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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22ワ10176職務発明対価請求事件 判例 特許
平成21ワ17204職務発明の対価請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  職務発明 /  改良発明 /  業務範囲 /  相当の対価(相当な対価) /  加工方法 /  共同発明 /  容易に発明 /  周知技術 /  出願公開 /  実施可能要件 /  着想 /  意匠権 /  特許出願日 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  共同発明者 /  実施権 /  通常実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  対価 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  拡張 /  釈明 / 
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事件 平成 21年 (ワ) 15068号 職務発明の対価請求事件
原告 P1
被告株式会社 日本製鋼所
同訴訟代理人弁護士野村晋右
同 池原元宏
同 岡島直也
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/07/15
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1原告(1) 被告は,原告に対し,30億4980万円を支払え。
(2) 訴訟費用は,被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言2被告(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告の負担とする。
第2事案の概要1原告の主張(1) 平成4年4月1日,原告は,被告に入社した。
2(2) 本件各発明原告は 下記アないしエの各発明 以下 順に 本件発明1 ないし 本 ,(,「」「件発明4」といい,これらを合わせて「本件各発明」という )を行った。
が これらはいずれも被告の業務範囲に属し かつ その発明をするに至っ , ,,た行為が原告の職務に属する職務発明である。
なお,本件各発明は,原告が共同発明者とされているものも含め,実質的には全て,原告が単独で行ったものである。
ア本件発明1(甲1)発明の名称注水発泡脱揮方法及び装置特許番号第2771438号出願日平成5年12月15日公開日平成7年6月27日登録日平成10年4月17日発明者(特許公報に記載された者)原告,P2特許請求の範囲【請求項1】スクリュ(5)を有する押出機(2)の注水分散ゾーン(10)で溶融混練されているポリマー融体(20)に水が供給されて混練分散され,その下流の脱揮ゾーン(11)で前記ポリマー融体(20)中の揮発分が水と共に気化されて除去される注水発泡脱揮方法において,前記注水分散ゾーン(10)と前記脱揮ゾーン(11)との間に減圧膨張ゾーン(30)を設け,前記ポリマー融体(20)中に分散された水の気泡を成長させると共に前記減圧膨張ゾーン(30)の下流端部において気泡を崩壊させることを特徴とする注水発泡脱揮方法。
【請求項2】前記注水分散ゾーン(10),減圧膨張ゾーン(30)及び脱揮ゾーン(11)における前記ポリマー融体(20)に対する処理が1台の3押出機(2)において複数回繰返して行われることを特徴とする請求項1記載の注水発泡脱揮方法。
【請求項3】上流端部の原料供給口と下流端部の吐出口との間に1組又は複数組の注水口(3)及び間隔をおいてその下流にベント口(4)を設けたシリンダ(1)と前記シリンダ(1)内孔に回転可能に挿入されたスクリュ(5)とで構成される押出機において,前記注水口(3)からその下流のベント口(4)までの間に,注水口(3)を含む部分に混練分散スクリュを配置し,前記混練分散用スクリュ(13)の下流に減圧リング(32)を配置し 前記減圧リング(32)は 円柱部(32 ) ,,aとその下流部のリング部(32 )に複数のスリット(32 )を形成した bc構成であると共に,前記減圧リング(32)の下流且つ前記ベント口(4)を含む部分にフルフライトスクリュ(5 )を配置したことを特a徴とする注水発泡脱揮装置。
なお,本件発明1は,ドイツとアメリカでも特許出願され,いずれも登録された(甲2,3 。)イ本件発明2(甲4)発明の名称注水発泡脱揮方法及び装置特許出願公開番号特開平10-249913出願日平成9年3月12日公開日平成10年9月22日発明者(公開特許公報に記載された者)原告,P3,P4,P5,P6特許請求の範囲【請求項1】一対の同方向回転するスクリュ(6)を有する押出機の注水分散ゾーン(11)で混練されているポリマー融体に水を供給して混練分散し,その下流の脱揮ゾーン(12)で前記ポリマー融体中の4揮発分が水と共に気化されて除去される注水発泡脱揮方法において,前記押出機の上流側の充満ゾーン(10)から前記注水分散ゾーン(11)へ前記ポリマー融体を抵抗を介さずに押出し,前記注水分散ゾーン(11)のみにリング(15)で抵抗を設け圧力を増加させた状態で注水を行うことを特徴とする注水発泡脱揮方法。
【請求項2】前記注水分散ゾーン(11)の下流端から前記脱揮ゾーン(12)のベントポート(5)の間に押出し性を有する減圧膨張ゾーン(17)を設け,前記ポリマー融体の流速を緩和することを特徴とする請求項1に記載の注水発泡脱揮方法。
【請求項3】シリンダ(1)の上流側から材料供給口(3),注水口(4)及びベントポート(5)が設けられ,その内部には一対の同方向回転するスクリュ(6)が互いに重なり合って噛合した状態で回転自在に設けられる押出機の上流側から順次充満ゾーン(10),前記注水口(4)を有する注水分散ゾーン(11),減圧膨張ゾーン(17)及び前記ベントポート(5)を有する脱揮ゾーン(12)が構成される注水発泡脱揮装置において,前記注水分散ゾーン(11)の前記注水口(4)の下流のみにリング(15)を配置し,前記リング(15)は前記押出機に1ケ所のみ設けられていることを特徴とする注水発泡脱揮装置。
なお,本件発明2は,本件発明1の改良技術であり,日本では,本件発明1に係る特許出願の存在により,周知技術として登録を拒絶されたが,アメリカでは登録された(甲5 。)ウ本件発明3(甲6)発明の名称二軸スクリュ押出機における押出量,圧力差,スクリュの回転速度,及びスクリュ流路内の充満長さの間の関係を推算する推算方法,並びに二軸押出機におけるスク5リュのスケールアップを含む設計方法特許出願公開番号特開平11-245280出願日平成10年3月3日公開日平成11年9月14日発明者(公開特許公報に記載された者)原告特許請求の範囲【請求項1】完全噛み合い型二軸スクリュ押出機の押出性能に関する無次元化式【数1】Q a・f-b・g・ΔP /L式(1)'''=,,,,, ただし aとbは スクリュの外径Dチップ数p リードt S溝深さ(最大値)H及びスクリュチップとバレル間の間隙δに関係する係数。fとgは,融体の粘性特性,例えば指数法則流体の指数に関係する補正係数。Q は無次元化流量,ΔP は無次元化'', , , 圧力差 L は無次元化充満長さで それぞれ次式で計算される'【数2】Q Q/(N・D )式(2)'= S3ΔP ΔP/(η・N)式(3)'=L L/D 式(4)'= Sただし,Qは融体の体積流量(押出量 ,ΔPは圧力差,ηは融 )体の剪断粘度,Nはスクリュの回転速度,Lはフルフライトスクリュの流路内における充満長さ,を用いて押出量(Q),圧力差(ΔP),スクリュの回転速度(N),及びスクリュ流路内の充満長さ(L)の間の関係を推算することを特徴とする二軸スクリュ押出機における押出量,圧力差,スクリュの回転速度,及びスクリュ6流路内の充満長さの間の関係を推算する推算方法。
【請求項2】下記の無次元化式【数3】''゚'' CCα δ LL=++1-H α δ式(7) =++ '''ε C・β(T-T )式(17)''゚゚= LS ω ω/D'=''' =+δ α -εδ +(n-1)ε式(19)= ''≧δ 式(20)'n≧1 式(21)ここに,【数4】CC /D式(8)LLS'=CC/D式(9)LL S'゚゚=α α/D 式(10)'= Sδ δ/D 式(11)'= SH H/D 式(12)'= S' ゚ ただし C は設計軸間距離 C は無次元化設計軸間距離 C ,, , L L Lは理論軸間距離,Cは無次元化理論軸間距離,αは二軸スク L'゚リュ同士間の設計間隙,α は二軸スクリュ同士間の無次元化設 '計間隙,δはバレルとスクリュ間の設計間隙,δ はバレルとス ',(), クリュ間の無次元化設計間隙 Hはスクリュの溝深さ 最大値H はスクリュの無次元化溝深さ(最大値 ,εは設計最高温度の' )ときの熱膨張による二軸スクリュ同士間の間隙減少量,ε は設'計最高温度のときの熱膨張による二軸スクリュ同士間の無次元化7, ,, 間隙減少量 βはスクリュ材の熱膨張係数 Tはスクリュの温度T は室温(25℃ ,ωは使用温度における二軸スクリュ同士間゚ )の実際間隙,ω は使用温度における二軸スクリュ同士間の無次'元化実際間隙,nは軸間間隙の安全係数,に基づいて各部寸法を決定することを特徴とする二軸押出機におけるスクリュのスケールアップを含む設計方法。
【請求項3】二軸スクリュ押出機における押出量(Q),圧力差(ΔP)スクリュの回転速度(N),及びスクリュ流路内の充満長さ(L)の間の関係を推算する推算方法に対して,請求項2に記載された計算式を導入して推算することを特徴とする二軸押出機における押出量,圧力差,スクリュの回転速度,及びスクリュ流路内の充満長さの間の関係を推算する推算方法。
エ本件発明4(甲11)発明の名称樹脂中の水溶性不純物の洗浄方法及び洗浄装置特許番号第3261334号出願日平成9年4月25日公開日平成10年11月10日登録日平成13年12月14日発明者(特許公報に記載された者)原告,P7,P8特許請求の範囲【請求項1】バレル(1)内に一対の同方向回転するスクリュ(2)を有する押出機により,樹脂を混練溶融し,水を注入して混練分散し,樹脂に含まれる水溶性不純物を水と共に排出する樹脂中の水溶性不純物の洗浄方法において,前記バレル(1)内の第1ブリスターリング(9)の下流にニーディングエレメント(8)と第2ブリスター8リング(9 )の順で構成された分散混練領域( )で混練溶融した樹 A C脂に,前記ニーディングエレメント(8)の部位に設けられた水の注水口(7)から先ず水を蒸気圧以上の圧力で注入して樹脂中に分散混練し,次に前記分散混練領域( )の下流でかつ複数の順フルCフライトエレメント(4)及び水の排出用スリット(3)からなる滞留領域( )で樹脂中の水の分散状態を維持し,その後前記滞留領域D( )の各順フルフライトエレメント(4)の中の一部と第3ブリス D(「」。) ターリング(9 )とかになるとからなる の誤記と思われる B絞り領域( )で樹脂中の水を絞り出して排出することを特徴とす Eる樹脂中の水溶性不純物の洗浄方法。
【請求項2】バレル(1)内に一対の同方向回転するスクリュ(2)が互いに重なり合って噛合した状態で回転自在に設けられた押出機により構成される樹脂中の水溶性不純物の洗浄装置において,混練溶融部の下流に,順次,前記スクリュ(2)がニーディングエレメント(8)とその下流側の第2ブリスターリング(9 )で構成されるとA共に前記バレル(1)の前記ニーディングエレメント(8)の部位に水を蒸気圧以上の圧力で注水するための注入口(7)が設けられた分散混練領域( ),前記スクリュ(2)が複数の順フルフライトエレCメント(4)で構成されると共に前記バレル(1)に水の排出用スリット(3)が設けられた滞留領域( ),及び前記スクリュ(2)が前記順Dフルフライトエレメント(4)の一部とその下流側の第3ブリスターリング(9 )で構成される絞り領域( )を配置する洗浄部を設B Eけて構成されることを特徴とする樹脂中の水溶性不純物の洗浄装置。
(3) 本件各ノウハウ原告は,下記アないしエの各ノウハウ(以下,順に「本件ノウハウ1」9ないし「本件ノウハウ4」といい,これらを合わせて「本件各ノウハウ」。), ,, というを発明したが これらはいずれも被告の業務範囲に属し かつその発明をするに至った行為が原告の職務に属する職務発明である。
ア本件ノウハウ1(甲7の1〜13)本件ノウハウ1は 「脱揮用のものを含むポリマー加工用二軸押出機 ,に関するスクリュ設計ノウハウ」である。
従来の熱力学に用いられた対応状態理論と化学工学の無次元解析方法に関する方法論を用い,本件発明3の式(7)〜(21)に基づき,設計最高温度のときの熱膨張による二軸スクリュ同士間の無次元化間隙減少量ε を計算した上で,本件ノウハウ2に基づき,表面更新脱揮効率に関'してスクリュ表面に分布される融体の膜厚さの寄与を考慮し,スクリュとバレル間の無次元化設計間隙δ と二軸スクリュ同士間の付加無次元'化設計間隙α または実際のポリマー加工温度下におけるスクリュの熱 '膨張を配慮する安全係数nを決めるという特徴を有する。
本件ノウハウ1は,次の3つの点から構成されている。
? 熱膨張と工作 加工 精度を考慮に入れたスクリュ折損防止対策 甲 () (49)? 同一な無次元スクリュ形状による小型から大型までのスクリュの設計とスケールアップ(シリーズ化)方法並びに加工方法(甲7の2,甲49,50)? 融体膜分布と膜厚さの寄与を重視する脱揮用スクリュ設計方法(甲7の2)イ本件ノウハウ2(甲8の1・2)本件ノウハウ2は 「多段ベント押出機の脱揮モデルに基づくベント ,式押出機設計ノウハウ」である。
ベント式押出機の設計方法を確立するために,従来の浸透モデルに関10する第2法則に基づいた解析結果を,ベント式押出機の開口領域Fickを有するベント部まで拡張した上,脱揮操作温度と真空度に関する平衡物性と輸送物性面の要素やポリマー融体流量とスクリュ回転数という操作条件だけでなく,初めてベントの設置により,所在脱揮ゾーンにおける融体膜の分布,前記操作条件によるスクリュ流路内の充満ゾーン長さと充満率の変化と,これらの変化によるスクリュ流路内の各種融体膜界面積とそれぞれの表面更新時間の変化を考慮に入れたという特徴を有する。
なお,ここで,融体膜の厚さ(あるいはかかわるバレルとスクリュ間とスクリュ同士間のクリアランス)は,本件発明3の【請求項2】の方法と本件ノウハウ1により決められる。
本件ノウハウ2のうち秘密部分は,次のものである。
? リードの異なるスクリュエレメントの押出特性と脱揮特性を生かした脱揮用スクリュ構成設計方法(〔甲53 )〕? ベント設計ノウハウ()ウ本件ノウハウ3(甲9の1・2)本件ノウハウ3は 「かみ合い型同方向回転二軸スクリュ押出機のス ,クリュエレメントの押出特性に関する実験的研究」により確立した,押出性能の予測が可能なスクリュ構成設計技術である。
二軸押出機の設計に関して,従来の熱力学に用いられた対応状態理論と化学工学の無次元解析に関する方法論を駆使し,スクリュ流路内の流れ現象あるいは押出特性が,適用される各種スクリュエレメントの押出性能の加成性により寄与されると見て これに関わる融体流量 スクリュ ,,11回転数,充満長さと局部圧力間の関係を,融体の平均せん断粘度を取り入れて無次元化した本件発明3の【請求項1】の式(1)〜(4)の妥当性を実験的に証明した上,本件発明1,2を例にして,ポリマー融体流量とスクリュ回転数によるキー操作パラメータである注水部圧力を推算することができる。
エ本件ノウハウ4(甲10)本件ノウハウ4は 「脱揮押出理論に基づいた(特に表面更新脱揮, ,注水発泡脱揮の機能を有する)高性能スクリュ二軸押出機の開発」に関するトータル設計技術である。
本件ノウハウ4のうち秘密部分は,低粘度溶融ポリマー脱揮に関する注水発泡脱揮のノウハウ(樹脂流量とスクリュ回転数を上げれば,注水圧と溶融樹脂への水の混合分散効果を維持でき,脱揮処理能力の向上を図れると同時に,注水発泡脱揮能力向上の効果も得られること)である(甲48 。)(4) 特許を受ける権利の譲渡ア発明考案に関する取扱規定被告は,昭和28年12月1日に 「発明考案に関する取扱規定」を ,定めており(甲15 ,同規定には次の定めがある。 )(ア) 届出(3条1項)従業員が業務上の発明等をなした場合は,所定の用紙に,発明等の内容その他の必要事項を記載し,すみやかに所属長に届け出なければならない。
(イ) 権利の譲渡(4条)従業員は業務上の発明等を前条第1項の規定により届け出る場合, , は その発明等にもとづく日本国及び外国における特許を受ける権利または実用新案権又は意匠権の登録を受ける権利を会社に譲渡しなけ12ればならない。
(ウ) 判定(6条1項)会社が,第4条の規定により,特許等を受ける権利を取得した場合は,特許部門は,発明等を出願するか,またはその発明等の内容が発明等の実質を備えるが,ノウハウとして秘匿すべきものとして出願を留保するか,このいずれにも該当しないかについて判定するものとする。
(エ) 出願(7条)?前条の規定により,特許部門が必要と認めたものについては出願を行う。
?特許部門が出願を行わないと決定したものについては,会社は,その特許の出願を留保する。
イ本件各発明,各ノウハウに係る権利の譲渡原告は,被告に対し,本件各発明に係る特許出願日までに,本件各発明について届出をし,同発明に係る各特許を受ける権利を譲渡した。
原告は,被告に対し,本件各ノウハウに係る各発明の完成後,本件各ノウハウに係る各特許を受ける権利についても譲渡したが,被告の判断により,特許出願することなく,ノウハウとして保持することとした。
なお,原告は,被告に対し,文章又は口頭で,本件各ノウハウを教授した。
(5) 被告による実施ア本件各発明(ア) 本件発明1,2前記(2)ア,イのとおり,本件発明1は二軸押出機において水を脱揮助剤として高圧下においてポリマー融体に注入し,水の気化による気泡の生成,成長,崩壊という過程をコントロールすることにより,13ポリマー融体を膨張させ,脱揮効率に寄与する拡散面積を稼ぐという機能を有し,本件発明2はその改良発明であり,注水分散ゾーンにおける高い注水圧を得ることにより,スクリュ回転数を高くし,水の分散効果を向上させ,脱揮効率を向上させるとともに押出量を高めることができる。
被告は,平成5年度から本件発明1を実施していたが,平成8年1月,からの依頼で 脱揮テスト,(), , において 本件発明2を実施し 甲51良好な成績を収めたためその後,脱揮用TEX44(なお 「TEX」は被告の二軸押出 ,機の製品名であり,続く数字はスクリュの公称径である。シリーズ名を示す「α」は,本判決では省略する )2台を始めとして, 。
から多くを受注した。
被告は,からの依頼で,脱揮用TEX280を開発し,上記TEXにおいて,本件発明1の注水発泡脱揮原理に基づく本件発明2を実施した。
は,上記開発の成功を受けて,被告のTEX製品を採用することとなった。
被告は,向けに,世界最大級脱揮用TEX400を開発したが,上記TEXにおいても前同様本件発明2を実施している。
なお,平成10年時点までの,本件発明1又は2に係る被告の実施業績は,甲24のとおりである。
(イ) 本件発明3前記(2)ウのとおり,本件発明3は,二軸スクリュの押出量等の数値の関係の推算方法,及びスクリュのスケールアップを含む設計方法に関するオリジナルな技術であるが,平成12年3月,被告は,TE14X400の開発にあたり,超大型二軸押出機用スクリュの設計が全く分からなかったので,原告が,スクリュ設計関連発明である本件発明3の内容とともに,膜厚さによる脱揮性能や,スクリュ同士間のクリアランス設計を考慮に入れる二軸押出機スクリュ設計ノウハウなどを教授した その結果 被告はTEX400の開発に成功した したがっ 。, 。
て,被告は,TEX400の製造において,本件発明3を実施している。
また 被告は 本件発明3を応用し 最適な注水発泡脱揮用スクリュ ,,,構成を設計するための所要注水圧力の推算を行うソフトを開発・使用しており,被告は,高性能脱揮用TEXの製造において,本件発明3を実施している。
(ウ) 本件発明4前記(2)エのとおり,本件発明4は,樹脂中の水溶性不純物を効率よく洗浄する技術であるが,被告は,本件発明4を実施することにより,からTEX140(甲62)を受注することに成功した。
イ本件各ノウハウ(ア) 本件ノウハウ1被告は,TEX400などの設計に関し,原告から本件ノウハウ1?,?を教授され(甲49,50 ,これを使用した結果,熱膨張に )よるスクリュ折損の危険性を回避できた(仮に,被告における従来の設計に従えば,TEX360やTEX400においては,スクリュが極めて過酷な条件下で作動しなければならかったのであり,本件ノウハウ1が採用されなかったとは考えられない。。)脱揮テストもクリアしていたTEX65の無次元クリアランスの値は,本件ノウハウ1?を使用して得られたものであるが,上記値はT15EX400までの全脱揮用TEX製品に拡張されることとなった。
(イ) 本件ノウハウ2本件ノウハウ2?は 前記(3)イのとおりであって 押出機メーカー , ,にとって,ベント設計とスクリュ構成設計の重要なノウハウであり,原告は,被告に対し,何度も勧めた上,教授した。その結果,本件ノウハウ2?は,被告において実施され,定着してきている。
また,被告は,本件ノウハウ2?に基づき,中間ベントを開発して, (,), TEX65に装着し脱揮テストに応用し 甲47 52その後,TEX280の受注に成功している。
(ウ) 本件ノウハウ3本件ノウハウ3は,前記(3)ウのとおりであって,押出機メーカーにとって,注水脱揮用スクリュ構成の設計に欠かせない技術であり,極めて重要なノウハウである。したがって,被告は,本件ノウハウ3を使用しているといえる。
(エ) 本件ノウハウ4被告は,本件ノウハウ4を,平成8年初めころ,脱揮テストに使用し(甲51 ,その後,トータル設計技術として使用している。 )また,被告は,本件ノウハウ4を,脱揮用二軸押出機の設計に採用しただけでなく,受注獲得のためのユーザ向け宣伝資料(甲48)にも記載している。
(オ) 本件各ノウハウは,原告の独特な脱揮技術思想と本件各発明により構成されるトータル脱揮技術の重要部分であり,被告は,その代替技術を有していない。したがって,被告は本件各ノウハウを使用することにより独占的利益を得ている。
ウまとめ上記ア,イのとおり,被告は,本件各発明,本件各ノウハウを実施,16使用している。これに加え,原告は,これらの発明とノウハウと「押出脱揮理論」で構成されるトータル押出脱揮技術を被告に提供したのであり,その中のキーテクノロジーは,1つなくても被告の脱揮技術は成り。,, , 立たない したがって 被告は 平成5年度から平成20年度までの間上記TEX44,140,280,400以外の高性能脱揮用TEXの製造に際し,本件各発明及び本件各ノウハウを実施,使用していたといえる(甲14の1 。)また,被告は,平成12年度から平成20年度までの間にスクリュ折,,,, 損を防止するため 本件発明3 本件ノウハウ1を実施 使用するほか, , コンパウンド用TEXの製造に際して 本件発明3及び本件ノウハウ13を実施,使用し,アメリカにおいても,本件発明1,2,4を実施している。
(6) 相当の対価(実績補償金)ア被告の超過売上被告は,平成5年度から平成20年度までの間に,本件各発明ないし本件各ノウハウの実施品である高性能脱揮用TEXを販売して,の売上を得た。
また,被告は,平成12年度から平成20年度までの間に,スクリュ設計関連の発明である本件発明3及び本件ノウハウ1の実施により,スクリュ折損に関し,を節約している。
なお,本件発明3及び本件ノウハウ1,3の実施品であるコンパウンド用TEX,アメリカにおける本件発明1,2の実施品,本件発明4の実施品に係る各超過売上高が存する。
イ被告の独占の利益高性能脱揮用TEXの販売に係る被告の純利益はである。
コンパウンド用TEXの販売に係る被告の利益は,被告の超過売上台17数の情報がないので,スクリュ折損に係る前記アの節約額をもって,スクリュ設計関連発明(本件発明3及び本件ノウハウ1)に係る被告の独占の利益の一部とする。
ウ原告の貢献度高性能脱揮用TEXに係る本件各発明ないし本件各ノウハウの実施において,被告の貢献度は50%を超えないから,原告の貢献度は少なくとも50%となる。
また,スクリュ設計関連発明(本件発明3及び本件ノウハウ1)に係る前記アの節約額に関しては,原告の貢献度は10%とする。
相当の対価前記アないしウによれば,高性能脱揮用TEXに係る本件各発明及び本件各ノウハウの相当対価の額はとなり スクリュ , ,( ), 設計関連発明 本件発明3及び本件ノウハウ1 に係る相当対価の額はとなる。
したがって,相当対価の総額は,59億7400万円となる(10万円未満切り捨て 。)〔計算式〕××0.5+×0.1?5,974,000,000(7) 原告の請求よって,原告は,被告に対し,相当対価の総額59億7400万円の一部である23億8960万円と,年5分の割合による遅延損害金のうち6億6020万円とを合計した30億4980万円の支払を求める。
2被告の主張以下のとおり,被告が原告に支払うべき相当の対価は存在しない。
(1) 本件各発明についてア本件発明1について18被告が製造・販売する脱揮用押出機及び脱水用押出機には 「減圧膨,張ゾーンの下流端部において気泡を崩壊させる構成 (本件発明1の独」立項である請求項1,3の構成要件の一部)が採用されておらず,被告は,本件発明1を実施していないし,今後も実施する予定はなく,第三者に実施許諾した事実もない。
なお,本件発明1のうち請求項3に係る発明は 「リング部(32 )」 ,bの構造上,セルフクリーニング機能がないためポリマー融体の品質の安定性を失わせる可能性があるし,強度が弱いため破損の可能性もあり,実装に適さない。
イ本件発明2について本件発明2は,日本においては,特許要件がないことを理由とする拒絶査定が確定しているし,出願日以前からの周知技術であるから,拒絶査定確定の前後を問わず,被告に独占の利益は生じない。
本件発明2は,アメリカにおいては特許登録はされたものの,被告はこれを実施しておらず,第三者に実施許諾した事実もない。
ウ本件発明3について本件発明3は,特許要件がないことを理由とする拒絶査定が確定しているだけでなく,本件発明3は,内容が極めて難解で実用化が困難であるため,被告はこれを実施しておらず,第三者に実施許諾したこともないから,拒絶査定確定の前後を問わず,被告に独占の利益は生じない。
エ本件発明4について被告は,製造・販売する脱揮用押出機及び脱水用押出機に本件発明4を実施したことはなく,今後も実施する予定はなく,第三者に実施許諾した事実もないから,被告に独占の利益は生じない。
なお,本件発明4においては,注入した水がポリマー融体と混合し気化した段階で 「水の排出用スリット(3)」を通るため,細かいポリマー ,19融体がスリット部分に詰まってしまう可能性があり,実装に適さない。
(2) 本件各ノウハウについて本件各ノウハウについて,原告から,被告の発明考案に関する取扱規定に係るノウハウ登録申請書の提出を受けたことはない。
また,本件各ノウハウは,いずれも,発明の実質を備えておらず,独占的利益を得られるような内容のものではない。
個別のノウハウについての主張は,次のとおりである。
ア本件ノウハウ1について原告の主張する本件ノウハウ1は,スクリュ設計方法に関するものであるが,被告は,原告の提案するスクリュ設計方法を採用したことはないし,第三者に実施許諾したこともない。
(ア) 熱膨張と工作 加工 精度を考慮に入れたスクリュ折損防止対策 前 () (記1(3)ア?)について原告主張のノウハウは,甲49で述べられているスクリュのクリアランス値のことと考えられるが,昭和53年に発表された文献M L Booy : Geometry of Fully Wiped Twin-Screw Equipment ; ( . .)Polymer Engineering and Science SeptemberVolNo ,.1978,.18,.12から比較的容易に導き出すことが可能なものである。
しかも,上記クリアランス値を採用した場合,左右のスクリュの間隙が極めて狭小となり,左右のスクリュが干渉するなどの不具合を発生させることが容易に想定されるものであって,実装に適さず,被告はこれを採用していない。
(イ) 同一な無次元スクリュ形状による小型から大型までのスクリュの設計とスケールアップ(シリーズ化)方法並びに加工方法(前記1(3)ア?)について, , 原告主張のノウハウは スクリュの外径(D)と谷径(d)との比率を20D/d 1.57に統一すべきという考えであると解されるが,被告=は,この数値を長年の経験から採用している一方,この数値による統一化は行っていないのであって,原告主張のノウハウは採用していない。
(ウ) 融体膜分布と膜厚さの寄与を重視する脱揮用スクリュ設計方法(前記1(3)ア?)について原告主張のノウハウは,甲7の2に記載されたクリアランス値のことと考えられるが,被告がこの数値を採用したことはない。
イ本件ノウハウ2について原告の主張する本件ノウハウ2は,甲8の1・2の論文に述べられた方法であるが,上記論文は,遅くとも平成6年11月には公表されており,ノウハウとして秘匿すべきものが含まれているとはいえない。
(ア) リードの異なるスクリュエレメントの押出特性と脱揮特性を生かした脱揮用スクリュ構成設計方法(前記1(3)イ?)について,()。 原告の入社前から採用されていた 被告の既存技術である 乙13(イ) ベント設計ノウハウ(前記1(3)イ?)についてどのような寸法のベントを使用するかは,当業者が適宜工夫しうる設計事項に過ぎず,ベント部においてはスクリュとバレル間に摩擦が生じないこと その結果として表面更新が下がることは 当業者にとっ , ,て常識であり,独占的利益を得られるようなノウハウではない。
ウ本件ノウハウ3について原告の主張する本件ノウハウ3は,甲9の1・2の論文に述べられた,, , 方法であるが 上記論文は 遅くとも平成8年6月には公表されておりノウハウとして秘匿すべきものが含まれているとはいえない。
エ本件ノウハウ4について原告の主張する本件ノウハウ4は,甲10の論文に述べられた方法で21あるが,上記論文は,遅くとも平成10年8月には公表されており,ノウハウとして秘匿すべきものが含まれているとはいえない。
また,原告が「低粘度溶融ポリマー脱揮に関する注水発泡脱揮のノウハウ」として主張する内容は,原告の入社前から公表されている(乙14 。)第3当裁判所の判断1本件各発明について証拠(甲1,4,6,11)によると,原告は,本件各発明の共同発明者の1人であることが認められるが,原告は,いずれも実質的には原告の単独発明であると主張する。
その一方で,被告は,本件発明1,3,4をいずれも実施しておらず,本件発明2については特許要件がないことを理由として拒絶査定が確定し,いずれの発明も独占の利益を生じていないと主張するので,まず,この点について検討する。
(1) 本件発明1ア本件発明1の構成要件の分説本件発明1に係る特許請求の範囲のうち,独立項である請求項1と請求項3を構成要件に分説すると,次のとおりである。
【請求項1】Aスクリュ(5)を有する押出機(2)の注水分散ゾーン(10)で溶融混練されているポリマー融体(20)に水が供給されて混練分散され,その下流の脱揮ゾーン(11)で前記ポリマー融体(20)中の揮発分が水と共に気化されて除去される注水発泡脱揮方法において,B前記注水分散ゾーン(10)と前記脱揮ゾーン(11)との間に減圧膨張ゾーン(30)を設け,前記ポリマー融体(20)中に分散された水の気泡を成長させると共に22C前記減圧膨張ゾーン(30)の下流端部において気泡を崩壊させることを特徴とするD注水発泡脱揮方法。
【請求項3】A上流端部の原料供給口と下流端部の吐出口との間に1組又は複数組の注水口(3)及び間隔をおいてその下流にベント口(4)を設けたシリンダ(1)と前記シリンダ(1)内孔に回転可能に挿入されたスクリュ(5)とで構成される押出機において,B前記注水口(3)からその下流のベント口(4)までの間に,注水口(3)を含む部分に混練分散スクリュを配置し,C前記混練分散用スクリュ(13)の下流に減圧リング(32)を配置し,D前記減圧リング(32)は 円柱部(32 )とその下流部のリング部(32 ) ,a bに複数のスリット(32 )を形成した構成であると共に, cE前記減圧リング(32)の下流且つ前記ベント口(4)を含む部分にフルフライトスクリュ(5 )を配置したことを特徴とするaF注水発泡脱揮装置。
イ本件発明1の実施の有無原告は,被告による本件発明1の実施を裏付けるものとして,平成10年4月に被告から提供されたTEXの製造販売実績を原告がまとめた書面(甲24 ,TEX400,TEX140,TEX44などの受注 )に係る被告の業務月報(甲25の1・2 ,他の従業員が被告から渡さ )れた,TEXの受注実績が記載された書面(甲26 ,被告がTEX4)00を製造・納入したことが記載されている書籍(甲27)などを提出する。しかしながら,これらの証拠は,被告が当該TEXを製造した事実を示すものではあっても,これらが本件発明1の実施品であることを示すものではない。
23そして,前記アからすれば,TEXが本件発明1の実施品であるといえるためには ? 注水発泡脱揮方法 請求項1 として 注水分散ゾー ,(),ンと その下流の脱揮ゾーンの間に 水の気泡を成長させる減圧膨張ゾー , ,ンを設け(構成要件B ,減圧膨張ゾーンの下流端部において気泡を崩 )壊させる(構成要件C)方法が採用されているか,? 注水発泡脱揮装置(請求項3)として,注水口を含む部分に混練分散スクリュを配置し(構成要件B ,その下流に複数のスリットが形成された減圧リングを )配置し(構成要件C,D ,その下流のベント口を含む部分にフルフラ )イトスクリュを配置している(構成要件E)ことが必要である。
ところが,原告が,本件発明1の実施例(正確には,本件発明1の原理に基づく本件発明2の実施例とされている )として提出したTEX 。
に係る図面(甲14の1の1〜1の15,甲17〜19)では,シールリングとフルフライトスクリュとの間に減圧リングの存在は認められない。また,減圧リングに代わる手段により,減圧膨張ゾーンの下流端部(フルフライトスクリュが配置されている脱揮ゾーンよりも手前)において,気泡を崩壊させている事実も認められない。
さらに,被告が実際に納入した,TEX44,TEX280,TEX400の各設計図(乙9〜11)においても,同様に,減圧リングの存在は認められず,減圧リングに代わる手段により,減圧膨張ゾーンの下流端部(脱揮ゾーンよりも手前)において,気泡を崩壊させている事実も認められない。
しかも,原告自身,本件発明1には,被告の主張(1)アにおいて指摘24された欠点( リング部(32 )」の構造上,セルフクリーニング機能が 「 bないためポリマー融体の品質の安定性を失わせる可能性があるし,強度が弱いため破損の可能性もあること)のあることが最初から十分にわかっていたため 「その実施を被告に勧めることは一度もない」と主張 ,しており(原告準備書面(第1回)3枚目 ,このことからしても,TE )Xに減圧リングが採用されているとは考えにくい。
以上のとおり,被告が本件発明1を実施していることを認めるに足りる証拠はなく,同発明について被告に独占の利益が生じたと認めることはできない。
(2) 本件発明2使用者は,職務発明について,特許を受ける権利を譲り受けなくとも,無償の法定通常実施権を有するから(特許法35条1項 ,特許を受ける)権利を譲り受けたことにより使用者が受けるべき利益とは,法定通常実施権を超えた独占権に基づく利益である。
ところが,本件発明2は,出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとして登録を拒絶され(乙1,2 ,特許を受けることができなかったもので )ある。したがって,仮に被告が本件発明2を実施していたとしても,これ,,, が独占的な実施となることはなく 実施の時期を問わず 同発明について被告に独占の利益が生じたと認めることはできない。
また,アメリカにおいて,本件発明2が実施されていることを認めるに足りる証拠はない。
(3) 本件発明3原告は,被告が本件発明3を実施していると主張し,その根拠として,平成12年3月に,TEX400の開発に使用するため,本件発明3の内容を被告に教授したことや,被告が,本件発明3を応用し,最適な注水発25泡脱揮用スクリュ構成を設計するための所要注水圧力の推算を行うソフトを開発・使用していることを挙げる。
しかしながら,本件発明3は,当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとして,また不明確であるとして,登録を拒絶され(乙3,4 ,不服審判が請求されたものの,これも取り )下げられ(乙5 ,結局,全ての請求項について特許を受けることができ )なかったものである。
また,拒絶査定確定前において,TEX400に本件発明3が実施されていることや,被告が本件発明3を応用したソフトを開発・使用していたことを認めるに足りる証拠はないし,実施可能要件が欠けるとされるような内容の発明を,被告あるいは被告から実施許諾を受けた第三者が実施していたとも考えにくい。
なお,原告は,平成9年12月に本件発明3に係る発明提案書を提出したと主張しており,また,本件発明3の出願日は平成10年3月3日であるところ,被告が本件発明3の内容を知ってから2年以上が経過した平成12年3月段階においても,出願人であり当業者である被告が本件発明3の内容を理解できていなかったと主張するところである(訴状26枚目,原告準備書面(第1回)4枚目 。そうすると,拒絶査定確定の前後を問わ )ず,被告が本件発明3に関する発明について,これをノウハウとして実施したという事情も窺えない。
原告は,本件発明3が実施されている証拠として,TEX360の写真(甲55)や,被告の社内刊行物(甲59,60)を提出するが,これらはいずれも拒絶査定確定後のものである上,これらの証拠からは,本件発明3が実施されていたかどうかは明らかでない。
以上のとおり,拒絶査定確定の前後を問わず,被告が本件発明3を実施していることを認めるに足りる証拠はなく,同発明について被告に独占の26利益が生じたと認めることはできない。
(4) 本件発明4原告は,本件発明4がTEX140において実施されたと主張し,これ,(,)。, を示すものとして 被告の内部資料 甲61 62 を提出する そして,( ,, これらの資料には 新洗浄技術 溶融樹脂に熱水を注入し 分散・混練し), 水溶性不純物を溶解している水を絞り出す方法 を用いたテストが成功しTEX140の受注に結びついた旨が記載されている。
しかしながら,これらの資料は,TEX140がまだ受注予定の段階であった平成9年時点で作成されたものであるところ,証拠(乙6,7)によると,その後,TEXに洗浄機能を付加することが試みられたものの,装置が大きくなってしまうことから,平成10年9月には,結局,洗浄脱水機能は付加されなかったことが認められる。
したがって,本件発明4がTEX140において実施された事実は認められないし,他に本件発明4の実施を認めるに足りる証拠もなく,同発明について被告に独占の利益が生じたと認めることはできない。
2本件各ノウハウについて原告は,本件各ノウハウを被告に教授したと主張するのみで,本件各発明とは異なり,被告への届出を行った事実を主張しない。したがって,本件各ノウハウについて,特許を受ける権利の譲渡が行われたかは明らかでない。
しかしながら,この点はひとまず措き,以下,各ノウハウについて個別に検討する。
(1) 本件ノウハウ1本件ノウハウ1は,本件発明3の式(7)〜(21)に基づく無次元化間隙減' ' 少量ε を計算した上で,本件ノウハウ2に基づき,無次元化設計間隙δと付加無次元化設計間隙α または安全係数nを決めることを特徴とする'27ものであるが,平成12年3月時点において,本件発明3の内容を被告が理解できていなかったと,原告自らが主張していることは,前記1(3)のとおりであって,本件ノウハウ1についても,被告がこれを実施していたと認めることは困難である。
また,本件ノウハウ1を構成するという,? 熱膨張と工作(加工)精度を考慮に入れたスクリュ折損防止対策,? 同一な無次元スクリュ形状() による小型から大型までのスクリュの設計とスケールアップ シリーズ化方法並びに加工方法,? 融体膜分布と膜厚さの寄与を重視する脱揮用スクリュ設計方法は,結局のところ,スクリュ設計の打合せの際の資料であるTEX-α SPEC表 甲7の2 にも記載されている スクリュの外径(D) (),と谷径(d)との比率をD/d 1.57に統一することを前提とした,ス=。,, クリュのクリアランス値及びその計算方法と考えられる そして 原告は被告に本件ノウハウ1を教授した時期について,平成12年のTEX400の設計時であると主張している。
しかし,被告は,上記D/d 1.57という数値を,平成7年以前か=ら,一部のTEXに採用しており(甲49 ,また,この数値が,TEX )αシリーズにおいて,統一的に採用されたとしても,他のシリーズでは,別の数値が統一的に採用されている 乙12の39頁の図10したがっ ( )。
て,外径(D)と谷径(d)との比率は,当業者が適宜選択しうる設計事項に過ぎないといえる しかも 被告は 現に採用している外径(D)と谷径(d) 。,,との比率を,刊行物で公表しているのであり(乙12 ,これがノウハウ)として秘匿されるべき内容のものであったともいい難い。
また,原告は,上記クリアランス値の計算方法を被告がマスターした証拠として,平成12年3月29日作成の表(甲7の12)を提出するが,この表に記載された数値のうち,本件ノウハウ1に基づき計算された数値(3,6,8,10)は,いずれも原告が計算したものであり(甲7NO28の7・9・10 ,被告の理解を示すものではない。 )(2) 本件ノウハウ2特許権として独占権を与えられていない発明が,ノウハウとして使用者に独占の利益を生じさせるためには,当該ノウハウが公開されていないことが必要であり,被告の発明考案に関する取扱規定(甲15)も,このことを前提としている(6条1項参照 。)ところが,原告は,本件ノウハウ2を,周知するよう公表した上で(甲8の1・2 ,被告に教えていたというのであり,その内容が,被告に独 )占の利益を生じさせることはないといえる。
この点,原告は,本件ノウハウ2に係る秘密部分として,? リードの異なるスクリュエレメントの押出特性と脱揮特性を生かした脱揮用スクリュ構成設計方法(,? ベント設計ノウハウ( ))を挙げる。
しかしながら,?については,原告の入社日(平成4年4月1日)より前である平成4年1月27日に作成されたTEXの設計図において,既に採用されており(乙13 ,本件ノウハウ2に基づくものとは認められな )い。原告は,被告の従来方法として,?が採用されていないTEXの設計図(甲63,64)を提出し,乙13の内容は虚偽である可能性が否定できないと主張するが,甲63は平成元年に,甲64は平成3年に,それぞれ作成されたものであって,これより後に作成された乙13の内容の信用性を左右するものではない。
また,?については,甲8の1において,開口領域の割合を大きくすると脱揮効率の点で不利になること(752頁)や,ベント設置ゾーンでの脱揮能力はベント非設置ゾーンの場合より低いこと(753頁)が開示さ29れており,ベントの長さを短くすると脱揮性能が向上するという知見は,既に開示されていたといえる(ベントの具体的寸法は,当業者が適宜選択しうる設計事項に過ぎないといえる。また,原告は 「より短いベント 。),を使う」という知見を具体化し,中間ベントを開発したのは被告の設計部門であると主張しているのであるから,原告が提示したのは着想にとどまるものといえ,これを発明ということも困難である。
(3) 本件ノウハウ3原告は,本件ノウハウ3について,特許出願を考慮せず平成8年に公表したと主張するのみで,裁判所が求釈明を行うも,本件ノウハウ3の秘密部分について主張・立証しない。
したがって,本件ノウハウ3は,全て公開されているものと考えられ,被告に独占の利益を生じさせるものであるとは認められない。
(4) 本件ノウハウ4, (), 原告は 本件ノウハウ4を平成10年8月には公表しているが 甲10本件ノウハウ4のうち「低粘度溶融ポリマー脱揮に関する注水発泡脱揮のノウハウ(樹脂流量とスクリュ回転数を上げれば,注水圧と溶融樹脂への水の混合分散効果を維持でき,脱揮処理能力の向上を図れると同時に,注)」 。 水発泡脱揮能力向上の効果も得られることは秘密であったと主張するしかしながら,平成2年10月1日に被告が発行した文献(乙14)の54頁には,脱揮助剤としての注水なしの場合と,1.5%注水の場合に係る,各残留モノマ濃度とスクリュ回転数の関係を示すグラフ(図14)が掲載され 「押出量を一定にして,スクリュ回転数を大きくすると滞留 ,時間は減少するが,表面更新面積が増大するので脱気効果は良くな(ママ)る」との記載がある。
乙14について,原告は,? スクリュの回転が異方向か同方向かが区別されておらず,? 注水発泡脱揮は原告の発明である本件発明1,2の30内容で その効果は画期的であり 乙14に記載された効果は注水脱揮 発 ,, (泡を伴わない)により得られる効果に過ぎないと指摘する(原告準備書面(第7回)4頁 。しかし,?については,本件ノウハウ4の内容とは直接 )関連しないものであるし,?については,乙14に,注水脱揮に関する記載しかなく,発泡の言及がないとしても,スクリュの回転数により注水脱揮における脱揮処理能力を向上させる技術が記載されているのであって,本件ノウハウ4のノウハウは,乙14に記載された脱揮処理能力の向上手段と同一の手段から発生する効果というべきである。
したがって,本件ノウハウ4は,被告に独占の利益を生じさせるようなものとは認められない。
(5) その他のノウハウ前記(1)ないし(4)のほか,原告は,ノウハウのうち秘密部分として,異方向回転二軸押出機より同方向回転二軸押出機の方がポリマーの脱揮に適しているという知見(甲57)や,重合槽と二軸押出機の間にギヤポンプを適用する脱揮プロセス(原料タンクの下流側にギヤポンプを設けること)を挙げるが,これらが,原告が本件で対価請求を行っている本件ノウハウ1ないし4に含まれるものであるのかは明らかでない。
しかも,前者については,単なる知見であって発明とはいえず,独占の利益が生じるようなものではない。また,後者については,原告の入社日(平成4年4月1日)より前である平成2年10月1日に被告が発行した文献に記載されている,被告の既存技術であって(乙14の53頁の表3及び図10 ,原告の発明したノウハウであるとは認められない。 )3結論以上のとおりであるから,原告の請求は理由がないので,主文のとおり判決する。
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裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき
裁判官 北岡裕章
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