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関連審決 異議2002-73142
関連ワード 物の発明 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術情報 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  設定登録 /  請求の範囲 /  取消決定 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 121号 特許取消決定取消請求事件
原告 アクゾノーベル株式会社
原告 三菱エンジニアリングプラスチックス 株式会社
両名訴訟代理人弁理士 津國肇
両名訴訟復代理人弁理士 束田 幸四郎
同 伊藤 佐保子
被告 特許庁長官小川 洋
指定代理人 平塚政宏
同 松井佳章
同 一色 由美子
同 涌井幸一
同 宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/10/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告ら (1) 特許庁が異議2002-73142号事件について平成16年2月5日にした決定中,「特許第3298675号の請求項1に係る特許を取り消す。」との部分を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告らは,発明の名称を「ポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物」とする特許第3298675号の特許(平成4年11月17日特許出願(以下「本件出願」という。),平成14年4月19日設定登録,以下「本件特許」という。請求項の数は1である。)の特許権者である。
本件特許に対して特許異議の申立てがあり,特許庁は,これを異議2002-73142号事件として審理した。原告らは,この審理の過程で,平成15年6月3日付けで,本件出願に係る願書に添付された明細書の訂正を請求した(以下,この訂正を「本件訂正」という。)。特許庁は,審理の結果,平成16年2月5日に「訂正を認める。特許第3298675号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年2月25日にその謄本を原告らに送達した。
2 本件訂正による訂正後の特許請求の範囲 「【請求項1】下記の成分(A),(B),(C)及び(D)からなり,UL-94規格に定める手法に基づき,1/32インチ(0.794mm)の厚みでV-0レベルを達成する,ポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物。
(A)ポリアルキレンテレフタレート 100重量部 (B)繊維状の強化充填剤 30〜250重量部 (C)メラミン・シアヌル酸付加物 5〜50重量部 (D)式(I) 【化1】 (式中,R0はイソプロピリデン基,メチレン基,カルボニル基又はスルホン基を表し,R 1〜R 9及びR' 1〜R' 9はそれぞれ水素原子又はアルキル基を表す) で示されるリン系難燃剤 5〜50重量部」 (以下「本件発明」という。) 3 決定の理由 別紙決定書の写しのとおりである。要するに,本件発明は,本件出願前に頒布された刊行物である特開平3-281652号公報(以下,決定と同様に「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び特公昭51-19858号公報(以下,決定と同様に「刊行物2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法29条2項の規定に該当し,特許を受けることができない,とするものである。
決定が上記結論を導くに当たり,本件発明と引用発明1との一致点・相違点として認定したところは,次のとおりである。
一致点 「下記の成分(A),(B),(C)及び(D)からなる,ポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物。 (A)ポリアルキレンテレフタレート 100重量部 (B)繊維状の強化充填剤 30〜250重量部 (C)メラミン・シアヌル酸付加物 5〜50重量部 (D)リン系難燃剤 5〜50重量部」 相違点 「相違点1:本件発明の(D)成分のリン系難燃剤が式(I)で表されるものであるのに対し,刊行物1にはそれについての記載がなく,リン系難燃剤の好ましいものとしてトリフェニルホスフェートなど,幾つかのホスフェートやホスホネートが例示されている点。 相違点2:本件発明の組成物が「UL-94規格に定める手法に基づき,1/32インチ(0.794mm)の厚みでV-0レベルを達成する」のに対し,刊行物1記載の発明では,UL-94規格に定める手法に基づき,1/32インチ(0.794mm)の厚みでテストしたことは記載されているが,V-0が達成されたことは記載されていない点。」(以下,「相違点1」,「相違点2」という。)
原告ら主張の取消事由の要点
決定は,相違点1及び2についての判断をいずれも誤ったものであり(取消事由1及び2),これらの誤りがそれぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り) 決定は,相違点1について,次のとおり判断した。
「刊行物2には,ポリエチレンテレフタレートに・・・(化学式省略)を難燃剤として添加することが記載されており(ヘ.及びヲ.の記載),この化合物は,本件発明の式(I)においてR1〜R 9及びR' 1〜R' 9がすべて水素であり,R0がイソプロピリデンである場合に相当するものである。 したがって,刊行物2には(A)成分のポリエチレンテレフタレートに難燃剤として本件発明の(D)成分を添加することが記載されているといえる。
そして,このような同一分子中にリン原子を2個有し,しかも熱安定性に優れた芳香環を有するリン化合物が,ポリアルキレンテレフタレートに対する難燃剤として難燃性に優れると同時に耐熱性及び耐候性などの実用性能を満足させることが刊行物2に記載されており(チ.の記載),それが,難燃度の指標である最低酸素指数で25.5もの高い値を示し,火源を取り去ると直ちに消火したことも実施例に記載されている(ヲ.の記載)。他方,該刊行物2においては,従来品であるトリフェニルフォスフェートを使用したものは比較例として記載され,消極的評価がなされているのである(ル.の記載)。 このように,刊行物2には,従来品たるトリフェニルホスフェートに比し,同一分子中にリン原子を2個有し,しかも熱安定性に優れた芳香環を有するリン化合物・・・(化学式省略)がポリアルキレンテレフタレートの難燃剤としてより好ましい旨が記載されているのであるから,かかる知見に基づき,刊行物1記載の発明において,(D)成分としてのリン系難燃剤として,刊行物2に記載の,同一分子中にリン原子を2個有し,しかも熱安定性に優れた芳香環を有するリン系難燃剤である・・・(化学式省略)を使用しようとすることは,両刊行物に接した当業者が容易に想到し得ることであり,また,そうすることに十分な動機付けがあるというべきである。 したがって,相違点1は当業者が容易に想到し得ることである。」(決定書6頁末段〜8頁1段) しかし,決定のこの判断は誤りである。
(1) 引用発明1は,次に述べるとおり,引用発明2のリン系難燃剤を排除している。
刊行物1には,「(D)成分としてのリン系難燃剤としては,炭素数1〜12,好ましくは1〜8の直鎖又は分岐した脂肪族基,芳香族基,脂環式基を有するアルコール又はフェノールのホスフェート化合物,ホスホネート化合物であり,好ましくは,トリフェニルホスフェート・・・である」(甲4号証3頁右上欄下から3行〜左下欄6行。下線付加)と記載されている。前半の記載は「であり」と断定されていることから,刊行物1におけるリン系難燃剤の定義であり,引用発明1におけるリン系難燃剤は,この定義のものに限定されている。他方,引用発明2のリン系難燃剤はビスフェノールA部分の炭素数が15であるから,上記定義の「炭素数1〜12」を満たすことはなく,刊行物1の上記定義において排除されているリン系難燃剤である。また,引用発明2のリン系難燃剤は,リン原子(P)が2個のものであるのに対し,刊行物1では,好ましい例(V-2を達成する)としてはリン原子1個のものが限定的に挙げられており,リン原子1個のホスフェート,ホスホネートのみが想定されていると考えられ,両者はこの点でも相違する。
なお,刊行物1の出願時には,明細書中の用語を特定の意味で使用する場合,その意味を明細書中に定義して使用することが認められていた(特許庁編「工業所有権法令集48版」発明協会,平成4年6月30日発行,196,276〜278頁(甲15号証),特許法施行規則24条,様式29備考8)ものの,その定義にあたり,特定の意味のものを選択する理由,それに伴う作用効果あるいは定義外のものが排除される理由,定義外のものについての比較例を明細書に記載することまで要求されていた訳ではない。したがって,刊行物1中に,刊行物1に記載された特定のリン系化合物を選択する理由等の記載がないことをもって,当該部分の記載を単なる例示であるとすることはできない。
(2) 引用発明2は,強化系のポリエステル組成物を対象とした難燃化の技術ではない。
引用発明2は,繊維用のポリエステル組成物に関する技術である。プラスチック材料には,強度を向上させるために,繊維状の強化充填剤が配合されることがあるものの,繊維には,繊維状の強化充填剤は一般に配合されず,刊行物2にも繊維状の強化充填剤についての記載が全くない。このように,引用発明2は,非強化系のポリエステル組成物の難燃化を専ら意図するものであり,引用発明1のような強化系のポリエステル組成物の難燃化を示唆するものではなく,むしろ強化系のポリエステル組成物をその対象から排除するものであるから,引用発明1に引用発明2を適用することは困難である。
すなわち,強化系ポリアルキレンテレフタレートにおいては,繊維状の強化充填材がロウソクの芯の役割を果たし,その周りを液状化したポリアルキレンテレフタレートが覆って,より揮発性の高い雰囲気を作り上げているため,燃えやすく,難燃化しにくくなっている(「高分子材料の難燃化技術」技術情報協会,1993年5月12日発行,348〜351頁(甲9号証),甲10号証の実験成績証明書(以下「甲10証明書」という。),西沢仁監修「難燃材料活用便覧」テクノネット,2002年5月25日発行,177〜178頁(甲11号証))ことに照らせば,非強化系ポリアルキレンテレフタレートに使用される刊行物2記載の特定のリン系難燃剤(以下「BPA-BPP」という。)が,直ちに強化系ポリアルキレンテレフタレートに有効であるということもできない。
このように,強化系ポリアルキレンテレフタレートの難燃化は,非強化系のものよりも困難であり,本件発明はこの困難な課題を解決したものである。
(3) 引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けが全く存在しない。
刊行物2には,BPA-BPPが記載されており,これが,従来の非ハロゲン系難燃剤よりも,耐熱性や耐候性に優れることは示されているものの,難燃性能に優れていることは示されていない。むしろ,引用発明2(刊行物2の実施例2)に示されているBPA-BPPの最低酸素指数(限界酸素指数と同義;特許庁ホームページ技術分野別特許マップ「機能性繊維加工」表4.3-1(以下「甲13文献」という。)は25.5に止まり,この値は,本件明細書で従来技術として引用している特公昭60-33850号公報(以下「甲12公報」という。)の実施例に示される限界酸素指数と同等の値であることからすれば,従来の非ハロゲン系難燃剤の難燃性能を示すものでしかない。防炎基準の繊維製品の安全性の目安となるのは,限界酸素指数26以上であり(日本繊維製品消費科学会編「新版繊維製品消費科学ハンドブック」光生館,1988年10月10日発行,106頁(甲17号証)),「難燃性がある繊維」あるいは「難燃性繊維」と称されるのも限界酸素指数26以上からである(上野和義他共著「繊維のおはなし」日本規格協会,1998年6月29日発行,175〜177頁(甲18号証),日本化学会編「第6版 化学便覧 応用化学編II」丸善,平成15年1月30日発行,1070〜1071頁(甲19号証))。
また,刊行物2には,刊行物1の実施例で使用されているトリフェニルホスフェート(以下「TPP」という。)を配合した例が比較例として挙げられ,BPA-BPPを配合した実施例と比較されており,前者では,耐光試験で黄変が認められ,繊維の融着があったことが記載されているものの,難燃性能に差異があることは記載されていない。刊行物2には,TPPについても「比較的燃え難かった」との評価が記載されているのであり,数値的な裏付けもないまま,BPA-BPPが難燃性能の点でTPPよりも優れているとすることはできない。
引用発明1(刊行物1の実施例)では,TPPを使用した強化系ポリアルキレンテレフタレートの難燃性レベルとして1/32インチV-2が記載されているにすぎないから,非ハロゲン系難燃剤では到達し得ないとされていた1/32インチV-0という最高度の難燃性レベルを達成しようというときに,当業者であれば,TPPに代えて,TPPやその他の非ハロゲン系難燃剤よりも難燃性能の点で優れているとはいえないBPA-BPPを使用しようとはしない。
加えて,刊行物2において,BPA-BPPは単独で使用されており,本件発明の「(C)メラミン・シアヌル酸付加物」と組み合わせることは記載も示唆もされていない。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り) 決定は,相違点2について,次のとおり判断した。
「本件発明において「UL-94規格に定める手法に基づき,1/32インチ(0.794mm)の厚みでV-0レベルを達成する」ために(A)〜(D)成分(本件特許請求の範囲)を所定量配合した以外には特に何らかの工夫がなされた形跡は本件明細書には見出せない。 そして,かかる構成を採用することは,刊行物1及び刊行物2に接した当業者が容易に想到し得ることであることは上記したとおりであるから,結局この相違点(2)についても,上記構成を採用することにより得られる難燃化処理の結果を記載したにすぎないものといわざるを得ず,これを格別のものということはできない。」(決定書8頁2段) しかし,決定のこの判断は誤りである。
(1) 刊行物1に開示されているTPPを使用した強化系ポリアルキレンテレフタレートの難燃性レベルは,1/32インチV-2にすぎず,また,刊行物2におけるBPA-BPPを配合した実施例については,具体的なUL-94規格の難燃性レベルすら開示されておらず,従来よりも難燃性に優れるということもできない。1/32インチV-0は,最高度の難燃性レベルであり,1/32インチV-2とは大きな隔たりがある(日本電子機械工業会編「燃焼試験読本 電気製品安全試験における主な燃焼試験の調査(第二版)」1994年7月,146〜151頁(甲6号証),「Revision pages for Standard for Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」Underwriters Laboratories Inc., 1992年8月19日,13〜17頁(甲29号証))。電気・電子製品や部品の用途,使用対象によって,V-2でも許容されるものもあるが,V-0でなければならないものもあるのである(東レリサーチセンター調査研究部門編「難燃化技術の現状と応用展開」東レリサーチセンター,1998年10月20日発行,28〜30頁(甲7号証),日本合成樹脂技術協会「情報処理機器の主要安全規格におけるプラスチックへの要求事項」1997年2月,50〜59頁(甲8号証))。
本件明細書の比較例3は,(C)メラミン・シアヌル酸付加物とTPPとを組み合わせた例で,刊行物1の実施例2に相当し,まさに従来技術として位置づけられるものであるが,フレーミング合計秒が47秒であり,有炎滴下物による綿着火が生じ,1/32インチV-2である。これに対し,本件発明の(C)メラミン・シアヌル酸付加物と(D)BPA-BPPとを組み合わせた実施例2及び4の難燃性は,それぞれフレーミング合計秒が20秒と17秒と,比較例3の半分以下に短縮されており,かつ,有炎滴下物による綿着火がなく,1/32インチV-0である。
本件出願時には,強化系ポリアルキレンテレフタレートにおけるV-0の難燃性レベルは,ハロゲン系難燃剤のみで達成可能であり,非ハロゲン系難燃剤は到底及ばないとされており,非ハロゲン系難燃剤である,本件発明の請求項1記載の(C)メラミン・シアヌル酸付加物と(D)リン系難燃剤とを組み合わせても,到底1/32インチV-0が得られるとは考えられていなかった。本件発明は,本件出願時の技術水準から予測することができないものである。
(2) 甲10証明書の実験例3及び7は,(D)BPA-BPP及び(C)メラミン・シアヌル酸付加物をそれぞれ単独で配合した例であるが,いずれも有炎滴下物による綿着火が生じ,1/32インチV-2であるのに対し,本件発明の実施例1では,(C)メラミン・シアヌル酸付加物と(D)BPA-BPPとを組み合わせることにより,同量で,綿着火がなく,1/32インチV-0が達成されている。これは,(C)メラミン・シアヌル酸付加物と(D)BPA-BPPとを組み合わせることによる相乗効果が発揮されていることの証左であり,このような相乗効果が予測可能であるとする根拠は存在しない。
(3) 被告は,当業者であれば,融着性の改善された刊行物2記載のリン系難燃剤を用いることによって,溶融滴下物を生じず,結果としてV-0レベルが達成されることは容易に予測できたことである,と主張する。しかし,刊行物2記載の比較例2の「融着がひどかった」との評価はどのような試験による結果か,具体的に記載されておらず,刊行物2には「融着性」と燃焼や燃焼時の有炎滴下物の着火性との関係は何ら示されていない。そもそも融着とは,融けて着くことを意味し,刊行物2においては,繊維の表面が融けて,複数の繊維同士がくっつくことを指すことからすれば,繊維同士の融着は,UL-94規格の難燃性評価の基準の一つである有炎滴下物の発生とは何ら関係がない。
被告の反論の骨子
決定の認定判断はいずれも正当であって,決定を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について (1) 原告らが指摘する,刊行物1の3頁右上欄下から3行ないし左下欄6行の記載は,(D)成分として用いられる有機リン系化合物を単に例示するものと解釈するのが自然であり,それ以外の化合物を排除するものではない。
なぜなら,刊行物1にはこの部分に記載された有機リン系化合物以外の化合物を排除する旨の記載はないし,仮に,この部分の記載が(D)成分の定義であるならば,有機リン系化合物のうち特定のものに限定する定義である以上,その特定のものを選択する理由,それに伴う作用効果あるいは定義外の有機リン系化合物が排除される理由,定義外の有機リン系化合物に係る比較例等の記載が当然伴うはずであるのに,刊行物1にはそのような記載は全くないからである。また,刊行物1には,「ポリアルキレンテレフタレート樹脂に,メラミン・シアヌル酸付加物とリン系難燃剤を配合することにより,ハロゲン系難燃剤を使用せずに,相乗効果によりすぐれた難燃性を付与することが可能となり,本発明に到達した。」(甲4号証2頁左上欄13〜17行)及び,「本発明の組成と配合量からなる組成物は,メラミン・シアヌル酸付加物又はリン系難燃剤をそれぞれ単独で用いた組成物と比べて優れた難燃性を示す。」(同4頁左下欄2〜5行)と記載されていることからすれば,引用発明1の(D)成分はリン系難燃剤としてリン化合物一般,少なくとも有機リン系化合物一般が認識されていると解すべきである。
(2) 引用発明2は,有機リン系化合物による難燃剤の改良という点において,引用発明1と技術的観点が共通するものであり,非強化系の難燃化と強化系の難燃化とが互いに排除し合う関係にあるというような知見も何ら示されていない。
したがって,刊行物2において繊維用途が記載されているとしても,非強化系の難燃化のみを専ら意図するとまでいうことはできず,技術的観点の共通する引用発明1と引用発明2とが,互いに排除し合う関係にあるということはない。
(3) 刊行物2の実施例2における最低酸素指数と,甲12公報の実施例に示される限界酸素指数(LOI)とが同等の値であるとしても,両者は使用した樹脂,難燃剤及びその配合量において異なるから,難燃剤を構成する化合物の難燃性能について直接比較することはできない。また,甲13文献の表4.3-1のうち「LOI値」の説明欄の記載から,最低酸素指数が21を超える場合には,所定の難燃性を有することが確認できるから,刊行物2の実施例2における最低酸素指数「25.5」が難燃性能に優れていない,ということはない。
刊行物2の比較例2には,リン系難燃剤としてTPP(刊行物1の実施例におけるトリフェニルリン酸に相当する。)を用いた場合に「比較的燃え難かった」と記載されているが,これは,直前の比較例1の後半において,有機リン系化合物の基本構造としては実施例相当のものを過大量用いた場合に「高度の難燃性を示した」と記載されるのとは区別されており,難燃性の点で実施例に劣位する評価を受けていることが明らかである。よって,数値的な記載がなくとも,刊行物2には難燃性に関して比較例と実施例との間に有意な差異が示されているのであって,引用発明2のリン系難燃剤(具体的には刊行物2の実施例2の有機リン系化合物)を,引用発明1のトリフェニルリン酸に代えて使用する動機付けは十分に存在する。
引用発明1において,(D)成分として引用発明2のリン系難燃剤を用いることにより(C)成分との組合せが達成されることは明らかであり,刊行物2に(C)成分との組合せが記載されていないことは,引用発明1と引用発明2とを組み合わせる動機付けを左右するものではない。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について (1) 本件発明が1/32インチ(0.794mm)の試料においてV-0レベルの難燃性を有するのは,本件明細書の記載によれば,特定の(A),(B),(C)ないし(D)各成分を所定量配合することによるものであり,このような配合が,引用発明1及び引用発明2に接した当業者において容易に想到できるものであることは上記のとおりである。してみると,本件発明における難燃性の効果は,前記配合条件を満たすことにより当然奏せられる効果を確認したものにすぎず,当業者が十分予測できる範囲内のものである。
(2) 刊行物2には,特定の有機リン系化合物が,優れた難燃性及び耐熱性を有する旨を示す一方,トリフェニルフォスヘートを用いた比較例2では融着がひどかった旨が記載されている。したがって,引用発明2は,難燃性と同時に融着性の問題も改善するものである。引用発明2において融着性が改善されるということは,当然,溶融が起こらないのであるから,溶融滴下物も存在しないことを意味する。
一方,V-0レベルの要求事項(4)(有炎滴下物により脱脂綿が着火しないこと,甲6号証)は,試料からの有炎滴下物が存在しないか,又は滴下しても着火しないかのいずれかを指すものと解されるから,当業者であれば,融着性の改善された刊行物2記載のリン系難燃剤を用いることによって,溶融滴下物を生じず,結果としてV-0レベルが達成されることは容易に予測できたことである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について (1) 原告らは,引用発明1におけるリン系難燃剤は,刊行物1の3頁右上欄下から3行ないし左下欄6行に記載された定義のものに限定されているのに対し,引用発明2のリン系難燃剤は,上記定義を満たしておらず,刊行物1において排除されているリン系難燃剤である,と主張する。
刊行物1には,次の事項が記載されている(甲4号証)。
a.「下記成分を配合したことを特徴とするポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物 (A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂100重量部に対し, (B)充填材30〜250重量部, (C)メラミン・シアヌル酸付加物5〜50重量部,及び (D)リン系難燃剤5〜50重量部」(特許請求の範囲) b.「ポリアルキレンテレフタレート樹脂に,メラミン・シアヌル酸付加物とリン系難燃剤を配合することにより,ハロゲン系難燃剤を使用せずに,相乗効果によりすぐれた難燃性を付与することが可能となり,本発明に到達した。」(2頁左上欄13〜17行) c.「(D)成分としてのリン系難燃剤としては,炭素数1〜12,好ましくは1〜8の直鎖又は分岐した脂肪族基,芳香族基,脂環式基を有するアルコール又はフェノールのホスフェート化合物,ホスホネート化合物であり,好ましくは,トリフェニルホスフェート,トリクレジルホスフェート,クレジルジフェニルホスフェート,オクチルジフェニルホスフェート,ジアルキルヒドロキシメチルホスホネートである。」(3頁右上欄18行〜左下欄6行) d.(C)成分としてMCA(メラミン・シアヌル酸付加物),(D)成分としてTPP(トリフェニルリン酸)を使用した試料(実施例),及び,上記(C)成分,(D)成分のいずれかを使用した試料(比較例)についての難燃性UL-94の結果が,前者は1/32インチV-2であり,後者はHBであること(4頁表)。
e.「上記試験結果から明らかなように,本発明の組成と配合量からなる組成物は,メラミン・シアヌル酸付加物又はリン系難燃剤をそれぞれ単独で用いた組成物と比べて優れた難燃性を示す。」(4頁左下欄2〜5行) 上記a.の記載から,刊行物1の特許請求の範囲には,(D)成分として,特段の限定の付されていない「リン系難燃剤」が記載されていることが認められ,上記b.の記載から,引用発明1は,(A)成分に,(C)成分と(D)成分を配合することにより,ハロゲン系難燃剤を使用せずに,(C)成分と(D)成分の相乗効果により優れた難燃性を付与できることを見出したものであることが認められ,上記d.及びe.の記載から,(C)成分としてのMCA(メラミン・シアヌル酸付加物)及び(D)成分としてのTPP(トリフェニルホスフェート)を使用した試料(実施例)と,上記(C)成分,(D)成分のいずれかを単独で使用した試料(比較例)との試験結果の対比によって,引用発明1の効果,すなわち,(C)成分と,特段の限定の付されていない「リン系難燃剤」である(D)成分とを併用したことにより生じる優れた難燃性の効果を記載したものと理解することができる。
このような刊行物1の記載からすれば,上記c.の記載は,引用発明1において(D)成分として使用される具体的な化合物を例示したものであると解するのが相当であり,上記c.の記載中に「であり」という表現が用いられているというだけで,(D)成分を定義したものであると解することはできないし,刊行物1が,(D)成分として,具体的に記載された化合物を使用した場合のみを所期の効果が得られるものと位置づけ,それ以外の化合物を排除するという趣旨で記載されていると理解すべき理由も見当たらない。
したがって,刊行物1におけるリン系難燃剤が,上記c.に記載されたものに限定され,刊行物2におけるリン系難燃剤を排除するものであるとの原告らの主張は,採用することができない。
(2) 原告らは,引用発明2は繊維用のポリエステル組成物に関する技術であり,一般に繊維には繊維状の強化充填剤は配合されないことからすれば,引用発明2は,引用発明1のような強化系のポリエステル組成物の難燃化を示唆するものではなく,むしろ強化系のポリエステル組成物をその対象から排除するものである,と主張する。
刊行物2には,次の事項が記載されている(甲5号証)。
a.「ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルに,一般式 (R1O) 2POR3OP(OR2)2 ‖ ‖ X X (式中,R1,R2は同一又は異なる1価の芳香族基,R3は2価の芳香族基,Xは酸素又は硫黄を示す)で表わされる化合物をリン含量で0.2〜3.5wt%となるように配合してなるポリエステル組成物。」(特許請求の範囲) b.「本発明は優れた難燃性の付与されたポリエステル組成物に関する。従来ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルは繊維又はフイルム成型材料として有用な性質を有しており工業的に広く使用されている。しかるにポリエステルは本質的に可燃性のポリマーであり,かかる欠点のため,その用途が制限されている。したがつて,ポリエステルが本来有する優れた物理的,化学的性質を損うことなくポリエステルに難燃性を付与することが出来れば,産業資材,インテリヤ及び衣料等の用途に広く用いられるだけでなく防災的見地からも,まことに望ましいところである。」(2欄2〜16行) c.「近年繊維製品の難燃化について種々検討が進められており,ポリエステルについても織物或いは編物などの段階で難燃性を付与する所謂後加工によるもの一部実用化されている。しかしながら,この方法では一般に処理が煩雑であること,洗濯等の処理に対し耐久性の乏しいこと,十分な難燃性を得るために難燃化剤を多量に使用すると風合を著しく損うこと,またさらには難燃化剤が使用中人体に好ましくない影響を与えるおそれがあるなど種々の欠点を有している。したがつて,このような後加工による難燃化の有する欠点を改善するためにはポリマー或いは原糸形成までの任意の段階で難燃性を付与することが好ましい。」(2欄17〜30行) d.種々のリン化合物を配合した難燃性ポリエステル組成物を紡糸,延伸したものについての実施例及び比較例(9欄12行〜14欄末行) 上記a.より,刊行物2の特許請求の範囲には,特定の構造のリン化合物を配合してなる,用途限定の付されていないポリエステル組成物の発明が記載されていると認められる。そして,上記b.より,刊行物2は,繊維のみならずフィルム成型材料,産業資材,インテリヤの用途に用いることをも念頭においた,難燃性ポリエステル組成物について記載したものであると認められるから,上記c.及びd.の記載における難燃性繊維は,難燃性ポリエステル組成物の具体的な用途の一つとして記載されたにすぎないと解するのが相当である。
繊維には繊維系の強化剤を添加することが一般的には行われないとしても,プラスチック材料に繊維系の強化剤を添加することがあることは原告らも認めるところであるから,刊行物2が,繊維のみならず,フィルム成型材料等,繊維系強化剤が添加される用途をも念頭においた技術を開示している以上,引用発明2は繊維用のポリエステル組成物に関する技術であって強化系の難燃化を排除するものであるという原告らの主張は,採用することができない。
(3) 上記(1)で検討したように,引用発明1は,(C)メラミン・シアヌル酸付加物及び(D)リン系難燃剤を配合したポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物に関するものであり,上記(2)で検討したように,引用発明2は,特定の構造のリン化合物を配合した難燃性ポリエステル組成物に関するものである。引用発明1におけるポリアルキレンテレフタレートは,ポリエステルの一種であり,引用発明2の特定の構造のリン化合物は,難燃性を付与するものである以上,リン系難燃剤にほかならないから,引用発明1と引用発明2とは,リン系難燃剤を配合したポリエステル組成物であるという点で,共通の技術であるということができる。
このような技術の共通性に鑑みれば,引用発明1のポリアルキレンテレフタレート系難燃性樹脂組成物における(D)リン系難燃剤として,引用発明2の特定の構造のリン化合物,例えば,刊行物2の実施例2に記載されたOOCCH3CH3OPOOP (BPA-BPP)を適用することは,当業者が容易に想到することである。
原告らは,刊行物2には,その実施例2で使用されている特定のリン系難燃剤(BPA-BPP)が,従来の非ハロゲン系難燃剤よりも難燃性能に優れていることについて記載されていないなどとして,引用発明1と引用発明2とを組み合わせる動機付けが全く存在しない,と主張する。
しかしながら,上記のとおり,引用発明1と引用発明2とは,リン系難燃剤を配合したポリエステル組成物であるという点で,共通の技術であるということができ,この点が両引用発明を組み合わせる動機付けとなるというべきである。引用発明2のリン系難燃剤が従来のものよりも難燃性において優れていることが知られていなければ,引用発明1のリン系難燃剤として引用発明2のリン系難燃剤を適用することができないということにはならないから,原告らの主張はそもそも理由がない。また,次の取消事由2(1)で述べるように,刊行物2には,BPA-BPPが従来の非ハロゲン系難燃剤よりも難燃性の点で優れていることが示されていると理解することができるのであるから,原告らの主張はこの点からも理由がない。
(4) 以上に検討したところによれば,「相違点1は当業者が容易に想到し得ることである」とした決定の前記判断に,誤りはない。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について (1) 原告らは,本件発明の請求項1記載の(C)メラミン・シアヌル酸付加物と(D)リン系難燃剤とを組み合わせても,1/32インチV-0という最高度の難燃性レベルが得られることは,本件出願時の技術水準から予測することができないものであった,と主張する。
本件明細書(甲2号証,3号証の2)の実施例2の成分組成と比較例3の成分組成とは,前者では(D)リン系難燃剤としてBPA-BPPを用いているのに対し,後者では(D)リン系難燃剤としてTPPを用いている点で異なるだけである。しかし,そのUL-94試験結果を対比すると,実施例2では,1/32インチV-0が達成されているのに対し,比較例3では,1/32インチV-2であることが記載されている。また,本件明細書の実施例1,2,3,5の各成分組成と刊行物1(甲4号証)記載の実施例1,2,3,4(なお,刊行物1の実施例2は本件明細書の比較例3と同じ)の各成分組成とは,それぞれ,前者では(D)リン系難燃剤としてBPA-BPPを用いているのに対し,後者では(D)リン系難燃剤としてTPPを用いている点で異なるだけである。しかし,そのUL-94試験結果を対比すると,本件明細書の実施例1,2,3,5においては1/32インチV-0が達成されているのに対し,刊行物1の実施例1,2,3,4においては1/32インチV-2であることが認められる。これらのことから,本件発明は,(C)メラミン・シアヌル酸付加物に組み合わせる(D)リン系難燃剤として特定のリン系難燃剤を使用したことにより,1/32インチV-0が達成されたものであると理解することができる。
また,甲29号証(訳文3頁)によれば,UL-94におけるV-0とV-2は,それぞれ,以下の条件を満たす難燃性レベルを意味するものであると認められる。
───────────────────────────────────── 基準の条件 94V-0 94V-1 94V-2 各試料の残炎時間t1又はt 2 ≦10秒 ≦30秒 ≦30秒 すべての処理による各組の残炎時間の合計 (5枚の試料のt1+t 2) ≦50秒 ≦250秒 ≦250秒 第2回接炎後の各試料の残炎時間と残燼時間(t2+t 3) ≦30秒 ≦60秒 ≦60秒 各試料の保持クランプまでの残炎又は残燼 なし なし なし 発炎物質又は滴下物による指示用の綿の着火 なし なし あり ───────────────────────────────────── ところで,刊行物2の実施例2には,「この化合物(判決注・BPA-BPP)20部(リン含量1.8wt%)と乾燥ポリエチレンテレフタレート80部とを混合し,常法により紡糸,延伸した。得られた繊維を紐状にしてマッチで点火したところ着火しても火源を取去ると直ちに消火した。」(甲5号証11欄37〜41行)と記載され,比較例2には,「実施例1のリン化合物の代りにトリフエニルフオスヘート(判決注・TPP)を20部(リン含量1.9wt%)使用したところ,得られた繊維は,比較的燃え難かつた」(同11欄9〜12行)と記載されている。なお,比較例2で引用されている実施例1は,別のリン化合物15部をポリエチレンテレフタレート80部と混合し,常法により紡糸,延伸して得られた繊維を紐状にしてマッチで点火したところ,着火しても火源を取去ると直ちに消火したというものである(同9欄27〜35行)。
このように,ポリエチレンテレフタレートに配合した場合の難燃性について,TPP(トリフェニルフォスヘート)は「比較的燃え難かった」という性質を示すのに対し,BPA-BPPは「着火しても火源を取去ると直ちに消火した」という性質を示すことが記載されているのであるから,BPA-BPPはTPPに比べ,火のついている時間が短く,難燃性の点で優れているという傾向のあることが理解できる。なお,原告らの主張するように,強化系ポリアルキレンテレフタレートの難燃化が非強化系のものに比べて困難であるとしても,ポリエステル組成物における難燃剤として,BPA-BPPがTPPに比べ,火のついている時間が短く難燃性の点で優れるという傾向が,強化系であるか否かによって異なると認めるに足る証拠はない。
また,刊行物1記載の実施例においては,得られた組成物について,UL-94に基づく1/32インチでの難燃性レベルが確認されているのであるから,刊行物1に記載されたリン系難燃剤として,刊行物2の実施例2に記載されたBPA-BPPを適用するに際して,同様にUL-94に基づく1/32インチでの難燃性レベルを確認することは,当業者が当然に行うことである。
そうすると,引用発明1のTPPに代えて,「着火しても火源を取去ると直ちに消火した」という難燃性に優れた性質を示すBPA-BPPを使用すれば,TPPを使用した場合に比べて,残炎時間が短く,発炎滴下物も発生しないであろうこと,すなわち,UL-94における上記各条件が改善されることは優に予想できることであるから,引用発明1のリン系難燃剤として引用発明2(刊行物2の実施例2)のBPA-BPPを適用すると,UL-94に基づき1/32インチでV-0が達成されることは,当業者の予想を超えるものであるとまではいえない。
(2) 原告らは,甲10証明書における,(C)メラミン・シアヌル酸付加物及び(D)BPA-BPPをそれぞれ単独で使用した実験例と,これらを併用した本件明細書の実施例1とを対比し,(C)メラミン・シアヌル酸付加物及び(D)BPA-BPPを組み合わせることにより,予想し得ない相乗効果が得られている,と主張する。
しかしながら,本件発明に進歩性があるというためには,引用発明1と比較した本件発明の難燃性のレベルが,当業者の予想を超えるものであることが必要であるから,本件発明が,(C)メラミン・シアヌル酸付加物及び(D)BPA-BPPを単独で用いた場合に比べて優れた難燃性を発揮するからといって,本件発明の進歩性が肯定されることにはならない。原告らの上記主張は採用することができない。
(3) 以上検討したところによれば,相違点2についての決定の前記判断は,結論に至る理由に具体性を欠くところはあるものの,「上記構成を採用することにより得られる難燃化処理の結果を記載したにすぎないものといわざるを得ず,これを格別のものということはできない」との結論において誤りはない。
3 結論 以上によれば,原告らの主張する取消事由はいずれも理由がなく,その他,決定には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。
よって,原告らの本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂隆一
裁判官 若林辰繁