審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ12576職務発明対価支払等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ネ10008職務発明対価支払等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成14ネ1567損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ26473特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ワ14399職務発明対価請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 特許を受ける権利 / 承継 / 発明者 / 職務発明 / 改良発明 / 業務範囲 / 無償の通常実施権 / 相当の対価(相当な対価) / 協議 / 自然法則 / 技術的思想 / 創作性(創作) / 製造方法 / 加工方法 / 共同研究 / 共同発明 / 先願の地位 / 技術的範囲 / 出願公開 / 発明の詳細な説明 / 技術的特徴 / 遡及 / 補償金請求権 / 優先権 / 出願変更 / 共有 / 着想 / 時効 / 抵触 / 援用権(援用) / 権利の濫用(権利濫用) / 存続期間 / 特許出願日 / 優先日 / 特許料(維持年金) / 出願経過 / 均等 / 置換 / 信義則 / 禁反言 / 特許発明 / 実施 / 加工 / 構成要件 / 業として / 算定方法 / 実施料 / 共同発明者 / 同意 / 実施権 / 通常実施権 / 実施許諾(実施の許諾) / 設定登録 / 対価 / 請求の範囲 / 拡張 / 変更 / 合理的な理由 / 相当期間 / 国際出願 / 国際公開 / 追認 / |
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事件 |
平成
17年
(ワ)
11598号
職務発明の対価請求事件
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原告 P1 上記訴訟代理人弁護士 川中宏 同 脇田 喜智夫 被告 新日本理化株式会社 上記代表者代表取締役 藤本万太郎 上記訴訟代理人弁護士 山上和則 同藤川義人 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2009/08/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,原告に対し,309万8764円及びこれに対する平成17年12月13日から支払済みに至るまで年5%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを25分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1原告(1) 被告は,原告に対し1億円及びこれに対する平成17年12月13日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2(3) 第1項につき仮執行宣言2被告(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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事案の概要
1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない )。 (1) 当事者ア 原告(昭和18年生)は,名古屋大学工学部合成化学科を卒業後,昭和41年4月,被告に入社し,技術部研究室に配属され,新製品の研究開発に従事し,昭和42年4月1日から昭和44年4月1日まで,名古屋大学大学院工学研究科に在籍して研究を行った。その後,原告は,研究部主任研究員(昭和50年2月1日 ,研究第三部付部長(平成2年 )8月1日 ,新規開発部主席研究員兼研究開発推進室部長(平成4年1 )0月1日 ,研究部主席研究員(平成9年6月1日,研究部部長(平 ))),( ) 成10年6月26日 研究技術本部長付部長 平成14年6月27日,,。, を歴任の上 平成15年1月31日 被告を定年退職した 翌2月1日嘱託に採用され,平成16年1月1日,非常勤嘱託となったが,同年6月30日,契約期間満了により,非常勤嘱託が終了した(乙10 。)原告は,平成15年度には 「自己組織型核剤の開発と半結晶性ポリ ,プロピレン樹脂の高度透明化」によりわが国の化学技術の発展に寄与したとして日本化学会化学技術賞を受賞した(ただし,被告の従業員であ,,, 〔 ,〕。)。 るP2 P3 P4 P5の4名との共同受賞である 甲52 乙1原告は,平成16年,ゲルオールMDのゾル-ゲル相転移の研究により,京都大学から工学博士号を授与された。 イ 被告は,大正8年11月10日,設立された,オレオ製品,化成品,()。 機能製品の製造及び販売等を営業する会社 中間素材メーカー である3設立当初の社名は大阪酸水素株式会社であったが,昭和23年には酸水素油脂工業株式会社に,昭和42年には現在の新日本理化株式会社に改称された。本社が京都市にある外,東京に支社を有し,京都市,大阪府堺市などに工場を有しており,平成17年11月時点で資本金は56億6000万円,従業員数は約360名である(乙8の1・2 。)(2) 本件各特許権ア 本件発明1ないし7(以下「本件各発明」という )は,いずれも被。 告の業務範囲に属し,かつ,その発明をするに至った行為が従業者の職務に属する職務発明であり,発明者は被告に対し,本件各発明に係る特許を受ける権利を譲渡した。 イ 被告は,いずれの発明についても特許出願し,別紙特許権目録記載の特許権を取得した(以下,同目録の番号に従って「本件特許権1」などという。また,本件各特許権に係る特許を同目録の番号に従って「本件特許1 ,本件各特許権の出願の願書に添付された明細書を同目録の番 」号に従って「本件明細書1 ,本件各特許権の特許請求の範囲記載の発 」明を同目録の番号に従って「本件発明1」などという 。。)ウ 本件特許権1は,平成7年4月2日,存続期間満了により消滅した。 エ 本件特許権2ないし6は 次のとおり 特許料 年金 の不納付によっ ,,()て消滅した。 本件特許権2 平成19年11月15日消滅(満了日:平成19年12月7日)本件特許権3 平成20年3月1日消滅(満了日:平成20年8月24日)本件特許権4 平成20年1月31日消滅(満了日:平成20年9月16日)本件特許権5 平成19年10月4日消滅4(満了日:平成21年10月2日)本件特許権6 平成20年10月31日消滅(満了日:平成21年3月3日)(3) 被告製品(発明の実施品)被告は,昭和47年ころ,プラスチック容器などの材料となるポリプロピレン,ポリエチレン樹脂等を製造するにあたり添加する核剤として,ゲルオールDを製造,販売をしていたが,その改良品として,昭和57年ころからゲルオールMDを,平成3年ころからゲルオールDHを,平成11年ころからゲルオールMD-LM30をそれぞれ製造,販売している(なお,ゲルオールDHについては,平成11年ころ製造を中止した 。。)(4) 従業員の発明に関する被告の規程ア 被告は,昭和62年4月1日から施行された職務発明規程(以下「被告規程」という。)(乙7)を定めており,その後,平成元年4月1日(乙9,第2版 ,平成14年6月7日(乙4,第3版 ,平成17年 ))10月1日(第4版)に改訂をしている。 なお,本件発明1ないし7と被告規程の施行,改訂の先後関係は以下のとおりである。 昭和52年 3月22日 本件発明1の出願昭和62年 4月 1日 被告規程(乙7)の施行昭和62年12月 7日 本件発明2の出願昭和63年 8月24日 本件発明3の出願昭和63年 9月16日 本件発明4の出願平成 元年 4月 1日 被告規程の改訂(第2版 (乙9))平成 元年 3月 3日 本件発明6の出願平成 元年10月 2日 本件発明5の出願平成10年 7月 7日 本件発明7の国際出願5平成14年 6月 7日 被告規程の改訂(第3版 (乙4))平成17年10月 1日 被告規程の改訂(第4版)イ 被告規程(乙7)(権利の帰属)3条1 従業員が職務発明に係る特許を受ける権利又は特許権を取得したときは,会社はこれに関する一切の権利を承継するものとする。 , 2 従業員が社外の個人,又は団体と共同して職務発明をなしたときはその従業員の発明に関する持分の承継は前項の規定によるものとする。 3 従業員が行った会社の業務に属する発明であって,職務発明に該当しないものについては,会社は発明者の同意を得て,その権利を承継する。 4 権利の承継は,会社と当該発明者との間に譲渡証書を作成して行い,これを相互に保管するものとする。 (特許を受ける権利の譲渡義務)7条職務発明をなした発明者は,会社が第5条1項の規定により,当該発明者の発明について特許を受ける権利を会社が承継すると決定したときは,その権利を会社に譲渡しなければならない。 (補償金の支給)10条会社は,会社が次の各号に掲げる場合において特許を受ける権利又は特許権を取得し,又は特許発明を実施することにより収益を上げるに及んだときは,当該権利に係る発明をなした発明者に対し,別に定める補償金を支給するものとする。 6(1) 会社が特許を受ける権利を承継し,これを特許出願したとき。 (2) 会社が特許を受ける権利を承継し,これが登録になったとき。 (3) 会社が特許権を譲り受けたとき。 (4) 会社が特許権に係る発明を実施し,収益を上げるに及んだとき。 (出願補償金)11条1 会社は,前条第1号に該当するときは,出願補償金として発明1件につき,5000円を支給するものとする。 2 出願変更,出願の分割の出願を行った場合は,前項の補償金は最初の出願に対してのみ支給し,変更,分割の出願に対しては支給しない。 3 国内優先制度による出願に対しては,原出願と比較して増加した発明件数に対して支給する (第3版で改訂)。 (登録補償金)12条会社は,第10条第2号又は第3号に該当するときは,登録補償金として発明1件につき10000円を支給するものとする (第3版で。 改訂)(実施補償金)13条1 会社は,第10条第4号に該当するときは,実施補償金を支給する。 2 実施補償金は,現に実施されている発明を対象として,特許権が存続する限り,登録日から満5年,10年及び15年を経過した時点で評価し,夫々繰返して支給する。 3 前項の利益額の評価は,第4章に定める職務発明審議会の議を経7て社長の決裁によるものとする。 4 各支給毎の実施補償金の額は,その相当する期間内に発明を実施,。 したことにより得られた利益額の3%とし 50万円を限度とする(第3版で増額改定)(共同発明者に対する補償)14条1 出願補償金並びに登録補償金を受ける権利を有する発明者が2人以上あるときは,均等に分割して各々に支給するものとする。 2 実施補償金を受ける権利を有する発明者が2人以上あるときは,その配分は職務発明審議会の審議を経て決定する。 (5) 職務発明実施補償金等の支給被告は,平成15年10月,被告規程に定める職務発明実施補償に該当,() 。 するとして 合計金65万5000円 乙6 の補償金を原告に支給したまた,被告は,原告に対し,上記65万5000円以外に次の金員(合計5万8800円)を支給している(総計71万3800円 。)本件発明2 出願補償金 2500円登録補償金 5000円本件発明3 出願補償金 2500円登録補償金 1万円本件発明4 出願補償金 2500円登録補償金 1万円本件発明5 出願補償金 5000円登録補償金 1万円本件発明6 出願補償金 2500円登録補償金 5000円本件発明7 出願補償金 1300円8登録補償金 2500円2 原告の請求被告の元従業員である原告は,本件各発明が,原告による職務発明であり(共同発明を含む ,原告は,発明者の1人として,被告に特許を受ける 。)権利又は共有持分を承継させたとして,被告に対し,特許法(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下「改正前特許法」という )35条3。 項に基づき,特許を受ける権利の譲渡に対する相当の対価として算定した6億2280万円のうち1億円及びこれに対する,本訴状送達の日の翌日である平成17年12月13日から支払済みに至るまで年6%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3争点(1) 本件各発明の発明者ア 原告が本件発明1の発明者か否か (争点1-1)イ 原告が本件発明2の発明者か否か (争点1-2)ウ 原告が本件発明3の発明者か否か (争点1-3)エ 原告が本件発明4の発明者か否か (争点1-4)オ 原告が本件発明5の発明者か否か (争点1-5)カ 原告以外の本件発明6の発明者は誰か (争点1-6)キ 原告が本件発明7の発明者か否か (争点1-7)(2) 消滅時効等ア 本件発明1に係る対価請求権の消滅時効 (争点2-1)イ 本件発明6に係る対価請求権の消滅時効 (争点2-2)ウ 本件発明6に係る対価請求の権利濫用 (争点2-3)(3) 本件発明3の実施 (争点3)(4) 本件各発明の相当の対価 (争点4)ア 被告が受けるべき利益の額 (争点4-1)9イ 被告の本件各発明に対する貢献の程度 (争点4-2)ウ 共同発明者間における貢献の程度 (争点4-3)エ 相当の対価の額 (争点4-4) |
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争点についての当事者の主張
1 本件各発明の発明者(1) 争点1-1(原告が本件発明1の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明1の発明者本件発明1の発明者は,P2ではなく,原告である。 イ 先行DBS商品イーシー化学工業株式会社(以下「イーシー化学」という )の代表。 者らは結晶性プラスチックの改質法に関する特許を有し,同社は,ジベンジリデンソルビトール(DBS)を透明化核剤として「EC-1」という商品名で供給していた。 ウ 原告の仮説原告は,前記EC-1(DBS)はゲル化作用及び核剤作用を有していることから,ゲル形成能を持ち,DBSよりも高い融点を持つ誘導体がポリプロピレン樹脂のより優秀な透明化核剤となるという仮説を持っていた。 エ P2に対する指示(m-DTSに対する着目)原告は,昭和50年ころ,誘導体に開発範囲を広げ,P2に対し,メタ-メチルベンズアルデヒド(m-トルアルデヒドと同じ)を用いて,ビス(メタ-メチルベンジリデン)ソルビトール(m-DTS)の予備的な合成をするように指示した。 オ m-DTSの透明化核剤としての性能の確認P2は,原告から指示された通りに,10によりm-トルアルデヒドとソルビトールを反応させる実験を行い,m-DTSを合成することができた。 次いで原告は,P2に対し,m-DTSを含むいくつかの限定された類似物を合成し,これを用いて,ポリプロピレン樹脂の透明化核剤効果の評価によるスクリーニングを指示した。 上記スクリーニングの結果,m-DTSが優れた透明化核剤としての性能を持っていることが判明した(本件発明1の完成 。)カ 特許出願P2はこれを乙18の研究報告にまとめた。そして,被告は,m-DTSについて昭和52年3月22日に本件発明1の特許出願をした。その際,P2が特許出願明細書を起案し,原告が校正した。 キ m-トルアルデヒドのp-トルアルデヒドへの変更,, m-トルアルデヒドは m-トルイル酸製造時に副成するものであるが昭和54年ころ,原告は原料メーカー から,これを取り出す工程がないため,工業化できないと告げられた。 ところが,p-トルアルデヒド(PTAL)なら製造し,被告に供給できるという話が からなされ,もとも, とp-DTSの方が優れた核剤になるのではないかと考えていた原告はp-DTSを合成し透明化核剤として開発することにした。 ク まとめ以上のとおり,本件発明1を着想したのは原告であるから,原告が本件発明1の主たる発明者である。 本件発明1は,ポリプロピレン樹脂の改質法であるが,実質的には,核剤1,3:2,4-ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール(m-DTSのみならず,異性体であるo-DTS,及びp-DTSも同じ性能を持つ)11の物質特許である。その眼目は,メタ(m-)-メチルベンズアルデヒドとソルビトールと反応させて得られるDTSを分子設計して,透明化核剤として提案したことにある。 ケ 被告の主張に対する反論被告は,本件発明1に関し,原告は化合物の指示以外具体的な指導をしていない旨主張するが,誤りである。 【被告の主張】ア 本件発明1の発明者原告は本件発明1の発明者ではない。本件発明1に特有の効果を見出したのはP2である。 イ 原告の指示内容原告はP2に対して,DBSと同じ基本骨格を有する誘導体であるDTSの合成法を検討するように指示していたが,その当時はゲル形成能の検討(指示)に止まっていた。 その後,被告は,イーシー化学から,ゲルオールDがゲル化剤としてのみならず,これをプラスチック改質剤(透明性や寸法安定性の向上をもたらす )としての効果を有するとの情報を得た。 。 そこで,原告はP2に対し 「DBSの誘導体についてポリオレフィ ,」,, ン樹脂の透明性改質効果を検討するように との指示をし 具体的には11種類(うち2種類は比較対象)の検討対象を指定した(乙18 。)ウ P2の実験と発見P2は実験をした結果,上記11種類の検討対象のうち,DTSにつ,「,。 」 いて 少量添加で樹脂物性の低下なしに すぐれた透明性向上を示すという独自の効果を有することを見出した。 エ まとめ以上の経緯からすると,P2が本件1の発明の独自の効果を具体的に12想到した者として,発明者であるというべきである。 これに対し,原告は,DTSを含む11種類の物質についてポリオレフィン樹脂の透明性改質効果を検討するように指示した者であるが,原告が指定した化合物は誘導体として容易に発想できるものであり,ゲルオールD以外で取り敢えず,すぐに評価できるものについて指示したに過ぎない。 本件発明1については,? 11種類の検討対象の中でDTSのみが特段の透明性向上効果を有するものであること,? 結晶性プラスチックの中でも結晶性ポリプロピレンについて上記効果をDTSが有すること,? 少量添加で樹脂物性の低下なしに上記効果を生じることについて具体的に想到した者ではない以上,発明者とはいえないというべきである。 (2) 争点1-2(原告が本件発明2の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明2の発明者本件発明2の発明者は,P6ではなく,原告である。 イ 本件発明2の技術的背景ゲルオール製造プロセスの効率化の課題被告は,昭和47年からゲルオールDを製造していたが,従前の製造法は低濃度のものであったため,利益を増やすためには,高濃度製造法を発明し,製造過程を合理化,効率化し,収率を高める必要があった。 高濃度製造法として連続式製造法と回分式製造法が考えられたが,それぞれ問題点があった。 ウ P6による研究とその失敗(ア) 連続式高濃度法特許原告は,P6とともに, 高濃度製造法の13研究に取り組み,連続法を開発しようとし,P6に対し,ゲルオールDの連続式高濃度法の研究課題を指示した。 被告は,原告とP6を発明者として,前記連続式高濃度法の成果物として,すべてのジアセタール類を対象とする連続式高濃度法の製造法につき,昭和55年2月1日,特許出願をした(甲27。以下,同出願に係る特許を「甲27特許 ,同特許」に係る発明を「甲27発明」という 。。)この「連続式高濃度法特許」は,原告とP6が行った上記の連続式高濃度法の成果物であったが,硬いゲル状物の生成を完全に抑制することができず,また,鉄粉が発生して反応混合物中に混じってしまう,, など 連続式高濃度法特許ではゲルオールDの改良製造は困難であり使いものにならなかった。 (イ) 回分式高濃度法特許原告は,回分式高濃度法の研究にも取り組み,スラリー濃度の上限を明らかにする研究を進め, 回分式高濃度法を発明し,被告は,原告とP6を発明者として,昭和55年5月16日,その特許出願をした(甲28。以下,同出願に係る特許を「甲28特許 ,同特許に係る発明を「甲28発明」という 。 」。 )この特許は,スラリー濃度の上限を明らかにし,また,回分式高濃度法は,前駆体の連続滴下でも,一括仕込みでも可能であり,反応方法としては,高濃度スラリー下で,高い選択率で収率よく目的とするアセタール類の製造を可能とする道を開くものではあったが,回分式,, 高濃度法では 大型装置で効率的且つ十分に強制攪拌する必要がありその場合,攪拌翼に大きな負荷が生じてしまうため,大型装置化が困難であり,そのため 「反応缶」の選択が研究開発と不可分の関係に ,あった。 14(ウ) P6の研究からの離脱以上のように,本件発明2の完成の前には二つの改良発明が存在したが,この二つの発明は,回分式あるいは連続式にかかわらず,いったんはいずれも失敗した。 P6は,昭和55年8月,この研究から離れた。 エ 原告による研究の継続原告は,P6が研究から離れた後も,新しい高濃度法の開発に取り組み,昭和57年から昭和60年の間に,次のとおり,着想し創作した。 (ア) 発想の原点1原告は 「予備反応物(前駆体:液体)の連続仕込み方法によりゲ ,ル粒子が形成され,ひいてはゲル形成能の劣る品質の製品とならざるを得ない」とのP6の連続製造法の結論に再吟味を加え,予備反応物(液体)の連続仕込みによるゲル粒子の形成は本質的な現象でなく,低減され許容範囲に抑制できるものと推論した。 (イ) 発想の原点2原告は,反応速度を平均滞留時間pで表現できると思われる本件反応の本質を吟味することにより,回分法における予備反応物(液体)の仕込み速度を段階的に上げてゆく間欠的仕込みと内容物の増加をさせつつ反応する構想を着想した。 (ウ) 以上の発想の原点1及び2の推論から,本件発明2の着想「反応基質とメタノールの予備反応物を連続的または間欠的に添加して,少量」。 の反応から出発して膨大な量の生成物に増大させる方法 が誕生した(エ) 回分式高濃度法の改良原告は,連続式高濃度法はあきらめ,回分式高濃度法を推し進めたところ,研究を継続し 「一定の速度」で仕込 ,15むのではなく 「反応の進行につれて仕込み速度を増大させながら加 ,えて生成物を増加させ,反応缶を満たして,反応を完結させる」独創的な方法を確立し,を確立した。そして,を作り上げた。 原告は,こうして原告は画期的な第2世代製造技術を創作した。原告のこの独創的な方法を示したものが,昭和60年3月19日付の甲21研-2062「ゲルオールD誘導体の新製造法」であった。 オ 特許出願原告は,P6とともに新しい製造法の課題に取り組み,失敗続きの中で苦労を分かち合ったという意味で,P6の名前も加えることにし,被告は,昭和62年12月7日,本件特許2として出願した。 なお, については,被告の競合他社に対する優位性確保のため,ノウハウとして保持するものとし,本件特許2では開示していないが, と本件発明2の実施は不可分のものである。 カ まとめ本件発明2は,原告の発明した を製造面で発展させた回分式高濃度製造法である。それは, であり 「5価以上の多価アルコールと芳香族アルデヒド類と低級アルコー ,16ル及び要すれば酸触媒からなる均一溶液もしくは懸濁液を連続的に又は間欠的に仕込み,反応缶内の内容物の容量を増加させつつ反応させる」ところに特徴がある。すなわち, 多量の前駆体原料を 「一定の速度」で仕込むのではなく,反応の進行につれて ,仕込み速度を増大させながら加えて生成物を増加させて反応をさせるという独創的なものである。そして,その製造法は, の使用を不可欠としている。 したがって, を製造面で発展させ,回分式高濃度製造法と,同時にこれを可能とするを創作した原告が本件発明2の発明者である。 キ 被告の主張に対する反論(ア) 本件発明2の特徴について被告は,P6が反応前駆体を仕込む実験をしたことを根拠に,P6のみが本件発明2の発明者である旨主張するが,反応前駆体を仕込むことは,甲27で公開済みで,本件発明2の出願時には公知であるから,本件発明2の本質的要素ではない。 (イ) P6の着想についてa 被告主張のP6の「連続仕込み法」なるものは,本件発明2の回分法の着想ではなく,連続法の着想である。本件発明2は回分式高濃度製造法であり,連続式高濃度製造法ではない。したがって,P6は本件発明2を発明したことにはならない。 b 被告は,乙31の週報ノートの記載を根拠にして,P6が「連続仕込み方法」により内容物の容量を増加させつつ反応する回分法を完成するための実験をした旨主張するが,実験の目的は,連続反応における平均滞留時間p(反応速度の目安)を得ることにあり,内容物の容量を増加させつつ反応する回分法を完成するための実験とは17関係がない。P6には回分法完成の意図も着想もなく,回分法完成の意図も着想もノートに記載されていないから,上記実験は本件発明2とは無関係である。 c 被告は,P6が 「反応後半のジベンジリデンソルビトールが多 ,量に存在する時期に を連続仕込み,反応選択率が向上することを期待した」旨主張するが,事実に反し誤りである。 (ウ) P6の研究の失敗について連続式高濃度製造法の研究途中における連続反応テストの中間報告を記載した週報(乙33)のとおり,P6はゲルオールD連続製造を目的とする を用いた研究を行っているが,この研究でP6自身が昭和53年10月2日付で下した結論は,,」 本反応に対し このまま供するには不適当であるというものであった(甲20 。たしかに,反応前駆体を仕込む実験 )はP6が初めて実行したものであるが,P6は本件発明2の製法を意図して実験を行っていない。P6は,研究に失敗したまま,昭和56年,異動で原告の部署を転出し,その後は,全くこの研究から離れている。 (エ) 本件発明2の完成時期について被告は,昭和53年に本件発明2が完成していた旨主張するが,そうすると,どうして,昭和55年になって回分式高濃度法特許(甲28特許)を出願したのか,また,被告は,ゲルオールDの高生産性の連続製造プロセスの必要性を昭和52年当時に認識していたのに,なぜ,高濃度製造法の製造設備の建設を10年近くも放置したのか,疑問である。 18【被告の主張】ア 本件発明2の発明者本件発明2の発明者は,原告ではなく,被告の従業員であるP6である。 イ P6による研究の開始P6は,昭和52年4月,被告に入社し,研究部に配属され,原告の部下となり,原告から研究テーマ「ゲルオールDの高生産性連続製造プロセスの開発」の研究担当に指名され,原告によって選定された1L卓上ニーダー(強制混練り機)を用いて 「反応基質濃度の高濃度化にお ,けるゲル化剤の製造方法の検討」及び「高濃度製造法における)分散 (媒の再検討」をするように指示を受けた。P6は,この指示以外に,本件発明2に係る着想や具体化の助言などを原告から受けなかった。 ウ 研究の進展P6は,昭和52年4月,原告の指示通りに,分散媒の再検討を行った。その結果, 分散媒とするプロセスが良好であると判断し,原告に報告した。それ以降,P6は,分散媒系における高濃度製造法を検討した。 ,, , , 次に P6は 昭和52年5月から6月まで 前記ニーダーを用いて被告の従来製造法の基本操作を回分式高濃度製造法に応用し検討した。 エ 本件発明2の着想P6は,昭和52年10月,高濃度製造法の連続法についての検討を,, , , 始め まず 当時の製造方法の連続化を想定して予備検討し その結果原料の「連続仕込み法」が有効であることを確認した。 そして,P6は,反応後半のDBSが多量に存在する時期に連続的に仕込むことによって,反応選択率が向上することを期待した。 19P6は,上記発想を基に,原料の「連続仕込み法」を検討した。 オ 本件発明2の完成P6は,を確認し,前記方法は高反応選択率でDBSを得ることができる方法であると判断した。 P6はこの製造方法を自ら考案し,実験検討し検証して,昭和53年10月,本件発明2を完成させた。そして,P6は,本件発明2が生産レベルでの高濃度製造法を構成するプロセスの一つとして有効と考え,「連続仕込み法」として原告に報告した。その後も,P6は,ゲル化剤の合成・製造に関する研究に従事し昭和55年8月,研究部門の研究室が統廃合されて,研究四部体制に編成され,第2研究室が研究第四部に編成され,P6は,その研究第四部の部内異動で,研究室を移った。 カ 特許出願本件発明2の発明者は,P6であるが,P6の上司であった原告が,発明者ではないにもかかわらず自らを発明者に加えて,昭和62年12月7日,特許出願の手続をした。 原告は,昭和53年に本件発明2が完成していたにもかかわらず,昭和55年に甲28特許を出願したことや,高濃度製造法の製造設備の建設を10年近くも放置したことが疑問である旨主張するが,どの技術をいつ特許出願するかは,当時の研究部の考え方や状況によるところがあり,昭和55年に甲28特許を出願したことに特段に不合理な点はないし,また,高濃度製造法の製造設備の建設を10年近くも放置した事実20はない。 キ 原告の主張に対する反論(ア) 本件発明2の特徴について原告は,本件発明2の特徴は,仕込み速度は「一定の速度」ではなく反応の進行につれて仕込み速度を「増大させる」ことであり,それを原告が創作した旨主張するが,反応の進行につれて仕込み速度を増大させることは,本件明細書2には記載があるが,単に好ましい態様の例示に過ぎず,当業者が適宜選択することができるものと記載されているのであって,特許請求の範囲の構成要件ではないから本件発明2と関係がない。 (イ) 原告のP6への指示について原告は,原告がP6に連続式高濃度法の研究課題を提示した旨主張するが,P6は,原告から「高濃度製造法の検討」及び「 高濃度製(造法における)分散媒の再検討」をするように指示を受けたのみで,その他に本件発明2に係る指示を原告から受けたことはない。なお,ゲルオールDの高生産性の連続製造プロセス開発の必要性に関し,課題を設定・指示したのはP7社長(当時)であり,原告は,その研究課題の研究担当者にP6を指名したに過ぎない。 (ウ) 原告の本件発明2についての着想,関与について原告は,本件発明2の課題設定を行い昭和52年ころから昭和62年ころまでの10年間にこれに取り組んだ旨主張するが,否認する。 原告は本件発明2に関して,本件明細書2を作成し,その中間処理を協力し,P6の発明を利用した工業化に向けて技術課と共同して試作(甲21)したに過ぎない。これらの事実から,原告が発明者であると言えないことは明らかである。 (エ) について21原告は,原告が,本件発明2の, 回分式高濃度製造法を創作し,その製造法には, 使用が不可欠であり, 原告が創作した旨主張するが,原告が創作したという具体的な証拠はない。本件明細書2には,回分式高濃度法が であるという開示若しくは示唆される記載はなく,本件発明2の構成要件でもないから, の創作者と本件発明2の発明者とは関係がない。 (3) 争点1-3(原告が本件発明3の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明3の発明者本件発明3の発明者は,P8ではなく,原告とP9(旧姓はP10)である。 イ 本件発明3の特徴本件発明3は,位置異性体が0.2重量%以下のDBS類の精製物に対して,アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物を配合することにより,安定した高品位ゲルオールMDを作ることを目的とするものである。 なお,被告は,本件発明3と高品位ゲルオールMDの開発とはまったく異なる技術である旨主張するが,本件発明3は 「高品位ゲルオール,MD」の課題で開発した技術であり,このことは,本件発明3の開発経緯を見れば明らかである。 ウ 研究の開始(位置異性体の除去)昭和57年9月,市場に出されたゲルオールMDは,ポリプロピレン樹脂配合のため,僅かに柑橘臭を生じ,異臭と感じられた。 原告は, であると考え,その考えを昭和58年9月9日付研究報告書(乙37添付資料1)にま22とめた。 原告は,次のとおり, 作業仮説をたてて実施し,DBS類の精製物の位置異性体の性質を利用して位置異性体を0.2重,。,, 量%以下にすることを試み これを実現した その上で 原告とP10は昭和63年8月8日付研究報告書(乙96)を作成した。 (ア) ゲルオール類の製造フロー(乙36)において,(イ)(ウ)エ 発明の完成(アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物の配合によるゲルオールMDの安定化)(ア) 原告は,P10とともに,を確かめ,昭和62年4月9日付研究報告書(甲22)にまとめた。 (イ) なお,仮に,エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)がアルカリ性有機アミン化合物でないとしても,原告は,について,その役割について,次の3点を着想・予測して実験を実施した。 ? 作用しやすい中和剤の役割23アルカリ金属化合物は,反応溶媒の に溶解しないので, に分散しているゲルオール凝集粒子中の酸触媒との接触が困難なため,中和しにくいが,は に溶解するので, で中和されずに残った酸触媒を確実に中和する。 ? ゲルオールの熱安定化の役割ゲルオール結晶が融解する時,熱分解? 成形時のゲルオールの安定化の役割ポリプロピレン樹脂へゲルオール核剤を配合して加熱成形するときの加熱過程において,最初に,次に,ポリプロピレン樹脂が170℃で溶融し,液体となった が溶融樹脂に均一に分子分散するが,この時,溶融樹脂中の重合触媒残渣から極微量の強酸が発生するが,これらは,瞬時に にトラップされて,酸強度を失う。さらに,240-270℃の成形温度に到達して,ゲルオールが分子分散した時,ゲルオール分子を加水分解する強酸の存在がない。 オ 特許出願原告とP10は,この成果をまとめ,被告において,昭和63年8月24日,原告とP10を発明者として,本件発明3を特許出願した。 なお,その後,原告とP10は,特定の3級アミンの安定化効果を再確認し,昭和63年11月13日付研究報告書(甲23)にまとめた。 カ 被告の主張に対する反論,,。 被告は 本件発明3の発明者はP8である旨主張するが 誤りであるその理由は次のとおりである。 24(ア) P8の行った実験は, 方法の追試実験を行うとともに,を追認するというトレース実験をしたに過ぎない。したがって,P8が,本件発明3の発明者となることはない。 (イ) P8は,原告の作成した昭和58年9月9日付研究報告書(乙37添付資料1)に記載されたPTAL発生のメカニズムを基礎にした上で,を実施し,研究報告書(乙34添付資料1〜3)にまとめているが, を記載している。P8は,ゲルオールMD-Hについての安定化技術の確立に失敗したから,特許の出願手続を行わなかったものと思われる。 【被告の主張】ア 本件発明3の発明者本件発明3の発明者は,被告従業員のP8である。 P8は,昭和53年4月,被告に入社し,研究部に配属され,昭和59年6月からファイン事業部でゲルオールM-MDの開発やゲルオールDの高濃度法試作に携わり,昭和61年4月から,商品開発部に異動になり,その際,原告も商品開発部に異動となったが,P8の直属の上司は,原告からP11部長に変わった。以後,P8は,P11の指揮の下で,昭和62年から,低臭気ゲルオールの開発に従事し,昭和63年4月からゲルオールDHの試作検討業務に携わり,現在は技術開発部で樹脂添加剤1チームのチームリーダーを務めている。 イ 本件発明3の課題ゲルオールMDは,ポリプロピレン樹脂の優れた透明化核剤として使用されていたが,原料に用いるp-トルアルデヒド(PTAL)は,臭() , , 気感度 臭気閾値 が高いため 製品中のPTALの低減を目的として25多くの検討がされてきた。 ウ P8による研究(ア) P8の着想P8は,前記2つの課題を次の2つを実現することで解決しようとした。 ? 溶剤精製による製品中のアルデヒド量の低減? 安定剤の添加による熱安定性の向上(イ) 溶剤精製による製品中のアルデヒド量の低減についてP8は,を見出したが,との結論に達した。 以上の一連の研究開発について,P8がその上司であるP11及びP12部長の指揮の下で行ったものであり,原告の関与は一切なかった。 (ウ) 安定剤の添加による熱安定性の向上についてP8は,を報告した(乙34添付資料3:昭和63年7月30日付研究報告書 。また,熱安定性試)26験を行い,安定化効果を確認し,昭和63年8月22日,その結果を被告のゲル化剤会議で報告した。 エ 本件発明3の完成上記アミンをであって,これは,本件発明3と同じである。 オ 特許出願原告は 昭和63年8月22日開催の上記会議に出席し 準備書面(9) ,(26頁 ,P8から報告を受けるなどしていたから,P8の上記研究内 )容を容易に知ることのできる立場にあり,P8に無断で,原告及びP10を発明者として,本件発明3についての特許出願手続を行い,被告において出願した。 カ 原告の主張に対する反論(ア) 原告の実験内容についてa 原告は,原告及びP10連名の昭和62年4月9日付研究報告書(研-2185「高品位ゲルオールMDの製造法 (甲22)を根」)拠に,原告が本件発明3の発明者である旨主張するが,他方で,原告は,上記研究報告書に記載されている研究に基づいて出願された特許について,本件特許3とは全く異なる特許であると認めているから,原告の主張は失当である。また,原告は,EDTAが本件発明3に係るアルカリ性有機アミンである旨主張するが,他方で,上記研究報告書(甲22)が,本件発明3と全く別であることを認めているから,原告は本件発明3の発明者でないことを自認しているに等しい。 b 原告は,本件発明3の着想に係る実験を行い,発明の有効性を実27証し,前記研究報告書(甲23)にまとめたと主張するが,同研究報告書に記載されている実験は 行われていて,原告が着想したという 行われてはいない。 (イ) 位置異性体の除去についてa 原告は, が本件発明3の基礎にあるノウハウである旨主張するが, は本件明細書3に何ら記載されていない。 bについて原告は, 作業仮説をたてて実施した旨主張するが,以下のとおり,原告の主張する作業仮説には間違いがある。 (a) であり,この反応により得られたものは,反応粗物であり,精製物に当たらない(0.2重量%以下の精製物といえない 。また,。)はあり得ない。 (b) 中和は,また,アセタール類は,本件明細書3が示すとおりは起こらない。 (c) 水洗工程は,本件発明3における溶剤精製には当たらない。 (d) なお,原告が発想したという は,原告が検討する以前から被告製造現場で既に行われているから,原告の着想で28はない。 (ウ) アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物の配合によるゲルオールMDの安定化についてa との主張について(a) がアルカリ性有機アミンであるか否かについて原告は,がアルカリ性物質であり,本件発明3に係るアルカリ性有機アミン化合物であることを前提とした主張をするが,は,酸性であり,本件明細書3においてもアルカリ性有機アミン化合物として例示されていないから,それらはアルカリ性有機アミン化合物でないことは明らかである。 (b) 予備的主張( の発明者について),, 仮に がアルカリ性有機アミン化合物であるとしても原告は, の発明者ではない。原告は,昭和62年4月9日, 検討結果を昭和62年() , , 4月9日付研究報告書 甲22 で報告しているが これ以外にを行っていない。ところが,被告品質管理課は昭和57年には を報告している。さらに,遅くとも昭和61年6月ころには, において, をしており,されている(乙164,165 。したがっ)て,上記研究報告書(甲22)は,を除けば(これについては調査していないが ,原告が検討を開)始する以前に,被告において既に実施していたものを,原告らが改めて実験し,その確認結果を報告書にしたものに過ぎない。 b を使用したという実験について(本件発明3の特29許出願時期と原告主張の矛盾)原告は,本件特許3の出願日である昭和63年8月24日より以前に本件発明3に係る アルカリ性有機アミン)について全く検討していない。 昭和63年11月13日付研究報告書(甲23 ,平成元年7月1日付研究報 )告書(甲24)はいずれも本件特許3の出願後の作成である。本件特許3の出願前に,P8だけであり,P8はこれを昭和63年8月22日,原告も出席した会議で報告している(乙163 。また,)本件明細書3は,昭和62年2月23日出願のジベンジリデンソルビトール類の製造方法に関する特許(甲39)の明細書とほとんど同一であり,相異点は,アルカリ性有機アミンに関する記載が異なるのみで,P8の結果を聞いてから出願までに2日もあれば,十分に記載できる内容であること等からすると,原告は,P8の実験を元に,自らが発明したかのように装って特許出願を行い,出願後にデータを取ったと考えられる。 (4) 争点1-4(原告が本件発明4の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明4の発明者本件発明4の発明者は,P10ではなく,原告である。 イ課題被告のゲルオールMDの納入先で,ポリプロピレンペレットを高速押し出し成形する際 成型機の上限温度の制約のため ゲルオー ,,ルMDの未溶解物が発生する(融点が低ければ解消される ,ゲルオー。)ルMD特有の臭気のため,多量のライン洗浄用の樹脂を必要とするとい30う問題があった。 なお,ポリプロピレン樹脂に核剤を配合して成形する際に発生する臭気は,核剤の微量の加水分解により発生する反応原料のアルデヒドに基づくことは解明されており,()。 を確認済みであった 乙37添付資料1???ウ 原告の着想原告は,前記課題を解決するための具体的な着想を次の作業仮説によって立てた。 (ア) 低融点化は,2種類のアルデヒド混合物を用いてソルビットと反応させることにより達成される。即ち,1段階製造方法により4種類のジアセタールの均一混合物を得るので,融点降下が発生する。 (イ) 無臭性は,により達成される。 PTALの使用は避ける。 (ウ) 高透明化の性能は,DBALを必須アルデヒドの一つに設定すると達成される。なぜならば,溶融ポリプロピレン中で,冷却過程において自己組織化により破断面の直径が10nm の4種類のジアセタール体が一体化して網目構造を形成して,あたかも核剤の網目構造体のごとく溶融ポリプロピレンに作用するからである。 (エ) DBALの反応性の悪さは,混合アルデヒドを用いたアセタール化反応によって解消される。 31エ 原告のP10に対する指示原告は,上記仮説に基づき,新規非対称ゲル化剤の合成(DBALとEBAL)と,核剤性能評価を部下のP10に指示した。 その後,原告は,P10と事前討議を経て,? DBAL + EBAL? EBAL + BAL? DBAL + BALのを決定し,これらの実験,評価を実施した。 原告は,P10の実験の結果,原告の着想の前記(イ)a,b,cの妥当性を確認した。 オ Zの範囲の特定そこで,原告は,P10に詳細実験への移行を命じた。 原告は 研究報告書をまとめるに当たりP10が甲31に係る特許 以 ,,(下「甲31の特許」という )を知らないため,選択発明に必要な評価 。 点の追加実験を具体的に指示し,選択発明に必要なデータをそろえた。 原告はP10を指導して乙37添付資料5の図4を作成させた。4元ジアセタールの組成と透明化性能の関係が3角座標により余すところなく表示された結果,透明化性能は主に非対称ジアセタールの割合に依存していて,他に特異的に透明化性能の優れる4元ジアセタールの組成は存在しないことが明らかになった。その結果,本件発明4におけるZの範囲を,0.3≦Z≦0.8と特定することができた。 32カ 原告の実験への関与原告は,本件発明4に関する実験をしていないが,P10に対し,原告が創出した合成方法,分析方法及び試料作成と機能評価のシステムの実施方法を教えて,直接指導しているし,核剤の組成分析,核剤の融点測定 PP ポリプロピレン シートの調整PP ポリプロピレン シー ,( ) ,( )トの透明性の評価,結晶化温度の評価などの方法は,すべて,原告が確立したものである。 キ 特許出願(ア) 原告が,特許明細書を作成し,発明者を原告およびP10とする出願依頼書を作成し,被告に国内および外国への出願を要請し,本件特許4として結実させた。 (イ) 選択発明なお,本件発明4は,甲31の発明の選択発明である。甲31の発明と本件発明4によって,初めてゲルオールDHの核剤としての実施が保障されている。甲31の発明は,原告が1人で完成させ,P8と2人を発明者として明細書を作成して出願したものであり,原告は,甲31の発明を先行発明していても,本件特許4が成立するように,左右非対称体DBSの存在割合の範囲と核剤の構成成分を請求範囲に明記した明細書を作成した。 本件発明4は,その着想の経過及び技術的価値ならびに工業的意義を熟知している原告が,明細書を書き上げて,被告が,昭和63年9月16日,特許出願した。 ク 被告主張に対する反論被告は,実験を行ったのはP10であるから,同人が本件発明4の発明者である33旨主張する。しかし,次のとおり被告主張は誤りである。 (ア) P10が行ったわずか3回の合成実験による3種類の生成物と核剤の評価結果を本件発明に結びつけることができたのは,原告の着想・指示が具体的で的確であったからである。 (イ) P10の認識本件発明4は,原告の発明に係る甲31の発明の選択発明である。 しかし,P10は,甲31の発明の特徴や,本件発明4が甲31の発明の選択発明であることすら知らない。 P10は 原告の構想どおりの良好な核剤特性の結果に驚いている 乙 ,(37の2頁の「私の提案内容」の最後のパラグラフに,2つのアルデヒドの組み合わせによって,優れた透明化核剤性能が得られるかはまったく予測できなかったと記載している 。)このようなP10が,確信を持って,提案できるはずがなく,仮に提案していたとしても,甲31の特許に記載されている非対称ジアセタールを復唱したに過ぎない。 なお,原告が前記エ?,?の組合せに固執することはなかった。 (ウ) P10作成の昭和63年3月1日付「ゲル化剤の誘導体の合成」と堕(。「 」。 ) する書面 乙37添付資料3 以下乙37添付資料3書面 というが提案書ではないことa 乙37添付資料3書面には,?提案を示すタイトルがない,?提案の趣旨説明や提案内容の記載がない,? 性能評価,熱安定性試験について,具体的な実験方法の記載がない,? 最提案を支持する文献の記載がまったくないなど,低限記載されなければならない事項が記載されていないから,前記資料3は原告を説得するための提案書であるとは認められない。 b 乙37添付資料3書面は3/4〜3/31の一月間の実験予定表34の記載に過ぎず,また,原告とP10の事前の打ち合わせにより,双方が確認した内容である。 c 日程の再検討指示について原告はP10と研究課題について細部まで十分打ち合わせを行い,その上で,P10は実験計画表を原告に提出した。それが乙37添付資料3書面である。同書面に記入されている「日程の再検討」の原告指示は,P10の初めての合成への挑戦であり,物性の評価まで含めると1か月は短すぎて,とても一人でできるはずがないと直感したため,記載したものである。 d P10は,その後の研究報告書に,乙37添付資料3書面を引用して,P10の貢献を明らかにすることができたはずであるが,P10が作成に関与した研究報告書(乙37添付資料4,5)のどこにも乙37添付資料3書面についての記載がない。 (エ) P10の役割被告は,P10がDBALとBALの組み合わせにおいて特異な効果があることを見出した旨主張するが,P10の着想なるものは公知の化合物を復唱しているだけであり,すべて捏造であるか,あるいは,P10の思い込みである。P10は,非対称ジアセタール化合物について何が新規で,何が公知かの区別すらできていないのであるから,単なる実験者に過ぎない。 【被告の主張】ア 本件発明4の発明者本件発明4の発明者は,被告従業員のP10である。 イ P10が本件発明4を発明した経緯(ア) 原告の指示内容原告は,昭和62年12月,P10に対し,DBALとEBALとの352種類のアルデヒド原料を組み合わせた新規非対称ゲル化剤の開発を指示し,DBALとEBALとを組み合わせた非対称ジベンザールを提案した(乙37添付資料2 。)(イ) P10の提案内容a P10は,原告からの指示を受け,実験計画を立て,昭和63年3月1日,その計画書を提出し,EBALとDBALの組み合わせだけに留まらず,種々のアルデヒドの組み合わせ及びその比率について検討することを提案した(乙37添付資料3)が,原告はDBALとEBALの組み合わせを強く主張していた。原告は,P10の上記計画書に対して,日程を再検討するように指示した以外に何の指示もしなかった。 b 原告は,P10が,初めての合成実験であり,非対称ジアセタールの合成方法を知らないにも関わらず,合成の提案ができるはずがない旨主張するが,P10は,昭和62年5月から,から,P10の行った実験は初めての合成実験ではないし,2種類のアルデヒドを,まして等モル混合物を用いることに,何ら格別の困難性を有するものではない。したがって,原告の上記主張には根拠がない。 c 原告は P10の提案書は 原告との事前の周到な打ち合わせによっ ,,て作成された「実験計画書」である旨主張するが,計画書として重要なのは,計画の内容と実施時期である。P10の提案書を「周到な打ち合わせを行って作成した」という原告の主張は,明らかに,矛盾している 「日程(原文は「日定 )の再検討」を指示する必要 。」が生じたのは,P10が,原告と打ち合わせすることなく,作成したことを明確にしているのである。以上のとおり,P10は,自らの発36,。 案で提案を行い 原告はそれを日程の再検討を指示したに過ぎないしたがって,本件発明4につながる発案を行った者は,原告ではなく,P10である。 (ウ) 研究の実施a 各種誘導体の合成と評価,, , P10は 前記計画書に沿って 新規非対称形透明化核剤の合成と樹脂評価の全てを自らで行なった。この間,原告は本実験には一切従事していない。 実験の結果,次の内容が明らかになった(乙37添付資料4 。)???ことb アルデヒドの割合検討P10は,前記結果が得られた昭和63年5月〜10月から,BALとDBALの組み合わせの割合を変えたものを合成し,樹脂評価を行なった。その結果,ことを見出した(乙37添付資料5 。)(エ) 甲31の発明と相違する点こそ,本件発明4の本質的特徴となりうる部分であり,この部分をP10は発明した。 a 本件発明4は,特定のアルデヒドを組み合わせることで,甲31の発明からは予期されない格別な効果を奏することを見出したことにより,発明に至ったことは明らかである。したがって,単に2種類のアルデヒドを組み合わせることのみを提案しただけでは本件発37明4の発明者になり得ない。単なる組み合わせであれば,甲31の発明により公知の技術にしか過ぎない。P10は,特定のアルデヒドの組み合わせを提案し,その効果を見出した。 b P10は,特定の2種類のアルデヒドの組み合わせに加え,その2種類のアルデビトの比率の変更を提案している。具体的には,実験計画書(乙37添付資料3)にと記載されており,P10がBAL及びDBAL及びその比率を提案したことは明白である。そして,P10がこれら一連の実験を行い,本件発明4の効果を見出した。 ウ 本件発明4の特許出願原告が本件発明4の特許出願の願書の作成を行った。P10は,特許に関する十分な知識,認識がなく,上司が明細書の作成等を行ない,発明者名に上司の名前が入るのが慣習であると思っていたため,内容,発明者等について特に異存はなかった。 エ 原告の主張に対する反論(ア) 原告の着想について原告は,分子設計の具体的な着想として,? 1段階製造による均一混合物による融点効果,? 低臭性アルデヒドの選択,? 混合物が一体化して,核剤として作用する,? 併用アルデヒドによる反応性の向上の4点を挙げるが,以下aないしdの諸点に照らし,原告主張は失当である。 a 甲31の発明には非対称ジアセタール化合物を1段で製造する方法が開示されており,本件発明4の特許出願時には,既に公知情報である。 b 低臭性アルデヒドを選択することは,DBS類の開発担当者であれば誰もが思い付くものであり,特許性を有するものではない。ア38ルデヒドの定性的な臭気評価は昭和58年には既に行われており,被告内では既に共有情報であった。原告らの実験は,これを定量評価したに過ぎない。 c 混合物が一体化して核剤として作用するというだけであれば,特定の構造や,特定の比率に限定されることはない。本件では特定のアルデヒドの組み合わせにおいて,特異的な効果を奏することが特徴である。 d 反応性は,本件発明4を構成する要件ではなく,その向上効果も特筆すべきものではない。 (イ) 原告にはDBAL/BALの着想がなかったことa 原告は,遅くとも昭和63年3月には,原料アルデヒドにEBALを含むと三井東圧の特許に抵触し,実施できないことを認識し,P10にもその旨説明した旨主張するが,次の?ないし?の諸点に照らすと,原告がEBALに固執していたことは明らかである。 ? 昭和63年4月6日付研究計画書(乙166)には,食品用グレードの品質及び性能として,が記載されていること? 原告は, が終わってから(昭和63年1月 ,実際にDHの検討を開始するまで(昭和63年5月)の間 )に,ゲルオールEDの開発を再度命じていること? 甲31の出願時の明細書(乙169)には,EBALとBALの非対称ジアセタールの実施例及びDBALとBALの実施例が記載されているが,DBALとEBALの実施例は記載されておらず,昭和63年9月に,乙169(特開昭59-12951)に係る出願手続の過程で,DBAL/EBALの実施例を追加す39る補正が行われていることb 原告の提案書について原告は,三井化学(当時は,三井東圧ファイン)が,エチル置換DBSをNC-4として上市されており,特許で保護されていたから,EBALを用いた核剤の検討に固執する気はなかった旨主張するが,三井東圧ファインの特許(特開昭56-30449号,乙134)の公開は,昭和56年3月7日であり,原告の提案書は,昭,,, 和62年であるから 公開からすでに7年も経過してから 原告はEBALとDBALとを提案している。EBALが使用できないことがわかっていながら,それを対象から外すことなく提案した事実,。 が 原告がEBALに固執していたことを示す何よりの証拠である自らの提案とP10の提案の間の3か月間に対象化合物を発展したとの原告主張は,公開から7年の年月を無視した,辻褄合わせの主張にしか過ぎない。 (ウ) P8がほとんどP10を指導していたこと原告は,一切の実験を行っておらず,受託研究員として京都大学に出張していたため,P10は,原告に相談できる状況にはなく,P8に相談し,合成や成型・評価等についての助言をもらっていた。また,甲31の発明の基礎となる研究は,P8が担当していた。原告の陳述書(甲52)には,乙37添付資料4(研-2274)の3頁図1を記載し,P10を指導した旨の記載があるが,昭和58年10月11日付研究報告書(乙168)は,P8と原告の連名ではあるが,P8が作成した研究報告書であり,同報告書3頁の図-1は,P8が被告の研究報告書に初めて掲載した射出成形機の図であり,原告が陳述書で述べたような事実はなく,P8がP10に射出成形機の図を渡したのであり,原告が主張する指導はなかった。 40(エ) Zの範囲の特定について原告は,P10に,三角相関図(乙37添付資料5の図4)を作成させ,本件発明4のA成分の含有率Zの範囲を特定した旨主張する。し,, , かし その三角相関図を見ても A成分の最高純度は70%弱でありこれは,P10がアルデヒドを1:1の比率で仕込んだことによるものであり,新たに高純度のものを原告が合成したり,合成させてはいない。昭和63年11月13日付研究報告書(乙37添付資料5)の表により,Zの値に下限のあることが十分に理解されるが,この段階で実質的に本件発明4は完成されていたに等しい。Zに特定の範囲があることを見出したことが発明の本質であり,その数値が多少増減したところで,本件発明4の発明性には全く影響はしない。原告が書かせたという三角相関図からは,本件発明4の特許性に影響を与える新たな事実を見出すことができない。したがって,原告は本件発明4について何の寄与もしていない。 (5) 争点1-5(原告が本件発明5の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明5の発明者本件発明5の発明者は,P8ではなく,原告である。 イ 本件発明5の特徴本件発明5によるDBS類の安定化組成物の製造方法の利点は,によって,結晶内部の酸を効率よく捕捉することにある。 ウ 原告の着想,, 原告は 特定の3級アミン添加により安定化効果があることを着想しそれが妥当であることを実験データに基づき確認した(甲24 。)特定の3級アミンを製品そのものの中に残存させ,中性から弱塩基性41の特定の3級アミンを用いる本件発明5の方法は前例がない。また,原告は,独自の着想によって克服し,本件発明5を特許化することができた。 エ 実施例の実験原告は,の可否について検討して,本件明細書5の実施例の実験をした。 オ 特許出願原告は,本件発明5の特許出願にあたり,明細書を作成している。 カ まとめ以上によると,原告が本件発明5を発明したことは明らかである。 なお,被告は,一方では,特許法上の法的利益を得る場面では,本件発明5の特許出願を行って本件発明5が特許法上の特許発明に値する旨の言動を行っているにもかかわらず,他方では,自己に不利益となる可能性のある場面では,これを否定する主張をしているが,このような被告の主張は,信義則(矛盾挙動禁止原則,禁反言法理)に反し許されない。 キ 被告の主張に対する反論,,。 (ア) P8は 既に公知のアデカ特許(乙38 核剤・アミン組成物特許以下「乙38特許」という。)の追試実験およびアデカ製品の分析を実施したに過ぎない。P8は乙38に先行して,DBS類への特定のアミン配合の効果を発見していないし,核剤組成物を発明していない42し,いわんや核剤組成物の製造方法について実験していないし,発明もしていない。 (イ) P8/P11グループは,昭和62年からとの結論に達し,その開発に失敗した。 ,, ( ) また P8は 昭和63年8月22日付報告書 乙34添付資料4を作成しているが,それは,報告書に過ぎない。したがって,仮にP8が「ジアセタールの着色を防止し,ジアセタールの加水分解によって生じるアルデヒドに起因する異臭が大幅に抑制されたジアセタールを収率よく製造する工業的に優れた方法の提供」に関し,その着想,知見をまとめたところで,乙38特許の「トレース」の域を出ず,新たな特許としての保護を受けるに値しないことは明白である。 【被告の主張】ア 本件発明5の発明者本件発明5の発明者は原告ではなく,P8である。 イ 本件発明5に関するP8の役割(ア) P8による良好な安定剤(脂肪族3級アミン)の発見無臭化ゲルオールの開発課題が透明化核剤の研究担当者の共通認識であった状況下において,P8は,ジアセタールの安定化を検討している過程で,を見出した。 具体的には,を確認43した。 (イ) 脂肪族3級アミンの添加の時期と実験について本件発明5では,脂肪族3級アミン(安定剤)を,中和以降,乾燥前のいずれかの工程において添加することとされているところ,P8は,この点について具体的な実験をしていない。 しかし,P8は,乾燥工程前に添加することについては着想を得て,, いたし 被告においてジアセタールの開発に携わっている者であれば誰でもが思いつくことであった。 また,中和工程より前の段階(すなわち,縮合反応中)に,脂肪族3級アミンを添加することは,触媒の活性を低下させ,反応を完結させないおそれがあるので,必然的にアミン化合物の添加時期は中和以降に限定される。 したがって,P8が,上記添加の時期についての実験を行っていないことが,本件発明5の発明者をP8であると認定することの妨げにはならない。 ウ 特許出願について原告は,P8から報告を受けるなどして,P8の発明内容を容易に知ることができる立場にあったため,P8に無断で自らを発明者として特許出願する手続を被告内で行なった。当時,原告からP8に対して何ら,。 の説明もなく 出願段階ではP8はこの特許出願のことを知らなかった,,, 後日 P8がこの特許の明細書を見た際 特許請求の範囲に記載されたゲルオール類の精製物に対して,アルカリ性化合物とアミン性化合物を,, 用いることは P8の関与した報告書の内容に基づくものと分かったが当時,P8は特許出願手続については熟知しておらず,また,発明者としての権利意識も低く,被告の会社として権利取得できれば,社内で事を荒立てでまで,自分自身に権利帰属させなおす必要もないと考えて,44抗議しなかった。 ,,, 被告は 特許出願や特許補償金の支給の際 発明者を確認しておらず補償金の支給は錯誤に基づくものである。 エ 原告の主張に対する反論(ア) 本件発明5の特徴部分は 「中和以降,乾燥工程までに ,アミン ,」化合物を配合することであるが,原告が指摘する平成元年7月1日付研究報告書(甲24)は, であり,原告は脂肪族3級アミンについて何ら検討していないし,P8の実験後にも,中和以降,乾燥までの間に,脂肪族3級アミンを添加する実験を行っていないのであって,原告が本件発明5の効果を確認していないことは明らかである。 原告は,P8が会議で発表した内容を利用して本件発明5を特許出願したに過ぎない。原告は発明者として特許明細書案を作成したのではなく,知的財産部署が行う業務を代わりに行ったに過ぎない。 (イ) 原告は,本件発明5に係る実験をし,その結果が本件明細書5の実施例であり,実験を行った証拠として,前記研究報告書(甲24)において,本件発明5に関する実験ではない。また,本件明細書5の実施例1には,内容量200lの反応器で行ったことが記載されているが,被告研究所内には,200lの反応装置はない。したがって,現場あるいは機器メーカーでしか,このような実験はできないが,社外の機械を借りるにしても,現場で実験を行うにしても,試作扱いであるから,試作報告書等,あるいは生産記録が残45る筈であるが,原告は,このような書類があるとは一言も主張していない。また,そもそも,そのような実験が行われているのであれば,上記研究報告書(甲24)に記載があってしかるべきである。 (6) 争点1-6(原告以外の本件発明6の発明者は誰か)について【原告の主張】ア 本件発明6の発明者本件発明6の発明者は原告だけである。 被告は,原告以外に,P13,P14,P5,P15,P16,P17,P18及びP19も本件発明6の発明者である旨主張するが,原告以外の者は発明者ではない。 イ の確立と本件発明6の特許出願の経緯原告は,昭和47年1月,有機性ゲル化剤の合成製造法としてを確立した。 本件発明6は, であるのエッセンスともいうべき発明であり,ゲルオールD製造を可能としたものである。また,同法を着想,研究し,完成させたのは原告であり,原告は,誰からも具体的な指導を受けていなかった。 原告は, を開発しながら,その一部(本件発明6に相当)を特許や論文等では開示せず,未公開のノウハウとして保持させていた。 しかし,ゲルオールD製造のための基本特許(乙13 (満了日:平)成元年10月6日)や本件特許1(満了日:平成7年4月2日 ,ゲル)オールMDの樹脂組成物特許(満了日:平成15年1月14日)の特許権存続期間の満了が近づいており,そのような状況下で,もし,競合他社が,本件発明6と同じ技術内容を特許として出願して権利化すれば,46ゲルオールD,ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LMの製造は大きな制約を受けることとなることが予想された。 そこで,原告は,被告に対し,本件発明6について,特許出願することを提案し,P20を共同発明者とする出願がされた。 ウ 被告の主張に対する反論被告は,原告以外に,P13らが本件発明6の発明者であると主張するが,次のとおり,理由がない。 (ア) P13についてP13は,当時,技術部長であり,の具体的な提案をしておらず,また,その立場にもないから,本件発明6の発明者ではない。 (イ) P14についてa 被告は,P14が,エステル系可塑剤合成とゲルオールDの合成は同じ縮合反応であり,を着想した旨主張するが,については,文献上の根拠はなく,また,可塑剤合成は,液体の均一系反応で,しかも異性体の副生がない反応であるのに対し,ゲルオールDは結晶であり,反応における役割は基本的に異なるから,P14の着想なるものは両反応の反応機構の差異をまったく無視した論外のものである。 b 当時の一連の研究報告書の内容は,次の?ないし?のとおりであり,各研究報告書の内容は,被告主張のP14の着想とは無縁のものであり,P14は を着想していないし,P14は研47究に関与せず,原告らを指導していなかったことが明らかである。 ? 研究報告書(乙49の2)同研究報告書は,の合成条件の変化により,をまとめたものである。それには,2研の原告,P15,P21,P22及びP14の名前が記載されているが,P15は原告を補助して分析を担当し,P21,P22は界面活性剤の応用技術者であり合成はできなかったので,補助員として応援にまわったに過ぎない。2研の研究は原告に一任されていて,合成実験はすべて原告が実施している。P14は全く関与していない。 ? 研究報告書(乙47の2)同研究報告書は,報告書である。それには,原告,P15及びP14の名前が記載されているが,P14は,ゲル化剤の新しい実験について具体的な指導やアドバイスをせず,別室で上記研究には全く関係がない可塑剤(エステル)の指導をしていた。 ? 研究報告書(乙40の2 :)同研究報告書は,報告書である。原告,P15及びP14の名前が記載され,, 。 ているが P14は無関係であり P15は分析の補助者に過ぎない(ウ) P5について「2研」では,当時,P5が発案した実験に「AT」の記号を付し48ており,原告は,原告の発案になる実験には「BC」の記号を付していた。原告,P15,P14連名の研究報告書(乙40の2)に纏められている実験は 「BC-32」を記載したものであると被告は主張し ,ているから,被告は,本件発明6の完成となった上記研究報告書の実験がP5の発案ではないことを認めている。 原告は, の改良を基礎的な解明に基づいて完成させているが(研究報告書〔甲19〕表2の実験?のKIシリーズは原告の実験である ,上記研究報告書(甲19)の概要および結論 。)は,ノート(乙51)に記載された合成実験とは異なる。したがって,被告主張の如く,上記ノートの実験によって,の改良ができたのではない。 (エ) P15についてP15は,そもそもゲルオールDの合成実験をしておらず,原告のもとで,分析および応用物性の評価を担当したに過ぎないから,本件発明6の発明者ではない。 (オ) P16についてP16は,ゲルオールDの合成実験をしていないから,本件発明6の発明者ではない。 (カ) P19についてP19は,原告がBC-22の合成実験でほぼ確立し,BC-25の合成実験で本件発明6を完成した後において,P14が招集した会議(昭和47年1月6日)があり,その会議以降に原告の研究に協力した者に過ぎず(6研所属 ,研究報告書(乙46)を見ても )をしておらず,本件発明6の発明者ではない。 49(キ) P17及びP18についてP17及びP18は,いずれも,上記のP14召集の会議(昭和47年1月6日)以降の協力者に過ぎず(7研所属 ,また,研究報告書もな )いから,本件発明6の発明者ではない。 【被告の主張】ア 本件発明6の発明者,,,,,,,, 本件発明6の発明者は P13 P14 P5 P15 P16 P17 P18P19及び原告である。 本件発明6の発明は,P14による指揮の下,大半の研究室,技術部,,。 分析研究室が協力し 各々が役割を担うことにより完成したものであるイ P13の関与P13は,本件発明6の構成要件の一つである「疎水性有機溶媒及び低級アルコールの存在下に」に相当する課題を設定したから,本件発明6の発明者の一人である。 ウ P14の関与(ア) P14は,ことを発想した。 (イ) P14は,各研究室へ実験を割り振り,P14の部下であった原告,P5,P15及びP16に対し,検討内容を指示している。 (ウ) 以上によれば,P14は本件発明6の発明者である。 エ P5の関与P5は,() を見出している 乙51のAT-62が,これは, である。 50以上によれば,P5は本件発明6の発明者である。 オ P15及びP16の関与P15及びP16は,生成物を分析し反応物組成(DBS,副生成物Sの割合)等を考察しており,それによって初めて一つの実験が完了することになるから,本件発明6の発明者である。 原告は,P15及びP16が,合成実験をしておらず分析していただけであるから,本件発明6の発明者ではない旨主張するが,分析の結果を考察することによって検討が進んでいくのであり,合成するだけが着想の具体化とはいえない。 カ P17,P18及びP19の関与(ア) 昭和47年1月6日の会議では,2研,6研,7研において,,,, を確認することになり それに従い 7研のP17P18,6研のP19は着想を具体化する実験を行っている。 (イ) P19は, が適することを定量的に立証した。P19は,本件発明6における脂肪族アルコール について実験を行っているし,ことを結論として導き出している。 (ウ) 以上によれば,P17,P18及びP19は本件発明6の発明者である。 キ 原告の主張に対する反論原告は BC の記号の付された実験は原告の発案に係るものであっ ,「」た旨主張するが,実験記号と発案者(担当者)を結び付ける明確な根拠はない。 (7) 争点1-7(原告が本件発明7の発明者か否か)について【原告の主張】ア 本件発明7の発明者51本件発明7の発明者は,原告,P3及びP4である。P23は発明者ではない。 イ 樹脂添加剤プロジェクトチームの編成,, (ア) ゲルオールの欧州市場の状況は ゲルオールDHは安全審査基準上PLリストへの登録は困難であり,ミリケン社との合意を成立させるか,ゲルオールMDの改良品を開発する必要があった。このため,被告では,平成9年3月,P24社長を統括責任者とする「樹脂添加剤プロジェクトチーム」が編成された。当該プロジェクトチームの研究開発部門の責任者は原告であり,P3,P4らP1チームの研究員とともに参加した(乙114)。 (イ) 溶融ポリプロピレン樹脂へのゲルオールMDの溶解性を向上させるためには,次の4つの方法が考えられた。 a ゲルオールMDの粉体粒子径を小さくして溶解速度をあげる方法b ゲルオールMDの粉体の嵩密度を小さくして分散速度をあげる方法c ゲルオールMDの融点を大きく下げて,成形加工の溶融樹脂と添加剤との混合温度において,固体(ゲルオールMD)/液体(溶融ポリプロピレン樹脂)混合系を液体(低融点ゲルオールMD)/液体(溶融ポリプロピレン樹脂)混合系にして分散(溶解)速度をあげる方法d ゲルオールMDの結晶形(多形)をかえる方法(ウ) 被告において,上記cの方法を選択して研究を重ねた。 ウの試み(ア) の指示P24社長の強い指示で,平成9年6月,原告,P25及びP26が渡米し,ミリケン社に欧州市場の共有化を申し入れたが,ミリケン社の合52意を得ることが出来ず,交渉は決裂した。そのため,原告は,出張先の米国からP3に電話し,他の実験をすぐに止めて,ゲルオールMDへの による融点降下の確認実験に入るように指示した。 (イ) による融点低下成功P3は, により,融点低下を得ることに成功した(乙56添付資料9)。そして,均一配合による仮称ゲルオールを試作した。 (ウ) なお,被告は,平成9年6月30日提出の6月度研究月報(乙56添付資料3)に が記載されていないから,米国から による融点降下の確認実験の指示はでていない旨主張するが,原告の指示に従って,実験担当者は,6月に得ていたが,上記研究月報には記載しないで(膨大な六方晶キセロゲル核剤の研究データを記載),7月の研究月報(乙56添付資料9)に記載したに過ぎない。こうしたデータの翌月へのスライドは,まとまりの良い報告とするため実験担当者がよくとる方法である。 エ の使用の試み(ア) 京都大学における研究成果の説明と提案原告は,京都大学における研究において, とDBSとの強い物理的な相互作用があることを知っていた。このため,を低融点化剤とする発想を提唱できた。 すなわち,原告は,平成10年4月後半ころ,P3,P4及び原告のグループ会議において,京都大学における研究で解明した次の事項の説明と新しい提案をした。 a していくこと53b 使う配合剤は, でなければ欧州開発に間に合わないことc ゲルを形成するゲルオールMDの繊維状構造の形成には,ゲルオールMD分子間の水素結合が大きく関与していることd この分子間の水素結合を弱めることを考えることe ゲルオールD分子は と強い相互作用を示し,水系であたかもポリマーのような曳糸性の構造を形成することf 樹脂の成形の高温では は使えないので,がおもしろい。ゲルオールMDの融点を劇的に下げるヒントにしてほしいこと(イ) P4の研究原告の上記説明と提案に基づき,P4は, を低融点化剤として使用し,劇的な融点低下作用を発見した。 オ 特許出願(ア) P3は,本件発明7につき,発明者を原告,P3,P4及びP23として,出願依頼書(乙56添付資料18)を作成し,被告は,平成10年7月7日,国際出願した。 なお,原告は本件発明7の特許出願依頼書に押印する際,発明者にP23の名前があるのに気づいたが,特許明細書の内容が原告の予測以上に長文となっていたため,P23の寄与があったのかと思い,押印した。 (イ) 原告,P3及びP4は,大阪工研協会の化学技術賞「低融点化した透明化核剤」を受賞している。 カ まとめ以上の経緯によれば,本件発明7の発明者は原告,P3及びP4である。 54キ 被告の主張に対する反論(ア) P4の発想被告は,P4が を低融点化剤として使用することを発想した旨主張する。 低融点化剤とする発想はコペルニクス的転回であるが, 低融点化剤への展開の理由や根拠となる文献および必然性がまったく週報に記載されてないし,平成10年4月度の研究月報(乙144の1)の3(計画の進捗状況)の「問題点と対策」欄には,ほぼ計画通りとのみ記載され 「今後の計画」欄には配合研究の継続の意思が記載され ,ているだけであるが,それは,原告が,会議でその発想を説明し,実験に取り掛かるように指示したため,わざわざ来月本格的に実験することを伝える必要も文献を記載する必要もなかったからである。 (イ) P23の関与被告は,P23が本件発明7の発明者であると主張し,その根拠として,? P23はP4へ の融点降下作用のデータを,, 紹介したこと ? P3はP23から核剤の粉体流動性の改善について技術的なアドバイスを受け,本件明細書7にも書き込んだことを挙げるが,?については,科学的な事実ではなく,?は単なるアドバイスをしただけであり,発明の着想者とはいえない。また,選択発明(甲33)の内容は本件発明7に含まれているにもかかわらず,P23は選択発明の発明者になっていないが,このことは,被告がP23を本件発明7の発明者として認めていないことを示している。したがって,P23は,本件発明7の発明者ではない。 【被告の主張】ア 本件発明7の発明者本件発明7の発明者はP4,P23及びP3である。原告は発明者では55ない。 イ 研究課題従前,被告の顧客であるポリオレフィン樹脂の製造会社から,核剤をポリオレフィン樹脂に溶解させる際に,溶解していない核剤がポリオレフィン樹脂中に残存することや造粒機に装着されている濾過用金網の網目を目詰まりさせることなどの不具合が指摘されていた。これは,核剤の融点が非常に高いことが要因の一つであると被告では考えていた。 また,ポリオレフィン樹脂の製造会社において核剤を移送する際に,移送用パイプやホッパーなどでの詰まりなどが生じる不具合や粉塵が飛散しやすく作業環境に影響が生じる不具合が顧客から報告されていた。 これは,核剤の商品形態が粉末形態であることが要因の一つであると被告では考えていた。 核剤に関する研究開発に従事している従業員は,? ポリオレフィン樹脂への核剤の溶解性を改善すること,? 核剤の粉体特性(粉体流動性,粉塵の飛散抑制等)を改善すること,が解決すべき技術的課題であ。, 。 ると認識していた これらの事実は 被告において周知の事実であったウ P4の研究活動P4は,平成8年3月,の検討中,グループリーダーのP6に報告した。P4は,P6から, 上記技術的課題?を解決できる手段の一つであるから,次回の研究テーマとするように指示を受けた。 P4は,後記カのとおり,平成9年6月,の検討中,を見出した。 56エ P23の研究活動P23は,平成8年9月,原告から,研究テーマ「六方晶あるいはキセロゲル型ゲル化剤・核剤の製造と評価 (乙56の添付資料4)の担当 」者に指名され,研究を行ない,その結果,原告の指示のキセロゲル型核剤は顕著な低融点化挙動を示さないと結論づけた。その後,P23は,に成功した。 P23は,後記カのとおり,P3に対し,ゲル化剤(核剤)の粉体流動性に係る技術的課題について,改善技術に係る技術的な助言をし,P3は,その粉体流動性の改善技術(粒状化技術)を本件明細書7に盛り込んで特許出願を依頼した。 オ P3の研究活動P3は,平成9年4月から,原告の判断で前記研究テーマ(乙56の添付資料4)を引き継ぎ,P3とP4は4か月間研究検討を続けたが,キセロゲル型核剤は顕著な低融点化挙動を示さないと結論づけ,その研究検討は中止となった。 P3は,後記カのとおり,平成9年6月,P4からを教授され,P3が追試をしたところ同現象を確認した。 カ 本件発明7の着想・発想(ア) 低融点化技術a P4とP3は,上述したように核剤に作用しているものと予測して詳細に検討を続けた。 P4とP3は,この低融点化技術が実現できれば,粉末形態の核剤を造粒して粒子径を大きくしてもポリオレフィン樹脂への溶解性57(分散性)は損なわれないと考えた。粉末形態の核剤を造粒して粒子径を大きくすることで,その核剤の粉体流動性が改善できると考えた。 P4とP3は,この低融点化技術は,前記技術的課題を同時に解決できる基本技術であると考えた。 このようにして,P3とP4は,など種々の研究検討を行ない, を完成させた この低融点化技術は 本件特許7の優先権主張の基礎となっ 。,た特願平9-287924(出願日:平成9年10月3日)として出願した。次いで,に関する技術などを盛り込み,本件特許7の優先権主張の基礎となった特願平10-71362(出願日:平成10年3月4日)及び特願平10-90173(出願日:平成10年4月2日)を出願した。これらの低融点化技術は,の基本技術となるものである。 b P23は,という現象に気づき,P4に伝え,後日,P4がその核剤組成物の融点を測定したところ,融点が低下していることを確認した。 P4は,?,?58傾向を示すとのP23の助言に着目し,を予見し,その新たな作用効果を見出した。 このようにして,P4は,を完成させた。この改良技術は,国際出願時に盛り込まれた。この改良技術は, の基本技術となるものである。 (イ) 粒状化技術(粉体特性の改良)P23は,ポリオレフィン樹脂に対する核剤性能及びポリオレフィン樹脂への溶解性(分散性)を最重点項目とし,などを行ない,その結果,?,?,?,?,?などの知見を得た。 また P23は 工業検討計画書を作成し 平成9年8月に グラニュー ,, , 「ルMD(仮称 」の試験生産を,生産部門の協力の下でP8と共に研 )59究担当者として行ない,その結果,?,?,?,?,などの知見を得た。上記の知見を基にした粒状化技術は,本件特許7の優先権主張の基礎となった特願平9-287924として盛り込まれ出願された。 キ 特許出願P4,P23及びP3は本件発明7の発明者であり,当該特許の明細書の作成に関与した。特許出願依頼書はP3が作成し,原告の承認を経て。, 知的財産部に提出した P3が発明者の欄に原告の名前を記載したのは発明者だからではなく当時のP3の上司であったからである。 また,発明者であるP4及びP23は当該出願の明細書の作成には関与,。, していたが 特許出願依頼書の作成には関与していなかった そのためP4及びP23が発明者に原告の名前があることを当初は知らなかった。 P4及びP23は,原告が発明者となり本件発明7が特許出願された経緯を知らない。 ク 原告の主張に対する反論(ア) 原告の役割P4,P23及びP3は,本件発明7に係る低融点化技術及び粒状化,。, 技術の着想や具体化の助言などを 原告から受けていない すなわち原告は,本件発明7の完成に何ら関与していない。また,原告は,原告グループのグループリーダーとして,あるいは樹脂添加剤プロジェクトの当該部長として,研究テーマの担当者の決定やP4,P23及び60P3の本件発明7に関する着想や実験結果に対して単なる良否判断を行っていたに過ぎない。 (イ) の指示原告は,米国から,現在の研究を止めて,別の課題である添加剤の低融点化を実施せよとP3に緊急指示した旨主張するが,その6月度研究月報には,を報告しており,原告から指示された実験結果は一切報告されていない。また,平成9年7月10日の樹脂添プロジェクト会議議事録(乙142の3頁目)には,六方晶に係る議事はあるが,原告が緊急指示したとするに関する記載がない。また,仮に,原告の米国からの緊急指示があったとした場合,原告が他の課題を中止させてまで緊急に低融点MDの指示をしたと繰り返し主張しているにも拘わらず,原告自らが作成した乙118添付資料に の文字が全く記載されておらず 「別に,核剤融点を低下させる添加剤をい ,くつか発見している 」と,具体的な計画の記載もなく簡単な記載に 。 終わることは不自然である。そして,6月にP3に六方晶低融点化核剤の研究を止めさせて を提案したと原告が主張しているにも拘わらず 「次の段階として,ゲル化剤反応缶で ,六方晶を製造する方法を検討する」という六方晶低融点化核剤の研 。 究の具体的な計画をその資料に記載していることも,極めて不自然である。したがって,原告主張の指示はなかったというべきである。 2 争点2(消滅時効等)について(1) 争点2-1(本件発明1に係る対価請求権の消滅時効)について61【被告の主張】ア 本件発明1が特許出願された時点では被告規程がなく,その後,作成された被告規程(乙4)には,その規程を過去に遡らせて適用する旨の定めはない。 職務発明規程が存在しない場合,消滅時効は特許を受ける権利の承継の時から進行するから,本件においても,遅くとも本件発明1が特許出願された昭和52年3月22日の10年後である昭和62年3月22日をもって消滅時効が完成しているから,これを援用する。 イ 仮に,消滅時効が特許権の設定登録時から進行するとしても,本件特許権1が設定登録された昭和55年11月28日から10年後である平成2年11月28日に消滅時効が完成しているから,これを援用する。 ウ 被告規程(乙4)の16条2項では 「実施補償金は毎年3月末日を ,もって締め切り,当該年の7月の給与支払い日に一括して支給する 」。 と規定されているところ,本件特許権1は平成7年4月2日で特許権存続期間満了により消滅している(甲10。仮に満了日まで実施したと )仮定すると,平成7年3月末日までの実施に対する支払日は同年7月であり,同年4月1日及び2日の実施に対する支払日は平成8年7月であ,, り 原告が本件訴訟を提起したのは平成17年11月22日であるから少なくとも平成7年3月末日までの実施相当分については,訴訟提起前である平成17年7月末日の経過をもって消滅時効が完成している。したがって,仮に前記消滅時効の抗弁が認められず,乙4の被告規程が適用されたとしても,平成7年4月1日及び2日の2日分の実施相当額についてのみ,本件発明1についての実施補償金の支払を求めることができる。 【原告の主張】ア 被告規程(乙4)では,昭和62年4月1日より前に出願された発明62については適用されないと定められているが,そうすると,同日を境としてその前後で発明者たる従業員の権利保護に隔絶たる差が生じてしまう。もっとも,職務発明規程がなくても発明者たる従業員は特許法35条に基づいて相当対価を請求できるが,現実には従業員たる身分を保持したまま会社に対し相当対価を訴訟上請求することは事実上不可能であり,そのうちに出願の直前の譲渡時期から起算して10年が経ってしまう。一方,わずか1日違いの4月1日に出願された特許については,設定登録のときから5年,10年,15年を経過した時点で実施補償金を請求することができ,その額に不足があれば訴訟上相当対価を請求でき,, るが その権利の消滅時効の起算日は実施補償金の支払時期であるから登録日から最長で15年経ってから消滅時効は進行し,それからさらに10年経って完成する。しかし,この差を正当化できる合理的な理由はない。たしかに,特許を受ける権利の承継方法,届出と出願などに関する規定を過去に遡って適用することは事実上不可能であるから,その限りで職務発明規程を施行日以降に出願されたものに適用することに一定の合理性があるが,補償に関する規定,とりわけ実施補償金に関する規定については決してそのようにいうことはできない。したがって,乙4あるいは乙7の第3章「補償」に関する規定は昭和62年4月1日よりも前の特許についても準用されるべきである。 イ そこで,本件発明1に被告規程(乙4)を適用すると,本件発明1に係る実施補償金は,設定登録から満15年経った平成7年4月2日を過ぎた時点で評価の対象となり,翌平成8年3月に締め切られ,7月に支給されたことになるから,消滅時効は平成8年7月25日から10年を経過した平成18年7月25日に完成し,本訴提起時(平成17年11月22日)に本件発明1の相当対価請求権は未だ時効消滅していない。 なお,被告において初めて施行されたという乙7によれば,実施補償63金の支払時期は,登録日から満15年を経過した年の11月締め切り,翌年3月に支給であるが(13条,16条,これによっても時効消滅 )が未だ完成していない。 ウ よって,本件発明1の相当対価請求権は本訴提起時には消滅時効にかかっていない。 (2) 争点2-2(本件発明6に係る対価請求権の消滅時効)について【被告の主張】本件発明6は,1970年代から引き継がれた被告のノウハウが平成元。, () , 年に至って出願されたものである そして 被告規程 乙4 付則2にも「本規程は,昭和62年4月1日時点で既に実施されている技術のノウハウを保護するためになす出願に関しては,適用しないものとする 」とさ。 れている。したがって,被告規程(乙4)は本件発明6には適用されず,同特許に関する職務発明規程は存しない。したがって,本件発明6の補償金請求権は,当該ノウハウが創作され被告に承継された1970年代(遅く考えても昭和54年)から10年経過後には時効消滅しているか,遅くとも特許出願がなされた平成元年3月3日の10年後である平成11年3月3日には時効消滅している。 被告は,原告に対して,本件発明6についての出願補償金,登録補償金及び実施補償金を支給しているが,これは,被告担当者の錯誤により支給したものである。このような明らかな錯誤による支給をもって,時効中断事由たる承認又は時効利益の放棄と解すべきではない。 被告は,原告に対し,平成18年3月20日の第1回弁論準備手続期日において,上記時効を援用するとの意思表示をした。 【原告の主張】本件発明6は,平成元年3月3日特許出願,平成9年10月31日設定登録されたものである(甲6)から,昭和62年4月1日実施の被告規程64(乙7,9)の適用を受ける。 本件発明6の実施補償金請求権の最初の支払期日は,設定登録の翌日から満5年の経過した平成14年11月1日の翌年平成15年3月末日に締,() , め切られ 同年7月の給与支払日に支給されるから 乙4の16条2項その消滅時効はこの時から進行すべきこととなる。そうすると,本件発明6の実施補償金請求権はその全部について時効が完成していない。 また,被告は,本件発明6につき,平成15年10月24日,65万5000円の一部を「職務発明実施補償金として」原告に対し支給したものである(乙6 。これは被告が同特許に係る相当の対価請求権(特許法3 )5条1項)の一部弁済を行ったものであって,被告の同行為は時効中断事()。 。 由 民法147条3号 となる この点においても被告主張は失当である(3) 争点2-3(本件発明6に係る対価請求の権利濫用)について【被告の主張】仮に,消滅時効が認められない場合でも,10年以上も前になされた発明につき防衛目的で特許出願がなされた本件発明6について,その出願後15年以上経過した現段階で補償金請求権を主張することは,権利濫用に当たる。 【原告の主張】被告は,原告の請求が権利濫用である旨主張し,その理由として,出願が防衛目的で行われたものであること,発明後10年以上も経過した後に出願がされたこと,補償金請求権の主張が出願後15年以上経過してからなされたことを挙げている。 しかし,発明者である従業員が使用者に対して相当の対価の支払を求める権利(改正前特許法35条3項)は,使用者がその承継をさせて出願する目的が防衛目的であるか否か,発明後出願まで相当期間が経過しているか否か,出願後15年が経過しているか否かによって,変わるものではな65い。被告は,平成15年10月24日,原告に対し,本件発明6の補償金の一部を支給しているにもかかわらず,原告の権利行使を権利濫用であると主張していることに照らすと,被告の真意は,原告の権利行使を阻止することにあると考えられる。 3 争点3(本件発明3の実施)について【被告の主張】次のとおり,被告は,被告製品の製造にあたり,本件発明3を実施していない。 (1) ゲルオールMD,ゲルオールMD-LM30について被告は,ゲルオールMD,ゲルオールMD-LM30の製造にあたり,被告は,ゲルオールMD,ゲルオールMD-LM30の製造にあたり,本件発明3を実施していない。 (2) ゲルオールDHについてア 本件明細書3の実施例1の工程は次のとおりである。 ? 中和工程:酸触媒に対して,過剰のアルカリ金属化合物を添加し,反応終了後の粗物中に残存する酸触媒との中和である。 ? 濾過(精製 :異性体は有機溶剤に溶解している。従って,異性体 )を溶解している溶剤とDBS類とを,濾過することにより,精製物を得ている。この工程により,異性体の含有率が0.2重量%以下の精製物を得ることができる。 ? アミン添加:アルカリ性有機アミン化合物を配合する工程である。 ? 乾燥工程:溶剤を加熱留去することにより,DBS組成物として完66成する。 イ 一方,被告は,ゲルオールDHの製造にあたり,本件発明3の構成要件を充足していない。 (3) 異性体の含有量本件明細書3には,異性体量の「測定方法」の開示がなく,本件発明3の追試を行う方法がないので,被告は異性体含有量が0.2%以下であることを確認できない。 このことからも,被告が本件発明3を実施しているということはできない。 【原告の主張】次のとおり,被告は本件発明3を実施している。 (1) 異性体の量ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30の製造において,アセタール化反応終了時にDBS類の異性体量が0.5%以上1-3%副生しており,製品ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30中に含有するDBS類の異性体量は0.2%以下である。 被告は,溶剤に水を使用した巧みな精製工程を経由し,上記の結果を達成している。 (2) アルカリ性有機アミン化合物の配合ゲルオールD,ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30のすべての製品の製造において,しているそして, してい67る。 (3) 実施補償金の支払,, 被告は 本件発明3を対象として実施補償金を原告に対し支給しておりこれは,本件発明3を実施していることを被告が認めたものでもある。 (4) まとめ以上によれば,ゲルオールD,ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30のすべての製品において,被告が本件発明3を実施していることは明らかである。 (5) 被告の主張に対する反論ア 本件発明3の工程被告の示す本件発明3の工程に誤りがある。 被告は,本件発明3の工程として 「中和工程」⇒「濾過(精製 」 ,)⇒「アミン添加」⇒「乾燥工程」を示すが「精製処理物」を得る「精 ,製」は溶剤精製なのであって 「濾過(精製」などという工程は本件 ,)発明3の工程にはない。メタノール添加により加水分解し,水溶性の異性体を水洗除去するのであって 精製物か否かは 異性体が0.2重量% ,,以下のものかどうかが基準である 「中和工程」の後に水洗工程が行わ 。 れている。そして,本件明細書3には,被告引用部分に続いて 「この,場合,洗浄効果を損なわない範囲で系内に水が存在することは何ら差し支えなく,より現実的である 」としている。。 イ被告は,本件発明3の実施には該当しない旨主張するが, は,金属の種類と塩形成物であることに着目すれば,アルカリ金属塩またはアルカリ金属化合物に分類されるし, に着目すれば,アルカリ性68有機アミンに分類される。一連の は,アルカリ金属塩型アルカリ性有機アミンに分類しても良いから,アルカリ金属化合物であるからアルカリ性有機アミンでないと言う被告主張は失当である。 ,, (「 」。) また 被告は 乙162に係る発明 以下 乙162の発明 というと本件発明3が同一発明となる理由で, が有機性アミンでない旨主張するが,乙162は本件特許3の公知文献には当らないから,公知であることは本件特許3の無効理由にはならない。 ウ 溶剤精製の実施被告は,ゲルオールMD,DH,MD-LMの全ての製品について,本件発明3における精製品には該当しない旨主張するが,本件発明3は,組成物特許であり,製法特許でも精製法特許でもなく,精製物を得る「精製法」は本件発明3の構成要件ではない。したがって 「位置異性体が0.2%重量以下に低減された当該ジ ,」, , ベンジリデンソルビトール類の精製物であれば 水で精製していても本件特許3に抵触するから,被告の上記主張は誤りである。 被告は,精製物か否かは,異性体が0.2重量%以下のものかどうかが基準であり,本件発明3の実施により精製物を得ている。 エ 異性体の含有量,, , 被告は 本件明細書3には 異性体量の測定方法が開示されておらず追試を行う方法がないから,異性体含有量が0.2%以下であることを確認することができない旨主張するが,異性体量の測定は当業者であれば容易である。 4 本件各発明の相当の対価69(1) 争点4-1(被告が受けるべき利益の額)について【原告の主張】ア 売上高(ア) ゲルオールMDの売上高合計 128.8億円昭和56年12月から平成17年3月平成17年4月から平成21年3月(推定)(イ) ゲルオールDHの売上高合計 45.3億円平成元年4月から平成17年3月平成17年4月から平成21年3月(推定)(ウ) ゲルオールMD-LM30の売上高合計 35.3億円平成11年4月から平成17年3月平成17年4月から平成21年3月(推定)イ 超過売上高割合(ア) ゲルオールMDは画期的な高透明化核剤として「高透明化PP(ポリプロピレン 」分野の市場を世界で初めて創出した。 )(イ) 被告は,原告から本件各特許権を権利承継することによって高透明化核剤市場で先行者利益を享受し独占的地位を得た。 (ウ) 被告製品の競争力についてa ゲルオールMDについてゲルオールMDは,本件特許1の物質特許および製法特許により権利化された世界初のPPの高透明化核剤であり,被告はゲルオールMDにより,日本の市場を独占した。 b ゲルオールDHについて70ゲルオールDHは,ゲルオールMD-LM30ができるまでは,類似技術が無かったため,超高利益製品(ゲルオールMDを上回る利益率)として被告は大きな利益をあげることができた。 c ゲルオールMD-LM30についてゲルオールMDからゲルオールMD-LM30に置き換わることにより,被告の独占性をさらに延長することができた。 (エ) 上記の各点を総合すると,被告製品の売上金額のうち,本件各特許,。 権を有することにより得た超過売上高の割合は 次のとおりとなるa ゲルオールMDについて新規分野を創出し,本件特許1の特許権存続期間満了後の本件発明2,3及び6の独占的な売上に対する寄与はきわめて大きく,ゲルオールMDの超過売上高の割合は40%を下ることはない。 b ゲルオールHDについて本件発明4の組成物特許による独占的な売上に対する寄与はきわめて大きく,上記製法特許との組みあわせで権利化された独占的製品であるゲルオールDHの超過売上高の割合は50%を下らない。 c ゲルオールMD-LM30について国内および輸出における特許権によるゲルオールMD-LM30の超過売上高の割合もまた,ゲルオールDHの場合と同じく50%というべきである。 ウ 仮想実施料率についてゲルオールMD,ゲルオールDH及びゲルオールMD-LM30は,典型的な高付加価値製品(スペシャリティーケミカル)である。また,本件の高透明化核剤は,新規分野の市場を創出した製品であり,かかる分野の市場では独占的地位を得ている。高透明化核剤の国内のマーケットの規模は,高々1000トン/年程度であるので,競合他社に通常実71施権を与えて,価格低下競争をすることにより,汎用製品にするようなことは考えにくく,他に通常実施権を与えないで,1社独占で利益を確保しようとすることになる。こうして市場独占の利益が加わる。特許権実施の対価も同様に考えることが許される。 ゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30の製造法特許は,本質的な技術創出に関する特許である。 仮想的実施料率はゲルオールMD ゲルオールDH ゲルオールMD- ,,LM30のいずれの場合も25%とするべきであり 少なくとも 15%,,以上である。 エ 本件各発明の寄与度についてゲルオールMD,ゲルオールDH,ゲルオールMD-LM30は,いずれも複数の特許により排他的独占性が確保されているから,本件特許2から本件特許7の特許網の寄与度は100%である。 ゲルオールMDは,本件特許1の特許権存続期間満了後,製法特許である本件発明2,3及び6により独占性が確保されている。そして,この3つの特許の寄与度は等価である。 ゲルオールDHについては,実質的な物質特許である本件発明4が50%の寄与度であり,他の本件発明2,3,5,6の寄与度は等価であり,残りの50%である。 ゲルオールMD-LM30については,実質的な物質特許である本件発明7が50%の寄与度であり,他の本件発明2,3及び6の寄与度は等価であり,残りの50%である。 【被告の主張】ア 被告製品の国内市場占有率等について(ア) 直近のシェア被告の国内シェアは,本件特許1の特許権存続期間の満了(平成772年4月2日)以前においては非常に高いものではあったが,本件特許1の特許権存続期間の満了後に大きく低下し,平成11年ないし平成14年には50%台後半から50%以下に低下しつつあると見られている。それ以降,透明化ポリプロピレン樹脂の動向等では大きな変動はなく,また被告の売上傾向は数年前と大差は認められないから,国内シェアは50%乃至50%を下回る程度と推測される。 なお,当該国内シェアの50%弱を被告が確保ないし維持できている顕著な理由は,以下に述べるとおり,被告が本件発明1により他社,, に先駆けて市場を開拓したことが功を奏したためであり 本件発明23,6の効果では全くない。 ちなみに,全世界においては,を有しているに過ぎない。 (イ) ゲルオールMDにおける本件各特許の排他的効力についてゲルオールMDについては,本件特許1の特許権存続期間が満了した平成7年4月2日ころ以前には売上げが増加の一途をたどり,になっている。 このことは,本件特許1の排他的効力が強かったことを示すものである。 一方,上記売上げが増加している間,本件特許2は平成元年6月,本件特許6は平成2年9月,いずれも公開され,本件特許1と本件特73許2,6の公開特許が並存しているが,本件特許1の特許権存続期間満了後すなわち,本件特許2及び6の公開後に生じた売上げの伸びは,本件特許権1の消滅を境として完全に消し去られ,むしろこれらの公開時よりも売上げが下がっており,更に,本件特許権2及び6の設定登録後も同様の傾向である。このことは,本件特許2及び本件特許6の排他的効力が事実上発生しておらず,ゲルオールMDの売上に何ら寄与していないことを示すものである。 (ウ) ゲルオールDHにおける本件各特許の排他的効力についてゲルオールDHは,本件発明4の構成からなり,その製造にあたっては,本件発明2,6のほか,本件発明5に係る方法を使用している(本件発明3について使用していない 。。)これらのうち,本件特許2,6について排他的効力が認められないことについては,ゲルオールMDについて述べた理由と同じである。 また,本件発明4,5が,ゲルオールDHの販売にあたってほとんど寄与しておらず,その実効性が認められないことは,後記イ(エ),(オ)のとおりである。 なお,ゲルオールMDが特許1の消滅に伴い大幅に売上げを下落させている一方で,ゲルオールDHもまた売上げを下落させているが,その理由は,特許1の消滅に伴いゲルオールMDを値下げせざるを得なかったところ,ゲルオールMDのみを値下げしてゲルオールDHの価格を据え置くことが事実上困難であったために,ゲルオールDHも値下げせざるを得なくなったためである。 (エ) ゲルオールMD-LM30における本件各特許の排他的効力について74ゲルオールMD-LM30は,本件発明7の構成からなり(なお,本件発明7については,原告は発明者に含まれない ,その製造に。)あたっては,本件発明2,6に係る方法を使用している(本件発明3については使用していない 。)これらのうち,本件特許2,6について排他的効力が認められないことについては,ゲルオールMDについて述べた理由と同じである。 イ 本件各発明の寄与度について(ア) 本件発明1についてゲルオールMDの売上高は 本件特許1の特許権存続期間満了日 平 ,(成7年4月2日)とほぼ一致する平成7年3月決算までは右肩上がりであったが,それ以降では激減している。これは,本件特許1の特許,,() 権存続期間満了に伴い 競合他社の三井化学 東宝化学 韓国メーカなどの参入による販売量の低下と,その対抗策として被告が販売価格を引き下げたことが主原因である(乙183 。したがって,本件特 )許1は,独占・排他力が強いと評価できるから,被告の事業への貢献が高いと評価できる。 (イ) 本件発明2についてa 本件発明2は,ゲル化剤全般に係る製造法の発明であり,その出願公開日は平成元年6月12日である。本件特許1の特許権存続期間の満了後,競合他社が日本市場に参入しだした状況からすると,競合他社は代替製造技術を有し,本件発明2を実施することなく競合品を製造販売している。以上によれば,競合他社にとって本件特許2は事業障害・参入障壁ではなく,特許の価値である独占排他性は著しく低いと言わざるを得ない。また,から推測する,。 と 競合他社にとって本件特許2の価値が著しく低いと判断できる75b 本件発明2の生産性への貢献は,決して高いとはいえない。すなわち,被告は本件発明2を自己実施しているが,生産技術課は,本件発明2を含めて全製造プロセスを検討・見直し,独自に処方変更・工程改善・設備改良などを経て初めて実用的な高濃度製造法を完成させて,生産性の向上・製造コストの低減へ多大に貢献しているから(乙155,乙160 ,ゲル化剤事業への貢献は本件発明 )2よりも非常に大きい。以上によれば,本件特許2は,その特許の独占・排他性が著しく低く,他方で生産部門の貢献が多大であるから,被告事業への貢献は低いといわざるを得ない。 (ウ) 本件発明3について被告は本件発明3を実施していない。 仮に,被告が本件発明3を実施しているとしても,本件発明の構成「」, 要件である 異性体含量が0.2%以下の精製物であること のうち異性体含量0.2%以下であることには臨界的意義はないから,本件発明3の被告事業への貢献はほとんどないに等しい。 (エ) 本件発明4について本件発明4の実施品であるゲルオールDHの売上は,特許以外の法的規制等による影響が大きく,特許の寄与はない。 a 法的規制との関係本件発明4は,低臭気且つ透明性に優れた透明化核剤に関する発明であるが,本件発明4の実施品(ゲルオールDH)の対抗製品と,,, しては ミリケン社のミラード3988が存在し 透明性改善効果臭気の面において,ゲルオールDHより優れていた。 しかし,ミラード3988は,ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールという化合物から組成されているところ,当該化合物が,化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律における76指定化学物質に該当するものと告示されたため,ミラード3988やその競合品であるゲルオールDXを使用する企業は,毎年経済産業省にその購入実績,使用実績等を厳格に報告する義務が課せられることとなり,ミラード3988の国内輸入がなく,ゲルオールDHの販売につながる環境となったものである。 b 生産性の問題ゲルオールDHは,低臭気を特徴とする透明化核剤であるが,製品であった。 さらに,被告では,このような状況下で,経営判断として利益性の低いゲルオールDHを廃止する決断がなされた(乙130 。ゲルオールDHを廃止 )し,ゲルオールMD系統に統合することにより切り替えロスが減少し,また生産効率が高まることにより,利益性を高めることにつながった。 c まとめ以上の点から,ゲルオールDHには,競合品であるミラード3988が存在していたが,国内においては,法的規制の問題等によりミラード3988の販売がなされなかったことから,少ないながら77も売上をあげることができた。 他方で,ゲルオールDHは,結果として利益性の高いゲルオールMDに統合することになった。 このような点から,ゲルオールDHの被告への貢献は決して大きいものではなかった。いわんや,本件発明4の寄与度は認められないというべきである。 (オ) 本件発明5について本件発明5には,アデカの乙38に係る特許発明による代替法が存,。, 在するから 本件発明5には市場排他性はないに等しい したがって被告事業への貢献も皆無である。 (カ) 本件発明6についてa 本件特許1の特許権存続期間満了後,競合他社は本件発明6を実施することなく同程度の品質の競合品を製造販売しているといえる。 競合他社は代替製造技術を有し,競合他社にとって本件特許6は事業障害・参入障壁ではなく,特許の価値である独占排他性は著しく低い。なお,b 被告では本件発明6を自己実施しているが,この発明だけでは実用的なゲル化剤の製造方法を完成することはできず,その完成には生産技術課の多大な貢献があった。以上のように,本件特許6の独占・排他性は著しく低く,生産技術課の多大な貢献などを勘案する,。 と 本件発明6の被告事業への貢献は低いものと言わざるを得ない(キ) 本件発明7について本件特許7は競合他社の事業障害となっていない。 ゲルオール全体の売上高は,本件特許1の特許権存続期間満了後急78激に売上高が減少し,回復の要因は,外的な要因や営業努力と考えられる。すなわち,本件発明7の実施品であるゲルオールMD-LMが,ゲルオールMDの問題であったPP樹脂への分散性不良や粉体流動性の不具合を解消した点で国内PP樹脂メーカに評価され,ゲルオールMDからの置換による寄与によるものであり,本件特許7は,その特許の独占・排他性は比較的低い。 (ク) 本件訴外特許についてa 乙14に係る特許(以下「本件訴外特許」という )は,もとも。 と,旧特許法(昭和62年改正法)の39条に規定されていた先願の地位を得るために,出願,放棄された特許であり,その後,平成10年の特許法の改正により先願の地位が見直されることになった際に,その経過措置期間中に改めて出願されたものである。本件訴外特許は,平成18年12月15日,設定登録がなされた(乙148の2 。)本件訴外特許の発明者はP5とP27であり,原出願当時はそれぞれ技術部技術一課課長,技術部長であり,ゲルオールD,MDの製造における責任者であった。 本件訴外特許は,ジアセタール類の高濃度反応時における粒状物中に残存する触媒を中和する方法を提供することにより,製品の高純度化と収率の向上を図ることを技術的特徴とする発明である。 b ゲルオールMDに対する寄与についてゲルオールMDの販売開始当時,臭気と白点(ゲルオールMDの一部がポリプロピレンに溶解せず,ダマ状のまま成形品中に残存する現象)の問題があったが,本件発明2と本件発明6はこれらの問題を解決する発明ではなく,単にジアセタール化合物を製造する方79法であった。 一方,本件訴外特許の発明は,ポリプロピレン用の透明化核剤に適したジアセタール化合物の製造を可能とする発明であり,この発明により透明化核剤用のゲルオールMDの高効率生産が可能となり,ゲルオールMDの販売に大きく寄与した。 c ゲルオールDHに対する寄与について,, ゲルオールDHは ゲルオールMDの臭気を改善するものであり臭気改善は,?,? 製品中の残存アルデヒドを低減すること,? 加熱時の加水分解を抑制することの3つの条件が必要であるが,本件訴外特許は,マメ状物の生成を抑制することにより,製品中のアルデヒドを低減し,加熱時の加水分解を抑制する効果をもたらしている。すなわち,ゲルオールDHは,本件訴外特許がなければ,製品としては成立し得ないものであり,DHの売上に対する貢献は極めて大きい。 d ゲルオールMD-LM30に対する寄与についてゲルオールMD-LM30は組成物であるところ,その成分にゲルオールMDを使用している。したがって,ゲルオールMD-LM30の売上にあたっても,本件訴外特許の貢献は極めて大きい。 e したがって,上記被告製品の販売に対する本件各特許の貢献は相対的に低い。 ウ 仮想実施料率等について前記ア,イのとおり,本件特許2ないし6は,価値が低く,超過売上割合も極めて低く,このことは仮想実施料率の評価にも反映すべきである。 仮に,上記事情を考慮しないとしても,従来の他の関連特許の実施許80諾実績を見ても,本件特許2ないし6の仮想実施料率合計はせいぜい2%程度である。 被告が乙13の特許その他6件の特許について,であった 。 (2) 争点4-2(被告の本件各発明に対する貢献の程度)について【原告の主張】ア ゲルオールMD事業は,原告の創造性に基づいて開発されたものであり,被告は組織として製品開発態勢をほとんどとっていないから,上記事業に関する各発明に対する被告の貢献の程度は,70%を超えないものというべきである。 イ ゲルオールDH事業についても,ゲルオールMD事業と同様のことがいえるのであって,上記事業に関する各発明に対する被告の貢献の程度は,やはり70%を超えないというべきである。 ウ ゲルオールMD-LM30事業は,ゲルオールMD事業の延長線上にあったものであり 被告は 通常の製品開発と同様の研究開発態勢をとっ ,,ているから,上記事業に関する各発明に対する被告の貢献の程度を90%とみることができる。 【被告の主張】ア 被告は,昭和42年ころから有機ゲル化剤事業を計画して,透明化核剤事業を展開し,多くの技術開発・技術改良を経た上,事業として採算を取ることができるようになるまで,製造設備・研究設備等の物的資源や研究部門・生産部門・営業部門などの従業員の人的資源に資金を投入し,そして事業化の失敗のリスクを被告のみが負担して成功に繋げた。 被告の設備投資は以下のとおりである。 81(ア) ゲル化剤製造設備の投資被告の調査の結果,判明しているだけで,ゲル化剤製造設備である。 (イ) 研究所設備の投資被告の調査の結果,判明しているだけで,ゲル化剤(核剤)の開発にである。 イ 以上のとおり,ゲル化剤(核剤)の製品開発の成功に対する被告の貢献は著しく高い。その投資の大きさからすれば,被告の貢献の程度は,限りなく100%に近いものである。 (3) 争点4-3(共同発明者間における貢献の程度)について【原告の主張】ア ゲルオールMDにおける原告の貢献(ア) ゲルオールMDの独占性は,本件発明2,3及び6により保持されている。 (イ) 本件発明2について仮に,本件発明2の発明者が原告及びP6であるとしても,P6はゲルオールMDについて,平均滞留時間の測定,本件発明2によるゲルオールMDの検討,ゲルオールMDの新合成法等を検討していないし, ゲルオールMDには何の関与も有していない。したがって,本件発明2のゲルオールMDの独占性に対する貢献度は,P6は小さく,たかだ82か,P61,原告9である。 (ウ) 本件発明3について本件発明3の発明者は,原告とP10であるが,P10は,を行っておらず,実験担当者であるにもかかわらず,技術を完成していない。したがって,本件発明3のゲルオールMDの独占性に対する貢献度は,P10は小さく,P101,原告9である。 (エ) 本件発明6について,,, , 仮に 本件発明6の発明者が 原告 P14及びP5であるとしてもP14及びP5はゲルオールD(DBS)の検討をしていたことにより発明に対する貢献が認められただけであって 両名にとって ゲルオー ,,ルMDは構想外の物質であり,ゲルオールMDの検討を全くしていないし,DBSを誘導体のDTSや非対称DBSに拡張した本件発明6の特許出願もしていない。したがって,ゲルオールDの独占性に限定して,P14,P5の貢献が勘案されるが,ゲルオールMDの独占性に関して,P14,P5の貢献は認められず,貢献が認められるのは,原告のみである。 (オ) 以上によれば,原告の貢献度は93.3%である。 〔計算式〕1÷3×0.9+1÷3×0.9+1÷3×1.0=0.933イ ゲルオールDHにおける原告の貢献(ア) ゲルオールDHは,本件発明2,3,4,5及び6で権利化されている。 高透明化核剤ゲルオールDHの物質特許である本件発明4が50%,製造法に関するその余の本件発明2,3,5及び6が50%の貢献である。 83(イ) 本件発明2について本件発明2の発明者のP6にとって,ゲルオールDHは構想外の物質であり,ゲルオールDHの検討をしていない。その上,P6は被告が実施しているゲルオールDHの合成法を検討していないから,本件発明2のゲルオールDHの独占性に対する貢献度は,前記ア(イ)と同様,P6にはほとんど無く,たかだか,P61,原告9である。 (ウ) 本件発明3について本件発明3のゲルオールDHの独占性に対する貢献度は,P10は小さく,P101,原告9である。 (エ) 本件発明4について。, 。 本件発明4の発明者は原告であるP10は 実験担当者に過ぎない仮にP10を発明者に加えるとしても,本件発明4のゲルオールDHの独占性に対する貢献度は,P10は小さく,P101,原告9である。 (オ) 本件発明5について本件発明5の発明者は原告であるから,本件発明5のゲルオールDHの独占性に対する貢献度は原告10である。 (カ) 本件発明6についてP14,P5両名にとって,ゲルオールDHは構想外の物質であり,両名は,本件発明6を全く検討していないし,本件発明6の発明者として登録されてもいない。したがって,本件発明6のゲルオールDHの独占性に対する貢献度は原告10である。 (キ) 以上によれば,原告の貢献度は92.5%である。 〔計算式〕0.125×0.9+0.125×0.9+0.50×0.9+0.125×1.0+0.125×1.0=0.925ウ ゲルオールMD-LM30における原告の貢献(ア) ゲルオールMD-LM30はゲルオールMDの改良品(全組成中,8495%はゲルオールMDが占める)であり,製法の基本特許(本件特許2,3,6)に抵触することなく製造することができない。 ,, 上記の関係より ゲルオールMD-LM30の超過利潤の50%は組成物特許7による寄与であり,50%は製法特許2,3,6による寄与である。 (イ) 本件発明2,3及び6の発明者の貢献度は,ゲルオールMDの場合と同じである。 (ウ) 以上によれば,仮に,原告が本件発明7の発明者ではないとしても原告の貢献度は46.7%となる。 〔計算式〕0.167×0.9+0.167×0.9+0.167×1.0=0.467【被告の主張】ア 主張の概要万が一,一部の特許について原告が発明者に該当すると認定されることがあったとしても,原告が果たした貢献及び寄与は,被告との関係でも,あるいは真の発明者であると被告が主張する従業員等との関係においても,著しく低い。 イ 本件発明2について原告は,P6の発明をそのままゲルオールMD,ゲルオールDHに適用したに過ぎず,何ら発明的創作を何ら付け加えてないから,本件発明2における原告の貢献はない。 ウ 本件発明3について本件発明3の発明者は,P8のみであるから,原告の貢献はない。 エ 本件発明4について本件発明4の発明者は,P10のみであるから,原告の貢献はない。 オ 本件発明5について本件発明5の発明者は,P8のみであるから,原告の貢献はない。 85カ 本件発明6について原告は,特許出願にあたりごく当たり前に特許請求の範囲にゲルオールMDを含めたに過ぎないから,原告の貢献は低い。 キ 本件発明7について原告は単に研究管理者としての役割を果たしたに過ぎず,発明の創作,,, 行為に一切加担していないから 原告は発明者ではなく 発明者はP3P4,P23である。したがって,原告の貢献はない。 (4) 争点4-4(相当の対価の額)について【原告の主張】ア 「相当の対価」の算出式相当の対価=売上高×超過売上高割合×本件発明の寄与度×仮想的実施料率×(1-被告貢献度)×共同発明者間における原告の貢献度イ 「相当の対価」の算出仮想的実施料率は15%,本件発明の寄与度は100%,被告の貢献,。 度は70% ただしゲルオールMD-LM30については90%であるそうすると,製品別の相当の対価は,次のように算出される。 (ア) ゲルオールMDについて 2億1630万円〔計算式〕128.8×0.4×0.15×(1-0.7)×0.933=2.163(単位億円)(イ) ゲルオールDHについて 9430万円〔計算式〕45.3×0.5×0.15×(1-0.7)×0.925=0.943(単位億円)(ウ) ゲルオールMD-LM30について(ゲルオールMD-LM30の超過売上係数は海外0.4と国内0.5の平均値0.45を用いた)1110万円〔計算式〕35.3×0.45×0.15×(1-0.9)×0.467=0.111(単位億円)(エ) 合計 3億2170万円ウ結論86原告が,本件において有する相当対価請求権は,少なくとも3億2170万円であり,これを下回るものではない。 【被告の主張】争う。 |
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当裁判所の判断
1 発明者の認定について「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項 ,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記 )載に基づいて定めなければならない(同法70条1項 。したがって,真の)発明者(共同発明者)といえるためには,当該特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要であり,具体的着想を示さずに,当該創作行為について,単なるアイデアや研究テーマを与えたり,補助,助言,資金の提供,命令を下すなどの行為をしたのみでは,創作行為に加担したとはいえず,真の発明者ということはできない。 2 争点2-1(本件発明1に係る対価請求権の消滅時効)について(1) 従業者等は,勤務規則等により,職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得するが,職務発明の相当対価請求権は,改正前特許法35条により従業者に認められた法定の権利であるから,消滅時効期間は10年と解すべきである。 前提事実(4)によれば,本件では,本件特許権1が設定登録された昭和55年11月28日の時点では,勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がないが,遅くとも,同日までには,原告は,被告に対し,本件発明1について,特許を受ける権利を承継させたと認められる。したがって,その時から,原告は被告に対し本件発明1について,特許を受ける権利の対価の支払を求めることができ,87上記時点が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解すべきである。そうすると,本件発明1については,その登録日である昭和55年11月28日から10年が経過し,被告は消滅時効を援用しているから,職務発明の相当対価請求権は消滅時効の完成により消滅していると認められる。 したがって,その余について検討するまでもなく,本件発明1について特許を受ける権利の原告の対価請求は理由がない。 (2) 原告の主張について原告は,被告規程(乙4)では,昭和62年4月1日より前に出願された発明については適用されないと定められているところ,同日の前後で発明者たる従業員の権利保護に隔絶たる差が生じてしまうのは不合理であるとして,乙4あるいは乙7の第3章「補償」に関する規定は昭和62年4月1日よりも前の特許についても準用されるべきである(その結果,登録のときから15年を経過した平成7年11月28日の時点でも実施補償料を請求することができ〔被告規程13条2項,本訴提起までの間に,消 〕滅時効は完成していない )旨主張するが,勤務規則等に対価の支払時期 。 が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきであるが(被告規程13条2項によると,登録後5年ごとに実施補償料を算定して支給することが規程されているので,登録後15年経過した後に支払われる補償料は,登録後10年間分は支払済みであることを前提として,その後の5年間の補償料として支給されるものであり,その請求は登録後15年が経過しないと請求できない趣旨と解される ,勤務規則等の定めがない 。)場合は,権利の行使につき法律上の障害があるとは認められないから,勤務規則等の適用がある場合とない場合で,取り扱いに差が生じるからと88いって,不合理であるということはできない。 したがって,職務発明規程の規定が遡及しないからといって,発明者たる従業員の権利保護が十分でないということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。 3 争点1-2(原告が本件発明2の発明者か否か)について(1) 本件発明2の特徴ア 本件明細書2には,次のとおり記載されている(甲2 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録2の「特許請求の範囲」に記載のとおり【発明の詳細な説明】[従来の技術並びにその問題点]アセタール類の1種であるベンジリデンソルビトール類は,特異な性能を有する物質として,現在までにポリプロピレン樹脂等の透明性改良剤,塗料,インキ,接着剤等の流動性改良剤,接着剤,香粧品,医薬品等の固形化剤等幅広い用途が開発されている。 当該物質は,芳香族ベンズアルデヒド類と多価アルコールとを酸触媒の存在下,縮合させることにより調製される。 本発明者らは,斯かる物質の回分式製造方法について先に幾つか提案,,, したところであるが 工業的製造方法として総合的に勘案した場合 尚種々の問題を含んでいるのが現状である。 例えば,通常のプロペラ式撹拌機を備えた反応缶を用いてシクロヘキ(), サンスラリー系で反応せしめる方法 特公昭48-43748号 では5価以上の多価アルコールと芳香族アルデヒド類(以下「反応基質」と称する の濃度が15重量%程度を越えると反応中に負荷が過大となっ 。)て撹拌が困難となり,均質な生成物を得ることができないため,1ロットごとの生産量を増大せしめることが困難である。 89又,斯かる欠点を改善するために提案された方法,即ち,反応基質の濃度を高め,これを酸触媒,シクロヘキサン等の疎水性有機溶媒及び低級アルコール等の水溶性極性有機溶媒の存在下に強制撹拌しつつ反応す(「 」 。 ), る方法 以下 高濃度法 と称する 特公昭58-22157号 ではスラリーを撹拌している際に固化したゲル状物質が生じ易く,充分な撹,。 拌を行なわなければ 製品の歩留りや品質が低下する傾向が認められるこのことは,当該反応物が反応の進行に伴って流動性のあるスラリー状態から実質的に流動性を失ってペースト状態,ゲル状態へと種々形態が変化することに起因しているものと考えられる。 本発明者らは,従来の高濃度法の問題点を改善し,ベンジリデンソルビトール類の工業的な製造方法を確立すべく鋭意検討の結果,従来の如く原料を一度に仕込まずに,反応中も連続的に又は間欠的に仕込むことにより,反応系内における反応物の急激な形態の変化を回避できることを見い出し,この知見に基づいて本発明を完成した。 即ち,本発明は,工業的に優れたアセタール類の製造方法を提供することを目的とする。 [問題点を解決するための手段]本発明に係るアセタール類の製造方法は,回分式を基本とする高濃度法の一種であって,反応基質と低級アルコール及び要すれば酸触媒からなる均一溶液若しくは懸濁液を連続的に又は間欠的に仕込み,反応缶内の内容物の容量を増加させつつ反応することを特徴とする。 (中略)当該流動化物は,反応媒体と共に反応中において連続的又は間欠的に仕込まれ,酸触媒の存在下で縮合反応に供される。 このことによって,系内は不均一なゲル状態とならず,従来の高濃度法の如き反応の進行に伴って生ずる反応物の急激な形態の変化がない。 90そのため撹拌翼に対する負荷が急激に増大することもなく,一定した稼働状態を得ることができ,反応缶の壁面への内容物の固着も大幅に抑制され,製品収率の向上を図ることができる。更に,反応中において多価アルコール/芳香族アルデヒドのモル比が一定の範囲内で維持される結果,過反応が抑制され,良好な選択率で目的物を得ることができる。 (中略)[発明の効果]反応原料を一度に仕込まずに反応の進行とともに連続的に又は間欠的に仕込むことによって,反応系内での反応物の急激な形態の変化を避けることができ,高い選択率で収率よく目的とするアセタール類を製造することができる。 イ 特徴部分前記アによれば,本件発明2の特徴部分は「反応原料を一度に仕込まずに反応の進行とともに連続的又は間欠的に仕込み,反応缶内の内容物の容量を増加させつつ反応することによって,反応系内での反応物の急激な形態の変化を避けることができ,高い選択率で収率よく目的とする。」。 アセタール類を製造することができるという点にあると認められるなお,本件発明2の請求項には「回分法」という直接的な記載はないが 「連続法 (回分法の反対概念である )では反応缶内の内容物の容 ,」 。 量は反応中一定であるが(乙89添付資料2の215頁4〜6行 ,前)記「問題点を解決するための手段」に「反応缶内の内容物の容量を増加させつつ反応する」と記載されていることから「回分法」であることが表現されていると認められる。したがって,本件発明2は,その特徴部分のうち「反応原料を連続的又は間欠的に仕込む」という手法を「回分法」に適用することを前提としていると認めるのが相当である。 (2) 本件発明2の特許出願に至る経緯について91前提事実,証拠(甲2,52,乙31,乙31の2,乙32,33,156,177,証人P6,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア 研究への従事P6は,静岡大学工学部工業化学科を卒業後(乙156 ,昭和52),,。, 年4月 被告に入社し研究部に配属され原告の部下となった P6は昭和52年4月から昭和55年8月まで,ゲル化剤の合成・製造に関する研究に従事した(乙31 。),, ,, P6は 研究に当たり 週報ノートに研究の経過を記載し 毎週1回週報ノートを原告に提出し,原告は週報ノートを確認した上,サインをしていた。また,P6は,随時,週報ノートの記載に基づき研究報告書を作成した。なお,P6が研究に従事している間,原告自らが実験をすることはなかった。 イ P6の週報ノート(乙31添付資料2)についてP6の昭和52年4月から同年12月までの週報ノート(乙31添付資料2)には,回分法を使用した反応実験の記載があり,P6は,反応物を反応終了まで抜き出さない条件下で「連続仕込み法」の実験を行っており,P6は「連続仕込み法」の検討を回分法により進めていた。 ウ 研究報告書について(ア) 研究報告書(乙31の2)について原告及びP6連名の昭和53年7月17日付研究報告書(研-144692が記載されている。 (イ) 研究報告書(甲20)についてP6,原告外2名連名の昭和53年10月2日付研究報告書(研-1472が記載されている。 ,()「」 なお 本件発明2の特許出願依頼書乙31添付資料5 の 備考欄に引用されている「研-1472('78.10/2 」は上記研究)報告書(甲20)を指す。 (ウ) 研究報告書(乙177)について原告 P10及びP8連名の昭和62年3月24日付研究報告書 研- ,(2180研究報告書である。同報告書において ,前記(ア)の研究報告書に記 ,載されているP6の実験データが引用されている。 (3) 本件発明2の特許出願原告は,P6が昭和55年8月,ゲル化剤の合成・製造に関する研究から離れた後,1人で上記研究を続け,被告は,昭和62年12月7日,本件発明2の特許出願をした(甲2 。原告は,本件発明2の特許出願依頼 )書(乙31添付資料5)の「発明者」欄に,原告とP6の氏名を記載し,「備考」欄には「研-1472('78.10/2)までで本製造法の骨格完成」と記載している。 (4) 補償金の支給被告は,原告に対し,本件特許2の出願補償金2500円及び登録補償93金1万円を支給している。さらに,被告は,平成15年10月,本件発明2,3,4及び6につき,被告規程に定める職務発明実施補償に該当する,() 。 として 合計金65万5000円 乙6 の実施補償金を原告に支給した(5) 検討以上を総合すれば 「連続仕込み法」は,通常,回分法のための着想で ,はなく連続法のための着想であるが,P6は「連続法」に適用できる手 ,法を見い出すことを目的として,実験しやすい「回分法」により実験を行,「」 。, い 連続仕込み法 という手法を見い出したものと認められる そしてこの研究成果は,本件発明2の特徴部分のひとつであり,この成果に基づき,前記(2)ウ(ア),(イ)の研究報告書がまとめられ,本件発明2について特許出願手続がされているから,P6は,本件発明2の特徴的部分の完成に創作的に貢献したものと認められる。 しかし,上記研究報告書の記載からすると「反応原料を連続的又は間 ,欠的に仕込むという手法」を回分法に適用することにより,反応系内での反応物の急激な形態の変化を避けることができ,高い選択率,収率で,目的とするアセタール類を製造できるという効果(本件発明2の効果)が奏されるという認識が,研究報告書作成の当時,P6にあったと認めることはできず,P6が本件発明2を完成させたということはできない。一方,前記(3)の特許出願経過によれば,被告に対し本件発明2の出願依頼をしたのは原告であり,その依頼書には,発明者をP6と原告と記載していること,原告は,P6が本件研究から離れた後,1人で研究を続けていたことが認められ,他に,同研究を続行した人物は見あたらない。 以上によると,連続法のモデルとして行われた知見を回分法に適用することによって,本件発明2を完成させたのは原告であると認められる。 したがって,本件発明2はP6と原告の共同発明であると認められる。 (6) 原告の主張について94ア 甲27,甲28特許の出願との関係原告は,連続式高濃度法特許によってゲルオールDを改良製造するこ,, , とは失敗に終わっており 甲27 甲28特許が出願されていることはその証左であり,本件発明2に対するP6の貢献はない旨主張するが,。。 原告の主張は採用することができないその理由は以下のとおりである(ア) 甲27発明について甲27発明の明細書には,連続製造法において,ソルビット,ベンズアルデヒド類及び低級アルコールを触媒の存在下に予備的に反応させて得られた均一液状物(いわゆる「前駆体 )を,炭化水素反応媒 」体とともに連続的に反応器に仕込み,炭化水素反応媒体中で反応させる方法であり,これにより,目的とするベンジリデンソルビトール類を高選択率をもってかつほぼ定量的に得ることができるという趣旨の記載がある。 (イ) 甲28発明について甲28発明の明細書には,反応媒体として水溶性極性有機溶剤とともに使用する疎水性有機溶剤の量が,生成する目的物が結晶として析出するに足る量であって,かつ,反応系をゲル状ないし固相状に保ち得る量であり,さらに反応を強制攪拌下に行う方法であり,これにより,高収率かつ高純度で,しかも短時間で目的物を製造することができるという趣旨の記載がある。 なお,甲28発明の特許請求の範囲には「回分法」であることが明示的に記載されているわけではないが,反応系をゲル状ないし固相状に保ちながら反応を行うもので「連続法」に適用することは困難な ,技術であり 「回分法」の技術であると認められる。 ,(ウ) 以上によると,甲27発明は,連続法において前駆体を使用する点に特徴があり,甲28発明は,回分法において特定の溶剤使用量と攪95拌方法を採用する点に特徴があるといえる。これに対し,本件発明2の発明は,回分法において,前駆体を連続的に又は間欠的に仕込む点に特徴があるものであり,発明の特徴点においては,本件発明2は,甲27発明とは前駆体を使用する点でのみ共通し,また,甲28発明とは回分法である点でのみ共通していると認められるが,本件発明2の発明と甲27及び甲28発明とは,上記点が共通するだけであって別異の発明であるといえる。 したがって,甲27発明及び甲28発明が特許出願されたからといって,本件発明2に対するP6の貢献を否定することはできない。 イについて原告は, 多量の前駆体原料を,反応の進行につれて仕込み速度を増大させながら加えて生成物を増加させて反応をさせるという方法を創作し,これを可能とする することによって,製造実験をし, 回分式高濃度製造法を完成したものであり, 本件発明2の実施は不可分のものである旨主張するが,本件発明2の特許請求の範囲の記載からは,がどのようなものであるのかは不明であり, に関する記載及びそれを推測できる記載はない。すなわち,については,特許請求の範囲に記載されていないから,そもそも本件発明2の構成要件ではなく,また,原告が主張する については,発明の詳細な説明にすら開示がなされていない。 以上によれば, は,本件発明2とは直接の関係がないものであり,原告の上記主張は採用することができない。 (7) 被告の主張について被告は,本件発明2の発明者がP6のみであり,原告は発明者ではないと主張するが,前記(2)のとおり,P6が行った実験は,スラリー上に,96一度に前駆体を加えて,反応進行の時間経過を解析するものであり,その目的は,連続反応における平均滞留時間pを得る(反応速度の目安)ことにあり 回分法完成の意図や着想があったとは窺えない P6の前記週報ノー ,。 ト(乙31添付資料2,3,乙32,33)によっても,P6が当該研究を離れるまでに,本件発明2の発明を完成させたことを認めることはできない。 4 争点1-3(原告が本件発明3の発明者か否か)について(1) 本件特許3の特徴ア 本件明細書3には,次のとおり記載されている(甲3 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録3の「特許請求の範囲」に記載のとおり【発明の詳細な説明】[産業上の利用分野]本発明は,安定化されたジベンジリデンソルビトール類組成物に関する。 [従来の技術](「 」 。), ジベンジリデンソルビトール類 以下 DBS類 と略称する は結晶性ポリオレフィン系樹脂の改質剤として賞用され,剛性の改良や成形サイクルの短縮に有効で,かつ成形物の透明性を向上せしめる等,画期的な特性を有するものである(高分子加工,第35巻,第1号,30〜35頁(1986 。)しかしながら,従来のDBS類は,熱安定性に欠ける傾向があった。 そのため,通常の加工方法により,例えばポリオレフィン系樹脂にDBS類を核剤として配合してなる樹脂組成物を加熱成形した場合には,加熱成形時にDBS類が分解して臭気が発生し,更には成形物が着色する等の問題点が指摘されていた。又,斯かる問題点は,成形加工時の作業97環境上や食品包装剤等の無臭品が要望される用途面において大きな障害となっていた。 その対策として,例えば樹脂中に脂肪族カルボン酸金属塩等の熱安定剤を予め若しくは同時に配合したり(特開昭58-104933号,特開昭62-53360号 ,当該熱安定剤でその表面を層状に被覆する )方法(特開昭62-50355号,特開昭62-138545号 ,非芳)香族有機アミンを添加する方法(特開昭62-4289号)等が提案されている。本発明者らによる検討の結果,これらの方法によって一定の改善は認められるものの,単に熱安定剤を樹脂に適用するのみではDBS類の分解を充分抑制することは困難であった。 又,食品包装材のごとき衛生面で充分留意しなければならない用途分野においては,安全な添加剤であってもその添加量はできるだけ少量であることが望ましい。 一方,ジベンジリデンソルビトールにモノ置換体やトリ置換体が混在すると,ポリオレフィン樹脂の改質効果が減少するとの知見により,斯かる問題点を解決する方法として上記の置換体を脂肪族低級アルコールにより洗浄除去してジベンジリデンソルビトールを精製する方法が提案されている(特開昭53-5165号 。しかしながら,斯かる精製物 )にあっても尚,熱安定性が不十分であった。 ,。 引続く詳細な検討の中で 以下の2つの重要な事実が明らかとなった即ち,(1) DBS類を製造するに際して触媒として適用した硫酸,リン酸,p-トルエンスルホン酸等の強酸性化合物は,通常の製造工程ではほぼ中和除去されているものの,製品が粉体であるため通常では問題とされない程度の痕跡量は残存しており,しかも単なる溶剤精製ではこのものを完全に除去することができない。この強酸性化合物は,製品中に残存98する量が微量であっても高温加熱条件下でDBS類の加水分解を局所的に促進,ppmオーダーの芳香族アルデヒドを発生する結果,斯かる酸性物質の存在は臭気の発生の原因となるものである。 (2) DBS類自体の融点は高く,非常に安定なものである。例えば,1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトールでは220℃,1,3:2,4-ビス(メチルベンジリデンソルビトール)では260℃,又,原料であるベンズアルデヒド類がベンズアルデヒドとクミルアルデヒドとの混合物からなる非対象 のDBS類では138℃である。一(ママ),,, ,, 方 従来の製品には1 2:3 4-ジベンザール化物又は1 2:34:5,6-トリベンザール化物のような5員環アセタール化物等の位置異性体が微量混在しており,このものは通常,非晶質である場合が多く,その融点は80℃以下と低いものであって,このものが製品としてのDBS類の熱安定性を低下させている。 [発明が解決しようとする課題]本発明者らは,樹脂の加熱成形時に生ずるDBS類の熱分解を,比較的少量の安定剤を適用することにより抑制し,作業環境を改善するとともに,衛生面においても問題のない成形物を調製しうる熱安定性の良好なDBS類を開発すべく鋭意検討の結果,DBS類を特定の溶剤により位置異性体等の不純物を洗浄除去して得た精製物中に混在する強酸性物質を完全に中和して中性塩化することにより消滅せしめるとともに,その上で更に特定の物質を熱安定剤として配合することにより所期の目的を達成し得ることを見い出し,この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 即ち,本発明は,熱安定性に優れたDBS類組成物を提供することを目的とする。 [発明の効果]99本発明に係るDBS類組成物は,加熱しても着色が少なく,かつ分解によるアルデヒドの発生が抑制され,非常に安定なものである。そのため,例えば,このものを結晶性樹脂の核剤として適用した場合,樹脂を成形するに際して臭気の発生は大幅に抑制されるため作業環境が改善され,かつ色ムラのない食器容器にも使用できる成形品を得ることができる。 イ 特徴部分前記アによれば,本件発明3の特徴部分は,前記一般式(?)で表されるDBS類において,その位置異性体が0.2重量%以下に低減された当該DBS類の精製物に対し 「 精製物中に混在する強酸性物質を完 ,(全に中和して中性塩化することにより消滅せしめるために適用される)アルカリ金属化合物及び(熱安定剤として適用される)アルカリ性有機アミン化合物を配合」することによって,熱安定性に優れたDBS類組成物を提供することにあるといえる。 (2) 本件発明3の特許出願に至る経緯について,(,,,, ,, , 前提事実 証拠 甲3 22 23 52 乙34 35 乙96の2乙163,証人P8,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア 本件発明3の経緯ゲルオールMDは,昭和57年9月,販売が開始され,ポリプロピレ,, ン樹脂の優れた透明化核剤として使用されていたが 異臭があったため被告ではその無臭化が課題になっていた。異臭の原因は製品中のp-トルアルデヒド(PTAL)であると考えられ,PTALの低減を目的として,多くの検討がされていた。 イ 原告及びP10による研究原告は,昭和61年4月から,商品開発部に異動になり,以後,同時100期に商品開発部に異動になった部下のP10とともに,ゲルオールMD等の研究に従事し,次の(ア),(イ)の研究報告書を作成した。なお,P10は,平成元年4月,被告を退職した。 (ア) 昭和62年4月9日付研究報告書(甲22)P10及び原告連名の昭和62年4月9日付研究報告書(研-2185について何ら検討されていない。 (イ) 昭和63年11月13日付研究報告書(甲23)P10及び原告連名の昭和63年11月13日付研究報告書(研-2289実験内容は,というものである。 ウ P8等による研究P8は,昭和53年4月,被告に入社し,研究部に配属され,原告の下で各種アセタール類の合成と核剤としての評価に従事し,昭和59年6月,ファイン事業部に異動し,原告の下でゲルオールM-MDの開発101やゲルオールDの高濃度法試作に携わり,昭和61年4月,商品開発部に異動になり,P11の下で,ゲルオールMDの安定化を検討し,共同研究者とともに次の(ア),(イ)の研究報告書を作成した。 P8は,昭和63年4月,研究第三部に異動となり,P12の下で,ゲルオールMDの安定化及びゲルオールDHの試作を検討し,共同研究者,,, とともに次の(ウ) (エ)の研究報告書を作成し 昭和63年8月22日ゲル化剤会議で報告した(後記(オ)。P8は,現在は技術開発部で樹 )脂添加剤1チームのチームリーダーを務めている。 (ア) P8,P11連名の昭和62年10月15日付研究報告書(研-2217(イ) P8,P11,P22,P28,P29連名の昭和63年3月9日付研究報告書(研-2245(ウ) P8 P30及びP12連名の昭和63年7月30日付研究報告書 研- ,(2275なお,上記研究報告書に,と記載されている。 (エ) P10及び原告連名の昭和63年8月8日付研究報告書(研-2273上記研究報告書において, がされている。 (オ) 昭和63年8月22日付ゲル化剤会議資料(乙163添付資料3)上記会議資料には,であると記載され102ている。 (3) 本件発明3の特許出願被告は,昭和63年8月24日,本件発明3につき,発明者を原告及びP10として特許出願した(甲3 。P8及びその上司であったP11及びP )12は,上記特許出願につき異議を唱えていない。 (4) 補償金の支給被告は,原告に対し,本件特許3の出願補償金2500円及び登録補償金1万円を支給している。さらに,被告は,平成15年10月,本件発明2,3,4及び6につき,被告規程に定める職務発明実施補償に該当する,() 。 として 合計金65万5000円 乙6 の実施補償金を原告に支給した(5) 検討本件発明3の特徴部分は,前記(1)イのとおり,? 位置異性体が0.2重量%以下に低減された当該DBS類の精製物を使用すること,? アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物を配合することにあると認められるところ,原告は,上記?の精製物について,前記(2)ウ(エ)の研究報告書(乙96の2)によって確認していることが認められる。上記?については,原告自らが本件発明3の特許出願前に実験していることを直接認めるに足りる証拠はないが,本件発明3の特許出願手続は原告がしていること,原告とP10は,特許出願後であるが,実験を実施していること(前記(2)イ(イ)の研究報告書(甲23 )に照らすと,本件発明3が )特許出願された昭和63年8月24日までに,原告及びP10は,上記?を着想していたものと認められる。 他方,前記(2)ウ(ウ)の研究報告書(乙34添付資料3)には,と103記載されていること,前記(2)ウ(オ)のゲル化剤会議資料(乙163添付資料3)には,と記載されていることに照らし,P8は,アルカリ金属化合物とアミンの併用により安定性が格段に優れるという認識を持っていなかったと認められる。 以上を総合すると,P10と原告が本件発明3の前記特徴部分を着想したと認めるのが相当である。したがって,本件発明3はP10と原告の共同発明であると認められる。 (6) 原告の主張についてア 位置異性体の低減について原告は, を実施することにより,位置異性体を0.2重量%以下にすることに成功し,これが本件発明3の完成に寄与した旨主張する。 たしかに,位置異性体が0.2重量%以下に低減された当該DBS類の精製物を作ることについては,前記(2)ウ(エ)の研究報告書(乙96の2)によって確認していることが認められ,また,これが本件発明3の特徴の1つでもある(前記(1)イ 。しかし,本件明細書3には,精 )製法に関する記載や, はなく, 本件発明3に不可欠の要件とはいえない。 そうすると,原告の実施した について,作業仮説が誤っていたか否かについて争いがあるものの,その結論は,本件発明3の発明者の認定に影響はないというべきである。 イ EDTAがアルカリ性有機アミン化合物に該当するか否かについて原告は,EDTAが本件発明3に係るアルカリ性有機アミンであり,旨主張するが,本104件明細書3では,EDTAはアルカリ金属化合物に位置づけられていること,に照らし,上記研究報告書(甲22)によって本件発明3が完成したとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (7) 被告の主張についてア 原告の実験内容について(ア) 被告は,原告及びP10の作成した前記(2)イ(ア)の研究報告書(甲22)が本件発明3と関係ない旨主張するが,前記(5)のとおり,原告が本件発明3の発明者であると認められる根拠は,研究報告書(甲22)ではないから,被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 被告は,原告が,EDTAが本件発明3に係るアルカリ性有機アミン化合物である旨主張する一方で,EDTAを検討した前記研究報告書(甲22)が,本件発明3と全く別であることを認めているから,原告は本件発明3の発明者でないことを自認しているに等しい旨主張する。しかし,前記(5)のとおり,原告が本件発明3の発明者であると認められる根拠は,上記研究報告書(甲22)ではなく,EDTAがアルカリ性有機アミン化合物であると認められるか否かとは関係ないから,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 被告は,前記(2)イ(イ)の研究報告書(甲23)の実験は,によって行われていて,原告が着想したという行われてはいないから,原告の主張と上記研究報告書の内容とは矛盾する旨主張する。しかし,前記(6)アで述べたとおり,本件発明3の特許請求の範囲には,精製法に関する記載はないから, 本件発明3の発105明者を認定するに当たって本質的な事項であるとはいえない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イについて被告は, によって実現されることはなく,原告の実施した作業は,作業仮説において誤っていると主張するが,前記アで述べたとおり, によって実現できるか否かについては,本件発明3の発明者の認定には関係がないというべきである。 ウ アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物の配合によるゲルオールMDの安定化について,, 被告は EDTAが本件発明3に係るアルカリ性有機アミンではなく前記(2)イ(ア)の研究報告書(甲22)では,原告は,ゲル化剤会議資料2(乙34添付資料4)で報告されたP8の実験を元に,自らが発明したかのように装って特許出願を行った旨主張するところ,たしかに,前記研究報告書(甲22)ではるが,前記(3),(5)のとおり,原告が本件発明3の特許出願手続をしているところ,本件明細書3には長鎖脂肪族3級アミン及びアルカリ性有機アミンについての記載があること等を根拠に,原告が本件発明3の発明者であると認められるのであって,EDTAがアルカリ性有機アミンではないからといって,前記認定を左右するものとは認められない。 また,P8は,アルカリ金属化合物とアミンの併用により安定性が格段に優れているという認識を持っていなかったと認められるから,P8の,, 報告自体 本件発明3の特許出願にどれだけ有益であるか疑問であるし本件明細書3の内容に照らすと,昭和63年8月24日付の上記ゲル化106剤会議資料を見て,本件発明3の特許出願日(同月24日)までのわずか2日間に,明細書の内容を具体化するのは著しく困難であると認められる。また,原告は,甲23の基礎となった実験を上記特許出願前にしていたと推測することができるから,長鎖3級アミン(アルカリ性有機アミン)について全く検討していなかったとは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 5 争点1-4(原告が本件発明4の発明者か否か)について(1) 本件発明4の特徴ア 本件明細書4には,次のとおり記載されている(甲4 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録4の「特許請求の範囲」に記載のとおり[従来の技術と課題]芳香族アルデヒドとソルビトールとを酸触媒の存在下,アセタール縮合させて調製されるDBS類は,結晶性樹脂組成物の核剤として賞用されているものであって,本発明者らは,これまでにもより優れた特性を有する核剤を提供すべく鋭意決検討の下,種々のDBS類を提案してきたところである。 しかしながら,核剤に対する要望は多岐に亘っているため,広範囲の用途に適用するためには,尚,改善の余地が認められる。 具体的には,1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール(以下「DBS」と略称する )は,結晶性樹脂成形物の光学的特性,特にその透 。 明性を大幅に改善し得るものではあるが,より高い透明性を必要とする分野に対しては充分その要望を満足するものではなく,斯かる問題点を解消するものとして,ベンズアルデヒドの代りにトルイルアルデヒドを適用して調製される1,3:2,4-ジ メチルベンジリデン ソルビトー ()ル(以下「Me-DBS」と略称する )を提案した(特開昭53-117 。 107044号,特開昭54-28348号 。)このものを適用することにより,格段に優れた透明性を有する樹脂組成物を得ることができるが,トルイルアルデヒドは,香料としても用いられる化合物であって香気が極めて大きいため,樹脂組成物を加熱して成形加工するに際し,臭気を発生し易いという欠点が認められる。 1 3:2 4-ビス ポリアルキルベンジリデン ソルビトール 特 ,, ( ) (開昭56-45934号)や,各芳香環に夫々異なる種類や数の置換基を有する,いわゆる非対称型のDBS類(特開昭59-12951号)は,Me-DBSと同様に優れた透明性を改良する効果を有しているとともに,Me-DBSの欠点である加熱成形時における臭気が大幅に抑制されたものである。 一方,DBS類は,従来の核剤である金属塩やシカリ等の「分散型」とは異なり,その融点又はそれ以上の温度で均一に溶解することがポイントとなる「溶解型」の核剤であるため,結晶性樹脂の成形加工時においては核剤を高速度で融解混合することが大切である。したがって,低い融点を有するDBS類程,加工性に優れた核剤であるといえる。 しかしながら,これまでの一連の研究において,高い融点を有するDBS類程,核剤としての透明性の改質効果は大きい傾向が認められており,低融点と高機能とを同時に満足させることは二律背反の困難な課題である。 即ち,上記の各置換体は,いずれもその融点が260℃程度と高く,それ以下の加熱加工条件しか採用できない一般成形加工分野においてDBS類の優れた核剤効果を得るためには,適用する核剤の融点以上の温度で高濃度マスターバッチを調製する工程を余分に必要とする等,一定の困難性を伴っていた。 [発明を解決しようとする課題]108本発明者らは,結晶性樹脂の核剤としてのDBS類の特性について深く検討を進める中で,特定の構造を有する非対称型誘導体を特定比率で含有してなるDBS類の融点がこれまでに知られていた同種の化合物に比して格段に低く,その結果,加工性が大幅に改善され,しかもこのものを核剤として配合した結晶性樹脂組成物が下記の特性をも併せ持ち,同時に加熱成形に際しての臭気の発生も抑制されることを見い出し,この知見に基づいて本発明を完成した。 (1) 成形物の透明性の大幅な向上,(2) 弾性率の向上,(3) 耐衝撃性の向上,(4) 熱変形温度の向上,(5) ひけの防止,(6) 延伸フィルムの寸法安定性の向上,(7) 結晶化温度の向上による成形サイクル時間の短縮,(8) 顔料分散系における体積収縮の防止,等。 即ち,本発明は,低融点で加工性が大幅に改善された樹脂改質用ジアセタール組成物及び加工性の改良と同時に透明性,熱的,力学的性質等の改質された結晶性樹脂組成物を提供することを目的とする。 [発明の効果]本発明に係るDBS類を配合してなる結晶性樹脂組成物は,最高度の透明性及び光沢を有するばかりでなく,成形加工時における熱分解による臭気の発生も認められない。しかも,当核DBS類の融点は229℃以下と,従来のDBS類の融点と比較して著るしく低いため,成形温度を低減することができ,ポリエチレン等の比較的低温で成形する樹脂に適用する場合においても,核剤としてのDBS類が完全に融解しないことに起因するフィッシュアイの生成を抑制することが容易である。 109イ 特徴部分前記アによれば 本件発明4の特徴部分は ? 樹脂改質用ジアセター ,,ル組成物が,(a)前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物,(b)前記一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物及び(c)前記一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物との混合物からなること,? かかる組成物が 0.3≦Z≦0.8の組成からなること Z=A/(A ,(+B+C)。ここで,Aは(a)成分の,Bは(b)成分の,Cは(c)成分夫々の該ジアセタール組成物中の重量割合を表す )の2点が,その特。 徴部分であるといえる。 (2) 本件発明4の特許出願に至る経緯について前提事実,証拠(甲4,52,59,乙37,182,証人P10,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア P10の研究の状況P10は,昭和60年3月,立命館大学理工学部化学科を卒業し,同年4月,被告に入社し,ファイン事業部に配属され,昭和61年4月,商品開発部に異動し,昭和63年4月,研究第3部に異動した。商品開発部と研究第3部時代,P10の上司は原告であった。P10は,平成元年4月,被告を退職した。なお,結婚に伴い,姓がP10からP9に変わっている。 イ 原告の指示原告は,昭和62年12月,P10に対し,新規非対称ゲル化剤の開発を指示した。原告は,昭和60年から,京都大学の受託研究生として,P31助教授の下でゲルオールMDのゲル形成のメカニズム等の研究を始め,1週間の約半分は同大学に行っており,昭和62年12月ころも同様であったため,原告自らが実験することはなかった。 なお,原告作成の昭和62年12月7日付「第116期テーマ (乙」11037添付資料2)と題する書面には 「原料アルデヒドにDMEーBA ,L/EーBAL混合物を用いることを基本とする」とのみ記載されていた。 ウ 研究報告P10は,昭和62年12月以降,を行い, を評価し,その結果,を明らかにし,原告及びP10連名の昭和63年7月30日付研究報告書(研-2274にまとめた。 なお,P10作成の昭和63年3月1日付「ゲル化剤の誘導体の合成」と題する書面(乙37添付資料3書面)には,以下の記載がある。 「, 。 以上の条件で 下記の3通りのアルデヒドを用いてD体の合成を行う???それぞれ,反応粗物を後処理,乾燥し,GC組成分析を行う。 (s63.3.4〜10 」)「透明性が最もすぐれている組み合わせについて,今度はアルデヒドの割合を変えて,合成を行う。 (3.16〜27 」)(3) 本件発明4の特許出願原告は本件発明4の特許出願依頼書を作成し,被告は,昭和63年9月16日,原告及びP10を発明者として特許出願した(甲4 。)(4) 補償金の支給被告は,原告に対し,本件特許4の出願補償金2500円及び登録補償111金1万円を支給している。さらに,被告は,平成15年10月,本件発明2,3,4及び6につき,被告規程に定める職務発明実施補償に該当する,() 。 として 合計金65万5000円 乙6 の実施補償金を原告に支給した(5) 検討前記(1)イ,(2)によると,本件発明4の特徴は,前記(2)の乙37添付資料3書面に記載された提案に基づいていることが認められる。 したがって,上記書面に記載された提案の主体が本件発明4の発明者と解するべきであるが,この作成者はP10であるため,そこに記載された提案がP10だけによるものか,原告の関与がどの程度あるのかを明らかに必要がある。 ? P10は,証人尋問において,前記研究報告書(乙37添付資料4)を作成するに際し,P10が原案を作成し,原告によって何度も,修正された旨を証言していること(P107頁 ,? 原告は乙37添付資料3書面 )に「日程の再検討」と書き加えていること,? P10は,証人尋問におい,, て 原告からDBALとEBALの組合せで実験をしてくれと言われた際駄目だと思ったわけではなく,どうなるかなと思って付け加えたに過ぎない旨証言しており,この証言によれば,P10は,前記乙37添付資料3書面によって,原告作成の昭和62年12月7日付「第116期テーマ」と題する書面(乙37添付資料2)に記載された,原料アルデヒドにDME-BAL/E-BAL混合物を用いることを基本とする旨の原告の提案を排斥した上で,DBAL,EBAL,BALの各組み合わせを提案したものではなく,また,P10の提案も積極的な根拠に基づくものではないと認められること,? P10の陳述書(乙37)には 「私自身は,どの2つのアルデヒドの組み合わせによって,透明化 ,剤として優れた性能が得られるかは全く予想できるものではないと考えて112いました」との記載がある。 以上を総合すると,前記乙37添付資料3書面記載の内容は実験計画であり,その内容は原告とP10が協議して決められたものと認めるのが相当である。そして,前記認定の経緯に照らすと,上記書面は,原告の提案を排斥あるいは修正する新しい提案をしたものとは認め難いこと,両名が協議した実験を実施した結果,本件発明4の特徴部分の発見を得ることができたと認められるから,P10と原告が本件発明4の特徴部分を着想したと認めるのが相当である。 したがって,本件発明4の発明者はP10と原告であると認められる。 (6) 被告の主張についてア 被告は,原告がEBALに固執していた旨主張し,その根拠として,? 昭和63年4月6日付研究計画書? 原告は,が終わってから(昭和63年1月 ,実際にゲルオールDHの検討を開 )始するまで(昭和63年5月)の間に,ゲルオールEDの開発を再度命じていること,? 甲31の出願時の明細書(乙169:特開昭59-12951)には,EBALとBALの非対称ジアセタールの実施例及びDBALとBALの実施例が記載されているが,DBALとEBALの実施例は記載されておらず 昭和63年9月に 乙169 特開昭59- ,,(12951)に係る出願手続の過程で,DBAL/EBALの実施例を追加する補正が行われていることを挙げるが,上記?ないし?の事実が認められるにしても,それは,過去の一定時点における原告の見解を推認するに過ぎない。また,原告がEBALに固執していたのであれば,P10と意見が対立し,その後,P10の意見が採用されて,本件発明4の113完成に至ったということになるが,前記のとおり,P10の証言によっても,P10は,原告の提案を排斥したのではないこと,P10の提案も積極的な根拠に基づくものではないこと,P10は実験結果を予想していたわけではないこと等に照らすと,P10がEBALに固執していた原告を説得したものとは到底認め難い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イ 被告は P10の指導のほとんどはP8が行っていた旨主張するが ? ,,P10は,証人尋問において,乙37添付資料4の研究報告書を作成するに際し,P10が原案を作成し,原告によって何度も,修正された旨を証言していること(証人P10尋問調書7頁)? 原告は前記乙37添付資料3書面に「日程の再検討」と書き加えていること等に照らすと,原告は,P10が実施していた実験内容をP10に放任していたのではなく,原告はP10に研究の指導を行い,実験等の研究内容についてP10と協議していたものと認められるから,被告の上記主張は採用することができない。 ウ 被告は,原告がP10に三角相関図(乙37添付資料5の図4)を作成させたことは発明には寄与しておらず,原告は本件発明4の発明者ではない旨主張する 本件発明4における Zの範囲は0.3≦Z≦0.8 。「」で,Zの最大値は0.8であるが,原告及びP10連名の昭和63年11月13日付研究報告書(研-2287114同4に基づいて本件発明4のZの範囲が直接定められたものでないことは明らかである。そのため,。, 上記図4が本件発明4の完成に直接寄与しているとはいえない しかしそれにしても,前記(5)のとおり,原告はP10の研究を指導し,両名が協議した実験を実施した結果,本件発明4の特徴部分のひとつであるZに着目し,その好ましい範囲を特定するという発見を得ることができたと認められるから(少なくとも,本件発明4におけるZの範囲をP10のみが発見したと認めるに足りる証拠もないというべきである ,本件。)発明4はP10と原告の共同発明であると認めるのが相当である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 6 争点1-5(原告が本件発明5の発明者か否か)について(1) 本件発明5の特徴ア 本件明細書5には,次のとおり記載されている(甲5 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録5の「特許請求の範囲」に記載のとおり[従来の技術]一般式(1)で表わされるジアセタールは,特異な性能を有する物質であって,これまでにポリプロピレン等の透明性改良剤,塗料,インキ,接着剤等の流動性改良剤,接着剤,香粧品,医薬品等の固形化剤等,幅広い用途が開発されている。 斯かるジアセタールは,特定の構造を有する芳香族アルデヒドと多価アルコールとを酸触媒の存在下,疎水性有機溶媒中で縮合し,次いで中和し,溶媒を回収し,乾燥することにより製造される(特公昭48-43748号,特公昭58-22156号,特公昭58-22157号,特開平1-149789号等 。)これらの方法により,収率よく目的物であるジアセタールを得ること115はできるものの,当該製造工程中において,ジアセタールの凝集物である固形物やゲル状ブロック物が一部に生ずる傾向が認められる。これらの凝集物の中には中和工程を経ても,尚,未中和の酸触媒が局所的に残存しており,この残留した酸触媒が中和工程に続く溶媒回収,乾燥等の加熱工程においてジアセタール(縮合生成物)の加水分解を惹起する。 この局所的なジアセタールの加水分解は,目的物の収率の低下のみならず,製品の着色を招いたり,未反応アルデヒドともに原料に由来するアルデヒド臭を発生させる原因と考えられるものである。 この着色や臭気を抑制する技術の開発は,特に,ジアセタールを核剤として適用した樹脂成形品を食品用の包装材料や容器等に使用する分野において要望されており,斯かる問題点を解消し得る技術として,これまでにジアセタールを亜臨界又は超臨界状態の流体で処理して精製する方法(特開昭60-199891号)が知られている。 [発明が解決しようとする課題]本発明者らは,特定の流体により特別の精製処理を施すことなく,より簡便に上記目的を達成し得る新規な製造方法を確立すべく鋭意検討する中で,従来の製造方法に係る中和以降,乾燥前のいずれかの工程において,特定の構造を有する脂肪族3級アミンを所定量配合することにより,従来回避することが困難であった局所的なジアセタールの加水分解が抑制され,所定の目的が達成されることを見い出し,斯かる知見に基づいて本発明を完成するに至った。 即ち,本発明は,ジアセタールの着色を防止し,ジアセタールの加水分解によって生ずるアルデヒドに起因する異臭が大幅に抑制されたジアセタールを収率よく製造する工業的に優れた方法を提供することを目的とする。 [発明の効果]116本発明に係る特定の脂肪族3級アミンを適用することにより得られたジアセタールは,大幅に臭気及び色相が抑制されたものであって,工業的に極めて有用なものである。 イ 特徴部分前記アによれば,本件発明5は 「中和以降,乾燥前のいずれかの工 ,程において ジアセタール100重量部当り一般式(2)又は一般式(3) ,,で表わされる脂肪族3級アミンを0.1〜20重量部配合する」ことによって,着色や臭気を抑制するという特有の効果が導かれるものであるから,この部分が本件発明5の特徴部分というべきである。 (2) 本件発明5の特許出願に至る経緯について前提事実,証拠(甲5,52,乙10,11,39,証人P8,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア P8は,昭和61年4月,商品開発部に異動になり,P11の下で,ゲルオールMDの安定化を検討し,共同研究者とともに前記4(2)ウ(ア)及び(イ)の研究報告書(乙34添付資料1,2)を作成した。P8は,昭和63年4月,研究第三部に異動となり,P12の下で,ゲルオールMDの安定化及びゲルオールDHの試作を検討し,共同研究者とともに前(,) 記4(2)ウ(ウ)及び(エ)の研究報告書乙34添付資料3 乙96の2を作成し 昭和63年8月22日 ゲル化剤会議で報告した 前記4(2) ,, (ウ(オ) 。)イ 原告は,昭和61年4月,商品開発部に異動の上,同部の主任研究員になり,昭和63年4月,研究第三部に異動の上,同部の主任研究員になり,平成元年7月,同部の副部長に就任した。この間,ゲルオールDH等の研究に従事し,原告及びP32連名の平成元年7月19日付研究報告書(研-2322を作成した。 117ウ 原告及びP8は いずれも 本件発明5の特許請求の範囲のうち 中 ,, ,「和以降,乾燥前のいずれかの工程において」脂肪族3級アミンを添加する実験を行っていない。 (3) 本件発明5の特許出願原告は本件発明5の特許出願依頼書を作成し,被告は,平成元年10月2日,本件発明5につき,発明者を原告として特許出願した(甲5 。P)8及びその上司であったP11及びP12は,上記特許出願につき異議を唱えていない。 (4) 補償金の支給被告は,原告に対し,本件特許5の出願補償金5000円及び登録補償金1万円を支給した。 (5) 検討本件発明5の特徴部分は,前記(1)イのとおり 「中和以降,乾燥前の ,いずれかの工程において,ジアセタール100重量部当り,一般式(2)又は一般式(3)で表わされる脂肪族3級アミンを0.1〜20重量部配合する」ことによって,着色や臭気を抑制するという特有の効果が導かれることにあると認められるところ,原告とP8の両名とも,その実験を行っていないから,上記各研究報告書を理由に本件発明5の発明者を特定することは困難というべきである。 しかし,原告は本件発明5の特許出願依頼書を作成していること,被告は,平成元年10月2日,本件発明5につき,発明者を原告として特許出願しているが,P8及びその上司であったP11及びP12は,上記特許出願につき異議を唱えてないこと,被告は,原告に対し,本件特許5の出願補償金5000円及び登録補償金1万円を支給していることを総合すると,118原告が本件発明5の特徴部分を着想したと認めるのが相当である。 したがって,本件発明5の発明者は原告であると認められる。 (6) 被告の主張についてア 被告は,P8が中和から乾燥までの工程に脂肪族3級アミンを添加することを着想していた旨主張し,P8は,証人尋問において,上記主張に沿う証言をし,P8の陳述書にも同趣旨の記載があるが,P8が作成(,), した研究報告書など 乙34添付資料1〜3 乙96の2 によっても上記証言を裏付けるに足りず,他に,P8が前記内容の着想をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。イ 被告は,P8は,添加剤の同定を行い,DBSの安定化効果を自ら確認し,昭和63年8月22日の会議で報告している旨主張するが(被告の準備書面(7)69頁 ,ゲル化剤会議資料(乙163の2)には,本 )件発明5の特徴部分についての記載はないから,被告の上記主張は採用することができない。ウ 被告は,原告が脂肪族3級アミンについて何ら検討していないし,P8の実験後にも,中和以降,乾燥までの間に,脂肪族3級アミンを添加,, する実験をしておらず 原告が本件発明5の効果を確認していないから原告は本件発明5の発明者ではない旨主張する。たしかに,前記(2)イの研究報告書原告が中和以降,乾燥までの間に,脂肪族3級アミンを添加する実験をしたことを認めるに足りる証拠はない。しかし,前記(4),(5)のとおり,本件発明5の特許出願に至っている以上,本件発明5の特徴部分は原告が着想したしたと認めるのが相当であって,前記実験をしていないことが前記認定を左右するとは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。7 争点1-6(原告以外の本件発明6の発明者は誰か)について119(1) 本件発明6の特徴ア 本件明細書6には,次のとおり記載されている(甲6 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録6の「特許請求の範囲」に記載のとおり[従来の技術と課題]「アセタール類の一種であるベンジリデンソルビトール類は,特異な性能を有する物質として,現在までにポリプロピレン樹脂等の透明性改良剤,塗料,インキ,接着剤等の流動性改良剤,揺変剤,接着剤,香粧品,医薬品等の固形化剤等,幅広い用途が開発されている。 この化合物は,例えば,所定のベンズアルデヒド類とソルビトール,キシリトール等の多価アルコールとを酸触媒の存在下又は無触媒下に縮合させることにより製造されるが,その改良方法として,シクロヘキサン等の疎水性有機溶媒と低級アルコール等の極性有機溶媒とを反応媒体として用いる方法が提案され(例えば,特公昭48-43748号 ,)既に工業的にも用いられている。 当該アセタール化反応における低級アルコールの作用は極めて複雑で,, , , あるが 結果として アルデヒド類とのエーテル化反応 アルデヒド類多価アルコール類との混合アセタール化反応に関与し,生成水の除去促進,反応の選択性の向上等に寄与するものと考えられる。 しかしながら,この方法では,低級アルコールを多量に必要とし,反応完結までに長時間を要し,しかも反応率が頭打ちとなって定量的な反応率に至らない等,工業的な製造方法としては,尚,改善の余地が認められる 」。 [発明が解決しようとする課題]「本発明者らは,斯かる欠点を改善し,短時間で効率良く目的とするアセタール類を製造するための工業的に優れた製造方法を確立すべく,120鋭意検討の結果,(1)系中の低級アルコールの量が少なすぎた場合には反応率が低くなり,反応の選択率も低下する,(2)系中の低級アルコールの量が多すぎた場合は有効に作用する低級アルコールの割合が低下し,反応完結までに長時間を要し,反応率が頭打ちとなり,定量的に反応することができない,等の事実を認めた。 引き続く検討の中で,斯かる問題点は,低級アルコールの仕込み方法を制御することによって解消され,所定の目的が達成されることを見い出し,斯かる知見に基づいて本発明を完成するに至った。 即ち,本発明は,定量的に当該アセタール化反応をすすめるために改良された工業的に優れたアセタール類の製造方法を提供することを目的とする 」。 [課題を解決するための手段]「本発明に係るアセタール類の製造方法は,疎水性有機溶媒及び低級アルコールの存在下にアルデヒド類と多価アルコールとを脱水縮合して一般式(?)で表されるアセタール類を製造するに際し,当該反応中において,追加の低級アルコールを分割又は連続して仕込み,低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すことを特徴とする 」。 [式中,A,Bは同一又は異なって,(X)n若しくは(X')mの置換基を有していてもよい,芳香環,ナフタレン環又はテトラヒドロナフタレ121ン環を表す。X,X'は同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,ハロゲン原子,カルボキシル基又はフェニル基を表す。m及びnは夫々1〜5の整数,pは0又は1を表す ]。 [発明の効果]「本発明方法を適用することにより,短時間に効率良く目的とするアセタール類を製造することができる 」。 イ 特徴部分前記アによれば,本件発明6の特徴部分は,前記一般式(?)で表されるアセタール類を製造するに際し,当該反応中において 「追加の低級,アルコールを分割又は連続して仕込み,低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すこと」にある。 (2) 本件発明6の特許出願に至る経緯について前提事実,証拠(甲6,19,52,59,乙11,40,45ないし51,55〔枝番号を含む ,証人P14,証人P5,原告本人)及び弁 。〕論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア 関係者の経歴,,, ,, (ア) P14は 昭和33年4月被告に入社し 技術部に配属され 以後昭和40年8月,技術部研究室の研究員(係長代理待遇 ,昭和42)年2月,技術部の研究員(係長待遇,同年4月,研究部の研究員, )昭和44年3月,研究部の主任研究員(課長待遇)研究部の第2研究室長を歴任し,可塑剤及びゲル化剤の仕事に従事していたが,そのころ,原告が部下になった。また,P14は,昭和50年2月,研究部の主席研究員,昭和53年4月,開発事業部長を兼務し,昭和54年8月,研究第二部長兼開発事業部長となり,原告の上司ではなくなり,その後,被告を退職した。 122(イ) P5は,昭和35年4月,被告に入社し,生産部油脂第二課に配属され,その後,昭和39年7月,技術部研究室員,昭和40年3月,,, , 立命館大学理工学部化学科卒業昭和43年4月 研究部に配属され昭和48年7月,調査開発部に移るとともに,ゲル化剤の開発から離れ,昭和49年8月,研究部,昭和53年11月技術部に移転し,その後,被告を退職した。 イ イーシー化学との共同研究(ア) 有機性ゲル化剤であるジベンジリデンソルビトール(DBS)の基礎研究は,イーシー化学において行われていたが,昭和41年ころ,イーシー化学から被告に対し,共同研究の申し入れがあり,被告において,本格的な検討が始まった。 ,,, , (イ) 当時 P13が技術部長 P33が研究部長 P14が研究部主任研究員第2研究室長,原告,P15及びP16が第2研究室の研究員,P19が第6研究室の研究員,P17及びP18が第7研究室の研究員であった(乙11 。有機性ゲル化剤DBSの合成を検討するに当たっては,P33 )が管理責任者となり,第2研究室長であったP14が,その部下である原告の指導に当たった。 (ウ) 当初,被告では,イーシー化学から開示を受けたPseudo-バルク法で検討されたが,生成物が固化した状態になるため,工業生産には向かないと判断された。 ウ の開発(ア) その後,検討が重ねられ,DBSによってゲル化されない溶媒としてが見い出され 「ジベンジリデンソルビトールの製造法」の発明として,昭 ,和44年10月6日,発明者をP7,P33,P14,原告及びP5とし123て特許出願された(乙40添付資料6-A 。)(イ) その後,研究が進み, が確立され,設備が設計された。 (ウ) 昭和46年5月, による生産が開始されたが,問題が発生し,同年11月ころ,ロット間の品質のばらつきが認められる旨の報告がされた。 エの開発(ア) そのころから,研究部全体で,が検討され,P14は,第2研究室,第6研究室及び第7研究室に対し,異なる合成条件を指定した上で,実験を指示した(乙40添付資料6-D 。この間,原告は,議論及び検討 )を総括する役割を果たした。 (イ) その上で,原告,P15及びP14連名の研究報告書(研-841「ゲルオールDの品質改良に関する研究 第3報がまとめられたが,そこには,との記載がある外,ことが記載されている。 (ウ) 昭和47年2月ころ,被告において, による生産が開始された。 (3) 本件発明6の特許出願原告は本件発明6の特許出願依頼書(乙55)を作成し,被告は,平成元年3月3日,本件発明6につき,発明者を原告及びP20として特許出願124した(甲6 。なお,上記特許出願依頼書(乙55)の備考欄には )「1 第1世代の製造法の有効期限失効が近いので,know-howの重要部分を特許化して有効性を保ち,権利を確保する。 2 対抗馬の進出を阻止する 」。 と記載されている。 本件明細書6に記載されている原告とP20のうち,原告は発明者であるが,P20は発明者ではない(争いがない 。)(4) 補償金の支給被告は,原告に対し,本件特許6の出願補償金2500円及び登録補償金1万円を支給している。さらに,被告は,平成15年10月,本件発明2,3,4及び6につき,被告規程に定める職務発明実施補償に該当する,() 。 として 合計金65万5000円 乙6 の実施補償金を原告に支給した(5) 検討ア 研究報告書(研-841)による発明の完成本件発明6の特徴部分は,前記(1)イのとおり,前記一般式(?)で表されるアセタール類を製造するに際し,当該反応中において 「追加の,低級アルコールを分割又は連続して仕込み,低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すこと」にあると認められるところ,前記(2)エ(イ)の研究報告書が認められるから,上記研究報告書には本件発明6の特徴点が記載されているといえる。また,効果については,上記研究報告書の表には,125が記載されているから,発明の効果である「効率よく」アセタール類を製造する点についても十分に達成されていると考えられる。以上によれば,上記研究報告書の記載内容から,本件発明6が完成されていることが確認できるから,上記研究報告書(乙40の2)によって,本件発明6は完成したものと認められる。 イ 研究報告書(乙40の2)に関する研究への原告の関与前記(3)のとおり,原告が本件発明6の発明者であることに争いはない。 ウ 上記研究へのP14の関与(ア) 研究報告書(乙40の2)に関する研究へのP14の関与P14は, の検討を再開するにあたり,第2研究室,第6研究室及び第7研究室の各研究室毎に合成条件を指定し,その後,P14等2研メンバーが中心となって各研究室から集まってくる,, , , データを整理し 考察し 昭和47年1月6日の会議で BC-2528ないし32の実験の条件を決定していること 乙40添付資料6-(D ,原告も,P14において,BC-25,28,29,30,31 )及び32の実験の条件を決定したことをほぼ認めていること(原告本人尋問調書97頁 ,本件発明6の完成が認められる前記研究報告書 )(乙40の2)の表には,が記載されていること,前記研究報告書(乙40の2)の執筆者にP14の名前が挙げられていること,P14ノートにはあと1押である。‥‥(略)‥‥126との記載があり(乙45の6枚目右頁,乙40添付資料6-Dの4枚目右頁 ,こ)の記載によれば,研究報告書の緒言にあるは,会議で目標が設定されたものであること等を総合すると,P14は本件発明6の特徴部分を着想していたと認めるのが相当である。 したがって,P14は本件発明6の発明者であると認められる。 (イ) 原告の主張について原告は,P14が研究を指導していなかった旨主張するが,前記(ア)のとおり,P14が各研究室に実験を割り振ったこと,P14のノートには(乙103 ,P14の部下であった原告,P5,P15,P16の各検 )討内容)が記載されていること(証人P14の尋問調書6頁)等に照らすと,P14が部下の原告等を実質的に指導していたことは優に認定することができる。 エ 上記研究へのP5の関与(ア) ノート(乙51)から窺えるP5の着想P5作成の「AT-62」と題するノート(乙51)には,旨が記載されている。この記載によれば,P5は,BCシリーズ(Batch Count)の実験を行い,を見出していた127ものと認められる。そして,本件発明6の特徴部分は,前記(1)イのとおり,前記一般式(?)で表されるアセタール類を製造するに際し,当該反応中において 「追加の低級アルコールを分割又は連続して仕 ,込み,低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すこと」にあるから,P5は本件発明6の特徴部分の一部(低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すこと)を着想していたと推認することができる。 ,。 したがって P5は本件発明6の発明者の一人であると認められる(イ) 原告は P5が本件発明6の発明者ではない旨主張するが 前記(ア) ,,のとおり,P5はを見出しているから,P5が本件発明6の発明者であると認めるのが相当である。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 原告は 「BC」の記号の付された実験は原告の発案である旨主張 ,するが,証拠(乙40添付資料6-Dの3〜4頁)によれば 「BC-,25 「BC-31 「BC-32 「BC-34」は第2研究室(P14, 」」」原告,P5,P15,P16 「BC-28 「BC-29」は第6研究室 ),」(),「 ( ,,,)」(, P19 BC-30 No.1 2 3 4 は第7研究室 P17P18)が各々行った実験結果であると認められるから 「BC」の記,号の付された実験を原告の発案であると断定することはできない。 オ 上記研究へのP13の関与について被告は,P13が本件発明6の構成要件の一つである「疎水性有機溶媒及び低級アルコールの存在下に」に相当する課題を設定したから,P13は本件発明6の発明者の一人である旨主張するが,単に,課題を設定しただけの者は,発明者であるとは認められない。 128カ 上記研究へのP15及びP16の関与について被告は,P15及びP16が,生成物を分析し反応物組成(DBS,副生成物Sの割合)等を考察しているから,本件発明6の発明者である旨主張するが,単に,上記考察をしただけの者は,発明者であるとは認められない。 キ 上記研究へのP17,P18及びP19の関与について被告は,P17,P18及びP19は着想を具体化する実験を行っているから,本件発明6の発明者である旨主張するが,単に,実験をしただけの者は,発明者であるとは認められない。 また,被告は,P19が,を根拠にP19が発明者である旨主張するが,被告主張の前記事情だけでは,P19が,本件発明6の特徴部分を着想していたと認めることはできない。 ク 以上によれば,本件発明6の発明者は原告,P14及びP5であると認められる。 8 争点1-7(原告が本件発明7の発明者か否か)について(1) 本件発明7の特徴ア 本件明細書7には,次のとおり記載されている(甲7 。)【特許請求の範囲】別紙特許権目録7の「特許請求の範囲」に記載のとおり背景技術ジベンジリデンソルビトール及びその核置換体に代表されるジアセタールは,ポリオレフィン樹脂用の核剤や各種流動体のゲル化剤等として広く使用されている。これらの特性を発現させるためには,該ジ129アセタールを,溶融ポリオレフィン樹脂や流動体に一度溶解又は分子分散させる必要がある。 ,, ところが これらジアセタールの粉末粒子は強い自己凝集性を持ち又,融点が高いために,均一に溶解又は分散させることは工業的に容易ではない。このため,上記溶解性や分散性を改善するための対策が必要であった。 ジアセタールの溶解性や分散性を改善する方法としては,ジアセタールをその融点以上あるいは溶融温度以上の高温下で処理する方法が知られている。しかしながら,ジアセタールを高温で長時間処理すると,ジアセタールの熱分解や着色などの問題を引き起こすため十分な性能が発揮できず,機能的に問題であり,又,省エネルギー面からも問題である。 また,特開平6-145431号では,ジアセタールを微粒子化してその分散性を向上させて溶解し易くする方法が提案されている。しかしながら,ジアセタール固体を微粒子化する方法は,粉塵爆発,粉塵の吸い込みによる人体への影響などの作業環境の悪化,貯蔵時の再凝集,流動性の低下・移送性(配管を通じてジアセタール粉末を移送する際の容易さ)の低下等の作業性の低下を招き,工業的に重要な問題を引き起こす。又,該技術は,粒度分布を単一分散に近くするものであり,高価な特別な粉砕装置を必要とする。 また,ジアセタールに有機カルボン酸を併用することにより,ジアセタールとポリオレフィン樹脂との相溶性を高める方法が知られてい(,, る 日本国特開昭51-122150号日本国特公昭64-413号日本国特開昭60-101131号 。)上記日本国特開昭51-122150号に記載の方法によると,ジベンジリデンソルビトールと有機カルボン酸を直接ポリオレフィン樹130脂に別々に添加することにより,樹脂への相溶性を高めている。しかし,この方法では,ジベンジリデンソルビトール固有の融点が高いまま低下しないので,樹脂中に未溶解のジベンジリデンソルビトールが白色のブツとして残るという問題を解決するには不十分である。 上記日本国特公昭64-413号又は日本国特開昭60-101131号に記載の方法によると,いずれもジベンジリデンソルビトールの粉末表面を予め高級脂肪酸又はテレフタル酸で被覆し,被覆物をポリオレフィン樹脂に添加している。この方法は,被覆されていないDBS類を直接ポリオレフィン樹脂に配合する方法に比較して,溶融樹脂との相溶性が高められる。しかし,これらの技術によっても,未溶解の白色のブツが残り,満足できるものではない。したがって,透明性の改質効果が不十分であり,製品の外観から見た商品価値を損なう。 この現象は,単に有機溶媒を用いてジアセタール粒子表面に高級脂肪酸を表面コーティングする場合も同様である。 更に,従来の成形温度よりも低い温度での成形(以下「低温成形」という)を可能にする成形性の改良されたポリオレフィン樹脂用の透明化核剤として,脂肪族カルボン酸アミド及び/又は芳香族カルボン酸アミドをDBS類に混和し,又はDBS類の粉末の粒子表面を被覆してなる核剤が提案されている(日本国特開平8-245843号 。)しかしながら,当該混和する方法では,溶媒の除去の際に固いゲルを形成するため工業化は極めて困難であり,製法が明示されておらず,実用性に乏しい。また,上記被覆する方法では,脂肪族カルボン酸アミド及び/又は芳香族カルボン酸アミドという被覆剤の量が多い割には,ジアセタールの十分な融点降下が得られず,また,当該アミド化合物はポリオレフィン成形体からブリードする性質があるので,該被覆剤が多いと,該被覆剤で被覆されたジアセタールとポリオレフィン131樹脂から得られるポリオレフィン樹脂成型物のヒートシール強度が低下する等の問題があり,実用性において,尚,不十分であり,改善の余地が認められる。 発明の開示本発明は,ジアセタールの各種溶融樹脂や各種の液体への溶解性・分散性を飛躍的に改善しながら,その流動性,移送性(ジアセタールを配管を通して移送する場合に粉体粒子間の摩擦が少なく,移送が容易であること)を改善させると共に,粉塵の発切及び配管,ホッパー等の器壁への付着性を抑制する方法を提供することを目的の一つとする。 更に,本発明の他の目的は,ポリオレフィン樹脂の核剤機能を低温成形で容易に発揮させることにある。 本発明者らは,かかる目的を達成するために鋭意検討した結果,溶媒で膨潤させた又は極性有機溶媒に溶解させたジアセタールに特定の化合物を,均一分散させた後に,乾燥及び粒状化又は粉末化することにより,下記のような使用上の利点が得られることを見出した。 (1) ジアセタールの融点が効果的に大幅に降下する。 (2) ジアセタール粉末粒子中に該特定の化合物を均一分散させてなるジアセタール組成物は,その形状の如何を問わず,溶融樹脂や各種液体への溶解性・分散性及び溶解速度が飛躍的に改善される。 (3) 該特定の化合物のバインダー効果(即ち,粒子の集合や凝集を促進する効果)により,ジアセタール組成物の嵩密度を0.2g/?以上で任意に調整でき,そのため,ジアセタール粉末の流動性・移送性を向上し,粉塵の発生を抑制し,機器配管,ホッパー等の器壁への付着性を抑制することができる。 (4) ポリオレフィン樹脂のペレット成形時に核剤の昇華による押し132出すダイスの汚れ及び成形体の汚れを生ずることなく,当該ジアセタール核剤が極めて容易にその本来有する核剤特性を発揮する。 一般に,ジアセタール組成物の見かけ密度を上昇させると粉体流動性は向上するが,溶解速度が低下する。反対に,見かけ密度を低下さ,。, せると溶解速度は向上するが 粉体流動性が低下する 本発明者らはジアセタール組成物の融点を劇的に低下させることに成功し,これにより,見かけ密度を大きくして粉体流動性の向上と溶解速度の向上とを同時に解決したのである。 本発明は,かかる知見に基づいて完成されたものである。 産業上の利用可能性,,, 本発明により ジアセタール類の融点を大幅に降下でき その結果溶融樹脂や各種液体への溶解速度を上昇させたり,低温溶解や溶解時間の短縮が可能となり,更に未溶解物が激減するなどの品質や生産性を大幅に向上させることできる。 また,バインダー効果による嵩密度の上昇によって,粉塵の発生を抑制して作業環境を大幅に改善し,更に粉体の流動性向上,付着性抑,, 。 制などにより 粉体特性を改善して 移送を容易にすることができる更に,低温成形の可能なポリオレフィン樹脂核剤として,成形性が向上し,ジアセタール化物の昇華,分解及び着色を抑制する。 イ 特徴部分前記アによれば,本件発明7の特徴部分は,有機酸又は有機酸塩からなるバインダーをジアセタール粒子中に均一に分散させることによって,ジアセタール組成物の融点を低下させ,その結果,溶解性を向上させることにある。 (2) 本件発明7の特許出願に至る経緯について,(,, ,, , , , 前提事実 証拠 甲7 52 乙11 56 114 116 172133173,証人P3,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア 関係者の経歴(乙56)(ア) P4P4は,平成6年4月,被告に入社し,研究開発本部商品開発部に配属され,平成7年6月,機能材事業部開発研究部に異動し,P6グループの研究員として研究に従事し平成8年9月からは 原告グルー ,,プの研究員として研究に従事し,平成11年7月,研究開発部(高分子加工2グループ)に異動となった。 なお,P4は,平成8年4月,核剤に関する研究テーマ「ゲルオールMDの耐熱性グレードの開発」の担当者に指名されてから(乙56添付資料1 ,研究開発本部技術部開発部の副主任研究員(電材・樹 )脂添加剤グループ)となり,平成18年3月8日(乙56の作成日)に至るまで核剤に関する研究開発に従事している。 (イ) P23P23は,平成元年4月,被告に入社し,研究第一部に配属され,平成7年6月,機能材事業部開発研究部に異動し,P6グループの研究員として研究に従事し,平成8年9月からは,原告グループの研究員として研究に従事し,平成11年3月,機能材販売部に異動し,同年12月,開発部に異動し,平成15年8月,知的財産部に異動し,係長になった。 なお,P23は,平成8年4月,核剤に関する研究テーマ「ゲルオールMDの耐熱性グレードの開発」の担当者に指名されてから(乙56添付資料1 ,平成11年2月までの約3年間,核剤に関する研究開 )発に従事した。 (ウ) P3134P3は,昭和63年4月,被告に入社し,研究第四部に配属され,平成5年10月,研究開発本部新規開発部に異動し,原告グループの研究員として研究に従事し,平成11年7月,研究開発部に異動し,高分子加工2グループの副主任研究員として研究に従事し,平成15年6月,知的財産部に異動し,係長になった。 なお,P3は,原告グループに研究部内異動してから,平成15年5月まで核剤に関する研究開発に9年以上従事した。 イ 樹脂添加剤プロジェクトチームの編成(ア) 被告では,平成9年ころ,ゲル化剤の売上高が激減したため,顧客ニーズに適合した製品を開発することを目的として,平成9年3月,P24社長を統括責任者とする「樹脂添加剤プロジェクトチーム」が編成された。 (イ) 原告は,上記プロジェクトチームの研究開発部門の責任者になり,P3,P4らが原告のチームに参加した(乙114)。原告グループは,,,,,, ( ), 原告 P8 P34 P3 P23 P35 P4の7名であり 乙11当初,六方晶あるいはキセロゲル型ゲル化剤の検討が行われていた。 ウ ミリケン社との交渉原告は,平成9年6月16日から同月26日まで,被告と競合関係にあるミリケン社との関係を修復し 「ゲル化剤における欧州地域やアジ ,ア地域等のワールドワイドにおけるテリトリー」に関し(乙172 ,)交渉すること等を目的として(乙116,アメリカに出張し,ミリケ )ン社を訪問したが,合意に至らなかった。 エ 低融点化技術の完成(乙56)P3とP4は,種々の研究,検討を行ない,低融点化技術を完成させた(乙56添付資料9 。)P3作成の平成9年7月度の研究月報(平成9年7月30日提出)(乙13556添付資料9)には,と記載されている。 被告は,この低融点化技術を本件特許7の優先権主張の基礎となった特願平9-287924(出願日:平成9年10月3日 ,特願平10-)71362(出願日:平成10年3月4日)及び特願平10-90173(出願日:平成10年4月2日)を出願した。また,P4は,改良低融点化技術を完成させ,この改良技術は,国際出願時に盛り込まれた(国際特許公報WO99/18108,出願日:平成10年7月7日 。)オ 粉体流動性の改善P23は,などを行なった(乙56添付資料6,10 。)さらに,P23は,工業検討計画書を作成し,平成9年8月,生産部門の協力の下でP8と共に研究担当者として行なった(乙56添付資料11 。)その結果,????()。 などの知見を得た 乙56添付資料12136上記の知見を基にした粒状化技術は,本件特許7の優先権主張の基礎となった特願平9-287924として盛り込まれ出願された。 (3) 本件発明7の特許出願, , ,,, , P3は 平成9年9月30日 発明者を原告 P4 P3 P23として本件発明7の特許出願依頼書(乙56添付資料18)を作成し,原告による承認を得て,その押印の上,知的財産部に提出した。P4及びP23は当該出願の明細書の作成には関与していたが,特許出願依頼書の作成には関与しなかった。 ,,,,, 被告は 平成10年7月7日 本件発明7につき 発明者を原告 P4P3,P23として,特許出願した(甲7 。)(4) 検討ア 本件発明7の特徴部分は,前記(1)イのとおり,有機酸又は有機酸塩からなるバインダーをジアセタール粒子中に均一に分散させることによって,ジアセタール組成物の融点を低下させ,融点を低下させること,,, によって 溶解性を向上させることにあると認められるところ 原告は平成9年6月19日ころ,アメリカから,P3に対し,を指示した旨主張し,原告は本人尋問において,上記主張に沿う供述をし,原告の陳述書にも,P3に対し 「他の実験をいったん止 ,めて,直ちに,ゲルオールMDへの 融点降下の確認実験に入るように」指示した旨の記載がある。しかし,次の(ア)な,( 。 ) いし(キ)等の諸点に照らし 原告の上記供述部分 陳述書の記載を含むはたやすく採用することができない。 なお,原告としては,ミリケン社との交渉が不調に終わった結果(前記(2)ウ ,ゲルオールMDの改良品の開発を急ぐ必要があり,当時, )進行中であった樹脂添加剤プロジェクトの研究員に対し,当時の目標であった低融点化の実現を急ぐよう努力することを指示したことは,十分137推認することはできるが(したがって,国際電話をかけたという原告の供述を否定することは困難というべきである ,それ以上に,具体的 。)な指示をしたことを裏付ける資料は見あたらず,これを認めることはできない。 (ア) 平成9年6月30日提出の平成9年6月度研究月報(乙56添付資料10,P23作成)には,原告の上記指示に関する記載がないこと(イ) P3は平成9年7月,についても実験していること(乙56添付資料9の平成9年7月度研究月報の表1)(ウ) 前記研究月報(乙56添付資料9)には,と記載されていて,本件発明7の特徴部分が見出されたことが窺われること(エ) P3作成の平成9年8月度研究月報(平成9年8月27日提出)には 「六方晶あるいはキセロゲル型ゲル化剤・核剤の製造と評価」と ,記載されており,平成9年8月までに,六方晶キセロゲル核剤の研究が行われていること(オ) 米国出張報告書(乙116の2)には 「今後の課題」の欄に 「六 ,,方晶での低融点のDX核剤,六方晶で粒状のDX核剤あるいは低融点,」, MDを開発して ミリケン3988に対応 と記載されているものの原告主張の指示は記載されていないこと(カ) 原告作成の「状況の変化に対応した核剤開発のポイント」と題する書面(乙118)には,「5.六方晶低融点核剤有機溶媒ゲルからの製法検討は完了。次の段階として,ゲル化138剤反応缶で六方晶結晶を製造する方法を検討する。蒸留設備は必要。別に,核剤融点を低下する添加剤をいくつか発見している 」。 と記載されていて,原告主張の指示が記載されていないこと(キ) 原告は,緊急指示ができた旨主張するが,その時点で, 指示を出す根拠となる実験等は全くなく,前記(イ)のとおり,P3においても, を検討していることイ なお,前記認定事実によれば,本件発明7の特許出願依頼書(乙56添付資料18)には,発明者の1人として,原告の氏名が記載されていて,原告が発明者の1人として登録されているが,前記アで認定した事実に照らすと,上記記載があるからといって,それのみで原告が本件発明7の発明者であると推認することはできない。 ウ 以上によれば,原告が本件発明7の特徴部分を着想したということができず,原告を本件発明7の発明者と認めることはできない。 9 争点2-2(本件発明6に係る対価請求権の消滅時効 ,争点2-3(本件)発明6に係る対価請求の権利濫用)について(1) 消滅時効の主張について,, 被告は 本件発明6に係る対価請求権が時効消滅している旨主張するが本件発明6は平成元年3月3日特許出願されているところ(甲6 ,昭和)62年4月1日に実施された被告規程(乙7)の経過規定には経過措置として 「1 本規程は,昭和62年4月1日以降に出願された発明に適用 ,する 」と規定しているから,本件発明6は被告規程(乙7)の適用を受 。 ける。 139もっとも,経過措置2には 「本規程は,昭和62年4月1日時点で既 ,に実施されている技術のノウハウを保護するためになす出願に関しては,適用しないものとする 」と規定されているが,前記認定事実によれば, 。 本件発明6が昭和62年4月1日時点で既に実施されている技術のノウハウを保護するために特許出願されたとは認め難く,また,前記認定のとおり,被告は,平成15年10月,本件特許6を含む複数の特許につき,被告規程に定める職務発明実施補償に該当するとして,合計金65万5000円(乙6)の実施補償金を原告に支給していることに照らすと,本件発明6は被告規程(乙7)の適用を受けると認めるのが相当である。 そして,被告規程によれば,本件発明6の実施補償金請求権の最初の支払期日は登録の翌日から満5年の経過した平成14年11月1日の翌年平成15年3月末日に締め切られ,平成15年7月の給与支払日に支給されるから(乙4の16条2項 ,その消滅時効はこの時から進行すべきこと )となる。そうすると,原告が本件訴訟を提起した平成17年11月22日までに,原告の権利につき消滅時効期間が経過していないことは明らかである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 権利濫用の主張について被告は,10年以上も前になされた発明につき防衛目的で特許出願がなされ,その出願後15年以上経過した現段階で補償金請求権を主張することは,権利濫用に当たる旨主張するが,補償金請求権は発明者に認められた権利であるから,被告主張の事情が認められるからといって,補償金請求権の行使が権利濫用に当たるとは認められないし,他に原告の請求が権利濫用になることを基礎づける事情は本件全証拠によっても認めることができない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 10 争点3(本件発明3の実施)について(1) 原告は,本件発明3を実施して,被告製品が製造されていると主張し,140被告はこれを争っている。 本件発明3の特許請求の範囲【請求項1】は以下のとおり分説することができ,これを前提に各構成要件について検討することとする。 ア 一般式(?)で表されるDBS類において,イ その位置異性体が0.2重量%以下に低減された当該DBS類の精製物に対し,ウ アルカリ金属化合物及びエ アルカリ性有機アミン化合物を配合してなることを特徴とするオ 安定化されたDBS類組成物。 (2) 被告製品被告製品に (争いがない )。 ゲルオールMDゲルオールMD-LM30ゲルオールDH(3) 構成要件イの異性体重量についてア 原告は,研究経過報告(2000年3月版 (甲62)に収載された )P1グループ作成のであろうことを考えると,この表の結果のみから直ちに異性体量が0.2%以下であると断定することはできず,他に,被告製品の位置異性体量が0.2重量%以下であることを認めるに足りる証拠はない。 イ また,P4及びP3連名の平成12年3月31日付研究報告書(研-1412931て,同様の記載があるが,前記アと同様のことがいえる。 ウ さらに,前記アの研究経過報告(甲62)に収載されたP1グループ作成のこれらの合計は99.9%となり,その残りは計算上0.1%となる。しかし,上記結果についても,前記アと同様のことがいえるし,これと異なるロットについては,そもそも,位置異性体を含む「その他」は,計算上も0.2重量%以下にはならない。 (4) 構成要件イの精製物について被告は,被告製品にはDBS類の「精製物」が使用されていないと主張するが,その理由は,異性体を溶解している有機溶剤とDBS類とを濾過することにより精製されるべきであるところ,精製物とはいえないというものである。 しかし,本件発明の特許請求の範囲には「精製物」としか記載されておらず 「精製物」とは「精製された物」であり, を除くもの ,でないことは明らかであるから,被告製品はDBSの「精製物」を使用していると認められる。 (5) 構成要件エについて原告は,被告製品 に使用されているは「アルカリ性有機アミン化合物」に当たらると主142張する。 これら,,「 」 は アルカリ性物質であるから 一般的な アルカリ性有機アミン化合物の一種であるとはいえる。 しかし, は,本件明細書3において 「アルカリ性有機アミン化合物」としては例示されておらず,逆 ,に「アルカリ金属化合物」として例示されている上,実施例3において,を使用したことが記載されている。 以上によれば, は 「アルカリ性の有機アミン」 ,,「 」 の一種ではあるものの 本件発明3でいう アルカリ性有機アミン化合物とはいうことはできず, は,「アルカリ性有機アミン化合物」を添加されていない。 なお,(前記(2) 。)(6) 結論ア ゲルオールMD及びゲルオールMD-LM30について位置異性体の量が「0.2重量%以下」であるとはいえず,本件発明3を実施しているということはできない。 イ ゲルオールDHについて位置異性体の量が「0.2重量%以下」であるとはいえないから,本件発明3を実施しているということはできない。 11 相当の対価額の算定方法(1) 本件発明1に係る対価請求権は,前記2のとおり,時効消滅していると143認められ,本件発明7については,前記8のとおり,原告は発明者であるとは認められないから,以下においては,本件発明2ないし6についての相当対価額の算定方法を検討する。 (2) 本件発明2ないし6は,原告が発明者の1人である職務発明であるところ,被告が,これらの発明につき,特許を受ける権利の譲渡を受け,その特許出願をし,特許権の設定登録を受けたこと,被告は,平成15年10月,本件発明2ないし4及び6につき,被告規程に定める出願補償金,登録補償金,実施補償金として,合計金71万3800円(上記補償金には本件発明7に係る補償金を含む )を原告に支給したことは,前提事実 。 (2),(5)のとおりである。 (3) 原告は,特許を受ける権利について,譲渡による承継時点で被告に対する相当の対価の請求権を取得したものであり,相当の対価の額を定めるに当たっては,改正前特許法35条4項が適用されるところ(平成16年法律第79号附則2条1項 ,勤務規則等により職務発明について特許を受 )ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても,これによる対価の額が改正前特許法35条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照 。)そして,改正前特許法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が当該職務発明に係る特許権について無償の通常実施権を取得する(同条1項)ことから,使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の額ではなく,当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)の額と解す144。, べきである 本件のように自らが当該発明を実施している場合においてはこれにより実際に得た売上高から通常実施権を行使することにより得られるであろう売上高を控除したもの(超過売上高)に基づく収益をもって,「その発明により使用者等が受けるべき利益」というべきである。 この超過売上高に基づく収益の具体的な算出方法としては,本件においては,当事者双方の主張,立証の内容にかんがみ,当該発明を他人に実施許諾したと仮想し,その場合に得られるであろう実施料収入を算定するという方法によるのが相当であると認められる。 また,特許を受ける権利自体が将来特許登録されるか否か不確実な権利である上,当該発明により使用者等が将来得ることができる利益を,その承継時において算定することが極めて困難であることにかんがみれば,その発明により使用者等が実際に受けた利益の額に基づいて 「その発明に,より使用者等が受けるべき利益の額」を算定することが許されるべきである。 (4) 対象となる時期についてア 使用者等がいわゆる独占の利益を受けることができる期間職務発明について,特許を受ける権利を使用者等が承継し,特許出願をした場合,これにより使用者等がいわゆる独占の利益を受けることができる期間は,特許の出願公開時から,特許権存続期間満了時までであると解すべきである。 イ 特許権消滅の影響本件では,前提事実(2)のとおり,本件特許権2につき,平成19年11月15日,本件特許権3につき,平成20年3月1日,本件特許権4につき,平成20年1月31日,本件特許権5につき,平成19年10月4日,本件特許権6につき,平成20年10月31日,それぞれ,特許権を消滅させている。 145使用者等が,特許を受ける権利を承継した後に実際に受けた利益の額に基づいて「使用者が受けるべき利益の額」を算定する場合には,承継後の一切の事情,例えば,当該発明を実施した製品の実際の売上額の推移のみならず,使用者等が特許権の登録を受けたことや当該特許権を放棄したことなどの事情をすべて考慮すべきものといえる。そして,使用者等が,当該権利を放棄するなどして消滅させた場合,以後,当該発明の実施を独占することができなくなる一方,権利の消滅が競合他者に予測できなかったような場合には,競合他者が当該発明を実施するに至るまでの相応の期間内,事実上,引き続き当該発明による独占の利益を受けることが可能であること等を考慮すべきである。 本件では,前記各特許権の消滅当時,その残存期間は本件特許権2につき1か月未満,本件特許権3につき5か月余,本件特許権4につき7か月余,本件特許権5につき約2年,本件特許権6につき4月余であることなどにかんがみれば,使用者等がいわゆる独占の利益を受けることができる期間は,本件特許権2,本件特許権3,本件特許権4及び本件特許権6については,各権利存続期間満了日までとし,本件特許権5については,約6か月間と認めるのが相当である。そうすると,本件においては,本件発明2ないし6について,以下の各期間において被告が特許を受ける権利の承継を受けたことによる利益の額を算定すべきものである。 また,本件特許1については,平成7年4月2日に特許権存続期間が満了しており,特許を受ける権利の承継を受けたことによる利益を算定するにあたっては,上記時期までの売上をもって算定することとする。 なお,その算定開始時期は,本件発明1についての対価請求権が時効消,。 滅していることから 本件発明2と同じ時期から算定することとする(ア) 本件発明1146本件発明2の特許出願公開日である平成元年6月12日から,特許権存続期間満了日である平成7年4月2日まで(イ) 本件発明2特許出願公開日である平成元年6月12日から特許権存続期間満了日である平成19年12月7日まで(ウ) 本件発明3特許出願公開日である平成2年2月28日から特許権存続期間満了日である平成20年8月24日まで(エ) 本件発明4特許出願公開日である平成2年8月16日から特許権存続期間満了日である平成20年9月16日まで(オ) 本件発明5特許出願公開日である平成3年5月22日から平成20年3月31日まで(カ) 本件発明6特許出願公開日である平成2年9月13日から特許権存続期間満了日である平成21年3月3日まで(キ) 本件発明7特許出願公開日である平成11年4月15日から特許権存続期間満了日である平成30年7月7日まで(5) 以上のようにして,使用者等が受けるべき利益(独占の利益)の額を認定した上で,次に,当該発明がされるに至った経緯等において当該発明者が果たした役割を使用者及び他の発明者との関係における貢献度として数値化,割合化して認定し,これを上記利益の額に乗じて,職務発明の相当対価の額を算定することとなる。 なお,後記12のとおり,被告商品毎に超過売上高が異なり,また,商147品毎に実施されている発明の組合せも異なる。そこで,相当の対価を算定,, , するにあたっては 便宜上 被告が受けるべき利益を商品毎に算定した上発明毎にその貢献度に応じた対価を計算し,これを再び合算して,相当の対価とみなすこととする。 12 争点4-1(被告が受けるべき利益の額)について(1) 本件発明1,2,4ないし7の実施品について本件各発明のうち本件発明3を実施していないことについては,前記10のとおりであり,その余の本件各発明の実施については,次のとおりである(弁論の全趣旨 。)ア ゲルオールMDゲルオールMDは,本件発明1の使用を前提として販売されており,その製造に当たって,本件発明2及び6に係る方法が使用されている。 イ ゲルオールDHゲルオールDHは,本件発明4の構成からなり,その製造にあたっては,本件発明2,6のほか,本件発明5に係る方法が使用されている。 ウ ゲルオールMD-LM30ゲルオールMD-LM30は,本件発明7の構成からなり,その製造にあたっては,本件発明2,6に係る方法が使用されている。 (2) ゲルオールMD,ゲルオールDH及びゲルオールMD-LM30についての各特許の独占の利益の対象期間について本件特許1,2,4ないし7の独占の利益の対象期間は,前記11(4)のとおりであり,また,各実施品と本件各発明との関係は,前記(1)のとおりであるから,各実施品の独占の利益の対象期間及び特許の内訳は,次のとおりとなる。 ア ゲルオールMDの独占の利益の対象期間平成元年6月12日から平成21年3月3日まで148内訳(ア) 平成元年6月12日〜平成2年9月12日 本件特許1,2(イ) 平成2年9月13日〜平成7年4月2日 本件特許1,2,6(ウ) 平成7年4月3日〜平成19年12月7日 本件特許2,6(エ) 平成19年12月8日〜平成21年3月3日 本件特許6イ ゲルオールDHの独占の利益の対象期間平成元年6月12日から平成21年3月3日まで内訳(ア) 平成元年6月12日〜平成2年8月15日 本件特許2(イ) 平成2年8月16日〜平成2年9月12日 本件特許2,4(ウ) 平成2年9月13日〜平成3年5月21日 本件特許2,4,6(エ) 平成3年5月22日〜平成19年12月7日 本件特許2,4,5,6(オ) 平成19年12月8日〜平成20年3月31日 本件特許4,5,6(カ) 平成20年4月1日〜平成20年9月16日 本件特許4,6(キ) 平成20年9月17日〜平成21年3月3日 本件特許6ウ ゲルオールMD-LM30の独占の利益の対象期間平成11年4月15日〜平成30年7月7日まで内訳(ア) 平成11年4月15日〜平成19年12月7日 本件特許2,6,7(イ) 平成19年12月8日〜平成21年3月3日 本件特許6,7(ウ) 平成21年3月4日〜平成30年7月7日 本件特許7(3) 本件発明1,2,4ないし7の実施品の売上高についてア ゲルオールMDの売上高証拠(乙15,193)及び弁論の全趣旨によれば,ゲルオールMDの昭和56年12月から平成20年9月までの売上高は別表1のとおりであり,累計では131億2057万2098円(116期を除く )。 149である。 ,, , ゲルオールMDの本件特許1 2 6による独占の利益の対象期間は前記(2)アのとおり,平成元年6月12日から平成21年3月3日までであるところ(本件特許1については,原告の対価請求権は時効消滅しているので,ここでは,本件特許2の公開日である平成元年6月12日から起算することとする ,この期間を含む営業年度の売上高は別表 。)2のとおりであり,累計では121億7246万3940円となる(なお,137期については,上半期の売上高から全期の売上高を推定した。。)イ ゲルオールDHの売上高証拠(乙15,193)及び弁論の全趣旨によれば,ゲルオールDHの平成元年4月から平成20年9月までの売上高は別表1のとおりであり,累計では42億5767万1382円である。 ゲルオールDHの本件特許2,4,5,6による独占の利益の対象期間は,前記(2)イのとおり,平成元年6月12日から平成21年3月3日までであるから,この期間を含む営業年度の売上高は別表3のとおりであり,累計では42億6266万3382円となる(なお,137期については,上半期の売上高から全期の売上高を推定した 。。)ウ ゲルオールMD-LM30の売上高証拠 乙15 193 及び弁論の全趣旨によれば ゲルオールMD- (,) ,LM30の平成11年4月から平成20年9月までの売上高は別表1のとおりであり,累計では32億6074万4428円である。 ゲルオールMD-LM30の独占の利益の対象期間は,前記(2)ウのとおり,平成11年4月15日から平成30年7月7日までであるが,前記8のとおり,原告は本件発明7の発明者とは認められないので,前記(2)ウのとおり,本件特許権6の存続期間満了日である平成21年3150月3日までの売上高を基礎にすれば足りる。この期間を含む営業年度の売上高は別表4のとおりであり,累計では33億8278万8128円となる(なお,137期については,上半期の売上高から全期の売上高を推定した 。。)(4) 超過売上高の割合についてア 超過売上高の割合の認定方法本件においては,前記11(3)のとおり,使用者等の独占の利益を算定するため,使用者等が競合他者に特許権の実施を許諾したと仮想する方法によるところ,そのような方法において超過売上高の割合を認定するには,使用者等が,当該発明を用いた製品を製造,販売し得る競合他者すべてに実施許諾して(以下,この実施許諾を受けたと仮想される競合他者を「仮想ライセンシー」という ,現実に享受している独占の 。)利益をすべて捨象したものとし,自らには,通常実施権に基づいて当該発明の実施製品を製造,販売することによって得られる利益のみが残存する状態を仮想する必要がある。そのような仮想の下,使用者等が獲得し得る当該発明の実施製品の売上高が同実施製品の市場全体における売上高(使用者等による当該発明の実施製品による現実の売上高を用いる )に占める割合がどの程度になるのかを,仮想ライセンシーのそれ 。 との比較による使用者等の技術力及び営業力の程度,市場全体の規模,性質及び動向,当該発明の実施品の性質及び内容等の諸要素に基づいて認定することにより,使用者等が仮想ライセンシーから取得すると仮想される実施料を算定する基礎となる超過売上高の割合を求めることが相当であるといえる。 イ 本件において超過売上高の割合を認定するための要素に関し,以下の事実が認められる。 (ア) 国内におけるプラスチック添加剤市場の状況について151証拠 乙70の1・2 乙183 及び弁論の全趣旨によれば ? (,) ,プラスチック添加剤市場は縮小基調で推移していること ? 近年 平,(成11年ころ ,下げ止まりの感があり,平成11年は横ばいの推移 ),, , が見込まれていること ? 原告が トップシェアを維持しているが原告の本件特許1の特許権存続期間が満了した平成7年4月2日ころ以降,各メーカーが大挙して参入し,原告のシェアは平成6年をピークに,年々縮小する傾向にあること,? 透明化核剤は,以前は1?当たり6000円台の時期もあったが,不況による需要減少や,参入メーカーの増加による価格競争の結果,3000円台と半値近くまで低下していることの各事実が認められる。 (イ) 国内における原告の市場占有率について証拠(乙70の1・2,乙183)及び弁論の全趣旨によれば,被告の透明核剤(造核剤)における被告のシェア(国内)は,本件特許1の特許権存続期間(満了日:平成7年4月2日)の満了前は,ほぼ独占状態であったが,上記期間満了後,競合他社が透明核剤の製造に参入し,平成11年は55.7%,平成12年は57.1%,平成13年は54.7%,平成14年は50.0%であることの各事実が認められる。 ちなみに,証拠(乙181)及び弁論の全趣旨によれば,世界における核剤メーカーの市場占有率は,平成9年において,が認められる。 (ウ) ゲルオールDHの販売中止被告は,平成15年7月14日,その顧客である経営合理化に伴う製品構成の統廃合実施により,同年10月末日で,ゲルオールDHの製造販売を中止する旨伝達した(乙152130 。もっとも,その後もゲルオールDHの在庫を他社に販売す )ることはあった(乙193 。)ウ 上記イに,前記(3)の売上高の推移を総合すると,被告各製品の超過売上高は,次のとおり認定するのが相当である。 (ア) ゲルオールMDゲルオールMDについては,前記(3)アのとおり,本件特許1の特許権存続期間が満了した平成7年4月2日ころまでは売上げが増加の一途をたどっていたにもかかわらず,同日ころ以降は,(別表1参照 。)以上の事情を総合すると,ゲルオールMDについては,本件特許1の特許権存続期間の満了の前後により売上高が大きく変動しており,本件特許1のゲルオールMDの売上に対する排他的効力の大きいことを示すものであり 後記(5)参照 その存続期間中の超過売上高 本 (),(件特許1,2,6によるゲルオールMDの超過売上高)は40%,その存続期間満了後の超過売上高(本件特許2,6によるゲルオールMDの超過売上高)は20%と認めるのが相当である(いずれの期間においても,特許の公開日や特許権消滅時期が異なる特許が混在しているが,別表2のとおり,対価の算定をするにあたり,便宜上,それぞ153れの特許毎に計算する。その結果,超過売上高の割合も特許毎に割り振られることになるので,その合計割合は,前記(2)アの期間に応じて変化することになる。例えば,上記40%は,本件特許1,2,6がいずれも排他的効力を有している前記(2)ア(イ)の期間における数値である。このことは,むしろ,各特許の排他的効力に対応した数値と考える 。。)(イ) ゲルオールDHについてゲルオールDHについては,前記(3)イのとおり,前記イ(ウ)のとおり,製造を中止するに至っている。 123期をピークに減少傾向に転じた理由については,前記(ア)のとおり,本件特許1の特許権存続期間が満了した結果,競合他社の参入があり,その結果,ゲルオールMDの姉妹品であるゲルオールDHのシェアも減少したことによると考える。 このように,ゲルオールDHの売上は,ゲルオールMDと同様の経緯をたどっているが,ゲルオールDHは,本件発明1を実施していないので,上記の売上高の変動はゲルオールDHにおいて実施している本件発明2,4,5及び6に係る特許の排他的効力とは関係なく,本件特許1の特許権存続期間の満了日前後の売上高の変動にかかわらず,ゲルオールDHの超過売上高を算定すべきであると考える。 そして,ゲルオールMD-LM30の開発,製造開始に伴い,ゲルオールDHの製造を中止していることを併せ考えると(前記イ(ウ)参154照 ,その超過売上高は全期間を通じ20%と認めるのが相当である )(なお,前記(2)イの期間に応じて,20%を下回る時期のあることについては,前記(ア)のところで述べたのと同様である 。。)(ウ) ゲルオールMD-LM30についてゲルオールMD-LM30については,前記(3)ウのとおり,一方,ゲルオールMD-LM30は,ゲルオールMDに比べ,本件発明7を実施している改良型であることなどを考慮すると,本件発明2,6,7を実施したことによる超過売上高は,本件特許1の特許権存続期間満了後のゲルオールMD,(, の超過売上高に比べ やや高い25%と認めるのが相当である なお前記(2)ウの期間に応じて,25%を下回る時期のあることについては,前記(ア)のところで述べたのと同様である 。。)(5) 本件各発明の貢献度についてア 本件では,前記(1)のとおり,複数の特許が使用されて複数の実施品が販売されているから,前記11(5)で述べたとおり,本件各発明の貢献率を実施品毎に検討する。 (ア) ゲルオールMDについてゲルオールMDを製造するにあたり使用している発明は,本件発明1,2,6であるところ,前記(4)イ,ウのとおり,本件発明1の貢献度が高く,各発明間の貢献度は少なくとも50%を下らないと認められる。 一方,本件発明2の特徴は,前記3(1)のとおりであり,その効果は,アセタール類の製造において選択率,収率を高めることにある。 155他方,本件発明6の特徴は,前記7(1)のとおりであり,その効果,, は 短時間に効率よく目的のアセタール類の製造ができることにあり本件発明2との間で,貢献度の違いがどの程度あるかは不明であり,同等の貢献度であると推認される。 ,, 以上の事情を総合すれば 各発明間の貢献度は本件発明1は50%本件発明2及び6は各25%であると認めるのが相当である。 (イ) ゲルオールDHについてゲルオールDHを製造するにあたり使用している本件発明2,4,5,6の内容を比較すると,次のとおりである。 本件発明2,6の特徴と効果は前記(ア)のとおりである。 本件発明4の特徴は前記5(1)のとおりであり,その効果は,結晶樹脂組成物の加工性を改良し,同時に透明性,熱的・力学的性質を改良することにある。 ,,, また 本件発明5の特徴は前記6(1)のとおりであり その効果は,。 着色を防止し 臭気を抑えたジアセタールの収率を高めることにある以上によると,ゲルオールDHの物的性質に関する本件特許4の貢,。 献度がもっとも高く 少なくとも40%を下らないものと認められる一方,その余の特許については,いずれもジアセタールの収率をよくするというもので,その貢献度の違いは具体的には明らかとはいえない。 これらの事情を総合すれば,各発明間の貢献度は,本件発明4は40%であり,他の本件発明2,5及び6は各20%であると認めるのが相当である。 (ウ) ゲルオールMD-LM30についてゲルオールMD-LM30を製造するにあたり使用している本件発明2,6及び7の内容を比較すると次のとおりである。 156本件発明2,6の特徴と効果は前記(ア)のとおりである。 本件発明7の特徴は前記8(1)のとおりであり,その効果は,ジアセタール組成物の融点を低下させ,溶解性や粉体流動性を向上させることにある。 以上によると,ゲルオールMD-LM30の物的性質に関する本件,。 特許7の貢献度がもっとも高く 50%を下らないものと認められる一方,その余の特許については,前記(ア)のとおり,貢献度の違いがどの程度あるかは不明であり,同等の貢献度であると推認される。 ,, 以上の事情を総合すれば 各発明間の貢献度は本件発明7は50%本件発明2及び6は各25%であると認めるのが相当である。 イ 本件訴外特許について被告は 本件訴外特許がゲルオールMD ゲルオールDH及びゲルオー ,,ルMD-LM30の売上げに貢献している旨主張する。 前記11(3)のとおり,改正前特許法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)の額と解すべきであるところ,本件訴外特許は,平成11年1月5日に出願され,平成12年7月18日に出願公開されているが(乙14 ,前記(3)のゲル)オールMD,ゲルオールDH及びゲルオールMD-LM30の各売上げの変遷に照らし,本件訴外特許の貢献は必ずしも明らかとはいえない。 もっとも,本件訴外特許に係る乙14によると,その出願の願書に添付された明細書には,次の記載があることが認められる。 「 特許請求の範囲】【【請求項1】芳香族アルデヒドと5価以上の多価アルコールとを酸触媒の存在下に縮合させ,次いで水酸化アルカリ等により中和し,水洗及び乾燥の各工程を得て一般式(1) 式の内容は省略 で表されるジアセター ()157ル類を製造するに際し,縮合反応中において発生する粒状物を中和工程前/又は中和工程中に粉砕することを特徴とするジアセタール類の製造方法。 【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,この方法により当該ジアセタール類を製造した場合,その縮合反応中において粒状物が多数発生する結果,製品中の収率が十分ではなく,さらには,この粒状物を含んだまま反応生成物を中和,水洗後,乾燥した場合,その乾燥工程中に目的とするジアセタールの純度が低下し,結果として約95〜97%程度のものしか得られない傾向が認められた。 【0005】本発明者らは,係るジアセタール類の高濃度法による製造方法において,上記問題点を解消し,より工業的に優れた製造方法を確立すべく鋭意検討の結果,当該粒状物中には未反応原料並びに酸触媒が残存し,これらのものは通常の中和,水洗工程では充分に除去されず,特に酸触媒は,後に続く乾燥工程において目的とするジアセタール類の分解を惹起し,製品の純度や収率の低下を来していること,従って,係る粒状物を低減せしめることにより所定の目的が達せられることを見出し,この知見に基づいて本発明を完成するに至った 」。 これによると,本件訴外特許発明の貢献度を無視することはできず,130期(平成13年度)以降,一定程度の貢献があり,その結果,他の発明の貢献度が相対的に一定程度低くなったとして扱うのが相当である。そして,その割合は,本件訴外特許発明の実施の前後で顕著な売上高の違いがあるとは思えないことから,2割程度相対的に低くすることで足りると考える。 (6) 実施料率について前記(1)のとおり,複数の特許が使用されて複数の実施品が販売されて158おり,また,実施品毎に特許の組み合わせも異なるので,前記11(5)で述べたとおり,便宜上,実施料率の算定についても,実施品毎に,それぞれの特許の組み合わせによる実施料率を算定していくこととする。 証拠(乙53,193)及び弁論の全趣旨によれば,被告が被告が乙13の特許その他6件の特許について,が認められ,このことに加え,前記(2)及び(3)で認定した諸事情,特に,本件各発明の貢献度の程度を考慮すると,本件特許1,2,4ないし7の実施料率は,被告各製品毎に算定すると,次のとおり認めるのが相当である。 なお,いずれの特許についても,訴外特許が実施されており,これも含めて仮想実施料率を算定すべきであるが,訴外特許の公開日である平成12年7月18日までの間に本件特許2,4,5,6は相当程度の期間が経過しているので,特に仮想実施料率を訴外特許が加わることにより調整する必要はないと考える。 ア ゲルオールMD(本件特許1,2,6)本件特許1の特許権存続期間満了日まで 3%同満了日の経過後 2%(なお,本件特許1,2,6の特許権存続期間に応じ,前記(5)ア(ア)で認定したそれぞれの貢献度による低減がある )。 イ ゲルオールDH(本件特許2,4,5,6)2.5%(なお,本件特許2,4,5,6の特許権存続期間に応じ,前記(5)ア(イ)で認定したそれぞれの貢献度による低減がある )。 ウ ゲルオールMD-LM30(本件特許2,6,7)1593%(なお,本件特許2,6,7の特許権存続期間に応じ,前記(5)ア(ウ)で認定したそれぞれの貢献度による低減がある )。 13 争点4-2(被告の本件各発明に対する貢献の程度)について(1) 改正前特許法35条4項は,従業者等が支払を受ける対価の額は 「そ,の発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を考慮して定めるものと規定するが,当該対価の額を使用者等が実際に受けた利益に基づいて算定する場合には,この使用者等が貢献した程度に,使用者等がその発明がされるについて貢献した事情のほか,使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した事情等も含まれるものと解するのが相当である。 (2) 事実認定証拠(乙12の1・2,乙80の1・2,乙124,155,160,172)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明の承継に係る相当の対価の額を算定する際に考慮すべき被告等の貢献度に関し,次の事実を認めることができる。 ア 被告は,昭和42年ころから有機ゲル化剤事業を計画し,技術開発を,, 経て事業として採算が取れるようにするまでに 多額の資金を投入して研究者を育成し 研究設備や製造設備等を整備して 研究環境等をサポー ,,トして,多数の発明を特許化した。さらに,発明を実用化し,被告製品の売り上げを向上させた。また,被告は,を投資している(乙124 。)イ 被告は,昭和42年4月1日から2年間,原告を,被告の制度(乙12)に基づき,名古屋大学大学院工学研究科に在籍,修学させており,160この間,被告は,受験料,入学金,授業料,交通費その他修学に必要な一切の費用を負担したほか,修学中は出向扱いとし,一般従業員と同様の賃金等を支給したこと,原告は,京都大学から博士号を取得しているが,博士号取得にあたり被告から研究の支援を得ており(乙80の1,2 ,博士号の取得は,本件各発明に係る特許出願後の事情であるが, )特許発明の研究に対する支援が博士号に結実したものと推認することができること等が認められる。 (3) 検討以上の諸事情によれば,本件各発明を具現化するために開発及びノウハウの蓄積,営業活動,サポート体制等に関し,資金,設備及び人材の点において,被告に多大な貢献があったことは明らかであり,また,本件各発明間に,被告の貢献の度合に特段の違いを認めることはできず,本件各発明における使用者等の貢献度は,いずれの発明についても92%と認めるのが相当である。 14 争点4-3(共同発明者間における貢献の程度)について(1) 本件発明2について前記3のとおり,P6は,本件発明2の特徴的部分の完成に創作的に寄与し,P6が本件研究から離れた後,原告が,1人で研究を続け,連続法のモデルとして行われた知見を回分法に適用し,本件発明2を完成させているから,本件発明2については,原告とP6の貢献の程度につき優劣を付けることはできないというべきである。そうすると,本件発明2について,共同発明者である原告及びP6の貢献度割合は,原告が50%,P6が50%であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (2) 本件発明4について前記5のとおり,原告とP10は,実験内容を協議して決め,その決定に161従い,本件発明4を完成させていること,原告はP10の上司として指導に当たっていたこと等に照らすと,本件発明4について,共同発明者である原告及びP10の貢献度割合は,原告が70%,P10が30%であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (3) 本件発明5について前記6のとおり,本件発明5の発明者は原告だけであるから,その貢献度割合は,原告100%である。 (4) 本件発明6について前記7のとおり,本件発明6の発明者のうち,P14が上司としての指導的役割を果たしていたことが窺える。しかし,その一方で,原告は,議論及び検討を総括する役割を果たしていたことが認められ,原告の経歴(前), , , 提事実(1)ア参照 や 他の発明における貢献内容をも総合すると 当時原告は,本件発明6に関する研究において,中心的な役割を占めていたことが推認される。 本件発明6のもう1人の発明者であるP5の貢献内容(前記7(5)エ)を併せ考慮すると,本件発明6については,共同発明者である原告,P14及びP5の貢献度割合は,原告が50%,P14及びP5が合わせて50%であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (5) 本件発明1,3,7について本件発明1については,前記2のとおり,原告の対価請求権が時効消滅していること,本件発明3については,前記10のとおり,被告における実施が認められないことから,原告の貢献割合を判断する必要はなく,また,本件発明7については,前記8のとおり,原告は発明者と認めることができず,その貢献割合は0となる。 15 争点4-4(相当の対価の額)について原告が受けるべき相当対価の額は,前記11ないし14において検討した162とおり,独占の利益の対象期間の売上高に,超過売上高の割合を乗じ,さらに,本件発明の実施料率を乗じて,独占の利益を算定し,これに,共同発明者間の原告の貢献割合と,使用者の貢献割合に対応する原告の貢献割合とを乗じて算定することとなる。 (1) ゲルオールMDについて前記12(5)のとおり,ゲルオールMDの独占性に対する貢献度は,本件特許1が50%,本件特許2及び6が各25%であると認められるところ,前記12(2)のとおり,本件特許1の貢献は,平成元年6月12日から平成7年4月2日までであるので,この期間とその余の期間に分けて,算出し,さらに,平成13年4月1日以降は,本件訴外特許発明の実施による調整をする。 そうすると,計算式は,次のとおりとなり,その計算結果は,別表2のとおり,合計213万6213円となる。 ア 平成元年6月12日〜平成7年4月2日〔計算式〕本件特許1:本件特許2:本件特許6各期の売上高×0.4(超過売上高)×0.03(仮想実施料率)×特許毎の貢献度(0.5:0.25:0.25)×共同発明者間における原告の貢献(0:0.5:0.5)×被告の貢献に対応する原告の貢献(0.08)イ 平成7年4月3日〜平成13年3月31日〔計算式〕本件特許2:本件特許6各期の売上高×0.2(超過売上高)×0.02(仮想実施料率)×特許毎の貢献度(0.5:0.5)×共同発明者間における原告の貢献(0.5:0.5)×被告との関係での原告の貢献(0.08)ウ 平成13年4月1日〜平成21年3月3日〔計算式〕本件特許2:本件特許6各期の売上高×0.2(超過売上高)×0.02(仮想実施料率)×特許毎163の貢献度(0.5:0.5)×共同発明者間における原告の貢献(0.5:0.5)×被告との関係での原告の貢献(0.08)×0.8(訴外特許による調整)(2) ゲルオールDHについて前記12(5)のとおり,ゲルオールDHの独占性に対する貢献度は,本,, 。 件特許4が40% 本件特許2 5及び6が各20%であると認められるこれに,前記(1)と同様,本件訴外特許発明の実施による調整をし,本,, , , 件各発明毎に算定すると 計算式は次のとおりとなり その計算結果は別表3のとおり,合計111万2195円となる。 ア 平成元年6月12日〜平成13年3月31日〔計算式〕本件特許2:本件特許4:本件特許5:本件特許6各期の売上高×0.3(超過売上高)×0.25(仮想実施料率)×特許毎の貢献度 0.2:0.4:0.2:0.2 ×共同発明者間における原告の貢献 0. () (5:0.7:1.0:0.5)×被告の貢献に対応する原告の貢献(0.08)イ 平成13年4月1日〜平成21年3月3日〔計算式〕本件特許2:本件特許4:本件特許5:本件特許6各期の売上高×0.3(超過売上高)×0.25(仮想実施料率)×特許毎の貢献度 0.2:0.4:0.2:0.2 ×共同発明者間における原告の貢献 0. () (5:0.7:1.0:0.5)×被告の貢献に対応する原告の貢献(0.08)×0.8(訴外特許による調整)(3) ゲルオールMD-LM30について前記12(5)のとおり,ゲルオールMD-LM30の独占性に対する貢献度は,本件特許7が50%であり,他の本件特許2及び6が各25%であると認められる。 これに,前記(1)と同様,本件訴外特許発明の実施による調整をし,本,, , , 件各発明毎に算定すると 計算式は次のとおりとなり その計算結果は別表4のとおり,合計40万1656円となる。 164ア 平成元年6月12日〜平成13年3月31日〔計算式〕本件特許2:本件特許4:本件特許5:本件特許6各期の売上高×0.3(超過売上高)×0.25(仮想実施料率)×特許毎の貢献度 0.2:0.4:0.2:0.2 ×共同発明者間における原告の貢献 0. () (5:0.7:1.0:0.5)×被告の貢献に対応する原告の貢献(0.08)イ 平成13年4月1日〜平成21年3月3日〔計算式〕本件特許2:本件特許4:本件特許5:本件特許6各期の売上高×0.3(超過売上高)×0.25(仮想実施料率)×特許毎の貢献度 0.2:0.4:0.2:0.2 ×共同発明者間における原告の貢献 0. () (5:0.7:1.0:0.5)×被告の貢献に対応する原告の貢献(0.08)×0.8(訴外特許による調整)(4) 合計,,, 以上によると 原告の職務発明である本件発明2 4ないし6について特許を受ける権利の譲渡に対する相当の対価は,365万0064円となる。 〔計算式〕2,136,213+1,112,195+401,656=3,650,064(5) 結論前記(4)の金額から,既払金を控除すべきところ,前提事実(5)のとおり,原告は,被告から,出願補償金,登録補償金,職務発明実施補償金として合計71万3800円の支給を受けている。 一方,前記10のとおり,被告は本件発明3を実施していると認めることができないので,控除すべき既払額は,譲渡の対象となる本件発明2,4ないし6に関して支給された補償金に限られるべきである。 ところで,被告は,上記実施補償金(65万5000円)の内訳について,錯誤により,本件発明3の職務発明実施補償金として15万円を計上したと主張するところ(被告第2準備書面2頁以下 ,原告に有利な主張)165として,これに従うこととする。また,前提事実(5)のとおり,本件発明3の出願補償金として2500円,登録補償金として1万円が支給されているので,上記相当の対価から控除されるべき支給額は55万1300円であり,その結果,被告から原告に対し支払われるべき相当の対価の未払額は,309万8764円となる。 〔計算式〕3,650,064-(713,800-150,000-2,500-10,000)=3,098,764 |
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結論
以上の次第で,原告の請求は,309万8764円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年12月13日から支払済みに至るまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから(, , なお 改正前特許法35条3項に基づく相当対価請求権は法定債権であり商行為によって生じたものではないので,これに対する遅延損害金は,民法所定の年5%の割合による ,これを認容し,その余は理由がないから棄 。)却することとして,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 |
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166167別紙特許権目録1特許権発明の名称ポリプロピレンの改質法特許番号第1023186号出願日昭和52年3月22日公開日昭和53年10月13日登録日昭和55年11月28日発明者(特許公報に記載された者)原告,P2特許請求の範囲結晶性ポリプロピレン又はその共重合体に1・3,2・4-ジ(メチルベンジリデン)ソルビトールを配合し,加熱成形することを特徴とするポリプロピレンの改質法2特許権発明の名称アセタール類の製造方法特許番号第2121967号出願日昭和62年12月7日公開日平成元年6月12日登録日平成8年12月20日発明者(特許公報に記載された者)原告,P6特許請求の範囲下記一般式(?)で表されるアセタール類を製造するに際し,5価以上の多価アルコールと芳香族アルデヒド類と低級アルコール及び要すれば酸触媒からなる均一溶液若しくは懸濁液を連続的に又は間欠的に仕込み,反応168缶内の内容物の容量を増加させつつ反応することを特徴とするアセタール類の製造方法。 [式中,X,X'は同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。m,nは夫々1〜5の整数を表す。pは0又は1を表す]。 3特許権発明の名称安定化されたジベンジリデンソルビトール類組成物特許番号第2007100号出願日昭和63年8月24日公開日平成年2年2月28日登録日平成8年1月11日発明者(特許公報に記載された者)原告,P10特許請求の範囲一般式(?)で表されるジベンジリデンソルビトール類において,その位置異性体が0.2重量%以下に低減された当該ジベンジリデンソルビトール類の精製物に対し,アルカリ金属化合物及びアルカリ性有機アミン化合物を配合してなることを特徴とする安定化されたジベンジリデンソルビ169トール類組成物。 [式中,X,X'は同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜3のアルキル基,炭素数1〜3のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。m,nは同一又は異なって1〜5の整数を表す。pは0又は1を表す]。 4特許権発明の名称樹脂改質用ジアセタール組成物及び結晶性樹脂組成物特許番号第2111253号出願日昭和63年9月16日公開日平成2年8月16日登録日平成8年11月21日発明者(特許公報に記載された者)原告,P10特許請求の範囲【請求項1】(a)一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物,(b)一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物及び(c)一般式(3)で表される少なくとも1種の化合物との混合物であって,0.3≦Z≦0.8の組成からなることを特徴とする樹脂改質用ジアセタール組成物。上記のZは次式で算出される値である。 Z=A/(A+B+C)ここで,Aは(a)成分の,Bは(b)成分の,Cは(c)成分夫々の該ジア170セタール組成物中の重量割合を表す。 [,,。式中Rがメチル基のときRは水素原子を表しmは2又は3を表す12又,Rが水素原子のときRはメチル基を表し,nは2又は3を表す。p12は0又は1を表す]。 [式中,pは0又は1を表す]。 [式中,rは2又は3を表す。pは0又は1を表す]。 【請求項2】請求項1に記載の樹脂改質用ジアセタール組成物を含有することを特徴とする結晶性樹脂組成物。 5特許権171発明の名称ジアセタールの製造方法特許番号第2069261号出願日平成元年10月2日公開日平成3年5月22日登録日平成8年7月10日発明者(特許公報に記載された者)原告特許請求の範囲芳香族アルデヒドと多価アルコールとを酸触媒の存在下,疎水性有機溶媒中で縮合し,次いで中和し,溶媒を回収し,乾燥して一般式(1)で表わされるジアセタールを製造するに際し,中和以降,乾燥前のいずれかの工程において,ジアセタール100重量部当り,一般式(2)又は一般式(3)で表わされる脂肪族第3級アミンを0.1〜20重量部配合することを特徴とするジアセタールの製造方法。 [式中,X,X'は,同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のチオアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,ハロゲン原子を表わす。m,nは,同一又は異なって,1〜5の整数を表わし,pは0又は1を示す]。 172[式中,R,Rは,同一又は異なって,炭素数10〜26のアルキル基12又はアルケニル基を表わす。Rは,炭素数1〜4のアルキル基又は(C32HO)nHを表わす。nは1〜4の整数である]。 4[式中,Rは炭素数14〜22のアルキル基を表わす。R,Rは,同456一又は異なって,水素原子(CHO)nHを表わす。nは1〜4の整,24数である。但し,R,Rのいずれもが水素原子であることはない]。 566特許権発明の名称アセタール類の製造方法特許番号第2711884号出願日平成元年3月3日公開日平成2年9月13日登録日平成9年10月31日発明者(特許公報に記載された者)原告,P20特許請求の範囲疎水性有機溶媒及び低級アルコールの存在下にアルデヒド類と多価アルコールとを脱水縮合して一般式(?)[式中,A,Bは同一又は異なって,(X)n若しくは(X')mの置換基を173有していてもよい,芳香環,ナフタレン環又はテトラヒドロナフタレン環を表す。X,X'は同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,ハロゲン原子,カルボキシル基又は。,。]フェニル基を表すm及びnは夫々1〜5の整数pは0又は1を表すで表されるアセタール類を製造するに際し,当該反応中において,追加の低級アルコールを分割又は連続して仕込み,低級アルコールと水との混合物を連続的に抜き出すことを特徴とするアセタール類の製造方法。 7特許権発明の名称ジアセタール組成物,その製法,該組成物を含むポリオレフィン用核剤,ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体特許番号第3458190号出願番号特願平11-518799出願日平成10年7月7日国際公開日平成11年4月15日優先日平成9年10月3日(日本)優先日平成10年3月4日(日本)優先日平成10年4月2日(日本)登録日平成15年8月8日発明者(特許公報に記載された者)原告,P4,P3,P23特許請求の範囲【請求項1】174(a)一般式(1)[式中,R及びRは,同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のア12ルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,炭素数1〜4のアルコキシカル。,。ボニル基又はハロゲン原子を表すa及びbは夫々1〜5の整数を示すcは0又は1を示す。aが2である場合,2つのR1は互いに結合してそ,,れらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していても良く又bが2である場合,2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼ2ン環と共にテトラリン環を形成していても良い]。 で表される少なくとも1種のジアセタール及び,(b)中性ないし弱酸性の一価有機酸,中性ないし弱酸性の多価有機酸,中性ないし弱酸性の多価有機酸の部分塩,硫酸エステル塩,スルホン酸塩,リン酸エステル塩,リン酸エステル,亜リン酸エステル及び中性ないし弱酸性の一価有機酸のアルミニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダーを含む粒状ないし粉末状ジアセタール組成物であって,該バインダーが,ジアセタール粒子の表面のみならず,ジアセタール粒子の内部にも均一に分布していることにより,該粒状ないし粉末状のジアセタール組成物の粒子中に均一に分散している組成物。 【請求項2】バインダーが,粒状ないし粉末状のジアセタール組成物を構成するジアセタール繊維状結晶間に均一に分布している請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 請求項3バインダーが分子内にエーテル結合エステル結合チオエー【】,,,テル結合,アミド結合,ハロゲン原子,アミノ基,水酸基,複素環基及び175カルボニル基からなる群から選ばれた結合又は官能基の少なくとも1種を有していても良い,モノカルボン酸,ポリカルボン酸,ポリカルボン酸の部分塩,炭素数1〜30の一価脂肪族アルコール及び炭素数2〜30の多価脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種とリン酸とのエステル,炭素数1〜30の一価脂肪族アルコール及び炭素数2〜30の多価脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種と亜リン酸とのエステル,炭素数6〜30の一価芳香族アルコール及び炭素数6〜30の多価芳香族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種とリン酸とのエステル,炭素数6〜30の一価芳香族アルコール及び炭素数6〜30の多価芳香族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種と亜リン酸とのエステル,タウリン,硫酸エステル塩,スルホン酸塩,リン酸エステル塩及びモノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項4】(?)溶媒で膨潤された一般式(1)で表されるジアセタールを含むスラリーを調製し(?)上記スラリーとバインダーとを均一混合し(?),,(a)得られる均一混合物から溶媒を除去して乾燥物を得るか,又は,(b)得られる均一混合物から溶媒を除去しながら造粒するか,又は,(c)上記工程(a)で得られる乾燥物又は上記工程(b)で得られる造粒物を,分級若しくは粉砕するか,又は,(d)上記工程(c)で得られる粉砕物を造粒若しくは分級することにより得ることができる請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項5】バインダーが,粒状ないし粉末状ジアセタールが該バインダー10重量部を上記一般式(1)で表されるジアセタール90重量部に均一分散した状態で含有する場合に,該ジアセタール自体の融点に比し,融点を7℃以上降下させ且つ分子内にエーテル結合エステル結合チオエー,,,,176テル結合,アミド結合,ハロゲン原子,アミノ基,水酸基,複素環基及びカルボニル基からなる群から選ばれた結合又は官能基の少なくとも1種を有していても良い,モノカルボン酸,ポリカルボン酸,ポリカルボン酸の部分塩,炭素数1〜30の一価脂肪族アルコール及び炭素数2〜30の多価脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種とリン酸とのエステル,炭素数1〜30の一価脂肪族アルコール及び炭素数2〜30の多価脂肪族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種と亜リン酸とのエステル,炭素数6〜30の一価芳香族アルコール及び炭素数6〜30の多価芳香族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種とリン酸とのエステル,炭素数6〜30の一価芳香族アルコール及び炭素数6〜30の多価芳香族アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種と亜リン酸とのエステル,タウリン,硫酸エステル塩,スルホン酸塩,リン酸エステル塩及びモノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 請求項6バインダーが分子内にエーテル結合エステル結合チオエー【】,,,テル結合,アミド結合,ハロゲン原子,アミノ基,水酸基,複素環基及びカルボニル基からなる群から選ばれた結合又は官能基の少なくとも1種を有していても良い,モノカルボン酸,ポリカルボン酸,ポリカルボン酸の部分塩,スルホン酸塩,硫酸エステル塩,リン酸エステル塩及びモノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項7】バインダーが,60〜1200mgKOH/gの酸価を有し,分子内にエーテル結合,エステル結合,チオエーテル結合,アミド結合,ハロゲン原子,アミノ基,水酸基,複素環基及びカルボニル基からなる群か177ら選ばれた結合又は官能基の少なくとも1種を有していても良い,モノカルボン酸又はポリカルボン酸である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項8】バインダーが,炭素数80以下の脂肪族モノカルボン酸,炭素数80以下の脂肪族ポリカルボン酸及びそのアルキル(炭素数1〜22)部分エステル,炭素数80以下の芳香族モノカルボン酸,炭素数80以下の芳香族ポリカルボン酸及びそのアルキル(炭素数1〜22)部分エステル,炭素数80以下のハロゲン原子含有カルボン酸,炭素数80以下のアミノ基含有カルボン酸,炭素数80以下のアミド結合含有カルボン酸,炭素数80以下の水酸基含有カルボン酸,樹脂酸,炭素数80以下のカルボニル基含有カルボン酸,炭素数80以下のエーテル結合含有カルボン酸,炭素数80以下のエステル結合含有カルボン酸,炭素数80以下のアミド結合及びアミノ基含有カルボン酸,炭素数80以下のアミド結合及び水酸基含有カルボン酸,炭素数80以下の複素環含有カルボン酸及び炭素数80以下のチオエーテル結合含有カルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項9】バインダーが,炭素数3〜35の脂肪族モノカルボン酸,炭素数4〜30の脂肪族ポリカルボン酸及びそのアルキル(炭素数1〜22)部分エステル,炭素数7〜35の芳香族モノカルボン酸,炭素数8〜30の芳香族ポリカルボン酸及びそのアルキル(炭素数1〜22)部分エステル,炭素数4〜35のハロゲン原子含有カルボン酸,炭素数4〜35のア,,,ミノ基含有カルボン酸炭素数4〜35の水酸基含有カルボン酸樹脂酸炭素数4〜35のカルボニル基含有カルボン酸,炭素数4〜35のエーテル結合含有カルボン酸,炭素数4〜35のエステル結合含有カルボン酸,炭素数4〜35のアミド結合及びアミノ基含有カルボン酸,炭素数4〜31785のアミド結合及び水酸基含有カルボン酸,炭素数4〜35の複素環含有カルボン酸及び炭素数4〜35のチオエーテル結合含有カルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【】,,請求項10バインダーが(a)炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸(b)炭素数3〜18の脂肪族ジカルボン酸,炭素数6〜30の脂肪族トリカルボン酸,及び炭素数8〜30の脂肪族テトラカルボン酸,(c)炭素数,,,7〜15の芳香族モノカルボン酸(d)炭素数8〜20の芳香族ジトリ及びテトラカルボン酸,(e)ハロゲン原子を1〜3個含有する炭素数3〜20のカルボン酸(f)アミノ基を1〜3個含有する炭素数5〜12のモノ及びジカルボン酸,(g)モノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩(h)水酸基を1〜5個有する炭素数4〜24のモノ,ジ,トリ及びテトラカルボン酸(i)樹脂酸(j)カルボニル基を1〜3個含有する炭素数4〜18のモノ及びジカルボン酸,(k)エーテル結合を1〜2個含有する炭素数8〜15のモノ及びジカルボン酸,(l)エステル結合を1〜2個有する炭素数5〜26のモノ及びジカルボン酸,及び(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホン酸,()()C1-C22アルキルベンゼンスルホン酸及びC1-C14アルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪族ア,ルコールの硫酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項11(a')ラウリン酸,トリデカン酸,ミリスチン酸,ペンタデ】179カン酸,パルミチン酸,ヘプタデカン酸,ステアリン酸,イソステアリン酸,エイコサン酸,ベヘン酸,ドコサヘキサン酸,モンタン酸,ベンジル酸,ソルビン酸,オレイン酸,リノール酸,リノレイン酸(b')コハク,酸,グルタル酸,マロン酸,アジピン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸,イタコン酸,トリカルバリル酸,1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸,シトラジン酸,1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸,1,4-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,4,4'-ジシクロヘキシルジカルボン酸,シクロヘキサンテトラカルボン酸(c')安息香酸,p-メチル安息香酸,p-エチル,,,,,安息香酸p-n-プロピル安息香酸クミン酸p-tert-ブチル安息香酸,,,p-イソブチル安息香酸p-フェニル安息香酸3,5-ジメチル安息香酸1-ナフトエ酸,2-ナフトエ酸,テトラリンモノカルボン酸(d')o-,フタル酸,m-フタル酸,p-フタル酸,トリメリット酸,トリメシン酸,ピロメリット酸,ジフェン酸,ビフェニルジカルボン酸,ビフェニルテトラカルボン酸,ナフタレンジカルボン酸,ジフェニルスルホンテトラカルボン酸,ジフェニルエーテルテトラカルボン酸,ジフェニルメタンテトラカルボン酸ジフェニルプロパンテトラカルボン酸エチレングリコール-,,4,4'-ビストリメリット酸ジトリメリテート(e')クロロプロピオン,酸,ブロモプロピオン酸,o-クロロ安息香酸,m-クロロ安息香酸,p-クロロ安息香酸,4-クロロ-3-ニトロ安息香酸(f')L-グルタミン,,(g')モノ及びジ(ペラルゴン酸)アルミニウム,モノ及びジ(ラウリン酸)アルミニウム,モノ及びジ(ミリスチン酸)アルミニウム,モノ及びジ(ステアリン酸)アルミニウム,及び,モノ及びジ(オレイン酸)アルミニウム(h')酒石酸,乳酸,リンゴ酸,クエン酸,グルコン酸,パン,トテン酸,12-ヒドロキシステアリン酸,マンデル酸,コール酸,β-オキシナフトエ酸リシノール酸キナ酸シキミ酸サリチル酸αβ-,,,,,,180ジヒドロキシヘキサヒドロフタル酸(i')デヒドロアビエチン酸,アビ,エチン酸,ジヒドロアビエチン酸,ネオアビエチン酸,テトラヒドロアビ,(),,,()エチン酸j'レブリン酸ピリビル酸o-ベンゾイル安息香酸k'4-メトキシシクロヘキサンカルボン酸,4-エトキシシクロヘキサンカルボン酸,p-メトキシ安息香酸,p-エトキシ安息香酸,p-フェノキシ安息香酸(l')アセチルクエン酸,ステアロイルクエン酸,アセチルリシ,ノール酸,ステアロイル乳酸,クエン酸モノステアリルエステル,アジピ,,ン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルアジピン酸モノオクチルエステル及び(m')C18アルカン又はアルケンスルホン酸のカリウム及びナトリウム塩,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ナトリウムドデシルサルフェート,ナトリウムドデシルエーテルサルフェート(即ち,エチレンオキサイドが1モル付加したドデシルアルコールの硫酸エステルのナトリウム塩,ナトリウムジオクチルスルホサクシネート及びナトリウムメチ)ルα-スルホステアレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項12】バインダーが,(h)水酸基を1〜5個有する炭素数4〜24のモノ,ジ,トリ及びテトラカルボン酸の少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項13】バインダーが,酒石酸,乳酸,リンゴ酸,クエン酸,グルコン酸,パントテン酸,12-ヒドロキシステアリン酸,マンデル酸,コール酸,β-オキシナフトエ酸,リシノール酸,キナ酸,シキミ酸,サリチル酸及びα,β-ジヒドロキシヘキサヒドロフタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項14】バインダーが(h-a)酒石酸,乳酸,リンゴ酸,クエン,181酸及びα,β-ジヒドロキシヘキサヒドロフタル酸,並びに(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホン酸(C1-C22アルキル)ベンゼンスルホン酸及び(C1-C14ア,ルキル)ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜30の飽和及び不飽和,脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項15】バインダーとして(h-a)酒石酸,リンゴ酸,クエン酸,,コハク酸及びα,β-ジヒドロキシヘキサヒドロフタル酸,(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホン酸(C1-C22アルキル)ベンゼンスルホン酸及び(C1-C14ア,ルキル)ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜30の飽和及び不飽和,脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩,(a)炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸,並びに(g)モノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含み,更に滑剤として硬化油を含む請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項16】バインダーとして(h-a)酒石酸,リンゴ酸,クエン酸,,コハク酸及びα,β-ジヒドロキシヘキサヒドロフタル酸,(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホ182ン酸(C1-C22アルキル)ベンゼンスルホン酸及び(C1-C14ア,ルキル)ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜30の飽和及び不飽和,脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩,並びに(a)炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み,更に滑剤として硬化油を含む請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項17】バインダーとして,(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホン酸(C1-C22ア,ルキル)ベンゼンスルホン酸及び(C1-C14アルキル)ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫,酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩,並びに(a)炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み,更に滑剤として硬化油を含む請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項18】バインダーとして,(g)モノ,ジ及びトリ(C6-C30脂肪酸)アルミニウム塩,(a)炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸,及び(m)(m-1)炭素数6〜30のアルカンスルホン酸,炭素数6〜30のアルケンスルホン酸(C1-C22アルキル)ベンゼンスルホン酸及,び(C1-C14アルキル)ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩,アンモニウム塩及びアルカリ土類金属塩,並びに(m-2)炭素数6〜3,1830の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,エチレンオキシドが1〜10モル付加した炭素数6〜30の飽和及び不飽和脂肪族アルコールの硫酸エステル塩,スルホコハク酸ジエステル塩,α-スルホ脂肪酸塩及びα-スルホ脂肪酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み,更に滑剤として硬化油を含む請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項19】バインダーが,一般式(1)で表されるジアセタール100重量部に対して,0.01〜100重量部存在する請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項20】バインダーが,一般式(1)で表されるジアセタール100重量部に対して,0.01〜8重量部の量で使用される請求の範囲第10項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項21】平均粒子径が,3〜2000μmである請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項22】断面直径が0.2〜5mmで,長さが0.2〜15mmの円柱の形態,或いは直径0.2〜5mmの顆粒又はフレークの形態にある請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項23】0.2〜1.1g/cm3の嵩密度を有する請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項24】ジアセタール組成物中に含有される一般式(1)で表されるジアセタールに比し,融点が20℃以上降下していることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項25】ジアセタール組成物中に含有される一般式(1)で表されるジアセタールに比し,融点が40℃以上降下していることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項26】更に,帯電防止剤,中和剤ないし安定剤及び滑剤からなる群184から選ばれる少なくとも1種を含む請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項27】帯電防止剤が,グリセリン脂肪酸(C8-C22)モノ,ジ及びトリエステル,N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキル(C8-C22)アミン,ポリオキシエチレン(4-50モル)アルキル(C12-C22)エーテル,ポリオキシエチレン(4-50モル)アルキル(C7-C22)フェニルエーテル及びペンタエリスリトール脂肪酸(C8-C22)エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第26項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項28】中和剤ないし安定剤が,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸リチウム,ステアリン酸カリウム,ステアリン酸ナトリウム,テトラキス[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン,トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト及び3,3'-チオジプロピオン酸ジステアリルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第26項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項29】滑剤が,硬化油の少なくとも1種である請求の範囲第26項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物。 【請求項30】粒状ないし粉末状ジアセタール組成物が,一般式(1)で表される1,3:2,4-ジアセタール以外に,5価又は6価の多価アルコールと置換基を有していても良いベンズアルデヒドとの縮合反応により副生物として生成するアセタールであるモノアセタール,トリアセタール及びジアセタール異性体の少なくとも1種を含んでおり,該モノアセタール,トリアセタール及びジアセタール異性体の合計量が,アセタール総量(一般式(1)で表される1,3:2,4-ジアセタール,モノアセタール,トリアセタール及びジアセタール異性体の合計量)に対して,0.05〜11850重量%である請求の範囲第1項〜第29項のいずれかに記載の組成物。 【請求項31(I)一般式(1)】[式中,R及びRは,同一又は異なって,水素原子,炭素数1〜4のア12ルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,炭素数1〜4のアルコキシカル。,。ボニル基又はハロゲン原子を表すa及びbは夫々1〜5の整数を示すcは0又は1を示す。aが2である場合,2つのRは互いに結合してそ1,,れらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していても良く又bが2である場合,2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼ2ン環と共にテトラリン環を形成していても良い]。 で表される少なくとも1種のジアセタール,及び(II)中性ないし弱酸性の一価有機酸,中性ないし弱酸性の多価有機酸,中性ないし弱酸性の多価有機酸の部分塩,硫酸エステル塩,スルホン酸塩,リン酸エステル塩,リン酸エステル,亜リン酸エステル及び中性ないし弱酸性の一価有機酸のアルミニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダーを含む粒状ないし粉状ジアセタール組成物であって該バインダーがジアセター,,ル粒子の表面のみならず,ジアセタール粒子の内部にも均一に分布していることにより,該粒状ないし粉末状ジアセタール組成物の粒子中に均一に分散している組成物の製造法であって,(i)一般式(1)で表されるジアセタールを溶媒中に含むスラリーであって,上記ジアセタールが該溶媒で膨潤された状態で含有されているスラリーを調製し(ii)上記スラリーと,バインダーとを均一混合し(iii)(a)上記工程(ii)で得られた均一,混合物から,溶媒を除去して乾燥物を得るか,又は(b)該均一混合物から溶媒を除去しながら造粒するか,又は(c)上記工程(a)で得られた乾燥物又は上記工程(b)で得られた造粒物を,分級若しくは粉砕するか,又は,(d)上記工程(c)で得られる粉砕物を分級するか造粒する工程を包含する製造法。 186【請求項32】膨潤したジアセタールを含むスラリーが,ジアセタール粉末を,ジアセタール粉末を膨潤させ得る有機溶媒中で膨潤させてなるものである請求の範囲第31項に記載の製造法。 【請求項33】有機溶媒が,極性有機溶媒であるか,又は,芳香族炭化水素溶媒であるか,又は,(a)極性有機溶媒及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種と(b)脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種との混合物であって,該極性有機溶媒が,炭素数1〜18の脂肪族アルコール;炭素数6〜18の脂環式アルコール;フルフリルアルコール;環状エーテル;ケトン;炭素数3〜6の脂肪族アミン;アセトニトリル;グリコールエーテル;ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,ジメチルスルホキシド,N-メチルピロリドンからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求の範囲第31項に記載の製造法。 【請求項34】膨潤した上記一般式(1)で表されるジアセタールを含むスラリーが,対応するソルビトール又はキシリトールと置換されていてもよいベンズアルデヒドとを,有機溶媒中で縮合反応を行って得られた反応混合物であるか,或いは,該反応混合物を中和又は水洗して得られた混合物である請求の範囲第31項に記載の製造法。 【請求項35】膨潤した上記一般式(1)で表されるジアセタールを含むスラリーが,対応するソルビトール又はキシリトールと置換されていてもよいベンズアルデヒドとを,水中で,酸触媒の存在下に縮合反応させて得られる反応混合物であるか,或いは,該反応混合物を中和又は水洗して得られる湿結スラリーである請求の範囲第31項に記載の製造方法。 【請求項36】請求の範囲第1項に記載の粒状ないし粉末状ジアセタール組成物を含有する,ポリオレフィン樹脂用の核剤。 【請求項37】ジアセタール組成物が,更に,帯電防止剤,中和剤ないし安187定剤及び滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求の範囲第36項に記載のポリオレフィン樹脂用核剤。 【請求項38】(i)ポリオレフィン樹脂粉末又はフレーク及び請求の範囲第36項又は第37項に記載の核剤の粉末又は粒状物を,或いは(ii)ポ,リオレフィン樹脂粉末またはフレーク,請求の範囲第36項又は37項に記載の核剤の粉末又は粒状物及び少なくとも1種のポリオレフィン樹脂用添加剤を,ブレンドして得ることができる粉末状のポリオレフィン樹脂組成物。 【請求項39】(i)ポリオレフィン樹脂粉末又はフレーク及び請求の範囲第36項又は第37項に記載の核剤を,或いは(ii)ポリオレフィン樹脂,粉末又はフレーク,請求の範囲第36項又は第37項に記載の核剤,及び少なくとも1種のポリオレフィン樹脂用添加剤を,ブレンドし,得られる粉末状組成物を,加熱下で溶融混練し,押し出し,押し出されたストランドを,冷却し,得られたストランドをカッティングしてペレットとすることにより得ることができるポリオレフィン樹脂組成物。 【請求項40】(i)ポリオレフィン樹脂粉末又はフレーク及び請求の範囲第36項又は第37項に記載の核剤を,或いは(ii)ポリオレフィン樹脂,粉末又はフレーク,請求の範囲第36項又は第37項に記載の核剤の粉末及び少なくとも1種のポリオレフィン樹脂用添加剤を,ブレンドし,得られる粉末状組成物を,ジアセタール組成物の融点以上又は未満の温度に加熱して溶融混練し,押し出し,押し出されたストランドを,冷却し,得られたストランドをカッティングすることからなるポリオレフィン樹脂組成物の製造法。 【請求項41】請求の範囲第38項又は第39項に記載のポリオレフィン樹脂組成物を,射出成形法,射出-ブロー成形法,ブロー成形法又は押出成形法により成形するか,又は該押出成形法により得られるシートを圧空成188形する工程を包含する,ポリオレフィン樹脂組成物中の核剤未分散物を最小限の量で含むポリオレフィン樹脂成形体の製造法。 【請求項42】請求の範囲第38項又は第39項に記載のポリオレフィン樹脂組成物を,射出成形法,射出-ブロー成形法,ブロー成形法,押出成形法により成形するか,又は該押出成形法により得られるシートを圧空成形する工程を包含する方法により得ることができるポリオレフィン樹脂成形体。 【請求項43】(a)R及びRが同一又は異なって,それぞれ水素原子,炭12素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシ基,炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表し,a及びbがそれぞれ1〜5の整数を示し,cが0又は1を示す請求の範囲第1項に記載の一般式(1)で表される少なくとも1種のジアセタールと,(b)少なくとも1種の有機酸を必須成分とするバインダーとからなり,上記バインダーがジアセタール粒子の表面のみならず,ジアセタール粒子の内部にも均一に分布し,,ていることによりジアセタール中に均一に分散している組成物であってその粒子直径の平均値が3〜500μmであることを特徴とする粉末状ジアセタール組成物。 【請求項44】バインダーが,酒石酸,乳酸,リンゴ酸,クエン酸,グルコン酸,パントテン酸,12-ヒドロキシステアリン酸,マンデル酸,コール酸,β-オキシナフトエ酸,リシノール酸,キナ酸,シキミ酸,サリチル酸,プロトカテク酸,クマル酸及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第43項に記載の組成物。 189 |
裁判長裁判官 | 山田陽三 |
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裁判官 | 島村雅之 |
裁判官 | 北岡裕章 |