関連ワード | 特許を受ける権利 / 承継 / 協議 / 技術情報 / 遡及効 / 遡及 / 名義変更 / 債務不履行 / 契約の解除 / クレーム / 抵触 / 対象製品 / 文言解釈 / 不存在 / 信義則 / 実施 / 交換 / 差止請求(差止) / 逸失利益 / 営業秘密 / 同意 / 実施許諾(実施の許諾) / 移転登録 / 対価 / 変更 / 合理的な理由 / 追認 / |
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事件 |
平成
20年
(ワ)
23879号
所有権確認等請求事件
平成 21年 (ワ) 1192号 特許権移転登録手続等請求事件 |
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東京都品川区《以下省略》 本訴原告・反訴被告住 友重機械工業株式会社 同訴訟代理人弁護士升永英俊 同復代理人弁護士江口雄一郎 同 花本浩一郎 同訴訟代理人弁護士鳥海哲郎 東京都千代田区《以下省略》 本訴被告JFEエンジニアリング株式会社 同訴訟代理人弁護士内藤潤 同 塚本宏達 同 中村慶彦 大阪市《以下省略》 本訴被告日立造船株式会社 同訴訟代理人弁護士伴純之介 神戸市《以下省略》 本訴被告カワサキプラントシステムズ株式会社 同訴訟代理人弁護士茂木鉄平 同 定金史朗 横浜市《以下省略》 本訴被告・反訴原告ス チールプランテック株式会社 同訴訟代理人弁護士原口薫 2 同 齊藤圭太 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2010/03/24 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1本訴のうち,別紙確認請求目録記載の各訴えを却下する。 2本訴原告・反訴被告と本訴被告ら及び本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告に,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,平成22年3月31日まで,別紙契約目録記載の契約に基づく事業をしてはならないとの義務のないことを確認する。 3本訴原告・反訴被告と本訴被告らとの間において,本訴原告・反訴被告に,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,平成22年3月31日までの本訴原告・反訴被告,本訴被告JFEエンジニアリング株式会社,本訴被告日立造船株式会社及び本訴被告・反訴原告以外の第三者がエンジニアリング,製造又は販売した製鉄プラントに関する「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む。)」事業及び「改造」事業,並びに,本訴被告・反訴原告が委託するアフターマーケット事業をしてはならないとの義務のないことを確認する。 4本訴原告・反訴被告のその余の本訴請求を,いずれも棄却する。 5本訴原告・反訴被告は,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(1),同3(1)及び同4(1)記載の各特許権について,平成14年3月29日の譲渡契約による移転登録手続をせよ。 6本訴原告・反訴被告は,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(2),同2,同3(2)及び同4(2)記載の各特許権のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,平成14年3月29日の譲渡契約による移転登録手続をせよ。 7本訴原告・反訴被告は,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録6記載の各特許を受ける権利のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,平成14年3月29日の譲渡契約による移転手続をせよ。 38本訴原告・反訴被告は,本訴原告・反訴被告及び住友重機械テクノフォート株式会社を介して,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,別紙契約目録記載の契約に基づく事業,平成22年3月31日までの本訴原告・反訴被告,本訴被告JFEエンジニアリング株式会社,本訴被告日立造船株式会社及び本訴被告・反訴原告以外の第三者がエンジニアリング,製造又は販売した製鉄プラントに関する「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む。)」事業及び「改造」事業,並びに,本訴被告・反訴原告が委託するアフターマーケット事業を除いて,その余の事業をしてはならない。 9本訴原告・反訴被告は,平成22年4月1日以降,本訴原告・反訴被告及び住友重機械テクノフォート株式会社を介して,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,別紙契約目録記載の契約に基づく事業をしてはならない。 10本訴被告・反訴原告のその余の反訴請求を棄却する。 11訴訟費用は,本訴について生じた分は,これを1000分し,その999を本訴原告・反訴被告の,その余を本訴被告ら及び本訴被告・反訴原告の各負担とし,反訴について生じた分は,これを1000分し,その999を本訴原告・反訴被告の,その余を本訴被告・反訴原告の各負担とする。 12この判決は,8項,9項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求1本訴(1)本訴被告ら及び本訴被告・反訴原告は,本訴原告・反訴被告に対し,各自17億0452万円及びこれに対する,本訴被告JFEエンジニアリング株式会社及び本訴被告・反訴原告については平成20年9月20日から,本4訴被告日立造船株式会社及び同カワサキプラントシステムズ株式会社については,同月23日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2)本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(1),同3(1),同4(1)及び同5(1)記載の各特許権について,移転登録手続をする義務のないことを確認する。 (3)本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(2),同2,同3(2),同4(2)及び同5(2)記載の各特許権のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,移転登録手続をする義務のないことを確認する。 (4)本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録6記載の各特許を受ける権利のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,移転手続に協力する義務のないことを確認する。 (5)本訴被告・反訴原告は,本訴原告・反訴被告に対し,別紙特許目録7記載の各特許権について,本訴被告・反訴原告持分の移転登録手続をせよ。 (6)本訴被告・反訴原告は,本訴原告・反訴被告に対し,別紙資産目録1ないし3記載のデータの複製物を引き渡し,かつ,本訴被告・反訴原告が占有する同データを廃棄せよ。 (7)本訴被告・反訴原告は,本訴原告・反訴被告に対し,別紙資産目録4ないし7記載のパソコン等を引き渡せ。 (8)本訴原告・反訴被告と本訴被告ら及び本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告に,別紙製品目録記載の製品に関する事業をしてはならないとの義務のないことを確認する。 (9)(1),(6)前段及び(7)について仮執行宣言2反訴5(1)主文5項〜7項,9項同旨(2)本訴原告・反訴被告は,本訴原告・反訴被告及び住友重機械テクノフォート株式会社を介して,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,別紙契約目録記載の契約に基づく事業以外の事業をしてはならない。 (3)(2)及び主文9項について仮執行宣言第2事案の概要1本件本訴は,製鉄プラント事業に関する合弁契約及び事業運営契約の契約当事者である本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。)が,合弁契約及び事業運営契約の他の契約当事者である本訴被告JFEエンジニアリング株式会社(以下「被告JFE」という。),同日立造船株式会社(以下「被告日立」という。)及び同カワサキプラントシステムズ株式会社(以下「被告カワサキ」という。),並びに,合弁会社であり,事業運営契約の他の契約当事者である本訴被告・反訴原告スチールプランテック株式会社(以下「被告プランテック」という。)に対し,被告らの債務不履行を理由に各契約を解除したと主張して,損害賠償請求として,連帯して17億0452万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である,被告JFE及び被告プランテックについては平成20年9月20日から,被告日立及び被告カワサキについては同月23日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに(請求1本訴(1)),被告プランテックに対し,原告と同被告間において,原告が同被告に対して特許権の移転登録手続をする義務等のないことの確認(同(2)〜(4)),登録済みの特許権の移転登録手続(同(5)),移転済みの資産の返還及びデータの廃棄等(同(6),(7))をそれぞれ求め,また,被告らに対し,原告と被告ら間において,原告に競業避止義務がないことの確認を求める(同□)事案である。 本件反訴は,被告プランテックが,原告に対し,事業運営契約に基づき,特許権の移転登録手続等を求めるとともに(主文5項〜7項),競業避止義務の6履行等を求める(請求2反訴(2),主文9項)事案である。 2争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠を項目の末尾に記載する。)(1)当事者等ア原告は,一般産業機械,最先端の精密制御機械及びコンポーネントの製造販売等を目的とする株式会社である。 イ被告JFEは,省エネ設備の販売並びに天然ガスの上流処理及び利用等の一貫したエンジニアリングの提供等を目的とする株式会社である。 ウ被告日立は,環境装置,プラント事業及び精密機械業等を目的とする株式会社である。 エ被告カワサキは,各種プラントの設計,製造,据付,修理及び販売等を目的とする株式会社である。 オ被告プランテックは,原告,被告JFE及び被告日立により,製鉄プラント事業に関する合弁会社として,平成13年3月8日付けで設立され,後に,川崎重工業株式会社が新たに参加した,製鉄機械,非鉄金属製造機械,コークス製造機械,セメント製造機械,廃棄物の再資源化装置及びこれらに関連する設備の設計,製造,据付,販売並びに修理等を目的とする株式会社である。 (2)平成13年合弁契約の締結(甲1)原告,被告JFE(ただし,当時の商号は日本鋼管株式会社である。)及び被告日立(以下,3社を併せて「母体3社」という。)は,平成13年2月6日,製鉄プラント事業の統合を目的として,次の内容の「合弁契約」を締結した(以下「平成13年合弁契約」という。)。 ア事業統合のプロセス(2条)(ア)平成13年3月を目処として,新会社を設立し,合弁事業のうち販売部門のみを新会社に統合する。 7(イ)平成15年4月を目処として,原告の製造部門を除いたエンジニアリングを含めた合弁事業にかかわるすべての部門を新会社に統合する。 イ取締役会決議(9条)新会社の取締役会決議事項のうち,別途母体3社協議の上定める重要事項については,新会社は決議に先立ち母体3社と協議の上,その承認を得なければならない。 (3)合弁会社の設立被告プランテックは,平成13年3月8日,平成13年合弁契約に基づく新会社として設立された。 (4)平成13年事業運営契約の締結(甲2)母体3社及び被告プランテックは,平成13年3月30日,平成13年合弁契約の趣旨に基づき,母体3社による業務協力及び被告プランテックの運営に関する基本的事項の取決めとして,次の内容の「製鉄プラント事業新会社の運営に関する契約」を締結した(以下「平成13年運営契約」という。)。 ア合弁事業(1条)(ア)母体3社は,平成13年4月1日において,被告プランテックに対し,合弁事業のうち販売(アフターサービス部門を含む。)にかかわる営業をそれぞれ譲渡する(2項)。 (イ)被告プランテックは,平成13年合弁契約の存在及び趣旨を確認し,その運営に当たり合弁契約の基本精神を遵守する(4項)。 イ協議報告事項(10条)被告プランテックは,その運営に当たり,別添の「協議報告事項」に従い,母体3社に対し,協議報告を行わなければならない。 ウ契約の見直し・協議事項(19条)母体3社及び被告プランテックは,完全譲渡(1条3項に規定する,母8体3社から被告プランテックに対する営業譲渡をいう。)時に本契約の内容について見直しを行い,必要に応じて協議の上所要の改正を行う。 エ別添「協議報告事項」(ア)「事前協議」事項を「○」印で示し,「事前協議」の意味については,「被告プランテックが該当行為を行おうとするときは,事前に母体3社に連絡し,協議すべきことをいう。被告プランテックは,原則として,母体3社の承諾なしには該当行為を行うことはできない。但し,母体3社間において承諾の可否につき意見が分かれたときは,過半数の意見をもって母体3社の承諾とする。」とする(前文)。 (イ)「1.会社基本構造」中の「(1)定款の変更」,「5.株主総会の招集(…議案)」,「6.役員人事」中の「(5)役員編成(序列,担当業務)」,「7.その他の事項」中の「(1)重要な社内規程の制定・変更(取締役会規程…)」等の項目について,「事前協議」事項であることを示す「○」印が記載されている。 (5)母体3社の販売部門の統合母体3社は,平成13年4月1日,製鉄プラント事業の販売部門を被告プランテックに統合した。 (6)平成14年事業運営契約の締結(甲3)母体3社及び被告プランテックは,平成14年3月29日,次の内容の「エンジ統合ならびに製鉄プラント事業運営に関する契約」を締結した(以下「平成14年運営契約」という。)。 アエンジ統合(1条)母体3社は,平成14年4月1日をもって,被告JFEの技術協力ソフト部門及び原告の製造部門を除き,母体3社のエンジニアリングを含めた合弁事業にかかわるすべての営業を被告プランテックに譲渡する。 イ譲渡財産(3条),譲渡対価(4条),事業用資産の譲渡(6条)9母体3社は,被告プランテックに対し,?エンジ統合に当たり,原告については,営業権及び別紙特許目録1ないし7記載の特許権等及びノウハウを譲渡すること(3条),?営業譲渡の対価は無償とすること(4条),?平成15年4月1日をもって,原告は,別紙資産目録記載の事業用資産を譲渡すること(6条)をそれぞれ約した。 ウ協議報告事項(17条)平成13年運営契約10条に定める「協議報告事項」を別添のとおり改訂し,被告プランテックは,統合期日以後はその運営に当たり,これに従って母体3社に対し,協議報告を行わなければならない。 エ平成13年運営契約の失効(21条)平成13年運営契約は,統合期日(平成14年4月1日)をもって失効する。 オ別添「協議報告事項」「1.会社基本構造」中の「(1)定款の変更」,「5.株主総会の招集(日時,場所,議案)」,「6.役員人事」中の「(1)選任・昇格・降格・退任」,「(5)役員編成(序列,担当業務,役員編成表)」,「7.その他の事項」中の「(1)重要な社内規程の制定・変更(取締役会規程…)」等の項目については,「事前協議」事項とされている。 (7)母体3社の完全統合母体3社は,平成14年4月1日,製鉄プラント事業を被告プランテックに完全に統合した。 (8)被告プランテックの取締役会規程(甲16)平成14年4月1日に制定された被告プランテックの取締役会規程には,次のとおりの定めがある。 ア決議事項(7条)(ア)次の事項は,取締役会の決議を経なければならない。 10?法令または定款に定められた事項?株主総会の決議により委任された事項?その他別に定める業務執行に関する重要事項(イ)前各号の決議事項の詳細は別に定めるところによる。 イ別添「取締役会決議,報告事項に関する基準」「取締役会規定7条および8条に基づく取締役会決議および報告事項は,次の通りとする。」とし,「1.会社の基本構造に関する事項」中の「(1)定款の変更」,「5.株主総会に関する事項」,「6.役員人事に関する事項」中の「(5)役員編成(序列,担当業務,役員編成表)」等については,「決議」の欄に「○」印が記載され,取締役会の決議事項であることが示されている。 (9)平成15年合弁契約の締結(甲4,6)母体3社及び川崎重工業株式会社(なお,川崎重工業株式会社は,平成17年4月1日をもってプラント部門が分社,独立して被告カワサキとなり,合弁契約及び運営契約における契約上の地位が移転した。以下「被告カワサキ」といい,母体3社と被告カワサキを併せて「母体4社」という。)は,平成15年3月20日,製鉄プラント事業の統合を目的として,次の内容の合弁契約を締結した(以下「平成15年合弁契約」という。)。 なお,同契約における合弁事業(以下「本件合弁事業」という。)とは,平成13年4月1日時点において,被告JFEの「プラントエンジニアリング本部プラント技術部」,被告日立の「機会事業本部エンジニアリング事業部製鉄機械部」及び原告の「機会事業本部産業期間事業センター」がそれぞれ所掌していた事業(ただし,原告については,熱間鍛造プレス,プラズマ放電焼結設備に関する事業を除く。)並びに平成15年3月20日時点において,被告カワサキの「プラント・環境・鉄構カンパニープラントビジネスセンター産機プラント部製鉄プラントグループ&精錬ガス処理グループ」が11所掌している事業であって,別紙「製鉄プラント合弁事業対象製品」に○印で示す製品(原告については,別紙製品目録記載の製品となる。)に関するものをいう。 ア事業統合のプロセス(2条)(ア)平成15年4月1日付けをもって,被告カワサキの製鉄プラント事業のうち,販売に関する営業を被告プランテックに譲渡する。 (イ)平成16年4月を目処として,被告カワサキのエンジニアリング,サービスその他本件合弁事業に係るすべての営業を被告プランテックに譲渡する。 イ競業避止義務(6条)(ア)母体4社は,直接間接を問わず,他の当事者の事前の書面による承諾なく本件合弁事業に属する事業を一切行わない(1項)。 (イ)前項にかかわらず,平成15年4月1日の販売統合以前において既に母体4社の子会社,関連会社が行っている本件合弁事業に属する事業については,母体4社と被告プランテックにおいて協議の上,個別の取扱いを決定する(2項)。 ウ取締役会決議(7条)被告プランテックの取締役会決議事項のうち,別途母体4社協議の上定める重要事項については,被告プランテックは,決議に先立ち母体4社と協議の上,その承認を得なければならない。 エ取締役及び監査役(9条)(ア)被告プランテックの取締役は9名以内とし,被告プランテックが候補者を推薦したときはそれを尊重した上,原則として母体各社がそれぞれ同員数を指名し,選任する(1項)。 (イ)被告プランテックの代表取締役は,母体4社協議の上,各社がそれぞれ各1名を指名し,選任する(3項)。 12オ契約の解消(17条)(ア)契約当事者は,他の当事者のいずれかが本契約に違反し,催告をするにもかかわらず30日以内にその違反を是正しないときは,合弁関係からの離脱(この場合,違反当事者は,合弁関係から離脱する当事者の保有する被告プランテック株式の買取義務を負担する。),違反当事者の合弁関係からの離脱請求,被告プランテックの解散請求のいずれかの権利を行使することができる(1項)。 (イ)前各項による権利の行使は,違反当事者に対する損害賠償の請求を妨げない(3項)カ協議事項(23条)本契約に基づく本件合弁事業は,母体4社相互の信義誠実に則った協力関係のもとに維持運営されるものであり,本契約に定めのない事項又は疑義の生じた事項については,この基本理念に従って,母体4社協力の上,誠実にこれを処理解決する。 キ平成13年合弁契約の失効(24条)平成13年合弁契約は,平成15年合弁契約の調印日をもって将来に向けて失効する。 (10)平成15年事業運営契約の締結(甲5)母体4社及び被告プランテックは,平成15年3月20日,平成15年合弁契約の趣旨に基づき,母体4社による業務協力及び被告プランテックの運営に関する基本的事項の取決めについて,次の内容の「製鉄プラント事業運営に関する契約」を締結した(以下「平成15年運営契約」という。)。 ア合弁契約の遵守(2条)被告プランテックは,平成15年合弁契約の存在及び趣旨を確認し,本件合弁事業を運営するに当たっては同合弁契約の基本精神を尊重する。 イ協議報告事項(19条)13被告プランテックは,その運営に当たり,別添の「協議報告事項」に従い,母体4社に対し,協議報告を行わなければならない。 ウ合弁契約の尊重(22条)母体4社は,本契約に基づく被告プランテックの運営に関しては,合弁契約の趣旨を尊重する。 エ平成14年運営契約の失効(25条)平成14年運営契約は,平成15年運営契約締結の日をもって将来に向けて失効する。 オ別添「協議報告事項」平成14年運営契約の別添「協議報告事項」と同じ。 (11)実施許諾契約の締結(戊10)被告プランテックと原告の子会社である住友重機械テクノフォート株式会社(以下「STF」という。)は,平成15年7月31日,次のとおり,「商号ならびに技術の実施許諾に関する契約」(以下「本件実施許諾契約」という。)を締結した。 ア名義貸し(1条),技術情報の使用許諾(2条)被告プランテックは,STFに対し,3条に定める範囲の取引において,本契約に定める条件に従い,一定の場合に被告プランテックの商号の使用を許諾し(1条),また,設計図面,技術資料又はサービスマニュアル等の技術情報の提供を行う(2条)。 イ対象取引(3条)商号使用許諾と技術情報の提供の対象となるSTFの行う取引の範囲は,以下に定める内容の取引とする(なお,本件実施許諾契約の3条の取引が,「別紙契約目録記載の契約に基づく事業」に該当する。)?取引の種類アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含14む。),改造?対象製品原告が製造又は販売した製鉄プラント?対象顧客日本国内の顧客を原則とし,海外の顧客に対しては,その都度被告プランテックとSTFが協議の上その対応を定める。 ウ第三者納入プラントへの対応(6条)本契約は,STFが,被告プランテック,被告JFE,原告及び被告日立以外の第三者がエンジニアリング,製造又は販売した製鉄プラントに関する3条?に定める取引を行うことを妨げない。 エ営業情報の開示(9条)STFは,本取引に伴って知り得た顧客からの引き合い及びその進捗に関する情報その他の関連情報を,原則としてすべて被告プランテックに開示する。 オ契約期間(14条)本件実施許諾契約の有効期間は,平成15年4月1日より1年間とする。 ただし,期間満了の3か月前までに,被告プランテック,STFいずれからも書面による変更又は解約の申入れがない場合は,同1条件で更に1年間更新する。 (12)平成16年事業運営契約の締結(甲6)母体4社及び被告プランテックは,平成16年3月26日,被告カワサキから被告プランテックへ本件合弁事業に係るすべての営業の譲渡が同年4月1日をもって行われるのを踏まえて,本件合弁事業の運営に関する事項として,次の内容の「製鉄プラント事業運営に関する契約」を締結した(以下「平成16年運営契約」という。)。 ア合弁契約の遵守・尊重(2条)15被告プランテックは,平成15年合弁契約の存在及び趣旨を確認し,本件合弁事業を運営するに当たっては同合弁契約の基本精神を尊重する。 イ本件合弁事業(3条)本件合弁事業とは,原告については,平成13年4月1日時点において「機械事業本部産業機械事業センター」が所掌していた事業(ただし,熱間鍛造プレス,プラズマ放電焼結設備に関する事業を除く。)であり,製鉄プラント合弁事業対象製品のうち,別紙製品目録記載の製品に関するものをいう。 ウ競業避止義務(5条)母体4社は,直接間接を問わず,他の母体各社及び被告プランテックの書面による事前の承諾なく,本件合弁事業に属する事業を一切行わない(1項本文)。ただし,母体4社及び被告プランテックが書面による合意により特に定めた母体各社の事業(1項3号),平成15年4月1日以前において既に母体各社の子会社,関連会社が行っている本件合弁事業に属する事業で,母体各社と被告プランテックにおいて協議の上個別に取扱いを決定した事業(2項1号)については,上記にかかわらず,事業を行うことができる。 エ被告プランテックの役員の指名・選任(8条)(ア)代表取締役は,母体4社協議の上,母体4社が各自それぞれ1名を指名し,選任する。 (イ)取締役の員数は8名以内とし,被告プランテックが候補者を推薦した場合はそれを尊重した上,原則として母体4社が各自それぞれ2名以内を指名し,選任する。 オアフターマーケット(13条)平成16年4月1日以後の被告プランテックにおける本件合弁事業に係るアフターマーケット事業の位置付けについては,母体4社と被告プラン16テックとの間で協議の上,決定する。ただし,協議が整うまでの間は,被告プランテックが,母体4社の本件合弁事業に属する事業を行っている子会社,関連会社にアフターマーケット事業を委託することを基本として,これを行う。 カ協議報告事項(14条)被告プランテックは,その運営に当たり,別紙2「協議報告事項」に従い,母体4社に対し,協議報告を行わなければならない。 キ平成15年合弁契約等の失効(18条)平成15年合弁契約,平成15年運営契約等は,平成16年運営契約の発効をもって失効する。 ク別紙2「協議報告事項」平成15年運営契約の別添と同じ。 (13)被告カワサキの統合被告カワサキは,平成16年4月1日,製鉄プラント事業を被告プランテックに統合した。 (14)平成19年6月21日取締役会(甲10)被告プランテックは,平成19年6月21日,取締役会を開催し,「役員改選人事の件」(1号議案)及び「執行役員体制導入の件」(2号議案)等について検討した。1号議案及び2号議案については,原告出身の2名の取締役が反対したが,他の5名の取締役が承認し,可決された。 (15)平成19年6月28日取締役会(甲11)被告プランテックは,平成19年6月28日,取締役会を開催し,取締役の職務の件(3号議案),取締役会規程の一部改訂の件(4号議案),執行役員規程の制定の件(5号議案)及び執行役員の任命並びに分担の件(6号議案)について検討した。原告出身の1名の取締役が反対した(他の1名の原告出身の取締役は欠席)が,他の6名の取締役が承認し,可決された。 17(16)合弁契約及び運営契約の解除(甲13,14(枝番を含む。))ア原告は,被告らに対し,被告JFE及び被告プランテックについては平成20年8月13日に,被告日立及び被告カワサキについては同月18日に,それぞれ到達した書面により,被告らは,合弁契約及び運営契約に基づき,被告JFE,被告日立及び被告カワサキにおいては,自らが指名した被告プランテックの取締役をして,また,被告プランテックにおいては,自ら,被告プランテックの取締役会決議に先立ち,「重要事項」について母体4社全社の承認を得るようにさせる義務を負っているにもかかわらず,被告JFE,被告日立及び被告カワサキが指名した被告プランテックの取締役は,平成19年6月21日及び同月28日の同被告の各取締役会において,母体4社の事前承認を得る必要がある議案について,原告の明示の反対の意思表示がありながら,賛成し,これにより,平成15年合弁契約及び平成16年運営契約に違反したとして,上記書面到達後7日以内に違反を是正するよう催告するとともに,同期間内に是正されない場合には,同契約をいずれも解除する旨の意思表示をした。 イ平成20年8月25日が経過した。 ウなお,平成20年3月31日時点において,被告プランテックの帳簿上の純資産価額は,68億6976万6000円であり,原告は,同被告の発行済株式総数3万9900株のうち,9900株を保有していた。 (17)本件訴訟の経緯ア原告は,当裁判所に対し,平成20年8月26日,本件本訴を提起した。 イ被告プランテックは,当裁判所に対し,平成21年1月16日,本件反訴を提起した。 ウ本件訴訟は,平成20年10月20日に第1回口頭弁論期日が実施され,その後も,同年12月5日の第1回弁論準備手続期日以降,平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日まで,弁論準備手続期日が実施され18た。原告は,同年3月25日の第8回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(6)において,「本件本訴・本件反訴について,訴状,原告準備書面(1)〜(6)(各訂正書を含む)及び反訴答弁書により,主張・立証を尽くした」旨を記載し,また,同年5月25日の第10回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(7)においても,「本件訴訟の争点については,原告準備書面(1)から(6)において,主張を尽くしている」旨を記載した。 エ平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日において,原告は,「裁判所の話を踏まえて今後の進行を検討」する旨を述べた。同年6月12日の第11回弁論準備手続期日以降,同年10月21日の第16回弁論準備手続期日まで,和解について検討されたが,同期日において,和解協議は打ち切られた。 オ当事者双方は,平成21年11月13日に実施された第2回口頭弁論期日において,原告の準備書面(7-2),(8)〜(12)及び最終準備書面,被告JFEの第4準備書面,被告日立の準備書面(4),被告プランテックの第5〜第13準備書面及び反訴原告準備書面(3)をそれぞれ陳述したが,その際,当裁判所は,いずれの準備書面も,当事者双方にこれ以上の主張立証がないことを確認した後,和解の可能性を検討する期日において提出されたものである旨を述べた。また,同期日において,甲80〜97号証,戊30〜47号証がそれぞれ提出され,弁論が終結された。 (18)仮処分事件(当裁判所に顕著な事実)ア被告プランテックは,当裁判所に対し,平成20年12月,原告を債務者として,本件訴訟の保全処分としての仮処分の申立てをした(平成20年(ヨ)第22083号)。 イ原告と被告プランテックは,平成21年2月23日,上記仮処分事件において和解し,原告は,同被告に対し,本件訴訟の和解成立日又は本件訴訟の第1審判決の日のいずれか早い日までの間,本件実施許諾契約3条?19に規定された「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む)」業務及び「改造」業務をSTFを通じて行う場合を除き,合弁関連事業を行わないことを約した。 (19)本件実施許諾契約の解約(戊11)被告プランテックは,STFに対し,平成21年1月16日到達の書面により,平成22年3月31日をもって本件実施許諾契約を解約する旨の申入れをした。 3争点(1)被告らによる合弁契約及び事業運営契約の債務不履行の有無(本訴)(1)-1平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反(1)-2平成15年合弁契約9条3項,23条,平成16年運営契約8条違反(2)原告による平成19年6月28日の取締役会の議案の追認の有無(本訴)(3)原告における被告プランテックに移転を約した特許権等の移転登録義務の有無,並びに,被告プランテックに移転済みの特許権の移転登録手続請求,移転済みの資産の返還及びデータの廃棄等請求の可否(本訴,反訴)(4)損害賠償請求(本訴)(5)原告における競業避止義務の有無,及び,競業避止義務の範囲(本訴,反訴)(6)時機に後れた攻撃防御方法却下の申立て4争点に対する当事者の主張(1)被告らによる合弁契約及び事業運営契約の債務不履行の有無(本訴)(1)-1平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反(原告)20ア契約上の債務(ア)平成15年合弁契約7条は,被告プランテックの取締役会決議事項のうち,別途母体4社協議の上定める「重要事項」については,被告プランテックは,決議に先立ち母体4社と協議の上,その承認を得なければならない旨を定めている。 (イ)平成15年合弁契約7条の「重要事項」については,母体4社が別途協議した結果,被告プランテックの「取締役会規程」に定める「取締役会決議事項」のすべてが上記「重要事項」に該当することを合意し,これを,同契約の趣旨に基づき締結された平成15年運営契約19条における別添「協議報告事項」の中の41事項の「事前協議」事項として定めた。 すなわち,平成15年運営契約は,平成15年合弁契約と同日に締結されており,平成15年運営契約が,平成15年合弁契約の「趣旨に基づき」(前文)締結されたことと,同合弁契約の「趣旨を尊重」(22条)する旨を定めていることからすると,母体4社は,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を平成15年運営契約別添「協議報告事項」中の「事前協議」事項として定めたといえる。平成13年合弁契約締結時から長期間にわたり,「重要事項」を1つも定めていないことこそ,あり得ないことである。 (ウ)平成15年運営契約19条における別添「協議報告事項」中の「事前協議」事項は,すべて,同契約と同様に平成15年合弁契約の趣旨に基づき締結された平成16年運営契約14条における別紙2「協議報告事項」中の「事前協議」事項として,そのまま引き継がれた。 (エ)また,取締役会決議事項のうち,少なくとも役員人事については,遅くとも平成19年6月19日までに,合弁当事者が協議の上,「重要事項」として定めた。 21イ被告JFE,被告日立及び被告カワサキの債務被告JFE,被告日立及び被告カワサキは,平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,同契約の別紙2に基づき,平成15年合弁契約7条の「重要事項」である平成16年運営契約別紙2の「事前協議」事項について,平成15年合弁契約9条1項により自らが指名した被告プランテックの取締役をして,同被告の取締役会決議に先立ち,母体4社全社の承認を得るようにさせる義務を負う。 ウ被告プランテックの義務(ア)平成15年合弁契約7条は,直接的には被告プランテックが遵守すべき事項であり,同合弁契約の基本精神を具現化した規定である。 (イ)被告プランテックは,平成15年運営契約22条及び平成16年運営契約2条1項において,合弁契約の趣旨及び基本精神を尊重する義務を負っているところ,当該趣旨及び基本精神には,平成16年運営契約14条における別紙2の「事前協議」事項について,被告プランテックが取締役会決議に先立ち母体4社の承認を得ることが含まれる。 (ウ)したがって,被告プランテックは,平成15年運営契約22条,平成16年運営契約2条1項,14条,別紙2に基づき,同別紙2の「事前協議」事項について,取締役会決議に先立ち,母体4社の承認を得る義務を負う。 エ債務不履行被告らは,上記債務に違反し,次のとおり,被告プランテックにおける平成19年6月21日及び同月28日の各取締役会において,母体4社の事前承認が必要とされる事項について,原告の反対にもかかわらず,可決した。 (ア)被告らは,平成19年6月21日の被告プランテックの取締役会において,株主総会の招集(議案)(平成16年運営契約の別紙2の522項)に関する1号議案,及び,株主総会の招集(議案)・定款の変更(上記別紙2の1項(1))に関する2号議案について,いずれも原告が反対の意思表示をしていたにもかかわらず,被告JFE,被告日立及び被告カワサキにおいて賛成し,被告プランテックも取締役会においてこれを可決した。 (イ)被告らは,平成19年6月28日の被告プランテックの取締役会において,役員人事,役員編成(担当業務)(上記別紙2の6項(5))に関する3号議案(取締役の職務)及び6号議案(執行役員の任命及び分担),並びに,重要な社内規程の制定・変更(上記別紙2の7項(1))に関する4号議案(取締役会規程の一部改訂)及び5号議案(執行役員規程の制定)について,いずれも原告が反対の意思表示をしていたにもかかわらず,被告JFE,被告日立及び被告カワサキにおいて賛成し,被告プランテックも取締役会においてこれを可決した。 オ契約の解釈等(ア)契約書の条項が「有効」又は「法的に無意味」のいずれとも解される場合には,「法的に無意味」と解するよりも「法的に意味のある条項」と解すべきである(大審院大正3年11月20日判決・民録20輯954頁,大審院昭和4年12月26日判決・新聞3081号16頁,最高裁昭和44年4月25日判決・民集23巻4号882頁,名古屋高裁平成13年3月29日判決・判時1767号46頁)。母体4社が締結した平成15年合弁契約書7条が無意味な条項であるとするような被告らの主張は,上記裁判例に沿った契約解釈ではない。 (イ)契約解釈においては,?契約締結の準備段階から締結時及び締結後相当な期間にわたる間に生じたすべての事情,?取引上の習慣,?契約当事者が達成しようとした主要な目的等の諸要素を考慮して,両当事者の共通の意思を「推尋」すべきところ,本件において,平成15年合弁23契約の締結日を基準とすると,平成13年合弁契約締結時(平成13年2月6日)から,平成15年合弁契約締結日の前日(平成15年3月19日)までの間,母体3社は,平成14年運営契約17条,同別添の「協議報告事項」中の「協議事項」及び取締役会決議事項のすべての事項につき,例外なく全会一致で決議しており(甲24〜31),新たに参加した被告カワサキも,この事実を前提に,平成15年合弁契約を締結したものである。したがって,平成15年合弁契約7条の「重要事項」とは,平成15年運営契約19条の別添「協議報告事項」の中の「事前協議」事項(甲5。なお,上記別添の内容は,平成16年運営契約の別紙2に承継されている。)及びそれと対応する被告プランテック取締役会規程の中の取締役会決議事項(甲16)であると解される。 なお,平成14年4月16日から平成19年5月30日までの被告プランテックの取締役会において,議案はすべて出席取締役による全会一致をもって決議されていた(甲24〜67)。これは,被告らが,被告プランテックの取締役会規程の別紙の「取締役会決議事項」について,母体3社又は母体4社(以下「母体各社」という。)の事前承認を要すると解しており,現実にも,すべての被告プランテックの取締役会において,母体各社が指名した取締役のうち最低1名は当該取締役会に出席した上で,出席取締役の全員一致の決議を行うことにより,母体各社の承認を確認し,実践していたことを表している。 (ウ)平成13年合弁契約9条及び平成15年合弁契約7条の「重要事項」は,母体各社間で定められていないとすると,被告プランテックの取締役会での議事が多数決で決定されるため,一方で,少数派は,?意見を被告プランテックの意思決定に反映させることができず,他方で,?それにもかかわらず,出資比率に応じて,株主有限責任を超える規模の保証債務を一方的に負担させられたり(債務保証の極度額は,完全統24合後は,母体1社当たり40億円である。),増資等の被告プランテックの資金調達に応じる義務を負い(平成14年運営契約14条,平成15年合弁契約8条,平成15年運営契約15条,平成16年運営契約11条),かつ,被告プランテックの倒産時の超過債務についても,母体各社の契約上の義務としては明示されていないものの,原則として,出資比率に応じて事実上負担せざるを得ないこととなり(平成15年合弁契約21条),?合弁契約から任意に離脱することもできず,?被告プランテックの事業と競合する従来の事業を再開することもできない。したがって,被告らの上記解釈は,かような不条理な義務を少数派に課するものであり,信義則に反し,違法である。 母体各社は,被告プランテックの経営の重要事項に対して自らの意向を反映するために必要不可欠な「拒否権」(平成13年合弁契約9条,平成15年合弁契約7条),すなわち,たとえ自社以外の3社が承認しても,自社が承認しない限り,被告プランテックが自社の意向に反した合弁事業運営を行わないことを担保する権利を有し,他方で,平成15年合弁契約9条1項(平成13年合弁契約11条と同旨)により自らが指名した被告スチールプランテックの取締役2名に,平成15年合弁契約7条の定めを遵守させる義務を負っている。 また,母体各社は,被告プランテックの業務執行権を有する代表取締役の指名権(平成13年運営契約11条1号,平成16年運営契約8条1号)を有しているからこそ,上記のような義務を負っているものである。 (エ)平成13年運営契約は,母体3社間の「販売のみの先行統合」による統合準備段階での被告プランテックの事業運営に関する合意であるのに対し,平成14年運営契約は,母体3社の販売と製造をも統合するという「製・販の完全統合」の段階での被告プランテックの事業運営に関25する合意であり,両者は,截然と区別される。すなわち,?「販売統合」の時代には,払込資本金は4億円(含資本準備金2億円)であったが,「製・販の完全統合」の時代には,払込資本金の額が1桁増額され(平成14年10月に20億円,平成15年4月に30億円となり,川崎重工業株式会社が1億3000万円追加出資した。),?「販売統合」の時代にはなかった母体3社の知的財産権の譲渡が,「製・販の完全統合」の時代には,平成14年運営契約に基づいて被告プランテックに無償で行われ,?「販売統合」の時代には,被告プランテックの代表取締役は,被告JFEから非常勤の代表取締役1名であったが,「製・販の完全統合」の時代には,母体3社がそれぞれ1名の常勤の代表取締役を指名・選任し,それぞれの代表取締役が被告プランテックの業務の執行を分掌した。 そして,「販売のみ先行統合」から「製・販の完全統合」への移行に伴い,協議事項の決定の「過半数ルール」が「全会一致ルール」に変更された。すなわち,母体3社は,?平成14年運営契約21条の「失効条項」により,平成13年運営契約の別添「協議報告事項」の冒頭の「過半数ルール」の文言を失効させ,?平成14年運営契約17条により,平成13年運営契約の別添「協議報告事項」を,平成14年運営契約の別添「協議報告事項」の記載に「改訂」し,これ「に従う」ことを明記し,?改訂後の平成14年運営契約の別添「協議報告事項」には,平成13年運営契約の別添「協議報告事項」の冒頭の「過半数ルール」の文言を削除し,?平成14年運営契約は,平成13年運営契約19条のような「見直し条項」を定めなかったものである。 また,母体3社は,「製・販の完全統合」の時代に入って,「販売統合」の時代の短期間に採用された過半数ルールを,平成13年合弁契約9条によって元々合意済みであった「全会一致ルール」に戻すことに何26ら異議がなかった。なぜなら,母体3社は,平成14年3月の製・販統合時に,各契約を遵守し続けることを前提に,合弁事業に係るすべての製造権及び知的財産権を被告プランテックに無償で譲渡し,その代わりに,いずれも,各社が同被告の執行権を有する専業の代表取締役を指名・選任して,イーコールパートナーの原則に則って,同被告の業務執行を行うこととしたものであり,また,母体3社は,一切合弁事業に競合する事業ができなくなるため,平成14年運営契約17条,同契約別添「協議報告事項」に定める協議事項を,すべて「全会一致」で決定することが,当然,必須であったためである。 (オ)被告カワサキが契約当事者である平成15年運営契約の別添「事前協議」事項には,過半数ルールの規定がないところ,同被告が契約当事者ではない平成13年運営契約にその記載があったことをもって,平成15年運営契約にも,同記載がある解釈することはできない。 (カ)被告プランテックの取締役会では,本来,同被告の取締役会議事録に記載する必要のない母体各社の立場から行う報告が,多数の議事録で記載されている。このことは,同取締役会が,取締役会規程の別紙の「取締役会決議事項」についての母体各社の承認を確認し実践することを含めて,各取締役が母体各社の立場からも発言する場と位置付けられていたことを証明している。 (キ)平成15年合弁契約7条の「重要事項」は,取締役会規程の「基準」の取締役会決議事項の中でも特に合弁当事者と協議し,その承認を得なければならないものを選択して別途定めることを予定していたのではなく,広い意味の取締役会決議事項のうち,重要なものとして,「基準」の41個の協議事項のみを特定し,これを同7条の「重要事項」として合意したものである。合弁契約では,極めて重要な事項に限定することなく,取締役会への付託の前に合弁当事者の事前合意が必要な事項27を幅広く取り決める条項が存在するのが通常である。 カ平成15年合弁契約7条における「重要事項」として,平成16年運営契約14条,別紙2「協議報告事項」中の「事前協議」事項が定められたことは,契約書全体の規定及び次のような証拠から十分に明確である。 (ア)平成19年6月21日及び同月28日の各取締役会において,取締役が,平成15年合弁契約の見直しを行っていくことが必要である旨発言している(甲10,11)。 (イ)JFEホールディングス宛ての被告プランテック作成の平成17年10月13日付け説明資料(甲15)では,同被告の合弁契約関係の概要として「?各社対等出資(イコールパートナー)による事業運営,?取締役会決議事項に関する母体の事前承認」としており,説明を受けたJFEホールディングスも異議を述べなかった。 (ウ)被告日立出身の被告プランテックの代表取締役X(以下「X」という。)作成のY(以下「Y」という。)宛ての平成19年6月18日付け電子メール(甲17)の内容は,被告プランテックの執行役員の任命は,母体4社から指名されて任命された取締役全員一致の決議によってなされるべきであると解していることを裏付ける。 (エ)被告JFE作成の平成19年4月17日付け書面(甲68)及び同年5月付け書面(甲19)は,「執行役員制の導入」,「取締役・執行役員の人事」について,提案するものであり,役員人事が,株主間の合意事項であることを前提に,株主としての合意を求める書面である。 (オ)「IJプロジェクト検討報告書『I社とのアライアンスの検討について(総括)』」(甲23)は,石川島播磨重工業株式会社との統合問題に関する資料であり,「統合条件」として「下記各項がIHIに受け入れられることを確認したのち,母体4社へ諮り4社一致で了承されること。」との記載がある。 28(カ)被告プランテックの取締役会議事録(甲24〜67)によると,平成14年4月16日から平成19年5月30日までの同被告の取締役会では,議案はすべて全会一致をもって承認可決されている。また,「採用の実施について出資各社の事前了承事項であり」(甲42)とか,「役員改選人事の件については,現時点において株主各社との整理・確認が得られていない」(甲67)等の記載がある。 (キ)被告プランテック企画管理部Z(以下「Z」という。)作成の平成16年6月4日付け「基本原理について」(甲69)では,平成16年運営契約14条の別紙2「協議報告事項」について,平成15年合弁契約7条を具現化したものとの注釈をしている。 (ク)被告プランテック企画管理部作成の平成17年4月14日付け「スチールプランテック概要・合弁事業設立からの歩み」(甲71)では,「?.合弁事業の基本フレーム」,「各社対等の出資(イコール・パートナーシップ)による合弁運営」及び「出資比率に応じた合弁フレーム(役員体制・債務保証他)」との副題を付した上,「1.合弁契約(株主間契約)」の項において「取締役会決議(重要事項)での母体各社の事前承認(第9条)」と記載している。 (ケ)被告プランテックのX常務取締役等に対する説明資料であるZ作成の平成16年3月1日付け「スチールプランテック経営上の意思決定における基本精神について」(甲74添付)では,平成16年運営契約14条に承継された平成15年運営契約19条が,平成15年合弁契約7条の規定を受けて定められてものであることを説明している。 (コ)被告プランテックのP非常勤監査役作成のR常勤監査役宛ての平成14年9月3日付け電子メール(甲78添付)では,平成16年運営契約14条と平成15年合弁契約7条に関して,「多分全ての事項が三者協議ということから」と記載している。 29(サ)被告JFE出身の被告プランテックのR主査等作成の平成16年3月31日付け書面(甲80)では,「現状の問題点の構造」として,「イーコールパートナー論理と母体の事前承認」,「取締役会での決定事項(制約)と全会一致の運営」等の記載がある。 (シ)平成16年4月15日付け被告プランテック母体4社社長会と題する書面(甲83,84)の確認事項の記載内容の変遷は,被告日立が,平成15年合弁契約7条と平成16年運営契約14条とが結び付いたものと認識し,それを当然のこととして母体4社社長会の確認事項に盛り込むことを求めたことを示す。 (ス)被告プランテックの規格管理部名の平成16年1月23日付け「IJプロジェクト経営会議メモ」(甲89)には,合弁契約における「JSP決議に先立って(事前)に各社の了承を得る…」点については,既に検討については了承との判断(経緯)のもとに,「検討,交渉の着手」について審議とすることと理解する旨記載されている。 (セ)被告日立が,平成13年1月26日付けで原告及び被告JFEに対し送信した電子メール及び添付ファイル「合弁契約.doc」(甲90)は,新会社の機動性を重視し,合弁契約書に「新会社の取締役会決議事項のうち,別途定める重要事項については,出資者の事前協議および承認を要する。」との規定を追加するだけではなく,「当該重要事項」については,「各社の決裁規程,取締役会付議基準,および新会社の規模等を参考に詰めていく作業が必要」として,被告日立の取締役会付議基準を添付したこと,被告日立の提案どおり,上記取締役会付議基準等の書式を参考として,「当該重要事項」の具体的内容を詰め,平成13年運営契約の別紙「事前協議事項」(甲2)が決定されたことを示す。 (ソ)被告JFE作成の平成12年10月11日付け「アライアンス体制30(案)」と題する書面(甲91)では,Zは,合弁契約書案9条に手書きで「設立後4者間契約で決める」というメモを記入している。 (タ)Z作成の電子メール(甲92)では,平成16年運営契約の締結に向け,母体4社の法務担当者などに最終ドラフトが送信され,「母体へのお願い事項」として,「弊社の取締役会決議(3/26予定)には母体での承認が必要です。」と明記した。 (被告ら)ア原告の主張する事実は,いずれも否認する。被告らは,原告の主張する債務を負っておらず,債務不履行もない。 イ平成15年合弁契約7条の「重要事項」は定められていない。 (ア)平成15年3月20日に,母体4社が平成15年合弁契約7条の「重要事項」を定めた事実はない。役員人事について,遅くとも平成19年6月19日までに,母体4社が協議の上,「重要事項」として定めた事実もない。そもそも,原告は,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を定めた「別途当事者間の協議」について,どのような経緯により,いつどこで誰と誰の間で,何回にわたり,どのような協議が行われたか等,経緯を具体的に特定して主張していない。「重要事項」を定めた事実を証明する母体各社間の議事録や被告プランテックの内部書類も一切存在しない。 (イ)なお,被告らは,平成15年合弁契約7条が無意味な条項であると主張するものではない。母体4社が協議の上,役員人事等を同条項の「重要事項」として定めたか否かは,事実問題であり,同条の解釈の問題ではない。仮に,原告が被告プランテックの経営について事実上の無限責任を負担するとしても,このこと自体と拒否権ないし代表取締役の指名権とは無関係である。社員が無限責任を負担する持分会社(会社法580条)や組合(民法675条)においても,会社の業務執行は社員31の過半数で決すること(会社法590条2項,民法670条1項)との対比から,決して不条理とはいえない。 (ウ)平成15年運営契約別添の「協議報告事項」中の「事前協議」事項は「事前協議」の対象として定められているのに対し,平成15年合弁契約7条の「重要事項」は「契約当事者」の「承認」が要求されており,両者は別のものである。平成15年運営契約19条も,規定の文言上,株主全員一致での承諾を要求していないから,別添の「事前協議」事項を「承諾」が必要な「重要事項」と解することはできない。 (エ)平成15年運営契約別添の「協議報告事項」には,取締役会決議事項(甲16)がすべて記載されているが,平成15年合弁契約7条では,「取締役会決議事項のうち」と規定して,特に母体4社と協議し承認を得なければならないものを選択して,重要事項として別途定めることを予定している。 (オ)仮に,平成15年運営契約において,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を定めたのであれば,疑義を生じないよう,規定上,その旨を明示したり,「承認事項」とする等の適切な措置を講じるのが通常であるが,本件ではそのような事情はない。 (カ)取締役会の決議は,本来,出席取締役の過半数を持って決定される(会社法369条)。また,被告プランテックの取締役会決議規程(甲16)の別紙において定める取締役会決議事項には役員人事も含まれるが,このような事項も,取締役会規程上,取締役の過半数をもって決することができる(6条1項,7条2項参照)。 (キ)拒否権については,本件合弁事業では,法律上も事実上も,被告プランテックの倒産時における超過債務について出資比率に応じて負担する義務を負っていない。母体各社の保証責任も,年度ごとに被告プランテックが事業計画を作成し,その一貫として設定される借入計画に対応32し,母体3社が審査の上,債務保証を供与することになった。保証額を理由として,原告が主張する36細目すべてについての拒否権ないし株主協議事項が定められていなければ不自然というのは暴論である。 (ク)平成13年運営契約19条は,設立後2年以内に予想される完全統合に備えて,契約の見直しを定めたものであり,そこで当然に被告プランテックの運営ルールの変更まで予定されていたわけではない。 (ケ)平成14年運営契約以降のいずれの事業運営契約においても,平成13年運営契約別添の「協議報告事項」に記載された「事前協議」の「定義」を変更することを定めた規定やそれをうかがわせる規定は存在しない。平成14年運営契約17条も,「事前協議」の定義を改訂するものではない。仮に,「過半数ルール」から「全会一致の原則」に変更があったのであれば,その協議の経過及び変更の事実が母体各社及び被告プランテックにおいて文書に残されているはずであるが,そのような文書は一切存在しない。 (コ)平成14年運営契約17条により,平成13年運営契約10条に定める協議報告事項を「改訂」した内容は,平成13年運営契約10条及び別添「協議報告事項」の「3.資産および財務に関する事項」(3)の一件1000円以上の資金の貸付けを,一件1000「万」円に改訂し,同(5)の一件1億円以上の借入れを,年度予算借入計画を超える借入れに改訂し,7項(その他の事項)を挿入したことである。「改訂し」との文言から,「過半数決定のルール」が「全会一致決定のルール」に変更された等と主張することはできない。 (サ)母体3社は,被告プランテックの事業運営に当たっては,「販売統合」の時点において,既に「過半数決定のルール」を被告プランテックの事業運営のルールとして合意していたのであって,このルールは完全統合によって変更されていない。平成13年運営契約19条の単なる見33直し規定によって,適用時期が制限され得るものではない。 (シ)被告カワサキは,参加した当時,「全会一致ルール」の認識はなく,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を平成15年運営契約19条,別添の「事前協議」事項とし,これらはすべて株主全員一致の事前承認が必要であるとの説明を受けたり,協議したり,合意した事実はない。 同被告は,「過半数ルール」と認識しており,持ち株比率の関係でも合理的と判断した。 (ス)証拠上も,被告プランテックの一従業員の認識やメモ等をもって,同被告の認識とみなすことは不可能である。 (セ)被告プランテックの従前の取締役会が全員一致で決議されていた(甲24〜67)としても,原告が主張する事実を推認することはできない。被告プランテックでは,取締役会に先立ち,常勤取締役4名等によって構成される「運営会議」や「経営会議」が開催され,事前に十分協議され,合意が得られている事項が取締役会に上程されるため,取締役会においても,常勤取締役及び報告を受けている非常勤取締役についても賛成が得られやすい事情がある。本来,出席取締役の過半数で決せられる取締役会決議(会社法369条1項)についても,調和を重んじて表立った争いを避ける会社であれば,事前の根回しによって全員一致の決議の形を取ることは少なくない。母体各社の立場からの発言も,各株主を代表する立場を兼任している取締役においては必要に応じて可能だったという限度である。 ウ(ア)平成15年合弁契約には,母体4社が指名した取締役をして,取締役会決議に先立ち,「重要事項」について同契約の全当事者の承認を得させる義務を定めた規定もない。 (イ)平成15年合弁契約の当事者ではない被告プランテックが,同契約に基づいて法律上義務を負担させられることはない。平成16年運営契34約2条1項は,合弁契約の基本精神を尊重するという精神を宣言したにとどまり,このような抽象的な規定に基づいて,被告プランテックが具体的な義務を負担することはない。 (1)-2平成15年合弁契約9条3項,23条,平成16年運営契約8条違反(原告)ア被告らは,平成15年合弁契及び平成16年運営契約のイコールパートナーシップという基本精神に違反し,母体4社が,業務執行権を有する代表取締役を各1名指名することができ,指名した者が選任されるよう株主総会及び取締役会で議決権を行使する旨の平成15年合弁契約9条3項,23条及び平成16年運営契約8条の規定に違反した。 イ被告JFE,被告カワサキ及び被告日立は,平成15年合弁契約9条3項,23条,平成16年運営契約8条1項に違反し,平成19年6月の被告プランテックの取締役会では,原告の反対にもかかわらず,偏頗な執行役員制度(執行役員の数が,被告JFE3名,被告カワサキ2名,被告日立及び原告各1名)を導入し,平成15年合弁契約9条3項により,原告が指名・選任したYを執行権限のある執行役員に就任させるべきであるという原告の要求を無視し,同人を,?従来の「代表取締役副社長・営業本部長」という執行権限のある地位から ?「代表取締役社長補佐」という執行権限のない地位に一方的に移転させた。 ウ被告プランテックは,平成16年運営契約8条1項に違反し,原告の反対にもかかわらず,原告が執行権のある代表取締役として指名・選任したYを,被告プランテックの取締役会決議により,執行権のある代表取締役に就任させなかった。 エ契約の解釈等(ア)母体4社は,平成15年合弁契約9条3項,23条により,それぞ35れ被告プランテックの代表取締役1名の指名・選任権を有している。平成15年当時の平成17年7月26日法律87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)261条3項,78条1項(会社法363条1項1号参照)に基づき,代表取締役は,業務を執行する権限を有している。そして,契約書の条項の文言解釈に際しては,契約当事者間に制定法を排除するという特別の合意がない限り,かつ,制定法が強行法規でない限り,制定法である旧商法が合意の内容に適用されるから,上記合弁契約9条3項及び商法261条3項,同78条1項に基づき,母体4社は,それぞれ業務執行権を有する代表取締役1名を指名・選任する権限を有していると解される。 (イ)原告は,?自らが「業務執行権のある被告プランテックの代表取締役」1名を指名・選任できる権限を有していたこと,?平成16年運営契約14条,別紙2の「事前協議事項」につき,同意権を有していることを定めている平成15年合弁契約7条が,契約期間中,遵守されることを前提として,合弁事業にかかわる自らの全知的財産権と全営業権を,無償で被告プランテックへ移転し,自らは,以後,合弁事業と競合する事業を営まないことを約した(平成15年運営契約5条2項,8条)。 オ証拠上も,被告らの債務不履行は明らかである。2007年6月21日「被告株主間会議資料に関する弊社回答(その2)」(甲9)などでは,「株主4社がイコールパートナーとして経営に関与していくことが基本理念です。この基本理念に基づき,現在の合弁契約書において,各社が代表取締役を指名し,被告の業務執行を担うということが基本趣旨でありました。」と明記し,執行役員制の導入は合弁契約の基本趣旨の大きな変更であると述べている。 (被告ら)ア原告の主張する事実は,いずれも否認する。被告らには,債務不履行は36ない。 イ原告出身のYは,2007年(平成19年)6月の役員人事に関する取締役会の決議以降も,被告プランテックの代表取締役社長補佐として,被告プランテックの業務執行権を有しているため,執行役員制度を導入すること及びYを「代表取締役社長補佐」という肩書きの代表取締役の地位に就けることは,2003年合弁契約9条3項に違反するものではない。 ウ執行役員制度は,被告プランテックの次代の経営陣の育成を目的として,母体4社とは無関係に適材,適所の人材を登用するために導入されたものであって,決して偏頗なものではない。Yの業務は,被告プランテックの代表取締役の他に,社長を補佐するものであれ,営業活動,新規市場開拓など様々な業務執行権を付与されている(甲87)。同人が代表取締役に選任されている以上,同人は肩書きの内容を問わず,会社法上当然に業務執行権を有する(会社法363条1項1号)のであって,同人の業務執行権は剥奪されていない。そもそも,平成15年合弁契約9条3項の規定から直ちに,原告から派遣された代表取締役が,他の合弁当事者から派遣された取締役と全く同一の業務執行権を保障されることまで意味するものではなく,他の合弁当事者からも代表取締役が選任される以上,他の合弁当事者から派遣された代表取締役社長の業務執行権との関係において,原告から派遣される代表取締役の業務執行権が制約されることは原告も黙示的に認めていたと解される。そして,原告自身が,平成19年6月の取締役会において,新たに導入の可否が諮られた執行役員制度の導入を是認している(甲8)以上,新たな執行役員制度の導入に伴い,原告から派遣される代表取締役の業務執行権が制約されることも甘受すべきである。 エ原告が,他の合弁当事者同様に知的財産権を譲渡し,被告プランテックを設立し,競業しないことを約したのは,国内における過当競争を回避し,国際競争力を強化しなければ,原告もその事業を維持し得なかったためで37ある。 (2)原告による平成19年6月28日の取締役会の議案の追認の有無(本訴)(被告ら)ア原告は,平成19年6月21日及び同月28日の取締役会の後,異議を述べず,その後の被告プランテックの取締役会において,役員の報酬に関する協議に参加し,何ら異議を述べていないから,執行役員制の導入を追認している。 イ原告は,平成20年6月19日の株主総会及び取締役会において,平成19年6月の取締役会決議事項を前提とした決議事項(4号議案,執行役員の選任並びに分担の件)に,何らの異議も述べずに賛成し,平成19年6月の取締役会決議内容を追認した。 (原告)ア被告らの主張は争う。 イ原告は,平成20年6月19日の取締役会において,4号議案(執行役員の選任並びに分担の件)に賛成したが,同日付けの原告作成による書面(甲22)のとおり,当該役員人事については,合弁契約に違反するので,提訴して争う旨の主張を留保した上で,被告プランテックの業務の混乱を回避等するため,あえて賛成した。 したがって,原告は,追認したものではない。 (3)原告における被告プランテックに移転を約した特許権等の移転登録義務の有無,並びに,被告プランテックに移転済みの特許権の移転登録手続請求,移転済みの資産の返還及びデータの廃棄等請求の可否(本訴,反訴)(原告)ア移転登録義務の有無,返還請求等の可否(ア)原告は,平成14年運営契約3条,4条,6条に基づき,別紙特許38目録1ないし7記載の特許権等並びに別紙資産目録記載のデータ等の所有権及び知的財産権等を無償で譲渡したが,同契約は,平成20年8月25日に解除されたから,譲渡した別紙特許目録1ないし7記載の特許権等並びに別紙資産目録記載のデータ等の所有権及び知的財産権は,少なくとも,同日以降原告に帰属し,同契約3条及び4条に定める特許権の移転登録義務等も負わない。 (イ)原告が,平成19年11月13日,知的財産権の名義書換を平成20年3月31日に完了することを約したこと,同年1月30日以降,被告プランテックから,再三にわたり名義変更を依頼されたことは,いずれも否認する。原告の社員は,平成19年11月13日の会議において,原告から移管手続をストップするよう指示を受けていることを説明した上で(甲75),仮に移管手続を進めるのであれば,平成20年3月末には手続完了できる旨の説明をしたにすぎない。平成19年11月14日には,原告の常務執行役員が,被告プランテックの担当部長に対し,母体4社間で原告離脱等の協議をしており,協議終了までは名義変更に応じられない旨回答した。原告は,平成20年1月30日に被告プランテックの技術開発センター企画室から,移転手続をストップする理由の照会を受けた以外は,連絡を受けていない。 イ被告らが主張するように,被告らに債務不履行があったとしても原告が採り得る手段が平成15年合弁契約17条に基づく株式買取請求権を伴う合弁関係からの離脱のみであるとすると,同請求権を行使した場合の株式買取価額には,契約違反をされた当事者が被告プランテックに譲渡した知的財産権の価値が全く反映されない(平成15年合弁契約17条1項1号による株価の評価参照)から,契約違反をされた当事者である原告は,そのような買取価額を甘受しなければならないことになる。また,原告が合弁関係から離脱できるのみであるとすると,契約違反をしていない原告が,39エンジ統合日の前まで開発・所有していた知的財産権を永久に使えず,他方で,契約違反をした被告プランテックが,原告から無償譲渡を受けた知的財産権を独占的に所有し続けるよう,同契約17条を解釈することととなり,これは,母体4社の意思に反する不合理的な解釈であり,不公正かつ不正義な帰結を招来する。 合弁当事者が,契約違反がある場合に,民法541条の適用を排除する合意をしていたのであれば,合弁契約に明文でその旨明記されるべきであった。 ウ独占禁止法違反「債務不履行があっても,知的財産権等を取り戻せない」との被告らの主張は,民法理論としても失当であるが,被告プランテックが9割近い市場シェアを持つ商品を有している状況で,被告らの上記主張を認めることは,明らかな独占禁止法違反であり,独占禁止法の観点からも,到底認められない。 エ負担付贈与契約の解除(予備的主張)原告が,被告プランテックに対して行った平成14年運営契約3条,4条に基づく,営業権,工業所有権,ノウハウ等の無償譲渡は,被告らが,合弁契約(甲1,4)及び事業運営契約(甲2,3,5,6)を,契約有効期間中,遵守し続けることを「負担」として,実行されたものである。 すなわち,当該無償譲渡は,負担付贈与である。 原告は,被告らによる「負担」たる当該契約遵守義務の違反を理由に,合弁契約(甲1,4),事業運営契約(甲2,3,5,6)を解除したから,被告プランテックは,契約解除から将来に向かって,当該営業権,工業所有権,ノウハウにつき,負担付贈与の受贈者としての地位を享受できない。 (被告ら)40ア被告プランテックは,平成14年運営契約3条,4条,6条に基づき,原告から別紙特許目録1ないし7記載の特許権等並びに別紙資産目録記載のデータ等の所有権及び知的財産権等の譲渡を受けている。そして,被告プランテックは,原告に対し,別紙特許目録1ないし5記載の各特許権又はその持分について移転登録手続を,また,同特許目録6記載の各特許を受ける権利のうち,原告の持分について移転手続を求める権利を取得している。 原告は,平成19年11月13日,知的財産権の名義書換を平成20年3月31日に完了することを約し,同年1月30日以降,被告プランテックから,再三にわたり名義変更の依頼を受けた。 イ原告の契約解除の主張は争う。 (ア)合弁契約や事業運営契約のような継続的契約では,解除により当事者が当初に遡って原状回復義務を負担し,それまでに何年もの間積み重ねられてきた当事者間の法律関係が覆るのでは,当事者間の法律関係は余りに不安定となる。このことから継続的契約については,債務不履行があっても,解除の遡及効が認められない(民法620条,684条参照)。本件においても,被告プランテックは,原告から移転された知的財産権等に基づき,新たな技術を開発し,その技術が同被告の新たな知的財産権を構成しており,原告から同被告に移転された知的財産権は,同被告に不可欠の営業財産を構成しているから,債務不履行により契約が解除されたとしても,移転した知的財産権が原告に復帰するとは考えられない。 (イ)本件では,平成15年合弁契約17条に合弁契約の解消に関する規定を設けているから,これによるのが当事者の合理的意思である。仮に,被告らに契約上の債務不履行があったとしても,原告が採り得る手段は,平成15年合弁契約17条に定める株式買取請求権等を伴う合弁関係か41らの離脱のみであり,合弁契約の解除を主張することはできない。 (ウ)原告から被告プランテックへの知的財産権の譲渡は,無償譲渡というよりは,現物出資と見るべきものである。エンジ統合に伴い,各当事者が同被告に知的財産権を譲渡し,同被告が当該知的財産権を利用し得るようになった時点で完了し,いずれの当事者も,当該知的財産権をそのままの形で(現金の払戻しは別として)取り戻すことはできない。 ウ独占禁止法違反被告プランテックは,9割近い市場シェアをもつ商品など有していない。 仮に,同被告が9割近い市場シェアをもつ商品を有するとしても,市場占有率だけで,独占禁止法違反が生ずるわけではない。仮に,独占禁止法に違反するとしても,独占禁止法違反が直ちに原告の主張を正当化するものではない。 エ負担付贈与契約の解除平成14年運営契約は,負担付贈与契約ではない。仮に,本件の知的財産権の移転が負担付贈与であるとしても,継続的契約であり,一回的な債務不履行を理由に解除することはできない(民法553条も「その性質に反しない限り」と規定している。)。仮に,負担付贈与であり,一回的な債務不履行によって解除し得るとしても,被告らには債務不履行は存在しない。 (4)損害賠償請求(本訴)(原告)ア原告は,合弁契約及び運営契約を解除せざるを得なくなったことにより,単なる少数株主(出資比率24.8%)の地位となった。少数株主には,他の株主が決定した配当額の配当を受領する以外,実質的に何の権利もない。したがって,被告らの債務不履行により,原告の被告プランテックへの出資は,実質的に無駄となり,原告には,保有する被告プランテック株42式相当額の損害が発生した。 イ平成20年3月31日時点の被告プランテックの帳簿上の純資産価額は,68億6976万6000円であるところ(甲12),原告は,被告プランテックの発行済株式総数3万9900株のうち9900株を保有しているから,原告が保有する株式相当額は,(9900株÷3万9900株×68億6976万6000円?)17億0452万円である。 (被告ら)ア原告の主張は争う。 イ原告による解除は,無効である。また,原告の被告プランテックに対する出資持分の価値は飛躍的に増加しているばかりか,被告プランテックの現在の財務状況は極めて健全である。にもかかわらず,被告らの債務不履行により,原告の被告プランテックに対する出資が無意味となり,株式相当額の損害を被っているという理由が明らかでない。 (5)原告における競業避止義務の有無,及び,競業避止義務の範囲(本訴,反訴)(原告)ア競業避止義務(ア)原告は,平成15年合弁契約6条及び平成16年運営契約5条等に基づき,被告プランテック並びに他の株主である被告JFE,被告日立及び被告カワサキに対し,直接間接を問わず,合弁事業(製鉄プラント事業)に属する事業を行わないとの競業避止義務を負った。 (イ)平成15年合弁契約及び平成16年運営契約は,平成20年8月25日をもって解除されたから,原告は,同日以降,被告らに対し,上記競業避止義務を負っていない。 (ウ)被告らは,(イ)について争っている。 イ千代田鋼鉄工業株式会社の案件43(ア)被告プランテックが競業と主張する千代田鋼鉄工業株式会社(以下「千代田鋼鉄」という。)の棒鋼圧延工場の冷却床更新工事(以下「千代田鋼鉄案件」という。)は,同工場の冷却床を「更新」する工事であり,アフターサービス及び改造そのものである。 (イ)平成16年運営契約13条によると,平成16年4月1日以後の被告プランテックにおける本件合弁事業に係るアフターマーケット事業の位置付けについては,母体4社と被告プランテックとの間で協議が整うまでの間は,被告プランテックが母体4社の本件合弁事業に属する事業を行っている子会社,関連会社にアフターマーケット事業を委託することを基本としてこれを行うとされており,平成15年合弁契約6条2項によると,平成15年4月15日以前において,既に母体4社の子会社,関連会社が行っている本件合弁事業に属する事業については,母体各社と被告プランテックにおいて協議の上個別の取扱いを決定するとされている。 そして,STFは,被告プランテックとの間の本件実施許諾契約6条に基づき,千代田鋼鉄案件を行うことができるのであり,競業避止義務に反しない。原告は,被告プランテックに提出した書面(戊15)において,「第三者AM(アフターマーケット)案件を扱うことに関し,事前にご了解を得ていることで合弁契約における「競業避止義務」には抵触していないと認識しております。」と明記しており,被告プランテックも,STFが千代田鋼鉄案件を受注したことについて,クレームできないと判断していたものである。すなわち,同案件について,平成19年10月10日のSTFと被告プランテック間の協議を受けて,被告プランテックのO本部長は,平成19年10月15日付け被告プランテック社内向け文書(甲76,77)により,「STF案件として当社(被告プランテック)が了解したものであり,AM統合で合意するまでは従44来通りの対応を当社(被告プランテック)が了解していたことから,STF受注についてクレームすることはできない。」旨を述べている。同条項や平成16年運営契約13条には,「10億円を超える工事は,アフターサービスや改造に該当しない」旨の規定は存在しない。 なお,STFは,千代田鋼鉄案件について,被告プランテックの商号を使用しておらず,被告プランテックから技術情報の提供も受けていないから,同案件は,本件実施許諾契約の「本取引」(3条)に該当せず,原告は,同契約9条に基づく「本取引」(3条)についての営業情報の被告プランテックへの開示義務を負わない。 STFの従業員は,製鉄プラント事業だけでなく,同時に鍛造プレス事業にも従事しているので,当該従業員を製鉄プラント事業のみを行う被告プランテックに移管できないとの原告の理由は,十分に合理的な理由である。 ウ競業のおそれ等(ア)原告が,合弁契約(甲1,4)及び事業運営契約(甲2,3,5〜7)を解除し,合弁関係から離脱した結果として,原告が,本件実施許諾契約の解約後,アフターサービス業務等を継続することになることは,争わないが,原告は,別件仮処分事件(平成20年(ヨ)第22083号)における裁判上の和解において,「本訴の和解成立日又は第1審判決日までのいずれか早い日までの間,本件実施許諾契約3条?に規定されたアフターサービス業務及び改造業務をSTFを通じて行う場合を除き,合弁関連事業を行わないこと」を約している(和解条項14項)。 (イ)顧客が被告プランテックとではなく原告と取引した結果,被告プランテックが被る損害は,逸失利益等の金銭的損害であり,そのような損害を損害賠償で回復できないとは,到底解されない。 (ウ)原告は,平成19年9月から平成20年8月の提訴までの間,原告45代表取締役自らが,被告らと合弁離脱について協議した(戊18)が,進展がなかった。さらに,原告からの出向者に対して被告プランテックによる転籍勧誘や引抜き行為が見受けられたことから,原告は,十分な準備期間を設けて,出向者の引揚げを行うこととし,被告プランテックが申し立てた別件仮処分事件(平成20年(ヨ)第22083号)における裁判所の訴訟指揮のもとで,引揚げを行った。 (エ)被告らの「金融危機の渦中における原告の合弁離脱は許されない。」との原告の離脱とサブプライム問題を結びつける主張は,原告が合弁関係から離脱する意思を示した時期(平成19年9月),原告が本訴を提起した時期(平成20年8月),被告プランテックの社長が,社員に対し「家族リフレッシュ商品券(5万円)」を贈ったり(平成20年7月),原告が離脱しても被告プランテックの存立の基盤は磐石である旨を述べた時期(同年9月)等からすると,事実に反している。また,被告らは,「経営計画は,長期的なビジョンを持って立てなければならず,短期的な事情の変更で計画を変えることは不可能である。」とするが,短期的な事情の変更は,常に起こり得ることである。 (被告ら)ア原告が競業避止義務を負わないとの主張は争う。 イ被告らには,本件合弁契約や本件事業運営契約上の債務不履行は存在しないから,原告による解除は無効である。 ウ原告は,次のとおり,平成16年運営契約に基づく競業避止義務を負っている。 (ア)平成16年運営契約5条によると,原告は,被告らに対し,直接間接を問わず,本件合弁事業に属する事業について競業避止義務を負担し(1項本文),例外的に,原告と被告プランテックの書面による合意により特に定めた原告の事業(1項3号),平成15年4月1日以前にお46いて既に原告の子会社,関連会社が行っている本件合弁事業に属する事業で,原告と被告プランテックの協議の上個別に取扱いを決定した事業(2項1号)を行うことができる(1項ただし書き)とされる。 (イ)上記例外的な事業は,被告プランテックとSTF間の本件実施許諾契約に基づくアフターサービス事業等である。同契約14条は,契約期間について「本契約の有効期間は,平成15年4月1日より1年間とする。但し,期間満了の3カ月前までにJSP(被告プランテック),STFいずれからも書面による変更または解約の申し入れがない場合は同1条件で更に1年間更新する。」旨定めるところ,同契約は同条項に基づき更新されてきたが,原告が本訴を提起したため,原告と被告プランテック間の信頼関係が破壊されたことから,被告プランテックは,STFに対し,平成21年1月16日,本件実施許諾契約14条に基づく同契約の解約を申し入れた(戊11)。同契約が平成22年3月31日に終了した以降は,原告が,STFを介して本件合弁事業に属するアフターサービス事業を行うことは,平成16年運営契約5条に定める競業避止義務に違反する。 (ウ)なお,アフターサービス事業は,原則として被告プランテックが行うべき事業であり,例外的に,平成16年運営契約13条において,契約当事者が行うことができた同事業について,協議が整うまでは,例外を維持することを許容したにすぎない。原告は,平成16年運営契約13条のみを意図的に切り出し,同条の文言を解釈しているが,このような解釈は,前提となる平成15年合弁契約6条,平成16年運営契約5条を無視した解釈であって,採用し得ない。 エ競業避止義務の不履行又は不履行の高度の蓋然性原告は,次のとおり,アフターサービス業務,連続鋳造システム業務及びプロセス機器事業等において,競業をするおそれがある。 47(ア)アフターサービス事業?STFが,本件実施許諾契約6条に基づいて行うことができる業務は,a第三者がエンジニアリング,製造又は販売した製鉄プラントについて,bアフターサービス及び改造(3条?参照)だけであるところ,千代田鋼鉄案件は,aに該当するが,bアフターサービス及び改造とはいえないため,同条項に基づいて,競業避止義務を免れる場合に該当しない。 ?被告プランテックは,設立当初はアフターサービス事業を行う余裕がなく,一時的に各合弁当事者に同事業を委託していたにすぎない。 原告を除く他の合弁当事者は,原告と同様,「商号ならびに技術の実施許諾に関する契約」を締結し,アフターサービス事業を受託していたが,平成19年4月1日には上記契約を解約し,被告プランテックに同事業を移管した。しかしながら,原告は,STFを介して,同事業の名目で,実際には同事業をはるかに逸脱する本件合弁事業と競合する事業を行っている。すなわち,STFは,千代田鋼鉄から,棒鋼圧延工場,冷却床更新工事を受注したが,「アフターサービス」とは,既に納めた製鉄設備に不具合があったり,設備が磨耗したりした場合に,設備を補修したり,磨耗した製品を交換したりすることを意味するものであり,受注金額12億9500万円という10億円を超えるような千代田鋼鉄案件が,被告プランテックと原告間で予定されたアフターサービス事業に該当しないことは明らかである(戊14,15)。 ?千代田製鋼案件は,その工事内容に照らし,「改造」に該当しない。 「改造」とは,「製鉄プラント設備の基本仕様(設備の形状やタイプ等)や性能を変更することなく部分的改良を加えること」と解され,換言すれば,製鉄プラント設備の基本仕様や性能を変更することは,48「改造」には該当しない。実務的には,製鉄プラント設備の基本仕様や性能についての図面の設計等を伴う業務は,「改造」に属さない(戊25)。 また,千代田鋼鉄案件は,棒鋼圧延工場の冷却床「更新」工事であるところ,製鉄プラントエンジニアリング業界における「更新」とは,製鉄プラント設備全体の取替えを意味し,棒鋼圧延設備における冷却床だけを取り替える場合も「更新」に当たる。そして,冷却床の「更新」に当たっては,冷却床の基本仕様や基本設計を記載した図面が必要となるから,千代田鋼鉄案件では,冷却床の基本設計(基本仕様や基本性能を定める図面の作成)をも受注したことを意味する。 したがって,STFがこれを行うことは,原告の負担する競業避止義務に違反する。 ?被告プランテックの内部文書をもって,同被告の認識と認めることはできない。同被告は,原告に対し,当初は,千代田鋼鉄案件はSTFの取組案件であると了承していたが,全体更新工事となり,10億円を超える金額となった以上,新たな相談,協議が必要な案件に変更したとみるべきであり,相談・協議をすることなく,このような変更を行うことは,原告又はSTFの競業避止義務に違反する旨,正式に抗議している(戊14)。 ?原告は,他の合弁当事者が,アフターサービス事業を被告プランテックに移管した平成19年4月1日以降も,一方的な理由により,早急に移管すべきアフターサービス事業の移管を拒絶し続けている。 (イ)原告は,平成19年12月6日の母体4社間協議において,被告JFE,被告日立及び被告カワサキに対し,合弁契約及び運営契約の解除後は,連続鋳造システム業務,プロセス機器事業を含む製鉄プラント事業を行っていく旨表明している(戊16)。 49(ウ)平成20年12月12日,被告プランテックは,原告を相手として,出向者の引揚げの差止めを求める仮処分(平成20年(ヨ)第22083号事件)を申し立てたが,原告は,一方的に、原告からの出向者の引揚げを強行した。また,原告は,同事件において「本訴の和解成立日又は東京地裁判決日までのいずれか早い日までの間,本件実施許諾契約3条?に規定されたアフターサービス業務及び改造業務をSTFを通じて行う場合を除き,合弁関連事業を行わないこと」を約したが(戊34),約3か月後には,挨拶状を顧客に送付する等して営業活動を行っており,上記和解条項の競業避止義務に違反する行為を続けている。 (エ)金銭的損害賠償が可能であるからといって,被告プランテックが,原告に対し,原告が負担する競業避止義務の履行を求める何らの妨げとなるものではない。 (オ)原告が競業をすることにより,被告プランテックには,同被告の営業秘密が流出する,同被告がその顧客を失う,同被告の技術的秘密が流出するという著しい損害が発生する。 (カ)母体4社は,鉄鋼業界や製鉄プラントエンジニアリング業界等の長期低迷不況下において,生き残りをかけて,被告プランテックを設立したが,現在,金融危機の渦中において,鉄鋼業界や製鉄プラントエンジニアリング業界等の経済状況は急激に悪化しており,このような状況下において,原告が一方的に合弁事業から離脱することは,同被告の設立の趣旨・目的に反するものといえる。 (6)時機に後れた攻撃防御方法却下の申立て(被告ら)ア申立て(ア)原告準備書面(8),同(9),同(7-2),同(10),同(11),最終準備書面,最終準備書面の訂正書,準備書面(12)各記載の主張は,いずれも時50機に後れた攻撃防御方法として却下する。 (イ)甲80号証ないし甲97号証は,いずれも時機に後れた攻撃防御方法として却下する。 イア(ア)の主張は,次のとおりである。 (ア)被告らによる債務不履行としての平成15年合弁契約9条3項,23条及び平成16年運営契約8条1項違反の主張(第2,4(1)-2(原告))(イ)被告らによる債務不履行としての平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反に関する次の主張?平成14年運営契約の「製・販統合」時に,「過半数ルール」から「全会一致決定ルール」へ変更されたとの主張(第2,4(1)-1(原告)オ(エ))?契約解釈の原則についての主張(第2,4(1)-1(原告)オ(ア),(イ))?被告らによる契約解釈が信義則違反であるとの主張(第2,4(1)-1(原告)オ(ウ))(ウ)独占禁止法違反の主張(第2,4(3)(原告)ウ)(エ)負担付贈与契約の解除の主張(第2,4(3)(原告)エ)(オ)甲89に基づく主張,甲74,別添3に基づく主張,戊20に対する評価の主張等ウ上記は,平成21年5月25日の本件第10回弁論準備手続期日以降の原告の主張及び証拠であり,本件訴訟の経過からすると,上記期日までに主張できなかった合理的な理由はないから,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 すなわち,本件では,平成20年12月5日の第1回弁論準備手続期日における争点整理の結果,本件訴訟の中心的争点は,「平成15年3月2510日に,平成15年運営契約19条及びその別添「協議報告事項」のうち「事前協議」事項が,平成15年合弁契約7条の「重要事項」として定められた」ことの成否に絞られ,それから半年後の平成21年5月25日の第10回弁論準備手続までの間に,当事者は併せて準備書面318頁,証拠113個を提出し合い,主張,立証の限りを尽くしたのである。原告も,原告準備書面(6)において,「SHIは,訴状,原告準備書面(1)から(6)(各訂正書を含む),反訴答弁書にて,本件本訴・本件反訴につき,主張,立証を尽くした。」と記載した。その結果,本件訴訟関係者は,いずれも平成21年5月25日の弁論準備手続をもって,当事者間の主張,立証に関する限り,終結しており,既に本件についての心証を相当程度に形成済みの裁判官の和解勧告に従った和解が成立しない場合には,判決が下されると確信していた。そして,実際にも,同日以降は,和解に関する協議のみが行われ,同日以降に提出された書面の陳述は留保されていたから,同日の時点において弁論を終結できる段階にあったものの,和解に関する協議のために期日が続行されたにすぎず,「他の事項を審理しなければ判決に熟しない状態」にはなかったと認められる。 したがって,同日の時点において判決をするのに熟していたものであり(民事訴訟法243条1項),同日以降提出された書面等は,「訴訟の完結を遅延させる」ものである。攻撃防御方法の提出が時機に後れたか否かは,当該訴訟の具体的な進行から判断すべきであり,原告の引用する判例は本件に直接当てはまらない。 エ原告の主張する弁論の更新(民事訴訟法249条2項)は,自由心証主義(民事訴訟法247条)と直接の関連はなく,弁論の更新がなされていないことをもって,平成21年8月28日の段階で弁論を終結できる段階になかったと認めることはできない。同年5月25日以降に提出された書証についても,訴訟の完結を遅延させる以上,書証が第2回口頭弁論期日52において取調べが可能であるか否かは無関係である。 オ原告が,合弁契約や事業運営契約の具体的条項を指摘し,同条項に基づく被告らの債務を主張することは,新たな攻撃防御方法の提出になることは明らかである。 (原告)ア被告らの主張は争う。 イ本件は,平成20年10月20日に第1回口頭弁論が開かれ,弁論準備手続に付された。平成21年4月22日の第9回弁論準備手続から,受命裁判官1名が交替した。原告は,弁論準備手続が進行中の平成21年6月1日,原告準備書面(8)及び甲80〜84を提出し,同月10日,原告準備書面(9)及び甲85〜88を提出し,同月11日,原告準備書面(7-2),原告準備書面(10)及び甲89を提出し,その後も,同年8月28日までに,甲97までの書証を提出し,証人Z及び同Yの証人申請を行い,準備書面(11)を提出した。同年9月2日には第14回の,同月30日には第15回の,同年10月21日には第16回の各弁論準備手続期日が開かれ,同年11月13日にも弁論準備手続期日が予定されたが,取り消され,同日,第2回口頭弁論期日が開かれた。第2回口頭弁論期日では弁論更新手続が行われ,裁判所は,新しい構成の合議体で,当事者の弁論を聞いた。したがって,原告が上記準備書面及び書証を提出した平成21年8月28日の時点においては,到底弁論を終結できる段階にはなく,その段階では,訴訟の完結を遅延させるということが問題になる時機ではなかったのであり,民事訴訟法157条1項を適用することは許されない(最高裁昭和30年4月5日第三小法廷判決・9巻4号439頁,東京高裁昭和30年8月3日判決・判例時報58号8頁参照)。また,書証は,第2回口頭弁論期日で直ちに取調べが可能であるから,書証の提出が訴訟の完結を遅延させるものではない(大審院昭和12年6月2日判決・民事判例集16巻68353頁)。 ウ法令の解釈は,民訴157条1項で問題となる攻撃防御の方法には該当しないところ,当事者が法令の解釈に意見を述べても,裁判所の注意を促し,その参考に供する意義を持つにすぎない。契約違反による契約解除を主張する当事者は,一定の内容の契約を締結したこと,相手方が一定の行為をしたこと,相手方の行為が当該契約に違反することを主張すれば足りる。相手方の行為が当該契約の何条に違反するか,あるいは当該契約の全体の趣旨に違反するか等は,契約の解釈の問題で,契約をどのように解釈するかは,法令の解釈の問題として,裁判所の専権に属することである(最高裁昭和63年11月25日判決・裁判集民事155号149頁,最高裁平成5年10月19日第三小法廷判決・判例時報1492号134頁,最高裁平成13年3月16日第二小法廷判決・判例時報1747号93頁等参照)。原告は,訴えの当初から,被告らが,母体4社が対等の立場で被告プランテックの経営に関与していくのが合弁契約の基本理念であり,その基本理念に基づき,母体4社がそれぞれ代表取締役を指名し,被告スチールプランテックの業務執行を担ってきたにもかかわらず,執行役員制を導入した上,代表取締役・副社長・営業本部長であった原告指名のYを執行役員に選任せず,その業務執行権を剥奪したことが合弁契約・運営契約違反であると主張してきた。上記の被告らの行為が合弁契約・運営契約の何条に違反するか,あるいはその基本精神に違反するかは,契約の解釈の問題として,法令の解釈の問題である。弁論準備手続の中で,原告が合弁契約・運営契約の基本趣旨(基本精神),平成15年合弁契約9条,平成16年運営契約8条等を指摘したからといって,そもそも,新たな攻撃防御方法の提出にはならない。 エ裁判所は,平成21年6月12日の弁論準備手続において,原告の提出した準備書面は,和解勧試中は陳述させないが,和解がまとまらなければ,54陳述してもらって構わないと述べており,このことは,原告による準備書面及び書証の提出が,民事訴訟法157条に基づき却下されないことを裏付けている。 第3当裁判所の判断1争点(6)時機に後れた攻撃防御方法却下の申立てについて事案の性質上,まず,争点(6)について判断する。 (1)被告らは,原告準備書面(8),同(9),同(7-2),同(10),同(11),最終準備書面及び準備書面(12)に記載された以下の各主張,並びに,甲80〜97は,平成21年5月25日の本件第10回弁論準備手続期日以降の原告の主張又は証拠であり,本件訴訟の経過からすると,上記期日までに主張又は提出できなかった合理的な理由はないから,時機に後れた攻撃防御方法として,いずれも却下されるべきであると主張する。 ア被告らによる債務不履行としての平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反に関する次の主張(ア)平成14年運営契約の「製・販統合」時に,「過半数ルール」から「全会一致決定ルール」へ変更されたとの主張(第2,4(1)-1(原告)オ(エ))(イ)契約解釈の原則についての主張(第2,4(1)-1(原告)オ(ア),(イ))(ウ)被告らによる契約解釈が信義則違反であるとの主張(第2,4(1)-1(原告)オ(ウ))イ被告らによる債務不履行としての平成15年合弁契約9条3項,23条及び平成16年運営契約8条1項違反の主張(第2,4(1)-2(原告))ウ独占禁止法違反の主張(第2,4(3)(原告)ウ)エ負担付贈与契約の解除の主張(第2,4(3)(原告)エ)55オ甲89に基づく主張,甲74,別添3に基づく主張,戊20に対する評価の主張等(2)そして,争いのない事実等及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 ア争いのない事実等(17)ア,イのとおり,原告は,当裁判所に対し,平成20年8月26日,本件本訴を提起し,被告プランテックは,当裁判所に対し,平成21年1月16日,本件反訴を提起した。 イ争いのない事実等(17)ウのとおり,本件訴訟は,平成20年10月20日に第1回口頭弁論期日が実施されて弁論準備手続に付され,その後も,同年12月5日の第1回弁論準備手続期日以降,平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日まで,弁論準備手続期日が実施された。 原告は,同年3月25日の第8回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(6)においては,「訴状,原告準備書面(1)〜(6)(各訂正書を含む)及び反訴答弁書にて,本件本訴・本件反訴により,主張・立証を尽くした。」旨を記載(同準備書面27頁)し,また,同年5月25日の第10回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(7)においても,本件訴訟の争点を「SHIが反対を表明したにもかかわらず,SPCOの取締役会…において強行採決された,役員人事等の議案が,全員一致を要する事項か否か」であるとした上,本件訴訟の争点については,「原告準備書面□の全部,原告準備書面(5)の全部,原告準備書面(4)の全部,原告準備書面(3)の全部,原告準備書面□の全部,原告準備書面(1)の第1〜第4において,SHI(原告)の主張を尽くしている。」旨を記載した(同準備書面1頁)。 ウ争いのない事実等(17)エのとおり,平成21年5月25日の本件第10回弁論準備手続期日において,原告は,「裁判所の話を踏まえて今後の進行を検討」する旨を述べ,同年6月12日の第11回弁論準備手続期日以56降,同年10月21日の第16回弁論準備手続期日までは,和解についての検討を行った。この間,原告は,原告の準備書面(7-2),(8)〜(11)を提出し,甲80〜97を準備した。上記第16回弁論準備手続期日において,和解協議は打ち切られ,弁論準備手続が終結された。 エ争いのない事実等(17)オのとおり,平成21年11月13日には,本件第2回口頭弁論期日が実施された。当事者双方は,原告の準備書面(7-2),(8)〜(12)及び最終準備書面,被告JFEの第4準備書面,被告日立の準備書面(4),被告プランテックの第5〜第13準備書面及び反訴原告準備書面(3)をそれぞれ陳述したが,その際,裁判所は,いずれの準備書面も,当事者双方にこれ以上の主張立証がないことを確認した後,和解の可能性を検討する期日において提出されたものであることを述べた。また,同期日において,甲80〜97及び戊30〜47がそれぞれ提出され,弁論が終結された。 (3)以上の認定事実によると,原告は,平成21年3月25日の第8回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(6)及び同年5月25日の第10回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(7)において,本件訴訟における争点を整理した上,主張立証を尽くしたとしており,上記第10回弁論準備手続期日における経過を踏まえて,同年6月12日の第11回弁論準備手続期日以降は,和解について検討されたことが認められる。そうすると,上記第10回弁論準備手続期日までに陳述した準備書面及び提出した書証により,当事者双方の主張立証活動は完了していたというべきであり(上記の原告準備書面の記載からすれば,原告自身もそのように認識していたと認められる。),被告の申立てにかかる上記原告準備書面(8),同(9),同(7-2),同(10),同(11),最終準備書面,及び準備書面(12)各記載の主張,並びに,甲80〜97については,いずれも,第10回弁論準備手続期日以前に主張又は提出することができなかった特段の理由はないものと認められる。そし57て,上記(1)アないしオの各主張は,いずれも従前は争点になっていなかった事項につき,新たに主張するものであって,このような主張を審理すると,訴訟の完結を遅延させることになるから,時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)に該当するというべきである。 したがって,上記原告準備書面(8),同(9),同(7-2),同(10),同(11),最終準備書面,及び準備書面(12)各記載の主張,並びに,甲80〜97は,いずれも却下する。 また,被告らについても,同様に,上記第10回弁論準備手続期日までに陳述した準備書面及び提出した書証により,主張立証活動は完了していたというべきであるから,その後に提出された準備書面各記載の主張,及び,戊31〜47は,時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)に該当するから,職権により,いずれも却下する。 (4)原告は,上記第10回の本件弁論準備手続期日以降,平成21年8月28日までの間に,原告準備書面(7-2),(8)〜(11)及び甲80〜97を提出したものの,その後も,複数回弁論準備手続期日が開かれ,同年11月13日に第2回口頭弁論期日が実施され,弁論更新手続等もされているから,このような訴訟の経過からすると,同年8月28日の時点においては,弁論を終結できる段階にはなく,その段階では,訴訟の完結を遅延させることが問題になる時期ではなかったと主張する。また,書証は,直ちに取調べが可能であるから,その提出が訴訟の完結を遅延させるものではない等と主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件では,平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日までに陳述した準備書面及び提出した書証により,当事者双方の主張立証活動は完了しており,そのことは当事者双方が自認していたと認められるから,その後に提出された準備書面及び書証は,その具体的内容を審理することにより訴訟の完結を遅延させものるというべきであり,原告の上記主張を採用することはできない。 58また,原告は,契約の解釈の問題は,法令の解釈の問題として,裁判所の専権に属するから,被告らの行為が合弁契約・運営契約の何条に違反するか,あるいはその基本精神に違反するかという問題は,法令の解釈の問題であり,原告が具体的な契約の約定等を指摘したとしても,新たな攻撃防御方法の提出にはならないと主張する。 しかしながら,攻撃防御方法とは,当事者において,請求が正当であることを支持し基礎付けるために提出する一切の訴訟資料(事実上の主張,法律上の主張,証拠の申出及び証拠抗弁を含む。)をいうから,原告が新たに主張する具体的な契約の約定等も,攻撃防御方法に該当することは明らかであり,原告の主張は独自の見解にすぎない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 2争点(1)被告らによる合弁契約及び事業運営契約の債務不履行の有無(本訴),(1)-1平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反について(1)原告は,被告JFE,被告日立及び被告カワサキは,平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,同契約の別紙2に基づき,平成15年合弁契約7条の「重要事項」である平成16年運営契約14条,別紙2の「事前協議」事項について,平成15年合弁契約9条1項により自らが指名した被告プランテックの取締役をして,同被告の取締役会決議に先立ち,母体4社全社の承認を得るようにさせる義務を負い,被告プランテックは,平成15年運営契約22条,平成16年運営契約2条1項,14条,別紙2に基づき,同別紙2の「事前協議」事項については,取締役会決議に先立ち,母体4社の承認を得る義務を負っているところ,被告らは,上記債務に違反し,被告プランテックにおける平成19年6月21日及び同月28日の各取締役会において,母体4社の事前承認が必要とされる事項(同月21日の取締役会については,株主総会の招集(議案)に関する1号議案及び株主総会59の招集(議案)・定款の変更に関する2号議案,同月28日の取締役会については,役員人事,役員編成(担当業務)に関する3号議案及び6号議案並びに重要な社内規程の制定・変更に関する4号議案及び5号議案)について,原告の反対にもかかわらず,決議をした等と主張する。 (2)そして,原告は,第2,4(1)-1(原告)ア〜カの各主張をするが,前記のとおり,上記主張のうち,第2,4(1)-1(原告)オ(ア)〜(エ)の各主張及びこれに対応する被告の主張は,いずれも平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日以降に提出された準備書面においてなされた主張であるから,時機に後れた攻撃防御方法に該当する。また,原告が提出した甲80〜97及び被告が提出した戊31〜47についても,同様に,時機に後れた攻撃防御方法に該当する。したがって,以下,上記主張及び書証を除く範囲において,前記(1)の主張を判断する。 ア原告は,平成15年合弁契約7条の「重要事項」については,母体4社が別途協議した結果,被告プランテックの「取締役会規程」に定める「取締役会決議事項」がすべて上記「重要事項」に該当することを合意し,これを,平成15年合弁契約締結と同日,同契約の趣旨に基づき締結された平成15年運営契約19条,別添「協議報告事項」中の41事項の「事前協議」事項として定めたが,これが,同契約と同様に平成15年合弁契約の趣旨に基づき締結された平成16年運営契約14条,別紙2「協議報告事項」中の「事前協議」事項としてそのまま引き継がれた,また,取締役決議事項のうち,少なくとも役員人事については,遅くとも平成19年6月19日までに,母体4社が協議の上,上記「重要事項」として定めたなどと主張する。 イしかしながら,上記各契約の契約書の文言を比較すると,平成15年合弁契約7条においては,母体4社の別途協議の上定める「重要事項」について,母体4社の「承認」を得なければならないと定めるのに対し,平成6015年運営契約19条及び別添「協議報告事項」中の「事前協議」事項並びに平成16年運営契約14条及び別紙2「協議報告事項」中の「事前協議」事項においては,当該事項は「事前協議」を要するもののの,母体4社の全員一致による「承認」を得なければならない旨の定めは存在していない。そもそも,上記各運営契約は,母体4社及び被告プランテックの間の重要な権利義務の内容を本件合弁事業の運営内容に即して具体的に明文化して定めたものであるところ,これらの運営契約においては,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を具体化して定めたことを表す規定や,母体4社の「承認」を要する事項を定めた旨の規定も存在しない。 ウまた,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を定める「別途」母体4社の「協議」に関しては,協議の時期,回数,協議した当事者,協議内容,経過等について,原告による具体的な主張がされておらず,「平成15年合弁契約締結と同日,同契約の趣旨に基づき締結された」とか(平成15年運営契約),「同様に,平成15年合弁契約の趣旨に基づき締結された」(平成16年運営契約)と主張される程度である。役員人事につき,遅くとも平成19年6月19日までに「重要事項」として定めたとする「協議」についても,同様に具体的な主張はされていない。そして,これらの「協議」の具体的経過については,これを認めるに足りる証拠は全くない。 エさらに,被告プランテックの取締役会規程7条及び同規程に添付された「取締役会決議,報告事項に関する基準」に定める「決議事項」は,平成15年運営契約19条及び別添「協議報告事項」中の「事前協議」事項並びに平成16年運営契約14条及び別紙2「協議報告事項」中の「事前協議」事項と内容的に重複しており,「役員人事」等の事項をも含むものではあるが,取締役会規程6条において,取締役会の決議方法は,出席取締役の「過半数」をもって行うものとされており,これらの事項について,61「全員一致」により決議しなければならないとは定められていない。また,平成15年合弁契約7条は,「取締役会決議事項のうち」と規定しており,取締役会決議事項のすべてが当然に同条の「重要事項」となると規定しているわけではなく,しかも,上記「取締役会決議,報告事項に関する基準」に定める「決議事項」をもって,同契約7条の「重要事項」とした旨を明示する規定も存しない。 オその他,平成15年運営契約19条及び別添の「事前協議」事項並びに平成16年運営契約14条及び別紙2の「事前協議」事項が,平成15年合弁契約7条の母体4社の承認を要する「重要事項」として定められていたことを認めるに足りる証拠もない。 以上によると,平成15年運営契約19条及び別添の「事前協議」事項並びに平成16年運営契約14条及び別紙2の「事前協議」事項をもって,平成15年合弁契約7条の「重要事項」が定められたと解することはできないから,原告の前記(1)の主張を認めることはできない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告らによる平成15年合弁契約7条,平成16年運営契約14条,別紙2違反の債務不履行については,これを認めることはできないというべきである(なお,原告は,上記に加えて,平成13年合弁契約,平成13年運営契約,平成14年運営契約及び平成15年運営契約の違反を主張していると解する余地もないではないが,原告が解除事由として具体的に主張する事由は,上記の各条項違反であり,かつ,これらの平成13年から平成15年までの契約は,平成15年合弁契約及び平成16年運営契約等によって失効しており,原告が解除事由として主張する行為を被告らが行った時点(平成19年6月)においては,被告らは,これらの契約に基づく義務を負担していないと認められることから,原告の主張する債務不履行の内容としては,原告が具体的に主張する平成15年合弁契約及び平成16年運営契約違反についてのみ,判断すれば足62りるものと認められる。)。 (3)ア原告は,被告プランテックの取締役会について,平成14年4月16日から平成19年5月30日まで,議案はすべて出席取締役による全会一致により決議されていたとか,同取締役会は,取締役会決議事項についての母体各社の承認を確認し実践することを含めて,母体各社の立場からも発言する場と位置付けられていた等と主張し,証拠(甲24〜67)を提出する。 しかしながら,被告プランテックにおいて,そのような取締役会及び取締役会決議の実情があったとしても,そのことは,従前,母体各社の間に深刻に対立するような事柄がなかったことを示すにとどまるものであって,そのような従前の実情によって,必ずしも,取締役会決議事項又はこれと同様の記載のある平成16年運営契約14条,別紙2の事項が,平成15年合弁契約7条の「重要事項」として定められていたことを推認することはできない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,被告カワサキが契約当事者である平成15年運営契約の別添「事前協議」事項には,過半数ルールの規定がないところ,同被告が契約当事者ではない平成13年運営契約にその記載があったことをもって,平成15年運営契約にも,同記載があると解釈することはできない等と主張する。 しかしながら,被告カワサキが本件合弁事業に参加した当時,被告カワサキとしては,「全会一致ルール」の認識はなく,平成15年合弁契約7条の「重要事項」を平成15年運営契約19条,別添の「事前協議」事項とし,これらはすべて株主全員一致の事前承認が必要であるとの説明を受けたり,協議したり,合意した事実はないとの反論,平成15年運営契約等の締結に伴い,出席取締役の過半数をもって決議を行うとする被告プラ63ンテックの取締役会規程(甲16。平成14年4月1日制定)が改訂されたと認めるに足りる証拠もないこと等に照らすと,平成15年運営契約と平成13年運営契約の別添の記載の相違部分をもって,平成15年運営契約に「全会一致ルール」が定められていたと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 ウこのほかにも,原告は,証拠を引用しながら縷々主張するが,平成15年合弁契約7条の「重要事項」や平成16年運営契約14条,別紙2の「事前協議事項」等について,被告プランテック又は母体4社が正式に協議したり決定したことを表す証拠はなく,原告が引用する証拠も,いずれもメモ書きであったり,説明資料の記載等にすぎないこと等からすると,これらの証拠によっても,平成15年合弁契約7条の母体4社の承認を要する「重要事項」が,平成16年運営契約14条,別紙2の「事前協議」事項であると協議の上決定されたと認めるには足りず,その他,これを認めるに足りる証拠はない。 (4)なお,念のため,時機に後れた攻撃防御方法として却下された主張等について判断することとし,この判断に当たっては,時機に後れるものとして却下した証拠も斟酌することとする。 ア原告は,契約書の条項は,「法的に無意味」と解するよりも「法的に意味のある条項」と解すべきである等と主張する。 しかしながら,被告らは,平成15年合弁契約7条の「重要事項」について,法的に無意味であると主張するものではなく,被告プランテックの取締役会決議事項,平成16年運営契約14条,別紙2の事前協議事項等が,上記「重要事項」には該当しないと主張するにすぎないものと解される。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,本件において,平成15年合弁契約の締結日を基準とすると,64平成13年合弁契約締結時(平成13年2月6日)から,平成15年合弁契約締結日の前日(平成15年3月19日)までの間,母体3社は,平成14年運営契約17条,同別添の「協議報告事項」中の「協議事項」及び取締役会決議事項のすべての事項につき,例外なく全会一致で決議しており(甲24〜31),新たに本件合弁事業に参加した被告カワサキも,この事実を前提に,平成15年合弁契約を締結したものであるから,平成15年合弁契約7条の「重要事項」とは,平成15年運営契約19条の別添「協議報告事項」の中の「事前協議」事項(平成16年運営契約の別紙2は,同様の内容である。)及びそれと対応する被告プランテック取締役会規程中の取締役会決議事項である等と主張する。 しかしながら,前記(3)ア,イのとおり,このような被告プランテックの取締役会の実情が存したとしても,また,そのような実情の下で,被告カワサキが新たに参加したとしても,そのことによって,必ずしも,取締役会決議事項又は平成15年運営契約19条,別添の「事前協議」事項等が,平成15年合弁契約7条の「重要事項」として定められていたことを推認することはできないというべきである。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 ウ原告は,平成13年合弁契約9条及び平成15年合弁契約7条の「重要事項」が母体4社間で定められていないという被告らの解釈によると,少数派は,被告プランテックの意思決定にその意思を反映できず,多額の保証債務の負担や倒産時の超過債務の事実上の負担を負うことになり,合弁契約から任意に離脱もできず,競業もできないから,このような被告らの解釈は信義則に反すると主張する。 しかしながら,原告も,被告プランテックの倒産時の超過債務については,法的な負担を負うものでないことを認めていること,母体各社が保証債務を負担した上で,「過半数ルール」により被告プランテックの意思決65定を行うものとしても,必ずしも不合理とはいえないこと,母体各社が保証債務の負担について協議した際の資料(戊43,44)によると,母体各社が「全会一致ルール」により被告プランテックの意思決定をする旨協議した事実はうかがわれないこと等からすると,被告らの解釈をもって信義則に反するということはできない。 したがって,原告の主張を採用することはできない。 エ原告は,「販売統合」の段階の平成13年運営契約と「製・販の完全統合」の段階の平成14年運営契約は,払込資本金額,母体3社の知的財産権の無償譲渡の有無,常勤代表取締役の指名・選任及び業務執行の有無等において異なるから,このような移行に伴い,協議事項の決定の「過半数ルール」が「全会一致ルール」に変更されたとして,?平成14年運営契約21条の「失効条項」により,平成13年運営契約の別添「協議報告事項」の冒頭の「過半数ルール」の文言を失効させ,?平成14年運営契約17条により,平成13年運営契約の別添を,平成14年運営契約の別添に「改訂」し,これ「に従う」ことを明記し,?平成14年運営契約の別添では,平成13年運営契約の別添の冒頭の「過半数ルール」の文言を削除し,?平成14年運営契約は,平成13年運営契約19条のような「見直し条項」を定めなかったと主張する。また,母体各社は,「製・販の完全統合」により,元々合意済みであった「全会一致ルール」に戻すことに何ら異議がなかったなどと主張する。 しかしながら,平成14年運営契約においては,「全会一致ルール」を明記した規定が存在しておらず,かえって,同契約締結直後に制定された被告プランテックの取締役会規程においては,取締役会の決議は,過半数の取締役が出席し,出席取締役の過半数をもって行う旨が規定されている(甲16)。また,同契約締結の際に,被告プランテックの意思決定の基本的なルールを変更したことについては,被告らにおいて,これに反する66証拠(戊39,42,44)を提出している上,仮に,このような基本的ルールが変更されたのであれば,協議の経過や変更の事実は,当然,母体各社及び被告プランテックにおいて文書として保存されているはずであるにもかかわらず,このような文書は一切提出されていないこと等に照らすと,上記変更を認めることはできないといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 オそして,その他,原告は,甲80〜97を提出する等して縷々主張するが,前記説示に照らして,いずれもこれを採用することはできない。 3争点(1)被告らによる合弁契約及び事業運営契約の債務不履行の有無(本訴),(1)-2平成15年合弁契約9条3項,23条,平成16年運営契約8条違反について(1)原告は,被告らは,被告JFE,被告日立及び被告カワサキにおいては,平成15年合弁契約9条3項,23条及び平成16年運営契約8条1項に違反し,平成19年6月の被告プランテックの取締役会において,原告の反対にもかかわらず,偏頗な執行役員制度(執行役員の数が,被告JFE3名,被告カワサキ2名,被告日立及び原告各1名)を導入し,合弁契約9条3項により,原告が指名・選任したYを,?従来の「代表取締役副社長・営業本部長」という執行権限のある地位から?「代表取締役社長補佐」という執行権限のない地位に一方的に移転させ,被告プランテックにおいては,平成16年運営契約8条1項に違反し,原告の反対にもかかわらず,原告が執行権のある代表取締役として指名・選任したYを,被告プランテックの取締役会決議により,執行権のある代表取締役に就任させなかったと主張する。 (2)しかしながら,前記のとおり,上記原告の主張は,平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日以降に提出された準備書面において初めて提出された主張であるから,時機に後れた攻撃防御方法に該当する。また,原告が提出した甲80〜97についても,同様に,時機に後れた攻撃防御方法67に該当する。 (3)なお,念のため,上記争点について判断する(前記2(4)同様,時機に後れるものとして却下した証拠も斟酌する。)。 ア争いのない事実等に加え,証拠(甲8〜11,18〜20,67,86,87)及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 (ア)争いのない事実等(9),(12)のとおり,平成15年合弁契約23条には,本件合弁事業は,母体4社相互の信義誠実に則った協力関係のもとに維持運営されるとの基本理念が定められ,また,同契約9条3項及び平成16年運営契約8条1項には,被告プランテックの代表取締役は,母体4社協議の上,各社がそれぞれ各1名を指名し,選任すると定められている。 (イ)従前,原告が指名・選任したYは,被告プランテックの代表取締役副社長・営業本部長として稼働していた。 (ウ)被告JFEは,平成19年4月ころ以降,被告プランテックの役員人事案として,執行役員制の導入等を提案した。原告は,被告JFEの上記提案について,同年6月19日付け及び同月21日付け各書面(甲8,9)で回答し,執行役員制の導入については賛成するとしたが,具体的な役員人事案のうち,Y代表取締役副社長を取締役社長補佐とする案については,反対し,代表取締役執行役員営業本部長への修正を求めるとした。 (エ)争いのない事実等(14)のとおり,被告プランテックは,平成19年6月21日,取締役会を開催し,その際,次のような議案が提出された。 ?役員改選人事の件(1号議案)では,執行役員制の導入を前提とした上で,株主総会に提案する取締役候補及び監査役候補について提案された。 ?執行役員制の導入の件(2号議案)では,株主総会及びその後の取68締役会における決議を前提として,執行役員制度の導入及び執行役員の人事を内定することが提案された。 (オ)上記平成19年6月21日の取締役会では,検討された議案のうち,1号及び2号議案については,Yを含む原告出身の2名の取締役が反対したものの,他の5名の取締役が承認し,可決された。 (カ)争いのない事実等(15)のとおり,被告プランテックは,平成19年6月28日,取締役会を開催し,その際,次のような議案が提出された。 ?取締役の職務の件(3号議案)では,取締役の職務に関して地位及び担当業務を定めるものとし,Yについては,代表取締役社長補佐とすることが提案された。また,委嘱業務としては,1経営業務全般にわたり社長を補佐すること,及び,2その他の事項(?営業部門に関すること,?CSTプロジェクトの営業部門に関すること,?新市場開拓に関すること,?中・長期経営計画立案に関すること,?転籍措置の推進に関すること,?後進の育成に関すること,?その他特命事項)に関し社長を補佐することとされた。 ?取締役会規程の一部改訂の件(4号議案)では,執行役員制度の導入に係る定款の一部変更に関連して,取締役会規程の一部を改訂することが提案された。 ?執行役員規程の制定の件(5号議案)では,取締役社長を中心とする責任執行体制を明確化し,具体的取扱いについて執行役員規程を定めることが提案された。 ?執行役員の任命及び分担の件(6号議案)では,執行役員の任命及び分担について定めるものとし,被告JFE出身者3名,被告カワサキ出身者2名,被告日立出身者及び原告出身者各1名を,執行役員として任命することが提案された。 (キ)上記平成19年6月28日の取締役会では,検討された議案のうち,693号〜6号議案については,原告出身のY取締役が反対したものの,他の6名の取締役が承認し,可決された。 (ク)以上の経緯により,被告プランテックでは,執行役員制が導入されて執行役員(被告JFE出身者3名,被告カワサキ出身者2名,被告日立出身者及び原告出身者各1名)が任命され,従前,代表取締役副社長であった原告出身のYは,代表取締役社長補佐となった。 イ以上の認定事実によると,平成19年6月ころ検討された被告プランテックにおける執行役員制の導入及び役員人事について,原告としては,執行役員制の導入自体については賛成しており,具体的な役員人事についてのみ反対していたこと,同月21日及び同月28日の取締役会においても,原告出身の取締役は関連する議案に反対したものの,その他の取締役の承認により可決されたこと,原告出身で,従前,代表取締役副社長であったYは,代表取締役社長補佐となったが,代表取締役の地位は維持されており,その委嘱業務につき内容の変更はあるものの,代表取締役である以上,業務執行権自体は,引き続き有すること(会社法363条1項1号)がそれぞれ認められるから,原告の主張する,被告らによる平成15年合弁契約9条3項,23条及び平成16年運営契約8条1項違反の事実があったと認めることはできないというべきである。 ウ原告は,母体4社は,平成15年合弁契約9条3項に基づき,それぞれ業務執行権を有する代表取締役1名を指名・選任する権限を有していると解されるから,原告出身のYを,執行権のない代表取締役社長補佐としたことは,同条項違反であり,また,原告自らが「業務執行権のある被告プランテックの代表取締役」1名を指名・選任できる権限を有すること等が前提だったからこそ,原告は合弁事業にかかわる知的財産権と営業権を無償で被告プランテックに移転し,自らは競業しないことを約したものである等と主張する。 70しかしながら,上記イのとおり,原告出身のYが平成19年6月に就任した「代表取締役」社長補佐の地位は,委嘱業務の内容に変更はあるものの,「代表取締役」として,会社法上,業務執行権を有するから(同法363条1項1号参照),原告の主張は失当であり,同主張を採用することはできない。 エ原告は,執行役員制の導入は,母体4社がイコールパートナーとして経営に関与していくという合弁契約の基本趣旨を変更するものであり,債務不履行は明らかである等と主張する。 しかしながら,上記アのとおり,原告は,平成19年6月時点において,執行役員制の導入自体については賛成していたものであり,役員人事について反対していたにすぎないから,執行役員制の導入が何らかの債務不履行となるものではなく,原告の同主張を採用することはできない。 4争点(3)原告における被告プランテックに移転を約した特許権等の移転登録義務の有無,並びに,被告プランテックに移転済みの特許権の移転登録手続請求,移転済みの資産の返還及びデータの廃棄等請求の可否(本訴,反訴)について(1)争いのない事実等(6)によると,原告は,被告プランテックに対し,平成14年3月29日に締結された平成14年運営契約に基づき,?エンジ統合に当たり,営業権及び別紙特許目録記載の特許権等及びノウハウを譲渡すること(3条),?営業譲渡の対価は無償とすること(4条),?平成15年4月1日をもって,原告については,別紙資産目録記載の事業用資産を譲渡すること(6条)をそれぞれ約したことが認められる。 (2)原告は,平成14年運営契約は,平成20年8月25日に解除されたから,特許権や事業用資産等は,同日以降原告に帰属していると主張する。 しかしながら,平成14年運営契約や平成15年合弁契約及び平成16年運営契約について,解除事由として原告が主張する債務不履行が認められな71いことは前記2,3のとおりであり,当該解除は理由がないというべきであるから,契約の解除を前提とする原告の被告プランテックに対する,登録済みの特許権の移転登録手続請求(請求1本訴(5)),移転済みの資産の返還請求,データの廃棄請求等(請求1本訴(6),(7)))は,いずれも理由がないといわざるを得ない。 (3)そうすると,原告は,被告プランテックに対し,平成14年運営契約により,特許権等の譲渡を約しており,同被告は,同契約に基づき,原告に対し,別紙特許目録1〜5記載の各特許権又はその持分について移転登録手続を,また,同特許目録6記載の各特許を受ける権利のうち,原告の持分について移転手続をそれぞれ求める権利を取得しているから,同被告の原告に対する,特許権の移転登録手続等の反訴請求(主文5項〜7項)については,いずれも理由があるというべきである(同特許目録5記載の各特許権又はその持分は,海外の特許権に係るものであるから,被告らにおいて移転登録手続を請求していない。)。 (4)他方,原告は,平成14年運営契約の解除を前提として,原告の被告プランテックに対する,特許権の移転登録手続をする義務等のないことの確認請求(請求1本訴(2)〜(4))をしているが,上記(3)のとおり,被告プランテックからは,当該特許権のうち我が国の特許権については移転登録手続等の反訴請求がされていることからすると,これに対応する原告の上記確認請求は,確認の利益を欠き,不適法というべきである。 そして,別紙特許目録5記載の海外の特許権については,原告の被告プランテックに対する上記確認請求は,理由がないというべきである。 (5)なお,原告は,?独占禁止法の観点からすると,被告プランテックが9割近い市場シェアを持つ商品を有している状況の中で,被告らに債務不履行があっても,原告が知的財産権等を取り戻せないとの被告らの主張を認めることは,明らかな同法違反であり,認められない,?平成14年運営契約に72基づく営業権,工業所有権,ノウハウ等の無償譲渡は,被告らが,合弁契約及び運営契約を,契約期間中,遵守し続けることを「負担」とする負担付贈与であり,原告は,被告らによる当該契約遵守義務(負担)違反を理由に,合弁契約及び運営契約を解除しているから,被告プランテックは,将来に向かって,負担付贈与の受贈者としての地位を享受できない等と主張する。 しかしながら,このような原告の主張が時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)に該当することは,前記1のとおりである。 また,仮に,この点について判断するとしても,前記2,3のとおり,被告らには債務不履行があるとは認められず,解除は理由がないというべきであるから,契約の解除を前提とする原告の上記主張も採用することができない。 5争点(4)損害賠償請求(本訴)について原告は,被告らの債務不履行により,合弁契約及び運営契約を解除したが,その結果,原告の被告プランテックへの出資が実質的に無駄となり,原告には,その保有する被告プランテック株式相当額の損害が発生したと主張する。 しかしながら,前記のとおり,上記合弁契約及び運営契約の解除については,被告らに債務不履行があるとは認められず,解除は理由がないというべきであるから,原告の損害賠償請求は理由がないといわざるを得ない。 6争点(5)原告における競業避止義務の有無,及び,競業避止義務の範囲(本訴,反訴)について(1)争いのない事実等及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 ア競業避止義務の合意争いのない事実等(9),(12)のとおり,平成15年合弁契約及び平成16年運営契約によると,原告を含む母体4社は,直接間接を問わず,他の当事者の書面による事前の承諾なく,本件合弁事業に属する事業を一切行わないが,平成15年4月1日以前において既に母体4社の子会社,関連73会社が行っている本件合弁事業に属する事業で,母体各社と被告プランテックにおいて協議の上個別に取扱いを決定した事業,並びに,母体4社及び被告プランテックが書面による合意により特に定めた母体各社の事業等については,上記にかかわらず,事業を行うことができる旨を約した(なお,本件合弁事業とは,原告については,平成13年4月1日時点において「機械事業本部産業機械事業センター」が所掌していた事業(ただし,熱間鍛造プレス,プラズマ放電焼結設備に関する事業を除く。)であり,製鉄プラント合弁事業対象製品のうち,別紙製品目録記載の製品に関するもののことである。)。 イアフターマーケット事業(ア)争いのない事実等(12)のとおり,平成16年運営契約によると,平成16年4月1日以後の被告プランテックにおける本件合弁事業に係るアフターマーケット事業の位置付けについては,母体4社と被告プランテックとの間で協議の上,決定するが,協議が整うまでの間は,被告プランテックが,母体4社の本件合弁事業に属する事業を行っている子会社,関連会社にアフターマーケット事業を委託することを基本として,これを行うものとされた。 (イ)そして,争いのない事実等(11)のとおり,被告プランテックと原告の子会社であるSTF間の本件実施許諾契約によると,同契約3条に定める原告が製造又は販売した製鉄プラントの「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む。)」及び「改造」については,STFが取引を行うことができ,被告プランテックは,STFに対し,商号の使用を許諾し,また,設計図面,技術資料又はサービスマニュアル等の技術情報の提供を行い,STFは,上記取引に伴って知り得た顧客からの引き合い及びその進捗に関する情報その他の関連情報を,原則としてすべて被告プランテックに開示するものとされる。また,同74契約6条において,母体4社及び被告プランテック以外の第三者がエンジニアリング,製造又は販売した製鉄プラントに関する「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む。)」及び「改造」については,STFが取引を行うことは妨げないものとされた。 ウ本件実施許諾契約の解約争いのない事実等(19)のとおり,被告プランテックは,STFに対し,平成21年1月16日到達の書面により,平成22年3月31日をもって本件実施許諾契約を解約する旨の申入れをした。 エ原告は,本件訴訟において,合弁契約及び運営契約を解除したとして,原告には,本件合弁事業に属する事業について,競業避止義務が存在しないことを主張している。 オ争いのない事実等(18)のとおり,原告は,平成21年2月23日,本件訴訟の関連事件である仮処分事件において,被告プランテックとの間で和解し,同被告に対し,本件訴訟の和解成立日又は本件訴訟の第1審判決の日のいずれか早い日までの間,本件実施許諾契約3条?に規定された「アフターサービス(設備診断,点検,オーバーホール,予備品を含む)」業務及び「改造」業務をSTFを通じて行う場合を除き,合弁関連事業を行わないことを約した。 (2)以上の認定事実及び前記のとおり平成16年運営契約の解除が認められずこれが存続していることからすると,原告は,アフターマーケット事業について,被告プランテックとの間で協議が整うまでは,同被告が,本件合弁事業に属する事業を行っている原告の子会社,関連会社にアフターマーケット事業を委託することを基本として,同事業を行うことができるものの,本件実施許諾契約が終了する平成22年4月1日以降は,同契約に基づく事業を行うことはできないというべきである(なお,原告は,原告被告ら間の合弁契約及び運営契約は,平成20年8月25日解除されたから,原告には本75件合弁事業に属する事業について競業避止義務がない旨主張するが,前記のとおり,被告らには債務不履行があるとは認められず,解除は理由がないから,原告の上記主張を採用することはできない。)。 そして,上記認定事実によると,原告は,本件訴訟において,合弁契約及び運営契約を解除したとして,競業避止義務が存在しないことを主張しており,また,争いのない事実等(18)の仮処分事件の和解においても,原告は,一定の事業以外は競業しない旨の合意をしているものの,「本件訴訟の和解成立日または本件訴訟の第1審判決の日のいずれか早い日まで」と期間を限定した合意であるから,原告においては,本件合弁事業に属する事業を継続する意向を有しており,競業を行うおそれがあると認めるのが相当である。 なお,前記1のとおり,戊31〜47は,時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条)として却下するのが相当であるが,仮に,却下せずにこれらの証拠に基づいて事実認定を行うとすると,原告は,平成21年2月23日に成立した仮処分事件の和解において,原告から被告プランテックに派遣した役員の退任,原告から出向させた社員の出向解除等について被告プランテックと合意していること(戊34),退任した役員等は,平成21年5月には,挨拶状を作成して送付し,今後とも原告産業機械事業センターにおける製鉄機械事業を継続することを取引先に通知していること(戊38)等が認められるから,これらの認定事実によっても,原告には,競業を行うおそれがあると認めるのが相当である。 (3)そうすると,原告の被告らに対する競業避止義務の不存在の確認請求については,本件合弁事業に属する事業のうち,平成22年3月31日までの本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業についての競業避止義務が存在しないことの確認を求める限度で,理由があるというべきである。また,原告の被告JFE,被告日立及び被告カワサキに対する,本件合弁事業に属する事業のうち,平成22年3月31日までの本件実施許76諾契約6条に基づく事業,及び,平成16年運営契約13条に基づき被告プランテックが委託するアフターマーケット事業についての競業避止義務が存在しないことの確認請求も,理由があるというべきである。 次に,被告プランテックの原告に対する,原告及びSTFを介して,本件合弁事業に属する事業のうち,本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業以外の事業をしてはならない旨を求める請求については,平成22年3月31日までの同契約6条に基づく事業,及び,平成16年運営契約13条に基づき被告プランテックが委託するアフターマーケット事業を除いて,その余の事業について競業避止を求める限度で,理由があるというべきである。 さらに,被告プランテックの原告に対する,原告及びSTFを介して,本件合弁事業に属する事業のうち,本件実施許諾契約終了後の平成22年4月1日以降の本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業をしてはならない旨求める請求については,理由があるというべきである。 (4)他方,原告の被告プランテックに対する,本件合弁事業に属する事業のうち,平成22年3月31日までの本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業以外の事業についての競業避止義務が存在しないとの確認請求については,被告プランテックから原告に対し,当該範囲の事業について競業避止を求める請求がされていることから,原告の上記確認請求は,確認の利益を欠き,不適法というべきである。 そして,その余の,原告の被告JFE,被告日立及び被告カワサキに対する競業避止義務が不存在であることの確認請求,及び,被告プランテックの原告に対する競業避止を求める請求(平成22年3月31日までの本件実施契約6条に基づく事業及び平成16年運営契約13条に基づき被告プランテックが委託するアフターマーケット事業について,競業避止を求める請求)は,いずれも理由がないというべきである。 77第4結論以上によれば,本訴請求のうち,訴えの利益の存しない別紙確認請求目録記載の確認請求については,これを却下し(主文1項),その余の本訴請求のうち,原告の被告らに対する競業避止義務の不存在確認請求については,原告と被告ら間において,本件合弁事業に属する事業のうち,平成22年3月31日までの本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業についての競業避止義務が存在しないことの確認(同2項),及び,原告と被告JFE,被告日立及び被告カワサキ間において,本件合弁事業に属する事業のうち,平成22年3月31日までの本件実施許諾契約6条に基づく事業,及び,平成16年運営契約13条に基づき被告プランテックが委託するアフターマーケット事業についての競業避止義務が存在しないことの確認を求める限度で理由があるというべきである(同3項)。また,反訴請求のうち,被告プランテックの原告に対する,特許権についての移転登録手続請求(同5項),特許権の持分についての移転登録手続請求(同6項),特許を受ける権利の持分についての移転手続請求(同7項),原告及びSTFを介して,本件合弁事業に属する事業のうち,本件実施許諾契約終了後の平成22年4月1日以降の本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業をしてはならない旨求める請求(同9項)については,いずれも理由があり,被告プランテックの原告に対する,原告及びSTFを介して,本件合弁事業に属する事業のうち,本件実施許諾契約3条(別紙契約目録記載の契約)に基づく事業以外の事業をしてはならない旨を求める請求については,平成22年3月31日までの同契約6条に基づく事業,及び,平成16年運営契約13条に基づき被告プランテックが委託するアフターマーケット事業を除いて,その余の事業について競業避止を求める限度で理由がある(同8項)というべきである。したがって,本訴請求及び反訴請求は,上記理由のある限度で認容し,その余の本訴請求及び反訴請求は理由がないから,これらを棄却する(同4項,10項)こととして,主文のとおり判決する。 78 |
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清水節裁判長裁判官菊池絵理裁判官坂本三郎裁判官79確認請求目録1本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(1),同3(1),及び同4(1)記載の各特許権について,移転登録手続をする義務のないことを確認する請求2本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録1(2),同2,同3(2)及び同4(2)記載の各特許権のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,移転登録手続をする義務のないことを確認する請求3本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告が,本訴被告・反訴原告に対し,別紙特許目録6記載の各特許を受ける権利のうち,本訴原告・反訴被告の持分について,移転手続に協力する義務のないことを確認する請求4本訴原告・反訴被告と本訴被告・反訴原告との間において,本訴原告・反訴被告に,別紙製品目録記載の製品に関する事業のうち,平成22年3月31日までの別紙契約目録記載の契約に基づく事業を除いて,その余の事業をしてはならないとの義務のないことを確認する請求 |