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事件 平成 21年 (行ウ) 559号 情報非開示処分取消等請求事件
東京都板橋区<以下略>
原告A 東京都千代田区<以下略>
被告国 処分行政庁特許庁長官
同指定代理人竹田真
同 増田勝義
同 市川勉
同 門奈伸幸
同 天道正和
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/02/04
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,平成19年(2007年)中に原告のした,正時制御乳房懸垂装置付婦人用ボディスーツを内容とする特許出願につき,(1)特許庁の所管する特許出願の登録される電子データベース上において当該の特許出願の存在することの確認の証明を,出願人である原告に対して発行せよ。
(2)当該の特許出願の正本の謄写を,出願人である原告に対して発行せよ。被告がこれをもって(1)の代替とすることができると証する場合には,(1)の確認の証明の発行は不要としても良い。
2(3)(1)又は(2)又はその両方の原告に対する発行時点における,当該の特許出願の登録に関する記録及び関する更新記録の全覧又はその写しを,更新の有無にかかわらず,出願人である原告に対して発行せよ。
(4)当該の特許出願が本訴訟に基づいて行われる調査の時点で特許庁の所管する特許出願の登録される電子データベース上において存在しない場合,当該の特許出願の登録に関する記録及び関する更新記録の全覧又はその写しを,出願人である原告に対して発行せよ。
(5)その他,被告は出願人である原告が当該の特許出願の通常的な審査手続への復帰に必要とする手続をせよ。
第2事案の概要等1事案の概要本件は,原告が,平成19年に特許庁に対し特許出願を行ったものの,原告において,その出願書類の控え等を紛失し出願番号が不明であるため同特許出願が存在することを確認する証明等の発行を受けられないとして,被告に対し,その証明等の発行を求めるとともに,同特許出願について「通常的な審査手続への復帰に必要とする手続」をすることを求めた事案である。
2法令の定め(1)特許法186条1項は,何人も,特許庁長官に対し,特許に関し,証明,書類の謄本若しくは抄本の交付等の請求をすることができる旨規定している。
(2)工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)12条2項は,何人も,特許庁長官に対し,特例法2条1項の特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されている事項を記載した書類の交付の請求をすることができると規定している。
第3当事者の主張1原告の主張(1)原告は,平成19年9月20日又は同月21日ころに,特許庁に対して,3正時制御による乳房懸垂装置付きの婦人用ボディスーツを内容とする特許出願(以下「本件特許出願」という。)を行った。その後,原告は,本件特許出願につき,同年末から平成20年初頭にかけて,特許庁において,出願後の形式審査を経た正本が電子化されて特許庁所管の特許出願データベースに登録される手続が完了したことを確認しようとしたところ,出願書類の控え,出願料納付に係る特許印紙購入の領収書,出願の電子化手続料払込みの連絡証票兼領収書等,関連書類一式を紛失していることに気がついた。
原告は,特許庁に対して,平成20年4月期と8月期の2度にわたり,データベース上の正本を閲覧して本件特許出願が記録されていることを確認して通常の審査手続に入るよう依頼したが,これらは受け入れられなかった。
特許出願は,本審査に入らないまま出願から3年を経過するとみなし取下げになり出願人の権利が失われるので,原告は,正本の存在及びその内容に誤りのないことを確認し,出願人の地位と権利を回復するため,本訴を提起した。
(2)被告は,請求の趣旨(1)ないし(4)に関し,原告において書類の交付請求を行っていないため,訴えの要件を欠くと主張する。
しかしながら,書類の交付請求に際しては,少なくとも請求を行う出願人を識別するための識別番号と,請求対象となる出願の出願番号の両方が必要とされているところ,原告は,本件特許出願につき関係書類を紛失したために出願番号が不明となっている。原告は,特許庁の相談窓口で窮状を訴えたにもかかわらず,書類の交付請求を行うための手段について一切の教示を受けられなかったために,本訴提起に至ったものである。
したがって,原告の訴えの当該部分については,申請型の処分の義務付けの訴えというよりは,非申請型の処分の義務付けの訴えにむしろ近いと認識されるべきであるから,行政事件訴訟法3条6項2号が適用される旨の被告の主張は適切ではない。
4(3)被告は,請求の趣旨(5)に関し,原告からの本件特許出願がされていないこと,存在しない特許出願に対する処分等を行う権限は特許庁長官に存しないことを主張する。
しかしながら,以前に原告がキーボードに関する別件の特許出願を誤って重複して出願した際,特許庁は,先の出願について跡形もなく存在していないと回答するなどしており,全く合理性や遵法性が見られないことから,本件特許出願が存在しないとする被告の主張には信憑性がない。
2被告の主張(1)請求の趣旨(1)ないし(4)について請求の趣旨(1)ないし(4)の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号所定の申請型の処分の義務付けの訴えであり,「行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合」であることが必要である。原告は,本件訴えを提起するに当たり,本件各書類の交付請求をしていないのであるから,当該訴えは不適法である。
(2)請求の趣旨(5)について請求の趣旨(5)の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号所定の非申請型の処分の義務付けの訴えであり,行政庁が当該処分をする法令上の権限を有していることが所与の訴訟要件とされているものと解される。
原告は,平成19年9月20日又は同月21日に本件特許出願を行ったと主張する。しかしながら,特許庁の運用として,特許出願がされた場合,すべての特許出願がファイルに記録・保存されることになっているにもかかわらず,被告がファイルを検索しても,本件特許出願に係る記録を確認することはできない。また,原告は,本件特許出願に係る控えを一切持っていない。
これらのことからすれば,原告は本件特許出願をしていないものと思われる。
このように,原告が本件特許出願を行ったことを認めるに足りる証拠はなく,特許庁長官は,本件特許出願に関し,原告の求める「通常的な審査手続5への復帰に必要とする手続」をする法令上の権限を有していないから,当該訴えは不適法である。
第4当裁判所の判断1原告の請求は,原告がしたとする「正時制御乳房懸垂装置付婦人用ボディスーツ」を内容とする特許出願(本件特許出願)について,同出願が存在することの確認の証明の発行(請求の趣旨(1)),同出願に係る正本の謄写(謄本の趣旨と解される。)の発行(請求の趣旨(2)),同出願に係る登録に関する記録及び更新記録の閲覧又は謄本の発行(請求の趣旨(3)及び(4)),同出願に係る通常的な審査手続への復帰に必要な手続を行うこと(請求の趣旨(5))を求めるものと解される。
2請求の趣旨(1)ないし(4)に係る請求について(1)当該訴えが行政事件訴訟法の定めるいかなる類型の訴えに当たるかについて,原告の主張は必ずしも明確ではないが,「非申請型の処分の義務付けの訴えにむしろ近いと認識されるべきである」と主張していることから,同法3条6項1号に規定する訴えであるとの主張と解される。
しかしながら,原告が発行を求める各書類は,本件特許出願が存在するのであれば特許法186条1項,特例法12条2項に基づき交付請求を行うことができるものと解される。このように法令において原告の求める各書類の交付を求めるための申請権が認められている以上,この申請権を行使することで一定の処分を求める機会が与えられているのであるから,出願番号が不明であるとの事情を考慮しても,「損害を避けるため他に適当な方法がないとき」(行政事件訴訟法37条の2第1項)に該当すると認めることはできず,上記の訴えは不適法といわざるを得ない。
(2)また,上記の訴えを行政事件訴訟法3条6項2号に定める義務付けの訴えと解したとしても,原告が特許法又は特例法に基づく各書類の交付申請を行ったことの主張立証はないから,「行政庁に対し一定の処分又は裁決を求め6る旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合」(行政事件訴訟法3条6項2号)に該当せず,上記の訴えは不適法である。
(3)以上のとおり,請求の趣旨(1)ないし(4)に係る請求は,不適法である。
3請求の趣旨(5)に係る請求について原告は,被告に対し,本件特許出願に係る通常的な審査手続への復帰に必要な手続を行うことを求めているところ,かかる訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号に定める義務付けの訴えに該当するものと解される。
しかしながら,本件に表れた一切の事情を考慮しても,原告が本件特許出願を行ったことを認めることができず,原告が「処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法37条の2第3項)であると認めることはできないから,原告は,上記の訴えにつき原告適格を欠くものといわざるを得ない。
したがって,請求の趣旨(5)に係る請求は,不適法である。
4結論よって,本件訴えは,いずれも不適法であるから,これを却下することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門優
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