• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10259審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10150審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10161審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10154審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10137審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 容易に発明 /  引用発明の認定 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  上位概念 /  容易に想到(容易想到性) /  請求の範囲 /  再審請求 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 21年 (行ケ) 10187号 審決取消請求事件
原告X
被告特許庁長官
同 指定代理 人亀丸広司
同 豊永茂弘
同 紀本孝
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/12/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が再審2009-950001号事件について平成21年6月16日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯原告は,不服2005-9621号事件について平成19年11月12日にした審決(以下,「原審決」という。)の取消しを求める訴えを平成19年12月24日に提起し(平成19年(行ケ)10421号),これに対し,当裁判所は,平成20年6月26日に,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。原告は,平成20年7月9日に上記判決を不服として上告をし(平成20年(行ツ)280号),これに対し,最高裁判所は,平成21年1月15日に,上告を棄却し,原審決は確定した。
原告は,平成21年2月13日,本件再審の請求をし(再審2009-950001号事件),これに対し,特許庁は,同年6月16日,本件再審の請求は,成り立たない旨の審決(以下,「本件審決」という場合がある。)をし,その謄本は同年7月4日原告に送達された。
2 特許請求の範囲本願発明の請求項1は,下記のとおりである(乙1,職務上顕著な事実)。
【請求項1】「筐体部(31)に固着され,片持状に水平に張出し,ほぼ四角形状の面を有する第1のプラットフォーム(41)と,この第1のプラットフォーム(41)に隣接して,前記筐体部(31)から水平な片持の駆動軸(52)によって支えられ,駆動軸(52)の回転駆動によって起伏し得る第2のプラットフォーム(51)を有する身体不自由者のベッドからの起床・離床を介助するための介助機。」(以下この発明を「本願発明」という。)3 原審決の内容原審決は,本願発明は,特開平9-117478号公報(以下「引用刊行物」という。)記載の発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと判断した。
原審決が判断の前提として認定した引用発明の内容並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,下記のとおりである。
すなわち,引用発明の内容として,「アーム作動ハンドルが設けられる部材に固定された固定アームに固着され,片持状に水平に張り出し,ほぼ四角形状の面を有するアンダーホルダー(第1のアンダーホルダー)と,アーム作動ハンドルが設けられる部材のアンダーホルダーを有する固定アームと反対の側に,ほぼ水平な軸周りに回転駆動されるように支えられ,アーム作動ハンドルの回動によって起伏し得る作動アームに設けられたアンダーホルダー(第2のアンダーホルダー)を有する病人,重度身体障害者,寝たきり老人などのベットからの移動を介護する介護装置」と認定し,一致点を,「筐体部に固着され,片持状に水平に張出し,ほぼ四角形状の面を有する第1のプラットフォームと,前記筐体部から水平な軸周りに回転駆動されることにより,起伏し得る第2のプラットフォームを有する身体不自由者のベッドからの起床・離床を介助するための介助機である点」と認定し,相違点を「(相違点1)第2のプラットホームの配置に関し,本願発明は,第1のプラットフォームに隣接しているのに対して,引用発明は,第1のプラットフォームに接していない点,及び(相違点2)第2のプラットフォームの駆動機構に関し,本願発明は,片持の駆動軸(52)によって支えられ,駆動軸(52)の回転駆動によって起伏し得るものであるのに対して,引用発明は,ほぼ水平の軸周りに回転駆動され起伏するものの,駆動軸の回転駆動によるものであるか否か明らかでない点。」と認定した(乙2,職務上顕著な事実)。
4 本件審決の内容(1) 原告(再審請求人)主張に係る再審理由ア原審決には,「片持」の意味を誤った理解のもとに引用発明を評価した点,及び「筐体部から片持の駆動軸」を「駆動軸」に摩り替える作為を行ったことによって,引用発明及び本願発明を評価した点に判断の遺脱がある。(再審請求書)イ原審決には,引用発明と本願発明とを対比した際に,【相違点3】を挙げなかった判断の遺脱がある。(平成21年3月10日付け手続補正書)ウ原審決には,引用文献の発明を引用発明とすることができるかどうかについての判断の遺脱がある。(平成21年4月4日差出の手続補正書)エ原審決には,引用発明に片持の駆動軸を適用することの可否についての判断の遺脱がある。(平成21年4月4日差出の手続補正書)(2) 審決の判断の内容審決は,以下のとおり,原告の主張する再審理由は,特許法171条2項で準用する民事訴訟法338条1項9号に規定する事由に該当せず,他に同条1項各号に規定する事由にも該当しないから,再審事由に該当するものではない,と判断した。
ア上記アの主張は,原審決の理由中に記載された引用発明及び本願発明の認定の誤りを主張するものであって,当事者が適法に提出した攻撃防御方法たる事項で当然審決の結論に影響するものに対し審決の理由中で判断を示さなかった場合には該当しないから,上記「判断の遺脱」を主張するものとはいえない。
イ上記イの主張は,原審決の理由中に記載された引用発明と本願発明との相違点の認定の誤りを主張するものであって,同様に上記「判断の遺脱」を主張するものとはいえない。
ウ上記ウの主張は,原審決の理由中に記載された引用発明の認定の誤りを主張するものであって,同様に上記「判断の遺脱」を主張するものとはいえない。
エ上記エの主張は,原審決の理由中に記載された相違点2についての容易想到性の判断の誤りを主張するものであって,同様に上記「判断の遺脱」を主張するものとはいえない。
当事者の主張
1 原告の主張本件審決には,以下のとおり再審理由の有無に関する判断の誤りがあるから,本件審決は取り消されるべきである。
(1)原審決は,本願発明にいう「片持」を学術用語の定義とは異なる審判官の独特の認識に基づいて認定したものであり,「学術用語の定義とは異なる審判官の独特の認識」は「認定」とは関係がないから,客観的には特許庁の判断はいまだ示されていない。また,原審決は,本願発明の「筐体部から水平な片持の駆動軸」を「駆動軸」と上位概念化して一致点を認定しており,引用発明と本願発明との対比についての判断はいまだ示されていない。したがって,審決の理由中で判断を示さなかった場合に該当するから,原審決に判断の遺脱がある。
(2)原審決は,「引用発明においては,作動アームの起伏の中心位置は,水平な固定アームの高さよりも高い位置にあるのに対し,本願発明においては,第2のプラットフォームの起伏の中心位置は,第1のプラットフォームの上面と同一の高さに設定されていることである」との相違点を認定しなかったから,判断の遺脱がある。
(3)原審決は,引用発明について,筐体部に相当するアーム作動ハンドルが設けられる部材に作動アームが取り付けられていると認定したが,これは引用発明とすることができないものを引用発明と認定したものであって,引用発明の認定を怠ったものであるから,判断の遺脱がある。
(4)原審決は,引用発明において明らかでない事項を相違点2として認定している。そして,前記のとおり,引用発明のアーム作動ハンドルが設けられる部材に片持の駆動軸を設けることは物理的に不能である。よって,原審決において,相違点2に関する対比判断はされていないから,判断の遺脱がある。
2 被告の反論(1)原告の主張は,?原審決の理由中の「片持」の解釈の是非及びそれに伴う引用発明等の認定の誤り又は相違点2の判断の誤りを主張するもの,?原審決の理由中の一致点の認定の誤りを主張するものであるから,いずれも原審決が既に示した判断を争うものである。したがって,審決の理由中で判断を示さなかった場合には該当せず,判断の遺脱はない。
(2)原告の主張は,原審決の理由中に記載された引用発明と本願発明との相違点の認定の誤りを主張するものであって,審決の理由中で判断を示さなかった場合には該当しないから,原告の主張する判断の遺脱はない。なお,原告主張の相違点は,そもそも本願発明に記載されたものでないから,原審決において対比の対象としていないものである。
(3)原審決は,引用刊行物の記載事項及び図示内容に基づいて,引用発明を認定している。原告の主張は,原審決の理由中に記載された引用発明の認定の誤りを主張するものであって,審決の理由中で判断を示さなかった場合には該当せず,判断の遺脱はない。
(4)原審決は,引用発明を本願発明と対比した際に明らかでない事項を指摘し,それに基づいて相違点2を認定し,容易想到性を判断している。原告の主張は,原審決の理由中に記載された引用発明及び相違点2についての認定の誤り並びに容易想到性の判断の誤りを主張するものであって,審決の理由中で判断を示さなかった場合には該当しないから,判断の遺脱はない。
当裁判所の判断
1特許法171条2項が準用する民事訴訟法338条1項9号にいう「判断の遺脱」とは,当事者が適法に提出した攻撃防御方法のうち,その判断のいかんにより審決の結論に影響する事項で,審決の理由中で判断を示さなかった場合をいう。
原告の主張は,以下のとおり,いずれも原審決の認定判断に対する誤りを主張するものであって,前記の判断の遺脱を主張するものとはいえないから,再審事由に当たるものではなく,失当である。
すなわち,取消事由に関する原告の主張(1)は,原審決における本願発明の「片持」の認定の誤り及び本願発明と引用発明との一致点の認定の誤りをいうものであり,前記の判断の遺脱を主張するものとはいえないから,再審事由に当たらない。同原告の主張(2)は,原審決における相違点の認定の誤り(相違点の看過)をいうものであり,前記の判断の遺脱を主張するものとはいえないのみならず,その相違点に係る原告の主張は,前記の本願発明にない構成の相違点をいうものであり,それ自体失当である。同原告の主張(3)は,原審決における引用発明の認定の誤りをいうものであり,前記の判断の遺脱を主張するものとはいえないから,再審事由に当たらない。同原告の主張(4)は,原審決における相違点2の認定及びそれに対する容易想到性の判断の誤りをいうものであり,前記の判断の遺脱を主張するものとはいえないから,再審事由に当たらない。
2以上のとおり,原告の取消事由にかかる主張には理由がなく,その他審決を取り消すべき違法はない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
  • この表をプリントする