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関連審決 無効2008-800016 訂正2008-390109
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10151審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10399審決取消請求当事者参加事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  複写物 /  インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の判断 /  周知技術 /  技術常識 /  クレーム /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  変更 /  訂正明細書 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10110号 審決取消請求事件
原告X1
原告X2
両名訴訟代理人弁護士谷眞人
同 牛久 保美香
両名補佐人弁理 士酒井一
同 蔵合正博
被告テトラジャパン株式会社
訴訟代理人弁護 士細谷義徳
訴訟代理人弁理 士津国肇
同 柳橋泰雄
同 生川芳徳
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/12/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2008-800016号事件について平成21年3月17日にした審決を取り消す。
事案の概要
1本件は,原告らが特許権者であり発明の名称を「エアー・ポンプ」とする特許第3400515号の請求項1,2について,被告が特許無効審判請求をしたところ,一旦は特許庁がこれを認容する審決(第1次審決)をしたものの,知的財産高等裁判所が特許法181条2項に基づく決定をしたことから特許庁において審理が再開され,その後特許庁が,原告らのなした訂正を認めた上,訂正後の請求項1及び2についての特許を無効とする旨の審決(第2次審決)をしたことから,原告らがその取消しを求めた事案である。
2争点は,?引用に係る下記台湾実用新案登録願第77204725号出願書類写し(以下「甲1刊行物」という )が特許法29条1項3号にいう「外国 。
において頒布された刊行物」に当たるか,及び,?上記訂正後の発明(本件発) (「」。) 明1及び2 が上記甲1刊行物に記載された発明 以下 甲1発明 というとの関係で進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。
記申 請 日 1977年(昭和52年)5月20日出願番号 第77204725号分類 F04D,A01K名称 消音作用を有する空気ポンプ構造発 明 者 A国籍 中華民国出 願 人 名光股□有限公司〈以下略〉
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁等における手続の経緯ア原告らは,平成6年1月17日,名称を「エアー・ポンプ」とする発明について特許出願(特願平6-3185号)をし,平成15年2月21日に特許第3400515号として設定登録を受けた(請求項の数2,以下「本件特許」という。特許公報は甲12 。)イこれに対し,被告が平成20年1月30日付けで本件特許の請求項1及び2について無効審判請求を行ったので,特許庁は同請求を無効2008-800016号事件として審理した上,平成20年6月6日,本件特許の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする旨の審決(第1次審決)をした。
ウそこで原告らは,平成20年7月16日知的財産高等裁判所に対し上記(()), 審決の取消しを求める訴えを提起し 平成20年 行ケ 第10264号その後平成20年10月6日付けで特許庁に対し訂正審判請求(訂正2008-390109号)をしたところ,同裁判所は,平成20年12月17日,特許法181条2項により上記審決を取り消す旨の決定をした。
エ上記決定により前記無効2008-800016号事件は再び特許庁で審理されることとなり,上記訂正審判請求(甲18)と同内容の訂正請求(「」。),, がなされたとみなされた 以下 本件訂正 というところ 特許庁は平成21年3月17日,上記訂正を認めた上 「特許第3400515号 ,の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする」旨の審決(第2次審決)をし,その謄本は平成21年3月27日原告らに送達された。
(2) 発明の内容本件訂正後の請求項1及び2(以下,順次「本件発明1「本件発明2」」,といい,これらを総称して「本件各発明」という。下線は訂正部分)は次のとおりである。
・【請求項1】筐体であるハウジングと,電磁駆動機構と,この電磁駆動機構の電磁作用によって往復運動するマグネットを有するアームと,このアームによって作動せしめられ空気を吸入するダイヤフラムと,ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材とを備え,タンク部材は,土台となるボックス構造のベース部と,ベース部から立ち上げられた円形をした一側面がダイヤフラムの空気排出部に対接する円形の外周面を有するダイヤフラム接合部と,ベース部からダイヤフラム接合部に隣り合わせて立ち上げられたボックス構造の柱状部と,この柱状部に形成され,アームの根元部分が固定される係止部とを有し,全体が一体のブロック体構造で,かつベース部及び柱状部の内部にこの両者間に,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続する空気滞留室が形成され,ダイヤフラム接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け入れる空気取込口からベース部に向けて延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成されて,空気滞留室の空気流入口がベース部側に設けられるとともに,空気滞留室の空気出口が柱状部の上部に設けられ,ダイヤフラムおよびアームの支持台としての機能とダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生する音を軽減する機能とを合わせ持って,ベース部をハウジングの底面に当接して固定取り付けされ,タンク部材の空気出口に空気供給用のホースが接続されることを特徴とするエアー・ポンプ。
・【請求項2】空気滞留室に空気流入口と空気出口とは互いに離れた位置に設けられ,空気流入口からの空気の流入方向に対して空気出口からの空気の流出方向が直角に向けられていることを特徴とする請求項1記載のエアー・ポンプ。
(3) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,上記訂正は適法であり,かつ訂正後の本件発明1及び2はいずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
(4) 審決の取消事由しかしながら,審決には以下のとおりの誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。
ア 取消事由1(甲1刊行物が外国頒布刊行物であるとの認定の誤り)審決は,台湾実用新案登録願第77204725号の出願書類の写しである甲1刊行物について,本件各発明の出願日である平成6年1月17日より前の1991年〔平成3年〕5月21日に公告され,台湾において公開閲覧に供されて複写可能となったとして,特許法29条1項3号の外国において頒布された刊行物であるとした。
しかし,特許法29条1項3号の「頒布された刊行物」に該当するというためには,原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され,かつ,その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整っていなければならないというべきである(最高裁昭和55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁 。)そして,本件特許出願時において適用される1986年〔昭和61年〕改正台湾特許法(専利法)によれば,明細書原本の公開は公告日から6か月間のみで,その間,台湾の特許局その他適切な場所において閲覧が可能, , ではあるものの 出願人以外の者すなわち公衆の謄写は認められておらず同期間経過後は閲覧も謄写もできない。同法が公告制度を採用しつつ公開制度がないことに照らせば,公衆の自由な閲覧謄写を認めない制度と解すべきである。
また,6か月という短い期間に特許局に陳列された明細書原本をどれだけの人間が見ることができるのか疑問であるし,仮にこれを見ることができたとしても,専利法や施行細則等の法令において謄写の根拠規定や具体的な謄写手続等について定めるところはなく,公衆が謄写できることをいかにして知り得るのか,また公衆からの要求に即応して遅滞なく複写物が交付され得るのか,疑問である。台湾における特許関係情報の取得手段の状況をみると,平成12年当時ですら,甲1発明の図面・クレームインターネット検索は極めて困難な状況であり,明細書全文は見ることすらできない。
ちなみに,現に書証として提出されている甲1刊行物は,現行台湾特許法45条の規定により閲覧・謄写が可能となったことによるものである。
したがって,甲1刊行物は特許法29条1項3号の外国において頒布された刊行物とはいえない。
なお審決は,無効審判手続において甲1刊行物の外国頒布刊行物該当性に関し被請求人である原告らが争っていないことを理由としてこれを肯定したが,当事者の「争わない」という意見をもって直ちに外国頒布刊行物であるとの判断をすることは,判断の脱漏である。
イ 取消事由2(甲1発明認定の誤り)審決は,甲1刊行物に 「緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透 ,過パッド17」及び「緩衝室13,チャンネル131および空気排出室12の底部に柔軟且つ弾性のゴムパッド16」の存在と効果に関する記載があることを認定しながら,甲1発明の認定においては 「緩衝室13と排,」 , 気管14との間に綿製空気透過パッド17 の存在及び効果を排除するが誤りである。
すなわち,甲1発明における「緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17」は,消音効果を生じさせるための不可欠の構成要素となるものであり,甲1刊行物を見た当業者をして,消音効果を生じさせる不可欠な構成要素と理解されるものである。
ちなみに,本件各発明には「緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17」に対応するものはないことから,甲1刊行物における,「緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17」に関する記載は,甲1発明が本件各発明に対して起因ないし契機(動機付け)となることを妨げる記載である。そして,むしろ甲1刊行物において 「緩衝室,13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17」及び「緩衝室13,チャンネル131および空気排出室12の底部に柔軟且つ弾性のゴムパッド16」が不可欠な構成要素とされていることからすれば,甲1刊行物における緩衝室のみによっては消音効果が得られないことが示唆されている。
ウ 取消事由3(一致点認定の誤り)(ア)審決は,甲1発明における「アームが一側に設けられたダイヤフラム20とポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111」は,本件発明1の「アームによって作動せしめられ空気を吸」(), 入するダイヤフラム に相当すると認定するが 11頁22行〜25行誤りである。
本件訂正後の特許明細書(全文訂正明細書・甲27)には 「…この,, , , ダイヤフラム18は外力によって収縮 膨張する内部が中空のゴム 革強化処理された紙,或いはプラスチックなどの弾性材料から構成される」(【】), とともに弁機構を有しており…段落 0008と記載されており「ポンプ体10の上周縁の凸縁」や「空気迂回区111」を有する旨の記載はない。
したがって,正しくは,甲1発明の「アームが一側に設けられたダイヤフラム20とバルブ15」は本件発明1の「アームによって作動せしめられ空気を吸入するダイヤフラム」に相当すると認定すべきである。
(イ)審決は,甲1発明における「空気迂回区111に接続され空気を緩衝させてから排気する一連の構造体」は,本件発明1の「ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材」に相当すると認定するが(11頁25行〜27行 ,誤りである。)甲1刊行物においてダイヤフラム20が接続ないし取り付けられているのはポンプ体10の上周縁の凸縁であり,ダイヤフラム20はその他のいかなる部分にも接続されていない。
したがって,正しくは,甲1発明の「ダイヤフラム20に接続されたポンプ体10の上周縁の凸縁と空気迂回区111(より厳密には,空気迂回区111を画成する底板)を含み空気を緩衝させてから排気する一連の構造体」は,本件発明1の「ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材」に相当すると認定すべきである。このように解すれば,本件特許請求の範囲において,ダイヤフラム接合部の構成が 「ベース部から立ち上げられて,ダイヤフラムの空気排出部に対 ,接するダイヤフラム接合部と 」となっていることとも整合する。つま ,り,甲1発明において,本件発明1のダイヤフラム接合部に対応するのは「空気迂回区111を画成する底板」である。
(ウ)審決は,甲1発明における「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12」は,本件発明1の「ベース部から立ち上げられた円形をした一側面がダイヤフラムの空気排出部に対接する円形の外周面を有するダイヤフラム接合部」に相当すると認定するが(11頁30行〜35行 ,誤りである。)甲1発明の空気排出室12は,文字どおり,空気を排出するための室(通路 ,すなわち一連の構造体の内部に存在する空間であり,一連の )構造体から見て外部部材であるダイヤフラムないしその空気排出部に対接するタンク部材の部分としての機能を有しない。また,空気排出室12の構成態様について 「土台部分から立ち上げられ」と,あたかも何 ,らかの構造体がまっすぐ立つような表現を無理に採用するのは,ことさら甲1発明の空気排出室12を本件発明1のダイヤフラム接合部に対応させるないしは近づけるための意図的表現であり,この空気排出室12の構成態様を表現するなら 「上下方向に延びる(又は延在する 」とい , )った表現がより適切である。さらに,甲1発明の空気排出室12はダイヤフラムの空気排出部に対接していない。ここで「対接」とは,単に接続したり接したり(触れ合うこと)することではなく,2つのものが向かい合って接することをいう。本件発明1のダイヤフラム接合部は,ベース部から立ち上げられている(すなわち,まっすぐ立っている)ことは明らかである。このダイヤフラム接合部が対接する相手がダイヤフラムの空気排出部であるから,このダイヤフラムの空気排出部もまたベース部から立ち上げられたのと同等の態様になっている必要がある。本件発明1のダイヤフラム接合部とダイヤフラムの空気排出部とは真にこのとおりの関係になっており,特許請求の範囲の記載と実施の形態の記載の間に矛盾はない。これに対して,甲1発明では,空気排出室12は上下方向に延びてその上端が空気迂回区111に接続されるのであり,これは「対接」ではなく,突き当たりの構成態様である。
(エ) 審決は,?甲1発明の「土台部分と箱状部の内部に土台部分と箱状部間に略四角形状に連続する緩衝室13が形成され」た態様と,本件発明1の「ベース部及び柱状部の内部にこの両者間に,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続する空気滞留室が形成され」た態様は 「ベース部及,び柱状部の内部にこの両者間に,所定形状に連続する空気滞留室が形成され」たとの概念で共通する(12頁1行〜6行)?甲1発明の「空気排出室12に空気迂回区111から送り出された空気を空気排出室12の出口から土台部分に沿って延び,緩衝室13に連通する空気チャンネル131が接続形成され」た態様と,本件発明1の「ダイヤフラム接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け入れる空気取込口からベース部に向けて延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成され」た態様とは 「ダイヤフラム,接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け入れる空気取込口から延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成され」たとの概念で共通する(12頁6行〜13行)?甲1発明の「緩衝室13の空気出口が空気流入口とは互いに離れた位置で箱状部の中程に設けられ」た態様と,本件発明1の「空気滞留室の空気出口が柱状部の上部にもうけられ」た態様とは 「空,気滞留室の空気出口が柱状部の所定部に設けれら」たとの概念で共通する(12頁13行〜17行)として,構成要件要素の概念を抽象化することによって共通であるとの結論を導くが,本件発明1と甲1発明のように技術分野が共通するにもかかわらず,各構成要件要素が各発明全体において有する意味を全く吟味することなく概念を抽象化して対比することは,各発明の内容の把握を放棄したに等しい。
そして,取消事由4のとおり,上記?ないし?により対比されている, , 点は相互に関連しているものであって 各構成要件要素のみを取り出し概念を抽象化して対比することの必要性も妥当性・相当性も見出せない。
エ 取消事由4(相違点の看過・認定誤り)(ア) 相違点の看過a本件発明1と甲1発明は,審決が挙げる相違点1〜4に加え,更に次の点において相違する。
・「空気滞留室の構成(成り立ち)に関し,本件発明1では,ベース部と,ベース部から立ち上げられたダイヤフラム接合部と,ベース部からダイヤフラム接合部に隣り合わせて立ち上げられた柱状部とにより形成されているのに対して,甲1発明は,単一のボックス体から構成されていること (特に甲1発明ではダイヤフラム接合 」部が空気滞留室の形成に寄与するという態様が全く存在しない。以下「相違点6」という )。
すなわち,本件発明1では,ベース部と,ベース部から立ち上げられたダイヤフラム接合部と,ベース部からダイヤフラム接合部に隣り合わせて立ち上げられた柱状部とにより,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形の空気滞留室が構成される。本件発明1において「隣り合わせて立ち上げられた」とは,ダイヤフラム接合部と柱状部とが一体化するように,互いに横に相接して立ち上げられていることを表し,これは本件特許明細書で図4を用いて説明された実施例どおりの形態を指す。これによりダイヤフラム接合部の側面形状が空気滞留室の略L字形を画成することになり,本来,小型化および空間の有効利用を要求されるタンク部材の内部に最大限の空気滞留室の容積を確保している。さらに,ダイヤフラム接合部の側面形状をもって空気滞留室の略L字形を画成することにより,この部分に面取り効果が表れ,空気滞留室の拡大化が図られている。
これに対し,甲1発明では,ダイヤフラム接合部が空気滞留室の形成に寄与するという態様が全く存在しない。しかも,甲1発明では,, , 空気排出室を有するポンプ体10と 緩衝室13を形成する箱状部は互いに一体化して部材間の隙間空間をなくして緩衝室13を拡大するという意図はみられず,またダイヤフラム接合部の形状をもって空気滞留室を形成していないため,本件発明1におけるような面取り効果による空気滞留室の拡大化も図られていない。
bまた,本件発明1と甲1発明は,更に次の点において相違する。
・「ダイヤフラム接合部に関し,本件発明1では,ベース部から立ち上げられてダイヤフラムの空気排出部に対接するダイヤフラム接合部であるが,審決で指し示す「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接続される半円形の外周面を」 , , 有する空気排出室12 は 当該審決の中でも明示しているようにベース部から立ち上げられて空気迂回区111に接続されるのみで,ダイヤフラムの空気排出部に対接していないし,また,何よりもダイヤフラムに接合する部分としての機能を有さず,ダイヤフラム接合部に相当しない。空気排出室12は飽くまでも甲1刊行物に説明されているとおり,空気排出室(ないしは排出される空気の通路)である。これに対し,甲1発明では本件発明1にいうダイヤフラム接合部が存在しない (以下「相違点7」という ) 。」 。
すなわち,本件発明1では,ダイヤフラム接合部は,ベース部から立ち上げられてダイヤフラムの空気排出部に対接するものであるが,このダイヤフラム接合部は,当該ダイヤフラム接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け入れる空気取込口からベース部に向けて延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成されている点に特徴がある。本件発明1では,ダイヤフラム接合部がベース部から立ち上げられていることで,ダイヤフラムとの対接部分がまっすぐ立ち,略垂直の方向,少なくとも寝ていない状態となる。このダイヤフラム接合部は,ダイヤフラムを接合するという本来の機能に加え,少なくとも,ダイヤフラムから送り出された空気の流れ方向を転換する機能を持つ。ダイヤフラム接合部とダイヤフラムとの対接部分が上下方向に延びることで,ダイヤフラムからは横向き又は水平方向に向けて空気が送り出されるが,この空気の流れをベース部に向かわせるために垂直向きに方向転換する必要があり,そのための構成が「当該ダイヤフラム接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け入れる空気取込口からベース部に向けて延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成されている」の構成要件である。
他方,甲1発明をみると,審決にいう「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12」がダイヤフラム接合部に相当しないことは上記のとおりである 「ダイヤフラム接合部」というためには,ダ 。
イヤフラムを接合するという本来の機能を備える部分でなければならず,甲1発明でいえば,ダイヤフラムがポンプ体10に結合している部分か,空気迂回区111自体がダイヤフラム接合部であり,その他, 。 の部分は どのように解釈してもダイヤフラム接合部にはなり得ないまして空気排出室12をダイヤフラム接合部とこじつけることは論外であり,無理に不適切な部材や部分を当てはめることはエアー・ポンプの技術を無視することになる。そして,甲1発明においては,ダイヤフラム接合部は,ダイヤフラム対接面が水平方向に延びており,いわゆる寝ている形になっている。このようなタイプのエアー・ポンプでは,ダイヤフラムからは下向きに空気が送り出され,その下側にはやはり上下方向に向けて延びる空気排出室12が存在するため,ダイ。, ヤフラム接合部は空気の流れを方向転換する必要がない したがってこのような構成では,この空気の流れをベース部に向かわせるためにダイヤフラムは単に空気を送り出すだけでよく,本件発明1におけるような,空気の流れを方向転換するための構成は必要ないのである。
したがって,本件発明1のダイヤフラム接合部と甲1号証のダイヤフラム接合部は空気の流れを方向転換するための構成の有無の点で機能的に相違するのであり,単に,審決が相違点3として挙げるように,「」,, 本件発明1が ベース部に向けて としているのに対し 甲1発明が「ベース部(土台部分)に沿って」延びている点においてのみ相違しているのではない。
(イ) 相違点認定の誤り審決は,空気滞留室の空気出口が設けられた柱状部の所定部に関し,本件発明1は「上部」としているのに対し,甲1発明は「中程」である点を,相違点4とする。
しかし,甲1発明における空気滞留室の空気出口は,緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17が設けられている以上,排気管14ではなく,綿製空気透過パッド17が緩衝室13内部に向けて開口している部分というほかない。
したがって,空気滞留室の空気出口が設けられた柱状部の所定部に関し,本件発明1は「上部」としているのに対し,甲1発明は「下部」である点で相違する。
なお審決は 「甲1発明において,空気滞留室の空気出口が土台部分 ,側に設けられた空気流入口とは互いに離れた位置で箱状部の中程に設けられ,空気流入口からの空気の流入方向に対して空気出口からの空気の流出方向が平行の関係にあることから」として 「空気滞留室の空気出 ,口」の位置を問題としながら,緩衝室13ではなく「箱状部」とすることにより,排気管14を空気出口と認定するが,後知恵による恣意的な認定である。
オ 取消事由5(相違点判断の誤り)(ア)審決は,空気滞留室,空気通路及び空気出口に関する相違点2ないし4は設計的事項にすぎないとするが,審決の上記判断は甲1発明の理解の前提において誤っている。
a審決は,甲1刊行物の記載を引用しつつ,甲1発明において音の軽, (, 減は 空気の排気速度と排気圧力を緩和することのできる すなわち空気が一時的に蓄えられる)容積の大きい空気滞留室(緩衝室)により実現されるとする。
この点,審決が引用する甲1刊行物における 「本考案は,消音作,用を有する空気ポンプ構造に関し,特に,空気排出室と排気管との間に空間が空気排出室より大きい緩衝室が設けられ,その排気速度と排気圧力を緩和することにより,空気と当該壁面との摩擦力を降下することができ,それにより,ノイズを減少することができることを特徴とする魚の飼育用水槽に用いられる空気ポンプに関する(訳文〔甲。」1-3〕2頁3行〜7行)との記載によれば,音の軽減は,空気の排出速度と排気圧力を緩和することのできる容積の大きい空気滞留室により実現されるとも取れるが,この記載は発明の技術分野を概括的に述べたにすぎず,甲1発明の構成と作用効果を結びつけて説明したものではない。
かえって,審決が指摘する他の引用箇所には,音の軽減が空気の排出速度と排気圧力を緩和することのできる容積の大きい空気滞留室により実現されることは何ら記載されておらず,むしろ,音の軽減ないしノイズの軽減は,綿製空気透過パッド17又は柔軟かつ弾性のゴムパッド16によって実現されるものと明示されている。
つまり,甲1刊行物では,発明の目的ないし狙いとしては,空気の排出速度と排気圧力を緩和することのできる容積の大きい空気滞留室により音の軽減を実現することにあったが,現実に発明活動をしているうちに,チャンネル131や箱体形状の緩衝室13などの各部材を持つエアー・ポンプでは音の軽減を実現することはできないことが明らかとなり,そこで,次の解決策として綿製空気透過パッド17やゴムパッド16を要所要所に設置し,これで音の軽減を実現することができた,という変遷を看取することができる。
このように,明細書の記載から確たる効果があると認識されるものについて,当業者において敢えて取り除くことの必要性も合理性も見出せないのであって,甲1発明において,音の軽減が容積の大きい空気滞留室(緩衝室)により実現されると解することは誤りである。
bまた審決は,甲1発明における音の軽減は,容積の大きい空気滞留室(緩衝室)に加えて,空気滞留室中での空気の流入位置と流出位置が異なること及び空気の流れる方向を異ならせることで,より一層促進することができるとする。
しかし,甲1刊行物から上記の効果を読み取ることはできず,むしろ,その記載からは,空気の流れの加速を生じさせ,また流れ経路の短絡が生じることが明らかである。
すなわち,甲1発明は,空気排出室12の断面積がチャンネル141の断面積より大きいところ,断面積の大きな空気排出室12から断面積の小さなチャンネル131に流入した空気はチャンネル131において加速されるという真逆の作用効果が生じる。また,チャンネル131の先方はチャンネル131の延長方向にまっすぐに延びる空気通路とこの空気通路から直角方向に延びて形成された緩衝室13に接続するという枝分かれ構造となっており,緩衝室13が閉空間となっていることから,チャンネル131から排出された空気は緩衝室13,, 。 へ入ることができず したがって 緩衝室13に滞留することもないそして,上記チャンネル131から排出された空気は,強い直進性を維持したまま出口に向かうのであって,甲1刊行物の第2図において緩衝室13の内部空間に図示された矢印のような空気の流れは生じない。この意味で,甲1刊行物には科学的にみて誤った説明がなされている。
そして,緩衝室13が閉空間となっていることから,緩衝室13が共鳴箱として作用し,かえって音が大きくなることは明らかであり,仮に,空気排出室12から排出された空気が直進することなくすべて緩衝室13に流入したとしても,音は発生することから,空気の流れる方向を異ならせることで音の軽減効果をより一層促進することができるなどということはできない。
(イ)空気滞留室,空気通路及び空気出口に関する相違点2ないし4は設計的事項にすぎないとする審決の判断は,本件発明1の理解においても前提を誤っている。
, , a審決は 相違点2ないし4に係る本件発明1の構成の技術的意義は空気通路の径に対してその容積が極めて大きい空気滞留室に空気が一時的に蓄えられることにより,ダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生した音が大幅に軽減されることが前提であるとともに,空気滞留室中での空気の流入位置が異なること及び空気の流れる方向を異ならせることで音の軽減効果をより一層促進することになると解するものである。
, , しかし 相違点2ないし4に係る本件発明1の構成の技術的意義は審決が挙げる上記の点のみではなく,空気滞留室の内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続することにより,必然的に空気が空気滞留室へ流れ込んでから柱状部の上端部に到達するまでの間において円形部分に沿って緩やかに流れることにより,消音効果を一層促進させることにある。
bまた審決は,上記判断の前提として,本件発明1における上記aのような独自の作用効果について,特許明細書に記載されていない効果であるとか,本件発明1と甲1発明との間で,空気の流れた空気滞留室の大きさに起因する消音の度合いに明確な差異が存在するとまでは断定し難いとするが,上記効果は「内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続する空気滞留室」との構成により必然的に生じるものであり,当該効果は, , 明細書の記載及び図面から読み取れるし 本件発明1と甲1発明とは「 」 そもそも 空気の流れや空気滞留室の大きさに起因する消音の度合いの問題ではなく,消音効果を得るための構成上の違いであることは明らかである。
(ウ)さらに,審決は,取消事由4で指摘したとおり,本件発明1と甲1発明との相違点につき,両発明を正確に把握することなく,構成要件要素を分断した上,概念を抽象化して対比をすることにより,相違点を看過しており,前記相違点6及び7を含む相違点からは,相違点1ないし4は単なる形状および配置構成の相違にすぎないものでないことは明らかである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告ら主張はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1に対し甲1刊行物は,その公告当時(1991年〔平成3年〕5月21日 ,台)湾専利法39条に基づき,公告後6か月の期間公開閲覧に供されたが,その6か月の期間及びその後も期間制限なく公衆の自由な閲覧及び謄写が可能であり,閲覧,謄写できる者の範囲については何らの制限もなかった(乙1の1・2,乙2の1・2,乙4の1・2 。)ちなみに,甲1刊行物の公告当時における専利手数料徴収準則には,上記のような自由な閲覧謄写を前提として,閲覧申請費用(3条18号)や書類の書き写し及び図面謄写の申請費用(同条15号及び16号)が定められており,これらの閲覧謄写の申請は台湾中央標準局専利処で受け付けられ,広く一般に利用されていたものである。そして,専利法における閲覧謄写に関する規定は,1994年〔平成6年〕の改正により 「審査を経て公告され ,た専利案は,何人もその査定書,明細書,図面,宣誓書及びすべてのファイル資料を閲覧,書き写し,撮影,あるいはコピーすることができる 」とさ。
れたが,これは,以上のような改正前の取り扱いをそのまま明定したものである。
したがって,甲1刊行物が特許法29条1項3号の外国頒布刊行物であることは明らかである。
(2) 取消事由2に対し審決は 「綿製空気透過パッド17」を排除して甲1発明を認定したが, ,これは 「綿製空気透過パッド17」が本件各発明に必須の構成要件ではな ,いからである。例えば,本件特許の請求項1に「綿製空気透過パッド17」は記載されておらず,本件発明1の成立に無関係であるから,これを敢えて甲1発明の構成と認定し 本件発明1と対比する必要は全くない 仮に綿 , 。,「製空気透過パッド17」を甲1発明の構成に含めたとしても,この「綿製空気透過パッド17」は,本件発明1との対比において一致点にも相違点にもなり得ない。
したがって,本件審決における甲1発明の上記認定は,妥当である。
(3) 取消事由3に対しア ダイヤフラム原告らは,甲1発明の「アームが一側に設けられたダイヤフラム20とバルブ15」が,本件発明1の「アームによって動作せしめられ空気を吸入するダイヤフラム」に相当すると主張するが,誤りである。
原告らの上記主張は,本件発明1の「ダイヤフラム」が弁機構を有すること(本件特許の全文訂正明細書〔甲27〕の段落【0008】参照)を前提とするものであるが 技術常識に基づいて考えれば 本件発明1の ダ , ,「イヤフラム」が弁機構を有するという以上,これはダイヤフラムと弁機構の2部品のみでは成立せず,少なくとも両者を正常に機能させるように関連付ける何らかの構成が不可欠であり この構成を含めて本件発明1の ダ , 「イヤフラム」が成立する。そうすると,甲1発明の「ダイヤフラム20とバルブ15」のみが本件発明1の「ダイヤフラム」に相当するとはいえない。
そして,ダイヤフラムと弁機構の正常な機能とは,空気を吸排気する機能であり,少なくとも,何らかの構造体によって,ダイヤフラムと弁機構の間に空間を確保しなければ,ダイヤフラムと弁機構による空気の吸排気はできない。そこで,審決は,甲1発明の構成を認定するに当たり,ダイヤフラムと弁機構の間に空間を確保するための「ポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111」を含めたのであり,甲1発明の「ダイヤフラム20とポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111」という構成は,正に弁機構を有するダイヤフラムの構成として,本件発明1の「ダイヤフラム」に相当する。
したがって,審決における甲1発明の認定に誤りはない。
イ タンク部材,「」, 上記アのとおり 本件発明1の ダイヤフラム が弁機構を有する以上この「ダイヤフラム」に相当する甲1発明の構成には 「ダイヤフラム2,0」のみならず 「ポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる ,空気迂回区111」が含まれる。
原告らは,甲1発明の「ダイヤフラム20に接続されたポンプ体10の上周縁の凸縁と空気迂回区111(より厳密には,空気迂回区111を画成する底板)を含み空気を緩衝させてから排気する一連の構造体」が,本件発明1の「ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材」に相当すると主張するが,本件発明1の「ダイヤフラム」が弁機構を有することを無視し,甲1発明の「ダイヤフラム20」のみが本件発明1の「ダイヤフラム」に相当するとの前提に立つものであり,誤りである。
ウ ダイヤフラム接合部原告らは,甲1発明の「空気排出室12」は,本件発明1の「ダイヤフラム接合部」に相当しないと主張するが,誤りである。
原告らの上記主張は 「空気排出室12」は「一連の構造体の内部に存 ,在する空間 のみであり この空間を画定する 一連の構造体 の壁は 空 」,「」「気排出室12」の構成要素ではないと解釈するものであるが,甲1発明の「空気排出室12」はポンプ体10の半分の壁と,この壁により画定された内部空間とからなり 「空気排出室12」が,壁と空間で構成されてい ,ることは明らかである。技術常識からしても,壁なしで外界から仕切られた空間が成り立つわけがない。
したがって,ポンプ体10の半分の壁を含めて,甲1発明の構成を「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12」と認定した審決に誤りはない。
エ 概念の抽象化原告らは,概念の抽象化による対比は誤りであると主張するが,誤りである。
,, そもそも特許請求の範囲に記載された発明は 技術的思想創作であり必要最低限の構成要件によって特定された抽象的な概念(アイデア)であ。,「 」, る 例えば 本件の請求項1における 略L字形に連続する空気滞留室「空気滞留室に連通する空気通路「柱状部の上部」は,いずれも現物の 」,構造を記載したものではなく,抽象的な概念を記載したものである。本件発明1の発明概念が甲1刊行物に記載されているか否かを判断する上で,本件発明1と甲1発明の概念における共通点を明らかにすることは当然であり,審決が行った対比手法は通常の対比手法と何ら相違するものではない。
また,審決が概念で共通するとした態様において甲1発明と本件発明1, , , は共通し それ以外の態様については 相違点2〜4に認定しているから審決の認定に誤りはない。
(4) 取消事由4に対しア 相違点の看過(ア) 相違点6原告らが相違点6において指摘する「ボックス体」とは,本件発明1の「ベース部「ダイヤフラム接合部「柱状部」を指すものと考えら 」,」,れ,要するに,本件発明1は複数のボックス体から構成されているのに対し,甲1発明は単一のボックス体から構成されていることをいうものと理解することができる。
しかし,甲1発明の「底部にゴムパッド16が設置されたボックス構造の土台部分 は 本件発明1の ベース部 に相当し 甲1発明の 土 」 ,「」,「台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接」 ,, 続される半円形の外周面を有する空気排出室12 は 相違点1を除き本件発明1の「ダイヤフラム接合部」に相当し,甲1発明の「土台部分から空気排出室12に隣り合わせて立ち上げられた箱状部」は,本件発明1の「柱状部」に相当するから,本件発明1と甲1発明は,いずれも複数の「ボックス体」から構成されている点で一致する。
また,原告らが相違点6において指摘するダイヤフラム接合部が空気滞留室の形成に寄与するという態様は,審決が認定した相違点2と同じであり,新たな相違点ではない。
したがって,原告らが主張する相違点6は,相違点とはならない。
なお原告らは,本件発明1が 「内側角部がダイヤフラム接合部の円 ,形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形の空気滞留室」との構成を採用したことの意義として,空気滞留室の容積確保,面取り効果及び空気滞留室の拡大化を挙げるが,審決は,上記形状について当業者が適宜設計変更可能な範囲のものとしており,ダイヤフラム接合部が空気滞留室の形状に寄与するか否かは,本件発明1の進歩性を肯定する相違点とはならない。
(イ) 相違点7原告らが相違点7として挙げる構成は,甲1発明における「空気排出室12」が「一連の構造体の内部に存在する空間」のみからなるという, , 誤った解釈を前提とするものであり ポンプ体10の半分の壁を含めて「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12」と正しく解釈すれば,相違点7は生じない。すなわち,甲1発明の「空気排出室12」を画定するポンプ体10の半分の壁は 「空気迂回区111」を画定す ,る「ポンプ体10の上周縁の凸縁」に接合されている。また 「空気排,出室12 の内部空間はダイヤフラムの空気排出部 に相当する バ 」,「 」「ルブ15」に対接している。したがって,本件発明1と甲1発明との間に,原告らが指摘する相違点7は一切存在しない。
なお原告らは,相違点7の構成が空気の流れを方向転換するための構成であるなどと主張するが,空気の流れる方向を異ならせる消音原理は本件発明1も甲1発明も同じであり,両発明における空気通路の配置構成の相違は特別なものとはいえない。また,空気通路を直角に曲げて消音することは,周知技術にすぎない(例えば,甲7号証の段落【0014 【0016 【図1】及び【図2】参照 。 】,】, )イ 相違点認定の誤りにつき,, , 原告らは 相違点4に関し 甲1発明における空気滞留室の空気出口は排気管14ではなく,綿製空気透過パッド17が緩衝室13内部に向けて開口している部分であると主張するが,誤りである。
甲1発明の「綿製空気透過パッド17」は 「緩衝室13」の中に配設 ,された綿製シート状の部品であり 「緩衝室13」の空気出口であるはず ,がない 「緩衝室13」の空気出口は,審決の認定するとおり「排気管1 。
4」である。
(5) 取消事由5に対しア原告らは,審決が,甲1発明における音の軽減が容積の大きい空気滞留室(緩衝室)により実現されると解したことは誤りであると主張する。
しかし,甲1刊行物には,甲1発明の特徴として,空気排出室より大きい緩衝室により排気速度と排気圧力を緩和することによりノイズを軽減することが明記されている。
この点原告らは,審決が,甲1発明の認定に際し 「綿製空気透過パッ,ド17」を排除した点が誤りであると主張するが,本件発明1の必須の構成要件ではない「綿製空気透過パッド17」を敢えて甲1発明の構成と認定し,本件発明1と対比する必要はないのであって 「綿製空気透過パッ,ド17」を甲1発明の構成と認定しなかった審決に誤りはない。
イ原告らは,審決の認定する音の軽減という効果は甲1発明から読みとることができず,むしろ,断面積の大きな空気排出室12から断面積の小さなチャンネル131に流入した空気はチャンネル131において加速されるという作用効果が生じると主張する。
しかし,甲1刊行物には 「空気排出室12の断面積がチャンネル13 ,1の断面積より大きい」という記載はどこにもない。かえって,第一図に示されているように 「空気排出室12」の口径に対して「チャンネル1 ,31」の横幅は3倍程度大きい。
仮に,空気排出室12の断面積がチャンネル131の断面積より大きいとしても,この大きさの関係は本件発明1も同じである。すなわち,本件特許明細書の図4において 「空気取込口27」の断面積は「空気通路2 ,」。,「」 8 の断面積よりも大きい このため 断面積の大きな 空気取込口27「」,「」 から断面積の小さな 空気通路28 に流入した空気は空気通路28において加速されるのであって,仮に,甲1発明の構成が原告らの指摘するとおりであったとしても,この構成において本件発明1と甲1発明の間に相違はない。
ウ原告らは,本件発明1の作用効果には,審決が認定したもののほかに,空気滞留室の内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続することで必然的に空気が空気滞留室へ流れ込んで柱状部の上端部に到達するまでの間に円形部分に沿って緩やかに流れることにより,消音効果を一層促進させるという効果があると主張するが,誤りである。前記(4)のとおり,本件発明1の空気滞留室について「内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した」形状とすることの技術的意義は,特許明細書に何ら記載されていない。また,スペースの有効活用を図るために,空気滞留室を上記の形状とすることは,適宜設計変更可能な範囲のものにすぎない。
当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁等における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審 ))決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2取消事由1(甲1刊行物が外国頒布刊行物であるとの認定の誤り)について(1)原告らは,台湾における実用新案の出願書類写しである甲1刊行物は特許法29条1項3号の「頒布された刊行物」に当たらず,審決がこれを引用, 。 例に供したことは誤りである旨主張するので まずこの点について検討する特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」とは,公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書,図画その他これに類する情報伝達媒体であって,頒布されたものを意味する(最高裁昭和55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁,同昭和61年7月17日第一小法廷判決・民集40巻5号961頁参照 。)そこでこれを本件についてみると,甲1の1(台湾実用新案登録第77204725号明細書 「公告本」との押印がある・甲1の2(台湾実用新 , 。)案公告第158860号公報 ,甲11の1(台湾特許法30・39・11 )0条の条文 ,甲11の3(台湾弁護士Bの陳述書 ・甲15(台湾専利〔特 ) )許,実用新案,意匠〕法の条文 ・甲16(台湾専利〔特許・実用新案・意 )匠〕法施行細則の条文 ,乙1の1(台湾国際専利法律事務所の2008年 )〔平成20年〕7月7日付け台湾経済部智慧財産局宛書簡 ・乙2の1(台)湾経済部智慧財産局長Cの2008年〔平成20年〕8月21日付け台湾国際専利法律事務所弁護士D・B宛書簡 ・乙4の1(台湾経済部智慧財産局 )長Cの2009年〔平成21年〕8月24日付け台湾国際専利法律事務所弁護士D・E宛書簡)及び弁論の全趣旨によれば,甲1刊行物は,Aが台湾において昭和63年 1988年 5月20日に出願 申請 した実用新案 申 〔〕()(請案77204725号,以下「本件実用新案」という )の出願書類とし。
て,1991年(平成3年)5月21日に台湾において公告された公告本の写しであるところ,上記公告日である1991年(平成3年)5月21日当時における台湾特許法(1986年〔昭和61年〕12月24日改正・公布された専利法)においては,その30条に,審査を経て,拒絶すべきでないと認める発明特許は,審定書を明細書,図面と共に公告すべき旨,同39条に,公告した特許案件は,審定書,明細書又は模型若しくは見本等を特許局又はその他適切な場所に6か月間陳列して公開閲覧に供さなければならない旨,同110条に,上記各規定を実用新案に準用する旨がそれぞれ規定されており,上記公告本は上記各規定に基づき本件実用新案を公告に供するために用いられたものであることが認められる(訳文による 。)一方,本件特許の出願日である平成6年1月17日当時において,台湾特許局では,実務上,既に公告された専利案及び実用新案については,公告期,, 間中であるか公告期間満了後であるかにかかわらず 公告に供された審定書明細書等を公開しており,何人もこれらを閲覧,書き写し又はコピーすることを申請することができたことが認められる。
そして,上記のようにして閲覧・謄写の対象となる明細書等は,専利法施行細則(1981年〔昭和56年〕10月2日改正のもの。甲16)10条が出願時に明細書等につき同内容の書類を3部提出すべき旨を定めており,かつ,現に閲覧・謄写に供された甲1刊行物にはその冒頭に「公告本」との表示(特許局が押印したと推認される)がなされていることからすれば,閲覧,謄写の対象となった明細書等の複製物(3部のうちの1部を閲覧等用に備え置いたもの)と認めるのが相当である。
,「」() そうすると 本件実用新案に係る前記 公告本甲1刊行物はその写しは,一般公衆による閲覧,複写の可能な状態におかれた外国特許局備え付けの明細書原本の複製物と認められるから,特許法29条1項3号の外国において「頒布された刊行物」に該当すると認められる。
(2)これに対し原告らは,前記認定に係る閲覧,謄写については,謄写の根拠規定,具体的な謄写手続規定が整備されておらず,実際にも,平成12年当時ですら,台湾国内においてインターネットにより本件実用新案公報を検索すること等は困難な状況であるから(甲22 ,前記最高裁昭和55年7 )月4日第二小法廷判決が説示した「原本自体が公開されて公衆の自由な閲覧に供され,かつ,その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整っている」ということはできないと主張する。しかし,前記認定のとおり,台湾特許の実務においては,本件特許出願前に前記「公告本」が公衆の自由な閲覧,謄写の対象になっていたのであるから,これを特許法29条1項3号の外国頒布刊行物と認めることに支障はないというべきであって,手続規定等の整備の有無やインターネットによる検索の可否は上記認定を左右するものではない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(3)以上によれば,審決が甲1刊行物を特許法29条1項3号の外国頒布刊行物と認定したことに誤りがあるということはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。
3 本件各発明の進歩性の有無(特許法29条2項)について(1) 本件各発明の意義ア 本件訂正後の請求項1及び2は,前記第3,1(2)のとおりである。
イまた,本件訂正後の明細書(全文訂正明細書,甲27。ただし,図は特許公報〔甲12〕による)には次の記載がある。
(ア)産業上の利用分野・「本発明は,エアー・ポンプ,特に鑑賞魚を入れた水槽に泡立て用の空気を送り込むエアー・ポンプに関するものである(段落【0001 ) 。」】(イ)従来の技術・「以前から一般家庭および人が多く集まる場所などにおいては,鑑賞魚を水槽に入れて飼育し室内のアクセサリーにしたり,見る者の目を楽しませたりすることが行なわれて来た。このような鑑賞魚類を飼育する水槽には,よく泡発生器具を水底に置き,この泡発生器具に小型のエアー・ポンプから空気を送り込んで空気の泡を発生させているものが見受けられる… (段落【0002 ) 」】(ウ)発明が解決しようとする課題・「しかしながら,上記従来のエアー・ポンプにあっては,ダイヤフラム8の出口にホースを直接接続し,このホースを通して水槽の中に空気を送るようにしているため,ダイヤフラム8が空気を吸入,吐出を行なうときの音がそのまま空気出口9からホースを伝って水槽へと伝わり,エアー・ポンプを作動させて, ,, いる間中 水槽或いはその周縁から低いうなり音が発生し 耳ざわりである上例えば一般家庭では夜中に寝静まった後でも前記音がし続け,人によっては安。, , 眠を妨害されることがある さらに 本来は水槽の中で泡が立つのであるから水の中を泡が立ち昇る音,或いは水面に達した泡がはじけるときの澄んだ音が人の耳に聞こえてもよいのであるが,これらの音は前記エアー・ポンプのうなり音にかき消されて聞こえないという不具合もあった(段落【0003 ) 。」】・「本発明は前記問題点に鑑みてなされたもので,その目的は,ダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生した音が水槽にまで伝わるのを防止したエアー・ポンプを提供することである(段落【0004 ) 。」】(エ)作用・「本発明は上記構成により,ダイヤフラムは電磁駆動機構の動作によって空気の吸入および吐出動作を行なう。ダイヤフラムから吐き出された空気は,当該ダイヤフラムに接続されたタンク部材に導入され,このタンク部材の中を通っ, 。, た後にホースへ入り このホースを通って水槽へ達する タンク部材の中には或る一定の容量の空気滞留室が形成されているので,このタンク部材に送られた空気は一時的に空気滞留室内に蓄えられ,その後出口からホースへと入る。
, , , このため ダイヤフラムにおける空気の吸入 吐出動作に際して発生した音はタンク部材によって消されるかまたは大幅に低下せしめられる。そして,水槽へは空気のみがホースを伝って送られ,静かな空気供給が行なわれる(段落。」【0006 )】(オ)実施例・「図1は本発明によるエアー・ポンプの一実施例の内部構造を露出させて示す平面図である。この図において,符号11は,筐体であるハウジング12内の一方の側壁12aに固定取り付けされ電磁回路を形成するためのヨーク,13はヨーク11に取り付けられヨーク12とともに電磁回路を形成するコア,14はコア13に巻装され且つ電源コード15に接続された電磁コイルであり,これらヨーク11,コア13および電磁コイル14によってポンプ動作を行なうための電磁駆動機構を構成している。16はハウジング12内において前記ヨーク11を取り付けた側壁と対向する他方の側壁12b側から前記電磁コイル4の方へ向けて延びるアーム,17はアーム16の先端部に取り付けられ前記電磁駆動機構との間の電磁作用によって前記ヨーク11と電磁コイル14との間を往復運動するマグネットである(段落【0007 ) 。」】・「アーム16は,その根元端部が後出のタンク部材に固定連結されることにより一種の片持ち梁構造(ただし,変位方向は図1中上下の方向である)を有している。そしてこのアーム16は,前記マグネット17の往復運動にともなって,当該マグネット17の運動方向へ撓んで変位するようにハウジング12に取り付けられており,その長手方向中間部分にはダイヤフラム18が連結されている。このダイヤフラム18は外力によって収縮,膨張する内部が中空のゴム,革,強化処理された紙,或いはプラスチックなどの弾性材料から構成されるとともに弁機構を有しており,前記電磁駆動機構の電磁作用によって空気の吸入を行ない,また吐き出しを行なうようになっている。このダイヤフラム18の排気側部分にはタンク部材19が隣合わさって設置され,ダイヤフラム18から排出された空気はタンク部材19へと導かれるようになっている(段。」落【0008 )】・「かかる構成を有するエアー・ポンプの動作を説明する。このエアー・ポンプが動作せしめられると,電磁駆動機構の駆動作用によってマグネット17がアーム16とともに往復運動し,これにともなってダイヤフラム18が空気の吸入および排出動作を行なう。ダイヤフラム18から排出された空気はタンク部材19の空気取込口27からタンク部材19へ取り込まれ,空気通路28を通って垂直方向下方へ流れ,先ず空気滞留室23のベース部20側部分へと流れ込む。そして,空気は一時的に前記空気滞留室23内に蓄えられる。この空気, 滞留室23へダイヤフラム18から次々と空気が送り込まれて来ることにより空気滞留室23からは柱状部22の上端部に設けられたノズル部24の空気出口25を通して空気が水平方向へ吐き出される。この動作で,空気が空気滞留室23へ流れ込んでから,柱状部22の上端部に到達するまでの間において,, , 円形部分に沿って流れるから 直角形状のL字形部分を流れる場合とは異なり, 。,「, 風切り音が発生せず 消音効果を上げることができる また 空気滞留室が内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続する」から,直角形状のL字形に比べて,本件発明の場合はベース部20から,柱状部22へかけて空気流路の断面積が徐々に変化する構造となり,空気の流速自体も緩やかに変化し,空気の衝突などによる音の発生が抑制される,という作用効果が得られる。そして,この吐き出された空気, () , は 空気出口25に接続されたホース 図示してない によって水槽へ導かれ水槽内で泡を生じる(段落【0015 ) 。」】・「このとき,空気通路28の径に対して空気滞留室23の容積が極めて大きい。 ためにダイヤフラム18の作動によって発生した音は大幅に軽減せしめられるしかも,タンク部材19に取り込まれた空気はベース部20において空気滞留室23へ流れ込み,この流入位置から離れた柱状部22の上端部から吐き出されることと,空気が空気滞留室23へ流入する時とここから流出する時との空気の流れ方向が直角の向きに異なっていることとが相俟って,前記音の軽減効果はより一層促進される。このため,空気出口25からはエアー・ポンプの音は殆ど漏れ出ることはなく,水槽へは空気のみがホースを伝って送られ,静かな空気供給動作が実現される(段落【0016 ) 。」】(カ)発明の効果・「以上,説明したように,本発明によれば,タンク部材はダイヤフラムおよびアームの支持台としての機能とダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生する音を軽減する機能とを合わせ持ってハウジングに固定取り付けされるので,タンク部材にダイヤフラムとアームとを支持してハウジングに取り付けることができるとともに,エアーポンプの動作時に,ダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生した音は,空気滞留室の容積により大幅に軽減され,さらに空気滞留室による空気の流入位置と流出位置,さらに空気の流れる方向によって音の軽減効果はより一層促進されて,当該音は消されるか, 。 または大幅に低下せしめられて 水槽へ静かな空気供給を行なうことができるまた,空気が空気滞留室へ流れ込んでから,柱状部の上端部に到達するまでの間において,円形部分に沿って流れるから,直角形状のL字形部分を流れる場合とは異なり,風切り音が発生せず,消音効果を上げることができる。また,空気滞留室が,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続するから,直角形状のL字形に比べて,本件発明の場合はベース部から,柱状部へかけて空気流路の断面積が徐々に変化する構造となり,空気の流速自体も緩やかに変化し,空気の衝突などによる音の発生が抑制される,という作用効果が得られる。また,空気の供給が静かに行なわれるため,水槽の水の中を泡が立ち昇る音,或いは水面に達した泡がはじけるときの澄んだ音が人の耳に届き,これを聞いた人々に爽やかな感じを与え,気持ちを落ち着かせるという効果もある。さらに,空気滞留室が,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続するから,この内側角部においては,一種の面取り効果(直角のコーナーを内側へ切り落とす効果)が得られ,直角形状のL字形に比べて,空気滞留室の容積を拡大させる効果が得られる (段落【0017 ) 。」】ウ以上によれば,本件各発明は,鑑賞魚を入れた水槽に泡立て用の空気を送り込むエアー・ポンプに関するものである。従来のエアー・ポンプは,空気の吸入・吐出動作を行うダイヤフラムの出口にホースを直接接続し,水槽の中に空気を送るようにしているため,ダイヤフラムの音がそのまま空気出口からホースを伝って水槽へと伝わり,エアー・ポンプを作動させている間中,ノイズが発生するという問題点があり,本件各発明は,請求項で特定された構成により,ダイヤフラムによる空気の吸入,吐出動作に際して発生した音が水槽にまで伝わるのを防止したエアー・ポンプを提供することを目的とするものである。本件各発明においては,ダイヤフラムから排出された空気はタンク部材の空気取込口からタンク部材へ取り込まれ,空気通路を通って垂直方向下方へ流れ,まず空気滞留室のベース部側部分へと流れ込み,内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され穏やかに湾曲した略L字型に連続する空気滞留室内に一時的に蓄えられ,ダイヤフラムから次々と空気が送り込まれて来ることにより,柱状部の上部に設けられたノズル部の空気出口を通して空気が水平方向へ吐き出され,接続されたホースによって水槽へ導かれるよう構成されている。その際,空気通路の径に対して空気滞留室の容積が大きいためにダイヤフラムの作動によって発生した音が軽減され,また,タンク部材に取り込まれた空気はベース部において空気滞留室へ流れ込み,この流入位置から離れた柱状部の上部から吐き出されることと,空気が空気滞留室へ流入する時とここから流出する時との空気の流れ方向が直角の向きに異なっていることとが相俟って,音の軽減効果がより一層促進され,空気出口からエアー・ポンプの音がほとんど漏れ出ることがなく,静かな空気供給動作が実現されるというものである。
(2) 甲1発明の意義ア甲1刊行物(引用は訳文〔甲1の3〕による)には,次の記載がある。
(ア)摘要・「本考案は,消音作用を有する空気ポンプ構造に関し,特に,空気排出室と排気管との間に空間が空気排出室より大きい緩衝室が設けられ,その排気速度と排気圧力を緩和することにより,空気と当該壁面との摩擦力を降下することができ,それにより,ノイズを減少することができることを特徴とする魚の飼育用水槽に用いられる空気ポンプに関する(2頁3行〜7行) 。」(イ)考案の説明・「本考案の目的は,空気排出室と排気管との間に,空間が空気排出室より大きい緩衝室が設けられ,圧力が掛けられた空気がここで瞬間的に緩和され,空気と壁面との摩擦により生じたノイズを降下させる効果を収めることができることを特徴とする消音作用を有する空気ポンプ構造を提供することにある(2。」頁9行〜12行)・「従来の魚の飼育用水槽に用いられる空気ポンプとしては,添付書類1公告第59102,添付書類2公告第53223,添付書類3公告第74050,添付書類4公告第83200,添付書類5公告第087333に開示されたものが挙げられる。開示されたあらゆるポンプ構造については,いずれも空気輸送機能を持っているが,ノイズが大き過ぎるという一つの共通の欠点もあることが現状である。その原因を調べたところ,いずれの製品においても,空気排出室中の空気が,振動ダイヤフラムを介して外部から空気取込室の後に設置された回気室に吸入され,ワンウエーバルブにより気流の回流を防ぎ,回気室のすぐ後に接続された細長排気管を通って排出されるということが分かる。このような設計においては,空気がワンウエーで高速に流れ,管壁面との摩擦が大きくなってノイズが生じている(従来製品のノイズを測定した結果,いずれも約20〜30dbである 。静かな居室において,うるさい感じがすると言える。 )夜になると 最も顕著であろう これは 従来製品の大きな欠点と言える2 ,。, 。」(頁13行〜25行)・「本考案のポンプ構造は,空気取込室と,空気排出室と,緩衝室とからなる。
。 空気排出室と緩衝室との底に空気を流通するためのチャンネルを具備している緩衝室のもう一側端に排気管が設けられている。当該緩衝室の容積は,空気取込室の容積より大きい。また,空気排出室の容積よりも大きい。空気取込室の容積は,空気排出室の容積と同じである(3頁5行〜9行) 。」・「以下に,図面を用いて詳しく説明する。
図面1は,本考案のポンプ体の立体分解図である。
図面2は,本考案のポンプ体の実施例の断面図である。
図面1のように,ポンプ体10の一側に緩衝室13が設置され,当該緩衝室13の一側にさらに排気管14が設置されている。上記ポンプ体10の中に空気排出室と空気取込室を備える。上記空気排出室と空気取込室のそれぞれ中央部に,通気孔101が設けられている。各通気孔101にバルブ15が設置されている。ポンプ体10に,ポンプ体10の上周縁の凸縁により形成された凹部である空気迂回区111がある。当該迂回区111の上端にダイヤフラム20。 , が設置されている 当該ダイヤフラム20の一側に設けれられたマグネットは電磁コイルの電磁駆動により振動され,それにより,ダイヤフラム20を上下方向に振動させることができる。ダイヤフラム20の振動作用により空気を空気取込室からバルブ15を介して上記迂回区111に吸入させる。続いて,吸入された空気を,上記迂回区111から空気排出室におけるバルブ15を介して排出させる。このように,単方向に排気動作ができる(3頁10行〜下6 。」行)・「図2のように,ポンプ体10における空気取込室の空間と空気排出室の空間は同じであり,上端は,上周縁の凸縁とダイヤフラム20とからなる迂回区111である。
2つのバルブ15の1つは,迂回区111の通気孔101に嵌め込まれ,それにより,空気を空気取込室11から迂回区111に吸入させることができる。
, , もう1つのバルブ15は 空気排出室12における通気孔101に嵌め込まれそれにより,迂回区111における空気を空気排出室12に排出させることができる。このようにして,空気は逆の方向に流れられなくなる。
空気排出室12の底部と緩衝室13の間に設置された空気チャンネル131により,空気排出室12中の空気を緩衝室13に進入させる。
緩衝室13の容積は,空気取込室11と空気排出室12の容積より大きい。緩衝室13の一側に空気を排出するための排気管14が設置される。また,他のホースを介して水槽に送る。緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッド17が設けられる。この綿製空気透過パッド17により,緩衝室13に進入且つ排気管14から排出しようとする空気が排気口周辺の緩衝室壁に直接にぶつかることを避け,音を消すことができる。
また,緩衝室13,チャンネル131および空気排出室12の底部に柔軟且つ弾性のゴムパッド16が設置される。それにより,空気排出室12中の空気がチャンネル131から緩衝室13に流れる時,空気の衝突を緩和し,当該衝突によるノイズを軽減することができる(3頁下5行〜4頁15行) 。」・「したがって,本考案は以下の効果を有する。
1,緩衝室,チャンネルおよび空気排出室の底部に設けられたゴムパッド,及び排気口周辺に設けられた綿製空気透過パッドなどにより,空気がそれらに衝突する際の緩和効果により,空気がポンプ体壁面に衝突する際のノイズよりも低いノイズの静音効果が得られる。
2,緩衝室の容積を空気取込室および空気排出室の容積より大きくすることにより,空気取込室中の空気の圧力と同じな空気排出室中の空気が緩衝室に流れるとき,圧力が小さくなり,流動速度が緩和される。また,排気口周辺に設けられた綿製空気透過パッドの緩衝作用により,従来のように空気が排気管を流れる時に生じる「口笛作用」によるノイズを除去できるので,静音効果が得られる(4頁16行〜下4行) 。」(ウ)クレーム(特許請求の範囲)・「空気取込室と空気排出室とを備える消音空気ポンプ構造であって,上記空気排出室と排気管との間にさらに緩衝室が設けられ,当該緩衝室と排気室との底部に連通するためのチャンネルが設けられ,緩衝室の容積は,空気取込室と空気排出室のいずれの容積より大きく,且つ,緩衝室における排気管口周辺に綿製空気透過パッドが設置され,上記緩衝室,チャンネルおよび空気排出室の底部にゴムパッドが設けられることを特徴とする消音空気ポンプ構造(6頁2行〜8行) 。」(エ)図面1及び図面2の内容は,別紙第一図及び第二図のとおりであり,具体的な空気ポンプの形状が示されている。
イ以上によれば,甲1刊行物には,魚の飼育用水槽に用いられる消音作用を有する空気ポンプ構造に関するもので,特に,空気排出室と排気管との間に空間が空気排出室より大きい緩衝室を設け,排気速度と排気圧力を緩和することにより,空気と壁面との摩擦力を降下することができ,それにより,ノイズを減少することができるポンプが開示されている。
その具体的な構成は,電磁コイルの電磁駆動により振動するマグネットを有するアームと,このアームが一側に設けられたダイヤフラム20とポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111と,空気迂回区111に接続され空気を緩衝させてから排気する一連の構造体とを備えており,この一連の構造体は,底部にゴムパッド16が設置された土台部分と,土台部分から立ち上げられた空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12と,土台部分から空気排出室12に隣り合わせて立ち上げられた箱状部と,この箱状部に形成され,アームの根元部分が固定される係止部とを有し,全体が一体のブロック体構造になっている。そして,土台部分と箱状部の内部に土台部分と箱状部間に略四角形状に連続する緩衝室13が形成され,空気排出室12に空気迂回区111から送り出された空気を空気排出室12の出口から土台部分に沿, , って延び 緩衝室13に連通する空気チャンネル131が接続形成されて緩衝室13の空気流入口が土台部分側に設けられるとともに,緩衝室13の空気出口が反対側の中程に設けられ,空気流入口からの空気の流入方向に対して空気出口からの空気の流出方向が平行になっている。
上記構成におけるエアー・ポンプにおいては,ダイヤフラム20の振動作用により,空気排出室12から一連の構造体に送られた空気は,容積の大きい緩衝室13に流入することにより圧力が小さくなり,流速が緩和され,空気と壁面との摩擦力を降下することができ,ノイズが減少される。
同時に,空気排出室12の底部に設置されたコムパッド16で衝突を緩和され,また緩衝室13内に設けられた綿製空気透過パッド17により緩衝室壁に直接ぶつかることを避けることにより,ノイズを軽減されて,緩衝室13に設置された排気管14からホースを介して空気を水槽に送るようにされている。
(3) 取消事由2(甲1発明認定の誤り)についてア原告らは,審決が甲1発明の認定において,緩衝室13と排気管14との間の「綿製空気透過パッド17」の存在と効果を排除したことが誤りであると主張する。
この点,甲1刊行物において,緩衝室13と排気管14との間に綿製空気透過パッドがあるエアー・ポンプの構成が開示されていることは前記(2)のとおりであるのに対し,審決が認定した甲1発明の内容は審決書記載のとおりであり,同認定の甲1発明において綿製空気透過パッドは含まれていない。
もっとも,前記(2)に摘示した甲1発明の目的に関する記載(訳文〔甲1の3〕2頁9行〜12行)から明らかなとおり,甲1発明は空気排出室と排気管との間に,空間が空気排出室より大きい緩衝室が設けられ,圧力が掛けられた空気がここで瞬間的に緩和され,空気と壁面との摩擦により生じるノイズを降下させる効果を収めることができることを特徴とする消音作用を有する空気ポンプ構造を提供することを目的とするものであり,その消音作用はまず空気排出室より大きい緩衝室を設けて圧力を緩和することにより生じさせることが予定され,その上更に消音効果を高めるものとして,綿製空気透過パッド17,ひいてはゴムパッド16といった構成を付加するものである。
,, , そして これら緩衝室 綿製空気透過パッド17及びゴムパッド16はそれぞれ独立の機構として,並列してノイズ軽減に寄与するものとして構成されているところ,本件各発明は,空気滞留室でノイズ軽減をするものであり,甲1刊行物に開示されたゴムパッドや綿製空気透過パッドに相当する付加的なノイズ軽減手段を有していないから,このような本件各発明と甲1刊行物記載の発明との構成の対比において,分離可能な緩衝室に関する構成のみを抜き出し,付加的構成である綿製空気透過パッド17等の構成を省いて甲1発明を認定したとしても,その認定が誤りとなるものではない。
, 。 したがって 審決の甲1発明の認定に誤りがあるということはできないイこれに対し原告らは,甲1刊行物における緩衝室のみでは消音効果が得られないと主張するところ,かかる主張は,甲1発明においては,緩衝室13が隔壁(甲23〔台湾登録第77204725号新型専利説明書公告本第2図符号加筆図面〕における符号132)により2区画に分割され,その結果空気流が緩衝室の底壁に沿って流れ排気管14が設置された区画にのみ流入し,緩衝室自体に消音効果がないとの理解を前提とするものである。
しかし,甲1刊行物には,当該構成について 「緩衝室13と排気管1 ,4との間に綿製空気透過パッド17が設けられる。この綿製空気透過パッド17により,緩衝室13に進入且つ排気管14から排出しようとする空気が排気口周辺の緩衝室壁に直接にぶつかることを避け,音を消すことができる(訳文〔甲1の3〕4頁8〜11行)と説明されるだけで,空気 。」の流れを阻害するような隔壁の存在についての記載はない。かえって,前記(2)のとおり,甲1刊行物において綿製空気透過パッドは空気が直接緩衝室壁にぶつかることを避けてこれを透過させるために設けられている旨説明されており,隔壁が存在すると空気が隔壁に衝突することは避けられず上記説明と矛盾することになるし,図面上,断面を表すハッチングが施されていないことからすれば,仮に隔壁様のものであるとしても,綿製空気透過パッドを緩衝室壁に固定するための額のような部材であり,その内側の中空部において空気を透過する構造を有するというべきである。
なお,甲1刊行物の図面2に示された空気の流れを示す矢印線には,原告らの想定する「隔壁132」に当たった空気が綿製空気透過パッド17の下部にある間隙(甲23における符号133 ,同綿製パッド17を通 )過し,排気管14に流れるかのような記載があることは認められるが,空気流は流速,ポンプの脈動による変化等により変わるものである上,同図面における「隔壁132」付近の矢印は同隔壁に相当する部分(上記認定における額の内側中空部)を透過する空気の流れを示していると理解することもできるから,同図に記載された矢印のみでは,原告らの上記主張を裏付けるに足りるものということはできない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(4)取消事由3(一致点認定の誤り)についてア原告らは,本件発明1の「ダイヤフラム「タンク部材「ダイヤフラ 」,」,ム接合部」に関する甲1発明との相当関係について,審決に一致点認定の誤りがあると主張するので,以下,順次検討する。
(ア) ダイヤフラムにつき前記(1)イのとおり,本件特許の全文訂正明細書(甲27)には,原告らも指摘するように 「…ダイヤフラム18は外力によって収縮,膨 ,張する内部が中空のゴム,革,強化処理された紙,或いはプラスチックなどの弾性材料から構成されるとともに弁機構を有しており… (段落」【0008 )との記載があり,弁機構を有し,収縮,膨張することに 】より空気の吸入・排出を行う構成部材全体を「ダイヤフラム」としていることが理解できる。これに対し,前記(2)のとおり,甲1発明においては,ダイヤフラム20とポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111で構成された部位が合わさることにより,ダイヤフラム20の振動により空気の吸入・排出が行われることになる。
そうすると,甲1発明における「アームが一側に設けられたダイヤフラム20とポンプ体10の上周縁の凸縁とバルブ15等からなる空気迂回区111」が,本件発明1の「アームによって作動せしめられ空気を吸入するダイヤフラム」に相当するものと理解することができ,これと同旨の審決の認定に誤りはない。
(イ) タンク部材につき原告らは,本件発明1の「ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材」について,甲1発明の空気迂回区111,ポンプ体10の上周縁の凸縁が本件発明1のダイヤフラムに相当する部材に含まれないことを前提として,タンク部材に相当する甲1発明の部材は 「ダイヤフラム20に接続されたポンプ体10の上周縁の凸縁と空 ,気迂回区111を含み空気を緩衝させてから排気する一連の構造体」である旨主張する。
しかし,甲1発明における空気迂回区111,ポンプ体10の上周縁の凸縁が本件発明1のダイヤフラムに含まれる構成部材に相当するのは上記(ア)のとおりであり,また,甲1発明における空気を緩衝させてから排気する一連の構造体が空気迂回区111に接続するのは明らかである。
そうすると,甲1発明における「空気迂回区111に接続された空気を緩衝させてから排気する一連の構造体」が,本件発明1における「ダイヤフラムに接続され空気を一時的に蓄え,吐出するタンク部材」に相当するものと理解することができ,これと同旨の審決の認定に誤りはない。
(ウ) ダイヤフラム接合部につき本件発明1において,ダイヤフラム接合部は 「ベース部から立ち上 ,げられた円形をした一側面がダイヤフラムの空気排出部に対接する円形の外周面を有するダイヤフラム接合部」とされているところ,この,ダイヤフラム接合「部」は幅のある概念であり,二次元的な構成を表わしているとも,三次元的な構成を表わしているとも解釈することができ,これに応じて「立ち上げられた」との意味も,接合部が面であってほぼ垂直になっているとも,接合部を構成する部材が上方に延びているとも解釈できるため,多様な構成が対応し得るものである。
,, , そして 甲1発明においては 半円形をした空気排出室12の上縁が本件発明1のダイヤフラムの空気排出部に相当するバルブ15による通気孔を有する空気迂回区111に向い合って接している(すなわち「対接 )から,上縁を含む空気排出室12全体を三次元的に捉えてダイヤ 」フラム接合部と把握することが可能であり,そのような把握によれば,甲1発明の 「土台部分から立ち上げられた半円形をした一側面が通気 ,孔を有する空気迂回区111に接続される半円形の外周面を有する空気排出室12」との構成は,本件発明1における「ベース部から立ち上げられた円形をした一側面がダイヤフラムの空気排出部に対接する円形の外周面を有するダイヤフラム接合部」に相当するものと理解することができる。そうすると,これと同旨の審決の認定に誤りがあるということはできない。
これに対し原告らは,甲1発明の空気排出室は一連の構造体の内部に存在する空間であるからダイヤフラム接合部には相当しないとか,甲1発明における空気排出室12の構成態様は「立ち上げられ」たものではなく「上下方向に延びる(又は延在する 」ものであるなどと主張する )が 「ダイヤフラム接合部「立ち上げ」の意味する構成については多 ,」,様な構成を想定可能であり,審決の前記認定が誤りといえないことは前記のとおりであるから,原告らの上記主張は採用することができない。
また原告らは 「対接」に関し,ダイヤフラム接合部が対接する相手 ,がダイヤフラムの空気排出部であるから,このダイヤフラムの空気排出部もまたベース部から立ち上げられたのと同等の態様となっている必要があるなどと主張するが,同主張は「立ち上げ」の意味を限定的に解することを前提とする点において,採用することができない。
イ原告らは,本件発明1における空気滞留室が略L字形に形成されている点,空気通路の形成態様及び空気出口の位置の各構成と,これらに対応する甲1発明の各構成について,審決が「概念で共通する」として構成要件要素を抽象化して一致点としたことが誤りであると主張する。
しかし,前記アに説示したところに照らせば,本件発明1の空気滞留室に対応する甲1発明の構成は緩衝室であると理解することができ,そうすると,空気滞留室が略L字形である一方,緩衝室は略四角形状であることは審決が認定したとおりであるし,そうすると,両者とも 「ベース部及,び柱状部の内部にこの両者間に,所定形状に連続する空気滞留室が形成され」ているといえるから,この点で共通するとした審決の認定に誤りはない。
同様に,本件発明1の空気通路と甲1発明の空気チャンネル131について 「ダイヤフラム接合部にダイヤフラムから送り出された空気を受け ,入れる空気取込口から延び,空気滞留室に連通する空気通路を形成され」ている点で共通しているし,空気出口について「空気滞留室の空気出口が柱状部の所定部に設けれら」ているといえるから,これらの点で共通するとした審決の認定に誤りはない。
(5) 取消事由4(相違点の看過・認定誤り)についてア原告らは,審決が認定した本件発明1と甲1発明との相違点1〜4以外に,甲1発明は,空気滞留室の構成にダイヤフラム接合部が寄与するという態様が存しないこと(相違点6)において相違し,審決がこれを看過したと主張する。
しかし,本件発明1は 「内側角部がダイヤフラム接合部の円形の外周 ,面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形に連続する空気滞留室が形成され」として,空気滞留室の形状がダイヤフラム接合部の外周面に沿ったものである旨規定するが,ダイヤフラム接合部自体が空気滞留室を構成するとはされていない。そして,審決は,本件発明1の規定する構成である空気滞留室がダイヤフラム接合部の円形の外周面に沿って画成され緩やかに湾曲した略L字形となっている点については相違点2として認定して, 。 いるから 原告らの主張する相違点6の看過があるということはできないまた原告らは,甲1発明では本件発明1のダイヤフラム接合部に相当する構成を有しないこと(相違点7)においても相違し,審決がこれを看過したと主張する。
しかし,本件発明1における「ダイヤフラム接合部」の意味する構成が多様な解釈を許容するものであり,審決がダイヤフラム接合部を三次元的に捉え,ダイヤフラムの空気排出部に相当する空気迂回区111に対接する空気排出室12がダイヤフラム接合部に対応するとした認定に誤りがあるといえないことは前記(4)に説示したとおりである。そして,このような審決の認定を前提にすれば,甲1発明の空気チャンネル131が本件発明1の空気通路に対応すると評価でき,審決はこの点を相違点3として認定しているから,原告らの主張する相違点7の看過があるということはできない。
イ原告らは,相違点4に関し,甲1発明では綿製空気透過パッド17が緩衝室13内部に向けて開口している下部が空気滞留室の空気出口に相当するから,これを「中程」とした審決の認定は誤りであると主張するが,前, 「」 記(3)のとおり かかる主張が前提とする原告らの想定する 隔壁132に当たった空気が綿製空気透過パッド17の下部にある間隙(甲23における符号133)を通過して排気管14に流れるとの理解自体を採用することができないのであって,審決の相違点4の認定に誤りがあるということはできない。
(6) 取消事由5(相違点判断の誤り)についてア前記(1)及び(2)に説示した本件各発明及び甲1発明の技術的意義に照らせば,ダイヤフラム接合部の一側面及び外周面の形に関する相違点1や空気滞留室,空気通路及び空気出口に関する相違点2ないし4は,単なる形状及び配置構成の相違にすぎず,空気滞留室の形状については適宜設計変更可能なものであり,また,空気通路及び空気出口の配置構成についても特別のものとはいえない。
したがって,相違点1〜4を容易想到とした審決の判断に誤りがあるということはできない。
なお,原告らが主張する相違点6及び7が各別の相違点を構成するものでないことは,前記(5)のとおりである。
イこれに対し原告らは,審決における相違点の判断は甲1発明の理解の前提において誤りがあるとして,審決が甲1発明における音の軽減が容積の大きい空気滞留室(緩衝室)により実現されるとしたことが誤りであると主張する。
しかし,空気滞留室の容積を大きくすることで,そこに流入する空気の音を軽減できることは,前記(1)のとおり,本件各発明自体の前提とするところであり,甲1発明において緩衝室の容積は空気取込室と空気排出室の容積よりも大きいものとされ,これによる消音効果が発明の目的の一つとして明示されていることは前記(3)のとおりであるから,その効果を疑う余地はないし,また,このように独立の作用効果を有する緩衝室の構成を,綿製空気透過パッド等,機構及び性質の異なる他の独立した構成から切り離して甲1発明を把握することが誤りといえないことは前記(3)のとおりである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
また原告らは,審決が甲1発明における音の軽減が空気滞留室中での空気の流入位置と流出位置が異なること及び空気の流れる方向を異ならせることで促進できるとしたことが誤りであると主張するところ,同主張は,緩衝室13が閉空間となっていること,すなわち,甲1発明における緩衝室の空気の流れが「隔壁132」から綿製空気透過パッド17の下部にある間隙(甲23における符号133)を通過して排気管14に流れるとの理解を前提とするものであるが,かかる理解自体を採用することができないことも,前記(3)に説示したところから明らかである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
ウ次に原告らは,空気滞留室,空気通路及び空気出口の構成を設計的事項にすぎないとする審決の判断は,本件発明1の理解を誤るものであると主張する。
しかし,原告らが指摘する空気滞留室の円形部分に沿って空気が穏やかに流れ,はがれ現象が発生しないために音が一層低減されるという点は,流速や湾曲の程度によりその効果が変わり得る相対的なものであり,消音効果に明確な差異が生じるか否か不明といわざるを得ないところ,本件特許の明細書にはこのような効果について何も記載されておらず,上記主張は明細書の記載に基づいたものとは認められない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
エなお原告らは,原告らのいう相違点6に関連し,本件発明1はダイヤフラム接合部の側面形状をもって空気滞留室の略L字形を画成することにより,タンク部材の内部に最大限の空気滞留室の容積を確保することができるとか,この部分に面取り効果が表れ空気滞留室の拡大化が図られていると主張するが,このような効果は設計事項である空気滞留室の構成により生じる効果として予想できる範囲のものというべきであって,これにより前記アの認定が左右されるものではない。
また原告らは,原告らのいう相違点7に関連し,本件発明1におけるダイヤフラム接合部はダイヤフラムから送り出された空気の流れ方向を転換,「」 する機能を持つと主張するが 本件発明1における ダイヤフラム接合部が幅のある概念であり 上記の場合に限定して解釈し得ないことは前記(4) ,のとおりであるから,かかる機能は本件発明1の容易想到性を左右するものではない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
4 結論以上によれば,原告ら主張の取消事由はすべて理由がない。
よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
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