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関連審決 不服2007-19402
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10095審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10174審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10161審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10259審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10103審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 29条1項3号 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  発明を特定する事項 /  発明の詳細な説明 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10232号 審決取消請求事件
原告X
被告特許庁長官
同 指定代理 人大谷謙仁早野公惠 金澤俊郎 紀本孝 安達輝幸
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/02/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-19402号事件について平成21年6月22日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶査定不服審判請求について,特許庁が,本願発明の要旨を下記2のとおり認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)出願手続(乙1の1・2,乙6)及び拒絶査定発明の名称:「容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置。」出願番号:特願平9-370506号出願日:平成9年12月24日手続補正日:平成11年3月3日付け(甲2,乙2の1・2)拒絶理由通知:平成18年11月13日付け手続補正日:平成19年1月14日付け(乙3の1・2。以下,同日付けの手続補正を「本件補正」といい,本件出願に係る本件補正後の明細書(乙3の2)を「本願明細書」という。)拒絶査定:平成19年4月27日付け(甲5)(2)審判手続及び本件審決審判請求日:平成19年6月14日(乙5の1・2。不服2007-19402号)審決日:平成21年6月22日審決謄本送達日:平成21年7月12日2本願発明の要旨本件審決が判断の対象とした本願発明(本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明)の要旨は,次のとおりである。
「容積形流体モータは,ロータ枠の1方に吸入口を設け反対側に排出口を設け,ロータ枠の中に凸部を3片凹部を3個所設け,凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつロータを2個収容し,1方のロータの凸面と他方のロータの凹面は接っしながら各各逆回転で等角回転し,各各のロータに直結した回転軸をロータ側枠外へ出して各各同等のギヤを設けて噛み合わせ,以上の容積形流体モータの組み合わせは他の容積形流体モータの組み合わせに引用出来,圧縮機を容積式にし,複数個直列に組み合わせ,直列とは,前の圧縮機の排出口と後の圧縮機の吸入口を連結する事であり,圧縮機を順次空気を圧縮する見掛上の容積をしだいに少なくし,見掛上とは,空気の圧縮を考えずに見た目の事であり,各各の圧縮機に直結する回転軸を1軸に連結させ,気圧の高くなった空気をボイラー室に送り,前記ボイラー室に燃料も入れて燃焼させ,膨張した燃焼ガスを流体モータに送り,前記流体モータは,容積式とし,複数個直列に組み合わせ,直列とは,前の流体モータの排出口と後の流体モータの吸入口を連結する事であり,各各の流体モータに直結する回転軸を1軸に連結させ,そして前記各各の流体モータに係わる1軸と,前記各各の圧縮機に係わる1軸を連結させ,そして発電機にも連結させ,最後の流体モータを通過した燃焼ガスを蒸気発生室に送り,液体を気化させて気体をタービンに送り,タービンを回わし,そして発電機を連結させて発電し,各各の段階毎に燃焼ガスが,流体モータを通過する見掛上の燃焼ガスの容積をしだいに多くする事を特徴とし,容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置」3本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本願発明は,下記ア〜ウの引用例1〜3に記載された発明(以下,それぞれ「引用発明1」〜「引用発明3」といい,総称して「引用発明」という。)及び下記エ〜ケの周知例1〜6に記載されるような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
ア引用例1:特開平6-173715号公報(乙7)イ引用例2:特開昭62-26327号公報(乙8)ウ引用例3:特開平8-246812号公報(乙9)エ周知例1:特開昭59-203894号公報(乙10)オ周知例2:実願昭53-51575号(実開昭54-154413号)のマイクロフィルム(乙11)カ周知例3:米国特許3724427号明細書(頒布日:昭和48年(1973年)4月3日。7欄22〜34行。乙12の1・2)キ周知例4:特開昭50-102711号公報(乙13)ク周知例5:特表平6-505330号公報(乙14)ケ周知例6:仏国特許発明第2054758号明細書(頒布日:昭和46年(1971年)5月7日。乙15)(2)なお,本件審決が認定した引用発明並びに本願発明と引用発明1との一致点及び相違点(1〜3。以下,それぞれ「本件相違点1」〜「本件相違点3」という。)は,次のとおりである。
ア引用発明(ア)引用発明1コンプレッサ2を1段コンプレッサ2 及び2段コンプレッサ2 と2段直列に組1 2み合わせ,1段コンプレッサ2 の空気出口と2段コンプレッサ2 の空気流入口を 1 2連結し,コンプレッサ2を順次空気を圧縮する見掛け上の容積をしだいに少なくし,1段コンプレッサ2 及び2段コンプレッサ2 に直結する出力軸3を1軸に連結さ1 2せ,気圧の高くなった空気を燃焼器9に送り,前記燃焼器9に燃料も入れて燃焼させ,燃焼ガスをタービン1に送り,前記タービン1は,1段タービン1 と2段タ1ービン1 とを2段直列に組み合わせ,1段タービン1 の燃焼ガス出口と2段ター 2 1ビン2 の燃焼ガス入口とを連結し,1段タービン1 と2段タービン1 とに直結2 1 2する出力軸3を1軸に連結させ,そして,各々のタービンに係わる1軸と,各々のコンプレッサに係わる1軸とを連結させ,そして発電機Gにも連結させて発電し,各各の段階毎に燃焼ガスが,流体モータを通過する見掛け上の燃焼ガスの容積をしだいに大きくする,ガスタービン設備。
(イ)引用発明2容積型のスクリュー式の空気圧縮機2により気圧の高くなった空気を燃焼室3に送り,前記燃焼室3に燃料も入れて燃焼させ,膨脹した燃焼ガスを容積型のスクリュー式の膨脹機1に送り,膨脹機1に係わる軸12と空気圧縮機2に係わる軸11とを連結させ,そして発電機10にも連結させた,動力発生装置。
(ウ)引用発明3ガスタービン9を駆動し,発電機4cを回転させたガスを排熱回収ボイラ10に送り,水を気化させて過熱蒸気を蒸気タービン3bに送り,タービン3bを回わし,そして発電機4bを連結させて発電する,排熱回収ボイラ付ガスタービン発電設備。
イ一致点圧縮機を複数個直列に組み合わせ,直列とは,前の圧縮機の排出口と後の圧縮機の吸入口を連結する事であり,圧縮機を順次空気を圧縮する見掛上の容積をしだいに少なくし,見掛上とは,空気の圧縮を考えずに見た目の事であり,各各の圧縮機に直結する回転軸を1軸に連結させ,気圧の高くなった空気をボイラー室に送り,前記ボイラー室に燃料も入れて燃焼させ,膨張した燃焼ガスを流体モータに送り,前記流体モータを複数個直列に組み合わせ,直列とは,前の流体モータの排出口と後の流体モータの吸入口を連結する事であり,各各の流体モータに直結する回転軸を1軸に連結させ,そして前記各各の流体モータに係わる1軸と,前記各各の圧縮機に係わる1軸を連結させ,そして発電機にも連結させて発電し,各各の段階毎に燃焼ガスが,流体モータを通過する見掛上の燃焼ガスの容積をしだいに多くする,流体モータ式発電装置。
ウ相違点(ア)本件相違点1:本願発明は,「容積形流体モータ」を備えるものであり,かつ「容積形流体モータは,ロータ枠の1方に吸入口を設け反対側に排出口を設け,ロータ枠の中に凸部を3片凹部を3個所設け,凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつロータを2個収容し,1方のロータの凸面と他方のロータの凹面は接っしながら各各逆回転で等角回転し,各各のロータに直結した回転軸をロータ側枠外へ出して各各同等のギヤを設けて噛み合わせ」るもので,かつ「以降の容積形流体モータの組み合わせは他の容積形流体モータの組み合わせに引用出来」るものであるのに対し,引用発明1は,「ガスタービン」を備えるものであり,本願発明のような容積形流体モータであるかどうか明らかではない点。
(イ)本件相違点2:本願発明は,圧縮機が「容積式」のものであるのに対し,引用発明1の備える「コンプレッサ」は,容積式であるかどうか明らかではない点。
(ウ)本件相違点3:本願発明は,「最後の流体モータを通過した燃焼ガスを蒸気発生室に送り,液体を気化させて気体をタービンに送り,タービンを回わし,そして発電機を連結させて発電」するものであるのに対し,引用発明1において,「2段ガスタービン2 」を通過した「燃焼ガス」がその後どのような役割を果た2すものか明らかではない点。
4取消事由(1)引用発明を特許法29条1項3号に掲げられる発明としたことの誤り(取消事由1)□相違点を看過した誤り(取消事由2)(3)相違点についての判断の誤り(取消事由3)第3当事者の主張1取消事由1(引用発明を特許法29条1項3号に掲げられる発明としたことの誤り)について〔原告の主張〕本件審決は,引用発明に基づいて本願発明の進歩性を判断しているが,以下のとおり,引用発明を引用例とした本件審決の判断は誤りである。
(1)引用発明1について引用発明1はガスタービンであるところ,次のア及びイのとおり,ガスタービンと容積形流体モータとは異なるものであるから,引用発明1は,特許法29条1項3号に掲げられる発明たり得ない。
アガスタービンは,燃焼室が大きいと燃料に対しての爆発は燃焼室内に広がることになって,圧力の低い燃焼ガスがタービンに当たることになり,これに加え,タービンから逃げる燃焼ガスをも差し引くと,更に効率が悪い低圧のガスがタービンに当たることになるので,回転効率が悪くなり,それ故,燃料も限定される。
これに対し,本願発明の容積形流体モータは,気体が逃げないので,大きな燃焼室とすることができ,それ故,各種の燃料の使用が可能となる。
イ容積形流体モータでは,燃焼ガスに圧力をかけないと,燃焼ガスがロータを回転させて通ることができない。容積形流体モータは,ガスタービンと異なり,燃焼室を大きくすることができるので,燃焼室の中に水管を設けて同時に蒸気を発生させることもできる。
□引用発明2について引用発明2はスクリュー式圧縮機及び回転膨張機であるところ,次のア〜オのとおり,スクリュー式圧縮機及び回転膨張機と容積形流体モータとは大きな違いがあるから,引用発明2は,特許法29条1項3号に掲げる発明たり得ない。
ア引用発明2のようなスクリュー式の圧縮機と回転膨張機では,スクリュー式の圧縮機の出口をふさいでスクリューを回転させても,スクリューは回転し,また,スクリューを止めて高圧のガスを送ると,スクリューは止まったままでもガスは流れるというように,スクリューは流体圧の影響を受けず,かつ,スクリューは流体圧に影響を与えないものであって,効率が悪いものである。
これに対し,容積形流体モータは,出口をふさぐとどんなに回転力を与えてもモータは回転せず,また,ロータを止めた上で高圧のガスを送ると,ロータは回転しない。このように,容積形流体モータは,圧縮機とした場合は気体圧に大きな影響を与え,流体モータとした場合は流体圧が流体モータに大きな影響を与えるものであって,効率がよいものである。
イスクリュー式圧縮機及び回転膨張機と容積形流体モータとは,使用燃料及び隣接する装置の効率を良くすることができるかという点で異なる。
ウ容積形流体モータでは,燃焼室内は燃え続けているので着火タイミングの装置は不要であって,スクリュー式圧縮機及び回転膨張機とは異なる。
エタービンの燃焼室と異なり,容積形流体モータの燃焼室は大きくすることができるので,燃焼中に燃料を入れることができる。
オ引用発明2のスクリュー式の空気圧縮機は,どんな仕組みなのか図がないので分からない。
(3)引用発明3について引用発明3はガスタービン併設型ごみ焼却排熱発電システムであるところ,次のア及びイのとおり,ガスタービン併設型ごみ償却廃熱発電システムと容積形流体モータとは異なるので,引用発明3は,特許法29条1項3号に掲げられる発明たり得ない。
ア引用発明3は,ごみ焼却熱で蒸気を発生させて発電し,その隣にガスタービン発電を設けるものであって,使用する燃料がガスタービンとして液体燃料とされるのに対し,容積形流体モータは,固体燃料を含むすべての燃料を使用することができる。
また,ガスタービン併設型ごみ焼却排熱発電システムは,蒸気発生室に灰,石炭灰等のいろいろな物が入り込んで水管に付着して熱効率が落ちるので,これらの灰等を出す仕組みを設けなければならないという問題がある。
イおよそすべての物を燃やすと熱と膨張した燃焼ガスが発生するが,容積形流体モータは,この高圧の燃焼ガスを効率よく回転に換え,地球上で一番多く存在する燃料である石炭をコンバイドサイクル発電に利用することができるのであるから,ガスタービンとは蒸気発生室そのものが異なる。
〔被告の主張〕本件審決が引用発明と対比して本願発明の進歩性を判断したことには,以下のとおり,何ら誤りはない。
(1)引用発明1について本件審決による前記第2の3□ア(ア)の認定からして,引用発明1は,特許法29条1項3号に掲げる発明たり得るものである。
□引用発明2について本件審決による引用発明2の認定は,前記第2の3(2)ア(イ)のとおりであるところ,引用例2には,「容積型の空気圧縮機を使用するように改良した第3図の例について考えてみると,容積型の例えばスクリュー式の空気圧縮機2」(2頁左上欄4〜6行),「スクリュー式の空気圧縮機2を軸11によってスクリュー式又はタービン式の膨張機1と直結する」(2頁右上欄末行〜左下欄1行)との記載があるように,引用例2に記載された「スクリュー式の空気圧縮機2」及び「スクリュー式の膨張機1」は,それぞれ「容積型」の「スクリュー式の空気圧縮機2」及び「スクリュー式の膨張機1」であることが分かるものであって,引用発明2は,特許法29条1項3号に掲げる発明たり得るものである。
□引用発明3について本件審決による引用発明3の認定は,前記第2の3(2)ア(ウ)のとおりであって,引用発明3は,特許法29条1項3号に掲げる発明たり得るものである。
2取消事由2(相違点を看過した誤り)について〔原告の主張〕本願発明と引用発明1との間には,次の(1)〜(3)の相違点があるのに,本件審決は,これを看過して本願発明の進歩性を否定しているのであって,その判断は誤っている。
(1)タービンと流体モータとの異同引用発明1の多段タービンでタービンを次第に大きくした点と,本願発明の容積形流体モータを直列に複数個次第に大きくした点は,その大きくした物が相違する。
引用発明1のタービンは軸流形であって,本願発明の流体モータの容積形によるものとは形が違い,効率も異なるものである。
(2)ボイラー室等の異同引用発明1の「コンプレッサ2」,「1段コンプレッサー2 の空気出口」,1「2段コンプレッサ2 の空気流入口」,「燃焼器9」,「タービン1」,「1段 2タービン1 の燃焼ガス入口」は通路になっていて,くびれがないので,本願発明 1に備える「ボイラー室」,容積形流体モータの各々の吸入口と排出口とは違う。
(3)使用燃料の異同引用発明1のタービンは,流体燃料,主にガスでしか使用できないが,容積形流体モータは,おおむねすべての燃料が使用できるとの違いがある。
〔被告の主張〕本件審決には,以下のとおり,原告主張の相違点を看過した誤りはない。
(1)引用発明1の備える「タービン1」と本願発明の備える「流体モータ」は,流体機械としての名称を異にするが,両者共に燃焼ガスによって駆動され,燃焼ガスの持つエネルギーを機械構造の回転運動の動力に変換する機器である点で共通するものである。
(2)本件審決は,引用発明1の備える「タービン1」は,燃焼ガスの持つエネルギーを機械構造の回転運動の動力に変換するという機能において「流体モータ」に相当するとし,さらに,「1段タービン1 の燃焼ガス出口」及び「2段タービ1ンの燃焼ガス入口」は,燃焼ガスの出口及び入口である限りにおいて,それぞれ「前の流体モータの排出口」及び「後の流体モータの吸入口」に相当するとしたものであって,本件審決において示される上記相当関係においては特段の問題があるものではない。
(3)これに対して,原告は,「コンプレッサ2」,「1段コンプレッサ2 の空1気出口」,「2段コンプレッサ2 の空気流入口」,「燃焼器9」,「タービン 21」,「1段タービン1 の燃焼ガス出口」及び「2段タービンの燃焼ガス入口」 1は通路になっていて,くびれがないので本願発明に備える「ボイラー室」,容積形流体モータの各各の吸入口と排出口とは違うと主張する。しかしながら,本願発明は特許請求の範囲に記載された事項に基づいて特定されるものであるところ,本件の請求項1には「くびれ」なる事項は記載されておらず,この「くびれ」なる事項は,本願発明を特定する事項とはいえないから,本願発明に基づくものとはいえず,原告の主張は理由がない。
3取消事由3(相違点についての判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件相違点1について本件審決は,以下ア〜カのとおり,本件相違点1の判断において,周知例1〜6に記載された技術を周知技術として挙げるが,これらは,引用発明1に適用することができる周知技術ではない。
したがって,周知例1〜6に記載された技術は,いずれも周知技術たり得ない。
ア周知例1本件審決が容積型流体モータの記載があるとして例示する周知例1には,容積形気体モータとなり得る説明の記載がない。そして,周知例1に記載の技術は,ロータの凸部が長すぎて他のロータの凸部と当たらないか,また,容積形流体モータとしての役割を果たすことが分からないとの問題がある。
また,本願発明の容積形流体モータは接しながら逆回転するので双方のロータの接しているところからは気体が出ないのに対し,周知例1の気体モータにおいては,同期歯車28によって小間隔を保ちつつ噛合回転する一対のロータ10とロータ10を小間隔を隔てて包囲するケーシングからなり,該小間隔から流体が通るものであって,周知例1は,本願発明に係る技術を示すものとして不適当である。
イ周知例2周知例2には,「ケーシング内に,吸入ポートから吐出ポートに向けて流体を加圧しつつ移動させる一対の回転子を設け」るとある。回転子を回転させて流体を加圧させるのは圧縮機であるところ,容積形流体モータは,入口側の高圧な流体により容積形流体モータの一対のロータを回転させて流体を低圧な排出口側に出すものである。
ウ周知例3周知例3は,各々のロータが外部からどのような影響を受けることによって力学的にロータの回転に結びつくのか説明されていない。
エ周知例4周知例4に記載のものは,本願発明とは形が異なるものである。火力発電所で使うモータはベーンが重いので,高速回転をすることができず,他方,低速回転をすると,ベーンを遠心力で常に外枠に接することができるか不明である。また,本願発明は高温高圧の燃焼ガスを用いるのに対して,周知例4は,加熱膨張した気体を用いるものである。
オ周知例5周知例5には,容積型のギアモータにおいて,気圧がギアの各々の歯にどのような働きかけをしてギアを回転させたのか記載されていない。
カ周知例6周知例6では,ロータの角部が細くて長いので,各々のロータが接しながら逆回転するものであるかが分からず,容積型流体モータの役目を果たしているのか分からない。
(2)本件相違点2について本件審決は,本件相違点2の判断において,周知例3〜6に記載された技術を周知技術として挙げるが,本願発明は,圧縮機として特許請求をしているものではないから,これらの周知例に記載された技術は,引用発明1に適用することができる周知技術ではない。
したがって,周知例3〜6に記載された技術は,いずれも周知技術たり得ない。
□本件相違点3について本件審決は,本件相違点3の判断において,引用発明3を引用例としているが,ガスタービン発電機等の発電システムである引用発明3は,本願発明と相違するものであって,引用発明1に適用することができる発明ではない。
〔被告の主張〕(1)本件相違点1について本件相違点1の判断において,周知例1〜6を周知技術として挙げた本件審決の判断には,以下のとおり,誤りはない。
ア周知例1〜3に記載の技術周知例1には,「移動容積式気体用複軸流体機械」として,「ケーシング」の1方に「気体入口51」を設け,反対側に「気体出口52」を設け,「ケーシング」の中に凸部を3葉(片),凹部を3個所設け,凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつ「ロータ10」を2個収容し,1方のロータの凸面と他方のロータの凹面とを接しながら各々逆回転で等角回転し,各々のロータに直結した「軸10」をロータ側板外へ出して「同期歯車28」を設けて噛み合わせてなる「気体モータ」が記載されている。また,周知例2及び3には,いずれも,周知例1に記載された「移動容積式気体用複軸流体機械」と同様の容積形流体機械が記載されている。
したがって,本件審決が,圧縮機,膨張機,回転機又は気体モータ等に使用される容積形流体機械としての3葉ルーツ型流体機械を周知技術として説示した点に誤りはない。
イ周知例4に記載の技術等周知例4には,容積形機械である「ベーンモーター」を順次大容積となる「一次モーターM 」及び「二次モーターM 」として多段に一軸に連結した状態で使用す1 2る技術が記載されている。また,周知例3,5及び6にも,周知例1に記載された上記技術と同様のものが記載されている。
以上によると,容積形機械を流体モータとして使用し,順次大容積となるように前記流体モータを多段に一軸に連結した状態で使用することは本願出願前に周知の事項であって,これは,引用発明1の備える「タービン1」を構成する「1段タービン1 」と「2段タービン1 」とに,周知技術である3葉ルーツ型流体機械と称1 2されるような容積形流体機械を採用することが当業者にとって容易に想到可能であることを裏付けるものであるといえる。
(2)本件相違点2について本件相違点2の判断において,周知例4に記載された技術を周知技術として挙げた本件審決の判断に誤りはない。すなわち,周知例4は,容積形機械である「ベーンコンプレッサー」を順次小容積となる「一次コンプレッサーC 」及び「二次コ1ンプレッサーC 」として多段に一軸に連結した状態で使用する技術が記載されて2いる。また,周知例3,5及び6にも周知例4に記載された上記技術と同様のものが記載されているのであって,以上によると,容積形機械を圧縮機として使用し,順次小容積となるように上記圧縮機を多段に連結した状態で使用することは,本願出願前に周知の事項であって,これは,引用発明1の備える「コンプレッサ2」を構成する「1段コンプレッサ2 」と「2段コンプレッサ2 」を容積式のコンプレ1 2ッサで構成することが当業者にとり容易に想到可能であることを裏付けるものであるといえる。
(3)本件相違点3について本件審決が本件相違点3の判断において引用例とした引用発明3は,従前コンバインドサイクル発電といわれる発電装置であり,ガスタービンによって発電に使用した後の燃焼ガスを更に発電用のタービンに送り,タービンを回し発電するようにするものである。そして,本件審決では,刊行物1に記載された発明の備える「燃焼ガス」により「タービン1」を駆動し「発電機G」により発電するものにおいて,「タービン1」の駆動に使用された後の「燃焼ガス」の持つエネルギーの有効活用を図るために,刊行物3に記載された発明が採用され,「タービン1」の駆動に使用された後の「燃焼ガス」を排熱回収ボイラに送り,水を気化させて過熱蒸気を蒸気タービンに送り,該タービンを回わし,そして発電機を連結させて発電するようにすることが当業者にとって格別に困難なことであるとは認められないとされたものであって,引用発明3は,引用発明1に適用することができる発明である。
第4当裁判所の判断1取消事由1(引用発明を特許法29条1項3号に掲げられる発明としたことの誤り)について(1)本願発明についてまず,引用発明1〜3が引用例たり得るか否かを検討する前提として,本願発明について検討する。
本願発明は,前記第2の2のとおりのものであって,1軸で連結して組み合わせられた複数の容積式の圧縮機,ボイラー室,1軸で連結して組み合わせられた複数の容積式の流体モータ,発電機,蒸気発生室,最後の流体モータを通過した燃焼ガスが送られる蒸気発生室,タービン等からなり,上記圧縮機の連結した1軸と上記流体モータの連結した1軸が連結して発電機とも連結しているという容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置である。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明によると,本願発明は,従来技術である圧縮機,ボイラー,タービン,発電機等を備えた発電装置において,複数台直列に組み合わせられた圧縮機及び複数台直列に組合せられた流体モータをいずれも容積式とすることによって,空気が複数の圧縮機を順次通過する際の段階的な空気の圧縮過程及び燃焼ガスが複数の流体モータを通過する際の段階的な回転エネルギーを発生させながらの燃焼ガスの膨張過程において,羽根と羽根との間から空気又は燃焼ガスが逃げ出すことがないようにし,圧縮又は回転エネルギーの発生を効率よく行えるようにするもの(【0001】〜【0010】)で,また,最後の流体モータを通った発電に使用した後の燃焼ガスを蒸気発生室に送り,蒸気を発生させて高圧とし,これをタービンに送ってタービンを回転させ,これに発電機を連結させることによって,更に発電機を回転させて発電をさせることができ,必要によっては第2気化室をもうけて液体を気化させて高圧にし,これをタービンに送ってタービンを回転させて,これに発電機を連結させることによって発電をさせようとするもの(【0011】)である。
(2)引用発明1についてア引用例1の記載(ア)引用例1(乙7)には,一般的なガスタービン設備の例として,「1段タービン1と2段タービン1とからなるタービン1と,1段コンプレッサ2と1 2 12段コンプレッサ2とからなるコンプレッサ2とが同一軸心を通る出力軸3を介 2して連結される一方,コンプレッサ2の反タービン1側に突出する回転軸4はギヤトレーン5gを有する減速機5に連結されると共に,この減速機5の反コンプレッサ2側の軸はカップリングCを介して発電機Gに連結されている。また,1段コンプレッサ2の空気出口と2段コンプレッサ2の空気流入口との間には,大気中1 2へ空気を放出する抽気弁7vを有する空気通路7が介装される一方,2段コンプレッサ2の空気出口と燃焼器9との間には,大気中へ空気を放出する抽気弁8vが2設けられている。」(【0002】),「減速機5のギヤトレーン5gにクラッチ5cを介して連結されてなるものは,空気供給タンク14から始動用空気の供給を受けて駆動される始動用エアモータ6であり,また1段タービン1 の燃焼ガス出1口と2段タービン2 (判決注:「1 」の誤り。)の燃焼ガス入口との間に介装さ 2 2れてなるものは燃焼ガス通路10であり,さらに2段ガスタービン2 (判決注: 2「1 」の誤り。)の燃焼ガス出口には,タービンロータ(図示省略)を回転させ 2るという仕事をした後の燃焼排ガスを大気中に排出する排気ディフューザ11が設けられている。」(【0003】),「ガスタービンを始動する場合は,始動用エアモータ6を駆動して減速機5,コンプレッサ2,タービン1を同期駆動する一方,燃焼器9に燃料を供給して燃焼させ,燃焼によって生じる燃焼ガスを燃焼ガス供給通路を介してタービン1に供給してガスタービンを駆動する。そして,ガスタービンが所定の自立回転速度になると始動用エアモータ6への始動用空気の供給を停止し,減速機5と始動用エアモータ6の係合を解除すると共に,その後ガスタービンは燃焼ガスにより自立にて定格回転速度まで加速され,発電機Gは発電を開始する。」(【0004】)との記載がある。
1 また,引用例1の図3には,空気が,空気供給タンク14からコンプレッサ2へ,コンプレッサ2 から空気通路7を通ってコンプレッサ2 へ,コンプレッサ1 22 から燃焼器空気供給通路8を通って燃焼器9へ,燃焼器9からタービン1 へ, 2 1タービン1 から燃焼ガス通路10を通ってタービン1 へと順々に供給されること 1 2が図示されている。
(イ)以上の記載によると,引用発明1は,同一軸心を通る出力軸3を介して連結される2段の直列コンプレッサ2(「2 」と「2」)と2段の直列タービン1 2」1(「1 」と「1 」)とが存在し,このコンプレッサ2から突出する回転軸が減 1 2速機を介して発電機Gに連結されており,空気は,2段の直列コンプレッサ2において順次圧縮された上で,燃焼器9に送られ,燃焼され,その上で,2段の直列タービン1に順次送られてタービン1を回転させ,それによって発電がされるガスタービンと認めることができる。
イ本願発明と引用発明1との関係以上によると,本願発明と引用発明1においては,「圧縮機」が「コンプレッサ」,「ボイラー室」が「燃焼器」,「流体モータ」が「タービン」に相当するものであり,いずれも,多段式の連結した圧縮機(コンプレッサ),多段式の連結した流体モータ(タービン)及び発電機が回転軸を1軸にして連結されており,燃焼ガスが流体モータ(タービン)を通過する際に発生する回転エネルギーをもって,圧縮機(コンプレッサ)及び発電機を回転させようとする発電システムであって,技術分野を同一とするばかりでなく,その発電システムにおいても共通する点が少なくないものであって,引用発明1を本願発明に係る特許法29条1項3号に掲げる発明とすることに問題とすべきところはない。
なお,原告は,引用発明1が,本願発明とは異なり,容積型流体モータを備えるものでないことをもって,引用例たり得ないと主張するが,それは,相違点として認定した上で,当該相違点についての容易想到性について判断されるべきものであるところ,本件審決も,本件相違点1として,本願発明が「容積型流体モータ」を備えるのに対して,引用発明が容積型流体モータであるかどうか明らかでないとしているものであるから,原告の主張は理由がないといわざるを得ない。
(3)引用発明2についてア引用例2の記載(ア)引用例2(乙8)には,「本発明は,スクリュー式の空気圧縮機と直結する回転膨脹機に燃焼ガスを導入して膨脹仕事を遂行する動力発生装置に関する。」(1頁右下欄10〜12行),「スクリュー式の空気圧縮機と回転膨脹機とを直結し,前記空気圧縮機からの高圧空気を脈動減衰手段と減圧手段を介して燃焼室に,また燃料供給管からの燃料を燃焼室に,夫々導入して燃焼させるようにし,燃焼ガスを前記回転膨脹機において膨脹させて動力を発生させるようにしたことを特徴とする動力発生装置。」(1頁左下欄5〜11行)との記載があり,また,「スタート時の燃焼効率を良くするために,容積型の空気圧縮機を使用するように改良した第3図の例について考えてみると,容積型の例えばスクリュー式の空気圧縮機2から吐出された脈動空気は,吐出管6を経て燃焼室3に流入して燃料供給管9からの燃料と混合して燃焼するが,前記脈動に合せて点火栓19によりタイミングよく着火しなければならないため,構造が複雑となり,またコスト高になるという欠点が存在する。」(2頁左上欄3〜11行),「本発明の手段は次の点にある。すなわち,スクリュー式の空気圧縮機と回転膨張機とを直結すること。前記空気圧縮機と燃焼室との間に脈動減衰手段と減圧手段を設けて,高圧空気を前記手段に流通させるようになっていること。前記手段を経た圧縮空気と,燃料供給管からの燃料とを,燃焼室に導入して燃焼させるようになっていること。燃焼ガスを前記回転膨張機において膨張させるようになっていること。」(2頁左上欄18行〜右上欄8行),「第1図は本発明の第1の実施例である。スクリュー式の空気圧縮機2を軸11によってスクリュー式又はタービン式の膨脹機1と直結するとともに,前記膨脹機1を軸12によって発電機10に連結する。…空気圧縮機2から吐出された脈動ある圧縮空気は,吐出管6を経て一旦圧力タンク15に貯溜されて一定圧力となり,次いで噴射管13を流れ,減圧弁17を介して,一定圧で連続的に燃焼室3中へフラッシュされる。」(2頁右上欄19行〜左下欄10行)との記載がある。
また,図1及び3によると,圧縮機,膨張機及び発電機が連結した軸によって連結されることが図示されている。
(イ)以上の記載によると,引用発明2は,容積型のスクリュー式空気圧縮機により気圧が高くなった空気を燃焼室に送り,燃料も燃焼室に入れて燃焼させ,膨張した燃焼ガスを容積形のスクリュー式膨張機に送るものであって,圧縮機,膨張機及び発電機が1軸で連結された動力発生装置と認めることができる。
イ本願発明と引用発明2との関係以上によると,引用発明2は,容積形のスクリュー式の空気圧縮機,燃焼室,スクリュー式の膨張機,発電機等が備えられた動力発生装置であって,上記(1)のとおりの発電装置である本願発明と技術分野を同一とするものであるばかりでなく,スクリュー式の圧縮機及び膨張機を容積型とするものであって,容積式の圧縮機及び膨張機を使用する本願発明と共通する点があるもので,引用発明2を本願発明に係る特許法29条1項3号に掲げられる発明とすることに問題とすべきところはない。
(4)引用発明3についてア引用例3の記載(ア)引用例3(乙9)には,「本システムは,…から構成されるごみ焼却排熱発電設備と,空気圧縮機7と燃焼器8とガスタービン9及び発電機4cから構成されるガスタービ発電設備と,吸収冷凍機6a及び冷水貯槽12から構成される冷熱製造設備と,ガスタービンの排熱を回収する排熱回収ボイラ10と,空気圧縮機7へ導入する空気を冷却する吸気冷却器11と,蒸気タービン3bと,発電機4bと復水器5bとから構成されている。」(【0023】) ,「ガスタービン発電設備の空気圧縮機7に導入される空気3000は,吸気冷却器11において前記した系統200から送られてきた冷水により冷却されたのち系統300から空気圧縮機7へ導入されて高圧となり,燃焼器8へ導入されると共に燃料2000の燃焼に伴い,高温のガスとなってガスタービン9へ導入される。ガスタービン9を駆動し発電機4cを回転させたガスは系統301から排熱回収ボイラ10へ導入され,系統402から供給される熱媒体(一般に水が用いられているので,以降当該熱媒体を単に水と称する)を加熱して過熱蒸気を発生させた後,降温して系統302から系外へ排出される。」(【0030】),「排熱回収ボイラ10で発生した過熱蒸気は,系統400から蒸気タービン3bへ導入され発電機4bを駆動した後,系統401から復水器5bに導入され,系統601を流れる冷却水により冷却されて復水され系統402によって再び排熱回収ボイラ10へ導入(給水加熱器,ポンプ,脱気器等々のボイラ給水系統に係る一般的諸設備は省略している)される。」(【0033】) との記載がある。
(イ)以上の記載によると,引用発明3は,ガスタービンを駆動し,発電機を回転させて発電に使用された後のガスが排熱回収ボイラへ送られ,水を気化させて加熱蒸気を発生させ,この加熱蒸気は蒸気タービンへ導入されて更に発電機を駆動して発電をするという排熱回収ボイラ付ガスタービン発電装置であると認められる。
イ本願発明と引用発明3との関係以上によると,本願発明の「最後の流体モータを通った燃焼ガス」は,引用発明3の排熱回収ボイラへ送られる「発電機を回転させたガス」に相当するということができ,本願発明及び引用発明3とも,このガスが加熱蒸気を発生させ,この蒸気によりタービンを回して発電するというものであり,技術分野を同一にするものであって,引用発明3を本願発明に係る特許法29条1項3号に掲げる発明とすることに問題とすべきところはない。
なお,原告は,引用発明3について,ガスタービン併設型ごみ焼却排熱発電システムであって,本願発明とは,使用する燃料が異なること,蒸気発生室に灰,石灰等が入り込むことなどを指摘し,本願発明との相違等を主張する。しかしながら,本願発明における発電に使用した後の燃焼ガスをもって更に発電を行う部分に関係するものとして,引用発明3においては,ごみ焼却排熱発電設備の部分ではなく,ガスタービン発電装置等から構成される冷熱製造設備及び排熱回収ボイラ等から構成される発電に係る部分を取り上げているものであって,原告の主張は採用することができない。
(5)以上のとおり,本件審決が引用発明を特許法29条1項3号に掲げる発明としたことに誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点を看過した誤り)について(1)原告は,本願発明と引用発明1との間には,本件審決が看過しているが,ボイラー室等の相違,容積形と軸流形との相違,圧縮に係る見掛上の容積の相違,使用燃料の相違があると主張するので,その相違の有無について,以下検討する。
ア引用発明1のタービンと本願発明の流体モータとの相違前記1(1)及び(2)によると,本願発明における「流体モータ」と引用発明1の「タービン1」とは,いずれも,燃焼ガスの圧力によって,回転エネルギーを発生させる機械構造の機器をいうものであって,上記「流体モータ」が「タービン1」に相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
なお,原告は,本願発明の流体モータが容積形であることをもって,引用発明のタービンと異なることを主張するものとも解されるが,この点については,本件相違点1が,本願発明が「容積形流体モータ」を備えるものであるのに対し,引用発明1が容積形流体モータであるかどうか明らかでない点としているものであるから,そのような主張であるとすると失当である。
イボイラー室等の異同原告は,引用発明1の「コンプレッサ2」,「1段コンプレッサー2 の空気出1口」,「2段コンプレッサ2 の空気流入口」,「燃焼器9」,「タービン1」, 2「1段タービン1 の燃焼ガス入口」は通路になっていて,くびれがないので,本 1願発明に備える「ボイラー室」,容積形流体モータの各々の吸入口と排出口とは違うと主張するが,本願発明に係る請求項1には,「くびれ」についての記載はなく,原告の主張は,特許請求の範囲に基づかないものであって,理由がない。
ウ使用燃料の異同本願発明に係る請求項1は,ボイラー室に入れる燃料を限定していないものであるのに対し,引用発明1は,ガスタービンを備えるものであって,その燃料は,流体燃料である「ガス」であるとの違いがあるということができる。しかしながら,この点については,本件相違点1において,引用発明1が「ガスタービン」を備えるものであることを認定しているものであって,本件審決の相違点の認定が誤りがあるとまでいうことはできない。
(2)以上のとおり,本件審決には,本願発明と引用発明1との相違点を看過した誤りはなく,原告主張の取消事由2も理由がない。
3取消事由3(相違点についての判断の誤り)について(1)本件相違点1についてア3葉ルーツ形流体機械の周知性(ア)周知例1についてa周知例1(乙10)には,「特許請求の範囲第1項の発明は2つ以上の独立した気体入口と1つの気体出口をもつ2台の気体ポンプとして機能するか,又は1つの気体入口と2つ以上の独立した気体出口をもつ2台の気体モータとして機能する移動容積式気体用複軸流体機械に関する。特許請求の範囲第13項および第16項の発明は前記複軸流体機械の気体中間口に気体ポンプ又は気体モータを連結し1台の気体ポンプとして機能する組合せ気体ポンプに関する。」(2頁右下欄15行〜3頁左上欄4行),「気体入口側は回転によって容積を増し,気体出口側は容積を減じ続け,回転モーメントは気体出口側の圧力が高いときは回転反対方向に作用し,気体入口側の圧力が高ければ動力を発生する。」(5頁右上欄5〜9行),「基本発明の複軸流体機械を気体ポンプとして機能させるばあいの作用の原理を第1図から第4図によって説明する。ロータ10は回転によって直径がロータ径に等しく,長さがロータ長に等しい円筒形の回転領囲を形成する。回転領囲内でロータ実体部を除いた部分を移動空間71と呼ぶことにする。ロータ10は同期歯車により小間隙を保ちながら歯合回転する。ケーシングは小間隙を保って回転領囲を包囲する。ケーシングは気体入口51,気体出口52,気体中間口53を外に対して開く。気体入口51と気体出口52は間隙だけて連通している。気体中間口53は回転中ロータ10または弁体80を中間ポート開閉体として移動空間71が気体入口51および気体出口52と間隙連通であるかまたは大部分が間隙連通である期間だけ移動空間71と連通する。気体入口圧力P ,気体出口圧力P ,気体中間口圧力1 2P ,移動空間71の容積をVとする。気体入口51が主たる連通先であった移3 11動空間71の回転が進み気体中間口53が主たる連通先になると中間気体が流入し入口気体の容積はVになり,残りの線分EHに相当する容積Vだけ中間気体が13 23流入する。実際には気体は混合するので入口気体と,中間気本(体)の容積の区別はなく,質量比から算出した概念上の容積がV,Vである。さらに回転が進み1323移動空間71の主たる連通先が気体出口52になると出口気体が移動空間71に流入し入口気体の容積はV,中間気体の容積はVになり残りの線分IJ相当分が12 22出口気体の流入容積である。」(3頁左上欄13行〜右上欄末行)との記載がある。
また,上記の記載を併せみると,周知例1の図1及び2には,一方に「気体入口51」,他方に「気体出口52」を設け,「ケーシング」の中に凸部を3葉,凹部を3個所設け,凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつ「ロータ10」を2個収容し,一方のロータの凸面と他方のロータの凹面とを接しながら各々逆回転で等角回転し,各々のロータに直結した「軸21」をロータ側板外へ出して「同期歯車28」を設けて噛み合わせてなる「気体モータ」が記載されていると認められる。
b以上の記載によると,周知例1には,3葉のルーツ形ロータを備える気体用の容積形流体機械が記載されていることが認められる。
(イ)周知例2及び3について周知例2(乙11)には,「本考案は騒音を軽減し且つ寿命の低下を防止した容積式回転機に関するもの」(2頁7〜8行)の記載であるところ,その第8図には,その3葉のルーツ形の回転子を有するものが記載されている。
周知例3(乙12の1・2)の第7図には,3葉のルーツ形のロータを有する流体機械が記載されている。
(ウ)以上の周知例1〜3の記載によると,容積形の3葉のルーツ形ロータを備える流体機械は本件出願前に周知なものであったということができる。
イ容積形機械の多段化(ア)周知例4について周知例4(乙13)には,「本発明のベーン.ローターリー.エンジンは図示の様にエヤーコンプレツサーとエヤーモーターとを同一軸線上に機能的に配列し,モーターの入口手前の部分に燃焼室を設けるもので,形式的にはガスタービンのそれと同様であるが,圧縮方式がベーンローターリーの容積変化機構を用いたものであることが此のエンジンの特色であり,此の故に従来ガスタービンではその圧縮特性の為不適当とされていたところの部分負荷運転を広範囲にすることが出来るのである。」(2頁左上欄第9〜18行)との記載がある。
また,周知例4の第1図及び第2図によると,「一次モーターM 」及び「二次1モーターM 」として,膨張機に当たる「ベーンモーター」が順次大容積となるよ 2うに多段に1軸に連結した状態で使用する技術が記載されている。
(イ)周知例3,5及び6について周知例3(乙12の1)の図3には,2つの膨張シリンダ16及び18が1軸に連結されたものが記載されている。
周知例5(乙14)の図1,2には,ギア式のガス膨張機として利用される順次容積が増す「ギア?」,「ギア?」,「ギア?」及び「ギア?」を多段に連結した装置が記載されている。
周知例6(乙15)の図2には,ガスタービンの原理に基づいて作動する内燃式回転エンジンにおいて,順次容積が増す「コンプレッサタービン」が連結された記載がされている。
(ウ)以上の周知例3〜6の記載によると,容積形機械を流体モータ(膨張機)として使用し,これが多段に順次容量が増すように1軸に連結することが,本願出願前に周知なものであったということができる。
ウ引用発明1及び2並びに周知技術による容易想到性以上によると,本件相違点1についてみるに,引用発明1の備える連結した複数のタービンについて,前記1□のとおりの引用発明2の容積形の膨張機を採用し,これに,上記アの周知な3葉ルーツ形流体機械及び上記イの周知な容積形機械の多段化の各技術を併せると,本件相違点1は容易に想到することができるものである。
なお,原告は,周知例1に対して,ロータの凸部が長すぎて他のロータの凸部と当たらないか,また,容積形流体モータとしての役割を果たすことが分からないとの問題があると主張する。しかしながら,上記ア(ア)のとおり,周知例1の記載によると,周知例1には3葉のルーツ形ブロワを備える気体を圧送する容積形流体機械が記載されていることが認められるものであって,その図1は寸法が記入されたものではないことからすると,同図は技術の理解を容易にするために図示したものであるが,その各部品相互の縮尺についてまで厳密に記載したものとは考えられないことから,ロータの凸部の記載が長すぎて他のロータの凸部と衝突するように見えるなどという理由で,周知例1に記載の技術が容積形流体モータとしての役割を果たさないものであるなどとすることはできず,原告の主張は採用することができない。
また,原告は,本願発明の容積形流体モータは接しながら逆回転するので双方のロータの接している所からは気体は出ないのに対して,周知例1の気体モータにおいては,同期歯車28によって小間隔を保ちつつ噛合回転する一対のロータ10とロータ10を小間隔を隔てて包囲するケーシングからなり,これらの小隙間から流体が通るとして,周知例1が周知技術を例示する文献として不適当であると主張する。しかしながら,上記ア(ア)aのとおりの周知例1の記載によると,周知例1の「同期歯車28によって小間隔を保ちつつ歯合回転する一対のロータ10と,ロータ10を小間隔を隔てて包囲するケーシング」との「小間隔」は,ロータ間及びロータとケーシングとの間の摩擦を考慮してもうけられたものであって,この小間隔があることをもって小間隔から漏れる流体によって機能に影響がしないことを前提とするものということができ,周知例1における2つのロータは,本願発明において特定される,1方のロータの凸面と他方のロータの凸面は「接っしながら各各逆回転で等角回転し」てなるものと同様のものであるということができる。
□相違点2についてア周知例3〜6について(ア)周知例3(乙12の1,2)の図3及び7には,3葉のルーツ形のロータを有する2つの圧縮シリンダ12,14が1軸に連結されたものが記載されている。
上記(1)イ(ア)のとおりの周知例4(乙13)の記載並びに図1及び2によると,「一次コンプレッサー」及び「二次コンプレッサー」として,コンプレッサーが順次小容量となるように多段に1軸に連結した状態で使用する技術が記載されている。
周知例5(乙14)の図1,2には,上記(1)イ(イ)のギア式のガス膨張機と逆方向との意味で,ギア式のガス圧縮機として利用される順次容量が減少する「ギア?」,「ギア?」,「ギア?」及び「ギア?」を多段に連結した装置が記載されている。
周知例6(乙15)の図2には,ガスタービンの原理に基づいて作動する内燃式回転エンジンにおいて,順次容量が減少する「コンプレッサ9,10」及び「コンプレッサ15,16」が連結された記載がされている。
(イ)以上の記載によると,順次容量が小さくなるように連結した圧縮機を多段に使用することが,本件出願前に周知なものであったということができる。
イ引用例1及び2並びに周知技術による容易想到性本件相違点2についてみるに,引用発明1の備える連結した複数のコンプレッサについて,前記1□のとおりの引用発明2の容積形の圧縮機を採用し,これに上記アの順次容量が小さくなるように連結した圧縮機を多段に使用する周知技術を併せると,本件相違点2は容易に想到することができるものである。
なお,原告は,本願発明は,圧縮機として特許請求をしているものではないから,周知例3〜6は本願発明に関連しないと主張するが,本件審決は,本願発明と引用発明1との対比において,圧縮機に係る本件相違点2について説示するにおいて,周知例3〜6を取り上げているものであって,原告の主張は,本件審決の内容を正解しないものであって失当である。
(3)相違点3についてア前記1(4)ア(イ)のとおり,引用発明3は,ガスタービンを駆動し,発電機を回転させて発電に使用された後のガスが排熱回収ボイラへ送られて,水を気化させて加熱蒸気を発生させ,この加熱蒸気は蒸気タービンへ導入されて更に発電機を駆動して発電をするという排熱回収ボイラ付ガスタービン発電装置である。
イそこで,本件相違点3についてみると,引用発明1のガスタービンに,発電機を回転させて発電に使用された後のガスが排熱回収ボイラへ送られて蒸気を発生させ,この過熱蒸気が更にタービンを回して発電機を駆動して発電するという本件発明3を採用することは容易であって,本件相違点3は容易に想到することができるものである。
ウなお,原告は,ガスタービン発電機等の発電システムである引用発明3は本願発明の引用例たり得ないと主張するが,前記1(4)イのとおり,引用発明3として,ごみ焼却排熱発電設備の部分ではなく,ガスタービン発電装置等から構成される冷熱製造設備及び排熱回収ボイラ等から構成される発電に係る部分を取り上げるものであるから,原告の主張は理由がない。
(4)以上のとおり,本件審決の相違点についての判断には誤りがなく,原告主張の取消事由3も理由がない。
4結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 本多知成
裁判官 浅井憲
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