関連審決 | 不服2007-29425 |
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関連ワード | 発明特定事項 / 発明の詳細な説明 / 加工 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
22年
(行ケ)
10008号
審決取消請求事件
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原告X 被告特許庁長官 指定代理人横林秀治郎 同 岩田洋一 同 紀本孝 同 小林和男 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2010/04/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は,原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2007-29425号事件について平成21年11月24日にした審決を取り消す。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,平成9年9月25日,発明の名称を「いぐさカラーベットパット」とする発明について,特許出願(平成9年特許願第297640号)をしたが,平成19年8月28日に拒絶査定がされ(乙7),これに対し,平成19年10月4日,不服の審判(不服2007-29425号事件)を請求した(乙8)。 特許庁は,平成21年11月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,平成21年12月15日,原告に送達された。 2 本件出願時の明細書の特許請求の範囲本件出願時の明細書(以下,図面と併せ,「本件当初明細書」という。乙1)の特許請求の範囲(請求項の数1)の請求項1の記載は,次のとおりである。 「【請求項1】 ベットパットとは何か,ベットマットの上に敷きベットマットへの汗の侵入を防ぐ,一晩眠ると約コップ一杯分の汗をかくと言われている,その吸収と発散,それと身体に対して体のした敷きになるものであるから冬は暖かく夏は涼しくである。 現在ベットパットとしての商品は夏に綿,綿混,冬秋にウール,ムートン等,オールシーズンにポリエステル,シルク,輸入もので綿とウールのリバーシブルの物がある。 ここに疑問をもつた,夏,綿はあるがさらに日本の夏は蒸し暑く日本の風土に合った素材は無いのであろうか,涼しく清涼感いつぱいの物,ベットパットはこの部分が欠落している。 その素材は身近に存在した,井草である。日本の夏,伝統のいぐさ日本人ならみんな知っている,新しい研究では二酸化窒素を吸収し浄化するというのは周知の事実となった,では,それで求めるのか,さらに基礎的なものは何か,動物繊維と違い毛足のない天然の植物繊維である井草は身体に対たいして体感温度が低く,熱を保持しにくい性質と特質を持つているように確信できる,そのことは簡単な実験で証明できる,草の茎を口のなかに入れる暫く立つがなかなか暖かくなつた様には見えないし外に出す少しは暖かくなつたように見えるがすぐ冷める,湿度は空気に触れ無くなる。 井草は現在様々な織りがある,有名品で本袋織り,大目織り,掛川織り等,縦糸が330本の高密度の物から糸をポリプロピレンで太くした縦糸60本の織りまでメーカーによって種類も多い,井草は固さ柔らかさの面から考えると一概には言えないが日本産,日本の種子で取れた井草が柔らかさがあると聞及ぶ,ベットパットの目的を考えると柔らかい物を主流に,最近固いものを求める傾向にあり少しと考える。 であるから焦点を現在ベットパットの不足している清涼感と井草の性質に純粋に絞りたい。 では何故今迄に,いぐさ カラーベットパットが存在しなかつたのか,BIG商品かもしれない,一言で表現すれば文化の壁であろうと思える,今迄は基礎にとらわれ説明をしてきた,又求められた,今からが今日の問題である,同じインテリア部門の通路一つ隔てた所に展示されているベツトは,欧米の技術から発生したものと説明され,ベットパットはベットマットの上に必要と説明を受けて知る場合もある,何から何までA,B,C,の世界である。感性もイメージも欧米に飛んでいるのが現状であり,そこに日本の伝統の井草を想像する環境が作られていない,何十年と繰り返されてきた光景である,そして日本は熱い地域をもつ,熱い夏をもつ。井草とて,同じ様な伝統の,日本文化の伝統をかたくなに守つている,これらが原因であると思われる, そして秋がきて忘れてしまう。 どうすれば壁を乗り越えられるか,どちらかのイメージを変えるしかない,そこで自然に発想すれば自然色は残し井草にカラーを付ける,ベットのイメージに合わせる,生活空間を楽しく,明るいイエローを受け入れられる部屋の環境であればそのカラーを,涼しさをイメージして眠るのなら明るい薄いブルー,グレー等に変化させる,ここで初めていぐさ,両面井草(綿又はスモールフエザー等入)妨ダニ,抗菌,防臭加工された,いぐさ カラーベットパツトの誕生である。」3 本件補正後の特許請求の範囲平成19年1月11日付け手続補正書(乙3)による補正(以下「本件補正」という。)がされた後の明細書における特許請求の範囲(請求項の数3)の請求項1ないし3の記載は,次のとおりである。 「【請求項1】いぐさで編んだござ2枚を両面にしござのへりの全縁周部にファースナーを取り付け中に綿をいれ開閉自在にし厚さ7ミリ前後のベットのスプリングマットの上に乗せる,清涼感と汗取りをかねもつた,ベットパットの提案【請求項2】いぐさで編んだござ2枚を両面にしござのへりの全縁周部に,ファスナーを取り付け開閉自在にしたもの。 【請求項3】請求項1に記載した,いぐざのござカラーは,今畑から採りだした,葉付き青首大根のカラー(白),(黄緑),(みどり),とする。又片面をたたみ色をのこす場合もある。」4 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。審決の判断の概要は,以下のとおりである。 (1) 特許請求の範囲の補正について本件補正により請求項1記載の発明特定事項とされた「ござのへりの全縁周部にファースナーを取り付け中に綿をいれ開閉自在にし厚さ7ミリ前後の」との構成は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内のものであるとはいえない。すなわち,本件当初明細書には,いぐさを編むことや,いぐさ製のござについての断片的記載が存在し,さらに両面井草でその中に綿が入れられるとともに,その両サイドにファスナーや,パットメイク用の布が取り付けられるベットパットが記載されていると解することはできるものの,「いぐさで編んだ『ござ』」で「ベットパット」を構成すること,「ござのへりの全縁周部にファースナーを取り付け・・・開閉自在に」すること,及びその「中に綿をいれ・・・厚さ7ミリ前後」とすることは記載されておらず,それらは当初明細書等の記載から自明な事項でもない。 本件補正により請求項2記載の発明特定事項とされた「ござのへりの全縁周部にファースナーを取り付け」との構成についても,本件当初明細書に記載された範囲内のものではない。 本件補正により請求項3記載の発明特定事項とされた「今畑から採りだした,葉付き青首大根のカラー(白)」との構成についても,本件当初明細書に記載された範囲内のものではない。 (2) 発明の詳細な説明の補正について本件補正により発明の詳細な説明に記載された事項(別紙審決写し記載の(a),(b))も,本件当初明細書に記載された範囲内のものではない。 (3)以上のとおり,本件補正は,本件当初明細書の範囲内においてしたものではなく,平成14年法律第24号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない。よって,拒絶査定に対する不服審判の請求は,成り立たない。 |
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当事者の主張
1 取消事由に係る原告の主張審決には,誤りがある。その理由は,別紙「第一準備書面」写し記載のとおりである。 2 被告の反論本件審決に,誤りはなく,原告の主張は理由がない。 |
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当裁判所の判断
1本件出願に係る発明は,本件補正により,特許請求の範囲の請求項1においては「・・・ござのへりの全縁周部にファースナーを取り付け」・・・厚さ7ミリ前後の・・・」と特定され,請求項2においては,「・・・ござのへりの全縁周部に,ファスナーを取り付け・・・」と特定された。これに対して,本件当初明細書の段落【0005】には,「・・・身体に対して両サイドにファスナーを取付,約30?のパツトメイク用の布でメイクする。」と記載されているのみであり,「全縁周部」にファスナーを取り付けることや,厚さを「7ミリ」とすることについては,本件当初明細書には何らの記載もされていない(注裁判所において下線を引いた。)。よって,その余の点について判断するまでもなく,本件補正は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえず,平成14年法律第24号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項に規定する要件に適合しないから,本件出願は,特許法49条1号により拒絶されるべきものであり,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとした審決の結論に誤りはない。他方,原告の取消事由に関する主張は,別紙「第一準備書面」写し記載のとおりであるが,その趣旨は不明であり,審決を違法なものとして取り消すに足りず,主張自体失当である。また,訴状添付の審決に手書きで付記した主張も,同様に主張自体失当である。 その他,原告が本件においてする主張はすべて理由がない。 2 結論以上によれば,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 齊木教朗 |
裁判官 | 大須賀滋 |