3 審決の理由の要点 (1) 本件補正は,願書に最初に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではないから,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 (2) 本件補正が却下された結果,平成16年9月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される本願発明は,「福田良一著,デジタル・メイキングシリーズ ホームページ制作の現場,日本,エーアイ出版株式会社,1996年11月20日発行,第1版第1刷,p.12-23,26-27,38-41」(甲2)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
原告主張の審決取消事由(補正却下の誤り)
審決は,「本件補正は,願書に最初に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではないから,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」(8頁12行〜17行)とするが,以下に示すとおり,審決が,本件補正について却下の決定をしたのは誤りである。 1 本件補正事項のうち,ダウンロード画面に関する該当部分は,「前記ダウンロードページは,前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と,前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と,前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部と,を含む」である。 この該当部分について,願書に最初に添付された明細書及び図面(甲1,以下「当初明細書及び図面」という。)に基づき,オペレータがダウンロードページを使って,「グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する」ステップを以下に説明する。 2 すなわち,細部項目メニュ出力部は,パソコンモデルに必要なプログラムを選択するために用いられる細部項目メニュ画面を表示するものであって,ダウンロードページの構成要素であり(段落【0029】,【0030】),製品モデルについて必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどの装置を表示するものである(段落【0030】)。そして,ダウンロードページは,オペレータがサービスを所望する製品モデルのメニュを表示するモデルメニュ画面部,細部項目メニュ出力部,細部項目メニュ画面で選択した装置に対応するプログラムを,使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部から構成される(段落【0030】)。 そこで,ダウンロードページのモデルメニュ画面部(図10)で,オペレータがM550などのモデル名を選択すると,選択したモデルについての必要な各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなど,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを選択するためのメニュを含む細部項目メニュ画面が,細部項目メニュ出力部によって表示される(段落【0031】,図11)。表示された画面の表形式の部分は,細部項目メニュ出力部が表示した細部項目メニュ画面であり,右端のスクロールバーによって上下に行をスクロールすることにより現在表示されている以外の行についても表示することができるものである。 具体的には,前記表形式の部分は,製品モデル欄,細部項目欄,ファイル名欄,説明欄,ファイルの大きさ欄,提供日欄,回数欄を含み,細部項目欄にはAUDIO,MPEGなどデータ圧縮を視点としたファイル種別が表示され,ファイル名欄にはm550d_au_zipなどの,各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどパソコン関連ソフトウェアのファイル名が表示され,説明欄には「M550-用AUDIOドライブ」などダウンロードするプログラムに対応する装置名が表示されている。すなわち,各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどパソコン関連ソフトウェアから必要なファイル名をクリックすることによって,ダウンロードするソフトウェアの選択が実行されるものである(段落【0031】)。 また,説明欄に表示されている「M550-用AUDIOドライブ」などの意味が分からないときには,細部項目画面の下段にある主メニュの中から,使用案内ボタンをクリックして(段落【0035】),使用案内ページに移動し,少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報を参照することにより(段落【0028】),装置の実装されている位置や装置の外観などを知ることができ,不明であった意味を解明し,この解明を基に,必要なファイル名をクリックすることによってダウンロードするソフトウェアの選択を実行する。 つまり,オペレータが,選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,選択されたパソコンモデル本体の前面,選択されたパソコンモデル本体の背面,選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報というような,「グラフィック及び文字情報を基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する。」のであり,この点は,当初明細書及び図面に記載された事項である。
被告の反論
1 当初明細書及び図面の記載(段落【0030】,【0031】,【図9】,【図10】,【図11】)及び原告の主張によれば,ダウンロードページに含まれる「細部項目メニュ出力部」は,「製品モデル欄」,「細部項目欄」,「ファイル名欄」,「説明欄」,「ファイルの大きさ欄」,「提供日欄」,「回数欄」を含む表形式(細部項目メニュ)を細部項目メニュ画面に表示させるものである。そして,細部項目メニュ画面に表示された細部項目メニュから,各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどのファイル名を選択することにより,対応するプログラムを使用者コンピュータ140にダウンロードすることができるのである。 してみると,「細部項目メニュ出力部」で「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に参照されるのは,「製品モデル欄」,「細部項目欄」,「ファイル名欄」,「説明欄」,「ファイルの大きさ欄」,「提供日欄」,「回数欄」からなる表形式(細部項目メニュ)を表示した細部項目メニュ画面である。そして,この参照を基にして,選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアをダウンロードするのが,当初明細書及び図面に記載された事項である。 2 一方,本件補正後の請求項1の記載では,「細部項目メニュ出力部」で「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に基にしているのは,「使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報と」であるから,「使用案内サービス部により少なくとも提供される」「グラフィック及び文字情報」を細部項目メニュ画面に表示しようとすることは明らかである。 以上のとおり,「細部項目メニュ出力部」が「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に基にしているのが,当初明細書及び図面の記載では,細部項目メニュ画面に表示される「製品モデル欄」,「細部項目欄」,「ファイル名欄」,「説明欄」,「ファイルの大きさ欄」,「提供日欄」,「回数欄」からなる表形式であったのを,本件補正は,「使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報と」に変更するものである。 しかしながら,「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」ことを,本件補正のように変更された「使用案内サービス部により少なくとも提供される」「グラフィック及び文字情報」を基にして行うことは,当初明細書及び図面に記載も示唆もなく,また当初明細書及び図面の記載を総合しても自明な技術事項とはいえないことから,審決は「本補正事項は当初明細書等に記載されていない」と認定したのである。 したがって,原告が主張する「ダウンロードページは,「上記グラフィック及び文字情報を基にして,パソコンモデルに必要なプログラムを選択するための細部項目メニュ出力部」を含むものである」ことは,当初明細書及び図面には記載されていないのであるから,上記主張は失当である。
当裁判所の判断
1 本願発明の構成について (1) 本願発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであり,また,当初明細書及び図面(甲1)の記載によれば,本願発明は,インターネットを利用した顧客支援システムに関するものであって,サービス員等がオペレータ宅を直接訪問して処置するという従来のようなアフターサービスの方法では,各種製品に発生する諸問題について迅速に対応することが難しく,また,サービス要員や外部職員に膨大な人件費がかかってしまう等の問題があることから,オペレータが対処できる製品のトラブルについては,アフターサービスに依頼しなくてもオペレータ自身が対処することが可能な,新規かつ改良された顧客支援システムを提供することを目的として,その顧客支援システムに,パソコン製品のモデル案内やパソコンと関連した各種装置の使用方法や装置の技術的資料を提供するモジュールである使用案内ぺ一ジや,パソコンを使用している途中で特定プログラムが損傷した場合や,現在使用しているソフトウェアをバージョンアップした場合や,新たに応用ソフトウェアを設置する場合などに,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを端末器にダウンロードするためのモジュールであるダウンロードページ等を備えることにより,オペレータが対処できる製品のトラブルについてアフターサービスに依頼せずにオペレータ自身が対処して解決し,アフターサービスの要請件数を減らしてアフターサービス要員のサービス品質を向上させるとともに,アフターサービス費用を節減することができるようにしたものと認められる。 (2) また,ダウンロードページから,パソコンモデルに必要なプログラムを選択するステップについては,以下のとおりと認められる。 すなわち,ダウンロードページは,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを端末器にダウンロードするためのモジュールであるところ,まず,オペレータが,ダウンロードページのモデルメニュ画面(図10)でM550Dなどのモデル名を選択すると,選択したモデルについての必要な各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなど,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを選択するための細部項目メニュを含む細部項目メニュ画面(図11)が表示される。この細部項目メニュ画面の表形式の部分は,製品モデル欄,細部項目欄,ファイル名欄,説明欄,ファイルの大きさ欄,提供日欄,回数欄を含み,細部項目欄にはデータ圧縮を視点としたファイル種別が,ファイル名欄には各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどパソコン関連ソフトウェアのファイル名が,説明欄にはダウンロードするプログラムに対応する装置名が,それぞれ表示されており,必要なファイル名をクリックすることによって,ダウンロードするソフトウェアの選択が実行されるものと解される。 (図11) そして,図11の細部項目メニュ画面には,その画面下段に「主メニュー:使用案内 FAQ ダウンロード ウィンドウ95」の記載があり,「各サービスページには,サービスページ相互間を直接移動することができる移動メニュが設けられており,現在提供されているサービスから直ちに他のサービス提供ぺ一ジに移動することができるので,迅速なサービスを受けることができる。」(段落【0035】)との記載と併せて考慮すれば,図11から使用案内のボタンをクリックすることにより,「使用案内ページ」に係る画面に移動することが開示されていると解される。 したがって,細部項目メニュ画面(図11)において,説明欄に表示されている「M550-用AUDIOドライブ」などの意味が分からない場合などには,細部項目メニュ画面の下段にある主メニュの中から,使用案内ボタンをクリックして,使用案内ページに移動し,使用案内に関するサービスを受けることができるものと認められる。 他方,使用案内ページは,パソコン製品のモデル案内やパソコンと関連した各種装置の使用方法や装置の技術的資料を提供するモジュールであって,オペレータが選択することが可能なパソコンモデルの種類が表示されるモデルメニュ画面(図6),選択したパソコンモデルの仕様やパソコン関連の各種装置を選択する細部項目のメニュ画面(図7),更には,選択したパソコンモデルのシステム本体の前面や背面,主基板及びスイッチセッチングのシステム外観,ハードウェア装置,ソフトウェアに関する技術的情報などを,グラフィック情報及びテキスト情報として提供する画面,例えば,システム本体の前面に対する情報等をグラフィック及びテキスト情報として提供する画面(図8)を表示する。 (図6) (図7) (図8) (図10) ただし,ダウンロードページの細部項目メニュ画面(図11)の下段の移動メニュの中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,当初明細書及び図面には明確な記載が認められない。 そこで,この点について更に検討するに,ダウンロードページのモデルメニュ画面(図10)の下段にも移動メニュのボタンがあるところ,同画面において,サービスを所望する製品モデルを選択する前に,移動メニュの中の使用案内ボタンをクリックした場合は,製品モデルを選択する前であるから,使用案内ページのモデルメニュ画面(図6)に移動するのが当然であること,また,モデルメニュ画面が使用案内ページの最初の入り口の画面であること,及び同じ表記のボタンをクリックした場合の画面遷移の共通性などを考慮すれば,モデルメニュ画面(図10)及び細部項目メニュ画面(図11)のいずれの画面からも,移動メニュの中の使用案内ボタンをクリックすると,使用案内ページのモデルメニュ画面(図6)に移動すると解するのが,自然な画面移動であるということができる。これに対し,上記クリックにより,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面(図7)やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面(図8)などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。 なお,使用案内ページの上記各画面(図6〜図8)にも,その画面下段に「主メニュー:使用案内 FAQ ダウンロード ウィンドウ95」の記載があり,これは,サービスページ相互間を直接移動することができる移動メニュであると解されるから,図6ないし図8からダウンロードのボタンをクリックすることにより,「ダウンロードページ」に係る画面に移動することが開示されていることになるところ,使用案内ボタンをクリックした場合と同様に,モデルメニュ画面(図10)がダウンロードページの最初の入り口の画面であることや,同じ表記のボタンをクリックした場合の画面遷移の共通性を考慮すれば,いずれの画面からも,移動メニュの中のダウンロードボタンをクリックすると,ダウンロードページのモデルメニュ画面(図10)に移動すると解するのが,自然な画面移動であるということができる。これに対し,上記クリックにより,選択したパソコンモデルに対応した他の画面(例えば図11)に直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。 2 本件補正事項について 本件補正事項のうち,審決が問題とする「前記ダウンロードページは,前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と,前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と,前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部とを含む」との点の技術的意義について検討すると,次のとおりである。 すなわち,上記補正事項は,ダウンロードページの「モデルメニュ画面部」により選択したパソコンモデルについて,「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に,「前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基に」するのであるから,「使用案内サービス部」は,少なくとも「前記選択されたパソコンモデル」についての「パソコンモデル本体のモデル種類」,「パソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報」,「パソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報」,及び「パソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報」を提供できることが必要であり,また,これらの情報を「基にして」選択するためには,ダウンロードページのモデルメニュ画面部により選択されたパソコンモデルに関して,使用案内サービス部より提供されるグラフィック及び文字情報を表示する画面と,ダウンロードすべきソフトウェアを選択する「細部項目メニュ画面」との間に,直接的な画面移動の関係が必要であると認められる。 つまり,上記補正事項は,ダウンロードページの「モデルメニュ画面部」により選択したパソコンモデルについて,「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部」の画面から,「前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報」を提供する「使用案内サービス部」の画面に直接移動し,その後ダウンロードを続行するために,上記の情報に基づいて特定されたダウンロードページの「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部」の画面に直接移動して戻ることを意味するものと解される。 3 取消事由(補正却下の誤り)について (1) 原告は,審決がした補正却下決定が誤りであると主張し,その理由として,以下のとおり述べる。 すなわち,原告は,本件補正事項のうち,前記2記載部分に関して,ダウンロードページのモデルメニュ画面部(図10)でオペレータがモデル名を選択すると,選択したモデルについての必要な各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなど,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを選択するためのメニュを含む細部項目メニュ画面が,細部項目メニュ出力部によって表示され,ダウンロードするプログラムに対応する装置名が表示されるから,パソコン関連ソフトウェアから必要なファイル名をクリックすることによって,ダウンロードするソフトウェアの選択が実行されるとし,仮に,説明欄に表示されている意味が分からないときには,細部項目画面の下段にある主メニュの中から,使用案内ボタンをクリックして,使用案内ページに移動し,提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類や各種のグラフィック及び文字情報を参照することにより,装置の実装されている位置や装置の外観などを知ることができ,不明であった意味を解明し,この解明を基に,必要なファイル名をクリックすることによってダウンロードするソフトウェアの選択を実行すると主張する。 (2) 上記の原告主張は,前記2で認定した当該補正事項についての解釈,すなわち,ダウンロードページの「モデルメニュ画面部」により選択したパソコンモデルについて,「前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」際に,「使用案内サービス部」は,少なくとも「前記選択されたパソコンモデル」についての「パソコンモデル本体のモデル種類」,「パソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報」,「パソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報」,及び「パソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報」を提供できることが必要であるとする解釈の範囲で合致するものといえる。 しかし,上記の補正事項を実現するためには,ダウンロードページの「モデルメニュ画面」にて選択したパソコンモデルの種類を,使用案内ページにおいても認識し,ダウンロードページの「細部項目メニュ画面」から,選択したパソコンモデルの仕様やパソコン関連の各種装置を選択する使用案内ページの「細部項目のメニュ画面」に直接移動して表示することが,技術的に必要であり,また,使用案内ページからダウンロードページに復帰する際においても,使用案内ページにて表示していたパソコンモデルの種類,又は,それ以前の「モデルメニュ画面」にて選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存して,ダウンロードページの前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する「細部項目メニュ画面」に直接移動して表示をすることが必要となるものと認められる。 (3) ところで,前記1で判示したとおり,当初明細書及び図面には,ダウンロードページの細部項目メニュ画面中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,明確な記載が認められず,当初明細書及び図面の記載を総合すると,使用案内ページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。また,ダウンロードボタンをクリックした場合も,ダウンロードページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,当初明細書及び図面には,選択したパソコンモデルに対応した他の画面に直接移動することを示唆する記載も見当たらない。 したがって,上記の補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。
結論
以上によれば,原告の主張する取消事由は,理由がなく,本件補正を却下した審決の判断に,誤りはない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 清水節
裁判官 古谷健二郎