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関連審決 不服2002-11671
関連ワード 特許を受ける権利 /  新規性 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  周知技術 /  技術常識 /  登録実用新案 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  侵害 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  国際出願 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 589号 審決取消請求事件
原告 株式会社ビーエムエフ
訴訟代理人弁理士 鈴木弘男
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 木原裕,田中弘満,大橋信彦,小曳満昭,井出英一郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/10/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-11671号事件について平成15年11月25日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 本件特許出願である平成10年特許願第529870号「圧力式指紋センサを用いた錠及びスイッチ」は,株式会社エニックスによって1997年(平成9年)12月26日に国際出願されたものである。
本件特許出願については,平成14年5月29日に拒絶査定があり,これに対する不服審判事件(不服2002-11671号)において,平成15年11月25日に審判不成立の審決があり,その謄本は同年12月9日原告に送達された。
なお,原告は,平成14年10月1日本件特許出願について特許を受ける権利を譲り受け,同月4日その旨特許庁長官に届け出た。
2 本願発明(請求項1に係る発明)の要旨(平成14年7月26日付け手続補正による特許請求の範囲請求項1の記載。他に請求項2〜16もあるが,省略)(a)解錠対象の動作をロックする錠前部と,(b)該錠前部による解錠対象のロック解除動作を規制する動作規制機構又は動作規制電子回路と,(c)指紋の山と谷による押圧力の差により指紋パターンを検出する圧力式指紋センサと,(d)該圧力式指紋センサにより検出した指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化して指紋コードを作成する指紋コード作成部と,(e)該指紋コード作成部によりあらかじめ作成された指紋コードを指紋コード登録プログラムにより登録指紋コードとして登録し保持する記憶装置と,(f)前記圧力式指紋センサによって新たに検出された指紋パターンに基づき前記指紋コード作成部により作成された指紋コードと前記記憶装置に登録保持されている登録指紋コードとが合致するか否かを指紋照合プログラムにより判断する照合部と,(g)該照合部によって前記両指紋コード同士が合致すると判断されたとき,前記動作規制機構又は前記動作規制電子回路の規制動作を解除をする規制解除部とを備えたことを特徴とする圧力式指紋センサを用いた錠。
3 審決の理由の要点 (1) 刊行物記載の発明 (1)-1 刊行物1(本訴甲1) 原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願前に頒布された刊行物である特開平5-233896号(刊行物1)には,次のことが記載されている。
「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は,機密文書などの保管室や重要な情報を管理しているコンピュータルームなど重要施設への入退出管理のセキュリティ向上に対応して,入退出者の確認手段として,指紋による指の特徴を利用した個人識別を行い,識別結果により施設の扉を開閉制御することにより,高いセキュリティを実現した入退出管理装置に関する。」,「【0015】 図1において,1は指紋から指の特徴を読み取る指特徴入力部である。3は指特徴入力部1で読み取った特徴情報を指特徴記憶部に伝え,指特徴入力部1での特徴読み取り状況を状態表示に伝え,カード通信部に指特徴記憶部に記憶している特徴情報を伝えるカード制御部である。2はカード制御部3から伝えられた特徴情報を記憶している指特徴記憶部である。・・・5はカード制御部3から伝えられた指の特徴情報などを通信するカード通信部である。・・・8は指特徴入力部1,指特徴記憶部2などで構成されるIDカードユニットである。9はカード通信部5と指の特徴情報などを通信し,管理制御部に通信内容を伝える管理通信部である。10は入退出の管理該当者の指の特徴を記録管理している指特徴管理部である。11は指特徴管理部10に記録されている特徴情報と管理通信部9から伝えられた特徴情報とを比較して入退出者を識別し,扉の開閉指示を扉開閉部に伝え,入退出情報をデータ管理部に伝える管理制御部である。・・・15は管理通信部9,指特徴管理部10などによって構成される入退出管理ユニットである。13は管理制御部11からの扉開閉指示により,扉の開閉を行う扉開閉部である。・・・」,「【0017】・・・入退出者が指特徴入力部1に押しあてると指の特徴が読み取られる(ステップ24〜25)。指の特徴が正常に読み取られると状態表示部4のOK表示が点灯し,指特徴記憶部2に読み取られた指の特徴が記憶され,IDカードユニット8の動作が開始される(ステップ26〜29)。ステップ33で入退出者が施設の扉の前に近付くとセンサー14が検知し,管理制御部11に入退出者が近付いたことを知らせる。ステップ34で入退出管理ユニット15の管理通信部9はIDカードユニット8のカード通信部5に指特徴情報の送信を要求する。カード通信部5は指特徴記憶部2の指特徴情報をカード通信部9に送信する。指特徴情報の通信が行われると管理制御部11によって通信された指特徴情報と指特徴管理部10に記録されている入退出管理用指特徴情報と比較し,指特徴情報が正常か調べる(ステップ35〜36)。
ステップ37で指特徴情報が正常なら管理制御部11が扉開閉部13に扉を開ける指示し,扉開閉部13により,扉が開く。入退出者が扉を通過したのをセンサー部14が検知すると,管理制御部11が扉開閉部13に扉を閉める指示し,扉開閉部13により,扉が閉まる(ステップ38〜39)。・・・」。
刊行物1の上記の記載及び図面の記載並びに技術常識からみて,刊行物1には,「指紋パターンを検出し,検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴入力部1と, 指特徴入力部1によりあらかじめ作成された指特徴情報を登録し保持する指特徴管理部10と, 前記指特徴入力部1によって新たに検出された指紋パターンに基づき前記カード制御部3により作成された指特徴情報と前記指特徴管理部10に登録保持されている登録指特徴情報とが合致するか否かを判断する管理制御部11と, 該管理制御部11によって前記両指特徴情報同士が合致すると判断されたとき,扉開閉部の規制動作を解除をする扉開閉部13 とを備えた指特徴入力部1を用いた入退出管理装置。」の発明が記載されていると認められる。
(1)-2 刊行物2(本訴甲2) 特開昭63-204374号(刊行物2)には,次のことが記載されている。
「(産業上の利用分野) 本発明は圧力式指紋入力装置に関する。」(1頁右下欄下5ないし4行),「(従来技術)・・・光学式検出法による指紋検出装置は据置式の指紋検出機としては問題ないが,指紋を個人識別の手段として利用することが考えられる部屋のドアや車のドアのキー,印鑑証明,ICカード,特殊機器の操作パネルなどについては小型で低消費電力が不可欠の条件であるにもかかわらず,上述した光学式の指紋検出装置は光源及びその電源やレンズなどを含む光学系が必要となるため厚くなり大型化するので上記した用途に不向きであるとともにCCDなどの高価な素子が必要になるためコスト高となり普及の妨げとなるおそれがある。また,検出技術の上から見ても,指先を押し付けたときの押圧力の加減や指先の汚れあるいは色などによって検出結果の信頼性が低下するという問題もある。」(1頁右下欄下3行ないし2頁右上欄11行),「(発明の目的及び構成) 本発明は上記の点にかんがみてなされたもので,簡潔,薄形かつ安価な構成でしかも少ない消費電力で指紋を入力することを目的とし,この目的を達成するために,指先を押し付けたときの指紋パターンによる圧力の強さに応じて抵抗値が変化する感圧シートと,互いに交差してマトリクスを形成するように絶縁して配置された複数本の第1及び第2の走査用電極を有するマトリクス電極板とを積層して指紋入力板を構成し,第1及び第2の走査用電極を所定の順序で走査し,走査信号が印加された第1の走査用電極と第2の走査用電極との交点を中心とする感圧シート部位の抵抗値を電気的に取り出すことにより指紋パターンを圧力的に検出するように構成したものである」(2頁右上欄下4行ないし左下欄11行)。
(1)-3 刊行物3(本訴甲3) 同じく,特開平3-53384号(刊行物3)には,次のことが記載されている。
「1)入力された指紋画像とあらかじめ登録されている指紋画像とが同一指紋であるか否かを判定する際に使用する指紋紋様特徴を,登録指紋から自動抽出後,登録し,照合時に用いる特徴ファイルを作成する特徴抽出装置において・・・指紋画像入力部と・・・A/D変換部と・・・画像入力制御部と・・・画像記憶部と・・・画像出力部と・・・中央処理部,プログラムメモリ,作業メモリ,画像処理プロセッサ及び外部インターフェースを含み,登録指紋に含まれる特徴点の位置座標,紋様方向,近傍特徴点間に存在する隆線数や特徴点の種別等の特徴を自動抽出する特徴抽出部と;抽出された特徴を格納するファイルと;・・・出力部とからなり・・・特徴ファイル作成を実行することを特徴とする特徴抽出装置。」(特許請求の範囲),「[産業上の利用分野] 本発明は,指紋照合装置に関し,特に,入力指紋と登録指紋とを指紋紋様特徴によって,その同一性の有無を判別し,個人識別を行なう指紋照合処理において用いられる特徴ファイルを自動作成する特徴抽出装置に関する。」(1頁右下欄下2行ないし2頁左上欄4行),「[発明が解決しようとする課題] しかし,採取指紋と登録指紋との照合に用いるために特徴を抽出して特徴ファイルを作成する特徴抽出装置は,大規模かつ高価格なものであった。本発明の課題は,簡便で低価格な特徴抽出装置を提供することにある。」(2頁右上欄1ないし6行),「本実施例は,・・・指の濃淡指紋画像を光学的に採取し光電変換して光電変換信号を得る指紋画像入力部100と,光電変換信号を2次元量子化画像データに変換するA/D変換部101と,・・・画像入力制御部102と,採取された指紋画像の2次元量子化画像データを記憶する画像記憶部103と,・・・特徴抽出部109と,抽出された特徴を格納するファイル113と,特徴ファイル作成時の情報を入力するための入力部111・・・とから成っている。特徴抽出部109は,・・・プログラムを格納するプログラムメモリ106と,プログラムにより制御される中央処理部105と・・・で構成されている。作成された特徴ファイルは入力部111より入力されたIDコードを割り当てられ,ファイル113に格納される。」(2頁左下欄下4行ないし3頁左上欄1行),「第2図は,本実施例における特徴点(以下,マニューシャと呼ぶ)を含む指紋紋様パターン,第3図は,端点,分岐点の方向,第4図は各マニューシャに関する特徴点リストの概略構成をそれぞれ示す。第2図〜第4図において,指紋の特徴は,端点201や分岐点202のマニューシャMiの位置座標(Xi,Y i),紋様方向Di204,近傍マニューシャとのリレーション(r1,r 2,r 3,r 4)203及びマニューシャの種別qiで第4図の如く表わされ得る。これら一連のデータを単位として,一本の指内に複数個存在するマニューシャMiをリスト状にして表現する。」(3頁左上欄下2行ないし右上欄11行)。
(2) 対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,本願発明の「錠前部」,「動作規制機構又は動作規制電子回路」及び「規制解除部」は,その機能からみて,「扉開閉部」ということができ,本願発明の「指紋コード」は「指特徴情報」の一種であり, 刊行物1記載の発明の「指特徴入力部1」,「指特徴管理部10」,「管理制御部11」及び「入退出管理装置」は,本願発明の「指紋センサ及び(指特徴情報)作成部」,「記憶装置」,「照合部」及び「錠」に,それぞれ対応するから, 両者は,「指紋パターンを検出する指紋センサと, 該指紋センサにより検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴情報作成部と, 該指特徴情報作成部によりあらかじめ作成された指特徴情報を登録し保持する記憶装置と, 前記指紋センサによって新たに検出された指紋パターンに基づき前記指特徴情報作成部により作成された指特徴情報と前記記憶装置に登録保持されている登録指特徴情報とが合致するか否かを判断する照合部と, 該照合部によって前記両指特徴情報同士が合致すると判断されたとき,扉の規制動作を解除をする扉開閉部とを備えた指紋センサを用いた錠。」である点で一致し,次の各点で相違する。
(相違点1) 本願発明の扉開閉部が,「(a)解錠対象の動作をロックする錠前部と,(b)該錠前部による解錠対象のロック解除動作を規制する動作規制機構又は動作規制電子回路と,(g)照合部によって両指紋コード同士が合致すると判断されたとき,前記動作規制機構又は前記動作規制電子回路の規制動作を解除をする規制解除部」からなるのに対して,刊行物1記載の扉開閉部はそのような限定のない点。
(相違点2) 本願発明が,「(c)指紋の山と谷による押圧力の差により指紋パターンを検出する圧力式指紋センサと,(d)該圧力式指紋センサにより検出した指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化して指紋コードを作成する指紋コード作成部と,(e)該指紋コード作成部によりあらかじめ作成された指紋コードを指紋コード登録プログラムにより登録指紋コードとして登録し保持する記憶装置と,(f)前記圧力式指紋センサによって新たに検出された指紋パターンに基づき前記指紋コード作成部により作成された指紋コードと前記記憶装置に登録保持されている登録指紋コードとが合致するか否かを指紋照合プログラムにより判断する照合部」とからなるのに対して,刊行物1記載の発明は,指紋センサ及び指紋特徴作成部(指特徴入力部1が対応。以下同様。),記憶装置(指特徴管理部10),照合部(管理制御部11)からなるものの,各部が本願発明のように限定した構成がない点。
(3) 審決の判断(相違点1について) 刊行物1には,錠前部や動作規制機構又は動作規制電子回路や規制解除部は明記されていないが,刊行物1に記載された錠(入退出管理装置)は,何らかの手段で,扉の開閉を規制し,指紋照合によってその規制を解除することは明らかである。
また,指紋照合による錠(入退出管理装置)において,錠前部を設けることは周知であり(特開平7-325949号公報(電気錠16ないし18),登録実用新案第3032267号公報(錠本体30)等参照),動作規制機構及び規制解除部を設けることも,当該技術分野において周知技術にすぎない(例えば,特開昭62-101777号公報記載の「パワーリレーユニット14」及び「アンロックアクチュエータ16」は本願発明の「動作規制機構又は動作規制電子回路」及び「規制解除部」にそれぞれ相当する)。そして,指紋コードにより照合することも,上記特開昭62-101777号公報(2頁右下欄下4行ないし3頁左上欄5行)等に記載されているように周知である。
したがって,刊行物1記載の発明において,上記周知技術を採用して,本願発明の相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
(相違点2について) 刊行物2には,本願発明と同様に,光学式の指紋センサ(指紋検出装置)の問題点を解消し,簡潔,薄型かつ安価で,指先の汚れあるいは色などによって検出結果の信頼性が低下しないことを目的として,圧力式指紋センサ(圧力式指紋入力装置)を採用したことが記載され,上記刊行物3には,光学式の指紋センサではあるものの,簡便で低価格な指紋センサを提供することを目的として,マニューシャを利用した指紋の特徴抽出装置が記載されている。
また,該装置を実行するに当たって,各種データをコード化すること及びプログラムにより各種作業を実行することは,コンピュータ等の分野において周知である(例えば,刊行物3には,プログラムを格納するプログラムメモリ106が記載されている)。
したがって,刊行物2記載の圧力式指紋センサ及び刊行物3記載のマニューシャを利用した指紋の特徴抽出装置を刊行物1記載の錠(入退出管理装置)にそれぞれ採用し,周知技術を考慮した上で,本願発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
さらに,刊行物1ないし3及び周知技術を組み合わせて本願発明としたことによる相乗効果も,個々の刊行物に記載された目的効果から当業者であれば予期できる範囲内のものと認められる。
(4) 審決のむすび 以上のとおりであるから,本願発明は刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本件出願は拒絶をすべきものである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(刊行物1記載の発明認定の誤り,一致点,相違点認定の誤り) (1) 刊行物1記載の発明の認定について 審決は,刊行物1記載の発明が,「指紋パターンを検出し,検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴入力部1」という構成を備えていると認定しているが,誤りである。
刊行物1の審決摘記箇所には,「指の特徴」を検出すること,及び,検出した「指の特徴」から「指の特徴情報」を作成することが記載されているだけであり,「マニューシャポイント」又は「特徴点」を含む,個々人固有の縞模様である「指紋パターン」を検出すること,検出した「指紋パターン」から指特徴情報を作成することは,記載されていない。
刊行物1の【0026】には,「指紋情報をそのまま記憶するのではなく,特徴だけを記憶しており」と記載されているが,指紋検出により得られる情報つまり指紋情報には,@本願発明で利用する特徴点(マニューシャポイント)情報,A指紋画像を画像処理(抽象化や圧縮)して得られるパターン(空間領域)情報,B指紋模様パターンをスライスした断面を波形とみなし,波形のスペクトルを求めて得られるスペクトル情報などがあるから,刊行物1の記載をもって,「指紋情報」が「指紋パターン」であると断定することはできない。
指の特徴としては,指の輪郭,指の第1関節と第2関節の位置,第1関節と第2関節の距離,インピーダンス,周波数など様々なものが考えられる。被告は,刊行物1でいう「指の特徴」は「指紋」から読み取られるものであるから,原告主張のようなものでないと主張するが,「インピーダンス」や「周波数(スペクトル情報のこと)」は明らかに指紋から読み取られる情報であるから,被告の主張は誤りである。
(2) 一致点の認定について 審決は,本願発明の「指紋コード」は「指特徴情報」の一種であり,刊行物1記載の発明の「指特徴入力部1」が,本願発明の「指紋センサ及び(指特徴情報(正しくは「指紋コード」))作成部」に,それぞれ対応するとした上で,本願発明と刊行物1記載の発明とが,「指紋パターンを検出する指紋センサ,該指紋センサにより検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴情報作成部」を備えている点で一致すると認定しているが,誤っている。
本願発明において,「指紋コード」とは,「該圧力式指紋センサにより検出した指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化して」なるものである。
刊行物1には,「指特徴情報」がどのようなものであるかについて記載されていないのであるから,本願発明における「指紋コード」が,刊行物1記載の発明における「指特徴情報」の一種であると認定することはできないし,「指紋コード」が「指特徴情報」でない以上,刊行物1記載の発明における「指特徴入力部1」が,本願発明における「指紋センサ及び指紋コード作成部」に対応すると認定することもできない。
(3) 相違点2の認定について 刊行物1記載の発明における「指特徴入力部1」が,本願発明における「指紋センサ及び指紋コード作成部」に対応するとした上で,相違点2を認定しているが,これも,上記と同じ理由により誤りである。
2 取消事由2(相違点1の判断の誤り) 審決は,「指紋コードにより照合することも上記特開昭62―101777号(2頁右下欄下4行ないし3頁左上欄5行)等に記載されているように周知である。」と認定したが,誤りである。
周知技術を示すものとして審決が挙げた特開昭62―101777号(甲6)に開示されているキーコードは,本願発明における指紋コード(指紋パターンから抽出した指紋のマニューシャポイント(特徴点)の相対位置をコード化して得られる指紋コード)とは異なるものである。
審決は,指紋から作成されたキーコードデータを本願発明の指紋コードと同一視し,キーコードによる照合が周知であるから指紋コードによる照合も周知である,と誤認している。
3 取消事由3(相違点2の判断の誤り) 審決は,刊行物3(甲3)に記載された指紋画像入力部100が,「光学式」であるとした上で,「刊行物2記載の圧力式指紋センサ及び刊行物3記載のマニューシャを利用した指紋の特徴抽出装置を刊行物1記載の錠(入退出管理装置)にそれぞれ採用し,周知技術を考慮した上で,本願発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。」と判断したが,誤りである。
刊行物2には圧力式指紋センサが開示されているが,マニューシャポイントや特徴点のことは全く開示されていない。したがって,刊行物3に,マニューシャを利用した指紋の特徴抽出装置が記載されているからといって,刊行物2記載の発明と刊行物3記載の発明を組み合わせる動機付け(接点)がない。
本件出願時においては,刊行物3に記載された光学式指紋センサによって,指紋パターンからマニューシャを抽出する技術が存在していたものの,圧力式指紋センサによって,マニューシャを抽出する技術は存在しなかったのであるから,光学式指紋センサと圧力式指紋センサとが,いずれも指紋センサであるからといって,刊行物2記載の発明と刊行物3記載の発明を組み合わせ,圧力式指紋センサにより検出した指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出することを想到することは当業者にとって容易でない。
4 取消事由4(審理手続の瑕疵) 本件出願には,請求項1に係る本願発明のほかに請求項2〜16に係る発明もある。しかるに,審決は,請求項2〜16に係る発明について特許性の判断を示していない。審判請求に当たっては,請求項の数に応じた審判請求費用を納付しているのであるから,従属請求項である請求項2〜8については,まだ容認できるとしても,請求項9は独立項である以上,特許性についての判断が示されるべきである。
請求項1以外の残りの請求項についての判断を示さなかった審決は,適正を欠く。
当裁判所の判断
1 取消事由1(刊行物1記載の発明認定の誤り,一致点,相違点認定の誤り)について (1) 本願発明の要旨の(c)と(d)の構成によれば,本願発明において,「指紋パターン」とは,指紋に山と谷とが存在することにより現れる縞模様を検出してなる模様(パターン)データであると認められ,また,この「指紋パターン」は,複数の特徴点(マニューシャポイント)を抽出するための基データとなるものであると認められる。
(2) 刊行物1(甲1)には,「図1において,1は指紋から指の特徴を読み取る指特徴入力部」(【0015】),「入退出者が指特徴入力部1に押しあてると指の特徴が読み取られる」(【0017】)と記載され,また,「指紋を使った個人認証では,指紋情報をそのまま記録管理する場合があり,犯罪捜査への利用やプライバシーの侵害などの問題があるが,本発明によれば,指紋情報をそのまま記録するのではなく,特徴だけを記憶しており,この特徴だけでは元の指紋は再現できない情報となっており,」(【0026】)と記載されている。
刊行物1のこの記載において,「指紋情報をそのまま記録するのではなく」とあることからすると,「指紋情報」とは,指紋の山と谷とからなる模様(パターン)を意味しているものと解される。しかし,刊行物1の上記記載からすると,指特徴入力部により読み取られる指の特徴とは,指紋情報そのものではなく,指紋の特徴情報であると認められるし,刊行物1には,指紋の特徴情報がいかなるものであるのかは記載されておらず,また,指紋の特徴情報が,どのように作成されるものであるかについても記載がない。
そうすると,刊行物1には,指特徴情報を作成する手段が具体的に明らかにされていないということができ,審決が,刊行物1記載の発明は,「指紋パターンを検出し,検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴入力部1」という構成を備えていると認定したのは首肯することができない。
(3) しかし,審決は,相違点2を認定した上で,この相違点について,「刊行物2記載の圧力式指紋センサ及び刊行物3記載のマニューシャを利用した指紋の特徴抽出装置を刊行物1記載の錠(入退出管理装置)にそれぞれ採用し,周知技術を考慮した上で,本願発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。」と判断している。
すなわち,審決は,相違点2の認定において,本願発明の構成要件である「(c)指紋の山と谷による押圧力の差により指紋パターンを検出する圧力式指紋センサと,(d)該圧力式指紋センサにより検出した指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化して指紋コードを作成する指紋コード作成部」については,刊行物1記載の発明には限定した構成がないと認定した上で,相違点2の想到容易性を判断しており,上記(2)で説示したような刊行物1記載の発明との間の相違点を前提において結論を導いている。
(4) したがって,刊行物1記載の発明の構成を認定するに際しての審決の説示中には,「指紋パターンを検出し,検出した指紋パターンから指特徴情報を作成する指特徴入力部1」という構成を備えているとした認定部分があって,認定部分は首肯できないのであるが,そのことをもって結論に影響のある誤りがあるとすることはできない。取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点1の判断の誤り)について 確かに,周知技術を示すものとして審決が挙げた特開昭62―101777号(甲6)には,「73はイメージセンサ72からの信号を入力する指紋パターン分析手段で,例えば,マイクロコンピュータが用いられ,指紋の大きさ,輪郭,渦の有無,縞の数,縞の流れ方等の特徴点を抽出し」(2頁左下欄18行〜右下欄1行)と記載されており,この記載からすると,甲6に開示されたキーコードが,本願発明でいう「指紋コード」(指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化したもの)であると認めることはできない。
しかし,審決の認定した相違点1は,「本願発明の扉開閉部が,「(a)解錠対象の動作をロックする錠前部と,(b)該錠前部による解錠対象のロック解除動作を規制する動作規制機構又は動作規制電子回路と,(g)照合部によって両指紋コード同士が合致すると判断されたとき,前記動作規制機構又は前記動作規制電子回路の規制動作を解除をする規制解除部」からなるのに対して,刊行物1記載の扉開閉部はそのような限定のない点。」というものである。「圧力式指紋センサによって新たに検出された指紋パターンに基づき前記指紋コード作成部により作成された指紋コードと前記記憶装置に登録保持されている登録指紋コードとが合致するか否かを指紋照合プログラムにより判断する照合部」を有しているか否かについては,審決は相違点2の一部として認定している。
このように,審決は,相違点1として,扉開閉部の構成の相違を認定しているのであり,相違点1についての審決の判断も,扉開閉部の構成の想到容易性を述べたものである。そうすると,審決の上記周知技術の認定は,「指紋コード」という表現を用いているものの,「指紋コード」が,本願発明でいう「指紋コード」(指紋パターンからマニューシャポイントと呼ばれる複数の特徴点を抽出し,各マニューシャポイントの相対位置を指紋コード作成プログラムによりコード化したもの)であるとの前提でしたものでない。
そして,照合部が照合する「指紋の特徴データ」が,互いに合致するときに,扉のロック解除動作規制手段を解除することは,特開昭62―101777号(甲6)により周知であると認められるから,審決の相違点1の判断に誤りはない。取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(相違点2の判断の誤り)について (1) 刊行物2(甲2)には,「指先を押し付けたときの指紋パターンによる圧力の強さに応じて抵抗値が変化する感圧シート」(2頁左下欄1〜3行),「この状態で指先を指紋入力板1に軽く押しつけると,感圧シート1cが指紋のパターンに応じて押圧され,押圧点は抵抗値が減少する。」(3頁右上欄15〜17行),「指紋パターンによって強く押圧された部位の抵抗値は小さく,強く押されない部位の抵抗値は大きい。従って点Aにおける電圧値(アナログ指紋データ)がその部位に加えられた力の大きさを表わす。」(3頁左下欄10〜14行),「このアナログ指紋データはA/D変換器8によりデジタル信号に変換され(F-3)・・・取り込み(F-5),・・・その取り込んだ指紋データをプロセッサ2を介してRAM4に転送し記憶する(F-7)」(3頁左下欄14行〜右下欄1行),「こうして指紋入力板1上に押し付けられた指先の全指紋データがRAM4に入力される。
第5図はX方向に走査することにより得られた感圧シート1cの各部位の抵抗値を表わしている。図に示された抵抗曲線の谷の部分Bが指紋パターンの山の部分に相当し,抵抗曲線の山の部分Cが指紋パターンの谷の部分に相当する」(3頁右下欄8〜15行),「指紋データを用いて同一人か否かの判定をするには,一旦記憶してある指紋データを2値化するなどの前処理が必要になり,指紋の特徴に着目して指紋パターンの類否を判定する。」(4頁右下欄7〜10行)と記載されている。
これらの記載からすると,刊行物2記載の発明は,指紋の山,谷の部分を,感圧シートを用いて,これらの部分の押圧力の差に基づく電圧値(アナログ指紋データ)変化として検出し,かかる電圧値(アナログ指紋データ)を,デジタル信号に変換した上で,全指紋データとして記憶装置に記憶しておき,指紋データを用いて同一性を判定する際に,記憶された全指紋データに基づいて指紋の特徴を抽出するようにしたものと認められる。
(2) 一方,刊行物3(甲3)には,「本実施例は,・・・指の濃淡指紋画像を光学的に採取し光電変換して光電変換信号を得る指紋画像入力部100と,光電変換信号を2次元量子化画像データに変換するA/D変換部101と,・・・画像入力制御部102と,採取された指紋画像の2次元量子化画像データを記憶する画像記憶部103と,・・・特徴抽出部109と,抽出された特徴を格納するファイル113と,特徴ファイル作成時の情報を入力するための入力部111・・・とから成っている。特徴抽出部109は,・・・プログラムを格納するプログラムメモリ106と,プログラムにより制御される中央処理部105と・・・で構成されている。作成された特徴ファイルは入力部111より入力されたIDコードを割り当てられ,ファイル113に格納される。」(2頁左下欄下4行ないし3頁左上欄1行),「指紋画像入力部100は,透明体上に載置された指に対して,光源からの光により生じる光学的境界条件を利用して,ITV・・・等の撮像装置により,指紋紋様パターンの光電変換画像を得る装置である。」(3頁左上欄2〜6行),「画像入力制御部102は,指紋画像入力部100におけるITVより繰り返し取り込まれる指紋画像中の所定位置の画素の濃淡値の時間変化を調べ,画素の濃淡値があらかじめ定められた閾値以上となるまで取り込みを繰返し,閾値を超えた時,指紋画像を自動採取する。」(3頁左上欄9〜14行),「このようにして得られた多値の2次元量子化画像データは画像記憶部103に記憶される。」(3頁左上欄17〜18行),「第2図は,本実施例における特徴点(以下,マニューシャと呼ぶ)を含む指紋紋様パターン,第3図は,端点,分岐点の方向,第4図は各マニューシャに関する特徴リストの概略構成をそれぞれ示す。第2図〜第4図において,指紋の特徴は,端点201や分岐点202のマニューシャMiの位置座標(X i,Y i),紋様方向D i204,近傍マニューシャとのリレーション(r 1,r 2,r3,r 4)203及びマニューシャの種別q iで第4図の如く表わされ得る。これら一連のデータを単位として,一本の指内に複数個存在するマニューシャMiをリスト状にして表現する。これらの詳細な定義及び検出法は,特開昭55-138174号公報に記述されている。」(3頁左上欄下2行ないし右上欄13行),「ステップ1では指紋画像の自動採取を行う。・・・このようにして得られた2次元量子化画像データは,画像記憶部103に記憶される。・・・ステップ2では,特徴抽出部109において,前記した特開昭55-138147号公報に基づいた特徴抽出処理を行う。」(3頁右上欄16行〜左下欄7行),「本実施例においては,画像記憶部103に記憶される画像は多値としたが,公知の方法により二値化を施された二値画像を記憶し,その画像を処理するようにしても,処理の本質は変わらない。」(3頁左下欄16〜20行),「自動採取された生体指からの指紋画像上のマニューシャの位置座標,紋様方向,リレーション及びマニューシャの種別を自動検索し,マニューシャリストへ格納する特徴抽出処理をパーソナルコンピュータシステムで実現する」(3頁右下欄2〜7行)との記載がある。
(3) これらの記載からすると,刊行物3記載の発明は,指紋紋様パターンを,ITV等の撮像装置を用いて,指紋紋様の濃淡の差に基づいた光電変換信号として検出し,かかる光電変換信号を,2次元量子化画像データに変換した上で,その全指紋紋様データを記憶装置に記憶し,記憶された全指紋紋様データから,マニューシャの特徴抽出処理を行い,特徴リストを作成するようようにしたものと認められ,特徴リストが,指紋の同一性の照合に用いられることは明らかである。
すなわち,刊行物3は,指紋紋様データの検出手段については「光学式」であるものの,デジタル化した全指紋紋様データからマニューシャと呼ばれる特徴点を抽出することによって,指紋の類比を判定することを示しているということができる。
刊行物2の「指紋パターンの山,谷の押圧力の差に基づいた全指紋データ」,刊行物3の「指紋紋様の濃淡の差に基づいた全指紋紋様データ」は,いずれも,指紋の縞模様をあるがままに検出し,検出結果をデジタルデータとして記憶したものであるから,これらのデータ中には,マニューシャ部分と呼ばれる特徴点に関する情報も含まれていることは明らかである。
(4) 以上のとおり,刊行物2記載の発明も,刊行物3記載の発明も,入力部により得られるデジタル化した全指紋データ(全指紋紋様データ)に基づき,この全指紋データ(全指紋紋様データ)から,指紋の特徴点を抽出することにより,指紋の類否を判定するというものである。両者は,照合データを作成するに当たり,あらかじめ,検出しておいたデジタル化全指紋データ(全指紋紋様データ)から特徴点を抽出するという手段を採用する点で軌を一にするものであるから,両者を結びつける動機付けは十分にある。したがって,感圧シートを用いて検出した全指紋データ(マニューシャ部分に関する情報を含む。)から特徴点を抽出するという刊行物2記載の発明において,特徴点を抽出する具体的手段として,刊行物3記載の発明の,全指紋紋様データからマニューシャを抽出するという手段を採用することは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。
(5) 原告は,本件出願時においては,刊行物3の光学式指紋センサによって,指紋パターンからマニューシャを抽出する技術が存在していたものの,圧力式指紋センサによって,マニューシャを抽出する技術は存在しなかった旨主張する。
しかし,上述のとおり,刊行物2記載の発明において,特徴点の抽出手段として,刊行物3記載の発明のマニューシャ抽出手段を採用することは,当業者が容易に想到し得たことというべきである(なお,本願明細書(甲4)には,「このセンサ部Aには,特開平8-68704号(特許第2557795号)に開示されたアクティブマトリックス型面圧入力パネルと,指紋パターン検出回路(制御回路)とが用いられている。」(7頁17〜19行)と記載されており,この記載からも,本願発明において用いる,指紋パターンを検出するセンサ自体が新規なものではないことが認められる。)。なお,原告が主張するところは,光学式指紋センサによるマニューシャの特徴点抽出及び指紋照合と圧力式指紋センサによるマニューシャの特徴点抽出及び指紋照合とでは,その手法が異なるので,刊行物2記載の発明に刊行物3記載の手段を採用するのに阻害要因があるという趣旨に理解することができる。しかしながら,本願発明のマニューシャポイントの抽出及び指紋照合プログラムにおいては,その手法を限定しておらず,そうである以上,原告が主張する上記の点は,本願発明の構成に基づかず,本願発明の構成を実施するに際し考慮されるべき事項についていうものと解するほかなく,発明の容易想到性を判断する際の阻害要因となるものではない。
そうすると,本件出願時点において,圧力式指紋センサによって,マニューシャを抽出する技術が存在しなかったことは,本願発明について新規性を否定し得ないことを意味するものではあっても,進歩性を有することまでを肯定することにはならない。
(6) したがって,取消事由3も理由がない。
4 取消事由4(審理手続の瑕疵)について 特許法49条,51条の規定などにかんがみれば,一願書に複数の請求項が記載されている場合に,一つの請求項発明について特許をすることができないときは,他の請求項が独立項であると従属項であるとにかかわらず,当該特許出願の全体について拒絶査定をすることも予定しているものというべきである。原告の主張は独自の見解であって,採用することができない。
したがって,取消事由4も理由がない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 野輝久