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関連審決 不服2005-21463
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10246審決取消請求事件 判例 特許
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平成21行ケ10096審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10090審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 有用性 /  製造方法 /  容易に実施 /  物質発明 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  周知技術 /  実施可能要件 /  技術常識 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  パリ条約 /  優先権 /  出願経過 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  発明の範囲 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10001号 審決取消請求事件
原告 レラボラトワールセルヴィエ
訴訟代理人弁理士 津国肇
同 齋藤房幸
同 田中洋子
同 小澤圭子
上記津国肇訴訟復代理人弁理士伊藤佐保子
被告特許庁長官
指定代理人伊 藤幸司
同 内田淳子
同 小林和男
同 唐木 以知良
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/08/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求2 特許庁が不服2005-21463号事件について平成21年8月13日にした審決を取り消す。
第2事案の概要1特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「固形の熱成形し得る放出制御医薬組成物」とする発明につき,平成12年6月27日,特許出願をし(パリ条約による優先権主張1999年(平成11年)6月28日,フランス共和国。以下「本願」という。),平成16年6月14日付け手続補正書(甲6)を提出したが,平成17年8月1日付けの拒絶査定を受けたので,同年11月7日,これに対する審判請求をした(不服2005-21463号事件)。
特許庁は,平成21年8月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(付加期間90日),その謄本は同年9月5日に原告に送達された。
2特許請求の範囲平成16年6月14日付け手続補正書(甲6)による補正後の本願発明の請求項1は,下記のとおりである(なお,上記補正後の請求項の数は26である。)。
「固形の放出制御医薬組成物であって,少なくとも1の活性成分,ならびに少量の第四級アンモニウム基を有する,アクリル酸及びメタクリル酸エステルの十分に重合させたコポリマーからなるアンモニウムメタクリラートのコポリマーであるポリメタクリラート類の群から選択される1又はそれ以上のポリマーの熱成形し得る混合物を含み,活性成分の放出が,使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製造に用いる技術によってのみ制御されることを特徴とする医薬組成物。」(以下,この発明を「本願発明」という。)3審決の内容別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願発明は,周知技術を勘案し,特表平10-508608号公報(甲1。以下「引用例A」という。)の記3載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,引用例A記載の発明(以下「引用発明」という。)の内容並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1)引用発明の内容オピオイド鎮痛剤並びにアクリルポリマーを含む溶融押出し配合物からなる固形の持続放出性医薬製剤。
(2)一致点活性成分並びにアクリル系ポリマーを含む熱成形し得る混合物を含む固形の放出制御医薬組成物である点。
(3)相違点ア相違点1本願発明は,アクリル系ポリマーについて,少量の第四級アンモニウム基を有する,アクリル酸及びメタクリル酸エステルの十分に重合させたコポリマーからなるアンモニウムメタクリラートのコポリマーであるポリメタクリラート類の群から選択される1又はそれ以上のポリマーであるのに対し,引用発明ではアクリルポリマーである点。
イ相違点2本願発明は,活性成分の放出について,使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製造に用いる技術によってのみ制御されると特定しているのに対し,引用発明ではそのようなことについて特定していない点。
第3取消事由に係る原告の主張1取消事由1(引用発明及び周知技術の認定誤り)(1)引用発明の認定の誤り4引用例Aには,医薬製剤として,治療活性薬及び疎水性物質(アクリルポリマー)と共に遅延化剤(疎水性可融性担体)としてステアリン酸を用いた3成分系のみが開示され,2成分系の具体例は開示されていない。引用例Aにおける「遅延化剤,すなわち疎水性ポリマー」との記載が,直ちに「疎水性物質」を意味するとはいえず,また,「本件発明の溶融押出処方の徐放性プロフィールは,例えば,遅延化剤,すなわち疎水性ポリマー,の量を変更すること,・・・等により変更することができる。」との記載から,「疎水性物質」(アクリルポリマー)が「遅延化剤」としての機能を有していると理解することもできない。したがって,引用例Aには,2成分系の医薬製剤において,疎水性物質(アクリルポリマー)の遅延化作用により薬剤の持続的な放出が可能であることの開示はない。
また,化学物質発明は,その構造から有用性を予測することが困難な技術分野に属するから,特定された用途ないし性質に関する有用性が明細書に裏付けられていなければ,当業者が発明を把握することができない。引用例Aには,疎水性物質(アクリルポリマー)の遅延化作用について,抽象的な記載がされており,また実施例には3成分系の持続放出性医薬製剤の調製とその有用性(8時間以上にわたり放出することが可能であること)の記載しかないから,同記載に基づいて,当業者が,2成分系とした場合の有用性を理解することはできない。また,疎水性可融性担体は,治療活性薬の放出を遅延させるか又は制御する作用を有するとともに,可塑剤の代わりとしても使用されるものであること,可塑剤の選択によって薬物放出速度を低下させることができること,引用例Aの実施例で調製された医薬製剤のすべてが疎水性可融性担体であるステアリン酸ないしステアリンアルコールを含むものであることに照らすと,引用例Aに,遅延化剤(疎水性可融性担体)を用いることについて「任意」ないし「好ましくは」との記載があるからといって,遅延化剤(疎水性可融性担体)を含まない医薬製剤が持続放出性を奏すると5把握できるものではない。
引用例Aの発明は,その用途ないし性質について,十分に具体化,客観化されておらず,当業者にとって容易に実施可能であるとは認められないもの,すなわち未完成発明であって,先行技術としての適切な開示はされていない。
さらに,引用例Aの出願経過によれば,平成11年10月27日付けの拒絶理由通知に対する応答として,引用例Aの出願人は,平成12年5月16日付けで提出した手続補正書により請求項23に係る発明を特許請求の範囲から削除しており,同日付けの意見書においても引用例Aでは治療活性薬,特定の種類の疎水性物質,及び特定の種類の疎水性可融性担体が押出し材料として必須であると主張していることから,引用例Aには2成分系の製剤について何ら裏付けがないことを引用例Aの出願人も自認していたと認められる。
以上によれば,引用例Aには,「治療活性薬,アクリルポリマー及び疎水性可融性担体を含む溶融押出し配合物からなる固形の持続放出性医薬製剤」との発明が記載されていると認定すべきである。
(2)周知技術の認定の誤り審決は,オイドラギット(登録商標)RSをマトリックスとして使用すると薬物の徐放化が可能であることが本願の優先権主張日前に周知技術であったとし,その根拠として,医薬品添加剤要覧(甲2。星登ほか著,平成4年11月25日発行,株式会社薬業時報社)を挙げている。しかし,審決は,甲2において,オイドラギット(登録商標)RSの特性について,粉末タイプは混合することによりマトリックスとして徐放化が可能と記載されているにもかかわらず,粉末タイプとの記載を無視して周知技術を広く認定した点に誤りがある。
また,甲2には,いわゆるフィルムコーティングによる徐放化とともに,粉末タイプをマトリックスとして使用した場合の特性として徐放化が可能で6ある旨記載されているから,フィルムでも粉末でもない溶融押出しマトリックス等についても,徐放化が可能であると認定することはできない。
なお,審決は,引用例Aにおいて,具体例がなくとも周知技術を考慮すれば2成分系の持続放出性医薬製剤が認定できるとしているが,このような認定過程は,周知技術を認定した後に,それを基にして,引用発明を認定している点で妥当性を欠いている。
2取消事由2(相違点の看過)(1)審決は,前記1の引用発明の認定の誤りにより,本願発明は可塑剤又は遅延剤を使用しないのに対し,引用発明では可塑剤ないし遅延剤として使用し得る疎水性可溶性担体を使用するとの相違点(以下「相違点3」という。)を看過した誤りがある。
(2) 本願発明は,活性成分をその目的に応じて,数分間(即時放出に相当)ないし20時間を超える期間(放出延長に相当)にわたって放出するよう容易に制御できる医薬組成物を提供することを目的とするものであるのに対し,引用発明は,持続放出性のみを指向するものであるとの点で,解決課題が異なる。したがって,審決は,医薬組成物の用途ないし性質について,本願発明は「放出制御」であるのに対し,引用発明は「持続放出性」であるとの相違点(以下「相違点4」という。)を看過した誤りがある。
3取消事由3(容易想到性の判断の誤り)(1)相違点2に係る容易想到性の判断の誤り本願発明は,簡単かつ経済的な方法で得られ,活性成分と相互作用し得る賦形剤の使用を回避することができるとともに,活性成分をその投与都合に合わせて,数分間(即時放出に相当)ないし20時間を超える期間(延長放出に相当)にわたり放出するよう容易に制御できる医薬組成物を提供することを課題とし,これを可塑剤や遅延剤を添加せずに活性成分の放出を使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製7造に用いる技術によってのみ制御するとの構成で解決したものである。これに対し,引用発明は,治療活性薬の8時間ないし24時間以上の持続放出をもたらす医薬製剤を提供することを課題とするものであり,本願発明とは解決課題において相違するから,引用例Aに基づいて本願発明の相違点2に係る構成に至ることは容易とはいえない。
また,引用例Aには,疎水性可融性担体を用いない持続放出は裏付けられていないから,引用例Aから,本願発明の相違点2の構成に至ることが容易とはいえない。
したがって,相違点2に係る構成が容易であるとした審決の判断は,誤りである。
(2)相違点3,4に係る容易想到性の判断の誤り 相違点3及び4に係る構成は,いずれも引用発明から容易であるとはいえない。
第4被告の反論1取消事由1(引用発明及び周知技術の認定誤り)に対し構造及び用途・性質が公知の化学物質を組み合わせた組成物発明の明細書において,公知の化学物質からなる組成物の有用性が,当業者において把握できる程度に,合理的な説明がされていれば,先行技術となり得る。本件において,引用例Aには,3成分系の持続放出性医薬製剤のみならず,2成分系の持続放出性医薬製剤についても当業者が把握することのできる発明として記載されているといえる。審決における引用発明の認定に誤りはない。
2取消事由2(相違点の看過)に対し引用例Aには,前記のとおり,3成分系の持続放出性医薬製剤のみならず,2成分系の持続放出性医薬製剤についても当業者が把握することのできる発明として記載されている。また,本願発明における活性成分の放出制御には,延長放出する態様をも包含することが実施例としても裏付けられている。
8したがって,審決は,原告主張に係る相違点3,4を看過した違法はない。
3取消事由3(容易想到性の判断の誤り)に対し(1)相違点2に係る容易想到性の判断の誤りに対し本願発明と引用発明とは,いずれも,薬物を長期にわたり放出する医薬製剤であるという点において,解決課題を共通にする。
そして,引用例Aには,医薬製剤からの薬物の持続的放出が,「使用するメタクリラートの特性」,「活性成分に対するその量」,「組成物の製造に用いる技術」という3要素によってのみ制御されるという本願発明の構成が開示ないし示唆されているといえるから,治療活性薬とアクリルポリマーのみを含む2成分系の医薬製剤において,上記3要素によって治療活性薬の放出を制御することは当業者が容易に想到し得る。
なお,引用例Aには,疎水性可融性担体が遅延化剤である旨の記載がされているが,その技術的意味は,アクリルポリマーの使用により既に遅延化された治療活性薬の放出を更に遅延させるか又は制御するため,疎水性可融性担体を第2の遅延化剤として使用し得ると解するのが相当である。また,甲2には,オイドラギット(登録商標)RSの特性,用途として,「pH非依存型徐放性基剤」,「持続製剤用基剤」がそれぞれ挙げられていることから,本願の優先権主張日の時点で,オイドラギット(登録商標)RSが薬物の持続放出性医薬製剤の「基剤」として用いられることは当該技術分野の常識であったものと認められる上,医薬製剤において剤形に加工(製剤化)する際に基剤をマトリックスとして用いることは,広く行なわれているといえる。そうすると,甲2の記載から,オイドラギット(登録商標)RSを,剤形は特定されていないものの,マトリックスの基剤として使用することにより薬物の徐放化が可能であることが広く知られていたといえるから,審決における同旨の周知技術の認定に誤りはない。
(2)相違点3,4に係る容易想到性の判断の誤りに対し9 審決は,相違点3,4を看過した誤りはなく,また,形式的に相違点があるとしたとしても,本願発明の構成に至ることは容易である。
第5当裁判所の判断当裁判所は,原告が主張する取消事由には理由がなく,審決を取り消すべき違法は認められないから,原告の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(引用発明等の認定誤り)及び取消事由2(相違点3,4の看過)について原告は,引用例Aには,医薬製剤として,治療活性薬及び疎水性物質(アクリルポリマー)と共に遅延化剤(疎水性可融性担体)としてステアリン酸を用いた3成分系のみが開示され,2成分系の具体例は開示されていないにもかかわらず,審決は,引用例Aには,治療活性薬及び疎水性物質(アクリルポリマー)からなる2成分系の製剤についても記載されているとした点で,引用発明の認定を誤り,また相違点3及び4を看過したと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。
(1)本願発明ア本願発明(請求項1)は,第2の2のとおりである。
「固形の放出制御医薬組成物であって,少なくとも1の活性成分,ならびに少量の第四級アンモニウム基を有する,アクリル酸及びメタクリル酸エステルの十分に重合させたコポリマーからなるアンモニウムメタクリラートのコポリマーであるポリメタクリラート類の群から選択される1又はそれ以上のポリマーの熱成形し得る混合物を含み,活性成分の放出が,使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製造に用いる技術によってのみ制御されることを特徴とする医薬組成物。」イまた,本願発明の明細書には,以下の記載がある。
10「【0023】放出制御医薬組成物は,活性成分を,数分間(即時放出に相当)〜20時間を超える期間(放出延長に相当)にわたって放出するものであると理解され,該放出は,組成物の投与後都合に合わせて遅延される方法で行われることが可能である。放出遅延医薬組成物の場合,ラグタイム(該組成物の投与と,活性成分の放出の間の時間に相当)は,30分〜8時間の期間とすることができ,以降の活性成分の放出を,上述したように即時放出又は延長放出とすることが可能である。本発明の範囲内で,活性成分の一部の即時放出と,それに続く1又はそれ以上の放出遅延のような組合わせた放出を示す医薬組成物を得ることも可能である。」(2)引用例A(甲1)等の記載ア引用例Aには,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲「23.オピオイド鎮痛剤,ならびにアルキルセルロース,アクリルおよびメタクリル酸ポリマーおよびコポリマー,シェラック,ゼイン,水添ヒマシ油,水添植物油,およびこれらの混合物からなる群から選択される1以上の疎水性物質,を含む溶融押出し配合物を,所望の治療効果を与えるのに有効な量の治療活性薬を含有し,約8-約24時間の期間,該治療活性薬の持続放出をもたらす単位用量に分割した,持続放出性医薬製剤。」「25. 経口投与に好適な持続放出性押出し医薬品からの治療活性薬の放出特性を制御する方法であって,持続放出性押出し医薬品が,治療活性薬に(1)アルキルセルロース,アクリルおよびメタクリル酸ポリマーならびにコポリマー,シェラック,ゼイン,水添ヒマシ油,水添植物油,ならびにこれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質,および(2)任意成分として,融点が30-200℃である,天然および合成ワックス,脂肪酸,脂肪族アルコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される疎水性可融性担体遅延化物質を配合し,混合物を押出すのに十分な程度軟化させるのに十分な温度に該配合物を加熱し,該加熱混合物を直径0.1-3mmのストランドとして押し出し,該ストランドを冷却し,そして,場合によっては,該11ストランドを分割して,該押出し物の多重粒子を形成させることによって製造されるものであり,制御する方法が,押出し段階中に存在する空気の量を調節することによって,押出しによって得られる押出し物の多孔度を調節することを含む方法。」(イ) 発明の詳細な説明「発明の背景本発明は,生体利用が可能な持続放出性マトリックスの医薬製剤の製造における溶融押出し技術の利用に関する。これまで,溶融押出しは即時放出性製剤の製造において使用されてきた。
製薬技術分野において,ヒトおよび動物に経口投与後,組成物中に含まれる薬理学的に活性な物質の制御された放出をもたらすような組成物を製造することは知られている。このような穏やかに放出する組成物は,薬剤が消化管の一定の部分に到達する前に吸収されるのを遅延させる。その上,このような薬剤の消化管内での持続放出は,通常の急速放出性剤型のものを投与した場合よりも長時間,血流内でのその薬剤の必要な濃度を維持する。
放出が制御された医薬剤型の各種の製造方法が提案されてきた。例えば,長期間にわたって消化管に医薬活性成分を送り込むために,直接圧縮技術,湿式顆粒化技術,カプセル化技術などが提案されてきた。
その上,当技術分野において,各種の型の持続放出性製剤が知られている。これには,製剤の被覆剤の選択的破壊によって,または薬物の放出に影響を与える特別のマトリックスを配合することによって,活性薬剤の穏やかな放出をもたらすように,特別に被覆したペレット,被覆した錠剤およびカプセルが含まれる。持続放出性製剤の中には,投与後のあらかじめ定めた期間で,一回分の用量の活性化合物をほぼ同じ量で連続して放出するものがある。
薬剤の投与後,急速放出性剤型のものの投与後に普通経験されているものよりも長期の薬理学的応答を与えることが,すべての持続放出性製剤の目的である。このような長期化された応答期間は,対応する短期作用性の即時放出性製剤によっては得られない,多くの固有の治療上の利点を与える。」(7頁3行〜25行)「発明の目的および要約12したがって,本発明の目的は,経口投与に適した持続放出性医薬製剤および溶融押出し技術を利用したこの製剤の製造方法を提供することである。
溶融押出し技術による,オピオイド鎮痛剤および製薬上許容される疎水性物質を含有する押出し医薬品を製造するための改良方法を提供することもまた,本発明の目的である。」(10頁14行〜19行)「本発明は,製薬上許容される疎水性物質,ワックス,脂肪族アルコールおよび脂肪酸から選択される遅延化剤,ならびに薬剤を含む,新規な溶融押出し経口持続放出性剤型にも部分的に関係している。
さらに特定すると,本発明の1様相は,マトリックス中に分散したオピオイド鎮痛薬を含有する押出し医薬品に関している。好ましくは,この押出し物はストランドまたはスパゲッティ状で直径約0.1-約5mmである。この押出し物を患者の経口投与用にオピオイド鎮痛単位用量に分割して8-24時間またはそれ以上の持続鎮痛効果を与える。
マトリックスは,好ましくは疎水性物質,および製剤が in vitro で水溶液にさらされるかあるいは胃および/または腸液にさらされた時に治療活性薬の放出をさらに遅延させるかまたは制御する作用を有する第2の遅延化剤(好ましくは疎水性可融性担体)を含有する。
好ましくは,疎水性物質はアルキルセルロース,アクリルおよびメタクリル酸ポリマーならびにコポリマー,シェラック,ゼイン,水添ヒマシ油若しくは水添植物油,またはこれらの混合物からなる群から選択される。
遅延化剤(疎水性可融性担体)は好ましくは,天然および合成ワックス,脂肪酸,脂肪族アルコールおよびこれらの混合物から選択される。例として,蜜ろうおよびカルナウバワックス,ステアリン酸およびステアリルアルコールが含まれる。このリストはもちろん限定するためのものではない。」(11頁2行〜20行)「本発明の押出し医薬品は,薬剤とすべてのマトリックス成分(疎水性物質,バインダーおよび(任意の)追加の賦形剤)を混合し,生成した混合物を,混合物が押出されるのに十分な程度混合物を軟化するのに必要な所望の温度に加熱した押出し機に送り込み,粘性のある加熱された集塊をスパゲッティ状ストランドとして押し出し,押出し物を凝固させ硬化させ,その後,13ストランドを所望の小片に分割することによって製造することができる。これは,例えばストランドを直径1.5mmのペレットに切断することによって実施される。好ましくは,押出し物は直径約0.1から約5mmで,約8から約24時間の期間,そのオピオイド鎮痛剤を持続放出させる。」(11頁28行〜12頁7行)「詳細な説明本発明の1様相において,持続放出性剤型は治療活性薬としてオピオイド鎮痛剤を含有する。
このような製剤において,この薬剤はアルキルセルロースまたはアクリルポリマー若しくはコポリマーなどの製薬上許容される疎水性物質を含有する溶融押出しストランド中に組み込まれる。いくつかの態様において,押出し温度を低下させるために,疎水性物質に対する可塑剤を配合物にさらに添加するのが好ましい。最も好適な可塑剤の選択は,ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させる能力に基づいて行われる。好ましい別の態様において,可塑剤の代わりに疎水性可融性担体(バイダーとしても作用することもある)が使用される。この疎水性可融性担体は好ましくは溶融押出し製剤からの治療活性薬の遅延された放出に寄与する。必要と思われるならば,当業者にとって既知の何らかの製剤賦形剤をさらに添加してもよい。」(14頁16行〜27行)「マトリックス成分本発明の押出物は少なくとも1種の疎水性材料を含む。この疎水性材料は,オピオイド鎮痛剤の持続性放出を最終処方に付与する。本発明に従って用いることができる好ましい疎水性材料には,天然もしくは合成セルロース誘導体(例えば,エチルセルロース)のようなアルキルセルロース類,アクリル及びメタクリル酸ポリマー及びコポリマー,シェラック,ゼイン,水素化ヒマシ油もしくは水素化植物油を含むワックスタイプの物質,又はそれらの混合物が含まれる。これらの例に限らず,活性剤の持続性放出を付与することが可能であり,かつ溶融する(もしくは押出しに必要な程度軟化する)薬学的に許容し得るあらゆる疎水性材料を本発明に従って用いることができる。
本発明の特定の好ましい態様において,この疎水性材料は,アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー類,メチルメタクリレート,メチルメタクリレートコポリマー類,エトキシエチルメ14タクリレート類,シアノエチルメタクリレート,アミノアルキルメタクリレートコポリマー,ポリ(アクリル酸),ポリ(メタクリル酸),メタクリル酸アルキルアミンコポリマー,ポリ(メチルメタクリレート),ポリ(メタクリル酸)(無水物),ポリメタクリレート,ポリアクリルアミド,ポリ(無水メタクリル酸),及びグリシジルメタクリレートコポリマー類を含むがこれらの限定されるものではない薬学的に許容し得るアクリルポリマーである。(18頁7行〜25行)「本発明による固体持続放出性経口剤形の調製を容易にするため,本発明のさらなる側面において,オピオイド類又はそれらの塩を持続放出性溶融押出マトリックスに組込むことを包含する本発明による固体持続放出性経口剤形の調製方法が提供される。マトリックスへの組込みは,例えば,オピオイド鎮痛剤を少なくとも1種の疎水性材料及び,好ましくは,さらなる遅延化材料(疎水性可融性担体)と配合して均質の混合物を得ることにより行うことができる。」(20頁13行〜18行)「本発明の徐放性処方は,例えば摂取されて胃液,次いで腸液に晒された場合に,治療活性剤を徐々に放出する。本発明の溶融押出処方の徐放性プロフィールは,例えば,遅延化剤,すなわち疎水性ポリマー,の量を変更すること,疎水性ポリマーに対する可塑剤の量を変更すること,さらなる成分もしくは賦形剤を含めること,製造方法変更すること等により変更することができる。」(22頁27行〜23頁3行)「実施例1-2徐放性クロルフェニラミン処方これらの例において,上記製造手順に従い,エチルセルロース及びアクリルポリマー(Eudragit RSPO)をそれぞれ遅延化剤として用いて,マレイン酸クロルフェニラミン徐放性ペレットを調製した。」(26頁21行〜25行)イ甲2には,以下の記載がある。
名称アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS商品名オイドラギットRS化学組成アクリル酸エチルとメタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸塩化トリメチルア15ンモニウムエチルの共重合体物理化学的性質無色〜白色の樹脂ようの塊または粉末。エタノール,アセトンに溶けやすく,水またはエーテルにほとんど溶けない。
特性フィルムは半透膜的な特性をもっているので,コーチングによる薬物の徐放化が可能。粉末タイプは混合することによりマトリックスとして除法化が可能。親水基含量の異なるタイプを混合することにより,溶出速度を調節できる。pH非依存型徐放性基剤。
(3)判断ア原告は,引用例Aには,治療活性薬及び疎水性物質(アクリルポリマー)からなる2成分系の製剤が開示されていると認定することはできないと主張する。
確かに,引用例Aには,オピオイド鎮痛剤及びアクリルポリマー(Eudragit RSPO)とともに,疎水性可融性担体(ステアリン酸等)を用いた製剤のみが実施例として挙げられ,治療活性薬及び疎水性物質(アクリルポリマー)からなる2成分系の製剤に係る具体的な実施例の記載はない。
しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,前記のとおり,引用例Aには,マトリックス成分の説明として「本発明の押出物は少なくとも1種の疎水性材料を含む。この疎水性材料は,オピオイド鎮痛剤の持続性放出を最終処方に付与する。本発明に従って用いることができる好ましい疎水性材料には,天然もしくは合成セルロース誘導体(例えば,エチルセルロース)のようなアルキルセルロース類,アクリル及びメタクリル酸ポリマー及びコポリマー,シェラック,ゼイン,水素化ヒマシ油もしくは水素化植物油を含むワックスタイプの物質,又はそれらの混合物が含まれる。これらの例に限らず,活性剤の持続性放出を付与することが可能であり,かつ溶融する(もしくは押出しに必要な程度軟化する)薬学的に許容し得るあらゆる疎水性材料を本発明に従って用いることができる。」と記載され,実施例として,「徐放性クロルフェニラミン処方これ16らの例において,上記製造手順に従い,エチルセルロース及びアクリルポリマー(Eudragit RSPO)をそれぞれ遅延化剤として用いて,マレイン酸クロルフェニラミン徐放性ペレットを調製した。」との記載がある。同記載によれば,引用例Aには,「疎水性材料」にはアクリルポリマーが含まれること,「疎水性材料」は治療活性薬の持続放出性を最終処方に付与すること,アクリルポリマーが「遅延化剤」として用いられることが開示されているものと認められる。また,アクリルポリマーの「遅延化剤」として機能を発揮するためには,溶融押出し可能であるか,押出しに必要な程度軟化することは必要であるが,他の成分を使用する必要性がないことも合理的に理解することができる。
イ原告は,引用例Aにおいて「遅延化剤」とされているのは「疎水性可融性担体」であるところ,「疎水性可融性担体」は,治療活性薬の放出を遅延させるか又は制御する作用を有するとともに,可塑剤としても使用されるものであり,可塑剤の選択によって薬物放出速度を低下させることができること,引用例Aの実施例で調製された医薬製剤のすべてが疎水性可融性担体であるステアリン酸ないしステアリンアルコールを含むものであることに照らすと,引用例Aに遅延化剤(疎水性可融性担体)を用いることについて「任意」ないし「好ましくは」との記載があることをもって,遅延化剤(疎水性可融性担体)を含まない医薬製剤が持続放出性を奏すると把握できるものではないと主張する。
しかし,原告の上記主張も採用できない。すなわち,前記のとおり,引用例Aには,「遅延化剤」として機能する成分として「疎水性可融性担体」成分のみならず,アクリルポリマー等の「疎水性材料(疎水性物質)」が示されるとともに,疎水性可融性担体は「任意」又は「好ましくは」添加し得る成分として記載されていることからすれば,引用例Aには疎水性可融性担体を含まず治療活性薬とアクリルポリマーの2成分からなる持続放出17性医薬製剤に係る技術が,開示されているものといえる。
また,前記のとおり,引用例Aの「発明の背景」には,「当技術分野において,各種の型の持続放出性製剤が知られている。これには,製剤の被覆剤の選択的破壊によって,または薬物の放出に影響を与える特別のマトリックスを配合することによって,活性薬剤の穏やかな放出をもたらすように,特別に被覆したペレット,被覆した錠剤およびカプセルが含まれる。」との記載があり,引用例Aの出願当時,治療活性薬に被覆を設けたり,治療活性薬とマトリックス材料を配合したりすることにより,持続放出性医薬製剤を製造することは,当業者において広く知られていた技術であったと認められる。そうすると,引用例A記載の発明は,治療活性薬とマトリックス材料を単に配合するのではなく溶融押出しするという製造工程を経由するものではあるが,マトリックス材料の中に治療活性薬を分散させ,治療活性薬が放出し難いようにマトリックス材料を存在させるという点において,従来技術と共通する。したがって,当業者であれば,引用例Aに具体的な実施例の記載がなくても,その持続放出性という機能が示されていることを合理的に理解することができるといえる。
以上によれば,引用例Aには,オピオイド鎮痛剤等の治療活性薬とアクリルポリマーの2成分からなる持続放出性医薬製剤が,アクリルポリマーの遅延化作用により薬物を持続的に放出することが可能であるという有用性,すなわち用途及び性質について,当業者が理解できるように合理的に記載されていることが認められる。
ウ原告は,引用例Aは,発明として未完成であり,また実施可能要件を欠くと主張する。しかし,本件においては,引用例Aの記載に基づいて,その開示内容を認定できるのであって,引用例Aが発明に当たるか否か,実施可能要件を充足しているか否かは,結論に影響を与えるものでなく,この点の原告の主張は採用できない。
18また,原告は,引用例Aに係る出願人の出願過程での応答を参酌すると,審決の引用発明の内容の認定は誤りであると主張する。しかし,上記のとおり,引用例Aの客観的な記載に基づいて,引用発明の内容を認定することができる以上,原告のこの点の主張も失当である。
さらに,原告は,引用発明の内容ついて,甲2に記載された事項に基づいて認定したと主張する。しかし,前記のとおり,引用発明の内容は,引用例A及び技術常識に基づいて,客観的に認定することができるものであって,この点の原告の主張も採用の限りでない。
原告は,審決には,本願発明は可塑剤又は遅延剤を使用しないのに対し,引用発明は可塑剤ないし遅延剤として使用し得る疎水性可溶性担体を使用する点で相違がある(相違点3)と主張するが,上記判断から明らかなとおり,審決に相違点3を看過した誤りはない。
エ原告は,審決には,本願発明は「放出制御」であるのに対し,引用発明は「持続放出性」であるとの相違点4を看過した誤りがある旨主張する。
しかし,原告のこの点の主張も,以下のとおり失当である。
本願発明の明細書【0023】には,「放出制御医薬組成物は,活性成分を,数分間(即時放出に相当)〜20時間を超える期間(放出延長に相当)にわたって放出するものであると理解され,該放出は,組成物の投与後都合に合わせて遅延される方法で行われることが可能である。放出遅延医薬組成物の場合,・・・活性成分の放出を,上述したように即時放出又は延長放出とすることが可能である。」との記載があり,本願発明の「放出制御」は,引用例Aの「持続性放出」を含み,その用途ないし性質において共通する。
したがって,審決には,医薬組成物の用途ないし性質について,本願発明は「放出制御」であるのに対し,引用発明は「持続放出性」であるとの相違点4を看過した誤りはない。
192取消事由3(容易想到性の判断の誤り)について原告は,本願発明は,活性成分をその投与都合に合わせて,数分間ないし20時間を超える期間にわたり放出するよう制御する医薬組成物を提供する課題について,これを可塑剤や遅延剤を添加せずに活性成分の放出を使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製造に用いる技術のみによって解決したとの構成は,引用発明に基づいて容易に到達することができない旨主張する。
しかし,この点についての原告の主張は,以下のとおり理由がない。
すなわち,本願発明のうち治療活性薬の放出の制御方法には限定がなく,引用例Aの発明における「持続放出」と,実質的に相違するものではない。のみならず,引用例Aには,疎水性可融性担体を使用せず,遅延化剤としてアクリルポリマーを用いる2成分系の持続放出性医薬製剤に係る発明が記載されている上,「経口投与に好適な持続放出性押出し医薬品からの治療活性薬の放出特性を制御する方法であって,・・・制御する方法が,押出し段階中に存在する空気の量を調節することによって,押出しによって得られる押出し物の多孔度を調整することを含む方法」が請求項25として記載されていること,「本発明の徐放性処方は,例えば摂取されて胃液,次いで腸液に晒された場合に,治療活性剤を徐々に放出する。本発明の溶融押出処方の徐放性プロフィールは,例えば,遅延化剤,すなわち疎水性ポリマー,の量を変更すること,疎水性ポリマーに対する可塑剤の量を変更すること,さらなる成分もしくは賦形剤を含めること,製造方法変更すること等により変更することができる」と記載されていること,活性成分の放出について,使用するポリメタクリラートの特性,活性成分に対するその量,及び該組成物の製造に用いる技術によってのみ制御されるとの構成が示されていることに照らすならば,本願発明の相違点2に係る構成は,引用例Aに,実質的に開示されているといえる。さらに,遅延化剤としてアクリルポリマーを用いる2成分による方法は,3成分を用いる方法に比べて使用20する成分数が少ないのであるから,活性成分と相互作用し得る賦形剤の使用を回避するとともに,簡単かつ経済的な方法で固形の放出制御医薬組成物を得られるという本願発明の効果は,引用例Aに記載された2成分系の持続放出性医薬製剤を選択した結果,当然に得られた効果にすぎないというべきである。
なお,審決は,前記1のとおり,相違点3,4を看過した違法はなく,原告の相違点3,4が存在することを前提とした容易想到性の判断に関する主張は,主張自体失当である。
したがって,甲2の記載について検討するまでもなく,本願発明は,周知技術を勘案し,引用例Aに記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたと認められ,これと同旨の審決の判断に誤りはない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。
3結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に審決にはこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
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