関連審決 | 無効2009-800141 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21ワ3527特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3528特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3530特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3538特許権侵害差止請求事件 平成21ワ3539特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ2980損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ2352特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ26092特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ネ10056不当利得返還等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 物の発明 / 方法の発明 / 製造方法 / 新規性 / 頒布された刊行物 / 容易に実施 / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 発明特定事項 / 周知技術 / 慣用技術 / 公知技術 / 課題の共通性 / 上位概念 / 技術的範囲 / 実施可能要件 / 技術常識 / 先行技術 / 明確性 / 発明の詳細な説明 / 発明が明確 / 技術的特徴 / 発明の利用 / 実質的に同一 / 警告 / クレーム / 消尽 / 権利の濫用(権利濫用) / 優先日 / 参酌 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 耐用期間 / 加工 / 交換 / 間接侵害 / 構成要件 / 専用品 / 一般に流通 / 課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) / 汎用品 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 同意 / 実施権 / 対価 / 訂正審判 / 新規事項追加(新規事項の追加) / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 釈明 / 公序良俗 / 訂正要件 / 合理的な理由 / 国際公開 / |
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事件 |
平成
21年
(ワ)
3529号
特許権侵害差止請求事件
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東京都大田区<以下略> 原告 キヤノン株式会社 同訴訟代理人弁護士増井和夫 同 橋口尚幸 同 齋藤 誠二郎東京都中央区<以下略> 被告 エステー産業株式会社 同訴訟代理人弁護士黒田健二 同吉村誠 同 門松慎治 同訴訟代理人弁理士 松本孝 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2010/06/24 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,別紙物件目録( )記載のインクタンクの輸入,販売又は販売 2のための展示をしてはならない。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを7分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
被告は,別紙物件目録( )及び( )記載のインクタンクの輸入,販売又は販売 12のための展示をしてはならない。 |
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事案の概要
本件は,インクジェットプリンタに使用されるインクタンクなどの液体収納容器及び該容器を備える液体供給システムの特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録( )及び( )記載のインクタンク(以下,同目録( )記載のイン 12 1クタンクを「被告製品1 ,同目録( )記載のインクタンクを「被告製品2」 」2といい,両製品を総称して「被告製品」という )の輸入及び販売行為は,上 。 記液体収納容器の特許権を侵害するものである,又は,特許法101条2号に,, より上記液体供給システムの特許権を侵害するものとみなされる と主張して被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の輸入,販売及び販売のための展示の差止めを求めた事案である。 なお,原告は,平成21年8月27日の本件第2回弁論準備手続期日において,被告製品1に関する販売等の差止請求の訴えを取り下げたものの,被告は取下げに同意しなかった。原告は,同年12月22日の本件第4回弁論準備手続期日において,被告製品1を輸入,販売する行為が原告の上記特許権を侵害する旨の主張を撤回した。 1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である )。 () 当事者1原告は,事務機器,光学製品等を製造,販売する会社である。 被告は,インクリボンの製造販売,プリンター用インク補給装置の製造販売等を業とする会社である。 ( ) 本件特許2ア 原告は,次の特許権(以下,後記特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1 請求項5の発明を 本件発明2 といい これらを併せて 本 」,「」,「件発明」という。また,本件発明1に係る特許を「本件特許1 ,同特許」に係る特許権を「本件特許権1」などといい,これらの特許ないし特許権を併せて「本件特許」ないし「本件特許権 ,本件特許に係る明細書(別 」紙特許公報参照)を「本件明細書」という )を有している。。 特 許 番 号 第3793216号発明の名称 液体収納容器,該容器を備える液体供給システム,前記容器の製造方法,前記容器用回路基板および液体収納カートリッジ出 願 日 平成16年11月15日優 先 日 平成15年12月26日登 録 日 平成18年4月14日特許請求の範囲【請求項1】別紙1「特許請求の範囲 (以下,単に「別紙1」という )の「請 」。 求項1 「訂正前」欄記載のとおり 」【請求項5】別紙1の「請求項5 「訂正前」欄記載のとおり 」イ 本件発明1及び本件発明2を構成要件に分説すると,それぞれ,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1A1」などという 。。)【本件発明1】別紙2「構成要件の分説 (以下,単に「別紙2」という )の「請求 」。 項1 「訂正前」欄記載のとおり 」【本件発明2】別紙2の「請求項5 「訂正前」欄記載のとおり 」( ) 本件訂正請求3ア 被告は,平成21年に,本件特許につき特許無効審判請求(無効2009-800141)をした(乙52 。)イ 原告は,上記審判事件において,平成21年9月24日付けで審判事件答弁書とともに,特許庁に対し,次のとおり,本件特許の請求項1及び請求項5について訂正請求(以下「本件訂正」という )をした(乙52。。 以下,本件訂正後の請求項1の発明を「本件訂正発明1 ,本件訂正後の」請求項5の発明を「本件訂正発明2」といい,両発明を総称して「本件訂正発明」という 。。)【請求項1について】別紙1の「請求項1 「訂正後」欄記載のとおり 」【請求項5について】別紙1の「請求項5 「訂正後」欄記載のとおり(なお,原告は,本件 」訂正に伴い,本件訂正前の請求項3及び4を削除した。そのため,本件訂正前の請求項5は,同訂正により請求項3となる )。 ,, ウ 本件訂正発明1及び本件訂正発明2を構成要件に分説すると それぞれ次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1A1」などという 。’。)【本件訂正発明1】別紙2の「請求項1 「訂正後」欄記載のとおり 」【本件訂正発明2】別紙2の「請求項5 「訂正後」欄記載のとおり 」( ) 原告製プリンタ及び原告製インクタンク 4原告は インクジェットプリンタである PIXUS シリーズ 以下 原 ,「」(「告製プリンタ」という )並びに同プリンタに使用するインクタンクである 。 「BCI-9BK」及び「BCI-7e系 (以下 「BCI-9BK」を 」,「原告製インクタンク1 「BCI-7e系」を「原告製インクタンク2」 」,といい,両者を総称して「原告製インクタンク」という )を製造し,販売。 している(甲3の1,2 。)原告製インクタンク1と原告製インクタンク2とは,その形状が異なっており,前者の方が後者よりも大型である。また,各インクタンクに収納されるインクの色(種類)は,原告製インクタンク1が,ブラックの1色のみであり,原告製インクタンク2が,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン,フォトマゼンタ,フォトシアン,レッド及びグリーンの8色である(甲3の1,2 。)原告製プリンタのタンクホルダには,原告製インクタンク1を1個及び原告製インクタンク2を複数個搭載することができる。原告製プリンタのタンクホルダに原告製インクタンクを搭載する位置は,インクタンクの形状(原告製インクタンク1と原告製インクタンク2の別)及びインクの色(種類)によって,あらかじめ決められている(甲3の1,2,甲4 。)( ) 被告製品5ア 被告製品の構造及び形状被告製品は,別紙物件目録( )及び( )の第2及び第3記載の構造のイン 12クタンク本体に,同目録第1記載の表示を付し,インクを充填したインクタンクである(甲4,甲10の1〜4。なお,後記のとおり,被告製品の構造の一部については,当事者間に争いがある 。。)被告製品1と被告製品2とは,その形状が異なっており,被告製品1の方が被告製品2より大型である。 被告製品に収納されるインクの色(種類)は,被告製品1が,ブラックの1色のみであり,被告製品2が,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン,フォトマゼンタ及びフォトシアンの6色である。 イ 被告製品と原告製プリンタの関係被告製品は,原告製プリンタに装着することができる(なお,被告製品2のうち,インクの色(種類)がフォトマゼンタないしフォトシアンの物は,一部の原告製プリンタ(甲第4号証において調査対象とされた「PIXUS iP4500」など)には装着することができない 。。)原告製プリンタのタンクホルダには,被告製品1を1個及び被告製品2を4個ないし6個搭載することができる。 原告製プリンタのタンクホルダに被告製品を搭載する位置は,インクの形状(被告製品1と被告製品2の別)及びインクの色(種類)によって,あらかじめ決められている。 ウ 被告製品の輸入,販売被告製品は,被告の100%子会社である香港法人「NS TECHNOLOGY(H.K)LTD(中国工場名:龍昇科技精密廠)におい .」て製造されている。 被告は,業として,上記香港法人から被告製品を輸入し,株式会社プレジールなどに販売している。 2争点( ) 被告製品2は,本件発明1及び本件訂正発明1の構成要件を充足するか 1(争点1 。)( ) 被告製品2を輸入,販売する行為は,特許法101条2号により,本件 2特許権2を侵害するものとみなされるか(間接侵害の成否 (争点2 。))( ) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(特許法10 34条の3の抗弁の成否 (争点3 。))ア 本件発明は,進歩性を欠くか(争点3-1)イ 本件発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するか(争点3-2)ウ 本件発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号(明確性要件)に違反するか(争点3-3)エ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号(実施可能要件)に違反するか(争点3-4)オ 本件特許の無効理由は,本件訂正により解消されるか(争点3-5)(ア) 本件訂正は,特許法134条の2の訂正要件を満たすか(争点3-5-1)(イ) 本件訂正発明は,進歩性を欠くか(争点3-5-2)(ウ) 本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は 特許法36条6項1号 サ ,(ポート要件)に違反するか(争点3-5-3)(エ) 本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は 特許法36条6項2号 明 ,(確性要件)に違反するか(争点3-5-4)(オ) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は 特許法36条4項1号 実 ,(施可能要件)に違反するか(争点3-5-5)( ) 原告が被告に対して本件特許権に基づき被告製品2の輸入,販売等の差 4,, () 止めを求めることは 独占禁止法に違反し 権利を濫用するものか 争点43 争点に関する当事者の主張( ) 争点1(被告製品2は,本件発明1及び本件訂正発明1の構成要件を充 1足するか)について[原告の主張],(,「 」。 ), 以下のとおり 被告製品2 以下 単に インクタンク ともいう は本件発明1及び本件訂正発明1の構成要件をいずれも充足する。 したがって,被告が被告製品2を輸入,販売する行為は,本件特許権1を侵害する(なお,前記のとおり,原告は,被告製品1を輸入,販売する行為が本件特許権を侵害する旨の主張については,本件第4回弁論準備手続期日において,これを撤回した 。。)ア 構成要件1A及び1A’について被告製品2は,次のとおり,構成要件1A1ないし1A4及び構成要件1A1’ないし1A5’の構成を備えた原告製プリンタ(記録装置)のキャリッジに対して,着脱可能である。 したがって,被告製品2は,構成要件1A(1A1〜1A5)及び1A(1A1’〜1A6 )を充足する。 ’’(ア) 構成要件1A1及び1A1’について被告製品2は,液体インク収納容器であり,原告製プリンタは,複数の被告製品2を搭載して移動することのできるキャリッジを備えている(甲4・3頁,甲10の1,2 。)したがって,原告製プリンタは 「複数の液体収納容器が搭載可能」 ,(構成要件1A1)なものであり 「複数の液体インク収納容器を搭載 ,して移動するキャリッジ (構成要件1A1 )を備えている。 」’(イ) 構成要件1A2及び1A2’について原告製プリンタのタンクホルダには 被告製品2に設けられた基板 別 ,(紙物件目録( )の第2【図1】ないし【図3】の番号100を参照)と 2電気的に接続する接点が設けられている(甲4・3頁 。)したがって,原告製プリンタは 「液体収納容器に備えられる接点と ,電気的に結合可能な装置側接点 (構成要件1A2)及び「液体インク 」収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点 (構成要」件1A2 )を備えている。’(ウ) 構成要件1A3及び1A3’について原告製プリンタには,キャリッジの箇所に向かい合うように,被告製品2の発光部(別紙物件目録( )の第2【図1】ないし【図3】の番号 2101を参照 )からの光を受光する受光手段が一つ設けられている。 。 同プリンタのすべてのタンクホルダに被告製品を装着した状態でプリンタの上部カバーを閉じると,キャリッジは,上記受光手段の付近まで移動し,受光手段の付近で細かく移動する。これによって,受光手段に対向するインクタンクは,次々と入れ替わる。 そして,各インクタンクが装着されるべき搭載位置(原告製プリンタでは,前記1( )のとおり,インクタンクの形状及び色によって,イン 4クタンクを搭載する位置があらかじめ定められている )が受光手段に。 対向する位置に来たときに,当該インクタンクの発光部を発光させ,上記発光を受光部で受光することができるかどうかを確認する。 インクタンクが正しい位置に装着されていれば,上記発光を受光部で受光することができるので,上記処理により,各インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを確認することができる(上記処理を,以下「本件光照合処理」という (甲4・3頁及び4頁,甲10の1〜 。)4。)したがって,原告製プリンタは 「液体収納容器からの光を受光する ,受光手段 (構成要件1A3 ,並びに 「前記キャリッジの移動により 」),対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ ,及び 「該受光手段で該光を受光することによって前記液体イン 」,ク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段 構」(成要件1A3 )を備えている。’(エ) 構成要件1A4及び1A4’について原告製プリンタは,各インクタンクと接続するタンクホルダのコネクタが,タンクホルダの裏側において,共通の配線で接続されている。 本件光照合処理の際には,上記配線を通じて,各インクタンクを光らせるための色情報のコードが各インクタンクに送信され,各インクタンクは,色情報を受信すると,色情報のコードを,インクタンクの基板上のICチップ(別紙物件目録( )の第2【図1】ないし【図3】の番号 2103を参照 )に保持されている自己の色情報のコードと比較し,両 。 者が一致している場合に,制御コードに基づきインクタンクの発光部を点灯させる(なお,両者が一致しないときは,制御コードに基づく発光部の点灯は,行われない (甲4・5頁及び6頁,甲10の1〜4 。 。))したがって,原告製プリンタは 「搭載される液体収納容器それぞれ ,の前記接点と結合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続する配線を有した電気回路 (構成要件1A4 ,及び 「搭載される液体イン 」),ク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路 (構成要件1A4 )を備えている。 」’(オ) 構成要件1A5’について上記(ウ)及び(エ)のとおり,原告製プリンタは,本件光照合処理を行うことにより,各インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出することができる。 したがって,原告製プリンタは 「前記キャリッジの位置に応じて特 ,定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成要件1A5 )機能を 」’備えている。 イ 構成要件1B及び1B’について被告製品2は,その支持部材の根本付近の底面部に基板が設置され,その基板には,原告製プリンタ側のコネクタと電気的に接続する接点が4個設けられており,基板は,接点がインクタンクの外側に向くように設置されている(別紙物件目録()の第2【図1】ないし【図3】の番号100 2及び102を参照 (甲4・7頁及び8頁 。 。))したがって,被告製品2は,構成要件1B及び1B’の「前記装置側接」, 。 点と電気的に接続可能な前記接点 を備えており 同構成要件を充足するウ 構成要件1C及び1C’について被告製品2は,その基板に設けられたICチップに,各インクタンクの色に応じた色情報を保持している(甲4・9頁〜11頁 。)したがって,被告製品2は,構成要件1Cの「液体収納容器の個体情報を保持可能な情報保持部」及び同1C’の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」を備えており,同構成要件を充足する。 エ 構成要件1D及び1D’について被告製品2は,その基板の上部に,発光部であるLEDが設けられており,本件光照合処理の際,同発光部から,原告製プリンタの受光部に投光するための光を発光する。 したがって,被告製品2は,構成要件1Dの「発光部」及び同1D’の「」, 前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部 を備えており同構成要件を充足する。 オ 構成要件1E及び1E’について被告製品2は,その基板上のICチップに対して,インクの色に応じた色情報に発光コマンド(制御部に発光を命じる命令コード)を付けた信号を送付すると,インクタンクの色と送信した色情報が一致している場合のみ発光し,その他の場合は発光しない(甲4・11頁 。)したがって,被告製品2は,構成要件1Eの「前記接点から入力される個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」及び同1E’の「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」を備えており,同構成要件を充足する。 カ 構成要件1F及び1F’について上記のとおり,被告製品2は,構成要件1A1ないし1A4及び同1A1’ないし1A5’の構成を備えた原告製プリンタのキャリッジに対して着脱可能であり,構成要件1Bないし1E及び同1B’ないし1E’の構成を備えた,液体インク収納容器である。 したがって,被告製品2は,構成要件1Fの「 上記各構成を)有する (ことを特徴とする液体収納容器」及び同1F’の「 上記各構成を)有す (ることを特徴とする液体インク収納容器」に該当し,同構成要件を充足する。 [被告の主張]ア 原告製プリンタ及び被告製品2の構造原告製プリンタが,? 被告製品2と電気的に結合可能なプリンタ側接点,? 被告製品2の発光部からの光を受光する光センサ(受光手段 ,)? 上記?の複数のプリンタ側接点をバス接続(共通に電気的接続)する配線,を有することについては,知らない。これらの点は,原告製プリンタの内部構成の問題であり,甲第4号証の写真だけでは明らかでない。 被告製品2が,発光部を制御する制御部とインクタンクの個体情報を保持可能な情報保持部とが一体となったICチップを有し,電極パッドを介して供給される電気信号及び電力によりICチップが発光部の発光の制御を行うことについては,知らない。上記ICチップは,被告が自ら製造又,,, は製造委託した物ではなく 別のメーカーから仕入れた物であり 被告は同メーカーから,ICチップの構造等に関する詳細な情報を提供されていない。また,甲第4号証に記載の動作確認実験は,プリンタ装置を用いた実験ではなく,CPUボードによる実験にすぎないので,ICチップが上記構造を有することを証明するものとしては,不十分である。 イ 被告製品2は本件特許権1を侵害しないこと(ア) インクタンク単体では非侵害であること本件明細書に記載のある本件発明の実施例を要約すると,キャリッジ上に取り付ける4つの装着部に対し,少なくともすべて異なる色の同形状のインクタンクが1個ずつ計4個,位置を問わず装着されることを前提に,プリンタの受光センサーとインクタンクのLED等を用いて光照合処理を行っている。 このように,本件発明は,プリンタのキャリッジ上に,複数のインク,, タンクが各色1個ずつ すべて装着された構成を必須とするものであり,。 インクタンクのみならず プリンタを必須の構成要件とするものであるしたがって,本件発明は,インクタンク単体の発明ではありえず,インクタンクを搭載したプリンタの発明というべきであり,被告製品2単体では,本件特許権1を侵害しない。 (イ) 交換用インクタンクは非侵害であることa 原告製プリンタにおいて,複数のインクタンクを同時に交換することはあり得ないこと原告製プリンタを新規に購入する場合,その付属品として,原告製インクタンクが,各色1セットずつ同梱されている。 そのため,原告製プリンタを購入したユーザーは,当初は,原告製インクタンクを装着して使用を開始し,いずれかのインクタンクを使い切ったため交換する際に,初めて,交換用インクタンクを使用することとなる。 ,, しかしながら 各色のインクタンクにおけるインクの消耗の仕方は印刷する画像の色合いや,印刷物の内容によって異なり,本来的に同一ではないから,複数のインクタンクのインクが同時になくなる(インクタンクが空になる)確率は,無に等しいものである。 また,インクタンクは高価であるから,インクを使い切るまで使用,, するのは当然であり 空になった1個のインクタンクを交換する際にユーザーが残量の残っている他のインクタンクを同時に交換するということも,合理的に考えてあり得ない。 以上の点は,? 原告が作成した原告製プリンタの操作ガイド(乙56の1。以下「原告製プリンタ操作ガイド」という )に 「一度。,に複数のインクタンクを外さず,必ず1つずつ交換してください 」。 と記載されていること(55頁 ,? 原告製プリンタでは,インク )タンクのインクが1個でもなくなった場合には,プリンタ本体のエラーランプが点滅し,インクタンクを交換しない限り,印刷を続行する(,, ことができなくなること 原告製プリンタ操作ガイド・9頁 53頁87頁,89頁 ,? 原告製プリンタでは,インクタンクのインク )が少なくなった場合にもインクランプは点滅するものの,インクがなくなった場合の点滅の形態(点滅速度)とは明確に異なっている上,上記操作ガイドには,インクが少なくなったにすぎない時点でのインクタンクの交換を許容する記載は存在しないこと(原告製プリンタ操作ガイド・53頁 ,などからも裏付けられる。なお,原告製プリン )タ操作ガイドには,インクタンクがなくなったことを示すエラーランプが点滅したときでも,リセットボタンを押す,ないし,同ボタンを5秒以上押し続けることにより,印刷を続けることができる旨の記載も存在する(87頁,89頁 。しかしながら,同記載に続けて 「イ ),ンク切れの状態で印刷を続けると,故障の原因となるおそれがあります 「インク切れの状態で印刷を続けたことが原因の故障について 。」,はキヤノンは責任を負えない場合があります 」などと記載されてい 。 ることから,ユーザーが,故障の危険や異常色の印刷となることなどを承諾してリセットボタンを押し,2個目のインクタンクがなくなるまで異常色の印刷を継続することは,あり得ない。 以上のとおり,被告製品2を原告製プリンタに誤装着する場合としてあり得るのは,最初に装着した原告製インクタンクのいずれかが消耗したため交換する際に,取り外したインクタンクと別の色の被告製品2を誤って装着してしまう場合,すなわち,2個同色を装着した場合のみである。 ,, b 原告製プリンタにおいて 一つのインクタンクのみを交換する場合光照合処理を行わずに誤装着を防止することができること本件明細書の実施例における装着確認制御 段落 0098 〜 0 (【 】【107 )でのシーケンス(あらかじめ定められた順序又は手続にし 】たがって,制御の各段階を逐次進めていくこと)では,インクタンク交換時に一つのインクタンクのみを交換することしか記載されていない。 また,上記制御は 「インクタンク交換位置」に到達後にされるこ ,と(段落【0098 )からも明らかなように,交換時にされるもの 】,, , (, であるから この時 プリンタ本体には 既に各色一つずつ 例えばブラック,シアン,マゼンタ,イエロー)のインクタンクが正常位置に搭載され,本体側の制御部において,各インクタンクの色情報を認知済みであることが前提となっている。 そして,同実施例によれば,一つのインクタンクのみを交換する際に誤った色のインクタンクが装着された(すなわち,同色のインクタンクが2個装着された状態となった)場合には,プリンタ本体の制御部において,すべての色情報を認識することができないと判断し,本件光照合処理を行うことなく,装着確認制御を異常終了させる(図26。)c小括以上のとおり,上記実施例の交換インクタンクの場合,本件光照合処理を用いることなくインクタンクの誤装着が防止されるから,交換用のインクタンクである被告製品2が本件発明の「液体収納容器」ないし「液体インク収納容器」に含まれることはない。 (ウ) 「液体収納容器からの光を受光する受光手段 (構成要件1A3) 」及び「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段 (構成要件1A3 )の解釈 」’本件明細書には,発明の効果として 「このようなインクタンクを特 ,定した発光制御が可能な場合,例えば,キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記処置(判決注:本件訂正により 「処置」を,「」 ( )。。) 所定 と訂正する旨の請求がされている 甲8・11頁 以下同じの位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる (段落」【0019 )と記載されているものの 【課題を解決するための手段】 】,(段落【0011】〜【0018 )の欄には,本件発明の特許請求の 】範囲そのものが記載されているにすぎず,本件特許請求の範囲を説明する具体的な記述は存在しない。 また,本件発明1及び本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載には,「」,「」 ,「」 発光部 受光手段 という用語が用いられているものの 発光部と「受光手段」の関係が不明確で,どのように発光を検出するのかが不明であり,この点について実施例以外に十分な開示がされているとはいえない。 したがって,本件発明の特許請求の範囲の記載を解釈するに当たっては,本件明細書に記載された実施例に記載されている発光の検出方法を考慮して解釈せざるを得ないというべきである。 発光部と受光手段の関係について,本件明細書の実施例には,インクタンクの底面と正面が交わる部分に基板が設けられ,基板の外側に向かって位置する面に電極パッドが設けられて,タンクホルダに設けられた接点と接触し,インクタンクの内側に向かって位置する基板の面に発光部が設けられ,タンクホルダに上記発光部からの光の光軸を確保するための穴を設けて光を通し 受光部に到達させる構成が開示されている 段 ,(落【0034 【0038 ,図4 。 】,】)また,本件明細書には,上記構成の「変形例」として,発光部が発する光を光ファイバなどの導光性部材を用いて所要の位置に導くことが開(【 】,【】,)。, 示されている 段落 0046 0047 図12 この場合もタンクホルダに穴を開け,導光性部材を通すことによって光を導いていることから,本件明細書に開示されている受光手段の受光方法は,タンクホルダに穴を開けて光を通す構成だけであるといえる。 なお,本件明細書には,インクタンク上部に発光部を設けることにより,タンクホルダに穴を空けることなく受光手段に投光する構成も開示されている(段落【0128】〜【0132 。しかしながら,同構 】)成は,基板と別の位置に発光部が設けられ,発光部と基板とが別途配線部を介して接続されているのであって,発光部が設けられている基板がインクタンクの底面側に設けられているものではない。そのため,本件明細書に触れた当業者が,本件発明に係るインクタンクについて,一つの基板に接点及び発光部を設け,当該基板をインクタンクの底面側に設ける構成を実施しようとした時には,上記のようにタンクホルダに穴を開けることでしか発光部の光を受光手段で受光させることができないというべきであり,上記段落【0128】ないし【0132】の記載は,「」「 」 上記構成の基板を設けたインクタンクにおける 発光部 と 受光手段の光の検出方法の実施形態とはいえない。 ,「 」 したがって 構成要件1A3の 該液体収納容器からの光を受光する及び同1A3’の「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」とは 「インクタンクホルダに空けられた穴もしくは光透過性の部 ,分を通じて光を通すことにより該液体収納容器からの光を受光する ,」と解するのが相当である。 そうすると,被告製品2は,一つの基板に接点及び発光部を設け,当該基板をインクタンクの底面側に設ける構成であるにもかかわらず,原告製プリンタのタンクホルダには,光を通すための穴又は光透過性の部分は存在しないものであるから,原告製プリンタは,構成要件1A3及び1A3’所定の方法で被告製品2からの発光を受光するものではないというべきである。 (エ) 「複数の液体(インク)収納容器 (構成要件1A1及び1A1 ) 」’並びに「記録装置に対して着脱可能 (構成要件1A4及び1A5)及 」び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能 (構成要件1A5’」及び1A6 )の解釈’a 本件発明が解決しようとする課題本件明細書には,本件発明が解決しようとする課題について,次のとおり記載されている。 「一方,さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン)インクに,濃度の薄い淡色マゼンタ,淡色シアンといったインクが使われるようになってきており,さらにはレッド,ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案されてきている。このような場合,インクジェットプリンタに対しては7〜8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際に,間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要となってくる。特許文献3には,インクタンクがキャリッジに搭載される際の,キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をインクタンクごとに異ならせ,これにより,インクタンクが誤った位置に装着されることを防止している構成が開示されている (段落【0004 ) 。」】「,, インクタンクの搭載位置を特定する構成としては 上述したように搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら,この場合は特に,インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタンクを製造する必要があり,製造効率やコストの点で不利となる (段落【0007 ) 。」】b 光照合処理による効果本件明細書には,上記aの課題に対して本件発明の構成をとることによる効果について,次のとおり記載されている。 「本実施形態では,インクタンクの装着位置について,例えば,インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし,それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから,それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため,本光照合処理を行い,誤って装着されている,。,, 場合は ユーザにその旨を知らせるものである これにより 特にインクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる (段落【01。」08 )】c 「複数の液体収納容器」及び「着脱可能」の解釈以上の記載からすれば,本件発明は,誤装着防止という従来からあった課題に対し,本件発明の構成を備えることで,インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図りつつ,誤装着防止を実現するという効果を奏するものであると解すべきである。 そうすると,一つでも異なる形状の液体収納容器があれば,上記効果を奏することができず,製造効率やコストの点で不利となってしま,,, うため 本件発明における液体収納容器とは 上記効果を奏するようすべて同一形状である必要があるというべきである。 したがって,構成要件1A1及び1A1’における「複数の液体収納容器(液体インク収納容器 」とは 「すべて同一形状の複数の液 ),体収納容器(液体インク収納容器 」と,構成要件1A5及び1A6 )’の「着脱可能」とは 「すべて同一形状の複数の液体収納容器(液 ,体インク収納容器)が搭載可能な記録装置に着脱可能」と,それぞれ解するのが相当である。 d 原告製プリンタは上記「記録装置」に該当しないこと原告製プリンタのキャリッジは,前記1( )のとおり,形状の異な 5るインクタンクである被告製品1及び被告製品2を装着することができるものである。 よって,原告製プリンタは,上記の「すべて同一形状の複数の液体収納容器(液体インク収納容器)が搭載可能な記録装置」には当たらず,被告製品2は,構成要件1A4及び1A5並びに構成要件1A5’及び1A6’を充足しない。 (オ) 「液体インク収納容器位置検出手段 (構成要件1A3’及び1A 」5)の解釈’a 原告製プリンタの受光部は「位置検出手段」に該当しないこと ,構成要件1A5’にいう「液体インク収納容器位置検出手段」に関し,原告は,構成要件2A3の「液体収納容器の位置検出手段」の解釈として,原告製プリンタにおける受光部がこれに該当すると主張する(訴状24頁,28頁 。)しかしながら,一般に,受光部に当たる受光手段は,光を検出する受光素子としての機能を有するのみであり,インクタンクの搭載位置を検出する機能まで有するものでないことは,当業者にとっての技術常識である。受光手段が受光した結果は,プリンタ本体の制御回路等に送信され,かかる制御回路等においてインクタンクの搭載位置を判断し,検出する。 したがって,原告製プリンタの受光部は,インクタンクの搭載位置を検出する手段を有しておらず,原告製プリンタは,構成要件1A3’及び1A5’の「液体インク収納容器位置検出手段」を備えていない。 b 原告製プリンタは 「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」 ,機能を有しないこと(a) 「搭載位置を検出する」の意義「液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成要件1A3」’及び1A5 )とは,その通常の語義及び本件発明の課題がキャ ’リッジにおけるインクタンクの誤装着の防止であることからすれば 「各インクタンクがキャリッジ上のどの位置に搭載されている ,かを検出する」という意味であると解するのが相当である。 (b) 原告製プリンタは,入れ違えによる誤装着の場合に,インクタンクの「搭載位置を検出する」ことができないこと仮に,原告製プリンタにおいて,複数のインク色の被告製品2が同時に交換され,各インクタンクが,その本来搭載されるべき位置に搭載されず,入れ違いに装着された場合,次のとおり,原告製プリンタは,インクタンクが所定の位置に装着されていないことは検出できるものの,誤装着されたインクタンクが搭載された場所については検出することができない。 すなわち,例えば,ブラック色のインクタンクとシアン色のインクタンクを入れ違えた場合,本件光照合処理がされることにより,受光センサは,ブラックのインクタンクからの光を受光しないことによって,ブラックのインクタンクが所定の位置に装着されていないことは検出することができるが,シアンの所定位置に装着されたブラックのインクタンクからの光を受光できるわけではないため,結局,ブラックのインクタンクがどの位置に装着されているかを検出することはできない。 以上のとおり,原告製プリンタは,構成要件1A3’及び1A5’の「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」機能を備えていない。 (カ) 「制御 (構成要件1E及び1E )の解釈 」’構成要件1E及び1E’における「制御」の意義については,本件明細書中に「制御」の語義について直接的な定義がないため,その語が有する一般的な意味に従って解釈するのが相当である。 「制御」の一般的な意味は 「所定の目的に合致するよう意図的,思 ,いどおりに支配したり,あやつるという,何らかの自律的なコントロール・調節機能」を指すと解されている(日本語大辞典(乙7 ,工業プ)ロセス計測制御用語及び定義[日本工業規格 (乙43 。]))また,一般に,LEDなどによって実現される「発光部」の発光の状態は,点灯,点滅,消灯の3つの状態があり得るものであり,点滅については,ゆっくりとした点滅,速い点滅など,点滅速度を選択することができることは,周知の事柄である。 したがって 「制御」とは,発光部の発光を,いつ,どのタイミング ,で,点灯,点滅,消灯のいずれの状態とするのかについて,自身でコントロールし,また,発光部の点滅速度を自身で調節し得る機構を指すと解するのが相当である。 一方,原告製プリンタに被告製品2を搭載した場合,被告製品2の発光部の発光を制御するのは,原告製プリンタの制御回路(本件明細書の記載では,図19に記載のCPU301を備えた「制御回路300」に相当する構成)であって,被告製品2は,上記制御回路からの信号を受け取り,その指示どおりの発光,点滅を行っているにすぎない。 したがって,被告製品2は,構成要件1E及び1E’の「発光部の発光を制御する制御部」を備えておらず,同構成要件を充足しない。 [被告の主張に対する原告の反論]ア インクタンク単体では非侵害であるとの主張について,「 」 この点に関する被告の主張は いわゆるサブコンビネーションの発明についての請求項を認めない,との主張と思われる。 しかしながら,サブコンビネーションの発明について,組み合わせる相手方の要素を構成要件とすることは,特許庁の審査基準においても認められている。すなわち,特許庁の審査基準では 「サブコンビネーションと ,は,二以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明や,二以上の工程を組み合わせてなる製造方法の発明等(以上をコンビネーションという )。 に対し,組み合わされる各装置の発明,各工程の発明等をいう 」との定。 義の下に,サブコンビネーション形式の請求項も例示され,コンビネーションの発明を,サブコンビネーションの発明として特定し,特許請求の範囲に記載することを許容している(甲9 。)本件発明1及び本件訂正発明1においては,特定の構成を有するプリンタと組み合わせるインクタンクの構成を,当該プリンタの構造を引用することによって特定しており,同発明におけるインクタンクは,各構成要件を充足するための必要な機能を備えなければならない。すなわち,インクタンクは,プリンタ本体の共通配線と接続可能な端子を有している必要があり,プリンタ本体からの色情報信号を解読し,自己の情報保持部に保持されている色情報と照合し,動作を決定する機能を有さなければならず,さらに,キャリッジ上の特定の位置において,プリンタ本体の受光手段に対して,受光手段がインクタンクの存在を認識し判別するのに適した強度の発光をする機能を有さなければならない。 また,本件発明1及び本件訂正発明1の権利範囲については,いわゆる用途発明の特許が,当該用途に使用される場合に発明の実施になる関係と同様に理解される。物の発明形式の用途発明において,用途の記載が,物の構成を当該用途に適した内容に特定することによって,新規性・進歩性に寄与することは,特許解釈の常識であり,サブコンビネーション形式の発明においても,上記のとおり,組み合わせる装置の構成が必然的に特許発明の構成を限定する。 したがって,プリンタ本体の構成を特定することは,同時にインクタンクがその制御部及び情報保持部において備えるべき機能を特定するのであり,発明の特定として明確な意味を有している。 本件発明1及び本件訂正発明1は,このようなサブコンビネーションの発明として,プリンタ側の要件を構成要件とした液体収納容器についての発明であるから,当該構成要件を充足するプリンタに使用される製品であ,( ), 。 る以上 被告製品2 インクタンク は 単体で本件特許権1を侵害するイ 交換用インクタンクは非侵害であるとの主張について(ア) 原告製プリンタにおいて,複数のインクタンクを同時に交換することもあり得ること被告の主張は,被告製品2の交換用インクタンクは 「必ず1本ずつ,交換される」という,根拠のない主張に基づくものである。被告製品2が「交換用」として販売されていることから,直ちに 「1本ずつ交換,される」ものであって 「誤装着の可能性がない」とはいえない。 ,例えば,ユーザーが原告製プリンタと同時に被告製品も1セット購入し,初期装着時にまず被告製品から使用を開始することや,中古の原告製プリンタを譲り受けたような場合,譲受け時にはインクタンクが装着されておらず,譲受人が,被告製品を購入して全色同時に装着することもあるのであり,互換性インクタンクだからといって,必ず交換に使用されるとは限らない。 また,後記のとおり,複数のインクタンクが同時に交換を必要とする状態になることは,よく経験されることである。さらに,続けて大量の印刷を行う場合には,途中でのインク切れを防ぐため,あらかじめ,残存インク量の少ないインクタンクをまとめて交換しておく必要が高くなる。 なお,原告製プリンタ操作ガイドに 「一度に複数のインクタンクを ,外さず,必ず1つずつ交換してください」との記載があることが認められるものの,同記載は,2本以上のインクタンクを「同時に(いっぺんに 」取り外すような操作をしてはならない,ということであって,1 )回のインクタンク交換の機会において複数本のインクタンクを交換してはならない,という趣旨ではない。1回のインクタンク交換の機会において,複数のインクタンクについて,それぞれを「1本ずつ」取り外し装着することは,上記操作ガイドの記載の範囲内の行為であり,複数のインクタンクについて順次「1本ずつ」取り外して装着すれば,ある装着位置に誤った種類のインクタンクを装着することもあり得る。 原告製プリンタでは,インクが「少なくなった状態 「なくなった」,可能性がある状態」及び「ない状態」の,3段階のインク切れの警告が行われ 「なくなった可能性がある状態」及び「ない状態」の警告時に ,印刷が停止するものの,どちらの場合も,リセットボタンを押せば,インクタンクを交換しなくても印刷を続行することが可能であり,印刷続行が不可能となるわけではない 「インクがなくなった可能性がある」 。 と判断された場合であっても,若干のインクがタンク内に残っていることが多く,そのような場合,リセットボタンを押してそのまま印刷を継続すると,通常どおり印刷が可能である。 したがって,1本のインクタンクについて 「インクがなくなった可 ,」, , 能性がある と判断され それを示すエラーランプが点滅した場合でもリセットボタンを押して継続使用している間に,2本目,3本目のインクタンクについても「インクがなくなった可能性がある」と判断され,エラーランプが更に点滅することもあるそして 2本目 3本目の イ 。,, 「ンクがなくなった可能性がある状態」に対して,それぞれリセットボタンを押して印刷を継続しているうちに,とうとういずれかがインク切れになってしまうこともあり得る。このような場合,ユーザーにとって,インクの交換作業は面倒な作業であり 「できるだけまとめて済ませて ,しまいたい」というのは当然の気持ちであるから 「なくなった可能性,がある状態」の複数本のインクタンクをまとめて交換することは,現実に起こり得ることである。 さらに 「なくなった可能性がある状態」の警告の前に 「少なくな ,,った状態」の警告も行われることから,複数本まとめてインクタンクを交換することは,より一層頻繁に生じる事態となる。例えば 「なくな,った可能性がある状態」の警告が1本目のインクタンクについて出された後に,リセットボタンを押してしばらく使用し続けている間に,2本目,更に3本目のインクタンクについて 「少なくなった状態」の警告 ,が行われたような場合,又は,複数のインクタンクについて「少なくなった状態」の警告が行われた状態で印刷を継続している間に,そのうち1本について「なくなった可能性がある状態」の警告が行われたような場合,である。 このような場合,大量のカラー印刷を同時にミスなく仕上げたいと考えたユーザーが 「少なくなった状態」及び「なくなった可能性がある ,状態」の警告の行われたインクタンクをすべて同時に交換することや,インクタンクの交換作業はなるべく1度で済ませてしまいたいという心理から 「なくなった可能性がある状態」のインクタンクを交換するつ ,いでに 「少なくなった状態」のインクタンクも同時に交換してしまう ,ことは,十分あり得ることである。このようなユーザーの行動は,別段不合理ではない。 (イ) 原告製プリンタにおいて光照合処理が行われる場合について原告製プリンタにおいてインクタンクを1個だけ交換する場合,異なる色のインクタンクを誤装着したとしても光照合処理が行われないことについては,認める。このような場合は,バス接続により誤装着を防ぐことができるため,光照合処理を行うまでもないものである。 本件発明は,バス接続だけでは解決できない問題を解決することを意図した発明であり,本件発明の価値は,インクタンクの色の種類は正し,。 い組み合わせであるが 装着位置を間違えた場合を検出することにあるそして,2個以上のインクタンクを交換する場合に,最も起こりやすいのがこの誤装着であり,この意味の誤装着は,バス接続の簡易かつ安価な構成を使用する利益を得ようとする限り,本件発明を適用しないと防止することができない。 (ウ) 交換用インクタンクは本件特許権1を侵害すること以上のとおり,被告製品2について,本件発明1及び本件訂正発明1は実施されるのであり,被告製品2が上記発明の構成要件を充足する以上,同製品を輸入,販売する行為は,本件特許権1を侵害する。 ウ 「液体収納容器からの光を受光する受光手段 (構成要件1A3)及び 」「 」 液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段(構成要件1A3 )の解釈’被告の主張は,何の合理的理由もなく,請求項の構成要件を実施例の態様に限定するものであり,特許法の一般的な解釈に合致しない。実施例とは,請求項の具体的な実施態様の例にすぎず,請求項の技術的範囲が実施例によって限定されるものではない。 また,本件明細書には,ホルダに穴を空けて導光性部材を通す以外の方法も開示されている(段落【0128】〜【0133 ,図35〜37 。】)これに対し,被告は,上記段落【0128】以下の構成はインクタンクの底面側に発光部を設けていないから,底面側に発光部を設けているインクタンクにおける「発光部」と「受光部」の光の検出方法の実施形態とはいえない,などと主張するが,失当である。上記段落【0128】以下のインクタンクの構成(発光部を設ける位置)が被告製品2と同じかどうかということと,上記段落【0128】以下に数個の異なる構成が開示されており,本件発明をホルダに穴を空ける一実施例の構成に限定解釈する必要などない,ということとは,まったく関係がない。 エ 「複数の液体(インク)収納容器 (構成要件1A1及び1A1 )並 」’びに 記録装置に対して着脱可能 構成要件1A4及び1A5 及び 記 「」 ()「録装置の前記キャリッジに対して着脱可能 (構成要件1A5’及び1A 」6)の解釈’被告は,一つでも異なる形状のインクタンクがあれば,インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく誤装着防止を実現するという,本件発明の効果を奏することができないと主張する。 しかしながら,被告製品2には6通りもの色があり,これらは相互に異なる装着位置に装着することが可能であって,誤装着を生ずる可能性があるものである。 したがって,被告製品1と被告製品2の形状が異なるからといって,本件特許の作用効果を奏することができないというものではなく,被告の主張は理由がない。 オ 「液体インク収納容器位置検出手段(構成要件1A3’及び1A5 ) 」’の解釈(ア) 原告製プリンタにおける「位置検出手段」について本件明細書の段落【0108】ないし【0113】及び図28ないし30に説明された光照合処理の説明を理解すれば,構成要件1A5’の「液体インク収納容器位置検出手段」とは,液体インク収納容器からの光を受光し,その情報をプリンタ本体の制御回路で処理することによって液体インク収納容器の位置を検出するものであることを,容易に理解することができる。 このように 「液体収納容器位置検出手段」とは,受光手段と組み合 ,わせて機能するプリンタ本体の制御回路のことをいい,プリンタ本体の受光部のみを指すものではない。 (イ) 「液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成要件1A3’ 」及び1A5 )の意義’本件明細書の段落【0010】には,本件発明の目的について 「イ,ンクタンクなど液体収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすること ,と説明され,段落【0019】には,発 」明の効果について 「キャリッジに搭載された複数のインクタンクにつ ,いて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより,例えば,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,結果として,インクタ。」。 ンクごとにその搭載位置を特定することができる と説明されている本件明細書の上記記載からすれば,構成要件1A3’及び1A5’の「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」とは 「所定の位置での,発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識」する,という意味であると理解され,誤った位置に搭載されたインクタンクがどの位置に搭載されているかを確定させることまでは意味しないというべきである。 バス接続を使用するインクタンクの従来技術においては,あるインクタンクが正しい位置に搭載されている事実の確認もできなかったし,別のインクタンクの搭載位置が誤っていることも確認できなかったものである。本件発明及び本件訂正発明は,このような搭載位置に関する検出を可能にした新規な手段を本件明細書に記載した上で,当該手段の機能を,請求項に「搭載位置を検出する」と記載したものである。 カ 「制御 (構成要件1E及び1E )の解釈 」’本件明細書の段落【0092】には,実施例として開示された構成における発光部のオン・オフについて,次の手順で行われることが記載されている(なお,下線は原告が引いたものである 。。)「,,, LED101の点灯または消灯では 図24に示すように 上記と同様先ず 「開始コード+色情報」のデータ信号が,本体側から信号線DA ,。, TAを介して入出力制御回路103Aに送られてくる 上述したように色情報 によってインクタンクが特定され その後に送られてくる 制 「」 , 「御コード」に基づくLED101の点灯,消灯は特定されたインクタンクのみで行われる。点灯,消灯にかかる「制御コード」は,図23にて上述したように 「ON」または「OFF」のコードがあり 「ON」 ,,によってLED101の点灯が行われ 「OFF」によって消灯が行わ ,れる。すなわち,制御コードが「ON」のとき,入出力制御回路103Aは,図22にて前述したように,LEDドライバ103Cに対してオン信号を出力し,それ以降もその出力状態を維持する。逆に,制御コードが「OFF」のとき,入出力制御回路103Aは,LEDドライバ1,。 03Cに対してオフ信号を出力しそれ以降もその出力状態を維持するなお,LED101の点灯または消灯の実際のタイミングは,図24に示す各データ信号についてクロックCLKの7クロック目以降に行われる」。 上記引用部分,とりわけ下線部の記述を読めば,発光部の制御は,インクタンクの入出力制御回路103A及びLEDドライバ103Cで行われていることが理解される。 すなわち,プリンタ本体の制御回路から送られてくる「開始コード+色情報」は,まず,インクタンクの入出力回路によって判断され,色情報が自らのインクタンクの色に一致していると判断されると,入出力回路は,引き続き送られてくる制御コードをLEDドライバに送り,その結果,制御コードに従ったLEDの点灯・消灯が行われる。そして,本件明細書の図20ないし22に示されているとおり,103は,液体収納容器(インクタンク)に設けられた制御素子であり,その内部には,上記入出力制御回路及びLEDドライバが搭載されている。 また,以下のとおり,本件特許の発明思想からして,液体収納容器(インクタンク)に発光部の発光を制御する制御部を設けることは,必須の要件である。 すなわち,本件特許の基本構成は,各インクタンクとプリンタ本体とをバス配線で接続し,このバス配線で各インクタンクとプリンタ本体の間の情報伝達及びエネルギー供給を行うというものであり,同構成では,プリンタ本体からの命令がバス配線を通じて複数のインクタンクへ送信されるため,何らかの工夫を行わないと,プリンタ本体が各インクタンクに対して個別に命令を下すことができない。そこで,そのための工夫として,プリンタ本体から各インクタンクへの命令について,その冒頭に色情報を付加し,各インクタンクにおいて,上記色情報が自らのインクタンクのインクの色に一致しているか否かを判断し,一致している場合にのみ当該命令に反応することとしたものである。これにより,バス配線を通じて同じ命令がすべてのインクタンクへ送付されていても,特定のインクタンクにおいてのみ当該命令が実行されることが可能となる。 以上のとおり,上記仕組みにおいては,各インクタンクごとに,色情報を判断し,かつ,プリンタ本体からの命令を実行するための制御装置が必須となるのであり,構成要件1E及び1E’の「発光部の発光を制御する制御部」とは,上記制御装置にほかならない。 ( ) 争点2(間接侵害の成否)について 2[原告の主張]次のとおり,被告製品2は,これを原告製プリンタに装着すると,本件発明2及び本件訂正発明2の「液体供給システム」ないし「液体インク供給システム」を生成するものであり,インクタンクの誤った位置への装着を解消するという,上記各発明の課題を解決するために不可欠なものである。 また,被告は,被告製品2を 「CANON対応製品 「キヤノン互換イ ,」,ンクカートリッジ」として販売しており,被告製品2が原告製プリンタに装着されると上記各発明の実施に使用されることを理解した上で,被告製品2を輸入,販売している。 したがって,被告製品2を輸入,販売する行為は,特許法101条2号により本件特許権2を侵害するものとみなされる。 ア 原告製プリンタについて前記1( )及び3( )[原告の主張]アのとおり,原告製プリンタは,複 51数の被告製品2を互いに異なる位置のタンクホルダに搭載して移動するキャリッジ(構成要件2A1,2A1 )を備え,タンクホルダには,被告 ’製品2に設けられた基板と電気的に接続する接点(構成要件2A2,2A2 )が設けられている。 ’また,原告製プリンタには,被告製品2からの光を受光する受光手段が一つ設けられ,各インクタンクと接続するタンクホルダのコネクタが,タ,, ンクホルダの裏側において共通の配線で接続され 本件光照合処理により各インクタンクの装着位置を確認することができる(構成要件2A3,2A4,2A3 ,2A4 。’’)したがって,原告製プリンタは,構成要件2A1ないし2A4及び同2A1’ないし2A4’を充足する。 イ 被告製品2について前記( )[原告の主張]アないしカのとおり,被告製品2は,原告製プ 1リンタのキャリッジに着脱可能(構成要件2B,2B )であり,プリン’タ側の接点と電気的に接続可能な接点(基板 (構成要件2D1,2D1 ))を備え,基板に設けられたICチップに各インクタンクの色に応じた ’色情報を保持し(構成要件2D2,2D2,基板の上部には,上記受 ’)光部に投光するための光を発光する発光部(構成要件2D3,2D3 )’が設けられており,原告製プリンタに装着すると,本件光照合処理が行われる(構成要件2D4,2D4 ,2E ,2F 。 ’’’)したがって,被告製品2は,構成要件2B,2D1ないし2D4,2B,2D1’ないし2D4 ,2E’及び2F’を充足し,被告製品2を ’’,「」 装着した原告製プリンタは 構成要件2C及び2Eの 液体供給システムないし同2C’及び2G’の「液体インク供給システム」に該当し,同構成要件を充足する。 [被告の主張]ア 被告製品2を原告製プリンタに装着しても,本件発明2及び本件訂正発明2の構成要件を充足しないこと前記( )[被告の主張]イ(イ)ないし(カ)と同様の理由により,交換用 1インクタンクは本件特許権2を侵害するものではなく,構成要件2A3及’「 ( ) 」 び2A3 の 液体収納容器 液体インク収納容器 からの光を受光するとは 「インクタンクホルダに空けられた穴もしくは光透過性の部分を通 ,じて光を通すことにより該液体収納容器からの光を受光する」と,構成要件2B及び2B の 記録装置のキャリッジに対して着脱可能 とは す ’「 」 ,「べて同一形状の複数の液体収納容器(液体インク収納容器)が搭載可能な記録装置に着脱可能」と,それぞれ限定して解釈すべきである。また,原告製プリンタの受光部は,構成要件2A3及び2A3’の「液体収納容器(液体インク収納容器)位置検出手段」に該当せず,同構成要件の「液体収納容器(液体インク収納容器)の搭載位置を検出する」とは 「各イン,クタンクがキャリッジ上のどの位置に搭載されているかを検出する」という意味に,構成要件2D4及び2D4’の「制御」とは 「発光部の発光,を,いつ,どのタイミングで,点灯,点滅,消灯のいずれの状態とするのかについて,自身でコントロールし,また,発光部の点滅速度を自身で調節し得る機構」を指すと,それぞれ解するのが相当である。 したがって,被告製品2を原告製プリンタに装着しても,本件発明2及び本件訂正発明2の構成要件を充足しない。 イ 原告製プリンタ及びこれに付属する原告製インクタンクがユーザーに譲渡された時点で,本件特許権2は消尽していること本件発明2及び本件訂正発明2は 「液体供給システム(液体インク供 ,給システム 」についての発明であり,プリンタ及びインクタンクの両方 )を含むものである。また,前記のとおり,原告製プリンタは,原告製インクタンク1セットを同梱の上,販売されている。 ,, したがって 特許製品としての原告製プリンタ及び同梱インクタンクが特許権者である原告により,我が国においていずれもユーザーに譲渡された時点で,本件特許権2は消尽し,原告は,当該特許製品であるプリンタ及びインクタンクについて特許権を行使することはできないのが原則である。 もっとも 「特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工 ,や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許される (最高裁平成19年11月8 」日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁(以下「平成19年最高裁判決」という )参照 。しかしながら,本件における,当該特許製品の 。)属性(製品の機能,構造,材質,用途,耐用期間,使用態様 ,特許発明)の内容,加工及び部材の交換の態様(加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値 ,取引の実情等を総合考慮す )ると,以下のとおり 「加工や部材の交換」によって「当該特許製品と同 ,一性を欠く特許製品が新たに製造された」とは認められないというべきである。 (ア) 特許製品の属性製品の機能については,液体供給システムの機能の大半を担うのが原告製プリンタであることが,明らかである。 構造及び材質について,インクタンクは,プリンタの中のごく一部の指定された箇所(キャリッジ)に着脱可能に搭載されるという構造となっており,材質的にも,プリンタとインクタンクとは同質ではない。 用途は,印刷であり,制御装置,パーソナルコンピュータとの接続,印字ヘッド,用紙の収納部等を備えた原告製プリンタが,かかる用途のために必要な機能の大半を有している。 耐用期間は,原告製プリンタは,数年から10年程度という長期である。一方,個々のインクタンクは,インク残量がなくなればその耐用期間を終え,交換を余儀なくされるものであり,利用状況によるものの,一般に,プリンタに比べて相当短い。 使用態様については,インク残量がなくなれば,なくなったインクタンクごとに,新たなインクタンクに交換して使用するものであることが前提であり,インクタンクは,当初から,交換が予定されている。 (イ) 特許発明の内容本件発明2及び本件訂正発明2の内容は,低コストでインクタンクの誤装着を防ぐことを目的とした液体供給システムであり,プリンタとインクタンクから構成されている。そして,上記システムのうち,プリンタを代替物として交換することは予定されていないのに対し,インクタンクは,プリンタに対して着脱可能であることが明示されており,着脱による代替が予定されている。 (ウ) 部材の交換の態様インクタンクの交換がされた際の当該特許製品の状態は,インクの残量不足等に陥った特定のインクタンク部分のみが機能不全となっているものの,それ以外,特に,機能の大半を占めるプリンタ部分は,まったく正常であり,液体供給システム全体としての完全性を維持しているのが通常である。 ,,, 加工の内容及び程度について インクタンクの交換は 加工ではなくインクの残量不足等に陥った特定のインクタンクのみを交換するという程度であり,液体供給システム全体の完全性に影響を及ぼすものではない。 ,, 当該部材の特許製品中における技術的機能については 前記のとおり特許製品の印刷機能の大半を担うのは,プリンタ部分である。 経済的価値については,原告製プリンタの価格が1万8000円程度であるのに対し(乙38 ,交換される被告製品2の価格は,1個当た )り780円程度であり(甲5 ,20倍以上の開きがある。 )(エ) 取引の実情原告が原告製インクタンクを製造販売しているのに対し,被告は,原告製プリンタにおいて稼動する互換品インクタンク(被告製品2等)を製造販売しており,両者は,市場において競合する関係にある。 以上の(ア)ないし(エ)の考慮事由を総合的に検討すると,特許製品である原告製プリンタ及び原告製インクタンクを購入したユーザーが,インクタンクを被告製品2に交換することにより 「同一性を欠く特許製品が新 ,たに製造された」とはいえないというべきである。 ウ 被告製品2は 本件発明2及び本件訂正発明2の 液体供給システム 液 ,「(体インク供給システム 」の「生産に用いる物 (特許法101条2号) )」に該当しないこと特許法101条2号の「生産」とは,発明の構成要件のすべてを充足す()「 」 , る物 特許製品 を 新たに作り出す ことをいうものと解すべきであり「」 , 特許製品が新たに作り出された かの判断及びその判断基準については前記イの「同一性を欠く特許製品の新たな製造」の判断及びその判断基準と共通性を有する。 したがって,前記イと同様の理由により,原告製プリンタに被告製品2を装着することによって「特許製品が新たに作り出された」とはいえず,特許法101条2号の「生産」には当たらないというべきである。 エ 被告製品2は 「日本国内において広く一般に流通しているもの (特 ,」許法101条2号)に該当すること「日本国内において広く一般に流通しているもの (特許法101条2」号)とは,市場において広く取引され,たやすく入手することができることをいい,当該特許発明の実施に適しているが,それ以外の用途も有するものを意味するものと解される。 被告製品2は,市場において広く取引され,たやすく入手することができる物である(乙22 。また,被告製品2は,発光と受光という本件発 )明の特徴的機能を有しない,合計67機種のプリンタにおいても使用することができるのであり,一方,発光と受光の機能を有している原告製プリンタの数は,23機種にすぎない(乙29 。)したがって,被告製品2は,仮に,本件発明2及び本件訂正発明2の実施に適しているとしても,それ以外の用途も有する汎用品であるといえるから,特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当する。 オ 被告製品2は,本件発明2及び本件訂正発明2の「課題の解決に不可欠なもの (特許法101条2号)に該当しないこと 」「」 (), 発明による課題の解決に不可欠なもの特許法101条2号 とは当該対象物を用いることにより,初めて「発明の解決しようとしている課題」を解決することができるもの,すなわち,従来技術の問題点を解決するための方法として,当該発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等が,これに該当すると解するのが相当である。 原告は,被告製品2が本件発明2の課題(インクタンクの誤った位置への装着の解消等)を解決するために不可欠なものであると主張する。 しかしながら,原告製プリンタは,前記のとおり,誤って2個同色を装着するという,原告製プリンタにおいてインクタンクの誤装着を生ずる唯一の場合に,発光と受光による誤装着の検出を行わないものであり,そうである以上,被告製品2は,本件発明2及び本件訂正発明2の特徴的技術手段である,当該誤装着検出手段を直接形成するものには当たらないというべきである。 したがって,被告製品2は,特許法101条2号所定の,本件発明2及び本件訂正発明2の「課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。 [被告の主張に対する原告の反論]ア 本件特許権2は消尽していないこと本件発明2及び本件訂正発明2は,プリンタ本体とインクタンクの組合せから構成されており,いずれも,発明における重要な技術事項を有している。 また,価格については,プリンタ本体の主力機種がおおむね1万円台ないし数万円程度となっているのに対し,インクタンク一式(全部の色を含む)は数千円であり,プリンタ本体の通常の使用期間に対応するインクタ,。 ンクの価格を比較すれば インクタンクの価格の方が高くなることもある原告のプリンタシステムの技術において,プリンタ本体とインクタンクの技術は,共に重要であり,プリンタ本体及びその消耗品(インクタンクや印刷用紙等)へ多大な研究開発投資をし,それら製品の販売を通じて本件事業への投資の回収を図っているのであるから,原告が両製品の売上げに依存することは,当然である。そして,需要者によるプリンタ本体当たりのインクタンク使用量は必ずしも一定しないから,インクタンクは,需要者が各自の必要に応じて購入する方式の方が合理的な販売方法である。 このような原告製品の性質上,たとえ,原告製プリンタを新規に購入した際に原告製インクタンク一式が添付されているとしても,原告製プリンタの販売によって,原告が本件発明2及び本件訂正発明2の実施につき無制限の実施権を付与する意思など有していなかったことは当然であり,需要者にもそう認識される合理的な状況がある。 交換部材を使用する装置本体の販売において,特許権の消尽が成立するのは,装置本体が高価であり,装置本体の価格によって発明の対価が回収されたと合理的に認められる場合,すなわち,プリンタ本体の通常の寿命の期間における本件発明の利用価値に相当する回収がされた場合であって,かつ,交換部材が特許発明の実質的な構成要件を含まない場合に限られる。 また,平成19年最高裁判決の一般的規準から判断しても,本件は消尽論の適用されない場合である。すなわち,本件では,特許発明を構成するプリンタ本体とインクタンクの組合せにおいて,インクタンク部分は,発明の実施のための本質的な部分である,バス接続に対応する電気的接点,情報保持部,発光制御機構及びプリンタ本体の受光手段に対して発光する。, , 発光部とを備えている また バス接続に対応するインクタンクであって色情報に基づいて作動する発光部と発光制御部を備えるインクタンクは,被告引用のいずれの公知文献にも記載されておらず新規である。 このように,インクタンクが分担している本件発明2及び本件訂正発明2の構成要件は,発明の本質的な要素であることが明らかであり,プリンタ本体の使用者がインクタンクを購入してプリンタ本体に組み合わせる行為が上記発明の実施に該当することは,平成19年最高裁判決の論理からも,当然に認められる。 イ 被告製品2は 「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該 ,当しないこと被告製品2は,汎用的な用途のある普及品であるネジや釘と異なり,本,, 件発明の実施のために 原告製プリンタにのみ適合するように設計された原告製プリンタの専用品(他のメーカーのプリンタには使用することができないし,プリンタ以外の製品にも使用することができない)であって,特許法101条2号に該当する汎用品ではない。同号の趣旨からいって,,, このような専用品は たとえ家電量販店で大量に販売されていたとしても同号に該当する普及品とはみなされないというべきである。 ウ 被告製品2は,本件発明2の「課題の解決に不可欠なもの」に該当すること「 , 原告製プリンタにおいてインクタンクの誤装着を生ずる唯一の場合は2個同色を装着する場合である」との被告の主張が誤りであり,原告製プリンタにおいても,複数のインクタンクを同時に交換することが十分にあり得ることについては,前記( )[被告の主張に対する原告の反論]イの 1とおりである。 そして,原告製プリンタにおいて複数のインクタンクを同時に交換する場合には,本件光照合処理が行われるのであり,被告製品2の構成は,本件光照合処理に欠かせない要素である。 したがって,被告製品2は,本件発明2及び本件訂正発明2の「課題の解決に不可欠なもの」に該当する。 ( ) 争点3-1(本件発明は,進歩性を欠くか)について 3[被告の主張]本件発明1及び本件発明2は,以下のとおり,本件特許の最先の優先日前の公知刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることが,, できたものであり 特許法29条2項に違反して特許されたものであるから本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。 よって,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の行使をすることができない。 【本件発明1について】ア 無効理由1本件発明1は,本件特許の最先の優先日(平成15年12月26日)前である平成14年5月23日に頒布された刊行物である,WO 02/40275号国際公開公報(乙55。以下「乙55公報」という )に記載。 の発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙55公報の記載,, ,, 乙55公報には 次のとおり 本件発明1の構成要件1A1 1A21A4,1A5,1B,1C,1D,1E及び1Fに対応する記載が存在する。 a 構成要件1A1に対応する記載乙55公報には 印刷装置 プリンタ に複数の印刷記録材容器 イ ,( ) (ンクカートリッジ)が搭載可能であることが開示されている(請求項4,請求項16,1頁10行 。)b 構成要件1A2に対応する記載乙55公報には,複数のインクカートリッジに備えられる各記憶装置のデータ信号端子DT,クロック信号端子CT及びリセット信号端子RT(接点)が,プリンタに対する配線であるデータバスDB,クロックバスCB及びリセットバスRBを介して,プリンタに存在する(, 端子と電気的に接続されることが開示されている 18頁1行〜3行同頁8行〜20行 。)c 構成要件1A4に対応する記載乙55公報には,プリンタに搭載される複数のインクカートリッジに備えられた各記憶装置のデータ信号端子DT,クロック信号端子CT及びリセット信号端子RT(電気的接点)のそれぞれが,プリンタ側の接点に対して,データバスDB,クロックバスCB及びリセットバスRBの配線を介して共通に接続される構成(共通に電気的接続する配線を有した電気回路。いわゆるバス接続)が開示されている(上記bの記載のほか,17頁19行〜26行 。)d 構成要件1A5に対応する記載乙55公報には,プリンタに対して着脱可能なインクカートリッジが開示されている(30頁24行〜25行,31頁5行〜7行,同頁12行〜13行 。)e 構成要件1Bに対応する記載乙55公報には,上記bのとおり,プリンタ側と電気的に接続可能なインクカートリッジに備えられた電気的接点が開示されている。 f 構成要件1Cに対応する記載乙55公報には,インクカートリッジが有する各記憶装置内に備えられた,インクカートリッジの識別のための識別データ,インク残量等(個体情報)を保持する情報保持部(メモリアレイ)が開示されて(, ,) 。 いる 18頁1行〜3行 20頁17行〜21行 21頁1行〜3行g 構成要件1Dに対応する記載乙55公報には,キャリッジ上に備えられたLED(発光部)が開示されている(41頁17行〜22行 。)h 構成要件1Eに対応する記載乙55公報には,インクカートリッジ上の記憶装置が,メモリアレ() (),() イ 情報保持部 の保有する識別データ 個体情報 と 端子 接点から入力された識別データにかかる信号とに応じてプリンタに対して応答し,プリンタの操作パネル上のランプを点滅させる機能を有して(, , いることが開示されている 20頁2行〜6行 同頁17行〜19行21頁13行〜24行,22頁3行〜6行,同頁9行〜13行,26頁21行〜27頁10行,32頁25行〜33頁1行,43頁1行〜3行 。)また,乙55公報には,プリンタ側の制御回路が,?メモリアレイに書き込まれたインクカートリッジの残量情報が所定のインク残量値以下になっているかどうかを判定し,インクカートリッジの交換要求をすること,?誤ったインクカートリッジが取り外されていないかどうかを,前記識別データに対する応答という方法で判別し,誤った取り外しの場合に,ランプを点滅させるなどの報知を行うこと,?交換の要求された(交換の対象となる)インクカートリッジに対応するLEDを点灯又は点滅させることが開示されている(20頁17行〜21頁3行,30頁26行〜31頁23行,同頁25行〜34頁3行,同頁8行〜25行,41頁17行〜23行 。)なお,上記?の判定は,プリンタに備えられた「制御回路30」によって行われるものであり,同判定を行う機能がインクカートリッジ側の記憶装置に備えられているわけではないが,同機能は,インクカートリッジ上の記憶装置でもなし得ることであって,かかる機能をインクカートリッジ上の記憶装置に備えるか又はプリンタ側の制御回路に備えるかは,設計事項にすぎない。 以上のとおり,乙55公報には,端子から入力された所定のインク残量値に係る信号と,メモリアレイの保持するインク残量情報とに応じてプリンタに対して応答し,インクカートリッジに対応するLEDを点灯又は点滅させることまでが,強く示唆されている。 (イ) 乙55公報記載の発明乙55公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成1a1」などという )からなる液体収納容器に関す 。 る発明(以下「乙55発明1」という )が記載されている。 。 1a1 複数のインクカートリッジが搭載可能であって,1a2 該インクカートリッジに備えられる端子と電気的に接続されたプリンタ側端子と,1a4 搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続する前記プリンタ側端子に対して共通に電気的接続する配線(データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRB)を有した電気回路とを有するプリンタに対して1a5 着脱可能なインクカートリッジにおいて,1b 前記プリンタ側端子と電気的に接続可能な前記端子と,1c 少なくともインクカートリッジの識別データ,インク残量等の情報を保持可能なメモリアレイと,1d キャリッジに備えられたLEDと,1e 前記端子から入力される識別データに係る信号と,前記メモリアレイの保持する識別データとに応じてプリンタに対して応答しプリンタの操作パネル上のランプを点滅させ,また,前記端子から入力された所定のインク残量値に係る信号と,メモリアレイの保持するインク残量情報とに応じてプリンタに対して応答し,インクカートリッジに対応するLEDを点灯又は点滅させる記憶装置と,1f を有することを特徴とする液体収納容器。 (ウ) 本件発明1と乙55発明1の一致点a 構成要件1Aないし1C及び1Fについて乙55発明1の構成と本件発明1の構成要件とを対比すると,構成1a1が構成要件1A1に,構成1a5が構成要件1A5に,構成1fが構成要件1Fに,それぞれ相当することは明らかである。 また,構成1a2及び同1bにおける「端子」が,電気的な接続点という意味で,構成要件1A2及び同1Bにおける「接点」に対応すること,構成1a4における「データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRB」が構成要件1A4における「共通に電気的接続する配線」に対応すること,構成1cにおける「インクカートリッジの識別データ,インク残量等の情報」が構成要件1Cの「個体情報」に対応することは,いずれも明らかであるから,構成1a2が構成要件1A2に,構成1bが構成要件1Bに,構成1a4が構成要件1A4に,構成1cが構成要件1Cに,それぞれ相当する。 b 構成要件1Dについて構成1dは,発光部(LED)が液体収納容器(インクカートリッジ)側ではなくプリンタ側のキャリッジにある点が,構成要件1Dと異なる。 しかしながら,発光部を個々の液体収納容器に設けるか又は記録装置側に設けるかということは,単なる設計上の違いにすぎず,実質的な相違点ではない。キャリッジに設けた発光部(LED)が報知手段の1例にすぎないことは,乙55公報に 「なお,LED18は,キ ,ャリッジ101上ではなく,インク交換位置19の開口部に備えられていても良い。また,LEDに限らず白熱灯を始めとする種々のライトが用いられることはいうまでもない。以上,いくつかの実施例に基づき本発明に係る印刷記録材容器(インクカートリッジ)の識別装置を説明してきたが,上記した発明の実施の形態は,本発明の理解を容易にするためのものであり,本発明を限定するものではない。本発明は,その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく,変更,改良され得ると共に,本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである 」と記載されている(42頁2行〜10行)ことからも,容易 。 に理解することができる。 また,仮に,この点が相違点であるとしても,後記のとおり,インクカートリッジに発光部を設けることは,本件特許の最先の優先日当時における周知慣用技術であったものであるから,乙55発明1の構成1dにおける発光部をインクカートリッジに設けることは,極めて容易であった。 c 構成要件1Eについて構成1eは,構成要件1Eに対応するものである。なお,乙55発明1では,応答の結果として発光される「発光部」がキャリッジ上にある点が構成要件1Eと異なるが,この点が実質的な相違点でないことについては,上記bのとおりである。 (エ) 本件発明1と乙55発明1が相違する可能性のある点乙55発明1の構成と本件発明1の構成要件が相違する可能性がある点は,? 乙55発明1には,構成要件1A3(液体収納容器からの光を受光する受光手段)に相当する構成が存在しないこと(以下「相違点1-1」という ,? 乙55発明1では,液体収納容器に発光部が 。)備えられている(構成要件1D)のではなく,プリンタ側のキャリッジに備えられていること(以下「相違点1-2」という ,である。。)しかしながら,上記相違点は,次のとおり,実質的な相違点とはいえないもの又は乙55発明1に周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものであり,この点について進歩性が肯定されるものではない。 <相違点1-1について>a 構成要件1A3は,記録装置についての要件であるにすぎず,液体収納容器についての要件ではない。したがって,同構成要件は,液体収納容器についての発明である本件発明1において,何ら発明を特定する要素とはならず,相違点1-1は,本件発明1の進歩性を検討する上で無視されるべき事項である。 また,本件明細書は,本件発明の目的について次のように記載しており,受光手段による発光部からの光の検出は本件発明の目的ではないこと,すなわち,受光手段による発光部からの光の検出は,本件発明の結果にすぎず,本件発明の技術的思想には含まれないことが明らかにされている。 「本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり,その目的とするところは,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある (6頁5行〜9。」行 段落【0010 )】b 仮に,乙55発明1において構成要件1A3に相当する構成を欠くことが相違点であるとしても,次のとおり,記録装置に液体収納容器からの光を受光する受光手段を設けることは,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙55発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 (a) 平成13年10月23日に頒布された刊行物である,特開2001-293883号公報(乙2。以下「乙2公報」という )に。 は,インクジェット記録装置からインクタンク内の素子に光を発信し,外部B(インクジェット記録装置)で受信することにより素子の位置を検出する受光手段を設けることが開示されている(請求項21,5頁7欄35行〜36行,8頁13欄27行〜32行,同頁14欄2行〜6行,同欄10行〜14行 。)(b) 平成11年10月19日に頒布された刊行物である,特開平11-286121号公報(乙33。以下「乙33公報」という )。 ,, には インクジェットプリンタ装置に備えられたプリントヘッドとインクタンクとが,それぞれ光信号を授受するフォトダイオードセットを備え,インクタンクの種類番号や色信号等の情報を光信号の(, 形で互いに授受することが開示されている 4頁5欄9行〜15行8頁13欄47行〜14欄6行,同欄12行〜14行,同欄24行〜30行 。)(c) 平成14年1月9日に頒布された刊行物である特開2002-5818号公報(乙18。以下「乙18公報」という )には,イ。 ンクジェット記録装置に,インクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光する受光手段を備えることが開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行 。)(d) 平成15年12月3日に頒布された刊行物である,特開2003-341085号公報(乙34。以下「乙34公報」という )。 には,インク吐出方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)において,装置本体に発光素子と受光素子を設け,インクカートリッジには反射部材を設け,発光素子から出力されインクカートリッジの反射部材で反射された光を受光素子が受光する構成が開示されている(3頁4欄7行〜22行,6頁9欄33行〜39行 。)(e) 平成10年4月28日に頒布された刊行物である,特開平10-112598号公報(乙42。以下「乙42公報」という )に。 は,回路部品供給システム本体側に対して複数装着可能なフィーダ(部品供給装置)に設けられた発光素子から発せられる光を,本体側に設けられた受光素子が受光する構成を有し,受光結果をもとに複数のフィーダの保持位置を示すテーブルを作成して比較対照することにより フィーダの誤装着を防止することが開示されている 請 ,(求項1,11頁19欄45行〜20欄1行,同欄9行〜22行,14頁25欄15行〜21行,同頁26欄38行〜45行,18頁34欄40行〜48行,20頁37欄32行〜38欄46行,22頁41欄26行〜32行 。)<相違点1-2について>,, 次のとおり プリンタにおいて液体収納容器に発光部を設けることは本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙55発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 a 乙18公報には,前記<相違点1-1について>b(c)の記載があり,インクタンクが立体形半導体素子の発光部を備えていることが開示されている。 b 平成4年9月30日に頒布された刊行物である,特開平4-275156号公報(乙4。以下「乙4公報」という )には,インクタン。 クにLED(発光部)を設けることが開示されている(3頁3欄22行〜25行,同頁4欄31行〜42行 。)c 平成14年10月15日に頒布された刊行物である,特開2002-301829号公報(乙3。以下「乙3公報」という )には,イ。 ンクタンクにインク残量警告ランプ14を設けることが開示されている(3頁4欄33行〜38行,同欄50行〜4頁5欄10行 。)d 平成12年11月28日に頒布された刊行物である,特開2000(。「 」。), -326604号公報 乙35 以下 乙35公報 という にはインクカートリッジにLEDの表示器8を設けることが開示されてい(, ,) 。 る 3頁3欄39行〜43行 6頁10欄16行〜18行 図15イ 無効理由2本件発明1は,乙18公報記載の発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙18公報の記載乙18公報には,次のとおり,本件発明1の構成要件に対応する記載が存在する。 a 構成要件1A1に対応する記載乙18公報には,インクジェット記録装置に複数のインクタンクが搭載可能であることが開示されている(請求項7〜9 。)b 構成要件1A2に対応する記載乙18公報には,以下の?ないし?の記載が存在する。 ?「外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換するエネルギー変換手段と,該エネルギー変換手段で変換されたエネルギーにより発光する発光手段とを有する立体形半導体素子 (請求項。」1)?「前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される,請求項1から3のいずれか1項に記載の立体形半導体素子 (請求項4)。」?「該インクタンク内に配された立体形半導体素子へ外部エネルギーである起電力を供給する手段622 (5頁7欄1行〜3行) 」?「外部エネルギーの供給方法としては,インクジェット記録装置に用いられる場合,素子に外部エネルギーとして起電力を供給する手,, , , 段は 回復ポジション リターンポジション もしくはキャリッジ記録ヘッド等に設ければ良い(4頁6欄9行〜13行) 。」?「課題の一つは,タンク内に収容された素子を起動させるための電力の供給である。素子の起動のための電源をインクタンクに持たせるとタンクが大型になったり,タンク外部に電源を備える場合でも」() 電源と素子との接続手段が必要になり3頁3欄25行〜29行すなわち,上記?において 「立体形半導体素子」における「エネ ,ルギー変換手段」に対し,外部からエネルギーが供給されることが記載されている。 また,上記?において,上記?を引用して,上記「エネルギー変換手段」が変換する外部エネルギーが非接触により供給される場合が特に記載されているから,?の上位クレームである?にかかる「立体形半導体素子」は,外部エネルギーが非接触により供給される場合のみならず,外部エネルギーが接触により供給される場合を含んでいることが明らかである。 そして,供給される外部エネルギーについては,上記?及び?において起電力であることが記載されているから,外部エネルギーが接触により供給される場合の典型例として,電気的エネルギーがあることは明らかである。 さらに,上記?において,タンク外部に電源が備えられていることなどを考慮すると,外部エネルギーとして電気的エネルギーが開示されているといえる。 また,立体形半導体素子はインクタンク内にあること(上記?)及び外部エネルギーとしての起電力を供給する手段をインクジェット記録装置側に設けること(上記?)が記載されており,上記?の記載から,接触により起電力を供給する場合には,電源(インクジェット記録装置側)と素子(インクタンク側)との電気的な接続手段が必要となることが,前提として記載されている。 以上のとおり,乙18公報には,インクジェット記録装置が,インクタンクに備えられる接続手段(接点)と電気的に接続して,インクタンクに起電力を供給する接続手段(接点)を備えていることが開示されている。 c 構成要件1A3に対応する記載乙18公報には,前記ア(エ)<相違点1-1について>b(c)のとおり,インクジェット記録装置にインクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光する受光手段を備えることが開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行 。)d 構成要件1A5に対応する記載乙18公報には,インクタンクがインクジェット記録装置に対して着脱可能であることが開示されている(2頁1欄47行〜50行 。)e 構成要件1Bに対応する記載乙18公報には,前記bのとおり,インクタンクがインクジェット記録装置側の接続手段と電気的に接続する接続手段を備えていることが開示されている。 f 構成要件1Cに対応する記載乙18公報には,インクタンク内の立体形半導体素子が,インクタンク内のインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を入手する情報入手手段を備えることが,開示されている(5頁8欄11行〜25行 。)そして,情報を入手する以上,入手した情報を少なくとも一時的に保持することは当然であるから,かかる入手したタンク内情報を保持する情報保持部が,実質的に開示されている。 g 構成要件1Dに対応する記載乙18公報には,前記cのとおり,インクタンクが発光手段を備えていることが開示されている。 (イ) 乙18公報記載の発明乙18公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成1(a)1」などという )からなる液体収納容器に関 。 する発明(以下「乙18発明1」という )が記載されている。 。 1(a)1 複数のインクタンクが搭載可能であって,1(a)2 該インクタンクに備えられる接続手段と電気的に接続してインクタンクに起電力を供給する接続手段と,1(a)3 インクタンクからの光を受光する受光手段とを有するインクジェット記録装置に対して,1(a)5 着脱可能なインクタンクにおいて,1(b) 前記インクジェット記録装置側接続手段と電気的に接続する前記接続手段と,1(c) 少なくとも情報入手手段が入手したインクタンクのインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部と,1(d) 発光手段と,1(f) を有することを特徴とするインクタンク。 (ウ) 本件発明1と乙18発明1の一致点乙18発明1の構成と本件発明1の構成要件とを対比すると,構成1(a)1が構成要件1A1に,構成1(a)2が構成要件1A2に,構成1(a)3が構成要件1A3に,構成1(a)5が構成要件1A5に,構成1(b)が構成要件1Bに,構成1(d)が構成要件1Dに,構成1(f)が構成要件1Fに,それぞれ相当することは明らかである。 また,構成1(c)の「インクタンクのインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報」は,各インクタンクが個別に有する情報,すなわち「個体情報」といってよいから,同構成,。,, 「」 は 構成要件1Cに相当する なお 乙18公報には 情報入手手段が明示されているだけで 「情報保持部」という明示の記載はないが, ,この点が実質的な相違点とならないことについては,前記(ア)fのとおりである。そして,仮に,この点が相違点となるとしても,後記のとお,, り インクタンクに情報保持部を設けることは周知技術であることから乙18発明1において情報保持部を設けることは,極めて容易である。 (エ) 本件発明1と乙18発明1が相違する可能性のある点乙18発明1の構成と本件発明1の構成要件が相違する可能性のある点は,? 乙18発明1には,構成要件1A4(搭載される液体収納容器それぞれの前記接点と結合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続する配線を有した電気回路)に相当する構成(上記電気回路を,以下「バス接続回路」という )が存在しないこと(以下「相違点( )- 。 11」という ,? 乙18発明1には,構成要件1C(少なくとも液 。)体収納容器の個体情報を保持可能な情報保持部)に相当する構成が存在(「 」 。),, しないこと 以下 相違点( )-2 という ? 乙18発明1には 1構成要件1E(前記接点から入力される個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に相当する構成が存在しないこと(以下「相違点( )-3」とい1う ,である。。)(オ) 本件発明1の容易想到性a 相違点( )-1について1記録装置側にバス接続回路を設けることは,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 (a) 乙55公報には,前記ア(ア)cのとおり,プリンタ側にバス接続回路を設ける構成が開示されている。 (b) 平成14年12月24日に頒布された刊行物である,特開2002-370378号公報(乙1。以下「乙1公報」という )に。 は,インクジェットプリンタ側にバス接続回路を設ける構成が開示されている(6頁10欄17行〜23行,7頁11欄23行〜25行,同欄49行〜12欄2行 。)(c) 平成14年1月18日に頒布された刊行物である,特開2002-14870号公報(乙37。以下「乙37公報」という )に。 も,インクジェットプリンタ側にバス接続回路を設ける構成が開示(, , されている 5頁7欄22行〜25行 9頁16欄39行〜40行同欄43行〜10頁17欄4行,同欄12行〜16行 。)b 相違点( )-2について1インクタンクに少なくともインクタンクの個体情報を保持可能な情報保持部を設けることは,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 (a) 乙2公報には,インクタンクに,情報入手手段より入手したタンク内部情報やタンク内部情報と比較する諸条件といった,各インクタンクの個別情報を蓄積する「情報蓄積手段」を設ける構成が開示されている(6頁10欄6行〜14行,同欄24行〜26行,同欄37行〜45行,同欄49行〜7頁11欄2行 。)(b) 平成14年1月9日に頒布された刊行物である,特開2002-5724号公報(乙17。以下「乙17公報」という )には,。 インクタンクに,情報入手手段より入手したタンク内部情報やタンク内部情報と比較する諸条件といった,各インクタンクの個別情報を蓄積する「情報蓄積手段」を設ける構成が開示されている(5頁,, , 8欄8行〜11行 同欄24行〜28行 6頁9欄17行〜23行同欄27行〜39行,同欄44行〜10欄3行 。)(c) 乙55公報には,前記ア(ア)fの記載があり,インクカートリッジの有する記憶装置内にインクカートリッジの個体情報を保持するメモリアレイを有する構成が開示されている。 (d) 乙1公報には,インクカートリッジの有する記憶装置内に備えられた,個々のインクカートリッジのインク色を識別するための識別情報(個体情報)を保持する記憶素子(メモリアレイ)が開示されている(7頁11欄23行〜38行 。)c 相違点( )-3について1液体収納容器に「接点から入力される個体情報に係る信号と,情報保持部の保持する個体情報とに応じて発光部の発光を制御する制御部」を設けることは,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 (a) 乙2公報には,インクタンク内の立体形半導体素子において,入手したインクタンク内の情報と「情報蓄積手段」から読み出さ ,れた情報とを比較し,光等による情報伝達の必要性を判断する「判」(, 断手段 を備えることが記載されている 6頁10欄6行〜14行同欄24行〜26行,同欄30行〜31行,同欄37行〜45行,同欄49行〜7頁11欄2行,同欄5行〜17行 。),, (b) 乙17公報には インクタンク内の立体形半導体素子において入手したインクタンク内の情報と「情報蓄積手段」を設ける構成 ,が開示から読み出された情報とを比較し,光等による情報伝達の必要性を判断する「判断手段」が記載されている(5頁8欄8行〜11行,同欄24行〜28行,6頁9欄17行〜23行,同欄27行〜39行,同欄44行〜10欄3行,同欄36行〜38行,7頁11欄13行〜27行 。)(c) 乙55公報には,前記ア(ア)fのとおり,インクカートリッジ上の記憶装置が,自ら保有する識別データ(個々のインクカートリッジ個体を識別するための個体情報)と,インクジェットプリンタからプリンタとの接点を通じて送信された識別データを比較し,一致した場合に応答する機能を有し,応答の有無に応じてインクジェットプリンタ上のランプを発光させることが記載されており,上記識別データの一致を判断する記憶装置が,インクジェットプリンタとの接点から入力される個体情報にかかる信号と記憶装置の有する個体情報に応じて発光を制御する役割を有していることが,実質的に開示されている。 (d) 乙1公報には,各インクタンクに備えられている記憶素子に格納されている識別情報(インク色を識別するための情報)と,インクジェットプリンタ側からインクジェットプリンタとの接点を通じて送信される識別情報とを比較し,一致した場合にプリンタに対し応答する機能を有する記憶装置,及び,かかる応答の有無により各インクカートリッジに対応した表示ランプを点滅させることが記載されており,上記識別情報の一致を判断する記憶装置が,インクジェットプリンタとの接点から入力される個体情報にかかる信号と記憶装置の有する個体情報に応じて,発光を制御する役割を有していることが,実質的に開示されている(7頁11欄14行〜17行,同欄35行〜43行,8頁14欄30行〜47行,10頁17欄2行〜6行 。)ウ 無効理由3本件発明1は,乙33公報記載の発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙33公報の記載乙33公報には,次のとおり,本件発明1の構成要件に対応する記載が存在する。 a 構成要件1A1に対応する記載乙33公報には,インクジェット記録装置に複数のインクタンクが(, 搭載可能であることが開示されている 11頁20欄21行〜24行13頁24欄16行〜23行 。)b 構成要件1A2に対応する記載乙33公報には,インクジェットプリントヘッドの電気接点部分とインクタンクの電気接点部分とが,インクタンクをインクジェットプリントヘッドに装着することにより電気的に接合されること,及び,インクジェットプリントヘッドはインクジェットプリンタ装置本体のキャリッジに固着されて,着脱を前提としない構成が開示されている(, ) 。 6頁9欄46行〜48行 9頁16欄35行〜10頁17欄4行c 構成要件1A3に対応する記載前記ア(エ)<相違点1-1について>b(b)のとおり,乙33公報には,インクジェットプリント装置に備えられたプリントヘッドと,インクタンクとが,それぞれ光信号を授受するフォトダイオードセットを備え,インクタンクの種類番号,インクタンクの色信号等の情報を,光信号の形で互いに授受することが開示されている。 d 構成要件1A5に対応する記載乙33公報には,インクタンクがインクジェットプリント装置に対()。 して着脱可能である構成が開示されている 4頁5欄9行〜10行e 構成要件1Bに対応する記載乙33公報には,前記bのとおり,インクタンクがインクジェットプリント装置側の電気的接点と電気的に接合可能な接点を備えていることが開示されている。 f 構成要件1Cに対応する記載乙33公報には,インクタンクに,インクタンクの種類その他の情報 個体情報 を保持するメモリ部を備えることが開示されている 1 () (2頁22欄28行〜32行,7頁12欄35行〜48行,8頁13欄47行〜49行 。)g 構成要件1Dに対応する記載乙33公報には,前記cのとおり,インクタンクが光信号を授受するフォトダイオードセットを備えていることが開示されている。 (イ) 乙33公報記載の発明乙33公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成1[ ]1」などという )からなる液体収納容器に関す a。 る発明(以下「乙33発明1」という )が記載されている。 。 1[ ]1 複数のインクタンクが搭載可能であって, a1[ ]2 該インクタンクに備えられる接点と電気的に接合可能なイン aクジェットプリンタ装置側接点と,1[ ]3 光信号を授受するフォトダイオードセットとを有するインク aジェットプリント装置に対して,1[ ]5 着脱可能なインクタンクにおいて, a1[ ] 前記インクジェットプリント装置側の電気的接点と電気的に b接合可能な接点と,1[ ] 少なくともインクタンクにインクタンクの種類その他の情報 cを保持するメモリ部と,1[ ] 光信号を授受するフォトダイオードセットと, d1[ ] を有することを特徴とするインクタンク。 f(ウ) 本件発明1と乙33発明1の一致点乙33発明1の構成と本件発明1の構成要件とを対比すると,構成1[ ]1が構成要件1A1に 構成1[ ]2が構成要件1A2に 構成1[ ] aaa ,,3が構成要件1A3に,構成1[ ]5が構成要件1A5に,構成1[ ]が ab構成要件1Bに,構成1[ ]が構成要件1Cに,構成1[ ]が構成要件1 cdDに,構成1[ ]が構成要件1Fに,それぞれ相当することは明らかで fある。 (エ) 本件発明1と乙33発明1が相違する可能性のある点及び本件発明1の容易想到性乙33発明1の構成と本件発明1の構成要件が相違する可能性のある点は,? 乙33発明1には,構成要件1A4に相当する構成(バス接続回路)が存在しないこと(以下「相違点[ ]-1」という ,? 乙 1。)33発明1には,構成要件1E(前記接点から入力される個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に相当する記載が存在しないこと(以下「相違点[ ]-2」という ,である。 1。)しかしながら,上記相違点が本件特許の最先の優先日当時においていずれも周知慣用技術であったことについては,前記イ(オ)a及びcのとおりであり,上記技術を乙33発明1に適用することは,当業者にとって容易であった。 【本件発明2について】ア 無効理由1本件発明2は,乙55公報記載の発明及び乙18公報記載の発明に基づいて,又は,乙55公報記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙55公報の記載乙55公報には,次のとおり,本件発明2の構成要件に対応する記載が存在する。 a 構成要件2A1に対応する記載乙55公報には,プリンタに複数の印刷記録材容器(インクカートリッジ)が既定の装着位置にそれぞれ装着可能であることが開示されている(請求項4,請求項16,1頁10行 。)b 構成要件2A2に対応する記載構成要件2A2は,構成要件1A2と同一である。乙55公報に構(,, 成要件1A2に対応する記載 18頁1行〜3行 同頁8行〜20行43頁1行〜4行)があることについては,前記【本件発明1について】ア(ア)bのとおりである。 c 構成要件2A4に対応する記載構成要件2A4は,構成要件1A4に 「個体情報に係る信号を発 ,生するための が付け加わっただけである 上記付加部分は 後記( ) 」。,5のとおり不明確な記載であり,その技術的意義が不明であるから,進歩性の検討をするために先行技術と対比するに当たっては無視することとする。 したがって,構成要件2A4は,構成要件1A4と実質的に異ならず,同構成要件に対応する記載(17頁19行〜26行,18頁1行〜3行,同頁8行〜20行,43頁1行〜4行)が乙55公報に存在することについては,前記【本件発明1について】ア(ア)cのとおりである。 d 構成要件2B及び2Cに対応する記載乙55公報には,インクカートリッジが記録装置のキャリッジに対して着脱可能であることが開示されている(請求項27,16頁21,,,)。 行 30頁24行〜25行 31頁5行〜7行 同頁12行〜13行また,乙55公報には,プリンタとインクカートリッジとが共に機能する構成が開示されており,プリンタとインクカートリッジとを備えるインク供給システム(液体供給システム)が開示されている。 e 構成要件2D1に対応する記載構成要件2D1は,構成要件1Bと同一である。構成要件1Bに対応する記載(18頁1行〜3行,同頁8行〜20行,43頁1行〜4行)が乙55公報に存在することについては,前記【本件発明1について】ア(ア)eのとおりである。 f 構成要件2D2に対応する記載構成要件2D2と構成要件1Cは,前者が個体情報を「保持する」と記載しているのに対し,後者は「保持可能」と記載している点が異なるだけである。かかる構成に対応する記載(18頁1行〜3行,20頁17行〜21行,21頁1行〜3行)が乙55公報に存在するこ,【 】 。 とについては 前記 本件発明1について ア(ア)fのとおりであるg 構成要件2D4に対応する記載乙55公報には,前記【本件発明1について】ア(ア)hのとおり,インクカートリッジ上の記憶装置が,メモリアレイ(情報保持部)の保有する識別データ(個体情報)と,端子(接点)から入力された識別データに係る信号を比較し,一致した場合に応答する機能を有しており,応答のない場合には,プリンタは操作パネル上のランプを点滅させることが記載されている(20頁2行〜6行,同頁17行〜19行,21頁13行〜24行,22頁3行〜6行,同頁9行〜13行,26頁21行〜27頁10行,32頁25行〜33頁1行,43頁1行〜3行 。なお,構成要件2D4では「一致した」場合に発光させ )るのに対し,乙55公報では「一致しない」場合に発光させるという記載となっている点は,単に発光と消灯を逆に指示しているというものにすぎず 「一致した」場合に発光させることを実質的に開示して ,いるに等しい。 (イ) 乙55公報記載の発明乙55公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成2a1」などという )からなるインク供給システム 。 に関する発明(以下「乙55発明2」という)が記載されている。 2a1 複数のインクカートリッジが既定の装着位置にそれぞれ装着可能であって,2a2 該インクカートリッジに備えられる端子と電気的に接続されたプリンタ側端子と,2a4 搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続する前記プリンタ側端子に対して共通に電気的接続する配線(データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRB)を有した電気回路とを有するプリンタと,2b 前記プリンタのキャリッジに対して着脱可能なインクカートリッジと,2c を備えるインク供給システムにおいて,2d1 前記インクカートリッジは,前記プリンタ側端子と電気的に接続可能な前記端子と,2d2 少なくともインクカートリッジの識別データ,インク残量等の情報を保持するメモリアレイと,2d3 プリンタ側のキャリッジに備えられたLEDと,2d4 前記端子から入力される識別データに係る信号と,前記メモリアレイの保持する識別データとが一致する場合にプリンタに対して応答し一致しない場合には応答しないことによりプリンタの操作パネル上のランプを点滅させる制御部と,2e を有することを特徴とするインク供給システム。 (ウ) 本件発明2と乙55発明2の一致点乙55発明2の構成と本件発明2の構成要件とを対比すると,構成2a1が構成要件2A1に,構成2bが構成要件2Bに,構成2cが構成要件2Cに,構成2eが構成要件2Eに,それぞれ相当することは明らかである。 また,前記【本件発明1について】ア(ウ)aのとおり,構成2a2及び同2d1における「端子」が構成要件2A2及び同2D1の「接点」に,構成2a4における「データバスDB,クロックバスCB,リセッ」「」「」, トバスRB が構成要件2A4の 共通に電気的接続 する 配線 に構成2d2における「インクカートリッジの識別データ,インク残量等の情報」が構成要件2D2の「個体情報」に,それぞれ対応することから,構成2a2が構成要件2A2に,構成2a4が構成要件2A4に,構成2d1が構成要件2D1に,構成2d2が構成要件2D2に,それぞれ相当する。 そして,構成2d4が構成要件2D4に相当することについては,前記【本件発明1について】ア(ウ)cのとおりである。 (エ) 本件発明2と乙55発明2が相違する可能性のある点乙55発明2の構成と本件発明2の構成要件が相違する可能性のある点は,? 乙55発明2には,構成要件2A3(該液体収納容器からの光を受光することによって前記液体収納容器の搭載位置を検出する液体収納容器位置検出手段)に相当する構成が存在しないこと(以下「相違点2-1」という ,? 乙55発明2では,液体収納容器に発光部 。)が備えられている(構成要件2D3)のではなく,プリンタ側のキャリッジに発光部が備えられていること(以下「相違点2-2」という ,。)である。 (オ) 本件発明2の容易想到性(その1)相違点2-1及び同2-2は,次のとおり,いずれも,乙55発明2に乙18公報記載の発明を組み合わせることによって容易に克服することができるものであり,かかる組合せにより,当業者が容易に想到することができた。 a 乙18公報の記載乙18公報には,インクジェット記録装置に,インクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光することによってインクタンクの搭載位置を検出するインクタンク位置検出手段を備えること,及び,インクタンクが記録装置の位置検出手段に投光するための発光部を備えていることが開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行 。)b 技術分野の共通性乙55発明2と乙18公報記載の発明は,いずれも,プリンタ装置に装着されるインクカートリッジやインクタンクに関する発明であり,技術分野において共通する。 c 発明の課題の共通性乙55発明2と乙18公報記載の発明は,いずれも,複数のインクカートリッジないしインクタンクの形状を異ならせることなく,インクカートリッジないしインクタンクの誤装着を防止するという,共通の課題を有している(乙55公報1頁10行〜15行,同頁20行〜26行,2頁7行〜10行,乙18公報2頁2欄50行〜3頁3欄11行 。)(カ) 本件発明2の容易想到性(その2)プリンタに,液体収納容器からの光を受光することによって前記液体収納容器の搭載位置を検出する液体収納容器位置検出手段を設けること,及び,プリンタ側の受光部に投光するための発光部をインクタンクに設けることは,次のとおり,いずれも,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙55発明2に適用することは,当業者にとって容易であった。 a プリンタに「液体収納容器からの光を受光することによって液体収納容器の搭載位置を検出する液体収納容器位置検出手段」を備えることが,周知慣用技術であったこと(a) 乙18公報には,前記(オ)のとおり,インクジェット記録装置に,インクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光することによってインクタンクの搭載位置を検出するインクタンク位置検出手段を備えることが,開示されている。 (b) 乙33公報には,インクジェットプリンタ装置に備えられたプリントヘッドと,インクタンクとが,それぞれ光信号を授受するフォトダイオードセットを備え,インクタンクの種類番号,インクタンクの色信号等の情報を,インクタンク側のフォトダイオードセットが,光信号の形でプリントヘッド側のフォトダイオードセットに送信し,これを受けたプリントヘッド側が,インクタンクが使用するに合致しているかどうか(正しいインクタンクが装着されているかどうか)を判断することが,開示されている(4頁5欄9行〜15行,8頁13欄47行〜14欄6行,同欄12行〜14行,同欄24行〜30行,7頁12欄35行〜48行,8頁14欄43行〜9頁15欄9行,12頁22欄28行〜35行 。)(c) 平成11年9月28日に頒布された刊行物である,特開平11-263025号公報(乙36。以下「乙36公報」という )に。 は,インクジェットプリンタにおいて,プリンタ側のエミッタ(発光素子)からインクカートリッジ上の指標位置(反射部)に光を当て,反射してインクカートリッジから戻ってきた光をプリンタ側の「検出器」が受け取ることによって,キャリッジのどのカートリッジ位置にどのインクカートリッジが取り付けられているかを識別する構成,及び,かかる構成が複数インクカートリッジの識別にも適用可能であること,すなわち,インクカートリッジからの光を受光することによって,インクカートリッジが正しい位置に装着されているかどうかを検出する,インクカートリッジの位置検出手段が開示されている(3頁3欄6行〜10行,同頁4欄36行〜4頁5欄18行,同頁6欄49行〜5頁7欄13行,同欄27行〜47行,5頁8欄23行〜28行 。)b プリンタ側の受光部に投光するための発光部をインクタンクに備えることが,周知慣用技術であったこと(a) 乙18公報には,前記(オ)のとおり,インクタンクが,記録装置の位置検出手段に投光するための発光部を備えていることが開示されている。 (b) 乙33公報には,前記a(b)のとおり,インクタンクからの光を受光することによってインクタンクが正しい位置に装着されているかどうかを検出する,インクタンクの位置検出手段,及び,同位置検出手段に光信号を送信する,インクタンク側のフォトダイオードセット,が開示されている。 ,「」 (c) 乙2公報には インクタンク内の素子における 情報伝達手段が光エネルギーにより情報を伝達すること及びインクジェット記録装置をその伝達先とすることが開示されている(請求項21,5頁7欄35行〜36行,6頁10欄9行〜14行,7頁11欄5行〜17行)(d) 乙17公報には,インクタンク内の素子における「情報伝達手段」が光エネルギーにより情報を伝達すること及びインクジェット記録装置の通信回路をその伝達先とすることが開示されている(5頁8欄8行〜11行,6頁9欄17行〜23行,同欄44行〜10欄3行 。)イ 無効理由2本件発明2は,乙18公報記載の発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙18公報の記載乙18公報には,次のとおり,本件発明2の構成要件に対応する記載が存在する。 a 構成要件2A1に対応する記載乙18公報には,プリンタに,複数のインクタンクの各々が,インクの種類に従って所定の異なる位置に搭載可能であることが,開示されている(請求項8,請求項9 。)b 構成要件2A2に対応する記載構成要件2A2は,構成要件1A2と同一である。乙18公報に構成要件1A2に対応する記載(請求項1,請求項4,5頁7欄1行〜3行,4頁6欄9行〜13行,3頁3欄25行〜29行)が存在することについては,前記【本件発明1について】イ(ア)bのとおりである。 c 構成要件2A3に対応する記載乙18公報には,インクジェット記録装置に,インクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光することによってインクタンクの装着位置を検出するインクタンク位置検出手段を備えることが,開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜23行 。)d 構成要件2B及び2Cに対応する記載乙18公報には,インクタンクがインクジェット記録装置に対して着脱可能であること及びインクタンクがキャリッジに対して着脱可能であることが開示されている(2頁1欄47行〜50行,4頁6欄46行〜5頁7欄1行 。)e 構成要件2D1に対応する記載構成要件2D1は,構成要件1Bと同一である。乙18公報に構成(,, , 要件1Bに対応する記載 請求項1 請求項4 5頁7欄1行〜3行4頁6欄9行〜13行,3頁3欄25行〜29行)が存在することについては,前記【本件発明1について】イ(ア)eのとおりである。 f 構成要件2D2に対応する記載構成要件2D2と構成要件1Cは,前者が個体情報を「保持する」と記載するのに対し,後者は「保持可能」と記載する点で異なるだけである。乙18公報には,前記【本件発明1について】イ(ア)fのとおり,インクタンクがインクのpH等のタンク内情報を保持する情報保持部を有することが,実質的に開示されている(5頁8欄11行〜25行 。)g 構成要件2D3に対応する記載乙18公報には,前記【本件発明1について】イ(ア)cのとおり,インクタンクが記録装置の位置検出手段に向けて発光するための発光手段を備えていることが開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行 。)(イ) 乙18公報記載の発明乙18公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成2(a)1」などという )からなる液体供給システム 。 に関する発明(以下「乙18発明2」という )が記載されている。 。 2(a)1 複数のインクタンクの各々がインクの種類に従って所定の異なる位置に搭載可能であって,2(a)2 該インクタンクに備えられる接続手段と電気的に接続してインクタンクに起電力を供給する接続手段と,2(a)3 該インクタンクからの光を受光することによって前記インクタンクの装着位置を検出するインクタンク位置検出手段と,2(a)4 を有するインクジェット記録装置と,2(b) 前記インクジェット記録装置のキャリッジに対して着脱可能なインクタンクと,2(c) を備える液体供給システムにおいて,2(d)1 前記インクタンクは,前記インクジェット記録装置側接続手段と電気的に接続する接続手段と,2(d)2 少なくとも情報入手手段が入手したインクタンクのインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部と,2(d)3 前記位置検出手段に向けて発光するための発光手段と,2(e) を有することを特徴とする液体供給システム。 (ウ) 本件発明2と乙18発明2の一致点乙18発明2の構成と本件発明2の構成要件とを対比すると,構成2(a)1が構成要件2A1に,構成2(a)2が構成要件2A2に,構成2(a)3が構成要件2A3に,構成2(b)が構成要件2Bに,構成2(c)が構成要件2Cに,構成2(d)1が構成要件2D1に,構成2(d)3が構成要件2D3に,構成2(e)が構成要件2Eに,それぞれ相当することは明らかである。 また,構成2(d)2が構成要件2D2に相当すること,及び,仮にこの点が相違点であるとしても,乙18発明2において情報保持部を設け,【 】 ることが極めて容易であることについては前記 本件発明1についてイ(ウ)のとおりである。 (エ) 本件発明2と乙18発明2が相違する可能性のある点及び本件発明2の容易想到性乙18発明2の構成と本件発明2の構成要件が相違する可能性のある点は,前記【本件発明1について】イ(エ)における乙18発明1の構成と本件発明1の構成要件が相違する可能性のある点と同じである。 また,上記相違点が,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明2に適用することが当業者にとって容易であったことについては,前記【本件発明1について】イ(オ)のとおりである。 ウ 無効理由3本件発明2は,乙33公報記載の発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙33公報の記載乙33公報には,次のとおり,本件発明2の構成要件に対応する記載が存在する。 a 構成要件2A1に対応する記載乙33公報には,複数のインクタンクが,インクの色に対応したインクジェットプリント装置上の異なる位置に搭載可能であることが,開示されている(12頁22欄36行〜39行,14頁25欄12行〜14行 。)b 構成要件2A2に対応する記載構成要件2A2は,構成要件1A2と同一である。乙33公報に構成要件1A2に対応する記載(6頁9欄46行〜48行,9頁16欄35行〜10頁17欄4行)が存在することについては,前記【本件発明1について】ウ(ア)bのとおりである。 c 構成要件2A3に対応する記載乙33公報には,前記ア(カ)a(b)のとおり,インクタンクからの光信号を受光することによってインクタンクが正しい位置に装着されているかどうかを検出する,インクタンクの位置検出手段が開示されている(4頁5欄9行〜15行,8頁13欄47行〜14欄6行,同,, , 欄12行〜14行 同欄24行〜30行 7頁12欄35行〜48行,) 。 8頁14欄43行〜9頁15欄9行 12頁22欄28行〜35行d 構成要件2B及び2Cに対応する記載乙33公報には,インクタンクを搭載したインクジェットプリントカートリッジがインクジェットプリント装置のキャリッジに対して着() 。 脱可能であることが開示されている 13頁24欄16行〜23行また,乙33公報には,プリンタとインクタンクとが共に機能する構成が開示されており,プリンタとインクカートリッジとを備えるインク供給システム(液体供給システム)が開示されていることは明らかである。 e 構成要件2D1に対応する記載構成要件2D1は,構成要件1Bと同一である。乙33公報に構成要件1Bに相当する構成が開示されていることについては,前記【本件発明1について】ウ(ア)eのとおりである(6頁9欄46行〜48行,9頁16欄35行〜10頁17欄4行 。)f 構成要件2D2に対応する記載構成要件2D2は,構成要件1Cと実質的に同じである。乙33公報に構成要件1Cに相当する構成が開示されていることについては,前記【本件発明1について】ウ(ア)fのとおりである(12頁22欄28行〜32行,7頁12欄35行〜48行,8頁13欄47行〜49行 。)g 構成要件2D3に対応する記載乙33公報には,前記ア(カ)a(b)のとおり,インクタンクが,位置検出手段としてのプリントヘッド側のフォトダイオードセットに光信号を発信するフォトダイオードセットを備えていることが,開示されている(4頁5欄9行〜15行,8頁13欄47行〜14欄6行,同欄12行〜14行,同欄24行〜30行,7頁12欄35行〜48行,8頁14欄43行〜9頁15欄9行,12頁22欄28行〜35行。)(イ) 乙33公報記載の発明乙33公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成2[ ]1」などという )からなる液体供給システムに a。 関する発明(以下「乙33発明2」という )が記載されている。 。 2[ ]1 複数のインクタンクがインクの色に対応したインクジェット aプリント装置上の異なる位置に搭載可能であって,2[ ]2 該インクタンクに備えられる接点と電気的に接合可能なイン aクジェットプリント装置側接点と,2[ ]3 該インクタンクからの光信号を受光することによってインク aタンクが正しい位置に装着されているかどうかを検出するインクタンクの位置検出手段と,2[ ]4 を有するインクジェットプリント装置と, a2[ ] 前記インクジェットプリント装置のキャリッジに対して着脱 b可能なインクタンクと,2[ ] を備える液体供給システムにおいて, c2[ ]1 前記インクタンクは,前記インクジェットプリント装置側の d電気的接点と電気的に接合可能な接点と,2[ ]2 少なくともインクタンクにインクタンクの種類その他の情報 dを保持するメモリ部と,2[ ]3 前記位置検出手段に光信号を発信するフォトダイオードセッ dトと,2[ ] を有することを特徴とする液体供給システム。 e(ウ) 本件発明2と乙33発明2の一致点乙33発明2の構成と本件発明2の構成要件とを対比すると,構成2[ ]1ないし2[ ]3が構成要件2A1ないし2A3に,構成2[ ]が構 aa b成要件2Bに,構成2[ ]が構成要件2Cに,構成2[ ]1ないし2[ ] cdd3が構成要件2D1ないし2D3に,構成2[ ]が構成要件2Eに,そ eれぞれ相当することは明らかである。 (エ) 本件発明2と乙33発明2が相違する可能性のある点及び本件発明2の容易想到性乙33発明2の構成と本件発明2の構成要件が相違する可能性のある点は,前記【本件発明1について】ウ(エ)における乙33発明1の構成と本件発明1の構成要件が相違する可能性のある点と同じである。 また,上記相違点が,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙33発明2に適用することが当業者にとって容易であったことについては,前記【本件発明1について】ウ(エ)のとおりである。 [原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。 仮に,本件特許に被告の主張する無効理由があるとしても,原告は,前記のとおり本件訂正の請求をしているため,本件訂正によって上記無効理由を解消することができる(なお,本件訂正発明に進歩性が認められることについては,後記( )のとおりである。また,後記( )ないし( )において被告の 847主張する無効理由についても,上記無効理由と同様に,本件訂正によって無効理由を解消することができる 。。)( ) 争点3-2(本件発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1 4号(サポート要件)に違反するか)について[被告の主張]ア 本件明細書には 「発光部の発光を制御する制御部」ないし「発光部を ,発光させる制御部」の構成が開示されていないこと構成要件1E及び2D4には,本件発明1に係る液体収納容器は 「発,光部の発光を制御する制御部 を本件発明2に係る液体収納容器は 発 」, ,「光部を発光させる制御部」を備えているべきことが記載されている。 しかしながら,前記( )[被告の主張]イ(カ)のとおり,原告製プリン 1タに被告製品2を搭載した場合,被告製品2の発光部の発光を制御するのは,原告製プリンタの制御回路(本件明細書の記載では,図19に記載のCPU301を備えた「制御回路300」に相当する構成)であって,被,,, 告製品2は 上記制御回路からの信号を受け取り その指示どおりの発光点滅を行っているにすぎない。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,液体収納容器に備えられた「発光部の発光を制御する制御部」ないし「発光部を発光させる制御部」という構成が開示されているとは認められず,特許法36条6項1号に違反する。 イ 本件明細書には 「液体収納容器」にインク以外の液体が開示されてい ,ないこと本件発明1及び本件発明2においては 「液体収納容器」に収納されて ,いる「液体」について,具体的に特定されておらず,本件特許の請求項1を引用する請求項4には 「前記液体収納容器にはインクが収納されてい ,ることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体収納容器 と記載されている このように 請求項4において 液体 を イ 。」。,「」「ンク」と限定していることからすれば,請求項1における「液体」及び請「」 「」, 求項1と同じ 液体 という用語が用いられている請求項5の 液体 は「」 ,「」 。 インク 以外の液体を含む インク の上位概念であると理解されるしかしながら,本件明細書では,その実施例において 「インク」以外,の液体については記載も示唆もされていない。 したがって,本件発明1及び本件発明2は,発明の詳細な説明に記載されていないものを含むものであり,特許法36条6項1号に違反する。 [原告の主張]ア 本件明細書には 「発光部の発光を制御する制御部」ないし「発光部を ,発光させる制御部」の構成が開示されていること前記( )[被告の主張に対する原告の反論]カのとおり,本件明細書に 1は,液体収納容器に設けられた制御素子103(より正確には,その内部の入出力制御回路103A及びLEDドライバ103C)により,液体収納容器に設けられた発光部の点灯,消灯が制御されていることが明記されているものであり,特許法36条6項1号に違反するものではない。 イ 本件明細書には,インク以外の液体を収納する構成も開示されていること明細書に「インク」が例示されていれば,本件発明の実施に際し,他の液体でも特に相違を生じないことは,当業者が容易に理解することができる。 したがって,本件特許は,特許法36条6項1号に違反するものではない。 ( ) 争点3-3(本件発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2 5号(明確性要件)に違反するか)について[被告の主張]本件発明の特許請求の範囲は,次のとおり,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法36条6項2号(明確性要件)に違反する。 ア 本件発明1における「発光部」と「受光手段」の関係が明確でないこと本件発明1では,液体収納容器が「発光部 (構成要件1D)を有し, 」液体収納容器が着脱される記録装置は 「液体収納容器からの光を受光す ,る受光手段 (構成要件1A3)を有する。 」しかしながら,本件特許の請求項1の記載からは,記録装置側の「液体」「 」 , 収納容器からの光を受光する受光手段 の 液体収納容器からの光 とは「発光部」が発した光を指すのか,それ以外の,例えば,自然光や,記録装置側から発せられる光が液体収納容器に反射した反射光なども含むのか否かが,全く不明であり 「液体収納容器からの光を受光する受光手段」 ,という構成が不明確となっている。 また,請求項1の記載からは 「発光部」が発した光が「受光手段」に ,向けて投光されない構成,例えば,プリンタ装置との通信手段としてではなく,ユーザの目のみに向けて液体収納容器の装着の適否やインク切れを報知するために発光する発光部,を備えた液体収納容器についても本件発明1の技術的範囲に含まれるものかどうかが,不明確である。 イ 本件発明1の「液体収納容器」を「液体収納容器」自体で特定することができないこと本件発明1は 「液体収納容器」という物の発明に関するものである。 ,,,, これらは 請求されている物の発明として それ自体で技術的特徴を備え特定することができるものでなければ,明確とはいえない。また,請求項に 請求されている物以外の他の物についての記載がある場合 かかる 他 ,,「の物」の特定事項により 「請求されている物」の発明特定事項を特定す ,ることができ,その技術的特徴をその記載から把握することができなければ,その記載は,不明確なものであるといわざるを得ない。 本件発明1において,構成要件1A1ないし1A4の部分は 「請求さ,れている物」としての「液体収納容器」以外の「他の物」である 「記録,装置」が記載されている。 しかしながら,請求項に記載されているのは 「液体収納容器」が 「複 ,,数の液体収納容器が搭載可能であって(中略)共通に電気的接続する配線を有した電気回路とを有する記録装置に対して (構成要件1A1ないし 」1A4 「着脱可能 (構成要件1A5)ということだけである。例えば, )」「複数の液体収納容器が搭載可能 (構成要件1A1)という記載から, 」「液体収納容器」が必ず複数同時に搭載されなければならないのかどうかは明らかではない。また 「液体収納容器に備えられる接点と電気的に結 ,合可能な装置側接点 (構成要件1A2)は 「液体収納容器」が「前記 」,装置側接点と電気的に接続可能な前記接点 (構成要件1B)を備えてい 」,「 」 。 ることの裏返しにすぎず 何ら 液体収納容器 を特定するものではないさらに 「受光手段 (構成要件1A3)や「搭載される液体収納容器 ,」それぞれの前記接点と結合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続する配線を有した電気回路 (構成要件1A4)などは 「記録装置」の 」,特定事項ではあるものの 「請求されている物」である「液体収納容器」 ,との関係がまったく不明であって 「液体収納容器」の発明特定事項を何 ,ら特定するものではない。 以上のとおり 「記録装置」の特定事項である構成要件1A1ないし1 ,,「」 , A4の記載は 液体収納容器 の技術的特徴を示すものとなっておらずこれらの記載からは,特許を受けようとする発明が明確でない。 また,仮に,搭載されるべき相手方となる「他の物 (本件発明1では」)( ) 記録装置 が一定の構成要件 本件発明1では構成要件1Aないし1A4を充足するか否かによって 「請求されている物 (本件発明1では液体 ,」収納容器)の当該発明の技術的範囲への属否が決まるのであれば 「請求,されている物」そのものの構成のみからは,当該発明の技術的範囲への属否を判断することができず,特許請求の範囲の記載が発明の保護範囲を明示する役割を果たし得ないこととなって,不当である。 ウ 本件発明2における「互いに異なる位置に」が明確でないこと構成要件2A1には,複数の液体収納容器が「互いに異なる位置に」搭載可能である旨が記載されているが,この意味は明確でない。 すなわち,液体収納容器の搭載位置は,液体収納容器1個につき1つしかないから,複数の液体収納容器が同一の位置に搭載されることはおよそ考えられないし 「互いに」が何を指すのかも明確でない。 ,また 「互いに異なる位置」という記載だけでは,複数の液体インク収 ,納容器のそれぞれが固有の位置を有していることまで読み取ることはできないし 「互いに」とは,通常,2つのものの相互の関係について使用す ,る用語であることから,本件発明のように4色以上もの液体収納容器について用いる意味が明確でない。 エ 本件発明2における「個体情報に係る信号を発生するための配線」が明確でないこと構成要件2A4は 「搭載される液体収納容器それぞれの前記接点と結 ,合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し個体情報に係る信号を」,, 発生するための配線を有した電気回路と というものであるが このうち「個体情報に係る信号を発生するための配線」を有した電気回路という記載の技術的意義が,明確でない。 すなわち,同構成要件において 「個体情報に係る信号を発生するため ,の配線」の直前に記載されている「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し という記載が 配線 にかかるものと合理的に解される以上 個 」「」 , 「体情報に係る信号を発生するための」という記載も 「配線」にかかるも,のと考えられる。そうすると 「配線」が「信号を発生する」ためのもの ,であることになるが,配線が信号を発生することがあるのか,仮に,そう,。 いう意味でないとすれば いかなる技術的意義を有するのかが明確でない仮に 「信号を最初に発生させる」のが「電気回路」であるならば,電気 ,回路と配線が一体であろうとも 「信号を発生する」のは「電気回路」で ,あり 「信号を発生するための配線」という記載と矛盾する。 ,オ 本件発明1及び本件発明2における「複数の液体収納容器」が明確でないこと本件発明1及び本件発明2では 「複数の液体収納容器」がプリンタに ,搭載可能であることが構成要件として定められているところ(構成要件1A1,2A1 「複数の液体収納容器」には,何の限定も付されておら ),ず,液体収納容器の形状,大きさがそれぞれ異なる場合も含むこととなっている。 一方,本件明細書には,前記( )[被告の主張]イ(エ)のとおり 「複 1 ,数の液体収納容器」とは,少なくとも「すべて同一形状の複数の液体収納容器」である場合のみが記載されており 「複数の液体収納容器」にいか ,なる場合までが含まれるのかが明確でない。 カ 本件発明1及び本件発明2における「液体収納容器の個体情報 (構成」要件1C及び2D2 「接点から入力される個体情報に係る信号 (構成 ),」要件1E)及び「前記接点から入力される前記個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とが一致した場合 (構成要件2D4)」並びにこれらの相関関係が明確でないこと構成要件1C及び2D2には 「液体収納容器の個体情報」との記載が ,あり,構成要件1E及び同2D4には 「入力される(前記)個体情報に ,係る信号」との記載があるが 「個体情報」及び「個体情報に係る信号」 ,の意味が明確でなく,これらの「一致」は,技術的に理解することができないものである。 なお,本件明細書には 「液体収納容器の個体情報」に,経時変化し得 ,る「インク残量」等のほか,経時変化しない「色情報 ,インクタンクの」固有番号 や 製造ロット番号 等も含まれる旨の記載がある 段落 0 「」「 」 (【083 【0087 【0097 【0144 )ものの 「液体収納容 】,】,】,】,器の個体情報」のうち,例えばインクタンクの「固有番号」や「製造ロット番号」に応じて発光部の発光を制御する構成(構成要件1E)や,インクタンクの「固有番号 「製造ロット番号 ,及び「インク残量」が接点 」,」から入力された信号と一致する場合に発光部を発光させる構成(構成要件2D4)は,本件明細書に記載されていない。 以上のとおり,本件発明1及び本件発明2において 「液体収納容器の,個体情報」の技術範囲を確定することができず,どのように構成要件1E及び2D4の発光制御に用いられるのかどうかも明確でなく 「液体収納,容器の個体情報」の外延は不当に広く,明確でない。 キ 本件発明2における「液体収納容器位置検出手段」及び「前記位置検出手段に投光するための発光部」が明確でないこと構成要件2A3の「液体収納容器位置検出手段」及び同2D3の「前記位置検出手段に投光するための発光部」は,以下のとおり,その技術的意義が不明であり,技術的に理解できないものである。 ,「」,, すなわち 液体収納容器位置検出手段 については 本件明細書にはその文言も定義もなく 「装着確認制御の詳細を示すフローチャート (段 ,」落【0099 )及び「ステップS105の光照合処理に移行する (段 】。 」落【0107 )として,制御フローが記載されているにすぎない。 】,,, また 本件明細書の具体的な構成を探しても 以下の記載があるだけでLED101の発光を受光する第1受光部210及びインクタンクの装着位置を判断する制御回路300のいずれか,又は,両方を合わせたものが「液体収納容器位置検出手段」に該当するのかどうかが,明確でない。 「キャリッジ205の移動範囲の一方の端部近傍に設けられる第1受光部210は,インクタンク1のLED101からの発光を受けて,それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は,後述のように,この信号に基づき,それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる (17頁50行〜18頁3 。」行 段落【0079 )】「インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき,第1受光部210はLED101の発光を受光することができ,制御回路300は,そ。」 の装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する(23頁10行〜12行 段落【0110 )】「マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは,第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この,, , 結果 このタイミングでは 第1受光部210は受光できないことから制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する (23頁21行〜26行 段落【0 。」112 )】「以上説明した光照合処理を行うことにより,制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また,装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には,その装着位置において,他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって,その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる (23頁32行〜3 。」6行 段落【0113 )】[原告の主張]ア 本件発明1における「発光部」と「受光手段」の関係は明確であること本件明細書の記載から,本件発明1の実施のためには,インクタンクの発光部から発した光が受光部で受光されることにより,当該発光部を有するインクタンクの搭載位置の判別がされる必要のあることは明らかである。なお,本件訂正により,発光部と受光手段の関係が明記されたため,本件訂正後の本件訂正発明1の特許請求の範囲については,特許法36条6項2号違反の問題は存在しない。 イ 本件発明1は,サブコンビネーション形式の発明であって,明確性を欠くものではないこと前記( )[被告の主張に対する原告の反論]ア記載のとおり,本件発明 11は,サブコンビネーション形式の発明であり,請求項1のプリンタ本体の構成要件と組み合わせられて,組合せとしての機能をすべて実現する構成を有するか否かによって,請求項1のインクタンクの範囲が定まるものであるから,明確性に欠けることはない。 ウ 本件発明2における「互いに異なる位置に」の意義は明確であること構成要件2A1は,複数のインクタンクホルダに複数の異なるインクタンクが搭載されることを 「互いに異なる位置に」と表現しているだけで ,あり,マゼンタ色のインクタンクの位置とイエロー色のインクタンクの位置は異なり,シアン色のインクタンクの位置とも異なることを意味している。本件明細書の全体を読めば,本件特許の目的が,複数の液体収納容器のそれぞれが固有の「装着位置」を有しており,その「装着位置」を誤って装着された場合にその誤りを本件光照合処理で検出することであることや 「互いに異なる位置」というのは「複数のインクタンクホルダに, ,,複数のインクタンクが搭載されること」であるということを,容易に理解することができる。 それぞれのインクタンクが,他のインクタンクの位置とは異なる固有の位置を有しているから,各インクタンクの搭載位置につき誤装着という問題を生じ,搭載位置を判別する必要も生ずるのである。 エ 本件発明2における「個体情報に係る信号を発生するための配線」の意義は明確であること本件明細書の段落【0080】ないし【0083】の説明と図20及び段落【0086】ないし【0088】の説明と図23を見れば,構成要件2A4の「電気的接続し個体情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」とは,図20において4つのインクタンクとプリンタ本体をつないでいる4本の共通の信号配線(いわゆるバス接続)を含む電気回路のことであると,容易に理解することができる。バス接続では,プリンタ側又はインクタンク側から,インクタンクの個体情報が載せられた信号が流されるものであり,上記記載において,信号を最初に発生させるのはプリンタの電気回路であるが,電気回路と配線は一体のものであって,共通配線を通じてインクタンク側に個体情報に係る信号を発生させることを意味している。 オ 本件発明1及び本件発明2における「複数の液体インク収納容器」の意義は明確であること「複数の液体収納容器」の意味は,読んで字のごとく 「複数」の「液,体収納容器」をキャリッジに搭載することができる,というだけのことであり,それ以上の意味はなく,不明確性などない。 形状の異なるインクタンクが存在する場合に,その異なる形状のインクタンクがすべて請求項1及び5に含まれるか否かという問題は,請求項1及び5に係る特許権の権利行使に際しての解釈問題であって,記載の明確性の問題ではない。 カ 本件発明1及び本件発明2における「液体収納容器の個体情報 「接」,点から入力される個体情報に係る信号」及び「前記接点から入力される前記個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とが一致した場合」並びにこれらの相関関係が明確であること被告の主張を否認ないし争う。また,本件訂正により,構成要件1C及「」,「」, び2D2の 個体情報 は インク色を示す色情報 に訂正されており特許を受けようとする発明が明確になっている。 キ 本件発明2における「液体収納容器位置検出手段」及び「前記位置検出手段に投光するための発光部」が明確であること構成要件2A3の「液体収納容器位置検出手段」については,請求項5の記載と,本件明細書に記載された光照合処理の手順(段落【0108】〜【0112 )をみれば,当業者であれば,光照合処理を実施するため 】の構成であること,具体的には,発光部の発光を受光する受光部と受光結果に基づくインクタンク装着位置の誤りの有無を検出する制御部であるということを,容易に理解することができる。 ( ) 争点3-4(本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4 6項1号(実施可能要件)に違反するか)について[被告の主張]本件明細書の記載からは,誤装着されているインクタンクの位置が正しい装着位置と隣接している場合,どのようにすれば隣接している位置からの発光やその他プリンタの使用環境に存在する周囲の光は受光せずに,インクタンクが誤装着しているものとして区別して認識することができるのか,その実現手段が明確でない。何らの手段も講じなければ,プリンタ装置側の受光手段は,プリンタの使用環境に存在する周囲の光,少なくとも隣接位置からの発光は受光してしまうはずである。 以上のとおり,本件特許における「キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる (本件明細書の段落【0019 )という効果を達成するには,受光手 。」】段が特定のインクタンクの発光部からの発光のみを受光するように,何らかの構成を付加することが不可欠である。 しかしながら,本件発明1及び本件発明2は,そのような構成を設けることなく 「該液体収納容器からの光を受光する受光手段 (構成要件1A3) ,」ないし「該液体収納容器からの光を受光することによって前記液体収納容器の搭載位置を検出する液体収納容器位置検出手段 (同2A3)と,インク 」タンクからの光を受光することができるものとして特許請求されており,本件明細書において,その実現手段は明らかにされていない。 したがって,本件明細書には,当業者が本件発明を実施できるように明確かつ十分に発明の実現手段が開示されているとはいえず,特許法36条4項1号(実施可能要件)に違反する。 [原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。 この程度の「手段」は,当業者であれば技術常識から容易に設定することができる。一例として,最も容易な方法は,受光手段の信号について適当な閾値を設けて,それ以上の光かそれ以下の光かで区別する方法である。隣接している位置からの光や,プリンタの周囲の光は,直接受光手段に向き合っているインクタンクからの光に比べて数段その強さが落ちるため,適当な閾値を設定して,それより強いか弱いかで判断すれば,受光手段に向き合ったインクタンクからの発光をその他の光から区別することは,たやすいことである。 [原告の主張に対する被告の反論]閾値を設けることについて,本件明細書には一切記載がない。また,閾値を設けるだけでは,連続的に導入される隣接位置からの光を区別することは当業者にとって容易ではない。すなわち,隣接するインクタンクは強い光を発している上,インクタンク同士の距離は非常に短く,一定程度の速さで移動するため,対向する位置のインクタンクの発光部の光量と,隣接する位置のインクタンクのそれとでは大きな違いはなく,閾値の設定は当業者にとって容易ではない。 さらに,被告の調査によれば,原告製インクタンクにおいては,特定の導光路部材を用いて発光部からの光を導くことによって発光部からの光の受光を確保しており,かかる導光路部材を切除すると異常動作をすることが確認されていることから,単に閾値を用いるだけでは,隣接位置からの光を検出せず,適切な受光が行われるという結果が得られないことは明らかである。 すなわち,乙第53号証の実験結果を見れば明らかなように,インクタン., クの導光路部材を切除した実証No2ないし4及び6ないし8においては各色のインクタンクを正しい位置に装着した場合においても,いずれも異常動作をすることが判明している。つまり,原告の主張するように閾値を設定するだけでは,隣接位置からの光を検出せずに適切な受光が行われるという結果を得ることはできない。かかる結果は,インクタンクに特定の導光路部材を用いることにより初めて実現できるものであるにもかかわらず,かかる特定の導光路部材について,本件明細書には記載がない。 [被告の反論に対する原告の反論]いかなる種類のセンサーといえども,そこから得られた信号について,システムが反応すべきレベルの信号と,雑音等として捨て去るべきレベルの信号とを区別するために,適当な閾値を設定しそれを超えるか否かで区別することは,当業者にとっては技術常識である。 また,乙第53号証の実験は,製品構成の重要部分を破壊すれば作動しなくなるという当たり前のことを確認しているだけであって,本件特許の実施可能要件の問題とは関係がない。原告製品の場合は,発光部と受光手段の間に導光路部材が存在することを前提として,受光手段の閾値が適切に設定されているのであり,導光路部材の存在を前提として設定された閾値が,その導光路部材が破壊されてしまうと適切に作動しないのは,当然である。 ( ) 争点3-5-1(本件訂正は,特許法134条の2の訂正要件を満たす 7か)について[被告の主張]ア 「結合」を「接続」に訂正することは,特許請求の範囲を拡張するものであること原告は,本件訂正により,構成要件1A2及び2A2における「結合」を「接続」に訂正し,かかる訂正は「明りょうでない記載の釈明 (特 ,」許法134条の2第1項3号)に当たると主張する。 しかしながら 「結合」とは「いくつかの物が結びついて一つになる ,,こと。また,その結びつき (大辞林(乙48 )という意味であり,電 。」)気的接点に関していえば,コンセントやプラグ,コネクタなどのように,接点同士が物理的に一体となる態様を表すのに対し 「接続」とは 「つ ,,なぐこと。また,つながること (乙48)という意味であり 「一つに 。」,なる」ことまで意味するものではなく,電気的接点に関していえば,接点同士が電気的に接触して電気が流れる状態になっていればよく,接点同士が物理的に一体となることまでは要しない。 このように 「接続」は 「結合」を含む広い概念であり,構成要件1 ,,A2及び2A2の「結合」を「接続」に訂正することは,従来特許請求の範囲に含まれていなかった 「結合」以外の「接続」の態様を含むことに ,なり,特許請求の範囲を拡張するものである。 したがって,かかる訂正は,特許法134条の2第5項及び126条4項により認められない。 イ 構成要件1A3などに加えた訂正は,特許請求の範囲を拡張又は変更するものであること(ア) 訂正の内容本件訂正により,構成要件1A3 ,1A5 ,2A3 ,2E’及び ’’’2F’には,次の構成が付加されており,原告は,かかる訂正は特許請求の範囲を減縮するものであると主張する。 【1A3 】’1?「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」1?「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」1?「位置検出用の受光手段を一つ備え」1?「該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」【1A5 】’1?「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」1?「その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」【2A3 】’2?「位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光する」【2E 】’2?「前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」【2F 】’2?「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」2?「その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」(イ) 上記(ア)の構成要件1A3’及び1A5’にかかる訂正は,特許請求の範囲を減縮するものではないこと上記(ア)の構成要件1A3’及び1A5’にかかる訂正(上記1?〜1?)は,記録装置に関する訂正であり,本件訂正発明1の対象であるインクタンクにかかる発明の構成を減縮するものではない。 例えば,上記1?の記載が追加されたとしても,入れ替わるように配置されるかどうかは,液体インク収納容器を実際に記録装置に搭載したときに記録装置側のキャリッジの動作を見て,初めて確認できることであるから 「入れ替わるように配置され」との記載は,液体インク収納 ,容器にかかる発明の構成を減縮するものではなく,液体インク収納容器の構成に密接に関連するキャリッジ側の構成を特定したものでもない。 また,上記1?の記載が追加されたとしても,記録装置において液体インク収納容器が正しい位置に搭載されているか否かを判断することができるという効果は,複数の液体インク収納容器のうち,あるインク色の液体インク収納容器が来るべきタイミングが記録装置側であらかじめ分かっており,そのタイミングで所定のインク色の液体インク収納容器の発光部を光らせ,その光が受光されたか否かを判断する手段が記録装置側に備わっていて初めて得られるものであって,液体インク収納容器の構成によって実現される効果ではない。 以上のとおり,上記1?ないし?の訂正は,インクタンクにかかる発,。 明の構成を減縮するものではなく特許請求の範囲の減縮に当たらない(ウ) 本件訂正により新たな構成を付加する場合,同構成が周知でない限り 「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの」に該当する ,こと特許請求の範囲の訂正は 「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変 ,更するものであってはならない (特許法134条の2第5項,126 」条4項)とされており,特許請求の範囲に新たな構成を付加する訂正であって,訂正によって付加された構成が,特許出願当時当業者にとって,, 周知の技術手段に該当しない場合は訂正前と後とで別個の発明になり「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する」ことになると解するのが相当である。 原告は,本件訂正によって付加された上記1?ないし?及び2?ないし?の構成が,本件特許出願当時の周知技術であることを主張立証しない。 したがって,上記1?ないし?及び2?ないし?に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。 (エ) 上記1?,?ないし?及び2?ないし?の訂正は,本件訂正前の請求項にない新たな効果を奏するものであり,実質上特許請求の範囲を変更するものであることa 本件訂正により追加された上記1?及び?ないし?の構成は,以下のとおり,本件発明1では予定されていなかった 「インクタンクの,発光部の光を受光手段が受光することによって,インクタンクの位置を検出する」という,新たな作用効果を奏するものである。 すなわち,本件発明1においては,プリンタ上の「該液体収納容器からの光を受光する受光手段 (構成要件1A3)及びインクタンク 」上の「発光部 (同1D)という記載はあったものの,相互の関係に 」ついての記載も 「位置検出手段」という記載もなかったため 「発 ,,光部」と「受光手段」の関係すら不明確であり,発光部と受光手段を備えることで可能な作用効果は,発光部の発光を受光手段において感知することだけであって,かかる作用効果を超えて,発光部と受光手段のみで位置検出をするという作用効果を備えるものではなかった。 したがって,上記1?及び?ないし?の訂正は,これによって新たな作用効果を奏するものであり,実質的に特許請求の範囲を変更するものである。 ,, b 本件訂正により追加された上記2?ないし?の構成は 次のとおり本件発明2では予定されていなかった 「移動するキャリッジ上の特 ,定のインクタンクの発光部の光を受光部が受光することによって,インクタンクの位置を検出する」という,新たな作用効果を奏するものである。 すなわち,本件発明2においては,インクタンクの搭載位置を検出するとの構成は備えられていたものの 「キャリッジの移動」や「受 ,光部 ,それらの位置関係 「キャリッジの位置に応じて特定された 」,インク色のインクタンクを光らせ 「受光部の受光結果に基づきイ 」,ンクタンクの位置を検出する ,などの記載は存在しなかった。 」そのため,インクタンクの発光部の光により位置検出手段がインク,, タンクの位置を検出することは読み取れるものの かかる位置検出を移動するキャリッジ上の特定のインクタンクの光を受光部が受光することにより行うという作用効果は,本件発明2の構成から奏するとはいえないものであった。 したがって,上記2?ないし?の訂正は,これによって新たな作用効果を奏するものであり,実質的に特許請求の範囲を変更するものである。 ウ 構成要件1D’に加えた訂正は,新規事項を追加するものであること原告は 本件訂正により 構成要件1Dの 発光部 及び同2D3の 投 ,,「」「光するための発光部」を 「投光するための光を発光する発光部」に訂正 ,し,かかる訂正は特許請求の範囲を減縮するものであると主張する。 しかしながら 「投光するための光を発光する発光部」と訂正すること ,は,本件訂正前の本件明細書に記載のない新規事項の追加に当たるものであり,特許法134条の2第5項,126条3項に違反する。 すなわち,本件明細書には 「投光するための光を発光する」という記 ,載はなく,発光部の発光の形態として本件明細書に記載されているのは,受光手段に当たる第1受光部と対向する位置にあるインクタンクの発光部が第1受光部に対して直接光を照射する構成のみである(図29,30参照。)これに対し 「投光するための光を発光する」という構成は,受光手段 ,に対して直接光を照射する場合だけでなく,受光した光が反射するなどし,, て間接的に投光されるものも含むことになるのであり そのような構成は本件明細書に記載されていないから,新規事項の追加に当たる。 [原告の主張]ア 「結合」と「接続」は,同じ意味で使用されていること本件訂正の前後において 「結合」と「接続」は,同じ意味で使用され ,ている。 すなわち,本件明細書の実施例の説明中の「またパッド102およびコネクタ152が接合した状態になる (段落【0054 「一方,接点 」】),としてのパッド102およびコネクタ152は金属など比較的剛性の高い導電部材であり,これらの間には良好な電気接続性が確保されるべきである (段落【0057 )との記載や,インクタンクのホルダへの装着に 。」】よってパッド102がコネクタ152と接触するようになる様子を描いた図15を見れば,構成要件1A2及び2A2の「電気的に結合可能」にお「」, 「 」 , ける 結合 とは 電気が流れるように つながる という意味であって「」 , 。 一体になる という意味ではないことを 容易に理解することができる異なる用語が同一の意味に使用されていることは誤解を生じかねないため,用語を統一することが明りょうでない記載の釈明に該当することは当然である。 イ 構成要件1A3’及び1A5’に係る訂正は,特許請求の範囲を減縮するものであること前記[被告の主張]イ(ア)の構成要件1A3’及び1A5’に係る訂正(前記1?ないし?)は,液体インクタンクを搭載したキャリッジの動きを具体的に特定することで,液体収納容器の配置も具体的に特定しているものである。また,光照合処理は,記録装置側の構成とともに,液体インク収納容器の構成がそろうことで初めて実現するのであり,液体インク収納容器と無関係な発明ではない。 以上のとおり,上記訂正は,液体インクタンクに係る発明の構成を減縮したものにほかならない。 ウ 構成要件2A3’及び2F’などに加えた訂正は,特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないこと本件明細書には 「キャリッジに搭載された複数のインクタンクについ ,て,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる 段」(落【0019 )との記載があり,インク色ごとの発光位置を設定し,そ 】の受光結果により位置認証するという,本件光照合処理についての原理ないし仕組みが開示されている。かかる記載と,上記原理ないし仕組みを具体化した光照合処理の実施例の説明(段落【0108】〜【0112 )】を併せ読めば,上記原理ないし仕組みをどのように具体化すればよいか,当業者ならば,容易に理解することが可能である。 そして,本件訂正前の請求項1及び請求項5には,本件光照合処理に必要な構成はすべて記載されていたし,当業者であれば,本件訂正前の請求項1及び請求項5の構成は 「光照合処理が可能なように」設計すべきも ,のであることも,容易に理解することができたものである。 以上のとおり,本件訂正前の請求項1及び請求項5においても,本件光照合処理を具体化することは容易だったものであり,被告の主張するように,発光部と受光部の関係が不明確であったとか,位置検出という作用効果を備えることがなかったということはない。 本件訂正によって,光照合処理の作業手順に関連する装置の動作(構成要件1A5’及び2F’の「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」等)や,光照合処理という作用効果が可能であること構成要件1A5 及び2F の そ (’’「の光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」という記載)を明記したのは,本件明細書の記載を反映させて,本件訂正前の請求項1及び請求項5の内容をより明確にしただけであり,新たな作用効果を付加したものではなく,訂正により別個の発明となるものではない。 エ 構成要件1D’に加えた訂正は,新規事項を追加するものではないこと請求項の権利範囲は,実施例に限定されないというのが原則であり,実施例は,あくまで請求項を実施する具体例にすぎず,その形態に請求項の範囲が限定されるものではない。したがって,明細書の開示と技術常識とに基づき当業者が容易に実施できる範囲において,発光部の光を受光手段で受光して,光照合処理が可能になる構成であれば,途中にミラーを介し,,, たり 光伝達手段が介在していたりしても構わないし そのようなものも訂正の前後を問わず,本件発明1の発明思想を利用した構成であり,本件訂正前の請求項1の権利範囲に含まれる。 本件訂正前の請求項1においても,本件明細書の光照合処理の説明(段落【0108】〜【0112 )を読めば,インクタンクの「発光部」か 】らの光は 「受光部 「受光手段」に投光されるものであることは,当業 ,」,者ならば容易に理解することができたものである。そして,本件明細書には,それを実現する構成の実施例として,インクタンク下部の発光部の光を受光手段が直接受光する構成(図11)のほか,導光性部材を介する構成(図12)インクタンクの上部に発光部を付けた構成(図35 ,支持)部材の操作部にも光を照射する構成(図36)等,いくつかの構成が開示されている。 したがって,本件訂正前の請求項1に,ミラーによる反射光や光伝達手段を介した伝達光を受光手段に投光する形態が含まれることも,本件発明1の権利範囲内であるといえ,本件訂正によって新規事項が追加されたものではない。 ( ) 争点3-5-2(本件訂正発明は,進歩性を欠くか)について 8[被告の主張]【本件訂正発明1について】ア 無効理由1’本件訂正発明1は,乙55公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,又は,乙55公報記載の発明及び乙18公報記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙55公報の記載乙55公報には,次のとおり,本件訂正発明1の構成要件に対応する記載が存在する。 a 乙55公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]ア(ア)の記載があり,構成要件1A1 (請求項4,請求項16,1 ’頁10行 ,1A2 (18頁1行〜3行,同頁8行〜20行,43 )’頁1行〜4行 ,1A4 (1A2’に対応する記載のほか17頁1 )’9行〜26行 ,1A6 (30頁24行〜25行,31頁5行〜7 )’,),’(’ ), 行 同頁12行〜13行 1B 1A2 に対応する記載と同じ1C (18頁1行〜3行,20頁17行〜21行,21頁1行〜3 ’行)及び1F’に相当する構成が開示されている(なお,同事実については,当事者間に争いがない 。。)b 構成要件1A5’に対応する記載乙55公報には,プリンタのキャリッジをインク交換位置まで移動させ,交換の対象となる特定のインクカートリッジに対応するLEDを点灯させる構成が開示されている(41頁17行〜22行 。)また,後記cのとおり,キャリッジを所定の「インク交換位置」まで移動させ,特定のインクカートリッジに対応するキャリッジ上のLEDを点灯させる構成について,発光部をインクタンクに備えるか又はキャリッジに備えるかは,実質的に等価である。 したがって,乙55公報には,構成要件1A5’のうち 「前記キ,ャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」に対応する構成が,開示されている。 c 構成要件1D’に対応する記載乙55公報には,前記bのとおり,キャリッジ上に備えられたLED(発光部)が開示されている。 また,乙55公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1につ 3]いて】ア(ウ)bのとおり,報知手段として種々の方法を取ることができることが示唆されており(42頁2行〜10行 ,発光部をキャリ)ッジ上に設けるか又はインクタンク上に設けるかは,設計事項にすぎない。 したがって,乙55公報には,ユーザーに交換対象となるインクカートリッジを指し示す 報知手段 の1例としてのLED発光部 実 ,「」 (質的にインクタンクに設けられた発光部を含む等価物)が,開示されている。 d 構成要件1E’に対応する記載構成要件1E’は 「個体情報」が「色情報」に変更された点を除 ,き,構成要件1Eと同じである。乙55公報に構成要件1Eに対応す,[ ] る記載が存在すると解すべきことについては 前記( ) 被告の主張3【本件発明1について】ア(ウ)cのとおりである。 (イ) 乙55公報記載の発明乙55公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成1a1 」などという )を含み,かつ,前記の構成 ’。 要件1A1 ,1A2 ,1A4 ,1A6 ,1B ,1C’及び1F’ ’’’’’に相当する構成を備える,液体インク収納容器に関する発明(以下「乙55発明1 」という)が記載されている。 ’1a5’ 前記キャリッジを所定の位置に移動させて特定のキャリッジ上のLEDを点灯させるプリンタの1d’ 報知手段の1例としてのLED発光部(実質的にインクタンクに設けられた発光部を含む等価物)と,1e’ 前記端子から入力される識別データに係る信号と,前記メモリアレイの保持する識別データとに応じてプリンタの操作パネル上のランプを点滅させるための応答をプリンタに対して行い,また,前記端子から入力された所定のインク残量値に係る信号と,メモリアレイの保持するインク残量情報とに応じてインクカートリッジに対応するLEDを点灯又は点滅させるための応答をプリンタに対して行う記憶装置(ウ) 本件訂正発明1と乙55発明1’の一致点a 乙55発明1’が,構成要件1A1 ,1A2 ,1A4 ,1A6 ’’’,1B ,1C’及び1F’に相当する構成を備えることについて ’’は,前記(ア)のとおりである。 b 構成要件1A5’についてキャリッジを所定の「インク交換位置」まで移動させ,特定のインクカートリッジに対応するキャリッジ上のLEDを点灯させる構成は,前記(ア)bのとおり発光部をインクタンクに備えるか又はキャリッジに備えるかが実質的に等価であることから,構成要件1A5’の「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」に対応する。 したがって,上記限度で,構成1a5’と構成要件1A5’は,一致する。 c 構成要件1D’について構成1d’は,発光部(LED)が液体収納容器(インクカートリッジ)側ではなくプリンタ側のキャリッジにある点が,構成要件1D’と異なる。 しかしながら 前記( ) 被告の主張 本件発明1について ア(ウ) ,[ ]【】 3bのとおり,液体収納容器と記録装置とが電気的に接続されている以,, 上 制御の対象となっている発光部を個々の液体収納容器に設けるか又は,個々の液体収納容器に対応ししかも極めて隣接した位置にある記録装置側のキャリッジ箇所に設けるかは,単なる設計上の違いにすぎず,実質的な相違点とはならないというべきである。 また,仮に,この点が相違点であるとしても,後記のとおり,インクカートリッジに発光部を設けることは,本件特許の最先の優先日当時における周知慣用技術であったものであるから,構成1d’におけ,。 る発光部をインクカートリッジに設けることは 極めて容易であったd 構成要件1E’について’’ , 構成1e が構成要件1E に対応すると解すべきことについては前記( )[被告の主張 【本件発明1について】ア(ウ)cと同様であ 3]る。 (エ) 本件訂正発明1と乙55発明1’が相違する可能性のある点乙55発明1’の構成と本件訂正発明1の構成要件が相違する可能性があるのは,? 乙55発明1’には,構成要件1A3 (前記キャリ’ッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段)及び同1A5 (前記キャリッジの位置に応じて特定されたイ ’ンク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置)に相当する構成が存在しないこと(以下「相違点1-1 」という ,? 乙55発明1’では,液体 ’。)インク収納容器に「受光手段に投光するための光を発光する発光部」が備えられている(構成要件1D )のではなく,プリンタ側のキャリッ ’ジに,受光手段に投光するためのものではない発光部が備えられていること(以下「相違点1-2 」という ,である。 ’)(オ) 本件訂正発明1の容易想到性(その1)<相違点1-1’について>a 記録装置に,液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段を設けるという構成要件1A3’及び1A5’の構成は,記録装置についての要件であるにすぎず,本件訂正発明1の進歩性を検討する上で無視されるべき事項であること,及び,受光手段による発光部からの光の検出は,本件発明の結果にすぎず,本件訂正発明の技術的思想には含まれないことについては,前記( )[被告の主3張 【本件発明1について】ア(エ)<相違点1-1について>aのと ]おりである。 b 仮に,乙55発明1’において構成要件1A3’及び1A5’に相当する構成を欠くことが相違点であるとしても,上記構成は,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙55発明1’に適用することは,当業者にとって容易であった。 (a) 乙18公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1につい 3]て】ア(エ)<相違点1-1について>b(c)の記載(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行)があり,インクジェット記録装置にインクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光する受光手段を一つ備えるという構成,及び,受光手段で受光することによりインクタンクの装着位置を検出する構成を備えることが開示されている。また,乙18公報には,上記の記載があり,複数のインクタンクが,インクの種類に従ってキャリッジ上の所定の位置に装着される構成も開示されているから,上記のとおりプリンタが「受光手段を一つ備える」こととの関係上,構成要件1A3’の「キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」という構成も開示されていることが明らかである。 なお,原告は,後記のとおり 「 乙18公報の)図7から,光 ,(センサ550は,各インクタンクに対応するインクタンクホルダの底面に,各インクタンクの装着箇所ごとに設置されるものと理解される」と主張する。しかしながら,同図には,光センサの設置位置を原告主張のように限定する記載はまったく存在しない上,受光手段である光センサをインクタンクごとに設けることは,コストがかかる点で不合理であるから,移動するキャリッジを有するプリンタにおいて,受光手段は一つのみを設けて,キャリッジの移動により順次インクタンクからの光を受光する構成をとることが常識である。このことは,原告自らが,本件特許の最先の優先日前に発売した原告製プリンタ(平成15年4月24日発売のPIXUS 6500i。乙51)において,受光手段を一つだけ設けて,キャリッジの移動により順次各インクタンクからの光を受光する構成をとっていたことからも明白である。 (b) 乙36公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明2につい 3]て】ア(カ)a(c)の記載(3頁3欄6行〜10行,同頁4欄36行〜4頁5欄18行,同頁6欄49行〜5頁7欄13行,同欄27行〜47行,5頁8欄23行〜28行)があり,インクジェットプリンタにおいて,プリンタ側のエミッタ(発光素子)からインクカートリッジ上の指標位置(反射部)に光を当て,反射してインクカー「」 トリッジから戻ってきた光をプリンタ側に一つ備えられた 検出器が受け取ることによって,キャリッジのどのカートリッジ位置にどのインクカートリッジが取り付けられているかを識別する構成,及び,かかる構成が,移動するキャリッジ上に複数装着され,キャリッジの移動により「検出器」に対して入れ替わるように配置されたインクカートリッジの識別にも適用可能であることが,開示されている。なお,上記構成は,インクカートリッジに発光部を設けるのではなく,反射光を用いるものであるが,インクカートリッジからの光を受光してインクカートリッジの位置を検出する位置検出手段という,本件訂正発明1と同様の構成が開示されていることは明らかである。 (c) 乙2公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]ア(エ)<相違点1-1について>b(a)のとおり,インクジェット記録装置からインクタンク内の素子に光を発信し,外部B(インクジェット記録装置)で受信することにより素子の位置を検出する受光手段を設けることが開示されている(請求項21,5頁7欄35行〜36行,8頁13欄27行〜32行,同頁14欄2行〜6行,同欄10行〜14行 。なお,同公報には受光手段の数は明記され )ていないが,前記(a)のとおり,受光手段を一つとすることは本件特許の最先の優先日において技術常識であったものであるから,一つの受光手段が開示されているものと解することができる。 (d) 上記(a)ないし(c)のほかに,発光と受光による位置検出手段という構成を開示したものとして,前記( )[被告の主張 【本件 3]発明1について】ア(エ)<相違点1-1について>b(b)(乙33公報4頁5欄9行〜15行,8頁13欄47行〜14欄6行,同欄12行〜14行,同欄24行〜30行)及び(e)(乙42公報請求項1,11頁19欄45行〜20欄1行,同欄9行〜22行,14頁25欄15行〜21行,同頁26欄38行〜45行,18頁34欄40行〜48行,20頁37欄32行〜38欄46行,22頁41欄26行〜32行)のとおり,乙33公報及び乙42公報が存在する。 <相違点1-2’について>プリンタにおいて,プリンタ側の受光手段に投光するための光を発光するための発光部を液体インク収納容器に設けることが本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったこと,及び,同技術を乙55発明1’に適用することが当業者にとって容易であったことについては,前記( )[被告の主張 【本件発明2について】ア(カ)のとおりで 3]ある。 (カ) 本件訂正発明1の容易想到性(その2)前記の相違点1-1’及び同1-2’は,いずれも,乙55発明1’に乙18公報記載の発明を組み合わせることによって容易に克服することができるものであり,かかる組合せにより,当業者が容易に想到することができた。 上記相違点がいずれも乙18公報に開示されていること,乙55発明1’と乙18公報記載の発明が技術分野及び発明の課題について共通性を有しており,乙18公報記載の発明を乙55発明1’に適用することが当業者にとって極めて容易であったことについては,前記( )[被告3の主張 【本件発明2について】ア(オ)と同様である。 ]イ 無効理由2’本件訂正発明1は,乙18公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙18公報の記載乙18公報には,次のとおり,本件訂正発明1の構成要件に対応する記載が存在する。 a 乙18公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]イ(ア)の記載が存在し,構成要件1A1 (請求項7〜9 ,1A6 ’)(2頁1欄47行〜50行 ,1D (請求項7,4頁5欄2行〜7 ’)’行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜23行)及び1F’に相当する構成が開示されている(なお,同事実については,当事者間に争いがない 。。)b 構成要件1A2’に対応する記載乙18公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]イ(ア)bのとおり,インクジェット記録装置が,インクタンクに備えられる接続手段(接点)と電気的に接続して,インクタンクに起電力を供給する接続手段(接点)を備えることが,開示されている(請求項1,請求項4,5頁7欄1行〜3行,4頁6欄9行〜13行,3頁3欄25行〜28行 。)c 構成要件1A3’に対応する記載乙18公報には,前記【本件訂正発明1について】ア(オ)b(a)のとおり,インクジェット記録装置にインクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光する受光手段を一つ備えるという構成,上記受光手段で受光することによりインクタンクの装着位置を検出する構成,及び,キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置されるという構成が,開示されている(請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜4行,7頁11欄22行〜33行 。)d 構成要件1A5’に対応する記載構成要件1A5’のうち 「その光の受光結果に基づき前記液体イ ,ンク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成が乙18公報に開示されていることについては,上記cのとおりである。 また,乙18公報には,構成要件1A5’のうち 「前記キャリッ,ジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」との構成も,開示されている。すなわち,乙18公報に構成要件1A1’及び1D’に相当する構成が開示されていることについては,前記aのとおり当事者間に争いがないところ,乙18公報に開示されている,インクジェット記録装置に備えられた位置検出用の受光手段は,前記cのとおり一つである。したがって,キャリッジに搭載され移動する複数のインクタンクのうち,キャリッジの位置に応じて,一つ備えられた受光手段と特定の位置関係に来たインクタンクの発光部を光らせることは,開示されているに等しい。 e 構成要件1B’に対応する記載乙18公報には,前記bのとおり,インクジェット記録装置側の接続手段と電気的に接続する接続手段をインクタンクが備えていることが,実質的に開示されている。 f 構成要件1C’に対応する記載乙18公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]イ(ア)fのとおり,タンク内情報を保持する情報保持部が実質的に開示されている(5頁8欄11行〜25行 。)(イ) 乙18公報記載の発明乙18公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成1(a)2」などという )を含み,かつ,前記の構 ’。 成要件1A1 ,1A6 ,1D’及び1F’に相当する構成を備える, ’’液体インク収納容器に関する発明(以下「乙18発明1 」という)が’記載されている。 1(a)2’ 該インクタンクに備えられる接続手段と電気的に接続してインクタンクに起電力を供給する接続手段と,1(a)3’ キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように配置され前記インクタンクの発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記インクタンクの装着位置を検出するインクタンク位置検出手段と,1(a)5’ 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記インクタンクの前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記インクタンク位置検出手段は前記インクタンクの装着位置を検出するインクジェット記録装置の1(b)’ 前記インクジェット記録装置側接続手段と電気的に接続する前記接続手段と,1(c)’ 少なくとも情報入手手段が入手したインクタンクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部と,(ウ) 本件訂正発明1と乙18発明1’の一致点a 乙18発明1’が,構成要件1A1 ,1A6 ,1D’及び1F ’’’,。 に相当する構成を備えることについては 前記(イ)のとおりであるまた,構成1(a)2’が構成要件1A2’に,構成1(a)3’が構成要件1A3’に,構成1(a)5’が構成要件1A5’に,構成1(b)’が構成要件1B’に,それぞれ相当することは明らかである。 b 構成要件1C’について構成1(c)’の「情報入手手段が入手したインクタンクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報」は,「色情報」との明示の記載はないものの,各インクタンクが個別に有する情報であるから,インクタンクの種類に関する「色情報」と同様の情報といえる。したがって,構成1(c)’は,構成要件1C’に相当する。 そして,情報を入手する以上,入手した情報を少なくとも一時的に保持することは当然であるから,かかる入手したタンク内情報を保持する情報保持部が,実質的に開示されている。また,仮に,上記の点が相違点となるとしても,インクタンクに情報保持部を設けることは後記のとおり周知技術であることから,乙18発明1’において情報保持部を設けることは,極めて容易であったものである。 (エ) 本件訂正発明1と乙18発明1’が相違する可能性のある点乙18発明1’の構成と本件訂正発明1の構成要件が相違する可能性のある点は,? 乙18発明1’には,構成要件1A4’に相当する構成(バス接続回路)が存在しないこと(以下「相違点( )-1 」とい1’う ,? 乙18発明1’には,情報を入手する「情報入手手段」が明 )示されているだけで 「情報保持部」を備えるという明示の記載がない ,こと(以下「相違点( )-2 」という ,? 乙18発明1’には,構 1’)成要件1E (前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記 ’情報保持部の保持する色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に相当する構成が存在しないこと(以下「相違点( )-3 」と1’いう ,である。)(オ) 本件訂正発明1の容易想到性<相違点( )-1’について>1記録装置側にバス接続回路を設けることが本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったこと,及び,同技術を乙18発明1’に適用することが当業者にとって容易であったことについては 前記( ),3[被告の主張 【本件発明1について】イ(オ)と同様である。 ]なお,構成要件1A4’のうち 「色情報に係る信号を発生するため ,の」の点については,前記( )エのとおり,不明確な記載であり,そも 5そもいかなる技術的意義を有するのかすら不明であるから,進歩性の検討をするために先行技術と対比するに当たっては,技術的に意味のある記載とは考えず,無視するのが相当である。 <相違点( )-2’について>1インクタンクに少なくともインクタンクの色に関する情報を保持可能な情報保持部を設けることは,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1’に適用することは,当業者にとって容易であった。 a 乙2公報には 前記( ) 被告の主張 本件発明1について イ(オ) ,[ ]【】 3b(a)の記載があり,情報入手手段より入手した各インクタンクのインクの種類についての情報を蓄積する「情報蓄積手段」が記載されている(6頁10欄6行〜14行,同欄24行〜26行,同欄37行〜45行,同欄49行〜7頁11欄2行 。かかる「情報蓄積手段」が )インクタンクの色情報を保持可能な情報保持部に相当することは,明らかである。 b 乙17公報には,情報入手手段より入手した各インクタンクのインク色材情報等のタンク内部情報やインクタンクの識別のための情報と,「」 いった 各インクタンクの色に関する情報を蓄積する 情報蓄積手段(, , が記載されている 5頁8欄8行〜11行 6頁9欄17行〜23行同欄44行〜10欄3行,7頁11欄13行〜17行 。)c 乙55公報には,インクカートリッジの有する記憶装置内に,インクカートリッジの識別のための識別データを保持するメモリアレイを備える構成が開示されている(18頁1行〜3行,20頁17行〜21行,21頁1行〜3行。かかるメモリアレイがインクタンクの色 )情報を保持可能な情報保持部に相当することは明らかである。 d 乙1公報には,インクカートリッジの有する記憶装置内に,個々のインクカートリッジのインク色を識別するための識別情報(色情報)を保持する記憶素子(メモリアレイ)を備える構成が開示されている(7頁11欄23行〜38行 。)<相違点( )-3’について>1液体収納容器に「接点から入力される色情報に係る信号と,情報保持部の保持する色情報とに応じて発光部の発光を制御する制御部」を設けることは,次のとおり,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1’に適用することは,当業者にとって容易であった。 a 乙2公報には,インクタンク内の立体形半導体素子において,入手したインクの種類等のインクタンク内の情報と 「情報蓄積手段」か,ら読み出された情報とを比較し,光等による情報伝達の必要性を判断する「判断手段」を備えることが記載されている(6頁10欄6行〜14行,同欄24行〜26行,同欄30行〜31行,同欄37行〜45行,同欄49行〜7頁11欄2行,同欄5行〜17行 。)b 乙17公報には,インクタンク内の立体形半導体素子において,インクタンク識別のための情報と,インクタンクの「情報蓄積手段」に記憶されている情報を比較し,光等による情報伝達の必要性を判断する「判断手段」が記載されている(5頁8欄8行〜11行,6頁9欄17行〜23行,同欄44行〜10欄3行,同欄36行〜38行,7頁11欄13行〜17行,同欄18行〜27行 。)c 乙55公報には,前記ア(ア)のとおり,インクカートリッジ上の記憶装置が,自ら保有する識別データ(個々のインクカートリッジ個体を識別するための色情報)と,インクジェットプリンタからプリンタとの接点を通じて送信された識別データを比較し,一致した場合に応答する機能を有し,応答の有無に応じてインクジェットプリンタ上のランプを発光させることが記載されており,かかる識別データの一致を判断する記憶装置が,インクジェットプリンタとの接点から入力される色情報に係る信号と,記憶装置の有する色情報に応じて発光を制御する役割を有していることが,実質的に開示されている。 d 乙1公報には,各インクタンクに備えられている記憶素子に格納されている識別情報(インク色を識別するための情報)と,インクジェットプリンタ側からインクジェットプリンタとの接点を通じて送信される識別情報とを比較し,一致した場合にプリンタに対し応答する機能を有する記憶装置,及び,かかる応答の有無により各インクカートリッジに対応した表示ランプを点滅させることが記載されており,かかる識別情報の一致を判断する記憶装置が,インクジェットプリンタとの接点から入力される色情報に係る信号と,記憶装置の有する色情報に応じて発光を制御する役割を有していることが実質的に開示されている(7頁11欄14行〜17行,同欄35行〜43行,8頁14欄30行〜47行,10頁17欄2行〜6行 。)【本件訂正発明2について】ア 無効理由1’本件訂正発明2は,乙55公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,又は,乙55公報記載の発明及び乙18公報記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙55公報の記載乙55公報には,次のとおり,本件訂正発明2の構成要件に対応する記載が存在する。 a 乙55公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明2について】 3]ア(ア)の記載があり,構成要件2A1 (請求項4,請求項16,1 ’頁10行 ,2A2 (18頁1行〜3行,同頁8行〜20行,43 )’頁1行〜4行 ,2A4 (17頁19行〜26行,18頁1行〜3 )’行,同頁8行〜20行,43頁1行〜4行 ,2B (請求項27, )’16頁21行,30頁24行〜25行,31頁5行〜7行,同頁12行〜13行 ,2C ,2D1 (18頁1行〜3行,同頁8行〜20 )’ ’行,43頁1行〜4行 ,2D2 (18頁1行〜3行,20頁17 )’行〜21行,21頁1行〜3行)及び2G’に相当する構成が開示されている(なお,同事実については,当事者間に争いがない 。。)b 構成要件2D3’に対応する記載乙55公報には,前記【本件訂正発明1について】ア(ア)cのとおり,キャリッジ上に備えられたLED(発光部)が開示されており,報知手段の1例としてのLED発光部(実質的にインクタンクに設けられた発光部を含む等価物)が開示されている。 c 構成要件2D4’に対応する記載乙55公報には,前記【本件訂正発明1について】ア(ア)dのとお,,() り インクカートリッジ上の記憶装置がメモリアレイ 情報保持部の保有する識別データ(色情報)と,端子(接点)から入力された識別データに係る信号を比較し一致した場合に応答する機能を有しており,応答のない場合には,プリンタは操作パネル上のランプを点滅させることが記載されている。 なお,構成要件2D4’では「一致した」場合に発光させるのに対し,乙55公報においては「一致しない」場合に発光させるという記載となっている点は,単に発光と消灯を逆に指示しているというものにすぎず 「一致した」場合に発光させることを実質的に開示してい ,るに等しいものといえる。 d 構成要件2F’に対応する記載乙55公報には,前記【本件訂正発明1について】ア(ア)bのとおり,プリンタのキャリッジをインク交換位置まで移動させ,交換の対象となる特定のインクカートリッジに対応するLEDを点灯させる構成が開示されている。 (イ) 乙55公報記載の発明乙55公報に上記(ア)の記載が存在することから,同公報には,次の構成(以下「構成2d3 」などという )を含み,かつ,前記の構成 ’。 要件2A1 ,2A2 ,2A4 ,2B ,2C ,2D1 ,2D2’ ’’’’’’及び2G’に相当する構成を備える,液体インク供給システムに関する発明(以下「乙55発明2 」という)が記載されている。 ’2d3’報知手段の1例としてのLED発光部(実質的にインクタンクに設けられた発光部を含む等価物)と,2d4’前記端子から入力される識別データに係る信号と,前記メモリアレイの保持する識別データを比較し,プリンタの操作パネル上のランプを点滅させるために両者が一致する場合にプリンタに応答し一致しない場合には応答しない記憶装置と,を有し2f’ 前記キャリッジを所定の位置に移動させて特定のキャリッジのLEDを点灯させる(ウ) 本件訂正発明2と乙55発明2’の一致点’, ’,’,’,’, a 乙55発明2 が 構成要件2A1 2A2 2A4 2B2C ,2D1 ,2D2’及び2G’に相当する構成を備えること ’’については,前記(ア)のとおりである。 b 構成要件2D3’について構成2d3’は,発光部がインクカートリッジ側ではなくプリンタ側のキャリッジにある点が,構成要件2D3’と異なる。 しかしながら,この点が実質的な相違点とならないこと,及び,仮に,この点が相違点となるとしても,構成2d3’における発光部をインクカートリッジに設けることが極めて容易であったことについては,前記【本件訂正発明1について】ア(ウ)cのとおりである。 c 構成要件2D4’について構成2d4’が構成要件2D4’に対応することについては,前記【本件訂正発明1について】ア(ウ)dと同様である。 d 構成要件2F’について構成2f’が構成要件2F’に対応することについては,前記(ア)dのとおりである。 (エ) 本件訂正発明2と乙55発明2’が相違する可能性のある点及び本件訂正発明2の容易想到性乙55発明2’の構成と本件訂正発明2の構成要件が相違する可能性がある点は,前記【本件訂正発明1について】ア(エ)における乙55発明1’の構成と本件訂正発明1の構成要件が相違する可能性のある点と同じである。 上記相違点が,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙55発明2’に適用することが容易であったことについては,前記【本件訂正発明1について】ア(オ)のとおりである。 また,上記相違点がいずれも乙18公報に開示されていること,乙55発明2’と乙18公報記載の発明が技術分野及び発明の課題について共通性を有しており,乙18公報記載の発明を乙55発明2’に適用することが当業者にとって極めて容易であったことについては,前記( )3[被告の主張 【本件発明2について】ア(オ)と同様である。 ]イ 無効理由2’本件訂正発明2は,乙18公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 乙18公報の記載乙18公報には,次のとおり,本件訂正発明2の構成要件に対応する記載が存在する。 a 乙18公報には,前記( )[被告の主張 【本件発明1について】 3]イ(ア)の記載が存在し,構成要件2A1 (請求項8,請求項9 , ’)2B (2頁1欄47行〜50行,4頁6欄46行〜5頁7欄1行 , ’)2C ,2D3 (請求項7,4頁5欄2行〜7行,5頁7欄1行〜 ’’4行,7頁11欄22行〜23行)及び2G’に相当する構成が開示されている(なお,同事実については,当事者間に争いがない )。 b 構成要件2A2’は,構成要件1A2’と同一である。乙18公報に構成要件1A2’に対応する記載が存在することについては,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)bのとおりである。 c 構成要件2A3’及び2F’と構成要件1A3’は,表現に若干の差異はあるものの,実質的に同一である。乙18公報に構成要件1A3’に対応する記載が存在することについては,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)cのとおりである。 d 構成要件2D1’は,構成要件1B’と同一である。乙18公報に構成要件1B’に対応する記載が存在することについては,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)eのとおりである。 ’’,「」 e 構成要件2D2 と構成要件1C は 前者が色情報を 保持すると記載されているのに対し,後者は「保持可能」と記載されている点を除き,同一である。乙18公報には,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)fのとおり,インクタンクがインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部を有することが実質的に開示されている。 f 乙18公報には,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)dのとおり,キャリッジの位置に応じて特定されたインク色のインクタンクの発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき,インクタンク位置検出手段がインクタンクの装着位置を検出することが開示されており,構成要件2F’に相当する構成が開示されている。 (イ) 乙18公報記載の発明乙18公報に上記(ア)の記載があることから,同公報には,次の構成(以下「構成2(a)2 」などという )を含み,かつ,前記の構成要 ’。 件2A1 ,2B ,2C ,2D3’及び2G’に相当する構成を備え ’’’る,液体インク供給システムに関する発明(以下「乙18発明2 」と’いう)が記載されている。 2(a)2’ 該インクタンクに備えられる接続手段と電気的に接続してインクタンクに起電力を供給する接続手段と,2(a)3’ 該インクタンクの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記インクタンクの装着位置を検出するインクタンク位置検出手段と,2(d)1’ 前記インクタンクは,前記インクジェット記録装置側接続手段と電気的に接続する接続手段と,2(d)2’ 少なくとも情報入手手段が入手したインクタンクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部と,2(e)’ 前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように配置され2(f)’ 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記インクタンクの前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記インクタンク位置検出手段は前記インクタンクの装着位置を検出する(ウ) 本件訂正発明2と乙18発明2’の一致点a 乙18発明2’が,構成要件2A1 ,2B ,2C ,2D3’及 ’’’び2G’に相当する構成を備えることについては,前記(イ)のとおりである。また,構成2(a)2’が構成要件2A2’に,構成2(a)3’が構成要件2A3’に,構成2(d)1’が構成要件2D1’に,それぞれ相当することは明らかである。 b 構成要件2D2’について’「 , 構成要件2D2 の 情報入手手段が入手したインクタンクのpH,, 」, タンク内の圧力変化 インク残量 インク有無等のタンク内情報 は前記【本件訂正発明1について】イ(ウ)bのとおり,各インクタンクが個別に有する情報であって,インクタンクの「色情報」と同様の情報といえる。また,情報を入手する以上,入手した情報を少なくとも一時的に保持することは当然であるから,かかる入手したタンク内情報を保持する情報保持部が,実質的に開示されている。また,仮に,上記の点が相違点となるとしても,インクタンクに情報保持部を設けることは後記のとおり周知技術であることから,乙18発明2’において情報保持部を設けることは,極めて容易であったものである。 (エ) 本件訂正発明2と乙18発明2’が相違する可能性のある点及び本件訂正発明2の容易想到性乙18発明2’の構成と本件訂正発明2の構成要件が相違する可能性のある点は,前記【本件訂正発明1について】イ(エ)における乙18発明1’の構成と本件訂正発明1の構成要件が相違する可能性のある点と同じである。 また,上記相違点が,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明2’に適用することが当業者にとって容易であったことについては,前記【本件訂正発明1について】イ(オ)のとおりである。 [原告の主張]【本件訂正発明1について】ア 無効理由1’(ア) 乙55公報の記載a 乙55公報に,構成要件1A1 ,1A2 ,1A4 ,1A6 , ’’’’1B ,1C’及び1F’に対応する記載が存在し,これらの構成要 ’件に相当する構成が開示されていることについては,認める。 b 乙55公報に,構成要件1A5’の一部(前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ ,構成要件1D’及び1E’に対応する記載が存在すること )については,否認する。その理由は,次のとおりである。 (a) 構成要件1A5’及び1D’について乙55公報には,各インクカートリッジに対応するLEDをキャリッジ上に設け,インク残量の検出により交換の対象となるインクカートリッジに対応するキャリッジ上のLEDを発光させる構成,及び,交換される特定のインクカートリッジについて,プリンタ本体が識別信号を発して,インクカートリッジからの応答に基づき,正しいインクカートリッジが装着されなかったと判断したときは,操作パネル上のランプを発光させる(点滅させる)ことにより報知する構成,が開示されている。 そして,被告は,かかる発光部を個々の液体収納容器に設けるか又は記録装置側のキャリッジ箇所に設けるかは,単なる設計上の違いにすぎず,実質的に等価であって,相違点ではないと主張する。 しかしながら,発光部をインクタンクではなくキャリッジ側に設けたのでは 「キャリッジを特定の位置に移動させた上で,特定の ,色のインクタンクの発光部を発光させ,プリンタ側の受光手段でインクタンクからの光を受光できるか否かを確認することで,当該色のインクタンクが適正な位置に装着されているか否かを確認する」という,本件光照合処理の操作そのものが,根本的に不可能となってしまう。本件光照合処理において,インクタンク上の発光部は,バス接続を通じてプリンタ本体から送信される色情報と,インクタンク自身の保持する色情報を比較して,それが同じであった場合に,。 のみ発光するという機能を有し光照合処理の要となる構成であるこれに対し,乙55公報記載の発明におけるキャリッジ上のLEDは,各インクタンク内部の色情報とは関係なく,プリンタ本体の命令により点灯・点滅するものである。また,キャリッジ上のLEDは,キャリッジ上に固定されており,各インクタンクの装着位置の変化には対応していないのだから,インクタンクを所定の位置で光らせ,その光を受光した結果に基づいてインク搭載位置を特定するという本件光照合処理に,使用できるはずがない。 以上のとおり,本件訂正発明における発光部及び受光手段と,乙55公報に記載された上記発光手段とは,目的も機能もまったく異なるものであり,等価物といえるものではない。本件発明の目的及びその解決手段に想到しなければ,乙55公報に記載された発明におけるキャリッジ上の発光部をインクタンクに移動させる理由は何もなく,乙55公報のいかなる記載からも,本件光照合処理の手段には想到し得ない。 (b) 構成要件1E’について乙55公報には,以下の記載が存在し,誤ったインクカートリッジが装着されているか否かを判断するのは,パーソナルコンピュータ又はプリンタ本体であり,その判断に基づいて,パーソナルコンピュータ又はプリンタ本体が,操作パネル13上のランプを点滅させることが記載されている。 「パーソナルコンピュータPCは(中略)インクカートリッジC ,A1の記憶装置20が保有する識別データに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS230 。パーソナ)ルコンピュータPCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS240(中略)誤ったインクカ )。 ートリッジCAが装着されている場合には,いずれの記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答することができない。パーソナルコンピュータPCは,応答がない場合には(ステップS240:No ,誤ったインクカートリッジCAが装着 )されている旨を報知し(ステップS250 (中略)誤ったイ),ンクカートリッジCAの装着の報知は,例えば,操作パネル13上配置されているランプLMを点滅させても良い (26頁2。」1行〜37行)「上記実施例では,パーソナルコンピュータPCによってインクカートリッジCAの識別処理が実行されているが,これら一連の処理をカラープリンタ20の制御回路30によって実行してもよい (43頁1行〜3行) 。」以上のとおり,乙55公報記載の発明では,ランプの点滅は,すべてプリンタ側の制御装置によって行われており,液体収納容器側には,ランプの点滅を行う制御装置は搭載されていない。 (イ) 本件訂正発明1の容易想到性a 被告は,構成要件1A3’及び1A5’の構成は,記録装置についての要件であるにすぎず,本件訂正発明1の進歩性を検討する上で無視されるべき事項であるなどと主張する。 しかしながら 上記主張が失当であることについては 前記( ) 被 ,,[ 1告の主張に対する原告の反論]のとおりである。 b 相違点1-1’及び1-2’について被告は,プリンタに構成要件1A3’及び1A5’の構成を備えること及びプリンタ側の受光手段に投光するための光を発光するための発光部を液体インク収納容器に設けることは,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったと主張し,乙2公報,乙17公報,乙18公報,乙33公報,乙36公報及び乙42公報の記載を引用する。 しかしながら,上記公報の記載は,以下のとおり,バス接続をするプリンタのインクタンクの発光部に関するものではない。本件訂正発明は,共通配線であるためにプリンタ本体側ではどのインクタンクと通信しているのかを判別することができないという,バス接続の欠陥を解消するために,液体収納容器に発光部を設け,その発光部を制御,, して適宜光らせ プリンタ側の受光部でその光を受光できるか否かでどのような液体収納容器がインクタンクホルダのどの位置に取り付けられているかを判断することを特徴的構成とするものであるが,上記公報の記載は,かかる構成を開示ないし示唆するものではない。 したがって,上記公報の記載を乙55公報記載の発明にどのように組み合わせようと,本件訂正発明1に容易に想到せしめるものではない。 (a) 乙2公報について乙2公報に開示されている構成は,インクタンク中に球状の立体形半導体素子31を浮遊させ,外部からインクタンク内に光を当てて素子31の位置を測定することで,素子の位置によりインクタンクの交換の必要を判断するというものであり(段落【0061】〜【0065 ,図6。なお,同構成では,素子の像を具体的にどの 】ような手段で観察すればよいのかは不明である ,本件訂正発明。)の構成(インクタンクの発光部が発光し,その光をプリンタ側の受光手段で受光する )とは構成が異なる。 。 また,作用効果についても,本件訂正発明における受光手段は,どの色のインクタンクがホルダのどの位置に装着されているかを確認するための手段であるのに対し,乙2公報記載の上記構成では,素子の像の位置(素子が浮かんでいる高さ)からインクタンク内部のインクの量が判明するだけであり,どの色のインクタンクがホルダのどこに装着されているかなどは,分からない。 (b) 乙33公報について乙33公報に開示されている構成は,図7から明らかなように,インクタンク側の発光素子(PD441)からの受光を行うインクジェットプリントヘッド側の受光素子(PD411)が,一つではなく,各インクタンクのホルダごとに備えられている。 また,乙33公報において,インクタンク側の発光素子からインクジェットプリントヘッド側の受光素子に伝えられた各インクタンクの情報は,各インクジェットプリントヘッドの内部において処理され,プリンタ本体との間で共通配線による情報交換は行われないと解される。このことは,同公報における以下の記載から明らかである(なお,下線は原告が引いたものである 。。)「本例では,各種データ?は,18個のブロックデータ信号からな,,( “”),(“ り その一例を図9に示すように インク種類 6A 色B ,グレード( F ,製造ロット( 97年A月27日Fラ ”)“”)“イン ,インク圧力(レベル5 ,インク流路開閉器状態0 (c) 乙18公報について乙18公報には,インクタンク内のインクに浮遊させた球状の立体形半導体素子526が発光し,その光がインク中を透過して,タンク外部の光センサ550によって感知し,その波長からインクの色を識別して各インクタンクが所定の位置に装着されたかを確認す(【 】【 】, るという構成が開示されている 段落 0057 〜 0061図7 。そして,同公報には,光センサ550の設置される場所や )個数は明記されていないが,? 仮に,単一のセンサによって各インクタンクを順次識別していくのであれば,何らかの記載があってしかるべきであること,? 図5の記録装置には,光センサは表示されていないが,被告の主張するように,キャリッジと異なる位置に単一の光センサを設けるのであれば,図5に表示することができたはずであること,? 図5では,フォトカプラ611や,キャリッジ上の外部エネルギー供給手段622まで記載しているのであるから,重要部材である光センサを記載していないのは,キャリッジの下側に設置されるため,図5には表示困難であることが理由であろうと推測されること,などから,光センサ550は,各インクタンクに対応するインクタンクホルダの底面に,各インクタンクの装着箇所ごとに設置されるものと理解される。 なお,この点について,被告は,移動するキャリッジを有するプリンタにおいて,受光手段は一つのみを設けて,キャリッジの移動により順次インクタンクからの光を受光する構成をとることが常識であり,このことは,原告自らが,本件特許の最先の優先日前に発売した原告製プリンタ(乙51)において,受光手段を一つだけ設けて,キャリッジの移動により順次各インクタンクからの光を受光する構成をとっていたことからも明白であると主張する。しかしながら,上記原告製プリンタの発光部及び受光部は,どちらも,プリンタ内部で水平に動くキャリッジの底面を下から見ることのできる位置に取り付けられているものである。このセンサは,インクタンク内のインク残量を検出するために,インクタンクの外側から照射された光の反射光を受光する残検センサであり,本件光照合処理による位置認証技術とはまったく関係がない。 また,乙18公報記載の発明の最大の特徴は,インクタンク内に浮遊させた立体形半導体素子を使用すること,及び,その立体形半導体素子が外部と非接触の状態で,外部との間で情報やエネルギーのやりとりをすることであるが(段落【0017 【0018 ,】,】【0057】〜【0061 。なお,同発明では,上記の個別の光 】センサによって受光され,個別の光センサが得た情報は,個別の配線により制御装置に送信されるものと考えられる ,本件訂正発。)明の構成は,インクタンクとプリンタ本体との情報伝達やエネルギー供給をバス接続の有線通信によって行っており,その点が決定的に異なっている。 このように,非接触での通信を特徴とする乙18公報記載の発明の技術思想は,バス接続による通信を前提とする乙55公報記載の発明の技術思想と根本的に異なっており,両者を組み合わせること,(,, には 阻害要因があるというべきである また 同様の理由により乙2公報記載の発明と乙18公報記載の発明の組み合わせについても阻害要因があるというべきである 。。)(d) 乙36公報について乙36公報記載の発明は,インクカートリッジ上の反射部にプリンタ側から光を当ててその反射部の指標を「見る」ことで,キャリッジ上のどのカートリッジの位置にどのインクカートリッジが取り付けられているかを識別するものであり,プリンタ側からの光の反射光を見る技術である。したがって,インクタンク上の発光部の光をプリンタ側で受光する本件訂正発明の構成とは,根本的に異なっている。 (e) 乙42公報について乙42公報記載の発明は,回路部品供給システムにおいて部品の供給管理を容易にするための発明であり,本件訂正発明とは技術分野が全く異なる。したがって,同公報に記載の発明は,本件訂正発明に想到する上で参考になる公知技術ではない。 (f) 乙17公報について乙17公報記載の発明は,乙18公報記載の発明と同じく,イン,, クタンク内に立体形半導体素子を浮遊させ 非接触の無線によってプリンタ側との情報伝達やエネルギー供給を行うというものであ。, , , る したがって 乙18公報記載の発明と同様 本件訂正発明とはその構成を大きく異にし,共通配線による情報伝達・エネルギー供給を前提とする乙55公報記載の発明と組み合わせることには技術的な阻害要因がある。 c 被告は,本件訂正発明1は,乙55公報記載の発明と乙18公報記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとも主張する。 しかしながら,前記b(c)のとおり,乙18公報記載の発明は,インクタンク内のインクに浮遊させた球状の立体形半導体素子を使用する構成であって,本件訂正発明の構成とは大きく異なっているほか,立体形半導体素子が外部と非接触の状態で情報やエネルギーのやり取りをすることが同発明の最大の特徴となっている点で,バス接続による有線通信を前提とする乙55公報記載の発明とは技術思想が根本的に異なっており,両発明を組み合わせることに阻害要因があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 イ 無効理由2’(ア) 乙18公報の記載及び同公報記載の発明a 乙18公報に,構成要件1A1 ,1A6 ,1D’及び1F’に ’’対応する記載が存在し,これらの構成要件に相当する構成が開示されていることについては,認める。 b 乙18公報に,構成要件1A2 ,1A3 ,1A5 ,1B’及び ’’’1C’に対応する記載が存在することについては,否認する。その理由は,次のとおりである。 (a) 構成要件1A2’及び1B’について乙18公報記載の発明は,インク中に浮遊させた立体形半導体素,, ,, 子を使用し 当該素子が 光や電磁波などの手段により 非接触でプリンタ側と情報伝達を行ったりエネルギー供給を受けたりする,。, という点に特徴がある発明である 非接触の点に特徴があることは? 同公報に実施例として開示されている図2,3,4及び7のいずれにおいても,立体形半導体素子は,インク中に浮遊して,外部から切り離された状態で描かれていること,? 同公報には 【課,題を解決するための手段】として,外部エネルギーの供給は非接触で行うことが記載され(段落【0017 【0018 ,それ以 】,】)外のエネルギー供給手段は開示されていないこと,から明らかである。 したがって,乙18公報には (立体形半導体素子とプリンタを ,つなぐための 「電気的に接続可能な接点 (構成要件1A2 ,1 )」’B )は,開示されていない。 ’(b) 構成要件1A3’及び1A5’について乙18公報に構成要件1A3’及び1A5’に相当する構成が開,。 示されていないことについては 前記ア(イ)b(c)のとおりである(c) 構成要件1C’について乙18公報記載の発明における発光部及び受光手段は,各インクタンクの内部での発光が液体インクを透過する際に,インクの色に対応した波長の吸収がされるため,そのインクタンクに対応する個別の受光部において,吸収された波長からインクタンクの種類を判別するというものであり(段落【0014 【0015 【00 】,】,20 【0057】〜【0059,インクタンク内の素子に色 】,】 )情報は保持されない。 したがって,乙18公報には,構成要件1C’に相当する構成は開示されていない。 (イ) 本件訂正発明1の容易想到性被告は,相違点( )-1’ないし同( )-3’に係る構成を備えること 11は,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明1’に適用することは当業者にとって容易であったと主張し,乙1公報,乙2公報,乙17公報,乙37公報及び乙55公報の記載を引用する。 しかしながら,乙1公報,乙37公報及び乙55公報記載の発明は,前記のとおり,いずれも,複数のインクタンクとプリンタ本体の間がバス接続という有線接続でつながれた構成を有するものであるから,同発明を,インク中に浮遊した立体形半導体素子との非接触での情報変換及びエネルギー供給を前提とする乙18公報記載の発明に組み合わせることについては,阻害要因があるというべきである。 また,乙2公報記載の発明及び乙17公報記載の発明は,乙18公報記載の発明と同様,インクタンク内のインクに浮遊させた立体形半導体素子を使用する発明であり,非接触での情報伝達・エネルギー供給を前提とする技術であるから,これらを組み合わせたところで,各インクタンクと記録装置の間がバス接続でつながれた本件訂正発明1の構成に想到し得るものではない。 したがって,上記公報の記載を乙18公報記載の発明にどのように組み合わせようと,本件訂正発明に容易に想到せしめるものではない。 【本件訂正発明2について】ア 無効理由1’(ア) 乙55公報の記載及び同公報記載の発明a 乙55公報に,構成要件2A1 ,2A2 ,2A4 ,2B ,2 ’’’’C ,2D1 ,2D2’及び2G’に対応する記載が存在し,これ ’’らの構成要件に相当する構成が開示されていることについては,認める。 b 乙55公報に,構成要件2D3 ,2D4’及び2F’に対応する ’記載が存在することについては,否認する。その理由は,前記【本件訂正発明1について】ア(ア)bと同様である。 (イ) 本件訂正発明2の容易想到性被告は,相違点1-1’及び同1-2’に係る構成が,本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙’。 55発明2 に適用することは当業者にとって容易であったと主張するしかしながら 被告の上記主張に理由がないことについては 前記 本 ,,【件訂正発明1について】ア(イ)と同様である。 また,被告は,本件訂正発明2は,乙55公報記載の発明と乙18公報記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとも主張する。 しかしながら,上記主張に理由がないことについては,前記【本件訂正発明1について】ア(イ)cのとおりである。 イ 無効理由2’(ア) 乙18公報の記載及び同公報記載の発明a 乙18公報に,構成要件2A1 ,2B ,2C ,2D3’及び2 ’’’G’に対応する記載が存在し,これらの構成要件に相当する構成が開示されていることについては,認める。 b 乙18公報に,構成要件2A2 ,2A3 ,2D1 ,2D2’及 ’’’び2F’に対応する記載が存在することについては,否認する。その理由は,前記【本件訂正発明1について】イ(ア)bと同様である。 (イ) 本件訂正発明2の容易想到性被告は,相違点( )-1’ないし同( )-3’に係る構成は,本件特許 11の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術を乙18発明2’に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。 しかしながら 被告の上記主張に理由がないことについては 前記 本 ,,【件訂正発明1について】イ(イ)と同様である。 ( ) 争点3-5-3(本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36 9条6項1号(サポート要件)に違反するか)について[被告の主張]本件明細書の発明の詳細な説明には液体インク収納容器に備えられた 発 ,「光部の発光を制御する制御部 (構成要件1E )ないし「発光部を発光さ 」’せる制御部 (構成要件2D4 )という構成が開示されているとは認めら 」’れず,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反する。 その理由は,前記( )[被告の主張]アと同じである。 4[原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。 本件明細書の発明の詳細な説明に,液体インク収納容器に備えられた「発光部の発光を制御する制御部」ないし「発光部を発光させる制御部」という構成が開示されていることについては,前記( )[原告の主張]アのとおり 4である。 ( ) 争点3-5-4(本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36 10条6項2号(明確性要件)に違反するか)について[被告の主張]本件訂正後の本件訂正発明の特許請求の範囲は,次のとおり,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法36条6項2号に違反する。 ア 本件訂正発明における「発光部」と「受光手段」の関係が明確でないこと【本件訂正発明1について】原告は,本件訂正により,受光手段が液体インク収納容器の発光部からの光を受光すること(構成要件1A3 )及び発光部が受光手段に投光す ’るための光を発光すること(構成要件1D )を追加した。’しかしながら,上記訂正後においても 「投光するための光」と「液体 ,インク収納容器の発光部からの光」との関係は不明りょうであり,受光時における発光部と受光手段との位置関係は明確でない。 また,受光時における発光部と受光手段との位置関係について,本件訂正により 「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液 ,体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成要件1A5 )との構成が追加されたが 「前記キャリッ 」’ ,ジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器」という構成の意義が不明確である。 すなわち 「キャリッジの位置に応じて特定された」とは,キャリッジ ,内部の各インクタンクの装着箇所に応じて特定されたという意味とも,移動するキャリッジのシャフト上における位置に応じて特定されたという意味とも理解することができ,二義的に解釈が可能な記載となっており,不明確である。そして,仮に,キャリッジ内部の各インクタンクの装着箇所に応じて特定されたという意味に理解するとしても,本件明細書には,記録装置側で液体インク収納容器の搭載位置を検出可能とするための具体的構成が開示されていないため,上記訂正は,新規事項の追加として,訂正要件に違反する。 さらに,仮に 「キャリッジの位置に応じて特定された」が,移動する ,キャリッジのシャフト上における位置に応じて特定されたという意味だとしても,キャリッジがシャフト上のいかなる位置に来たときに,キャリッジ内のどのインクタンクを光らせるのかについて,本件訂正後の構成要件は明らかにしていない。 その結果,本件訂正後の構成要件は,インクタンクの発光部が受光手段と対向する位置ではなく,対向する位置と隣接する位置又はさらに離れた位置において発光する場合や,キャリッジ自体が受光手段から著しく離れた位置や障害物により光が遮断される位置にある場合など,受光手段が発光部からの発光を受光できず,結果としてインクタンクの位置を検出できないような場合に特定色のインクタンクの発光部を光らせる場合をも含むこととなっており,技術的に意味がないような不当に広い範囲にまで特許権が及ぶおそれがある。 ,, , したがって 本件訂正は 権利範囲が不当に広いという観点から見ても明確性要件に違反する。 【本件訂正発明2について】本件訂正発明2についても,受光時における発光部と受光手段との位置関係については,構成要件2F’に,構成要件1A5’と同じ記載があるだけである。 したがって,本件訂正発明2も,本件訂正発明1と同様に 「キャリッ,ジの位置に応じて特定された」との記載が不明確であるとともに,受光部が発光部からの発光を受光できないという,発光部と受光手段との間に技術的な関連性がないような不当に広い範囲にまで特許権が及ぶおそれがあり,明確性要件に違反する。 イ 本件訂正発明1の「液体インク収納容器」を「液体インク収納容器」自体で特定することができないこと本件訂正発明1において,構成要件1A1’ないし1A5’の部分は,請求される物 としての 液体インク収納容器 以外の他の物である 記 「」「 」 「録装置」が記載されているところ,同構成要件の記載は 「液体インク収,納容器」の技術的特徴を示すものとなっておらず,これらの記載からは,特許を受けようとする発明が明確でない。その理由については,前記( )5[被告の主張]イと同様である。 なお,本件訂正により,構成要件1A3’及び1A5’には,プリンタ側の「液体インク収納容器位置検出手段」による位置検出という構成が付加されたが,後記キのとおり 「液体インク収納容器位置検出手段」とい ,う構成がそもそも不明確であるため,インクタンクの搭載位置の検出がいかにして実現されるのかどうかが不明確となっている。したがって,上記構成を付加することによっても,プリンタとインクタンクとの関係は明確となっておらず,インクタンクの構成は何ら特定されない。 また,本件訂正により,構成要件1A5’には 「キャリッジの位置に ,応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の発光部を( 記録「装置」が)光らせ」る構成も付加されている。 しかしながら,キャリッジの位置に応じた所定のタイミングで「発光部を光らせ」ることができるかどうかは,プリンタ側の構成如何によることは明らかであるにもかかわらず,本件訂正発明1の構成要件には,かかる構成について何ら記載がない。そのため,インクタンク側において,キャリッジの位置に応じた所定のタイミングで「発光部を光らせ」るという行為がいかにして実現されるのかどうかが,不明確となっている。 さらに,構成要件1A5’によれば,発光部を光らせる構成は記録装置側にあるものと理解されるものの,他方で,構成要件1E’には 「発光,部の発光を制御する制御部」がインクタンク側に存在することが記載されており,プリンタとインクタンクのいずれが「発光部を光らせ」るのかが不明である。 したがって,上記構成を付加することによっても,プリンタとインクタンクとの関係は明確となっておらず,インクタンクの構成は何ら特定されていない。 ウ 本件訂正発明2における「互いに異なる位置に」が明確でないこと構成要件2A1’には,複数の液体インク収納容器が「互いに異なる位置に」搭載可能である旨が記載されているが,この意味は明確でない。その理由については,前記( )[被告の主張]ウと同じである。 5エ 本件訂正発明における「色情報に係る信号を発生するための配線」が明確でないこと構成要件1A4’及び2A4’には 「色情報に係る信号を発生するた ,めの配線」との記載があるが,同記載の技術的意義は明確でない。その理由については,前記( )[被告の主張]エと同じである。 5オ 本件訂正発明における「複数の液体インク収納容器」が明確でないこと原告は,本件訂正により,構成要件1A1及び2A1の「複数の液体収」,「」 (’,’) 納容器 を 複数の液体インク収納容器 構成要件1A1 2A1に変更した。 しかしながら,上記「複数の液体インク収納容器」にいかなる場合までが含まれるのかは,明確でない。その理由については,前記( )[被告の5主張]オのとおりである。 カ 本件訂正発明1における「受光手段」と本件訂正発明2における「受光部」との関係が明確でないこと本件訂正により,構成要件2A3 ,2D3’及び2E’に「受光部」 ’という構成が付加されたが,この「受光部」は,構成要件1A3’の「受光手段」と異なる用語を用いているため 「受光手段」と異なる構成を指 ,すのか,同一の構成を指すのかが不明確となっている。 キ 本件訂正発明における「液体インク収納容器位置検出手段」が明確でないこと原告は,本件訂正により,構成要件2A3の「液体収納容器位置検出手段」を「液体インク収納容器位置検出手段 (構成要件2A3 )に変更 」’,’’「 」 し 構成要件1A3 及び1A5 に液体インク収納容器位置検出手段との構成を付加したが,かかる「液体インク収納容器位置検出手段」も,構成要件2A3の「液体収納容器位置検出手段」と同様,明確でない。その理由については,前記()[本件光照合処理の主張]キと同じである。 5[原告の主張]ア 「発光部」と「受光手段」の関係は明確であること【本件訂正発明1について】本件訂正発明1は,発光部と受光手段の位置関係について 「発光部か,らの光を受光する位置検出用の受光手段 (構成要件1A3 )と規定し 」’ており,両者の位置関係は明確になっている。すなわち,位置検出(光照合処理)においては,インクタンクの発光部からの光がプリンタ側の受光手段において受光されるような位置関係になるように設計されなければならない,ということである。 請求項の記載としては,これで必要十分であり,これ以上の具体的な位置関係の説明は不要である。発光部と受光手段の具体的な位置関係は,本件訂正後の請求項 と実施例を見た当業者が,発明思想を理解した上で適 1宜に設計することで定まるのであり,それで十分実施可能である。 また,本件明細書において光照合処理について説明している部分(段落【0108】〜【0012 )を読めば「キャリッジの位置に応じて」 】,とは 「移動するキャリッジのシャフト上における位置に応じて」の意味 ,であることを容易に理解することができる。光照合処理においては,キャリッジをシャフト上で左右に移動させ,プリンタ側に設置された受光手段に対向するインクタンクを入れ換えながら,所定のパターンで各色のインクタンクの発光部を光らせていく処理を行うからである。請求項の解釈においては,請求項の全体を合理的に解釈すべきであり 「キャリッジ内部,の各インクタンクの装着位置に応じて特定された」という読み方では,技術的に意味をなさないことが明らかであるから,そもそも,そのような解釈は成り立たない。 本件明細書における本件光照合処理についての原理ないし仕組みの記載(段落【0019 )と,同原理ないし仕組みを具体化した光照合処理の 】実施例の説明(段落【0108】〜【0112 )を併せ読めば,上記原 】理ないし仕組みをどのように具体化すればよいか,当業者ならば,容易に理解することが可能であるから,明確性要件に違反するものではない。 さらに,本件訂正後の請求項1には「発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段 「受光結果に基づき…液体インク収納容器の搭載位置 」,を検出する」と明記されているのだから,受光手段が発光部からの発光を,, 受光できず 結果としてインクタンクの位置を検出できないような設計は本件訂正後の請求項1の権利範囲外であることは明らかである。したがって,この点も,明確性要件に違反するものではない。 【本件訂正発明2について】本件訂正発明2について 「キャリッジの位置に応じて特定された」と ,の記載の意義が明確であること,及び,発光部と受光手段との間に技術的な関連性がないような不当に広い範囲にまで特許権が及ぶおそれがないことについては,上記【本件訂正発明1について】と同じである。 イ 本件訂正発明1における「液体収納容器」は特定されていること被告は,本件訂正後の請求項 においては,プリンタについての記載が 1インクタンクを何ら特定せず,明確性要件違反の無効理由があると主張するが,次のとおり,同主張には理由がない。 a 構成要件1A1’について本件明細書には,すべての色のインクタンクが装着されないうちは,次のステップである光照合処理に進まないことが記載されている(段落【0095】〜【0105 。したがって,本件訂正発明1では,イ 】)ンクタンクは複数搭載されることが前提であることは明らかである。 b 構成要件1A2’について構成要件1A2’では,インクタンク側の接点とプリンタ側の接点が電気的に接続する構造になっているということを,プリンタ側から規定したものであり,これをインクタンク側から規定したものである構成要件1B’と同意義のものである。 このように,構成要件1A2’は,構成要件1B’と相まって,インクタンクの接点の構造をより明確にしているものであり,明確性要件に違反するものではない。 c 構成要件1A4’について本件明細書の段落【0080】ないし【0083】の説明と図20及び段落【0086】ないし【0088】の説明と図23を見れば,構成要件1A4’の「…電気的に接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」とは,図20において4つのインクタンクとプリンタ本体をつないでいる4本の共通の信号配線(いわゆるバス接続)を含む電気回路のことであると,容易に理解することができる。また,インクタンクとの関係についていえば,各インクタンクの接点が,このようなバス接続の配線を接続される構造になっていなければならないという限度で,この記載も,インクタンクの構造を規定するものとなっている。 ’’「 」 d 構成要件1A3 及び1A5 の 液体インク収納容器位置検出手段について構成要件1A3’及び1A5’の,キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器の発光部を光らせ,それを受光手段で受光し,その受光結果に基づいて液体インク収納容器の搭載位置を検出する,という記載と,本件明細書に記載された光照合処理の手順(段落【0108】〜【0112 )を併せ見れば,当業者であれば 「液 】,体インク収納容器位置検出手段」とは光照合処理を実施するための構成であること,具体的には,発光部の発光を受光する受光部と受光結果に基づきインクタンク装着位置の誤りの有無を検出する制御部であることを容易に理解することができる。 そして,本件訂正発明1では,インクタンク側の発光部と,プリンタ側の上記液体インク収納容器位置検出手段とが協働して,上記光照合機能を実現するのであり,インクタンク側の構成は,液体インク収納容器位置検出手段の構成に適合するよう限定を受けるのであるから,液体インク収納容器位置検出手段は,インクタンクの構成を特定する記載であるといえる。 e 構成要件1A5’の「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の発光部を光らせ」る構成について本件明細書には,本件訂正発明1において各インクタンクの発光部を個別に制御する方法及び光照合処理の方法の1実施例が記載されている(段落【0080】〜【0094 【0108】〜【0112 ,図2 】,】1,29,30 。上記光照合処理においては,プリンタ側の制御回路 )から,色情報及び制御コードが,バス接続ですべてのインクタンクに送信され,各インクタンクの制御部において,色情報の照合及びそれに応じた発光部の制御が行われることで,適切なタイミングにおいて適切なインクタンクの発光部が発光するものである。 このように 「発光部を光らせ」るのは,プリンタ側の制御回路と各 ,インクタンク上の制御部の協働作業によるものであり,どちらの要素が欠けても,適切なタイミングで「発光部を光らせ」ることはできない。 以上のとおり 本件明細書の記載を参照すれば どのような方法で 発 ,,「光部を光らせ」るのかを明確に理解することができるのであるから,明確性要件違反はない。 また 「発光部を光らせ」るためにはインクタンク側の要件が不可欠 ,,, 。 であるから この要件は インクタンクの構造を特定しているといえるウ 本件訂正発明2における「互いに異なる位置に」の意義が明確であること本件明細書の全体を読めば,構成要件2A1’の「互いに異なる位置」とは「複数のインクタンクホルダに,複数のインクタンクが搭載されること」であることを容易に理解することができることについては,前記( )5[原告の主張]ウのとおりである。したがって,明確性要件には違反しない。 エ 本件訂正発明における「色情報に係る信号を発生するための配線」の意義は明確であること本件明細書を見れば,構成要件1A4’及び2A4’の「…電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」とは,図20において,4つのインクタンクとプリンタ本体をつないでいる4本の共通の信号配線(いわゆるバス接続)を含む電気回路のことであると,容易に理解することができることについては,前記( )[原告の主張]ウのと 5おりである。したがって,明確性要件に違反するものではない。 オ 本件訂正発明における「複数の液体インク収納容器」の意義が明確であること複数の液体インク収納容器 構成要件1A1 2A1 とは 複 「」 (’,’),「数」の「液体インク収納容器」をキャリッジに搭載できるというだけのことであり,明確性を欠くものではない。この点に関する被告の主張に理由がないことについては,前記( )[原告の主張]オのとおりである。 5カ 本件訂正発明1における「受光手段」と本件訂正発明2における「受光部」は,同一の構成を意味すること本件明細書を参照すれば,構成要件1A3’の「受光手段」と構成要件2A3’及び2E’の「受光部」とは,どちらも,インクタンクの発光部からの光を受光し,その受光結果でインクタンクの搭載位置を特定するための手段ないし部位であり,同一の構成を意味することを,容易に理解することができる。 また,上記「受光手段」と「受光部」は,それぞれ異なる請求項の中の異なる用語なのであるから,各請求項において各用語の意味が定まれば十分であって,両用語が同じ構成を指すのか否かということは,請求項の明確性の要件とは関係がない。 キ 本件訂正発明における「液体インク収納容器位置検出手段は明確であること構成要件1A3’及び2A3’の「液体インク収納容器位置検出手段」の意味が明確であることについては,前記イdのとおりである。 また,構成要件1A3 ,1A5,2A3’及び2F’の記載から, ’’上記位置検出については,受光機能及び受光結果を処理して搭載位置を判断する制御部(制御回路)が必須であることは明らかであるから,本件明細書の実施例でいえば,LED101の発光を受光する第1受光部210及びインクタンクの装着位置を判断する制御回路300が 「液体インク,」,。 収納容器位置検出手段 を構成すると解するのが 論理的には厳密である( ) 争点3-5-5(本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36 11条4項1号(実施可能要件)に違反するか)について[被告の主張]本件明細書の記載からは,誤装着されているインクタンクの位置が正しい装着位置と隣接している場合に,どのようにすれば,隣接している位置からの発光やその他プリンタの使用環境に存在する周囲の光は受光せずに,インクタンクが誤装着しているものとして区別して認識することができるのか その実現手段が明確でない その理由については 前記( ) 被 ,。,[ 6告の主張]と同じである。 [原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。 当業者であれば,この程度の「手段」を技術常識から容易に設定することができることについては,前記( )[原告の主張]のとおりである。 6( ) 争点4(権利濫用(独占禁止法違反)の抗弁の成否)について 12[被告の主張]私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という )21条は 「この法律の規定は,著作権法,特許法,実用新案法, 。,意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為についてはこれを適用しない 」と規定するが,同条は,特許権者が特許権の行使に名を藉りて濫 。 用的に競争制限行為に及んだ場合にまで独占禁止法の適用を除外する趣旨ではなく,特許権を行使する行為が独占禁止法上違法で公序良俗違反と評価される場合には,その特許権の行使は,権利の濫用として許されないものとされるべきである。 本訴における請求は,以下のとおり,インクカートリッジの消費者の選択肢を奪い,市場に認知されている互換品の製造販売業者を一挙に締め出すことを意図して,本件特許権を利用しようとするものであって,独占禁止法に違反し,公序良俗に反するものであることが明らかであり,権利の濫用として許されない。 ア インクカートリッジ市場の動向原告は,インクジェットカラープリンタ及びカラーインクカートリッジの開発及び製造販売を行っており,我が国のカートリッジ市場において有力な最大手の事業者である。原告を始めとするプリンタメーカーは,プリンタを格安で販売した上で,必需品のインクカートリッジを消耗品として何個も売ることで利益を上げるビジネスモデルを推進しており,インクカートリッジ販売の営業利益率は推定25ないし30%あると報道され,その荒稼ぎが批判されている。 インクカートリッジには,プリンタメーカーが販売するいわゆる純正品のほか,再生業者によって製造販売される再生品とプリンタメーカー以外,,「」 の生産者によって製造販売される互換品とがあり 被告は プレジール。, 製の互換品である被告製品を製造している インクカートリッジの市場はプリンタメーカーが自社独自の構造のインクカートリッジを採用しているため,再生業者や互換品業者が代替品の販売をすることによって初めて,消費者に違った価格や品質のインクを提供することが可能となっており,このような市場の確保が自由かつ公正な競争に不可欠である。 また,今日,パーソナルコンピュータやデジタルカメラ利用の増大に伴い,インクカートリッジの需要が急速に拡大し,ユーザーの互換品インクカートリッジに対する需要も高まっている。 イ 原告のインクカートリッジの変更について原告は,これまで,原告製インクタンク1及び2と同じ形状であって,ICチップが搭載されていないインクカートリッジ(BCI 3e,6,-7系。以下「旧原告製インクタンク」という )を製造販売してきた。旧 。 原告製インクタンクについては,平成17年9月ころには,再生品及び互換品が既に発売されており,市場に認知され,数多くのユーザーが使用していた。 原告は,平成17年9月,それ以降に発売するプリンタを発光機能付きの原告製インクタンクでないと動作しないように設計した上,ICチップが搭載された原告製インクタンクの製造販売を開始し,それと同時に,旧原告製インクタンクの製造販売を中止して,従来のプリンタを購入していたユーザーにもあえて発光機能付きの原告製インクタンクを購入するように市場を誘導した。 しかしながら,発光制御機能のない従来のプリンタに発光機能付きの原告製インクタンクを装着しても,発光しないまま印刷ができるだけであったのみならず,原告製インクタンクは,インクカートリッジ内部に発光機能を組み込んだことにより,旧原告製インクタンクと比較してインク容量が必然的に減少することとなったため,従来のプリンタのユーザーにとっては,割高の商品を強制的に購入せざるを得ない不利益を生じさせるものであった。例えば,BCI-7YとBCI 7eYとの対比において,そ -のインク容量が約8.4重量%減少したのみならず,販売価格は約14円の値上げとなった。このように,原告は,従来のプリンタを購入していたユーザーに対し,不要な機能付の原告製インクタンクを抱き合わせて購入することを強いたのみならず,インクカートリッジの仕様変更に乗じて,不当な利益を搾取したことが明らかである。 原告は,本件発明の課題をパソコンに不慣れなユーザーによる誤った使用(装着位置のミス)の防止である旨主張する。しかしながら,前記のとおり,新機種のプリンタは,同色のインクカートリッジが2個以上装着されたミスがあっても,LEDの発光によりユーザーにエラーが報知されることはない。また,すべての色が装着されたが位置が違っていたというミスの場合は,LEDの発光による報知はあっても,インクカートリッジが受光部の近傍まで移動した後にタイムラグがあって報知されるので,エラーに気づいたときには,すでにキャリッジ部分に違った色のインクが浸透して混色が進んでしまうという欠点があり,誤装着による問題点の解消には,実用上ほとんど意味がない。 したがって,原告製インクタンクへの変更は,既に市場に認知されていた再生業者や互換業者を排除するために,出願中であった本件発明に関連するインクカートリッジの発光機能を利用することを意図して,これにICチップを搭載したものであったことが明らかである。 さらに,原告製インクタンクの発売に伴って再生品,互換品(オーム,カレン,阿吽等)が旧機種のプリンタのみの対応品という位置付けになったため,それを境に再生品,互換品とも著しく売り上げが減少することと。, , , なった その結果 再生業者は インクカートリッジの確保が困難となり他方,互換業者は,暗号化されたICチップの解読や発光機能への対応に困難を極めることとなって,原告製インクタンク適合のプリンタについては,その後,約1年半にわたって100%純正品の市場を強いられることとなった。原告がインクカートリッジの変更によって市場を独占することとなったため,ユーザーからは,価格が高止まりしていることが批判されている。 結局,再生業者において,原告製インクタンクの再生品を発売できたのが平成19年4月,互換品(オーム電機,カレン,ナインスター,阿吽,G&G等)が発売されたのが平成20年8月,被告の製造する被告製品の発売は同年9月20日であって,その発売後,ようやく互換品を含めた各社が選択肢を提供する健全な市場が形成されかけた矢先に,これを阻止すべく,本件訴え提起がされた。 以上の経過からすると,原告が本件訴えに及んだ真の意図は,高止まりしていた原告製インクタンクの価格を維持し,インクカートリッジの消費者の選択肢を奪い,市場に認知されている互換品の製造販売業者を一挙に締め出すことにあるというべきである。 ウ インクカートリッジの発光化と独占禁止法について原告は,平成16年10月21日,公正取引委員会から,独占禁止法違,,, 反被疑事件の処理について その審査の結果を公表されたが 同委員会はその中で 「レーザープリンタに装着されるトナーカートリッジへのIC ,チップの搭載とトナーカートリッジの再生利用に関する独占禁止法上の考え方」として,以下のとおりの見解を公表している(乙25 。)「近年,レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジ(以下「カートリッジ」という )にICチップが搭載される事例が増えている。レ 。 ーザープリンタのメーカーがその製品の品質・性能の向上等を目的として,カートリッジにICチップを搭載すること自体は独占禁止法上問題となるものではない。しかし,プリンタメーカーが,例えば,技術上の必要性等の合理的理由がないのに,あるいは,その必要性等の範囲を超えて? ICチップに記録される情報を暗号化したり,その書換えを困難にして,カートリッジを再生利用できないようにすること? ICチップにカートリッジのトナーがなくなった等のデータを記録,, , し 再生品が装着された場合 レーザープリンタの作動を停止したり一部の機能が働かないようにすること, ? レーザープリンタ本体によるICチップの制御方法を複雑にしたりこれを頻繁に変更することにより,カートリッジを再生利用できないようにすることなどにより,ユーザーが再生品を使用することを妨げる場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある(第19条(不公正な取引方法第10項[抱き合わせ販売等]又は第15項[競争者に対する取引妨害 )の]規定に違反するおそれ 。)なお,前記の考え方は,インクジェットプリンタに使用されるインクカートリッジにICチップを搭載する場合についても,基本的に同様である 」。 ,, 上記の公正取引委員会の考え方は再生品について述べたものであるが本件のような互換品に対しても適用できるものであり,インクカートリッジに発光機能を付加してICチップの制御方法を複雑にする場合にも適用が問題となるものである。 エ 原告の独占禁止法違反行為上記の考え方を前提として,原告の一連の行為をみると,原告製インクタンクは,特定のプリンタにしか適合しないICチップを新たに搭載したインクカートリッジであり,ユーザーが互換品を使用することを妨げる,いわゆる特定のプリンタとの抱き合わせ商品であって,原告は,プリンタの供給に併せてユーザーに原告製インクタンクを購入するように強制させているから,独占禁止法19条(不公正な取引方法第10項「抱き合わせ販売等 )の規定に違反している。 」すなわち,原告製インクタンクが,色ラベルにより誤装着を防止しているにもかかわらず,プリンタからの発光制御信号によって発光する発光素子を採用し,印刷開始に先立って発光しない限り動作しないようにしているのは,単に原告製プリンタがこの発光素子を持たないインクタンクを排除するように設計されているからであり,原告は,原告製プリンタと原告製インクタンクについて,抱き合わせ販売を行っている。このような抱き合わせ販売がされることにより,ユーザーは,原告製インクタンクの購入を強制されて,商品選択の自由が妨げられ,その結果,良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得するという競争が侵害され,原告が市場を独占することになった。 また,原告製インクタンクに搭載されたICチップは,ICチップに記録される情報を複雑にしてその書換えを困難にし,本件発明に関連する発光機能を動作させるための不可欠の条件とするものであるから,ユーザーが所望する安価な互換品の購入を妨害し,互換品生産事業者の事業参入を阻害するものである。 原告は,前記のとおり,ICチップ搭載による発光機能の付加が誤装着による問題点の解消に実用上ほとんど意味のないものであったにもかかわらず,競争関係にある再生業者や互換品業者の参入を阻止するため,技術上の必要性等の範囲を超えて,原告製インクタンクにICチップ搭載による発光機能を付加させたものであり,これにより,ユーザーが原告以外の事業者から別のインクカートリッジを購入することを長期間にわたって不当に妨害しているから 独占禁止法19条 不公正な取引方法第15項 競 ,( 「争者に対する取引妨害)の規定に違反する。 」オ 原告の権利濫用行為本件訴えは,上記独占禁止法違反行為によって,市場を独占し,不当な利益を享受していた原告が,相次いで互換品を発売した互換品業者の市場参入を阻止し,自らの独占を維持するために,インクカートリッジの消費者の選択肢を奪い,市場に認知されている互換品の製造販売業者を一挙に締め出すことを意図して,本件特許権の存在を利用して技術上の必要性等の範囲を超えてなしたものであって,独占禁止法に違反し,公序良俗に反するというべきである。 したがって,本件請求は,原告が特許権の行使に名を藉りて濫用的に競争制限行為に及んだものであって,権利濫用として許されない。 [原告の主張]被告の主張を否認ないし争う。 |
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当裁判所の判断
1 本件特許権1に基づく被告製品2の輸入,販売等の差止請求の可否( ) 争点1(被告製品2は,本件発明1及び本件訂正発明1の構成要件を充 1足するか)についてア 被告製品2の構成(, ) , , 証拠 甲4 10の1〜4 及び弁論の全趣旨によれば 被告製品2は別紙物件目録( )の第2及び第3記載の構造のインクタンク本体に,同目 2録第1記載の表示を付し,インクを充填したインクタンクであると認められる。 これに対し,被告は,別紙物件目録( )記載のICチップ(同目録の第 22【図1】ないし【図3】の番号103)は,被告が自ら製造又は製造委託した物ではなく,別のメーカーから仕入れた物であり,被告は,同メーカーから,ICチップの構造等に関する詳細な情報を提供されていないので,同ICチップの構造(上記目録の第3の8項及び9項)については知らないと主張する。 しかしながら,前掲各証拠により認められる,被告製品2に設けられた基板の外観,同基板上に設けられたICチップ内部のメモリに保持されたコードをCPUボードを用いて読み出した結果,及び,被告製品2を原告製プリンタに装着した際の動作の状況等によれば,? 被告製品2は,その基板の上面に,発光部及びICチップが設けられ,基板の下面(上面と反対側の面)に,インクタンクがタンクホルダに保持された状態で原告製プリンタのコネクタ(プリンタ側接点)と電気的に接続する電極パッドが設けられていること,? 上記ICチップには情報保持部が存在し,当該インクタンクのインク色を示す情報を保持することが可能であること,?上記ICチップには制御部が存在し,原告製プリンタから上記電極パッドを介して入力される電気信号中の色情報と,上記情報保持部の保持する色情報とを比較し,それらが同一である場合に上記発光部を発光させることが認められ,上記認定を左右するに足りる証拠はない。 したがって,被告製品2に設けられたICチップが別紙物件目録( )記2載の構造(同目録第3の8項及び9項)を有することは明らかであり,被告の主張は理由がない。 イ 各構成要件の充足性についての検討(ア) 構成要件1A及び1A’について被告製品2は,次のとおり,構成要件1A1ないし1A4及び構成要件1A1’ないし1A5’の構成を備えた原告製プリンタのキャリッジに対して着脱可能であることが認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1A(1A1〜1A5)及び1A (1A1’〜1A6 )を充足する。 ’’a 構成要件1A1及び1A1’について(a) 証拠(甲4・3頁,甲10の1,2)によれば,被告製品2は液体インク収納容器であり,原告製プリンタは複数の被告製品2を搭載して移動することのできるキャリッジを備えていることが認められる。 したがって,原告製プリンタは「複数の液体収納容器が搭載可 ,能 (構成要件1A1)なものであり 「複数の液体インク収納容 」,器を搭載して移動するキャリッジ (構成要件1A1 )を備えて 」’いると認められる。 (b) これに対し,被告は,? 本件発明1及び本件訂正発明1は,インクタンクの誤装着防止という従来からあった課題に対し,上記発明の構成を備えることで,インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図りつつ,誤装着防止を実現するという効果を奏するものである,? したがって,一つでも異なる形状の液体収納容器があれば,上記効果を奏することができず,製造効率やコストの点で不利となってしまう,? そのため,構成要件1A1及び1A1’の「複数の液体収納容器(液体インク収納容器 」とは 「すべて同一形状の複数の ),液体収納容器(液体インク収納容器 」と解するのが相当であり, )被告製品2と形状の異なる被告製品1を搭載することのできる原告製プリンタは上記構成要件に該当しない,と主張する。 しかしながら 上記構成要件は 単に 複数の液体収納容器 液 ,,,「(体インク収納容器 」と記載されているだけであり,液体収納容器 )の形状について,被告の主張するような限定は付されていない。 また,本件明細書には,発明の詳細な説明として,以下の記載が存在する(甲2 。)【背景技術】「近年,デジタルカメラの普及に伴って,パーソナルコンピュータ(PC)を介さずにデジタルカメラと記録装置としてのプリンタ() 。 とを直接接続して印刷する用途 ノンPC記録 が増えつつあるさらにデジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデータ,()。」 転送を行い 印刷を行う形態 ノンPC記録 も増えつつある(4頁43行〜48行 段落【0002 )】「一方,さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン)インクに,濃度の薄い淡色マゼンタ,淡色シアンといったインクが使われるようになってきており,さらにはレッド,ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案されてきている。このような場合,インクジェットプリンタに対しては7〜8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際に,間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要となってくる。特許文献3には,インクタンクがキャリッジに搭載される際の,キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をインクタンクごとに異ならせ,これにより,インクタンクが誤った位置に装着されることを防止している構成が開示されている (5頁11行〜20行 段落【0 。」004 )】【発明が解決しようとする課題】「インクタンクの搭載位置を特定する構成としては,上述したように,搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら,この場合は特に,インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタンクを製造する必要があり,製造効率やコストの点で不利となる (5頁35行。」〜39行 【0007 )】「他の構成として,インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとする構成が考慮される。例えば,インクタンクのインク色情報をそのインクタンクから読み出し,LEDの点灯などを制御するための信号線を搭載位置ごとに個別のものとすることにより,読み出した色情報がその搭載位置に適合していなければインクタンクが誤って搭載されていることを知ることができる (5頁40行〜46行 【0008 ) 。」】「しかしながら,このような信号線をインクタンクもしくは搭載位,。 置ごとに個別なものとする構成は 信号線の数を増すものである特に,上述したように最近のインクジェットプリンタなどでは,用いるインクの種類を多くすることにより画質の向上を図るのが一つの傾向としてある。このようなプリンタでは,特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で,配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが,単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では,インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである (5頁47行〜6頁4行 段落【0 。」009 )】「本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり,その目的とするところは,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある (6。」頁5行〜9行 段落【0010 )】【発明の効果】「以上の構成によれば,記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの個体情報とに基づいて発光部の発光を制御するので,先ず,搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても,固体情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ,これにより,インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に,このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合,例えば,キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタン。, クは誤った位置に搭載されていることを認識できる これにより例えば,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,結果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる (8頁47行〜9。」頁10行 段落【0019 )】「この結果,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行(判決注: 発光」の誤記と認める )制御をすることが可能と 「。 なる (9頁11行〜14行 段落【0020 ) 。」】本件明細書の上記記載によれば,同一形状の複数のインクタンクを相互に異なる位置に搭載することができるプリンタであれば,同プリンタに上記インクタンクと異なる形状のインクタンクを搭載することができるか否かにかかわらず,本件発明1及び本件訂正発明1における課題(インクタンクの形状をインクタンクごとに異ならせることなく,インクタンクの誤装着を防止すること )が存在す。 るということができ,本件光照合処理によりインクタンクの誤装着を認識するという上記発明の効果によって,上記課題を解決することができるものと認められる。 そうすると 構成要件1A及び1A の 複数の液体収納容器 液 ,’「(体インク収納容器)が搭載可能」な記録装置とは,同一形状の複数のインクタンクを相互に異なる位置に搭載することかできるプリンタであれば足りると解するのが相当であり,他に異なる形状のインクタンクを搭載することができるものであることは,被告製品2が構成要件1A及び1A’を充足するとの判断を妨げるものではないというべきであるから,被告の主張は理由がない。 b 構成要件1A2及び1A2’について証拠(甲4・3頁,甲10の1〜4)によれば,原告製プリンタのタンクホルダには,被告製品2に設けられた基板と電気的に接続する接点が設けられていることが認められる。 したがって,原告製プリンタは「液体収納容器に備えられる接点 ,と電気的に結合可能な装置側接点 (構成要件1A2)及び「液体イ 」ンク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点 構」(成要件1A2 )を備えていることが認められる。 ’c 構成要件1A3及び1A3’について(a) 証拠(甲4(3頁,4頁,7頁〜11頁 ,甲10の1〜4) )及び弁論の全趣旨によれば,? 原告製プリンタには,同プリンタのキャリッジの箇所に向かい合うように,被告製品2の発光部からの光を受光する受光手段が一つ設けられていること(なお,被告製品2は,底面の発光部の光が,透明なプラスチック状の導光性部材を通してインクタンク上部まで導光され,同所から上記受光手段に投光される構成となっている ,? 同プリンタのすべてのタン 。)クホルダに被告製品を装着した状態でプリンタの上部カバーを閉じると,キャリッジは,上記受光手段の付近まで移動し,受光手段の付近で細かく移動することによって,受光手段に対向するインクタンクが次々と入れ替わること,? 各インクタンクは,前記アのとおり,当該インクタンクのインク色を示す色情報を保持することが可能な情報保持部を有しており,原告製プリンタから上記bの接点を介して入力される電気信号中の色情報と,上記情報保持部の保持する情報を比較し,それらが同一である場合に,インクタンク上の,,, 発光部を発光させること ? 上記?の発光は 各インクタンクがその本来装着されるべき搭載位置が上記受光手段に対向する位置に来た時に行われること,? 原告製プリンタ(具体的には,プリンタ内の制御回路)は,上記?ないし?の動作により上記受光部が上,, 記発光を受光することができるか否かによって 各インクタンクがその本来装着されるべき位置に装着されているかどうかを確認すること(すなわち,本件光照合処理を行うこと ,が認められる。)したがって,原告製プリンタは「液体収納容器からの光を受光 ,する受光手段 (構成要件1A3 ,並びに 「前記キャリッジの移 」),動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ ,及び 「該受光手段で該光を受光すること 」,によって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段 (構成要件1A3 )を備えている。 」’(b) これに対し,被告は,? 本件発明1及び本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載には 「発光部 「受光手段」という用語が用 ,」,いられているものの 「発光部」と「受光手段」の関係は不明確で ,あり,どのように発光を検出するのかが不明であって,本件明細書の発明の詳細な説明にも,この点について実施例以外に十分な開示がされていない,? そのため,上記記載の解釈に当たっては,上記実施例に記載されている発光の検出方法を考慮して解釈せざるを得ない,? そうすると,本件発明1及び本件訂正発明1に係るインクタンクについて,被告製品2のように,一つの基板に接点及び発光部を設け,当該基板をインクタンクの底面側に設ける構成を実施しようとした時には,上記実施例(段落【0034 【003】,8 【0046 【0047 ,図4,12)のように,タンクホ 】,】,】ルダに穴を設け,この穴から直接光を通すか,穴に設けた導光性部材を通じて光を通すことでしか,発光部の光を受光手段で受光させることができないというべきである,? すなわち,構成要件1A3の「該液体収納容器からの光を受光する」及び同1A3’の「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」とは 「イン,クタンクホルダに空けられた穴もしくは光透過性の部分を通じて光を通すことにより該液体収納容器からの光を受光する」と解するのが相当である,? 一方,被告製品2の構成は上記(a)?のとおりであり,インクタンクホルダに空けられた穴又は光透過性の部分を通じて光を通す構成とはなっていないから,同製品は構成要件1A3及び1A3’を充足しない,と主張する。 しかしながら,上記各構成要件には,単に 「該液体収納容器か,らの光を受光する」ないし「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」と記載されているだけであり,プリンタに設けられた受光手段がインクタンクないしインクタンクの発光部からの光を受光する方法を被告の主張する方法に限定する旨の記載は存在しない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明における前記【発明が解決しようとする課題】及び【発明の効果】の記載からすると,本件発明1及び本件訂正発明1においてインクタンクに発光部を設けること及びプリンタに受光手段を設けることの技術的意義は,インクタンクによる所定の位置での発光を上記受光部が検出することによって本件光照合処理を実現することにあるものと認められる。 そうすると,構成要件1A3及び1A3’の「受光手段」とは,プリンタ上に1個設けられたものであり,インクタンクからの発光を受光することによって本件光照合処理を実現することのできるものであれば足りると解するのが相当であり,これを更に,基板をインクタンクの底面側に設けた場合のインクタンクからの発光を受光する方法を本件明細書の実施例の場合に限定するものと認めることはできないというべきである。 被告の主張は,本件発明1及び本件訂正発明1の技術的範囲をその実施例に限定しようとするものであり,これを採用することはできない。 (c) 被告は 「液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成 ,」要件1A3 )とは,その通常の語義や,本件発明1及び本件訂正 ’発明1の課題がキャリッジにおけるインクタンクの誤装着を防止することであることからすれば 「各インクタンクがキャリッジ上の ,どの位置に搭載されているかを検出する」という意味であると解するのが相当であり,原告製プリンタは,インクタンクが所定の位置に装着されていないことは検出できるものの,誤装着されたインクタンクが装着された場所については検出することができないから,上記の意味の「検出」機能を備えていないとも主張する。 しかしながら,構成要件1A3’は,単に 「液体インク収納容,器の搭載位置を検出する」と記載されているだけであり 「搭載」,とは「船・車・飛行機などに資材を積みこむこと」を 「位置」と,は「ある人・物・事柄が,他との関係もしくは全体との関係で占める場所,あるいは立場」を 「検出」とは「検査して見つけ出すこ ,」, ( , と を それぞれ意味するものであるから 広辞苑第5版152頁860頁,1879頁 「搭載位置」というだけでは,それが絶 ,),対的な位置関係(インクタンクが現に装着されているキャリッジ上の特定の箇所)を意味するのか,相対的な位置関係(例えば,インクタンクが現に装着されている場所が,その本来装着されるべき場所との関係で,正しいものか否か)を意味するのかは,一義的に 。 明確であるとはいえないというべきである。 ,, そこで本件明細書の発明の詳細な説明を見ると 前記aのとおり本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1及び本件訂正発明1の課題は,インクタンクの形状を異ならせたり,各インクタンクとプリンタとをつなぐ個別の信号線を用いたりすることなく,インクタンクの誤装着を防止することであり,本件光照合処理により,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識することができ,これによって,上記課題を解決することができる旨が記載されていることが認められるが,それを超えて,誤った位置に搭載されたインクタンクが,キャリッジ上のどの位置に搭載されているのかを検出する方法については,何らの記載も示唆もされていないものと認められる。 さらに,本件明細書の発明の詳細な説明中には 【発明を実施す,るための最良の形態】として,次のとおり,本件光照合処理について説明する部分があり,ここでも,本件光照合処理は,インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理であり,同処理によって,本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができることが説明されている。 「光照合処理は,正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では,インクタンクの装着位置について,例えば,インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし,それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから,それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため,本光照合処理を行い,誤って装着されている場合は,ユーザにその旨を知らせるものである。これにより,特に,インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる (2。」2頁43行〜23頁1行 段落【0108 )】「図29(a)〜(d)および図30(a)〜(d)は,この光照合処理を説明する図である (23頁2行〜4行) 段落【0109 ) 。」】(, 。 判決注:下記の図面は 対応する図面を裁判所において挿入した以下同じ )。 【図29】 【図30】「図29(a)に示すように,先ず,第1受光部210に対して,図中左側から右側へ移動キャリッジ205を開始する。そして,最初に,イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように,実際は点灯し所定時間後消灯すること,以下,本照合処理で)。, は同様 インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき第1受光部210はLED101の発光を受光することができ,制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する (23頁5行〜12行 段落【0 。」110 )】「キャリッジ205を移動しつつ,同様にして,図29(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は,インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次,図29(b)〜(d),。 に示すように 判断する装着位置を変えながら発光を行って行くこれらの図は,正しい位置に装着されている例を示している 」。 (23頁13行〜19行 段落【0111 )】「これに対し,図30(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは,第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果,このタイミングでは,第1受光部210は受光できないことから,制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して,図30(c)に示すように,シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており,第1受光部210に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光する (23頁20。」行〜30行 段落【0112 )】「以上説明した光照合処理を行うことにより,制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また,装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には,その装着位置において,他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって,その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる (23頁31行〜36行 段落【0113 ) 。」】「図25において,上述したステップS105の光照合処理の後,ステップS106でこの処理が正常終了したか否かを判断する。 光照合が正常終了したと判断したときは,ステップS107で,操作部213の表示器を例えばグリーンに点灯して,本処理を終了する。一方,正常の終了でないと判断したときは,ステップS109で操作部213の表示器を例えばオレンジで点滅するとともに,ステップS110で,ステップS105で特定した,本来の正しい位置に装着されていないインクタンクのLED101を,例えば点滅あるいは点灯する。これにより,ステップS108で,ユーザが本体カバー201を開けたとき,本来の正しい位置に装着されていないインクタンクを知ることができ,正しい位置への再装着を促すことができる (23頁37行〜46行 。」段落【0114 )】以上の請求項の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載からすると,構成要件1A3’の「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」とは 「インクタンクが正しい位置に搭載されているか ,否かを認識する」ことを意味するものであり,それを超えて,誤った位置に搭載されたインクタンクが,キャリッジ上のどの位置に搭載されているかを確定させることまでは意味しないと解するのが相当である。 したがって,被告の主張は理由がない。 d 構成要件1A4及び1A4’について証拠(甲4・5頁及び6頁,甲10の1〜4)によれば,原告製プリンタは,各インクタンクと接続するタンクホルダのコネクタが,タンクホルダの裏側において共通の配線で接続されていること,本件光照合処理の際には,上記配線を通じて,各インクタンクを光らせるための色情報のコードが各インクタンクに送信されること,が認められる。 したがって,原告製プリンタは「搭載される液体収納容器それぞ ,れの前記接点と結合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続する配線を有した電気回路 (構成要件1A4 ,及び 「搭載される液 」),体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路 (構成要件1A4 )を備えていると認められる。 」’e 構成要件1A5’について構成要件1A5’の「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」とは,前記cのとおり 「インクタンクが正しい位置に搭載されてい ,るか否かを認識する」ことを意味するものと解される。また,原告製プリンタが,本件光照合処理を行うことによって,各インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出することができると認められることについても,上記cで認定したとおりである。 したがって,原告製プリンタは「前記キャリッジの位置に応じて ,特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する (構成要件1A5」)機能を備えていると認められる。 ’(イ) 構成要件1B及び1B’について証拠(甲4・7頁及び8頁)によれば,被告製品2には,その底面部に基板が設置され,同基板上に,原告製プリンタ側のコネクタと電気的に接続することが可能な接点が設けられていることが認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1B及び1B’の「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」を備えていると認められ,同構成要件を充足する。 (ウ) 構成要件1C及び1C’について証拠(甲4・8頁〜11頁,甲10の1〜4)によれば,被告製品2は,その基板に設けられたICチップに,当該インクタンクの色に応じた色情報を保持していることが認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1Cの「液体収納容器の個体情報を保持可能な情報保持部」及び同1C’の「液体インク収納容器のイ」, ンク色を示す色情報を保持可能な情報保持部 を備えていると認められ同構成要件を充足する。 (エ) 構成要件1D及び1D’について前記アのとおり,被告製品2は,その基板の上面に発光部が設けられていることが認められる。また,前記(ア)cのとおり,上記発光部は,本件光照合処理の際,原告製プリンタの受光部に投光するための光を発光することが認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1Dの「発光部」及び同1D’の「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」を備えていると認められ,同構成要件を充足する。 (オ) 構成要件1E及び1E’についてa 前記アのとおり,被告製品2は,その基板の上面に発光部及びICチップが設けられ,ICチップには情報保持部が存在し,当該インクタンクのインク色を示す情報を保持することが可能であって,原告製プリンタとインクタンクとの接点から上記ICチップに対し,インクの色に応じた色情報に発光コマンド(制御部に発光を命じる命令コード)を付けた信号を送付すると,ICチップ内の制御部において,上,, 記送信された色情報と 上記情報保持部の保持する色情報とを比較し両者が一致している場合のみ上記発光部を発光させることが認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1Eの「前記接点から入力される個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」及び同1E’の「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」を備えており,同構成要件を充足する。 b これに対し,被告は 「所定の目的に合致するよう意図的,思いど ,おりに支配したり,あやつるという,何らかの自律的なコントロール・調節機能 (乙7,43)という「制御」の有する通常の意味に 」,従って解釈すれば,構成要件1E及び1E’の「発光部の発光を制御」, ,, ,, する制御部 とは 発光部の発光を いつ どのタイミングで 点灯点滅,消灯のいずれの状態とするのかについて,自身でコントロールし,また,発光部の点滅速度を自身で調節し得る機構を指すと解するのが相当であり,被告製品2は,プリンタ本体の制御回路からの信号を受け取って,その指示どおりの発光,点滅を行っているにすぎないから,上記意味での「制御部」を備えていない,と主張する。 しかしながら,証拠(乙7,43)によれば 「制御」とは,一般,的に 「システムにおいて,所定の目的に合致するように行う意図的 ,な操作 「かってにさせないこと。思いどおりにあやつること。支 。」,配 「調節すること 」を意味するものと認められるところ,被告 。」,。 製品2では,上記aのとおり,プリンタ本体から送られてくる「色情報+発光コマンド」を受信すると,同製品に設けられたICチップ内の制御部において,上記色情報が自らのインクタンクの色に一致しているかどうかを比較し,両者が一致していると判断した場合に限り,同製品上の発光部を発光させていることが認められる。 そうすると,被告製品2は,単にプリンタ本体に指示されるがままに発光部を発光させているものではなく,そのICチップ内の制御部において,その発光部の発光を意図的に操作している,すなわち,上記のとおりプリンタ本体から送られてくる色情報が自己の保有する色情報と一致するかどうかを主体的に判断することにより,発光部の発光を「制御」しているものと認められる。 また,本件明細書の発明の詳細な説明においても,前記のとおり,本件発明1及び本件訂正発明1の目的は 「複数のインクタンクの搭 ,載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすること (段落【00」10 )にあり,発明の効果は 「記録装置の本体側の接点(コネク 】,タ)と接続する液体収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの個体情報とに基づいて発光部の発光を制御するので,先ず,搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても,固体情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ,これにより,インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる (段落【0019 )であると説明されており,イン 。」】クタンクにおいて発光部の発光制御が行われる旨が記載されている。 さらに,本件明細書の発明の詳細な説明の【発明を実施するための最良の形態】においても,次のとおり,発光部の制御は,インクタンク内の入出力の制御回路及びLEDドライバで行われる旨が記載されている。 「一方,各インクタンク1の基板100には,これら4本の信号線の信号によって動作する制御部103およびそれによって動作するLED101が設けられている (18頁29行〜31行 段落【0 。」082 )】「図21はこれら制御部などが設けられた基板の詳細を示す回路図である。同図に示すように,制御部103は,入出力制御回路(I/O CTRL)103A,メモリーアレイ103BおよびLEDドライバ103Cを有して構成される。入出力制御回路103Aは,本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて,LED101の表示駆動やメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制御する。メモリーアレイ103Bは,本実施形態ではEEPROMの形態のものであり,インク残量,収納するインクの色情報の他,そのインクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のインクタンク個体情報を記憶することができる。なお,色情報はインクタンクの出荷時または製造時に,その収納しているインクの色に対応して,メモリーアレイ103Bの所定のアドレスに書き込ま。,, , れる 例えばこの色情報は 図23図24にて後述されるように() , , インクタンクの識別情報 個体情報として用いられ これによりインクタンクを特定してメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みやメモリーアレイ103Bからデータの読み出しを行い,また,そのインクタンクのLED101の点灯,消灯を制御することが可能となる (後略 (18頁32行〜46行 段落【008 。)」3)】「LEDドライバ103Cは,入出力制御回路103Aから出力される信号がオンのときLED101に電源電圧を印加するよう動作し,これにより,LED101を発光させる。従って,入出力制御回路103Aから出力される信号がオンの状態にあるとき,LED101は点灯状態となり,上記信号がオフの状態にあるとき,LED101は消灯状態となる (19頁8行〜13行 段落【00 。」84 )】「図23に示すように,メモリーアレイ103Bへの書き込みでは,本体側の制御回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御回路103Aに対し,信号線DATA(図20)を介して「開始コード+色情報 「制御コード 「アドレスコード , 」,」,」「データコード」の各データ信号が,クロック信号CLKに同期してこの順で送られてくる 「開始コード+色情報」は,その「開始 。 」, ,, コード 信号によって 一連のデータ信号の始まりを意味し また「色情報」信号によってこの一連のデータ信号の対象となっているインクタンクを特定する。なお,ここでのインクの「色」とはY,M,C等のインク色だけでなく濃度の異なるインクをも含むものである (19頁26行〜34行 段落【0087 ) 。」】「「」, , 「」 ,「」,「」, 色情報 は 同図に示すように インクの色 K C M「」 , , Y に対応したコードを有しており入出力制御回路103Aはこのコードが示す色情報とメモリーアレイ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致しているときにのみ,それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い,一致しないときは,それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。これにより,図20に示した共通の信号線「DATA」を介して,本体側からデータ信号をそれぞれのインクタンクに共通に送っても,それに上述の色情報を含めることによってインクタンクを特定することができ,書き込み,読み出し,LEDの点灯,消灯など,その後のデータ信号に基づく処理を,その特定したインクタンクに関してのみ行うことが可。, () 能となる この結果 4つのインクタンクに対して共通の 1本のデータ信号線を介して送信されるデータによってデータの書き込みなどのほか,LEDの点灯,消灯の制御を行うことができ,これらの制御に要する信号線の数を本発明のように少なくすることが可能となる (後略 (19頁35行〜47行 段落【0088 ) 。)」】「LED101の点灯または消灯では,図24に示すように,上記と同様,先ず 「開始コード+色情報」のデータ信号が,本体側から ,信号線DATAを介して入出力制御回路103Aに送られてくる。 上述したように 「色情報」によってインクタンクが特定され,そ ,の後に送られてくる「制御コード」に基づくLED101の点灯,消灯は特定されたインクタンクのみで行われる。点灯,消灯にかかる「制御コード」は,図23にて上述したように 「ON」または,「OFF」のコードがあり 「ON」によってLED101の点灯 ,が行われ 「OFF」によって消灯が行われる。すなわち,制御コ ,ードが「ON」のとき,入出力制御回路103Aは,図22にて前,, 述したように LEDドライバ103Cに対してオン信号を出力し。, 「 」 それ以降もその出力状態を維持する 逆に 制御コードが OFFのとき,入出力制御回路103Aは,LEDドライバ103Cに対してオフ信号を出力し,それ以降もその出力状態を維持する (後。 略 (20頁21行〜32行 段落【0092 ) )」】以上の請求項の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,構成要件1E及び1E’の「発光部の発光を制御する」とは,「プリンタ本体とインクタンクとの接点を通じてプリンタからインクタンクに入力される,インクタンクのインク色を示す色情報に係る信号と,インクタンク内の情報保持部の保持する当該インクタンクの色情報とを比較し,両者が一致する場合にインクタンクの発光部を発光させ,一致しない場合は発光部を発光させないこと」を意味すると解するのが相当である。 そうすると,本件では,上記認定のとおり,被告製品2において上記意味での「制御」が行われていることが明らかであるから,被告の主張は理由がない。 (カ) 構成要件1F及び1F’についてa 上記のとおり,被告製品2は,構成要件1A1ないし1A4及び同1A1’ないし1A5’の構成を備えた原告製プリンタのキャリッジに対して着脱可能であり,構成要件1Bないし1E及び同1B’ないし1E’の構成を備えた液体インク収納容器であると認められる。 したがって,被告製品2は,構成要件1Fの「 上記各構成を)有(することを特徴とする液体収納容器」及び同1F’の「 上記各構成(を)有することを特徴とする液体インク収納容器」に該当し,同構成要件を充足する。 b これに対し,被告は,各色のインクタンクにおけるインクの消耗の仕方は,印刷する画像の色合いや印刷物の内容によって異なるものであり,複数のインクタンクのインクが同時になくなる確率は無に等しいものである上,インクタンクは高価であるから,空になった1個のインクタンクを交換する際に,残量の残っている他のインクタンクを同時に交換することもあり得ないとして,被告製品2を原告製プリンタに誤装着する場合としてあり得るのは,インクタンクのいずれかが消耗したために交換する際に,取り外したインクタンクと別の色の被告製品2を誤って装着してしまう場合(すなわち,2個同色を装着した場合 )だけであって,この場合,原告製プリンタは,本件光照合 。 処理を行わずに誤装着の有無を検出し,誤装着を防止することができるので,被告製品2は本件発明1及び本件訂正発明1の「液体収納容器」ないし「液体インク収納容器」に該当しないと主張する。 また,被告は,同人の主張は,? 原告製プリンタ操作ガイド(乙56の1)に 「一度に複数のインクタンクを外さず,必ず1つずつ ,交換してください 」と記載されていること(55頁 ,? 原告製 。)プリンタでは,インクタンクのインクがなくなった場合,プリンタ本体のエラーランプが点滅し,インクタンクを交換しない限り印刷を続行することができなくなること(同ガイド・9頁,53頁,87頁,89頁 ,? 原告製プリンタでは,インクタンクのインクが少なく )なった場合にもインクランプは点滅するが,インクがなくなった場合の点滅の形態(点滅速度)とは明確に異なっている上,上記操作ガイドには,インクが少なくなったにすぎない時点でのインクタンクの交換を許容する記載は存在しないこと(同ガイド・53頁 ,などから)も裏付けられるとする。 しかしながら,証拠(甲4,10の1〜4,甲11,乙56の1〜4)及び弁論の全趣旨によれば,原告製プリンタは,1個のインクタンクのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設けるなどして,交換されるべきインクタンクだけを脱着することができるような構成(乙55・1頁16行〜19行,15頁16行〜21行,第1図を参照 )を採るものではなく,ユーザーが,プリンタのトップ 。 カバーを開けて,任意のインクタンクを脱着することが可能な構成を採っており,プリンタカバーを開けた状態であれば,一度の機会に,複数のインクタンクを順次取り外し,取外し作業の完了後に,新しいインクタンクを順次装着していくことも可能な構成であることが認められる。 したがって,ユーザーが,上記交換の際に,複数のインクタンクの装着位置を取り違え,それぞれ所定の位置と異なる場所に装着してしまうこと(例えば,前記本件明細書の発明の詳細な説明の段落【01】,) ,, 12 図30のようなケース も起こり得るものであり この場合ユーザーが,複数のインクタンクの脱着が完了した状態でプリンタカバーを閉じると,本件光照合処理が行われ,インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出することができると認められる。 また,被告は,上記?ないし?の事実を挙げるなどして,原告製プリンタにおいてユーザーが複数のインクタンクを同時に交換することはあり得ないことであると主張する。しかしながら,上掲各証拠によれば,原告製プリンタでは,インクが「少なくなった状態 「なく」,なった可能性がある状態」及び「ない状態」の,3段階のインク切れの警告が行われ 「なくなった可能性がある状態」及び「ない状態」 ,の警告時に印刷が停止するものの,どちらの場合も,リセットボタンを押せば,インクタンクを交換しなくても印刷を続行することが可能な構成となっており,その旨は原告製プリンタ操作ガイドにも記載されていることが認められる。そうすると,被告製品2を装着して原告製プリンタを使用しているユーザーが,同プリンタを使用中に,1本のインクタンクについて「インクがなくなった可能性がある」こと ,を示すエラーランプが点滅した場合でも,直ちに当該インクタンクを,,, 交換せず リセットボタンを押して印刷を継続することとし その後他のインクタンクについても 「インクがなくなった可能性がある状 ,態」ないし「インクが少なくなった状態」を示すエラーランプが点滅する状態となったため,この機会に複数のインクタンクをまとめて交換することとして,複数のインクタンクの脱着作業を行うということは,格別不合理な行動とはいえず,およそ起こり得ない状況ではないものと認められる。 以上の点に照らして考えると,被告製品2が本件発明1及び本件訂正発明1の「液体収納容器」ないし「液体インク収納容器」に該当することは明らかであり,被告の主張は理由がない。 c 被告は,本件発明1及び本件訂正発明1は,プリンタのキャリッジ上に,複数のインクタンクが各色1個ずつ,すべて装着された構成を必須とするものであり,インクタンクだけでなく,プリンタをも必須,, の構成要件とするものであるからインクタンク単体の発明ではなくインクタンクを搭載したプリンタの発明というべきであり,被告製品2単体で本件特許権1を侵害するものではないとも主張する。 しかしながら,本件訂正前の請求項1及び本件訂正後の請求項1の記載によれば,本件発明1及び本件訂正発明1は,組み合わせる装置(本件では,インクタンクを装着するプリンタ本体 )の構成を構成。 要件とすることにより,組み合わされる装置(本件では,インクタンク )の構成を特定するものであるということができるから,プリン 。 タ側の構成に係る構成要件(構成要件1A1〜1A4,同1A1’〜1A5 )も,インクタンクの構成を特定するために必要なものであ ’ることが認められる。 したがって,前記のとおり,被告製品2が本件発明1の構成要件及び本件訂正発明1の構成要件をいずれも充足するものである以上,被告製品2は,単体で本件特許権1を侵害するものであると認められ,被告の主張は理由がない。 ( ) 争点3(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか)に 2ついて被告は,前記3( )ないし( )の[被告の主張]のとおり,本件発明は進歩 36性を欠く(争点3-1 ,本件発明の特許請求の範囲の記載は特許法36条 )6項1号(サポート要件)及び同項2号(明確性要件)に違反する(争点3-2,3-3 ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項 )1号(実施可能要件)に違反する(争点3-4)などと主張して,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであると主張する。 しかしながら,本件特許については,その無効審判事件において本件訂正の請求がされており,同訂正はいまだ確定していない状況にある。このような場合において,特許法104条の3第1項所定の「当該特許が無効審判により無効にされるべきものと認められるとき」とは,当該特許についての訂正審判請求又は訂正請求に係る訂正が将来認められ,訂正の効力が確定したときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるか否かによって判断すべきものと解するのが相当である。 したがって,原告は,被告が,訂正前の特許請求の範囲の請求項について無効理由があると主張するのに対し,?当該請求項について訂正審判請求又は訂正請求をしたこと,?当該訂正が特許法126条又は134条の2所定の訂正要件を充たすこと,?当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること,?被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属すること,を主張立証することができ,被告は,これに対し,?訂正後の請求項に係る特許につき無効事由があることを主張立証することができるというべきである。 本件においても,原告及び被告は本件訂正に関し,同趣旨の主張をしており,前記のとおり,原告が本件訂正請求をしていること(上記?)及び被告製品2が本件訂正後の請求項1の技術的範囲に属すること(本件訂正発明1の構成要件を充足すること。上記?)については,これを認めることができる。 そこで,以下において,上記?,?及び?の点について判断する。 ア 争点3-5-1(本件訂正は,特許法134条の2の訂正要件を満たすか)について(ア) 本件訂正により,本件訂正前の請求項1は,別紙1の「請求項1」「訂正後」欄記載のとおり訂正請求がされている。 そこで,上記訂正が特許法134条の2の訂正要件を充たすか否かについて検討するに 次のとおり 本件訂正は 特許請求の範囲の減縮 特 ,,, (許法134条の2第1項1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項3号)を目的とするものであり,かつ,同条第5項において準用される同法126条3項及び4項の規定に適合するものであるから,適法な訂正であると認められる(なお,以下の説示中においては,本件訂正請求に係る訂正部分を下線で示すものとする 。。)a 構成要件1A1’及び1A6’について構成要件1A1’は,構成要件1A1の「液体収納容器が搭載可能であって」を 「液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ ,と」に変更するものであり,構成要件1A6’は,構成要件1A5の「着脱可能な液体収納容器」を 「前記キャリッジに対して着脱可能 ,な液体インク収納容器」に変更するものである。 ,「 」,「」 上記変更は 訂正前の 液体収納容器 を 液体インク収納容器(液体インクを収納する容器)に限定した上,同容器を,キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに対して着脱可能な容器に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる(なお,構成要件1A2’以下においても,訂正前の請求項1の「液体収納容器」を「液体インク収納容器」に変更するものがあり,かかる訂正が,いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められることについては,構成要件1A1’の場合と同じである 。。)また,上記訂正の内容は,本件明細書の段落【0022】及び【0068】ないし【0072】などに記載されているから(甲2 ,同)訂正は,明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法134条の2第5項,同法126条3項)であると認められる。 b 構成要件1A2’について構成要件1A2’は,構成要件1A2の「該液体収納容器に備えられる接点と電気的に結合可能な装置側接点」を 「該液体インク収納,容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」に変更するものである。 上記変更は,本件訂正前の請求項1において,構成要件1A2及び1Bが,いずれも,インクタンクに備えられる接点と装置側接点との関係を表現したものであるにもかかわらず,構成要件1A2では「結」, 「」 , 合 と表現され 構成要件1Bでは接続 と表現されているために表現が混在していたものを「接続」という表現に統一して明確にし ,たものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。 また,インクタンクに備えられる接点と装置側接点とが接触する関係を「接続」と表現することについては,本件明細書の段落【0033 【0057】などにも記載されているから(甲2 ,同訂正は, 】,)明細書に記載した事項の範囲内において行われたものであると認められる。 c 構成要件1A3’及び1A5’について構成要件1A3’は,構成要件1A3の「該液体収納容器からの光を受光する受光手段」を「前記キャリッジの移動により対向する前 ,記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」に変更するものであり,構成要件1A5’は,訂正前の請求項1に 「前記キ,ャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」との構成を付加するものである。 上記変更は,発明の対象となる液体インク収納容器を,上記の構成を有する記録装置に着脱可能な容器に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 また,上記訂正の内容が本件明細書の段落【0019】及び【0108】ないし【0113】などに記載されていると認められることについては,前記( )イ(ア)cのとおりであるから,同訂正は,明細書 1に記載した事項の範囲内において行われたものであると認められる。 d 構成要件1A4’について構成要件1A4’は,構成要件1A4の「搭載される液体収納容器それぞれの前記接点と結合する前記装置側接点に対して共通に電気的接続する配線を有した電気回路とを有する」を 「搭載される液体イ,ンク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し」に変更するものである。 上記変更は,発明の対象となる液体インク収納容器を,色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に着脱可能な容器に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる(なお,構成要件1A4の「結合」を「接続」に変更することが,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められることについては,上記bと同じである 。。)また 上記訂正の内容は 本件明細書の段落 0088 ないし 0 ,,【】【094】などに記載されているから(甲2 ,同訂正は,明細書に記 )載した事項の範囲内において行われたものであると認められる。 e 構成要件1C’及び1E’について構成要件1C’は,構成要件1Cの「少なくとも液体収納容器の個体情報を保持可能な情報保持部」を 「少なくとも液体インク収納容 ,器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」に変更するものであり,構成要件1E’は,構成要件1Eの「前記接点から入力される個体情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する個体情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」を 「前記接点から入力さ ,れる前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」に変更するものである。 上記各変更は,訂正前の「液体収納容器の個体情報」ないし「個体情報 を 液体インク収納容器のインク色を示す色情報 ないし 色 」,「」「情報」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 また,上記訂正の内容は,本件明細書の段落【0083】などに記載されているから(甲2,同訂正は,明細書に記載した事項の範囲 )内において行われたものであると認められる。 f 構成要件1D’について構成要件1D’は,構成要件1Dの「発光部」を 「前記受光手段,に投光するための光を発光する前記発光部」に変更するものである。 上記変更は,訂正前の「発光部」を 「記録装置の)受光手段に ,(投光するための光を発光する発光部」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 また,上記訂正の内容は,本件明細書の段落【0036 【00】,38】ないし【0047 【0073 【0079】及び図3(a) 】,】,などに記載されているから(甲2 ,同訂正は,明細書に記載した事 )項の範囲内において行われたものであると認められる。 (イ) これに対し,被告は,次のとおり,本件訂正は特許法134条の2所定の訂正要件を充たすものではなく,違法であると主張する。 a 構成要件1A2’及び1A4’について被告は 「結合」とは,コンセントやプラグ,コネクタなどのよう ,に,接点同士が物理的に一体となる態様を表すのに対し 「接続」と,は 「つなぐこと。また,つながること 」を意味し 「一つになる」 ,。,ことまで意味するものではないから 構成要件1A2及び1A4の 結 ,「合」を,それぞれ同1A2’及び1A4’の「接続」に変更することは,特許請求の範囲を拡張するものであり,かかる訂正は,特許法134条の2第5項で準用する126条4項に違反し,許されないと主張する。 しかしながら,上記訂正が明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,明細書に記載した事項の範囲内において行われたものであると認められることについては,前記(ア)b,dのとおりである。 また,本件明細書における,インクタンクに設けられた接点と,プリンタのホルダに設けられた接点との関係について記載した部分(段落【】,【】【】,【】,【】, 0033 0057 〜 0061 0072 0080図20〜24など)をみれば,本件訂正前の請求項1における「液体インク収納容器に備えられる接点」と「装置側接点」との「電気的」な「結合」ないし「接続」とは,接点同士の接触により電気信号のやり取りが可能な状態となることを意味するものであり,被告の主張するような,接点同士が物理的に一体となる態様を意味するものではないことは,明らかである。 したがって,被告の主張は理由がない。 b 構成要件1A3’及び1A5’について被告は 本件訂正により 構成要件1A3 及び1A5 に前記(ア) ,,’’cの構成が付加されたことにつき,? これは,記録装置に関する訂正であるから,本件発明1及び本件訂正発明1の対象であるインクタンクにかかる発明の構成を減縮するものではない,? 訂正により新たな構成を付加する場合,同構成が周知の技術手段でない限り 「実,質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの (特許法134条」の2第5項,126条4項)に該当するにもかかわらず,原告は,上記構成が本件特許出願当時の周知技術であることを主張立証しない,? 上記訂正は,発光部と受光手段のみで位置検出をするという,本件訂正前の請求項にない新たな効果を発するものであるから,実質的に特許請求の範囲を変更するものであり,特許法134条の2第5項で準用する126条4項に違反するものであって許されない,と主張する。 しかしながら,上記?の点については,上記本件発明1及び本件訂正発明1では,プリンタ側の構成に係る構成要件も,発明の対象であるインクタンクの構成を特定するために必要なものであることについては,前記( )イ(カ)cのとおりであり,構成要件1A3’及び1A 15’に係る訂正も,インクタンクにかかる発明の構成を減縮するものであると認められるから,被告の主張は理由がない。 また,前記( )のとおり,本件訂正前の請求項1に係る発明の技術 1,「, 的課題は インクタンクの形状をインクタンクごとに異ならせたりインクタンクとプリンタとをつなぐ信号線を個別の配線としたりすることによる,製造効率の悪化やコスト増を招かない方法により,インクタンクの誤装着を防止すること」であり 「本件光照合処理により ,インクタンクが正しい位置に搭載されているか否かを検出すること」により,上記課題を解決しようとするものであって,そのための構成が同請求項に規定した液体収納容器の構成であると認められるのであり,構成要件1A3’及び1A5’により付加された構成は,本件訂正前の請求項1における「発光部 「受光手段」及び「発光部の発 」,光を制御する制御部」により実現される内容をより具体的に規定したものであって,新たな技術的事項を導入するものではないと認められる。そして,本件明細書に接した第三者であれば,同明細書に記載された上記の内容から,上記のような訂正が可能であることを予測することが可能であって,上記訂正が第三者の利益を損なうものともいえない。 したがって,構成要件1A3’及び1A5’に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張,変更するものであるとはいえないから,上記?及び?に係る被告の主張は,理由がない。 c 構成要件1D’について被告は,本件明細書には 「投光するための光を発光する」という ,記載はなく,発光部の発光の形態として本件明細書に記載されているのは,受光手段に当たる第1受光部と対向する位置にあるインクタンクの発光部が第1受光部に対して直接光を照射する構成のみである(図29,30参照)にもかかわらず,構成要件1Dの「発光部」を「投光するための光を発光する発光部」に訂正することは,本件訂正前の本件明細書に記載のない新規事項の追加に当たるものであり,特許法134条の2第5項で準用する126条3項に違反すると主張する。 しかしながら,本件明細書に「投光するための光を発光する発光 ,部」に相当する構成が開示されていることについては,段落【0036 【0038】ないし【0047 【0073 【0079】及 】,】 ,】,び図3(a)などの記載から明らかであり,かかる訂正が特許請求の範囲を実質上変更するものとは到底認められない。 したがって,被告の主張は理由がない。 イ 争点3-5-2(本件訂正発明は,進歩性を欠くか)について【無効理由1’について】被告は,本件訂正発明1は,乙55公報記載の発明及び乙18公報記載の発明に基づいて,又は,乙55公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 (ア) 乙55公報の記載乙55公報には,以下の記載が存在する(乙55 。)a 請求の範囲(第1項)印刷装置に装着されると共に識別情報を格納する記憶装置を有する印刷記録材容器を識別する識別装置であって,前記記憶装置に格納されている識別情報を利用して,前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定する判定手段とを備える印刷記録材容器の識別装置 (45頁2行〜6行) 。 (第2項)請求の範囲第1項に記載の印刷記録材容器の識別装置はさらに,前記判定手段によって,前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器でないと判定された場合には,誤った印刷記録材容器が装着された旨を報知する報知手段を備える印刷記録材容器の識別装置 (45頁8行〜11行) 。 (第4項)請求の範囲第1項ないし請求の範囲第3項のいずれかに記載の印刷記録材容器の識別装置において,前記印刷装置には複数の印刷記録材容器が既定の装着位置にそれぞれ装着されており,前記判定手段は,前記各装着位置に装着されるべき印刷記録材容器と前記装着位置とを関連付ける装着位置情報を有し,前記装着された印刷記録材容器に装着されている記憶装置の識別情報と前記装着位置情報とに基づいて,前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定することを特徴とする印刷記録材容器の識別装置 (45頁19行〜46頁1行) 。 (第16項)収容されている印刷記録材の種類に対応した識別情報を格納する記憶装置を有する複数の印刷記録材容器が装着される印刷装置における印刷記録材容器の交換制御装置であって,印刷記録材の交換要求を検出する交換要求検出手段と,前記交換の要求された印刷記録材を内包する印刷記録材容器を交換位置まで移動させる印刷記録材容器移動手段と,前記交換位置に移動された前記印刷記録材容器の取り外しを検出すると共に,取り外しに続く印刷記録材容器の装着を検出する脱着検出手段と,前記識別情報を利用して,前記装着された印刷記録材容器が交換の要求された印刷記録材を内包する正しい印刷記録材容器であるか否かを判定する判定手段とを備える印刷記録材容器の交換制御装置 (49頁26行〜50頁10行) 。 b技術分野本発明は,印刷装置における印刷記録材容器の識別技術に関し,さらに詳細には印刷記録材容器交換に際して正しい印刷記録材容器が装着されたか否かを識別する技術に関する (1頁5行〜7行)。 c 発明の背景複数色のインクカートリッジ(印刷記録材容器)を備えるカラープリンタにおいて,インクカートリッジの交換時におけるインクカートリッジの誤装着,すなわち,交換されるべきインク色とは異なるインクカートリッジの装着,を防止するための技術が提案されている。例えば,インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し,誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術が知られている。また,同一の外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には,一個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け,交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて,交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られている。しかしながら,インク色毎に異なる外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には,インクカートリッジを再利用する際にインク色毎にしかインクカートリッジを,。 再利用することができず リサイクル効率が悪いという問題があったまた,インクカートリッジの誤装着は防止できても交換を要しないインクカートリッジを誤まって取り外してしまうという問題は防止することができなかった。さらに,インク色毎にインクカートリッジ用の異なる金型を作成しなければならず,コスト高になるという問題があ。, った インクカートリッジを所定の交換位置まで移動させる技術では交換されるべきでないインクカートリッジの誤った取り外しは防止できても,装着されたインクカートリッジが正しいインクカートリッジであるか否かまでは検出することはできず,誤装着は防止できないという問題があった (1頁10行〜2頁4行) 。 d 発明の開示本発明は,上記問題を解決するためになされたものであり,外形的な識別形状を用いることなく印刷記録材容器交換時における印刷記録材容器の誤装着を防止することを目的とする。また,交換されるべきでない印刷記録材容器の誤った取り外しを防止することを目的とする (2頁7行〜10行) 。 本発明の第3の態様は,印刷記録材の種類に対応する識別情報を格納する記憶装置を備えると共に前記印刷記録材の種類に応じて印刷装置上に既定の位置に装着される印刷記録材容器の識別方法を提供する。本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法は,前記印刷記録材容器の取り外しを検出し,前記取り外された印刷記録材容器が装着されていた装着位置を記憶し,前記印刷記録材容器の装着を検出し,前記記憶装置に格納されている識別情報を利用して,前記装着された印刷記録材容器の印刷記録材の種類を識別し,前記装着された印刷記録材容器の装着位置と,前記装着された印刷記録材容器の印刷記録材の種類とに基づいて,正しい印刷記録材容器が装着されたか否かを判定しても良い。本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法によれば,取り外された印刷記録材容器の装着位置と,記憶装置に格納されている識別情報を利用して,装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定するので,外形的な識別形状を用いることなく印刷記録材容器交換時における印刷記録材容器の誤装着を検出することができる。本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法において,誤った印刷記録材容器が装着されたものと判定した場合には,誤った印刷記録材容器の装着を報知しても良い (6頁11行〜7頁1行) 。 e 発明を実施するための最良の形態[第1実施例]図3はカラープリンタ10の制御回路30の内部構成を示す説明図である (15頁4行〜5行) 。 制御回路30は,パーソナルコンピュータPCから受信した制御信号に従ってプリンタ10の各部の動作を制御する (16頁19行〜。 20行)制御回路30の内部構成について,図3を参照して説明する。制御回路30には,CPU31,PROM32,RAM33,インクカートリッジCA1〜CA4に備えられた記憶装置,紙送りモータ105やキャリッジモータ103等とデータのやり取りを行う周辺機器入出力部(PIO)34,タイマ35,駆動バッファ36等が設けられている。駆動バッファ36は,インク吐出用ヘッドPN1〜PN4にドットのオン・オフ信号を供給するバッファとして使用される (17。 頁2行〜7行)制御回路30は,インクカートリッジCAの交換時には,取り外されたインクカートリッジと新たに装着されたインクカートリッジCAとが同一のインク種を内包するインクカートリッジであるか否かを識別する (中略)制御回路30によって実行される詳細なインクカー 。 トリッジの識別処理の流れについては,以下に説明する (17頁1。 2行〜18行)各記憶装置20,21,22,23は,図5に示すようにインクジェットプリンタ用の4色のインクカートリッジCA1,CA2,CA,。 () 3 CA4それぞれ備えられているものとする 18頁1行〜3行各記憶装置20,21,22,23のデータ信号端子DT,クロック信号端子CT,リセット信号端子RTは,データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている(図)。, 4および図7参照 パーソナルコンピュータPCとデータバスDBクロックバスCB,リセットバスRBとは,データ信号線DL,クロック信号線CL,リセット信号線RLを介して接続されている (1。 8頁8行〜13行)記憶装置20は,メモリアレイ201,アドレスカウンタ202,IDコンパレータ203,オペレーションコードデコーダ204,I/Oコントローラ205および工場設定ユニット206を備えている (20頁17行〜19行) 。 IDコンパレータ203は,クロック信号端子CT,データ信号端子DT,リセット信号端子RTと接続されており,データ信号端子DTを介して入力されたデータ列に含まれる識別データとメモリアレイ201に格納されている識別データとが一致するか否かを判定する。 (中略)IDコンパレータ203は,両識別データが一致する場合には,アクセス許可信号ENをオペレーションコードデコーダ204に送出する (21頁13行〜24行) 。 オペレーションコードデコーダ204は,アクセス許可信号ENが入力されると,取得した書き込み/読み出しコマンドを解析してI/Oコントローラ205に対して書き込み処理要求または読み出し処理要求を送出する (22頁3行〜6行) 。 I/Oコントローラ205は,データ信号端子DT,メモリアレイ201と接続されており,オペレーションコードデコーダ204からの要求に従ってメモリアレイ201に対するデータ転送方向ならびにデータ信号端子DTに対する(データ信号端子DTと接続されている信号線の)データ転送方向を切り換え制御する (22頁9行〜13。 行)パーソナルコンピュータPCは,既述のようにカートリッジアウト信号COOに基づいてインクカートリッジCA1が装着されるまで待機し(ステップS220:No ,インクカートリッジCA1が装着 )されると(ステップS220:Yes ,インクカートリッジCA1 )の記憶装置20が保有する識別データに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS230 。パーソナルコンピュー )タPCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS240 。すなわち,装着されるべきインクカートリッ )ジCA1が装着されている場合には,送信された識別データに対応する識別データを保有する記憶装置20が応答し,誤ったインクカートリッジCAが装着されている場合には,いずれの記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答することができない。パーソナルコンピュータPCは,応答がない場合には(ステップS240:No ,誤ったインクカートリッジCAが装着されている旨を報知し )(ステップS250 ,ステップS220に戻り,再度,正しいイン )クカートリッジCAの装着を検出する。誤ったインクカートリッジCAの装着の報知は,例えば,操作パネル13上配置されているランプLMを点滅させても良い (26頁21行〜27頁10行) 。 [第3実施例]第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は,交換用開口部14を備えず,ユーザが任意のインクカートリッジCAを脱着可能なプリンタに適している。なお,第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は,交換用開口部14および交換対象となるインクカートリッジCAの移動を必要としないものの,第1実施例に係るインクカートリッジの識別装置に対して適用可能であるから,以下の説明では第1実施例に係るインクカートリッジの識別装置において用いた符号と同一の符合を用いるものとする(31頁5行〜11行) 。 第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は,インクカートリッジCA1〜CA4の初期装着終了後,インクカートリッジCAが空になったとき等に実行される (31頁14行〜16行) 。 パーソナルコンピュータPCは,インク交換要求が発生したと判定した場合には(ステップS400:Yes ,インクカートリッジ特 )定処理を実行する(ステップS410 。本実施例では,ユーザによ )って任意のインクカートリッジCAが脱着され得るので,取り外されたインクカートリッジCAが,交換を要求されたインクカートリッジCAと同一であるか否かを特定するためのインクカートリッジ特定処理が必要となる (31頁25行〜32頁4行) 。 パーソナルコンピュータPCは,先ず,交換を要求されたインクカートリッジCAを特定する(ステップS4100 (中略)以下の)。 説明では,説明の便宜上,インクカートリッジCA1の交換要求が発生したものとする。 パーソナルコンピュータPCは,カートリッジアウト信号COOの入力値COが1となるまで,すなわち,インクカートリッジCAが取() 。, り外されるまで待機する ステップS4110:No かかる場合パーソナルコンピュータPCは,どのインクカートリッジCAが取り外されたかまでは特定することはできず,いずれかのインクカートリッジCAの取り外しを待機することとなる。パーソナルコンピュータPCは,カートリッジアウト信号COOの入力値CO=1を検出すると(ステップS4110:Yes ,先に特定したインクカートリッ )ジCA1に対応する識別データをデータバスDB上に送出する(ステップS4120 。パーソナルコンピュータPCは,データバスDB )上に送出した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS4130 。既述のように各インクカートリッジCA1〜CA )4の記憶装置20〜23は,自己の保有する識別データと一致する識別データを受信しない限り応答しないので,識別データをデータバスDB上に送出することによって交換を要求されたインクカートリッジCA1が正しく取り外されたか否かを検出することができる。パーソナルコンピュータPCは,インクカートリッジCA1に備えられている記憶装置20からの応答を検出しない場合には(ステップS4130:No ,交換を要求されたインクカートリッジCA1が正しく取 )り外されたものと判定し,図16の処理ルーチンにリターンする。すなわち,以上の処理により,交換要求されたインクカートリッジCA1と取り外されたインクカートリッジCAとが同種のインクカートリッジCAであることが識別される。そして,次に,図15に示す処理ルーチンにて,装着されたインクカートリッジCAがインクカートリッジCA1と同種のインクカートリッジCAであるか否かを判定する。 一方,パーソナルコンピュータPCは,インクカートリッジCA1に備えられている記憶装置20からの応答を検出した場合には(ステップS4130:Yes,全ての記憶装置20〜23が保有する識 )別データに対応する識別データを順次,データバスDB上に送出する(ステップS4140 。かかる場合には,交換を要求されたインク )カートリッジCA1以外のインクカートリッジCAが取り外されており,いずれのインクカートリッジCAが取り外されたかを特定する必要があるからである。パーソナルコンピュータPCは,データバスDB上に順次,送出した識別データのうち,応答のなかった識別データに対応する記憶装置を備えるインクカートリッジCAを特定すると共に,実際に取り外されたインクカートリッジCAの情報として図示しないRAM上に一時的に格納する(ステップS4150 。パーソナ)ルコンピュータPCは,誤ったインクカートリッジCAが取り外された旨を報知し(ステップS4160 ,図16に示す処理ルーチンに )リターンする。以上の処理によって,交換要求のあったインクカートリッジCA1に代わって実際に取り外されたインクカートリッジCAを特定(識別)することができる。このインクカートリッジ特定処理を実行することによって,取り外されたインクカートリッジCAと装着されたインクカートリッジCAとが同一種のインクカートリッジC。() Aであるか否かを判定することができる32頁6行〜34頁3行パーソナルコンピュータPCは,新たなインクカートリッジCAの装着を検出するまで すなわち CO=0を検出するまで待機する ス ,, (テップS420:No 。パーソナルコンピュータPCは,CO=0 )を検出すると(ステップS420:Yes ,インクカートリッジ特 )定処理において特定したインクカートリッジCAに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS430 。パーソナル)コンピュータPCは,特定したインクカートリッジCA(あるいは,インクカートリッジCA1)に備えられている記憶装置(あるいは,記憶装置20)からの応答を検出した場合には(ステップS440:Yes ,新たなインクカートリッジCAが正しく装着されたものと )判断し,本処理ルーチンを終了する。一方,パーソナルコンピュータPCは,特定したインクカートリッジCAに備えられている記憶装置からの応答を検出しなかった場合には(ステップS440:No ,)先に取り外されたインクカートリッジCAと同種のインクカートリッジCAが装着されなかったものと判断し,誤ったインクカートリッジCAが装着された旨を報知し(ステップS450 ,正しいインクカ)ートリッジCAの装着を再度,試みる(ステップS410〜ステップS440 。なお,誤ったインクカートリッジCAの報知は,第1実 )施例において説明した形態に準じて実行される (34頁8行〜25。 行)[その他の実施例]図21に示す実施例では,搭載されているインクカートリッジCAに対応する数だけキャリッジ101上にLED18が備えられている。インクカートリッジCAの交換時には,制御回路30は,キャリッジ101をインク交換位置19まで移動させた後,交換の対象となるインクカートリッジCAに対応するLED18を点灯または点滅させて,交換対象となるインクカートリッジCAをユーザに指し示す。 (41頁17行〜22行)上記実施例では,パーソナルコンピュータPCによってインクカートリッジCAの識別処理が実行されているが,これら一連の処理をカラープリンタ20の制御回路30によって実行してもよい。かかる場合には,インクカートリッジCAの識別処理をカラープリンタ20単独で実行することができる (43頁1行〜4行) 。 (イ) 乙55公報記載の発明以上の記載から,乙55公報には 「複数のインクカートリッジ(印 ,刷用記録材容器)を搭載して移動するキャリッジと,該インクカートリッジに備えられるデータ信号端子と電気的に接続可能なプリンタ側端子と,各インクカートリッジに対応して設けられ,交換対象となるインクカートリッジを点灯して示すキャリッジ上のLEDと,搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続され,インクカートリッジを識別するための識別データを送出するためのデータバスとを有し,交換対象となるインクカートリッジに対応するキャリッジ上のLEDを点灯させ,その点灯結果に基づいて交換対象となるインクカートリッジを報知するカラープリンタのキャリッジに対して着脱可能なインクカートリッジであって,前記データバスに接続可能な前記データ信号端子と,インクカートリッジの識別データを格納するメモリアレイと,前記データ信号端子から入力される識別データと,前記メモリアレイに格納されている識別データとに応じて応答するIDコンパレータと,を有するインクカートリッジ の発明が開示されているものと認められる 以下 乙 。」(「55発明」という 。。)(ウ) 本件訂正発明1と乙55発明との対比a 乙55発明の「インクカートリッジ」及び「インクカートリッジに備えられるデータ信号端子」は,それぞれ,本件訂正発明1の「液体インク収納容器 (構成要件1A1’等)及び「液体インク収納容器 」に備えられる接点 (構成要件1A2 )に相当するものと認められ 」’る。また,乙55公報には,本件訂正発明1の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点 (構成要件1A」2 )を備える点について明示の記載はないものの 「インクカート ’,リッジに備えられるデータ信号端子」がキャリッジに設けられたデータバスに接続されていることから,キャリッジ側に対応する端子(接点)が設けられていることは当業者にとって自明であるから,乙55発明は 「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能 ,」「 」 な装置側接点 及び 前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点(構成要件1B )を備えていると認められる。 ’乙55発明の「データバス」は,各インクカートリッジのデータ信号端子と接続し,バス接続,すなわち,共通な電気的接続となっており,インクカートリッジ(の色)を識別するための識別データを送信するための配線を有した電気回路であると認められる。したがって,乙55発明は,構成要件1A4’の「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」を備えていると認められる。 乙55発明の「識別データ」は,インク色を示すものであるから,乙55発明の「インクカートリッジの識別データを格納するメモリアレイ」は,構成要件1C’の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」に相当するものと認められる。 したがって,本件訂正発明1と乙55発明は,構成要件1A1 ,’1A2 ,1A4 ,1A6 ,1B ,1C’及び1F’に相当する ’’’’構成を備える点で一致し,以下の点で相違すると認められる。 (a) 相違点1記録装置に関して,本件訂正発明1は,構成要件1A3 (前記’キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段)及び同1A5 (前記キャリッジ’の位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置)に相当する構成,すなわち,本件光照合処理に用いられる受光部等の液体インク収納容器の位置検出手段を有するのに対し,乙55発明はこれを有しない点。 (b) 相違点2液体インク収納容器に関して,本件訂正発明1の液体インク収納容器に「受光手段に投光するための光を発光する発光部」が備えられている(構成要件1D )のに対し,乙55発明のインクカート ’,, リッジには発光部が備えられておらず プリンタ側のキャリッジに交換対象となるインクカートリッジを報知するための発光部が備えられている点。また,本件訂正発明1では,インクタンク内に,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部を備える(構成要件1E )のに対し,乙55発明では,インクカ ’ートリッジ内の記憶装置(制御部)は,プリンタとの接点から入力される色情報(識別情報)に係る信号と,メモリアレイの保持する前記色情報とが一致した場合に,応答信号をプリンタ側の制御回路に対して送り返す動作を制御するものの,上記記憶装置(制御部)においてプリンタ側のLED(発光部)を発光させるものではない点。 b これに対し,被告は,液体収納容器と記録装置とが電気的に接続されている以上,制御の対象となっている発光部を個々の液体収納容器に設けるか,それとも,個々の液体収納容器に対応し,しかも極めて隣接した位置にある記録装置側のキャリッジ箇所に設けるかは,単なる設計上の違いにすぎず,実質的な相違点とはならないから,乙55公報には,構成要件1A5’のうち「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」に対応する構成並びに構成要件1D’及び1E’に対応する構成も開示されていると主張する。 しかしながら,乙55公報の記載は前記(ア)のとおりであり,同公報中には,インクカートリッジ上に発光部を設ける構成に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しない また 構成要件1D の 発 。, ’「光部」とは,単に光を発すれば足りるものではなく 「前記受光手段,に投光するための光を発光する」ものである必要があり,本件訂正発明1では,インクタンクの本来装着されるべき位置が,プリンタに設けた受光手段に対向する位置に来た時に,当該インクタンクに設けた発光部を発光させ,その光を上記受光手段が受光することによって,本件光照合処理を実現するものであるから,同発明において,発光の目的は重要な技術的意義を有するものと認められる。これに対し,乙55発明におけるプリンタ上の発光部は,前記のとおり,交換対象となるインクカートリッジを(ユーザーに)報知するためのものであるから,本件訂正発明1における発光部とは,発光の目的を異にする。 これらの点からみると,乙55発明における発光部と本件訂正発明1における発光部とは実質的に相違するというべきであり,かかる相違点が実質的な相違点ではないとする被告の主張は理由がない。 (エ) 本件訂正発明1の容易想到性の有無(その1)被告は,上記相違点1及び2に相当する構成は,いずれも乙18公報に開示されており,乙18公報記載の発明と乙55公報記載の発明とは技術分野及び発明の課題について共通性を有することから,乙18公報記載の発明を乙55公報記載の発明に適用することは当業者にとって容易であったものであり,両発明を組み合わせることによって,当業者は本件訂正発明1に容易に想到することができたと主張する。 a 乙18公報の記載乙18公報には,以下の記載が存在する(乙18 。)(a) 特許請求の範囲(請求項1)外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換するエネルギー変換手段と,該エネルギー変換手段で変換されたエネルギーにより発光する発光手段とを有する立体形半導体素子。 (請求項4)前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される,請求項1から3のいずれか1項に記載の立体形半導体素子。 (請求項5)前記エネルギー変換手段で変換されたエネルギーは電力である,請求項1から4のいずれか1項に記載の立体形半導体素子。 (請求項6)請求項1から5のいずれか1項に記載の立体形半導体素子が少なくとも1つ配されたインクタンク。 (請求項7)請求項6に記載のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置であって,前記インクタンク内に配された前記立体形半導体素子の発光手段で発光され,前記インクタンク内に収容されたインクを透過した光を受光する受光手段を備えているインクジェット記録装置。 (請求項8)複数の前記インクタンクの各々が,それぞれの前記インクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されており,前記光を受光した前記受光手段によって前記インクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段を備えている,請求項7に記載のインクジェット記録装置。 (b) 発明の詳細な説明(発明の属する技術分野)本発明は,外部からエネルギーが供給されると発光する立体形半導体素子に関する (2頁1欄45行〜46行 段落【0001 ) 。】,, また本発明は 上記の立体形半導体素子が配されたインクタンクおよび該インクタンクが着脱可能に搭載される,ファクシミリ・プリンター・複写機等に用いられるインクジェット記録装置に関する (同欄47行〜50行 段落【0002 ) 。】(従来の技術)従来,記録ヘッドに設けた複数の噴射ノズルからインクを噴射させながら,記録ヘッドを搭載したキャリッジを印字方向に移動することで,画像をドットパターンで用紙に印字するようにしたインクジェット記録装置においては,記録用のインクを収容したインクタンクを設け,そのインクタンクのインクをインク供給路を介して記録ヘッドに供給するようにしている。そこで,そのインクタンクのインクの残量を検出するようにしたインク残量検出装置が実用に供されることについても,種々提案されている (2頁2欄1行〜1。 1行 段落【0003 )】(発明が解決しようとする課題)上述した従来公報に代表するような,インクタンク内のインク残量を検出する構成が知られているが,このような構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要がある。また,電極間の導通状態によりインク残量を検知するため,インク成分に金属イオンを用いることができない等,使用するインクに制約が生じてしまう。 また,上記の構成ではインク残量しか検知することができず,インクタンク内に収容されているインクの種類等のタンク内情報を知ることができない (2頁2欄39行〜49行 段落【0006 ) 。】さらに,複数のインクを用いて印字するインクジェット記録装置では,インクを無駄なく使うために,各色ごとの複数のインクタンクを所定の位置に装着する場合がある。そのようなインクジェット記録装置では,ユーザーがインクタンクを不適切な位置に装着するのを防止するために,各色のインクタンクを異なる形状にし,不適切な位置では装着できないようにすることが一般的である。しかしながら,インクの色の数だけインクタンクの形状を異ならせることで,インクタンクのコストアップに繋がる場合があった。したがって,インクタンクの形状は同じでありつつ,誤装着を防止することが可能なインクタンクが望まれている (2頁2欄50行〜3頁3 。 欄11行 段落【0007 )】本発明の目的は,インクタンク内に収容されているインクの種類等の検出に用いられる立体形半導体素子を提供することにある 3。(頁3欄39行〜41行 段落【0010 )】,, , また 本発明の更なる目的は 上記素子が配されたインクタンクおよび該インクタンクが搭載されるインクジェット記録装置を提供することにある (3頁3欄42行〜44行 段落【0011 ) 。】(課題を解決するための手段)上記目的を達成するため,本発明の立体形半導体素子は,外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換するエネルギー変換手段と,該エネルギー変換手段で変換されたエネルギーにより発光する発光手段とを有する (3頁3欄46行〜50行 段落【0 。 012 )】,, 一般に インクジェット記録装置等において用いられるインクはインク色ごとに光の吸収スペクトルが異なるので,インクを透過した光のある波長における強度を検出することによって,その光が透過したインクの色種類を判別することができる。したがって,立体形半導体素子で発光した光をインク中に透過させ,その透過光のある波長における強度を検出することにより,そのインクの種類を判別することが可能になる (3頁4欄12行〜19行 段落【00 。 14 )】さらに,前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される構成とすることにより,素子の起動のためのエネルギー源をインクタンクに持たせたり,エネルギー供給用の配線を素子に接続する必要がなく,外部との直接的な配線を施すことが困難な箇所に使用することができる (3頁4欄37行〜42行 段 。 落【0017 )】また,本発明のインクジェット記録装置は,上記本発明のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置であって,前記インクタンク内に配された前記立体形半導体素子の発光手段で発光され,前記インクタンク内に収容されたインクを透過した光を受光する受光手段を備えている (4頁5欄2行〜7行 段落【0020 ) 。】さらに,複数の前記インクタンクの各々が,それぞれの前記インクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されており,前記光を受光した前記受光手段によって前記インクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段を備えている構成としてもよい。これによれば,ユーザはインクタンクを適切な位置に装着し直すことができる (4頁5欄8行〜15行 段落【0021 ) 。】(発明の実施の形態)外部エネルギーの供給方法としては,インクジェット記録装置に用いられる場合,素子に外部エネルギーとして起電力を供給する手,, , , 段は 回復ポジション リターンポジション もしくはキャリッジ記録ヘッド等に設ければ良い (4頁6欄9行〜13行 段落【0 。 028 )】本発明の立体形半導体素子を備えたインクタンクを搭載するインクジェット記録装置の構成例を図5に概略図で示す。図5に示されるインクジェット記録装置600に搭載されたヘッドカートリッジ601は,印字記録のためにインクを吐出する液体吐出ヘッドと,その液体吐出ヘッドに供給される液体を保持する図2〜図4に示したようなインクタンクとを有するものである。また,該インクタンク内に配された立体形半導体素子へ外部エネルギーである起電力を供給する手段622や前記素子から放射された光を受光する手段(不図示)が記録装置600内に設置されている (4頁6欄44。 行〜5頁7欄4行 段落【0032 )】ヘッドカートリッジ601は,図5に示すように,駆動モータ602の正逆回転に連動して駆動力伝達ギヤ603および604を介して回転するリードスクリュー605の螺旋溝606に対して係合するキャリッジ607上に搭載されている。駆動モータ602の動力によってヘッドカートリッジ601がキャリッジ607ともとにガイド608に沿って矢印aおよびbの方向に往復移動される 5。(頁7欄5行〜12行 段落【0033 。】)図7は,本発明の立体形半導体素子を用いたインクタンクの概略構成図である。この図で示す立体形半導体素子526は,インクタンク521内の生インク522の液面付近に浮遊しており,インクタンク521外の外部共振回路(不図示)によって電磁誘導による起電力を誘起させられ,立体形半導体素子526の表面に付近に配設されたフォトダイオードが駆動されることで,光を発する。その光は,インク522を透過し,インクタンク521の外部の光センサ550で受光される (6頁10欄36行〜45行 段落【00 。 57 )】【図7】図8に,代表的なインク(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)の吸光波長を示す。図8からわかるように,イエロー,マゼンダ,シアン,ブラックの各色のインクは,300〜700nmの波長帯において吸光率のピークが分散している。各色のインクの吸光,,, 率のピークは イエローが約390nm マゼンダが約500nm,。, ブラックが約590nm シアンが約620nmである そのため300〜700nmの範囲の波長を含む光を立体形半導体素子から発光させ,その光をインク中に透過させてインクタンク外にある光センサ550(図7参照)で受光し,どの波長が最も吸収されたかを検知することで,光が透過したインクの色が上記のうちのいずれであるかを判別することができる(6頁10欄46行〜7頁11 。 欄8行 段落【0058 )】また,複数のインクタンクの各々が,それぞれのインクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されているインクジェット記録装置においては,インクタンク内のインクを透過した光を受光した光センサ550によってインクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段が備えられていてもよい。この場合の警告手段としては,ランプ等の発光手段やブザー等の鳴音手段などを用いることができる。ユーザーは,警告手段による警告によってインクタンクを誤った位置に装着したことを知り,そのインクタンクを本来の位置に装着し直すことができる (7頁11欄22行〜33行 。 段落【0061 )】b 乙18公報記載の発明(a) 上記各記載によれば,乙18公報には 「複数のインクタンク ,を搭載して移動するキャリッジと,前記インクタンクの発光手段からの光を受光する光センサを備えたインクジェット記録装置に対して着脱可能なインクタンクにおいて,前記光センサに投光するための光を発光する前記発光手段を有することを特徴とするインクタンク 」の発明(以下「乙18発明」という )が開示されているも 。。 のと認められる。 ,, , , (b) これに対し 被告は 乙18公報には 上記(a)の構成に加え? インクジェット記録装置が,インクタンクに備えられる接続手段(接点)と電気的に接続して,インクタンクに起電力を供給する接続手段(接点)を備える構成,? インクジェット記録装置にインクタンク内の立体形半導体素子の発光手段からの光を受光する受光手段を一つ備える構成,? 上記受光手段で受光することによりインクタンクの装着位置を検出する構成,? キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置される構,, 成 ? キャリッジに搭載され移動する複数のインクタンクのうちキャリッジの位置に応じて,一つ備えられた受光手段と特定の位置関係に来たインクタンクの発光部を光らせる構成,? インクタンク内の立体形半導体素子が,インクタンク内のインクのpH,タンク内の圧力変化,インク残量,インク有無等のタンク内情報を保持する情報保持部を備える構成(すなわち,構成要件1A2 ,1A’3 ,1A5 ,1B’及び1C’の構成)を備える発明が開示さ ’’れていると主張する。 しかしながら,乙18公報の記載は前記aのとおりであり,同公報には,外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給する構成が開示されているだけであり,上記立体形半導体素子とプリンタをつなぐための電気的に接続可能な接点(構成要件1A2 ,1B )に係る記載ないし同構成を示唆する ’’記載は存在しないものと認められる。乙18公報記載の発明は,従来の構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要があったため,インク成分に金属イオンを用いることができないなど,使用するインクに制約が生じてしまうという課題があることを解決するために,立体形半導体素子への外部エネルギーの供給を非接触で(【 】,【】), 行う構成としたものであるから 段落 0006 0017立体形半導体素子とプリンタとを電気的につなぐための接点を設けることは,むしろ,上記発明の技術思想に反するものであるということができる。 また,乙18公報記載の発明は,インク色ごとに光の吸収スペクトルが異なることに着目し,立体形半導体素子から一定の範囲の波長を含む光を発光させ,その光をインク中に透過させて,インクタンク外にある受光手段で受光させ,どの波長が最も吸収されたかを検知することで,当該インクの種類を判別するものであって(段落【0014 【0020 【0057 【0058 ,上記立体 】,】,】,】)形半導体素子に当該インクタンクのインク色を示す色情報が保持される(構成要件1C )ものではないと認められるから,本件訂正 ’発明1におけるキャリッジの位置に応じて特定されたインク色の発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき当該インクタンクが正しい搭載位置に装着されているかどうかを検出する(構成要件1A3,1A5 )という,本件光照合処理の方法が乙18公報に開示 ’’されているともいえない。 したがって,乙18公報に本件訂正発明1の構成要件1A2 ,’1A3 ,1A5 ,1B’及び1C’に相当する構成を備える発 ’’明が開示されているとは認められず,被告の主張は理由がない。 c 乙55発明と乙18発明の組合せによる本件訂正発明1の容易想到性の有無乙18発明の内容は,前記bのとおりであり,同発明は,前記相違点1に相当する構成(構成要件1A3’及び1A5’の構成)を有するものではなく,相違点2のうち 「インクタンク内に,前記接点か ,ら入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部を備える」構成(構成要件1E’の構成)も有しないと認められる。 また,乙18発明における発光部及び受光部と,本件訂正発明1における発光部及び受光部とは,これらを用いることにより当該インクタンクの色情報(本件訂正発明1においては,受光部に対向するインクタンクの色情報)を判別するための原理も,その果たす役割も,全く異なるものであるというべきことは,前記bのとおりであり,乙18公報の前記記載に照らしても,同公報中に,本件訂正発明1における本件光照合処理のような構成や技術思想を示唆する記載が存在しないことも,明らかである。 したがって,乙55発明に乙18発明を組み合わせても,相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であるということはできず,被告の主張は理由がない。 (オ) 本件訂正発明1の容易想到性の有無(その2)被告は,前記相違点1及び2は,いずれも本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術は乙18公報,乙36公報,乙2公報,乙33公報及び乙42公報にも記載されているから,これらの技術を乙55発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。 しかしながら,次のとおり,相違点1及び2に相当する構成は,乙18公報,乙36公報,乙2公報,乙33公報及び乙42公報に開示されているとは認められず,このほかに,上記相違点に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,被告の主張は理由がない。 a 乙18公報の記載乙18公報に記載された発明の内容が乙18発明のとおりであり,同公報に相違点1及び2に相当する構成が開示されていると認められないことについては,前記(エ)bのとおりである。 b 乙36公報の記載証拠(乙36)によれば,乙36公報には,インクジェットプリンタにおいて,プリンタ側のエミッタ(発光素子)からインクカートリッジ上の指標位置(反射部)に光を当て,反射してインクカートリッジから戻ってきた光を,プリンタ側に一つ備えられた検出器が受け取ることによって,キャリッジのどのカートリッジ位置にどのインクカートリッジが取り付けられているかを識別する構成,及び,かかる構成が,移動するキャリッジ上に複数装着され,キャリッジの移動により「検出器」に対して入れ替わるように配置されたインクカートリッジの識別にも適用可能であることが開示されていると認められる(段【】,【】,【】,【】,【】, 落 0001 0009 0010 0018 0020【0021 【0024 。】,】)しかしながら,上記構成は,インクカートリッジに発光部を設けるのではなく,プリンタ側から発光した光を,インクカートリッジの表面に添付されたラベル上の光学的に読み取り可能な指標(当該カートリッジの種類を識別する符号化された情報)において反射させ,その反射光をプリンタ側の受光部で受け取り,同受光部で上記光学的指標を読み取ることによって,インクカートリッジの種類を識別するとい(【】,【】,【】, うものであり 同公報・段落 0005 0009 0012【0016 【0018 【0020 ,本件訂正発明1における 】,】,】)発光部及び受光部とは,これらを用いることにより当該インクタンクの色情報を判別するための原理も,その果たす役割も,全く異なるものであると認められる。 したがって,乙36公報に相違点1及び2に相当する構成が開示されていると認めることはできない。 c 乙2公報の記載証拠(乙2)によれば,乙2公報には,インクジェット記録装置からインクタンク内の素子に光を発信し,外部B(インクジェット記録装置)で受信することにより素子の位置を検出する受光手段を設ける(,【】, ことが開示されていると認められる 請求項21 段落 0025【0059 【0062 【0063 。 】,】,】)しかしながら,上記構成は,インクタンク中に球状の立体形半導体素子31を浮遊させ,外部からインクタンク内に光を当てて素子31の位置を測定することで,素子の位置によりインクタンクの交換の必(【 】【 】, 要を判断するというものであって 段落 0061 〜 0065図6 ,インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを確認す )るための手段ではなく,インクタンクに発光部が設けられているものでもない。また,乙2公報の記載に照らしても,本件訂正発明1における課題(インクタンクの形状をインクタンクごとに異ならせたり,インクタンクとプリンタとをつなぐ信号線を個別の配線としたりすることによる,製造効率の悪化やコスト増を招かない方法により,インクタンクの誤装着を防止すること )や,その解決方法(本件光照合 。 処理によるインクタンクの搭載位置の検出)を示唆する記載は存在しない。 したがって,乙2公報に相違点1及び2に相当する構成が開示されていると認めることはできない。 d 乙33公報の記載証拠(乙33)によれば,乙33公報には,インクジェットプリンタ装置に備えられたプリントヘッドと,インクタンクとが,それぞれ光信号を授受するフォトダイオードセットを備え,インクタンクの種類番号,インクタンクの色信号等の情報を,インクタンク側のフォトダイオードセットが,光信号の形でプリントヘッド側のフォトダイオードセットに送信し,これを受けたプリントヘッド側が,インクタンクが使用する条件に合致しているかどうか(正しいインクタンクが装着されているかどうか)を判断することが,開示されていると認められる(段落【0014 【0060 【0067】〜【0069 , 】,】,】【0071】〜【0073 【0115 。】,】)しかしながら,上記構成は,インクタンク側の発光素子からの受光を行うインクジェットプリントヘッド側の受光素子が,各インクタンクのホルダごとに備えられ,発光素子と受光素子が1対1で情報の交信を行うことにより当該インクタンクの装着位置を検出するという点(なお,段落【0067】ないし【0069】及び図7等の記載からすると,乙33公報記載の構成では,インクジェットプリンタヘッド側の受光素子(フォトダイオードセット411)が,各インクタンクのホルダごとに備えられており,インクタンク側の発光素子(信号伝送手段441)と,1対1で,インクタンクの色信号等の光信号の授受を行う構成となっていることが認められる )で,プリンタ側とイ 。 ンクタンク側とをつなぐ回路をバス接続とすることを前提に,1個だけ設けた受光手段により本件光照合処理を行うことによってインクタンクの位置を検出するという本件訂正発明1とは,インクタンクの位置を検出するための原理が全く異なっている。 したがって,乙33公報に相違点1及び2に相当する構成が開示されていると認めることはできない。 e 乙42公報の記載証拠(乙42)によれば,乙42公報には,回路部品供給システム本体側に対して複数装着可能なフィーダ(部品供給装置)に設けられた発光素子から発せられる光を,本体側に設けられた受光素子が受光する構成を有し,受光結果をもとに複数のフィーダの保持位置を示すテーブルを作成して比較対照することにより,フィーダの誤装着を防止することが開示されていると認められる(請求項1,段落【0037 【0038 【0051 【0053 【0070 【007 】,】,】,】,】,7】〜【0079 【0086 。】,】)しかしながら,上記構成も,乙33公報記載の発明と同様,受光素子が複数設けられ,これに対応する発光素子と1対1で通信を行うことによってフィーダの誤装着を防止するという点(なお,段落【0038 【0051】及び図9等の記載からすると,乙42公報記載 】,の構成では,回路部品供給システム本体側に設けられる複数のS/F通信部ごとに受光素子290,292,294が備えられ,これらの受光素子が,S/F通信部に対応してフィーダ側に設けられるF/S通信部に備えられる発光素子280,282,284との間で,1対1で通信を行う構成となっていることが認められる )で,本件訂正。 発明1とは,インクタンクないしフィーダの位置を検出する(誤装着を防止する)ための原理が全く異なっている。 したがって,乙42公報に相違点1及び2に相当する構成が開示されていると認めることはできない。 【無効理由2’について】被告は,本件訂正発明1は,乙18公報記載の発明及び周知技術等に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 (ア) 乙18公報の記載及び同公報記載の発明乙18公報の記載,及び,同公報に「複数のインクタンクを搭載して移動するキャリッジと,前記インクタンクの発光手段からの光を受光する光センサを備えたインクジェット記録装置に対して着脱可能なインクタンクにおいて,前記光センサに投光するための光を発光する前記発光手段を有することを特徴とするインクタンク 」の発明(乙18発明) 。 が開示されていると認められることについては,前記【無効理由1’について】(エ)a及びbのとおりである。 (イ) 本件訂正発明1と乙18発明との対比乙18発明の上記内容からすると,本件訂正発明1と乙18発明は,構成要件1A1 ,1A6 ,1D’及び1F’に相当する構成を備え ’’る点で一致し,以下の点で相違すると認められる。 a相違点()1記録装置に関して,本件訂正発明1は,構成要件1A2 (該液体’), インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点同1A3 (前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収 ’納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段 ,同1A4 (搭載される )’液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路)及び同1A5 (前記キャリッジの位置に応じて特 ’定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置)の構成を有するのに対し,乙18発明は,これに相当する構成,すなわち,インクタンクの接点と接続する装置側接点,バス接続回路及び本件光照合処理に用いられる受光部等の液体インク収納容器の位置検出手段を有しない点。 b相違点()2液体インク収納容器に関して,本件訂正発明1は,構成要件1B’(前記装置側接点と電気的に接続可能な接点 ,同1C (少なくと )’も液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持)’(, 部 及び同1E 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記色情報の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)の構成を有するのに対し,乙18発明は,これに相当する構成を有しない点。 (ウ) 本件訂正発明1の容易想到性の有無被告は,本件訂正発明1と乙18公報記載の発明との相違点を,?乙18公報記載の発明には,構成要件1A4’に相当する構成(バス接続回路)が存在しないこと,? 同発明には,情報を入手する「情報入手手段」が明示されているだけで 「情報保持部」を備えるという明示 ,の記載がないこと,? 同発明には,構成要件1E’に相当する構成が存在しないこと,の3点だけであるとした上で,これらの相違点は,いずれも本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったものであり,同技術は乙55公報,乙2公報,乙17公報及び乙1公報にも記載されているから,これらの技術を乙18公報記載の発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。 しかしながら,本件訂正発明1と乙18公報記載の発明との相違点が上記3点だけであるとする被告の主張が誤りであり,両発明の相違点は上記(イ)のとおりであると認められることについては,前記のとおりであるから,被告の主張は,その前提を欠くものであって,これを採用することはできない。 また,本件証拠を精査しても,本件特許の最先の優先日当時において上記相違点( )及び( )に相当するすべての構成が周知慣用技術であった 12ことを認めるに足りる証拠はない。なお,被告は,上記のとおり,被告が主張する3点の相違点が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを裏付ける証拠として,乙55公報,乙2公報,乙17公報及び乙1公報を挙げるが,これらの文献に,相違点( )及び( )12に係る構成のすべてが開示されているとは認められないことについては,以下のとおりである。 a 乙55公報について乙55公報記載の発明は,前記【無効理由1’について】(ウ)のとおり,構成要件1A3’及び1A5’に相当する構成を記録装置が有しておらず,かつ,構成要件1D’及び1E’に相当する構成をインクカートリッジが有していない点で,本件訂正発明1と相違する。 ,, , したがって 乙55公報には 相違点( )及び( )に係る構成のうち 12構成要件1A3 ,1A5’及び1E’に係る構成が開示されている ’とは認められない。 b 乙2公報について乙2公報に開示されている構成は,前記【無効理由1’について】(オ)cのとおりであり,同構成は,構成要件1A2’ないし1A5’に相当する構成をインクジェット記録装置が有しておらず,かつ,構成要件1B ,1C’及び1E’に相当する構成をインクタンクが有 ’していない点で,本件訂正発明1と相違する。 したがって,乙2公報には,相違点( )及び( )に係る構成が開示さ 12れているとは認められない。 c 乙17公報について証拠(乙17)によれば,乙17公報には,各インクタンク内に配置された,インクタンクの色ごとに応答条件が異なる通信機能を有する立体形半導体素子が,インクジェット記録装置側に設けられた通信回路と,外部と非接触の無線によって,インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが開示されていると認められる(段落【0037 【0039 【0040 【0044】〜【0047 【00 】,】,】,】 ,50 【0052 ,図3等 。 】,】)しかしながら,乙17公報は, 外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給する構成が開示されているだけであり,上記立体形半導体素子とプリンタをつなぐための電気的に接続可能な接点(構成要件1A2 ,1B )に係る記載ないし同 ’’構成を示唆する記載は存在しないものと認められる(段落【0006 【0029 【0033 【0034 。 】,】,】,】)また,同公報には,上記のとおり,インクタンク内の立体形半導体素子とインクジェット記録装置側とが,インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが可能な構成が開示されているものの,本件訂正発明1における方法でインクタンクの誤装着を検出する方法,すなわち,インクタンクの発光部を所定の位置で発光させ,これをプリンタ側の受光部で受光することによって,当該インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出するという,本件光照合処理(構成要件1A3 ,1A5 )に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存 ’’在しないものと認められる。 したがって,乙17公報には,相違点( )に係る構成のすべて並び 1に相違点( )のうち構成要件1B’及び1E’に係る構成が開示され 2ているとは認められない。 d 乙1公報について証拠(乙1)によれば,乙1公報には 「複数のインクカートリッ ,ジ(印刷用記録材容器)を搭載して移動するキャリッジと,該インクカートリッジに備えられるデータ信号端子と電気的に接続可能なプリンタ側端子と,各インクカートリッジに対応して設けられ,装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジを点灯して示す操作パネル上の表示ランプと,搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続され,インクカートリッジを識別するための識別情報を送出するためのデータバスとを有し,装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジに対応する操作パネル上の表示ランプを点灯させ,その点灯結果に基づいて装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジを報知するカラープリンタのキャリッジに対して着脱可能なインクカートリッジであって,前記データバスに接続可能な前記データ信号端子と,インクカートリッジの識別情報を格納するEEPROM(記憶装置)と,前記データ信号端子から入力される識別情報と,前記メモリアレイに格納されている識別情報とに応じて応答する記憶装置と,を有するインクカートリッジ 」が開示され。 ていると認められる(請求項11,段落【0001 【0003】】,【】,【】,【】,【】,【】, 〜 0008 0011 0017 0033 0034【】【】,【】,【】,【】, 0036 〜 0040 0042 0043 0051【0052 ,図1〜3 。】)上記のとおり,乙1公報記載の構成は,乙55公報記載の発明の構成とほぼ同様であり,相違点( )及び( )に係る構成のうち,構成要件 121A3 ,1A5’及び1E’に係る構成が開示されているとは認め ’られない。 したがって,被告の主張は理由がない。 ウ 争点3-5-3(本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に違反するか)について被告は,原告製プリンタに被告製品2を搭載した場合,被告製品2の発光部の発光を制御するのは,原告製プリンタ内の制御回路であって,被告製品2は,上記制御回路からの信号を受け取り,その指示どおりの発光,点滅を行っているにすぎないものであるから,本件明細書の発明の詳細な説明には,液体インク収納容器に備えられた「発光部の発光を制御する制御部 (構成要件1E )の構成が開示されているとは認められず,特許 」’法36条6項1号(サポート要件)に違反すると主張する。 しかしながら,構成要件1E’の「発光部の発光を制御する制御部」の意義及びインクタンク内に設けられたICチップ内の制御部が上記「制御部」に該当することについては,前記( )イ(オ)のとおりであるから,本 1件明細書の発明の詳細な説明には,インクタンクに備えられた「発光部の発光を制御する制御部」の構成が開示されていると認められる。 したがって,被告の主張は理由がない。 エ 争点3-5-4(本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号(明確性要件)に違反するか)について(ア) 「発光部」と「受光部」の関係被告は,? 原告は,本件訂正により,受光手段が液体インク収納容器の発光部からの光を受光すること(構成要件1A3 )及び発光部が’受光手段に投光するための光を発光すること(構成要件1D )を追加’したものの,上記訂正後においても 「投光するための光」と「液体イ ,ンク収納容器の発光部からの光」との関係は不明りょうであり,受光時における発光部と受光手段との位置関係は明確でない,? 受光時における発光部と受光手段との位置関係について,本件訂正により 「前記,キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」(構成要件1A5 )との構成が追加されたものの 「前記キャリッジ ’,の位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器」という構成の意義が不明確である,と主張する。 しかしながら,請求項の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載から 「発光部」と「受光手段」の関係や,いかなる方法により液体 ,収納容器の「搭載位置の検出」がされるのかなど,構成要件1A3’及’, び1A5 の意味について明確に理解することができることについては前記( )に認定したとおりである。 1したがって,被告の主張は理由がない。 (イ) 「液体インク収納容器」の特定被告は,本件訂正発明1において,構成要件1A1’ないし1A5’の部分には 「請求される物」としての「液体インク収納容器」以外の ,他の物である 記録装置 が記載されており 同構成要件の記載は 液 「」 , , 「体インク収納容器」の技術的特徴を示すものとなっておらず,これらの記載からは,特許を受けようとする発明が明確でないと主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件訂正発明1は,組み合わせる装置(本件では,インクタンクを装着するプリンタ本体 )の構成を構成要。 ,(,。) 件とすることにより 組み合わされる装置本件では インクタンクの構成を特定するものということができるから,プリンタ側の構成に係る構成要件(構成要件1A1’〜1A5 )も,インクタンクの構成を ’特定するために必要なものであることが認められる。 ,, そして 請求項の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載から構成要件1A1’ないし1A5’の意味について明確に理解することができることについては,前記( )で認定したとおりである。 1,, したがって 特許を受けようとする発明が明確でないとは認められず被告の主張は理由がない。 (ウ) 「色情報に係る信号を発生するための配線」の意義被告は,構成要件1A4’の「色情報に係る信号を発生するための配線」の技術的意義は明確でないと主張する。 しかしながら,本件明細書をみれば,構成要件1A4’の「…電気的」, 接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路 とは図20において,4つのインクタンクとプリンタ本体をつないでいる4本の共通の信号配線(いわゆるバス接続)を含む電気回路のことであると理解することができるものと認められる。 したがって,上記記載は,明確性要件に違反するものではなく,被告の主張は理由がない。 (エ) 「複数の液体インク収納容器」の意義被告は,構成要件1A1’の「複数の液体インク収納容器」にいかなる場合まで含まれるのかが明確でないと主張する。 しかしながら,構成要件1A1’の「複数の液体インク収納容器を搭載」とは,同一形状の複数のインクタンクを相互に異なる位置に搭載することができるプリンタであれば足り,上記インクタンクと異なる形状のインクタンクを搭載することができるか否かについては,これを問わないと解するのが相当であることについては,前記( )イ(ア)aのとお1りである。 したがって,被告の主張は理由がない。 (オ) 本件訂正発明1における 受光手段 と本件訂正発明2における 受 「」 「光部」との関係被告は,本件訂正により,本件訂正発明2の構成要件2A3 ,2D’3’及び2E’に「受光部」という構成が付加されたものの,この「受光部」は,本件訂正発明1の構成要件1A3’の「受光手段」と異なる用語を用いているため 「受光手段」と異なる構成を指すのか,同一の ,構成を指すのかが不明確となっていると主張する。 しかしながら,前記( )イ(ア)cのとおり,本件明細書の発明の詳細 1な説明における【発明が解決しようとする課題】及び【発明の効果】の記載からすると,本件発明1及び本件訂正発明1においてインクタンクに発光部を設けること及びプリンタに受光手段を設けることの技術的意義は,インクタンクによる所定の位置での発光を上記受光部が検出することによって本件光照合処理を実現することにあるものと認められ,構成要件1A3’の「受光手段」とは,プリンタ上に1個設けられたものであり,インクタンクからの発光を受光することによって本件光照合処理を実現することのできるものであれば足りると解するのが相当である。そして,本件訂正発明2における「受光部」についても,その技術的意義が上記「受光手段」と同様であることは,本件明細書の上記記載等から明らかである。 したがって,本件訂正発明1における「受光手段」と本件訂正発明2における「受光部」とは,ほぼ同一の構成を指すものとして解釈することが可能である。 よって,被告の主張は理由がない。 (カ) 「液体インク収納容器位置検出手段」の意義被告は,構成要件1A3’及び1A5’の「液体インク収納容器位置検出手段」の意義が明確でないと主張する。 しかしながら,構成要件1A3’の「液体インク収納容器の搭載位置を検出する」とは 「 本件光照合処理により,プリンタにおいて )イ ,( ,ンクタンクが正しい位置に搭載されているか否かを認識する」ことを意味するものと解するのが相当であることについては,前記( )イ(ア)c1のとおりである。 したがって,受光部又は受光手段が「液体インク収納容器位置検出手段」に含まれると解釈することが妥当であり,本件明細書全体の記載を参酌することにより,意味は明確であると考えられるから,被告の主張は理由がない。 オ 争点3-5-5(本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号(実施可能要件)に違反するか)について被告は,本件明細書の記載からは,誤装着されているインクタンクの位置が正しい装着位置と隣接している場合に,どのようにすれば,隣接している位置からの発光やその他プリンタの使用環境に存在する周囲の光は受光せずに,インクタンクが誤装着しているものとして区別して認識することができるのか,その実現手段が明確でないと主張する。 しかしながら,特許法36条4項は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならない旨を定めるものである。本件光照合処理の構成を実現するために,原告製インクタンクのように,適当な閾値を設定して,受光手段に向き合ったインクタンクからの発光をその他の光から区別する方法を採ったり,発光部からの光を導光路部材を用いて受光部まで導く方法を採ることなど, , は 当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎないというべきであるからこれら発明の実施に当たって取り決める詳細設計が明細書に開示されていないからといって,本件発明を当業者が実施することができないとはいえない。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が発明を実施するのに十分な程度のものであると認められ,被告の主張は理由がない。 カ小括以上のとおり,本件訂正後の請求項1に係る特許につき被告の主張する無効理由はいずれも理由がないから,仮に,本件特許1に無効理由があるとしても,本件訂正により,その無効理由をいずれも解消することができるというべきである。 したがって,被告の主張する本件特許1の無効理由(前記争点3-1ないし3-3)についても,理由がない。 ( ) 争点4(原告が被告に対して本件特許権に基づき被告製品2の輸入,販 3,, ) 売等の差止めを求めることは 独占禁止法に違反し 権利を濫用するものかについて被告は,独占禁止法21条は,特許権者が特許権の行使に名を藉りて濫用的に競争制限行為に及んだ場合にまで独占禁止法の適用を除外する趣旨ではなく,特許権を行使する行為が独占禁止法上違法で公序良俗違反と評価される場合には,その特許権の行使は,権利の濫用として許されないものとされるべきである,とした上で,? 原告は,平成17年9月,それ以降に発売するプリンタを発光機能付きの原告製インクタンクでないと動作しないように設計した上,ICチップが搭載された原告製インクタンクの製造販売を開始したものの,前記のとおり,原告製プリンタにインクタンクを誤装着する場合としてあり得るのは,同色のインクタンクを2個装着した場合だけであり,かかる誤装着は,本件光照合処理によらずに防止することができる,?また,すべての色が装着されたが位置が違っていたというミスの場合は,本件光照合処理によりユーザーにエラーが報知されるとしても,インクカートリッジが受光部の近傍まで移動した後に,タイムラグがあって報知されるので,エラーに気づいたときには,すでにキャリッジ部分に違った色のインクが浸透して混色が進んでしまうという欠点があり,誤装着による問題点の解消には,実用上ほとんど意味がない,? したがって,原告製インクタンクは,ユーザーが互換品を使用することを妨げる,いわゆる特定のプリンタとの抱き合わせ商品であって,原告は,プリンタの供給に併せてユーザーに原告製インクタンクを購入するよう強制しているから 独占禁止法19条 不 ,(公正な取引方法第10項「抱き合わせ販売等 )に違反する,? また,原 」告は,上記?のとおり,ICチップ搭載による発光機能の付加が誤装着による問題点の解消に実用上ほとんど意味のないものであったにもかかわらず,競争関係にある再生業者や互換品業者の参入を阻止するため,技術上の必要性等の範囲を超えて,原告製インクタンクにICチップ搭載による発光機能を付加させたものであり,これにより,ユーザーが原告以外の事業者から別のインクカートリッジを購入することを長期間にわたって不当に妨害しているから,独占禁止法19条(不公正な取引方法第15項「競争者に対する取引妨害 )に違反する,? そうすると,本件訴えは,上記独占禁止法違反 」行為によって,市場を独占し,不当な利益を享受していた原告が,相次いで互換品を発売した互換品業者の市場参入を阻止し,自らの独占を維持するために,インクカートリッジの消費者の選択肢を奪い,市場に認知されている互換品の製造販売業者を一挙に締め出すことを意図して,本件特許権の存在を利用して技術上の必要性等の範囲を超えてしたものであって,独占禁止法に違反し,公序良俗に反するというべきであるから,権利濫用として許されない,と主張する。 しかしながら,原告製プリンタにおいてインクタンクの誤装着が生じる場合は2個同色を装着する場合に限られず,本件光照合処理により誤装着を防止することのできる場合も想定し得ることについては,前記( )イ(カ)で認1定したとおりである。また,被告の主張する上記?の事実については,これを客観的に裏付けるに足りる証拠は存在しない。そうすると,原告製プリンタ及び原告製インクタンクは,本件明細書に記載された本件発明1及び2の課題(インクタンクの形状をインクタンクごとに異ならせたり,インクタンクとプリンタとをつなぐ信号線を個別の配線としたりすることによる,製造効率の悪化やコスト増を招かない方法により,インクタンクの誤装着を防止すること)を,本件光照合処理によりインクタンクが正しい位置に搭載されているか否かを検出する構成を有するプリンタ及びインクタンクによって解決するために開発され,製造,販売されているものといえ,原告のかかる行為は,技術的必要性という合理的な理由に基づくものといえる。 そうである以上,原告が本件特許権1に基づき,同特許権を侵害する被告製品2の輸入,販売等の差止めを求めることが,権利の行使に名を藉りた濫用的なものであるということはできない。被告の主張は理由がない。 ( ) 以上のとおり,被告製品2は,本件発明1の技術的範囲に属するものと 4認められ,かつ,本件特許1は,無効とされるべきものとは認められない。 また,前記第2の1( )ウのとおり,被告製品2は,被告の子会社である香 5港法人において製造され,被告は,業として,上記香港法人から被告製品2を輸入し,同製品を株式会社プレジールなどに販売していることが認められる。 したがって,原告の被告に対する特許法100条1項に基づく被告製品2の輸入,販売又は販売のための展示の差止請求は,理由がある。 2 本件特許権2に基づく被告製品2の輸入,販売等の差止請求の可否以上のとおり,本件では,本件特許権1に基づく被告製品2の差止請求が認められるものであるが,本件の事案にかんがみ,本件特許権2に基づく被告製品2の輸入,販売等の差止請求の可否についても判断を加える。 ( ) 争点2(間接侵害の成否)について 1ア 原告製プリンタ前記1のとおり,原告製プリンタは,複数の被告製品2を互いに異なる位置のタンクホルダに搭載して移動するキャリッジ(構成要件2A1,2A1 )を備え,タンクホルダには,被告製品2に設けられた基板と電気 ’的に接続する接点(構成要件2A2,2A2 )が設けられている。 ’また,原告製プリンタには,被告製品2からの光を受光する受光手段が一つ設けられ,各インクタンクと接続するタンクホルダのコネクタが,タ,, ンクホルダの裏側において共通の配線で接続され 本件光照合処理により各インクタンクの装着位置を確認することができる(構成要件2A3,2A4,2A3 ,2A4 。’’)したがって,原告製プリンタは,構成要件2A1ないし2A4及び同2A1’ないし2A4’を充足する。 イ 被告製品2前記1のとおり,被告製品2は,原告製プリンタのキャリッジに着脱可能(構成要件2B,2B )であり,プリンタ側の接点と電気的に接続可 ’能な接点(基板 (構成要件2D1,2D1 )を備え,基板に設けられ )’たICチップに各インクタンクの色に応じた色情報を保持し(構成要件2D2,2D2 ,基板の上部には,上記受光部に投光するための光を発 ’)光する発光部(構成要件2D3,2D3 )が設けられており,原告製プ ’リンタに装着すると,本件光照合処理が行われる(構成要件2D4,2D4,2E,2F 。 ’’’)したがって,被告製品2は,構成要件2B,2D1ないし2D4,2B,2D1’ないし2D4 ,2E’及び2F’を充足し,被告製品2を ’’,「」 装着した原告製プリンタは 構成要件2C及び2Eの 液体供給システムないし同2C’及び2G’の「液体インク供給システム」に該当し,同構成要件を充足する。 「」 () ウ 発明による課題の解決にとって不可欠なもの 特許法101条2号被告製品2は,これを原告製プリンタに装着すると,本件発明2及び本件訂正発明2の「液体供給システム」ないし「液体インク供給システム」を生成するものであり,インクタンクの誤った位置への装着を解消するという,上記各発明の課題を解決するために不可欠なものである。 これに対し,被告は,原告製プリンタは,誤って2個同色を装着するという同プリンタにおいてインクタンクの誤装着を生ずる唯一の場合に,本件光照合処理による誤装着の検出を行わないものであるから,本件発明2及び本件訂正発明2の特徴的技術手段である,上記誤装着検出手段を直接形成するものには当たらず,特許法101条2号所定の,本件発明2及び「」。 本件訂正発明2の 課題の解決に不可欠なもの に該当しないと主張するしかしながら,原告製プリンタにおいてインクタンクの誤装着を生ずるのは,誤って2個同色を装着する場合に限られないことは前記( )イ(カ)1で認定したとおりであるから,被告の主張はその前提を欠くものである。 被告製品2は,発光部や制御部,情報保持部といった構成を備えることにより,原告製プリンタと協働して,システムとしての機能を達成しているといえるから 「発明による課題の解決にとって不可欠なもの」である ,と認められる。 エ 「日本国内において広く一般に流通しているもの (特許法101条2 」号)について被告は,被告製品2は,市場において広く取引され,たやすく入手することができる物であり,本件発明2及び本件訂正発明2の特徴的機能を有しない67機種の原告製造のプリンタにおいても使用することができる一方,同機能を有している原告製プリンタの数は23機種にすぎないから,仮に,同製品が本件発明2及び本件訂正発明2の実施に適しているとしても,それ以外の用途も有する汎用品であるといえ,特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当すると主張する。 しかしながら,特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,より広い用途を有するねじや釘のような普及品を想定して制定されたものである。原告製プリンタにしか使用することができない被告製品2は,発光と受光という本件発明の特徴的機能を有しない機種計67機種の他の原告製プリンタにも使用することができるとしても,汎用品ということは到底できず 「日本国内において広く一般に流 ,通しているもの」とは認められない。上記「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,汎用の部品や材料が,特許発明の侵害する製品の製造に用いられたとしても,間接侵害とならないように設けられた規定であり,被告製インクタンクは,原告製プリンタ専用のインクタンクであるから,到底,汎用の部品とはいえない。 したがって,被告製品2は 「日本国内において広く一般に流通してい ,るもの」とは認められない。 オ 消尽について被告は,特許製品としての原告製プリンタ及び同梱インクタンクが,特許権者である原告により,我が国においていずれもユーザーに譲渡された時点で,本件特許権2は消尽し,原告は,当該特許製品であるプリンタ及びインクタンクについて特許権を行使することはできないと主張する。 しかしながら,インク供給システムの発明において,インクタンクは,プリンタ装置本体と同等に重要な構成要素(主要な部品)であるといえ,その主要な部品を新たなものに交換する行為は,修理等の域を超えて,実施対象を新たに生産するものと考えられるから,被告製インクタンクを原告製プリンタに装着する行為は,インク供給システムの新たな生産とみなすことができ,本件特許権2は消尽していないと解するのが相当である。 カ小括被告は,被告製品2を 「CANON対応製品 「キヤノン互換インク ,」,カートリッジ」として販売しており,被告製品2が原告製プリンタに装着されると上記各発明の実施に使用されることを理解した上で,被告製品2を輸入,販売している。 したがって,被告製品2を輸入,販売する行為は,特許法101条2号により本件特許権2を侵害するものとみなされる。また,被告は,本件特許2についても,同特許の特許無効審判により無効にされるべきものであると主張するものの(争点3 ,その主張する無効理由は,本件特許1に )ついて主張する無効理由とほぼ同様のものであるから,前記1で判示した点に照らして,同主張に理由がないことは明らかである。 よって,原告の被告に対する特許法100条1項に基づく被告製品2の輸入,販売又は販売のための展示の差止請求は,理由がある。 3 被告製品1に関する請求について原告は,前記第2の3のとおり,被告製品1が本件特許権を侵害する旨の主張を第4回弁論準備手続期日において撤回し,本件訴訟において,被告製品1が本件特許権を侵害する旨の主張はしていない。 したがって,原告の請求のうち,被告製品1の輸入,販売及び販売のための展示の差止めを求める部分については,理由がない。 4結語よって,原告の請求は主文第1項の限度で理由があるから認容し,その余の請求については理由がないからこれを棄却することとし,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 阿部正幸 |
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裁判官 | 山門優 |
裁判官 | 柵木澄子 |