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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ27879補償金請求事件 判例 特許
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平成22ネ10010職務発明対価請求控訴事件 平成22ネ10027同附帯控訴事件 判例 特許
平成19ネ10056不当利得返還等請求控訴事件 判例 特許
平成19ワ11490不当利得金返還請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  職務発明 /  相当の対価(相当な対価) /  協議 /  物の発明 /  方法の発明 /  製造方法 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  出願公開 /  技術常識 /  補償金請求権 /  共同出願 /  時効 /  クレーム /  ライセンス /  抵触 /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  存続期間 /  特許出願日 /  特許料(維持年金) /  数値限定 /  技術的意義 /  均等 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  業として /  乗じた額 /  実施料 /  実施権 /  専用実施権 /  通常実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  移転登録 /  対価 /  クロスライセンス /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 10657号 職務発明に対する対価支払請求事件
横浜市<以下略>
原告A
同 訴訟代理人弁護 士梶山正三東京都港区<以下略>
被告株式会社東芝
同 訴訟代理人弁護 士竹田稔
同 高橋雄一郎
同 服部謙太朗
同 補佐人弁理 士望月尚子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/05/19
権利種別 特許権
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,金1億3000万円及び内金1億円に対する平成20年4月1日から,内金3000万円に対する平成21年2月11日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,被告の従業員であった原告が,被告に在職中に行った発明に係る特許17件についての特許を受ける権利を被告に承継させたことによる相当の対価の一部請求として,平成16年法律第79号附則2条1項,同法による改正前の特許法35条3項及び4項に基づき,金1億3000万円及び内金1億円2に対する訴状送達の日の翌日である平成20年4月1日から,内金3000万円に対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成21年2月11日から,それぞれ支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1争いのない事実等(争いのない事実以外は証拠等を末尾に記載する。)□原告は,被告の元従業員であって,被告に在職中,その職務に属する発明として,□記載の各特許に係る発明(以下「本件各発明」という。)を行ったものであり,本件各発明は,職務発明に該当する。なお,(3)の各特許につき,発明者の記載がないものは,いずれも原告のみが発明者である((3)の各特許に記載された各証拠参照)。
(2)被告は,原告の使用者として,本件各発明に係る特許を受ける権利承継した。
□被告は,本件各発明に基づき,特許の出願をし,それぞれ特許を受けた(以下,各特許,各特許に係る特許権及び各特許に係る発明を,それぞれの登録番号の末尾3桁により特定し(例えば,アの特許については,それぞれ「999号特許」,「999号特許権」及び「999号発明」という。),これらの各特許,各特許権を総称して,それぞれ「本件各特許」,「本件各特許権」という。)。
ア999号特許(甲13,乙1,2の1及び2)(ア)登 録 番 号第1068999号出願日昭和53年8月25日出 願 番 号特願昭53-102857登録日昭和56年10月23日発明の名称ガラスの潜傷除去方法特許請求の範囲「ガラスをエツチング処理した後,加熱しそのままもしくは冷却後3不活性ガスに接触させることを特徴とするガラスの潜傷除去方法。」(イ)被告は,平成元年2月1日,東芝ライテック株式会社に対し,999号特許権を譲渡し,その移転登録をした。なお,東芝ライテック株式会社は,平成元年4月1日,東芝電材株式会社と合併して解散し,東芝電材株式会社は,同日,その商号を東芝ライテック株式会社に変更した(以下では,当該合併前の東芝ライテック株式会社と当該合併・商号変更後の東芝ライテック株式会社とを区別せずに,いずれも「東芝ライテック」という。)。
(ウ)東芝ライテックは,平成4年2月20日,999号特許権を放棄(特許料不納による消滅をいう。以下同じ。)した。
イ321号特許(甲14,乙3)(ア)登 録 番 号第1145321号出願日昭和54年3月30日出 願 番 号特願昭54-36966登録日昭和58年5月12日発明の名称ハロゲンランプ用バルブガラスの潜傷除去方法特許請求の範囲「ハロゲンランプ用バルブガラスをエツチング処理した後,加熱しそのままもしくは冷却後ハロゲンガスに接触させることを特徴とするバルブガラスの潜傷除去方法。」(イ)被告は,平成8年7月29日,321号特許権を放棄した。
ウ359号特許(甲1,乙4)(ア)登 録 番 号第1149359号出願日昭和52年10月12日(東レ株式会社との共同出願)出 願 番 号特願昭52-1222334登録日昭和58年6月14日発明者原告外6名発明の名称二重管形高圧放電灯特許請求の範囲「1発光管を,内面に被膜を有しないガラス製外管内に収容して二重管構造とした高圧放電灯において,上記外管の少なくとも内表面はエツチングされていることを特徴とする二重管形高圧放電灯。
2上記外管のエツチング層の厚さは5μ以上であることを特徴とする上記特許請求の範囲第1項記載の二重管形高圧放電灯。
3上記発光管は石英ガラス製バルブを用い,このバルブ内に水銀と稀ガスと少なくともアルカリ金属ハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物を封入してあることを特徴とする前記特許請求の範囲第1項または第2項記載の二重管形高圧放電灯。」(イ)被告は,平成元年2月1日,東芝ライテックに対し,359号特許権に係る被告の持分を譲渡し,その移転登録をした。
(ウ)東芝ライテック及び東レ株式会社は,平成9年8月9日,359号特許権を放棄した。
エ387号特許(甲2,乙5)(ア)登 録 番 号第1235387号出願日昭和53年12月26日出 願 番 号特願昭53-159263登録日昭和59年10月17日発明の名称ガラスの潜傷除去方法特許請求の範囲「ガラスをエツチング処理した後,加熱しそのままもしくは冷却後不活性ガスに接触させる前もしくは後の少なくともいずれかの段階5で排気処理を施すことを特徴とするガラスの潜傷除去方法。」(イ)被告は,平成元年2月1日,東芝ライテックに対し,387号特許権を譲渡し,その移転登録をした。
(ウ)東芝ライテックは,平成4年3月2日,387号特許権を放棄した。
オ103号特許(甲3,乙6)(ア)登 録 番 号第1399103号出願日昭和53年11月29日出 願 番 号特願昭53-146631登録日昭和62年9月7日発明の名称ガラスの表面処理法特許請求の範囲「ガラスの表面に残存する傷の大きさを10μ以下0.5μ以上にする研麿工程と,前記研麿したガラスを100℃/sec以下の昇温速度で軟化点より低い温度まで加熱する加熱工程と,次に前記加熱処理したガラスをイオン交換するイオン交換処理工程とを具備して成るガラスの表面処理法。」(イ)被告は,平成8年12月11日,103号特許権を放棄した。
カ469号特許(甲4,乙7)(ア)登 録 番 号第1436469号出願日昭和55年4月21日出 願 番 号特願昭55-51712登録日昭和63年4月25日発明の名称ガラスの表面処理法特許請求の範囲「粒度100メッシュ以下の研磨材を含有する不水溶性切油剤を用いガラス研磨処理を施し表面に残存する潜傷を除去又はてい減する6工程と,前記研磨したガラスを100℃/sec以下の昇温速度で軟化点より低い温度まで加熱する工程と,前記加熱処理したガラスについてイオン交換処理を施す工程とを具備して成るガラスの表面処理法。」(イ)被告は,平成8年8月27日,469号特許権を放棄した。
キ849号特許(甲15,乙8)(ア)登 録 番 号第1513849号出願日昭和54年8月10日出 願 番 号特願昭54-101358登録日平成元年8月24日発明の名称ガラスの表面処理法特許請求の範囲「ガラスに研磨処理を施し表面に残存する傷の大きさを10μ以下にする工程と,前記研磨したガラスを100℃/sec以下の昇温速度でガラスの軟化点より低い温度まで加熱する工程と,前記加熱処理したガラスについて所定の比較的高温下でイオン交換処理を施す工程と,前記イオン交換処理面上に金属系の膜を形成する工程とを具備して成るガラス表面処理法。」(イ)被告は,平成9年10月17日,849号特許権を放棄した。
ク762号特許(甲16,乙9)(ア)登 録 番 号第1548762号出願日昭和56年3月11日出 願 番 号特願昭56-33825登録日平成2年3月9日発明の名称ガラスの表面処理方法特許請求の範囲7「ガラス表面の傷の大きさを10μ以下に加工する工程とこのガラスを100℃/sec以下の昇温速度かつ軟化点より低い温度で加熱する工程と,加熱したガラスをイオン交換する工程と,イオン交換処理面を光照射する工程とを具備して成るガラスの表面処理方法。」(イ)被告は,平成9年6月29日,762号特許権を放棄した。
ケ247号特許(甲5,乙10)(ア)登 録 番 号第1638247号出願日昭和57年3月31日出 願 番 号特願昭57-53489登録日平成4年1月31日発明の名称ガラスの加工処理方法特許請求の範囲「ガラス素材を加熱溶融しガラス溶融体の粘性係数を1×10 〔p7oise〕以下に保持した状態で,上記ガラス溶融体を引き上げ法或いは引き下げ法によつて固化し徐冷したのち,上記固化されたガラス体の表面を化学的にエツチングし,かつガラス体の表面に光照射処理を施すことを特徴とするガラスの加工処理方法。」(イ)被告は,平成9年1月7日,247号特許権を放棄した。
コ286号特許(甲6,乙11)(ア)登 録 番 号第1672286号出願日昭和59年11月15日出 願 番 号特願昭59-239475登録日平成4年6月12日発明の名称半導体デバイスの製造方法特許請求の範囲「ZnO,SiO ,B O を必須成分とするガラスの熱膨張系数が223840×10/cから50×10/cの範囲にあるガラス粉末を,-7 -7電解質液体の中に懸濁させると共に前記電解質液体中にモル分極率が1から2.5の前記ガラス成分と異なるイオンを分散させて電気泳動によつて半導体デバイスの表面に前記ガラスを付着させた後,前記ガラスの流動点以上の温度で流動化及び固化し,徐冷したことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」(イ)286号特許権は,平成16年11月15日,存続期間の満了によって消滅した。
サ534号特許(甲7,乙12)登 録 番 号第1977534号出願日昭和63年6月6日出 願 番 号特願昭63-139088登録日平成7年10月17日発明の名称半導体装置特許請求の範囲「【請求項1】多層構造の配線を有する半導体装置において,各配線層間に介在する層間絶縁膜が酸化膜からなる第1の絶縁層と,モル分極率が1.0以下である第2の絶縁層を含むようにしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】多層構造の配線を有する半導体装置において,各配線層間に介在する層間絶縁膜が酸化膜からなる第1の絶縁層と,水酸基(OH基)濃度が800ppm以下である第2の絶縁層を含むようにしたことを特徴とする半導体装置。」シ288号特許(甲33)登 録 番 号第1672288号出願日昭和59年11月28日9出 願 番 号特願昭59-250742登録日平成4年6月12日発明の名称半導体装置およびその製造方法特許請求の範囲「1所定の素子領域の形成された基板の表面を覆う第1のガラス層からなる第1のパツシベーシヨン膜と,前記第1のパツシベーシヨン膜上に形成され,コンタクトホールを介して前記素子領域にコンタクトする配線層と,前記配線層の上層に形成され,前記第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜とを具備したことを特徴とする半導体装置。
2前記配線層は,その一部にスリツト状の凹部を具備していることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
3前記第1のガラス層はガラス構造の網目修飾イオンの位置にイオンを導入した構造をなすとともに,熱膨張係数が第2のガラス層よりも大きいことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
4所定の素子領域の形成された基板上に表面を覆うようにガラス構造の網目修飾イオンの位置にイオンを導入した構造をなす第1のガラス層からなる第1のパツシベーシヨン膜を形成する第1のパツシベーシヨン膜形成工程と,前記第1のパツシベーシヨン膜上に,コンタクトホールを介して前記素子領域にコンタクトする配線層を形成する配線層形成工程と,前記配線層の上層に,前記第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜を形成する第2のパツシベーシヨン膜形成工程と,熱処理により少なくとも前記第1のガラス層を流動化させる流動化工程とを具備したことを特徴とする半導体装置の製造方法。」ス844号特許(甲48)10登 録 番 号第1763844号出願日昭和57年10月25日出 願 番 号特願昭57-186168登録日平成5年5月28日発明の名称非晶質又は結晶質の低分極性薄膜特許請求の範囲「Si,B,Geから選ばれる少なくとも1種以上のイオンとBi4+3+ 4+,Ti,Mg,Zn,Pbから選ばれる少なくとも1種以上5+ 4+ 2+ 2+ 2+のイオンを含有し,且つモル分極率P =ΣP m (P は前記イオンの m iiiモル分極率,m はこのイオンのモル%)が0.007から1.00の範 i囲内にあることを特徴とする非晶質又は結晶質の低分極性薄膜。」セ300号特許(甲37)登 録 番 号第1952300号出願日昭和63年12月26日出 願 番 号特願昭63-325894登録日平成7年7月28日発明の名称半導体装置の製造方法特許請求の範囲「【請求項1】ターゲット材の潜傷を除去した後,これをターゲット材として用い,半導体装置の層間絶縁膜をスパッター法で形成した後,その上部に配線を形成したことを特徴とする半導体装置の製造方法
【請求項2】配線を,絶縁膜の点欠陥又は不純物が500ppm以下とした層間絶縁膜上に形成したことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。」ソ724号特許(甲38)登 録 番 号第1977724号11出願日平成元年4月21日出 願 番 号特願平1-101910登録日平成7年10月17日発明の名称半導体装置の製造方法特許請求の範囲「【請求項1】所望の素子が形成された半導体基板上に第1層配線を形成し,この上に層間絶縁膜を形成して第2層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法において,前記層間絶縁膜を形成する工程は,アルカリイオン含有量が5ppm以下,かつ遷移金属イオン含有量が1ppm以下であるターゲットガラスを,研磨加工した後にその表面をエッチング処理して用いて,スパッタ法によりガラス絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法
【請求項2】所望の素子が形成された半導体基板上に第1層配線を形成し,この上に積層構造の層間絶縁膜を形成して第2層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法において,前記積層構造の層間絶縁膜の少なくとも一方を形成する工程は,アルカリイオン含有量が5ppm以下,かつ遷移金属イオン含有量が1ppm以下であるターゲットガラスを,研磨加工した後にその表面をエッチング処理して用いて,スパッタ法によりガラス絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法
【請求項3】ターゲットガラスは常磁性欠陥濃度が1ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。」タ805号特許(甲51)登 録 番 号第2014805号出願日平成2年3月30日出 願 番 号特願平2-8112112登録日平成8年2月2日発明の名称半導体装置及びその製造方法特許請求の範囲「【請求項1】半導体素子が形成された基体と,この基体上に形成された第1層配線と,この第1層配線上に層間絶縁膜を介して形成された第2層配線とを備えた半導体装置において,前記層間絶縁膜はバイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜の積層膜である事を特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記バイアススパッターガラス膜の膜厚をL と前記プラズsマ絶縁膜の膜厚をL とした場合,L /L の範囲が1/3〜5である p sp事を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
【請求項3】半導体基体上に第1層配線をパターン形成する工程と,前記半導体基体及び第1層配線上に,バイアススパッターによりバイアススパッターガラス膜及びプラズマ堆積によりプラズマ絶縁膜を作成し,層間絶縁膜を形成する工程と,熱処理を行い前記層間絶縁膜を平坦化する工程と,前記平坦化された層間絶縁膜上に第2層配線を形成する事を特徴とする半導体装置の製造方法。」チ127号特許(甲52)登 録 番 号第3041127号出願日平成4年3月27日出 願 番 号特願平4-71381登録日平成12年3月3日発明の名称半導体装置特許請求の範囲「【請求項1】メトキシル基(CH O ),エトキシル基(C H O ),3 25- -プロポキシル基(C H O )のうち少なくとも2種以上の官能基を1 37-13ppm〜0.5%含有したアルコキシドガラス層を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記アルコキシドガラス層は,式0.1≦C H O /(CH O +C H O +C H O )≦2025 3 25 37- - - -を満たすものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」(4)原告は,平成19年6月26日,被告に対し,999号特許,321号特許,359号特許,387号特許,103号特許,469号特許,849号特許,762号特許,286号特許及び534号特許(前項のアないしク,コ及びサの各特許)に係る特許を受ける権利承継したことの対価の支払を求めて,東京簡易裁判所に調停の申立てをしたが,同20年3月12日,不成立となった(弁論の全趣旨)。その後,原告は,同月25日,本件訴えを提起した。
(5)本件各発明に係る特許を受ける権利承継は,いずれも平成16年法律第79号の施行(平成17年4月1日)前にされたものであるから,当該承継に係る対価については,同法附則2条1項により,同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)35条3項及び4項が適用される。なお,当該各項の規定は,次のとおりである。
第35条(略)2(略)3従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。
142争点□被告又は被告が許諾した第三者による本件各発明の実施の有無(2)被告が原告に対して支払うべき相当の対価の額(3)対価請求権についての消滅時効の成否第3争点についての当事者の主張1争点(1)(本件各発明の実施)について(原告の主張)(1)999号発明東芝ライテックは,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも昭和62(1987)年)までの間,999号発明を実施して製造されたエッチング強化ガラスを用いて,産業用大型放電灯(直径約30?,高さ約3m。波長領域は可視光〜紫外線。)を製品化して,販売した。
999号発明を実施することにより,ガラスの強度は,25倍になる。
(2)321号発明東芝ライテックは,昭和54(1979)年から平成元(1989)年までの間,321号発明を実施して製造されたハロゲンランプ用バルブを用いて,ハロゲンランプを製品化して,販売した。
321号発明を実施することにより,ガラスの強度が増加して,ガス放出が減少し,ランプの効率が10%増加する。
(3)359号発明東芝ライテックは,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも昭和62(1987)年)までの間,359号発明を実施して製造された二重管形高圧放電灯を組み込んだ産業用大型放電灯を製品化して,販売した。
359号発明を実施することにより,ガラス強度の増加,ガス放出の減少及びランプの光束維持率が上昇した。
15(4)387号発明被告及び東芝ライテックは,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも,昭和62(1987)年)までの間,387号発明を実施して製造されたエッチング強化ガラスを用いて,産業用大型放電灯を製品化して,販売した。
387号発明は,外管ガラスと発光管ガラスの双方に実施されており,これによりガス放出が大幅に減少した。
(5)103号発明株式会社トプコン(以下「トプコン」という。)及び旭テクノグラス株式会社(以下「旭テクノグラス」という。)は,103号発明を実施して,眼鏡レンズ(実施期間は,昭和53(1978)年から昭和63(1988)年まで。商品名「TAF-LUX」及び「TAF-BROWN」。甲30)及び時計用ガラス(実施期間は,昭和53(1978)年から昭和58(1983)年まで。
甲35)を製品化して,販売した。
103号発明を実施することにより,ガラス表面の平滑度が高められ,歩留まりが著しく向上した。
□469号発明トプコンは,昭和55(1980)年から昭和63(1988)年までの間,469号発明を実施した眼鏡レンズを製品化して,販売した(甲30,31,35)。
また,岩城硝子のHardlexにも,469号発明が実施されている(甲41,42)。
469号発明を実施することにより,潜傷除去,イオン交換処理に先立つ一定の昇温速度による加熱によってガラス強度の改善が成し遂げられた。
□849号発明トプコンは,昭和54(1979)年から昭和63(1988)年までの16間,849号発明を実施した眼鏡レンズを製品化して,販売した(甲30)。
□762号発明トプコン及び旭テクノグラスは,昭和56(1981)年から平成2(1990)年までの間,762号発明を実施した眼鏡レンズ及び時計用ガラスを製品化して,販売した。
762号発明を実施することにより,ガラス強度の著しい改善が成し遂げられた。
□247号発明被告は,昭和57(1982)年から平成14(2002)年までの間,247号発明を実施したエッチング強化ガラスを用いて産業用大型放電灯を製品化して,販売した。
247号発明は,外管バルブと発光管の双方に実施されており,これが実施されないと,放電灯の生産ができない。
(10)286号発明ア被告は,286号発明を実施して,昭和59(1984)年から平成16(2004)年までの間,ガラス被覆Si整流器,高耐圧ダイオード,トライアックペレット等の個別素子を含む電子デバイス全般(フラッシュメモリー等の各種メモリー,高速デバイス,CMOS,ゲートアレイ,マイクロプロセッサ等)を製品化して販売した。
イ甲39文献について(ア)286号発明の被告製品への実施例は,原告が著者である「半導体用ガラス」(化学工業Vol.37,No.6所収。甲39。以下「甲39文献」という。)において,示されており,同文献の図7のガラス被覆した整流素子のうち,ガラスが通常の薄い膜である場合や,同文献の図8のトライアックペレットにおいて,実施されている。また,被告製品に実施された際のガラスの組成及び物性は,甲39文献の表1及び17表2に示されており,そのうちのガラスNo.(1)及び(2)は,286号特許の特許請求の範囲に含まれるものである。
同特許の特許請求の範囲に記載された必須成分がないと,個別素子用のガラスができないし,さらに,熱膨張係数が286号発明の要件を満たさないと,クラックが発生してパッシべーションの用をなさない。すなわち,電着法(電気泳動法)による限り,286号発明に抵触せずに個別素子のパッシべーション膜を形成することは困難である。
現に,被告は,原告に対し,286号特許につき実績補償を支払っており,甲39文献の内容,286号特許の特許公報の実施例からみても,286号発明が,被告において実施されてきたものと推定されることは当然である。
(イ)甲39文献に関する被告の主張についてa被告は,甲39文献には,286号発明の一部しか記載されていないと主張する。
しかしながら,甲39文献は,業界のPR誌であり,原告が半導体用ガラスについてレビューを書いたものであって,個々の発明を具体的かつ詳細に説明するものではないので,記述の全体やデータ,図面から,286号発明を用いた製品の紹介が含まれていると理解されれば足りる。
そして,甲39文献には「電気泳動法」との記載があり,電気泳動は電解質液体中でないとできないから,「電解質溶液」という言葉がなくても,それが用いられていることは当然の前提である。また,甲39文献の図8は,286号特許の明細書(甲6)の第1図に該当するものである。
さらに,甲39文献は,「東芝において,最近発表された」ものとして言及されており,これが発表のための社内審査を通過しているこ18と,甲39文献の表1のガラスの組成と286号特許の実施例のガラスの組成は酷似していることからすれば,甲39文献に示されたガラスは,286号発明に係るものである。
加えて,?甲39文献は,論文等の発表のための被告の社内審査基準にあるように,●(省略)●と判断されていること,?甲39文献の個別素子に関する記述は,原告本人が,286号発明の内容を紹介したものであることを明言しており,かつ,甲39文献の公刊は,286号特許の出願が公開されたのとほぼ同時期であること,?実学としての工学系の論文・報告においては,特段の留保がない限り,実施済みであることは当然の前提であることから,甲39文献により,実施していることは明らかといえる。
b被告は,甲39文献には,286号特許の出願以前に公知の内容しか記載されていないと主張する。
しかしながら,このような被告の主張は,?甲39文献の記載等を総合すれば,甲39文献には286号特許のほぼすべてが記載されていること,?286号特許は既に出願公開されていることから,公知であって,機密情報を含まないのは当然であること,?●(省略)●であるから発表が許可されたことを,いずれも見落としたものである。
ウ原告が執筆した論文(甲64ないし66)は,286号発明のMOSデバイスへの実施が示されており,その中には,286号発明の組成を満たす物が記載されている。
そして,被告においては,論文を発表するには,社外発表許可を取る必要があり,その際,出願又は取得した特許との関係を明らかにする必要があること(甲73)からすれば,原告が,286号発明に関連した論文を社外に公表している以上,これが被告製品に実施されていることは,疑問の余地がない。
19エ(ア)そもそも,被告においては,原則として,●(省略)●のものでなければ,出願した特許の審査請求をすることが認められていなかったのであるから(甲63),審査請求がされている発明は,現実に●(省略)●する必要性が高い発明である。
現に,被告は,原告に対し,286号発明に関して,実績補償を支払っており,被告製品への実施がなければ支払われないものである。原告と被告との力関係からすれば,被告が主張するような,事を荒立てたくないので支払うということはあり得ない。
(イ)原告は,すべて審査請求依頼書(甲63。以下「甲63依頼書」という。)の様式の用紙を使って審査請求をしており,286号特許の審査請求をした昭和59年でも同じである。
そして,審査請求をするには,費用を要するから,相当の実益があることが見込まれる場合に限られることは当然であり,また,286号特許は,他社実施も共願先もないから,審査請求がされたのは,甲63依頼書にいう●(省略)●以外には考えられない。
なお,被告は,甲63依頼書の書込内容が不自然である等主張するが,甲63依頼書の書込内容や日付には意味がなく,不動文字部分が証拠として意味のある部分であるから,被告の主張は,意味がない主張である。
オ被告は,平成9年以降は,286号発明を実施して製造された製品は存在しないと主張する。
しかしながら,このことは,被告が286号発明を実施したことがないという意味にはならない。すなわち,被告は,かつては,自ら個別素子を製造していた。そして,被告が使用した個別素子のガラスは,東芝ガラス,イノテック,日本電気ガラスの三社が製品化したが,その必須成分は,いずれも286号発明の必須成分に一致し,原告が,これらを必須成分とするガラスについて,物性の測定,微量成分のC-V特性への影響等を自ら20詳細に調査したので,これらの製品が286号特許に係る物であり,被告において大量に使用された経緯を周知している(甲125,甲131ないし133)。
その後(おそらくは,平成9年ころ),被告は,286号発明の実施権を,100%出資の子会社である東芝コンポーネンツ株式会社(以下「東芝コンポーネンツ」という。)に移管しているから,現在,被告が実施していないのであって,現在の被告製品においても,東芝コンポーネンツにおいて製造された286号発明の実施に係る個別素子が組み込まれている。
(11)534号発明ア被告は,昭和63(1988)年から平成15(2003)年までの間に製品化された,1M-DRAM,4M-DRAM,16M-DRAM,1G-DRAM,S-RAM,EP-ROM,フラッシュメモリー,バイポーラ,Bi-CMOS等,被告の半導体すべてについて,534号発明を実施している。
534号特許に係る請求項は,いずれも多層構造を有する半導体装置に関して極めて基本的な特許であるから,これに抵触しない半導体装置を想定することは困難である。
現に,被告は,原告に対し,少額ではあるが,534号特許につき,実績補償を支払っている。
イ被告が製造するバイポーラにおいて534号発明が実施されていること。
(ア)被告の工場で製造されていたバイポーラの断面構造図(甲27。以下「甲27図面」という。)には,●(省略)●第1の層間絶縁膜として●(省略)●酸化膜(SiO )が存在し,●(省略)●,LP-BP2SG(減圧ホウリンケイ酸ガラス)による第2の層間絶縁膜がある。そして,LP-BPSGのモル分極率は,0.062〜0.071の間にある(甲56。以下,この論文を「甲56論文」という。)。
21また,甲27図面における各多層配線は,●(省略)●が層間絶縁膜となっており,これも534号特許の請求項1に含まれる。
なお,被告は,同図に基づく製品は製造していないと主張するが,同図は例示にすぎず,この図面そのものによる製品が販売されていたか否かは,534号発明の被告製品への実施を否定する根拠にはならない。
(イ)モル分極率についてaモル分極率は,ガラスとしての構造(結晶質か,非結晶質か等),酸素欠陥の有無・割合,ガラスの三次元構造を規定する網目構造イオンと網目修飾イオンの入り込み方等によって異なり,成分比のみで決まるものではない。そして,ULSIで用いるガラスについては,どのような誘電体の,どのような構造の物を,どのような周波数で測定したかを捨象してはならない。
b被告がその主張の根拠とするシャノン論文(乙21。シャノン「酸化物及びフッ化物におけるイオンの誘電分極」をいう。以下同じ。)は,周波数1kHzないし10MHzの領域で分極の測定をしており,これによって求められるのはイオン分極である。他方で,ULSIの材料として必要なのは,周波数1GHzの領域であって,これにより求められるのは,主として電子分極であり,イオン分極を考慮するとしても,わずかである。
また,シャノン論文で測定に用いたと思われる化合物は,多結晶又は単結晶であって,膜形成ができないものであり,また,誘電率は,結晶構造のものと非晶質のものとでは全く異なるので,絶縁膜の分極率計算の基礎とする数値は,これからは求められない。
さらに,シャノン論文は,圧電材料に関する調査を目的とするものであって,ULSIに関するものではない。
加えて,被告がモル分極率の計算に使用しているシャノン論文の図221は,イオン誘電分極率の値であって,モル分極率とは区別される。
したがって,そもそも,分極率の計算に関してシャノン論文に依拠することはできないのであり,被告の主張は誤りである。
被告は,層間絶縁膜では,配向分極率は,大きく見積もっても10%以下と考えられるとして,これを無視した上で,1kHzと1GHzのモル分極率は,ほぼ同じ値であると主張するが,1GHzより低周波数の領域において,配向分極は生じており,1kHzと1GHzの周波数領域では,配向分極の分が全く違ってくるから,被告の主張は失当である。
なお,仮に,被告の計算によるモル分極率が正しいとすると,電子デバイスの絶縁膜で通常計算されている値よりも3桁も大きくなり,デバイスとして全く動かないことになる。
c被告は,原告が陰イオンの影響を失念していると主張する。
しかしながら,モル分極率の計算は,クラウジウス・モソッティの式で行われるのが本則である(甲36)ところ,陰イオンの寄与は,この式の計算においてはマイナスで計算されるため,陰イオンの影響を加味しても,モル分極率は,より低下することになるから,陰イオンの寄与を示さなかった。
また,ULSIに用いられるBPSG膜は,単純なSiO ,B O22,P O の加重平均の成分ではなく,これでは,膜形成に失敗するか 325ら,有機BPSG膜を前提に計算すべきである。現実に,被告製品も有機BPSG膜を使用している(甲29)。したがって,有機官能基に相当する分極率を加除しなければならないところ,有機官能基は,OC H等のアルコキシド基であり,被告こそ,陰イオンを失念して25-いる。
さらに,ここで問題とするのは,一つのイオンの内部変位の問題で23あり,異なるイオンとイオンの間に生ずる変位の問題ではなく,被告の主張は,両者の相違を区別しないものである。
d被告は,甲56論文の引用の誤りを指摘する。
しかしながら,ポーリング論文(乙23。ポーリング「多電子原子及びイオンの物理的性質の理論予測。モル屈折率,反磁性磁化率,空間における拡張」をいう。以下同じ。)において,「R」を定義した計算式(R=V(n -1/n +2))をみれば,そこに示された2 2「R」は,モル分極率を示すものであるということができ,これを誤って「Mole Refraction」と表示したものと推測される。そして,クラウジウス・モソッティの式で求めたモル分極率とブァン・ブレック論文(乙22。ブァン・ブレック「物質の電気分極と磁性」をいう。以下同じ。)の表から求めたモル分極率を比較しても,良い一致を見ている(甲82,83)。また,用語の問題としても,ポーリング論文が用いている「Mole Refraction」は,本来的には屈折率を表す言葉ではない。したがって,ポーリング論文及びブァン・ブレック論文の表は,モル分極率を記載したものであって,モル屈折率を表示したものではない。
なお,このポーリング論文の数値が主として電子分極を考慮したものであることは,被告の主張のとおりである。しかしながら,ULSIの領域では,イオン分極や配向分極も存在するが,主として電子分極であることは間違いないので,ポーリング論文を用いることに問題はない。
そして,甲56論文において示した計算方法は,特許庁の審査,論文の掲載に当たっての被告の社内での審査等において,内容の正当性が認められたものである。
(ウ)BPSG膜について24被告は,BPSG膜が534号特許の請求項1(以下「534-1特許」といい,当該特許に係る発明を「534-1発明」という。)の第2の絶縁膜に該当すると解すると,その有効性を維持できないと主張する。
しかしながら,534-1発明にいう第2の絶縁膜に該当するBPSG膜には,モル分極率その他の限定がある。そもそも,534-1特許が維持できるか否かは,特許無効審判等の手続によるべきであって,本件訴訟のテーマではなく,議論すべきことではない。
また,現に,534-1特許が,何らの異議を受けることなく維持されていることは,原告の解釈の正しさを証明している。
ウ被告が製造するDRAMにおいて534号発明が実施されていること。
(ア)被告の工場で製造されていた1M-DRAMの工程及び断面図(甲28。以下「甲28図面」という。)中の完成図によれば,その●(省略)●SiO 膜が第1の絶縁膜の役割を果たしており,更に●(省略)2●BPSGガラスの膜が第2の絶縁膜の役割を果たしているので,これも534-1発明に含まれる。
また,同完成図のプラズマSiO 膜は,「水酸基(OH基)濃度が8200ppm以下」の要件を満たすものである(甲51,57参照)から,534号特許の請求項2(以下「534-2特許」といい,当該特許に係る発明を「534-2発明」という。)にも含まれる。なお,水酸基濃度が800ppmを超えると,半導体の層間絶縁膜としては,リーク電流が多すぎて,使用に耐えなくなる(甲58。以下,これを「甲58論文」という。)。
4M,16M,64MのDRAMについても,同様である。
(イ)甲28図面に関する被告の主張について甲28図面は例示にすぎず,この図面そのものによる製品が販売され25ていたか否かは,534号発明の被告製品への実施を否定する根拠にはならない。
(ウ)水酸基濃度に関する被告の主張についてa被告は,甲58論文には,何ら前記(ア)のような記載はないと主張する。
確かに,甲58論文に800ppmがリーク電流の技術的限界との記載はないが,534号特許の特許公報の,水酸基濃度が800ppm以下とそれを超える場合とは,比抵抗が2桁も違うとの記載を前提に,甲58文献を引用したものである。
b被告は,プラズマSiO 膜が534-2特許の第2の絶縁膜に該当2すると解すると,その有効性を維持できないと主張するが,これが無効かどうかは,本件訴訟のテーマではない。
また,534-2特許に対して異議申立てがされていないことだけで,原告の解釈が正しいことが裏付けられる。
なお,プラズマSiO 膜は例示であるから,これのみについて5324-2発明の第2の絶縁膜に該当することを否定しても,被告製品への実施を否定したことにはならない。
c被告は,現実の製品において,絶縁膜の水酸基濃度を測定することが困難であると主張する。しかしながら,水酸基の定量は,赤外吸収スペクトルにおいて,水酸基に特有な3つの吸収バンドの吸光度から計算することができる(甲58)。透過光が測定できる場合は,分光吸光光度計を用い,透過光が測定できない場合はこれを用いて反射光を測定すればよく,製品になったものの水酸基濃度を直接測定するには,透過光ではなく,反射光の測定で可能である。
また,層間絶縁膜やパッシべーション膜の水酸基濃度は,材料段階で決まるから,材料としてのガラス膜の水酸基を測定すれば足りる。
26534-2発明が特許となっているのも,水酸基濃度が定量可能であるからである。
エ平成元(1989)年3月17日から平成2(1990)年1月19日にかけて行われた技術移転会議(研究部門から製造部門への技術移転を目的とする会議)の議事録(甲26の1ないし9)において,BPSGの濃度振り(これが,頻繁に議事事項に取り上げられているのは,低温流動化の鍵を握るからである(甲59)。)や●(省略)●が検討されており,534号発明の技術移転が議論されていること,原告が,1回を除いて全部出席していることからも,534号発明が被告製品に実施されてきたことは,明らかである。
オ被告製品(LSI及び超LSI)に関する外部雑誌の解説(甲29)も,被告製品に534号発明が実施されていることを裏付けている。
カそもそも,?被告の主張は,被告が自ら費用を負担して出願し,審査請求をしたという事実と矛盾すること,?被告の主張は,特許庁の審査によっても,534号発明の新規性,進歩性が認められ,特許されていることとも矛盾すること,?原告は,内外の雑誌に多数の論文等を発表し,社内審査のみならず,いわば社会的な幅広い層による審査にさらされたにもかかわらず,何らクレームを受けたことはないこと等からすれば,被告の主張は,非常識である。
また,特許の実施に関する直接的証拠は,すべて被告が持っており,被告を退職した原告がこれを取得することは困難であることから,実施について一応の立証がされたならば,被告の側で実施していないことの証明責任を負うと解すべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁)。
キ以上のことから,被告が534号発明を実施していることは,明らかである。
27(12)288号発明ア被告は,昭和59(1984)年から平成16(2004)年までの間,288号発明を実施して,1M〜1GのD-RAM,S-RAM,EP-ROM,バイポーラ,Bi-CMOS,フラッシュメモリーを製造・販売していた(甲154)。
イ多層構造の半導体デバイスは,その大部分が288号特許に抵触するものであり,この要件を満たさなければ,層間絶縁膜やパッシべーションにクラックが発生して,リーク電流が増加し,歩留まりを低下させることになる。
288号特許の特許公報に記載された実施例は,いずれも被告における実施例であり,同特許は,●(省略)●を前提に審査請求がされたものである(甲63)。
288号発明のポイントは,基板を覆う第1のガラス層にあり,288号特許の請求項3及び4におけるガラス構造の中に,網目修飾イオンを導入して低温平坦化を実現する技術は,原告の発明に係る別出願の特許発明(甲111)において示されており,これらに関する詳細な研究は,原告が被告在職中に書き上げた博士論文(甲79)に,その内容が記述されている。また,第2のガラス層において,リフロー形状の段差部におけるtanθを小さくすることが重要であるが,そのために,第2のガラス層においても,低温リフローの実現が必要であり,その技術に関する原告の寄与も大きい(甲110)。さらに,甲39文献にも,288号特許の特許請求の範囲と同じ内容に関する説明がある。
288号発明は,半導体デバイスの低温リフローを実現し,C-V特性を改良し,更にはクラックの発生,リーク電流を低減すること等に関する原告の発明の一翼を担うものである。
(13)844号発明28ア被告は,昭和57(1982)年から平成14(2002)年までの間,844号発明を実施して,各種個別素子(高耐圧トランジスタ,トライアック,ダイオード,低温ポリシリコン液晶用テレビFET,薄膜トランジスタ等)を自ら製造し,東芝コンポーネンツに製造させた。
イ(ア)ガラス保護膜として,Si,B,Geのいずれかはほとんど4+3+ 4+必須といってよく,また,Bi,Ti,Mg,Zn,Pbの5+ 4+ 2+ 2+ 2+いずれをも含まないガラスはほとんど想定できず,モル分極率1.0以下のガラス保護膜を実現しようとすると,ほとんどの場合,844号特許に抵触する。そして,保護膜の分極率が1.0を超えるとデバイスのC-V特性が悪化し,逆に0.007以下では,非晶質被膜が形成できないことからすれば,844号発明は,極めて広汎に被告製品に実施されている。
被告のソルダーガラスのカタログ(甲109。以下「甲109カタログ」という。)を見ても,その大部分は,成分として844号特許の特許請求の範囲内にあることは明らかである。
また,甲39文献で「東芝において,最近発表された」と明示されたガラス組成(同文献表1参照)は,844号特許の特許請求の範囲に完全に包含される。
さらに,被告製品に使用されてきたガラスの成分は,甲131ないし甲133の論文に示されているが,いずれもその成分組成に関して,844号特許の特許請求の範囲に含まれる。
(イ)デバイスの保護膜又は層間絶縁膜に関して,モル分極率1.0以下を実現した発明及びその技術に言及した論文は多数に上るが,これらは,被告社内の審査を通り,特許庁の審査も通って,正当性が認められたものである。また,被告社内の審査において,●(省略)●との評価も受けたものである。
29ウ被告は,甲109カタログは東芝硝子株式会社(以下「東芝硝子」という。)のものであると主張するが,被告が使用するデバイス用のガラスは,日本電気硝子,東芝硝子,旭ガラスのいずれかの納入品を用いることが圧倒的に多い。
また,被告は,甲109カタログに記載されたガラスを「個別素子の保護膜」として用いたことはないと主張するが,主要成分以外の微量成分がカタログに記載されることはないものの,主要成分のみで比較すれば,被告は,甲109カタログ記載の製品を使用している。
そして,被告が東芝硝子等の子会社に製造させ,納入を受けた場合であっても,原告の発明により被告が利益を受けている点では,同じである。
(14)300号発明ア被告は,昭和63(1988)年から平成7(1995)年までの間,300号発明を実施して,1M〜1Gの高速バイポーラ,Bi-CMOS,ゲートアレイ等を製造した。
イ(ア)300号特許は,スパッター法により形成した層間絶縁膜を有する半導体デバイスの基本特許というべきであり,ターゲット材の潜傷を除去しなければ,デバイスの中に不純物等が入り込んで,デバイスが動かなくなるから(甲143),ターゲット材を用いたPVD法によって層間絶縁膜を形成する限り,すべてこの特許請求の範囲に含まれる。
そして,被告において,ターゲット材を用いたスパッター法による層間絶縁膜の形成方法を採用していることは明らかであり(甲98,109),原告自身,このような製造方法を被告在職中に指導したことがある。
(イ)被告は,甲98には「電極形成」にスパッタ装置を用いることが記載されているにすぎないと主張するが,電極と絶縁膜とは,一つの単位として製造されるものであるから,被告の主張は,理由がない。
30また,甲109カタログは,東芝硝子のカタログではあるが,ガラスの製造者が被告でないことが,当該ガラスを被告が使用していない根拠とはならない。
ウ300号特許の請求項2は,請求項1の範囲に包含されるものであるが,点欠陥又は不純物濃度で限定したものである。そして,水酸基の測定が可能であることは,534号特許に関して述べたとおりである(甲123,128,129)。
(15)724号発明ア被告は,平成元(1989)年から平成8(1996)年までの間,724号発明を実施して,1M〜1Gの高速バイポーラ,Bi-CMOS,ゲートアレイ等を製造した。
イ724号特許は,300号特許に包含されるものであり,300号発明につき,ターゲットガラスのアルカリイオン含有量や遷移金属イオン含有量,常磁性欠陥濃度に限定を加えるものであるが,デバイスとして使用する場合には,このような条件が必要であり(甲55,116),被告の社内評価でも,Aランクである(甲130)。
なお,被告は,特許出願日実施との関係を問題とするが,出願日以前に実施されることについては,何ら不思議はない。
(16)805号発明ア被告は,平成2(1990)年から平成20(2008)年までの間,805号発明を実施して,1M〜1Gの高速バイポーラ,Bi-CMOS,ゲートアレイ等の電子デバイスを製造した。
イ805号特許は,ターゲットガラスのアルカリイオン含有量,遷移金属イオン含有量,常磁性欠陥等に限定を加え,当該ターゲットガラスからスパッタ法で製造された電子デバイスに関する特許であって,バイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜を併用する半導体デバイスの基本特許で31ある。そして,バイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜の積層膜の作り方とそのメリットは,甲38にも述べられているが,実用化されている方法としては,甲110の論文に図解入りで記載されている。また,バイアススパッターガラスの使用について,被告社内で実施されていたことは,甲77の文献にも明記されている。
(17)127号発明ア被告は,平成4(1992)年から平成20(2008)年までの間,127号発明を実施して,1M〜1GのD-RAM,フラッシュメモリー,高速バイポーラ,Bi-CMOS,ゲードアレイ等を製造した。
イ127号特許は,アルコキシド基を導入した有機ガラス(アルコキシドガラス)を,デバイスのパッシべーション又は層間絶縁膜に導入するための基本特許であり,この特許に抵触せずにアルコキシドガラスをデバイスに使用することは困難である。
127号特許の請求項2において,アルコキシド基相互の組成比を0.1以上としたのは,これより小さい値の場合はリフロー温度が900℃以上となり,20以下としたのは,これを超えるとエトキシル基が均等に混合せず,薄膜の均質性が失われ,クラックが生じたりするからである。したがって,127号特許の請求項2の組成比以外のアルコキシドガラスを実用化するのは難しく,アルコキシドガラスをデバイスに使用する場合には,127号特許を使用せざるを得ない。
そして,被告が半導体デバイスにアルコキシドガラスを使用していることは周知の事実であり(甲29,60。TEOS-BPSGは,アルコキシドガラスの主要なものの一つである。),127号特許の特許公報の実施例3及び5におけるガラス成分と同じ絶縁膜が,被告製品のDRAM,SRAM,フラッシュメモリー,EPROM等に使用されている(甲12,43)。
32(18)被告における事業部と総合研究所の関係について以上の17件の本件各発明は,すべて被告の事業部からの依頼による開発研究の成果であり,当該事業部と被告の総合研究所との契約により,事業化を前提として,行われたものである。
そして,出願に係る費用は,すべて事業部の負担であり,審査請求するかどうかも,「●(省略)●」の場合に限って,事業部の判断でされたものであるから,本件各発明は,被告等の製品において,実施されているということができる。
(被告の主張)(1)999号発明被告は,999号発明を東芝ライテックに実施させたことはない。
また,被告は,平成元(1989)年2月1日,999号特許権を東芝ライテックに譲渡しており,その後の東芝ライテックの実施の有無は,被告には関係がない。
(2)321号発明被告は,321号発明を東芝ライテックに実施させたことはない。
(3)359号発明被告は,359号発明を東芝ライテックに実施させたことはない。
また,被告は,平成元(1989)年2月1日,359号特許権の被告の持分を東芝ライテックに譲渡しており,その後の東芝ライテックの実施の有無は,被告には関係がない。
(4)387号発明被告は,387号発明を東芝ライテックに実施させたことはない。
また,被告は,平成元(1989)年2月1日,387号特許権を東芝ライテックに譲渡しており,その後の東芝ライテックの実施の有無は,被告には関係がない。
33(5)103号発明被告は,103号発明を,トプコン及び旭テクノガラスに実施させたことはなく,これらの会社が103号発明を実施したか否かは,被告には関係がない。
□469号発明被告は,469号発明を,トプコンに実施させたことはなく,また,同社が469号発明を実施したか否かは,被告には関係がない。
□849号発明被告は,849号発明を,トプコンに実施させたことはなく,また,同社が849号発明を実施したか否かは,被告には関係がない。
□762号発明被告は,762号発明を,トプコン及び旭テクノガラスに実施させたことはなく,また,これらの会社が762号発明を実施したか否かは,被告には関係がない。
□247号発明被告は,247号発明を実施していない。
なお,被告は,平成9(1997)年1月7日,247号特許権を放棄した。
(10)286号発明ア被告は,286号発明を実施していない。
イ甲39文献の記載内容について(ア)甲39文献には,組成及び熱膨張係数以外の286号発明の構成は,記載されていない。
すなわち,286号発明には,「電解質液体中にモル分極率が1から2.5の前記ガラス成分と異なるイオンを分散」させるという要件が存在するが,甲39文献には,この点の記載はない。また,286号発明34は,「電気泳動によつて半導体デバイスの表面に前記ガラスを付着させ」,「前記ガラスの流動点以上の温度で流動化及び固化し,徐冷」するとの要件があるが,甲39文献には,「電気泳動法でSi表面へガラス粉末を付着させ,加熱」することしか記載されていない。さらに,甲39文献の表1のガラスのうち,(3)及び(4)のものは,「ZnO,SiO ,B O を必須成分とする」との要件を満たしていない。
223また,甲39文献には,電気泳動法で付着させるガラス微粉末が同文献の表1の(1)又は□のガラスであるとの記載はなく,むしろこれらのガラスが他者から販売されていることが明示されている。そもそも,甲39文献は,整流素子の被覆膜を,電気泳動法以外の方法で形成することも記載されており,一方で,その表1には,4種類のガラスが記載されているから,電気泳動法で付着させるガラス粉末が,甲39文献の表1(1)及び(2)のガラスであると断定することはできない。
さらに,原告は,甲39文献のガラスの組成や図面と,286号発明の実施例のガラスの組成や図面とが,類似していると主張する。しかしながら,286号発明は,半導体デバイスの製造方法に関するものであり,ガラスの組成のみで発明が特定されているわけではないから,ガラスの組成の類似をもって,甲39文献が,286号発明に関するものであるということはできない。また,同様に,286号発明は,半導体デバイスの製造方法に関するものであるところ,原告が指摘する前記各図面は,それぞれ,トライアックペレット,半導体デバイスの断面構造を示す図にすぎず,その構造の類似をもって,286号発明の構成要件のすべてが開示されていることにはならない。
(イ)加えて,286号特許の出願前である昭和51年8月17日に公開された特開昭51-93873公報(乙35。以下「873公報」という。)には,ZnO,B O ,SiO 系ガラスであるGE-351につ23 235き,熱膨張係数が44×10/℃であるガラスが明示されており,甲39文献には,これと同程度の記載しかされていない。
(ウ)したがって,甲39文献は,286号発明と無関係な文献であり,原告が指摘する他の文献も,286号発明に言及したものはない。
ウ論文の発表について被告における論文発表の社内審査は,機密事項の漏洩防止等の目的で行っているものであり,発明の実施とは無関係である(乙34)。そして,前記のとおり,甲39文献には,既に公開されていた873公報に記載されている程度の内容が開示されているにすぎないから,社外発表が許可されたものであって,これが286号発明の実施を示した論文ではないことは,明らかである。
原告は,甲39文献が●(省略)●と判断されたことを指摘するが,単なる技術説明であっても,●(省略)●であることは十分にあり得るから,そのことと被告が286号発明を実施していることとは,関係がない。
エ特許の審査請求について原告は,甲63依頼書を根拠に,被告においては,原則として,●(省略)●のものでなければ,出願した特許の審査請求をすることは認められなかったと主張する。
しかしながら,286号特許の審査請求に当たって,甲63依頼書が用いられたという証拠はない。そもそも,甲63依頼書は,平成元年の申請に用いられたものであり,286号特許の出願の審査請求時である昭和59年当時の被告の運用を示したものではない。また,出願公告は審査請求より後にされるものであるところ,甲63依頼書に出願公告の番号が記載されているのは,極めて不自然である。
そして,審査請求がされた特許出願に係る発明であれば必ず●(省略)●されているというものではないことは,常識である。被告においても,36審査請求をするか否かは,特許施策や予算配分の多寡等により決まってくるのであって,自社又は他社における実施の有無を確認しているわけではない。
被告においては,審査請求は,特許部門のイニシアティブによる社内手続によることが原則であるが,発明者等が審査請求を希望する場合がある。
そのような場合に,技術部門から特許部門への審査請求の依頼という形で審査請求手続を進めるための書類が甲63依頼書であり,その濫請求を防ぐために,実施を必要とするとの断り書を入れているのであって,すべての審査請求に甲63依頼書の書式が用いられたわけではない。
オ被告の原告に対する実績補償の支払については,原告から強い要求があったことから,担当者において事を荒立てたくない等と考え,平成14年度ないし同16年度の3年分を,D級(通常の実施。すなわち,顕著な価値を認めるべき実施に該当しない実施。)と評価して支払ったものである。
また,平成5年度分ないし同8年度分の実績補償については,所管部門の申告どおりに支払うという被告の運用の下に支払われたものであって,実施を確認した上で支払ったものではない。
カ被告において,平成9年以降の製品を確認したところ,被告のトライアックペレット,ダイオード製品で286号発明を実施した製品はなかった。
なお,被告が平成9年以降の製品を確認したのは,それ以前については,補償金支払請求権が時効により消滅しているからであり,それまでは実施していたことを含意するものではない。
(11)534号発明ア被告は,534号発明を実施しておらず,534号特許が基本特許ともいえない。
なお,原告が挙げる各製品のうち,1M-DRAM(C-MOS)のサンプル出荷は,534号特許の出願に先立つ昭和60年3月であり,昭和3762年4月の時点では,被告は,月産120万個の1M-DRAMを生産していた(乙29,30)。
イバイポーラについて(ア)被告は,甲27図面に基づくバイポーラを検討はしたが,現実に製造はしていない(乙31)。
そして,原告は,この図面を引用する以外には,何ら534-1発明の実施について,具体的な主張をしていない。
(イ)モル分極率の算定についてa□BPSG膜のモル分極率は,2.94以上であり,「モル分極率が1.0以下」の要件を満たさない。
BPSG膜は,B,P,Si,Oを含み,それぞれのモル分極率は,Siが0.52,Bが0.03,Pが0.73,Oが1.21である(乙21(シャノン論文))。そして,BPSGのモル分極率は,SiO ,B O ,P O の加重平均で求められ,その下限は,22325純粋なSiO のモル分極率である2.94(=0.52+1.21 2×2)となる。
□全分極率は,電子分極率,イオン分極率,双極子分極率(配向分極率)及び界面分極率の総和である。しかしながら,LSI製造レベルに制御されたSi酸化膜系層間絶縁膜では,界面分極はそれほど支配的ではないため,これを無視しても構わず,また,双極子分極率(配向分極率)も,大きく見積もっても10%以下と考えられる(乙39)から,これも簡略化のために省略すれば,全分極率は,電子分極率とイオン分極率の合計となる。そして,全分極率は,印加される電界の周波数によって変化し,赤外線の周波数(3THz)より低い周波数の領域では電子分極とイオン分極が,赤外線の周波数より高い周波数の領域では電子分極のみが関係する。
38シャノン論文は,周波数1kHz(10 Hz)〜10MHz(130 Hz)の領域(赤外線より低周波数の領域)で分極率の測定を行7っており,その数値は,電子分極とイオン分極の双方を考慮した分極率である。
そして,半導体の層間絶縁膜の評価特性として考慮すべき周波数帯は1GHz程度であり,赤外線の周波数(3×10 GHz)より3も3桁も低く,そのモル分極率を評価するに当たっては,電子分極とイオン分極の双方を考慮する必要があるから,534号発明におけるモル分極率も,イオン分極と電子分極の双方を考慮する必要がある。
したがって,全分極率は,シャノン論文の記載された領域と1GHzの周波数領域においては,ほぼ同じ値であるから,シャノン論文に記載されたモル分極率の数値を,534号発明のモル分極率の計算に用いることができる。
なお,原告の意見書(甲113)でも,イオン分極は10以下13の,電子分極は10以下の周波数で生じると記載されている。
14また,原告は,シャノン論文で測定に用いたと思われる化合物は多結晶又は単結晶であるとか,シャノン論文は圧電材料に関する調査が目的であったと主張するが,シャノン論文には,どこにも多結晶又は単結晶とは記載されていないし,圧電材料に関する調査とも述べられていない。
以上のことから,ULSI材料として必要な1GHzの領域では,シャノン論文の表の数値をモル分極率の算定に用いるべきである。
そして,クラウジウス・モソッティの式によって,SiO の652GHzにおけるモル分極率を計算すると,3.26□/molとなり,シャノン論文の数値を用いて計算したSiO のモル分極率2.94239□/molと10%の誤差でほぼ一致することからも,ULSI材料として必要な1GHzの領域では,シャノン論文の表の数値をモル分極率の算定に用いることができることが,例証される。
b原告は,甲56論文を根拠に,BPSGのモル分極率を0.062〜0.072と主張する。
□甲56論文の数値は,ブァン・ブレック論文中の「原子とイオンのモル分極率と反磁性磁化率」と題する表(241頁)に記載された数値に基づき計算されたものであるところ,ブァン・ブレック論文の当該表の数値は,ポーリング論文のデータを基にしたものである。しかしながら,ポーリング論文のデータは,モル屈折率に関するものであって,ブァン・ブレックが,これをモル分極率と誤って記載し,甲56論文は,この記載に依拠して,モル屈折率の値をモル分極率として掲載したものであって,技術的にみて誤っている。
原告は,ポーリング論文は,モル分極率を計算しつつ,誤って「Mole Refraction」と表示したものであると主張するが,そのデータは,数値の点からしても,モル分極率とは異なっている(乙21参照)。また,原告は,クラウジウス・モソッティの式等を引用して主張するが,原告の主張は,半導体装置の層間絶縁膜の評価特性として考慮すべき周波数帯で寄与する分極についての誤った認識に基づくものであり,失当である。
□また,ポーリング論文のデータは,光(赤外線よりも短波長,高周波)の周波数を問題にしているから,主として電子分極を考慮した値であり,イオン分極は考慮してない。
したがって,ブァン・ブレック論文の表,更にはこれに依拠する甲56論文も,主として電子分極を考慮した値であり,イオン分極は考慮していないことになり,ULSI材料として必要な1GHz40の領域のものとはかけ離れた,極めて小さな値であり,ULSI材料として必要な1GHzの領域において,これを用いるべきではない。
原告が,ブァン・ブレック論文の表を利用することができる根拠とする文献は,いずれも原告が執筆者又は起案者となっているものであり,客観的なものとは言い難い。
□さらに,モル分極率の計算に当たっては,陰イオンの分極率を考ii Si4+ 慮すべきところ,原告の計算(Pm=ΣP m =0.084m+0.0076m+0.054m)では,これを除外していB3+ P5+る。陰イオンは+電極側に,陽イオンは逆方向に変位するものであるから,符号の異なるものが逆方向に変位すれば,分極の計算においては,これを加算することになり,陰イオンの影響を加味しても,分極率はより低下するとの原告の主張は,技術常識に反する。
cBPSG膜は,モル分極率との関係では,SiO の一部がB O や2 23P O に置き換わったものと考えることができるから,加重平均で計 25算することは十分に合理的である。シャノン論文でも,モル分極率は加重平均で求められることを前提に,個々の原子のモル分極率が最適化され,物性値として抽出されており,また,原告が発明者である特許出願明細書(甲48)でも,加重平均でモル分極率を求めている。
なお,原告は,アルコキシド基の影響を考慮すべきであると主張するが,半導体装置における層間絶縁膜においては,アルコシキド基の影響は,無視できる程度である。
したがって,BPSG膜のモル分極率を求めるのに,加重平均をすることは,合理的である。
(ウ)BPSG膜を第2の絶縁膜に含めることについてBPSG膜を第2の絶縁膜に含める場合には,534-1特許の有効41性を維持することは困難であるので,これを含ませるように解釈することはできない。
すなわち,534号特許の出願日より前である昭和62年12月7日に公開された特開昭62-281350公報(乙24)の第2図及び昭和62年9月9日に公開された特開昭62-204545公報(乙25)の第3図には,多層構造の配線を有する半導体装置において,各配線層間に介在する絶縁膜が,酸化膜からなる第1の絶縁層とBPSG層とを含むようにしたことを特徴とする半導体装置が開示されており,534-1発明の第2の絶縁膜にBPSG膜が含まれるとすれば,534-1発明は,これらの公報記載の発明と一致する。
ウDRAMについて(ア)甲28図面について甲28図面に基づく1M-DRAMは,被告において,試作はされたが,販売はされていない。すなわち,甲28図面は,1M-DRAM(NMOS)に関する資料であるところ,被告においては,1M-DRAM(NMOS)と1M-DRAM(CMOS)の2種類の開発を行ったが,1M-DRAM(CMOS)のみを製造することとし,1M-DRAM(NMOS)は,商品化されることはなかった(乙26,31)。
原告は,甲28図面は例示にすぎないと主張するが,それ以外には,被告が,どの製品に534号発明を実施しているか,具体的に主張していない。
(イ)水酸基濃度について原告は,甲28図面のプラズマSiO 膜が「水酸基(OH基)濃度が2800ppm以下である第2の絶縁層」に該当すると主張する。
aこれについて,原告は,水酸基濃度が800ppmを超えると,層間絶縁膜としての使用に耐えなくなると主張するが,原告がその根拠42とする甲58論文には,そのような記載はなく,800ppmという数値の技術的意義にも触れられていない。
b仮に,甲28図面のプラズマSiO 膜が534-2特許の第2の絶2縁膜に当たるとすると,534号特許の出願日前である昭和63年4月16日に公開された特開昭63-86548公報(乙27)の第1図□及び昭和60年3月26日に公開された特開昭60-53051公報(乙28)の第2図□には,多層構造の配線を有する半導体装置において,各配線層間に介在する層間絶縁膜が,酸化膜からなる絶縁層とプラズマSiO 膜とを含むようにしたことを特徴とする半導体装2置が開示されており,534-2発明と一致するから,その有効性を維持することは困難である。
したがって,プラズマSiO 膜が「水酸基(OH基)濃度が8002ppm以下である第2の絶縁層」に該当すると解釈することはできない。
c534-2発明は,「水酸基(OH基)濃度が800ppm以下である第2の絶縁層」を要件とする。しかしながら,現実の半導体製品において,複数の配線層に挟まれた厚さ数μmの極めて薄い層間絶縁膜の水酸基濃度を測定することは困難であり,被告も,その測定方法を見つけていない。
したがって,このような立証可能性の低い要件を含む534-2特許の価値は,ゼロである。
原告が水酸基濃度の測定ができることの根拠として挙げる文献も,現実の半導体製品についての特定の絶縁膜の水酸基濃度を測定したものはない。
すなわち,均質な硝子の塊について水酸基(OH基)の定量ができるかどうかと,現実の製品について特定の絶縁膜の水酸基(OH基)43濃度を測定することができるかどうかとは,異なる次元の問題である。
現実の半導体装置においては,複数の配線層が積層されており,これらの配線層に挟まれて,厚さ数μmの極めて薄い層間絶縁膜が存在するにすぎず,これのみを取り出して,かつ,空気中の水蒸気の影響なくして,赤外線吸収スペクトル測定をすることは,極めて困難である。
エ原告は,会議開催通知(甲26の1ないし9)をもって,534号発明の実施の根拠とするが,これは,534号発明とは無関係である。これらの会議では,ホウ素(B)の濃度振りが検討されているが,モル分極率や水酸基濃度は,ホウ素の濃度振りとは無関係であり,当該通知のどこにも「モル分極率」や「水酸基(OH基)濃度」に関する記載は,存在しない。
また,原告が出席していたからといって,原告の発明に関する技術移転会議になるわけではなく,大半の会議に出席している者は,ほかにも複数いる。
オ原告は,534号発明が特許となっていることや,原告の論文等がクレームを受けたことはないこと等を主張するが,それらのことと被告が534号発明を実施していることとは,次元を異にする。
(12)288号発明被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,288号発明を実施していない。288号特許の特許公報に記載された実施例についても,同様である。
そして,被告が実施していることが審査請求の前提となるわけではないことは,前記(10)エのとおりである。
また,288号特許は,2層のパッシべーション膜の応力の大小が要件となっているから,これを充足しない限り,実施しているとはいえないのであって,多層構造の半導体デバイスの大部分がこの特許に抵触することが,288号特許の請求項の記載から一目瞭然であるとはいえない。
44(13)844号発明ア被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,844号発明を実施していない。
イ原告は,被告による実施の根拠として甲109カタログの記載を挙げるが,当該カタログは,東芝硝子のものであるし,また,被告は,当該カタログに記載されたガラスを「個別素子」の「保護膜」として用いたことはない。
また,甲131ないし133の論文には,いずれも,その成分のガラスが被告製品に使用されてきたことは,何ら記載されていない。
さらに,原告の論文が被告の社内審査を通ったことや,特許査定を受けたことは,被告による844号発明の実施とは無関係である。
(14)300号発明ア被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,300号発明を実施していない。
イ300号特許には,「ターゲット材の潜傷を除去した後」,「層間絶縁膜をスパッター法で形成」するという要件があり,被告は,その双方を満たす製造方法を用いていない。
原告が実施の根拠とする甲98は,「電極形成」に「スパッタ装置」が用いられることが記載されているにすぎず,「層間絶縁膜」を「スパッタ装置」で形成するとは記載されていない。また,甲109カタログは,東芝硝子のカタログであり,被告が,これに記載されたガラスを「個別半導体」の製造に利用したことはない。
ウ被告は,300号特許の請求項2について,水酸基の濃度の測定が可能である旨主張するが,300号特許では,水酸基の濃度は問題になっていないから,そもそも,そのことを議論すること自体,失当である。
(15)724号発明45被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,724号発明を実施していない。
724号特許は,ターゲットガラスのイオン含有量の数値限定,研磨加工,エッチング処理等の各種工程が限定されているが,これらの点は,原告が指摘する甲55や甲116には記載されていない。そもそも,なぜ,724号特許の出願日より前に発行されたこれらの文献で説明されている事項が,被告による724号発明の実施の根拠になるのか,不明である。
そして,724号特許は,300号特許に包含されるという原告の主張による限り,被告が300号発明を実施していない以上,724号発明も実施していない。
(16)805号発明被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,805号発明を実施していない。
原告は,実用化されている方法として甲110の論文を挙げる。しかしながら,この論文には,805号特許の特許請求の範囲に記載されいてる「バイアススパッターガラス膜」についての記載はない。そもそも,甲110の論文は,プラズマCVDの説明にすぎない。
(17)127号発明ア被告は,原告が主張する期間において,原告が主張する製品には,127号発明を実施していない。
127号特許は,メトキシル基,エトキシル基,プロポキシル基のうち少なくとも2種以上の官能基を1ppmから0.5%含有したアルコシキドガラス層を含むことが要件とされているところ,被告は,このような発明を,原告が主張する製品に,実施していない。
イ原告が被告による実施の根拠として挙げる文献のうち,甲29の文献には,アルコキシドガラスを広汎に使用しているとは記載されておらず,46「減圧TEOS系を16MDRAMから採用」と記載されているだけであって,127号特許の要件に関する要素は開示されていないに等しい。また,甲12及び甲43は,いずれも原告の憶測に基づくメモにすぎない。
2争点(2)(被告が原告に対して支払うべき相当の対価の額)について(原告の主張)(1)計算方法についてア本件各発明を実施した者が被告の場合には,実施した期間における実施品の売上高最小推定額に超過収益率を乗じた額を被告が受けた利益とする。
そして,超過収益率は,本件各発明の重要性にかんがみ,20%を下回ることはない。
イ本件各発明を実施した者が被告以外の者である場合には,本件各特許の実施許諾料が被告の利益となるが,これは前記アと同様の計算方法による額(実施した期間における実施品の売上高最小推定額に超過収益率を乗じた額)と同程度と推定する。
ウ原告の貢献度は,本件各発明の技術的貢献度に照らして,被告の利益額の10%を下回ることはない。ただし,534号特許は,売上高が極端に大きいので,5%とする。
(2)999号発明ア東芝ライテックが,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも,昭和62(1987)年)までの間,999号発明を実施して,産業用大型放電灯を製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計27万5000円の対価の支払を受けた。
47ウアの額からイの支払額を控除した残額1053万5000円(注:原告が主張する額。ただし,正確には,1052万5000円である。)のうち,100万円を請求する。
(3)321号発明ア東芝ライテックが,昭和54(1979)年から平成元(1989)年までの間,321号発明を実施して,ハロゲンランプを製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも2000万円(=1億円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,200万円(=2000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計16万円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額184万円のうち,100万円を請求する。
(4)359号発明ア東芝ライテックが,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも,昭和62(1987)年)までの間,359号発明を実施して,産業用大型放電灯を製品化して販売したことにより被告が得た実施料は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計5万4000円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額1074万6000円のうち,100万円を請求する。
(5)387号発明ア被告が,昭和53(1978)年から平成8(1996)年(少なくとも,昭和62(1987)年)までの間,387号発明を実施して,産業48用大型放電灯を製品化して販売したことにより同発明から得た利益及び東芝ライテックにこれを実施させたことにより得た実施料は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計18万円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額1062万円のうち,100万円を請求する。
□103号発明アトプコン及び旭テクノグラスが,103号発明を実施して,眼鏡レンズ(実施期間は,昭和53(1978)年から昭和63(1988)年まで。
商品名「TAF-LUX」及び「TAF-BROWN」。)及び時計用ガラス(実施期間は,昭和53(1978)年から昭和58(1983)年まで)を製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも6000万円(=3億円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,600万円(=6000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計5万円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額595万円のうち,100万円を請求する。
□469号発明アトプコンが,昭和55(1980)年から昭和63(1988)年までの間,469号発明を実施して,眼鏡レンズを製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも7000万円(=3億5000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,700万円(=7000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計4万円の対価の支払を受けた。
49ウアの額からイの支払額を控除した残額696万円のうち,100万円を請求する。
□849号発明アトプコンが,昭和54(1979)年から昭和63(1988)年までの間,849号発明を実施して,眼鏡レンズを製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも7000万円(=3億5000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,700万円(=7000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計4万5000円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額695万5000円のうち,100万円を請求する。
□762号発明アトプコン及び旭テクノグラスが,昭和56(1981)年から平成2(1990)年までの間,762号発明を実施して,眼鏡レンズ及び時計用ガラスを製品化して販売したことにより,被告が得た実施料は,少なくとも5400万円(=2億7000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,540万円(=540万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計4万5000円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額535万5000円のうち,100万円を請求する。
(10)247号発明ア被告が,昭和57(1982)年から平成14(2002)年までの間,247号発明を実施して,産業用大型放電灯を製品化して販売したことによる売上高は,少なくとも5500万円であり,247号発明により被告50が得た利益は,少なくとも1100万円(=5500万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,110万円(=1100万円×0.2)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計10万円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額100万円を請求する。
(11)286号発明ア被告が,昭和59(1984)年から平成16(2004)年までの間,286号発明を実施して,電子デバイス全般を製品化して販売したことによる売上高は,少なくとも3億5000万円であり,286号発明により被告が得た利益は,少なくとも7000万円(=3億5000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,700万円(=7000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計10万円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額690万円のうち,100万円を請求する。
(12)534号発明ア被告が,昭和63(1988)年から平成15(2003)年までの間,534号発明を実施して,D-RAM,S-RAM,EP-ROM,フラッシュメモリー,バイポーラその他のすべての半導体を製品化して販売したことによる売上高は,少なくとも500億円であり,534号発明により被告が得た利益は,少なくとも100億円(=500億円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,5億円(=100億円×0.05)を下らない。
イ原告は,被告から,実績賞として,合計8万9995円の対価の支払を受けた。
ウアの額からイの支払額を控除した残額4億9991万0005円のうち,519000万円を請求する。
(13)288号発明ア被告が,昭和59(1984)年から平成16(2004)年までの間,288号発明を実施して,D-RAM等を製造・販売したことによる売上高は,少なくとも5億4000万円であり,288号発明により被告が得た利益は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,540万円を請求する。
(14)844号発明ア被告が,昭和57(1982)年から平成14(2002)年までの間,844号発明を実施して,各種個別素子を自ら製造したことにより同発明から得た利益及び東芝コンポーネンツにこれを実施させたことにより得た実施料は,少なくとも6000万円(=3億円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,600万円(=6000万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,300万円を請求する。
(15)300号発明ア被告が,昭和63(1988)年から平成7(1995)年までの間,300号発明を実施して,高速バイポーラ等を製造したことによる売上高は,少なくとも5億4000万円であり,300号発明により被告が得た利益は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)で52あるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,540万円を請求する。
(16)724号発明ア被告が,平成元(1989)年から平成8(1996)年までの間,724号発明を実施して,高速バイポーラ等を製造したことによる売上高は,少なくとも5億4000万円であり,724号発明により被告が得た利益は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,540万円を請求する。
(17)805号発明ア被告が,平成2(1990)年から平成20(2008)年までの間,805号発明を実施して,電子デバイスを製造したことによる売上高は,少なくとも5億4000万円であり,805号発明により被告が得た利益は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,540万円を請求する。
(18)127号発明53ア被告が,平成4(1992)年から平成20(2008)年までの間,127号発明を実施して,D-RAM等を製造したことによる売上高は,少なくとも5億4000万円であり,127号発明により被告が得た利益は,少なくとも1億0800万円(=5億4000万円×0.2)であるから,原告が受けるべき対価相当額は,1080万円(=1億0800万円×0.1)を下らない。
イ原告は,被告から,提案賞として3000円,登録賞5000円の支払を受けた。
ウ原告は,アの額うち,540万円を請求する。
(19)以上のとおり,原告は,被告に対し,999号発明,321発明,359発明,387号発明,103号発明,469号発明,849号発明,762号発明,247号発明,286号発明及び534号発明の対価相当額の内金1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,288号発明,844号発明,300号発明,724号発明,805発明及び127号発明の対価相当額の内金3000万円及び訴えの変更申立書の送達の日の翌日である平成21年2月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)(1)総論被告が特許を受ける権利承継したことによって受けるべき利益は,特許権の取得により有する通常実施権を超えて発明を実施する権利を独占することによって得られる利益であるところ,被告は,本件各発明によって独占的利益を取得していない。
したがって,原告は,被告に対し,本件各特許権に係る職務発明対価を請求する権利を有しない。
54(2)999号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,原告に対し,昭和57(1982)年度から昭和62(1987)年度まで,999号特許の実績補償として,合計12万円を支払った。
(3)321号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,原告に対し,昭和59(1984)年度及び昭和60(1985)年度に,321号特許の実績補償として,合計5万円を支払った。
(4)359号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,原告に対し,昭和59(1984)年度から昭和62(1987)年度まで,359号特許の実績補償として,合計1万8000円を支払った。
(5)387号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,原告に対し,昭和60(1985)年度から昭和62(1987)年度まで,387号特許の実績補償として,合計7万円を支払った。
□103号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,原告に対し,昭和63(1988)年度に,103号特許の実績補償として,1万円を支払った。
□469号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告が,原告に対して,469号特許の実績補償を支払った記録はない。
□849号発明ア対価相当額は,争う。
55イ被告が,原告に対して,849号特許の実績補償を支払った記録はない。
□762号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告が,原告に対して,762号特許の実績補償を支払った記録はない。
(10)247号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告が,原告に対して,247号特許の実績補償を支払った記録はない。
(11)286号発明ア対価相当額は,争う。
イ被告は,平成5(1993)年度から平成8(1996)年度まで及び平成14(2002)年度から平成16(2004)年度まで(平成15年10月に3年分をまとめて支払った。),286号特許の実績補償として,合計7万円を支払ったが,被告は,286号発明を実施していないから,本来支払うべきものではなかった。
(12)534号発明ア対価相当額は,争う。被告は,534号発明を実施しておらず,仮に,BPSGを第2の絶縁膜とすることをもって534-1発明を実施しているとすれば,前記1(被告の主張)(11)のとおり,534-1特許は有効性を維持できないから,「被告が受けるべき利益」は,ゼロである。
イ被告は,平成8(1996)年度から平成16(2004)年度まで,534号特許の実績補償として合計9万円(平成8(1996)年度ないし平成13(2001)年度分については平成16年10月にまとめて6万円,平成14(2002)年度ないし平成16(2004)年度分については平成15年10月にまとめて3万円)を支払ったが,被告は,534号発明を実施していないから,本来支払うべきものではなかった。
ウ被告が,286号特許及び534号特許につき,実績補償を支払った経56緯被告は,平成14年9月,原告から特許の実績補償について,問い合わせがあったことから,同年10月18日,12月26日,平成15年2月26日に,原告と面談を行った。この際,被告は,286号発明及び534号発明が実施されていない旨を主張したが,原告が実施を認めるよう強く迫った。そこで,被告セミコンダクター社知的財産部グループ長であったBは,事を荒立てることは好ましくないと考え,D級評価を提案し,過去に遡って実績補償をすることとして,平成15年10月,平成14年度ないし同16年度の3年度分として,534号発明及び286号発明につき各3万円,合計6万円を一括で支払をした(甲9)。さらに,534号発明については,平成8年度分ないし同13年度分に遡って,D級の評価に基づき実績補償を行うこととしたが,手続が遅れたため,翌年の実績補償金の支払時期である平成16年10月に,合計6万円を支払った(甲10)。
しかしながら,自社や他社を相手方とする職務発明対価請求訴訟を契機に,被告は,実施していない特許発明について実績補償をするリスクに敏感となり,534号発明について,平成17年度分以降の支払を停止することとした。
(13)288号発明以下について原告の主張(13)ないし(18)は,すべて否認し,争う。被告は,原告が原告の主張(13)ないし(18)において主張する各期間において,原告が主張する各製品に,原告が主張する各発明を実施していないから,支払うべき「相当の対価」はゼロである。
3争点(3)(対価請求権についての消滅時効の成否)について(被告の主張)(1)消滅時効の起算点57ア対価請求権の消滅時効の起算点は,勤務規則等に相当の対価の支払時期に関する条項がある場合は,その支払時期となる(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁)。そして,就業規則等において,相当対価の分割払として,一定の期間ごとに特許発明の実績に応じた額を支払う旨の定めがある場合には,分割された各期間における特許発明実施に対する分ごとに,当該支払時期から消滅時効が進行する。
原告が被告に在職する間は消滅時効は進行しないとの原告の主張は,理由がない。
イ被告の従業員発明考案取扱規程(乙13の1ないし9。以下「被告取扱規程」という。)及び実績補償細則(乙14の1ないし6。以下「被告補償細則」という。)によれば,各年度(4月1日から3月31日まで)ごとに実績補償を支払うものとされている。
そして,被告における実績補償の支払時期は,昭和57年度から昭和61年度までは翌年9月の給与支払日,昭和62年度から平成8年度までは翌年10月の給与支払日とされている(乙15,16)。その具体的な支払日は,別紙「消滅時効の起算日及び満了日」の「支払日(時効期間起算日)」欄記載のとおりであり,これらの支払日が,消滅時効の起算日となるから,時効完成日は,別紙「消滅時効の起算日及び満了日」の「時効期間満了日」欄記載のとおりとなる。
また,平成9(1997)年度以降も10月分のいずれかの給与支払日(注:4級以下の評価の発明については給与と一緒に支払っていたため。
乙15)までに支払を完了しており,これらの支払日が,消滅時効の起算日となる。
したがって,?999号特許,359号特許及び387号特許については,被告が東芝ライテックに当該特許権又はその持分を譲渡する(平成元58年2月1日)までの間の対価請求権,並びに?321号特許,103号特許,469号特許,849号特許及び762号特許については,原告が主張する期間に対応した対価請求権は,すべて10年間の時効期間が満了している。
そして,247号特許については,原告が実施を主張する期間中,平成8年度(平成9年3月31日)以前についての対価請求権は,時効期間が満了し,平成9年度以降については,平成9年1月7日に特許権が放棄されたから,対価請求権は生じない。
また,286号特許及び534号特許は,原告が実施を主張する期間中,平成9(1997)年4月1日以降の分を除く期間については,時効期間が満了している。
(2)被告は,消滅時効援用する。
(3)原告の消滅時効援用権利濫用の主張について原告は,被告による消滅時効援用権利濫用であると主張する。
しかしながら,被告取扱規程(乙13の1ないし9)及び被告補償細則(乙14の1ないし6)は,従業員に周知させることになっており,補償金の支払根拠について知りたいと思えば,各部門の知的財産部に問い合わせて,その内容を知ることができた。
また,補償金の支払に当たっては,補償金明細書を発明者に交付しており,これには,対象となった権利,金額,補償金の種類について記載されていた。
さらに,補償金の決定に当たっては,発明者本人が実績調査をした上で,社内実績・権利放棄調査書を作成し,これを資料としており,原告本人も,これを自ら作成して,担当者に提出している(乙33)。
したがって,原告が,被告が補償金についてどのような決定をしているかについての情報を一切与えられていないということはない。
よって,被告による消滅時効援用権利の濫用とする原告の主張は,理59由がない。
(4)原告の時効の中断の主張について原告が,999号特許,321号特許,359号特許,387号特許,103号特許,469号特許,849号特許,762号特許,286号特許及び534号特許について,2007(平成19)年6月26日に調停の申立てをしたことは認めるが,247号特許については,否認する。
当該調停の申立てにより時効中断の効力が生ずるのは,286号特許及び534号特許の平成8年度分の対価請求権のみであり,他の年度分の対価請求権についての消滅時効には,影響がない。
(原告の主張)(1)消滅時効の起算点について被告取扱規程及び被告補償細則に,被告の主張する内容の記載があることは認める。
しかしながら,原告は,補償金に関する被告の社内規定を知らず,評価の方法・基準,実施の有無,実施による被告の利益の内容・調査方法等について一切知り得ない状況にあり,また,対価の有無を,いつ,誰が,どのようにして算定するのかを知り得ない状況にあることから,「権利の上に眠る者」とは評価されない。したがって,補償金額が確定し,確定した事実を従業員に告知されるまでは,対価請求権の消滅時効は進行しないというべきであり,名称いかんにかかわらず,何らかの支払がされている場合には,それに関する最後の支払がされるまで,相当の対価の全額について,消滅時効は進行しないというべきである。
また,対価の一部又は全部の支払がされていない場合でも,将来において被告が発明の実施により超過収益を得る蓋然性が存在する間は,消滅時効は進行しないというべきである。
さらに,原告が,被告に在職している間は,被告に原告の生殺与奪の権が60あり,被告に対し,訴訟を提起することはできなかったのであるから,どんなに早くとも,原告が被告に在職する間は,消滅時効は進行しない。
以上のことからすれば,消滅時効の起算点は,早くても,原告が被告を退職した日の翌日である平成11(1998)年6月1日となる。
(2)被告による消滅時効援用権利濫用仮に,消滅時効が進行するとしても,被告による消滅時効援用は,(1)で述べたような事実に照らして,権利濫用である。
(3)時効の中断原告は,999号特許,321号特許,359号特許,387号特許,103号特許,469号特許,849号特許,762号特許,247号特許,286号特許及び534号特許に係る対価請求権については,平成19(2007)年6月26日に調停の申立てをしており,平成20(2008)年3月12日に不調となった後に本件訴訟を提起しているから,当該調停の申立てにより,時効が中断している。
第4争点に対する判断1争点(3)(対価請求権についての消滅時効の成否)について事案の性質にかんがみ,まず,本訴請求に係る対価請求権の消滅時効の成否について検討する。
(1)消滅時効の起算点ア(ア)職務発明について,勤務規則等により特許を受ける権利等を使用者等に承継させたことにより従業者等が取得する相当の対価の支払を受ける権利(旧特許法35条3項参照。以下「対価請求権」という。)につき,勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,対価請求権の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。そうすると,勤務規則等に,使用者等が従業者等に対し61て支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が対価請求権の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。
そして,勤務規則等において,相当の対価につき,特許権の存続期間中,一定の期間ごとに特許発明実施の実績や当該特許発明につき締結したライセンス契約により受領した実施料に応じた額(以下「実績補償金」という。)を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合には,相当の対価のうち,各期間における特許発明実施・受領した実施料に対応する分については,それぞれ当該期間の実績補償金の支払時期が到来するまでその支払を求めることができないのであるから,各期間の実績補償金の支払時期が,対価請求権のうち,当該期間における特許発明実施ライセンス料の受領に対応する分の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。
(イ)これに対し,原告は,消滅時効の起算点は,早くとも,原告が被告を退職した日の翌日である平成11(1998)年6月1日であるとし,そのように解すべき根拠として,まず,補償金額が確定し,確定した事実が従業員に告知されるまでは,その内容を知り得ないから,それまでは消滅時効は進行しないと主張する。
しかしながら,勤務規則等において,特許権の存続期間中,一定の期間ごとに実績補償金を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合には,会社が当該勤務規則等に基づき支払う当該期間における実績補償金の有無は,当該勤務規則等に定められた支払時期に支払がされ,又はされないことによって明らかになり,かつ,被告においては,実績補償金の支払の際に補償金明細書を発明者に送付し(乙32),原告もこれを受領していたこと(甲91)から,遅くとも,各年度ごとの62実績補償金の支払時期においては,勤務規則等に基づく実績補償金の支払の有無及びその額が確定し,かつ,そのことを従業員が知り得たと認められる。したがって,原告の主張は,その前提を欠くことになり,失当である。
また,原告は,将来における特許発明実施により超過収益を得る蓋然性が存在する間は,消滅時効は進行しないと主張する。
しかしながら,特許権の存続期間中,一定の期間ごとに実績補償金を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合には,将来における特許発明実施による超過収入の額は,過去における特許発明実施等の実績に応じて具体的に算定することが可能であり,かつ,既に支払時期が到来した過去の一定期間における実績補償金に何ら影響しないことは明らかであるから,原告の主張は,失当である。
さらに,原告は,原告が被告に在職している間は,被告に生殺与奪の権があるから,訴訟提起することはできず,消滅時効も進行しないと主張する。
しかしながら,消滅時効の起算点である「権利を行使することができる時」(民法166条1項)とは,権利を行使するにつき法律上の障害がなくなった時をいうと解されるところ,原告が主張する事由は,主観的又は事実上の障害にすぎず,従業者等が在職中その使用者等に対して訴訟を提起することにつき,法律上の障害があるということはできないから,原告の主張は,失当である。
このほか,原告は,消滅時効の起算点に関して,主張を変遷させるとともに,縷々主張するが,いずれも独自の見解であって,当裁判所が採用するところではない。
よって,消滅時効の起算点に関する原告の主張は,いずれも採用することができない。
63イ(ア)本件についてみると,証拠(乙13ないし19(いずれも,枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,被告においては,被告取扱規程及び被告補償細則において,実績補償金の支払及び支払時期につき,次のとおり,規定していたと認められる。
?被告は,従業員から発明等を承継したときは,被告取扱規程又は別に定める基準により,譲渡補償(出願時等に行う補償),実績補償(特許権等について,社内で実施したときに行う補償)及びライセンス補償(第三者に実施を許諾し,実施料収入を得たとき等に行う補償)を行うこと。
?譲渡補償は,出願時及び登録時(又は出願時若しくは登録時)に行うこと。
?実績補償及びライセンス補償は,登録後各年度(4月1日から翌年3月31日まで。以下同じ。)ごと(クロスライセンス契約に対し行う補償については,●(省略)●に行うこと。
?実績補償の支払は,遅くとも,実績調査対象年度の翌年9月末までに行うことが望ましいこと(平成10年以降は,原則として実績調査対象年度の翌年10月末までに行うことと改正されている。)。
(イ)そして,証拠(乙15,16の1ないし15,19)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,前記のような被告取扱規程及び被告補償細則の定めに基づき,昭和57年度から同61年度まではそれぞれ翌年度の9月の給与支払日,昭和62年度から平成8年度まではそれぞれ翌年度の10月の給与支払日に実績補償を支払っていたこと,具体的には,別紙「消滅時効の起算日及び満了日」の「支払対象年度」欄記載の各年度につき,それぞれ「支払日(時効期間起算日)」欄記載の日に,各年度の実績補償を支払っていたことが認められる。
なお,昭和56年度分以前及び平成9年度以降の実績補償についての64具体的な支払日については,証拠上明らかではない。しかしながら,昭和56年度分以前については,証拠(乙14の1)によれば,前記(ア)の「実績補償の支払は,遅くとも翌年の9月末までに行うことが望ましい」旨の被告補償細則の定めは,昭和50年4月1日から施行されたものであることに照らして,昭和56年度分以前の実績補償も,翌年度の9月の給与支払日(遅くとも,9月末日であると推認することができる。)に支払っていたものと推認される。また,平成9年度分以降の実績補償についても,証拠(乙18)によれば,実績補償の支払は「原則として実績調査対象年度の翌年10月末までに行う」旨被告補償細則に定めれていることに照らして,遅くとも,各年度につき,それぞれ翌年度の10月末日までに実績補償を支払っていたものと推認される。
そして,ライセンス補償の支払についても,証拠(乙16の1ないし15,18)によれば,実績補償と同様の規程に基づき,同様の運用がされていたものと推認される。
(ウ)以上のような,被告取扱規程及び被告補償細則の規定等に加えて,被告における長期間にわたる運用も考慮すれば,被告においては,実績補償金につき,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項が定められており,その支払時期は,昭和61年度分まではそれぞれ翌年度の9月の給与支払日,昭和62年度分から平成8年度分まではそれぞれ翌年度の10月の給与支払日,平成9年度分以降については翌年度の10月末日であると認めるのが相当である。
したがって,本件における実績補償金の消滅時効の起算点は,昭和56年度以前の分については翌年度の9月末日,昭和57年度から平成8年度までの分については,別紙「消滅時効の起算日及び満了日」の「支払対象年度」欄記載の各年度分につき,それぞれ「支払日(時効期間起算日)」欄記載の日,平成9年度以降については翌年度の10月末日で65ある(いずれも,初日は不参入。)と認められる。
□本件各特許に係る対価請求権についての消滅時効の完成の有無について(時効の中断を含む。)ア前記第2,1(4)のとおり,原告は,平成19年6月26日,被告に対し,999号特許,321号特許,359号特許,387号特許,103号特許,469号特許,849号特許,762号特許,286号特許及び534号特許に係る特許を受ける権利承継したことの対価の支払を求めて,東京簡易裁判所に調停の申立てをしたが,同20年3月12日,不成立となり,その1か月以内である同月25日,本件訴えを提起していることから,当該調停の申立ては,時効中断事由となり得る(民法151条)。
そこで,以下,当該調停の申立てにより,消滅時効の中断の効力が生じるかについて,本件各特許に係る対価請求権についての消滅時効の完成時期と併せて,検討する。
イ999号特許,359号特許及び387号特許について被告は,平成元年2月1日に,東芝ライテックに対し,999号特許権,359号特許権の持分及び387号特許権を譲渡している(前記第2,1(3)ア,ウ及びエ参照)。したがって,被告において,これらの特許に係る発明を実施し,又はこれらの特許発明実施を第三者に許諾してライセンス料を受領したことに基づいて,原告に対し実績補償金を支払う可能性があったのは,当該譲渡時までであると認められることから,原告が被告から受領する可能性があったこれらの各特許に係る実績補償金の最終の支払日は,前記(1)イのとおり,被告において実施する可能性があった最終の年度である昭和63年度分の実績補償金の支払日である平成元年10月25日と認められる。
したがって,これらの各特許に係る対価請求権は,平成11年10月25日の経過により,消滅時効が完成したと認められる。
66そして,原告による調停の申立ては,平成19年6月26日であって,消滅時効完成後であることから,これによって,前記消滅時効の完成が妨げられることはないと認められる。
ウ321号特許,103号特許,469号特許,849号特許及び762号特許について原告は,321号発明については平成元年まで,103号発明,469号発明及び849号発明については昭和63年まで,762号特許については平成2年まで,それぞれ各特許発明実施を主張しているところ,前記(1)イのとおり,それぞれその実施を主張する最終年度における実施に係る実績補償金の支払日は,321号特許については平成2年10月25日,103号特許,469号特許及び849号特許については平成元年10月25日,762号特許については平成3年10月25日と認められる。
したがって,原告がこれらの各特許発明実施を主張する期間についての実績補償金は,それぞれ,平成12年10月25日,平成11年10月25日及び平成13年10月25日の経過により,そのすべてにつき消滅時効が完成したと認められる。
そして,原告による調停の申立ては,平成19年6月26日であって,消滅時効完成後であることから,これによって,前記消滅時効の完成が妨げられることはないと認められる。
エ247号特許について被告は,247号特許について,平成9年1月7日に特許権を放棄している(前記第2,1(3)ケ参照)から,放棄するまでの実施に係る実績補償金の最終の支払日は,前記□イのとおり,平成8年度分の実績補償金の支払日である平成9年10月24日であると認められる(なお,特許権の放棄後に関しては,原則として,当該特許権の実施に基づく職務発明対価請求を認める余地はないものと解される。)。
67したがって,247号特許に係る実績補償金は,平成19年10月24日の経過により,消滅時効が完成したと認められる。
そして,原告は,247号特許に係る実績補償金については,調停の対象とはしていないことから,当該調停の申立てにより,247号特許に係る実績補償金の消滅時効が中断されたと認めることはできない。
オ286号特許及び534号特許について(ア)286号特許及び534号特許に係る実績補償金のうち,平成7年度(平成7年4月1日から平成8年3月31日まで)分の実績補償金の支払日は,前記(1)イのとおり,平成8年10月25日である。したがって,平成18年10月25日の経過により,消滅時効が完成したと認められるから,平成7年度以前の実績補償金については,すべて消滅時効が完成したと認められる。
そして,原告による調停の申立ては,平成19年6月26日であって,消滅時効完成後であることから,これによって,前記消滅時効の完成が妨げられることはないと認められる。
(イ)他方で,286号特許及び534号特許に係る実績補償金のうち,平成8年度(平成8年4月1日から平成9年3月31日まで)分の実績補償金の支払日は,前記(1)イのとおり,平成9年10月24日と認められるところ,原告は,286号特許及び534号特許に係る実績補償金につき,平成8年度分の実績補償金の消滅時効が完成する平成19年10月24日より前である平成19年6月26日に調停の申立てを行い,同20年3月12日に不成立になった後,その1か月以内である同月25日に本件訴えを提起していることから,当該調停の申立てにより,消滅時効の中断の効力が生じている(民法151条)と認められる。
また,平成9年度分以降の実績補償金についても,平成8年度分と同様に,消滅時効の中断の効力が生じていると認められる。
68したがって,286号特許及び534号特許に係る実績補償金のうち,平成8年度以降の実施に係る分については,いまだ消滅時効が完成していないと認められる。
カなお,被告は,288号特許,844号特許,300号特許,724号特許,805号特許及び127号特許に係る対価請求権について,消滅時効の主張をしていないので,これらの対価請求権の消滅時効の成否は,本件の争点ではなく,その判断を要しない。
(3)消滅時効援用及び当該援用権利濫用についてア被告は,平成20年7月2日の本件口頭弁論期日において,消滅時効援用をした(顕著な事実)。
イ原告は,被告による消滅時効援用は,権利濫用であると主張する。
しかしながら,原告の権利濫用の主張は,消滅時効の起算点に関する主張と同一の内容にすぎないところ,消滅時効の起算点に関する原告の主張を採用することができないものであることは,前記(1)のとおりであるから,これと同一の内容を権利濫用の主張として構成したところで,前記(1)と同様の理由により,これを採用し得るところではない。
そして,本件各証拠に照らしても,他に,被告による消滅時効援用権利濫用であると認めるに足る事情があるとは,認められない。
よって,前記原告の主張は,採用することができない。
(4)小括以上のとおり,999号特許,321号特許,359号特許,387号特許,103号特許,469号特許,849号特許,762号特許及び247号特許に係る実績補償金並びに286号特許及び534号特許に係る実績補償金請求権のうち平成7年度(平成7年4月1日から平成8年3月31日まで)分以前のものについては,いずれも消滅時効により消滅したものと認められる。
69したがって,2以下においては,286号特許及び534号特許に係る実績補償金のうち平成8年度分(平成8年4月1日)以降のもの並びに288号特許,844号特許,300号特許,724号特許,805号特許及び127号特許に係る対価請求権の有無について,検討する。
2争点(1)(本件各発明の実施)中,286号発明の実施について(1)構成要件の分説286号発明は,前記第2,1(3)コの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
AZnO,SiO ,B O を必須成分とするガラスの熱膨張系数が40×22310/cから50×10/cの範囲にあるガラス粉末を,-7 -7B電解質液体の中に懸濁させると共にC前記電解質液体中にモル分極率が1から2.5の前記ガラス成分と異なるイオンを分散させてD電気泳動によつて半導体デバイスの表面に前記ガラスを付着させた後,E前記ガラスの流動点以上の温度で流動化及び固化し,徐冷したFことを特徴とする半導体デバイスの製造方法
□甲39文献についてア原告は,甲39文献において,286号発明の被告製品への実施例が示されているとして,その記載をもって,被告が286号発明を実施していると主張するので,以下検討する。
(ア)原告は,甲39文献の図7のガラス被覆Si整流器のうち,ガラスが通常の薄い膜である場合に,286号発明が実施されていると主張する。
しかしながら,図7のガラス被覆Si整流器の製造方法につき,甲39文献は,「これは図7に示したような整流素子をガラスで被覆したものでパッシべーションの一種というべきものである。但し,この場合ガ70ラスの厚さが数?と非常に厚い。したがって通常のCVD法によって,パッシべーションを形成するのではなく,ガラス微粉末を水でスラリー状にしたものを用いる。これを遠心回転法により,素子に塗付し,乾燥後700℃位で加熱固化させて被覆する。」と記載されているのみであって,前記の286号発明に係る記載はない。
なお,原告自身,原告本人尋問において,当該図7のガラス被覆Si整流器は,「電着法」(電気泳動法)によって製造されたものではないことを認めている(原告本人尋問調書25頁)。
したがって,前記原告の主張は,採用することができない。
(イ)a原告は,甲39文献の図8のトライアックペレットにつき,286号発明が実施されており,そのガラスの組成及び物性は,甲39文献の表1及び表2に示されており,そのうち,ガラスNo.(1)及び□は,286号発明に含まれると主張するところ,甲39文献には,トライアックペレット及びガラスの組成について,次の記載がある(甲39)。
□「4.2トライアックペレット(中略)ガラスの膜付けはガラスの微粉末を溶媒中へ懸濁させて,電気泳動法でSi表面へガラス粉末を付着させ,加熱してパッシべーションとする。(中略)これらのガラスは日本電気硝子,イノテック社などから販売されている。」□「4.4低温封止用ガラス前述したようなパッケージ封止用ガラス,個別素子,整流素子用には低温封止用の各種半導体用ガラスが必要である。東芝において,最近発表された二,三のガラスについてその組成とガラスの特性について述べる。表1に低温封止用ガラスの代表的なものを示した。(中略)またこれらの低温封止用ガラスの諸特性を表2に示した。」71□表1及び表2によれば,ガラスNo.(1)の組成は,ZnO58wt%,P O 5wt%,B O 24wt%,PbO3wt%,SiO25 2310wt%であり,α/℃は45×10である。また,ガラスN 2o.□の組成は,ZnO15wt%,ZnF 1wt%,Al O 3w 2 23t%,B O 55wt%,PbO10wt%,SiO 16wt%で 23 2あり,α/℃は50×10である。
b以上の甲39文献の記載に照らして,甲39文献には,前記の286号発明の構成要件B,D及びEについては,開示されていると認められる。
しかしながら,甲39文献には,構成要件Cの「前記電解質液体中にモル分極率が1から2.5の前記ガラス成分と異なるイオンを分散させて」いるかどうかについては,何らの記載もない。
また,?甲39文献の表1及び表2に記載された低温封止用ガラスが,トライアックペレットに利用されているかどうかは,甲39文献の記載からは明らかではないこと,?トライアックペレットに利用されているガラスは「日本電気硝子,イノテック社などから販売されている」と記載されているのに対し,表1及び表2に記載された低温封止用ガラスは,必ずしも明確ではないものの,「東芝において,最近発表されたガラス」であると理解することができ,仮にそうであるとすると,トライアックペレットに利用されているガラスと表1及び表2に記載されたガラスが同一であるとはいえないことからすれば,表1及び表2に記載されたガラスが,甲39文献に記載されたトライアックペレットに利用されていたと認めることはできない。
したがって,甲39文献のトライアックペレットに関する記載には,286号発明の構成要件A及びCに関する開示がされているとは認められないことから,この記載をもって,被告が286号発明を実施し72ていたと認めることはできない。
cこれに対し,原告は,甲39文献は,記述の全体やデータ,図面から,286号発明を用いた製品が含まれていると理解されれば足り,また,甲39文献の図8が,286号特許の明細書の第1図に該当することをもって,甲39文献には,286号発明を実施した製品が示されていると主張する。
しかしながら,前記bのとおり,甲39文献のトライアックペレットに関する記載には,286号発明の構成要件A及びCに関する開示がされていない以上,これをもって286号発明を用いた製品が含まれていると理解することはできない。また,286号発明は,特許請求の範囲の記載に照らし,物の製造方法の特許であることは明らかであるから,単にトライアックペレットの構造を示した甲39文献の図8と286号特許の明細書の第1図が同一又は類似するとしても,そのことをもって,甲39文献記載のトライアックペレットが,286号発明を実施して(286号発明の製造方法によって)製造されたものであるといえないことは,明らかである。
d他に,甲39文献中に,被告が,286号発明を実施していることをうかがわせる記載があるとは,認められない。
イまた,原告は,甲39文献の公表を被告が承認していることをもって,286号発明の実施があったことの根拠であると主張する。
証拠(甲39,乙34)及び弁論の全趣旨によれば,被告においては,技術論文等を従業員が社外に発表する場合には,事前に承認を得なければならないところ,甲39文献が公表された昭和61(1986)年6月ころの時点において被告で適用されていた,論文等の社外発表承認願の審査のチェックポイントは,「●(省略)●」であると認められる。
このように,社外発表の審査に当たって,特許発明実施の有無は,チ73ェックポイントとされていないのであるから,被告の審査により論文を発表することが承認されたからといって,そのことが,当該特許発明実施されていることの根拠になるものではない。
また,被告が当該論文を公表することが●(省略)●であると判断したとしても,●(省略)●と特許発明実施の有無とは無関係であるから,そのことが,被告が当該論文等に記載された特許発明等を実施していることの根拠となるものでもない。
したがって,被告が甲39文献の公表を承認したことをもって,被告が286号発明を実施していると認めることはできない。
ウ他に,甲39文献の記載や同文献の公表をもって,被告が286号発明を実施していると認めるに足る客観的な証拠はないから,これに関する原告の主張は,いずれも採用することができない。
(3)原告が執筆した論文(甲64ないし66)の記載について原告が提出した証拠(甲64ないし66)は,いずれも原告が作成した英語による研究論文であるところ,原告がその「取調べを求める部分」として訳文(民事訴訟規則138条1項)を提出した部分には,286号発明を被告が実施していたことを認めるに足る記載はない。
また,原告は,これらの論文には,286号特許の組成を満たす物が記載されていると主張するが,286号特許は物の製造方法の特許であるから,物の組成が同一であるからとって,それが286号発明を実施していることを示すものといえないことは,明らかである。
さらに,被告が論文の公表を承諾したことが,被告が当該論文に記載された技術(発明)を実施していることの根拠となると認められないことは,前記□イのとおりである。
したがって,原告が執筆した論文(甲64ないし66)を根拠として,被告が286号発明を実施していたとする原告の主張は,採用することができ74ない。
(4)被告が,286号特許の出願につき審査請求をしていることについてア原告は,甲63依頼書の記載等をもって,被告においては,出願した特許の審査請求をするのは,原則として,●(省略)●のものであり,286号発明は,他社実施も共願先もないから,286号発明につき審査請求がされたのは,●(省略)●に該当する以外に考えられないと主張する。
イ確かに,証拠(甲63)によれば,甲63依頼書には,「原則として,1(a)・2(a)・3(a)の各れかに該当する発明が審査請求の対象となります。」と記載されており,1(a)として,自社実施状況につき「●(省略)●」であること,2(a)として,他社実施状況につき「●(省略)●」であること,3(a)として,共願先の希望,●(省略)●ことが,記載されている。
しかしながら,286号特許の出願につき審査請求をするに当たって,甲63依頼書が使用されたと認めるに足る客観的証拠はない。また,甲63依頼書には,「原則として,1(a)・2(a)・3(a)の各れかに該当する発明が審査請求の対象となります。」と記載されているものの,それに続いて,「それ以外で審査請求を希望する発明は具体的理由を記入願います。」と記載されているとおり,審査請求の対象となる発明として,「1(a)・2(a)・3(a)」のいずれかに該当する発明以外の発明を排除するものではないし,被告が甲63依頼書の提出された発明についてのみ審査請求をした(被告が甲63依頼書の提出されていない特許出願について審査請求を全くしていない。)と認めるに足る客観的証拠もないから,甲63依頼書の前記の記載は,被告が審査請求をした発明が自社実施,他社実施等がされていることを裏付ける決定的なものということはできない。
そもそも,一般に,企業が,自社内等で行った発明につき,特許出願をして,当該発明の内容を公開して特許を取得することの理由は,業として75特許発明実施する権利を専有し(特許法68条),自らこれを実施することができることのみならず,他者による実施行為を禁止することができることにもあると解されるから,企業が特許出願をし,かつ,審査請求をした発明が,すべて当該企業において実施中であるか,又は実施が決定されたものであるということはできない。そして,前記のとおり,被告が甲63依頼書の提出された発明についてのみ審査請求をした(被告が甲63依頼書の提出されていない特許出願について審査請求を全くしていない。)と認めるに足る客観的証拠もないことからすると,被告において,自社又は他社において「●(省略)●」である発明のみに限って審査請求をしていたものではないと推認するのが合理的というべきである。
以上のことからすれば,甲63依頼書の記載等をもって,被告が286号発明を実施していたという原告の前記主張は,採用することができない。
(5)被告が,原告に対し,286号特許につき実績補償を支払ったことについてア証拠(甲9,10,乙19,20)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,原告に対し,?286号特許つき,平成5年度ないし平成8年度の実績補償として合計4万円を支払い,平成14年度ないし平成16年度の実績補償として,平成15年10月に一括して3万円を支払っていること,?同月に,534号特許につき,平成14年度ないし平成16年度の実績補償として合計3万円を,翌平成16年10月に平成8年度ないし平成13年度の実績補償として合計6万円を,それぞれ一括して支払っていることが認められる。
イそして,証拠(甲11,12,42,78,乙19,20,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成14年ころ,原告から,被告に対し,原告の発明に係る特許の実施状況について問合せがあり,原告と被告担当者との間で,複数回にわたり,かつ,各回とも長時間にわたって協議がされ76たが,議論が平行線のままであったこと,このような協議がされた過程において,前記アのとおり,平成15年10月及び平成16年10月に,過去分も含めて,一括して実績補償が支払われたことが認められる(被告が,当該議論において,原告が主張する特許発明実施を認めたわけではないことは,原告も認めるところである。)。このような経緯及び支払われた金額等に照らして,「事を荒立てたくない」と考えて,実績補償を支払ったという被告の主張も,あながち不合理ではなく,少なくとも,被告が,議論の対象となった特許発明実施を認めた上で,平成15年10月及び平成16年10月に実績補償を支払ったわけではないことは明らかである。
したがって,平成15年10月に286号特許につき実績補償が支払われていることをもって,被告が,286号発明を実施していたと認めることはできない。
ウ他方で,平成5年度ないし平成8年度においても,286号発明につき実績補償を支払っていることについて,被告は,所管部門の申告どおりに支払うという運用に基づき支払われたものであって,実施を確認した上で支払ったものではないと主張し,被告セミコンダクター社の知的財産部知的財産担当のグループ長であったBの陳述書(乙19)にも,同旨の記載がある。
このような被告の主張及びBの陳述書の記載自体,客観的証拠により裏付けられるものではないが,他方で,他に被告による286号発明の実施を基礎付ける客観的証拠もないことから,被告が,原告に対し,286号発明につき前記の実績補償4万円を支払ったことをもって,被告において,原告が当該発明を実施していたと主張する各製品について,286号発明を実施していたと認めることもできない。
(6)その他ア以上のほか,原告は,原告本人尋問において,被告の工場で286号発77明を実施してトライアックペレットを製造しているのを見た旨供述する(原告本人尋問調書26頁以下)。
しかしながら,原告の供述によっても,原告が見たと供述するトライアックペレットの製造方法が,具体的にどのようなものであり,かつ,当該製造方法が,前記□の286号発明の構成要件をすべて充足するかどうか(特に,前記(1)の構成要件Cを充足するかどうか)は明らかではなく,他に,原告の供述を裏付ける客観的な証拠もないことから,原告の当該供述をもって,被告の工場で,286号発明を実施してトライアックペレットが製造されていたと認めることはできない。
イまた,原告は,原告本人尋問において,甲24に記載されている「個別半導体素子に使われている流動点が700℃のZnO系,PbO系パッシべーション用ガラス(中略)の開発を行い,実用化された。」との記載に基づき,286号発明が実施されたと供述する(原告本人尋問調書46頁)。
しかしながら,仮に,原告が供述するとおり,原告の研究業績が示された甲24に記載された個別半導体素子のパッシべーションが,電気泳動法によって製造されたものであるとしても,当該記載には,当該ガラスの熱膨張係数(構成要件A)や電解質液体中のガラス成分とは異なるイオン(構成要件C)に関する記載はないから,これをもって,286号発明が実施されたと認めることはできない。
□小括他に,被告が286号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないから,被告が,286号発明を実施していたと認めることはできない。
3争点(1)(本件各発明の実施)中,534号発明の実施について(1)構成要件の分説534号発明は,前記第2,1(3)サの特許請求の範囲に記載されたもので78あるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア534-1発明1-A多層構造の配線を有する半導体装置において,1-B各配線層間に介在する層間絶縁膜が1-C酸化膜からなる第1の絶縁層と,1-Dモル分極率が1.0以下である第2の絶縁層を含むようにした1-Eことを特徴とする半導体装置。
イ534-2発明2-A多層構造の配線を有する半導体装置において,2-B各配線層間に介在する層間絶縁膜が2-C酸化膜からなる第1の絶縁層と,2-D水酸基(OH基)濃度が800ppm以下である第2の絶縁層を含むようにした2-Eことを特徴とする半導体装置。
□被告が製造するバイポーラについてア原告は,被告が甲27図面に記載されたバイポーラを製造しており,同図面中のLP-BPSG及び●(省略)●が534-1発明の構成要件1-Dを充足するから,被告が,534-1発明を実施していたと主張する。
しかしながら,被告が甲27図面に記載されたバイポーラを製造したと認めるに足る証拠はなく,原告自身,原告本人尋問において,甲27図面に記載されたバイポーラを製造していたかどうかは分からない旨供述する(原告本人尋問調書30頁)。
したがって,被告が甲27図面に記載されたバイポーラを製造していたと認めることはできないから,当該図面中のLP-BPSG及び●(省略)●が534-1発明の構成要件1-Dを充足するか否かを検討するまでもなく,甲27図面をもって,被告が,534-1発明を実施していた79と認めることはできない。
イなお,原告は,甲27図面は例示にすぎず,同図面に記載された製品が販売されていなかったとしても,534-1発明の実施を否定することにはならないと主張する。
しかしながら,被告が対価請求の対象となる発明を実施していたかどうかは,原告が証明責任を負うべきものであって,原告において,被告が当該発明を実施していたことを証明できなければ,被告による当該発明の実施を理由とする対価請求は認められないから,原告の前記主張は,理由がない。
また,原告は,特許の実施に関する直接的証拠はすべて被告が持っており,被告を退職した原告がこれを取得することは困難であるから,実施について一応の証明がされたならば,被告の側で実施していないことの証明責任を負うと解すべきであると主張する。
しかしながら,原告が,自己の見解の根拠として挙げる,最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁は,原子炉設置許可処分の取消訴訟についての判示であり,職務発明に対する対価の支払を求める本件訴訟とは,事案を異にする。
この点を措いても,被告が,ある特定の発明を実施しているか否かは,本来,原告において主張・立証すべきものであり,物の発明にあっては,被告が製造・販売する製品を分析・調査することにより,また,方法の発明にあっては,被告が当該方法を用いていると推認される合理的な根拠を示した上で,被告に対し,被告が利用する方法の開示を求めること等により,特許の実施に関する証拠を取得することは可能であることから,原告が既に被告を退職しており,被告が所持する特許の実施に関する資料等を取得することが困難であるとしても,そのことは,原告の証明責任を転換すべき理由にはならないと解される。したがって,原告の前記主張は,理由が80ない。
(3)被告が製造するDRAMについてア原告は,甲28図面に基づき,同図面に記載された1M-DRAMが被告において製造されており,当該DRAM中のSiO 膜が第1の絶縁膜,2BPSGガラスの膜が第2の絶縁膜に該当し,BPSGガラスの膜は,534-1発明の構成要件1-Dを充足するとともに,同図面中のプラズマSiO 膜は,534-2発明の構成要件2-Dを充足するとして,被告が2534号発明を実施していたと主張する。
しかしながら,証拠(乙26の1及び2,31)によれば,被告においては,甲28図面に記載された1M-DRAM(NMOS)は,試作されただけで,商品化はされなかったと認められ,原告も,原告本人尋問において,そのことを認めている(原告本人尋問調書32頁以下)。
したがって,被告が甲28図面に記載された1M-DRAMを製造していたと認めることはできないから,当該図面中のBPSGガラスの膜が534-1発明の構成要件1-Dに充足するか否か,また,同図面中のプラズマSiO 膜が534-2発明の構成要件2-Dを充足するか否かを検討2するまでもなく,甲28図面をもって,被告が,534-1発明及び534-2発明を実施していたと認めることはできない。
イなお,原告は,甲28図面についても,これは例示にすぎず,当該図面による製品が販売されていなかったとしても,534-1発明及び534-2発明の実施を否定することにはならないと主張する。
しかしながら,被告が,対価請求の対象となる発明を実施していたかどうかは,原告が証明責任を負うべきものであるから,原告の前記主張に理由がないことは,前記□イと同様である。
(4)甲26に基づく534号発明の実施の主張についてア原告は,甲26に基づき,技術移転会議においてBPSGの濃度振りや81●(省略)●が検討されていることや,原告が,当該会議に,1回を除いて全部出席していることをもって,当該会議において,534号発明の技術移転が議論され,かつ,534号発明が被告製品において実施されていたと主張する。
イ確かに,証拠(甲26の1ないし9,原告本人)によれば,平成元年3月17日から同2年1月19日にかけて,「次世代メルト・シャロージャンクション」又は「次世代メルト・●(省略)●・シャロージャンクション」に関する会議が開催され,BPSGの濃度振り等が議事事項とされており,原告も,これらの会議にすべて出席していたこと,平成4年12月21日に「●(省略)●」が開催され,「●(省略)●」,「●(省略)●」等が議題とされたことが認められる。
しかしながら,他方で,証拠(甲26の1ないし9,原告本人)によれば,「次世代メルト・シャロージャンクション」又は「次世代メルト・●(省略)●・シャロージャンクション」に関する会議において,「BPSGの濃度振り」や「●(省略)●」が議論された際の発表担当者は,原告が所属していた基礎プロセスグループ(甲26の1ないし9では,「KPG」と表示されている。)ではなく,他のグループであったこと,「●(省略)●」には原告は出席していなかったことが認められる。そして,原告が主張するように,これらの会議が534号発明の技術移転会議であったのであれば,発明者である原告が発表を担当せず,しかも,当該会議に原告が出席していないということは,不自然といわざるを得ない。
また,甲26の1ないし9の各議事の記載内容に照らして,これらの会議において,BPSGを利用した層間絶縁膜について議論されたことは推認されるものの,そのような議論が行われたからといって,直ちに,534号発明に関する議論が行われたと認めることはできず,ましてや,このような議論が行われたことをもって,被告が534号発明を実施していた82と認めることもできない。
そして,他に,これらの会議において,534号発明の実施に関する議論がされたと認めるに足る証拠もない。
ウ以上のことからすれば,これらの会議において534号発明の技術移転や実施に関する議論がされたと認めることはできず,したがって,甲26に基づいて286号発明の実施を主張する原告の前記主張は,採用することができない。
(5)甲29について原告は,外部雑誌(甲29)の解説も,被告製品に534号発明が実施されていることを裏付けていると主張する。
甲29は,業界雑誌である「NIKKEIMICRODEVICES」の1991年8月号であり,その表1及び表2には,被告において,16M-DRAMの層間膜として,減圧TEOS-BPSG,プラズマTEOS-SiOを使用しており,また,64M-DRAMの層間膜として,減圧TEOS-BPSG,O +TEOS-SiO系を候補としている旨の記載がある。
3しかしながら,当該雑誌には,被告が,層間膜を「第1の絶縁層」と「第2の絶縁層」の2層の積層構造としていることをうかがわせる記載はない(なお,前記表1及び表2には,被告が,表面保護膜として「プラズマTEOS-SiO/プラズマSiN」を使用しているとの記載があるが,これは「表面保護膜」の記載であって,「層間膜」の記載ではない。)。したがって,仮に,これらの層間膜が,原告が主張するとおり,534-1発明の構成要件1-D又は2-Dを充足するとしても,甲29には,構成要件1-C及び2-Cに関する記載はないことから,甲29の記載をもって,被告が534号発明を実施していたと認めることはできない。
(6)小括他に,被告が534号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠は83ないことから,被告が,534号発明を実施していたと認めることはできない。
4争点(1)(本件各発明の実施)中,288号発明の実施について(1)構成要件の分説288号発明は,前記第2,1(3)シの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア請求項1に係る発明1-A所定の素子領域の形成された基板の表面を覆う第1のガラス層からなる第1のパツシベーシヨン膜と,1-B前記第1のパツシベーシヨン膜上に形成され,コンタクトホールを介して前記素子領域にコンタクトする配線層と,1-C前記配線層の上層に形成され,前記第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜1-Dとを具備したことを特徴とする半導体装置。
イ請求項2に係る発明2-A前記配線層は,その一部にスリツト状の凹部を具備している2-Bことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
ウ請求項3に係る発明3-A前記第1のガラス層はガラス構造の網目修飾イオンの位置にイオンを導入した構造をなすとともに,3-B熱膨張係数が第2のガラス層よりも大きい3-Cことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
エ請求項4に係る発明4-A所定の素子領域の形成された基板上に表面を覆うようにガラス構造の網目修飾イオンの位置にイオンを導入した構造をなす第1のガラス層からなる第1のパツシベーシヨン膜を形成する第1のパツシベーシヨ84ン膜形成工程と,4-B前記第1のパツシベーシヨン膜上に,コンタクトホールを介して前記素子領域にコンタクトする配線層を形成する配線層形成工程と,4-C前記配線層の上層に,前記第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜を形成する第2のパツシベーシヨン膜形成工程と,4-D熱処理により少なくとも前記第1のガラス層を流動化させる流動化工程4-Eとを具備したことを特徴とする半導体装置の製造方法
□原告が主張する被告による実施の根拠についてア原告は,●(省略)●等であることを前提に審査請求がされたと主張するが,この前提を認めるに足る客観的証拠はなく,また,被告が,特許出願につき審査請求をしたことをもって,当該出願に係る特許発明実施していると認められないことは,前記2(4)のとおりである。
イそして,前記□のとおり,288号特許の特許請求の範囲第1項ないし第3項に係る半導体装置は,いずれも,第1のガラス層からなるパッシべーション膜(構成要件1-A,3-A及びC)と,「第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜」(構成要件1-C,2-B及び3-C)とを具備したことを要件とし,また,同第4項に係る半導体装置の製造方法は,「所定の素子領域の形成された基板上に表面を覆うようにガラス構造の網目修飾イオンの位置にイオンを導入した構造をなす第1のガラス層からなる第1のパツシベーシヨン膜を形成する第1のパツシベーシヨン膜形成工程」(構成要件4-A)と「第1のガラス層よりも発生応力の大なる第2のガラス層からなる第2のパツシベーシヨン膜を形成する第2のパツシベーシヨン膜形成工程」(構成要件4-C)があることを要件とする。
85しかしながら,原告が指摘する各文献(甲39,79,110)においては,被告が,これらの構成要件を満たす半導体を製造し,又は,半導体の製造方法を行っていると認めるに足る記載はない。
なお,原告が指摘する文献のうち,甲39文献中の原告が指摘する部分の記載(原告は,甲39の70頁の右段落に,288号発明の請求項と同じ内容に関する説明があるとする。)は,フォトマスクガラスに関する記載であり,288号発明が対象とする半導体装置及びその製造方法に関する記載ではないから,これをもって,被告が288号発明を実施しているということはできない。
(3)小括そして,他に,被告が,288号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないことから,被告が,288号発明を実施していたと認めることはできない。
5争点(1)(本件各発明の実施)中,844号発明の実施について(1)構成要件の分説844号発明は,前記第2,1(3)スの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ASi,B,Geから選ばれる少なくとも1種以上のイオンと4+3+ 4+BBi,Ti,Mg,Zn,Pbから選ばれる少なくとも1種5+ 4+ 2+ 2+ 2+以上のイオンを含有し,C且つモル分極率P =ΣP m (P は前記イオンのモル分極率,m はこm iii iのイオンのモル%)が0.007から1.00の範囲内にあるDことを特徴とする非晶質又は結晶質の低分極性薄膜。
□原告が主張する被告による実施の根拠について原告は,被告又は東芝コンポーネンツが844号発明を実施している根拠として,甲39文献,甲109カタログ及び甲131ないし甲133の論文86の各記載を挙げるので,これらの記載をもって,被告又は東芝コンポーネンツが844号発明を実施していたといえるか否か,以下検討する。
ア甲39文献について甲39文献には,「東芝において,最近発表された二,三のガラスについてその組成とガラスの特性について述べる。表1に低温封止用ガラスの代表的なものを示した。」と記載されており(甲39),表1記載のガラスが含有するイオンは,前記□の構成要件A及びBを充足するものと認められる(モル分極率に関する構成要件Cについての検討は,ここでは措いておく。)。
しかしながら,この甲39文献の記載から,甲39文献の表1に記載されたガラスは,「低温封止用ガラスの代表的なもの」であることは明らかであるものの,それが,「東芝において最近発表された二,三のガラス」に関するものか否かは,必ずしも明らかではない。また,仮に,甲39文献の表1に記載されたガラスが「東芝において,最近発表された二,三のガラス」に関するものであるとしても,甲39文献の記載自体は,「東芝が最近発表したガラス」に関する記載であって,被告又は東芝コンポーネンツが当該ガラスを使用していると記載するものではなく,ましてや,被告又は東芝コンポーネンツが,ダイオードやトライアックペレット等の個別素子において,当該ガラスを使用していると記載するものでもない。
したがって,甲39文献の記載をもって,被告又は東芝コンポーネンツが844号発明を実施していたと認めることはできない。
イ甲109カタログについて甲109カタログは,東芝硝子のものであって,前記□の構成要件A及びB(構成要件Cについては,ひとまず措いておく。)を充足するガラスを同社が販売していたこと(甲109中の「東芝ソルダーガラスの特性」と題する表参照),ソルダーガラスの応用例として,これをターゲットガ87ラスとして用いたスパッタリング法により薄膜を形成することが記載されていると認められる(甲109)。
しかしながら,甲109カタログは,被告又は東芝コンポーネンツのものではないことから,被告又は東芝コンポーネンツがこれに記載されたガラスを販売していたことを示すものではない。また,甲109カタログに,被告又は東芝コンポーネンツが,当該カタログに記載されたソルダーガラスを使用していたことを示す記載は認められない。
さらに,甲109カタログの記載に照らしても,甲109カタログ中に記載されたスパッタリング法による薄膜形成のために,同カタログの「東芝ソルダーガラスの特性」中に特性が示されたソルダーガラスのいずれが用いられるのか,また,仮に,被告又は東芝コンポーネンツが東芝硝子が販売するソルダーガラスを使用しているとしても,そのいずれを使用しているのかは,明らかではない。
したがって,甲109カタログの記載をもって,被告又は東芝コンポーネンツが844号発明を実施していたと認めることはできない。
ウ甲131ないし133の論文について甲131ないし133の論文は,いずれも原告が作成した英語の研究論文であるところ,原告がその「取調べを求める部分」として訳文(民事訴訟規則138条1項)を提出した部分には,被告又は東芝コンポーネンツが,844号特許の請求項の範囲に含まれるガラスを使用していることをうかがわせる記載はない。
したがって,これらの論文をもって,被告又は東芝コンポーネンツが,844号発明を実施していたと認めることはできない。
エこのほか,原告は,原告本人尋問において,甲24に記載されている「個別半導体素子に使われている流動点が700℃のZnO系,PbO系パッシべーション用ガラス(中略)の開発を行い,実用化された。」との88記載に基づき,844号発明が実施されたと供述する(原告本人尋問調書46頁)。
しかしながら,甲24の記載からは,これに記載されたガラスが,「Si,B,Geから選ばれる少なくとも1種以上のイオン」(構成要4+3+ 4+件A)を含むか否かは明らかではなく,また,ガラスの組成も明らかではないので,そのモル分極率(構成要件C)も明らかではないから,これをもって,被告又は東芝コンポーネンツが844号発明を実施していると認めることはできない。
(3)小括他に,被告又は東芝コンポーネンツが,844号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないから,被告又は東芝コンポーネンツが,844号発明を実施していたと認めることはできない。
6争点(1)(本件各発明の実施)中,300号発明の実施について(1)構成要件の分説300号発明は,前記第2,1(3)セの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア請求項1に係る発明1-Aターゲット材の潜傷を除去した後,1-Bこれをターゲット材として用い,半導体装置の層間絶縁膜をスパッター法で形成した後,1-Cその上部に配線を形成した1-Dことを特徴とする半導体装置の製造方法
イ請求項2に係る発明2-A配線を,絶縁膜の点欠陥又は不純物が500ppm以下とした層間絶縁膜上に形成した2-Bことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法
89□原告が主張する被告による実施の根拠について原告は,被告が300号発明を実施している根拠として,甲98及び甲109カタログの各記載を挙げるので,これらの記載をもって,被告が300号発明を実施していたといえるか否か,以下検討する。
ア甲98について被告作成の「東芝半導体」のカタログ(甲98)には,被告における半導体の製造工程,製造装置・材料,製造事業部・関係会社が記載されており,「電極形成」の工程において「スパッタ装置」が用いられていることが記載されている。
しかしながら,スパッタ法は,300号発明において,層間絶縁膜の形成のために用いられている(構成要件1-B,2-B)ところ,甲98の「電極形成」の中に,層間絶縁膜の形成が含まれると認めるに足る証拠はなく,他に,甲98には,「層間絶縁膜」の形成に関する記載はない。また,甲98には,前記(1)の構成要件1-A(ターゲット材の潜傷の除去)及び同2-A(絶縁膜の点欠陥や不純物)に関する記載もない。
したがって,甲98の記載をもって,被告が,300号発明を実施していると認めることはできない。なお,原告自身,原告本人尋問において,甲98に記載された「電極形成」には,ガラスが使われておらず,また,甲98には,ターゲットガラスを使ってスパッタ法で電極形成していることは記載されていないことを認めている(原告本人尋問調書42頁以下)。
イ甲109カタログについて(ア)前記5□イのとおり,甲109カタログは,東芝硝子のものであって,ソルダーガラスの応用例として,これをターゲットガラスとして用いたスパッタリング法により薄膜を形成することが記載されている。
そして,甲109カタログには,「薄膜形成は図のようなスパッタリング法で行われ」ること,これが「薄膜絶縁層の形成にはきわめて有90効」であること,「高密度LSIの多層配線などにおける絶縁被膜の形成(平坦化)に適してい」ること,「これに使われるガラスは,アルカリ含有量を20ppm以下に押えた高純度ガラスで」あること及び「スパッタリングによる薄膜形成」の図が記載されていることが認められる(甲109)。
しかしながら,甲109カタログには,ターゲット材の潜傷の除去(構成要件1-A)に関する記載はない。
また,甲109カタログは,被告のものではないことから,被告がこれに記載されたスパッタリング法を使用していたことを示すものではない。なお,原告は,ガラスの製造者が被告でないことが,当該ガラスを被告が使用していない根拠にはならないと主張するが,被告が使用していない根拠には直ちになり得ないのと同様に,被告が使用している根拠にも直ちにはなり得ないのであり,前記3□イで述べたとおり,被告が300号発明を実施していることの証明責任は,原告が負うべきものであるから,原告の前記主張は,失当である。
(イ)したがって,甲109カタログをもって,被告が,300号特許の請求項1に係る発明を実施していると認めることはできない。
そして,300号特許の請求項2は,請求項1を引用していることから,被告が,300号特許の請求項1を実施しているとは認められない以上,請求項2を実施しているとは認められない。
(3)小括他に,被告が300号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないから,被告が,300号発明を実施していたと認めることはできない。
7争点(1)(本件各発明の実施)中,724号発明の実施について(1)構成要件の分説724号発明は,前記第2,1(3)ソの特許請求の範囲に記載されたもので91あるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア請求項1に係る発明1-A所望の素子が形成された半導体基板上に第1層配線を形成し,この上に層間絶縁膜を形成して第2層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法において,1-B前記層間絶縁膜を形成する工程は,アルカリイオン含有量が5ppm以下,1-Cかつ遷移金属イオン含有量が1ppm以下であるターゲットガラスを,1-D研磨加工した後にその表面をエッチング処理して用いて,1-Eスパッタ法によりガラス絶縁膜を形成する工程を有する1-Fことを特徴とする半導体装置の製造方法
イ請求項2に係る発明2-A所望の素子が形成された半導体基板上に第1層配線を形成し,この上に積層構造の層間絶縁膜を形成して第2層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法において,2-B前記積層構造の層間絶縁膜の少なくとも一方を形成する工程は,アルカリイオン含有量が5ppm以下,2-Cかつ遷移金属イオン含有量が1ppm以下であるターゲットガラスを,2-D研磨加工した後にその表面をエッチング処理して用いて,2-Eスパッタ法によりガラス絶縁膜を形成する2-Fことを特徴とする半導体装置の製造方法
ウ請求項3に係る発明3-Aターゲットガラスは常磁性欠陥濃度が1ppm以下である3-Bことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法
92□原告が主張する被告による実施の根拠についてア300号発明に包含されているという原告の主張について(ア)原告は,724号発明は,300号発明に包含されると主張するところ,300号特許の請求項1と724号特許の請求項1ないし3を比較すれば,原告が主張するとおり,724号発明は,ターゲットガラスを研磨加工した後にその表面をエッチング処理して用いて,スパッタ法により層間絶縁膜を形成する工程において,それぞれ,ターゲットガラスにつき,アルカリイオン含有量及び遷移金属イオン含有量又は常磁性欠陥濃度を限定したものと認められる。
したがって,前記6のとおり,被告が300号発明を実施しているとは認められない以上,724号発明を実施しているとも認めることはできない。
(イ)そして,原告が,被告が300号発明を実施している根拠として挙げた甲98及び甲109カタログのいずれにも,ターゲットガラスを「研磨加工した後にその表面をエッチング処理」すること(構成要件1-D,2-D,3-B)は,記載されていない。
また,甲98には,層間絶縁膜の形成にスパッタ法を用いていると記載されていないことは,前記6□アのとおりである。
さらに,甲109カタログに,「これに使われるガラスは,アルカリ含有量を20ppm以下に押えた高純度ガラス」である旨の記載があることは前記6□イのとおりであるが,当該ガラスが「アルカリイオン含有量が5ppm以下,かつ遷移金属イオン含有量が1ppm以下」(構成要件1-B,1-C,2-B,2-C及び3-B)であること及び「常磁性欠陥濃度が1ppm以下であること」(構成要件3-A)の記載はない。加えて,甲109カタログは,被告のものではないことから,被告がこれに記載されたスパッタリング法を使用していたことを示すも93のではないことも,前記6□イのとおりである。
イこのほか,原告は,デバイスとして使用する場合には,724号発明の条件が必要であるとして,その根拠として甲55及び甲116を挙げる。
しかしながら,甲55及び甲116のいずれにも,724号発明の構成要件を満たすことが半導体装置の製造に必須であることを示す記載はなく,ましてや,被告が724号発明を実施していたことを示す記載もない。
(3)小括他に,被告が724号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないから,被告が,724号発明を実施していたと認めることはできない。
8争点(1)(本件各発明の実施)中,805号発明の実施について(1)構成要件の分説805号発明は,前記第2,1(3)タの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア請求項1に係る発明1-A半導体素子が形成された基体と,この基体上に形成された第1層配線と,この第1層配線上に層間絶縁膜を介して形成された第2層配線とを備えた半導体装置において,1-B前記層間絶縁膜はバイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜の積層膜である1-C事を特徴とする半導体装置。
イ請求項2に係る発明2-A前記バイアススパッターガラス膜の膜厚をL と前記プラズマ絶縁s膜の膜厚をL とした場合,L /L の範囲が1/3〜5である p sp2-B事を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。
ウ請求項3に係る発明3-A半導体基体上に第1層配線をパターン形成する工程と,943-B前記半導体基体及び第1層配線上に,バイアススパッターによりバイアススパッターガラス膜及びプラズマ堆積によりプラズマ絶縁膜を作成し,層間絶縁膜を形成する工程と,3-C熱処理を行い前記層間絶縁膜を平坦化する工程と,3-D前記平坦化された層間絶縁膜上に第2層配線を形成する3-E事を特徴とする半導体装置の製造方法
□原告が主張する被告による実施の根拠についてア原告は,バイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜の積層膜の作り方とそのメリットは,甲38にも述べられているが,実用化されている方法としては,甲110の論文に図解入りで記載されていると主張する。
しかしながら,甲38は,724号特許の特許公報であり,その記載をもって,被告が805号発明を実施していると認めることはできない。
また,甲110の論文は,CVD法による絶縁膜の形成に関して説明するものであって,805号特許の各請求項で要件とされている「バイアススパッターガラス膜」(構成要件1-B,2-A及び3-B)の形成方法であるバイアススパッター法(PVD法)に関する記載はなく,また,層間絶縁膜として「バイアススパッターガラス膜とプラズマ絶縁膜の積層膜」を形成することの記載もない(甲110)。
したがって,甲38及び甲110をもって,被告が,805号発明を実施していたと認めることはできない。
イまた,被告は,バイアススパッターガラスの使用について,被告社内で実施されていたことは,甲77の文献にも明記されていると主張する。
しかしながら,甲77の論文は,被告半導体事業部に所属する従業員によって作成されたものであるが,その内容は,「バイアス・スパッタ・クォーツ(BSQ)とP-SiOの積層層間膜を用いた三層配線構造を試作し,デバイスへの適応のポイントである層間膜のリーク特性について報告95する」ものであって,被告が,これを製品に実施したことに関する記載はない。また,甲77の論文には,「半導体素子が形成された基体(中略)を備えた半導体装置」(構成要件1-A)に関する記載もない。
したがって,甲77の論文の記載をもって,被告が,805号発明を実施していたと認めることはできない。
(3)小括他に,被告が805号発明を実施していたと認めるに足る客観的な証拠はないから,被告が,805号発明を実施していたと認めることはできない。
9争点(1)(本件各発明の実施)中,127号発明の実施について(1)構成要件の分説127号発明は,前記第2,1(3)チの特許請求の範囲に記載されたものであるところ,これを構成要件に分説すれば,次のとおりである。
ア請求項1に係る発明1-Aメトキシル基(CH O ),エトキシル基(C H O ),プロポ3 25- -キシル基(C H O )のうち少なくとも2種以上の官能基を1ppm〜 37-0.5%含有したアルコキシドガラス層を含む1-Bことを特徴とする半導体装置。
イ請求項2に係る発明2-A前記アルコキシドガラス層は,式0.1≦C H O /(CH O +C H O +C H O )≦2025 3 25 37- - - -を満たすものである2-Bことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
□原告が主張する被告による実施の根拠についてア原告は,被告がアルコキシドガラスを使用し,127号発明を実施していた根拠として,甲29及び甲60を挙げるので,これらをもって,被告がアルコキシドガラスを使用し,127号発明を実施していたといえるか96否か,以下検討する。
(ア)前記3(5)のとおり,業界雑誌である甲29には,被告において,16M-DRAMの層間膜として,減圧TEOS-BPSG,プラズマTEOS-SiOを使用しており,また,64M-DRAMの層間膜として,減圧TEOS-BPSG,O +TEOS-SiOを候補としている33 25旨の記載はあるが,メトキシル基(CH O ),エトキシル基(C H-O )及びプロポキシル基(C H O )の含有量(構成要件1-A)に- -37関する記載はない。
(イ)また,甲60は,原告が作成した英語による研究論文であるところ,原告がその「取調べを求める部分」として訳文(民事訴訟規則138条1項)を提出した部分には,メトキシル基(CH O ),エトキシル基3-(C H O )及びプロポキシル基(C H O )の含有量(構成要件1 25 37- --A)に関する記載はなく,また,127号発明を被告が実施していたことを認めるに足る記載もない。
(ウ)したがって,甲29及び甲60の記載をもって,被告が127号特許の請求項1に係る発明を実施していたと認めることはできない。そして,同特許の請求項2に係る発明は,請求項1を引用する発明であることから,請求項1に係る発明の実施が認められない以上,同特許の請求項2に係る発明の実施も認めることはできない。
イさらに,127号特許の特許公報の実施例3及び5におけるガラス成分と同じ絶縁膜が,被告製品に利用されていたことの根拠として挙げる甲12及び甲43は,いずれも原告自身の意見を記載する書面であって,これを裏付ける客観的な証拠はない。
(3)小括他に,被告が127号発明を実施していたと認めるに足る客観的証拠はないから,被告が,127号発明を実施していたと認めることはできない。
9710争点(1)(本件各発明の実施)に関するその他の原告の主張についてこのほか,原告は,本件各発明は,いずれも被告の事業部からの依頼によるものであり,事業化を前提として行われたものであると主張し,原告本人尋問においても,これに沿った内容の供述をする(原告本人尋問調書5頁以下)が,これを裏付けるに足る客観的な証拠はない。しかも,仮に,事業化が前提とされていたとしても,このことと研究開発された発明が実際に実施されることとは,別異の事柄である。
また,原告は,被告の事業部が,その費用を負担し,「●(省略)●」の場合に限って,本件各特許の出願につき審査請求をしたものであると主張する。
しかしながら,特許出願につき審査請求をしたものが,「●(省略)●」の場合に限られるものではないと認められることは,前記2(4)のとおりである。
したがって,これらの原告の主張は,いずれも採用することができない。
11争点(1)(本件各発明の実施)についての結論以上のとおり,原告の請求のうち,原告の請求に係る対価請求権のすべてが消滅時効により消滅したと認められる特許発明(前記1)以外の特許発明について,被告がこれを実施し(286号発明,534号発明,288号発明,844号発明,300号発明,724号発明,805号発明及び127号発明),又は東芝コンポーネンツに実施を許諾していた(844号発明)と認めることはできない。
12結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
98裁判長裁判官清水節裁判官坂本三郎裁判官岩崎慎99(別紙)消滅時効の起算日及び満了日支払対象年度(各年4月1日から支払日(時効期間起算日)時効期間満了日翌年3月31日まで)昭和57(1982)年度昭和58(1983)年9月22日平成5(1993)年9月22日昭和58(1983)年度昭和59(1984)年9月25日平成6(1994)年9月25日昭和59(1984)年度昭和60(1985)年9月25日平成7(1995)年9月25日昭和60(1985)年度昭和61(1986)年9月25日平成8(1996)年9月25日昭和61(1986)年度昭和62(1987)年9月25日平成9(1997)年9月25日昭和62(1987)年度昭和63(1988)年10月25日平成10(1998)年10月25日昭和63(1988)年度平成元(1989)年10月25日平成11(1999)年10月25日平成元(1989)年度平成2(1990)年10月25日平成12(2000)年10月25日平成2(1990)年度平成3(1991)年10月25日平成13(2001)年10月25日平成3(1991)年度平成4(1992)年10月23日平成14(2002)年10月23日平成4(1992)年度平成5(1993)年10月25日平成15(2003)年10月25日平成5(1993)年度平成6(1994)年10月25日平成16(2004)年10月25日平成6(1994)年度平成7(1995)年10月25日平成17(2005)年10月25日平成7(1995)年度平成8(1996)年10月25日平成18(2006)年10月25日平成8(1996)年度平成9(1997)年10月24日平成19(2007)年10月24日